(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】化合物の層を形成する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/06 20060101AFI20240621BHJP
C23C 14/28 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C23C14/06
C23C14/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500013
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2021068246
(87)【国際公開番号】W WO2023274549
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500449363
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フェルデルンク デル ヴィッセンシャフテン エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンハート,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA04
4K029AA07
4K029AA24
4K029BA02
4K029BA03
4K029BA04
4K029BA05
4K029BA06
4K029BA07
4K029BA08
4K029BA09
4K029BA10
4K029BA11
4K029BA12
4K029BA13
4K029BA15
4K029BA16
4K029BA17
4K029BA18
4K029BA41
4K029BA42
4K029BA43
4K029BA51
4K029BA58
4K029BB02
4K029CA02
4K029DB20
(57)【要約】
本発明は、単結晶ウエハなどの基板上に、単層から数mmの範囲で選択された厚さを有する化合物層を形成する方法に関する。ここで、基板は、ソース材料の1つまたは複数のソースを含むプロセスチャンバ内に配置される。さらに、本発明は、この方法によって任意に得られる化合物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ウエハなどの基板上に、単層から数mmの範囲で選択された厚さを有する化合物の層を形成する方法であって、前記基板は、ソース材料の1つまたは複数のソースを含むプロセスチャンバ内に配置され、前記方法は、
・ 前記プロセスチャンバ内に反応雰囲気を提供するステップであって、前記反応雰囲気は、所定のプロセスガスおよび反応チャンバ圧力を含む、ステップと、
・ 前記1つまたは複数のソースにレーザ光を照射して、前記1つまたは複数のソースの少なくとも表面に存在する前記ソース材料の原子および/または分子を溶融および/または昇華および/または蒸発させるステップと、
・ 溶融および/または昇華および/または蒸発した前記原子および/または前記分子を、前記プロセスチャンバ内で前記プロセスガスと反応させるステップと、
・ 前記基板上に前記化合物の層を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数のソースは、前記基板に直接対向する前記1つまたは複数のソースの表面においてレーザ光で照射される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のソースは、連続レーザ光で照射される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応チャンバ圧力は、10
-12hPa~10
1hPaの範囲で選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応雰囲気を提供する前記ステップは、前記プロセスチャンバを第1の圧力まで排気し、次に、前記プロセスガスを導入して前記反応チャンバ内の反応チャンバ圧力である第2の圧力を得るステップを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の圧力は、前記第2の圧力よりも低くなっている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の圧力は、10
-6hPa~10
1hPaの範囲、特に10
-4hPa~10
1hPaの範囲、特に10
-4hPa~10
-2hPaの範囲で選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応チャンバの少なくともシュラウドの温度は、77K~500Kの範囲で選択された温度に制御される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応チャンバの内壁の温度は、77K~500Kの範囲で選択された温度に制御される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロセスガスは、酸素(O)、オゾン(O
3)、プラズマ活性化酸素(O)、窒素(N)、プラズマ活性化窒素(N)、水素(H)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、リン(P)、硫黄(S)、セレン(Se)、水銀(Hg)、NH
3、N
2O、CH
4、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ソース材料は、前記反応雰囲気中で、固体材料または液体材料である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ソース材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Hf、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Rh、Ta、W、Re、Ir、Ga、In、Si、Ge、Sn、Eu、Ce、Pd、Ag、Pt、Au、上記の合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ソース材料の原子および/または分子を昇華および/または蒸発させるために前記1つまたは複数のソースを照射する前記レーザ光は、1mm
2のスポットサイズおよび50mm~120mmの範囲で選択された前記1つまたは複数のソースと前記基板との間の距離に対して、1W~2000Wの範囲で選択された強度で前記1つまたは複数のソースに集光される、請求項1~12いずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数のソースを照射する前記レーザ光は、100nm~20μmの範囲、特に450nm~1.2μmの範囲の波長を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記基板上に堆積される化合物は、酸化物である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記基板上に堆積される化合物は、窒化物である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記基板上に堆積される化合物は、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン化物、硫化物、セレン化物、または水銀化合物である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ソース材料はTiであり、前記基板上に堆積される化合物は主にアナテーゼまたはルチルTiO
2であり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm
2~0.2kW/mm
2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~180分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~30分の時間内で得られる700nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ソース材料はNiであり、前記基板上に堆積される化合物は主にNiOであり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm
2~0.35kW/mm
2の出力密度に対応する100W~350Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~50分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる500nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ソース材料はCoであり、前記基板上に堆積される化合物は主にCo
3O
4であり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm
2~0.2kW/mm
2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~90分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる200nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ソース材料はFeであり、前記基板上に堆積される化合物は主にFe
3O
4であり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm
2~0.2kW/mm
2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~10μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる5μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ソース材料はCuであり、前記基板上に堆積される化合物は主にCuOであり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm
2~0.4kW/mm
2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~30分の時間内で得られる0.15μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ソース材料はVであり、前記基板上に堆積される化合物は主にV
2O
3、VO
2、またはV
2O
5であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.06kW/mm
2~0.12kW/mm
2の出力密度に対応する60W~120Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~60分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.3μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ソース材料はNbであり、前記基板上に堆積される化合物は主にNb
2O
5であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm
2~0.4kW/mm
2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~2μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ソース材料はCrであり、前記基板上に堆積される化合物は主にCr
2O
3であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.02kW/mm
2~0.08kW/mm
2の出力密度に対応する20W~80Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.5μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ソース材料はRuであり、前記基板上に堆積される化合物は主にRuO
2であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm
2~0.6kW/mm
2の出力密度に対応する200W~600Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~300分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.06μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ソース材料はZnであり、前記基板上に堆積される化合物は主にZnOであり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.005kW/mm
2~0.010kW/mm
2の出力密度に対応する5W~10Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ソース材料はMnであり、前記基板上に堆積される化合物は主にMnOであり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.005kW/mm
2~0.010kW/mm
2の出力密度に対応する5W~10Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ソース材料はScであり、前記基板上に堆積される化合物は主にSc
2O
3であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.02kW/mm
2~0.05kW/mm
2の出力密度に対応する20W~50Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.3μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ソース材料はMoであり、前記基板上に堆積される化合物は主にMo
4O
11またはMoO
3であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.4kW/mm
2~0.8kW/mm
2の出力密度に対応する400W~800Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~4μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる4.0μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ソース材料はZrであり、前記基板上に堆積される化合物は主にZrO
2であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.3kW/mm
2~0.5kW/mm
2の出力密度に対応する300W~500Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる0.2μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ソース材料はHfであり、前記基板上に堆積される化合物は主にHfO
2であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.25kW/mm
2~0.4kW/mm
2の出力密度に対応する250W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~40分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる0.6μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ソース材料はAlであり、前記基板上に堆積される化合物は主にAl
2O
3であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm
2~0.4kW/mm
2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合物、特にO
3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hPa、特に10
-6hPa~10
-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に1分~5分の時間内で得られる1.0μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記レーザ光で前記1つまたは複数のソースを照射する前記ステップは、前記1つまたは複数のソースの表面を少なくとも溶融させる、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記レーザ光で前記1つまたは複数のソースを照射する前記ステップは、前記ソースの表面の、前記プロセスガスとの反応を促進させる、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
基板上に、単層から10μmの範囲、特に単層から100nmの範囲で選択された厚さを有する化合物であって、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法に従って得られる、化合物。
【請求項37】
基板上に層として存在する化合物であって、前記層は、前記基板上で単層から100nmの範囲で選択された厚さを有し、前記化合物は、100μs超、好ましくは1000μs超、さらに好ましくは10ms超1000ms未満の量子ビット緩和時間と量子ビットコヒーレンス時間を有する、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶ウエハなどの基板上に、単層から数mmの範囲で選択された厚さを有する化合物層を形成する方法に関する。ここで、基板は、ソース材料の1つまたは複数のソースを含むプロセスチャンバ内に配置される。さらに、本発明は、この方法によって任意に得られる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜などの層を基板上に形成することは、当該技術分野においてよく知られている。しかしながら、使用される化合物ソースの純度は通常3N(99.9%)レベルであるので、化合物から形成される薄膜の成長は高い不純物レベルでしか実施できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、本発明の目的は、任意の不純物の数を大幅に減らして、化合物を薄層として形成する再現性のある費用効果の高い方法を利用できるようにすることである。本発明のさらなる目的は、量子コンポーネントとして応用するための化合物の層を利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0005】
単結晶ウエハなどの基板上に、単層から数mmの範囲で選択された厚さを有する化合物層を形成するそのような方法は、以下のステップを含んでもよい。ここで、基板は、ソース材料の1つまたは複数のソースを含むプロセスチャンバに配置される。
・ プロセスチャンバ内に反応雰囲気を提供するステップであって、該反応雰囲気は、所定のプロセスガスおよび反応チャンバ圧力を含む、ステップと、
・ 1つまたは複数のソースにレーザ光を照射して、少なくとも1つまたは複数のソースの表面に存在するソース材料の原子および/または分子を溶融および/または昇華および/または蒸発させるステップと、
・ 溶融および/または昇華および/または蒸発した原子および/または分子を、プロセスチャンバ内でプロセスガスと反応させるステップと、
・ 基板上に化合物の層を形成するステップと、
を含むことができる。
【0006】
本発明は、気体環境中における固体元素または液体元素の蒸発による化合物、好ましくは酸化物の合成について記載している。元素は、熱レーザ蒸発によって蒸発され、ソースの表面において、または基板に向かう途中、または基板の表面上で気体環境と反応する。これらの反応により、堆積プロセスを強化することができる。
【0007】
本発明は、プロセス温度において本質的に固体または液体である元素ソースを提供する。ここで、レーザの照射により時間単位当たりそのほんの一部だけが蒸発または昇華する。同時に、プロセスチャンバは、蒸発または昇華した元素と意図的に反応して化合物を形成するプロセスガスで満たされる。次に、この化合物は、基板上に薄膜またはエピタキシャル薄膜として堆積される。
【0008】
プロセスガスは、プロセス条件下で、プロセスチャンバ内のどこにも凝縮しないほど十分に高い蒸気圧を有する物質と定義される。プロセス条件とは、通常、室温と10-6hPa~101hPaのチャンバ圧力を意味する。この条件下では、基板の方向に蒸発した原子または分子の相当数が基板に到達する。10-2hPaを下回る圧力では、基板の方向に蒸発した原子または分子の50%超が基板にも到達することが見出された。すなわち、基板に到達する原子または分子の数は、10-2hPaまでの圧力では50%よりも多く、10-2hPa~101hPaの圧力では基板の方向に蒸発した原子または分子の50%未満が基板に到達することが見出された。
【0009】
反応性ガスの圧力が高くなると、蒸発した原子または分子は、ガス原子との衝突が多くなる。これは、それらの方向および運動エネルギーのランダム化をもたらす。その結果、蒸発した原子または分子のうち、基板に到達するものの割合はかなり小さくなるが、それでも場合によっては、特に作業距離が短く基板が大きい場合に、層を形成するのに有効なことがある。このような条件下で基板上に化合物層または酸化物層を形成するには、以下のいくつかの条件がある。
・ 成長様式1:ソース材料がソース表面で反応または酸化し、化合物または酸化物として蒸発または昇華する。次に、基板上に化合物または酸化物として堆積する。
・ 成長様式2:ソース材料が反応せずに蒸発または昇華し、ソースから基板への軌道上でガス原子との衝突によりガスと反応し、化合物または酸化物として堆積する。
・ 成長様式3:ソース材料が反応せずに蒸発または昇華し、反応することなく移動し、基板上に堆積するときまたは堆積した後に、基板に作用するガス原子または分子と反応する。
・ 成長様式4:上記の任意の組み合わせ。
【0010】
特に興味深いのは、ソース材料がガスと反応して、ソース材料自体よりも高い蒸発/昇華速度をもつ準安定化合物を形成する輸送反応である。この材料は、気相でさらに反応し、最終化合物として堆積するか、基板上に堆積し、さらにガスと反応して最終的な安定化合物が形成される。
【0011】
最も単純なケースでは、1つの非ガス状ソース要素と1つのガス状ソース要素がプロセスで使用される。化学量論(化合物中の元素の比)は、フラックスとガス圧力の比によって制御されてもよい。このようにして、例えば様々なV/O比の酸化バナジウム薄膜を製造することができる。
【0012】
複数のソース材料と複数のガス分圧とを組み合わせることで、2つ以上の元素からなる複合化合物、特に1つ以上のソース要素、1つ以上のガス状ソース要素、およびその両方からなる複合化合物を形成することができる。このような化合物における非ガス状ソース要素間の比率は、蒸発レーザのレーザ出力を介して、ソース間の相対的なフラックスによって制御され得る。このような化合物におけるガス状ソース要素間の比率は、チャンバ内のガスの相対的な分圧によって制御され得る。
【0013】
本出願人は、以下の元素と酸素/オゾン混合物(約10%のオゾン)に対してこのプロセスを実験的に実証し、二元酸化物を堆積させた。括弧内の数字は、上記のリストから考えられる反応様式を示している:Sc(1)、Ti(1,4)、V(1)、Cr(1,4)、Mn(1)、Fe(1,4)、Co(1)、Ni(1)、Cu(3)、Zn(1,3)、Zr(1)、Nb(1,4)、Mo(1)、Ru(1)、Hf(1)、Al(3,4)。元素の物理的特性の類似性から、以下の元素も同じプロセスで二元酸化物を成長させることができると確信している:Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Rh、Ta、W、Re、Ir、Ga、In、Si、Ge、Sn、Eu、Ce。以下の元素ではうまくいくかどうかは不明だが、実現できる可能性はある:Pd、Ag、Pt、Au。2つ以上の本質的に固体または液体の元素と2つ以上のガスとを組み合わせることで、複合化合物を形成することができる。このような反応において、本質的に固体または液体の元素の相互の比率は、それらの相対的なフラックス密度によって制御される一方で、ガス状元素の相互の比率は、それらの相対的な分圧によって制御され、本質的に固体または液体の元素とガス状元素との総比率は、総フラックス密度と総ガス圧力との比率によって決定される。
【0014】
非凝縮ガス雰囲気での作業には、プロセス反応そのものとは関係ない、もう1つの大きな利点がある。ソースからレーザの入射窓までの距離が、ソースから基板までの距離よりも著しく大きく、ガス(酸素)の圧力を上限値(本質的に固体または液体の元素によって制限される反応の場合、完全反応または酸化)に保つことができる場合、入射窓へのコーティングを劇的に低減することができる
これは、非ガス状のソース原子または分子と反応ガスの原子または分子との散乱によるものである。ソースと基板との間に本質的に衝突がないように、且つソースとレーザ入射窓との間に衝突が多く生じるように距離と圧力を設定した場合、入射窓上に吸収層として通常堆積するソース原子は、直接視線方向の軌道をとる場合よりも入射窓に到達する確率がはるかに低くなり、散乱される。また、複数回の衝突により、反応ガスと反応してソース加熱レーザ波長に対して(酸化物では通常そうであるように)透明で非吸収性の化合物が形成される確率が高くなる。反応していないソース材料がレーザ入射窓に到達した場合でも、堆積後に酸化物と反応し、再び透明で本質的に非吸収性の層が形成される可能性がある。この効果は、遮蔽開口部を省略できるほど十分に大きく、堆積チャンバの複雑さとその動作が単純化される。
【0015】
1つまたは複数のソースは、基板に直接対向する1つまたは複数のソースの表面においてレーザ光で照射される。
【0016】
1つまたは複数のソースは、連続レーザ光で照射される。このようにして、ソースの材料の均一な蒸発および/または昇華を達成することができる。
【0017】
反応チャンバ圧力は、10-6hPa~101hPaの範囲、特に10-4hPa~101hPaの範囲、特に10-4hPa~10-2hPaの範囲で選択されてもよい。このようにして、一方では欠陥が可能な限り少ない超高純度層を形成し、他方では欠陥は多いが純度が要求されない、より低コストで堆積速度の早い単純なコーティングを形成することができる。
【0018】
なお、これに関連して、酸化物MBEは、通常、10-6hPaよりも低い圧力で実施されるので、本発明とは完全に異なる圧力領域で機能することに留意されたい。
【0019】
反応雰囲気を提供するステップは、プロセスチャンバを第1の圧力まで排気し、次に、プロセスガスを導入して反応チャンバ内の反応チャンバ圧力である第2の圧力を得るステップを含んでもよい。このようにして、化合物を形成するための反応チャンバへのレーザ光およびプロセスガスの導入の前に、基板を脱気することができる。このようにして、プロセスの前のチャンバのバックグラウンドガス圧力に含まれる有害な元素が非常に高い程度(数桁)まで排気され、これにより、堆積層やエピタキシャルテンプレート表面への混入が防止される。
【0020】
可能な限り欠陥のない高品質のコーティングを得るために、第1の圧力は、第2の圧力よりも低くなっていてもよい。
【0021】
第2の圧力は、10-11hPa~10-2hPaの範囲で選択されてもよい。このようにして、第2の圧力に応じて非ガス状成分とガス状成分の化学量論が異なる、所望の化合物の層を形成することができる。
【0022】
これに関連して、MBE用途や電子ビーム用途は、このような高圧、すなわち10-7hPaを上回る圧力では機能しなくなることに留意されたい。
【0023】
反応チャンバの少なくともシュラウドおよび/または反応チャンバの内壁の温度は、77K~500Kの範囲で選択された温度に制御されてもよい。
【0024】
このようにして、プロセスチャンバを200℃まで加熱することができ、室温ではチャンバ壁に凝縮するような材料の使用が可能になる。また、プロセスチャンバは、不要な不純物を凍結除去するために液体窒素で冷却されたシュラウドを有してもよい。この場合、プロセス条件は、(少なくともシュラウドの)プロセスチャンバ温度を77Kまで下げることを意味する。
【0025】
ソース材料は、反応雰囲気中で、すなわち反応チャンバ内に予め設定された温度および圧力および気体環境において固体材料または液体材料であってもよい。
【0026】
反応チャンバは、ガスの凝縮を回避するために高温に保たれてもよい。また、ガスは、レーザ入射窓へのコーティングを低減または回避するために使用されてもよい。
【0027】
プロセスガスは、酸素(O)、オゾン(O3)、プラズマ活性化酸素(O)、窒素(N)、プラズマ活性化窒素(N)、水素(H)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、リン(P)、硫黄(S)、セレン(Se)、水銀(Hg)、NH3、N2O、CH4、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0028】
このようにして、酸化物、窒化物、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン化物、硫化物、セレン化物、または水銀系化合物などの化合物を有益に作製することができる。
【0029】
ソース材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Hf、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Rh、Ta、W、Re、Ir、Ga、In、Si、Ge、Sn、Eu、Ce、Pd、Ag、Pt、Au、上記の合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。このようにして、多種多様な化合物を反応チャンバ内で形成することができる。
【0030】
ソース材料の原子および/または分子を昇華および/または蒸発させるためにレーザ光を1つまたは複数のソースに照射することができるレーザ光は、1mm2のスポットサイズおよび50mm~120mmの範囲で選択された1つまたは複数のソースと基板との間の距離に対して、1W~2000Wの範囲で選択された強度で1つまたは複数のソースに集光される。このようなレーザは、比較的低コストで市販されており、簡単で効率的に動作させることができる。
【0031】
レーザ出力とソース上の照射面積を同じ比率で増加させることで、反応条件を同じに保ったままプロセスを拡張することができることが判明した。例えば、4mm2の面積に2kWのレーザ放射を照射した場合、1mm2の面積に500Wのレーザ放射を照射したのと同じプロセス条件が得られる。同様に、最初のケースで発生した総フラックスが4倍大きいので、2倍離れた基板に同じ層の厚さを4倍の面積で堆積させることができ、同じ距離で堆積速度が4倍になる。ソースから基板に移動する際のソース材料の原子または分子とガス原子との衝突間の平均距離である平均自由行程が線形寸法と同じ係数であり、この実施例では2の係数でスケーリングする限り、上記のスケーリングに関する考察が適用される。
【0032】
したがって、所与のプロセス条件は、プロセスのスケーリングに依存しない出力密度を指定するように意図されており、これにより、意図された堆積領域によって必要とされるスケーリングが可能になる。
【0033】
同様に、堆積速度は、非常に低いレーザ出力での実質的にゼロから、所与の標準値を劇的に超える可能性のある値までスケーリングされることが判明している。この方法で可能な成長速度や出力密度の上限値はまだ決定されていない。
【0034】
このような電磁放射を受けるソースは、レーザ照射の位置で液面が露出し、溶融プールを形成する場合がある。これにより、原子や分子が蒸発する表面が滑らかで平坦なため、安定した均一な蒸発が可能になり、厚さ、組成、およびプロセス制御について秩序化した層特性を得ることができる。
【0035】
1つまたは複数のソースを照射するレーザ光は、100nm~20μmの範囲、特に450nm~1.2μmの範囲の波長を有する。元素の既知の材料特性により、理想的には200nm~400nmの範囲のレーザ波長が使用されるべきである。しかしながら、経済的な価格で十分な高出力のこの波長のレーザはまだ存在しない。その一方で、515nm付近や900nm~1100nmのレーザは、1kW当たり低コストで容易に入手することができる。このような波長は、1つまたは複数のソースの材料の所望の蒸発および/または昇華をもたらすことが判明している。
【0036】
一実施例によれば、ソース材料はTiであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にアナテーゼまたはルチルTiO2であってもよく、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.2kW/mm2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~180分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~30分の時間内で得られる700nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0037】
一実施例によれば、ソース材料はNiであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にNiOであってもよく、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.35kW/mm2の出力密度に対応する100W~350Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~50分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる500nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0038】
さらなる実施例によれば、ソース材料はCoであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にCo3O4であってもよく、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.2kW/mm2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~90分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる200nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0039】
一実施例によれば、ソース材料はFeであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にFe3O4であってもよく、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.2kW/mm2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~10μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる5μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0040】
一実施例によれば、ソース材料はCuであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にCuOであってもよく、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~30分の時間内で得られる0.15μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0041】
一実施例によれば、ソース材料はV1であってもよく、基板上に堆積される化合物は主にV2O3、VO2、またはV2O5のいずれかであってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.06kW/mm2~0.12kW/mm2の出力密度に対応する60W~120Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~60分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.3μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0042】
一実施例によれば、ソース材料はNbであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にNb2O5であってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~2μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0043】
一実施例によれば、ソース材料はCrであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にCr2O3であってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.02kW/mm2~0.08kW/mm2の出力密度に対応する20W~80Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる得る0.5μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0044】
一実施例によれば、ソース材料はRuであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にRuO2であってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲、特に0.2kW/mm2~0.6kW/mm2の出力密度に対応する200W~600Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~300分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.06μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0045】
一実施例によれば、ソース材料はZnであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にZnOであってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.005kW/mm2~0.010kW/mm2の出力密度に対応する5W~10Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0046】
一実施例によれば、ソース材料はMnであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にMnOであってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.005kW/mm2~0.010kW/mm2の出力密度に対応する5W~10Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0047】
一実施例によれば、ソース材料はScであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にSc2O3であってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.02kW/mm2~0.05kW/mm2の出力密度に対応する20W~50Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.3μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0048】
一実施例によれば、ソース材料はMoであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にMo4O11またはMoO3のいずれかであってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.4kW/mm2~0.8kW/mm2の出力密度に対応する400W~800Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~4μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる4.0μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0049】
一実施例によれば、ソース材料はZrであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にZrO2であってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.3kW/mm2~0.5kW/mm2の出力密度に対応する300W~500Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる0.2μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0050】
一実施例によれば、ソース材料はHfであってもよく、基板上に堆積される化合物は主にHfO2であってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.25kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する250W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~40分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる0.6μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0051】
一実施例によれば、ソース材料はAlであってもよく、基板上に堆積される化合物はアルミニウム酸化物であってもよく、主にAl2O3であってもよく、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0052】
Alの場合、成長様式4により、すなわち、10-5hPaを上回る高い酸素/オゾン分圧で、300W~500Wのレーザ出力でソース、ソースと基板との間の経路、ならびに基板において、プロセスガスがソース材料と反応することで、毎分1μm超の高い成長速度を達成することができる。
【0053】
元素金属としてのソース材料が非常に高い純度で得られるので、上記のようにして作製される層は、超高純度であるという特別な利点がある。これらは、基板を作製した後に、高温の超高純度真空環境で直接堆積され得る。これにより、エピタキシャル用の極めてクリーンで構造的に非常に完全なテンプレートが得られるので、界面における欠陥の密度が低くなり、その結果、層中の欠陥の密度も低くなる。エピタキシャル層は、低い成長速度で非常に正確な厚さで成長させることや、高い成長速度で大きな厚さで成長させることもできる。基板温度を変化させることで、高い基板温度および/または低い成長速度を用いて熱平衡に非常に近くで堆積することができ、付着係数が1未満であっても、熱平衡から非常に遠くても堆積することができる。上記の数値から明らかなように、ソースを交換して、特に同じレーザと光路を用いれば、わずかな操作パラメータの変更だけで、多くの異なる金属元素ソースから多くの異なる酸化物を合成することができる。
【0054】
単純または複雑な酸化物層は強誘電性、超伝導性、半導体性、金属伝導性、多強性、および磁性など、多くの興味深い特性をもつことができる。上記のような酸化物層を設けることで、特に量子ビットなどの量子コンポーネントとして、そのような特性をもつデバイスを実現することができる。
【0055】
レーザ光で1つまたは複数のソースを照射するステップは、1つまたは複数のソースの表面を溶融させてもよい。このようにして、ソース材料の原子または分子を、より容易にソースから放出することができる。
【0056】
なお、これに関連して、MBEでは、ソースは背後から加熱されるので、ソースの表面とその下の部分だけが溶融されるようにソースを加熱することはできない。これは、エネルギーを導入すると、ソース全体が溶けて破壊されてしまうからである。
【0057】
レーザ光で1つまたは複数のソースを照射するステップは、プロセスガスとの反応を促進させてもよい。1つまたは複数のソースにエネルギーを供給することで、ソース材料の原子または分子をより容易にソースから放出することができる。
【0058】
さらなる態様によれば、本発明は、基板上に、単層から10μmの範囲、特に単層から100nmの範囲で選択された厚さを有する化合物に関し、この化合物は、本明細書に記載の方法によって得ることができる。
【0059】
さらなる態様によれば、本発明は、基板上に、層として存在する化合物に関し、この層は、基板上で単層から100nmの範囲で選択された厚さを有し、化合物は、100μs超、好ましくは1000μs超、さらに好ましくは10ms超1000ms未満の量子ビット緩和時間と量子ビットコヒーレンス時間を有する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
以下、本発明の実施形態および添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【
図1】単一の真空チャンバを備える熱レーザエピタキシー用途のための反応チャンバを示す図である。
【
図2】第1および第2の反応容積を画定する第1および第2の真空チャンバを備える熱レーザエピタキシー用途のための反応チャンバを示す図である。
【
図3】複雑な単結晶固体の段差のある表面の断面図であり、黒色と白色はそれぞれ異なる原子または分子種を示す。
【
図4】基板の表面の段差の高さまたは表面化学的性質の不一致によるエピタキシー不良を示す図である。
【
図5】基板の表面のバルク周期性に対応する段差高さを有するレジストリにおけるエピタキシーを示す図である。
【
図8】「黒色」材料の分数的追加被覆としての表面再構成を模式的に示す図である
【
図9】表面再構成の2つの鏡面対称単位セルを示す図である。
【
図10】下層の結晶構造と完全に整列したテラスのあるシステムを示す図である。
【
図11】立方晶の面内結晶軸(図では水平軸および垂直軸)からわずかに離れた方向に向けられたミスカットを示す図である。
【
図12】面内結晶軸から45°ずれた方向のミスカットを示す図である。
【
図13】2つの可能な表面単位セルの配向のうちの1つを優先するように、表面ミスカットによる対称性の破れを使用した場合の図である。
【
図14】固体コンポーネントを作製する基本ステップを示す図である。
【
図15】バッファ層を追加する追加のステップを示す図である。
【
図16】2つの材料ソースを用いて薄膜を堆積するステップを示す図である。
【
図17】カバー層を追加する追加のステップを示す図である。
【
図18】量子デバイスの第1の実施例を示す図である。
【
図19】量子デバイスの第2の実施例を示す図である。
【
図20】Al
2O
3の√31×√31の表面再構成のRHEEDパターンを示す図であり、基板の主結晶軸に対して単一の回転配向を有する。基板は、1×10
-6hPaのO
2雰囲気中、1700℃で200秒間焼鈍され、この雰囲気で20℃まで急速に冷却された。基板の主結晶軸の1つにRHEEDビームを沿わせ、20℃で撮影した画像である。
【
図21】
図20と同じ試料を反時計回りに9°回転させた後のRHEEDパターンを示す図である。
【
図22】Al
2O
3の√31×√31の表面再構成のRHEEDパターンを示す図であり、基板の主結晶軸に対して両方向の回転配向を有する。基板は、0.75×10
-1hPaのO
2雰囲気中、1700℃で200秒間焼鈍され、この雰囲気で20℃まで急速に冷却された。基板の主結晶軸の1つにRHEEDビームを沿わせ、20℃で撮影した画像である。
【
図23】本発明の表面処理プロセスのAl
2O
3表面のAFM顕微鏡写真である。基板は、1×10
-6hPaのO
2雰囲気中、1700℃で200秒間焼鈍され、この雰囲気で20℃まで急速に冷却された。
【
図24】
図22の線に沿って抽出した高さプロファイルを示す図である。
【
図25】本発明の方法で作製されたAl
2O
3基板上に成長した厚さ50nm(画像中の参照バーの長さの40分の1)のTa薄膜のAFM顕微鏡写真である。基板を、堆積前に超高真空(圧力<10
-10hPa)中、1700℃で200秒間焼鈍した。Ta膜を、局所的に溶融したTa金属ソースから圧力<2×10
-10hPa、1200℃の基板温度で成長させた。
【
図26】本発明の方法で作製されたAl
2O
3基板上に成長した厚さ10nmのTa薄膜の上面からのSEM顕微鏡写真である。基板を、堆積前に超高真空(圧力<10
-10hPa)中、1700℃で200秒間焼鈍した。Ta膜を、圧力<2×10
-10hPa、1200℃の基板温度で成長させた。
【
図27】本発明の方法で作製されたAl
2O
3基板上に成長した厚さ50nmのTa薄膜のXRD回折パターンを示す図である。基板を、堆積前に超高真空(圧力<10
-10hPa)中、1700℃で200秒間焼鈍した。Ta膜を、圧力<2×10
-10hPa、1200℃の基板温度で成長させた。Ta膜のα-Ta(110)/(220)等価面のみが、基板のピークとともに、表面に垂直な方向に見える。これは、完全なエピタキシャル整列に対応するTa膜の単一の面外配向を確認することができる。
【
図28】TLEによって室温でエピタキシャル配向なしでSiテンプレート上に成長したNb膜を示す図である。堆積時間は40分であった。層の厚さは20nmであった。基板温度が低く、クリーンなエピタキシャルテンプレートがないので、多数の欠陥を含む無秩序な柱状膜構造が作製された。
【
図29】一定のレーザ出力および酸素-オゾンガス流を使用して、Tiのレーザ蒸発中に測定されたチャンバ圧力P
oxを示す図である。
【
図30】TLEによってSi(100)基板上に成長した(a)Ti酸化膜、(b)Fe酸化膜、(c)Hf酸化膜、(d)V酸化膜、(e)Ni酸化膜、および(f)Nb酸化膜の微小角入射X線回折パターンを示す図である。各酸化物の予想された回折ピーク位置は、各図において灰色の線で示されている。
【
図31】TLEによって堆積された複数の酸化膜の断面
図SEM画像である。各パネルはP
oxの値を示す。ほとんどの膜は柱状構造を有する。
【
図32】複数のP
ox値に対する(a)TLE堆積Ti酸化物および(b)TLE堆積Ni酸化膜の微小角入射X線回折パターンを示す図である。P
oxが増加するにつれて、Tiソースはルチル相およびアナテーゼ相のTiO
2膜を作製し、Niソースは、部分的に酸化されたNi/NiO膜を作製する。(a)の灰色の線と紫色の実線の星は、TiO
2ルチル相とアナテーゼ相の予想される回折ピーク位置をそれぞれ示す。(b)の灰色の線は、立方晶NiOの予想されるピーク位置を示す。
【
図33】複数のP
oxで測定した(a)Ti(酸化物)および(b)Ni(酸化物)の堆積速度を示す図である。Tiの堆積速度はP
oxの増加とともに増加する一方で、NiでP
ox>10
-3hPaの増加は蒸発プロセスをほとんど抑制している。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、第1の反応容積14を画定する単一の真空チャンバ12を備える熱レーザエピタキシー用途のための反応チャンバ10を示している。反応チャンバ10は、周囲雰囲気、すなわち、実験室、工場、またはクリーンルームなどに対して密閉され得る。真空チャンバ12は、10
1hPa~10
-12hPaの範囲の圧力に加圧することができ、当業者には知られている純粋に理想的な条件では、真空チャンバ12の外に向けられた矢印で模式的に示すように、真空チャンバ12から空気を抽出する適切な真空ポンプ18を使用して、10
-8hPa~10
-12hPaの範囲の圧力に加圧することができる。
【0062】
必要に応じて、プロセスガスGは、真空チャンバ12内に向けられた矢印に沿って、ガス供給部20から真空チャンバ12内に導入され得る。反応ガスとしても知られるプロセスガスGは、酸素、オゾン、プラズマ活性化酸素、窒素、プラズマ活性化窒素、水素、F、Cl、Br、I、P、S、Se、およびHgなどのガス、またはNH3、SF6、N2O、CH4などの化合物から選択され得る。プロセスガスGの圧力は、10-8hPaから周囲圧力の範囲で選択され、純粋に理想的な条件では、10-8hPa~1hPaの範囲で選択され得る。
【0063】
真空ポンプ18は、任意のガス供給部20とともに、反応チャンバ10内にそれぞれの反応雰囲気、すなわち、所定のガス雰囲気と任意に組み合わされた真空を提供する。
【0064】
反応チャンバは、基板24を配置することができる基板配置部22を備える。実際には、複数の基板配置部22を設けることができ、且つ/または1つまたは複数の基板配置部22上に複数の基板24を配置することができる。
【0065】
使用される基板24は、典型的には、単結晶ウエハであり得、ウエハの材料は、典型的には、SiC、AlN、GaN、Al2O3、MgO、NdGaO3、DyScO3、TbScO3、TiO2、(LaAlO3)0.3(Sr2TaAlO6)0.35(LSAT)、Ga2O3、およびSrTiO3からなる群から選択される。このような単結晶ウエハは、典型的には、固体コンポーネントの作製に使用され、量子ビットなどの量子コンポーネントの作製には興味深い候補である。
【0066】
単結晶ウエハの形態で存在し得る基板24のコーティングおよび前処理の間に、基板24は、基板加熱レーザ26を使用して加熱される。
【0067】
基板加熱レーザ26は、典型的には、赤外線領域における波長、具体的には1μm~20μm、特に約8μm~12μmの範囲で選択された波長で動作する赤外線レーザである。このような波長は、例えば、CO2レーザ26を介して利用可能である。
【0068】
基板加熱レーザ26は、典型的には、基板24の裏面50を介した間接加熱により、基板24の基板表面48、すなわち、基板24の表側を加熱する。これにより、基板表面48は、900℃~3000℃、特に1000℃~2000℃の範囲の温度に加熱され得る。これにより、基板加熱レーザ26の強度は、最も高い昇華速度を有する基板成分の昇華速度および昇華温度に依存して、様々な所望の温度を達成するために変化する。
【0069】
典型的には、基板加熱レーザ26の強度は、基板サイズが5×5mm2または10×10mm2の場合、4W~1kWの範囲で変化させることができる。必要な処理温度に到達するためには、10×10mm2のサファイア基板で2000℃に達するのに100W、10×10mm2のSrTiO3基板で1400℃に達するのに500Wが必要である。必要な温度は、大きく異なる。プランクの法則によれば、面積当たりの放射電力は、材料の特性である材料のエミッタンスに依存し、T4として温度に依存する。これは、必要な電力が温度とともに劇的に増加することを意味する。
【0070】
本発明によるエピタキシャルテンプレートの作製に必要な温度範囲に対応するために、基板上の必要な最大出力密度は1kW/cm2であり、例えば、2000℃のサファイアでは約100W/cm2など、かなり小さい値であることがわかる。
【0071】
温度に対するT4の劇的な依存性により、基板加熱レーザは、同時に、基板作製のために低温を必要とする材料、特に低温での基板テンプレート上のエピタキシャル層の堆積のために、安定した低出力レベルを維持する能力を有する高いダイナミックレンジを必要とする。
【0072】
また、基板24は、前面、側面、または別の方向から加熱されてもよいことに留意されたい。加熱手段に応じて、基板成分の1つ、すなわち、基板を形成する元素の1つが、加熱ステップ中に基板表面48に沿って移動することができ、所望のエピタキシャルテンプレート60を生成するために基板表面48から脱離または昇華することができるように、基板表面48の温度が900℃~3000℃の範囲内で加熱され得ることが単に保証されるべきである(以下、例えば、
図5~
図7を参照)。
【0073】
基板表面48の温度は、パイロメータなど(図示せず)を使用して測定され得る。
【0074】
両方向の矢印28で示すように、基板配置部22は、適切な装置(図示せず)を使用して真空チャンバ12に対して出し入れされ得る。
【0075】
基板24を薄膜62の1つまたは複数の層でコーティングするために(添付の
図14~
図20参照)、反応チャンバ10は、ソース配置部34に配置された第1のソース要素30および第2のソース要素32をさらに備える。これらのソース要素30および32は、単一のソース要素30の別個のコンポーネント部分として設けられ得る。
【0076】
なお、これに関連して、それぞれのソース30および32は、薄膜62の堆積のために使用されるそれぞれの真空チャンバ12内で選択された温度および圧力において固体であれば、周期表の任意の元素から選択され得ることに留意されたい。
【0077】
また、これに関連して、元素が薄膜62として二元酸化物を堆積させるために約10%の反応雰囲気として酸素/オゾン混合物中で堆積される場合、それぞれのソース30および32のための好ましい材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Hf、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Rh、Ta、W、Re、Ir、Ga、In、Si、Ge、Sn、Eu、Ce、Pd、Ag、Pt、およびAuであることに留意されたい。単結晶薄膜62を堆積させるために、典型的には真空雰囲気が使用される。
【0078】
第1のソース要素30および第2のソース要素32にそれぞれ向けられた第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38も提供される。第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38によって、第1のソース要素30および第2のソース要素32において異なる蒸発および/または昇華温度が利用可能になる。
【0079】
第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38によって、典型的には、第1のソース要素30および第2のソース要素32において、280nm~20μmの範囲で選択された波長のレーザ光が利用可能になる。金属ソースの場合、短い波長で金属の吸収率が増加するので、ソース加熱レーザ36および38によって、350nm~800nmの範囲で選択された波長範囲の光が利用可能になることが好ましい。515nmを下回る短い波長の高出力レーザはまだ商業的に利用可能ではないが、低出力測定に従って300nmで最も高い吸収率が予想される。この波長のレーザが利用可能になれば、ソース加熱レーザの好ましい波長は300nm±20nmとなる。
【0080】
さらに、これに関連して、レーザ26、36、および38は、パルスモードで動作することができるが、連続放射ソースとして使用されることが好ましいことに留意されたい。連続レーザ26、36、および38は、単位時間当たりの導入エネルギーが、ソース30および32を損傷させる可能性があるパルスソースよりも少ない。
【0081】
第1のソース要素30および第2のソース要素32から元素を昇華および/または蒸発させ、これらが基板24のコーティングのために基板表面48にそれらが到達するようにするために、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38の適切な強度を選択する必要がある。この強度は、基板表面48からの第1のソース要素30および第2のソース要素32の距離に依存する。基板表面における所与のフラックス密度に対して、第1のソース要素30および第2のソース要素32が基板表面48から離れるおよび/または基板表面48に向けて移動するにつれて、強度は増加および/または減少する。
【0082】
本実施例において、基板表面48は、それぞれの第1のソース要素30および第2のソース要素32から60mm離れて配置される。レーザの強度は、第1のソース要素30および第2のソース要素32と基板表面48との間の距離の2乗にほぼ相関する。したがって、第1のソース要素30および第2のソース要素32と基板表面48との間の距離を2倍増加させるためには、レーザの強度を約4倍増加させる必要がある。
【0083】
したがって、以下に指定する強度は、第1のソース要素30および第2のソース要素32と基板表面48との間の距離が60mmの場合である。より大きな距離が選択された場合、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のそれぞれの強度を増加させる必要があり、距離が減少された場合はその逆となる。
【0084】
一般に、基板加熱レーザ26、第1のソース加熱レーザ36、および第2のソース加熱レーザ38によって、レーザ光が利用可能になり、特に10nm~100μmの範囲の波長を有するレーザ光、好ましくは可視または赤外線範囲で選択された波長を有するレーザ光、特に280nm~1.2μmの範囲の波長を有するレーザ光が利用可能になる。これらのレーザ26、36、および38によって、第1の電磁放射、および/または第2の電磁放射、および/または第3の電磁放射、および/または他のタイプの電磁放射が利用可能になる。
【0085】
第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38は、第1のソース要素30および第2のソース要素32を第1の材料および/または第2の材料のプラズマ閾値を下回る温度まで加熱することで、第1のソース要素30および第2のソース要素32から第1の材料および第2の材料を蒸発および/または昇華させるために設けられる。
【0086】
昇華および/または蒸発したソース材料がチャンバの入射窓52に堆積するのを防止する遮蔽部として機能する遮蔽開口部40が、真空チャンバ12に模式的に示されている。このような材料の層が窓52上に堆積した場合、それぞれのレーザ26、36、および38は、窓上に吸収されたその材料を補償するために、時間の経過とともに適合される必要がある。
【0087】
また、遮蔽開口部40は、レーザ26、36、および38のうちの1つの反射レーザ光が、それぞれのレーザ26、36、および38を破壊する可能性のあるレーザ26、36、および38のうちの1つに再び集光されるのを防止するための遮蔽部として機能することができる。
【0088】
また、遮蔽開口部40は、それぞれのレーザ26、36、および38の1つまたは複数のビーム成形システムの一部を形成することができる。したがって、これは、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38からのそれぞれの電磁放射を反応チャンバ10に結合し、且つ第1のソース要素30および第2のソース要素32に結合するための結合手段として使用され得る。
【0089】
一般に、さらなる結合手段として、それぞれのレーザ光を反応チャンバ10に結合するために、レーザ26、36、および38の各々と反応チャンバ10との間に窓52がそれぞれ配置される。
【0090】
これは、結合手段が、レーザ26、36、および38のうちの1つからの光を反応チャンバに、すなわち、基板24上および第1のソース要素30および第2のソース要素32のうちの1つまたは複数の上に、その意図された用途のために結合されるように使用され得る、任意の種類の光学要素またはレーザ光ビーム成形要素を備えることができることを意味する。
【0091】
なお、これに関連して、反応チャンバ10は、単一のソース要素30、または2つ以上のソース要素30および32を備えてもよく、さらなるソース要素によって、反応チャンバ10内の1つまたは複数の基板24上に堆積させることができる同じ種類または別の種類のさらなる材料が利用可能になることに留意されたい。
【0092】
また、これに関連して、2つ以上のソース要素30および32が真空チャンバ12内で利用可能である場合、それぞれのソース要素30および32の材料を含む薄膜62の昇華および/または蒸発のために、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のうちの1つからのレーザ光は、一方のソース要素30および32に向けられるが、他方のソース要素32および30には向けられないことに留意されたい。
【0093】
このプロセスは、基板24上に複数の異なる層および多層、ならびに合金または複合構造を形成するために、真空チャンバ12内に設けられた各ソース要素に対して繰り返され得る。
【0094】
同様に、複数のソース要素30および32からソース材料を同時に昇華および/または蒸発させて、基板24の表面48上に化合物を堆積させるための薄膜62を基板24の表面48上に堆積させるために、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のうちの1つからのレーザ光、ならびに第3のソース加熱レーザが、ソース要素30および32の両方、ならびに提供される場合にはさらなるソース要素に向けられ得る。
【0095】
したがって、薄膜62または基板24上に堆積した層の材料は、蒸発および/または昇華した材料と反応雰囲気の成分との反応生成物であり、すなわち、プロセスガスGと反応した化合物が提供された場合、または昇華および/または蒸発が真空中で実施された場合、単一の材料の薄膜62である。
【0096】
後述するように、真空チャンバ12内にいくつのソース要素30および32が設けられ、所与の時間でレーザ光が照射されるにもかかわらず、プロセスガスは、真空チャンバ内に導入され、蒸発および/または昇華したソース材料とプロセスガスとの反応をもたらして、酸化物など、ソース材料とプロセスガスとの化合物から形成される薄膜を生成することができる。
【0097】
さらに、蒸発および/または昇華に使用される第1のソース要素30および/または第2のソース要素32の材料は、自己支持が可能であり、これにより、坩堝を有さないように提供され得ることに留意されたい。例えば、坩堝が関連しないTaソース要素30および32が提供され得る。
【0098】
図2は、第1の反応容積14および第2の反応容積16を画定する2つの真空チャンバ12を備える2つの種類の反応チャンバ10を示している。第1および第2の反応容積は、ゲートバルブ44を介して互いに分離されている。
【0099】
このような反応チャンバ10は、異なる反応雰囲気中で膜を形成する必要がある多層膜の形成(
図14~
図19参照)において、または生産ラインの一部として、基板24を異なる反応チャンバ内でバッチ的に異なる膜でコーティングする場合に、有益に選択されてもよい。
【0100】
このようにして、反応チャンバ10は、少なくとも2つの分離された反応容積14および16を備える。ここで、少なくとも2つの反応容積14および16は、例えば、ゲートバルブ44を介して、互いに対して密閉可能であり、基板配置部は、周囲雰囲気に対して連続的に密閉された反応チャンバ10内で少なくとも2つの反応容積14および16間を移動することができる。
【0101】
なお、これに関連して、第1の反応雰囲気および第2の反応雰囲気、ならびに提供される場合には第3またはそれ以上の反応雰囲気は、同一あってもよいことに留意されたい。
【0102】
代替的に、第1の反応雰囲気と第2の反応雰囲気および/または第3の反応雰囲気とは異なっており、異なる反応容積14および16の間で交換されるか、第1の容積14および/または反応容積16内で交換され、且つ/または第2の反応雰囲気と第3の反応雰囲気とは異なっており、異なる反応容積14および16の間で交換されるか、第1の容積14および/または反応容積16内で交換される。
【0103】
さらに、これに関連して、第1の反応雰囲気および/または第2の反応雰囲気、および/または第3またはそれ以上の反応雰囲気は、少なくとも部分的にイオン化または励起され、特にプラズマイオン化および/または励起によってイオン化される。励起は、原子または分子内の1つまたは複数の電子がエネルギー的により高いレベルに遷移することを表す。このような高いレベルからの緩和は、蒸発した原子または分子と、活性化またはイオン化した反応ガスとの間の化学反応を可能にするかそれを改善するための追加のエネルギーを提供することができる。
【0104】
基板表面48の作製のため、1つまたは複数の薄膜の堆積のため、および終端の焼戻しおよび/または冷却のために、それぞれ異なる反応雰囲気であることが適している場合がある。したがって、異なる反応容積14および16が利用可能であることは、さらなる利点となり得る。
【0105】
なお、これに関連して、1つまたは複数の薄膜62を備える固体デバイス、特に量子デバイス、好ましくは量子ビットが作製され、1つまたは複数の薄膜62が第1の材料を含み、各膜62が単層から100nmの範囲で選択された厚さを有し、基板の前面上に堆積される場合、製造プロセスは、
図1または
図2に示す反応チャンバ10内で実施され得ることに留意されたい。次に、反応チャンバ10は、周囲雰囲気に対して密閉されて、制御された真空が発生し、任意選択でプロセスガスGにおいて利用可能なガス反応雰囲気と一緒にされる。
【0106】
このような方法は、以下のステップを含む。
(a)反応チャンバ10が第1の反応雰囲気を含む間、例えば、真空を含む間、場合によっては酸素などのプロセスガス20と組み合わせて含む間に、反応チャンバ10に結合された第1の電磁放射で基板24を加熱することで、基板24の前面48を作製するステップ。これに関連して、第1の電磁放射は、基板加熱レーザ26によって利用可能となる。
(b)ステップ(a)で作製された前面48上に第1の材料および/または第1の材料を含む化合物を含む薄膜62を堆積させるために、反応チャンバ10が第2の反応雰囲気を含む間、例えば、真空、または部分真空および所定のガス雰囲気を含む間に、例えば、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のうちの1つを使用して、反応チャンバ10に結合された第2の電磁放射で第1の材料を含むソース要素30および32を加熱することで、第1の材料を蒸発および/または昇華させるステップ。
(c)任意選択で、固体デバイスを形成するため、および固体デバイスの焼戻しおよび/または制御された冷却のために、反応チャンバ10が第3の反応雰囲気を含む間に、反応チャンバ10に結合された第3の電磁放射で1つまたは複数の薄膜62および/または基板24を照射するステップ。
【0107】
ここで、ステップ(a)~(c)の間、反応チャンバ10は周囲雰囲気に対して密閉されたままであり、基板と後続の固体デバイスの両方は反応チャンバ10内に連続的に留まる。
【0108】
なお、これに関連して、基板24の前面48を作製する方法は、以下の教示に従って利用可能となることに留意されたい。しかしながら、基板24上のあまり純度の高くない層構造についても、従来の洗浄および精製ステップが実施できることにも留意されたい。
【0109】
ここで、エピタキシャルテンプレート60として単結晶ウエハ24の表面48を作製する具体的な方法を説明する。表面48は、表面原子および/または表面分子を含み、単結晶ウエハ24は、基板成分として2つ以上の元素および/または2つ以上の分子を含む単結晶を含み、元素および分子の各々は、昇華速度を有する。該方法は、
・ 単結晶ウエハ基板24に、所定のミスカット角および方向を提供するステップと、
・ 表面原子および/または表面分子が表面48に沿って移動して、最小の段差密度と、所定のミスカット角およびミスカット方向に従って配向された段差エッジとを有する配置部を形成することができる温度まで基板24を加熱するステップと、
・ 昇華速度が最も高い基板成分の原子または分子が表面から離脱(昇華、脱離)する温度まで基板24を加熱するステップと、
を含む。
【0110】
任意選択で、基板24の表面48は、同じ種の連続的なフラックスで照射され、表面から離脱する原子または分子と表面に到達する原子または分子との間の所定のフラックス平衡を得ることができる(化学ポテンシャル)。このステップにより、通常、エネルギー的に等価な面内配向を有する場合がある表面再構成が得られる。
【0111】
これにより、異なる面内配向のうちの1つだけを形成するように基板表面48が強制する段差の向きによって、表面48に予め配置された原子および/または分子の対称性の破れを引き起こすことができる。
【0112】
基板24の結晶配向に対して定義された配向を有する結晶層(エピタキシャル層)は、表面が、表面再構成において異なる配向を有する場合、異なる面内配向で成長する可能性がある。これは、エピタキシャル層における欠陥に繋がる。本明細書に記載の基板を作製する方法を使用する場合、この方法を使用して再構成された表面24の単一の配向を提供することによって、これを回避することができる。
【0113】
なお、これに関連して、所与の温度における2つ以上の元素および/または2つ以上の分子の昇華速度は、通常、互いに異なることに留意されたい。
【0114】
単結晶ウエハ24を加熱するステップは、2つの加熱要素、すなわち、単結晶ウエハ24を処理対象の表面48から離間した表面で加熱する第1の加熱要素と、高温蒸発ソース32および34によって生成された熱黒体放射を処理対象の表面48に照射することで加熱する第2の加熱要素とを含む。
【0115】
フラックスは、表面48に圧力を導入し、表面からの脱離フラックスと競合することで、表面におけるフラックス種の化学ポテンシャルを定義する平衡を確立する。
【0116】
基板表面を加熱し、揮発性成分の平衡フラックスを照射することで、いくつかのプロセスが活性化する。
【0117】
最初のものは、
図3に関して
図6および
図7を参照すると、表面構造の繰り返し周期を定義する特定の終端(「黒色」と「白色」で模式的に示す)を定義することである。したがって、ミスカット面に最も近い結晶面に垂直な段差高さが定義される。
【0118】
2つ目のものは、ステップ構造に関してエネルギーが最も低い表面が採用されるような、表面に沿った原子の動員である。これにより、最初のステップの段差高さとミスカット角によって与えられるステップの数が最も少なくなる。
【0119】
3つ目のものは、揮発性フラックスの設定によって制御されるように、主に基板温度および揮発性フラックスの化学ポテンシャルによって決定される表面再構成の形成である。
【0120】
4つ目のものは、
図13に模式的に示すように、ミスカット方向の選択による、表面単位セルのエネルギー的に等価な異なる配向の選択である。
【0121】
例えば、サファイア基板24のための酸素などの材料のフラックスは、表面48における欠陥を埋め、表面48から離脱する原子と表面48に加わる原子との間の平衡を得るために原子の余剰を提供するのを助ける。これは、フラックスによって及ぼされる圧力、すなわち、基板上に作用する酸素の量を適応することで変化させることができる。
【0122】
なお、例えば、昇華温度は典型的には950℃を超え、サファイアの場合は約1700℃、SrTiO3の場合は約1300℃であることに留意されたい。
【0123】
単結晶ウエハ24を形成する結晶の2つ以上の元素および/または2つ以上の分子は、Si、C、Ge、As、Al、O、N、O、Mg、Nd、Ga、Ti、La、Sr、Ta、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、単結晶ウエハ24は、SiC、AlN、GaN、Al2O3、MgO、NdGaO3、TiO2、(LaAlO3)0.3(Sr2TaAlO6)0.35(LSAT)、Ga2O3、SrLaAlO4、Y:ZrO2(YSZ)、およびSrTiO3の化合物のうちの1つから作製され得る。
【0124】
加熱のステップは、基板加熱レーザ26によって、任意選択で、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のうちの1つと組み合わせて実施される。ただし、最も昇華速度が高く、基板に向けて連続的に供給されるべき単結晶ウエハ24の材料を含む場合に限る。
【0125】
脱離フラックスと補償安定化フラックスとの間の平衡が望ましくない場合、基板24の作製中の加熱のステップは、典型的には、10-8hPa~10-12hPaの範囲で選択された真空雰囲気中で実施される。
【0126】
安定化フラックスを用いることで、基板24の作製中の加熱のステップは、典型的には、10-6hPa~103hPaの範囲で選択された真空雰囲気中で実施される。
【0127】
これにより、例えば、
図5~
図8に模式的に示すように、エピタキシャルテンプレート60を形成することができる。
【0128】
一般に、基板24は、その上に成長/堆積される層構造と一致するように選択される。一般に、基板24は、その上に成長される薄膜62と同じものが使用されるか、格子対称性、格子定数、表面再構成、および表面終端のうちの1つまたは複数、あるいはすべてにおいて、薄膜62から最大10%逸脱するものが使用される。
【0129】
これを促進するために、薄膜62をその上に堆積する前に、表面48上にバッファ層を堆積することが必要あるいは有益であり得る。
【0130】
本発明は、表面48の垂直方向および面内方向において均一な原子配列が有利である、後続のエピタキシーまたはその他の用途のための本質的に単結晶のテンプレートを提供するという問題に対する解決策を提示している。
【0131】
図3は、少なくとも2つの元素または式単位からなる結晶24を切断した模式図であり、結晶を切断した表面48が2つ以上の元素または式単位からなるテラス58の交互配列を露出するように配向させた状態で切断されている。図を明確にするために、
図3には、白と黒で示された2つの元素または式単位だけが示されている。表面処理の場合、結晶24は、原子または分子が表面48から離脱するか、表面48に付着することができるような十分に高温に供されて、結晶24内の式単位に対応する原子または分子の両方のフラックスは、結晶24とフラックスとが互いに平衡状態であるように利用可能である。
図3に示すように、表面24は、通常、異なる表面組成を有するテラス58を交互に露出させ、結晶24内の最も小さい安定段差サイズ(式単位)に対応する段差高さを有する。
【0132】
図4は、
図3に示す基板24の表面48上に堆積されたエピタキシャル層60および薄膜62、ならびに段差高さの不一致または表面の化学的性質に起因する欠陥エピタキシーを示している。
【0133】
図に示す典型的なケースでは、テラス58の構造の段差高さは、エピタキシャル層60の格子定数と一致しない。これにより、段差エッジ66に積層オフセットが形成され、エピタキシャル層60の単位セルが互いに対してずらされる。図を明確にするために、
図4では、このずれは、段差高さによるものだけである。また、後続のテラス上の表面化学的性質が交互に変化し(「白色」対「黒色」)、両方のテラス上の基板とエピタキシャル層との間の界面構造が異なることに起因する場合もある。通常、このような化学的不一致は、界面に幾何学的なオフセットを生じさせ、さらに、局所的な電荷や構造欠陥などの有害な影響をもたらす。その代わりに、本出願人は、エピタキシャル層62、すなわち薄膜62および基板24の格子定数が一致し、エピタキシャル層62、すなわち薄膜62が常に1つの同じ露出表面層に成長する、
図5に示す界面構造の実現を目指した。また、この一致は、界面に垂直な方向に適用されるだけでなく、表面48は、結晶構造の単一の面内配向を露出させ、表面の垂直方向の周りに回転した、あるいは表面または露出したテラスに平行でない面で鏡面化された異なる領域の形成を回避する必要がある。
【0134】
本明細書に記載の作製方法を使用することで、すべてのテラス58の表面において均一な表面化学的性質および(通常、再構築された)表面原子配列の単一の面内配向の両方を提供するエピタキシャルテンプレート60としての表面48を作製することができる。
図3に示す状況は、ほとんどの結晶固体において、その成分(元素または分子)の蒸気圧がしばしば強く異なるという点で、ある程度理想化されている。したがって、特に、基板24の作製中に原子または分子のフラックスが表面48に作用することがなければ、基板24が十分に高い温度に加熱された場合、特定の種が表面48から優先的に離脱する。
【0135】
したがって、
図6および
図7に示す状況は、選択的に発生するので、通常、いずれか一方の状況しか実際には実現できない。ここでは、この2つの図は、表面処理で原理的に可能な2つの極端な状況を示している。作用している気相における一方の成分に対する他方の相対的な過圧に依存して、表面48は、「白色」(
図6)または「黒色」(
図7)のいずれか一方のタイプのテラスが他方のタイプを犠牲にして成長し、最終的に表面全体を覆うような状態で作製され得る。
【0136】
実際には、このような化学的平衡は、典型的に1つの元素または式単位がほぼ完全に優勢になるには、異なる成分間の圧力差が何桁も必要であるため、揮発性の低い元素または式単位が表面48を覆うことによってのみ、完全な被覆を達成することができる。注目すべきことに、この2つの間の固有の揮発性の差も、通常、それ自体で数桁に相当する。
【0137】
したがって、この作製方法は、少なくとも結晶の最も揮発性の高い成分が表面48から昇華する温度まで基板結晶24を加熱するステップを含む。結晶24の異なる不要な化合物への分解を回避するために、より高い温度で揮発性種のフラックスを表面48に照射する必要がある場合もある。十分に高い温度を使用して
・ 表面48が、少なくとも揮発性種の原子をその周囲と交換することができるように、且つ
・ 表面48に沿った原子の移動度が、高度に秩序化した最小エネルギーテラスを形成するのに十分に高くなるように
することで、均一な表面化学的性質を有する所望の2段表面構造が形成される。
【0138】
実際には、表面48は、バルク終端表面層の間で切り替わるのではなく、表面再構成を形成する。ここで、表面原子は、バルクとは異なる位置に再配列し、多くの場合、表面エネルギーが最小限に抑えられるように、化学量論さえも異なる。これは
図8に示されている。ここでは、追加的な「黒色」を含む上記のような表面再構成は、より厚い黒色層で示されている。
【0139】
作用する種の圧力と表面温度に応じて、所与の終端ではしばしば異なる表面再構成が可能になり、例えば、サファイアでは、少なくとも2つの異なるAlリッチ表面再構成が存在する。
【0140】
表面再構成は、通常、下層のバルク結晶の複数の単位セルにまたがる表面スーパーセルの形成に関連する。
図7には、任意の例として、2つのバルク単位セルを覆い、2つの等価な鏡面対称の表面単位セルを有する表面単位セルが示されている。どちらの場合も、2つの表面単位セルが示されている。実際には、表面単位セルは、表面48に沿って両方向に周期的に繰り返され、テラス58全体を覆う。本実施例において、表面単位セルの両方の配向が同じエネルギーを有しており、そのため、広い領域にわたって、平均して表面48の半分がそれぞれの配向で覆われるように、互いに独立して等しい確率で核形成される。
【0141】
これは、領域が接する境界での欠陥に繋がるので、望ましくない構成である。エピタキシャル成長のためのテンプレートとして使用される場合、このような異なる表面再構成の領域は、その上に成長するエピタキシャル膜62の異なる配向を引き起こす可能性もあり、これにより、面内表面再構成領域の境界が、異なる配向の結晶子間の3次元平面領域の境界としてエピタキシャル膜62に転写される。この問題は、表面48の対称性を破り、エネルギー的に不等価にすることで、一方の表面単位セルの配向を他方より有利にすることで解決される場合がある。
【0142】
図9は、表面再構成の2つの鏡面対称の単位セルを示している。これは、例えば、サファイア単結晶ウエハ24の場合であり、ミスカットによって2つの異なる配向を有する表面が作製される。これは、
図4に示すような状況をもたらす。
【0143】
本発明に従ってこれを達成するために提案された方法は、表面のミスカットの配向と傾斜である。バルク単結晶から基板ディスク(「ウエハ」24)を切断するとき、切断面は、結晶面からわずかに離れる方向に向けられる場合がある。この粘性ミスカットの角度に応じて、作製された表面48は、切断方向に依存するテラス幅およびテラス配向を有するので、任意に制御され得る。立方晶の面内結晶構造の一例として、3つの異なる結果のテラス構造が
図11~
図13に模式的に示されている。
【0144】
図10は、基板表面48のテラスのあるシステム58が、下層の結晶構造と完全に整列した状態を示している。図に示す実施例において、この段差の配向は、どちらも表面の段差と同じ角度をなすため、
図9の表面単位セルの2つの可能な面内配向のうちの1つを支持するものではない。
【0145】
図11は、面内結晶軸から垂直方向にわずかに離れた面内配向を示している。大きな正方形のエッジは、バルク立方晶の面を示している。最後に、
図12は、面内結晶軸から45°の方向に配向したテラストレインを示している。
【0146】
このミスカットは、システムの対称性を破る他の方法と同様に、
図13に示すように、2つの異なる表面単位セルのうちの一方を有利にするために使用されてもよい。この模式図では、等価な表面再構成単位セルの1つに平行な段差配向で面内テラスシステムが作製されており、これは、本実施例において、表面再構成単位セルと段差エッジとの位置関係、すなわち上側の配向が有利になり、下側の交差した配向は抑制される。
【0147】
ミスカット角の方位角成分に対応する段差エッジの面内配向が表面単位セルの配向のうちの一方を選択させる一方で、ミスカット角の絶対値、すなわちその極性成分も、単一の配向構造を安定化させる上で重要である。高温では、エントロピーがあらゆるシステムに統計的無秩序をもたらす。この場合、面内表面単位セルの配向がエッジで確立され、その後、単位セルから単位セルへと伝播するので、各テラス上の特定の平均距離で再び反対配向の単位セルを有する欠陥が生じる可能性がある。ミスカット角の絶対値が十分に高い場合(例えば、0.05°)、一方の配向を他方の配向に転写する安定化ステップが非常に短い距離で発生するので、このようなずれ、ひいては欠陥密度の増加を回避することができる。
【0148】
図14は、固体コンポーネント100を作製するための方法における3つの基本的なステップA、B、およびCを示している。これらのステップは、反応チャンバ10内で実施される(
図1参照)。特に、反応チャンバ10は、製造プロセス全体にわたって周囲雰囲気に対して密閉されたままである。これにより、形成された固体コンポーネント100における欠陥の数の低減に関して各ステップの利点を維持することができ、その結果、量子ビットの緩和時間および量子ビットのコヒーレンス時間が100μs超、好ましくは1000μs超、さらに好ましくは10msとなる。
【0149】
図14の左側に「A」で示される該方法の第1のステップ(a)において、基板24は、例えば本明細書に記載されるように、または単に当該技術分野で知られているように、ガス雰囲気中で作製される。第1の反応雰囲気116は、反応チャンバ10内に充填される。特に、基板24は、第1の電磁放射104によって加熱される。好ましくは、この第1の電磁放射104は、基板加熱レーザ26によって提供される(
図1、
図2参照)。好ましくは、基板表面48とは反対側の裏面50から基板を加熱することで、焼鈍効果を引き起こすことができる。
【0150】
また、第1の反応雰囲気116は、基板表面48の組成も維持されるように選択され得る。すなわち、適切な反応ガスまたはプロセスガスGを使用することができ、例えば、酸素欠乏および酸素空孔の形成を回避するために、Al2O3の場合には酸素を使用することができる。さらに、終端材料Tのフラックスも基板表面48上に向けることができる。好ましくは、終端材料Tは、特に基板24の材料の元素を含み、特にその元素から構成される。これにより、終端材料Tは、原子または分子の欠落によって生じる基板表面48の欠陥を埋めることができ、且つ/または基板表面48に圧力を与えることができる。これにより、基板表面48から原子または分子が蒸発するのを防止することができる。
【0151】
好ましくは、全体的な結果として、ステップ(a)の後に、基板表面48は、基板24の格子構造に関する欠陥がないか、少なくとも欠陥の数が低減しており、さらに、表面再構成および表面終端に関する欠陥も大幅に減少させることができ、好ましくはゼロまで減少させることができる。
【0152】
図14の中央に「B」で示されるステップ(b)において、第1の材料126を含む1つまたは複数の薄膜62がステップ(a)で先に作製された基板表面48上に堆積される。上述したように、ステップ(a)とステップ(b)との間、反応チャンバ10は周囲雰囲気に対して密閉されたままである。
【0153】
これに関連して、本明細書に記載の薄膜62は、単層から100nmの範囲の厚さを有する、閉じた膜と同種の原子または分子の層、または式単位であることに留意されたい。
【0154】
図14の「B」に示すように、第1の材料126は、ソース配置部34によって反応チャンバ10内に第1のソース30、すなわちソース要素として提供される。第1のソース30は、第1の材料126の蒸発および/または昇華のために、好ましくは第1のソース加熱レーザ36(
図1、
図2参照)によって提供される適切な第2の電磁放射106によって加熱される。第2の電磁放射106を使用することで、蒸発および/または昇華プロセスのために、薄膜62の不純物、ひいては欠陥の源となるような追加の成分は、反応チャンバ10内で必要とされない。
【0155】
堆積プロセス中に、反応チャンバ10は、第2の反応雰囲気118で満たされ得る。第1の材料126を含む高純度の薄膜62に好ましく使用されるような高真空に加えて、適切なプロセスガスGも第2の反応雰囲気118として使用することができる。これにより、蒸発および/または昇華した第1の材料126(
図14の「B」において矢印126として示す)は、第2の反応雰囲気118と反応することができ、第1の材料126と第2の反応雰囲気118のプロセスガスGの材料とを含むそれぞれの反応生成物は、基板表面48上に堆積される。例えば、第1の材料126は、金属であり得、プロセスガスは、酸素であり得、その結果、金属の酸化物が薄膜62として堆積される。
【0156】
要約すると、ステップ(b)の後に、1つまたは複数の薄膜62が基板表面48上に堆積される。第2の電磁放射106を使用することで、広範囲の第1の材料126を使用することができ、これにより、適切な第2の反応雰囲気118を選択して、1つまたは複数の薄膜62の材料の可能な組成の範囲をさらに拡大することができる。さらに、第1の材料126の特に純粋な蒸発および/または昇華を確保することができる。したがって、好ましくは、1つまたは複数の薄膜62は、欠陥のない基板表面48上にも構築され、また、基板に起因する欠陥もないか、少なくとも低減されている。
【0157】
図14の左側に「C」で示される該方法のステップ(c)において、第3の電磁放射108は、基板24および1つまたは複数の薄膜62を照射するために使用される。これにより、最終的に固体コンポーネント100が形成される。特に図に示す実施形態において、第3の電磁放射108は、基板24の裏面50に熱を加え、これにより、1つまたは複数の薄膜62に熱を間接的に加えることができる。
【0158】
第3の電磁放射108は、2つの目的を果たすことができる。まず、加えられた熱は、固体コンポーネント100を焼戻しするために使用され得る。これにより、既に低くなっている固体コンポーネント100の欠陥の数をさらに低減させることができる。
【0159】
次に、第3の電磁放射108の強度を適切に変化させる、特に減少させることで、固体コンポーネント100に制御された冷却を提供することができる。これにより、基板24および1つまたは複数の薄膜62の異なる熱膨張によって引き起こされる欠陥を回避することができる。
【0160】
この焼戻しおよび制御された冷却は、反応チャンバ10を適切な第3の反応雰囲気120で満たすことで対応することができる。
【0161】
要約すると、
図14に示す非常に基本的なバージョンで示す方法を用いて作製された固体コンポーネント100は、欠陥がないか、少なくとも欠陥の数が極めて少なく、これにより、理想的には100μs超、好ましくは1000μs超、より好ましくは10ms超の量子ビット緩和時間と量子ビットコヒーレンス時間を達成することができる。これにより、このような固体コンポーネント100は、量子コンポーネント102(
図18、
図19参照)、特に量子ビットの基礎として使用するのに見事に適している。
【0162】
図15は、
図14に示す方法のステップ(a)において任意選択で実施されるサブステップを示している。バッファ材料132は、第4の電磁放射110によって蒸発および/または昇華され、蒸発および/または昇華プロセスに必要なエネルギーの外部ソースの使用に関して上述したすべての利点を提供する。
【0163】
蒸発および/または昇華したバッファ材料132(
図15のそれぞれの矢印132参照)は、基板表面48上に堆積され、バッファ層134を形成する。ここでも、適切に選択された第4の反応雰囲気122が、この堆積に対応するために使用される。換言すれば、1つまたは複数の薄膜62(
図17、
図19参照)のその後の堆積は、バッファ層134上に実施される。バッファ層は、基板24と最下部の薄膜62との間の、特に格子定数に関する差を均等化するために使用され得る。これにより、このような差によって1つまたは複数の薄膜62に生じる欠陥を抑制することができる。
【0164】
図16には、該方法のステップ(b)の可能な実施形態のスナップショットが示されている。特に、実際に示されている堆積プロセスは、第1の材料126と第2の材料128を同時に蒸発および/または昇華するステップを含む。反応チャンバは、適切な第2の反応雰囲気118で満たされる。
【0165】
図に示す実施形態において、第2の電磁放射106は、2つのコンポーネントビーム114を含み、その一方が第1の材料126を含む第1のソース30上に向けられ、他方が第2の材料128を含む第2のソース32に向けられる。コンポーネントビーム114は、材料126および128の蒸発および/または昇華のためにそれぞれ適応的に選択される。
【0166】
蒸発および/または昇華した第1の材料126および第2の材料128(それぞれの矢印126および128参照)は、ともに堆積されて1つの薄膜62を形成する。例えば、材料126および128の両方は、金属要素であり得、薄膜62は、これらの金属の合金から形成され得る。
【0167】
なお、
図16に示す薄膜62は、多層構造を有し、第3の材料130を含む層も存在することに留意されたい。第3の材料130の堆積のための対応する第2の反応雰囲気118が、
図16に示す第1の材料126および第2の材料128の同時堆積に適して使用される第2の反応雰囲気118と異なる場合、好都合なことに、2つの反応容積14および16(
図2参照)を有する反応チャンバ10を使用することができる。ここで、2つの堆積プロセスの一方が第1の反応容積14内で実施され、他方が第2の反応容積16内で実施される。
【0168】
図17は、
図14に示す方法のステップ(b)の最後の反復と次のステップ(c)との間、またはステップ(c)の後に実施される任意のサブステップを示している。カバー材料136は、第5の電磁放射112によって蒸発および/または昇華される。これにより、蒸発および/または昇華プロセスのために必要なエネルギーの外部ソースの使用に関して上述したすべての利点を再び提供することができる。
【0169】
蒸発および/または昇華したカバー材料136(
図17のそれぞれの矢印136参照)は、薄膜62上に堆積され、
図17に示す特定の実施例では、それぞれ交互に第1の材料126および第2の材料128からなる4つの層を備える多層構造であり、カバー層138を形成する。また、カバー層138の堆積のために、適切に選択された第5の反応雰囲気124は、この特定の堆積に対応するために使用される。カバー層138は、薄膜62を外部の影響から遮蔽する。これにより、このような外部の影響によって引き起こされる欠陥、例えば、薄膜62の最上層へのさらなる材料の望ましくない堆積を回避することができる。
【0170】
図18および
図19には、本発明による固体コンポーネント100に基づく量子コンポーネント102が示されている。
図18は、非常に単純な量子コンポーネント102を示しており、
図19は、より洗練されたものを示している。また、機能する量子コンポーネントを得るには、通常、フォトリソグラフィ、エッチング、イオンミリング、およびその他の適切な手順によって実施される複数のパターニングステップが必要である。
【0171】
固体コンポーネント100は、100μs超、好ましくは1000μs超、より好ましくは10ms超の量子ビット緩和時間および量子ビットコヒーレンス時間を有する、および/または本発明による方法によって作製される、1cm2および層当たりの欠陥の数が十分に少ないという共通点を有する。固体コンポーネント100の欠陥の数が少ないと、量子コンポーネント102のコヒーレンス時間が長くなる。
【0172】
図18に示す量子コンポーネント102は、第1の材料126を含む単一の薄膜62を備える。薄膜62は、基板24上に堆積される。
【0173】
それとは対照的に、
図19は、合計6層の多層構造、特に2回繰り返される3層パターンを有する薄膜62を備える量子コンポーネント102を示している。この3つの異なる層は、最も下層から、第1の材料126、第2の材料の反応生成物および第2の反応雰囲気118の元素、ならびに第3の材料130をそれぞれ含む。
【0174】
また、量子コンポーネント102は、基板24と薄膜62の最下層との間に、バッファ材料132を含むバッファ層134を備える。これにより、
図15を参照して上述したように、基板24とそれに続く薄膜62との間の遷移に起因する欠陥を回避することができる。
【0175】
さらに、量子コンポーネント102は、薄膜62を覆って保護するカバー材料136を含むカバー層138を備える。これにより、
図17を参照して上述したように、外部の影響、特に周囲雰囲気との反応、例えばさらなる材料の望ましくない堆積に起因する欠陥を回避することができる。
【0176】
上述したように、基板表面48上に複数の薄膜62を堆積することで、基板24上に多層膜や多材料膜62を形成するために、様々な薄膜62を異なる材料で形成することができる。
【0177】
薄膜62を形成するために、第1のソース要素30および第2のソース要素32の第1の材料および/または第2の材料には、金属などの元素が使用される。
【0178】
本発明の技術的実現可能性を例示するために、
図20~
図28は、TaおよびNb薄膜62を成長させたAl
2O
3基板24に対する本技術の実験的検証を示している。TaおよびNbは、数Kで超電導性を示すので、量子ビットデバイスの作製に適している。
【0179】
図20は、本発明の方法により作製されたAl
2O
3基板24の、RHEED(反射高速電子線回折法)による表面回折パターンである。RHEEDビームは、約2°の極角で表面48に入射する。
【0180】
多数のスポットが、高度に秩序化した2次元結晶表面を例示している。斜線の鏡面対称パターンは、RHEEDビームが基板の主結晶軸のうちの1つに沿って整列されていることを示している。この場合、表面再構成は、バルク格子に対して+9°回転している。これは、基板24がRHEEDビームに対して反時計回りに9°回転し、RHEEDビームと表面再構成とが整列している
図21に示されている。
【0181】
その他の観察可能なスポットのない同心円の対称パターンは、基板表面全体で+9°の単一の回転をもつ単一の表面再構成を示している。-9°の配向はまったく見られないことから、本発明によるエネルギー的に等価な複数の表面再構成から1つを選択する方法の実行可能性を確認することができた。
【0182】
酸素プロセスガスの圧力を0.75×10
-1hPaに変えることで、酸素原子が表面48から離脱する化学ポテンシャルがシフトし、最小エネルギー較正は、より低い圧力で観察された単一の回転最高ではなくなった。
図22は、どちらの表面回転配向も等しく有利であることを示している。RHEEDパターンは鏡面対称であり、左側のスポットと右側のスポットの強度は等しい。
【0183】
図23は、
図20におけるRHEEDで撮像した、作製プロセス後の基板の表面形態を示している。表面は高度に秩序化されており、最小エネルギーのテラス・段差構造を示している。ここで、直線状のテラスエッジ66は、主結晶軸に対して約+25°の角度で配向しており、画像のエッジとほぼ整列している。
【0184】
図24は、
図23の線に沿って抽出された高さプロファイルを示している。この基板のテラスの幅は約500μmであり、テラス58間の段差の高さの差は約0.43nmである。Al
2O
3の場合、これは、バルクAl
2O
3構造内の2つのAl層間の分離に相当する。これらのAl層は、
図3~
図8の模式図における「黒色」層に対応している。
図20に示す表面再構成は、バルク基板24の上に追加された「黒色」層に対応している。
【0185】
図25は、超高純度条件下、且つ高い表面温度で上記のようなテンプレート上に成長させたTa膜62の表面のAFM画像を示している。これにより、表面に沿ったTa原子の長距離変位が可能になる。この膜の異なる単結晶領域は、元々異なる配向で核形成されているが、下層の結晶表面の表面再構成の長距離秩序によって制約されている。これらの領域は、過剰に成長して場合によっては隣接する領域を取り込んで、欠陥密度が極めて低く、且つ厚さの約40倍の横方向の広がりを有する、大きくて平坦な単結晶領域が形成される。
【0186】
この領域の単結晶性は、表面に見える単一の原子の段差、および下層のエピタキシャルテンプレートの軸に沿った六方晶系六回対称(60°ごと)の段差および領域のエッジの整列から明らかである。
【0187】
図26は、ほぼ同一の条件下で成長させた膜62の同様のSEM画像を示している。ここでは、横方向の解像度は
図25の約2倍である。ただし、
図25の場合とは異なり、層の厚さの約1/5しか成長しなかったところで成長を停止させた。したがって、この画像は、独立して核形成された異なるエピタキシャル結晶粒間の合体プロセスにおけるスナップショットを表している。ここでは、結晶は、横方向につながって、大きなサイズの単結晶粒が形成され始めている。
【0188】
図27に示すX線スキャンは、
図25と同じ膜のものである。その測定は、試料表面全体の平均を本質的に算出し、膜62が実験の解像度の範囲内で完全に単結晶であり、明確で別個のピークが、基板24に平行に配向したTaの結晶面の単一族に対応することが明らかになった。この結果は、非常に高い構造的完全性、および膜62と基板24との完全なエピタキシャル整列を示している。
【0189】
最後に、
図28は、堆積後にへき開した層構造のSEMの断面画像を示している。ここでは、エピタキシャル整列のないSi基板24上のNb膜62を約250℃の基板温度で成長させた。この膜62はエピタキシャルではなく、高い欠陥密度をもつ無秩序な柱状構造を示しているが、本発明によれば、シームレスに統合されたin situのプロセスにおいて、高温焼鈍を用いた基板作製技術と極めてクリーンな後続の堆積を組み合わせることで、それを回避することができる。
【0190】
また、化合物の層を薄膜62として成長させることもできる。この目的のために、基板上に、単層から数μmの範囲で選択された厚さを有する化合物層62を形成する方法が実施される。上述したように、基板24は、単結晶ウエハであり得る。基板24は、
図1および
図2に示す反応チャンバ10などのプロセスチャンバ内に配置される。反応チャンバ10は、ソース材料の1つまたは複数のソース30および32を含む。該方法は、
・ プロセスチャンバ10内に反応雰囲気を提供するステップであって、該反応雰囲気は、所定のプロセスガスGおよび反応チャンバ圧力を含む、ステップと、
・ 第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38から1つまたは複数のソース30および32にレーザ光を照射して、ソース材料の原子および/または分子を昇華および/または蒸発させるステップと、
・ 蒸発した原子および/または分子を、プロセスガスと反応させて、上に化合物の層を形成するステップと、
を含む。
【0191】
なお、これに関連して、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38からのレーザ光は、基板24に直接対向するソースの表面に向けられることに留意されたい。
【0192】
典型的には、反応チャンバ圧力は、10-6hPa~101hPaの範囲で選択される。化合物を形成する方法を実行することに関して、反応雰囲気を提供するステップは、通常、プロセスチャンバ10を第1の圧力まで排気し、次に、プロセスガスGを導入して反応チャンバ10内の反応チャンバ圧力である第2の圧力を得るステップを含む。
【0193】
典型的には、第1の圧力は、第2の圧力よりも低くなっており、第2の圧力は、10-11hPa~10-2hPaの範囲で選択される。
【0194】
反応チャンバ10の少なくともシュラウドおよび/または内壁の温度は、77K~500Kの範囲で選択された温度に制御される。
【0195】
ソース材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Hf、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Rh、Ta、W、Re、Ir、Ga、In、Si、Ge、Sn、Eu、Ce、Pd、Ag、Pt、Au、および上記の合金、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0196】
ソース材料の原子および/または分子を昇華および/または蒸発させるためにレーザ光を1つまたは複数のソース30および32に照射することができるレーザ光は、1mm2のスポットサイズおよび50mm~120mmの範囲で選択された1つまたは複数のソースと基板との間の距離に対して、1W~2000Wの範囲で選択された強度で1つまたは複数のソース30および32に集光される。
【0197】
1つまたは複数のソース30および32を照射するレーザ光は、280nm~20μmの範囲、特に450nm~1.2μmの範囲の波長を有する。
【0198】
基板上に堆積される化合物は、酸化物、窒化物、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン化物、硫化物、セレン化物、または水銀化合物のうちの1つであり得る。
【0199】
プロセスガスGの圧力が高くなると、蒸発した原子または分子は、ガス原子との衝突が多くなる。これは、それらの方向および運動エネルギーのランダム化をもたらす。その結果、蒸発した原子または分子のうち、基板24に到達するものの割合はかなり小さくなるが、それでも場合によっては、特に作業距離が短く基板が大きい場合に、層62を形成するのに有効なことがある。このような条件下で基板24上に化合物層または酸化物層62を形成するには、以下のいくつかの条件がある。
・ 成長様式1:ソース材料126がソース表面で反応または酸化し、化合物または酸化物として蒸発または昇華する。次に、基板上に化合物または酸化物として堆積する。
・ 成長様式2:ソース材料126が反応せずに蒸発または昇華し、ソース30および32から基板24への軌道上でガス原子との衝突によりガスGと反応し、化合物または酸化物として堆積する。
・ 成長様式3:ソース材料126が反応せずに蒸発または昇華し、反応することなく移動し、基板24上に堆積するときまたは堆積した後に、基板24に作用するガス原子または分子と反応する。
・ 成長様式4:上記の任意の組み合わせ。
【0200】
特に興味深いのは、ソース材料126がガスGと反応して、ソース材料126自体よりも高い蒸発/昇華速度をもつ準安定化合物を形成する輸送反応である。この材料は、気相でさらに反応し、薄膜62として最終化合物として堆積するか、基板24上に堆積し、さらにガスGと反応して、薄膜62として最終的な安定化合物が形成される。
【0201】
化合物の具体的な例は以下の通りである。
【0202】
TiO2:TiO2の場合、ソース材料はTiであり、基板上に堆積される化合物は主にアナテーゼまたはルチルTiO2であり、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.2kW/mm2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~180分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~30分の時間内で得られる700nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0203】
NiO:NiOの場合、ソース材料はNiであり、基板上に堆積される化合物は主にNiOであり、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.35kW/mm2の出力密度に対応する100W~350Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~50分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる500nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0204】
Co3O4:Co3O4の場合、ソース材料はCoであり、基板上に堆積される化合物は主にCo3O4であり、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.2kW/mm2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~90分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる200nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0205】
Fe3O4:Fe3O4の場合、ソース材料はFeであり、基板上に堆積される化合物は主にFe3O4であり、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.2kW/mm2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~10μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる5μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0206】
CuO:CuOの場合、ソース材料はCuであり、基板上に堆積される化合物は主にCuOであり、レーザ光は500nm~1070nmの範囲、特に500nm~550nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~0.9kW/mm2の出力密度に対応する1W~900Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~30分の時間内で得られる0.15μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0207】
バナジウム酸化物:バナジウム酸化物の場合、ソース材料はVであり、基板上に堆積される化合物は主にV2O3、VO2、またはV2O5であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.06kW/mm2~0.12kW/mm2の出力密度に対応する60W~120Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~60分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.3μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0208】
Nb2O5:Nb2O5の場合、ソース材料はNbであり、基板上に堆積される化合物は主にNb2O5であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~2μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0209】
Cr2O3:Cr2O3の場合、ソース材料はCrであり、基板上に堆積される化合物は主にCr2O3であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.02kW/mm2~0.08kW/mm2の出力密度に対応する20W~80Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.5μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0210】
RuO2:RuO2の場合、ソース材料はRuであり、基板上に堆積される化合物は主にRuO2であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.6kW/mm2の出力密度に対応する200W~600Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~300分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.06μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0211】
ZnO:ZnOの場合、ソース材料はZnであり、基板上に堆積される化合物は主にZnOであり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.005kW/mm2~0.010kW/mm2の出力密度に対応する5W~10Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0212】
MnO:MnOの場合、ソース材料はMnであり、基板上に堆積される化合物は主にMnOであり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.005kW/mm2~0.010kW/mm2の出力密度に対応する5W~10Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0213】
Sc2O3:Sc2O3の場合、ソース材料はScであり、基板上に堆積される化合物は主にSc2O3であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.02kW/mm2~0.05kW/mm2の出力密度に対応する20W~50Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.3μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0214】
Mo4O11またはMoO3:Mo4O11またはMoO3の場合、ソース材料はMoあり、基板上に堆積される化合物は主にMo4O11またはMoO3であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.4kW/mm2~0.8kW/mm2の出力密度に対応する400W~800Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~4μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる4.0μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0215】
ZrO2:ZrO2の場合、ソース材料はZrであり、基板上に堆積される化合物は主にZrO2であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.3kW/mm2~0.5kW/mm2の出力密度に対応する300W~500Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる0.2μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0216】
HfO2:HfO2の場合、ソース材料はHfであり、基板上に堆積される化合物は主にHfO2であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.25kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する250W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~40分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる0.6μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0217】
Al2O3:Al2O3の場合、ソース材料はAlであり、基板上に堆積される化合物は主にAl2O3であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる1.0μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。Alの場合、成長様式4により、300W~500Wのレーザ出力で毎分1μm超の高い成長速度を達成することができる。
【0218】
TLE(熱レーザ蒸発)は、金属膜の成長に特に有効な技術である。ここでは、熱レーザ蒸発が非結晶質および多結晶酸化膜の成長にも適していることを実証した。以下、酸素-オゾン雰囲気中で、元素金属ソースのレーザ誘起蒸発によって堆積された二元酸化膜のスペクトルについて報告する。TLEによる酸化物の堆積は、元素金属ソースの酸化を伴う。これは、ソースの分子フラックスを系統的な影響を与える。同じレーザ光学系を使用し、加熱していない基板上に成長させた酸化膜のソースとして15種類の元素金属を使用することに成功した。ソース材料は、Hf、Mo、およびRuなどの蒸気圧が低い耐火性金属から、低温で容易に消化するZnまで多岐にわたった。これらの結果から、TLEは、非常にクリーンな酸化膜の成長に適していることが明らかになった。
【0219】
酸化膜62は、その広範囲にわたる興味深い有用な特性により、新しい機能性を実現するうえで大きな関心を集めている。酸化膜の成長には、電子ビーム蒸着(EBE)、分子ビームエピタキシー(MBE)、パルスレーザ堆積(PLD)、スパッタリング、および原子層堆積(ALD)など、事実上あらゆる蒸着技術が用いられている。熱レーザ蒸発(TLE)は、レーザビームで金属ソースを熱蒸発させることで、MBE、PLD、およびEBEの利点を併せもつため、非常にクリーンな金属膜の成長に有望な技術であることが最近実証された。
【0220】
吸着制御成長様式を利用することで、MBEは特に優れた構造品質をもつ膜の成長に適している。MBEでは、ソース材料の分子フラックスは、ソース材料を蒸発させることによって生成される。しかしながら、この目的に好ましいオーミックヒータは、反応性バックグランドガスの使用を制限する。この制限は、複雑な金属酸化物の成長には致命的である。さらに、B、C、Ru、Ir、およびWなどの蒸気圧の低い元素は、外部からのオーミック加熱では蒸発させることができない。これらの元素を蒸発させるにはEBEが必要だが、この技術は正確で安定した蒸発速度を達成するには最適ではない。PLDは、短周期の高出力レーザーパルスを介して基板上にソース材料を転写する。PLDは、反応性ガスの高いバックグラウンド圧力で作動できるが、材料組成の精密な制御は困難であり、特に膜組成を滑らかに変化させたい場合には難しい。
【0221】
レーザの発明後、レーザアシスト蒸発法による薄膜の堆積が提案され、試みられてきた。しかしながら、連続発振(cw)レーザによる蒸発は、非化学量論的な薄膜の形成により断念された。同時に、高出力密度パルスレーザによる蒸発がPLDの発明につながった。cwレーザ技術の発展とともに、TLEは、MBE、PLD、およびEBEのそれぞれの弱点を解消しながら、それぞれの利点を組み合わせることができる複雑な材料のエピタキシャル成長の候補として、最近再発見された。真空チャンバ12の外部に設置されたレーザ36および38は、局所加熱によって純金属ソース30および32を蒸発させる。これは、簡単なセットアップしか必要とせず、各ソース要素の精密な蒸発制御、ソース材料の高純度化、およびバックグラウンドガスGの組成と圧力に関するほぼ無制限の選択を可能にする。多くの場合、局所的に溶融したソース30および32は、それ自体が坩堝を形成する。坩堝からの不純物の混入を回避することで、ソース30および32は、高純度を保つことが保証される。元素金属膜および半導体膜62を堆積するTLEの可能性は、BiおよびZnなどの蒸気圧の高い元素から、WおよびTaなどの蒸気圧の低い元素まで、幅広い元素を膜62として堆積することで実現している。
【0222】
酸化膜62およびヘテロ構造の成長にTLEを使用することも非常に有利であり得るが、酸化雰囲気でそれが可能であることは明らかではない。MBEおよびEBEに干渉する熱源(フィラメント)の酸化は、TLEでは回避するのが容易でない。しかしながら、酸化雰囲気中でレーザビームを用いて加熱すると、金属ソース30および32自体が酸化しやすくなる。ソースが酸化すると、レーザ放射は、もはや元のソース材料によってのみ吸収されるのではなく、その酸化物によっても吸収される。実際、ソース全体またはソースの表面が酸化する場合があり、あるいは酸化物が溶融プール上に部分的な層を形成する場合がある。また、ソース材料の分子フラックスは、ソースの金属部分とソース材料の酸化物の両方によって生成される可能性がある。
【0223】
そのために、蒸気圧の高いあるいは低い元素金属ソース30および32を、様々な酸素-オゾン雰囲気中でレーザ照射して蒸発させる一連の実験を行った。蒸発プロセスを簡便に調べるため、本来の酸化物で覆われた加熱していないSi(100)ウエハを基板24として使用した。第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38と同じレーザ光学系と1030nm~1070nmのレーザ波長を使用して、酸化膜62を成長させることに成功した。この実験から、強酸化雰囲気中で元素ソースを蒸発させると、プロセス中にソース30および32が酸化されるにもかかわらず、酸化膜成長に適用できることが明らかになった。酸化雰囲気を調整することで、所与の雰囲気中で異なる酸化物相が得られることもわかった。さらに、堆積プロセスは、酸素-オゾン圧力の関数として特徴的な変化を示すことがわかった。
【0224】
図1は、本発明で使用したTLEチャンバ10の模式図を示している。60mmの作業距離を隔てて、高純度の円筒形金属ソース30および32と2インチのSi(100)基板24とがTaベースのホルダ22で支持されている。ソース30および32の加熱には、1030nmのファイバ結合ディスクレーザ36と、上面に45°で入射する1070nmのファイバレーザ38を使用した。これらのレーザ36および38の利用可能性から判断して、Ti、Co、Fe、Cu、およびNiの蒸発には前者のレーザ36を使用し、その他の元素には後者のレーザ38を使用した。2つのレーザ36および38の性能に差は見られなかった。どちらのレーザ36および38も、ソース30および32上の1mm
2までのほぼ楕円状の領域を照射した。温度検出のために、Siウエハ24の裏面とソース30および32の底面にC型W-Re熱電体を配置した。
【0225】
酸素-オゾン混合流20と、直列に接続された2つのターボ分子ポンプおよびダイアフラムポンプを備えるカスケードポンプシステム18が、10-8hPa~10-2hPaの範囲で変化するチャンバ圧力Poxを精密に制御するために採用された。オゾンは、グロー放電式連続流オゾン発生器(図示せず)から供給される全流量の約10wt%を占めた。このガス流量を制御するバルブの設定は、一定の流量を供給するために各堆積の間一定に保たれた。蒸発プロセス中に、Poxとソース30および32と基板24の温度を、圧力計と熱電体(図示せず)で監視した。同じ堆積ジオメトリを用いて、TLEを使用して15種類の金属元素を蒸発させて、酸化膜62を堆積させた。各元素を、同じレーザ出力およびレーザ光学系を使用して、10-8hPa~10-2hPaの範囲で異なるPoxの値を用いて数回に分けて蒸発させた。膜の厚さを測定し、その微細構造を調べるために、走査型電子顕微鏡(SEM)を採用した。堆積された膜62の結晶構造をX線回折で同定した。光電子分光法を実施して、TLEで成長させたTiO2膜62の酸化状態を明らかにした。膜62が非結晶質であることが判明した場合、その後、結晶化のために500℃で2時間Ar焼鈍を追加で行った。
【0226】
ソース30および32と蒸発した材料の酸化によって酸素-オゾンガス混合物が消費されるので、P
oxは、
図29に示すように、堆積中に頻繁に減少した。図には、複数のガス圧力におけるTiの蒸発中のP
oxが示されている。TiのTLEにおけるレーザ照射時間は15分であった。P
oxは、レーザ36および38がオンされて300秒までの時間で減少し、レーザがオフされて1200秒までの時間ですぐに初期値に戻った。酸化は温度が高いほど活発であるため、P
oxの減少は主に元素ソースの酸化に起因すると考えられる。蒸発した材料を酸化するのに必要な酸素の最大量は、入口ガス流量の1%未満であり、観察された圧力変化を説明することはできない。160Wレーザを用いた10
-2hPaでの堆積の後に、Tiソース30および32は白色の物質で覆われた。これは、高い確率でTiO
2からなる。その他の元素ソースも使用後に酸化した。上述したソース30および32の実質的な酸化は、レーザ光の吸収、蒸発プロセス、および基板24上に堆積した蒸気種に影響を与える。
【0227】
しかしながら、バックグラウンド圧力の低下は、すべての場合に観察されたわけではない。第1に、プロセスの開始時にソース30および32がすでに完全に酸化されている場合、第2に、ソース30および32の酸化が本質的に好ましくない場合に、圧力変化は小さいか、あるいは全くなかった。酸化雰囲気中でのNiの熱レーザ蒸発は、最初のケースの例である。P
oxの減少は、P
ox<10
-4hPaの場合にのみ観察された。圧力が高くなると、Niソース30および32は酸化物で覆われるようになった。したがって、それ以上の酸化が抑制され、P
oxの減少が消失した。強酸化条件下でNiを加熱して得られた主な蒸気種はNiOである。Cuの熱レーザ蒸発は、2つ目のケースの例である。ここでは、Cuの酸化は比較的不利である。1000℃超で、10
-4hPa~10
-2hPaの範囲の酸素圧力において、金属Cuは、酸化物よりも安定していた。実験では、Cuが局所的に溶融したことから明らかなように、照射領域におけるソース温度は1085℃を超えていた。この温度では、液体Cuが熱力学的に安定な相であり、元素Cuが主な蒸気種になると予想された。実際、
図S3に示すように、Cuの蒸発中にチャンバ圧力に大きな変化は見られなかった。TLEプロセスの後に、Cuソース30および32のレーザ照射領域は、金属になった。
【0228】
酸化膜のTLEでの成長のためのソースとして15種類の金属元素を試験した(表1)。
図30は、TLEで成長させたTiO
2、Fe
3O
4、HfO
2、V
2O
3、NiO、およびNb
2O
5の膜の微小角入射XRDパターンを示している。これらのパターンは、ここで調べたすべての二元系酸化物の典型的なパターンである。図に示すように、膜62は、多結晶であり、多くの場合、単相である。非結晶質酸化物を形成したCrを除き、ほとんどの元素が加熱していないSi基板24上に多結晶膜62を形成した。その後、500℃で2時間Ar焼鈍を行うことで、この層は多結晶Cr
2O
3膜62に変化した。観察された酸化物相を表1にまとめる。Ti、V、およびMo酸化物は、複数の相を形成し、どの層が得られたかはP
oxにより決定された。例えば、Vの場合、P
oxを10
-4hPaから10
-2hPaに増加させることで、V
2O
3、VO
2、またはV
2O
5膜62が得られた。その他の元素の場合、使用したP
oxの範囲内で単一の酸化状態のみが観察された。
【0229】
膜62の構造をより詳細に調べるために、断面SEMを行った。
図30に示す膜62のSEM断面を示した
図31に示すように、ほとんどの多結晶膜は柱状構造を有していた。測定された基板温度と堆積した酸化物の融点との比は、0.05~0.2の範囲であった。したがって、観察された柱状構造は、ここで用いた条件では柱状微細構造の形成を予測する膜成長のゾーンモデルと一致する。ここでは、堆積された酸化物の結晶構造は膜構造に影響を与える。10
-3hPaおよび10
-2hPaで成長したMo酸化膜は、角柱板および六角板をそれぞれ備える。
図31に示す膜62を、数Å/sの速度で成長させた。これらの速度は、酸化膜の成長における典型的なものとして選ばれた。速度(
図31参照)を、ウエハ中心部の膜の厚さをレーザ照射時間で割って測定した。堆積速度は、ここに記載する値に限定されない。実際、レーザ出力に伴って超直線的に増加する。
【0230】
ソース30および32は、局所的に加熱されることに伴い、平坦な小面積蒸発ソース30および32のように振る舞い、放出角度の関数として余弦タイプのフラックス分布を提供する。実際、SEM測定から、ウエハエッジに向けて膜62が薄くなっていることがわかった。使用した蒸発パラメータでは、エッジに向かう膜の厚さの減少は、ほとんどの場合20%以下に等しく、理論的に予想される15%以下という値よりわずかに高い。この効果は、分子フラックスを集中させる蒸発中のソースの顕著なピッティングによるものと考えられる。
【0231】
本研究の結果、予想通り、堆積された酸化物の相は酸化ガス圧力の関数であった。この挙動は、
図32におけるTiおよびNi膜62で示されている。この図は、いくつかの異なるP
oxで成長させたこのような膜のXRDパターンを示している。Tiの場合、酸素-オゾンなしで堆積すると、多結晶六方晶Ti膜が得られた。P
oxが増加すると、サブ化学量論的なTiO、ルチルTiO
2、およびアナテーゼTiO
2の膜62が堆積した。TiOは、よく知られたTiの揮発性亜酸化物である。これは、P
oxが10
-6hPa以下の弱酸化環境で形成された。37.36°、43.50°、および63.18°(
図5a、赤色曲線)におけるピークは、立方晶TiOを示している。ルチルTiO
2は、P
oxが10
-4hPaの膜に現れた。灰色の線は、ルチルTiO
2の予想される回折ピーク位置を示している。10
-3hPaでは、
図5の紫色の星印で示すように、ルチル相とともにアナテーゼTiO
2が生成される。表面自由エネルギーが低いため、準安定なTiO
2アナテーゼ相は、ほとんどの合成法や堆積法で好ましく得られる。アナターゼ相をルチル相に変化させるか、ルチル相のTiO
2を直接合成するには、通常、高エネルギー条件が必要である。蒸発した原子および分子の熱エネルギーから考えると、TLEは低エネルギーのプロセスであるが、ここでは、ルチル相TiO
2の優先的な形成を観察した。10
-2hPaでは、堆積された膜は結晶性を失った。
【0232】
TLEで成長させたTiO2膜62の酸化状態をXPSで分析し、EBEで成長させたTiO2膜と比較した。堆積されたままのEBE試料はかなりの量のTi3+を含む一方で、TLE試料はほとんどがTi4+であった。この現象は、酸素-オゾンバックグラウンドがTiO2の熱解離(TiO2(s)→TiO(g)+1/2O2(g))を抑制し、堆積された材料を酸化させるためと考えられる。
【0233】
興味深いことに、TLEで成長させたNi酸化膜62の酸化挙動は、Ti酸化膜62の酸化挙動とは著しく異なることがわかった。UHV条件下では、金属Niにも立方晶相が見られた(
図32b)。P
oxが10
-6hPa以下では(チャンバ圧力の減少によって示されるように)Niソース表面30が酸化されるが、得られた膜62はこのP
oxでも金属的挙動を示した。これは、Niの酸化電位が高いことと、NiがNiOよりも蒸気圧が高いことに起因する。したがって、大部分の蒸気種は、照射された高温領域の酸化されていないNiに由来する。さらに、基板24上に堆積されたNiは、低い基板温度では著しく酸化しない。NiO相は、P
oxの増加とともに徐々に進化する。
図32には、NiO相に予想される回折ピーク位置が存在し、立方晶NiOの形成を示している。金属と酸化物の両方のピークが存在することからわかるように、10
-5hPaで堆積されたNi膜62は、部分的に酸化されてNiOになっている。高いP
oxではNiO相が支配的である。
【0234】
また、P
oxは、TLEで成長させた酸化膜62の堆積速度にも影響を与える。
図33は、TiベースおよびNiベースの酸化膜62の堆積速度の圧力依存性を示している。膜62中への酸素の取り込みを考慮すると、P
oxが増加するにつれて堆積速度が増加すると予想される。しかしながら、観察された堆積速度の挙動は、酸素の取り込みだけでは説明できない。Tiベースの膜62の成長速度は、P
oxとともに、基準圧力での0.6Å/s以下から、10
-3hPaで3.5Å/sまで増加した。堆積速度が6倍になることから、速度に影響を与える他の要因があることが推測される。対照的に、Niベースの酸化膜62の堆積速度は、10
-4hPaで3.1Å/sから4.6Å/sまでしか増加せず、その後、P
ox>10
-4hPaで0.3Å/sまで急激に低下した。膜62(
図32参照)中の酸化物割合の増加が最初の堆積速度の増加の原因かもしれないが、10
-3hPaでの堆積速度の大幅な低下を説明することはできない。TiベースおよびNiベースの膜62の成長特性は、ほとんどの膜62で観察される2つの特徴的なモードを表している。Fe、Co、Nb、Zn、およびMoはTiの挙動を示し、Cr、Sc、Mn、およびVはNiの挙動を示す。
【0235】
なぜP
oxは、TLEで成長された酸化膜の堆積速度を、この2つの特徴的なモードに変化させるのか。本出願人は、この挙動がソース30および32の酸化表面層の蒸気圧によって制御されていると考える。ソース表面に形成される酸化物の蒸気圧が金属のそれを上回る場合、堆積速度はP
oxとともに増加する。これは、Tiのような堆積速度の挙動に対応している。TiO
2ガス蒸気の形成(Ti(s)+O
2(g)→TiO
2(g))は、ソースからの酸化物蒸気の効果的な発生につながる発熱反応である。金属の酸化速度がP
oxのべき乗
【数1】
で増加すると、FeおよびNbで観察されるように、堆積速度はP
oxに対応して増加する。対照的に、金属の蒸気圧が酸化物の蒸気圧を上回ると、Niのようなシナリオが見られる。NiOの蒸気圧は、Niの蒸気圧より1桁ほど小さいので、NiOで覆われたソースは、堆積速度を同じ度合だけ低下させる。この理解は、Niの堆積速度の急激な低下が、チャンバ内の圧力降下が消失するのと同じ圧力である10
-3hPaで生じるという観察によって裏付けられ、このP
oxでは、ソースがNiO層62によって不動態化されていることが明らかになった。
【0236】
このようにして、TLEによる多結晶酸化膜62の成長が実証された。酸素-オゾン圧力が101hPaまでの純金属ソースを蒸発させることにより、ソース30および32の酸化の可能性に関係なく、酸化状態が調整可能で結晶構造を有する膜62を成長させることができる。低蒸気圧元素と高蒸気圧元素を含む広範な金属ソースから、様々な酸化状態の多結晶膜62が、加熱していないSi(100)基板24上に数Å/sの成長速度で堆積された。ソースの酸化度を決定する酸化ガスの圧力は、堆積速度だけでなく、得られた酸化膜32の組成と相にも強く影響を与える。本出願人の研究は、多様な化合物の超高純度エピタキシャル酸化物ヘテロ構造のTLE成長への道を開くものである。
【0237】
【符号の説明】
【0238】
10:反応チャンバ
12:真空チャンバ
14:第1の反応容積
16:第2の反応容積
18:真空ポンプ
20:ガス供給部
22:基板配置部
24:基板
26:基板加熱レーザ
28:基板ホルダの転写
30:第1のソース
32:第2のソース
34:ソース配置部
36:第1のソース加熱レーザ
38:第2のソース加熱レーザ
40:遮蔽開口部
42:ソースホルダの転写
44:ゲートバルブ
46:基板ホルダ
48:基板24の表面
50:24の裏面
52:窓
54:第1の元素、分子、式単位
56:第2の元素、分子、式単位
58:テラス
60:表面
62:薄膜、層
66:エッジ
100:固体コンポーネント
102:量子コンポーネント
104:第1の電磁放射
106:第2の電磁放射
108:第3の電磁放射
110:第4の電磁放射
112:第5の電磁放射
114:コンポーネントビーム
116:第1の反応雰囲気
118:第2の反応雰囲気
120:第3の反応雰囲気
122:第4の反応雰囲気
124:第5の反応雰囲気
126:第1の材料
128:第2の材料
130:第3の材料
132:バッファ材料
134:バッファ層
136:カバー材料
138:カバー層
G:プロセスガス
T:終端材料
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ウエハなどの基板上に、単層から数mmの範囲で選択された厚さを有する化合物の層を形成する方法であって、前記基板は、ソース材料の1つまたは複数のソースを含むプロセスチャンバ内に配置され、前記方法は、
・ 前記プロセスチャンバ内に反応雰囲気を提供するステップであって、前記反応雰囲気は、所定のプロセスガスおよび反応チャンバ圧力を含む、ステップと、
・ 前記1つまたは複数のソースにレーザ光を照射して、前記1つまたは複数のソースの少なくとも表面に存在する前記ソース材料の原子および/または分子を溶融および/または昇華および/または蒸発させるステップと、
・ 溶融および/または昇華および/または蒸発した前記原子および/または前記分子を、前記プロセスチャンバ内で前記プロセスガスと反応させるステップと、
・ 前記基板上に前記化合物の層を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数のソースは、前記基板に直接対向する前記1つまたは複数のソースの表面においてレーザ光で照射される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のソースは、連続レーザ光で照射される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応チャンバ圧力は、10
-12hPa~10
1hPaの範囲で選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
反応雰囲気を提供する前記ステップは、前記プロセスチャンバを第1の圧力まで排気し、次に、前記プロセスガスを導入して前記反応チャンバ内の反応チャンバ圧力である第2の圧力を得るステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の圧力は、前記第2の圧力よりも低くなっている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の圧力は、10
-6hPa~10
1hPaの範
囲で選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応チャンバの少なくともシュラウドの温度は、77K~500Kの範囲で選択された温度に制御される、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応チャンバの内壁の温度は、77K~500Kの範囲で選択された温度に制御される、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記プロセスガスは、酸素(O)、オゾン(O
3)、プラズマ活性化酸素(O)、窒素(N)、プラズマ活性化窒素(N)、水素(H)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、リン(P)、硫黄(S)、セレン(Se)、水銀(Hg)、NH
3、N
2O、CH
4、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記ソース材料は、前記反応雰囲気中で、固体材料または液体材料である、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記ソース材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Hf、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Rh、Ta、W、Re、Ir、Ga、In、Si、Ge、Sn、Eu、Ce、Pd、Ag、Pt、Au、上記の合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記ソース材料の原子および/または分子を昇華および/または蒸発させるために前記1つまたは複数のソースを照射する前記レーザ光は、1mm
2のスポットサイズおよび50mm~120mmの範囲で選択された前記1つまたは複数のソースと前記基板との間の距離に対して、1W~2000Wの範囲で選択された強度で前記1つまたは複数のソースに集光される、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数のソースを照射する前記レーザ光は、100nm~20μmの範
囲の波長を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
前記基板上に堆積される化合物は、酸化物である、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
前記基板上に堆積される化合物は、窒化物である、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記基板上に堆積される化合物は、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン化物、硫化物、セレン化物、または水銀化合物である、請求項
1に記載の方法。
【請求項18】
前記ソース材料はTiであり、前記基板上に堆積される化合物は主にアナテーゼまたはルチルTiO
2であり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~180分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項19】
前記ソース材料はNiであり、前記基板上に堆積される化合物は主にNiOであり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~50分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項20】
前記ソース材料はCoであり、前記基板上に堆積される化合物は主にCo
3O
4であり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~90分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項21】
前記ソース材料はFeであり、前記基板上に堆積される化合物は主にFe
3O
4であり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~10μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項22】
前記ソース材料はCuであり、前記基板上に堆積される化合物は主にCuOであり、前記レーザ光は515nm~1070nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項23】
前記ソース材料はVであり、前記基板上に堆積される化合物は主にV
2O
3、VO
2、またはV
2O
5であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~60分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項24】
前記ソース材料はNbであり、前記基板上に堆積される化合物は主にNb
2O
5であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~2μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項25】
前記ソース材料はCrであり、前記基板上に堆積される化合物は主にCr
2O
3であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項26】
前記ソース材料はRuであり、前記基板上に堆積される化合物は主にRuO
2であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~300分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項27】
前記ソース材料はZnであり、前記基板上に堆積される化合物は主にZnOであり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項28】
前記ソース材料はMnであり、前記基板上に堆積される化合物は主にMnOであり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項29】
前記ソース材料はScであり、前記基板上に堆積される化合物は主にSc
2O
3であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項30】
前記ソース材料はMoであり、前記基板上に堆積される化合物は主にMo
4O
11またはMoO
3であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~4μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項31】
前記ソース材料はZrであり、前記基板上に堆積される化合物は主にZrO
2であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項32】
前記ソース材料はHfであり、前記基板上に堆積される化合物は主にHfO
2であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~40分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項33】
前記ソース材料はAlであり、前記基板上に堆積される化合物は主にAl
2O
3であり、前記レーザ光は515nm~1100nmの範
囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm
2~2kW/mm
2の出力密度に対応する1W~2000Wの範
囲であり、プロセスガスはO
2とO
3の混合
物であり、反応チャンバ圧力は10
-11hPa~1hP
aであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択さ
れ、作業距離は10mm~1
mであり、基板直径は5mm~300m
mである、請求項
1に記載の方法。
【請求項34】
前記レーザ光で前記1つまたは複数のソースを照射する前記ステップは、前記1つまたは複数のソースの表面を少なくとも溶融させる、請求項
1に記載の方法。
【請求項35】
前記レーザ光で前記1つまたは複数のソースを照射する前記ステップは、前記ソースの表面の、前記プロセスガスとの反応を促進させる、請求項
1に記載の方法。
【請求項36】
基板上に、単層から10μmの範
囲で選択された厚さを有する化合物であって、請求項
1に記載の方法に従って得られる、化合物。
【請求項37】
基板上に層として存在する化合物であって、前記層は、前記基板上で単層から100nmの範囲で選択された厚さを有し、前記化合物は、100μs
超の量子ビット緩和時間と量子ビットコヒーレンス時間を有する、化合物。
【国際調査報告】