(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】単結晶ウエハの表面をエピタキシャルテンプレートとして作製する方法、そのエピタキシャルテンプレート、およびそのデバイス
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20240621BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20240621BHJP
C30B 29/20 20060101ALI20240621BHJP
C30B 29/16 20060101ALI20240621BHJP
C30B 29/22 20060101ALI20240621BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B29/38 C
C30B29/38 D
C30B29/20
C30B29/16
C30B29/22 A
C30B29/22 Z
C30B33/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500015
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2021068243
(87)【国際公開番号】W WO2023274547
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500449363
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フェルデルンク デル ヴィッセンシャフテン エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スミンク,アレクサンダー エヴェラルドゥス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ボスフケル,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,レナ ナディーン
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BB01
4G077BB02
4G077BB04
4G077BB10
4G077BC01
4G077BC60
4G077BE08
4G077BE13
4G077BE15
4G077FE16
4G077FG11
4G077HA12
(57)【要約】
本発明は、エピタキシャルテンプレートとしてバルク基板の表面を作製する方法、そのようなエピタキシャルテンプレート、およびそのようなエピタキシャルテンプレートを備えるデバイスに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ウエハの表面をエピタキシャルテンプレートとして作製する方法であって、前記表面は、表面原子および/または表面分子を含み、前記単結晶ウエハは、基板成分として2つ以上の元素および/または2つ以上の分子を含む単結晶を含み、前記元素および前記分子の各々は、昇華速度をもち、前記方法は、
・ 所定のミスカット角およびミスカット方向をもつ単結晶ウエハ基板を提供するステップと、
・ 前記表面原子および/または前記表面分子が前記表面に沿って再構築および/または移動して、最小の段差密度と、前記所定のミスカット角および前記ミスカット方向に従って配向された段差エッジを有する配置部を形成することができる温度まで前記基板を加熱するステップと、
・ 最も高い昇華速度をもつ基板成分の原子または分子が前記表面から離脱することができる温度まで前記基板を加熱するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
所与の温度における前記2つ以上の元素および/または前記2つ以上の分子の昇華速度は、互いに異なっている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つ以上の元素および/または前記2つ以上の分子の昇華温度は、少なくとも2℃の差がある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記単結晶ウエハを加熱する前記ステップは、処理対象の前記表面から離間した表面で前記単結晶ウエハを加熱する第1の加熱要素を含む2つの加熱要素を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第2の加熱要素が、前記表面の表面材料の最も揮発性の高いフラックスで処理対象の前記表面を照射するためのソースに提供される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フラックスは、選択された基板温度における前記表面からの同じ元素の昇華速度よりも低くなるように選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フラックスの強度は、前記基板表面に到達する原子または分子の数と、前記基板表面から離脱する原子または分子の数との間の平衡を提供するように選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記昇華温度は、950℃を超える温度である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ミスカット方向を定義することで、複数のエネルギー的に等価な面内表面再構成の単位セルのうちの1つが選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記単結晶の前記2つ以上の元素および/または前記2つ以上の分子は、Si、C、Ge、As、Al、O、N、O、Mg、Nd、Ga、Ti、La、Sr、Ta、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、例えば、前記単結晶ウエハは、SiC、AlN、GaN、Al
2O
3、MgO、NdGaO
3、LaAlO
3、DyScO
3、TbScO
3、TiO
2、(LaAlO
3)
0.3(Sr
2TaAlO
6)
0.35(LSAT)、Ga
2O
3、SrLaAlO
4、Y:ZrO
2(YSZ)、およびSrTiO
3の化合物のうちの1つから作製されることができる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱のステップは、1つまたは複数のレーザによって実施される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱のステップは、10
-8hPa~10
-12hPaの範囲で選択された真空雰囲気中で実施される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
切断のステップは、機械的切断によって実施される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
バルク基板から前記単結晶ウエハを切断するステップは、前記バルク基板の結晶面とは異なる切断面において前記表面を切断して、前記単結晶のバルク基板から前記単結晶ウエハを切断することによって実施される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記単結晶ウエハは、前記バルク基板の中心軸に対して0.01°~0.1°、好ましくは0.03°~0.08°、特に0.05°または少なくとも実質的に0.05°傾斜した切断面において前記表面を切断することで、前記バルク基板から切断される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法によって処理された単結晶ウエハを提供するステップと、その表面上にさらなる層を堆積させるステップと、を含む、デバイスを形成する方法。
【請求項17】
前記さらなる層は、金属、酸化物、窒化物、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン化物、硫化物、セレン化物、水銀系化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記さらなる層は、単一の層として堆積される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
加熱のステップは、前記表面上にさらなる層を堆積するステップと同じチャンバ内で、任意選択で同じ雰囲気中で実施される、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法によって得られるエピタキシャルテンプレート。
【請求項21】
請求項20に記載のエピタキシャルテンプレートと、前記エピタキシャルテンプレート上に成長させた1つまたは複数の層と、を有する層構造を備えるデバイス。
【請求項22】
前記1つまたは複数の層のうちの1つ、好ましくは前記1つまたは複数の層のすべては、100μs超、好ましくは1000μs超、より好ましくは10ms超の量子ビット緩和時間および量子ビットコヒーレンス時間を有する、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
請求項16~19のいずれか1項に記載の方法によって得られるデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルク基板の表面をエピタキシャルテンプレートとして作製する方法、そのようにして作製されたエピタキシャルテンプレート、およびそのようなエピタキシャルテンプレートを備えるデバイスに関する。
【0002】
従来、酸化物および窒化物基板ウエハ、例えばサファイアウエハは、化学的に洗浄され、酸素または窒素雰囲気中で最高1200℃の炉に入れられ、薄膜堆積用のエピタキシャルテンプレートとして作製される。最も純粋な酸素または窒素でさえ、通常、10-6体積分率レベルの不純物を含んでおり、ウエハがバルク基板から切り離され、酸素雰囲気に曝されると、これらの不純物と、炉から堆積装置の周囲条件での移動再吸着汚染とが、単結晶ウエハの表面に欠陥を生じさせる。また、多くの酸化物基板では、焼鈍炉の最高温度1200℃は、この温度での原子の表面移動度がまだ限られているので、構造欠陥を最小限に抑えて所望の最適表面形状を得るには低すぎる。
【0003】
なお、単結晶ウエハが切断される結晶のバルク容積、すなわちバルク基板は、本質的に欠陥がなく、単結晶ウエハを切断するプロセスによって、原子スケールおよびメゾスコピックな欠陥が導入されることに留意されたい。すなわち、バルク基板から単結晶ウエハを切断する際に、バルク基板の結晶構造の平面に沿ってバルク基板を直接切断することは、現在のところ技術的に不可能である。これは、バルク基板から平面的な単結晶ウエハを切断することはできないことを意味する。
【0004】
したがって、結晶面間の式単位の高さの段差が可能な限り少なくなるように、結晶固有の結晶面に沿ってできるだけ近くを切断することが望ましい。
【0005】
また、鋸引き、研削、および研磨のプロセスは、表面または表面近傍における原子をバルク結晶の位置から変位させ、これにより、厳密に周期的な結晶格子内の理想的な位置からの逸脱が生じる。また、表面における結晶格子の面取りは、非飽和化学結合による高い表面エネルギーをもたらし、表面をその周囲からの異物原子に対して非常に反応性の高いものにしている。理想的には、表面原子は、それ自体の中で、あるいはバルク構造に含まれるものと同じ元素の原子とだけ再配列し、科学的に均一で構造的に周期的な、いわゆる再構築された表面を形成する必要がある。再構築された表面は、さらなるエピタキシャル層を堆積するための最良のテンプレートとなる。エピタキシーとは、本質的に単結晶の基板上に本質的に単結晶の層を形成することであり、この層および基板は、界面での相互作用により、特定の相互配向をもつ。
【0006】
また、異なる結晶ウエハ、ひいてはその表面は、特に2つ以上の元素の化合物を含むウエハが使用される場合、異なる結晶構造を有する。結晶構造の表面の1つに対して斜めに切断された場合、その表面に露出する元素は、結晶のバルク構造に含まれる元素種の1つが優勢となる場合があり、最終研磨のステップにおける条件によっては、1つの元素種が他の元素種よりも優勢となり、表面の終端とも呼ばれる状態をもたらす場合がある。
【0007】
したがって、複数の元素を含む結晶では、その表面は、構成種の1つ、またはSrOやTiO2などの単位セル以下の分子ブロックで終端することができる。しかしながら、1つの終端(表面における1つの元素の余剰)では、表面の化学的環境およびその温度によって、通常、複数の表面再構成が可能であることから、これはかなり一般的な分類であるといえる。
【0008】
さらに、単一の表面再構成において、表面構造は、通常、いわゆるスーパーセルを有するパターンを採用する。ここで、表面再構成は、下層のバルク単位セルのいくつかにまたがる単位セルを有する2次元周期構造を採用する。これらの表面単位セルは、下層のバルク結晶構造に対して異なる相対配向で配列されることができる。これは、エネルギー的に等価であるので、平均して表面上に等量存在する。例えば、サファイア(Al2O3)の(0001)面は、√31×√31 R±9°で再構築される場合がある。ここで、下層の結晶構造に対する単位セルの+9°の回転と-9°の回転の両方が生じる。
【0009】
表面再構成とは、エピタキシャル層の堆積開始時に、新たに到着する原子が最小エネルギー位置を見つけるエネルギー的なランドスケープのことである。そのため、エピタキシャルテンプレート上に成長する層の配向と結晶の完全性に影響を与える。したがって、テラスの段数、終端、表面再構成、および表面再構成の配向領域などの点で、欠陥が可能な限り少ない表面構造は、この表面上に成長するエピタキシャル層として最良のものである。
【0010】
したがって、表面段差の面密度が可能な限り小さく、単一の終端によって覆われ、単一の終端内では単一の表面再構成を有し、表面再構成内ではエネルギー的に等価な配向のうちの1つのみを有する状態で、層を堆積する前に結晶を作製することが望ましい。
【0011】
量子ビットのような、堆積層内およびその上下の層との界面における構造的欠陥の密度が極めて低いことが要求される量子コンポーネントに向けて電子デバイスの小型化が進んでいるが、このような欠陥は、量子ビットや量子効果に基づく他の機能デバイスとしてそのような電子コンポーネントを使用することを制限または防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このため、本発明の目的は、単結晶ウエハの表面をエピタキシャルテンプレートとして作製する方法を利用できるようにすることである。ここで、エピタキシャルテンプレートには可能な限り欠陥がなく、特に、エピタキシャルテンプレートは、表面再構成のいくつかの可能な公称エネルギー的に等価な配向のうちの1つのみを有する。また、本発明のさらなる目的は、表面再構成のいくつかの可能な公称エネルギー的に等価な配向のうちの1つのみを有するエピタキシャルテンプレート、および表面再構成のいくつかの可能な公称エネルギー的に等価な配向のうちの1つのみを有するそのようなエピタキシャルテンプレートを備えるデバイスを利用できるようにすることである。さらに、本発明の目的は、可能な限りコスト効率に優れ、そのようなウエハ上で電子コンポーネントを大量生産できる方法を利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、添付の特許請求の範囲に記載の独立請求項で定義された主題によって達成される。
【0014】
従属請求項には、添付の図面を参照して以下に説明する本発明の好ましい実施形態が記載されている。
【0015】
本発明の方法は、単結晶ウエハの表面をエピタキシャルテンプレートとして作製する方法である。その表面は、表面原子および/または表面分子を含み、単結晶ウエハは、基板成分として2つ以上の元素および/または2つ以上の分子を含む単結晶を含み、各元素および分子は、昇華速度をもつ。該方法は、
・ ミスカット角の絶対値およびミスカット角の面内方向をもつ所定のミスカットを有する単結晶ウエハ基板を提供するステップと、
・ 表面原子および/または表面分子が表面に沿って再構築および/または移動して、最小の段差密度と、所定のミスカット角およびミスカット方向に従って配向された段差エッジを有する配置部を形成することができる温度まで基板を加熱するステップと、
・ 最も高い昇華速度をもつ基板成分の原子または分子が表面から離脱することができる温度まで基板を加熱するステップと、
・ 任意選択で、昇華と再昇華速度との平衡が、フラックスの密度を変化させて制御可能に確立されるように、表面に作用する同じ種の原子または分子のフラックスを提供するステップと、
を含む。
【0016】
これに関連して、移動は、表面の再構成が行われる温度とは異なる温度で行われる可能性があるので、基板表面の加熱は、複数のステップにわたって行われる可能性があることに留意されたい。
【0017】
また、これに関連して、表面原子および/または表面分子が表面に沿って再構成および/または移動することができる温度は、最も高い昇華速度をもつ基板成分の原子または分子が表面から離脱することができる温度よりも低いことに留意されたい。
【0018】
また、これに関連して、表面原子および/または表面分子が表面に沿って再構成および/または移動することができる温度と、最も高い昇華速度をもつ基板成分の原子または分子が表面を離れることができる温度との間の温度差は、50℃超、好ましくは100℃超、より好ましくは150°超、600℃未満であることに留意されたい。
【0019】
また、これに関連して、ミスカット角とは、バルク基板から単結晶が切断される角度であることに留意されたい。さらに、方向とは、切断が実施されるバルク基板に対する相対的な方向であることに留意されたい。このミスカット角によって、予め作製された表面は、切断の方向に依存するテラス幅とテラス配向をもつことになる。
【0020】
より詳細な定義のために、極方向が結晶面に対して垂直であり、方位角の方向が結晶構造の軸の1つに沿った状態で、ミスカットが定義される結晶面に対して極座標系が取り付けられる。ミスカットの配向は、この座標系におけるミスカット面に対する法線の極角と方位角によって定義される。極角は、ミスカット角の絶対値を定義する。方位角は、ミスカットの方向を定義する。
【0021】
結晶の結晶面からの切断角度(「ミスカット」)の精度を0.01°未満にすることは難しい。この角度の典型的な絶対値は、0.1°~0.01°の範囲である。
【0022】
最良の場合、結晶テラス間の段差の最小距離は、表面に沿って約0.1μm~数μmである。ミスカットの絶対値とは別に、その方向は重要であり、本発明の主題である。これは、表面段差が形成される結晶の周期配列に対してどの方向に向いているかによって、対称性の破れが定義され、エネルギー的に等価な、異なる面内表面再構成の配向を選択することができるからである。
【0023】
単結晶ウエハが切断される結晶のバルク容積、すなわちバルク基板には、本質的に欠陥がなく、単結晶ウエハを切断するプロセスによって、欠陥が単結晶ウエハの表面に導入されることに留意されたい。バルク基板から単結晶ウエハを切断する際に、バルク基板の結晶構造の平面に沿ってバルク基板を直接切断することは、現在のところ技術的に不可能である。これは、バルク基板から平面的な単結晶ウエハを切断することはできないことを意味する。結晶はそれぞれ異なる結晶構造を有し、結晶構造の表面の1つに対して斜めに切断、すなわちミスカットされると、基板表面に存在する「自由な」元素、原子、または分子、すなわち結晶構造の結晶格子内に結合していない基板成分は、残りの構造に対して最もエネルギーが低い状態となる。これは、典型的には、残りの構造内で最も低い結合エネルギーが、自由な要素である表面再構成によって採用される状態である。
【0024】
例えばサファイアの場合と同様に、六方晶結晶構造は、「自由な」元素が表面再構成の2つの配向のうちの1つを採用することを可能にする。これは、単結晶ウエハでは、各ウエハがその表面上に2つの表面再構成の配向の等量の領域を有するという効果をもたらす。
【0025】
UHV雰囲気中で加熱するステップを適用する際に、表面再構成を所望の方向に向けるように表面再構成の配向を操作することができる。これにより、本質的にすべての表面再構成の単位セルは、その後、2つの配向のうちの1つのみに向けられ、表面の自由元素の配向が単一である、これまで不可能であった単結晶ウエハを形成することができる。
【0026】
これに関連して、昇華速度は、表面原子および/または表面分子が単結晶ウエハの表面から蒸発、すなわち脱離または揮発する速度、すなわち所定の温度で単位面積(cm2)当たり表面から離れる速度(1秒当たりの原子または分子)であることに留意されたい。このプロセスの逆は、作用する原子または分子のフラックスからの原子または分子の吸着であり、これも単位時間(秒)および単位面積(cm2)当たりの原子または分子である。
【0027】
本発明の本質は、面内段差の配向による対称性の破れが、表面再構成の異なる面内配向のうちの1つだけを形成するように表面を強制することである。
【0028】
基板の結晶配向を受け継いだ結晶層(エピタキシャル層)は、表面再構成の配向が異なる場合、異なる面内配向で成長する可能性がある。これは、エピタキシャル層の欠陥につながる。本発明において、表面再構成の配向を1つだけにすることで、この問題を回避することができる。これは、基板の原子または分子が、ミスカット角の絶対値によって定義される平均幅を有するテラス系を形成するために、表面に沿って十分に移動可能になる温度まで基板を加熱することによって達成される。基板は、さらに加熱されて、最も昇華速度の高い成分が表面から離脱し、単一の終端が形成され、表面が再構成される。これは、最も高い昇華速度をもつ成分のフラックスを供給することによって、可逆的に制御され得る。この条件下では、ミスカット角の面内配向によって定義される段差エッジの面内配向によって引き起こされる対称性の破れが、この手順によって選択可能な表面再構成のいくつかの面内配向のうちの1つだけを選択させる。
【0029】
したがって、本明細書に記載の方法を実施する際に、ミスカット方向を定義することで、複数のエネルギー的に等価な面内表面再構成の単位セルのうちの1つを選択することができる。
【0030】
ミスカットは、基板を注文する際に指定することができ、通常、0.01度までのものである。通常、切断精度は悪化し、同じ基板から複数のウエハを切断する場合でも変動し、ミスカットは製造可能な精度よりもはるかに高い精度で測定できるため、多くのサプライヤが行っているのは、切断および研磨のプロセス後にウエハを選別することである。これは顧客には知られていない可能性がある。顧客は、特定のミスカットを注文し、所与の公差値でそれを受け取ることができる。
【0031】
本発明は、2つ以上の元素または式単位を含む単結晶上に単一の領域で再構築された表面を作製する方法を提供する。これは、2つのステップで達成される。まず、最も揮発性の高い元素または分子、すなわち最も高い昇華速度を有する基板成分の周囲圧力を調整しながら結晶を加熱し、表面を平衡状態にする。焼鈍温度と元素または分子の過圧力との組み合わせにより、結晶は、特定の表面化学的性質をもつ表面のみを露出させるので、表面に垂直な下層のバルク結晶周期性の大きな分数または整数倍のテラス段差が形成される。次に、単一の表面配向が、低エネルギーの結晶面に近い結晶表面のミスカットによって課され、この構造の1つの面内配向の優位性を強制する対称性の破れを誘発して、単一の表面再構成配向をもつ表面の作製を可能にする。このようなテンプレートは、エネルギー的には等価であるが構造的には不一致である共通の領域構造を有さない後続の層のエピタキシャル成長に使用され得る。
【0032】
このように、本明細書に記載の方法を用いると、エピタキシャルテンプレートを表面に有する単結晶ウエハが形成される。これにより、例えば量子コンピュータに使用可能な小型電子回路の製造にも単結晶ウエハを提供することができる。
【0033】
また、本発明による方法を用いた場合と同様に、超高真空(UHV)中で単結晶ウエハの表面の原子を昇華させて表面を焼鈍した場合、バルク結晶の組成に含まれない表面上の異物原子の昇華速度の範囲の温度で単結晶ウエハを処理した場合と比較して、単結晶ウエハの表面上の異物原子に起因する欠陥の量を少なくとも1桁低減させることができる。
【0034】
これに関連して、単結晶ウエハを加熱する前に、洗浄ステップを実施してもよいことに留意されたい。これにより、単結晶ウエハの切断およびその後の研磨後に単結晶ウエハの表面に存在する可能性のある炭化水素(グリス)などの不純物を低減させることができる。この洗浄ステップは、溶剤の使用、および/または単結晶ウエハを真空システムに導入して脱気することが含まれてもよい。
【0035】
所与の温度における2つ以上の元素および/または2つ以上の分子、すなわち基板成分の昇華速度は、互いに異なっていてもよい。このようにして、薄膜上に成長させように意図されている薄膜に合わせた単結晶ウエハを選択できるように、基礎となる結晶構造を調整することができる。すなわち、格子対称性、格子定数、表面再構成、および表面終端などの側面のうちの1つまたは複数、好ましくはすべてにおいて、薄膜と同じか、薄膜からの逸脱が10%未満である単結晶ウエハを基板として使用した場合、薄膜を成長させることができることが判明している。
【0036】
単結晶ウエハ上に成長させる薄膜が下層の基板と可能な限り類似している場合、薄膜を可能な限り欠陥のない状態で成長させることができる。
【0037】
2つの層を互いに一致させるために、単結晶ウエハ上に所望の薄膜を適用する前に、バッファ層を成長させる必要がある場合がある。
【0038】
2つ以上の元素および/または2つ以上の分子の昇華温度は、少なくとも2℃の差がある。このような温度差は、基板温度の選択によって容易に調整され得る。
【0039】
単結晶ウエハを加熱するステップは、単結晶ウエハを処理対象の表面から離間した表面、すなわちウエハの裏面で加熱する第1の加熱要素を含む少なくとも2つの加熱要素を備える。
【0040】
ウエハのこの裏面の加熱は、典型的には、基板加熱レーザとしても知られている赤外線レーザなどのレーザを使用して実施される。
【0041】
単結晶ウエハは、レーザ放射の吸収を補助するために、裏面に粗い表面を有するように作製されてもよい。この裏面にレーザを照射して、通常1000℃をはるかに超える高温に加熱する。可視波長で透明な基板結晶の多くは、長赤外波長で良好に吸収されるので、約10μmのCO2レーザが使用されてもよい。温度は、ウエハの裏面に向けられたパイロメータで制御される。
【0042】
基板の裏面は、バルク結晶からの切断後、さらなる研削や研磨のステップを実施しないか、粗研削を行うか、加熱レーザの波長以上の長さスケールで、平均表面から局所的に大幅に逸脱する表面粗さを生成する他の手順によって、粗面化される。
【0043】
電磁放射を、後続の層が堆積される側から処理対象の表面に照射することで、第2の加熱要素が提供されてもよい。この放射は、別の外部放射であってもよく、ソース材料の加熱によって生成された放射であってもよい。
【0044】
第2の加熱要素は、表面材料の最も揮発性の高い成分のフラックスで処理対象の表面を照射するためのソースに供給されてもよい。ここで、特にフラックスは、選択された基板温度における表面からの同じ昇華速度よりも低くなるように選択される。
【0045】
フラックスの強度は、基板表面に到達する原子または分子の数と、基板表面から離脱する原子または分子の数との間の平衡を提供するように選択され得る。このようにして、フラックスは、基板の表面に圧力を加える。この圧力は、基板の表面でさらなる空隙が発生するのを防ぐため、または場合によっては基板表面における空隙を埋めるために、基板から離脱する原子または分子によって生じる圧力と相殺される。
【0046】
同じ種の連続的なフラックスで表面を照射することで、表面から離脱する原子と表面に到達する原子との間の所定のフラックス平衡を得ることができる(化学ポテンシャル)。このステップにより、通常、エネルギー的に異なる面内配向を有する場合がある平衡表面再構成が得られる。揮発性成分のフラックスを減少または増加させることにより、表面原子/分子の化学ポテンシャルを両方向にシフトさせることができるので、このようにして化学ポテンシャルに依存した異なる可能性のある表面再構成の作製と選択を可逆的に行うことができる。同じ種の連続的なフラックスで表面を照射することなく、基板温度を上昇させた状態で表面から揮発性種を昇華させることで、揮発性成分の表面減少に向かう方向の表面再構成を順次作製することのみができる。
【0047】
揮発性は、単位時間当たりに表面から蒸発する原子の数を表し(昇華速度)、一方向にしか作用しない。単結晶ウエハが真空雰囲気に曝される場合、すなわち、該プロセスが真空中で実施される場合、表面から離脱する基板成分が最終的にさらなる不要な欠陥をもたらす可能性があるので、原子を表面に作用させる材料のフラックスが提供されることで、その損失を補うことができる。
【0048】
フラックスは、単結晶ウエハの格子構造の元素が格子構造から離脱するのを防止する圧力を表面に導入し、実際、吸着、表面移動、および取り込みによって、基板成分を「自由な」格子間隔に再導入するためにも使用され得る。
【0049】
このように、加熱ステップを2段階で行うことができる。第1段階は、構造の原子を整列させるために実施され、第2段階は、原子が基板から離脱しないようにするために実施され、これにより、異なる表面再構成をもつ揮発性元素の特定の濃度を定義することができる。
【0050】
任意選択で、昇華温度は、950℃を超える温度である。理想的には、対応するレーザを使用することで、このような温度を区別および/または設定することができる。昇華フラックス(蒸気圧)は温度ともに指数関数的に増加する。昇華速度が結晶成長に有用な実質的な値に到達する温度は明確に定義されており、通常、100秒未満で結晶表面上の原子層の1つの昇華に対応する。
【0051】
結晶の2つ以上の元素および/または2つ以上の分子は、Si、C、Ge、As、Al、O、N、O、Mg、Nd、Ga、Ti、La、Sr、Ta、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。例えば、単結晶ウエハは、SiC、AlN、GaN、Al2O3、MgO、NdGaO3、LaAlO3、DyScO3、TbScO3、TiO2、(LaAlO3)0.3(Sr2TaAlO6)0.35(LSAT)、Ga2O3、およびSrTiO3の化合物のうちの1つから作製され得る。このような化合物は、量子コンポーネントの形成に特に適していることが見出されている。
【0052】
加熱のステップは、1つまたは複数の形態の電磁放射を提供する1つまたは複数のレーザによって実施されてもよい。有利には、レーザは、基板を所望の定義された温度に加熱するために使用され、その使用は比較的簡単である。
【0053】
加熱のステップは、10-8hPa~10-12hPaの範囲で選択された真空雰囲気中で実施されてもよい。チャンバが生成できるものであればなんでもよいが、最小のガス密度を有する雰囲気を使用することで、単結晶ウエハの表面における欠陥の数を最小限に抑えることができる。
【0054】
切断のステップは、例えば、鋸刃または任意にダイアモンド層でコーティングしたワイヤを使用する機械的切断によって実施される。特に、バルク基板から単結晶ウエハを切断するステップは、バルク基板の結晶面とは異なる切断面において表面を切断して、単結晶のバルク基板から単結晶ウエハを切断することによって実施されてもよい。
【0055】
このようにバルク基板を切断することで、単結晶ウエハの所望の用途に合わせて、表面テラスの形状およびサイズを予め定義し、選択することができる。例えば、バルク基板の中心軸に対して0.01°~0.1°、好ましくは0.03°~0.08°、特に0.05°または少なくとも実質的に0.05°傾斜した切断面において表面を切断することで、バルク基板から単結晶ウエハを切断することができてもよい。
【0056】
また、本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の方法によって処理された単結晶ウエハを提供するステップと、その表面上にさらなる層を堆積させるステップと、を含むデバイスを形成する方法に関する。このようにして、デバイスを形成する薄膜は、この目的のために使用される従来の単結晶ウエハよりも欠陥の数が少ないエピタキシャルテンプレート上に成長されるので、可能な限り欠陥のないデバイスが得られる。
【0057】
さらなる層は、基板と同じ材料、金属、例えばAl、Ti、Ta、Fe、Nb、Cu、Co、Ni、Si、Ge、酸化物、窒化物、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン化物、硫化物、セレン化物、水銀系化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含んでもよい。多くの場合、ホモエピタキシャル層と呼ばれる基板と同じ材料のエピタキシャル層は、基板そのものよりも低い欠陥密度を有するように成長させることができる。したがって、同じ材料のバッファ層は、裸の基板表面よりも良好なテンプレートを提供することができる。
【0058】
さらなる層は、単一の層として堆積されてもよく、1つまたは複数の種類の材料を含む多層構造として堆積されてもよい。このようにして、特定の種類の用途のための特定の種類のデバイスを形成することができる。
【0059】
理想的には熱レーザエピタキシーによって、ウエハの前面に向けて対応する材料を蒸発させることで、1つまたは複数のさらなる層を単結晶基板上に成長させてもよい。しかしながら、分子ビームエピタキシー、パルスレーザ堆積、スパッタリング、その他の種類の物理的または化学的蒸着、例えば原子層堆積、有機金属CVDなど、他のよく知られた成長方法を採用することもできる。
【0060】
加熱のステップは、表面上にさらなる層を堆積するステップと同じチャンバ内で、任意選択で同じ雰囲気中で実施されてもよい。このようにして、単結晶ウエハが作製されるのと同じ反応チャンバ内で、1つまたは複数の層をin situで直接成長させることができる。これにより、洗浄された単結晶ウエハが反応チャンバ間で移動される場合に、そのウエハに導入される可能性のある欠陥の数を低減させることができる。
【0061】
また、本発明のさらなる態様は、エピタキシャルテンプレートと、エピタキシャルテンプレート上に成長させた1つまたは複数の層と、を有する層構造を備えるデバイスに関する。このようなデバイスでは、従来技術のデバイスと比較して、欠陥の数を大幅に低減させることができる。
【0062】
上述した方法で処理された基板上に成長させることができる1つまたは複数の層のうちの1つ、好ましくは1つまたは複数の層のすべては、100μs超、好ましくは1000μs超、より好ましくは10ms超の量子ビット緩和時間および量子ビットコヒーレンス時間を有してもよい。このような層は欠陥の数が非常に少ないか、好ましくは欠陥がなく、これにより、このデバイスを量子ビットとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
以下、本発明の実施形態および添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【
図1】単一の真空チャンバを備える熱レーザエピタキシー用途のための反応チャンバを示す図である。
【
図2】第1および第2の反応容積を画定する第1および第2の真空チャンバを備える熱レーザエピタキシー用途のための反応チャンバを示す図である。
【
図3】複雑な単結晶固体の段差のある表面の断面図であり、黒色と白色はそれぞれ異なる原子または分子種を示す。
【
図4】基板の表面の段差の高さまたは表面化学的性質の不一致によるエピタキシー不良を示す図である。
【
図5】基板の表面のバルク周期性に対応する段差高さを有するレジストリにおけるエピタキシーを示す図である。
【
図8】「黒色」材料の分数的追加被覆としての表面再構成を模式的に示す図である
【
図9】表面再構成の2つの鏡面対称単位セルを示す図である。
【
図10】下層の結晶構造と完全に整列したテラスのあるシステムを示す図である。
【
図11】立方晶の面内結晶軸(図では水平軸および垂直軸)からわずかに離れた方向に向けられたミスカットを示す図である。
【
図12】面内結晶軸から45°ずれた方向のミスカットを示す図である。
【
図13】2つの可能な表面単位セルの配向のうちの1つを優先するように、表面ミスカットによる対称性の破れを使用した場合の図である。
【
図14】固体コンポーネントを作製する基本ステップを示す図である。
【
図15】バッファ層を追加する追加のステップを示す図である。
【
図16】2つの材料ソースを用いて薄膜を堆積するステップを示す図である。
【
図17】カバー層を追加する追加のステップを示す図である。
【
図18】量子デバイスの第1の実施例を示す図である。
【
図19】量子デバイスの第2の実施例を示す図である。
【
図20】Al
2O
3の√31×√31の表面再構成のRHEEDパターンを示す図であり、基板の主結晶軸に対して単一の回転配向を有する。基板は、1×10
-6hPaのO
2雰囲気中、1700℃で200秒間焼鈍され、この雰囲気で20℃まで急速に冷却された。基板の主結晶軸の1つにRHEEDビームを沿わせ、20℃で撮影した画像である。
【
図21】
図20と同じ試料を反時計回りに9°回転させた後のRHEEDパターンを示す図である。
【
図22】Al
2O
3の√31×√31の表面再構成のRHEEDパターンを示す図であり、基板の主結晶軸に対して両方向の回転配向を有する。基板は、0.75×10
-1hPaのO
2雰囲気中、1700℃で200秒間焼鈍され、この雰囲気で20℃まで急速に冷却された。基板の主結晶軸の1つにRHEEDビームを沿わせ、20℃で撮影した画像である。
【
図23】本発明の表面処理プロセスのAl
2O
3表面のAFM顕微鏡写真である。基板は、1×10
-6hPaのO
2雰囲気中、1700℃で200秒間焼鈍され、この雰囲気で20℃まで急速に冷却された。
【
図24】
図22の線に沿って抽出した高さプロファイルを示す図である。
【
図25】本発明の方法で作製されたAl
2O
3基板上に成長した厚さ50nm(画像中の参照バーの長さの40分の1)のTa薄膜のAFM顕微鏡写真である。基板を、堆積前に超高真空(圧力<10
-10hPa)中、1700℃で200秒間焼鈍した。Ta膜を、局所的に溶融したTa金属ソースから圧力<2×10
-10hPa、1200℃の基板温度で成長させた。
【
図26】本発明の方法で作製されたAl
2O
3基板上に成長した厚さ10nmのTa薄膜の上面からのSEM顕微鏡写真である。基板を、堆積前に超高真空(圧力<10
-10hPa)中、1700℃で200秒間焼鈍した。Ta膜を、圧力<2×10
-10hPa、1200℃の基板温度で成長させた。
【
図27】本発明の方法で作製されたAl
2O
3基板上に成長した厚さ50nmのTa薄膜のXRD回折パターンを示す図である。基板を、堆積前に超高真空(圧力<10
-10hPa)中、1700℃で200秒間焼鈍した。Ta膜を、圧力<2×10
-10hPa、1200℃の基板温度で成長させた。Ta膜のα-Ta(110)/(220)等価面のみが、基板のピークとともに、表面に垂直な方向に見える。これは、完全なエピタキシャル整列に対応するTa膜の単一の面外配向を確認することができる。
【
図28】TLEによって室温でエピタキシャル配向なしでSiテンプレート上に成長したNb膜を示す図である。堆積時間は40分であった。層の厚さは20nmであった。基板温度が低く、クリーンなエピタキシャルテンプレートがないので、多数の欠陥を含む無秩序な柱状膜構造が作製された。
【
図29】一定のレーザ出力および酸素-オゾンガス流を使用して、Tiのレーザ蒸発中に測定されたチャンバ圧力P
oxを示す図である。
【
図30】TLEによってSi(100)基板上に成長した(a)Ti酸化膜、(b)Fe酸化膜、(c)Hf酸化膜、(d)V酸化膜、(e)Ni酸化膜、および(f)Nb酸化膜の微小角入射X線回折パターンを示す図である。各酸化物の予想された回折ピーク位置は、各図において灰色の線で示されている。
【
図31】TLEによって堆積された複数の酸化膜の断面
図SEM画像である。各パネルはP
oxの値を示す。ほとんどの膜は柱状構造を有する。
【
図32】複数のP
ox値に対する(a)TLE堆積Ti酸化物および(b)TLE堆積Ni酸化膜の微小角入射X線回折パターンを示す図である。P
oxが増加するにつれて、Tiソースはルチル相およびアナテーゼ相のTiO
2膜を作製し、Niソースは、部分的に酸化されたNi/NiO膜を作製する。(a)の灰色の線と紫色の実線の星は、TiO
2ルチル相とアナテーゼ相の予想される回折ピーク位置をそれぞれ示す。(b)の灰色の線は、立方晶NiOの予想されるピーク位置を示す。
【
図33】複数のP
oxで測定した(a)Ti(酸化物)および(b)Ni(酸化物)の堆積速度を示す図である。Tiの堆積速度はP
oxの増加とともに増加する一方で、NiでP
ox>10
-3hPaの増加は蒸発プロセスをほとんど抑制している。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、第1の反応容積14を画定する単一の真空チャンバ12を備える熱レーザエピタキシー用途のための反応チャンバ10を示している。反応チャンバ10は、周囲雰囲気、すなわち、実験室、工場、またはクリーンルームなどに対して密閉され得る。真空チャンバ12は、10
1hPa~10
-12hPaの範囲の圧力に加圧することができ、当業者には知られている純粋に理想的な条件では、真空チャンバ12の外に向けられた矢印で模式的に示すように、真空チャンバ12から空気を抽出する適切な真空ポンプ18を使用して、10
-8hPa~10
-12hPaの範囲の圧力に加圧することができる。
【0065】
必要に応じて、プロセスガスGは、真空チャンバ12内に向けられた矢印に沿って、ガス供給部20から真空チャンバ12内に導入され得る。反応ガスとしても知られるプロセスガスGは、酸素、オゾン、プラズマ活性化酸素、窒素、プラズマ活性化窒素、水素、F、Cl、Br、I、P、S、Se、およびHgなどのガス、またはNH3、SF6、N2O、CH4などの化合物から選択され得る。プロセスガスGの圧力は、10-8hPaから周囲圧力の範囲で選択され、純粋に理想的な条件では、10-8hPa~1hPaの範囲で選択され得る。
【0066】
真空ポンプ18は、任意のガス供給部20とともに、反応チャンバ10内にそれぞれの反応雰囲気、すなわち、所定のガス雰囲気と任意に組み合わされた真空を提供する。
【0067】
反応チャンバは、基板24を配置することができる基板配置部22を備える。実際には、複数の基板配置部22を設けることができ、且つ/または1つまたは複数の基板配置部22上に複数の基板24を配置することができる。
【0068】
使用される基板24は、典型的には、単結晶ウエハであり得、ウエハの材料は、典型的には、SiC、AlN、GaN、Al2O3、MgO、NdGaO3、DyScO3、TbScO3、TiO2、(LaAlO3)0.3(Sr2TaAlO6)0.35(LSAT)、Ga2O3、およびSrTiO3からなる群から選択される。このような単結晶ウエハは、典型的には、固体コンポーネントの作製に使用され、量子ビットなどの量子コンポーネントの作製には興味深い候補である。
【0069】
単結晶ウエハの形態で存在し得る基板24のコーティングおよび前処理の間に、基板24は、基板加熱レーザ26を使用して加熱される。
【0070】
基板加熱レーザ26は、典型的には、赤外線領域における波長、具体的には1μm~20μm、特に約8μm~12μmの範囲で選択された波長で動作する赤外線レーザである。このような波長は、例えば、CO2レーザ26を介して利用可能である。
【0071】
基板加熱レーザ26は、典型的には、基板24の裏面50を介した間接加熱により、基板24の基板表面48、すなわち、基板24の表側を加熱する。これにより、基板表面48は、900℃~3000℃、特に1000℃~2000℃の範囲の温度に加熱され得る。これにより、基板加熱レーザ26の強度は、最も高い昇華速度を有する基板成分の昇華速度および昇華温度に依存して、様々な所望の温度を達成するために変化する。
【0072】
典型的には、基板加熱レーザ26の強度は、基板サイズが5×5mm2または10×10mm2の場合、4W~1kWの範囲で変化させることができる。必要な処理温度に到達するためには、10×10mm2のサファイア基板で2000℃に達するのに100W、10×10mm2のSrTiO3基板で1400℃に達するのに500Wが必要である。必要な温度は、大きく異なる。プランクの法則によれば、面積当たりの放射電力は、材料の特性である材料のエミッタンスに依存し、T4として温度に依存する。これは、必要な電力が温度とともに劇的に増加することを意味する。
【0073】
本発明によるエピタキシャルテンプレートの作製に必要な温度範囲に対応するために、基板上の必要な最大出力密度は1kW/cm2であり、例えば、2000℃のサファイアでは約100W/cm2など、かなり小さい値であることがわかる。
【0074】
温度に対するT4の劇的な依存性により、基板加熱レーザは、同時に、基板作製のために低温を必要とする材料、特に低温での基板テンプレート上のエピタキシャル層の堆積のために、安定した低出力レベルを維持する能力を有する高いダイナミックレンジを必要とする。
【0075】
また、基板24は、前面、側面、または別の方向から加熱されてもよいことに留意されたい。加熱手段に応じて、基板成分の1つ、すなわち、基板を形成する元素の1つが、加熱ステップ中に基板表面48に沿って移動することができ、所望のエピタキシャルテンプレート60を生成するために基板表面48から脱離または昇華することができるように、基板表面48の温度が900℃~3000℃の範囲内で加熱され得ることが単に保証されるべきである(以下、例えば、
図5~
図7を参照)。
【0076】
基板表面48の温度は、パイロメータなど(図示せず)を使用して測定され得る。
【0077】
両方向の矢印28で示すように、基板配置部22は、適切な装置(図示せず)を使用して真空チャンバ12に対して出し入れされ得る。
【0078】
基板24を薄膜62の1つまたは複数の層でコーティングするために(添付の
図14~
図20参照)、反応チャンバ10は、ソース配置部34に配置された第1のソース要素30および第2のソース要素32をさらに備える。これらのソース要素30および32は、単一のソース要素30の別個のコンポーネント部分として設けられ得る。
【0079】
なお、これに関連して、それぞれのソース30および32は、薄膜62の堆積のために使用されるそれぞれの真空チャンバ12内で選択された温度および圧力において固体であれば、周期表の任意の元素から選択され得ることに留意されたい。
【0080】
また、これに関連して、元素が薄膜62として二元酸化物を堆積させるために約10%の反応雰囲気として酸素/オゾン混合物中で堆積される場合、それぞれのソース30および32のための好ましい材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Hf、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Rh、Ta、W、Re、Ir、Ga、In、Si、Ge、Sn、Eu、Ce、Pd、Ag、Pt、およびAuであることに留意されたい。単結晶薄膜62を堆積させるために、典型的には真空雰囲気が使用される。
【0081】
第1のソース要素30および第2のソース要素32にそれぞれ向けられた第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38も提供される。第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38によって、第1のソース要素30および第2のソース要素32において異なる蒸発および/または昇華温度が利用可能になる。
【0082】
第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38によって、典型的には、第1のソース要素30および第2のソース要素32において、280nm~20μmの範囲で選択された波長のレーザ光が利用可能になる。金属ソースの場合、短い波長で金属の吸収率が増加するので、ソース加熱レーザ36および38によって、350nm~800nmの範囲で選択された波長範囲の光が利用可能になることが好ましい。515nmを下回る短い波長の高出力レーザはまだ商業的に利用可能ではないが、低出力測定に従って300nmで最も高い吸収率が予想される。この波長のレーザが利用可能になれば、ソース加熱レーザの好ましい波長は300nm±20nmとなる。
【0083】
さらに、これに関連して、レーザ26、36、および38は、パルスモードで動作することができるが、連続放射ソースとして使用されることが好ましいことに留意されたい。連続レーザ26、36、および38は、単位時間当たりの導入エネルギーが、ソース30および32を損傷させる可能性があるパルスソースよりも少ない。
【0084】
第1のソース要素30および第2のソース要素32から元素を昇華および/または蒸発させ、これらが基板24のコーティングのために基板表面48にそれらが到達するようにするために、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38の適切な強度を選択する必要がある。この強度は、基板表面48からの第1のソース要素30および第2のソース要素32の距離に依存する。基板表面における所与のフラックス密度に対して、第1のソース要素30および第2のソース要素32が基板表面48から離れるおよび/または基板表面48に向けて移動するにつれて、強度は増加および/または減少する。
【0085】
本実施例において、基板表面48は、それぞれの第1のソース要素30および第2のソース要素32から60mm離れて配置される。レーザの強度は、第1のソース要素30および第2のソース要素32と基板表面48との間の距離の2乗にほぼ相関する。したがって、第1のソース要素30および第2のソース要素32と基板表面48との間の距離を2倍増加させるためには、レーザの強度を約4倍増加させる必要がある。
【0086】
したがって、以下に指定する強度は、第1のソース要素30および第2のソース要素32と基板表面48との間の距離が60mmの場合である。より大きな距離が選択された場合、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のそれぞれの強度を増加させる必要があり、距離が減少された場合はその逆となる。
【0087】
一般に、基板加熱レーザ26、第1のソース加熱レーザ36、および第2のソース加熱レーザ38によって、レーザ光が利用可能になり、特に10nm~100μmの範囲の波長を有するレーザ光、好ましくは可視または赤外線範囲で選択された波長を有するレーザ光、特に280nm~1.2μmの範囲の波長を有するレーザ光が利用可能になる。これらのレーザ26、36、および38によって、第1の電磁放射、および/または第2の電磁放射、および/または第3の電磁放射、および/または他のタイプの電磁放射が利用可能になる。
【0088】
第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38は、第1のソース要素30および第2のソース要素32を第1の材料および/または第2の材料のプラズマ閾値を下回る温度まで加熱することで、第1のソース要素30および第2のソース要素32から第1の材料および第2の材料を蒸発および/または昇華させるために設けられる。
【0089】
昇華および/または蒸発したソース材料がチャンバの入射窓52に堆積するのを防止する遮蔽部として機能する遮蔽開口部40が、真空チャンバ12に模式的に示されている。このような材料の層が窓52上に堆積した場合、それぞれのレーザ26、36、および38は、窓上に吸収されたその材料を補償するために、時間の経過とともに適合される必要がある。
【0090】
また、遮蔽開口部40は、レーザ26、36、および38のうちの1つの反射レーザ光が、それぞれのレーザ26、36、および38を破壊する可能性のあるレーザ26、36、および38のうちの1つに再び集光されるのを防止するための遮蔽部として機能することができる。
【0091】
また、遮蔽開口部40は、それぞれのレーザ26、36、および38の1つまたは複数のビーム成形システムの一部を形成することができる。したがって、これは、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38からのそれぞれの電磁放射を反応チャンバ10に結合し、且つ第1のソース要素30および第2のソース要素32に結合するための結合手段として使用され得る。
【0092】
一般に、さらなる結合手段として、それぞれのレーザ光を反応チャンバ10に結合するために、レーザ26、36、および38の各々と反応チャンバ10との間に窓52がそれぞれ配置される。
【0093】
これは、結合手段が、レーザ26、36、および38のうちの1つからの光を反応チャンバに、すなわち、基板24上および第1のソース要素30および第2のソース要素32のうちの1つまたは複数の上に、その意図された用途のために結合されるように使用され得る、任意の種類の光学要素またはレーザ光ビーム成形要素を備えることができることを意味する。
【0094】
なお、これに関連して、反応チャンバ10は、単一のソース要素30、または2つ以上のソース要素30および32を備えてもよく、さらなるソース要素によって、反応チャンバ10内の1つまたは複数の基板24上に堆積させることができる同じ種類または別の種類のさらなる材料が利用可能になることに留意されたい。
【0095】
また、これに関連して、2つ以上のソース要素30および32が真空チャンバ12内で利用可能である場合、それぞれのソース要素30および32の材料を含む薄膜62の昇華および/または蒸発のために、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のうちの1つからのレーザ光は、一方のソース要素30および32に向けられるが、他方のソース要素32および30には向けられないことに留意されたい。
【0096】
このプロセスは、基板24上に複数の異なる層および多層、ならびに合金または複合構造を形成するために、真空チャンバ12内に設けられた各ソース要素に対して繰り返され得る。
【0097】
同様に、複数のソース要素30および32からソース材料を同時に昇華および/または蒸発させて、基板24の表面48上に化合物を堆積させるための薄膜62を基板24の表面48上に堆積させるために、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のうちの1つからのレーザ光、ならびに第3のソース加熱レーザが、ソース要素30および32の両方、ならびに提供される場合にはさらなるソース要素に向けられ得る。
【0098】
したがって、薄膜62または基板24上に堆積した層の材料は、蒸発および/または昇華した材料と反応雰囲気の成分との反応生成物であり、すなわち、プロセスガスGと反応した化合物が提供された場合、または昇華および/または蒸発が真空中で実施された場合、単一の材料の薄膜62である。
【0099】
後述するように、真空チャンバ12内にいくつのソース要素30および32が設けられ、所与の時間でレーザ光が照射されるにもかかわらず、プロセスガスは、真空チャンバ内に導入され、蒸発および/または昇華したソース材料とプロセスガスとの反応をもたらして、酸化物など、ソース材料とプロセスガスとの化合物から形成される薄膜を生成することができる。
【0100】
さらに、蒸発および/または昇華に使用される第1のソース要素30および/または第2のソース要素32の材料は、自己支持が可能であり、これにより、坩堝を有さないように提供され得ることに留意されたい。例えば、坩堝が関連しないTaソース要素30および32が提供され得る。
【0101】
図2は、第1の反応容積14および第2の反応容積16を画定する2つの真空チャンバ12を備える2つの種類の反応チャンバ10を示している。第1および第2の反応容積は、ゲートバルブ44を介して互いに分離されている。
【0102】
このような反応チャンバ10は、異なる反応雰囲気中で膜を形成する必要がある多層膜の形成(
図14~
図19参照)において、または生産ラインの一部として、基板24を異なる反応チャンバ内でバッチ的に異なる膜でコーティングする場合に、有益に選択されてもよい。
【0103】
このようにして、反応チャンバ10は、少なくとも2つの分離された反応容積14および16を備える。ここで、少なくとも2つの反応容積14および16は、例えば、ゲートバルブ44を介して、互いに対して密閉可能であり、基板配置部は、周囲雰囲気に対して連続的に密閉された反応チャンバ10内で少なくとも2つの反応容積14および16間を移動することができる。
【0104】
なお、これに関連して、第1の反応雰囲気および第2の反応雰囲気、ならびに提供される場合には第3またはそれ以上の反応雰囲気は、同一あってもよいことに留意されたい。
【0105】
代替的に、第1の反応雰囲気と第2の反応雰囲気および/または第3の反応雰囲気とは異なっており、異なる反応容積14および16の間で交換されるか、第1の容積14および/または反応容積16内で交換され、且つ/または第2の反応雰囲気と第3の反応雰囲気とは異なっており、異なる反応容積14および16の間で交換されるか、第1の容積14および/または反応容積16内で交換される。
【0106】
さらに、これに関連して、第1の反応雰囲気および/または第2の反応雰囲気、および/または第3またはそれ以上の反応雰囲気は、少なくとも部分的にイオン化または励起され、特にプラズマイオン化および/または励起によってイオン化される。励起は、原子または分子内の1つまたは複数の電子がエネルギー的により高いレベルに遷移することを表す。このような高いレベルからの緩和は、蒸発した原子または分子と、活性化またはイオン化した反応ガスとの間の化学反応を可能にするかそれを改善するための追加のエネルギーを提供することができる。
【0107】
基板表面48の作製のため、1つまたは複数の薄膜の堆積のため、および終端の焼戻しおよび/または冷却のために、それぞれ異なる反応雰囲気であることが適している場合がある。したがって、異なる反応容積14および16が利用可能であることは、さらなる利点となり得る。
【0108】
なお、これに関連して、1つまたは複数の薄膜62を備える固体デバイス、特に量子デバイス、好ましくは量子ビットが作製され、1つまたは複数の薄膜62が第1の材料を含み、各膜62が単層から100nmの範囲で選択された厚さを有し、基板の前面上に堆積される場合、製造プロセスは、
図1または
図2に示す反応チャンバ10内で実施され得ることに留意されたい。次に、反応チャンバ10は、周囲雰囲気に対して密閉されて、制御された真空が発生し、任意選択でプロセスガスGにおいて利用可能なガス反応雰囲気と一緒にされる。
【0109】
このような方法は、以下のステップを含む。
(a)反応チャンバ10が第1の反応雰囲気を含む間、例えば、真空を含む間、場合によっては酸素などのプロセスガス20と組み合わせて含む間に、反応チャンバ10に結合された第1の電磁放射で基板24を加熱することで、基板24の前面48を作製するステップ。これに関連して、第1の電磁放射は、基板加熱レーザ26によって利用可能となる。
(b)ステップ(a)で作製された前面48上に第1の材料および/または第1の材料を含む化合物を含む薄膜62を堆積させるために、反応チャンバ10が第2の反応雰囲気を含む間、例えば、真空、または部分真空および所定のガス雰囲気を含む間に、例えば、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のうちの1つを使用して、反応チャンバ10に結合された第2の電磁放射で第1の材料を含むソース要素30および32を加熱することで、第1の材料を蒸発および/または昇華させるステップ。
(c)任意選択で、固体デバイスを形成するため、および固体デバイスの焼戻しおよび/または制御された冷却のために、反応チャンバ10が第3の反応雰囲気を含む間に、反応チャンバ10に結合された第3の電磁放射で1つまたは複数の薄膜62および/または基板24を照射するステップ。
【0110】
ここで、ステップ(a)~(c)の間、反応チャンバ10は周囲雰囲気に対して密閉されたままであり、基板と後続の固体デバイスの両方は反応チャンバ10内に連続的に留まる。
【0111】
なお、これに関連して、基板24の前面48を作製する方法は、以下の教示に従って利用可能となることに留意されたい。しかしながら、基板24上のあまり純度の高くない層構造についても、従来の洗浄および精製ステップが実施できることにも留意されたい。
【0112】
ここで、エピタキシャルテンプレート60として単結晶ウエハ24の表面48を作製する具体的な方法を説明する。表面48は、表面原子および/または表面分子を含み、単結晶ウエハ24は、基板成分として2つ以上の元素および/または2つ以上の分子を含む単結晶を含み、元素および分子の各々は、昇華速度を有する。該方法は、
・ 単結晶ウエハ基板24に、所定のミスカット角および方向を提供するステップと、
・ 表面原子および/または表面分子が表面48に沿って移動して、最小の段差密度と、所定のミスカット角およびミスカット方向に従って配向された段差エッジとを有する配置部を形成することができる温度まで基板24を加熱するステップと、
・ 昇華速度が最も高い基板成分の原子または分子が表面から離脱(昇華、脱離)する温度まで基板24を加熱するステップと、
を含む。
【0113】
任意選択で、基板24の表面48は、同じ種の連続的なフラックスで照射され、表面から離脱する原子または分子と表面に到達する原子または分子との間の所定のフラックス平衡を得ることができる(化学ポテンシャル)。このステップにより、通常、エネルギー的に等価な面内配向を有する場合がある表面再構成が得られる。
【0114】
これにより、異なる面内配向のうちの1つだけを形成するように基板表面48が強制する段差の向きによって、表面48に予め配置された原子および/または分子の対称性の破れを引き起こすことができる。
【0115】
基板24の結晶配向に対して定義された配向を有する結晶層(エピタキシャル層)は、表面が、表面再構成において異なる配向を有する場合、異なる面内配向で成長する可能性がある。これは、エピタキシャル層における欠陥に繋がる。本明細書に記載の基板を作製する方法を使用する場合、この方法を使用して再構成された表面24の単一の配向を提供することによって、これを回避することができる。
【0116】
なお、これに関連して、所与の温度における2つ以上の元素および/または2つ以上の分子の昇華速度は、通常、互いに異なることに留意されたい。
【0117】
単結晶ウエハ24を加熱するステップは、2つの加熱要素、すなわち、単結晶ウエハ24を処理対象の表面48から離間した表面で加熱する第1の加熱要素と、高温蒸発ソース32および34によって生成された熱黒体放射を処理対象の表面48に照射することで加熱する第2の加熱要素とを含む。
【0118】
フラックスは、表面48に圧力を導入し、表面からの脱離フラックスと競合することで、表面におけるフラックス種の化学ポテンシャルを定義する平衡を確立する。
【0119】
基板表面を加熱し、揮発性成分の平衡フラックスを照射することで、いくつかのプロセスが活性化する。
【0120】
最初のものは、
図3に関して
図6および
図7を参照すると、表面構造の繰り返し周期を定義する特定の終端(「黒色」と「白色」で模式的に示す)を定義することである。したがって、ミスカット面に最も近い結晶面に垂直な段差高さが定義される。
【0121】
2つ目のものは、ステップ構造に関してエネルギーが最も低い表面が採用されるような、表面に沿った原子の動員である。これにより、最初のステップの段差高さとミスカット角によって与えられるステップの数が最も少なくなる。
【0122】
3つ目のものは、揮発性フラックスの設定によって制御されるように、主に基板温度および揮発性フラックスの化学ポテンシャルによって決定される表面再構成の形成である。
【0123】
4つ目のものは、
図13に模式的に示すように、ミスカット方向の選択による、表面単位セルのエネルギー的に等価な異なる配向の選択である。
【0124】
例えば、サファイア基板24のための酸素などの材料のフラックスは、表面48における欠陥を埋め、表面48から離脱する原子と表面48に加わる原子との間の平衡を得るために原子の余剰を提供するのを助ける。これは、フラックスによって及ぼされる圧力、すなわち、基板上に作用する酸素の量を適応することで変化させることができる。
【0125】
なお、例えば、昇華温度は典型的には950℃を超え、サファイアの場合は約1700℃、SrTiO3の場合は約1300℃であることに留意されたい。
【0126】
単結晶ウエハ24を形成する結晶の2つ以上の元素および/または2つ以上の分子は、Si、C、Ge、As、Al、O、N、O、Mg、Nd、Ga、Ti、La、Sr、Ta、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、単結晶ウエハ24は、SiC、AlN、GaN、Al2O3、MgO、NdGaO3、TiO2、(LaAlO3)0.3(Sr2TaAlO6)0.35(LSAT)、Ga2O3、SrLaAlO4、Y:ZrO2(YSZ)、およびSrTiO3の化合物のうちの1つから作製され得る。
【0127】
加熱のステップは、基板加熱レーザ26によって、任意選択で、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38のうちの1つと組み合わせて実施される。ただし、最も昇華速度が高く、基板に向けて連続的に供給されるべき単結晶ウエハ24の材料を含む場合に限る。
【0128】
脱離フラックスと補償安定化フラックスとの間の平衡が望ましくない場合、基板24の作製中の加熱のステップは、典型的には、10-8hPa~10-12hPaの範囲で選択された真空雰囲気中で実施される。
【0129】
安定化フラックスを用いることで、基板24の作製中の加熱のステップは、典型的には、10-6hPa~103hPaの範囲で選択された真空雰囲気中で実施される。
【0130】
これにより、例えば、
図5~
図8に模式的に示すように、エピタキシャルテンプレート60を形成することができる。
【0131】
一般に、基板24は、その上に成長/堆積される層構造と一致するように選択される。一般に、基板24は、その上に成長される薄膜62と同じものが使用されるか、格子対称性、格子定数、表面再構成、および表面終端のうちの1つまたは複数、あるいはすべてにおいて、薄膜62から最大10%逸脱するものが使用される。
【0132】
これを促進するために、薄膜62をその上に堆積する前に、表面48上にバッファ層を堆積することが必要あるいは有益であり得る。
【0133】
本発明は、表面48の垂直方向および面内方向において均一な原子配列が有利である、後続のエピタキシーまたはその他の用途のための本質的に単結晶のテンプレートを提供するという問題に対する解決策を提示している。
【0134】
図3は、少なくとも2つの元素または式単位からなる結晶24を切断した模式図であり、結晶を切断した表面48が2つ以上の元素または式単位からなるテラス58の交互配列を露出するように配向させた状態で切断されている。図を明確にするために、
図3には、白と黒で示された2つの元素または式単位だけが示されている。表面処理の場合、結晶24は、原子または分子が表面48から離脱するか、表面48に付着することができるような十分に高温に供されて、結晶24内の式単位に対応する原子または分子の両方のフラックスは、結晶24とフラックスとが互いに平衡状態であるように利用可能である。
図3に示すように、表面24は、通常、異なる表面組成を有するテラス58を交互に露出させ、結晶24内の最も小さい安定段差サイズ(式単位)に対応する段差高さを有する。
【0135】
図4は、
図3に示す基板24の表面48上に堆積されたエピタキシャル層60および薄膜62、ならびに段差高さの不一致または表面の化学的性質に起因する欠陥エピタキシーを示している。
【0136】
図に示す典型的なケースでは、テラス58の構造の段差高さは、エピタキシャル層60の格子定数と一致しない。これにより、段差エッジ66に積層オフセットが形成され、エピタキシャル層60の単位セルが互いに対してずらされる。図を明確にするために、
図4では、このずれは、段差高さによるものだけである。また、後続のテラス上の表面化学的性質が交互に変化し(「白色」対「黒色」)、両方のテラス上の基板とエピタキシャル層との間の界面構造が異なることに起因する場合もある。通常、このような化学的不一致は、界面に幾何学的なオフセットを生じさせ、さらに、局所的な電荷や構造欠陥などの有害な影響をもたらす。その代わりに、本出願人は、エピタキシャル層62、すなわち薄膜62および基板24の格子定数が一致し、エピタキシャル層62、すなわち薄膜62が常に1つの同じ露出表面層に成長する、
図5に示す界面構造の実現を目指した。また、この一致は、界面に垂直な方向に適用されるだけでなく、表面48は、結晶構造の単一の面内配向を露出させ、表面の垂直方向の周りに回転した、あるいは表面または露出したテラスに平行でない面で鏡面化された異なる領域の形成を回避する必要がある。
【0137】
本明細書に記載の作製方法を使用することで、すべてのテラス58の表面において均一な表面化学的性質および(通常、再構築された)表面原子配列の単一の面内配向の両方を提供するエピタキシャルテンプレート60としての表面48を作製することができる。
図3に示す状況は、ほとんどの結晶固体において、その成分(元素または分子)の蒸気圧がしばしば強く異なるという点で、ある程度理想化されている。したがって、特に、基板24の作製中に原子または分子のフラックスが表面48に作用することがなければ、基板24が十分に高い温度に加熱された場合、特定の種が表面48から優先的に離脱する。
【0138】
したがって、
図6および
図7に示す状況は、選択的に発生するので、通常、いずれか一方の状況しか実際には実現できない。ここでは、この2つの図は、表面処理で原理的に可能な2つの極端な状況を示している。作用している気相における一方の成分に対する他方の相対的な過圧に依存して、表面48は、「白色」(
図6)または「黒色」(
図7)のいずれか一方のタイプのテラスが他方のタイプを犠牲にして成長し、最終的に表面全体を覆うような状態で作製され得る。
【0139】
実際には、このような化学的平衡は、典型的に1つの元素または式単位がほぼ完全に優勢になるには、異なる成分間の圧力差が何桁も必要であるため、揮発性の低い元素または式単位が表面48を覆うことによってのみ、完全な被覆を達成することができる。注目すべきことに、この2つの間の固有の揮発性の差も、通常、それ自体で数桁に相当する。
【0140】
したがって、この作製方法は、少なくとも結晶の最も揮発性の高い成分が表面48から昇華する温度まで基板結晶24を加熱するステップを含む。結晶24の異なる不要な化合物への分解を回避するために、より高い温度で揮発性種のフラックスを表面48に照射する必要がある場合もある。十分に高い温度を使用して
・ 表面48が、少なくとも揮発性種の原子をその周囲と交換することができるように、且つ
・ 表面48に沿った原子の移動度が、高度に秩序化した最小エネルギーテラスを形成するのに十分に高くなるように
することで、均一な表面化学的性質を有する所望の2段表面構造が形成される。
することで、均一な表面化学的性質を有する所望の2段表面構造が形成される。
【0141】
実際には、表面48は、バルク終端表面層の間で切り替わるのではなく、表面再構成を形成する。ここで、表面原子は、バルクとは異なる位置に再配列し、多くの場合、表面エネルギーが最小限に抑えられるように、化学量論さえも異なる。これは
図8に示されている。ここでは、追加的な「黒色」を含む上記のような表面再構成は、より厚い黒色層で示されている。
【0142】
作用する種の圧力と表面温度に応じて、所与の終端ではしばしば異なる表面再構成が可能になり、例えば、サファイアでは、少なくとも2つの異なるAlリッチ表面再構成が存在する。
【0143】
表面再構成は、通常、下層のバルク結晶の複数の単位セルにまたがる表面スーパーセルの形成に関連する。
図7には、任意の例として、2つのバルク単位セルを覆い、2つの等価な鏡面対称の表面単位セルを有する表面単位セルが示されている。どちらの場合も、2つの表面単位セルが示されている。実際には、表面単位セルは、表面48に沿って両方向に周期的に繰り返され、テラス58全体を覆う。本実施例において、表面単位セルの両方の配向が同じエネルギーを有しており、そのため、広い領域にわたって、平均して表面48の半分がそれぞれの配向で覆われるように、互いに独立して等しい確率で核形成される。
【0144】
これは、領域が接する境界での欠陥に繋がるので、望ましくない構成である。エピタキシャル成長のためのテンプレートとして使用される場合、このような異なる表面再構成の領域は、その上に成長するエピタキシャル膜62の異なる配向を引き起こす可能性もあり、これにより、面内表面再構成領域の境界が、異なる配向の結晶子間の3次元平面領域の境界としてエピタキシャル膜62に転写される。この問題は、表面48の対称性を破り、エネルギー的に不等価にすることで、一方の表面単位セルの配向を他方より有利にすることで解決される場合がある。
【0145】
図9は、表面再構成の2つの鏡面対称の単位セルを示している。これは、例えば、サファイア単結晶ウエハ24の場合であり、ミスカットによって2つの異なる配向を有する表面が作製される。これは、
図4に示すような状況をもたらす。
【0146】
本発明に従ってこれを達成するために提案された方法は、表面のミスカットの配向と傾斜である。バルク単結晶から基板ディスク(「ウエハ」24)を切断するとき、切断面は、結晶面からわずかに離れる方向に向けられる場合がある。この粘性ミスカットの角度に応じて、作製された表面48は、切断方向に依存するテラス幅およびテラス配向を有するので、任意に制御され得る。立方晶の面内結晶構造の一例として、3つの異なる結果のテラス構造が
図11~
図13に模式的に示されている。
【0147】
図10は、基板表面48のテラスのあるシステム58が、下層の結晶構造と完全に整列した状態を示している。図に示す実施例において、この段差の配向は、どちらも表面の段差と同じ角度をなすため、
図9の表面単位セルの2つの可能な面内配向のうちの1つを支持するものではない。
【0148】
図11は、面内結晶軸から垂直方向にわずかに離れた面内配向を示している。大きな正方形のエッジは、バルク立方晶の面を示している。最後に、
図12は、面内結晶軸から45°の方向に配向したテラストレインを示している。
【0149】
このミスカットは、システムの対称性を破る他の方法と同様に、
図13に示すように、2つの異なる表面単位セルのうちの一方を有利にするために使用されてもよい。この模式図では、等価な表面再構成単位セルの1つに平行な段差配向で面内テラスシステムが作製されており、これは、本実施例において、表面再構成単位セルと段差エッジとの位置関係、すなわち上側の配向が有利になり、下側の交差した配向は抑制される。
【0150】
ミスカット角の方位角成分に対応する段差エッジの面内配向が表面単位セルの配向のうちの一方を選択させる一方で、ミスカット角の絶対値、すなわちその極性成分も、単一の配向構造を安定化させる上で重要である。高温では、エントロピーがあらゆるシステムに統計的無秩序をもたらす。この場合、面内表面単位セルの配向がエッジで確立され、その後、単位セルから単位セルへと伝播するので、各テラス上の特定の平均距離で再び反対配向の単位セルを有する欠陥が生じる可能性がある。ミスカット角の絶対値が十分に高い場合(例えば、0.05°)、一方の配向を他方の配向に転写する安定化ステップが非常に短い距離で発生するので、このようなずれ、ひいては欠陥密度の増加を回避することができる。
【0151】
図14は、固体コンポーネント100を作製するための方法における3つの基本的なステップA、B、およびCを示している。これらのステップは、反応チャンバ10内で実施される(
図1参照)。特に、反応チャンバ10は、製造プロセス全体にわたって周囲雰囲気に対して密閉されたままである。これにより、形成された固体コンポーネント100における欠陥の数の低減に関して各ステップの利点を維持することができ、その結果、量子ビットの緩和時間および量子ビットのコヒーレンス時間が100μs超、好ましくは1000μs超、さらに好ましくは10msとなる。
【0152】
図14の左側に「A」で示される該方法の第1のステップ(a)において、基板24は、例えば本明細書に記載されるように、または単に当該技術分野で知られているように、ガス雰囲気中で作製される。第1の反応雰囲気116は、反応チャンバ10内に充填される。特に、基板24は、第1の電磁放射104によって加熱される。好ましくは、この第1の電磁放射104は、基板加熱レーザ26によって提供される(
図1、
図2参照)。好ましくは、基板表面48とは反対側の裏面50から基板を加熱することで、焼鈍効果を引き起こすことができる。
【0153】
また、第1の反応雰囲気116は、基板表面48の組成も維持されるように選択され得る。すなわち、適切な反応ガスまたはプロセスガスGを使用することができ、例えば、酸素欠乏および酸素空孔の形成を回避するために、Al2O3の場合には酸素を使用することができる。さらに、終端材料Tのフラックスも基板表面48上に向けることができる。好ましくは、終端材料Tは、特に基板24の材料の元素を含み、特にその元素から構成される。これにより、終端材料Tは、原子または分子の欠落によって生じる基板表面48の欠陥を埋めることができ、且つ/または基板表面48に圧力を与えることができる。これにより、基板表面48から原子または分子が蒸発するのを防止することができる。
【0154】
好ましくは、全体的な結果として、ステップ(a)の後に、基板表面48は、基板24の格子構造に関する欠陥がないか、少なくとも欠陥の数が低減しており、さらに、表面再構成および表面終端に関する欠陥も大幅に減少させることができ、好ましくはゼロまで減少させることができる。
【0155】
図14の中央に「B」で示されるステップ(b)において、第1の材料126を含む1つまたは複数の薄膜62がステップ(a)で先に作製された基板表面48上に堆積される。上述したように、ステップ(a)とステップ(b)との間、反応チャンバ10は周囲雰囲気に対して密閉されたままである。
【0156】
これに関連して、本明細書に記載の薄膜62は、単層から100nmの範囲の厚さを有する、閉じた膜と同種の原子または分子の層、または式単位であることに留意されたい。
【0157】
図14の「B」に示すように、第1の材料126は、ソース配置部34によって反応チャンバ10内に第1のソース30、すなわちソース要素として提供される。第1のソース30は、第1の材料126の蒸発および/または昇華のために、好ましくは第1のソース加熱レーザ36(
図1、
図2参照)によって提供される適切な第2の電磁放射106によって加熱される。第2の電磁放射106を使用することで、蒸発および/または昇華プロセスのために、薄膜62の不純物、ひいては欠陥の源となるような追加の成分は、反応チャンバ10内で必要とされない。
【0158】
堆積プロセス中に、反応チャンバ10は、第2の反応雰囲気118で満たされ得る。第1の材料126を含む高純度の薄膜62に好ましく使用されるような高真空に加えて、適切なプロセスガスGも第2の反応雰囲気118として使用することができる。これにより、蒸発および/または昇華した第1の材料126(
図14の「B」において矢印126として示す)は、第2の反応雰囲気118と反応することができ、第1の材料126と第2の反応雰囲気118のプロセスガスGの材料とを含むそれぞれの反応生成物は、基板表面48上に堆積される。例えば、第1の材料126は、金属であり得、プロセスガスは、酸素であり得、その結果、金属の酸化物が薄膜62として堆積される。
【0159】
要約すると、ステップ(b)の後に、1つまたは複数の薄膜62が基板表面48上に堆積される。第2の電磁放射106を使用することで、広範囲の第1の材料126を使用することができ、これにより、適切な第2の反応雰囲気118を選択して、1つまたは複数の薄膜62の材料の可能な組成の範囲をさらに拡大することができる。さらに、第1の材料126の特に純粋な蒸発および/または昇華を確保することができる。したがって、好ましくは、1つまたは複数の薄膜62は、欠陥のない基板表面48上にも構築され、また、基板に起因する欠陥もないか、少なくとも低減されている。
【0160】
図14の左側に「C」で示される該方法のステップ(c)において、第3の電磁放射108は、基板24および1つまたは複数の薄膜62を照射するために使用される。これにより、最終的に固体コンポーネント100が形成される。特に図に示す実施形態において、第3の電磁放射108は、基板24の裏面50に熱を加え、これにより、1つまたは複数の薄膜62に熱を間接的に加えることができる。
【0161】
第3の電磁放射108は、2つの目的を果たすことができる。まず、加えられた熱は、固体コンポーネント100を焼戻しするために使用され得る。これにより、既に低くなっている固体コンポーネント100の欠陥の数をさらに低減させることができる。
【0162】
次に、第3の電磁放射108の強度を適切に変化させる、特に減少させることで、固体コンポーネント100に制御された冷却を提供することができる。これにより、基板24および1つまたは複数の薄膜62の異なる熱膨張によって引き起こされる欠陥を回避することができる。
【0163】
この焼戻しおよび制御された冷却は、反応チャンバ10を適切な第3の反応雰囲気120で満たすことで対応することができる。
【0164】
要約すると、
図14に示す非常に基本的なバージョンで示す方法を用いて作製された固体コンポーネント100は、欠陥がないか、少なくとも欠陥の数が極めて少なく、これにより、理想的には100μs超、好ましくは1000μs超、より好ましくは10ms超の量子ビット緩和時間と量子ビットコヒーレンス時間を達成することができる。これにより、このような固体コンポーネント100は、量子コンポーネント102(
図18、
図19参照)、特に量子ビットの基礎として使用するのに見事に適している。
【0165】
図15は、
図14に示す方法のステップ(a)において任意選択で実施されるサブステップを示している。バッファ材料132は、第4の電磁放射110によって蒸発および/または昇華され、蒸発および/または昇華プロセスに必要なエネルギーの外部ソースの使用に関して上述したすべての利点を提供する。
【0166】
蒸発および/または昇華したバッファ材料132(
図15のそれぞれの矢印132参照)は、基板表面48上に堆積され、バッファ層134を形成する。ここでも、適切に選択された第4の反応雰囲気122が、この堆積に対応するために使用される。換言すれば、1つまたは複数の薄膜62(
図17、
図19参照)のその後の堆積は、バッファ層134上に実施される。バッファ層は、基板24と最下部の薄膜62との間の、特に格子定数に関する差を均等化するために使用され得る。これにより、このような差によって1つまたは複数の薄膜62に生じる欠陥を抑制することができる。
【0167】
図16には、該方法のステップ(b)の可能な実施形態のスナップショットが示されている。特に、実際に示されている堆積プロセスは、第1の材料126と第2の材料128を同時に蒸発および/または昇華するステップを含む。反応チャンバは、適切な第2の反応雰囲気118で満たされる。
【0168】
図に示す実施形態において、第2の電磁放射106は、2つのコンポーネントビーム114を含み、その一方が第1の材料126を含む第1のソース30上に向けられ、他方が第2の材料128を含む第2のソース32に向けられる。コンポーネントビーム114は、材料126および128の蒸発および/または昇華のためにそれぞれ適応的に選択される。
【0169】
蒸発および/または昇華した第1の材料126および第2の材料128(それぞれの矢印126および128参照)は、ともに堆積されて1つの薄膜62を形成する。例えば、材料126および128の両方は、金属要素であり得、薄膜62は、これらの金属の合金から形成され得る。
【0170】
なお、
図16に示す薄膜62は、多層構造を有し、第3の材料130を含む層も存在することに留意されたい。第3の材料130の堆積のための対応する第2の反応雰囲気118が、
図16に示す第1の材料126および第2の材料128の同時堆積に適して使用される第2の反応雰囲気118と異なる場合、好都合なことに、2つの反応容積14および16(
図2参照)を有する反応チャンバ10を使用することができる。ここで、2つの堆積プロセスの一方が第1の反応容積14内で実施され、他方が第2の反応容積16内で実施される。
【0171】
図17は、
図14に示す方法のステップ(b)の最後の反復と次のステップ(c)との間、またはステップ(c)の後に実施される任意のサブステップを示している。カバー材料136は、第5の電磁放射112によって蒸発および/または昇華される。これにより、蒸発および/または昇華プロセスのために必要なエネルギーの外部ソースの使用に関して上述したすべての利点を再び提供することができる。
【0172】
蒸発および/または昇華したカバー材料136(
図17のそれぞれの矢印136参照)は、薄膜62上に堆積され、
図17に示す特定の実施例では、それぞれ交互に第1の材料126および第2の材料128からなる4つの層を備える多層構造であり、カバー層138を形成する。また、カバー層138の堆積のために、適切に選択された第5の反応雰囲気124は、この特定の堆積に対応するために使用される。カバー層138は、薄膜62を外部の影響から遮蔽する。これにより、このような外部の影響によって引き起こされる欠陥、例えば、薄膜62の最上層へのさらなる材料の望ましくない堆積を回避することができる。
【0173】
図18および
図19には、本発明による固体コンポーネント100に基づく量子コンポーネント102が示されている。
図18は、非常に単純な量子コンポーネント102を示しており、
図19は、より洗練されたものを示している。また、機能する量子コンポーネントを得るには、通常、フォトリソグラフィ、エッチング、イオンミリング、およびその他の適切な手順によって実施される複数のパターニングステップが必要である。
【0174】
固体コンポーネント100は、100μs超、好ましくは1000μs超、より好ましくは10ms超の量子ビット緩和時間および量子ビットコヒーレンス時間を有する、および/または本発明による方法によって作製される、1cm2および層当たりの欠陥の数が十分に少ないという共通点を有する。固体コンポーネント100の欠陥の数が少ないと、量子コンポーネント102のコヒーレンス時間が長くなる。
【0175】
図18に示す量子コンポーネント102は、第1の材料126を含む単一の薄膜62を備える。薄膜62は、基板24上に堆積される。
【0176】
それとは対照的に、
図19は、合計6層の多層構造、特に2回繰り返される3層パターンを有する薄膜62を備える量子コンポーネント102を示している。この3つの異なる層は、最も下層から、第1の材料126、第2の材料の反応生成物および第2の反応雰囲気118の元素、ならびに第3の材料130をそれぞれ含む。
【0177】
また、量子コンポーネント102は、基板24と薄膜62の最下層との間に、バッファ材料132を含むバッファ層134を備える。これにより、
図15を参照して上述したように、基板24とそれに続く薄膜62との間の遷移に起因する欠陥を回避することができる。
【0178】
さらに、量子コンポーネント102は、薄膜62を覆って保護するカバー材料136を含むカバー層138を備える。これにより、
図17を参照して上述したように、外部の影響、特に周囲雰囲気との反応、例えばさらなる材料の望ましくない堆積に起因する欠陥を回避することができる。
【0179】
上述したように、基板表面48上に複数の薄膜62を堆積することで、基板24上に多層膜や多材料膜62を形成するために、様々な薄膜62を異なる材料で形成することができる。
【0180】
薄膜62を形成するために、第1のソース要素30および第2のソース要素32の第1の材料および/または第2の材料には、金属などの元素が使用される。
【0181】
本発明の技術的実現可能性を例示するために、
図20~
図28は、TaおよびNb薄膜62を成長させたAl
2O
3基板24に対する本技術の実験的検証を示している。TaおよびNbは、数Kで超電導性を示すので、量子ビットデバイスの作製に適している。
【0182】
図20は、本発明の方法により作製されたAl
2O
3基板24の、RHEED(反射高速電子線回折法)による表面回折パターンである。RHEEDビームは、約2°の極角で表面48に入射する。
【0183】
多数のスポットが、高度に秩序化した2次元結晶表面を例示している。斜線の鏡面対称パターンは、RHEEDビームが基板の主結晶軸のうちの1つに沿って整列されていることを示している。この場合、表面再構成は、バルク格子に対して+9°回転している。これは、基板24がRHEEDビームに対して反時計回りに9°回転し、RHEEDビームと表面再構成とが整列している
図21に示されている。
【0184】
その他の観察可能なスポットのない同心円の対称パターンは、基板表面全体で+9°の単一の回転をもつ単一の表面再構成を示している。-9°の配向はまったく見られないことから、本発明によるエネルギー的に等価な複数の表面再構成から1つを選択する方法の実行可能性を確認することができた。
【0185】
酸素プロセスガスの圧力を0.75×10
-1hPaに変えることで、酸素原子が表面48から離脱する化学ポテンシャルがシフトし、最小エネルギー較正は、より低い圧力で観察された単一の回転最高ではなくなった。
図22は、どちらの表面回転配向も等しく有利であることを示している。RHEEDパターンは鏡面対称であり、左側のスポットと右側のスポットの強度は等しい。
【0186】
図23は、
図20におけるRHEEDで撮像した、作製プロセス後の基板の表面形態を示している。表面は高度に秩序化されており、最小エネルギーのテラス・段差構造を示している。ここで、直線状のテラスエッジ66は、主結晶軸に対して約+25°の角度で配向しており、画像のエッジとほぼ整列している。
【0187】
図24は、
図23の線に沿って抽出された高さプロファイルを示している。この基板のテラスの幅は約500μmであり、テラス58間の段差の高さの差は約0.43nmである。Al
2O
3の場合、これは、バルクAl
2O
3構造内の2つのAl層間の分離に相当する。これらのAl層は、
図3~
図8の模式図における「黒色」層に対応している。
図20に示す表面再構成は、バルク基板24の上に追加された「黒色」層に対応している。
【0188】
図25は、超高純度条件下、且つ高い表面温度で上記のようなテンプレート上に成長させたTa膜62の表面のAFM画像を示している。これにより、表面に沿ったTa原子の長距離変位が可能になる。この膜の異なる単結晶領域は、元々異なる配向で核形成されているが、下層の結晶表面の表面再構成の長距離秩序によって制約されている。これらの領域は、過剰に成長して場合によっては隣接する領域を取り込んで、欠陥密度が極めて低く、且つ厚さの約40倍の横方向の広がりを有する、大きくて平坦な単結晶領域が形成される。
【0189】
この領域の単結晶性は、表面に見える単一の原子の段差、および下層のエピタキシャルテンプレートの軸に沿った六方晶系六回対称(60°ごと)の段差および領域のエッジの整列から明らかである。
【0190】
図26は、ほぼ同一の条件下で成長させた膜62の同様のSEM画像を示している。ここでは、横方向の解像度は
図25の約2倍である。ただし、
図25の場合とは異なり、層の厚さの約1/5しか成長しなかったところで成長を停止させた。したがって、この画像は、独立して核形成された異なるエピタキシャル結晶粒間の合体プロセスにおけるスナップショットを表している。ここでは、結晶は、横方向につながって、大きなサイズの単結晶粒が形成され始めている。
【0191】
図27に示すX線スキャンは、
図25と同じ膜のものである。その測定は、試料表面全体の平均を本質的に算出し、膜62が実験の解像度の範囲内で完全に単結晶であり、明確で別個のピークが、基板24に平行に配向したTaの結晶面の単一族に対応することが明らかになった。この結果は、非常に高い構造的完全性、および膜62と基板24との完全なエピタキシャル整列を示している。
【0192】
最後に、
図28は、堆積後にへき開した層構造のSEMの断面画像を示している。ここでは、エピタキシャル整列のないSi基板24上のNb膜62を約250℃の基板温度で成長させた。この膜62はエピタキシャルではなく、高い欠陥密度をもつ無秩序な柱状構造を示しているが、本発明によれば、シームレスに統合されたin situのプロセスにおいて、高温焼鈍を用いた基板作製技術と極めてクリーンな後続の堆積を組み合わせることで、それを回避することができる。
【0193】
また、化合物の層を薄膜62として成長させることもできる。この目的のために、基板上に、単層から数μmの範囲で選択された厚さを有する化合物層62を形成する方法が実施される。上述したように、基板24は、単結晶ウエハであり得る。基板24は、
図1および
図2に示す反応チャンバ10などのプロセスチャンバ内に配置される。反応チャンバ10は、ソース材料の1つまたは複数のソース30および32を含む。該方法は、
・ プロセスチャンバ10内に反応雰囲気を提供するステップであって、該反応雰囲気は、所定のプロセスガスGおよび反応チャンバ圧力を含む、ステップと、
・ 第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38から1つまたは複数のソース30および32にレーザ光を照射して、ソース材料の原子および/または分子を昇華および/または蒸発させるステップと、
・ 蒸発した原子および/または分子を、プロセスガスと反応させて、上に化合物の層を形成するステップと、
を含む。
【0194】
なお、これに関連して、第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38からのレーザ光は、基板24に直接対向するソースの表面に向けられることに留意されたい。
【0195】
典型的には、反応チャンバ圧力は、10-6hPa~101hPaの範囲で選択される。化合物を形成する方法を実行することに関して、反応雰囲気を提供するステップは、通常、プロセスチャンバ10を第1の圧力まで排気し、次に、プロセスガスGを導入して反応チャンバ10内の反応チャンバ圧力である第2の圧力を得るステップを含む。
【0196】
典型的には、第1の圧力は、第2の圧力よりも低くなっており、第2の圧力は、10-11hPa~10-2hPaの範囲で選択される。
【0197】
反応チャンバ10の少なくともシュラウドおよび/または内壁の温度は、77K~500Kの範囲で選択された温度に制御される。
【0198】
ソース材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Hf、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Rh、Ta、W、Re、Ir、Ga、In、Si、Ge、Sn、Eu、Ce、Pd、Ag、Pt、Au、および上記の合金、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0199】
ソース材料の原子および/または分子を昇華および/または蒸発させるためにレーザ光を1つまたは複数のソース30および32に照射することができるレーザ光は、1mm2のスポットサイズおよび50mm~120mmの範囲で選択された1つまたは複数のソースと基板との間の距離に対して、1W~2000Wの範囲で選択された強度で1つまたは複数のソース30および32に集光される。
【0200】
1つまたは複数のソース30および32を照射するレーザ光は、280nm~20μmの範囲、特に450nm~1.2μmの範囲の波長を有する。
【0201】
基板上に堆積される化合物は、酸化物、窒化物、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン化物、硫化物、セレン化物、または水銀化合物のうちの1つであり得る。
【0202】
プロセスガスGの圧力が高くなると、蒸発した原子または分子は、ガス原子との衝突が多くなる。これは、それらの方向および運動エネルギーのランダム化をもたらす。その結果、蒸発した原子または分子のうち、基板24に到達するものの割合はかなり小さくなるが、それでも場合によっては、特に作業距離が短く基板が大きい場合に、層62を形成するのに有効なことがある。このような条件下で基板24上に化合物層または酸化物層62を形成するには、以下のいくつかの条件がある。
・ 成長様式1:ソース材料126がソース表面で反応または酸化し、化合物または酸化物として蒸発または昇華する。次に、基板上に化合物または酸化物として堆積する。
・ 成長様式2:ソース材料126が反応せずに蒸発または昇華し、ソース30および32から基板24への軌道上でガス原子との衝突によりガスGと反応し、化合物または酸化物として堆積する。
・ 成長様式3:ソース材料126が反応せずに蒸発または昇華し、反応することなく移動し、基板24上に堆積するときまたは堆積した後に、基板24に作用するガス原子または分子と反応する。
・ 成長様式4:上記の任意の組み合わせ。
【0203】
特に興味深いのは、ソース材料126がガスGと反応して、ソース材料126自体よりも高い蒸発/昇華速度をもつ準安定化合物を形成する輸送反応である。この材料は、気相でさらに反応し、薄膜62として最終化合物として堆積するか、基板24上に堆積し、さらにガスGと反応して、薄膜62として最終的な安定化合物が形成される。
【0204】
化合物の具体的な例は以下の通りである。
【0205】
TiO2:TiO2の場合、ソース材料はTiであり、基板上に堆積される化合物は主にアナテーゼまたはルチルTiO2であり、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.2kW/mm2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~180分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~30分の時間内で得られる700nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0206】
NiO:NiOの場合、ソース材料はNiであり、基板上に堆積される化合物は主にNiOであり、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.35kW/mm2の出力密度に対応する100W~350Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~50分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる500nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0207】
Co3O4:Co3O4の場合、ソース材料はCoであり、基板上に堆積される化合物は主にCo3O4であり、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.2kW/mm2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~90分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる200nmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0208】
Fe3O4:Fe3O4の場合、ソース材料はFeであり、基板上に堆積される化合物は主にFe3O4であり、レーザ光は515nm~1070nmの範囲、特に1000nm~1070nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.1kW/mm2~0.2kW/mm2の出力密度に対応する100W~200Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~10μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる5μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0209】
CuO:CuOの場合、ソース材料はCuであり、基板上に堆積される化合物は主にCuOであり、レーザ光は500nm~1070nmの範囲、特に500nm~550nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~0.9kW/mm2の出力密度に対応する1W~900Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~30分の時間内で得られる0.15μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0210】
バナジウム酸化物:バナジウム酸化物の場合、ソース材料はVであり、基板上に堆積される化合物は主にV2O3、VO2、またはV2O5であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.06kW/mm2~0.12kW/mm2の出力密度に対応する60W~120Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~60分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.3μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0211】
Nb2O5:Nb2O5の場合、ソース材料はNbであり、基板上に堆積される化合物は主にNb2O5であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~2μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0212】
Cr2O3:Cr2O3の場合、ソース材料はCrであり、基板上に堆積される化合物は主にCr2O3であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.02kW/mm2~0.08kW/mm2の出力密度に対応する20W~80Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.5μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0213】
RuO2:RuO2の場合、ソース材料はRuであり、基板上に堆積される化合物は主にRuO2であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.6kW/mm2の出力密度に対応する200W~600Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~300分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる0.06μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0214】
ZnO:ZnOの場合、ソース材料はZnであり、基板上に堆積される化合物は主にZnOであり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.005kW/mm2~0.010kW/mm2の出力密度に対応する5W~10Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0215】
MnO:MnOの場合、ソース材料はMnであり、基板上に堆積される化合物は主にMnOであり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.005kW/mm2~0.010kW/mm2の出力密度に対応する5W~10Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.4μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0216】
Sc2O3:Sc2O3の場合、ソース材料はScであり、基板上に堆積される化合物は主にSc2O3であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.02kW/mm2~0.05kW/mm2の出力密度に対応する20W~50Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる1.3μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0217】
Mo4O11またはMoO3:Mo4O11またはMoO3の場合、ソース材料はMoあり、基板上に堆積される化合物は主にMo4O11またはMoO3であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.4kW/mm2~0.8kW/mm2の出力密度に対応する400W~800Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~30分の時間内で得られる0~4μmの範囲で選択され、特に10分~20分の時間内で得られる4.0μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0218】
ZrO2:ZrO2の場合、ソース材料はZrであり、基板上に堆積される化合物は主にZrO2であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.3kW/mm2~0.5kW/mm2の出力密度に対応する300W~500Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~100分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる0.2μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0219】
HfO2:HfO2の場合、ソース材料はHfであり、基板上に堆積される化合物は主にHfO2であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.25kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する250W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~40分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる0.6μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。
【0220】
Al2O3:Al2O3の場合、ソース材料はAlであり、基板上に堆積される化合物は主にAl2O3であり、レーザ光は515nm~1100nmの範囲、特に1000nm~1100nmの範囲で選択された波長を有し、強度はソース表面上で0.001kW/mm2~2kW/mm2の出力密度に対応する1W~2000Wの範囲、特に0.2kW/mm2~0.4kW/mm2の出力密度に対応する200W~400Wの範囲であり、プロセスガスはO2とO3の混合物、特にO3含有量が5重量%~10重量%のものであり、反応チャンバ圧力は10-11hPa~1hPa、特に10-6hPa~10-2hPaであり、化合物層の厚さは0~20分の時間内で得られる0~1μmの範囲で選択され、特に15分~25分の時間内で得られる1.0μmであり、作業距離は10mm~1m、特に40mm~80mmであり、基板直径は5mm~300mm、特に51mmである。Alの場合、成長様式4により、300W~500Wのレーザ出力で毎分1μm超の高い成長速度を達成することができる。
【0221】
TLE(熱レーザ蒸発)は、金属膜の成長に特に有効な技術である。ここでは、熱レーザ蒸発が非結晶質および多結晶酸化膜の成長にも適していることを実証した。以下、酸素-オゾン雰囲気中で、元素金属ソースのレーザ誘起蒸発によって堆積された二元酸化膜のスペクトルについて報告する。TLEによる酸化物の堆積は、元素金属ソースの酸化を伴う。これは、ソースの分子フラックスを系統的な影響を与える。同じレーザ光学系を使用し、加熱していない基板上に成長させた酸化膜のソースとして15種類の元素金属を使用することに成功した。ソース材料は、Hf、Mo、およびRuなどの蒸気圧が低い耐火性金属から、低温で容易に消化するZnまで多岐にわたった。これらの結果から、TLEは、非常にクリーンな酸化膜の成長に適していることが明らかになった。
【0222】
酸化膜62は、その広範囲にわたる興味深い有用な特性により、新しい機能性を実現するうえで大きな関心を集めている。酸化膜の成長には、電子ビーム蒸着(EBE)、分子ビームエピタキシー(MBE)、パルスレーザ堆積(PLD)、スパッタリング、および原子層堆積(ALD)など、事実上あらゆる蒸着技術が用いられている。熱レーザ蒸発(TLE)は、レーザビームで金属ソースを熱蒸発させることで、MBE、PLD、およびEBEの利点を併せもつため、非常にクリーンな金属膜の成長に有望な技術であることが最近実証された。
【0223】
吸着制御成長様式を利用することで、MBEは特に優れた構造品質をもつ膜の成長に適している。MBEでは、ソース材料の分子フラックスは、ソース材料を蒸発させることによって生成される。しかしながら、この目的に好ましいオーミックヒータは、反応性バックグランドガスの使用を制限する。この制限は、複雑な金属酸化物の成長には致命的である。さらに、B、C、Ru、Ir、およびWなどの蒸気圧の低い元素は、外部からのオーミック加熱では蒸発させることができない。これらの元素を蒸発させるにはEBEが必要だが、この技術は正確で安定した蒸発速度を達成するには最適ではない。PLDは、短周期の高出力レーザーパルスを介して基板上にソース材料を転写する。PLDは、反応性ガスの高いバックグラウンド圧力で作動できるが、材料組成の精密な制御は困難であり、特に膜組成を滑らかに変化させたい場合には難しい。
【0224】
レーザの発明後、レーザアシスト蒸発法による薄膜の堆積が提案され、試みられてきた。しかしながら、連続発振(cw)レーザによる蒸発は、非化学量論的な薄膜の形成により断念された。同時に、高出力密度パルスレーザによる蒸発がPLDの発明につながった。cwレーザ技術の発展とともに、TLEは、MBE、PLD、およびEBEのそれぞれの弱点を解消しながら、それぞれの利点を組み合わせることができる複雑な材料のエピタキシャル成長の候補として、最近再発見された。真空チャンバ12の外部に設置されたレーザ36および38は、局所加熱によって純金属ソース30および32を蒸発させる。これは、簡単なセットアップしか必要とせず、各ソース要素の精密な蒸発制御、ソース材料の高純度化、およびバックグラウンドガスGの組成と圧力に関するほぼ無制限の選択を可能にする。多くの場合、局所的に溶融したソース30および32は、それ自体が坩堝を形成する。坩堝からの不純物の混入を回避することで、ソース30および32は、高純度を保つことが保証される。元素金属膜および半導体膜62を堆積するTLEの可能性は、BiおよびZnなどの蒸気圧の高い元素から、WおよびTaなどの蒸気圧の低い元素まで、幅広い元素を膜62として堆積することで実現している。
【0225】
酸化膜62およびヘテロ構造の成長にTLEを使用することも非常に有利であり得るが、酸化雰囲気でそれが可能であることは明らかではない。MBEおよびEBEに干渉する熱源(フィラメント)の酸化は、TLEでは回避するのが容易でない。しかしながら、酸化雰囲気中でレーザビームを用いて加熱すると、金属ソース30および32自体が酸化しやすくなる。ソースが酸化すると、レーザ放射は、もはや元のソース材料によってのみ吸収されるのではなく、その酸化物によっても吸収される。実際、ソース全体またはソースの表面が酸化する場合があり、あるいは酸化物が溶融プール上に部分的な層を形成する場合がある。また、ソース材料の分子フラックスは、ソースの金属部分とソース材料の酸化物の両方によって生成される可能性がある。
【0226】
そのために、蒸気圧の高いあるいは低い元素金属ソース30および32を、様々な酸素-オゾン雰囲気中でレーザ照射して蒸発させる一連の実験を行った。蒸発プロセスを簡便に調べるため、本来の酸化物で覆われた加熱していないSi(100)ウエハを基板24として使用した。第1のソース加熱レーザ36および第2のソース加熱レーザ38と同じレーザ光学系と1030nm~1070nmのレーザ波長を使用して、酸化膜62を成長させることに成功した。この実験から、強酸化雰囲気中で元素ソースを蒸発させると、プロセス中にソース30および32が酸化されるにもかかわらず、酸化膜成長に適用できることが明らかになった。酸化雰囲気を調整することで、所与の雰囲気中で異なる酸化物相が得られることもわかった。さらに、堆積プロセスは、酸素-オゾン圧力の関数として特徴的な変化を示すことがわかった。
【0227】
図1は、本発明で使用したTLEチャンバ10の模式図を示している。60mmの作業距離を隔てて、高純度の円筒形金属ソース30および32と2インチのSi(100)基板24とがTaベースのホルダ22で支持されている。ソース30および32の加熱には、1030nmのファイバ結合ディスクレーザ36と、上面に45°で入射する1070nmのファイバレーザ38を使用した。これらのレーザ36および38の利用可能性から判断して、Ti、Co、Fe、Cu、およびNiの蒸発には前者のレーザ36を使用し、その他の元素には後者のレーザ38を使用した。2つのレーザ36および38の性能に差は見られなかった。どちらのレーザ36および38も、ソース30および32上の1mm
2までのほぼ楕円状の領域を照射した。温度検出のために、Siウエハ24の裏面とソース30および32の底面にC型W-Re熱電体を配置した。
【0228】
酸素-オゾン混合流20と、直列に接続された2つのターボ分子ポンプおよびダイアフラムポンプを備えるカスケードポンプシステム18が、10-8hPa~10-2hPaの範囲で変化するチャンバ圧力Poxを精密に制御するために採用された。オゾンは、グロー放電式連続流オゾン発生器(図示せず)から供給される全流量の約10wt%を占めた。このガス流量を制御するバルブの設定は、一定の流量を供給するために各堆積の間一定に保たれた。蒸発プロセス中に、Poxとソース30および32と基板24の温度を、圧力計と熱電体(図示せず)で監視した。同じ堆積ジオメトリを用いて、TLEを使用して15種類の金属元素を蒸発させて、酸化膜62を堆積させた。各元素を、同じレーザ出力およびレーザ光学系を使用して、10-8hPa~10-2hPaの範囲で異なるPoxの値を用いて数回に分けて蒸発させた。膜の厚さを測定し、その微細構造を調べるために、走査型電子顕微鏡(SEM)を採用した。堆積された膜62の結晶構造をX線回折で同定した。光電子分光法を実施して、TLEで成長させたTiO2膜62の酸化状態を明らかにした。膜62が非結晶質であることが判明した場合、その後、結晶化のために500℃で2時間Ar焼鈍を追加で行った。
【0229】
ソース30および32と蒸発した材料の酸化によって酸素-オゾンガス混合物が消費されるので、P
oxは、
図29に示すように、堆積中に頻繁に減少した。図には、複数のガス圧力におけるTiの蒸発中のP
oxが示されている。TiのTLEにおけるレーザ照射時間は15分であった。P
oxは、レーザ36および38がオンされて300秒までの時間で減少し、レーザがオフされて1200秒までの時間ですぐに初期値に戻った。酸化は温度が高いほど活発であるため、P
oxの減少は主に元素ソースの酸化に起因すると考えられる。蒸発した材料を酸化するのに必要な酸素の最大量は、入口ガス流量の1%未満であり、観察された圧力変化を説明することはできない。160Wレーザを用いた10
-2hPaでの堆積の後に、Tiソース30および32は白色の物質で覆われた。これは、高い確率でTiO
2からなる。その他の元素ソースも使用後に酸化した。上述したソース30および32の実質的な酸化は、レーザ光の吸収、蒸発プロセス、および基板24上に堆積した蒸気種に影響を与える。
【0230】
しかしながら、バックグラウンド圧力の低下は、すべての場合に観察されたわけではない。第1に、プロセスの開始時にソース30および32がすでに完全に酸化されている場合、第2に、ソース30および32の酸化が本質的に好ましくない場合に、圧力変化は小さいか、あるいは全くなかった。酸化雰囲気中でのNiの熱レーザ蒸発は、最初のケースの例である。P
oxの減少は、P
ox<10
-4hPaの場合にのみ観察された。圧力が高くなると、Niソース30および32は酸化物で覆われるようになった。したがって、それ以上の酸化が抑制され、P
oxの減少が消失した。強酸化条件下でNiを加熱して得られた主な蒸気種はNiOである。Cuの熱レーザ蒸発は、2つ目のケースの例である。ここでは、Cuの酸化は比較的不利である。1000℃超で、10
-4hPa~10
-2hPaの範囲の酸素圧力において、金属Cuは、酸化物よりも安定していた。実験では、Cuが局所的に溶融したことから明らかなように、照射領域におけるソース温度は1085℃を超えていた。この温度では、液体Cuが熱力学的に安定な相であり、元素Cuが主な蒸気種になると予想された。実際、
図S3に示すように、Cuの蒸発中にチャンバ圧力に大きな変化は見られなかった。TLEプロセスの後に、Cuソース30および32のレーザ照射領域は、金属になった。
【0231】
酸化膜のTLEでの成長のためのソースとして15種類の金属元素を試験した(表1)。
図30は、TLEで成長させたTiO
2、Fe
3O
4、HfO
2、V
2O
3、NiO、およびNb
2O
5の膜の微小角入射XRDパターンを示している。これらのパターンは、ここで調べたすべての二元系酸化物の典型的なパターンである。図に示すように、膜62は、多結晶であり、多くの場合、単相である。非結晶質酸化物を形成したCrを除き、ほとんどの元素が加熱していないSi基板24上に多結晶膜62を形成した。その後、500℃で2時間Ar焼鈍を行うことで、この層は多結晶Cr
2O
3膜62に変化した。観察された酸化物相を表1にまとめる。Ti、V、およびMo酸化物は、複数の相を形成し、どの層が得られたかはP
oxにより決定された。例えば、Vの場合、P
oxを10
-4hPaから10
-2hPaに増加させることで、V
2O
3、VO
2、またはV
2O
5膜62が得られた。その他の元素の場合、使用したP
oxの範囲内で単一の酸化状態のみが観察された。
【0232】
膜62の構造をより詳細に調べるために、断面SEMを行った。
図30に示す膜62のSEM断面を示した
図31に示すように、ほとんどの多結晶膜は柱状構造を有していた。測定された基板温度と堆積した酸化物の融点との比は、0.05~0.2の範囲であった。したがって、観察された柱状構造は、ここで用いた条件では柱状微細構造の形成を予測する膜成長のゾーンモデルと一致する。ここでは、堆積された酸化物の結晶構造は膜構造に影響を与える。10
-3hPaおよび10
-2hPaで成長したMo酸化膜は、角柱板および六角板をそれぞれ備える。
図31に示す膜62を、数Å/sの速度で成長させた。これらの速度は、酸化膜の成長における典型的なものとして選ばれた。速度(
図31参照)を、ウエハ中心部の膜の厚さをレーザ照射時間で割って測定した。堆積速度は、ここに記載する値に限定されない。実際、レーザ出力に伴って超直線的に増加する。
【0233】
ソース30および32は、局所的に加熱されることに伴い、平坦な小面積蒸発ソース30および32のように振る舞い、放出角度の関数として余弦タイプのフラックス分布を提供する。実際、SEM測定から、ウエハエッジに向けて膜62が薄くなっていることがわかった。使用した蒸発パラメータでは、エッジに向かう膜の厚さの減少は、ほとんどの場合20%以下に等しく、理論的に予想される15%以下という値よりわずかに高い。この効果は、分子フラックスを集中させる蒸発中のソースの顕著なピッティングによるものと考えられる。
【0234】
本研究の結果、予想通り、堆積された酸化物の相は酸化ガス圧力の関数であった。この挙動は、
図32におけるTiおよびNi膜62で示されている。この図は、いくつかの異なるP
oxで成長させたこのような膜のXRDパターンを示している。Tiの場合、酸素-オゾンなしで堆積すると、多結晶六方晶Ti膜が得られた。P
oxが増加すると、サブ化学量論的なTiO、ルチルTiO
2、およびアナテーゼTiO
2の膜62が堆積した。TiOは、よく知られたTiの揮発性亜酸化物である。これは、P
oxが10
-6hPa以下の弱酸化環境で形成された。37.36°、43.50°、および63.18°(
図5a、赤色曲線)におけるピークは、立方晶TiOを示している。ルチルTiO
2は、P
oxが10
-4hPaの膜に現れた。灰色の線は、ルチルTiO
2の予想される回折ピーク位置を示している。10
-3hPaでは、
図5の紫色の星印で示すように、ルチル相とともにアナテーゼTiO
2が生成される。表面自由エネルギーが低いため、準安定なTiO
2アナテーゼ相は、ほとんどの合成法や堆積法で好ましく得られる。アナターゼ相をルチル相に変化させるか、ルチル相のTiO
2を直接合成するには、通常、高エネルギー条件が必要である。蒸発した原子および分子の熱エネルギーから考えると、TLEは低エネルギーのプロセスであるが、ここでは、ルチル相TiO
2の優先的な形成を観察した。10
-2hPaでは、堆積された膜は結晶性を失った。
【0235】
TLEで成長させたTiO2膜62の酸化状態をXPSで分析し、EBEで成長させたTiO2膜と比較した。堆積されたままのEBE試料はかなりの量のTi3+を含む一方で、TLE試料はほとんどがTi4+であった。この現象は、酸素-オゾンバックグラウンドがTiO2の熱解離(TiO2(s)→TiO(g)+1/2O2(g))を抑制し、堆積された材料を酸化させるためと考えられる。
【0236】
興味深いことに、TLEで成長させたNi酸化膜62の酸化挙動は、Ti酸化膜62の酸化挙動とは著しく異なることがわかった。UHV条件下では、金属Niにも立方晶相が見られた(
図32b)。P
oxが10
-6hPa以下では(チャンバ圧力の減少によって示されるように)Niソース表面30が酸化されるが、得られた膜62はこのP
oxでも金属的挙動を示した。これは、Niの酸化電位が高いことと、NiがNiOよりも蒸気圧が高いことに起因する。したがって、大部分の蒸気種は、照射された高温領域の酸化されていないNiに由来する。さらに、基板24上に堆積されたNiは、低い基板温度では著しく酸化しない。NiO相は、P
oxの増加とともに徐々に進化する。
図32には、NiO相に予想される回折ピーク位置が存在し、立方晶NiOの形成を示している。金属と酸化物の両方のピークが存在することからわかるように、10
-5hPaで堆積されたNi膜62は、部分的に酸化されてNiOになっている。高いP
oxではNiO相が支配的である。
【0237】
また、P
oxは、TLEで成長させた酸化膜62の堆積速度にも影響を与える。
図33は、TiベースおよびNiベースの酸化膜62の堆積速度の圧力依存性を示している。膜62中への酸素の取り込みを考慮すると、P
oxが増加するにつれて堆積速度が増加すると予想される。しかしながら、観察された堆積速度の挙動は、酸素の取り込みだけでは説明できない。Tiベースの膜62の成長速度は、P
oxとともに、基準圧力での0.6Å/s以下から、10
-3hPaで3.5Å/sまで増加した。堆積速度が6倍になることから、速度に影響を与える他の要因があることが推測される。対照的に、Niベースの酸化膜62の堆積速度は、10
-4hPaで3.1Å/sから4.6Å/sまでしか増加せず、その後、P
ox>10
-4hPaで0.3Å/sまで急激に低下した。膜62(
図32参照)中の酸化物割合の増加が最初の堆積速度の増加の原因かもしれないが、10
-3hPaでの堆積速度の大幅な低下を説明することはできない。TiベースおよびNiベースの膜62の成長特性は、ほとんどの膜62で観察される2つの特徴的なモードを表している。Fe、Co、Nb、Zn、およびMoはTiの挙動を示し、Cr、Sc、Mn、およびVはNiの挙動を示す。
【0238】
なぜP
oxは、TLEで成長された酸化膜の堆積速度を、この2つの特徴的なモードに変化させるのか。本出願人は、この挙動がソース30および32の酸化表面層の蒸気圧によって制御されていると考える。ソース表面に形成される酸化物の蒸気圧が金属のそれを上回る場合、堆積速度はP
oxとともに増加する。これは、Tiのような堆積速度の挙動に対応している。TiO
2ガス蒸気の形成(Ti(s)+O
2(g)→TiO
2(g))は、ソースからの酸化物蒸気の効果的な発生につながる発熱反応である。金属の酸化速度がP
oxのべき乗
【数1】
で増加すると、FeおよびNbで観察されるように、堆積速度はP
oxに対応して増加する。対照的に、金属の蒸気圧が酸化物の蒸気圧を上回ると、Niのようなシナリオが見られる。NiOの蒸気圧は、Niの蒸気圧より1桁ほど小さいので、NiOで覆われたソースは、堆積速度を同じ度合だけ低下させる。この理解は、Niの堆積速度の急激な低下が、チャンバ内の圧力降下が消失するのと同じ圧力である10
-3hPaで生じるという観察によって裏付けられ、このP
oxでは、ソースがNiO層62によって不動態化されていることが明らかになった。
【0239】
このようにして、TLEによる多結晶酸化膜62の成長が実証された。酸素-オゾン圧力が101hPaまでの純金属ソースを蒸発させることにより、ソース30および32の酸化の可能性に関係なく、酸化状態が調整可能で結晶構造を有する膜62を成長させることができる。低蒸気圧元素と高蒸気圧元素を含む広範な金属ソースから、様々な酸化状態の多結晶膜62が、加熱していないSi(100)基板24上に数Å/sの成長速度で堆積された。ソースの酸化度を決定する酸化ガスの圧力は、堆積速度だけでなく、得られた酸化膜32の組成と相にも強く影響を与える。本出願人の研究は、多様な化合物の超高純度エピタキシャル酸化物ヘテロ構造のTLE成長への道を開くものである。
【0240】
【符号の説明】
【0241】
10:反応チャンバ
12:真空チャンバ
14:第1の反応容積
16:第2の反応容積
18:真空ポンプ
20:ガス供給部
22:基板配置部
24:基板
26:基板加熱レーザ
28:基板ホルダの転写
30:第1のソース
32:第2のソース
34:ソース配置部
36:第1のソース加熱レーザ
38:第2のソース加熱レーザ
40:遮蔽開口部
42:ソースホルダの転写
44:ゲートバルブ
46:基板ホルダ
48:基板24の表面
50:24の裏面
52:窓
54:第1の元素、分子、式単位
56:第2の元素、分子、式単位
58:テラス
60:表面
62:薄膜、層
66:エッジ
100:固体コンポーネント
102:量子コンポーネント
104:第1の電磁放射
106:第2の電磁放射
108:第3の電磁放射
110:第4の電磁放射
112:第5の電磁放射
114:コンポーネントビーム
116:第1の反応雰囲気
118:第2の反応雰囲気
120:第3の反応雰囲気
122:第4の反応雰囲気
124:第5の反応雰囲気
126:第1の材料
128:第2の材料
130:第3の材料
132:バッファ材料
134:バッファ層
136:カバー材料
138:カバー層
G:プロセスガス
T:終端材料
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ウエハの表面をエピタキシャルテンプレートとして作製する方法であって、前記表面は、表面原子および/または表面分子を含み、前記単結晶ウエハは、基板成分として2つ以上の元素および/または2つ以上の分子を含む単結晶を含み、前記元素および前記分子の各々は、昇華速度をもち、前記方法は、
・ 所定のミスカット角およびミスカット方向をもつ単結晶ウエハ基板を提供するステップと、
・ 前記表面原子および/または前記表面分子が前記表面に沿って再構築および/または移動して、最小の段差密度と、前記所定のミスカット角および前記ミスカット方向に従って配向された段差エッジを有する配置部を形成することができる温度まで前記基板を加熱するステップと、
・ 最も高い昇華速度をもつ基板成分の原子または分子が前記表面から離脱することができる温度まで前記基板を加熱するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
所与の温度における前記2つ以上の元素および/または前記2つ以上の分子の昇華速度は、互いに異なっている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つ以上の元素および/または前記2つ以上の分子の昇華温度は、少なくとも2℃の差がある、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記単結晶ウエハを加熱する前記ステップは、処理対象の前記表面から離間した表面で前記単結晶ウエハを加熱する第1の加熱要素を含む2つの加熱要素を備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
第2の加熱要素が、前記表面の表面材料の最も揮発性の高いフラックスで処理対象の前記表面を照射するためのソースに提供される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フラックスは、選択された基板温度における前記表面からの同じ元素の昇華速度よりも低くなるように選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フラックスの強度は、前記基板表面に到達する原子または分子の数と、前記基板表面から離脱する原子または分子の数との間の平衡を提供するように選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記昇華温度は、950℃を超える温度である、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記ミスカット方向を定義することで、複数のエネルギー的に等価な面内表面再構成の単位セルのうちの1つが選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記単結晶の前記2つ以上の元素および/または前記2つ以上の分子は、Si、C、Ge、As、Al、O、N、O、Mg、Nd、Ga、Ti、La、Sr、Ta、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、例えば、前記単結晶ウエハは、SiC、AlN、GaN、Al
2O
3、MgO、NdGaO
3、LaAlO
3、DyScO
3、TbScO
3、TiO
2、(LaAlO
3)
0.3(Sr
2TaAlO
6)
0.35(LSAT)、Ga
2O
3、SrLaAlO
4、Y:ZrO
2(YSZ)、およびSrTiO
3の化合物のうちの1つから作製されることができる、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱のステップは、1つまたは複数のレーザによって実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱のステップは、10
-8hPa~10
-12hPaの範囲で選択された真空雰囲気中で実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
切断のステップは、機械的切断によって実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
バルク基板から前記単結晶ウエハを切断するステップは、前記バルク基板の結晶面とは異なる切断面において前記表面を切断して、前記単結晶のバルク基板から前記単結晶ウエハを切断することによって実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
前記単結晶ウエハは、前記バルク基板の中心軸に対して0.01°~0.1
°傾斜した切断面において前記表面を切断することで、前記バルク基板から切断される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項
1に記載の方法によって処理された単結晶ウエハを提供するステップと、その表面上にさらなる層を堆積させるステップと、を含む、デバイスを形成する方法。
【請求項17】
前記さらなる層は、金属、酸化物、窒化物、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン化物、硫化物、セレン化物、水銀系化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記さらなる層は、単一の層として堆積される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
加熱のステップは、前記表面上にさらなる層を堆積するステップと同じチャンバ内
で実施される、請求項
16に記載の方法。
【請求項20】
請求項
1に記載の方法によって得られるエピタキシャルテンプレート。
【請求項21】
請求項20に記載のエピタキシャルテンプレートと、前記エピタキシャルテンプレート上に成長させた1つまたは複数の層と、を有する層構造を備えるデバイス。
【請求項22】
前記1つまたは複数の層のうちの1
つは、100μs
超の量子ビット緩和時間および量子ビットコヒーレンス時間を有する、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
請求項
16に記載の方法によって得られるデバイス。
【国際調査報告】