IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティッセンクルップ・ヌセラ・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフトアウフアクチェンの特許一覧

<>
  • 特表-マルチセル素子を有する電解槽 図1
  • 特表-マルチセル素子を有する電解槽 図2
  • 特表-マルチセル素子を有する電解槽 図3
  • 特表-マルチセル素子を有する電解槽 図4
  • 特表-マルチセル素子を有する電解槽 図5
  • 特表-マルチセル素子を有する電解槽 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】マルチセル素子を有する電解槽
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/00 20060101AFI20240621BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20240621BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240621BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240621BHJP
   C25B 1/04 20210101ALN20240621BHJP
【FI】
C25B15/00 302A
C25B1/26 A
C25B9/00 A
C25B9/00 C
C25B9/77
C25B1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500044
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022068109
(87)【国際公開番号】W WO2023280678
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21184621.7
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522219939
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・ヌセラ・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフトアウフアクチェン
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】クリンク,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】トロス,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ブリンクマン,ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】アウステンフェルト,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】スカンネル,ロベルト
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AA03
4K021BA02
4K021BA03
4K021CA07
4K021DB06
4K021DB38
4K021DB53
4K021DC03
4K021EA08
(57)【要約】
本発明は、並列配置であり、直列に電気的に相互接続された複数のパネル状電解セル(4)を含む電解スタック(3)を備える電解槽(1)に関し、各電解セル(4)は、内部にアノードが配置されたアノードチャンバ、および内部にカソードが配置されたカソードチャンバを備え、アノードチャンバおよびカソードチャンバは、シート状セパレータによって互いに分離されている。電解槽は、電解スタック(3)の電気的相互接続を機械的に固定するための手段(10)をさらに備える。スタック(3)は、各々が複数の電解セル(4)および機械的圧縮(12)手段を備える少なくとも2つのマルチセル素子(11)を含み、各マルチセル素子(11)の電解セル(4)は、機械的圧縮手段(12)によって封止された状態で一緒に保持され、手段(10)は、マルチセル素子(11)の電気的相互接続を機械的に固定するように構成され、電解スタック(3)の電気的相互接続を機械的に固定するための手段(10)は、スタック(3)に対して規定の圧縮力を及ぼすために、スタック(3)の最も外側の電解セル(4)と相互作用するように配置され、または近接するマルチセル素子(11)に対する接触圧力を提供するために、少なくとも2つの近接するマルチセル素子(11)に取り付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽であって、
直列に電気的に相互接続された並列配置の複数のパネル状電解セル(4)を含む電解スタック(3)であって、各電解セル(4)は、内部にアノード(6)が配置されたアノードチャンバ(5)、および内部にカソード(8)が配置されたカソードチャンバ(7)を備え、前記アノードチャンバ(5)および前記カソードチャンバ(7)は、シート状セパレータ(9)によって互いに分離されている、電解スタック(3)と、
前記電解スタック(3)の前記電気的相互接続を機械的に固定するための手段(10)と
を備え、
前記スタック(3)は、各々が複数の前記電解セル(4)および機械的圧縮手段(12)を備える少なくとも2つのマルチセル素子(11)を含み、各マルチセル素子(11)の前記電解セル(4)は、前記機械的圧縮手段(12)によって封止された状態で一緒に保持され、前記手段(10)は、前記マルチセル素子(11)の電気的相互接続を機械的に固定するように構成され、
前記電解スタック(3)の前記電気的相互接続を機械的に固定するための前記手段(10)は、前記スタック(3)に対して規定の圧縮力を及ぼすために、前記スタック(3)の最も外側の電解セル(4)と相互作用するように配置され、または
前記電解スタック(3)の前記電気的相互接続を機械的に固定するための前記手段(10)は、近接するマルチセル素子(11)に対する接触圧力を提供するために、少なくとも2つの前記近接するマルチセル素子(11)に取り付けられる
ことを特徴とする、
電解槽。
【請求項2】
前記電解槽(1)は、メンテナンス状態を有するように構成され、メンテナンス状態では、前記電解スタック(3)の前記電気的相互接続を機械的に固定するための前記手段(10)は、緩められた状態にあり、前記機械的圧縮手段(12)は、締結状態にあり、前記マルチセル素子(11)は、前記電解槽(1)の前記メンテナンス状態で個々に交換可能であることを特徴とする、請求項1に記載の電解槽。
【請求項3】
前記マルチセル素子(11)は各々、3~50個、より好ましくは5~15個の電解セル(4)を含むことを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項4】
前記マルチセル素子(11)は、隣接するマルチセル素子(11)との電気的接続のための接触面を提供する外部後壁(13)を備えていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項5】
前記マルチセル素子(11)は、前記マルチセル素子(11)の前記最も外側の電解セル(4)の前記アノードチャンバ(5)および前記カソードチャンバ(7)をそれぞれ含む2つの端部(14、15)と、共有のバイポーラ隔壁(17)によって互いに電気的に接続された隣接する内側電解セル(4)の前記カソードチャンバ(7)および前記アノードチャンバ(5)を含む多数の中間部(16)と、前記端部(14、15)および前記中間部(16)の任意の2つの隣接部(14、15、16)の間に介在している前記シート状セパレータ(9)とを備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項6】
前記マルチセル素子(11)の前記最も外側の電解セル(4)の前記アノードチャンバ(5)および/または前記カソードチャンバ(7)は、前記内側電解セル(4)の前記カソードチャンバ(7)および前記アノードチャンバ(5)の各々の容積よりも1.1~2倍の範囲で大きい容積を有することを特徴とする、請求項5に記載の電解槽。
【請求項7】
前記機械的圧縮手段(12)は、前記マルチセル素子(11)の前記電解セル(4)を横切って外部に延びるタイロッド(18)と、前記マルチセル素子(11)の端部構成要素(19)とを備え、前記端部構成要素(19)は、前記タイロッド(18)と係合し、前記マルチセル素子(11)の前記電解セル(4)に対して圧縮封止力を及ぼすことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項8】
機械的圧縮手段(12)は、
前記それぞれのマルチセル素子(11)の前記電解セル(4)がその中に配置される少なくとも2つのシェル部(20、21)であって、前記シェル部(20、21)は各々、円周方向フランジ部分(22、23)を備えるシェル部(20、21)と、
ボルト(25)であって、前記ボルト(25)が締結されると前記シェル部(20、21)内で前記電解セル(4)を圧縮するように配置されたボルト(25)と
を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項9】
前記機械的圧縮手段(12)は、前記シェル部(20、21)の前記フランジ部分(22、23)の間に配置された少なくとも1つのガスケット(24)をさらに備え、前記ガスケット(24)は、前記ボルト(25)が締結されると圧縮されることを特徴とする、請求項8に記載の電解槽。
【請求項10】
前記機械的圧縮手段(12)は、前記マルチセル素子(11)の前記端部および前記中間部(14、15、16)に取り付けられた円周方向外部フランジ部分(26、27)と、隣接する端部および/または中間部(14、15、16)の前記フランジ部分(26、27)を互いに締結するボルト(28)とを備えることを特徴とする、請求項5または6に記載の電解槽。
【請求項11】
前記マルチセル素子(11)は、前記マルチセル素子(11)の前記電解セル(4)からの電解質の分配、または電解質および/もしくは生成ガスの収集のための少なくとも1つの内部マニホールドを含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項12】
前記電解槽(1)は、セルラック(2)をさらに備え、前記電解スタック(3)の前記電解セル(4)および/または前記電解スタック(3)の前記電気的接続を機械的に固定するための前記手段(10)は、前記セルラック(2)に装着されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の電解槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の電解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばメガワット範囲の水素および/または塩素の大規模生産の技術分野では、電解槽には2つの主要な設計カテゴリが存在する。
【0003】
第1の設計カテゴリは、電解槽スタックが電源の極に接続された2つの端部と、多数のバイポーラプレートとを備える、いわゆるフィルタプレス設計である。隣接する端部およびバイポーラプレートは、隔膜または膜であるセパレータによって分離され、したがって直列に多数の電解セルを形成する。各セルは、アノード側では1つのバイポーラプレートによって囲まれ、カソード側では別の隣接するバイポーラプレートによって囲まれ、セパレータによって2つのハーフセルに分割される。バイポーラプレートは、電解セルを形成するように機能する任意の形状を有することができる。セル容積の機械的完全性および封止は、一度にスタックのすべてのバイポーラプレートおよびセパレータを圧縮する外部圧縮デバイス、例えばタイロッドのセットによって提供される。気密性は、圧縮状態でのみ達成される。典型的には、大規模電解用のこのような電解槽は、2~4平方メートルのセル面積を有し、1つの電解スタックに50~200個の電解セルを含む。このような電解槽の総重量は、典型的には数十トンであり、圧縮デバイスによって供給される封止力は、1~10MPa程度である。封止面積に応じて、これは数十トンの力をもたらす。
【0004】
フィルタプレス設計の電解槽の例は、例えば米国特許出願公開第2003/0155232号明細書および国際公開第2020/203319号から知られている。フィルタプレス設計には、そのような電解槽またはその交換素子を交換することが、現場で電解槽を開いた後にのみ事実上可能であるという欠点がある。したがって、電解槽の組み立ておよびメンテナンスは通常、現場で行われなければならず、その結果、関連する設備のダウンタイムが長くなる。
【0005】
上述の問題を回避するための1つの方法は、電解槽を小型化し、それらがより小規模な電解プラント、例えばキロワット範囲で水素生産にまたは燃料セルにおいて使用されるように、大幅に小さいセル面積を有する電解槽を使用することである。サイズが小さいため、これらの電解槽スタックは取り扱いが容易であり、その結果、配送して予め組み立てられ、全体として交換することが可能である。しかし、メガワット範囲、特に数十から数百メガワットの範囲の大規模生産の場合、小型化には膨大な数の個々の電解槽が必要となり、それによりスペース要件が大きくなり、メンテナンスコストが増加する。
【0006】
第2の既知の設計カテゴリは、特にthyssenkrupp Uhde Chlorine Engineersによって市販されている単一の素子設計である。この設計では、各電解セルは、セパレータとしての膜または隔膜によって分離された2つのハーフシェル、すなわちアノードハーフシェルおよびカソードハーフシェルを備える。2つのハーフシェルは、アノードハーフシェルおよびカソードハーフシェルを互いに隔離し、外側への電解質および/またはガスの漏れを防止する封止システムを介して互いに接続される。このように、各セルは、個々に気密性である単一の素子を形成し、電解槽全体に影響を及ぼすことなく、それ自体で安全に組み立て、取り扱い、および交換が可能である。単一の素子セルは、鋼フレームによって形成されたラック内に懸架されて互いに押圧され、隣接する単一の素子における接触間の良好な導電性を確保する。外部圧縮デバイスがすべてのセルに対して封止力(および良好な導電性)を提供しなければならないフィルタプレス設計と比較して、単一の素子設計では、良好な導電性のみを確保するために必要な圧縮力は桁違いに小さい。
【0007】
このタイプの電解槽は、例えば独国特許出願公開第19641125号明細書から知られている。この設計は、多数の個々の構成要素、すなわち1つのバイポーラプレートの代わりに2つのハーフシェルおよびフランジフレーム、より多くのベース材料およびより多くの製造工程を必要とし、その結果、製造労力および組み立てコストが高くなるという欠点を有する。
【0008】
米国特許出願公開第2009/0308738号明細書から、最大200バールの高い動作圧力能力および108in(=0,07m)のアルカリ電解槽の活性面積を有するアルカリ電解槽が知られている。タイロッドファスナが、最大200バールの内圧に対して外側ハーフセル部分を強化するために補強バーと併せて使用される。各セルに対する個々のタイロッドの代わりに、6つ以上のセルのグループを、延長されたタイロッドによってより大きなモジュールに接続することができる。それぞれのセル間の接続は、バナナジャックコネクタの対向するセットを接続するスパナ管の設置によって達成される。
【0009】
中国特許第106702421号明細書には、4列の電解セルを有する塩素酸ナトリウム電解システムが記載されており、各列において、セルは、各々15個の単一のセルを有する電解セルの4つのグループにグループ化されている。塩素酸ナトリウム電解槽グループの数は、容量需要に応じて柔軟に組み合わせることができ、メンテナンスのために電解槽グループを個々に交換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0155232号明細書
【特許文献2】国際公開第2020/203319号
【特許文献3】独国特許出願公開第19641125号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0308738号明細書
【特許文献5】中国特許第106702421号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、水素および/または塩素の大規模電解生産のための電解槽であって、安全な動作ならびに取り扱いおよびメンテナンス性の容易さを確保し、同時にベース材料に対する要件および製造労力を低減する電解槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1の特徴を有する電解槽によって達成される。
【0013】
これにより、直列に電気的に相互接続された複数のパネル状電解セルを含む電解スタックと、電解スタックの電気的相互接続を機械的に固定するための手段とを備える、電解槽が提供される。各電解セルは、内部にアノードが配置されたアノードチャンバ、および内部にカソードが配置されたカソードチャンバを備え、アノードチャンバおよびカソードチャンバは、シート状セパレータによって互いに分離されている。本発明によれば、スタックは、各々が複数の電解セルおよび機械的圧縮手段を備える少なくとも2つのマルチセル素子を含む。各マルチセル素子の電解セルは、機械的圧縮手段によって封止された状態で一緒に保持される。スタックの電気的相互接続を機械的に固定するための手段は、マルチセル素子の電気的相互接続を機械的に固定するように構成される。
【0014】
したがって、本発明によれば、電解槽の電解スタックは、機械的圧縮手段によって別々に封止されたマルチセル素子に細分される。マルチセル素子に複数の電解セルを集約するための追加の圧縮手段を設けることによって、封止力および電気接触力を提供するために異なる手段、すなわち機械的圧縮手段およびスタックの電気的相互接続を機械的に固定するための手段がそれぞれ使用される。これにより、電気的相互接続を固定するための手段によって圧力を提供するための要件が低減され、従来のフィルタプレス設計と比較して電解槽のより軽量な設計が可能になる。さらに、マルチセル素子は、電解槽が設置される電解プラントの場所に予め組み立てられた状態で配送することができる。したがって、予め組み立てられたマルチセル素子について、配送される前に品質および機能性試験を行うことも可能である。
【0015】
単一の素子として取り扱われるのに十分な機械的安定性を提供する2つのシェル部内にすべての単一のセルが覆われなければならない単一の素子設計と比較して、マルチセル素子の本発明のスタックでは、全体として各マルチセル素子のみが取り扱い安定性を示す必要がある。したがって、電解セルのアノードチャンバおよびカソードチャンバの少なくとも一部を作製するために使用される、例えばニッケルまたはチタンなどの導電性材料の量が低減される。さらに、マルチセル素子のセルは、個々のボルトセットによって閉じられて封止される必要はなく、機械的圧縮手段によって完全に封止されることができるため、製造労力も低減することができる。
【0016】
好ましくは、マルチセル素子は、電解槽のメンテナンス状態で個々に交換可能であり、スタックの電気的相互接続を機械的に固定するための手段は、緩められた状態にあり、機械的圧縮手段は、締結状態にある。そして、完全に電解槽を分解することなく、単一のマルチセル素子を取り外して挿入することが可能である。これにより、メンテナンスのための電解槽のダウンタイムが低減される。
【0017】
本発明によれば、電解スタックの電気的相互接続を機械的に固定するための手段は、スタックに対して規定の圧縮力を及ぼすために、スタックの最も外側の電解セルと相互作用するように配置される。スタック全体に作用する外部圧縮力は、セル性能を改善し、スタック内のマルチセル素子の整列にも有益である。あるいは、電解スタックの電気的相互接続を機械的に固定するための手段は、近接するマルチセル素子に対する接触圧力を提供するために、少なくとも2つ、好ましくは任意の2つの近接するマルチセル素子に取り付けることができる。例えば、接触圧力は、隣接する後壁の間および/または近接するマルチセル素子の接触タブの間に提供されてもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、電解槽のマルチセル素子は各々、3~50個、より好ましくは5~15個の電解セルを含む。材料要件を考慮すると、各マルチセル素子内で多くの電解セルを集約することが好ましい。しかし、取り扱いを容易にするためには、各マルチセル素子内の電解セルの数は制限されなければならない。電解セルの数が上記の範囲であると、材料および組み立てコストに大きなプラスの効果があることが保証されると同時に、マルチセル素子は、ガントリーまたはオーバーヘッドクレーンおよびフォークリフトなどの標準的な昇降デバイスによって依然として取り扱いおよび搬送することができる。
【0019】
原則として、マルチセル素子は開放アノードまたはカソードハーフセルで終端し、追加のセパレータを介して電解槽に設置されることが考えられる。しかし、好ましい実施形態では、マルチセル素子は、隣接するマルチセル素子との電気的接続のための、好ましくは平坦な接触面を提供する外部後壁を備えている。これにより、各マルチセル素子は、プラグアンドプレイ方式で設置することができる電解槽の独立したサブユニットを形成する。
【0020】
好ましい実施形態では、マルチセル素子は、マルチセル素子の最も外側の電解セルのアノードチャンバおよびカソードチャンバをそれぞれ含む2つの端部と、共有のバイポーラ隔壁によって互いに電気的に接続された隣接する内側電解セルのカソードチャンバおよびアノードチャンバを含む多数の中間部と、端部および中間部の任意の2つの隣接部の間に介在しているシート状セパレータとを備える。マルチセル素子の1つの中間部に隣接する内側電解セルのカソードチャンバとアノードチャンバを組み合わせることによって、個々の構成要素の数、したがってマルチセル素子の組み立てに必要な作業がさらに削減される。
【0021】
好ましくは、マルチセル素子の最も外側の電解セルのアノードチャンバおよび/またはカソードチャンバは、内側電解セルのカソードチャンバおよびアノードチャンバの各々の容積よりも1.1~2倍の範囲で大きい容積を有する。従来のフィルタプレス設計のマルチセル素子の利点の最も外側のチャンバの容積を増加させることによって、すなわち小さいセル容積を用いた非常に効率的な電気分解、マルチセル素子の中間部内の低い材料およびスペース要件は、最も外側のセルの熱容量の増加による電解槽の熱安定性の増加と組み合わされる。言い換えれば、マルチセル素子の最も外側のセルチャンバのセル容積が大きいことにより、従来のフィルタプレス設計と比較して、スタックの中間冷却を改善することが可能となる。結果として、スタック内の熱的均質性が改善される。
【0022】
機械的圧縮手段には、マルチセル素子内に集約した電解セルを保持するためのいくつかの可能性が存在する。特に、以下の3つの可能性が好ましい。
【0023】
好ましい実施形態では、機械的圧縮手段は、マルチセル素子の電解セルを横切って外部に延びるタイロッドと、マルチセル素子の端部構成要素とを備え、端部構成要素は、タイロッドと係合し、マルチセル素子の電解セルに対して圧縮封止力を及ぼす。この設計は、従来のフィルタプレス設計に最も近いが、電解スタックはいくつかのマルチセル素子に細分されている。マルチセル素子の電解セルは、それらの円周方向外周領域で周囲に対して封止され、それらの円周方向外周領域は電解セルのシート状セパレータを保持するようにも機能し得る。
【0024】
他の好ましい実施形態では、機械的圧縮手段は、それぞれのマルチセル素子の電解セルがその中に配置される少なくとも2つのシェル部であって、シェル部は各々、円周方向フランジ部分を備えるシェル部と、締結されるとシェル部内で電解セルを圧縮するように配置されたボルトとを備える。好ましくは、機械的圧縮手段は、シェル部のフランジ部分の間に配置された少なくとも1つのガスケットをさらに備え、ガスケットは、ボルトが締結されると圧縮される。あるいは、フランジ部分は、PTFEなどの自己封止材料で作製されるか、または自己封止材料でコーティングされてもよい。これらの実施形態では、機械的圧縮手段のシェル部はまた、周囲からモジュールを封止するマルチセルモジュール用のケーシングを形成する。したがって、モジュール内の個々の電解セルは、モジュールが2段階の封止システムを備えて配置されるため、完全に気密性である必要はない。さらに、シェル部は、取り扱いのためにモジュールの機械的安定性を提供することが好ましい。特に、シェル部は、2つのハーフシェルとして設計することができる。
【0025】
さらに好ましい実施形態では、機械的圧縮手段は、マルチセル素子の端部および中間部に取り付けられた円周方向外部フランジ部分と、隣接する端部および/または中間部のフランジ部分を互いに締結するボルトとを備える。
【0026】
上述のマルチセル素子はすべて、電解セル内の電解質の分配、または電解セルからの電解質および/もしくは生成ガスの収集のために外部配管と共に使用することができる。他の実施形態では、マルチセル素子は、マルチセル素子の電解セル内の電解質の分配、または電解セルからの電解質および/もしくは生成ガスの収集のための少なくとも1つの内部マニホールドを含む。従来のフィルタプレス電解槽では、内部マニホールドは、多数の電解セルおよび対応するスタック電圧に起因して大きな漂遊電流を被る。しかし、本発明のマルチセル素子では、内部マニホールドは、電解セルの数が少なくなるため漂遊電流が小さくなり、個々のセル入口および/または出口が内部マニホールドに置き換えられて製造およびメンテナンスコストがさらに削減されるので有利である。
【0027】
好ましい実施形態では、電解槽は、セルラックをさらに備え、電解スタックの電解セルおよび/または電解スタックの電気的接続を機械的に固定するための手段は、セルラックに装着される。セルラックは、電解スタックのための安定したフレームを提供し、マルチセル素子および他の部品をより軽量に設計することを可能にする。しかし、フレーミングセルラックなしの独立型スタックでも本発明を利用することが可能である。
【0028】
本発明のさらなる利点は、添付の図面に示す実施形態に関して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】機械的圧縮手段によって集約された2つのマルチセル素子を備える電解スタックを有する本発明による電解槽を概略的に示す図である。
図2図1の電解槽に使用されるマルチセル素子の第1の実施形態を概略的に示す図であり、機械的圧縮手段は、外部タイロッドを備える。
図3図1の電解槽に使用されるマルチセル素子の一実施形態を概略的に示す図であり、機械的圧縮手段は、電解セルを覆う2つのシェル部を備える。
図4図1の電解槽に使用されるマルチセル素子の第3の実施形態を概略的に示す図であり、マルチセル素子の端部および中間部は、機械的圧縮手段として機能する円周方向フランジ部分で互いにボルト止めされる。
図5図3の実施形態による2つのマルチセル素子を概略的に示す図であり、電解スタックの電気的相互接続を機械的に固定するための手段が、接触圧力を提供するためにマルチセル素子に取り付けられる。
図6図2に示す第1の実施形態の変形例を概略的に示す図であり、マルチセル素子の端部は、最も外側の電解セルのアノードチャンバまたはカソードチャンバをそれぞれ備え、内側電解セルの電極チャンバよりも大きい容積を有する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面において、同じ部分は一貫して同じ参照符号によって識別され、したがって一般的に記載され、一度だけ参照される。
【0031】
図1では、本発明による電解槽1が示されている。電解槽1は、直列に電気的に相互接続された並列配置の複数のパネル状電解セル4を含む電解スタック3と、電解スタック3の電気的相互接続を機械的に固定するための手段10とを備える。各電解セル4は、内部にアノード6が配置されたアノードチャンバ5、および内部にカソード8が配置されたカソードチャンバ7を備え、アノードチャンバ5およびカソードチャンバ7は、シート状セパレータ9(図1には示されていない詳細については、図2図4を参照されたい)によって互いに分離されている。好ましくは、アノードチャンバおよびカソードチャンバ5、7は、導電性材料から少なくとも部分的に作製される。本発明によれば、スタック3は、各々が複数の電解セル4および機械的圧縮手段12を含む少なくとも2つのマルチセル素子11を含み、各マルチセル素子11の電解セル4は、機械的圧縮手段12によって封止された状態で一緒に保持される。手段10は、マルチセル素子11の電気的相互接続を機械的に固定するように構成される。
【0032】
スタック3は、スタック3の最も外側の電解セル4に接触するエンドプレート150、160を介して外部電源に接続することができる。
【0033】
図1の電解槽は、セルラック2をさらに備え、電解スタック3の電解セルおよび電解スタック3の電気的接続を機械的に固定するための手段10は、セルラック2に装着される。図1に示す電解槽のセルラック2は、各側に支持梁120を担持する2つのエンドポスト130、140を備える。支持梁120は、セルラック2内の電解セル4を支持する。電解セル4は、好ましくは、ラック2の両側の支持梁120に懸架されている。
【0034】
図1に示すように、電解スタック3の電気的接続を機械的に固定するための手段10は、スタックに対して規定の圧縮力を及ぼすために、スタックの最も外側の電解セル4と相互作用するように配置することができる。例えば、図1に示す電解スタック3の電気的接続を機械的に固定するための手段10は、この実施形態では手段10の外部タイロッドとして機能する支持梁120と係合する押圧プレート110を備える。押圧プレート110は、電源を提供するエンドプレート150、160と共に電解スタック3のマルチセル素子11を圧縮するために、支持梁120上で水平に移動可能である。動作段階において、エンドプレート150、160およびマルチセル素子11は、それらが直列に電気的に接続されるように互いに直接接触している。この目的のために、図面に示すマルチセル素子11は、隣接するマルチセル素子11との電気的接続のための平坦な接触面を提供する、好ましくは平面の外部後壁13を備えている。
【0035】
代替の実施形態(図示せず)では、電解スタックの電気的相互接続を機械的に固定するための手段は、近接するマルチセル素子に対する接触圧力を提供するために、少なくとも、好ましくは任意の2つの近接するマルチセル素子に取り付けられる。
【0036】
図1では、電解槽1は、メンテナンス状態で示されている。メンテナンス状態では、電解スタック3の電気的接続を機械的に固定するための手段10は、緩められた状態にあり、機械的圧縮手段12は、締結状態にある。図1から分かるように、マルチセル素子11は、完全に電解槽1を分解することなく、メンテナンス状態で個々に交換可能である。
【0037】
一例として、図1に示すマルチセル素子11は、4つの電解セル4を含む。好ましくは、マルチセル素子11は各々、3~50個、より好ましくは5~15個の電解セル4を含む。マルチセル素子11の電解セル4は、電解質サイクルおよび生成ガス流に対して電気的に直列かつ並列に接続される。好ましくは、マルチセル素子11の電解セル4は、1~4平方メートルの範囲のセル面積を有する。1つの電解槽1内にいくつかのマルチセル素子11を組み合わせることによって、メガワット範囲の公称容量を有する電解槽1を提供することができる。
【0038】
図2では、図1の電解槽1に使用されるマルチセル素子11の第1の実施形態がより詳細に示されている。マルチセル素子11は、マルチセル素子11の最も外側の電解セル4のアノードチャンバ5およびカソードチャンバ7をそれぞれ含む2つの端部14、15を備える。マルチセル素子11は、共有のバイポーラ隔壁17によって互いに電気的に接続された隣接する内側電解セル4のカソードチャンバ7およびアノードチャンバ5を含む多数の中間部16をさらに備える。マルチセル素子11はまた、端部14、15および中間部16の任意の2つの隣接部14、15、16の間に介在しているシート状セパレータ9を備える。端部14、15および中間部16は、好ましくは、部分14、15、16のそれぞれの接触領域に配置されたガスケット29によってセパレータ9に対して封止される。
【0039】
材料要件および人件費に関して単一の素子設計と比較して本発明の利点をよりよく理解するために、以下の例が与えられる。300個の電解セルを有する単一の素子設計の典型的な電解槽は、製造、取り扱い、および組み立てが必要である、ボルトのセットで各々が締結される600個のハーフシェルおよび300個のフランジ対を含む。比較すると、同じ数の電解セルを有し、マルチセル素子11当たり10個の電解セル4を有する本発明による電解槽は、2×30個の端部14、15および10×29個の中間部16を有し、したがって、単一の素子設計の600個のシェル部と比較して、合計350個の部分14、15、16のみである。同様に、締結されるボルトのセットの数は、300から30に削減される。
【0040】
電解セル4内で、例えばリブ34の形態のスペーサを、バイポーラ隔壁17とアノード6および/またはカソード8との間に設けることができる。スペーサは、セル電圧を低減するために、セパレータ9に対して特に低い距離でセル4内の電極6、8を支持する目的を果たす。特に、電解槽の本発明の設計は、電極6、8がセパレータ9と直接接触しているゼロギャップ電解槽に適用可能である。セパレータ9は、例えば、膜または隔膜であってもよい。
【0041】
図2に示すように、マルチセル素子11の電解セル4は、電解セル4の各チャンバ5、7への個々の入口を有する外部供給管30、31によって電解質を供給することができる。同様に、セル4から電解質および/または生成ガスを収集するために、外部配管(図示せず)を使用することができる。
【0042】
図2に示す実施形態では、機械的圧縮手段12は、マルチセル素子11の電解セル4を横切って外部に延びるタイロッド18を備える。機械的圧縮手段12は、マルチセル素子11の端部構成要素19をさらに備え、端部構成要素19は、タイロッド18と係合し、マルチセル素子11の電解セル4に対して圧縮封止力を及ぼす。端部構成要素19は、タイロッド18との係合のための、穿孔突起などの係合手段を備えている端部13によって形成されてもよい。あるいは、端部構成要素19は、例えば、マルチセル素子11の追加のエンドプレートのような別々の構成要素であってもよい。
【0043】
図2のマルチセル素子11の設計は、フィルタプレス設計の電解槽に似ているが、マルチセル素子11がより少数の(好ましくは3~50個の範囲内の)個々の電解セル4を含む点、ならびに機械的完全性および封止がマルチセル素子11のレベルで既に達成されており、電解槽全体のレベルだけではない点が異なる。したがって、マルチセル素子11は、電解設備の現場で電解槽1の他のマルチセル素子11に影響を及ぼすことなく、例えばオフサイトのセルワークショップで個々に交換および保守することができる自己完結型ユニットである。
【0044】
図3では、図1の電解槽1に使用されるマルチセル素子11の第2の実施形態が示されている。第2の実施形態では、機械的圧縮手段12は、マルチセル素子11の電解セル4がその中に配置される2つのシェル部20、21を備える。シェル部20、21は各々、円周方向フランジ部分22、23を備える。機械的圧縮手段12は、2つのシェル部20、21のフランジ部分22、23の間に配置されたガスケット24と、ボルト25とをさらに備える。ボルト25は、ボルト25が締結されるとシェル部20、21内の電解セル4およびフランジ部分22、23の間のガスケット24を圧縮するように配置される。示すように、シェル部20、21は、好ましくは、ハーフシェルの形態を有してもよい。
【0045】
マルチセル素子11の第1の実施形態と比較して、図3のマルチセル素子11は、2段階の封止システムを有する。2つのシェル部20、21のフランジ部分22、23の間に配置された単一の外側ガスケット24に加えて、電解セル4は、例えば、マルチセル素子11の部分14、15、16の接触領域に配置された内側ガスケット29によって、個々にセパレータ9に対して封止される。
【0046】
マルチセル素子11の電解セル4は、図2のようにセル4の外部にあるがシェル部20、21内に含まれる供給管30、31によって電解質を供給することができる。セル4から電解質および/または生成ガスを収集するために、同様の配管(図示せず)を使用することができる。これにより、各マルチセル素子11の入口および出口の数を低減することができ、現場での電解槽1の組み立てが容易になる。
【0047】
あるいは、図3に示すマルチセル素子11は、外部配管によって供給され、シェル部20、21の外側から個々に各セル4にそれぞれの媒体を分配および/または各セル4からそれぞれの媒体を収集することができる。
【0048】
したがって、すべての他の点において、図2に示す第1の実施形態の説明は、図3に示す第2の実施形態にも適用可能である。
【0049】
図4では、図1の電解槽1に使用されるマルチセル素子11の第3の実施形態が示されている。この実施形態では、機械的圧縮手段12は、マルチセル素子11の端部および中間部14、15、16に取り付けられた円周方向外部フランジ部分26、27と、隣接する端部および/または中間部14、15、16のフランジ部分26、27を互いに締結するボルト28とを備える。
【0050】
第3の実施形態のマルチセル素子11は、電解質をマルチセル素子11の電解セル4に分配するための2つの内部マニホールド33、34をさらに含む。セル4から電解質および/または生成ガスを収集するために、さらなる内部マニホールドを設けることができる。
【0051】
図示されていない代替の実施形態では、図4のマルチセル素子には、内部マニホールドの代わりに図2に示すような外部配管が設けられている。
【0052】
したがって、すべての他の点において、図2および図3に示す第1および第2の実施形態の説明は、図4に示す第3の実施形態にも適用可能である。
【0053】
図5では、図3の実施形態による2つのマルチセル素子が並列配置で示されている。電解スタック3の電気的相互接続を機械的に固定するための手段10は、近接するマルチセル素子11に対する接触圧力を提供するために、2つの近接するマルチセル素子11に取り付けられる。例えば、手段10は、マルチセル素子11の両端にある円周方向フランジで作製することができ、隣接するマルチセル素子11のフランジは、互いにボルト止めされる。
【0054】
電解スタック3の電気的相互接続を機械的に固定するための同様の手段10を、図面に示す本発明のすべての他の実施形態と併せて使用することもできる。
【0055】
図6は、図2に示すマルチセル素子の変形例を示し、マルチセル素子11の最も外側の電解セル4のアノードチャンバ5およびカソードチャンバ7は、それぞれ、内側電解セル4のカソードチャンバ7およびアノードチャンバ5の各々の容積よりも1.1~2倍の範囲で大きい容積を有する。最も外側の電極チャンバの容積が拡大すると、スタック3の熱容量が増加し、したがってスタックの温度制御を改善することが可能になる。
【0056】
したがって、すべての他の点において、図2に示す実施形態の説明は、図6に示す変形例にも適用可能である。
【0057】
本発明による電解槽1は、クロルアルカリ電解およびアルカリ水電解に特に適している。
【符号の説明】
【0058】
1 電解槽
2 セルラック
3 電解スタック
4 電解セル
5 アノードチャンバ
6 アノード
7 カソードチャンバ
8 カソード
9 セパレータ
10 電気的相互接続を機械的に固定するための手段
11 マルチセル素子
12 機械的圧縮手段
13 後壁
14、15 端部
16 中間部
17 隔壁
18 タイロッド
19 端部構成要素
20、21 シェル部
22、23 フランジ部分
24 ガスケット
25 ボルト
26、27 フランジ部分
28 ボルト
29 ガスケット
30、31 供給管
32、33 内部マニホールド
34 リブ
110 押圧プレート
120 支持梁
130、140 エンドポスト
150、160 エンドプレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽であって、
直列に電気的相互接続された並列配置の複数のパネル状電解セル(4)を含む電解スタック(3)であって、各電解セル(4)は、内部にアノード(6)が配置されたアノードチャンバ(5)、および内部にカソード(8)が配置されたカソードチャンバ(7)を備え、前記アノードチャンバ(5)および前記カソードチャンバ(7)は、シート状セパレータ(9)によって互いに分離されている、電解スタック(3)と、
前記電解スタック(3)の前記電気的相互接続を機械的に固定するための手段(10)と
を備え、
前記スタック(3)は、各々が複数の前記電解セル(4)および機械的圧縮手段(12)を備える少なくとも2つのマルチセル素子(11)を含み、各マルチセル素子(11)の前記電解セル(4)は、前記機械的圧縮手段(12)によって封止された状態で一緒に保持され、前記手段(10)は、前記マルチセル素子(11)の電気的相互接続を機械的に固定するように構成され、
前記電解スタック(3)の前記電気的相互接続を機械的に固定するための前記手段(10)は、前記スタック(3)に対して規定の圧縮力を及ぼすために、前記スタック(3)の最も外側の電解セル(4)と相互作用するように配置され、または
前記電解スタック(3)の前記電気的相互接続を機械的に固定するための前記手段(10)は、近接するマルチセル素子(11)に対する接触圧力を提供するために、少なくとも2つの前記近接するマルチセル素子(11)に取り付けられることを特徴とする、電解槽。
【請求項2】
前記電解槽(1)は、メンテナンス状態を有するように構成され、メンテナンス状態では、前記電解スタック(3)の前記電気的相互接続を機械的に固定するための前記手段(10)は、緩められた状態にあり、前記機械的圧縮手段(12)は、締結状態にあり、前記マルチセル素子(11)は、前記電解槽(1)の前記メンテナンス状態で個々に交換可能であることを特徴とする、請求項1に記載の電解槽。
【請求項3】
前記マルチセル素子(11)は各々、3~50個、より好ましくは5~15個の電解セル(4)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の電解槽。
【請求項4】
前記マルチセル素子(11)は、隣接するマルチセル素子(11)との電気的接続のための接触面を提供する外部後壁(13)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の電解槽。
【請求項5】
前記マルチセル素子(11)は、前記マルチセル素子(11)の前記最も外側の電解セル(4)の前記アノードチャンバ(5)および前記カソードチャンバ(7)をそれぞれ含む2つの端部(14、15)と、共有のバイポーラ隔壁(17)によって互いに電気的に接続された隣接する内側電解セル(4)の前記カソードチャンバ(7)および前記アノードチャンバ(5)を含む多数の中間部(16)と、前記端部(14、15)および前記中間部(16)の任意の2つの隣接部(14、15、16)の間に介在している前記シート状セパレータ(9)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の電解槽。
【請求項6】
前記マルチセル素子(11)の前記最も外側の電解セル(4)の前記アノードチャンバ(5)および/または前記カソードチャンバ(7)は、前記内側電解セル(4)の前記カソードチャンバ(7)および前記アノードチャンバ(5)の各々の容積よりも1.1~2倍の範囲で大きい容積を有することを特徴とする、請求項5に記載の電解槽。
【請求項7】
前記機械的圧縮手段(12)は、前記マルチセル素子(11)の前記電解セル(4)を横切って外部に延びるタイロッド(18)と、前記マルチセル素子(11)の端部構成要素(19)とを備え、前記端部構成要素(19)は、前記タイロッド(18)と係合し、前記マルチセル素子(11)の前記電解セル(4)に対して圧縮封止力を及ぼすことを特徴とする、請求項1に記載の電解槽。
【請求項8】
機械的圧縮手段(12)は、
前記それぞれのマルチセル素子(11)の前記電解セル(4)がその中に配置される少なくとも2つのシェル部(20、21)であって、前記シェル部(20、21)は各々、円周方向フランジ部分(22、23)を備えるシェル部(20、21)と、
ボルト(25)であって、前記ボルト(25)が締結されると前記シェル部(20、21)内で前記電解セル(4)を圧縮するように配置されたボルト(25)と
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の電解槽。
【請求項9】
前記機械的圧縮手段(12)は、前記シェル部(20、21)の前記フランジ部分(22、23)の間に配置された少なくとも1つのガスケット(24)をさらに備え、前記ガスケット(24)は、前記ボルト(25)が締結されると圧縮されることを特徴とする、請求項8に記載の電解槽。
【請求項10】
前記機械的圧縮手段(12)は、前記マルチセル素子(11)の前記端部および前記中間部(14、15、16)に取り付けられた円周方向外部フランジ部分(26、27)と、隣接する端部および/または中間部(14、15、16)の前記フランジ部分(26、27)を互いに締結するボルト(28)とを備えることを特徴とする、請求項5または6に記載の電解槽。
【請求項11】
前記マルチセル素子(11)は、前記マルチセル素子(11)の前記電解セル(4)からの電解質の分配、または電解質および/もしくは生成ガスの収集のための少なくとも1つの内部マニホールドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電解槽。
【請求項12】
前記電解槽(1)は、セルラック(2)をさらに備え、前記電解スタック(3)の前記電解セル(4)および/または前記電解スタック(3)の前記電気的相互接続を機械的に固定するための前記手段(10)は、前記セルラック(2)に装着されることを特徴とする、請求項1に記載の電解槽。
【国際調査報告】