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特表2024-523701電熱システムを有する風力タービンブレード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電熱システムを有する風力タービンブレード
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/40 20160101AFI20240621BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20240621BHJP
   F03D 80/30 20160101ALI20240621BHJP
【FI】
F03D80/40
F03D1/06 A
F03D80/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500140
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022068557
(87)【国際公開番号】W WO2023280838
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21184064.0
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521176558
【氏名又は名称】エルエム・ウインド・パワー・アクスイェ・セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】トヴァー,アイザック
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】デヴァラジ,ラジャマノハリ
(72)【発明者】
【氏名】ミランダ,ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ラース・ボー
(72)【発明者】
【氏名】ベンセン,ピーター
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178BB43
3H178BB44
3H178CC02
3H178DD51Z
3H178DD70Z
(57)【要約】
【課題】
風力タービンブレードは、長手方向に根元とチップの間に延在し、かつ横方向に前縁と後縁の間に延在する負圧側シェル部分及び正圧側シェル部分を有する空力シェル本体と、風力タービンブレード上での着氷を低減するための電熱システムとを備えており、電熱システムは、空力シェル本体の長手方向セクションに実質的に延在するように配置された導電性繊維を含む発熱層と、発熱層の導電性繊維が、電源ケーブルから電力を受け取ると、風力タービンブレードの外側に抵抗加熱をもたらして、風力タービンブレードの着氷を低減するように構成されている、発熱層と、発熱層の外側に発熱層に重なるように配置された金属製避雷層と、金属製避雷層から落雷電流を引下げ導線の第1の端部に導電するように金属製避雷層に電気的に接続されている引下げ導線とを備えており、発熱層及び金属製避雷層は、空力シェル本体内に埋め込まれ、かつ空力シェル本体と共含浸されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンブレード(10)であって、当該風力タービンブレード(10)が、
長手方向(L)に根元(16)とチップ(14)の間に延在し、かつ横方向に前縁(18)と後縁(20)の間に延在する負圧側シェル部分(22)及び正圧側シェル部分(24)を有する空力シェル本体(12)と、
当該風力タービンブレード上での着氷を低減するための電熱システム(40)と
を備えており、前記電熱システムが、
前記空力シェル本体の長手方向セクション(19)、好ましくは前縁セクションに実質的に延在するように配置された導電性繊維を含む発熱層(50)と、
前記発熱層に電力を供給するように構成されているとともに電源に接続されるように構成された電源ケーブル(90)であって、前記発熱層の導電性繊維が、前記電源ケーブルから電力を受け取ると、当該風力タービンブレードの外側に抵抗加熱をもたらして、当該風力タービンブレードの着氷を低減又は防止するように構成されている、電源ケーブル(90)と、
前記発熱層の外側に前記発熱層に重なるように配置された金属製避雷層(60)であって、受雷するように構成された金属製避雷層(60)と、
当該風力タービンブレードの根元に配置された第1の端部(96)を有しかつ接地されるように構成された引下げ導線(95)であって、前記金属製避雷層から落雷電流を前記引下げ導線の第1の端部に導電するように前記金属製避雷層に電気的に接続されている引下げ導線(95)と
を備えており、前記発熱層の導電性繊維及び前記金属製避雷層が、前記空力シェル本体内に埋め込まれ、かつ前記空力シェル本体と共含浸されている、風力タービンブレード。
【請求項2】
前記電熱システムが、前記金属製避雷層と前記発熱層の間に挟み込まれた電気絶縁層(70,71,72)を備えており、前記電気絶縁層が、前記発熱層への雷の放電を防止するように構成されており、前記電気絶縁層が、前記空力シェル本体に埋め込まれ、かつ前記空力シェル本体と共含浸されている、請求項1に記載の風力タービンブレード。
【請求項3】
前記電気絶縁層が、2つのガラス繊維層の間に挟まれたポリマーフィルム、例えばPETフィルムを含む積層構造を含む、請求項2に記載の風力タービンブレード。
【請求項4】
前記発熱層が、根元側縁部(53)、チップ側縁部(54)、長手方向負圧側縁部(55)及び長手方向正圧側縁部(56)を含んでおり、
前記金属製避雷層が、根元側縁部(63)、チップ側縁部(64)、長手方向負圧側縁部(65)及び長手方向正圧側縁部(66)を含んでおり、
前記金属製避雷層のチップ側縁部が、当該風力タービンブレードのチップに向かって前記発熱層のチップ側縁部を越える位置にある、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項5】
前記電気絶縁層が、根元側縁部、チップ側縁部、長手方向負圧側縁部(75)及び長手方向正圧側縁部(76)を含んでおり、
前記電気絶縁層の長手方向負圧側及び正圧側縁部が、前記発熱層の長手方向負圧側縁部及び長手方向正圧側縁部の両方を越えて、例えば後縁に向かって、延在している、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項6】
前記電気絶縁層の長手方向負圧側縁部が、前記発熱層の長手方向負圧側縁部及び前記金属製避雷層の長手方向負圧側縁部と交差する線又は面(P1)を越えて延在しており、
前記電気絶縁層の長手方向正圧側縁部が、前記発熱層の長手方向正圧側縁部及び前記金属製避雷層の長手方向正圧側縁部と交差する線又は面(P2)を越えて延在している、請求項5に記載の風力タービンブレード。
【請求項7】
前記空力シェル本体が、前縁において前記負圧側シェル部分と前記正圧側シェル部分の間に長手方向に延在するボンドライン(26)を含んでおり、前記ボンドラインが、前記発熱層を第1の発熱層部分(51)と第2の発熱層部分(52)とに分割し、かつ前記金属製避雷層を第1の金属製避雷層部分(61)と第2の金属製避雷部(62)とに分割しており、
第1の発熱層部分及び/又は第1の金属製避雷層部分が、前記負圧側シェル部分に埋め込まれ、かつ前記負圧側シェル部分と共含浸され、第2の発熱層部分及び/又は第2の金属製避雷層部分が、前記正圧側シェル部分に埋め込まれ、前記正圧側シェル部分と共含浸されている、請求項5に記載の風力タービンブレード。
【請求項8】
前記電熱システムが、電気絶縁性ポリマー材料からなる前縁絶縁層(80)を含んでおり、前記前縁絶縁層が、前縁のボンドラインに沿って延在し、かつ前縁のボンドラインに重なっているとともに、前記ボンドラインから横方向に延在して、前記負圧側シェル部分及び前記正圧側シェル部分の円周に沿って第1及び第2の金属製避雷層部分に重なっている、請求項7に記載の風力タービンブレード。
【請求項9】
前記空力シェル本体が、前記ボンドラインに重なる前縁保護キャップ(84)を備えており、前記前縁保護キャップが、当該風力タービンブレードの外側に露出した外側を有し、当該風力タービンブレードの前縁にエロージョン耐性を与えるように構成されている、請求項7又は請求項8に記載の風力タービンブレード。
【請求項10】
前記電熱システムが、前記金属製避雷層を覆う第1の外装層(85)を備えており、第1の外装層が、前記金属製避雷層を覆う内側(87)と、当該風力タービンブレードの外部に露出した外側(86)とを有する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項11】
前記空力シェル本体が、当該風力タービンブレードの外側に露出した外側(89)を有する第2の外装層(88)を備えており、第2の外装層が、第1の外装層と実質的に面一であり、第1の外装層とは異なる、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項12】
前記電熱システムが、少なくとも第1のケーブルクランプ装置を含む所定の数のケーブルクランプ装置(100)を備えており、前記所定の数のケーブルクランプ装置が、前記電源ケーブルと前記引下げ導線とを電気的に接続して、当該ブレードの根元とチップの間の長手方向に沿った別個の長手方向位置で等電位ボンディング接続を形成する、請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項13】
前記所定の数のケーブルクランプ装置が各々ハウジング(101)及び金属製クランプ部材(102)を備えており、各金属製クランプ部材が前記引下げ導線及び前記電源ケーブルを受け入れてクランプして等電位ボンディング接続を形成し、前記ハウジングが前記金属製クランプ部材と等電位ボンディング接続部とを電気的に絶縁するように前記金属製クランプ部材を取り囲み、前記ハウジングが、前記引下げ導線及び前記電源ケーブルを収容する貫通孔(103)を備える、請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項14】
前記電熱システムが、1以上の第1のサージ保護装置(110)及び/又は1以上の第2のサージ保護装置(111)及び/又は1以上の第3のサージ保護装置(112)を含む所定の数のサージ保護装置(110,111)を含んでおり、第1のサージ保護装置が、前記発熱層及び前記引下げ導線に接続され、第2のサージ保護装置が前記発熱層及び前記金属製避雷層に接続され、第3のサージ保護装置が前記引下げ導線及び前記電源ケーブルに接続される、請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項15】
前記電熱システムが、当該風力タービンブレードの内部温度を検知するように構成された1以上の内部温度センサ(120)及び/又は当該風力タービンブレードの外部温度を検知するように構成された1以上の外部温度センサ(121)を含む所定の数の温度センサ(120,121)を備える、請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項16】
風力タービンブレードの空力シェル本体(21)の製造方法であって、導電性繊維を含む発熱層(50)、金属製避雷層(60)及び電気絶縁層(70)を1以上のシェル層(27)と共にドライ層としてレイアップするステップと、次いで一回の真空アシスト樹脂トランスファー成形プロセスでこれらの層(27,50,60,70)を共含浸及び硬化させて、前記発熱層(50)、前記金属製避雷層(60)及び前記電気絶縁層(70)を空力シェル本体(21)に埋め込むステップとを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電熱システムを有する風力タービンブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンを寒冷地で運転する場合、風力タービンブレードに氷が堆積するおそれがあり、タービンの性能に課題を呈する。第1の観点では、ブレード表面に氷が形成されると、ブレード空力が乱れ、タービン効率の低下及び/又は運転騒音レベルの増加をもたらしかねない。追加の観点では、ブレード表面から剥がれた氷が落下するおそれがある。この点から、このような場所の風力タービンブレードには、着氷防止及び/又は氷除去のためのシステムが設けられていることが多い。
【0003】
風力タービンブレードの表面温度を氷点を超える温度に上昇させるためブレードの内部に加熱空気を供給するという原理で動作する熱風電熱システムを設けることが知られている。かかる熱風電熱システムの一例は、米国特許出願公開第2013/0106108号に記載されている。
【0004】
ブレードに埋め込まれた電気加熱システム並びに機械式電熱システムを利用することも知られている。ただし、ブレードに導電性材料を含めると、これらの導電性材料が雷撃を受ける危険性が伴う。特に、ブレードのチップ付近に導電性材料が含まれていると、ブレードのこの領域は落雷の危険性が高い。電気加熱システムに関しては、年間エネルギー生産量の低下を避けるため、表面乱流の低減した雷保護が必要とされる。そこで、新しい解決策が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0106108号
【発明の概要】
【0006】
こうした背景から、従来技術の短所の1以上を解消又は改善する或いは有用な代替策をもたらす電熱システムを有する風力タービンブレードを提供することを本開示技術の目的とみなし得る。
【0007】
これらの目的の1以上は、以下に記載す本開示技術の態様によって達成し得る。
【0008】
本開示技術の第1の態様は、風力タービンブレードに関するものであり、当該風力タービンブレードは、
長手方向に根元とチップの間に延在し、かつ横方向に前縁と後縁の間に延在する負圧側シェル部分及び正圧側シェル部分を有する空力シェル本体と、
風力タービンブレード上での着氷を低減するための電熱システムと
を備えており、電熱システムは、
空力シェル本体の長手方向セクション、好ましくは前縁セクションに実質的に延在するように配置された導電性繊維を含む発熱層と、
発熱層に電力を供給するように構成されているとともに電源に接続されるように構成された電源ケーブルであって、発熱層の導電性繊維が、電源ケーブルから電力を受け取ると、風力タービンブレードの外側に抵抗加熱をもたらして、風力タービンブレードの着氷を低減又は防止するように構成されている、電源ケーブルと、
発熱層の外側に発熱層に重なるように配置された金属製避雷層であって、受雷するように構成された金属製避雷層と、
風力タービンブレードの根元に配置された第1の端部を有しかつ接地されるように構成された引下げ導線であって、金属製避雷層から落雷電流を引下げ導線の第1の端部に導電するように金属製避雷層に電気的に接続されている引下げ導線と
を備えており、発熱層(好ましくは発熱層の導電性繊維)及び金属製避雷層が、空力シェル本体内に埋め込まれ、かつ空力シェル本体と共含浸されている。
【0009】
発熱層及び金属製避雷層を空力シェル本体内に埋め込んで空力シェル本体と共含浸すると、特に発熱層及び/又は金属製避雷層を空力シェル本体上に重ねて積層した配置に比べ、滑らかな外面を与え、空力性能が向上する。さらに、発熱層の外側に発熱層に重なるように金属製避雷層を配置することによって、雷が発熱層に放電するリスクを減らすことができる。
【0010】
加えて/或いは、金属製避雷層は、金属メッシュ、好ましくは銅メッシュ、例えばエキスパンド加工銅メッシュ又は打抜加工銅メッシュであってもよい。
【0011】
加えて/或いは、導電性繊維は炭素繊維であってもよい。導電性繊維は、1以上の繊維層、好ましくは二軸に配置し得る。繊維層は、不織であっても及び/又は長手方向に対して±45度に配置してもよい。
【0012】
加えて/或いは、電源ケーブルは、発熱層の根元側縁部で発熱層の根元側部分に接続した第1の電源導線と、発熱層のチップ側縁部で発熱層のチップ側部分に接続した第2の電源導線とを備えていてもよく、根元側部分は、チップ側部分よりも風力タービンの根元に近い。
【0013】
本開示において、2つの部材が「共含浸」されるとは、2つの部材が同一プロセスにおいて樹脂で同時に含浸され、硬化されることをいう。例えば、風力タービンブレードの発熱層と空力シェル本体のような2つの繊維強化部材の共含浸は、2つの繊維強化部材のドライ繊維を型内に配置し、それらを同一プロセスで同時に樹脂で含浸し、樹脂を硬化させることを含む。これは、2つの別個に製造された部材を接合するプロセス或いはある部材を別の部材に重ねて積層するプロセスとは対照的である。
【0014】
加えて/或いは、電熱システムは、金属製避雷層と発熱層の間に挟み込まれた電気絶縁層を備えていてもよく、電気絶縁層は、発熱層への雷の放電を防ぐように構成してもよく、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、例えばPETフィルムから作ることができる。電気絶縁層は、空力シェル本体内に埋め込んで、空力シェル本体と共含浸してもよい。
【0015】
発熱層と金属製避雷層の間に電気絶縁層を挟み込むと、落雷時の発熱層の損傷リスクを低減しながら、風力タービンブレードの着氷を低減するための電熱システムの作動時の金属製避雷層への短絡のリスクも低減する。
【0016】
電気絶縁層は、金属製避雷層の端部から発熱層の対応する端部にフラッシオーバさせるのに必要なフラッシオーバ電圧が雷が電気絶縁層を貫通するのに必要な破壊電圧よりも大きくなるように、電気絶縁層の材料を選択し、かつ発熱層及び金属製避雷層に対する電気絶縁層の相対的位置を選択することによって、雷が発熱層に放電するのを防ぐように構成し得る。フラッシオーバ電圧及び破壊電圧は、例えば実験で得ることができる。
【0017】
さらに、電気絶縁層は、2つの繊維層(好ましくはガラス繊維層)の間に挟まれたポリマーフィルム(例えばPETフィルム)を含む積層構造を含んでいてもよい。積層構造は、発熱層、金属製避雷層及び任意には電気絶縁層の含浸及び硬化の前に予め製造しておいてもよい。積層構造は、ポリマーフィルムを繊維層に接着する接着剤を含んでいてもよい。接着剤は、好ましくは、発熱層、金属製避雷層及び任意には電気絶縁層の硬化に使用される樹脂とは異なる。
【0018】
加えて/或いは、発熱層は、根元側縁部、チップ側縁部、長手方向負圧側縁部及び長手方向正圧側縁部を含むことができる。金属製避雷層は、根元側縁部、チップ側縁部、長手方向負圧側縁部及び長手方向正圧側縁部を含むことができる。金属製避雷層のチップ側縁部は、風力タービンブレードのチップに向かって発熱層のチップ側縁部を越える位置にあってもよく、発熱層のチップ側縁部との間に長手方向ギャップを設けて配置してもよい。
【0019】
これによって、風力タービンブレードのチップ付近の雷撃が金属製避雷層ではなく発熱層に放電するリスクをさらに低減するという利点が得られる。
【0020】
加えて/或いは、電気絶縁層は、根元側縁部、チップ側縁部、長手方向負圧側縁部及び長手方向正圧側縁部を含むことができる。電気絶縁層の長手方向負圧側縁部及び正圧側縁部は、発熱層の長手方向負圧側縁部及び長手方向正圧側縁部の両方を越えて(例えば後縁に向かって)延在してもよい。
【0021】
加えて/或いは、発熱層、金属製避雷層及び電気絶縁層の縁部は、以下の通り同定し得る。根元側縁部は根元に最も近く位置し、チップ側縁部はチップに最も近く位置する。また、長手方向負圧側縁部及び長手方向正圧側縁部は実質的に長手方向に沿って延在する。長手方向負圧側縁部は負圧側シェル部分に位置し、長手方向正圧側縁部は正圧側シェル部分に位置する。さらに、長手方向負圧側縁部及び正圧側縁部は最も外側の長手方向縁であり、例えば後縁に最も近い。
【0022】
さらに、電気絶縁層の長手方向負圧側縁部は、発熱層の長手方向負圧側縁部及び金属製避雷層の長手方向負圧側縁部と交差する線又は面を越えて延在してもよい。電気絶縁層の長手方向正圧側縁部は、発熱層の長手方向正圧側縁部及び金属製避雷層の長手方向正圧側縁部と交差する線又は面を越えて延在してもよい。
【0023】
加えて/或いは、空力シェル本体は、前縁において負圧側シェル部分と正圧側シェル部分の間に長手方向に延在するボンドラインを含んでいてもよく、ボンドラインは、発熱層を第1の発熱層部分と第2の発熱層部分とに分割し、金属製避雷層を第1の金属製避雷層部分と第2の金属製避雷部とに分割し、好ましくは電気絶縁層を第1の電気絶縁層部分と第2の電気絶縁層部分とに分割する。第1の発熱層部分及び/又は第1の金属製避雷層部分は、負圧側シェル部分内に埋め込んで、負圧側シェル部分と共含浸してもよい。第2の発熱層部分及び/又は第2の金属製避雷層部分は、正圧側シェル部分内に埋め込んで、正圧側シェル部分と共含浸してもよい。
【0024】
さらに、電熱システムは、電気絶縁性ポリマー材料、好ましくはPETフィルムからなる前縁絶縁層を含んでいてもよい。前縁絶縁層は、前縁のボンドラインに沿って延在し、前縁のボンドラインに重なっていてもよい。前縁絶縁層は、ボンドラインから横方向に延在し、負圧側シェル部分及び正圧側シェル部分の円周に沿って第1及び第2の金属製避雷層部分に重なっていてもよい。
【0025】
前縁絶縁層を含めることによって、ボンドラインへの雷撃がボンドラインに隣接する発熱層部分の端部を貫通するリスクが低減する。
【0026】
加えて/或いは、発熱層は、ボンドラインに隣接して配置された追加の炭素繊維マットを含んでいてもよい。これによって、着氷を低減するための十分な熱がボンドラインに供給されるようになる。
【0027】
加えて/或いは、空力シェル本体は、ボンドラインに重なる(好ましくは前縁絶縁層に重なる)前縁保護キャップを備えていてもよい。前縁保護キャップは、風力タービンブレードの外部に露出した外側を有していてもよく、風力タービンブレードの前縁にエロージョン耐性をもたらすように構成し得る。前縁保護キャップは、好ましくは、ポリウレタン(PUR)を含む或いは実質的にポリウレタンからなる。
【0028】
加えて/或いは、電熱システムは、金属製避雷層を覆う第1の外装層を備えていてもよい。第1の外装層は、金属製避雷層を覆う内側を有していてもよく、風力タービンブレードの外部に露出した外側を有していてもよい。第1の外装層は、好ましくは、ポリウレタン(PUR)塗料のような塗料、及び/又はポリエステル系ベールのようなベールを含むことができる。第1の外装層は、好ましくは0.8mm以下の厚さ、さらに好ましくは0.1~0.4mm、さらに一段と好ましくは0.2~0.3mmの範囲である。
【0029】
金属系避雷層を第1の外装層で覆うことによって、金属製避雷層のエロージョンを低減することができる。また、十分に薄い第1の外装層を設けることによって、雷撃が第1の外装層を通して金属製避雷層に放電する代わりに、第1の外装層の表面全体に雷が放電する危険性を低減し得る。
【0030】
加えて/或いは、空力シェル本体は、風力タービンブレードの外部に露出した外側を有し得る第2の外装層を含んでいてもよい。第2の外装層は、第1の外装層と実質的に面一であってもよく、第1の外装層と異なっていてもよい。第2の外装層は、好ましくはゲルコートであり、好ましくはポリエステル系ゲルコートである。
【0031】
加えて/或いは、第2の外装層は、少なくとも金属製避雷層、及び/又は空力シェル本体の残りの部分を覆っていなくてもよい。
【0032】
加えて/或いは、電熱システムは、少なくとも第1のケーブルクランプ装置を含む所定の数のケーブルクランプ装置を備えていてもよい。所定の数のケーブルクランプ装置は、電源ケーブルと引下げ導線とを電気的に接続して、ブレードの根元とチップの間の長手方向に沿った別個の長手方向位置で等電位ボンディング接続を形成することができる。
【0033】
ケーブルクランプは、電源ケーブルと雷ケーブルの間に等電位ボンディング接続をもたらして、ブレードが雷撃された場合のフラッシオーバを低減又は回避して、ブレードの損傷を低減又は回避することができる。
【0034】
加えて/或いは、電源ケーブルはシールドを含んでおり、所定の数のケーブルクランプ装置が電源ケーブルのシールドに電気的に接続される。
【0035】
加えて/或いは、所定の数のケーブルクランプ装置は、各々、ハウジング及び金属製クランプ部材を備えていてもよい。各金属製クランプ部材は、引下げ導線及び電源ケーブル(好ましくは電源ケーブルのシールド)を受け入れてクランプして、等電位ボンディング接続を形成することができる。ハウジングは、金属製クランプ部材と等電位接合接続部とを電気的に絶縁するように金属製クランプ部材を取り囲むことができる。ハウジングは、引下げ導線及び電源ケーブルを収容する貫通孔を備えることができる。ハウジングは、好ましくはポリウレタン(PUR)のようなポリマーで作られる。
【0036】
加えて/或いは、電熱システムは、1以上の第1のサージ保護装置及び/又は1以上の第2のサージ保護装置及び/又は1以上の第3のサージ保護装置を含む所定の数のサージ保護装置を含むことができる。第1のサージ保護装置は、発熱層及び引下げ導線に接続し得る。第2のサージ保護装置は、発熱層及び金属製避雷層に接続し得る。第3のサージ保護装置は、引下げ導線及び電源ケーブルに接続し得る。
【0037】
加えて/或いは、電熱システムは、風力タービンブレードの外部温度を検知するように構成された1以上の外部温度センサ及び/又は風力タービンブレードの内部温度を検知するように構成された1以上の内部温度センサを含む所定の数の温度センサを備えていてもよい。
【0038】
加えて/或いは、所定の数の温度センサは、風力タービンのハブに配置し得る制御装置に温度信号を送るように構成し得る。制御装置は、風力タービンブレード上の着氷を低減するように、所定の数の温度センサからの温度信号に基づいて発熱層への電力供給を制御し得る。所定の温度センサは光ファイバーであってもよい。
【0039】
加えて/或いは、電熱システムは、風力タービンブレードのチップに配置され、受雷するように構成されたチップレセプタを備えていてもよく、チップレセプタは、引下げ導線に電気的に接続される。
【0040】
本開示技術の第2の態様は、風力タービンブレード、好ましくは本開示技術の第1の態様に係る風力タービンブレードの空力シェル本体の製造方法に関する。本方法は、導電性繊維を含む発熱層、金属製避雷層及び電気絶縁層を、空力シェル本体の1以上のシェル層と共にドライ層(すなわち非硬化層、例えば樹脂なしで繊維だけからなるもの)としてレイアップするステップと、次いで一回の真空アシスト樹脂トランスファー成形(VaRTM)プロセスでこれらの層を共含浸及び硬化させて、発熱層、金属製避雷層及び電気絶縁層を空力シェル本体に埋め込むステップを含む。
【0041】
当業者には明らかであろうが、本開示技術の上述の態様及びその実施形態のいずれか1以上を、本開示技術の別の態様及びその実施形態のいずれか1以上と組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下、本開示技術の実施形態について、添付の図面を参照してさらに詳しく説明する。図面は、本発明の実施法を例示するものであり、特許請求の範囲に記載された技術範囲に属する他の実施形態に限定するものではない。
図1】風力タービンの概略斜視図。
図2図1に示す風力タービンの長手方向前縁セクションを有する風力タービンブレードの概略斜視図。
図3図2に示す風力タービンブレードの長手方向セクションに組み込まれた電熱システムの長手方向に沿った概略図。
図4図2に示す風力タービンブレードの長手方向セクションの概略断面図。
図5】ケーブルクランプ装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図面に関する以下の説明では、同じ符号は同じ構成要素を示しているので、すべての図面に関して説明しないこともある。
【0044】
図1は、タワー4と、ナセル6と、数度の傾斜角を含んでいてもよい実質的に水平なロータシャフトを有するロータとを備えるいわゆる「デンマーク型」の従前の最新アップウィンド式風力タービン2を示す。ロータは、ハブ8と、ハブ8から半径方向に延在する3枚のブレード10とを含んでおり、各ブレードはハブに最も近いブレード根元16と、ハブ8から最も遠いブレードチップ14とを有する。
【0045】
図2は、例示的な風力タービンブレード10の概略図を示す。風力タービンブレード10は、根元端17とチップ端15とを有する従前の風力タービンブレードの形状を有しており、ハブに最も近い根元領域30と、ハブから最も離れた輪郭又は翼形領域34と、根元領域30と翼形領域34との間の遷移領域32とを備える。ブレード10は、ブレードをハブ8に装着したときに、ブレード10の回転方向に面する前縁18と、前縁18と逆方向に向いた後縁20とを備える。
【0046】
翼形領域34(輪郭領域とも呼ばれる)は、揚力の発生に関して理想的又はほぼ理想的なブレード形状を有しているが、根元領域30は構造的な考慮により実質的に円形又は楕円形の断面を有しており、例えばブレード10をハブに取り付けるのが簡単かつ安全になる。根元領域30の直径(又は翼弦)は、根元領域30全体に沿って一定であってもよい。遷移領域32は、根元領域30の円形又は楕円形から翼形領域34の翼形輪郭へと徐々に変化する遷移輪郭を有する。遷移領域32の翼弦長は、通例、ハブからの距離rの増加に伴って増加する。翼形領域34は、ブレード10の前縁18と後縁20との間に延在する翼弦を有する翼形輪郭を有する。翼弦の幅は、ハブからの距離rの増加に伴って減少する。
【0047】
ブレード10のショルダ38は、ブレード10の翼弦長が最大となる位置として定義される。ショルダ38は、通例、遷移領域32と翼形領域34との境界に設けられる。
【0048】
なお、ブレードの異なるセクションの翼弦は通常は同一平面上に存在しない。ブレードはねじれ及び/又は湾曲し(すなわち、予め曲げられ)ており、それに応じたねじれ及び/又は湾曲した経路を翼弦面に与えるからであり、これは、ハブからの半径に依存するブレードの局所速度を補償するために大抵当てはまる。
【0049】
ブレード10は、通例、ためにブレードの前縁18及び後縁20でボンドライン28に沿って互いに接着して風力タービンブレード10の空力シェル本体21を形成する、正圧側シェル部分24と負圧側シェル部分26から作られる。
【0050】
次いで図3を参照すると、ブレード10の空力シェル本体21などに組み込まれた電熱システム40の電気的接続及び積層構造の概略図が示してある。電熱システム40は、図2に示すような風力タービンブレードの前縁セクション22における着氷を例えば防止又は融解によって低減させるためのものである。
【0051】
図3から明らかなように、電熱システム40は、発熱層50を備える。本実施形態では、発熱層50は、実質的に前縁セクション22(図2に示す)に延在するように配置され、長手方向に対して±45度に配向した不織二軸炭素繊維マットを含んでいる。ただし、その他の発熱層50の構成を採用してもよい。発熱層50は、根元側縁部53とチップ側縁部54とを含む。図4から明らかなように、発熱層50は、さらに長手方向負圧側縁部55と長手方向正圧側縁部56とを有する。以下、発熱層、金属製避雷層、電気絶縁層の縁部は、以下の通り同定することができる。根元側及びチップ側縁部は、実質的に長手方向に対して横断方向、例えば翼弦方向に延在するのに対して、長手方向負圧側縁部及び正圧側縁部は実質的に長手方向に延在する。根元側縁部は根元に最も近く位置し、チップ側縁部はチップに最も近く位置する。長手方向負圧側縁部は負圧側シェル部分26に位置し、長手方向正圧側縁部は正圧側シェル部分24に位置する。さらに、長手方向負圧側縁部及び正圧側縁部は、最も外側の長手方向縁であり、例えば後縁に最も近い。
【0052】
図3に戻ると、電熱システム50は、受雷するように構成された金属製避雷層60も備える。本実施形態では、金属製避雷層60は、エキスパンド加工又は打抜加工銅メッシュの形態である。金属製避雷層60は、発熱層50の外側に発熱層50に重なるように配置され、発熱層50に雷が放電する危険性を低減する。金属製避雷層60は、根元側縁部63とチップ側縁部64とを有する。図4から明らかなように、金属製避雷層60は、さらに長手方向負圧側縁部65と長手方向正圧側縁部66とを有する。図3から明らかなように、金属製避雷層60のチップ側縁部64は、風力タービンブレードのチップに向かって発熱層50のチップ側縁部54を越える位置にあり、発熱層50のチップ側縁部54との間に長手方向ギャップを設けて配置される。
【0053】
電熱システム50は、第1の電源導線91及び第2の電源導線92を含む電源ケーブル90をさらに備える。第1の導体91は発熱層50の根元側部分に電気的に接続され、第2の電源導線92は発熱層50のチップ側部分に電気的に接続される。根元側部分は、チップ側部分よりも風力タービンの根元に近い。電源ケーブル90の根元端は電源に接続されるように構成されており、電源は例えばハブ8又はブレード10内に配置し得る。こうして、電源ケーブル90は、発熱層50に電力を供給することができる。発熱層50の導電性炭素繊維は、電源ケーブル90から電力を受け取ると、風力タービンブレード10の前縁セクション22の外側に抵抗加熱をもたらして、風力タービンブレード10上の着氷を、例えば融解又は防止によって、低減させることができる。
【0054】
電熱システム50は、風力タービンブレード10の根元に配置された第1の端部96を有する引下げ導線95を含む。第1の端部96は、ハブ8の引下げ導線を介して接地されるように構成される。引下げ導線95は金属製避雷層と電気的に接続されており、金属製避雷層60から落雷電流を引下げ導線95の第1の端部に導電する。風力タービンブレード10のチップ端15にある引下げ導線95の反対側端部は、チップ15で受雷するように構成された電熱システム40のチップレセプタ98に電気的に接続されている。
【0055】
図4を参照すると、電熱システム40は、発熱層への雷の放電を防止するように構成された電気絶縁層70(図3では図示せず)を備える。電気絶縁層70は、金属製避雷層60と発熱層50との間に挟み込まれる。本実施形態では、電気絶縁層70は、2つのガラス繊維層の間に挟まれたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを含む積層構造からなる。その他の構成によって十分な電気絶縁をもたらしてもよい。電気絶縁層70は、長手方向負圧側縁部75と長手方向正圧側縁部76とを有する。電気絶縁層70の長手方向負圧側縁部75,76は、発熱層50の長手方向負圧側縁部55及び長手方向正圧側縁部56を越えて、後縁(図4では図示せず、前縁18の反対側にある)に向かってさらに延在している。特に、電気絶縁層70の長手方向負圧側縁部75は、発熱層50の長手方向負圧側縁部55及び金属製避雷層60の長手方向負圧側縁部65と交差する第1の平面P1を越えて延在している。同様に、電気絶縁層70の長手方向正圧側縁部76は、発熱層50の長手方向正圧側縁部56及び金属製避雷層60の長手方向正圧側縁部66と交差する第2の平面P2を越えて延在している。
【0056】
図3から明らかなように、本実施形態では、電熱システム40は、3つのケーブルクランプ装置100を備える。ケーブルクランプ装置100は、電源ケーブル90のシールド(図示せず)を引下げ導線95と電気的に接続し、ブレード10の根元端17とチップ端15の間の長手方向に沿った別個の長手方向位置で等電位ボンディング接続を形成する。
【0057】
電熱システム40は、4つの第1のサージ保護装置110と、1つの第2のサージ保護装置111とをさらに備える。4つの第1のサージ保護装置110は、発熱層50及び金属製避雷層60に電気的に接続され、風力タービンブレード10への落雷時に発熱層50でのサージ電流を防止するように構成されている。1つの第2のサージ保護装置は、引下げ導線95と電源ケーブル90のシールドとの間に配置される。
【0058】
電熱システム40は、風力タービンブレード10の外部温度を検知するように構成された外部温度センサ121と、風力タービンブレード10の内部温度を検知するように構成された内部温度センサ120とをさらに備える。いくつかの実施形態では、外部温度センサ121は省略してもよい。温度センサ120,121は、例えば風力タービン2のナセル6又はハブ8に配置することができる制御装置に温度信号を送るように構成される。かかる制御装置は、風力タービンブレード上の着氷を低減するように、温度センサ120,121からの温度信号に基づいて発熱層50への電力供給を制御し得る。内部温度センサは光ファイバーとすることができ、外部温度センサはワイヤレスとすることができる。
【0059】
図4に示す配置は、発熱層50、金属製避雷層60及び電気絶縁層70を、空力シェル本体21の残りのシェル層27(例えばカーボン又はガラス繊維層、及び任意には発泡ポリマー又はバルサウッドのようなコア層、ただし例えば主積層体23などの一部の部材は炭素繊維引抜成形のような引抜成形で製造してもよい。)と共にドライ層としてレイアップし、次いで一回の真空アシスト樹脂トランスファー成形(VaRTM)プロセスでこれらの層50,60,70,2を一緒に含浸及び硬化させることによって得られる。こうして、発熱層50、金属製避雷層60及び電気絶縁層70は、空力シェル本体21内に埋め込まれ、空力シェル本体21と共含浸される。
【0060】
図4から明らかなように、空力シェル本体21は、負圧側シェル部分26と正圧側シェル部分24との間で長手方向に延在するボンドライン28を備える。ボンドライン28は、前縁18において、発熱層50を第1の発熱層部分51と第2の発熱層部分52とに分割し、金属製避雷層60を第1の金属製避雷層部分61と第2の金属製避雷層部分62とに分割し、電気絶縁層70を第1の電気絶縁層部分71と第2の電気絶縁層部分72とに分割する。第1の発熱層部分51、第1の金属製避雷層部分61及び第1の電気絶縁層部分71は、負圧側シェル部分26に埋め込まれて負圧側シェル部分26と共含浸され、第2の発熱層部分52、第2の金属製避雷層部分62及び第2の電気絶縁層部分72は、正圧側シェル部分24に埋め込まれて正圧側シェル部分24と共含浸される。
【0061】
ボンドライン28に隣接する発熱層部分51,52の端部を電気的に絶縁するため、電熱システム40は、電気絶縁性PETフィルムからなる前縁絶縁層80を備える。図4に示すように、前縁絶縁層80は、前縁18のボンドライン28に沿って延在し、前縁18のボンドライン28に重なっている。前縁絶縁層は、空力シェル本体21の円周に沿ってボンドライン28から離間した長手方向負圧側縁部81と長手方向正圧側縁部82とを有する。これによって、前縁絶縁層80は、ボンドライン28から横方向に延在し、図4から明らかなように、空力シェル本体21の円周に沿って第1及び第2の金属製避雷層部分61,62と重なる。
【0062】
図4に示すように、空力シェル本体21は、ボンドライン28と前縁絶縁層80と重なる前縁保護キャップ83を備える。前縁保護キャップ83は、風力タービンブレード10の前縁18にエロージョン耐性を与えるように構成され、風力タービンブレード10の外部に露出した外側84を有する。前縁保護キャップ83は、実質的にポリウレタン(PUR)からなる。前縁絶縁層80の長手方向負圧側及び正圧側縁部81,82は、各々前縁保護キャップ83の長手方向の負圧側及び正圧側縁部よりも後縁(図4では図示せず)に向かって延在している。前縁絶縁層80及び前縁保護キャップ83のそれぞれの長手方向負圧側縁部の間、及び前縁絶縁層80及び前縁保護キャップ83のそれぞれの長手方向正圧側縁部の間には、縁部封止材が設けられる。縁部封止材は、層間の表面遷移を滑らかにして乱流を低減するためのものである。
【0063】
電熱システム40は、金属製避雷層60を覆う第1の外装層85をさらに備える。第1の外装層85は、金属製避雷層60に面して金属製避雷層60を覆う内側87と、風力タービンブレード10の外部に部分的に露出し、前縁保護キャップ83によって部分的に覆われた外側86とを有する。第1の外装層はポリウレタン(PUR)塗料であり、比較的薄くて0.2~0.3mmの範囲内の厚さである。
【0064】
空力シェル本体21は、風力タービンブレード10の外部に露出した外側89を有する第2の外装層88を備える。第2の外装層88は、第1の外装層85と実質的に面一である。第2の外装層88は、金属製避雷層を覆っておらず、空力シェル本体21の残りの露出部分を覆っている。第2の外装層88は、第1の外装層85とは異なる材料で形成される。本実施形態では、第2の外装層88はポリエステル系ゲルコートである。
【0065】
図5A図5Cから明らかなように、各ケーブルクランプ装置100は、ポリマーハウジング101及び金属製クランプ部材102を備える。金属製クランプ部材102は、電源ケーブル90の引下げ導線95及び電源導線91,92のシールドを受け入れてクランプし、等電位ボンディング接続を形成する。ハウジング101は、金属製クランプ部材101と等電位接合接続部とを電気的に絶縁するように金属製クランプ部材101を取り囲んでいる。図5Cから明らかなように、ハウジング101は、引下げ導線95及び電源導線91、92を収容する4つの貫通孔103を備える。他の実施形態では、ハウジング101及び金属製クランプ部材102は、電熱システムが1本の引下げ導線導体95及び1本の電源ケーブル90を備える場合など、3又は2つの貫通孔を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
2 風力タービン
4 タワー
6 ナセル
8 ハブ
10 ブレード
12 シェル
14 ブレードチップ
15 チップ端
16 ブレード根元
17 根元端
18 前縁
20 後縁
21 空力シェル本体
22 前縁セクション
23 主積層体
24 正圧側シェル部分
26 負圧側シェル部分
27 シェル層
28 ボンドライン
30 根元領域
32 遷移領域
34 翼形領域
36 チップ領域
38 ショルダ
40 電熱システム
50 発熱層
51 第1の発熱層部分
52 第2の発熱層部分
53 根元側縁部
54 チップ側縁部
55 長手方向負圧側縁部
56 長手方向正圧側縁部
60 金属製避雷層
61 第1の金属製避雷層部分
62 第2の金属製避雷層部分
63 金属製避雷層の根元側縁部
64 金属製避雷層のチップ側縁部
65 金属製避雷層の長手方向負圧側縁部
66 金属製避雷層の長手方向正圧側縁部
70 電気絶縁層
71 第1の電気絶縁層部分
72 第2の電気絶縁層部分
75 電気絶縁層の長手方向負圧側縁部
76 電気絶縁層の長手方向正圧側縁部
80 前縁絶縁層
81 前縁絶縁層の長手方向負圧側縁部
82 前縁絶縁層の長手方向正圧側縁部
83 前縁保護キャップ
84 前縁保護キャップの外側
85 第1の外装層
86 第1の外装層の外側
87 第1の外装層の内側
88 第2の外装層
89 第2の外装層の外側
90 電源ケーブル
91 第1の電源導線
92 第2の電源導線
95 引下げ導線
96 引下げ導線の第1の端部
98 チップレセプタ
100 ケーブルクランプ装置
101 ハウジング部分
102 金属製クランプ部材
103 貫通孔
110 第1のサージ保護装置
111 第2のサージ保護装置
112 第3のサージ保護装置
120 内部温度センサ
121 外部温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】