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特表2024-523704カルシウム結晶沈着疾患の治療の手段および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】カルシウム結晶沈着疾患の治療の手段および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/00 20060101AFI20240621BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
A61P3/00
A61P9/00
A61P19/02
A61P19/00
A61P13/12
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500215
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2022067584
(87)【国際公開番号】W WO2023280615
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21183609.3
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515288959
【氏名又は名称】ユニフェルシテイト マーストリヒト
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT MAASTRICHT
【住所又は居所原語表記】Minderbroedersberg 4-6 Maastricht The Netherlands
(71)【出願人】
【識別番号】517079054
【氏名又は名称】アカデミシュ ジーケンハウス マーストリヒト
【氏名又は名称原語表記】ACADEMISCH ZIEKENHUIS MAASTRICHT
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ウェルティン、ティム ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン アッカー、グース ゲイズベルタス ヒュバート
(72)【発明者】
【氏名】シュルガース、レオン ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ライン、ローデウェイク ウィレム
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA19
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZC211
4C084ZC212
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA01
4H045BA18
4H045BA30
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、薬物治療の分野、特にヒトの治療、より詳細にはカルシウム結晶沈着疾患を持つヒトの治療に関する。一態様では、本発明は、ヒト体内でのカルシウム結晶の沈殿(異所性石灰化としても既知)を防ぐか、または減少させるポリペプチドを提供する。より詳細には、本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、アミノ酸がD-アミノ酸である環状ポリペプチド、本明細書に記載のポリペプチドを含む医薬組成物、並びに変形性関節症、肩関節周囲炎、異所性骨化、血管石灰化、腎臓結石および石灰沈着症からなる群より選択される疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、アミノ酸がD-アミノ酸である環状ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の環状ポリペプチドと、医薬上許容可能な担体と、を含む医薬組成物。
【請求項3】
変形性関節症、肩関節周囲炎、異所性骨化、血管石灰化、腎臓結石および石灰沈着症からなる群より選択される疾患の治療用の請求項1に記載のポリペプチドまたは請求項2に記載の医薬上許容可能な担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物治療の分野、特にヒトの治療、より詳細にはカルシウム結晶沈着疾患を持つヒトの治療に関する。一態様では、本発明は、ヒト体内でのカルシウム含有結晶の沈殿(異所性石灰化としても既知)を防ぐか、または減少させるポリペプチドを提供する。
【背景技術】
【0002】
軟部組織の石灰化としても知られるカルシウム結晶の異常沈着は、アテローム性動脈硬化症(1)、腎不全(2)、変形性関節症(3)など、多くの全身疾患や慢性疾患における大きな問題である。アテローム性動脈硬化症や変形性関節症では、カルシウム沈着の重要性は当初認識されていなかったが(4,5)、腎臓疾患ではよく認識されている(6)。カルシウムを含む結晶は、しばしば微粒子の形で検出が困難であるが、実際に疾患を引き起こしたり、少なくとも疾患を悪化させたりする可能性があることが次第に明らかになってきた(7,8)。病的なカルシウム沈着は、主に塩基性リン酸カルシウム(BCP)とピロリン酸カルシウム二水和物(CPP)からなる。
【0003】
カルシウム結晶の沈着を制御することは、無機リン酸(π)のような高濃度の金属イオンおよび陰イオンが細胞内外の環境に存在する多細胞生物において極めて重要である。コラーゲンなどの細胞外マトリックス成分は、核形成中心として働くことによって、石灰化を促進することができる(9)。一方で、ミネラル化は骨の発育と恒常性維持に極めて重要である(10)。そのため、カルシウムイオン濃度は、筋収縮と神経インパルス発生に重要なホルモンであるPTHとカルシトニンによって、血流中の厳しい限度(1.15~1.33mmol/L)内に維持されている(11)。総カルシウム濃度は2.2~2.7mMであり、約45%がイオン性、約45%がタンパク質結合性、約10%が複合体性である(12)。リン酸濃度は食事からの摂取により変動することが知られており(0.8~1.5mM)、タンパク質結合型はごく一部(約10~15%)である(13)。内因性の石灰化阻害因子としては、無機ピロリン酸(ppi)があり、これはエクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(Enpp1;(14))、アンキリン1(Ank1;(15))およびATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(Abcc6;(16))によって刺激されることが、マウスノックアウト動物実験によって証明されている。その他の重要な石灰化阻害因子としては、マトリックスGlaタンパク質(MGP)、Glaリッチタンパク質(GRP)、クロトー(KL)、α-2-HS-糖タンパク質(AHSG、フェチュインAとしても知られる)などがある。
【発明の概要】
【0004】
内因性の石灰化抑制剤がいくつかあるにもかかわらず、カルシウム結晶沈着症の治療や予防に有効な組成物は存在しない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】配列番号1に示されるペプチドとbフェチュインの生体外における広い濃度範囲でのカルシウム沈殿抑制効果を示す図である。カルシウム沈殿アッセイ(2時間)におけるペプチドの10段階希釈系列(合計1015)。bフェチュインまたはペプチド1を添加しなくても、100%の沈殿が得られる(破線)。
図2】ペプチド(20μM)の非存在下(左パネル)または存在下(右パネル)で2時間後に形成された沈殿物から得られた電子顕微鏡像である。bフェチュイン存在下で形成された沈殿を中央のパネルに示す。サンプル処理(透析)前の吸収測定によって、沈殿抑制率~50%が確認された。走査型電子顕微鏡の倍率は35,000倍。バーは5マイクロメートルを示す。中央のパネル:0.5mg/mlのbフェチュイン、右パネル:20μMペプチド1を添加。
図3】配列番号1に示されるペプチドによるヒト関節軟骨細胞、血管平滑筋細胞および骨髄間質細胞の細胞石灰化の阻害を示す図である。生体内細胞アッセイの代表的な位相差顕微鏡画像を示す。A)ヒト関節軟骨細胞(HACs)を1mMのATPと20μMのペプチドの有無で7日間刺激した。結果は、それぞれ3つの生物学的複製を持つ3人の軟骨細胞ドナーから得られた。B)血管平滑筋細胞(VSMC)を、20μMのペプチドの存在下または非存在下で、4.5mMのイオン性カルシウムで7日間刺激した。結果は、3人のVSMCドナーのそれぞれ3つの生物学的複製から得られた。C)β-グリセロリン酸(BGP)を含む骨形成分化培地中で、2.1μMのペプチドの存在下または非存在下で、BMSCを21日間分化させた。BMSC;1人のドナーの4つの生物学的複製を用いた。左パネル:各実験の最終日に位相差画像を得た。石灰化は黒い点で見ることができる。各条件につき1枚の代表画像を示す。スケールバーは200μmを示す。右のパネル:Randox社の総カルシウムアッセイで測定したウェルあたりの総カルシウム沈殿量を定量し、総タンパク質で正規化した。各ドナーの陽性コントロールは100%に正規化した。統計的比較はスチューデントt観察者検定(t-observertest)を用いて行った。*=p値<0.05。
図4】ペプチドの関節内注射は、ラットの変形性関節症モデルにおいて、軟骨組織病理を改善し、動物の運動能力を改善したことを示す図である。変形性関節症は、内側半月板の外科的断裂と側副靭帯の切断によって誘発された(N=40)。濃度20μMのペプチド50μlまたはビヒクル(0.9%NaCl)50μlを隔週で関節内に注射した(各群N=20)。28日目に剖検を行い、OARSIスコアリングシステムに従って組織学的解析を行った。A)組織学的外観が最高、平均、最低のもの由来の代表的なトルイジンブルー染色組織切片。軟骨組織は濃い青色で染色されている。B)OARSIスコアは、盲検化された2人の観察者によって、1匹あたりの軟骨損傷のグレードとステージを掛け合わせて求めた。統計的比較は両側t検定で行った。*=p値<0.05。C)実験20日目の歩行分析スコア。1匹につき4回の測定を行い、各点はグラフ中の1匹の平均を表す。群間の統計的有意性はマン・ホイットニーのU検定で決定した。*=p値<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、アミノ酸がD-アミノ酸である環状ポリペプチドに関する。また、本発明は、そのようなポリペプチドと、医薬上許容可能な担体とを含む医薬組成物、並びに疾患の治療におけるその使用に関する。より詳細には、本発明は、変形性関節症、肩関節周囲炎、異所性骨化、血管石灰化、腎臓結石および石灰沈着症からなる群より選択される疾患の治療用の本明細書に記載のポリペプチドに関する。
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、30個のD-アミノ酸からなる環状ポリペプチドを化学合成した。その配列は、LIYRQPNCDDPETEEAALVAIDYIAPHGPG(以下ペプチド1、ペプチド、または配列番号1に示されるペプチドとも称す)であり、1位のアミノ酸D-ロイシン(L)が30位のアミノ酸D-グリシン(G)に化学的に結合して、環状ポリペプチドを形成する。本明細書において、「ポリペプチド」および「ペプチド」は互換的に使用される。
【0008】
配列番号1に示されるペプチドの阻害能力を評価するために、実施例2に記載されているように、確立された生体外リン酸カルシウム沈殿アッセイ(17-19)を使用した。陽性対照として、沈殿を完全に阻害することが見出された1mg/ml(20.6μM)の濃度のウシフェチュイン(bフェチュイン)を使用した。
【0009】
有効でなくなるまでペプチドを希釈しようと試みた。配列番号1に示されるペプチドは、ペプチドの濃度を増加すると陽性の用量反応効果を示した。ウシフェチュイン(bフェチュイン)は、1~10μg/ml(20,6~200,6nM)でその阻害効果を失ったが、配列番号1に示されるペプチドは、アトモル濃度範囲まで活性のままであった(図1)。
【0010】
2.6aMではなく20.6aMでも、対照と比較して統計的に有意に沈殿を抑制できることがわかった(図1)。この20.6aMの濃度は、100μlの反応容積中1,250ペプチド分子に相当すると見積もられた。
【0011】
要約すると、配列番号1に示されるペプチドは、bフェチュインよりも効率的にリン酸カルシウムの生体外沈殿を阻害する。配列番号1に示されるペプチドは、カルシウム結晶沈着疾患の認められた生体外モデルにおいて、カルシウム結晶沈着を防ぐのにbフェチュインより有効であると結論付けられる。
【0012】
次に、bフェチュインまたは配列番号1に示されるペプチドの存在または非存在下での生体外アッセイで2時間後に形成した沈着物を走査電子顕微鏡で分析した(実施例3)。対照では、比較的大きな粒子(~1μM)と小さな粒子(50~200nM)(図2;左パネル)が見られた。より大きい粒子は明確な結晶化したエッジを有しており、BCP結晶形成に典型的なものである(20)。bフェチュインと接触させた後に得られた粒子は、これらの鋭いエッジがない全く異なる形態であった(図2;中央のパネル)。また、粒子は幾分小さくなった(約0.5μMの範囲内)。配列番号1に示されるペプチドで得られた粒子は、さらに小さくコンパクトに見えた。それらは、三角形、四角形、まれに五角形または六角形の形態であった(図2;右のパネル)。ペプチドで処理したサンプルから得られた最も小さい識別可能な粒子の大きさは約67nm±7(平均±SD、n=4)であり、一次CPPに似ていた(<100nM)。ペプチドを用いて得られた粒子は、高倍率(>35,000x)で電子線による分解を受けやすかったが、対照サンプルからの粒子ではそのようなことはなかった。bフェチュインは、外面を覆うことによってCPPの成長を妨げることが知られている。理論にとらわれることなく、このペプチドがリン酸カルシウム粒子とも相互作用するという仮説を立てた。
【0013】
これを試験するために、bフェチュインまたは配列番号1に示されるペプチドの存在下または非存在下(対照)で、粒子を2時間または24時間形成させ、その後、遠心分離によって回収し、洗浄し、酸に溶解し、続いてペレットおよび上清中の総カルシウム、リン酸塩およびタンパク質を測定した。
【0014】
対照のペレット中のカルシウム量は、2時間と24時間の反応時間の間で同程度のままであった。
【0015】
bフェチュインおよびペプチドを用いて得られたペレットでは、沈殿したカルシウムの量が、2時間のインキュベーションでは1%未満であったが、24時間のインキュベーションでは2%以上となり、時間の関数として増加した。これは、ペプチドまたはbフェチュインを添加しない対照(2時間で26%、24時間で28%)よりもまだ有意に低かった。
【0016】
ペレット中のリン酸塩は、2時間から24時間にかけて、対照ペレットの2%から14%に増加した。bフェチュインまたはペプチドを添加すると、24時間後のリン酸含量は9%まで有意に減少した。
【0017】
最後に、総タンパク質含量を測定したところ、bフェチュインとペプチドの両方がペレットに取り込まれたことが確認された。最大4%のbフェチュインと22%のペプチドがペレットに取り込まれた。これらの分析を総合すると、bフェチュインと配列番号1に示されるペプチドの両方がリン酸カルシウム粒子に取り込まれ、その形態と組成を変化させることが証明された。
【0018】
このペプチドが生体内でも抗石灰化作用を示すかどうかを調べるために、3つの異なるよく確立された細胞石灰化モデル、すなわちATP誘発ヒト関節軟骨細胞石灰化モデル(HAC)、カルシウム誘発血管平滑筋細胞(VSMC)石灰化モデル、β-グリセロリン酸誘発骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)骨形成分化モデルでその効果を試験した(実施例6、(21-23))。
【0019】
軟骨細胞をATPで7日間刺激した後、石灰化のコントロール(ここではATP存在下で得られる最大沈殿量と定義)と比較すると、ペプチドによる石灰化の阻害は22~33%であった(図3A)。(図3A)。
【0020】
7日間のVSMC石灰化モデルでは、ペプチドによって石灰化が58~61%阻害された(図3B)。
【0021】
最後に、3週間のBMSC分化モデルにおいて、ペプチドはカルシウム沈殿の強い阻害(81%)を示した(図3C)。ペプチド処理の効果は、位相差顕微鏡画像ではっきりと確認できた(図3C)。
【0022】
結論として、ペプチドは、3つの異なる細胞モデルにおいて生体内での石灰化を阻害する。
【0023】
また、ラットの変形性関節症モデルにおいて、ペプチドを隔週で関節内に注射した場合の効果を評価した(図4)。変形性関節症は、手術による内側半月板の断裂と側副靭帯の切断で誘発した(N=40)。濃度20μMのペプチド50μlまたはビヒクル(0.9%NaCl)50μlを隔週で関節内に注射した(各群N=20)。28日目に剖検を行い、OARSIスコアリングシステム(24)に従って組織学的解析を行った。
【0024】
術後28日目に、ペプチドで処置したラットの膝関節では、ビヒクルで処置した群と比較して、組織病理学的OAスコアが38%有意に減少した(図4B)。最も注目すべきは、ペプチド投与後の歩行スコアの大幅かつ有意な改善で、16/20匹が正常な歩行を示したのに対し、ビヒクル対照投与群では5/20匹しか正常な歩行を示さなかった(図4C)。
【0025】
要約すると、ラットの変形性関節症モデルにおいて、ペプチドの関節内注射が変形性関節症の病態の程度を改善し、動物の運動能力を向上させることがわかった。
【実施例
【0026】
実施例1:ペプチド合成
凍結乾燥したペプチドをPepScan(NL)で合成した。バッチは90%以上の純度で生成された。精製はpHPLCで行い、質量およびUVプロファイルは、MS-UPLC分析(C18 RP-HPLCカラム)で評価した。
【0027】
実施例2:生体外リン酸カルシウム沈殿アッセイ
カルシウム沈殿アッセイは、若干の変更を加えて、基本的に以前と同様に行った(19)。2.4mMイオン化カルシウム(0.1Mストック)を1.5mlエッペンドルフチューブ内の50mMのTris/HCL緩衝液(pH7.4)に添加した。ペプチドまたはbフェチュインを添加し、室温で15分間インキュベートした。その後、1.6mMリン酸緩衝液(0.1Mストック)を添加し、混合物を37℃で120分間インキュベートした。タイミングが結果に影響しないことを確認するため、ペプチドまたはbフェチュインを含まない陽性対照を、一連の開始時と終了時の2回用意した。
【0028】
データは各実験で最初の陽性対照(100%に正規化)に対して正規化した。沈殿阻害の内部参照として、各実験で1mg/ml、0.5mg/ml、0.25mg/mlのウシフェチュイン(bフェチュイン、Sigma-Aldrich、#F2379)を用いた。2時間後、サンプルをキュベット(1.0ml反応液)に移し、プレートリーダー(Biorad)を用いて、A620で吸光度を測定した。それぞれの条件は3つの生物学的反復から構成された。
【0029】
実施例3:走査型電子顕微鏡
生体外リン酸カルシウム沈殿の2時間後、サンプルを透析膜に移して反応を停止させた。一晩の透析後、サンプルを凍結乾燥し、スタブにマウントし、SEM調査の前にコントラストを高めるために金コーティングした(25)。画像は10.0kV、0.40nAで得られた。
【0030】
実施例4:カルシウムアッセイ
沈着したカルシウムの定量は、0.1MのHClで沈着ミネラルを加水分解した後、カルシウム定量キット(Randox社,イギリス国ロンドン)を用いて、製造元の指示に従って行った。カルシウムの測定値は、micro DC Protein Assay(Termo Scientifc社,オランダ国ブレイスウェイク)を用いてタンパク質含量に正規化した。タンパク質含量を測定できるようにするため、同量の0.1MのNaOHを用いて酸を中和し、0.1%SDS(最終濃度)を加えて細胞石灰化アッセイで細胞を溶解した。
【0031】
実施例5:リン酸塩アッセイ
沈着したリン酸塩の定量は、沈着物を0.1MのHCLで可溶化した後、製造元の指示に従い、リン酸塩比色アッセイ(Sigma,MK030)を用いて行った。
【0032】
実施例6:細胞石灰化モデル
ヒト初代平滑筋細胞(VSMCs)は、手術を受けた患者の組織摘出物から得た。組織は±5mm2の大きさに切り離し、以前の方法で単離した(26)。簡単に言うと、細胞は20%FCS、1%Pen/Strep(Gibco)を加えたM199で培養した。単離の成功は、α-平滑筋アクチン(αSMA)、平滑筋タンパク質22α(SM22α)、リン酸化ミオシン軽鎖2(pMLC)の陽性発現、およびS100 Cカルシウム結合タンパク質4(S100A4)の非存在についての免疫蛍光染色によって判定した。実験には5~8継代の細胞を用い、1cm当たり10,000個の細胞を播種した。24時間後、培地を石灰化培地(5.4mMカルシウム入り増殖培地、またはペプチドと5.4mMカルシウム入り増殖培地)に変えた。培地は、7日目に石灰化が目視で確認されるまで、2日ごとまた3日ごとにリフレッシュした。
【0033】
ヒト初代軟骨細胞(HAC)は、末期変形性関節症患者の人工膝関節全置換術の関節軟骨から、書面によるインフォームド・コンセントの後、残余材料として分離した(METC2017-0183)。細胞は10%FCS、1%Pen/Strep(Gibco)、1%非必須アミノ酸(Gibco)を添加したDMEM/F12で培養した。3~5継代の細胞を実験に使用し、1cmあたり30,000個の細胞を実験用に播種した。24時間後、培地を石灰化培地(1mMのATPを添加した増殖培地、または指示濃度のペプチドと1mMのATPを添加した増殖培地)に変えた。7日目に石灰化が目視で確認されるまで、培地は2日ごとまたは3日ごとにリフレッシュした。
【0034】
骨髄由来間質細胞(BMSCs)は、若年者の腸骨稜から採取したヒト骨髄吸引液から単離した(METC08-4-056)。細胞は、10%FCSと1%Pen/strep(Gibco)を添加したDMEM high glucose(Thermo Fisher)で培養した。骨分化は、アスコルビン酸50μg/ml、デキサメタゾン100nM、β-グリセロリン酸10mMを添加した培地で行った。培地は、21日目に石灰化が目視で確認されるまで、2日ごとまたは3日ごとにリフレッシュした。
【0035】
実施例7:ラット変形性関節症モデル
ルイスラット(n=40)は、右膝関節の内側半月板断裂と側副靭帯切断の手術を受けた(27)。術後7、10、14、17、21および24日目に、50μlのビヒクル(0.9%NaCl)(n=20)または配列番号1に示されるペプチド(20μM;n=20)を関節内に注射した。歩行分析は20日目に行い、剖検は術後28日目に行った。脱灰してパラフィン包埋した膝関節の組織切片を得、トルイジンブルー(28)で染色して組織学的スコアリングを行った(24)。Bolder Biopath社(アメリカ合衆国ボールダー)で実験を実施し、組織切片を染色した。
実施例8:統計分析
【0036】
2群の比較には両側スチューデントt検定を用いた。沈殿アッセイからのデータは正規分布と仮定した。複数群の比較には、ダネットの後検定またはボンフェローニの後検定を伴う一元配置分散分析を用いた。ラットOAモデルについては、正規分布のデータについては両側スチューデントt検定(ダゴスティーノ・ピアソン正規性検定)、正規分布でないデータについてはマン・ホイットニーのU検定を用いて群間比較を行った。統計解析はGraphpad Prism 8で行った。
【0037】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0038】
【表2】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024523704000001.app
【国際調査報告】