(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ナノ濾過システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/58 20060101AFI20240621BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20240621BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20240621BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20240621BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20240621BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B01D61/58
B01D61/02 500
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/56
B01D69/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500216
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 US2022035757
(87)【国際公開番号】W WO2023283101
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202110772265.3
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430716
【氏名又は名称】ビーエル テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャイ,ジアンウェン
(72)【発明者】
【氏名】シュ,シヤオジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リンルゥ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006HA61
4D006JA58Z
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA57
4D006KE12R
4D006MA06
4D006MB05
4D006MC54
4D006PA02
4D006PB08
4D006PB12
4D006PB14
(57)【要約】
供給溶液から溶質を濾過するための多段階ナノ濾過(NF)システムであり、下流のNF段階は、上流のNF段階よりも溶質に対して許容性である。一部の例では、ナノ濾過システムは直列の複数のナノ濾過段階を含み、各ナノ濾過段階は、すぐ上流にあるナノ濾過段階よりも溶質に対して許容性である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ濾過システムであって、
保持液及び透過液を生成する第1のナノ濾過段階と、
保持液及び透過液を生成する第2のナノ濾過段階であって、前記第1のナノ濾過段階の下流にあり、前記第1のナノ濾過段階から前記保持液の少なくとも一部を受け入れる第2のナノ濾過段階と
を備え、
前記第2のナノ濾過段階が、前記第1のナノ濾過段階よりも溶質に対して透過性である、ナノ濾過システム。
【請求項2】
前記第2のナノ濾過段階からの前記透過液の少なくとも一部を前記第1のナノ濾過段階の入口に戻す再循環流をさらに含む、請求項1に記載のナノ濾過システム。
【請求項3】
前記溶質が硫酸塩であり、前記第1のナノ濾過段階が、硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)供給溶液、硫酸アルミニウム(Al
2(SO
4)
3)供給溶液、又は硫酸鉄(FeSO
4)供給溶液などの硫酸塩含有供給溶液のための入口を含む、又は
前記溶質が可溶性有機分子であり、前記第1のナノ濾過段階が有機分子含有供給溶液のための入口を含む、
請求項1又は2に記載のナノ濾過システム。
【請求項4】
前記システムに入る硫酸塩含有溶液が、5g/L~200g/Lの硫酸塩濃度を有する、請求項3に記載のナノ濾過システム。
【請求項5】
前記第1のナノ濾過段階が、少なくとも85%、例えば、95%~99%の溶質排斥率を有し、前記第2のナノ濾過段階が、最大95%、例えば、85%~95%又は50%~85%の溶質排斥率を有し、任意選択で第1のNF段階と第2のNF段階との排斥率の差が5%~70%であり、例えば、前記第1のナノ濾過段階が約95%の溶質排斥率を有し、前記第2のナノ濾過段階が約70%の溶質排斥率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ濾過システム。
【請求項6】
前記第1のナノ濾過段階が、150~350g/molの分子量カットオフを有するポリアミド薄膜複合ナノ濾過膜を含む、及び/又は
前記第2のナノ濾過段階が、500~3500g/molの分子量カットオフを有する非ポリアミド薄膜複合ナノ濾過膜を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載のナノ濾過システム。
【請求項7】
保持液及び透過液を生成する第3のナノ濾過段階をさらに含み、該第3のナノ濾過段階が、前記第2のナノ濾過段階の下流にあり、前記第2のナノ濾過段階からの保持液を受け入れ、該第3のナノ濾過段階が、前記第1のナノ濾過段階よりも前記溶質に対して透過性である、請求項1~6のいずれか一項に記載のナノ濾過システム。
【請求項8】
前記第3のナノ濾過段階が、前記第2のナノ濾過段階よりも前記溶質に対して透過性である、請求項7に記載のナノ濾過システム。
【請求項9】
前記第3のナノ濾過段階が、少なくとも5%、例えば、約20%~約80%、例えば、約40%~約60%の溶質排斥率を有し、例えば、前記第1のナノ濾過段階が約99%の溶質排斥率を有し、前記第2のナノ濾過段階が約90%の溶質排斥率を有し、前記第3のナノ濾過段階が約50%の溶質排斥率を有する、請求項7又は8に記載のナノ濾過システム。
【請求項10】
前記第3のナノ濾過段階が、500~3500g/molの分子量カットオフを有する非ポリアミド薄膜複合ナノ濾過膜を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載のナノ濾過システム。
【請求項11】
前記第3のナノ濾過段階からの前記透過液の少なくとも一部を前記第1のナノ濾過段階の入口及び/又は前記第2のナノ濾過段階の入口に戻す、1つ以上の再循環流をさらに含む、請求項7~10のいずれか一項に記載のナノ濾過システム。
【請求項12】
供給溶液から溶質を濾過する方法であって、
第1のナノ濾過プロセスで前記供給溶液を処理して、第1の透過液及び第1の保持液を生成することと、
前記第1の保持液の少なくとも一部を第2のナノ濾過プロセスで処理して、第2の透過液及び第2の保持液を生成することとを含み、
前記第2のナノ濾過プロセスが、前記第1のナノ濾過プロセスで使用されるナノ濾過膜よりも前記溶質に対して透過性であるナノ濾過部材を使用する、方法。
【請求項13】
前記第2の透過液の少なくとも一部を前記第1のナノ濾過プロセスに戻して再循環することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶質が硫酸塩であり、前記供給溶液が、硫酸塩含有供給溶液、例えば、硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)供給溶液、硫酸アルミニウム(Al
2(SO
4)
3)供給溶液、又は硫酸鉄(FeSO
4)供給溶液である、又は
前記溶質が可溶性有機分子であり、前記供給溶液が有機分子含有供給溶液である、
請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記システムに入る硫酸塩含有溶液が、5g/L~200g/Lの硫酸塩濃度を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のナノ濾過プロセスで使用される前記ナノ濾過膜が、少なくとも85%、例えば、約95%~約99%の溶質排斥率を有し、前記第2のナノ濾過プロセスで使用されるナノ濾過膜が、最大95%、例えば、約85%~約95%又は50%~85%の溶質排斥率を有し、任意選択で前記第1及び第2のNFプロセスで使用される膜の排斥率の差が5%~70%であり、例えば、任意選択でFeSO
4を含有する溶液を処理するために、前記第1のナノ濾過プロセスで使用される前記ナノ濾過膜が、約95%の溶質排除率を有し、前記第2のナノ濾過プロセスで使用される前記ナノ濾過膜が、約70%の溶質排斥率を有する、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の保持液の少なくとも一部を第3のナノ濾過プロセスで処理して、第3の透過液及び第3の保持液を生成することをさらに含み、前記第3のナノ濾過プロセスが、前記第1のナノ濾過プロセスで使用される前記ナノ濾過膜よりも前記溶質に対して透過性であるナノ濾過膜を使用し、任意選択で前記第3の透過液の少なくとも一部を前記第1のナノ濾過プロセス、前記第2のナノ濾過プロセス、又はその両方に戻して再循環することをさらに含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第3のナノ濾過段階で使用される前記ナノ濾過膜が、前記第2のナノ濾過プロセスで使用される前記ナノ濾過膜よりも前記溶質に対して透過性である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第3のナノ濾過プロセスで使用される前記ナノ濾過膜が、少なくとも5%、例えば、約20%~約80%、例えば、約40%~約60%の溶質排斥率を有し、例えば、任意選択で、Na
2SO
4又はLi
2SO
4を含有する溶液を処理するために、前記第1のナノ濾過プロセスで使用される前記ナノ濾過膜が、約99%の溶質排斥率を有し、前記第2のナノ濾過プロセスで使用される前記ナノ濾過膜が、約90%の溶質排斥率を有し、前記第3のナノ濾過プロセスで使用される前記ナノ濾過膜が、約50%の溶質排除率を有する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
供給溶液から溶質を濾過する方法であって、連続的なナノ濾過ステップを含み、各後続のナノ濾過ステップが、その前のナノ濾過ステップよりも前記溶質に対して許容性である方法。
【請求項21】
ナノ濾過段階が実質的に同じ圧力におけるものである、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に援用される2021年7月8日に出願された中国出願第202110772265.3の利益を主張する。
【0002】
本開示は、ナノ濾過システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の段落は、その中で議論されるものが先行技術、又は当業者の知識の一部であることを認めるものではない。
【0004】
膜分離プロセスは、正圧を濾過膜の片側に印加することによって、水溶液中の溶質を濃縮する。膜分離プロセスは、供給流溶液を処理し、一部を透過溶液として、残りを保持液として生成する。透過溶液中の溶質の濃度は、供給流中の溶質の濃度と比較して低下する。保持液中の溶質の濃度は、供給流中の溶質の濃度と比較して増加する。保持液は、あるいは濃縮液と呼ばれることもある。異なる分離膜は、異なる溶質を分離及び濃縮することができる。
【0005】
そのようなプロセスの例は、逆浸透(RO)、精密濾過(MF)、限外濾過(UF)及びナノ濾過(NF)である。ナノ濾過は、ナノメートルのサイズの細孔を有する膜を使用する。ナノ濾過膜は、精密濾過及び限外濾過膜よりも小さいが、逆浸透膜より大きい孔径を有する。ナノ濾過膜は、1~10ナノメートルの細孔サイズを有する細孔を有し得る。
【発明の概要】
【0006】
以下の導入部は、読者を本明細書に案内することを意図しており、いかなる発明も定義することを意図していない。1つ以上の発明は、以下又は本文書の他の部分で説明するシステム要素又は方法のステップの組合せ又はサブコンビネーションに存在し得る。本発明者らは、単にそのような他の1つ以上の発明を特許請求の範囲に記載しないことによって、本明細書に開示される任意の1つ以上の発明に対する権利を断念又は放棄しない。
【0007】
高濃度の溶質において、単一タイプのナノ濾過膜を有するナノ濾過システムの透過液回収は、望ましくないほど低い場合があり、及び/又は望ましくない動作条件を必要とする場合がある。例えば、25~27重量%のH2SO4及び25~35g/Lの硫酸第一鉄を有する水性供給流を、最適化された操作条件で単一タイプのナノ濾過膜を有するナノ濾過システム中で処理することにより、硫酸塩の40%の回収をもたらすことができる。別の例では、硫酸ナトリウム(Na2SO4)溶液を処理するための単一タイプのナノ濾過膜を有するナノ濾過システムは、ゼロ液体排出(ZLD)プロセスとして適格であるために必要な、保持液中の220g/Lより高い濃度を達成するために、120バールなどの望ましくない高い圧力で操作される必要がある場合がある。
【0008】
1つ以上の記載される例は、単一のタイプのナノ濾過膜を使用するナノ濾過システム及び方法に関与する1つ以上の欠点に対処又は改善することを試みる。
【0009】
一態様では、本開示は、供給溶液から溶質を濾過するための多段階ナノ濾過システムを提供し、下流のナノ濾過段階は、上流のナノ濾過段階よりも溶質に対してより許容性である。
【0010】
一部の例では、ナノ濾過システムは、直列の複数のナノ濾過段階を含み、各ナノ濾過段階は、すぐ上流にあるナノ濾過段階よりも溶質に対してより許容性である。
【0011】
一部の例では、本開示は、保持液及び透過液を生成する第1のナノ濾過段階と、保持液及び透過液を生成する第2のナノ濾過段階であって、ナノ濾過システムを提供する。第1のナノ濾過段階の下流にあり、第1のナノ濾過段階から保持液の少なくとも一部を受け入れる第2のナノ濾過段階と、を備え、第2のナノ濾過段階は、第1のナノ濾過段階よりも溶質に対してより透過性である。
【0012】
別の態様では、本開示は、供給溶液から溶質を濾過する方法を提供する。この方法は、連続するナノ濾過ステップを含み、各後続のナノ濾過ステップは、前のナノ濾過ステップよりも溶質に対してより許容性である。
【0013】
一部の例において、本開示は、供給溶液から溶質を濾過する方法を提供する。本方法は、第1のナノ濾過プロセスで供給溶液を処理して、第1の透過液及び第1の保持液を生成すること、第1の保持液の少なくとも一部を第2のナノ濾過プロセスで処理して、第2の透過液及び第2の保持液を生成することとを含む。第2のナノ濾過プロセスは、第1のナノ濾過プロセスで使用されるナノ濾過膜よりも溶質に対してより透過性であるナノ濾過部材を使用する。
【0014】
本開示によるナノ濾過システム及び方法は、実質的に同じ圧力でNF段階を用いて操作され得る。
【0015】
本開示の実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示によるナノ濾過システムの概略プロセスフローチャートである。
【
図2】本開示による別のナノ濾過システムの概略プロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般に、本開示は、供給溶液から溶質を濾過するための多段階ナノ濾過(NF)システム及び方法を提供する。
【0018】
本開示によるナノ濾過システムでは、下流のNF段階は、上流のNF段階よりも溶質に対してより許容性である。いくつかの例では、ナノ濾過システムは、直列の複数のナノ濾過段階を含み、各ナノ濾過段階は、すぐ上流にあるナノ濾過段階よりも溶質に対してより許容性である。
【0019】
NF段階の許容度は、溶質の排斥率に基づいて定量化することができる。許容性の高い段階は、許容性のより低い段階よりも少ない溶質を排斥する。排斥率は、透過液流中の溶質の濃度を供給流中の溶質の濃度と比較することによって決定することができる。例えば、供給流からの溶質の5%が段階を通過して透過液流に入る場合、該段階はその溶質に対して5%許容性である。あるいは、この段階は、95%の溶質排斥率を有すると称され得る。より許容性のある段階は、供給流からの溶質の5%超が段階を通過することを可能にする段階であろう。
【0020】
ナノ濾過段階は、複数のナノ濾過膜、例えば、らせん状に巻かれた膜モジュールにおける複数のナノ濾過膜を含み得る。NF段階におけるNF膜の全てが同じである場合、NF段階は膜と同じ許容度を有する。
【0021】
NF段階の許容度は、どの溶質が評価されているかに依存する。例えば、あるNF段階は、硫酸イオンを5%許容し得るが、塩化物イオンを99%許容し得る。本開示の文脈において、異なるNF段階の許容度は、目的の単一の溶質との比較である。例えば、供給流から硫酸イオンを除去するためのナノ濾過システムでは、塩化物イオンなどの他の溶質に対する相対的許容度にかかわらず、上流のNF段階は硫酸イオンを5%許容し得、下流のNF段階は硫酸イオンを20%許容し得る。
【0022】
本開示の文脈において、NF段階は、数によって識別され得、この数は、上流から下流への相対的な配置に対応する。例えば、「第2のNF段階」(NF2)は、ナノ濾過段階を介在させないで「第1のNF段階」(NF1)の下流にあると理解されるべきであり、また「第3のNF段階」(NF3)は、存在する場合、ナノ濾過段階を介在させないで第2のNF段階の下流にあると理解される。ナノ濾過段階以外のプロセス設備をナノ濾過段階の間に含めることができる。例えば、所望の圧力、温度、pH、若しくは濁度を達成するために、又は所望の化学物質を投与するために、ポンプ、タンク、オンライン化学物質投与装置、濾過装置、又はそれらの任意の組み合わせをナノ濾過段階の間に設置することができる。一部の例示的なシステムでは、ナノ濾過段階の間にプロセス設備が存在しない。そのようなシステムを動作させることは、エネルギー節約及び/又はより単純なプロセスをもたらし得る。
【0023】
一部の例では、第1のNF段階の許容度は15%以下である(すなわち、第1のNF段階は85%以上の溶質排斥率を有し得る)。一部の例では、第2のNF段階の許容度は5%以上である(すなわち、第2のNF段階は95%以下の溶質排斥率を有し得る)。一部の例では、第3のNF段階の許容度は5%以上である(すなわち、第3のNF段階は95%以下の溶質排斥率を有し得る)。一部の例では、第1のNF段階の許容度と第2のNF段階の許容度との間の差は、5%~70%であり得る。
【0024】
本開示の文脈において、企図される値の範囲の任意の開示はまた、端点を含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲の開示であることを理解されたい。例えば、「15%以下」の企図される割合はまた、例えば、1%、2.5%、10%、2%~15%、4%~8%、及び2%~6%の開示である。
【0025】
上で言及した重複範囲(例えば、NF1の許容度は15%以下であり得、NF2の許容度は5%以上であり得る)にもかかわらず、下流のNF段階は、依然として、前のNF段階よりも溶質に対してより許容度が高くなければならないことを理解されたい。したがって、例えば、NF1の許容度が10%である場合、NF2の許容度は10%より大きくなければならない。そのような例示的な系がNF3を含む場合、NF3の許容度は、NF2の許容度よりも大きくなければならない。
【0026】
2つのNF段階を有する例では、第1のNF段階は、5%以下の溶質許容度を有し得、第2のNF段階は、15%以上、例えば、約30%の溶質許容度を有し得、また第1のNF段階と第2のNF段階の許容度の差は、10%~70%であってもよい。特定の例では、第1のNF段階は、3%の溶質許容度を有してもよく、第2のNF段階は、50%の溶質許容度を有してもよく、結果として47%の許容度差がもたらされる。
【0027】
3つのNF段階を有する例では、第1のNF段階は、5%以下の溶質許容度を有し得、第2のNF段階は、5%以上、例えば、10%以上の溶質許容度を有し得、第3のNF段階は、5%以上、例えば、20%以上の溶質許容度を有し得る。3つのNF段階を有する例では、第1のNF段階は1%~5%の溶質許容度を有し得、第2のNF段階は5%~15%の溶質許容度を有し得、また第3のNF段階は20%~60%の溶質許容度を有し得る。3つのNF段階を有する別の例では、第1のNF段階は1%~5%の溶質許容度を有し得、第2のNF段階は5%~15%の溶質許容度を有し得、また第3のNF段階は40%~60%の溶質許容度を有し得る。
【0028】
本開示による1つの特定の例示的なシステムは、溶質がFeSO4である2段階ナノ濾過システムであって、NF1は約5%の許容度を有し、NF2は約30%の許容度を有する。そのようなシステムは、H2SO4中に25g/LのFeを含む供給溶液を受け入れることができる。
【0029】
本開示による別の特定の例示的なシステムは、溶質がNa2SO4又はLi2SO4である3段階ナノ濾過システムであって、NF1は約1%の許容度を有し、NF2は約10%の許容度を有し、NF3は約50%の許容度を有する。そのようなシステムは、100g/LのNa2SO4、又は78g/LのLi2SO4を含む供給溶液を受け入れることができる。
【0030】
別のNF段階のすぐ下流にあるNF段階は、すぐ上流にあるNF段階からの保持液の少なくとも一部を受け入れるように構成されると理解される。本開示によるNFシステムは、連続高圧集中アレイとして構成されてもよい。例えば、上流のNF段によって生成された濃縮溶液は、2つのNF段階の間の圧力損失が実質的にない状態で、後続の下流のNF段に直接供給することができる。しかし、「すぐ下流」及び「すぐ上流」への言及は、ナノ濾過段階以外のプロセス設備がナノ濾過段階間に含まれる可能性を排除しないことを理解されたい。特定の例では、そのプロセス設備は、2つのNF段階の間で実質的な圧力損失をもたらさない。
【0031】
本開示によるNFシステムは、2つ、3つ、又はそれ以上のNF段階を含むことができる。NFシステムは、下流のNF段階から(例えば、第2のNF段階から)の透過液の少なくとも一部を上流のNF段階の入口に(例えば、第1のNF段階に)戻す再循環流を含んでもよい。3つのNF段階を有するNFシステムでは、システムは、第3のNF段階からの透過液の少なくとも一部を第1のNF段階の入口に、又は第2のNF段階の入口に戻す再循環流を含むことができる。
【0032】
NF段階は、薄膜複合体(TFC)NF膜を含み得る。薄膜複合NF膜は、ポリアミド又は非ポリアミドTFC膜であってもよい。NF膜は、150~3500g/mol、例えば、150~350g/mol、500~3500g/mol、又は500~2500g/molの分子量カットオフ(MWCO)を有し得る。一部の例において、NF1のNF膜は150~350g/molのMWCOを有し、NF2のNF膜は350g/mol超、例えば、500~3500g/molのMWCOを有する。NF3のMWCOはNF2のMWCOより高くてもよく、NF2のMWCOはNF1のMWCOより高くてもよい。
【0033】
好適なNF膜の具体例としては、150~300のMWCOを有する薄膜複合膜であるSuez 1812 NF要素が挙げられる。異なる段階は、異なる溶質許容性を有する同じ製品ファミリーからの膜を含むことができる。例えば、1つのNF段階は、3%の溶質許容度を有するSuez 1812 NF要素を含むことができ、また下流のNF段階は、45%の溶質許容度を有するSuez 1812 NF要素を含むことができる。Suez 1812 NF要素の2つの例を、以下に論じる実施例において使用した。一方では、NF膜は、2000ppmのMgSO4、110psi、25℃において97%の硫酸ナトリウム保持率及び98%超のMgSO4保持率を有するポリアミド薄膜複合ナノ濾過膜であった。他方では、NF膜は、2000ppmのMgSO4、110psi、25℃において80%~95%の硫酸ナトリウム保持率及び80%~95%のMgSO4保持率を有する非ポリアミド薄膜複合ナノ濾過膜であった。
【0034】
一部の例において、本開示は、保持液及び透過液を生成する第1のナノ濾過段階と、保持液及び透過液を生成する第2のナノ濾過段階とを含むナノ濾過システムを提供する。第2のナノ濾過段階は第1のナノ濾過段階の下流にあり、第1のナノ濾過段階からの保持液の少なくとも一部を受け入れる。第2のナノ濾過段階は、第1のナノ濾過段階よりも溶質に対して透過性である。
【0035】
図1は、本開示による例示的なナノ濾過システムを示す。ナノ濾過システム10は、第1のナノ濾過段階12及び第2のナノ濾過段階14を含む。第1のNF段階12は、供給物16を受け入れ、保持液18及び透過液20を生成する。第2のNF段階14は、保持液18の少なくとも一部を受け入れる。第2のNF段階14は、第2のNF段階14を第1のNF段階12よりも溶質に対して透過性にするナノ濾過膜(図示せず)を含む。第2のNF段階14は、保持液22及び透過液24を生成する。図示されたNFシステム10は、透過液24の少なくとも一部を第1のNF段階12の入口に戻す任意選択の再循環流26を含む。
【0036】
図2は、本開示による例示的なナノ濾過システムを示す。ナノ濾過システム30は、
図1に示すナノ濾過システム10と同じ特徴を含み、したがって共通の特徴に対して前記参照番号を使用する。ナノ濾過システム30は、第3のNF段階32をさらに含む。第3のNF段階32は、保持液34及び透過液36を生成する。第3のNF段階32は、第3のNF段階32を第1のNF段階12よりも溶質に対して透過性にし、任意選択で第2のNF段階14よりも溶質に対して透過性にするナノ濾過膜(図示せず)を含む。
【0037】
図示されたNFシステム30は、透過液36の少なくとも一部を第1のNF段階12の入口に戻す任意選択の再循環流38を含む。このような任意選択の再循環流は、第1のNF段階12に入る溶質濃度に類似した溶質濃度を有する透過液36を生成するように操作されるシステムに適している。
【0038】
図示されたNFシステム30は、透過液36の少なくとも一部を第2のNF段階14の入口に戻す任意選択の再循環流40を含む。このような任意選択の再循環流は、第1のNF段階12に入る溶質濃度よりも高い溶質濃度を有する透過液36を生成するように操作されるシステムに適している。任意選択の再循環流40を含むシステムは、高圧段階間ポンプ42をさらに含むことができる。
【0039】
別の態様では、本開示は、供給溶液から溶質を濾過する方法を提供する。本方法は、第1のナノ濾過プロセスにおいて供給溶液を処理して、第1の透過液及び第1の保持液を生成し、第2のナノ濾過プロセスにおいて第1の保持液の少なくとも一部を処理して、第2の透過液及び第2の保持液を生成することを含み、第2のナノ濾過プロセスは、第1のナノ濾過プロセスよりも低い割合で溶質を排斥する。第2の透過液の一部は第1のナノ濾過プロセスに戻して再循環することができる。任意選択で、本方法はまた、第3のナノ濾過プロセスにおいて、第2の保持液の少なくとも一部分を処理することを含んでもよく、第3のナノ濾過プロセスは、第1のナノ濾過プロセスより低い割合で、任意選択で第2のナノ濾過プロセスより低い割合で溶質を排斥する。
【0040】
一部の例示的な方法では、第1のNFプロセスは、溶質の15%以下を許容し得る(すなわち、第1のNFプロセスは、溶質の85%以上を排斥し得る)。一部の例示的な方法では、第2のNFプロセスは5%以上を許容し得る(すなわち、第2のNFプロセスは溶質の95%以下を排斥し得る)。一部の例では、第3のNFプロセスは5%以上を許容し得る(すなわち、第3のNFプロセスは溶質の95%以下を排斥し得る)。一部の例では、第1のNFプロセスの許容度と第2のNFプロセスの許容度との間の差は、5%~70%であり得る。
【0041】
ナノ濾過システムに関して上で論じたように、上で言及した重複範囲にもかかわらず、下流のNFプロセスは、依然として、上流のNFプロセスよりも溶質に対してより許容性でなければならないことを理解するべきである。したがって、例えば、第1のNFプロセスが溶質の90%を濾過する(すなわち、プロセスは溶質の10%を許容する)場合、第2のNFプロセスは溶質の90%未満を濾過しなければならない(すなわち、このプロセスは溶質の10%超を許容しなければならない)。
【0042】
2つのNFプロセスを有する例示的な方法では、第1のNFプロセスは溶質の95%超を排斥し得、第2のNFプロセスは85%以下、例えば、約70%を排斥し得、第1のNFプロセスと第2のNFプロセスとの間の排斥率の差は、10%~70%であることができる。特定の例では、第1のNFプロセスは溶質の97%を排斥することができ、第2のNFプロセスは溶質の50%を排斥することができ、結果として47%の差がもたらされる。
【0043】
3つのNFプロセスを有する例では、第1のNFプロセスは95%以上を排斥し得、第2のNFプロセスは95%以下、例えば、90%以下を排斥し得、第3のNF段階は95%以下、例えば、80%以下を排斥し得る。3つのNFプロセスを有する例示的な方法では、第1のNFプロセスは溶質の99%~95%を排斥し得、第2のNFプロセスは溶質の95%~85%を排斥し得、第3のNFプロセスは溶質の80%~40%を排斥し得る。3つのNFプロセスを用いる別の例示的な方法では、第1のNFプロセスは溶質の99%~95%を排斥し得、第2のNFプロセスは溶質の95%~85%を排斥し得、第3のNFプロセスは溶質の60%~40%を排斥し得る。
【0044】
本開示による1つの特定の例示的なプロセスは、FeSO4を含有する溶液を受け入れ、溶質の約95%を保持する第1のNFプロセス及び溶質の約70%を保持する第2のNFプロセスで該溶液を処理する2段階ナノ濾過プロセスである。供給溶液は、H2SO4中に25g/LのFeを含み得る。
【0045】
本開示による別の具体的な例示的プロセスは、Na2SO4又はLi2SO4を含有する溶液を受け入れ、溶質の約99%を保持する第1のNFプロセス、溶質の約90%を保持する第2のNFプロセス、及び溶質の約50%を保持する第3のNFプロセスにおいて、該溶液を処理する3段階ナノ濾過プロセスである。供給溶液は、100g/LのNa2SO4、又は78g/LのLi2SO4を含み得る。
【0046】
本開示によるNFシステム及び方法は、目的の溶質、すなわち、(i)硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸リチウム(Li2SO4)、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)、硫酸第一鉄(FeSO4)、及び/又は硫酸(H2SO4)を含む溶液中の硫酸塩、又は(ii)可溶性有機分子、例えば、埋立地浸出液のバイオ排液中に存在する分子、例えば、100g/mol~3500g/molの間の分子量を有する分子として含まれる溶液を処理するように構成され得る。
【0047】
目的の溶質が硫酸塩である場合、供給溶液は、5g/L~200g/Lの硫酸塩濃度を有し得る。供給溶液は、例えば、25~30重量%のH2SO4及び少なくとも45g/LのFeイオンを含む廃棄蒸気などの二酸化チタン廃棄蒸気、約25重量%のH2SO4及び少なくとも10g/LのAlイオンを含む廃棄流などのアルミニウム電気めっき廃棄流、又は少なくとも100g/LのNa2SO4若しくは少なくとも80g/LのLi2SO4の濃度の可溶性ナトリウム又はリチウム硫酸塩を含む溶液であり得る。
【0048】
粒子例では、初期供給溶液は、10~250g/Lの濃度の硫酸ナトリウムを含み得、システム又は方法は、10~250バールの供給圧力で操作され得る。3つのNF段階又はプロセスを有するシステム又は方法では、硫酸ナトリウムの全溶解固体は、(a)第1段階又はプロセスの保持液中の100~200g/L、例えば、150~200g/L、並びに(b)第2及び/又は第3の段階又はプロセスの保持液中100~350g/L、例えば、150~300g/Lであり得る。
【0049】
目的の溶質が可溶性有機化合物である場合、溶液は3~10g/Lの有機化合物濃度を有することができる。
【実施例】
【0050】
本開示による例示的なナノ濾過システムをモデル化した。以下の表は、
図1に図示されるシステムのモデル化された流れ及び溶質濃度を図示し、ここで、NF1保持物の全てがNF2に移され、全てのNF2透過液がNF1に再循環される。NF1供給物は、システム供給物及びNF2透過物の組み合わせとなる。
【0051】
【0052】
表1のモデル化されたナノ濾過システムでは、NF1段階は、45%の回収率を有し(すなわち、供給水の45%が透過液になる)、Feの97%を排斥し、H2SO4の-10%を排斥し、NF2段階は50%の回収率を有し、50%のFeを排斥し、H2SO4の-10%を排斥する。
【0053】
【0054】
表2のモデル化されたナノ濾過システムでは、NF1段階は、45%の回収率を有し、Alの95%を排斥し、H2SO4の-10%を排斥し、NF2段階は50%の回収率を有し、Alの60%を排斥し、H2SO4の-10%を排斥する。
【0055】
【0056】
表3のモデル化されたナノ濾過システムでは、NF1段階は67%の回収率を有し、全溶解固体(TDS)の99%を排斥し、NF2段階は50%の回収率を有し、TDSの60%を排斥する。
【0057】
NF1及びNF2に対応する2つのNF段階を、供給物中の異なる量のNa2SO4の全溶解固体を使用して900psiで試験した。NF1段階は、2000ppm MgSO4、110psi、25℃で硫酸ナトリウム保持率97%及びMgSO4保持率98%超を有するポリアミド薄膜複合ナノ濾過膜を使用し、NF2段階は、2000ppm MgSO4、110psi、25℃で80%~95%の硫酸ナトリウム保持率及び80%~95%のMgSO4保持率を有する非ポリアミド薄膜複合ナノ濾過膜を使用した。
【0058】
供給物が100g/Lの硫酸ナトリウムであった場合、NF1段階は、4.51LMH(リットル/m2/時)の許容可能な流束で透過液を生成し、175g/Lの硫酸ナトリウムで保持液を生成することができることが決定された。より高い濃度の硫酸ナトリウムを有する保持液の生成は、許容できないほど高い浸透圧差、及び許容できないほど減少した透過液流束をもたらした。NF2段階は、同じ供給濃度及び圧力(100g/Lの硫酸ナトリウム及び900psi)で、14.5LMHの流束で175g/Lの透過液を生成することができ、これは、NF2段階が、同じ動作圧力でNF1段階によって生成された保持液をさらに濃縮することができたことを意味する。
【0059】
前述の説明では、説明の目的のために、実施例の完全な理解を提供するために、多数の詳細を記載する。しかし、これらの具体的な詳細は必要ではないことは当業者には明らかである。したがって、説明されたものは、説明された例の適用の単なる例示であり、上記の教示に照らして多数の修正及び変更が可能である。
【0060】
上記の説明は例を提供するので、当業者は、特定の例に対して修正及び変更を行うことができることを理解するものである。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に記載された特定の例によって限定されるべきではなく、全体としての本明細書と一致するように解釈されるべきである。
【国際調査報告】