(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】脛骨コンポーネントおよび膝関節プロテーゼシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500300
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022068976
(87)【国際公開番号】W WO2023281008
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021117733.2
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,ベルナ
(72)【発明者】
【氏名】ノンネンマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ボリンガー,アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダー,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】マリー,ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC04
4C097CC16
4C097SC06
4C097SC09
(57)【要約】
膝関節プロテーゼ用の脛骨コンポーネントであって、上面及び下面を有する脛骨プレートと、前記脛骨コンポーネントを脛骨に固定するために前記脛骨の髄腔に挿入可能なように前記下面ら突出する固定突起と、を備え、脛骨上でのアライメントを改善可能にする脛骨コンポーネントを提供するために、前記固定突起は、前記固定突起の長手方向軸周りに旋回可能および/または回転可能であるように前記脛骨プレートに取り付けられることが提案される。さらに、改良された膝関節プロテーゼシステムが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節プロテーゼ(10)用の脛骨コンポーネント(16)であって、
前記脛骨コンポーネント(16)は、上面(34)及び下面(36)を有する脛骨プレート(30)と、前記脛骨コンポーネント(16)を脛骨(20)に固定するために前記脛骨(20)の髄腔(40)に挿入可能なように前記下面(36)から突出する固定突起(38)と、を備え、
前記固定突起(38)は、前記固定突起(38)の長手方向軸(42)周りに旋回可能および/または回転可能であるように前記脛骨プレート(30)に取り付けられ、
前記脛骨コンポーネント(16)は、前記固定突起(38)を移植位置に固定するための固定装置(94)を備え、
前記固定装置(94)は、前記固定突起(38)と前記脛骨プレート(30)とが互いに対して移動可能かつ位置合わせ可能であるアライメント位置から、前記固定突起(38)と前記脛骨プレート(30)とが互いに対して相対移動しないように互いに対して保持される前記移植位置へ、移動可能であり、
前記固定装置(94)は、固定要素(96)を備え、
前記移植位置にある第2の関節要素(50)は、前記固定要素(96)と第1の関節要素(48)との間に締め付けられて保持されることを特徴とする、
脛骨コンポーネント。
【請求項2】
前記固定突起(38)は、
(a)前記脛骨プレート(30)の対称面(32)の領域に配置または形成され、且つ/又は、
(b)前記脛骨プレート(30)の前記下面(36)の中央領域または中心領域に配置または形成され、且つ/又は、
(c)前記長手方向軸(42)に対して回転対称または実質的に回転対称に構成され、且つ/又は、
(d)関節式に、特にヒンジジョイント式またはボールジョイント式に、前記脛骨プレート(30)に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項3】
前記脛骨コンポーネント(16)は、第1の関節要素(48)と第2の関節要素(50)とを有する関節デバイス(46)を備え、
前記第1の関節要素(48)は、前記脛骨プレート(30)上に配置または形成され、
前記第2の関節要素(50)は、前記固定突起(38)上に配置または形成され、
前記第1の関節要素(48)と前記第2の関節要素(50)とは互いに係合している、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項4】
前記第1の関節要素(48)は、関節受容器(54)の形態で構成され、
前記第2の関節要素(50)は、前記関節受容器(54)に係合する関節突起(56)の形態で構成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項5】
(a)前記関節突起(56)は球形であり、前記関節受容器(54)は、前記関節突起(56)のための中空球形の当接面(58)を有し、且つ/又は、
(b)前記関節受容器(54)は、前記脛骨プレート(30)の前記下面(36)から離れる方向に延びており、且つ/又は、
(c)前記関節受容器(54)は、特に前記脛骨プレート(30)の前記下面(36)の面法線(64)に対して、回転対称に構成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項6】
前記脛骨プレート(30)上に穿孔(66)が形成され、前記穿孔(66)は、前記上面(34)から前記第1の関節要素(48)を通るように前記脛骨プレート(30)を貫通し、
特に、
(a)前記穿孔(66)は、前記関節受容器(54)を構成し、且つ/又は、
(b)前記固定突起(38)は、前記脛骨プレート(30)の前記上面(34)から前記穿孔(66)を通過可能な寸法を有し、前記関節受容器(54)は、近位方向に作用する前記第2の関節要素(50)のためのストッパ(70)を形成する最狭部(68)を画定する、
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項7】
前記固定突起(38)の横方向に隣接して、少なくとも1つの安定化突起(72)、特に2つの安定化突起(72)が、前記脛骨プレート(30)の前記下面(36)から離れる方向に向けて前記下面(36)に配置または形成され、
前記少なくとも1つの安定化突起(72)は、直線状に構成され、又は、湾曲状、特に、前方に向けて凸状に湾曲した形状に構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項8】
前記脛骨コンポーネント(16)はシャフト(74)を備え、
前記シャフト(74)は、強制ロック方式および/またはポジティブロック方式で、特にねじ込み可能に、前記固定突起(38)に接続可能であり、
特に、前記固定突起(38)に、雄ねじ部(90)が形成されており、
前記シャフト(74)は、前記固定突起(38)のための固定突起受容部(86)を有し、
前記固定突起受容部(86)に、前記雄ねじ部(90)に対応する雌ねじ部(88)が形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項9】
前記固定要素(96)は、
(a)雄ねじ(102)を有するねじ要素(98)を備え、前記穿孔(66)は、前記脛骨プレート(30)の前記上面(34)から始まる前記雄ねじ(102)に対応する雌ねじ(104)を備え、且つ/又は、
(b)前記移植位置において前記穿孔(66)を閉じ、且つ/又は、
(c)前記移植位置において前記第2の関節要素(50)に対して締め付けられて保持される固定要素クランプ面(112)を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項10】
前記固定要素(96)はクランプ要素(100)を備え、
前記固定要素クランプ面(112)は前記クランプ要素(100)上に形成される、
ことを特徴とする請求項9に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項11】
前記ねじ要素(98)と前記クランプ要素とは、一体的に形成されるか、又は、2つの別個の部品として形成される、
ことを特徴とする請求項10に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項12】
前記クランプ要素(100)は、特に平坦な、ねじ要素当接面(114)を有し、
前記ねじ要素当接面は、前記固定要素クランプ面(112)とは反対側を向くように構成され、前記移植位置において前記ねじ要素(98)に当接する、
ことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項13】
前記穿孔(66)は、前記クランプ要素(100)を収容するために近位方向において前記関節受容器(54)に隣接するクランプ要素受容部(116)を有し、
特に、前記穿孔(66)は、前記ねじ要素(98)を収容するために近位方向において前記クランプ要素受容部(116)に隣接するねじ要素受容部(118)を有し、
さらに特に、前記ねじ要素受容部(118)によって画定される断面積は、前記クランプ要素受容部(116)によって画定される断面積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の脛骨コンポーネント。
【請求項14】
大腿骨(22)の遠位端に固定するための少なくとも1つの大腿骨コンポーネント(18)と、脛骨(20)の近位端に固定するための少なくとも1つの脛骨コンポーネント(16)とを備えた膝関節プロテーゼシステム(12)であって、
前記少なくとも1つの大腿骨コンポーネント(18)と前記少なくとも1つの脛骨コンポーネント(16)とは、膝関節プロテーゼ(10)を形成するように互いに対応して構成されており、
前記少なくとも1つの脛骨コンポーネント(16)は、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の脛骨コンポーネント(16)の形態で構成されることを特徴とする、
膝関節プロテーゼシステム。
【請求項15】
(a)前記膝関節プロテーゼ(10)は、前記脛骨コンポーネント(16)に結合可能な少なくとも1つの半月板コンポーネント(24)を備え、前記半月板コンポーネント(24)は、前記少なくとも1つの大腿骨コンポーネント(18)と協働する関節面(26)を有し、且つ/又は、
(b)前記膝関節プロテーゼシステム(12)は、前記脛骨コンポーネント(16)の前記固定突起(28)に選択的に結合するために、長さ(80)及び/又は断面が異なる複数のシャフト(74)を備える、
ことを特徴とする請求項14に記載の膝関節プロテーゼシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節プロテーゼ用の脛骨コンポーネントに関し、前記脛骨コンポーネントは、上面及び下面を有する脛骨プレートと、前記脛骨コンポーネントを脛骨に固定するために前記脛骨の髄腔に挿入可能なように前記下面から突出する固定突起と、を備え、前記固定突起は、前記固定突起の長手方向軸周りに旋回可能および/または回転可能であるように前記脛骨プレートに取り付けられ、前記脛骨コンポーネントは、前記固定突起を移植位置に固定するための固定装置を備え、前記固定装置は、前記固定突起と前記脛骨プレートとが互いに対して移動可能かつ位置合わせ可能であるアライメント位置から、前記固定突起と前記脛骨プレートとが互いに対して相対移動しないように互いに対して保持される前記移植位置へ、移動可能である。
【0002】
また、本発明は、大腿骨の遠位端に固定するための少なくとも1つの大腿骨コンポーネントと、脛骨の近位端に固定するための少なくとも1つの脛骨コンポーネントとを備えた膝関節プロテーゼシステムに関し、前記少なくとも1つの大腿骨コンポーネントと前記少なくとも1つの脛骨コンポーネントとは、膝関節プロテーゼを形成するように互いに対応して構成される。
【背景技術】
【0003】
冒頭で説明された種類の膝関節プロテーゼ(人工膝関節)システムは、患者に適した膝関節プロテーゼ(人工膝関節)を移植することによって、患者の損傷した膝関節を置換するために使用される。プロテーゼの種類は多岐にわたるが、膝関節プロテーゼの移植後の結果に不満を抱く患者は依然として無視できない人数にのぼる。特に問題の1つは、最適な方向づけであり、アライメントとも呼ばれる。
【0004】
患者満足度を向上させるための新しいアプローチは、いわゆるキネマティックアライメント法である。キネマティックアライメント法は、前関節症の膝関節の自然な個別の運動軸を考慮した、膝関節プロテーゼの位置決めに基づいている。これにより、自然な関節ラインと脚軸の位置が元のアライメントに戻る。また、これにより、理論的には、いわゆる「リリース」によって靱帯を緩めることなく、自然な安定した被膜靱帯の張力が維持される。この新しいアプローチとは対照的に、膝関節プロテーゼの古典的なアライメントでは、インプラントコンポーネント(移植コンポーネント)、特に脛骨コンポーネントと大腿骨コンポーネントは、機能軸に対して垂直に位置合わせ(アライメント調整)される。
【0005】
冒頭で説明された種類の脛骨コンポーネントおよび膝関節プロテーゼシステムは、特許文献1(独国実用新案第202007004508号明細書)から知られている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、特に取り扱いを簡素化し得る、冒頭で説明された種類の脛骨コンポーネントおよび膝関節プロテーゼシステムを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国実用新案第202007004508号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、冒頭で説明された種類の脛骨コンポーネントにおいて、前記固定装置が固定要素を備え、前記移植位置にある第2の関節要素が、前記固定要素と第1の関節要素との間に締め付けられて保持される点で、上記の目的が達成される。
【0009】
本発明によって提案される解決策は、特に、脛骨プレートに対する固定突起の所望のアライメント(位置合わせ)を可能にする脛骨コンポーネントを提供することを可能にする。固定突起は、特に、無段階に旋回可能および/または回転可能であるように、脛骨プレートに取り付けられ得る。あるいは、特に、脛骨プレートに対する固定突起の複数の所定の旋回位置および回転位置、すなわち、戻り止め付きの旋回または回転を予め決定することも可能である。この場合、脛骨プレートに対する固定突起の複数の異なるアライメント(位置合わせ)が可能になるが、無段階の態様ではない。本発明で提案される脛骨プレートへの固定突起の特別な取り付けの結果として、特に、患者の脛骨の髄腔内に固定突起を解剖学的に正確に挿入できるように、固定突起を常に最適にアライメント調整(位置合わせ)することが可能になる。これにより、特に、髄腔の境界を定める脛骨の骨表面と、固定突起との衝突が防止され得る。したがって、特に、脛骨コンポーネントの固定突起は、前後方向および内外方向の両方において任意の方法でアライメント調整(位置合わせ)され得る。したがって、特に、脛骨の皮質内側の髄腔内における固定突起の圧力またはエッジ荷重によって、引き起こされる応力ピークが最小限に抑えられ得る。脛骨コンポーネントの固定突起を最適にアライメント調整(位置合わせ)する上述の能力により、特に膝関節プロテーゼのキネマティックアライメント法は、すべての患者、つまり各患者において達成され得る。特に、これにより、患者の膝の靱帯を部分的に切断することによる靱帯の張力低下を必要とすることなく、自然で安定した関節包靱帯の張力を維持することが可能になる。したがって、いわゆる「リリース」は必要でない。本発明によれば、脛骨コンポーネントは、固定突起を移植位置に固定するための固定装置を備え、前記固定装置は、前記固定突起と前記脛骨プレートとが互いに対して移動可能かつ位置合わせ(アライメント調整)可能であるアライメント位置から、前記固定突起と前記脛骨プレートとが互いに対して相対移動しないように互いに対して保持される前記移植位置へ、移動可能である。したがって、固定装置は、特に、脛骨コンポーネントに対して所望のアライメント(位置合わせ)で固定突起を固定することを可能にする。アライメント位置において、脛骨プレートと固定突起とは互いに対して取り付けられるか又は保持されるが、所望の態様で互いに対してアライメント調整(位置合わせ)され得るように互いに対して移動可能である。固定装置をアライメント位置から移植位置に移動させることによって、固定用突起と脛骨プレートとの互いに対する可動性が解除され、その結果、脛骨コンポーネントは、所定の態様で、すなわち、固定突起と脛骨プレートとが互いに対して動くことなく、脛骨に永久的に固定され得る。以下において、「固定位置」という用語は、「移植位置」という用語と同義的に使用される。前記固定装置は、固定要素を備え、前記移植位置にある第2の関節要素は、前記固定要素と第1の関節要素との間に締め付けられて保持されることが好ましい。これにより、固定装置は、特に、第2の関節要素のためのクランプ装置を形成し、中空球形の関節受容器内に第2の関節要素(例えば、球形の関節突起)を締め付けて固定することを可能にする。このようなクランプ装置は、特に、移植中の脛骨コンポーネントの簡単な取り扱いを可能にする。特許文献1(独国実用新案第202007004508号明細書)は、引張力を利用して、固定位置において脛骨プレート上に固定突起を動かないように保持するための解決策を開示している。
【0010】
この目的のためには、シャフトアダプターに回転可能に取り付けられたテンションアンカーが使用される。対照的に、本発明で提案される更なる開発では、押圧力のみによって、固定突起と脛骨プレートとが固定位置で動かないように互いに対して保持される。固定位置において、固定要素は、第1の関節要素に対して第2の関節要素を締め付け態様(クランプ態様)で押し付ける。これにより、特許文献1(独国実用新案第202007004508号明細書)に記載されている脛骨コンポーネントの場合とは異なり、脛骨コンポーネントをアライメント位置から固定位置に移送する際に固定突起を回転させる必要がないため、取り扱いがより簡単になる。これにより、まず、固定突起が脛骨の腔内に既に挿入されている場合にのみ、固定突起と、遠位側で固定突起に結合され得るシャフトとを保持することなく、脛骨コンポーネントをアライメント位置から固定位置に移送することが可能になる。これにより、固定突起のアライメント(位置合わせ)が簡素化され、移植に必要な時間が短縮される。
【0011】
脛骨コンポーネントを安定して固定するために、前記固定突起は、前記脛骨プレートの対称面の領域に配置または形成されることが好ましい。
【0012】
好ましくは、前記固定突起は、前記脛骨プレートの前記下面の中央領域または中心領域に配置または形成される。これにより、特に、固定突起は、脛骨の中央髄腔内にしっかりと挿入されて固定され得る。
【0013】
前記固定突起は、前記固定突起の前記長手方向軸に対して回転対称または実質的に回転対称に構成されると好ましい。例えば、固定突起は、円筒状の切り株の形態または円錐台の形態で構成されてもよい。
【0014】
前記固定突起は、関節式に前記脛骨プレートに取り付けられると有利である。特に、前記固定突起は、ヒンジジョイント式またはボールジョイント式に脛骨プレートに取り付けられてもよい。取り付けの種類に応じて、脛骨プレートに対する固定突起の最適な調整機能が実現され得る。特に、固定突起の一端をボールジョイント式で取り付けることにより、脛骨プレートの下面の面法線に対して所定の角度範囲内で、固定突起の自由端を自由にアライメント調整(位置合わせ)することが可能になり、これは、面法線に対して360度の回転範囲にわたる。
【0015】
好ましい実施形態によれば、前記脛骨コンポーネントは、第1の関節要素と第2の関節要素とを有する関節デバイスを備え、前記第1の関節要素は、前記脛骨プレート上に配置または形成され、前記第2の関節要素は、前記固定突起上に配置または形成され、前記第1の関節要素と前記第2の関節要素とは互いに係合している。このような関節デバイスは、特に、互いに係合して協働する関節デバイスの関節要素の所定の旋回および/または回転を可能にする。特に、関節デバイスは、関節要素間にヒンジジョイント接続またはボールジョイント接続を確立するように構成されてもよい。
【0016】
好ましくは、前記第1の関節要素は、関節受容器の形態で構成され、前記第2の関節要素は、前記関節受容器に係合する関節突起の形態で構成される。このように構成された関節デバイスは、簡単な方法で製造可能であり、脛骨プレートに対する固定突起の柔軟なアライメント(位置合わせ)を可能にする。
【0017】
前記関節突起は球形であり、前記関節受容器は、前記関節突起のための中空球形の当接面を有することが好ましい。この構成により、協働する関節コンポーネントとのボールジョイント接続を簡単な方法で実現することが可能になる。したがって、ジョイントボールを備えた固定突起は、簡単な態様で、その長手方向軸に対して関節受容器内で360度回転可能であり、また、脛骨プレートの下面の面法線に対して、すなわち、好ましくは所定の角度範囲内で旋回可能である。この角度範囲は、特に、固定突起上および/または脛骨プレート上の適切なストッパによって制限され得る。
【0018】
好ましくは、前記関節受容器は、前記脛骨プレートの前記下面から離れる方向に延びている。この構成により、特に、下面から突出する突出部上に関節受容器を形成することが可能になる。その結果、特に、固定突起の旋回の最大角度範囲が簡単な方法で予め決定され、最大化され得る。
【0019】
前記関節受容器は、回転対称に構成されることが好ましい。特に、前記関節受容器は、前記脛骨プレートの前記下面の面法線に対して回転対称に配向されてもよい。このような関節受容器は、簡単な方法で製造可能であり、固定突起の脛骨プレートへのボールジョイント接続を可能にする。
【0020】
特に、簡単な方法で固定突起を脛骨プレートに取り付け可能にするために、前記穿孔は、前記脛骨プレート上に形成され、前記穿孔は、前記上面から前記第1の関節要素を貫通すると有利である。これにより、例えば、固定突起の適切な寸法により、固定突起が脛骨プレートの上面からの穿孔に挿入され、脛骨プレートを通過することが可能になる。
【0021】
前記穿孔が前記関節受容器を構成する場合、脛骨コンポーネントが特にコンパクトに構成され得る。換言すれば、関節受容器は、穿孔の領域に配置または形成され得る。
【0022】
前記固定突起は、前記脛骨プレートの前記上面から前記穿孔を通過可能な寸法を有することが好ましく、前記関節受容器は、近位方向に作用する前記第2の関節要素のためのストッパを形成する最狭部を画定することが好ましい。この構成により、特に、脛骨プレートを患者の準備された脛骨上に配置し、次に、固定突起を脛骨プレートの上面から穿孔を通して脛骨の髄腔内に挿入することが可能になる。ここで、固定突起は、脛骨プレートに対して所望の態様でアライメント調整(位置合わせ)され得る。特に、関節受容器の最狭部は、固定突起が穿孔から滑落するのを防止する。換言すれば、固定突起の移動は、対応して構成された関節受容器によって遠位方向に制限される。
【0023】
さらに好ましい実施形態によれば、前記固定突起の横方向に隣接して、少なくとも1つの安定化突起が、前記脛骨プレートの前記下面から離れる方向に向けて前記下面に配置または形成されるようにしてもよい。特に、2つの安定化突起が、上記の態様で配置または形成されてもよい。特に、2つの安定化突起は、固定突起の横方向に隣接する脛骨プレートの下面から、互いに鏡面対称に突出してもよい。特に、安定化突起は、関節デバイスの第1の関節要素を安定させ、第1の関節要素から横方向に突出し得る。
【0024】
前記少なくとも1つの安定化突起は、直線状、又は、湾曲状に構成されることが好ましい。特に、安定化突起は、前方に向けて凸状に湾曲した形状に構成されてもよい。このようにして、特に、脛骨への脛骨コンポーネントの接続の最適な安定化が達成可能であり、特に、脛骨上での脛骨プレートの回転がこのようにして容易に防止され得る。
【0025】
脛骨への脛骨コンポーネントの最適な固定は、特に、強制ロック方式および/またはポジティブロック方式で固定突起に接続可能なシャフトを備える脛骨コンポーネントによって達成され得る。特に、前記シャフトは、前記固定突起にねじ込み可能であるように構成されてもよい。これにより、外科医は、髄腔の大きさ、特にその長さと断面に適合したシャフトを選択することにより、患者の髄腔の大きさに応じて脛骨コンポーネントを脛骨上で最適に安定させることができる。ここで、シャフトは、特に、直線状であってもよいし、湾曲していてもよい。
【0026】
前記固定突起に、雄ねじ部が形成されており、前記シャフトは、前記固定突起のための固定突起受容部を有し、前記固定突起受容部に、前記雄ねじ部に対応する雌ねじ部が形成されている場合、簡単な態様で、固定突起とシャフトとが互いに接続され得る。
【0027】
前記固定要素が、雄ねじを有するねじ要素を備え、前記穿孔が、前記脛骨プレートの前記上面から始まる前記雄ねじに対応する雌ねじを備える場合、固定装置は、アライメント位置から移植位置(固定位置)へ簡単に移動され得る。このようにして、ねじ要素は、所定の態様で脛骨プレート上に配置可能であり、押圧力を及ぼすことによって固定位置で動かないように第2のクランプ要素(第2の締め付け要素)を脛骨プレートに固定するために、第1のクランプ要素(第1の締め付け要素)に対して第2のクランプ要素を押し付けることができる。ねじ要素は、特に、脛骨プレートの上面から離れる方向を向いた工具要素受容部を有してもよい。これにより、例えば、工具を使用して、簡単な態様でねじ要素を脛骨プレートにねじ込むことができる。
【0028】
脛骨コンポーネントの構造のコンパクト化は、特に、前記固定要素が前記移植位置において前記穿孔を閉じることによって達成され得る。
【0029】
移植位置(固定位置)において第1の関節要素に対する第2の関節要素の移動を防止するために、前記固定要素が固定要素クランプ面(固定要素締め付け面)を有し、前記固定要素クランプ面が、移植位置において第2の関節要素に対して締め付けられて(クランプ状態で)保持されると有利である。
【0030】
さらに、前記固定要素がクランプ要素(締め付け要素)を備え、前記固定要素クランプ面が前記クランプ要素上に形成される場合、有利になり得る。これにより、特に、第2の関節要素を第1の関節要素に対して締め付ける(クランプする)ための最適な材料の組み合わせが、例えばねじ要素が作られる材料とは無関係に選択され得る。特に、クランプ要素は、ねじ要素とは別個に形成されてもよいし、ねじ要素と共にユニットを形成してもよい。
【0031】
好ましくは、前記ねじ要素と前記クランプ要素とは、一体的に形成されるか、又は、2つの別個の部品として形成される。ねじ要素とクランプ要素との2部品構成により、特に、ねじ要素と脛骨プレートとが一緒にねじ込まれるときに、第2の関節要素に対するクランプ要素のねじれ運動を回避することができる。
【0032】
前記クランプ要素が、ねじ要素当接面を有し、前記ねじ要素当接面が、前記固定要素クランプ面とは反対側を向くように構成され、前記移植位置において前記ねじ要素に当接することが好ましい。特に、ねじ要素当接面は平坦に構成されてもよい。これにより、ねじ要素を備えたクランプ要素を第2の関節要素に所定の態様で押し付けて、押圧力を加えるだけで、第2の関節要素を第1の関節要素に対して固定位置に締め付けて保持するために、ねじ要素とクランプ要素との表面全体での良好な接触が確保され得る。
【0033】
前記穿孔は、前記クランプ要素を収容するために近位方向において前記関節受容器に隣接するクランプ要素受容部(締め付け要素受容部)を有すると有利である。このように配置されたクランプ要素受容部により、所定の態様でクランプ要素を収容することができ、これによってクランプ要素を脛骨プレート上に位置決めすることができる。
【0034】
前記穿孔は、前記ねじ要素を収容するために近位方向において前記クランプ要素受容部に隣接するねじ要素受容部を有すると有利である。これにより、ねじ要素を所定の態様で穿孔内または穿孔に配置することも可能になる。
【0035】
前記ねじ要素受容部によって画定される断面積は、前記クランプ要素受容部によって画定される断面積よりも大きいことが好ましい。これにより、クランプ要素及びねじ要素が、これらに設けられたそれぞれの受容部に従って寸法設定されている場合、クランプ要素のみがクランプ要素受容部に挿入可能になり、ねじ要素の挿入を規制できる。さらに、ねじ要素受容部およびクランプ要素受容部の構成は、遠位方向におけるクランプ要素およびねじ要素の最大移動、特に、移植位置(固定位置)におけるねじ要素およびクランプ要素の位置も制限し得る。
【0036】
脛骨コンポーネントは、脛骨プレートの上面および/または下面が平坦または実質的に平坦に構成されると、簡単な態様で形成され得る。
【0037】
本発明によれば、冒頭で述べられた種類の膝関節プロテーゼシステムにおいて、少なくとも1つの脛骨コンポーネントが上述の脛骨コンポーネントのうちの1つの形態で構成される場合にも、冒頭で述べられた目的が達成される。
【0038】
膝関節プロテーゼシステムに上述の脛骨コンポーネントの1つを設けることで、特に、冒頭で説明されたキネマティックアライメント法を達成するために、患者にとって最適に適合した膝関節プロテーゼを形成できるという利点がある。膝関節置換術のこのように最適化されたアライメントにより、特に、膝関節プロテーゼ移植後の患者の満足度が大幅に向上され得る。
【0039】
前記膝関節プロテーゼは、前記脛骨コンポーネントに結合可能な少なくとも1つの半月板コンポーネントを備え、前記半月板コンポーネントは、前記少なくとも1つの大腿骨コンポーネントと協働する関節面を有すると、有利である。これにより、半月板コンポーネントと大腿骨コンポーネントとの間の最適な摺動対(互いに摺動可能な対)が形成され得る。したがって、特に、多種多様な膝関節プロテーゼに、上述の有利な脛骨コンポーネントの1つが具備され得る。半月板コンポーネントは、不動または可動となるように脛骨コンポーネントに結合され得る。
【0040】
患者に対する膝関節プロテーゼの最適な適応を可能にするために、前記膝関節プロテーゼシステムは、前記脛骨コンポーネントの前記固定突起に選択的に結合するために、長さ及び/又は断面が異なる複数のシャフト(74)を備えることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下、本発明の好ましい実施形態は、以下の図面と併せて、さらに説明される。
【0042】
【
図1】膝関節プロテーゼの一実施形態の概略的な全体斜視図を示す。
【
図2】
図1の膝関節プロテーゼの概略的な一部分解斜視図であり、脛骨コンポーネントのシャフトの複数のアライメント位置を概略的に示す。
【
図4】
図1~
図3の脛骨コンポーネントの断面図であり、シャフトが脛骨コンポーネントの上面および下面に対して垂直に位置合わせされた状態を示す。
【
図5】シャフトが配置された脛骨プレートに対して固定突起が旋回される状態を示す、
図4と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1に、第1の実施形態に係る膝関節プロテーゼシステム12の膝関節プロテーゼ10が概略的に示されている。膝関節プロテーゼ10は、患者の膝14内の変性した天然の膝関節の代替物として移植される。
【0044】
膝関節プロテーゼ10は、脛骨コンポーネント16、及び、脛骨コンポーネント16と協働する大腿骨コンポーネント18を備える。脛骨コンポーネント16は、脛骨20の近位端に固定されるように構成されている。大腿骨コンポーネント18は、大腿骨22の遠位端に固定されるように構成されている。脛骨コンポーネント16及び大腿骨コンポーネント18は、膝関節プロテーゼ10を形成するように互いに対応して構成されている。
【0045】
図1及び
図2に示す実施形態の膝関節プロテーゼ10は、脛骨コンポーネント16と大腿骨コンポーネント18との間に配置される任意選択の半月板コンポーネント24を備える。この実施形態において、半月板コンポーネント24は、脛骨コンポーネント16に固定可能であってもよいし、或いは、脛骨コンポーネント16に対して相対移動可能であってもよい。
【0046】
半月板コンポーネント24は、大腿骨コンポーネント18と協働する関節面26を有する。関節面26は、大腿骨コンポーネント18によって画定される顆部面28に当接し、顆部面28は、関節面26上で転動可能であり、且つ/又は、関節面26に沿って摺動可能である。
【0047】
脛骨コンポーネント16は、脛骨プレート30を備える。平面視において、脛骨プレート30は、対称面32に対して鏡面対称の構成であり、実質的にU字形または腎臓形の構成である。脛骨プレート30は、互いに反対方向を向いた上面34および下面36を画定する。
【0048】
固定突起38は、下面36から突出している。固定突起38は、
図1に破線で概略的に描かれている脛骨20の髄腔40内に脛骨コンポーネントを固定するように構成されている。
【0049】
固定突起38は、固定突起38によって画定される長手方向軸42の周りで旋回可能且つ/又は回転可能であるように脛骨プレート30に取り付けられる。
【0050】
固定突起38は、長手方向軸42に対して回転対称または実質的に回転対称に構成されている。固定突起38は、円筒形または実質的に円筒形に構成された遠位端部44を備える。
【0051】
脛骨コンポーネント16は、第1の関節要素48と第2の関節要素50とを有する関節デバイス46を備える。第1の関節要素48と第2の関節要素50は、特に部分的にポジティブロック方式で、互いに係合している。第1の関節要素48は、脛骨プレート30上に配置または形成されている。第2の関節要素50は、固定突起38上に配置または形成され、固定突起38の近位端部52を画定する。
【0052】
第1の関節要素48は(ひいては、固定突起38も)、脛骨プレート30の対称面32の領域に配置または形成される。さらに、第1の関節要素48は(ひいては、固定突起38も)、脛骨プレート30の下面36の中心領域または中央領域に配置または形成される。
【0053】
固定突起38は、関節デバイス46によって関節式に、特にヒンジジョイント式またはボールジョイント式に、脛骨プレート30に取り付けられる。
【0054】
本実施形態の脛骨コンポーネント16において、第1の関節要素48は関節受容器(関節レセプタクル)54の形態で構成される。第2の関節要素50は、関節受容器54に係合する関節突起56の形態で構成される。本実施形態において、関節突起56は球形に構成されており、遠位端部44の直径よりも大きな直径を有する。関節受容器54は、中空球状の当接面58を画定する。このようにして、ジョイントボールの形態に構成された関節突起56は、関節受容器54内で回転可能であり、関節突起56の中心60周りで旋回可能である。
【0055】
関節受容器54は、脛骨プレート30の下面36から延びており、スリーブ状の突出部62に形成されている。関節受容器54は、回転対称の構成、具体的には、脛骨プレート30の下面36の面法線64に対して回転対称の構成である。
【0056】
脛骨プレート30には穿孔66が形成されている。穿孔66は、上面34から脛骨プレート30を貫通し、具体的には、第1の関節要素48を貫通している。これにより、穿孔66は、突出部62の遠位端の領域に形成される関節受容器54を備えている。
【0057】
固定突起38は、その遠位端部44が脛骨プレート30の上面34から穿孔66に入って穿孔66を貫通する態様で挿入可能であるような寸法または大きさを有する。具体的に、固定突起38は、関節受容器54によって画定される最狭部68に関節突起56が当接するまで挿入可能であるような寸法または大きさを有する。最狭部68は、近位方向に作用する第2の関節要素50のためのストッパ(停止部)70を形成する。
【0058】
突出部62から、対称面32に関して互いに横方向に対称的に2つの安定化突起72が突出している。2つの安定化突起72は、突出部62と同様に、脛骨プレート30の下面36から離れる方向に向けて突出している。図示された実施形態において、安定化突起72は、湾曲形状、具体的には、前方に向けて凸状に湾曲した形状である。代替実施形態において、安定化突起72は、直線状に構成されてもよい。
【0059】
安定化突起72は、特に、面法線64を中心とする脛骨20に対する脛骨プレート30の回転を防止し得る。すなわち、安定化突起72は、脛骨コンポーネント16に対する一種の回転防止装置を形成する。
【0060】
脛骨コンポーネント16を脛骨20に良好に固定できるようにするために、図示の実施形態では、固定突起38が強制ロック方式および/またはポジティブロック方式でシャフト74に接続可能である。シャフト74は、実質的に細長い円筒形または実質的に円筒形に構成されており、丸みを帯びた遠位端76を有する。
【0061】
シャフト74は、シャフト長手方向軸78を画定する。
図4及び
図5に概略的に示されるように、シャフト74が固定突起38に接続されているとき、シャフト長手方向軸78は、長手方向軸42と一致する。
【0062】
シャフト74は、近位端から遠位端76までの長さ80と、シャフト長手方向軸78に直交する直径64とを画定する。
【0063】
近位端82から始まって、固定突起受容部(固定突起レセプタクル)86が形成されている。固定突起受容部86は、雌ねじ部88を有する。固定突起受容部86は、止まり穴(非貫通穴)の形態で構成されており、固定突起38の遠位端部44を収容するように機能する。遠位端部44には、雌ねじ部88に対応する雄ねじ部90が形成されており、これにより、シャフト74と固定突起38とが互いに螺合可能になっている。
【0064】
関節突起56が当接面58に当接するまで遠位端部44が上面34から穿孔66内に挿入されることによって、固定突起38が上述のように脛骨プレート30に結合され得る。この位置において、第1の関節要素48と第2の関節要素50とは、移動可能であり、したがって互いに対して位置合わせ(アライメント調整)可能である。
【0065】
所定のアライメント(例えば、面法線64に対して偏角(ずれ角度)92だけ偏向されたアライメント)において、固定突起38を固定するために、脛骨コンポーネント16は固定装置94を備える。
図4及び
図5に概略的に示されるように、固定装置94を使用することで、固定突起38は、脛骨プレート30に対する固定位置または移植位置に固定され得る。
【0066】
固定装置94は、固定突起38と脛骨プレート30とが互いに対して移動可能かつ位置合わせ(アライメント調整)可能であるアライメント位置(位置合わせ位置)から、移植位置へ移動可能である。上述のように、固定突起38と脛骨プレート30とは、移植位置において互いに対して相対移動しないように保持される。
【0067】
固定装置94は、固定位置にある第2の関節要素50を第1の関節要素48に対して固定可能である固定要素96を備える。換言すれば、固定位置において、第2の関節要素50は、固定要素96と第1の関節要素48との間に例えば締め付けによって(クランプ態様で)保持され得る。
【0068】
図示される固定要素96は、2つの部品で形成されており、ねじ要素98とクランプ要素100とを備える。
【0069】
ねじ要素98は円筒形状であり、雄ねじ102を有する。脛骨プレート30の上面34から始まる穿孔66には、雌ねじ104が、雄ねじ102に対応して形成されている。固定突起38から離れる方向を向いたねじ要素98の平坦面106には、工具受け部108が形成されている。工具受け部108は、多角形のソケット110の形態に構成されている。
【0070】
ねじ要素98は、工具受け部108に係合可能なねじ込み工具によって、上述のように脛骨プレート30に螺合可能であり、螺合状態において、ねじ要素98は固定位置で穿孔66を閉じる。
【0071】
固定要素96は、固定要素クランプ面112を有する。固定要素クランプ面112は、固定位置において、専ら押圧力を及ぼすことによって第2の関節要素50を締め付ける(クランプする)ように押し付ける。固定要素クランプ面112が表面全体で第2の関節要素50に当接することを可能にするために、第2の関節要素50が球状の関節突起56によって形成されている場合、固定要素クランプ面112は、関節突起56に対応して中空球状に形成される。固定要素クランプ面112は、このようにして、クランプ要素100上に形成される。
【0072】
代替の実施形態において、ねじ要素98とクランプ要素100とは一体的に形成されてもよい。特に、固定要素96はモノリシック構成(一体構造)であってもよい。
【0073】
図3から容易に分かるように、図示の実施形態において、クランプ要素100は、平坦なねじ要素当接面114を有する。ねじ要素当接面114は、固定要素クランプ面112から離れる方向を向くように構成されており、固定位置においてねじ要素98に当接する。
【0074】
関節受容器54の近位には、クランプ要素受容部116が隣接している。クランプ要素受容部116は、関節受容器54よりも大きな直径を画定している。クランプ要素受容部116は、クランプ要素100を収容して位置決めするように機能する。
【0075】
さらに、穿孔66は、ねじ要素受容部118を有する。ねじ要素受容部118は、ねじ要素98を収容するために近位方向においてクランプ要素受容部116に隣接する。雌ねじ104は、ねじ要素受容部118の領域にのみ形成されている。
【0076】
ねじ要素受容部118によって画定される断面積、又は、ねじ要素受容部118の直径は、クランプ要素受容部116によって画定される断面積、又は、クランプ要素受容部116の直径よりも大きい。
【0077】
固定装置94をアライメント位置(位置合わせ位置)から移植位置に移動させるために、クランプ要素100が押圧力を加えて関節突起56を関節受容器54に対して締め付ける(クランプする)ように押し込むまで、ねじ要素98は、球状の関節突起56に向かう方向にねじ込まれる。逆に、ねじ要素98を反対方向に回転させて、ねじ接続をわずかに緩めることによって、脛骨コンポーネント16または固定装置94は、移植位置からアライメント位置(位置合わせ位置)に戻され得る。これにより、クランプ要素100は、関節突起56をいくらか解放して、脛骨プレート30に対する固定突起38の回転運動および旋回運動が可能になる。
【0078】
図示される実施形態において、脛骨プレート30の上面34及び下面36は、平坦または実質的に平坦に構成されている。
【0079】
上面34は、脛骨関節面120の形態で構成される。脛骨関節面120は、脛骨コンポーネント16上への半月板コンポーネント24の移動可能な取り付けにより、半月板コンポーネント24の下面との摺動対(互いに摺動可能な対)を形成する。
【0080】
膝関節プロテーゼ10を患者の生理機能に個別に適合可能にするために、膝関節プロテーゼシステム12は、長さ80および/または直径84(すなわち断面)が異なる複数のシャフト74を備えてもよい。この場合、脛骨コンポーネント16の固定突起38に対して複数のシャフト74が選択的に結合され得る。
【0081】
さらに、他の実施形態における膝関節プロテーゼシステム12は、形状および/または大きさが異なる複数の脛骨コンポーネント16と、形状および/または大きさが異なる複数の大腿骨コンポーネント18と、形状および/または大きさが異なる複数の半月板コンポーネント24とを備えてもよい。このようにして、最適に適合した膝関節プロテーゼ10が、異なる体格の人々に提供され得る。
【0082】
上述の実施形態における脛骨コンポーネント16に設けられた関節デバイス46によって、脛骨20の髄腔の向きとは無関係に、脛骨コンポーネント16を脛骨20に最適に固定することが可能になる。上述の関節デバイス46は、冒頭で説明されたキネマティックアライメント法を達成するために、関節デバイス46上に任意に配置されたシャフト74と固定突起との無段階の位置合わせ(アライメント調整)を可能にする。これにより、従来の膝関節プロテーゼに比べて、膝関節プロテーゼ移植後の患者の満足度が向上し得る。
【符号の説明】
【0083】
10 膝関節プロテーゼ
12 膝関節プロテーゼシステム
14 膝
16 脛骨コンポーネント
18 大腿骨コンポーネント
20 脛骨
22 大腿骨
24 半月板コンポーネント
26 関節面
28 顆部面
30 脛骨プレート
32 対称面
34 上面
36 下面
38 固定突起
40 髄腔
42 長手方向軸
44 遠位端部
46 関節デバイス
48 第1の関節要素
50 第2の関節要素
52 近位端部
54 関節受容器
56 関節突起
58 当接面
60 中心
62 突出部
64 面法線
66 穿孔
68 最狭部
70 ストッパ
72 安定化突起
74 シャフト
76 遠位端
78 シャフト長手方向軸
80 長さ
82 近位端
84 直径
86 固定突起受容部
88 雌ねじ部
90 雄ねじ部
92 偏角
94 固定装置
96 固定要素
98 ねじ要素
100 クランプ要素
102 雄ねじ
104 雌ねじ
106 平坦面
108 工具受容部
110 多角形のソケット
112 固定要素クランプ面
114 ねじ要素当接面
116 クランプ要素受容部
118 ねじ要素受容部
120 脛骨関節面
【国際調査報告】