(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】単結晶ダイヤモンド部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/04 20060101AFI20240621BHJP
C30B 33/08 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C30B29/04 V
C30B33/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500306
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022068565
(87)【国際公開番号】W WO2023280842
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514233369
【氏名又は名称】エレメント シックス テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100228005
【氏名又は名称】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】マーカム マシュー リー
(72)【発明者】
【氏名】ニューランド ジョナサン クリストファー
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077AB09
4G077AB10
4G077BA03
4G077FD02
4G077FG02
4G077FG12
(57)【要約】
単結晶CVDダイヤモンド部品及び単結晶CVDダイヤモンド部品の製造方法。前記単結晶CVDダイヤモンド部品は、表面を含み、少なくとも前記表面の一部は化学機械研磨(CMP)により処理されており、及び量子スピン欠陥を含み、前記量子スピン欠陥の層は前記表面の500nm以内に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面であって、少なくとも前記表面の一部が化学機械研磨(CMP)により処理された表面と、
量子スピン欠陥の層であって、前記量子スピン欠陥の層が前記表面の500nm以内に配置される量子スピン欠陥の層と、
を含む、単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項2】
少なくとも前記表面の一部が、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングにより更に処理されている、請求項1に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項3】
少なくとも前記表面の一部が、機械研磨により更に処理されている、請求項1又は2に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項4】
前記量子スピン欠陥が、以下のいずれかより選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
ケイ素含有欠陥;
ニッケル含有欠陥;
クロム含有欠陥;
ゲルマニウム含有欠陥;
スズ含有欠陥;及び
窒素含有欠陥
【請求項5】
前記量子スピン欠陥が、負に帯電した窒素空孔欠陥NV
‐である、請求項1~3のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項6】
量子スピン欠陥の濃度が、1×10
13欠陥/cm
3以上、1×10
14欠陥/cm
3以上、1×10
15欠陥/cm
3以上、1×10
16欠陥/cm
3以上、1×10
17欠陥/cm
3以上、及び1×10
18欠陥/cm
3以上より選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項7】
量子スピン欠陥の濃度が、4×10
18欠陥/cm
3以下、2×10
18欠陥/cm
3以下、1×10
18欠陥/cm
3以下、1×10
17欠陥/cm
3以下、及び1×10
16欠陥/cm
3以下より選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項8】
前記量子スピン欠陥が、10μ秒以上、50μ秒以上、100μ秒以上、300μ秒以上、600μ秒以上、1m秒以上、10m秒以上、100m秒以上、又は500m秒以上のHahn-echoデコヒーレンス時間T
2を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項9】
前記表面が、5nm以下、2nm以下、1nm以下、又は0.5nm以下の表面粗さRaを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項10】
300ppb以下、200ppb以下、100ppb以下、80ppb以下、60ppb以下、40ppb以下、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、又は1ppb以下の単一置換窒素濃度を有する更なる層を含み、前記層が量子スピン欠陥の層に対する表面に対して遠位に配置される、請求項1~9のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項11】
前記量子スピン欠陥の層が、表面の500nm以内、200nm以内、100nm以内、50nm以内、30nm以内、10nm以内、又は5nm以内に配置される、請求項1~10のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項12】
前記量子スピン欠陥の層厚が、200nm以下、100nm以下、50nm以下、30nm以下、10nm以下、又は5nm以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項13】
前記単結晶CVDダイヤモンド部品が、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、4.5mm以上、又は5mm以上の少なくとも1つの横寸法を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品を含む、装置。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品の製造方法であって、以下を含む方法:
表面を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供すること;
前記単結晶CVDダイヤモンドが量子スピン欠陥の層を含み、前記量子スピン欠陥の層が前記表面の500nm以内に配置されるように、化学機械研磨(CMP)を用いて前記表面の少なくとも一部を処理すること。
【請求項16】
化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングを用いて前記表面の前記一部を処理することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、機械研磨を用いて前記表面の前記一部を処理することを更に含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記単結晶CVDダイヤモンドの表面に窒素を注入すること;及び
前記単結晶CVDダイヤモンドをアニールして、前記単結晶CVDダイヤモンド内で空孔及び/又は窒素欠陥を移動させ、並びに前記注入窒素及び前記空孔欠陥より窒素空孔欠陥を形成させること;
を更に含み、
前記注入及びアニールにより、前記表面の500nm以内に配置される量子スピン欠陥の層が形成される、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記注入及びアニールの前に、前記単結晶CVDダイヤモンドが300ppb以下、200ppb以下、100ppb以下、80ppb以下、60ppb以下、40ppb以下、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、又は1ppb以下の単一置換窒素濃度を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、1×10
13欠陥/cm
3以上、1×10
14欠陥/cm
3以上、1×10
15欠陥/cm
3以上、1×10
16欠陥/cm
3以上、1×10
17欠陥/cm
3以上、及び1×10
18欠陥/cm
3以上のいずれかより選択される量子スピン欠陥濃度を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供することを更に含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、4×10
18欠陥/cm
3以下、2×10
18欠陥/cm
3以下、1×10
18欠陥/cm
3以下、1×10
17欠陥/cm
3以下、及び1×10
16欠陥/cm
3以下のいずれかより選択される量子スピン欠陥濃度を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、単結晶ダイヤモンド部品、特に量子スピン欠陥を含む単結晶ダイヤモンド部品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
合成ダイヤモンド材料における点欠陥、特に量子スピン欠陥及び/又は光学活性欠陥は、発光タグ、磁器探知機、核磁気共鳴(NMR)や電子スピン共鳴(ESR)装置等のスピン共鳴装置、磁気共鳴画像(MRI)のためのスピン共鳴画像装置、及び例えば量子通信やコンピューティングのための量子情報処理装置を含む様々なイメージング、センシング、及び処理用途における使用のために提案されている。
ケイ素空孔欠陥(Si-V)、ケイ素二空孔欠陥(Si-V2)、ケイ素空孔水素欠陥(Si-V:H)、ケイ素二空孔欠陥(Si-V2H)等のケイ素含有欠陥、ニッケル含有欠陥、クロム含有欠陥、並びに窒素空孔欠陥(N-V)、二窒素空孔欠陥(N-V-N)及び窒素空孔水素欠陥(N-V-H)等の窒素含有欠陥を含む多くの点欠陥が、合成ダイヤモンド材料において、研究されている。これらの欠陥は、通常中性の電荷状態又は負の電荷状態で見られる。これらの点欠陥は複数の結晶格子点にわたり広がることに留意されたい。本明細書で使用する点欠陥という用語は、そのような欠陥を包含するが、10以上の格子点にわたって広がる欠陥等のより大きなクラスタ欠陥、又は多くの格子点にわたって広がり得る転位等の拡張欠陥は含まないことを意図している。
特定の欠陥は、負電荷の状態にあるときに、センシング及び量子処理の用途に特に有用であることが見出されている。例えば、合成ダイヤモンド材料の負に帯電した窒素空孔欠陥(NV‐)は、以下のものを含むいくつかの望ましい特徴を含むため、有用な量子スピン欠陥として多くの関心を集めている。
(i)その電子スピン状態は、高忠実度でコヒーレント操作することができ、非常に長いコヒーレンス時間を有する(横緩和時間T2及び/又はT2
*を用いて定量及び比較することができる);
(ii)その電子構造により、前記欠陥をその電子基底状態に光ポンピングすることができ、非極低温でもそのような欠陥を特定の電子スピン状態に置くことができる。これにより、小型化が望まれる特定の用途において、高価でかさばる極低温冷却装置の必要性をなくすことができる。更に、前記欠陥は全て同じスピン状態を有する光子の発生源として機能することができる。そして;
(iii)その電子構造は発光及び非発光電子スピン状態を含み、光子を通して前記欠陥の電子スピン状態を読み取ることを可能とする。これは、磁力測定、スピン共鳴分光法、及びイメージング等のセンシング用途で使用される合成ダイヤモンド材料から情報を読み取るのに都合が良い。更に、前記NV‐欠陥を長距離量子通信や拡張性量子計算のための量子ビットとして使用するための重要な要素である。このような結果により、前記NV‐欠陥は固体量子情報処理(QIP)のための競合候補になる。
【0003】
ダイヤモンドにおけるNV‐欠陥は、炭素空孔に隣接する置換窒素原子からなる。その2つの不対電子は電子基底状態(3A)でスピン三重項を形成し、縮退したms=±1サブレベルはms=0レベルから2.87GHz離れる。前記NV‐欠陥の電子構造は、光ポンピング時にms=0サブレベルが高い蛍光率を示すようなものである。対照的に、前記欠陥がms=±1レベルで励起されると、非放射一重項状態(1A)にクロスオーバーし、その後ms=0に緩和する高い可能性を示す。その結果、スピン状態を光学的に読み取ることができ、ms=0状態は「明るい」状態、ms=±1状態は「暗い」状態である。外部磁場が印加されると、スピンサブレベルms=±1の縮退がゼーマン分裂によって破壊される。これにより、印加された磁場の大きさとその方向に依存して共鳴線が分割される。この依存性は、マイクロ波(MW)を使用して共鳴スピン転移を精査し、光学検出磁気共鳴(ODMR)分光法を使用して印加された磁場の大きさと必要に応じて方向を測定することにより、磁力測定に使用することができる。
合成ダイヤモンド材料におけるNV‐欠陥は、以下のものを含む多くの様々な方法で形成することができる。
(i)成長中に窒素原子及び空孔が窒素‐空孔ペアとして結晶格子に組み込まれる合成ダイヤモンド材料の成長中における形成:
(ii)ダイヤモンド材料の合成後に、結晶格子を通って空孔欠陥が移動し、ネイティブの単一置換窒素欠陥と対になる温度(約800°C)で前記材料をアニールすることにより成長プロセス中に組み込まれた、ネイティブな窒素及び空孔欠陥からの形成:
(iii)ダイヤモンド材料の合成後に、合成ダイヤモンド材料に照射して空孔欠陥を導入し、その後、結晶格子を通って空孔欠陥が移動し、ネイティブの単一置換窒素欠陥と対になる温度で前記材料をアニールすることにより成長プロセス中に組み込まれた、ネイティブな窒素欠陥からの形成:
(iv)ダイヤモンド材料合成後の、合成ダイヤモンド材料に窒素欠陥を注入し、結晶格子を通ってネイティブな空孔欠陥が移動し、注入された単一置換窒素欠陥と対になる温度で前記材料をアニールすることによる、ダイヤモンド材料合成後の形成:及び、
(v)合成ダイヤモンド材料を照射して空孔欠陥を導入し、前記合成ダイヤモンド材料に窒素欠陥を注入し、結晶格子を通って空孔欠陥が移動し、注入された単一置換窒素欠陥と対になる温度で前記材料をアニールすることによる、ダイヤモンド材料合成後の形成。
【0004】
国際公開第2015/071487号に記載されているように、窒素イオン注入及びアニーリング(イオン注入前又は後の空孔生成照射ステップを含んでもよい)によるNV‐欠陥の形成は、ナノ磁力測定、広磁場磁力測定、及び量子処理用途等の用途で使用される合成ダイヤモンド材料におけるNV‐欠陥が、通常合成ダイヤモンド材料の表面に近い必要があり(数nm以内)、イオン注入が表面の近くにNV‐欠陥を提供する有用な方法であるため、有利であり得る。
窒素イオン注入及びアニーリングによる合成ダイヤモンド材料の表面近くのNV‐欠陥の形成に関する問題は、これまでのところ、そのような表面近くのNV‐欠陥は、国際公開第01/096633号、国際公開第2010/010344号、及び国際公開第2010/010352号に記載されている単結晶CVDダイヤモンド材料等の高純度単結晶CVDダイヤモンド材料のバルクで見られる自然のNV‐欠陥よりも短いスピンコヒーレンス時間を示していることである。
窒素イオン注入による表面近くのNV‐中心の形成に関する更なる問題は、前記表面が通常滑らかではないため、デバイス製造には適さないことである。表面は機械研磨によって改善することができますが、これにより表面近くのNV‐中心が除去され、NV‐中心のデコヒーレンス時間T2が短縮される可能性がある。現状、最良の解決策は誘導結合プラズマ(ICP)エッチングを使用することであるが、これも表面とNV‐中心に損傷を与える証拠がある。
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
本発明の目的は、研磨面と、研磨面に近い高いT2値を有するスピン中心との組み合わせを有する単結晶CVDダイヤモンド部品を提供すること、及びそのようなダイヤモンド部品の製造方法を提供することである。
【0006】
第1の態様によれば、表面であって、少なくとも前記表面の一部が化学機械研磨(CMP)により処理された表面と、量子スピン欠陥の層であって、前記量子スピン欠陥の層が前記表面の500nm以内に配置される量子スピン欠陥の層と、を含む単結晶CVDダイヤモンド部品が提供される。
任意で、少なくとも前記表面の一部が、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングにより更に処理されている。
任意で、少なくとも前記表面の一部が、機械研磨により更に処理されている。
量子スピン欠陥の例示的なタイプは、ケイ素含有欠陥、ニッケル含有欠陥、クロム含有欠陥、ゲルマニウム含有欠陥、スズ含有欠陥、及び窒素含有欠陥のいずれかより選択される。
任意で、前記量子スピン欠陥は、負に帯電した窒素空孔欠陥NV‐である。
任意で、量子スピン欠陥の濃度は、1×1013欠陥/cm3以上、1×1014欠陥/cm3以上、1×1015欠陥/cm3以上、1×1016欠陥/cm3以上、1×1017欠陥/cm3以上、及び1×1018欠陥/cm3以上より選択される。
更に任意で、量子スピン欠陥の濃度は、4×1018欠陥/cm3以下、2×1018欠陥/cm3以下、1×1018欠陥/cm3以下、1×1017欠陥/cm3以下、及び1×1016欠陥/cm3以下より選択される。
任意で、前記量子スピン欠陥は、10μ秒以上、50μ秒以上、100μ秒以上、300μ秒以上、600μ秒以上、1m秒以上、10m秒以上、100m秒以上、又は500m秒以上のHahn-echoデコヒーレンス時間T2を有する。
任意で、前記単結晶CVDダイヤモンド部品表面は、5nm以下、2nm以下、1nm以下、又は0.5nm以下の表面粗さRaを有する。
前記単結晶CVDダイヤモンド部品は、300ppb以下、200ppb以下、100ppb以下、80ppb以下、60ppb以下、40ppb以下、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、又は1ppb以下の単一置換窒素濃度を有する更なる層を含んでもよく、前記層は量子スピン欠陥の層に対する表面に対して遠位に配置される。
前記量子スピン欠陥の層は、表面の500nm以内、200nm以内、100nm以内、50nm以内、30nm以内、10nm以内、又は5nm以内に配置されてもよい。
前記量子スピン欠陥の層厚は、200nm以下、100nm以下、50nm以下、30nm以下、10nm以下、又は5nm以下であってもよい。
任意で、前記単結晶CVDダイヤモンド部品は、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、4.5mm以上、又は5mm以上の少なくとも1つの横寸法を有する。
【0007】
第2の形態によれば、上記の第1の形態において記載された単結晶CVDダイヤモンド部品を含む装置が提供される。
第3の形態によれば、上記の第1の形態において記載された単結晶CVDダイヤモンド部品の製造方法が提供され、前記方法は、表面を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供すること、及び前記単結晶CVDダイヤモンドが量子スピン欠陥の層を含み、前記量子スピン欠陥の層が前記表面の500nm以内に配置されるように、化学機械研磨(CMP)を用いて前記表面の少なくとも一部を処理すること、を含む。
前記方法は、化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングを用いて前記表面の前記一部を処理することを更に含んでもよい。
前記方法は、化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、機械研磨を用いて前記表面の前記一部を処理することを更に含んでもよい。
任意の実施形態において、前記方法は、前記単結晶CVDダイヤモンドの表面に窒素を注入すること、及び前記単結晶CVDダイヤモンドをアニールして、前記単結晶CVDダイヤモンド内で空孔及び/又は窒素欠陥を移動させ、並びに前記注入窒素及び前記空孔欠陥より窒素空孔欠陥を形成させることを更に含み、前記注入及びアニールにより、前記表面の500nm以内に配置される量子スピン欠陥の層が形成される。更に任意で、前記単結晶CVDダイヤモンドは、注入及びアニールの前に、300ppb以下、200ppb以下、100ppb以下、80ppb以下、60ppb以下、40ppb以下、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、又は1ppb以下の単一置換窒素濃度を有する。
代替的な任意の実施形態において、前記方法は、化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、1×1013欠陥/cm3以上、1×1014欠陥/cm3以上、1×1015欠陥/cm3以上、1×1016欠陥/cm3以上、1×1017欠陥/cm3以上、及び1×1018欠陥/cm3以上のいずれかより選択される量子スピン欠陥濃度を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供することを更に含む。更に任意で、前記方法は、化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、4×1018欠陥/cm3以下、2×1018欠陥/cm3以下、1×1018欠陥/cm3以下、1×1017欠陥/cm3以下、及び1×1016欠陥/cm3以下のいずれかより選択される量子スピン欠陥濃度を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供することを含む。
本発明は、添付の図面を参照しながら、単なる例としてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、異なる処理後における実施例のダイヤモンド材料について測定されたT
2値を示す一連のグラフである。
【
図2】
図2は、更に測定されたT
2値を示すグラフである。
【
図3】
図3は、単結晶CVDダイヤモンドを処理するための例示的な工程を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、単結晶CVDダイヤモンドを処理するための更なる例示的な工程を示すフロー図である。
【0009】
本明細書全体を通じて、同様の部分には同じ参照番号を付し、簡潔にするために詳細な説明は省略する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、機械研磨とその後のICPプラズマエッチングを組み合わせて研磨損傷を除去することによって、表面近傍の量子スピン欠陥によってダイヤモンド表面を大幅に改善することができることを確認した。化学機械研磨(CMP)の最終ステップを前記表面に適用して、エッチングによる損傷を除去し、高品質の仕上げを施すことが重要である。これは、既に量子スピン欠陥が存在するダイヤモンドに対して実施してもよく、又は前記ダイヤモンドは研磨面で国際公開第2015/071487号に記載されているような注入技術を施すこともできる。これにより、デコヒーレンス時間T2が大幅に改善される。長いT2(例えば、50μ秒超)により、高解像度のセンシング及び制御動作が可能になる。T2値は、機械的な表面及び表面下の損傷が存在する場合には劇的に減少するため、T2値は表面下の損傷を推定するための代用値としてもよい。
CMPは、化学スラリーを表面に適用して、化学技術によって表面の結合を変化させ、それにより材料のより柔らかい相を形成するプロセスである。機械的要素は、研磨粒子の適用、通常は、研磨中の表面から材料の柔らかい相を除去するための、研磨ホイール上への研磨粒子の適用である。通常の機械研磨と比較したこの技術の利点は、バルクダイヤモンドよりも柔らかい研磨粒子を使用することができることである。これにより、CMPを使用した場合、通常の機械研磨を使用した場合よりも表面及び表面下の損傷が確実に少なくなる。
【0011】
量子スピン欠陥を表面近くに有することは、光学構造内に配置したり、又はセンシング用途のために表面に近づけたりする等、最終用途に利用することができるようにするために有利である。
量子スピン欠陥の例としては、シリコン含有欠陥、ニッケル含有欠陥、クロム含有欠陥、ゲルマニウム含有欠陥、スズ含有欠陥、及び窒素含有欠陥等が挙げられる。以下の説明は、負に帯電した窒素空孔(NV‐)欠陥である量子スピン欠陥に焦点を当てるが、当業者であれば、同じ技術があらゆるタイプの量子スピン欠陥に使用することができることを理解するであろう。
【実施例】
【0012】
実施例1
国際公開第01/096633号に記載されているように、窒素濃度が非常に低い単結晶CVDダイヤモンドからなるダイヤモンドサンプルが提供された。
実施例のダイヤモンドは、材料の深さ80nmを除去するために標準的な研磨技術を使用して機械研磨した。次いで、前記ダイヤモンドに150keV未満で窒素イオン注入を施し、100nm未満の深さまで注入し、更に照射とアニーリングを行い表面近くのNV‐中心を形成した。国際公開第2012/090662号に記載されているように、アニーリングは800℃で16時間、次いで1200℃で2時間実施した。
【0013】
実施例2
ダイヤモンドサンプルを、実施例1のダイヤモンドサンプルと同じ方法で機械研磨した。次いで、前記ダイヤモンドは、Mildren and Rabeau, Optical Engineering of Diamond, Wiley-VCH 2013, 130ページに記載されている条件下で、2μmずつICPプラズマエッチングを施した。次いで、実施例1で説明した方法と同じ方法で、ダイヤモンドにイオン注入を施した後、照射及びアニーリングを行い、表面近くのNV‐中心を形成した。
【0014】
実施例3
ダイヤモンドサンプルは、実施例2のダイヤモンドサンプルと同じ方法で機械研磨して、ICPエッチングした。次いで、前記ダイヤモンドは、ロジテックトライボCMPシステムを用いたCMPを用いて更に処理した。次いで、実施例1で説明した方法と同じ方法で、前記ダイヤモンドにイオン注入を施した後、照射及びアニーリングを行い、表面近くのNV‐中心を形成した。
【0015】
図1は、実施例1~3について測定されたT
2値を示す一連のグラフである。実施例1のT
2測定値は2.7±0.4μ秒であり、実施例1のT
2測定値は42±5μ秒であり、実施例3のT
2測定値は120±20μ秒であった。
知られているように、研磨後のICPエッチング工程がT
2値に重大な影響を及ぼしたことを見出すことができる。 しかし、その後のCMP処理工程が、更なる重要な効果をもたらし、CMPを施さなかったサンプルと比較してT
2値がほぼ3倍増加したことは驚くべきことであった。
その後、使用された装置がT
2測定値に人為的な制限を課していたことが判明した。T
2値の測定が長くなるほど、機器の安定性と浮遊磁界により測定が難しくなる。例えば、T
2値は1μ秒であり得るが、環境からの干渉により記録されるT
2値が制限されるため、測定時間が数時間になる可能性がある。実施例3では、環境要因を考慮するために修正された装置を使用して再度測定した。曲線(a)は実施例3についての元の測定値を示し、曲線(b)は修正された装置を使用した測定値を示し、T
2値は550μ秒になる。これは、表面処理が適用されていない国際公開第2015/071487号で測定された値に匹敵する。
【0016】
図3は、ダイヤモンド表面を処理するための例示的な工程を示すフロー図である。以下の番号付けは、
図3のものと対応する。
S1.表面を有する単結晶CVDダイヤモンドが提供されている。
S2.任意的な工程として、少なくとも前記表面の一部が機械研磨されている。
S3.任意的な工程として、少なくとも前記表面の一部がICPエッチングにより処理されている。
S4.少なくとも前記表面の一部が、前記単結晶CVDダイヤモンドが量子スピン欠陥の層を含むように、CMPを用いて処理されており、前記量子スピン欠陥の層が前記表面の500nm以内に配置される。
上述の技術は、量子スピン欠陥を含む任意の単結晶CVDダイヤモンドに使用してもよい。あるいは、上述の技術は量子スピン欠陥が無視できるダイヤモンド材料に使用してもよく、及び前記量子スピン欠陥は次いで前記CMP処理表面に導入される。
【0017】
図4は、量子スピン欠陥をCMP処理表面に導入するための例示的な工程を説明するフロー図である。また、このことはNV
‐中心を形成するための特定の技術を説明したものの、当業者であれば、他のタイプの量子スピン欠陥を導入するために同様の技術を用いることができると理解するであろう。以下の番号付けは、
図4のものと対応する。
S5.CMP処理表面を有するCVD単結晶ダイヤモンドが提供されている。制御されたレベルの注入窒素を実現することができるように、CVD単結晶ダイヤモンドが窒素不純物を低いレベルで含むことが望ましい。前記CVD単結晶ダイヤモンドが、300ppb、200ppb、100ppb、80ppb、60ppb、40ppb、20ppb、10ppb、5ppb、又は1ppb以下の単一置換窒素濃度を有することが好ましい。
S6.窒素は、前記単結晶CVDダイヤモンドの表面にイオン注入された窒素であり、主に単一置換窒素欠陥を有するダイヤモンドの表面層を得る。この技術分野で既知であるように、注入エネルギー及び注入量を制御して、高純度単結晶CVDダイヤモンドプレート内の窒素の深さ、厚さ、及び濃度を制御することができる。更に、チャネリング等の要因は、成長したままの結晶面の方向に対して注入角度を制御することが望ましい可能性があることを意味する。即ち、前記窒素は、成長したままの成長面に対して鋭角で前記単結晶CVDダイヤモンド層の表面に注入され得る。
窒素の正確な注入深さと濃度は、最終用途におけるダイヤモンド部品の必要な特性に依存する。通常、前記窒素は、単結晶CVDダイヤモンド層の成長したままの成長面に1μm、500nm、100nm、50nm、30nm、10nm又は5nm以下の深さまで注入される。通常、注入量は少なくとも10
5N/cm
2、10
6N/cm
2、10
7N/cm
2、10
8N/cm
2、10
9N/cm
2、10
10N/cm
2、又は10
11N/cm
2、及び/又は10
14N/cm
2又は10
13N/cm
2以下になる。収率の理由のため、特定の状況においては、例えば注入中にサンプルを加熱又は冷却することによって、注入中にダイヤモンド材料の温度を制御することが望ましい場合がある。
S7.単結晶CVDダイヤモンドはアニールされて、注入窒素と空孔が互いに向かって移動し、注入窒素と空孔欠陥から窒素空孔欠陥への移動が形成される。
【0018】
単結晶CVDダイヤモンド内に形成される窒素空孔欠陥の所望の最終位置と同じ位置に、単結晶CVDダイヤモンド材料内に窒素及び空孔の供給源を作成する必要はないことに留意されたい。実際、前記単結晶CVDダイヤモンド内に形成される窒素空孔欠陥の所望の最終位置から除去された単結晶CVDダイヤモンド内の位置に窒素を注入する及び/又は空孔欠陥を作成することが望ましい場合がある。これは、注入と照射によって、ダイヤモンドの結晶構造内に、窒素空孔欠陥の近くに位置すると窒素空孔欠陥の特性に悪影響を及ぼす可能性がある損傷が生じるからである。注入や照射によって生じた損傷を除去するためにアニーリングプロセスを使用したとしても、一部の残留欠陥は残り、デコヒーレンス時間T2等の窒素空孔欠陥の特性に悪影響を与える可能性がある。例えば、ダイヤモンド材料内の、空孔欠陥を形成するために照射される場所とは異なる場所に窒素を注入することが望ましい場合がある。次いで、前記材料を加熱して、注入された窒素欠陥への空孔欠陥の拡散を引き起こし、窒素空孔欠陥が形成される領域における結晶損傷を最小限に抑えながら窒素空孔欠陥を形成することができる。更に、国際公開第2012/152617号に記載されているように、窒素空孔欠陥に電荷を与えてNV-欠陥を形成する単一置換窒素等の電荷ドナー欠陥も、ダイヤモンド材料内の窒素空孔欠陥から分離することができる。
また、イオン注入工程の前又は後のいずれかで単結晶CVDダイヤモンドを照射することによって空孔を導入できることにも留意されたい。窒素空孔欠陥は800°C付近で形成されることが知られている。従って、アニーリングは、700~900°Cの範囲の温度で少なくとも2時間、4時間、6時間、又は8時間のアニーリング工程を含む。より高い温度での処理は、NV-スピン欠陥のデコヒーレンス時間を増加させるために様々な常磁性欠陥を除去するのに有利である可能性があることも示唆される。従って、アニーリングは、1150°C~1550°Cの範囲の温度で少なくとも2時間、4時間、6時間、又は8時間の更なるアニーリング工程を含んでもよい。例えば、前記更なるアニーリング工程は、少なくとも1200°C、1300°C、又は1350°Cの温度、及び/又は1500°C、1450°C、又は1400°C以下の温度で実行することができる。更に、前述のアニーリング工程の前に、初期アニーリング工程を350°C~450°Cの範囲の温度で少なくとも2時間、4時間、6時間、または8時間実施することができる。
当然、成長したままの表面の上でCMPを使用することもできるが、十分な材料を除去して滑らかで平坦な表面を得るには、プロセスに何日もかかる場合がある。従って、多くの用途において、上述したように機械研磨やICPエッチング等の技術を用いて表面材料を除去し、その後にCMP処理を行うことが最適である。組み合わせた処理技術によって除去され得る表面材料の合計の深さは、少なくとも10nm、少なくとも50nm、少なくとも100nm、少なくとも1μm、少なくとも5μm、又は少なくとも10μmであってもよい。CMPで前記プロセスを終えることの利点は、スピン欠陥のT2値に影響を与える表面損傷が最小限に抑えられることである。
【0019】
本発明について実施形態を参照して特に図示し説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更を行うことができることが当業者には理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶CVDダイヤモンド部品であって、
表面であって、少なくとも前記表面の一部が化学機械研磨(CMP)により処理された表面と、
量子スピン欠陥の層であって、前記量子スピン欠陥の層が前記表面の500nm以内に配置される量子スピン欠陥の層と、
を含み、及び
前記単結晶CVDダイヤモンド部品が、0.5mm以上の少なくとも1つの横寸法を有する
、単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項2】
少なくとも前記表面の一部が、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングにより更に処理されている、請求項1に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項3】
少なくとも前記表面の一部が、機械研磨により更に処理されている、請求項1
に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項4】
前記量子スピン欠陥が、以下のいずれかより選択される、請求項1
に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
ケイ素含有欠陥;
ニッケル含有欠陥;
クロム含有欠陥;
ゲルマニウム含有欠陥;
スズ含有欠陥;
窒素含有欠陥
;及び
負に帯電した窒素空孔欠陥NV
‐
【請求項5】
量子スピン欠陥の濃度が、1×10
13欠陥/cm
3以上、1×10
14欠陥/cm
3以上、1×10
15欠陥/cm
3以上、1×10
16欠陥/cm
3以上、1×10
17欠陥/cm
3以上、及び1×10
18欠陥/cm
3以上より選択され
、並びに量子スピン欠陥の濃度が、4×10
18
欠陥/cm
3
以下、2×10
18
欠陥/cm
3
以下、1×10
18
欠陥/cm
3
以下、1×10
17
欠陥/cm
3
以下、及び1×10
16
欠陥/cm
3
以下より選択される、請求項1
に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項6】
前記表面が、5nm以下、2nm以下、1nm以下、又は0.5nm以下の表面粗さRaを有する、請求項1
に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項7】
300ppb以下、200ppb以下、100ppb以下、80ppb以下、60ppb以下、40ppb以下、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、又は1ppb以下の単一置換窒素濃度を有する更なる層を含み、前記層が量子スピン欠陥の層に対する表面に対して遠位に配置される、請求項1
に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項8】
前記量子スピン欠陥の層が、前記表面の500nm以内、200nm以内、100nm以内、50nm以内、30nm以内、10nm以内、又は5nm以内に配置される、請求項1
に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項9】
前記単結晶CVDダイヤモンド部品が、
1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、4.5mm以上、又は5mm以上の少なくとも1つの横寸法を有する、請求項1
に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品を含む、装置。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品の製造方法であって、以下を含む方法:
表面
及び0.5mm以上の少なくとも1つの横寸法を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供すること;
前記単結晶CVDダイヤモンドが量子スピン欠陥の層を含み、前記量子スピン欠陥の層が前記表面の500nm以内に配置されるように、化学機械研磨(CMP)を用いて前記表面の少なくとも一部を処理すること。
【請求項12】
化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングを用いて前記表面の前記一部を処理することを更に含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記単結晶CVDダイヤモンドの表面に窒素を注入すること;及び
前記単結晶CVDダイヤモンドをアニールして、前記単結晶CVDダイヤモンド内で空孔及び/又は窒素欠陥を移動させ、並びに前記注入窒素及び前記空孔欠陥より窒素空孔欠陥を形成させること;
を更に含み、
前記注入及びアニールにより、前記表面の500nm以内に配置される量子スピン欠陥の層が形成される、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、1×10
13欠陥/cm
3以上、1×10
14欠陥/cm
3以上、1×10
15欠陥/cm
3以上、1×10
16欠陥/cm
3以上、1×10
17欠陥/cm
3以上、及び1×10
18欠陥/cm
3以上のいずれかより選択される量子スピン欠陥濃度を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供することを更に含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、4×10
18欠陥/cm
3以下、2×10
18欠陥/cm
3以下、1×10
18欠陥/cm
3以下、1×10
17欠陥/cm
3以下、及び1×10
16欠陥/cm
3以下のいずれかより選択される量子スピン欠陥濃度を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供することを更に含む、請求項
14に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
本発明について実施形態を参照して特に図示し説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更を行うことができることが当業者には理解されたい。
本発明のまた別の態様は、以下の通りであってもよい。
〔1〕表面であって、少なくとも前記表面の一部が化学機械研磨(CMP)により処理された表面と、
量子スピン欠陥の層であって、前記量子スピン欠陥の層が前記表面の500nm以内に配置される量子スピン欠陥の層と、
を含む、単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔2〕 少なくとも前記表面の一部が、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングにより更に処理されている、前記〔1〕に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔3〕少なくとも前記表面の一部が、機械研磨により更に処理されている、前記〔1〕又は〔2〕に記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔4〕前記量子スピン欠陥が、以下のいずれかより選択される、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
ケイ素含有欠陥;
ニッケル含有欠陥;
クロム含有欠陥;
ゲルマニウム含有欠陥;
スズ含有欠陥;及び
窒素含有欠陥
〔5〕前記量子スピン欠陥が、負に帯電した窒素空孔欠陥NV
‐
である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔6〕量子スピン欠陥の濃度が、1×10
13
欠陥/cm
3
以上、1×10
14
欠陥/cm
3
以上、1×10
15
欠陥/cm
3
以上、1×10
16
欠陥/cm
3
以上、1×10
17
欠陥/cm
3
以上、及び1×10
18
欠陥/cm
3
以上より選択される、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔7〕量子スピン欠陥の濃度が、4×10
18
欠陥/cm
3
以下、2×10
18
欠陥/cm
3
以下、1×10
18
欠陥/cm
3
以下、1×10
17
欠陥/cm
3
以下、及び1×10
16
欠陥/cm
3
以下より選択される、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔8〕前記量子スピン欠陥が、10μ秒以上、50μ秒以上、100μ秒以上、300μ秒以上、600μ秒以上、1m秒以上、10m秒以上、100m秒以上、又は500m秒以上のHahn-echoデコヒーレンス時間T
2
を有する、前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔9〕前記表面が、5nm以下、2nm以下、1nm以下、又は0.5nm以下の表面粗さRaを有する、前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔10〕300ppb以下、200ppb以下、100ppb以下、80ppb以下、60ppb以下、40ppb以下、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、又は1ppb以下の単一置換窒素濃度を有する更なる層を含み、前記層が量子スピン欠陥の層に対する表面に対して遠位に配置される、前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔11〕前記量子スピン欠陥の層が、前記表面の500nm以内、200nm以内、100nm以内、50nm以内、30nm以内、10nm以内、又は5nm以内に配置される、前記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔12〕前記量子スピン欠陥の層厚が、200nm以下、100nm以下、50nm以下、30nm以下、10nm以下、又は5nm以下である、前記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔13〕前記単結晶CVDダイヤモンド部品が、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、4.5mm以上、又は5mm以上の少なくとも1つの横寸法を有する、前記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品。
〔14〕前記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品を含む、装置。
〔15〕前記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の単結晶CVDダイヤモンド部品の製造方法であって、以下を含む方法:
表面を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供すること;
前記単結晶CVDダイヤモンドが量子スピン欠陥の層を含み、前記量子スピン欠陥の層が前記表面の500nm以内に配置されるように、化学機械研磨(CMP)を用いて前記表面の少なくとも一部を処理すること。
〔16〕化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングを用いて前記表面の前記一部を処理することを更に含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、機械研磨を用いて前記表面の前記一部を処理することを更に含む、前記〔15〕又は〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記単結晶CVDダイヤモンドの表面に窒素を注入すること;及び
前記単結晶CVDダイヤモンドをアニールして、前記単結晶CVDダイヤモンド内で空孔及び/又は窒素欠陥を移動させ、並びに前記注入窒素及び前記空孔欠陥より窒素空孔欠陥を形成させること;
を更に含み、
前記注入及びアニールにより、前記表面の500nm以内に配置される量子スピン欠陥の層が形成される、前記〔15〕~〔17〕のいずれかに記載の方法。
〔19〕前記注入及びアニールの前に、前記単結晶CVDダイヤモンドが300ppb以下、200ppb以下、100ppb以下、80ppb以下、60ppb以下、40ppb以下、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、又は1ppb以下の単一置換窒素濃度を有する、前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、1×10
13
欠陥/cm
3
以上、1×10
14
欠陥/cm
3
以上、1×10
15
欠陥/cm
3
以上、1×10
16
欠陥/cm
3
以上、1×10
17
欠陥/cm
3
以上、及び1×10
18
欠陥/cm
3
以上のいずれかより選択される量子スピン欠陥濃度を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供することを更に含む、前記〔15〕~〔17〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕化学機械研磨を用いて前記表面の少なくとも一部を処理する前に、4×10
18
欠陥/cm
3
以下、2×10
18
欠陥/cm
3
以下、1×10
18
欠陥/cm
3
以下、1×10
17
欠陥/cm
3
以下、及び1×10
16
欠陥/cm
3
以下のいずれかより選択される量子スピン欠陥濃度を有する単結晶CVDダイヤモンドを提供することを更に含む、前記〔20〕に記載の方法。
【国際調査報告】