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特表2024-523718組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法及びそのためのベクターライブラリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法及びそのためのベクターライブラリー
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240621BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500344
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 KR2022009016
(87)【国際公開番号】W WO2023282510
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088575
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519038714
【氏名又は名称】エスケー バイオサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ、キ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、テ ウ
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ソ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミン チュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、クン セ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョン チュ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
(57)【要約】
本出願は、組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法、及びそのためのベクターライブラリーに係り、RNA重合酵素が導入された細胞株、及び一様相による発現ベクターライブラリーを使用した組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法、該方法によって製造された組み換えレオウイルス科ウイルス、及び再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリーを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNA重合酵素(RNA polymerase)遺伝子が導入された第1細胞株を、外来遺伝子が含まれた発現ベクターライブラリーに形質感染させる段階と、
前記形質感染された第1細胞株を成長培地で培養し、第1培養物を培養する段階と、
前記培養された第1培養物に第2細胞株を添加し、第2培養物を培養する段階と、
前記培養された第2培養物にトリプシンを添加し、第3培養物を培養する段階と、を含み、
前記発現ベクターライブラリーは、レオウイルス科ウイルスの遺伝子分節cDNA、及び前記RNA重合酵素に結合しうるプローモーターを含むものである、組み換えレオウイルス科(Reoviridae)ウイルスを製造する方法。
【請求項2】
前記レオウイルス科ウイルスは、ロタウイルス(Rotavirus)属、カードレオウイルス(Cardoreovirus)属、ミロレオウイルス(Mimoreovirus)属、オルビウイルス(Orbivirus)属、ファイトレオウイルス(Phytoreovirus)属、シードルナウイルス(Seadornavirus)属、アクアレオウイルス(Aquareovirus)属、コルチウイルス(Coltivirus)属、サイポウイルス(Cypovirus)属、ディノベルナウイルス(Dinovernavirus)属、フィジウイルス(Fijivirus)属、イドノレオウイルス(Idnoreovirus)属、マイコレオウイルス(Mycoreovirus)属、オルトレオウイルス(Orthoreovirus)属、及びオリザウイルス(Oryzavirus)によってなる群のうちから選択されるいずれか1つのウイルスである、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項3】
前記RNA重合酵素は、T7 RNA重合酵素、T3 RNA重合酵素、SP6 RNA重合酵素またはミトコンドリア重合酵素(POLRMT)である、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項4】
前記第1細胞株は、BHK21細胞株、HEK293細胞株、HeLa細胞株、CHO細胞株、LNCaP細胞株、A549細胞株またはhepG2細胞株である、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項5】
前記第2細胞株は、MA104細胞株、Vero細胞株、HEK細胞株、ヒト腸上皮細胞、HT-29細胞株、Caco2細胞株、LLC-MK2細胞株、FRhL-2細胞株、CV-1細胞株、COS-7細胞株、BSC-1細胞株またはBGM細胞株である、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項6】
前記第2培養物を培養する段階において、前記第2細胞株は、形質感染後、6時間ないし12時間が経過された時点において、第1培養物に添加する、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項7】
前記第3培養物を培養する段階において、前記トリプシンは、形質感染後、36時間ないし48時間経過された時点において、第2培養物に添加する、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項8】
前記トリプシンは、0.1μg/mlないし1μg/mlの濃度で添加する、請求項1に記載の 組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項9】
前記プローモーターは、T7プローモーター、Sp6プローモーターまたはCMVプローモーターである、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項10】
前記発現ベクターライブラリーの総DNA重量は、1X10ないし1X10細胞数当たり1μgないし20μgである、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項11】
前記発現ベクターライブラリーは、キャッピング酵素をコーディングするD1RまたはD12Lに係わる発現ベクターを追加して含む、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項12】
前記成長培地がウシ胎児血清(FBS)が添加された成長培地である場合、前記第3培養物を培養する段階に先立ち、ウシ胎児血清(FBS)が添加されていない培養培地で替える段階を追加して含む、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項13】
前記成長培地は、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)、EMEM(Eagle's Minimum Essential Medium)またはGMEM(Glasgow Minimum Essential Medium)である、請求項1に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項14】
前記ウシ胎児血清(FBS)が添加されていない培養培地で替える段階は、形質感染後、20時間が経過した時点で遂行する、請求項12に記載の組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法。
【請求項15】
請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載の方法によって製造された、組み換えレオウイルス科ウイルス。
【請求項16】
T7 RNA重合酵素に結合しうるT7プローモーター、及び前記プローモーターに作動自在に連結されたロタウイルス遺伝子分節cDNAを含む複数個の発現ベクターを含み、
前記発現ベクターは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5のうちいずれか1つの遺伝子分節cDNAを含む、再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリー。
【請求項17】
前記再配列ロタウイルスは、G1、G2、G3、G4、G9及びP1のうちいずれか1つの血清型を有し、
前記ロタウイルス遺伝子分節cDNAにおいて、前記VP4遺伝子分節cDNAは、配列番号5または6の塩基配列を含み、かつ前記VP7遺伝子分節cDNAは、配列番号8,9,10,11,12または13の塩基配列を含む、請求項16に記載の再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリー。
【請求項18】
前記ロタウイルス遺伝子分節cDNAにおいて、前記VP1遺伝子分節cDNAは、配列番号1の塩基配列を含み、
前記VP2遺伝子分節cDNAは、配列番号2の塩基配列を含み、
前記VP3遺伝子分節cDNAは、配列番号3または4の塩基配列を含み、
前記VP6遺伝子分節cDNAは、配列番号7の塩基配列を含み、
前記NSP1遺伝子分節cDNAは、配列番号14の塩基配列を含み、
前記NSP2遺伝子分節cDNAは、配列番号15の塩基配列を含み、
前記NSP3遺伝子分節cDNAは、配列番号16の塩基配列を含み、
前記NSP4遺伝子分節cDNAは、配列番号17の塩基配列を含み、または
前記NSP5遺伝子分節cDNAは、配列番号18の塩基配列を含む、請求項17に記載の再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリー。
【請求項19】
前記発現ベクターライブラリーは、前記遺伝子分節cDNAに測接された(flanked)リボザイム暗号化配列を追加して含む発現カセットを含む、請求項16に記載の再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリー。
【請求項20】
前記ベクターは、プラスミドである、請求項19に記載の再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリー。
【請求項21】
前記発現ベクターライブラリーは、配列番号19の塩基配列によってなるVP1遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、
配列番号20の塩基配列によってなるVP2遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、
配列番号21または22の塩基配列によってなるVP3遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、
配列番号23または24の塩基配列によってなるVP4遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、
配列番号25の塩基配列によってなるVP6遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、
配列番号26,27,28,29,30または31の塩基配列によってなるVP7遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、
配列番号32の塩基配列によってなるNSP1遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、
配列番号33の塩基配列によってなるNSP2遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、
配列番号34の塩基配列によってなるNSP3遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、
配列番号35の塩基配列によってなるNSP4遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、及び
配列番号36の塩基配列によってなるNSP5遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミドと、によってなる群のうちから選択される少なくともいずれか1以上のプラスミドを含む、請求項19に記載の再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリー。
【請求項22】
前記発現ベクターライブラリーは、配列番号55の塩基配列によってなる、D1Rの発現のためのプラスミドと、
配列番号56の塩基配列によってなる、D12Lの発現のためのプラスミドと、を追加して含む、請求項21に記載の再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリー。
【請求項23】
前記ロタウイルス発現ベクターライブラリーの総DNA重量は、1X10ないし1X10細胞数当たり、1μgないし20μgである、請求項21に記載の再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリー。
【請求項24】
前記NSP2遺伝子分節cDNAまたは前記NSP5遺伝子分節cDNAを含むプラスミドと、前記VP1,VP2,VP3,VP4,VP6,VP7,NSP1,NSP3またはNSP4遺伝子分節cDNAを含むプラスミドとのモル比は、4:1ないし6:1である、請求項21に記載の再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法、及びそのためのベクターライブラリーに関する。本出願は、2021年7月6日に出願された大韓民国特許出願第10-2021-0088575号を優先権として主張し、前記特許出願の開示事項は、本明細書に参照として挿入される。
【背景技術】
【0002】
レオウイルス科(Reoviridae)ウイルスは、二本鎖RNAをゲノムとして有するウイルス系のうち一つであり、それらの遺伝体分節は、多層のカプシド内にパッケージ化されており、脂質を含む外皮を含んでいない状態で、約70~85nmサイズの多面体形態を有する。前記レオウイルス科は、セドレオウイルス亜科(Sedoreovirinae)、スピナレオウイルス亜科(Spinareovirinae)に分類され、それらの感染は、主に、消化器または呼吸器に影響を及ぼす。ロタウイルス(HRV:Human Rotavirus)は、幼児において下痢を誘発する主要ウイルスであり、韓国を始めとして、全世界の5歳以下小児95%が、少なくとも一回以上感染され、全世界的に毎年発生する下痢患者の約40%を占めると知られている。ロタウイルス感染症は、ロタウイルスによる顕性感染によるものであり、大便から口に感染されるのが主要伝播経路であり、約24~72時間の潜伏期を有する。嘔吐及び発熱、血が混じっていない水下痢をもたらし、脱水症を起こしうる疾病であり、主に、幼児や児童において発生する疾患であるが、時折高齢者病棟などにおいて、集団発病が起きたりする。
【0003】
ロタウイルスは、11個のdsRNA分節によって構成された遺伝体を有しており、被膜がなく、直径約75nmの正20面体形態であり、外部カプシド、内部カプシド、及びコアタンパク質の3重層タンパク質カプシドによって構成されている。それぞれの分節は、6個の構造タンパク質(VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7)と、5個の非構造タンパク質とのうちいずれか一つを暗号化している。前記ロタウイルスは、A群からH群まで8個の種類に分けられ、ヒトは、主に、A群、B群、C群による感染、特に、A群による感染が普遍的である。前記A群ロタウイルスは、VP4タンパク質とVP7タンパク質とにより、P血清型(serotype)またはG血清型に分類され、具体的には、プロテアーゼ感受性タンパク質であるVP4は、P血清型を決定し、糖タンパク質であるVP7は、G血清型を決定し、それらの組み合わせにより、ロタウイルスの血清型が決定される。前記血清型に係わる遺伝子は、別途に子孫ウイルスに伝達されるので、多様な形態の組み合わせが生じ、特に、そのような多様な形態の組み合わせを有するロタウイルスそれぞれの血清型は、交差防御がなされない特性を有する。
【0004】
そのような血清型間交差防御がなされないロタウイルスの特性により、各血清型に係わる感染を保護することができる効果的なロタウイルスワクチンの開発が要求されてきた。今までのところ、経口用弱毒化生ワクチンと、動物・ヒト組み換えワクチンとを使用したが、他の血清型の感染に対して十分な防御能を示すことができないでいる。米国・ワイス・アイヤスト(Wyeth-Ayerst)社で開発したRotashieldは、発生率が最も高いG血清型(G1~G4)を混合した四価弱毒化生ワクチンであり、FDA承認を受け、基本接種に含まれたが、腸重積症患者が生じ、使用が中断された。それにより、ロタウイルス感染に対するワクチンの素材として、自然/人工的に発生/製造された再配列ロタウイルス(reassortant rotavirus)(ウイルス様粒子を含む)に対する関心が増大している実情である。
【0005】
なお、再配列ロタウイルスは、1つの細胞にさまざまな株(strain)のウイルスが同時感染される場合、互いに異なる株(strain)のRNA分節が組み合わされて生成されたウイルスであり、自然界においても、自発的に生成されうるが、その発生確率が非常に低く、たとえ再配列が生じるとしても、野生型ウイルスに比べ、非常に弱毒化されており、それを分離するのに困難さが伴う。また、人工的に培養された1つの細胞に、ウシ(bovine)ロタウイルス及びヒトロタウイルスを同時に感染させる方式によっても、再配列ロタウイルスを製造しうるが、それも、野生型ウイルスに比べ、生成される量が非常に少なく、弱毒化されており、選択圧(selective pressure)を加えなければ、継代が進むほど、だんだんとさらに比率が低下することになり、所望する再配列ロタウイルスを分離して回収するのが非常に困難であるという短所がある。そのような問題点を解決するために、交替させようとする遺伝子のタンパク質に、特異的な中和抗体を使用し、再配列ロタウイルスを選別する過程をさらに導入しているが、前述の機能性を有する単クローン中和抗体の確保が先決的に解決されなければならないという点、及び全ての血清型それぞれに対する別途の選別過程が必要であるという点において、技術的限界がある。
【0006】
そのような技術的背景下において、ロタウイルスを含むレオウイルス科ウイルスに対するワクチン開発の一環として、再配列ウイルスを効率的に製造するための多角的な研究が進められている(特許文献1)が、まだ不十分である実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2019-0108882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一態様は、RNA重合酵素遺伝子が導入された細胞株、及び一様相によるロタウイルス発現ベクターライブラリーを使用した組み換えレオウイルス科(Reoviridae)ウイルスを製造する方法を提供するものである。
【0009】
他の態様は、前記方法によって製造された組み換えレオウイルス科ウイルス、及びそれを含む免疫原性組成物を提供するものである。
【0010】
さらに他の態様は、再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリーを提供するものである。
【0011】
本出願のそれ以外の目的及び利点は、添付された特許請求の範囲、及び図面と共に、下記の詳細な説明によってさらに明確になるであろう。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野、または類似の技術分野における熟練された者であるならば、十分に認識して類推しうるものであるので、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様は、RNA重合酵素(RNApolymerase)遺伝子が導入された第1細胞株を、外来遺伝子が含まれた発現ベクターライブラリーに形質感染させる段階と、前記形質感染された第1細胞株を成長培地で培養し、第1培養物を培養する段階と、前記培養された第1培養物に第2細胞株を添加し、第2培養物を培養する段階と、前記培養された第2培養物にトリプシンを添加し、第3培養物を培養する段階と、を含み、前記発現ベクターライブラリーは、レオウイルス科ウイルス遺伝子分節cDNA、及び前記RNA重合酵素に結合しうるプローモーターを含むものである、組み換えレオウイルス科(Reoviridae)ウイルスを製造する方法を提供する。
【0013】
本明細書において、用語「レオウイルス科(Reoviridae)ウイルス」は、二本鎖RNAをゲノムとして有するウイルス系のうち一つであり、それらの遺伝体分節は、多層のカプシド内にパッケージ化されており、脂質を含む外皮を含んでいない状態において、約70~85nmサイズの多面体形態を有する。前記レオウイルス科ウイルスは、例えば、ロタウイルス(Rotavirus)属、カードレオウイルス(Cardoreovirus)属、ミロレオウイルス(Mimoreovirus)属、オルビウイルス(Orbivirus)属、ファイトレオウイルス(Phytoreovirus)属、シードルナウイルス(Seadornavirus)属、アクアレオウイルス(Aquareovirus)属、コルチウイルス(Coltivirus)属、サイポウイルス(Cypovirus)属、ディノベルナウイルス(Dinovernavirus)属、フィジウイルス(Fijivirus)属、イドノレオウイルス(Idnoreovirus)属、マイコレオウイルス(Mycoreovirus)属、オルトレオウイルス(Orthoreovirus)属及びオリザウイルス(Oryzavirus)によってなる群のうちから選択されるいずれか一つでもあり、例えば、ロタウイルス属、レオウイルス属、オルビウイルス属またはコルチウイルス属のウイルスでもあり、例えば、ロタウイルスでもある。
【0014】
前記レオウイルス科ウイルスは、細胞質において増殖され、細胞破壊と共に放出され、ヒト、魚類、昆虫及び植物のような多様な宿主に感染を引き起こし、それらウイルスのうちでも、ロタウイルス属、レオウイルス属、オルビウイルス属またはコルチウイルス属のウイルスが、ヒトに影響を及ぼすと知られている。それにより、レオウイルス科ウイルスの感染を予防するためのワクチン組成物、具体的には、生ワクチンを製造するための多様な研究が進められているが、二本鎖のRNAゲノムが複数個分節に分けられている遺伝学的特性、及び多様な血清型の存在により、困難がある実情である。なお、合成されたviral RNA分節それぞれを細胞に直接伝達して製造する従来方式は、RNA自体の不安定性、及びそれによる細胞内伝達の難易性により、複数の遺伝子分節によって構成されるレオウイルス科ウイルスの製造に適用するのに無理がある。また、プラスミドDNAを介する製造方式は、宿主細胞の転写、及びRNA変形メカニズムを利用するものであり、細胞核へのさらなる移入過程による伝達効率の低下、宿主細胞内における限定された量の重合酵素存在によるプローモーター間競争反応に始まる転写効率の低下のような問題点が存在する。そのような技術的背景下において、本発明は、従来のそのような問題点を解消するためのものであり、T7 RNA重合酵素を安定して発現する細胞株、及び一様相による発現ベクターライブラリーなどを使用することにより、組み換えレオウイルス科ウイルスを収得/製造しうることを確認し、それに基づいて本発明の完成に至った。
【0015】
前記組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法について、それぞれの段階別に詳細に説明すれば、次の通りである。
【0016】
まず、前記方法は、RNA重合酵素(RNA polymerase)遺伝子が導入された第1細胞株を、外来遺伝子が含まれた発現ベクターライブラリーに形質感染させる段階を含むものでもある。
【0017】
本明細書において、用語「RNA重合酵素(RNA polymerase)」は、DNAから、一次転写体(primary transcript)RNAを合成する酵素を称する。前記RNA重合酵素としては、例えば、T7 RNA重合酵素、T3 RNA重合酵素、SP6 RNA重合酵素またはミトコンドリア重合酵素(POLRMT)でもあり、具体的には、細胞質において作用するRNA重合酵素であり、さらに具体的には、T7 RNA重合酵素でもある。前記T7 RNA重合酵素(T7 RNA polymerase)は、バクテリオファージT7の遺伝子産物であり、前記T7 RNA重合酵素は、他のRNA重合酵素と異なり、核ではない細胞質(cytosol)において作用するために、細胞核へのさらなる移入過程が不要であり、それと共に、前記T7 RNA重合酵素は、優秀な転写効率を示すので、複数個の遺伝子分節によって構成されるレオウイルス科ウイルスそれぞれのcDNAプラスミドに対する同時的な転写が可能である。
【0018】
本明細書において、用語「発現ベクターライブラリー(expression vector library)」は、複数個のレオウイルス科ウイルス遺伝子分節に係わる独立した発現ベクターの集合物であり、例えば、前記発現ベクターライブラリーが、ロタウイルスの発現のためのものである場合、前記発現ベクターライブラリーは、VP1,VP2,VP3,VP4,VP6,VP7,NSP1,NSP2,NSP3,NSP4及びNSP5遺伝子分節を発現するためのものでもある。例えば、前記ロタウイルス発現ベクターライブラリーは、前記遺伝子分節ごとに、いずれか一つずつ選択され、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5に係わる総11種の発現ベクターの組み合わせを称するものでもあり、前記発現ベクターそれぞれは、RNA重合酵素に結合しうるプローモーター、及びロタウイルス遺伝子分節cDNAを含むものでもある。
【0019】
本明細書において、用語「形質感染(transfection)」は、精製されたウイルス核酸やプラスミドを真核細胞に導入することを称するものであり、例えば、前記形質感染は、RNA重合酵素、例えば、T7 RNA重合酵素遺伝子が細胞内に挿入/導入されるか、あるいはレオウイルス科ウイルス分節遺伝子が細胞内に挿入/導入されることを含むものでもある。
【0020】
一具体例において、前記第1細胞株は、RNA重合酵素、及び外来遺伝子が遺伝的に導入された細胞株であり、BHK21細胞株、HEK293細胞株、HeLa細胞株、CHO細胞株、LNCaP細胞株、A549細胞株またはhepG2細胞株でもあり、例えば、RNA重合酵素が発現されたBHK21細胞株でもある。ここで、用語「外来遺伝子」は、再配列しようとするレオウイルス科ウイルスの遺伝子、具体的には、レオウイルス科ウイルス遺伝子分節cDNAを称するものであり、前記遺伝子分節cDNAそれぞれは、同一の個体、または異種の個体から分離/収得されるものでもある。例えば、前記第1細胞株は、構成的プローモーター(constitutive promoter)、及びそれと作動自在に連結されたT7 RNA重合酵素遺伝子が含まれた発現ベクターを、BHK21細胞株に導入した後、前記細胞株を対象に、高発現細胞株を選別する方式によって製造されうるが、それに制限されるものではない。
【0021】
一具体例において、前記発現ベクターライブラリーの総DNA重量は、1×10ないし1×10細胞数当たり1μgないし20μgでもあり、例えば、1μgないし17μg、1μgないし14μg、1μgないし11μg、1μgないし8μg、1μgないし5μg、1μgないし2μg、5μgないし20μg、5μgないし17μg、5μgないし14μg、5μgないし11μg、5μgないし8μg、10μgないし20μg、10μgないし17μg、10μgないし14μg、または10μgないし11μgでもある。前記範囲を外れ、総DNA重量が過度に軽いか、あるいは重い場合、レオウイルス科ウイルスの遺伝的特性上、目的とする再配列ウイルスの収得量が格段に減少するか、あるいは全く収得されないのである。
【0022】
一具体例において、前記発現ベクターライブラリーは、前記RNA重合酵素に結合しうるプローモーターを含むものでもあり、例えば、T7プローモーター、Sp6プローモーターまたはCMVプローモーターでもある。
【0023】
一具体例において、前記発現ベクターライブラリーは、キャッピング酵素をコーディングするD1RまたはD12Lに係わる発現ベクターを追加して含むものでもある。例えば、前記T7 RNA重合酵素によって細胞質において転写されたRNAは、キャッピングとポリアデニレーションとが進められてない状態であるので、それらの安定性を増進させるために、前記発現ベクターを、選択的にレオウイルス科ウイルス発現ベクターライブラリーに追加しうる。ただし、ロタウイルスの場合には、VP3の存在により、前述の発現ベクターは、選択的に含まれるものでもあり、それと同様に、それ以外のレオウイルス科ウイルスにおいても、D1RまたはD12Lに係わる発現ベクターは、選択的に含まれるものでもある。ここで、前記D1Rまたは前記D12Lに係わる発現ベクターと、レオウイルス科ウイルス遺伝子分節に係わる発現ベクターとのモル比は1:4ないし1:6日ことがあって、例えば、前記発現ベクター間のモル比は、1:4ないし1:5.5、1:4ないし1:5.0、1:4ないし1:4.5、1:4.5ないし1:6.0、1:4.5ないし1:5.5、1:4.5ないし1:5.0、1:5.0ないし1:6.0、または1:5.0ないし1:5.5でもあるが、前述の転写されたRNAの安定性を維持させることができる範囲であるならば、それらに制限されるものではない。
【0024】
その後、前記方法は、前記形質感染された第1細胞株を成長培地で培養し、第1培養物を培養する段階を含むものでもある。
【0025】
一具体例において、前記成長培地は、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)、EMEM(Eagle's Minimum Essential Medium)またはGMEM(Glasgow Minimum Essential Medium)でもあり、前記成長培地は、選択的に、ウシ胎児血清(FBS)が添加されたものでもある。もし該ウシ胎児血清(FBS)が添加された成長培地を使用する場合、後続段階として、該ウシ胎児血清(FBS)が添加されていない培地に替える段階を追加して含むものでもある。
【0026】
一具体例において、前記培地を替える段階は、後続段階である第3培養物を培養する段階に先立って遂行されるものでもあり、前掲段階は、例えば、形質感染後、20時間が経過した時点、具体的には、形質感染後、20時間ないし24時間のうちいずれか一つ、形質感染後、24時間ないし28時間のうちいずれか一つ、または、28時間ないし32時間のうちいずれか1つの時点において遂行するものでもある。
【0027】
前記培養する段階は、30℃ないし38℃、例えば、30℃ないし36℃、30℃ないし34℃、30℃ないし32℃、32℃ないし38℃、32℃ないし36℃、32℃ないし34℃、34℃ないし38℃、34℃ないし36℃、または36℃ないし38℃の条件で、1ないし4時間、例えば、1ないし3時間、1ないし2時間、2ないし4時間、2ないし3時間、または3ないし4時間の間培養するものでもある。
【0028】
その後、前記方法は、前記培養された第1培養物に第2細胞株を添加し、第2培養物を培養する段階を含むものでもある。
【0029】
本明細書において、用語「第1培養物」は、前述の形質感染された第1細胞株を成長培地で培養する段階を介して得られた産物を称するものであり、前述の形質感染された細胞株、及び成長培地成分を含むものでもある。
【0030】
本明細書において、用語「第2培養物」は、前述の形質感染された第1細胞株を成長培地で培養する段階を介して得られた産物、すなわち、第1培養物に第2細胞株を添加した物質を称するものであり、形質感染された細胞株、成長培地成分、及び第2細胞株を含むものでもある。
【0031】
一具体例において、前記第2細胞株は、前記製造された組み換えレオウイルス科ウイルスの増殖/増幅を促進させるためのものであり、例えば、MA104細胞株、Vero細胞株、HEK細胞株、ヒト腸上皮細胞、HT-29細胞株、Caco2細胞株、LLC-MK2細胞株、FRhL-2細胞株、CV-1細胞株、COS-7細胞株、BSC-1細胞株またはBGM細胞株でもあり、例えば、サル腎臓細胞株であるMA104細胞株でもある。
【0032】
前記第2培養物を培養する段階は、形質感染された細胞から生成された組み換えレオウイルス科ウイルスの増幅を誘導するための段階であり、前記形質感染された細胞株を、レオウイルス科ウイルスに対する感受性と複製能とにすぐれる第2細胞株と共に培養することにより、一次的に、少量生成された再配列ロタウイルスが増幅されるようにすることができる。ここで、前記第2細胞株は、1×10ないし3×10細胞/ウェルの濃度、例えば、1×10ないし3×10細胞/ウェル、1×10ないし3×10細胞/ウェル、1×10ないし3×10細胞/ウェル、1×10ないし3×10細胞/ウェル、3×10ないし3×10細胞/ウェル、3×10ないし3×10細胞/ウェル、3×10ないし3×10細胞/ウェル、または3×10ないし3×10細胞/ウェルの濃度に添加されるものでもある。
【0033】
一具体例において、前記第2培養物を培養する段階において、前記第2細胞株は、形質感染後、6時間ないし12時間が経過された時点、例えば、形質感染後、6時間ないし8時間のうちいずれか一つ、形質感染後、8時間ないし10時間のうちいずれか一つ、形質感染後、10時間ないし12時間のうちいずれか一つ、形質感染後、12時間ないし14時間のうちいずれか一つ、または形質感染後、14時間ないし18時間のうちいずれか1つの時点において、第1培養物に添加され、前記範囲を外れ、添加される時点が過度に早いか、あるいは遅い場合、レオウイルス科ウイルスの遺伝的特性上、目的とする再配列ウイルスの収得量が格段に減少するか、あるいは全く収得されないのである。
【0034】
前記第2培養物を培養する段階は、30℃ないし38℃、例えば、30℃ないし36℃、30℃ないし34℃、30℃ないし32℃、32℃ないし38℃、32℃ないし36℃、32℃ないし34℃、34℃ないし38℃、34℃ないし36℃、36℃ないし38℃の条件で、24ないし36時間、例えば、24ないし32時間、24ないし28時間、28ないし36時間、28ないし32時間、または32ないし36時間の間培養するものでもある。
【0035】
その後、前記方法は、前記培養された第2培養物にトリプシンを添加し、第3培養物を培養する段階を含むものでもある。
【0036】
本明細書において、用語「第3培養物」は、第2培養物を培養する段階を介して得られた産物に、トリプシンを添加した物質を称するものであり、前述の形質感染された第1細胞株、第2細胞株、ウシ胎児血清(FBS)が含まれていない培地成分、及び適正量のトリプシンを含むものでもある。
【0037】
前記第3培養物を培養する段階は、組み換えレオウイルス科ウイルスの再感染を誘導するための段階であり、前述の培地にトリプシンを添加して培養することにより、少量の組み換えレオウイルス科ウイルスが、第2細胞株に再感染されるようにすることができる。ここで、前記トリプシンは、0.1μg/mlないし1μg/mlの濃度、例えば、0.1μg/mlないし0.8μg/ml、0.1μg/mlないし0.6μg/ml、0.1μg/mlないし0.4μg/ml、0.1μg/mlないし0.2μg/ml、0.3μg/mlないし1μg/ml、0.3μg/mlないし0.8μg/ml、0.3μg/mlないし0.6μg/ml、または0.3μg/mlないし0.4μg/mlの濃度に添加されるものでもある。
【0038】
一具体例において、前記第3培養物を培養する段階において、前記トリプシンは、形質感染後、36時間ないし54時間経過された時点、例えば、形質感染後、36時間ないし48時間経過された時点、例えば、形質感染後、36時間ないし42時間、形質感染後、42時間ないし48時間、または形質感染後、48時間ないし54時間のうちいずれか1つの時点において、第2培養物に添加されうる。前記範囲を外れ、添加される時点が過度に早い場合、前記細胞株がプレートから早い時点に分離される憂いがあり、添加される時点が過度に遅い場合、レオウイルス科ウイルスの遺伝的特性上、目的とする再配列ウイルスの収得量が格段に減少するか、あるいは全く収得されないのである。
【0039】
前記第3培養物を培養する段階は、48時間ないし84時間の間、例えば、48時間ないし72時間、48時間ないし60時間、60時間ないし84時間、60時間ないし72時間、または72時間ないし84時間の間培養するものでもあり、前述のように培養された培養物から、公知された方法を介し、組み換えレオウイルス科ウイルスを得る段階を追加して遂行しうる。
【0040】
一態様による方法によれば、前述の一連の方法を介して製造された組み換えレオウイルス科ウイルスは、発現ベクターライブラリーにより、選択的に、いずれか1つの血清型、またはその組み合わせを有するものでもあり、別途の選別過程なしにも、有効な量の再配列ウイルスを製造しうる。
【0041】
他の態様は、前記方法によって製造された組み換えレオウイルス科ウイルス、及びそれを含む免疫原性組成物を提供する。
【0042】
下記の組み換えレオウイルス科ウイルス及び免疫原性組成物について言及される用語または要素のうち、前述の製造する方法に係わる説明で言及されたようなところは、前述の通りである。
【0043】
本明細書において、用語「免疫原性」は、特定病原体に対して免疫反応を誘発させる組成物の能力を意味し、前記免疫反応は、細胞毒性T細胞及びサイトカイン生成T細胞により、主に媒介される細胞免疫反応、またはヘルパーT細胞によって主に媒介された後、B細胞を活性化させ、抗体を生成させる体液免疫反応でもある。
【0044】
前記免疫原性組成物は、1以上の担体、薬剤学的に許容される安定化剤、及び補助剤と配合された変形された生ウイルスを含むものでもある。使用するのに適する担体としては、塩水、リン酸塩緩衝された塩水、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、グルタミン酸ナトリウム、最小必須培地(MEM:minimal essential medium)、またはMEMとHEPESとの緩衝剤を含むものでもある。前記安定化剤は、特に、凍結乾燥工程の間、及びコールドチェーン(cold chain)から短期間運送されうるに十分な期間の間、冷蔵温度及び室温における、凍結乾燥された生成物の長期間保管の間、ウイルスの生存力及び感染性を保全させるのに寄与し、例えば、ヒト血清アルブミン、及び/あるいはコラーゲン、または加水分解されたコラーゲン、あるいはゼラチン、または加水分解されたゼラチンから選択されるタンパク質安定化剤、またはスクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストランから選択される糖安定化剤を追加して含むものでもある。また、ウイルスの免疫原性を増進させ、単一投与でもって、保護免疫を誘導する補助剤を含むものでもあり、さらには、ラクトース、スクロース、マンニトール、トレハロースなどによってなる群のうちから選択されるバルキング剤を含むものでもある。それ以外にも、ウイルス生ワクチンの製剤化と関連する公知の成分を追加して含むものでもある。
【0045】
前記免疫原性組成物は、当業界に知られた任意の形態、例えば、液剤及び注射剤の形態でもあるが、それらに制限されるものではない。該液剤または該注射剤の場合、必要時、10~40%のプロピレングリコール、及び溶血現象を防止するのに十分な量(例:約1%)の塩化ナトリウムを含むものでもある。前記液剤または前記注射剤には、当業界に知られた任意の希釈剤または緩衝剤が含まれるものでもある。また、前記免疫原性組成物は、組み換えレオウイルス科ウイルスをバイアルのような容器に保存し、使用前、注射剤に必要な担体またはアジュバント、食塩水などを付加することにより、使用直前に調製されもする。
【0046】
さらに他の態様は、T7 RNA重合酵素に結合しうるT7プローモーター、及び前記プローモーターに作動自在に連結されたロタウイルス遺伝子分節cDNAを含む複数個の発現ベクターを含み、前記発現ベクターは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5のうちいずれか1つの遺伝子分節cDNAを含むものである、再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリーを提供する。
【0047】
下記再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリーに言及された用語または要素のうち、前述の製造する方法に係わる説明で言及されたようなものは、前述の通りである。
【0048】
本明細書において、用語「再配列ロタウイルス(reassortant rotavirus)」は、ロタウイルスを構成する11個のdsRNA分節が、2以上の起源から組み合わされて形成されたウイルスを称するものであり、用語「再分類ロタウイルス」または用語「人工組み換えロタウイルス」と相互交換的に使用されうる。前記再配列ロタウイルスのdsRNA分節は、6個の構造タンパク質(VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7)と、5個の非構造タンパク質(NSP1、NSP2、NSP3、NSP4、NSP5)とによって構成される。具体的には、VP1は、ウイルス粒子のコア内に存在するRNA重合酵素であり、RNA分節の複製に使用されるmRNAを合成し、VP2は、ウイルス粒子のコアを形成し、VP3は、グアニル酸伝達酵素であり、mRNAの転写後、変形によって生ずる5’キャップの付加反応を触媒し、mRNA安定化に寄与すると知られている。また、VP4は、ウイルス表面に存在する外皮タンパク質であり、ウイルスの細胞侵入に関与し、P血清型を決定する役割を行う。また、VP6は、カプシドの主成分であり、高い抗原性を示し、VP7は、ウイルス表面に存在する外皮タンパク質であり、G血清型を決定する役割を行うと知られている。
【0049】
本明細書において、用語「ベクター」は、適切な宿主細胞において、目的タンパク質を発現させる遺伝子作製物であり、遺伝子挿入物が発現されるように、作動自在に連結された調節要素を含む遺伝子作製物を称する。一実施例によるベクターは、プローモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル及び/またはエンハンサーのような発現調節要素を含むものでもあり、ベクターのプローモーターは、構成的または誘導性でもある。また、前記ベクターは、宿主細胞内において、安定して目的物質を発現させることができる発現用ベクターでもある。前記発現用ベクターは、当業界において、植物、動物または微生物において、外来のタンパク質を発現するところに使用される通常のものを使用することができる。前記組み換えベクターは、当業界に公知された多様な方法を介して構築されうる。例えば、前記ベクターは、ベクターを含む宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含み、複製可能なベクターである場合、複製起源を含むものでもある。また、該ベクターは、自己複製したり、宿主DNAに導入されたりすることができ、前記ベクターは、プラスミド、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス及びワクシニアウイルスによって構成される群のうちから選択されるものでもある。
【0050】
前記ベクターは、RNA重合酵素に結合しうるプローモーターを含むものでもあり、例えば、T7プローモーター、Sp6プローモーターまたはCMVプローモーターでもある。前記ベクターは、動物細胞、望ましくは、哺乳動物細胞において作動自在なプローモーターを含むものでもある。一実施例による、適するプローモーターは、哺乳動物ウイルスに由来するプローモーター、及び哺乳動物細胞のゲノムに由来するプローモーターを含むものでもあり、例えば、CMV(cytomegalovirus)プローモーター、U6プローモーター、H1プローモーター、MLV(murine leukemia virus) LTR(long terminal repeat)プローモーター、アデノウイルス初期プローモーター、アデノウイルス後期プローモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプローモーター、SV40プローモーター、HSVのtkプローモーター、RSVプローモーター、EF1αプローモーター、メタロチオニンプローモーター、β-アクチンプローモーター、ヒトIL-2遺伝子のプローモーター、ヒトIFN遺伝子のプローモーター、ヒトIL-4遺伝子のプローモーター、ヒトリンホトキシン遺伝子のプローモーター、ヒトGM-CSF遺伝子のプローモーター、ヒトホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プローモーター、マウスホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プローモーター、及びサバイビン(survivin)プローモーターを含むものでもある。一具体例において、前記ベクターは、ロタウイルス遺伝子分節cDNA、またはキャッピング酵素コーディングするDNAを含むプラスミドベクターでもあり、例えば、図2または図3の開裂地図を有するプラスミドでもある。
【0051】
一具体例において、前記再配列ロタウイルスは、G1、G2、G3、G4、G9及びP1のうちいずれか1つの血清型を有し、再配列ロタウイルス製造のための発現ベクター内のロタウイルス遺伝子分節cDNAにおいて、前記VP4遺伝子分節cDNAは、配列番号5または6の塩基配列を含み、かつ前記VP7遺伝子分節cDNAは、配列番号8,9,10,11,12または13の塩基配列を含むものでもある。前記VP4遺伝体分節及び前記VP7遺伝体分節は、再配列ロタウイルスの血清型を決定し、それ以外のVP1、VP2、VP3、VP6、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5との組み合わせを介し、目的とする血清型を有する再配列ロタウイルスを製造しうる。
【0052】
一具体例において、前記再配列ロタウイルス製造のための発現ベクター内のロタウイルス遺伝子分節cDNAにおいて、前記VP1遺伝子分節cDNAは、配列番号1の塩基配列を含み、前記VP2遺伝子分節cDNAは、配列番号2の塩基配列を含み、前記VP3遺伝子分節cDNAは、配列番号3または4の塩基配列を含み、前記VP6遺伝子分節cDNAは、配列番号7の塩基配列を含み、前記NSP1遺伝子分節cDNAは、配列番号14の塩基配列を含み、前記NSP2遺伝子分節cDNAは、配列番号15の塩基配列を含み、前記NSP3遺伝子分節cDNAは、配列番号16の塩基配列を含み、前記NSP4遺伝子分節cDNAは、配列番号17の塩基配列を含み、または前記NSP5遺伝子分節cDNAは、配列番号18の塩基配列を含むものでもある。
【0053】
一具体例において、前記再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリーは、下記の組み合わせの遺伝子分節cDNAをそれぞれ含む発現ベクターによって構成されうる:(A)配列番号1のVP1 cDNA、配列番号2のVP2 cDNA、配列番号3のVP3 cDNA、配列番号5のVP4 cDNA、配列番号7のVP6 cDNA、配列番号8のVP7 cDNA、配列番号14のNSP1 cDNA、配列番号15のNSP2 cDNA、配列番号16のNSP3 cDNA、配列番号17のNSP4 cDNA、及び配列番号18のNSP5 cDNA;(B)配列番号1のVP1 cDNA、配列番号2のVP2 cDNA、配列番号3のVP3 cDNA、配列番号5のVP4 cDNA、配列番号7のVP6 cDNA、配列番号9のVP7 cDNA、配列番号14のNSP1 cDNA、配列番号15のNSP2 cDNA、配列番号16のNSP3 cDNA、配列番号17のNSP4 cDNA、及び配列番号18のNSP5 cDNA;(C)配列番号1のVP1 cDNA、配列番号2のVP2 cDNA、配列番号4のVP3 cDNA、配列番号5のVP4 cDNA、配列番号7のVP6 cDNA、配列番号10のVP7 cDNA、配列番号14のNSP1 cDNA、配列番号15のNSP2 cDNA、配列番号16のNSP3 cDNA、配列番号17のNSP4 cDNA、及び配列番号18のNSP5 cDNA;(D)配列番号1のVP1 cDNA、配列番号2のVP2 cDNA、配列番号4のVP3 cDNA、配列番号5のVP4 cDNA、配列番号7のVP6 cDNA、配列番号11のVP7 cDNA、配列番号14のNSP1 cDNA、配列番号15のNSP2 cDNA、配列番号16のNSP3 cDNA、配列番号17のNSP4 cDNA、及び配列番号18のNSP5 cDNA;(E)配列番号1のVP1 cDNA、配列番号2のVP2 cDNA、配列番号4のVP3 cDNA、配列番号5のVP4 cDNA、配列番号7のVP6 cDNA、配列番号12のVP7 cDNA、配列番号14のNSP1 cDNA、配列番号15のNSP2 cDNA、配列番号16のNSP3 cDNA、配列番号17のNSP4 cDNA、及び配列番号18のNSP5 cDNA;並びに(F)配列番号1のVP1 cDNA、配列番号2のVP2 cDNA、配列番号4のVP3 cDNA、配列番号6のVP4 cDNA、配列番号7のVP6 cDNA、配列番号13のVP7 cDNA、配列番号14のNSP1 cDNA、配列番号15のNSP2 cDNA、配列番号16のNSP3 cDNA、配列番号17のNSP4 cDNA、及び配列番号18のNSP5 cDNA。前述の遺伝子分節cDNAと血清型との組み合わせは、ヒトロタウイルスの病原性が除去されると共に、人体に無害なウシロタウイルス遺伝子を追加したものであり、ヒトロタウイルス免疫原性を最適に形成しうるエピトープ部分(例えば、VP7、VP4)を含むことにより、それらの免疫原性を極大化させたものである。
【0054】
一具体例において、前記発現ベクターライブラリーは、前記遺伝子分節cDNAに測接された(flanked)リボザイム暗号化配列を追加して含む発現カセットを含むものでもある。前記ロタウイルス発現ベクターライブラリーは、配列番号19の塩基配列によってなるVP1遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;配列番号20の塩基配列によってなるVP2遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;配列番号21または22の塩基配列によってなるVP3遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;配列番号23または24の塩基配列によってなるVP4遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;配列番号25の塩基配列によってなるVP6遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;配列番号26,27,28,29,30または31の塩基配列によってなるVP7遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;配列番号32の塩基配列によってなるNSP1遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;配列番号33の塩基配列によってなるNSP2遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;配列番号34の塩基配列によってなるNSP3遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;配列番号35の塩基配列によってなるNSP4遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド;及び配列番号36の塩基配列によってなるNSP5遺伝子分節に係わる発現カセットを含むプラスミド群のうちから選択される少なくともいずれか1以上のプラスミドを含むものでもある。併せて、前記発現カセットの組み合わせも、前述の遺伝子分節cDNAの組み合わせに相応するように設けられうる。
【0055】
一具体例において、前記ロタウイルス発現ベクターライブラリーは、配列番号37の塩基配列によってなる、VP1遺伝体分節cDNAを含むプラスミド;配列番号38の塩基配列によってなる、VP2遺伝体分節cDNAを含むプラスミド;配列番号39または40の塩基配列によってなる、VP3遺伝体分節を含むプラスミド;配列番号41または42の塩基配列によってなる、VP4遺伝体分節を含むプラスミド;配列番号43の塩基配列によってなる、VP6遺伝体分節を含むプラスミド;配列番号44,45,46,47,48または49の塩基配列によってなる、VP7遺伝体分節を含むプラスミド;配列番号50の塩基配列によってなる、NSP1遺伝体分節cDNAを含むプラスミド;配列番号51の塩基配列によってなる、NSP2遺伝体分節cDNAを含むプラスミド;配列番号52の塩基配列によってなる、NSP3遺伝体分節cDNAを含むプラスミド;配列番号53の塩基配列によってなる、NSP4遺伝体分節cDNAを含むプラスミド;及び配列番号54の塩基配列によってなる、NSP5遺伝体分節cDNAを含むプラスミド群のうちから選択される少なくともいずれか1以上のプラスミドを含むものでもある。併せて、前記プラスミドの組み合わせも、前述の遺伝子分節cDNAの組み合わせに相応するように設けられうる。
【0056】
一具体例において、前記ロタウイルス発現ベクターライブラリーは、配列番号37の塩基配列によってなる、D1Rを含むプラスミド;及び配列番号38の塩基配列によってなる、D12Lを含むプラスミドを追加して含むものでもある。
【0057】
一具体例において、前記発現ベクターライブラリー内の、前記NSP2遺伝子分節cDNAまたは前記NSP5遺伝子分節cDNAを含むプラスミドと、VP1,VP2,VP3,VP4,VP6,VP7,NSP1,NSP3またはNSP4遺伝子分節cDNAを含むプラスミドとのモル比は、4:1ないし6:1でもあり、例えば、前記発現ベクター間のモル比は、5.0:1ないし5.5:1、4.0:1ないし5.0:1、4:1ないし4.5:1、4.5:1ないし6.0:1、4.5:1ないし5.5:1、4.5:1ないし5.0:1、5.0:1ないし6.0:1、または5.0:1ないし5.5:1でもある。前記範囲を外れ、発現ベクター間のモル比の差が引き起こされる場合、再配列ロタウイルスの遺伝的特性上、目的とする再配列ウイルスの収得量が格段に減少するか、あるいは全く収得されないのである。
【発明の効果】
【0058】
一態様による組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法によれば、ウイルスを使用する既存の方法に比べ、安全であり、別途の選別過程なしにも、ベクターライブラリーの任意的な組み合わせを介し、高い効率でもって目的とする再配列ウイルスを手軽く収得しうる。
【0059】
従って、一態様による組み換えレオウイルス科ウイルスを製造する方法、及び前記方法によって製造された組み換えレオウイルス科ウイルスは、ロタウイルスのようなウイルス感染に対する病態生理学的研究、及びロタウイルス感染症予防のためのワクチン分野などにおいて活用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】T7 RNA重合酵素を安定して発現する総3種の細胞株(BHK-T7 #3,#6,#7)を対象に、を対象でT7 RNA重合酵素の発現及び活性を、蛍光顕微鏡を介して確認したものであり、(A)は、BHK-T7 #3細胞株に係わる結果であり、(B)は、BHK-T7 #6細胞株に係わる結果であり、(C)は、BHK-T7 #7細胞株に係わる結果である。
図2】ロタウイルス遺伝子分節を発現しうるプラスミドの開裂地図である。
図3】ヘルパープラスミドの開裂地図であり、(A)は、pCMVTK-D1Rプラスミドの開裂地図であり、(B)は、pCMVTK-D12Lプラスミドの開裂地図である。
図4】一実施例による、T7 RNA重合酵素が導入された細胞株と、ロタウイルス発現ベクターライブラリーとを使用した再配列ロタウイルスを製造する方法を概略的に示した図である。
図5】一実施例による、再配列ロタウイルスを製造する過程を、経時的に概略的に示した図である。
図6】一実施例による、再配列ロタウイルスに対する増幅過程及び再感染過程を、経時的に概略的に示した図である。
図7】一実施例による、再配列ロタウイルスによって再感染されたMA104細胞において、CPE現象いかんを、電子顕微鏡を介して確認した結果である。
図8】一実施例による、再配列ロタウイルスに再感染されたMA104細胞において、VP6の発現を蛍光顕微鏡を介して確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明理解の一助とするために、望ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をさらに容易に理解するために提供されるものであるのみ、下記実施例により、本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0062】
実施例1.T7 RNA重合酵素を安定して発現する細胞株の製造
本実施例においては、T7 RNA重合酵素遺伝子をBHK21細胞株に導入した後、前記細胞株を対象に、ブラストサイジン抵抗性細胞株を選別し、T7 RNA重合酵素を安定して発現する細胞株を獲得するものである。具体的には、ブラストサイジン抵抗性遺伝子に係わる発現ベクターのCMVプローモーター後ろに、合成されたT7 RNA重合酵素遺伝子を挿入し、T7 RNA重合酵素遺伝子に係わる発現ベクターを準備した。その後、BHK21細胞株を、6ウェルプレートに、6.5×10細胞/ウェルの濃度でシーディングし、このとき、培地は、10% FBS(fetal bovine serum)が添加されたDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)を使用した。その後、ここに、6μl/ウェル濃度のTransIT-LT1と共に、前記発現ベクターを、2μg/ウェル濃度で添加して培養した。その後、前記培養培地を、10μg/ウェル濃度でブラストサイジンが添加された10% DMEM培地で替えた後、ブラストサイジン抵抗性によって生存したT7-BHK21細胞を選別した。前記選別過程を介し、細胞のゲノム(genome)に、T7重合酵素遺伝子が挿入されて安定して維持される細胞株を確保し、シングルセル単離(single cell isolation)を介し、それらの単クローン(single clone)を確保した(BHK-T7 #3,#6,#7)。
【0063】
なお、前述の確保された細胞株に係わるT7 RNA重合酵素の発現及び活性を評価するために、pUC57クローニングベクターに、T7プローモーター・EMCV IRES-GFP遺伝子を合成及び挿入し、レポータープラスミドを製造した後、前記レポータープラスミドを、前記BHK-T7 #3,#6または#7細胞株に形質感染させた。そこから2日経過後、T7 RNA重合酵素の発現によるGFPの発現レベルを蛍光顕微鏡を介して確認した。
【0064】
その結果、図1に示されているように、一実施例によるBHK-T7 #3,#6または#7細胞株は、T7 RNA重合酵素を高いレベルに発現させていることを確認した。
【0065】
実施例2.再配列ロタウイルス製造のための発現ベクターライブラリーの製造
本実施例においては、ウシロタウイルス(bovine rotavirus)及びヒトロタウイルス(human rotavirus)の総11個の遺伝子分節が再配列されたロタウイルス、具体的には、G1,G2,G3,G4,G9またはP1血清型のヒトロタウイルスの感染を予防するための六価ワクチン株生産のための再配列ロタウイルスを、plasmid-based reverse genetics systemを介して製造するものである。そのために、本実施例においては、ロタウイルス遺伝子分節cDNAを含むプラスミド、及びワクシニアウイルスのキャッピング酵素を発現するヘルパープラスミドを製造した。
【0066】
2-1.ロタウイルス遺伝子分節を含むプラスミドの製造
表1は、各血清型に係わるロタウイルスの各遺伝子分節の遺伝情報、及びそれらの組み合わせを示したものである。下記表1において、各遺伝子分節に係わる遺伝情報は、GenBank numberで表記し、ウシロタウイルス(bovine rotavirus)WC3由来遺伝子は、(B)と表記し、ヒトロタウイルス(human rotavirus)由来遺伝子は、(H)と表記した。
【0067】
【表1】
【0068】
前記表1のロタウイルス遺伝子分節の発現のために、図2に図示されているように、T7プローモーター配列直後に、ロタウイルス遺伝子分節のcDNAが位置し、前記cDNA後ろに、アンチゲノムの(antigenomic)HDVリボザイム配列及びT7終結子配列が順次に位置する発現カセットをデザインし、pUC57クローニングベクターに前記発現カセットを挿入し、ロタウイルス遺伝子分節のcDNAを含むプラスミドを製造した。
【0069】
なお、表2は、一実施例で製造されたロタウイルス遺伝子分節のcDNAを含むプラスミドに係わる情報を示したものである。
【0070】
【表2】
【0071】
2-2.ヘルパープラスミドの製造
ヘルパープラスミド製造のために、pUC57クローニングベクターに、CMV即時初期プロモーター(immediately early promoter)、MCS(multi cloning site)及びウサギグロビンポリA信号(rabbit globin poly A signal)の配列を合成して挿入した発現ベクター(pCMVTK)をデザインし、図3に図示されているように、前記pCMVTKベクターに、D1R遺伝子またはD12L遺伝子を挿入し、pCMVTK-D1R、pCMVTK-D12Lの2種ヘルパープラスミドを製造した。
【0072】
実施例3.再配列ロタウイルスの製造
本実施例においては、図4に図示されているように、実施例1のT7 RNA重合酵素を安定して発現する細胞株を、実施例2の発現ベクターライイブロリから選択されたDNA混合物(DNAmixture)に形質感染させることにより、総11個の遺伝子分節が再配列されたロタウイルスを製造するものである。
【0073】
図5は、一実施例による、再配列ロタウイルスを製造する過程を経時的に概略的に示したものである。具体的には、形質感染時点から約16時間前、BHK-T7細胞株を6ウェルプレートにシーディングし、形質感染時(Day 0)、BHK-T7細胞株の濃度が、80~90%の密集度(confluency)で、単層(monolayer)に敷き詰められるように準備し、このとき、培地は、5~10% FBSが添加されたDMEMを使用した。なお、後続段階であるMA104細胞を添加する過程において、MA104細胞の濃度が、80~90%の密集度(confluency)になるように、前記MA104細胞を6ウェルプレートにシーディングして準備しておき、このとき、培地は、5% FBSが添加されたDMEMを使用した。
【0074】
前記BHK-T7細胞をシーディングした後、約16時間以上経過した時点において、細胞密集度(confluency)が80~90%に逹したとき、ベクターライブラリーから選択されたDNA混合物への形質感染を進めた。前記DNA混合物は、それぞれのロタウイルス遺伝子分節を発現する11種のプラスミドと、2種のヘルパープラスミドとを含むように構成され、G1,G2,G3,G4,G9またはP1血清型の再配列ロタウイルス製造のためのDNA混合物の組成は、下記の表3ないし表8に示されている通りである。Opti-MEM(Gibco)は、総DNA量、すなわち、プラスミドレベルに比例してそのレベルを調整し、DNA 2.5μg当たり250μlのOpti-MEMを添加した。その後、そこに形質感染試薬として、TransIT-LT1 Transfection Reagent(Mirus Bio)を、総DNA 1μg当たり3μlレベルで添加した後、ピペッティング(pipetting)し、柔らかに全体的に混ぜ、それを常温で15~30分間インキュベーティングした。
【0075】
表3ないし表8は、G1,G2,G3,G4,G9またはP1血清型の再配列ロタウイルス製造のためのプラスミドの組み合わせ、及びそれらの含量に係わる情報を示したものである。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
なお、前記インキュベーティング過程の間、以前、BHK-T7細胞株の培地を除去し、37℃で事前に予熱しておいたfresh growth mediaを適量(2.5ml/mlのDNA混合物を含む)添加した。インキュベーティングを終えた後、前記DNA混合物を、培地に1滴ずつ全体的に等しく添加し、37℃条件、COインキュベータで前記細胞株を培養した。その後、80~90%密集度(confluency)で単層(monolayer)に敷き詰められているMA104細胞をトリプシン処理し、6ウェルプレートから分離させた後、500xg 5分条件で、MA104細胞を沈降させ、その上澄み液を除去した。細胞ペレットに、3mlの5% FBSが添加されたGMEM(Glasgow Minimum Essential Medium)培地を添加し、再浮遊させた後、そこから細胞数を算出した。その後、再浮遊されたMA104細胞を、形質感染されたBHK-T7細胞株が含まれた培地に、3×104細胞/ウェルの濃度で添加した。
【0083】
形質感染時点から約22~24時間後、既存の培地を除去し、2.5mlの無血清(serum-free)DMEMで1,2回洗浄した後、無血清(serum-free)DMEMに培地を替えた。形質感染時点から約36~48時間後、0.3μg/ml濃度になるように、トリプシン(Sigma cat# T0303)処理して生成された少量の再分類ウイルスが再感染するのに有利に条件を誘導した。その後、細胞が死滅することを観察しながら、形質感染時点から4~6日後、前記形質感染細胞を含むプレートを-80℃条件で凍結して保管した。
【0084】
実施例4.再配列ロタウイルスの確認
本実施例においては、前記実施例3の過程を介して製造された再配列ロタウイルスを確認するものである。そのために、前記再配列ロタウイルスを、再びMA104細胞に感染させて増幅させた後、前記細胞に係わる細胞病変効果(CPE:cytopathic effect)を確認し、高い抗原性により、ロタウイルス感染検査に活用されているVP6発現レベルを評価した。
【0085】
図6は、一実施例による、再配列ロタウイルスに対する増幅過程及び再感染過程を、経時的に概略的に示したものである。具体的には、感染時点から約16時間前、MA104細胞を6ウェルプレートにシーディングし、感染時(Day 0)、MA104細胞の濃度が80~90%密集度(confluency)になるように準備し、このとき、培地は、DMEMを使用した。なお、実施例3において、-80℃条件で凍結して保管した形質感染細胞を含むプレートを常温で溶かし、再び凍結させる過程を2回繰り返し遂行した。その後、形質感染細胞が含まれたウェルに、トリプシンを10μg/ml濃度で処理し、37℃条件で1時間インキュベーティングし、10% FBSが添加されたDMEMを同量添加し、トリプシンを不活性化させることにより、感染液を製造した。その後、MA104細胞の培養培地を除去し、そこに、2.5~5mlの感染液を添加した後、それを、37℃条件でCOインキュベータで培養した。そこから7,8日後、前述の培養された細胞のCPEいかんを確認し、VP6の発現によるGFPの発現レベルを、蛍光顕微鏡を介して確認した。
【0086】
その結果、図7及び図8に示されているように、前記再配列ロタウイルスに再感染されたMA104細胞は、有意なCPE現象を示し、それらは、やはり高レベルのVP6が発現されていることを確認した。
【0087】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的ではないと理解されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】