(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】血行動態交絡因子を説明する、血液循環ヘモグロビンを非侵襲的に測定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500364
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022036086
(87)【国際公開番号】W WO2023283171
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ビー・ベンニ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・エス・アギーレ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・アルバネーゼ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL07
4C038KX01
(57)【要約】
対象の組織ヘモグロビンを非侵襲的に測定する方法および測定するためのシステムが提供される。方法は、a)近赤外分光法(NIRS)感知装置を使用して対象の組織を非侵襲的に感知し、非侵襲的感知に基づいて少なくとも一つのNIRS組織THb値を決定するステップと、b)NIRS感知装置を用いた非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定するステップと、c)NIRS感知装置を用いた非侵襲的組織感知中の少なくとも一つのHb交絡因子の存在に基づいて、NIRS組織THb値のNIRS循環THb部分を決定するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の組織ヘモグロビンを非侵襲的に測定する方法であって、
近赤外分光法(NIRS)感知装置を使用して対象の組織を非侵襲的に感知し、前記非侵襲的感知に基づいて少なくとも一つのNIRS組織THb値を決定するステップと、
前記NIRS感知装置を用いた前記非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定するステップと、
前記NIRS感知装置を用いた前記非侵襲的組織感知中の前記少なくとも一つのHb交絡因子の前記存在に基づいて、前記NIRS組織THb値のNIRS循環THb部分を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記NIRS感知装置を用いた前記非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを前記決定するステップが、血行動態測定装置を使用して、前記NIRS感知装置が前記対象の前記組織を非侵襲的に感知するために使用されるときとほぼ同じ期間で、前記対象の血行動態パラメータを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血行動態パラメータが、前記対象の心拍数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記血行動態パラメータが、前記対象の心拍出量である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記血行動態パラメータが、前記対象の血管反応性のレベルである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記血行動態パラメータが、前記対象内の血中二酸化炭素レベルである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記血行動態パラメータが、前記対象の血圧レベルである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記NIRS組織THb値のNIRS循環THb部分を前記決定するステップが、前記Hb交絡因子に起因する前記NIRS組織THb値の部分を決定するステップ、および前記Hb交絡因子に起因する前記NIRS組織THb値の前記部分を説明するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
NIRS感知装置を使用して前記対象の組織を前記非侵襲的に感知するステップ、および前記非侵襲的組織感知中に前記少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを前記決定するステップが、両方とも前記NIRS感知装置を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
NIRS感知装置を使用して前記対象の組織を前記非侵襲的に感知するステップが、少なくとも一つの血液循環THb値を使用して較正されるNIRS感知装置を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
NIRS感知装置を使用して前記対象の組織を前記非侵襲的に感知するステップが、血液循環THb値を含む経験的データを使用して較正されるNIRS感知装置を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
対象の組織ヘモグロビンを非侵襲的に測定するためのシステムであって、
血行動態パラメータを感知し、前記血行動態パラメータを表す信号データを生成するように構成された、血行動態測定装置と、
少なくとも一つの変換器およびコントローラを有する近赤外分光法(NIRS)感知装置であって、前記変換器が、少なくとも一つの光源および少なくとも一つの光検出器を有し、前記コントローラが、前記少なくとも一つの変換器と通信する少なくとも一つのプロセッサと、保存された命令を有するメモリデバイスと、を有し、前記命令が、実行されたときに、前記プロセッサに、
前記NIRS感知装置を制御して、対象の組織を非侵襲的に感知し、前記非侵襲的感知に基づいて少なくとも一つのNIRS組織THb値を決定することと、
前記血行動態測定装置によって生成された信号データを使用して、前記非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定することと、
前記NIRS組織THb値のNIRS循環THb部分を決定することであって、前記決定が、前記NIRS感知装置を用いた前記非侵襲的組織感知中の前記少なくとも一つのHb交絡因子の前記存在を説明する、決定することと、をさせる、近赤外分光法(NIRS)感知装置と、を備える、システム。
【請求項13】
前記システムが、前記NIRS感知装置が前記対象の前記組織を非侵襲的に感知するために使用されるときとほぼ同じ期間で、前記血行動態測定装置に前記血行動態パラメータを感知させるように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記血行動態測定装置が、前記対象の心拍数を血行動態パラメータとして感知するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記血行動態測定装置が、前記対象の心拍出量を血行動態パラメータとして感知するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記血行動態測定装置が、前記対象の血管反応性のレベルを血行動態パラメータとして感知するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記血行動態測定装置が、前記対象の血中二酸化炭素レベルを血行動態パラメータとして感知するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記血行動態測定装置が、前記対象の血圧レベルを血行動態パラメータとして感知するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサに、
前記NIRS組織THb値の前記NIRS循環THb部分を決定させる前記命令がまた、前記プロセッサに、前記Hb交絡因子に起因する前記NIRS組織THb値の部分を決定させる、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記NIRS感知装置が、少なくとも一つの血液循環THb値を使用して較正される、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記NIRS感知装置が、血液循環THb値を含む経験的データを使用して較正される、請求項12に記載のシステム。
【請求項22】
対象の組織ヘモグロビンを非侵襲的に測定するためのシステムであって、
血行動態パラメータを感知し、前記血行動態パラメータを表すHP信号データを生成するように構成された、血行動態測定装置と、
少なくとも一つの変換器およびコントローラを有する近赤外分光法(NIRS)感知装置であって、前記変換器が、少なくとも一つの光源および少なくとも一つの光検出器を有し、前記コントローラが、前記少なくとも一つの変換器と通信する少なくとも一つのNIRSプロセッサと、保存されたNIRS命令を有するNIRSメモリデバイスと、を有し、前記NIRS命令が、実行されたときに、前記NIRSプロセッサに、前記NIRS感知装置を制御して、対象の組織を非侵襲的に感知し、少なくとも一つのNIRS組織THb値を表すNIRS信号データを生成することをさせる、NIRS感知装置と、
前記血行動態測定装置、前記NIRS感知装置、および保存されたSC命令を有するSCメモリデバイスと通信する少なくとも一つのSCプロセッサを有するシステムコントローラであって、前記SC命令が、実行されたときに、前記SCプロセッサに、
HP信号データを使用して、前記非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定することと、
前記NIRS信号データおよび前記少なくとも一つのHb交絡因子の前記存在に基づいて、NIRS循環THb値を決定することと、をさせる、システムコントローラと、を備える、システム。
【請求項23】
対象の組織ヘモグロビンを非侵襲的に測定するためのシステムであって、
少なくとも一つの変換器およびコントローラを有する近赤外分光法(NIRS)感知装置であって、前記変換器が、少なくとも一つの光源および少なくとも一つの光検出器を有し、前記コントローラが、前記少なくとも一つの変換器と通信する少なくとも一つのプロセッサと、保存された命令を有するメモリデバイスと、を有し、前記命令が、実行されたときに、前記プロセッサに、
前記NIRS感知装置を制御して、対象の組織を非侵襲的に感知し、少なくとも一つのNIRS組織THb値を表すNIRS信号データを生成することと、
前記NIRS感知装置を制御して、血行動態パラメータを決定し、前記血行動態パラメータを表すHP信号データを生成することと、
HP信号データを使用して、前記非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定することと、
前記NIRS信号データおよび前記少なくとも一つのHb交絡因子の前記存在に基づいて、NIRS循環THb値を決定することと、をさせる、NIRS感知装置を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年7月6日に出願された、「METHOD AND APPARATUS FOR NON-INVASIVELY MEASURING BLOOD CIRCULATORY HEMOGLOBIN ACCOUNTING FOR HEMODYNAMIC CONFOUNDERS」と題する、米国仮特許出願第63/218,684号に基づく優先権を主張するものであり、その完全な開示はここに、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
1.技術分野
本発明は、一般に血液循環ヘモグロビン値を決定するための方法および装置、特に血液循環ヘモグロビン値を決定するための非侵襲的な方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景情報
血液中で酸素を運ぶ分子はヘモグロビンである。酸素化ヘモグロビンはオキシヘモグロビン(HbO2)と呼ばれ、脱酸素化ヘモグロビンはデオキシヘモグロビン(Hb)である。一部の事例では、血液は、他のタイプのヘモグロビン(例えば、カルボキシヘモグロビン(COHb)、メトヘモグロビン(MetHb)など)を含有する可能性があるが、典型的には比較的少量である。したがって、本明細書で使用される場合、「総ヘモグロビン」(THb)という用語は、HbO2およびHbの合計を指し、血液のヘマトクリットまたはヘモグロビン濃度が変化しないことを条件として、相対血液量の変化に比例する。哺乳類の心血管系は、血液ポンピング機構(心臓)、血液輸送系(血管)、および血液酸素化系(肺)からなる。肺によって酸素化された血液は心臓を通過し、動脈血管系にポンピングされる。正常な条件下では、酸素化動脈血は、主にHbO2からなる。大動脈血管は、細動脈と呼ばれるより小さな血管枝に分岐し、これは生体組織全体にわたって豊富である。細動脈は、最も小さい血管である毛細血管に分岐する。毛細血管では、ヘモグロビンによって運ばれる酸素は、組織内の細胞に輸送され、酸素分子の放出(HbO2→Hb)をもたらす。正常な条件下では、細胞代謝の必要性に応じて、HbO2分子の一部のみが組織に酸素を明け渡す。次いで、毛細血管は、静脈循環系の始まりである細静脈に一緒に組み合わされる。次いで、細静脈は静脈と呼ばれるより大きな血管に組み合わされる。静脈はさらに組み合わされて心臓に戻り、次いで静脈血が肺にポンピングされる。肺では、脱酸素化ヘモグロビンHbは、酸素を収集して再びHbO2になり、循環プロセスが繰り返される。
【0004】
近赤外分光法(NIRS)は、拍動血液量を必要としない組織パラメータ(例えば、酸素飽和度、ヘモグロビンレベルなど)を継続的に監視して臨床値のパラメータを計算する、光学分光光度法である。NIRS分光法は、近赤外範囲(700nm~1,000nm)の光が、それが主に微小循環通路(例えば、毛細血管、細動脈、および細静脈)内に位置するヘモグロビンに遭遇する、皮膚、骨、および他の組織を容易に通過することができるという原理に基づく。近赤外範囲の光に曝露されたヘモグロビンは、その酸化状態に応じて変化する特異的吸収スペクトルを有する(すなわち、オキシヘモグロビン(HbO2)およびデオキシヘモグロビン(Hb)はそれぞれ別個の発色団として作用する)。特定の異なる波長で近赤外光を送る光源を使用すること、および透過または反射された光の減衰の変化を測定することによって、組織内のオキシヘモグロビン(HbO2)およびデオキシヘモグロビン(Hb)の濃度の変化、ならびに酸素飽和度を監視することができる。特許文献1~4はすべて、NIRS分光装置および方法を記載している。これらの文書の各々はここに、参照によりその全体が組み込まれる。
【0005】
近赤外分光法(NIRS)オキシメータは、対象の組織に対して非侵襲的に決定された総ヘモグロビン値(THb)を提供することができる。以下に記載されるように、組織の総ヘモグロビンは、血液のヘマトクリットまたはヘモグロビン濃度が変化しないことを条件として、感知された組織内の相対血液量に比例する(この体積は変化し得る)。対象の皮膚上に配置された光学ベースのセンサを使用して、NIRS組織オキシメータは、異なる波長の光で組織を調査し(例えば、組織内へ光を放出し、組織から発出する光を検出する)、次いで、検出された光を処理して、組織についての総ヘモグロビン値、およびまた望まれる場合は組織酸素飽和度(StO2)値を計算するために使用することができる。例えば、対象の前頭部上に配置されたNIRS組織オキシメータのセンサ部分を使用して、分光光度法で対象の脳組織を調査し、その後、対象の脳組織についての総ヘモグロビン値およびStO2値を決定してもよい。
【0006】
歴史的に、循環血液ヘモグロビン値(すなわち、循環血液内のヘモグロビンを表すヘモグロビン値)は、侵襲的に採取された血液サンプルを使用して決定されてきた。侵襲的に採取された血液サンプル試料は、COオキシメータまたは血液ガス分析器を使用して分析され得る。COオキシメータは、血液試料内に存在する一つ以上のタイプのヘモグロビン、例えば、HbO2、Hb、カルボキシヘモグロビン(COHb)、メトヘモグロビン(MetHb)などを測定するように操作され得る装置である。ほとんどのCOオキシメータは、血液サンプルを通過する特定の波長での光の吸収を測定することによって、侵襲的に採取された血液サンプル内のそれぞれのタイプのヘモグロビン(例えば、HbO2、Hb、COHb、MetHbなど)の存在および量を決定するために操作され得る分光光度装置である。異なる波長での吸収の相対量は、血液サンプル内に存在するそれぞれのタイプのヘモグロビンの測定を可能にする。対照的に、ほとんどの血液ガス分析器は、電極および電流または電位の変化を使用して、侵襲的に採取された血液サンプル内の成分を検出および測定する電気化学的タイプの分析装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6456862号明細書
【特許文献2】米国特許第7072701号明細書
【特許文献3】米国特許第8078250号明細書
【特許文献4】米国特許第8396526号明細書
【特許文献5】米国特許第9988873号明細書
【特許文献6】米国特許第8428674号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2020/033258号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
知られているNIRS組織オキシメータとCOオキシメータまたは血液ガス分析器との間の主な違いは、知られているNIRS組織オキシメータは、組織内のパラメータ値(例えば、ヘモグロビン、酸素飽和度など)を決定するように構成される一方、COオキシメータまたは血液ガス分析器は、循環血液サンプル(すなわち、侵襲的に採取された血液サンプル)内の同じパラメータ値を決定するように構成されることである。総ヘモグロビンをパラメータの例として使用すると、知られているNIRS組織オキシメータを使用して組織内で決定された総ヘモグロビン値は、組織の体積当たりのヘモグロビン濃度、血管反応性、心拍出量、血流、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)、心拍数、血液量、血腫、充血、血圧などを含む、いくつかの異なる血行動態パラメータによって影響され得る。COオキシメータまたは血液ガス分析器を使用して決定された循環血液サンプルの総ヘモグロビン値は、これらの血行動態パラメータによって影響を受けないが、侵襲的な採取ステップを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本開示の一態様によれば、対象の組織ヘモグロビンを非侵襲的に測定する方法が提供される。方法は、a)近赤外分光法(NIRS)感知装置を使用して対象の組織を非侵襲的に感知し、非侵襲的感知に基づいて少なくとも一つのNIRS組織THb値を決定するステップと、b)NIRS感知装置を用いた非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定するステップと、c)NIRS感知装置を用いた非侵襲的組織感知中の少なくとも一つのHb交絡因子の存在に基づいて、NIRS組織THb値のNIRS循環THb部分を決定するステップと、を含む。
【0010】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、NIRS感知装置を用いた非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定するステップは、血行動態測定装置を使用して、NIRS感知装置が対象の組織を非侵襲的に感知するために使用されるときとほぼ同じ期間で、対象の血行動態パラメータを測定するステップを含んでもよい。
【0011】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、血行動態パラメータは、心拍数、心拍出量、血圧、または対象の血管反応性のレベル、または対象内の血中二酸化炭素レベルであってもよい。
【0012】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、NIRS組織THb値のNIRS循環THb部分を決定するステップは、Hb交絡因子に起因するNIRS組織THb値の部分を決定するステップ、およびHb交絡因子に起因するNIRS組織THb値の部分を説明するステップを含んでもよい。
【0013】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、NIRS感知装置を使用して対象の組織を非侵襲的に感知するステップ、および非侵襲的組織感知中に当該少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定するステップは、両方ともNIRS感知装置を使用して実施されてもよい。
【0014】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、NIRS感知装置を使用して対象の組織を非侵襲的に感知するステップは、少なくとも一つの血液循環THb値を使用して較正されるNIRS感知装置を使用して実施されてもよい。
【0015】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、NIRS感知装置を使用して対象の組織を非侵襲的に感知するステップは、血液循環THb値を含む経験的データを使用して較正されるNIRS感知装置を使用して実施されてもよい。
【0016】
本開示の一態様によれば、対象の組織ヘモグロビンを非侵襲的に測定するためのシステムが提供される。システムは、血行動態測定装置および近赤外分光法(NIRS)感知装置を含む。血行動態測定装置は、血行動態パラメータを感知し、血行動態パラメータを表す信号データを生成するように構成される。NIRS感知装置は、少なくとも一つの変換器およびコントローラを有する。変換器は、少なくとも一つの光源および少なくとも一つの光検出器を有する。コントローラは、少なくとも一つの変換器と通信する少なくとも一つのプロセッサと、保存された命令を有するメモリデバイスと、を有する。命令は、実行されたときに、プロセッサに、a)NIRS感知装置を制御して、対象の組織を非侵襲的に感知し、非侵襲的感知に基づいて少なくとも一つのNIRS組織THb値を決定することと、b)血行動態測定装置によって生成された信号データを使用して、非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定することと、c)NIRS組織THb値のNIRS循環THb部分を決定することであって、決定が、NIRS感知装置を用いた非侵襲的組織感知中の少なくとも一つのHb交絡因子の存在を説明する、決定することと、をさせる。
【0017】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、システムは、血行動態測定装置に、NIRS感知装置が対象の組織を非侵襲的に感知するために使用されるときとほぼ同じ期間で、血行動態パラメータを感知させるように構成されてもよい。
【0018】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、プロセッサにNIRS組織THb値のNIRS循環THb部分を決定させる命令はまた、プロセッサに、Hb交絡因子に起因するNIRS組織THb値の部分を決定させてもよい。
【0019】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、NIRS感知装置は、少なくとも一つの血液循環THb値を使用して較正されてもよい。
【0020】
上述および本明細書に記載される態様または実施形態のいずれでも、NIRS感知装置は、血液循環THb値を含む経験的データを使用して較正されてもよい。
【0021】
本開示の一態様によれば、対象の組織ヘモグロビンを非侵襲的に測定するためのシステムが提供される。システムは、血行動態測定装置、近赤外分光法(NIRS)感知装置、およびシステムコントローラを含む。血行動態測定装置は、血行動態パラメータを感知し、血行動態パラメータを表すHP信号データを生成するように構成される。NIRS感知装置は、少なくとも一つの変換器およびコントローラを有する。変換器は、少なくとも一つの光源および少なくとも一つの光検出器を有する。コントローラは、少なくとも一つの変換器と通信する少なくとも一つのNIRSプロセッサと、保存されたNIRS命令を有するNIRSメモリデバイスと、を有する。NIRS命令は、実行されたときに、NIRSプロセッサに、NIRS感知装置を制御して、対象の組織を非侵襲的に感知し、少なくとも一つのNIRS組織THb値を表すNIRS信号データを生成することをさせる。システムコントローラは、血行動態測定装置と通信する少なくとも一つのSCプロセッサと、NIRS感知装置と、保存されたSC命令を有するSCメモリデバイスと、を有し、このSC命令は、実行されたときに、SCプロセッサに、a)HP信号データを使用して、非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定することと、b)NIRS信号データおよび少なくとも一つのHb交絡因子の存在に基づいて、NIRS循環THb値を決定することと、をさせる。
【0022】
本開示の一態様によれば、近赤外分光法(NIRS)感知装置を含む、対象の組織ヘモグロビンを非侵襲的に測定するためのシステムが提供される。NIRS感知装置は、少なくとも一つの変換器およびコントローラを有する。変換器は、少なくとも一つの光源および少なくとも一つの光検出器を有する。コントローラは、少なくとも一つの変換器と通信する少なくとも一つのプロセッサと、保存された命令を有するメモリデバイスと、を有する。命令は、実行されたときに、プロセッサに、a)NIRS感知装置を制御して、対象の組織を非侵襲的に感知し、少なくとも一つのNIRS組織THb値を表すNIRS信号データを生成することと、b)NIRS感知装置を制御して、血行動態パラメータを決定し、血行動態パラメータを表すHP信号データを生成することと、c)HP信号データを使用して、非侵襲的組織感知中に少なくとも一つのHb交絡因子が存在するかどうかを決定することと、d)NIRS信号データおよび少なくとも一つのHb交絡因子の存在に基づいて、NIRS循環THb値を決定することと、をさせる。
【0023】
前述では、以下の発明の詳細な説明がより良く理解され得るように、本発明のいくつかの態様を概説した。本発明の特許請求の範囲の対象を形成する、本発明の追加の特徴および利点を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本開示によるNIRS感知装置の実施形態の概略図である。
【
図1A】
図1Aは、本開示によるシステムの実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、対象の頭部に適用されるNIRS感知装置の変換器の概略図である。
【
図3】
図3は、NIRS感知装置の変換器の概略図である。
【
図4】
図4は、血液循環THb値を表すY軸、およびNIRS組織THb値を示すX軸、およびデータ点から決定された傾向線を有するチャート上に示されるデータ点の散布図である。
【
図5】
図5は、血液循環THb値を表すY軸およびNIRS組織THb値を示すX軸を有するチャート上に示されるデータ点の散布図である。データは、異なる対象からの複数のデータセットを含む。傾向線は、各データセットに適合される。
【
図6】
図6は、血液循環値を表すY軸およびNIRS組織THb値を示すX軸、およびデータ点から決定された傾向線を有するチャート上に示される、多点対象較正方法論で収集された二つのデータ点を示す散布図である。
【
図7】
図7は、本開示の態様を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
本説明を容易にするために、本明細書で使用される以下の用語は、以下のように定義される。
・「THb」は、本明細書では、総ヘモグロビン含量を意味するために使用され、オキシヘモグロビン(HbO2)、デオキシヘモグロビン(Hb)、カルボキシヘモグロビン(COHb)、メトヘモグロビン(MetHb)などの血液サンプル内に存在し得る様々なタイプのヘモグロビンを集合的に含む。典型的には、血液サンプル中のオキシヘモグロビン(HbO2)およびデオキシヘモグロビン(Hb)の量は、血液サンプル内に存在する他のタイプのヘモグロビンの量よりも不釣り合いに大きい。本明細書の記載を容易にするために、「THb」は、HbO2およびHbの合計として本明細書に記載され得る。
・「血液循環THb」は、採取された血液サンプル内の総ヘモグロビン含量を意味するために本明細書で使用される。「血液循環THb」値は、採取された血液サンプルから決定されるため、対象の組織に存在し得る任意の血行動態効果とは無関係である。
・「NIRS組織THb」は、NIRS感知装置を使用して感知された組織サンプル内の血液の総ヘモグロビン含量を意味するために使用され、感知された組織内に存在し得る血行動態効果は説明しない。
・「NIRS循環THb」は、NIRS感知装置またはシステムを使用して感知された組織サンプル内の血液の総ヘモグロビン含量を意味するために使用され、感知された組織内に存在し得る血行動態効果を説明する。
【0026】
上述のように、血行動態効果を説明しないNIRS感知装置(「NIRSオキシメータ」と呼ばれる場合もある)によって組織に実施されるヘモグロビン分析と、採取された血液サンプルに実施されるヘモグロビン分析と、の間の主要な差異は、組織サンプル内の血行動態効果がヘモグロビン分析に影響を与え得ることである。NIRS組織THb値は、心拍数(HR)、血圧(BP)、血管反応性、心拍出量(CO)、血流、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)、血液量、血腫、充血などを含むがこれらに限定されない、血行動態パラメータに起因する血行動態効果によって影響を受け得る。これらの血行動態パラメータは、採取された血液量内に存在しない。本開示の実施形態は、血行動態効果を説明する循環ヘモグロビン(すなわち、「NIRS循環THb」)を非侵襲的に測定するための方法および装置を対象とする。本開示は、NIRS循環THbデータを周期的および/または連続的に決定するために使用され得る。
【0027】
図1を参照すると、本開示の態様は、少なくとも一つの独立した血行動態測定装置22から信号入力を受信することであって、当該信号入力が対象の血行動態パラメータを表す、ことと、そこからNIRS循環THbデータを生成することと、を行うように構成された、NIRS感知装置20を含む。
【0028】
図1Aを参照すると、本開示の他の態様は、NIRS感知装置20および少なくとも一つの血行動態測定装置22(すなわち、心拍数、血圧、血管反応性、心拍出量、血流、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)などの血行動態パラメータを感知し、そこからNIRS循環THbデータを生成するように構成された、装置)を含むシステム48を含む。
図1Aに示すシステムは、NIRS感知装置20および血行動態測定装置22と通信するシステムコントローラ28を含む。
【0029】
本開示の他の態様は、組織酸素パラメータ(例えば、酸素飽和値、ヘモグロビン濃度値など)および少なくとも一つの血行動態パラメータを決定し、そこからNIRS循環THbデータを生成するように構成された、NIRS感知装置20を含む。
【0030】
本開示内で使用され得るNIRS感知装置20は、少なくとも一つの変換器24およびコントローラ26を有する。変換器24は、(例えば、変換器24とコントローラ26との間に信号通信を提供するように構成された)ケーブル30によってコントローラ26に接続されてもよく、または変換器24は、コントローラ26と無線通信してもよい。各変換器24は、少なくとも一つの光源および少なくとも一つの光検出器を含む。
図2および
図3は、本開示で使用され得るNIRS感知装置の変換器24の例を示す。変換器24は、ハウジング32、少なくとも一つの光源34、および一対の光検出器36、38を含む。ハウジング32は、典型的には、対象の身体に直接取り付けるように構成される。光源34および光検出器36、38は、ハウジング32に取り付けられてもよく、またはハウジング32内に組み込まれてもよい。一対の光検出器36、38は、「近傍」検出器36および「遠方」検出器38として記述されてもよい。「近傍」および「遠方」という用語は、光源34からの相対距離を示す。光源34は、それぞれが所定の波長で狭いスペクトル帯域幅で光を放出する、複数の発光ダイオード(「LED」)を含み得る。しかしながら、光源34はLEDに限定されない。光検出器36、38はそれぞれ、一つ以上のフォトダイオード、または他の光検出装置を含んでもよい。許容可能なNIRS感知装置の変換器24の非限定的な例は、特許文献5および6に記載されており、その両方はここに、参照によりその全体が組み込まれる。本開示は、任意の特定の変換器の構成に限定されない。
【0031】
NIRS感知装置のコントローラ26は、本明細書に記載のコンピュータ実装方法ステップのいずれかに関連して記載される動作を制御するために使用され得る一つ以上のプロセッサを含む。コントローラ26は、メモリデバイス、入力装置、出力装置などの構成要素をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「プロセッサ」という用語は、単独でまたはそれらの任意の組み合わせで、複数のプロセッサ、マルチコアCPU、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラなどを含む、任意のタイプのコンピューティング装置、計算回路、任意のタイプのプロセスまたは処理回路を指し得る。コントローラ26に含まれるプロセッサ(複数可)は、メモリに保存される一連の命令(例えば、本明細書に記載の方法ステップ/アルゴリズムを実装するための命令、光源34および光検出器36、38などの構成要素を制御するための命令)を実行することができる。メモリは、典型的には、揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリを含んでもよく、コンピュータ可読媒体であってもよい、非一時的メモリである。入力装置の非限定的な例としては、キーボード、ポインティングデバイス、タッチスクリーンなどが挙げられる。出力装置の非限定的な例としては、表示ユニット(例えば、グラフィカルユーザーインターフェースおよび/またはデータを表示するための)、またはプリンタなどが挙げられる。本開示の特徴は、デジタル電子回路、コンピュータハードウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装されてもよい。保存された命令は、メモリまたは記憶装置、例えば、プロセッサによって実行するためにアクセス可能な機械可読装置で有形に具体化されたコンピュータプログラム製品の形態を取ってもよい。コントローラ26は、光源34の動作を制御し、本明細書に記載の光検出器36、38から直接的または間接的に提供される光信号を処理するように、適合されてもよい。システムコントローラ28を含むシステムの実施形態では、システムコントローラは、上述のように構成されてもよい。
【0032】
コントローラ26は、変換器放出および感知された光に基づいて、酸素飽和値(「SnO2」、「StO2」、「SctO2」、「CrSO2」、「rSO2」などと呼ばれ得る)およびヘモグロビン濃度値(例えば、HbO2およびHb)を含む、血液酸素パラメータ値を決定するように適合されている。特許文献1、2および4はそれぞれ、分光光度血液モニタリングのための方法を開示している。特許文献1および2に開示されている方法は、一つ以上の対象に依存しない血液パラメータ値を決定する許容可能な例を表す。本開示の態様は、それらの特定の方法を含み得るが、これらを含むことに限定されない。特許文献4に開示される方法は、感知される特定の対象の組織の特定の物理的特性を説明する血液パラメータ値を決定する方法、すなわち、対象に依存する方法の許容可能な例を表す。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示内で使用されるNIRS感知装置20は、NIRS感知装置20がより高い精度でNIRS循環THbデータを非侵襲的に生成することを可能にするように較正されてもよく、すなわち、NIRS感知装置20の較正パラメータは、経験的データに基づいて、またはNIRS感知装置20を用いて感知される特定の対象から収集されたデータに基づいて、決定されてもよい。較正パラメータが、経験的データに基づいて、または特定の対象から収集されたデータに基づいて、どのように決定され得るかの例は、特許文献7に記載されており、その公報はここに、参照によりその全体が組み込まれる。特許文献7に記載される較正プロセスは、血液循環THbデータおよびNIRS組織THbデータを利用する。COオキシメータまたは血液ガス分析器などの侵襲的な血液サンプル分析装置39を使用して、採取された血液サンプルから血液循環THb値を決定してもよい。COオキシメータおよび血液ガス分析器は周知であり、実施可能性の目的で本明細書ではさらなる説明は必要とされない。NIRS組織THbデータを収集するための方法および装置も知られている。NIRS組織THbデータを収集するための方法および装置の非限定的な例は、特許文献1、2および4に記載されている。
【0034】
これらの較正された実施形態では、コントローラ26は、臨床的に十分な対象集団から収集された経験的データを表す一つ以上の較正パラメータを含む、保存された命令を含んでもよく、または個々の特異的である較正パラメータが決定されてもよい。
【0035】
較正パラメータが臨床的に十分な対象集団から収集された経験的データを表す実施形態では、経験的データは、臨床的に有意な数のデータセットを含んでもよく、各データセットは、対象からのNIRS組織THb値および対応する血液循環THb値を含む。各データセットは、散布図(例えば、血液循環THb値を表すY軸およびNIRS組織THb値を示すX軸を有するチャート。
図4を参照されたい)上の単一のデータ点40としてプロットすることができ、傾向線42(「最良適合」線と呼ばれる場合もある)は、データ点40から決定することができ、当該傾向線42は、傾斜値および切片値を有する。線形回帰技術を使用して、傾向線42、傾斜値、および切片値を定義してもよい。傾斜値は、経験的循環THbの較正傾斜、例えば、較正パラメータと呼んでもよい。いくつかの実例では、経験的データは、対象が段階的血液希釈プロトコルに供されている間に、対象から収集された複数のデータセットを含み得る。血液希釈プロトコル内の各ステップで、NIRS組織THb値および血液循環THb値が決定される。血液希釈プロトコルに供された対象からの各データセット(すなわち、NIRS組織THb値および血液循環THb値の対)は、散布図上の単一の点としてプロットされてもよい(例えば、
図5を参照されたい)。傾向線42A-42Eは、(例えば、線形回帰技術によって)各血液希釈データセットからのデータ点に適合されることができ、傾向線の傾斜値および切片値は、各データセットに対して決定されることができる。その後、臨床的に許容可能な数の傾斜を使用して、「経験的循環THbの較正傾斜」値として使用され得る、統計的に代表的な傾斜値(例えば、平均値)を生成することができる。
【0036】
経験的循環THbの較正傾斜がどのように決定されるかにかかわらず、それは、NIRS循環THbデータの決定において使用するために、NIRS感知装置20のコントローラ26と通信する非一時的メモリデバイス内に保存されてもよい。例えば、NIRS循環THBデータは、特許文献7に開示されるように、対象から決定された血液循環THb値、および保存された経験的循環THbの較正傾斜を有するNIRSオキシメータを使用して、対象について決定されてもよい。より具体的には、血液循環THb値は、COオキシメータを使用して分析された採取された血液サンプルから決定されてもよい。次いで、その血液循環THb値を、保存された経験的循環THbの較正傾斜を有するNIRS感知装置20に入力して、「対象の較正切片」を決定してもよい。対象の較正切片が決定されると、対象は、NIRS組織THb値を決定するように感知されてもよい。次いで、対象のNIRS循環THbは、NIRS組織THb値、経験的循環THbの較正傾斜、および対象の較正切片を使用して、例えば、以下の式1を使用して決定され得る。
NIRS循環THb=(NIRS組織THb×経験的循環THbの較正傾斜)+対象の較正切片 (式1)
【0037】
式1は、使用され得る数式の非限定的な例であることに留意すべきである。このようにして、「対象に依存しない」様式で較正されたNIRS感知装置20を使用して、対象についてのNIRS循環THb値を決定することができる。
【0038】
NIRS感知装置20が較正されて、NIRS感知装置20が対象特異的な様式でNIRS循環THbデータを非侵襲的に生成することを可能にする実施形態では、コントローラ26は、保存されたアルゴリズム命令を用いて、両方ともに特定の対象からの、各々がそれぞれのNIRS組織データ値(例えば、NIRS組織THb)と関連付けられた、複数の血液循環THb値(例えば、侵襲的に採取された血液サンプルからの)をユーザーが入力することを可能にするように構成されてもよい。各血液循環THb値は、対象が感知されて、それぞれのNIRS組織データ値を生成するのとほぼ同時に採取された血液サンプルから決定され得る。
図6を参照すると、各それぞれの時点からの血液循環THb値およびNIRS組織THb値は、データ点44A、44Bとして表され得る(すなわち、データ点44Aは、第一の時点からの血液循環THb値およびNIRS組織THb値を表し、データ点44Bは、第二の時点からの血液循環THb値およびNIRS組織THb値を表す、など)。
図6は、血液循環THb値を表すY軸およびNIRS組織THb値を示すX軸を有するチャート上にプロットされたそのようなデータ点44A、44Bを図示する。これらのデータ点は、傾向線46を介して接続されてもよく、傾斜値および切片値が決定されてもよい。傾斜値および切片値はそれぞれ、「個々の対象の較正傾斜」および「多点の対象の較正切片」と呼んでもよい。二つ以上のこうしたデータ点がプロットされる場合、傾向線46は、線形回帰技術、または単純な傾斜の式などを使用して決定され得る。
【0039】
ここでは「個々の対象の較正傾斜」および「多点の対象の較正切片」を用いて(保存されたアルゴリズム命令を介して)「較正され」た、NIRS感知装置20は、(NIRS感知装置20が較正されていることを除いて)その通常の様式でNIRS組織THbを決定するために使用され得る。次いで、NIRS循環THbを、例えば、以下の式2で決定することができる。
NIRS循環THb=(NIRS組織THb×個々の対象の較正傾斜)+多点の対象の較正切片 (式2)
【0040】
式2は、使用され得る数式の非限定的な例であることに留意すべきである。次いで、NIRS循環THbは、さらなる侵襲的な循環血液サンプルを必要とせずに、較正されたNIRS感知装置20を使用して、その特定の対象の監視中の任意の時点で決定され得る。本開示は、上述の様式で較正されたNIRS感知装置を必要としない。
【0041】
本開示の実施形態のNIRS感知装置のコントローラ26(またはシステムコントローラ28)は、対象のNIRS循環THb濃度の決定の精度に有害な影響を与え得る、一つ以上の「Hb交絡因子」の存在または不在を識別するように構成され得る。本明細書で使用される場合、「Hb交絡因子」という用語は、NIRS循環THbの決定を交絡し得る血管反応性および/または血行動態効果を指す。NIRS感知装置のコントローラ26(またはシステムコントローラ28)が一つ以上のHb交絡因子の存在または不在を識別するように構成される実施形態では、コントローラ26、28は、Hb交絡因子を説明し、それによってNIRS循環THb濃度の決定に対してそれが有し得る任意の効果を軽減するように、構成されてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、コントローラ26、28は、コントローラ26、28内に保存された経験的データに基づいて、Hb交絡因子を識別するように構成されてもよい。例えば、組織の体積当たりのヘモグロビン濃度、血管反応性、心拍出量、血流、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)、心拍数、血液量、血圧、血腫、充血などの血行動態パラメータデータと結合されたNIRS組織THbデータを含む、経験的データを収集してもよい。本明細書で示されるように、本開示のいくつかの実施形態では、血行動態パラメータは、NIRS感知装置20とは独立した血行動態測定装置22によって測定されてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、血行動態測定装置22およびNIRS感知装置20は両方とも、本開示のシステム48の一部であってもよく、互いに機能的に独立していてもよい。システム48内で、二つの装置20、22は、互いに通信してもよく、または共通のシステムコントローラ28と通信してもよい。代替的に、これらの実施形態のいくつかでは、NIRS感知装置20は、独立した血行動態測定装置22と通信するように構成されてもよく、すなわち、NIRS感知装置20は、独立した血行動態測定装置22から信号データを受信するように構成されてもよい。なおもさらなる実施形態では、NIRS感知装置20は、組織酸素パラメータ(例えば、酸素飽和値、ヘモグロビン濃度値など)および少なくとも一つの血行動態パラメータ(例えば、HR)の両方を決定し、そこからNIRS循環THbデータを生成するように、構成されてもよい。したがって、本開示の態様は、(較正されたまたは非較正の)NIRS組織THbの関数としてのNIRS循環THb、および組織の体積当たりのヘモグロビン濃度、血管反応性、心拍出量、血流、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)、心拍数、血液量、血圧、血腫、充血などの血行動態パラメータに関連するHb交絡因子の決定を可能にする。
NIRS循環THb=f(NIRS組織THb(較正されたまたは非較正の),HR,BP,CO,PaCO2など) (式3)
【0043】
交絡因子の一例として心拍数を使用して、本開示の態様は、心電図(「ECG」)などのHRモニターの形態での独立した血行動態測定装置22を利用してもよく、コントローラ26、28は、HRレベルに関する保存された経験的データを含んでもよい。前述の経験的データは、NIRS感知装置20、血液循環THbを決定することができる装置39(例えば、COオキシメータ)、および独立した血行動態測定装置22(例えば、心電図、「ECG」などのHRモニター)を用いて、臨床的に有用な数の対象を感知することによって開発されてもよい。これらの装置からのデータは、所定の範囲の心拍数、例えば、「安静時」心拍数から所定の上昇した心拍数までの範囲の心拍数について収集することができる。次いで、収集された経験的データを分析して、いずれかの血行動態効果が心拍数の上昇と関連しているとしたらどうであるかを確認してもよく、例えば、血液循環THbデータを、それぞれの心拍数でのNIRS組織THbデータと比較して、前述の血行動態効果を決定することができる。保存および分析された経験的データは、交絡因子(この場合、HR)に起因するNIRS組織Hbデータの第一の部分、および血液循環Hbに起因するNIRS組織Hbデータの第二の部分を識別してもよい。
【0044】
交絡因子の一例としての血圧に関して、本開示の態様は、独立した血圧測定装置22(例えば、Edwards Lifesciences CorporationのClearSight(登録商標)システム)などを利用してもよく、コントローラ26、28は、血圧レベルに関する保存された経験的データを含んでもよい。前述の経験的データは、NIRS感知装置20、血液循環THbを決定することができる装置39(例えば、COオキシメータ)、および独立した血行動態測定装置22(例えば、血圧モニター)を用いて、臨床的に有用な数の対象を感知することによって開発されてもよい。これらの装置からのデータは、所定の範囲の血圧レベル、例えば、高血圧、低血圧、および正常血圧に関連する血圧レベルについて収集することができる。次いで、収集された経験的データを分析して、いずれかの血行動態効果が血圧レベルと関連しているとしたらどうであるかを確認してもよく、例えば、血液循環THbデータを、それぞれの血圧レベルでのNIRS組織THbデータと比較して、前述の血行動態効果を決定することができる。保存および分析された経験的データは、交絡因子(例えば、高血圧または低血圧)に起因するNIRS組織Hbデータの第一の部分、および血液循環Hbに起因するNIRS組織Hbデータの第二の部分を識別し得る。
【0045】
交絡因子の一例としての心拍出量に関して、本開示の態様は、ドップラー心エコー図などを利用する心拍出量モニターの形態での独立した血行動態測定装置22を利用してもよく、コントローラ26、28は、心拍出量レベルに関する保存された経験的データを含んでもよい。前述の経験的データは、NIRS感知装置20、血液循環THbを決定することができる装置39(例えば、COオキシメータ)、および独立した血行動態測定装置22(例えば、心拍出量モニター)を用いて、臨床的に有用な数の対象を感知することによって開発されてもよい。これらの装置からのデータは、所定の範囲の心拍出量、例えば、「安静時」心拍出量から所定の上昇した心拍出量までの範囲の心拍出量について収集することができる。次いで、収集された経験的データを分析して、いずれかの血行動態効果が心拍出量の上昇と関連しているとしたらどうであるかを確認してもよく、例えば、血液循環THbデータを、それぞれの心拍出量レベルでのNIRS組織THbデータと比較して、前述の血行動態効果を決定することができる。保存および分析された経験的データは、交絡因子(この場合、心拍出量)に起因するNIRS組織Hbデータの第一の部分、および血液循環Hbに起因するNIRS組織Hbデータの第二の部分を識別し得る。
【0046】
潜在的なHb交絡因子としての血管反応性に関して、本開示の態様は、血管反応性を決定するように動作可能な独立した血行動態測定装置22を利用してもよく、コントローラ26、28は、血管反応性に関する保存された経験的データを含んでもよい。血管反応性を決定するために使用される特定のタイプの血行動態測定装置22は、利用される血管活性刺激に依存する可能性が高い。血管反応性を決定するための装置および方法は、当技術分野で知られている。経験的データは、NIRS感知装置20を用いて対象を感知してNIRS組織THbデータを決定し、血液サンプルを取得する一方で、臨床的に有用な数の対象を血管活性刺激(血管拡張または血管収縮)のレジメンに供することによって開発されてもよく、当該血液サンプルは、血液循環THbデータを決定するために分析することができる。NIRS組織THbデータおよび血液循環THbデータは、複数の異なる血管活性刺激レベル(血管拡張または血管収縮)で評価することができる。次いで、収集されたデータを分析して、いずれかの血行動態効果が血管反応性に起因するとしたらどうであるかを確認してもよく、例えば、血液循環THbデータを、それぞれの血管活性レベルでのNIRS組織THbデータと比較して、血行動態効果を決定することができる。保存および分析された経験的データは、交絡因子(この場合、血管反応性)に起因するNIRS組織Hbデータの第一の部分、および血液循環Hbに起因するNIRS組織Hbデータの第二の部分を識別し得る。
【0047】
血液中の二酸化炭素(CO2)は、脳灌流圧とは無関係に、脳血管反応性に影響を及ぼす。CO2が交絡因子であり得るかどうかを決定するために、本開示の態様は、経皮的血液ガスモニター(PtcCO2)、または呼気CO2センサ(EtCO2)などの形態での独立した血行動態測定装置22を利用してもよく、コントローラ26、28は、血液CO2レベルに関する保存された経験的データを含んでもよい。経験的データは、NIRS感知装置20を用いてそれらの対象を感知してNIRS組織THbデータを決定し、血液サンプル(血液循環THbデータを決定するために分析される)を取得し、血液CO2測定装置を用いて対象を感知する一方で、臨床的に有用な数の対象において異なる血液CO2レベルを生成することによって開発されてもよい。NIRS組織THbデータおよび血液循環THbデータは、複数の異なる血中CO2血液レベルで評価することができる。次いで、収集されたデータを分析して、いずれかの血行動態効果が異なる血液CO2レベルと関連しているとしたらどうであるかを確認してもよく、例えば、血液循環THbデータを、それぞれの血液CO2レベルでのNIRS組織THbデータと比較して、血行動態効果を決定することができる。保存および分析された経験的データは、交絡因子(この場合、CO2)に起因するNIRS組織Hbデータの第一の部分、および血液循環Hbに起因するNIRS組織Hbデータの第二の部分を識別してもよい。
【0048】
NIRS感知装置20が、拍動波形(例えば、拍動血流を反映する波形)を提供するように動作可能である場合、信号/特徴は、拍動波形から抽出され得、それは、NIRS循環THbの決定を交絡し得る血管反応性および/または血行動態的変化を識別するために使用され得る。拍動波形から抽出され得る信号/特徴は、1)拍動波形のAC/DC部分、および2)心臓周波数に関連するエネルギー(Ecardiac)と信号の総エネルギー(Etotal)との間の比を含む。これらの信号は、NIRS感知装置20によって感知される組織体積内に含まれる動脈血の量に関連する情報を含む。本開示のいくつかの実施形態では、NIRS感知装置20を用いてそれらの対象を感知してNIRS組織THbデータを決定し、血液サンプルを取得する一方で、臨床的に有用な数の対象からの拍動波形の信号/特徴に基づいて経験的データが開発されてもよく、当該血液サンプルは、血液循環THbデータを決定するために分析することができる。NIRS組織THbデータおよび血液循環THbデータは、複数の異なる拍動波形に対して評価することができる。次いで、収集されたデータを分析して、いずれかの血行動態効果がそれぞれの拍動波形に起因するとしたらどうであるかを確認してもよく、例えば、血液循環THbデータを、それぞれの拍動波形でのNIRS組織THbデータと比較して、血行動態効果を決定することができる。
【0049】
上記に提供されるHb交絡因子の例は、本開示の態様を例示して、本開示の理解および理解を促進することを意図しているが、すべての可能性のあるタイプのHb交絡因子を反映してはいない。
【0050】
上記で示すように、いくつかの実施形態では、NIRS感知装置20は、組織酸素パラメータ(例えば、酸素飽和値、ヘモグロビン濃度値など)および少なくとも一つの血行動態パラメータ(例えば、HR)の両方を決定するように構成されてもよく、NIRS感知装置20は、少なくとも一つの血行動態パラメータに関連する保存された経験的データを含んでもよい。したがって、これらの実施形態では、NIRS感知装置20自体が、(血行動態効果を説明する様式で)NIRS循環THbデータを生成するように構成されてもよく、独立した血行動態測定装置は必要とされない。NIRS感知装置20によって感知された拍動波形に基づいてHRデータを提供するように動作可能なNIRS感知装置20は、組織酸素パラメータおよび少なくとも一つの血行動態パラメータ(例えば、HR)の両方を決定するように構成されたNIRS感知装置20の非限定的な例である。前述の経験的データは、NIRS感知装置20および血液循環THbを決定することができる装置39(例えば、COオキシメータ)を用いて、臨床的に有用な数の対象を感知することによって開発されてもよい。これらの装置からのデータを、所定の範囲のHRについて収集することができる。次いで、収集された経験的データを分析して、いずれかの血行動態効果がHRの上昇と関連しているとしたらどうであるかを確認してもよく、例えば、血液循環THbデータを、(NIRS感知装置20から決定される)それぞれのHRでのNIRS組織THbデータと比較して、前述の血行動態効果を決定することができる。保存および分析された経験的データは、交絡因子(この場合、HR)に起因するNIRS組織Hbデータの第一の部分、および血液循環Hbに起因するNIRS組織Hbデータの第二の部分を識別してもよい。
【0051】
上記で示す様々なHb交絡因子に関連する経験的データを、NIRS組織Hbデータおよび血液循環THbデータとともに使用して、Hb交絡因子の存在(または不在)を識別し、存在する場合にはそのHb交絡因子を説明することの両方を行うことができる。Hb交絡因子を説明するプロセスは、Hb交絡因子に起因するNIRS組織Hbデータの第一の部分、および血液循環Hbに起因するNIRS組織Hbデータの第二の部分を識別することを含んでもよい。このようにして、Hb交絡因子に起因するNIRS組織Hbデータの第一の部分は、血液循環Hbに起因するNIRS組織Hbデータの第二の部分から分離または区別することができて、血行動態効果を受けない、または臨床的に重要でない方法でのみ血行動態効果を受ける血液Hbデータ(例えば、NIRS循環THbデータ)の決定を可能にすることができる。重要なことに、本開示のシステムの態様は、経験的データを使用してHb交絡因子を識別し、そのようなHb交絡因子を説明する非侵襲的なプロセスを含み、当該プロセスは、周期的に、かつ/または連続的にリアルタイムで、実施され得る。侵襲的な血液サンプリングおよび採取された血液サンプルの分析に依存する、先行技術の技術は、リアルタイムにかつ/または連続的にHb濃度データを提供することができない。
【0052】
図7は、本開示の態様を示す概略ブロック図である。NIRS組織THbは、NIRS感知装置20を使用して感知される。NIRS感知装置20によって生成される信号データ(ブロック50として表される)は、THb血液ヘモグロビン成分(上記では「血液循環Hbに起因するNIRS組織Hbデータ」と呼ばれる)を含み、血行動態因子が存在するかどうかに応じて、血行動態因子(上記では「一つ以上の交絡因子に起因するNIRS組織Hbデータ」と呼ばれる)に起因する部分を含んでもよい。ブロック50は、これらの部分がNIRS感知装置20によって生成される信号データ内に存在し得ることを、図式的に示すために示されている。「NIRS組織THb」構成要素の下方に、
図7は「血行動態パラメータ」ブロック52を図式的に図示している。ブロック図のこの部分は、血行動態パラメータを感知するように構成された血行動態測定装置22からの入力を表す。上述のように、血行動態測定装置22は、本開示のシステム48の一部であってもよく、または本開示のNIRS感知装置20と通信する独立した装置であってもよく、または本開示のNIRS感知装置20内に機能的に提供されてもよい。血行動態測定装置22の入力およびNIRS感知装置20の入力を利用して、Hb交絡因子の存在または不在を識別する。
図7はまた、ブロック図を容易にし、またCO
2モニターが本開示のいくつかの実施形態では利用され得るがすべての実施形態で必要とされるわけではない点を強調するために、「血行動態パラメータ」ブロックとは別に、CO
2モニターブロック54(別のタイプの血行動態測定装置22)を図式的に示す。
図7はまた、ブロック図を容易にし、またこのような拍動波形の特徴が本開示のいくつかの実施形態では利用され得るがすべての実施形態で必要とされるわけではない点を強調するために、「血行動態パラメータ」ブロックとは別に、「NIRS感知装置の拍動波形からの特徴」ブロック56(別のタイプの血行動態測定装置22)を図式的に示す。
図7は、「THb交絡パラメータを識別する」ブロック58を示す。上述のように、NIRS感知装置20(またはシステム48)の実施形態は、経験的データに基づいて、交絡因子の存在(または不在)を識別するように構成されてもよい。THb交絡パラメータが、NIRS循環THbの決定に有害な効果を有するであろう形態/程度で存在すると決定される場合、本開示のNIRS感知装置20(またはシステム48)および方法は、「THb交絡パラメータを説明する」ブロック60に示されるように、その交絡因子を説明するように構成されてもよい。上記で示すように、いくつかの実施形態では、「説明」は、THb交絡因子に起因するNIRS組織THbデータの部分を、血液循環THbに起因するNIRS組織THbデータの部分から分離または区別することを含んでもよい。説明は、血行動態効果を受けない、または臨床的に重要でない方法でのみ血行動態効果を受ける、血液THbデータ(例えば、NIRS循環THbデータ)の非侵襲的な決定を可能にする。THb交絡因子に起因するNIRS組織THbデータの部分を分離または区別することを含む説明は、血行動態効果を説明する非限定的な例である。説明(ブロック62「NIRS循環THbデータ(交絡因子の説明付き」に示す)から生じるNIRS循環THbデータは、次いで、NIRS循環THbデータとして報告され得る(ブロック64)。上述のいくつかの実施形態では、説明から生じるNIRS循環THbデータは、ブロック66に示すように、本明細書に記載の較正されたNIRS感知装置20(例えば、
図4および
図5、ならびにそれに関連する説明を参照されたい)を使用して処理され、その後ブロック64において報告されてもよい。いくつかの実施形態では、ブロック50に示すNIRS組織データ入力は、較正されたNIRS感知装置20を使用して生成されてもよい(本明細書に記載の通りであり、
図4および
図5、ならびにそれに関連する説明を参照されたい)。これらの実施形態では、ブロック66に関連する処理は、排除され得る。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態では、人工知能、またはより具体的には機械学習を使用して、本明細書に記載されるアルゴリズム、例えば、血行動態効果を説明するアルゴリズムの適用を容易にすることができる。例示すると、かつ本明細書に記載されるように、本開示の態様は、Hb交絡因子に起因するNIRS組織Hbデータの部分を分離または区別することを含む説明を含み、HB交絡因子は、経験的データに基づいてもよい。機械学習は、そのプロセスまたは本明細書に記載される他のものを容易にするために使用され得る。機械学習技術は知られており、本開示は、任意の特定の機械学習技術またはプロセスに限定されない。
【0054】
本開示の原理については、特定の装置および方法に関連して上述してきたが、この説明は、例示としてのみなされ、本開示の範囲の限定としてなされないことが明確に理解されるべきである。実施形態の完全な理解を提供するために、上述では具体的な詳細が与えられている。しかしながら、実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施されてもよいことが理解される。
【0055】
実施形態は、フローチャート、フロー図、ブロック図などとして示されるプロセスとして説明され得ることに留意する。これらの構造のうちの任意の一つは、動作を逐次的なプロセスとして説明し得るが、動作の多くは、並列または同時に実施されることができる。加えて、動作の順序は再配置されてもよい。プロセスは、方法、関数、手順、サブルーチン、サブプログラムなどに対応してもよい。
【0056】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、一つまたは複数を指す。例えば、「試料を含む」という用語は、単一または複数の試料を含み、「少なくとも一つの試料を含む」という語句と同等であるとみなされる。「または」という用語は、文脈が別途明確に指示しない限り、記載された代替要素の単一の要素、または二つ以上の要素の組み合わせを指す。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」は「含む(includes)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(comprising)」とは、追加の要素を除外することなく、「AもしくはB、またはAおよびBを含む(including)」を意味する。
【0057】
様々な接続が、本明細書および図面の要素の間に記載されることに留意する(その内容は、参照により本開示に含まれる)。これらの接続は一般的であり、別段の指定がない限り、直接的または間接的であってもよく、本明細書は、この点で限定することを意図していないことに留意する。取り付けられる、固定される、接続される、またはこれに類する用語への任意の言及は、永久的、取り外し可能、一時的、部分的、完全、および/または任意の他の可能な取り付けオプションを含んでもよい。
【0058】
本開示における要素、構成要素、または方法ステップは、要素、構成要素、または方法ステップが特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、一般向けを意図するものではない。本明細書の特許請求の範囲の要素は、米国特許法(35 U.S.C.)112(f)の規定の下で解釈されるべきではない。ただし、当該要素が「~のための手段」という語句を使用して明示的に記載されている場合はその限りではない。本明細書で使用される場合、「含む」、「備える」という用語、またはそれらの任意の他の変形は、要素の列記を含むプロセス、方法、物品、または装置がそれらの要素だけを含むのではなく、明示的に列記されていない、またはそのようなプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含んでもよいように、非排他的包含を網羅することを意図する。
【0059】
本開示の様々な発明的態様、概念、および特徴が、例示的な実施形態において組み合わせて具現化されるように、本明細書に記載および図示され得るが、これらの様々な態様、概念、および特徴は、個々にまたは様々な組み合わせおよびその部分的組み合わせのいずれかで、多くの代替の実施形態において使用され得る。本明細書で明示的に除外されない限り、すべてのそのような組み合わせおよび部分的組み合わせは、本出願の範囲内にあることが意図されている。なおもさらに、代替の材料、構造、構成、方法、装置、および構成要素など、開示の様々な態様、概念、および特徴に関する様々な代替の実施形態が本明細書に記載され得るが、そのような記載は、現在既知であるかまたは後に開発されるかにかかわらず、利用可能な代替の実施形態の完全なまたは網羅的な列記であることを意図していない。当業者であれば、そのような実施形態が本明細書に明示的に開示されていない場合でさえ、本発明の態様、概念、または特徴のうちの一つ以上を本出願の範囲内で追加の実施形態および使用に容易に取り入れ得る。例えば、本明細書の詳細な説明部分内の上述の例示的な実施形態では、要素は、個々のユニットとして説明されてもよく、説明を容易にするために互いに独立して示されてもよい。代替的な実施形態では、こうした要素は、組み合わされた要素として構成されてもよい。
【0060】
さらに、本開示のいくつかの特徴、概念、または態様が、本明細書において好ましい配置または方法であると説明され得るにもかかわらず、そのような説明は、明示的にそのように記載されない限り、そのような特徴が必須または必要であることを示唆することを意図していない。なおもさらに、例示的または代表的な値および範囲は、本出願の理解を助けるために含まれ得るが、そのような値および範囲は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、明示的にそのように記載された場合のみ、重要な値または範囲であることを意図している。
【国際調査報告】