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特表2024-523721ロキソプロフェンナトリウム含有組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ロキソプロフェンナトリウム含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20240621BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240621BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P27/02
A61P27/04
A61P29/00
A61P37/08
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/18
A61K9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500533
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2022104726
(87)【国際公開番号】W WO2023280318
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202110780094.9
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521556440
【氏名又は名称】コアンチョウ オキュサン オフサルミック バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】Room 402, No. 223 West Huanshi Road, Nansha District, Guangzhou, Guangdong 511400 China
(71)【出願人】
【識別番号】523236744
【氏名又は名称】オキュサン・オフサルミック・ファーマスーティカル(コアンチョウ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCUSUN OPHTHALMIC PHARMACEUTICAL(GUANGZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor 1-3,Block A,Building 203,Tongfa Road 2,Wanqingsha Town,Nansha District,Guangzhou,Guangdong 511400 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】周 勝安
(72)【発明者】
【氏名】于 垂亮
(72)【発明者】
【氏名】王 延東
(72)【発明者】
【氏名】馮 錫明
(72)【発明者】
【氏名】李 亜雄
(72)【発明者】
【氏名】呉 美容
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA16
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD08F
4C076DD22Z
4C076DD23D
4C076DD30Z
4C076DD37R
4C076DD38D
4C076DD41R
4C076DD43Z
4C076DD46
4C076DD48R
4C076DD49E
4C076DD49R
4C076DD65R
4C076DD67D
4C076EE37
4C076FF14
4C076FF15
4C076FF39
4C076FF61
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA47
4C206MA48
4C206MA78
4C206NA03
4C206ZA33
4C206ZB11
4C206ZB13
(57)【要約】
ロキソプロフェンナトリウム含有組成物であって、前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びポリソルベート80を含み、ここで、前記ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、0.8×10~1.6×10である。前記組成物は、安定性がよく、保存可能期限が長く、使用しやすい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェンナトリウム含有組成物であって、前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びポリソルベート80を含み、ここで、前記ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は0.8×10~1.6×10である、ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、0.8×10~1.4×10である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、0.8×10~1.0×10、1.0×10~1.2×10又は1.2×10~1.4×10である、ことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びポリソルベート80の質量比は、(1~4):(0.5~2):(0.1~1)である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びポリソルベート80の質量比は、1:(0.5~1.5):(0.1~1)である、ことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びポリソルベート80の質量比は、1:(0.8~1.2):(0.2~0.5)である、ことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、金属イオン錯化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤及び抗菌剤のうちの1つ又は複数をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属イオン錯化剤は、エデト酸二ナトリウムを選択し、及び/又は、
前記浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、グルコース、塩化カリウムからなる群より選ばれる1つ又は複数であり、及び/又は、
前記pH調整剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ホウ酸、ホウ砂からなる群より選ばれる1つ又は複数であり、及び/又は、
前記抗菌剤は、チメロサール、四級アンモニウム塩類、ドミフェン、クロルヘキシジン、クロロブタノール、パラベン類、ソルビン酸からなる群より選ばれる1つ又は複数である、ことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、塩化ナトリウム及びポリソルベート80を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1~4部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5~2部、
エデト酸二ナトリウム 0.05~0.2部、
塩化ナトリウム 4~10部、
ポリソルベート80 0.1~1部の成分を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.8~1.2部、
エデト酸二ナトリウム 0.05~0.1部、
塩化ナトリウム 4~9部、
ポリソルベート80 0.2~0.5部の成分を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、ポリソルベート80及び塩化ベンザルコニウムを含む、ことを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1~4部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5~2部、
エデト酸二ナトリウム 0.05~0.2部、
塩化ナトリウム 4~10部、
ポリソルベート80 0.1~1部、
塩化ベンザルコニウム 0.05~0.2部の成分を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.8~1.2部、
エデト酸二ナトリウム 0.05~0.1部、
塩化ナトリウム 4~9部、
ポリソルベート80 0.2~0.5部、
塩化ベンザルコニウム 0.05~0.1部の成分を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、水性溶液の形態である、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記水性溶液中のロキソプロフェンナトリウムの濃度は、0.05~5mg/mLである、ことを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記水性溶液中のロキソプロフェンナトリウムの濃度は、1~2mg/mLである、ことを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、液剤、ゲル剤又はクリーム剤である、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
ヒアルロン酸ナトリウム水溶液を調製し、ロキソプロフェンナトリウムを含む他の成分を水で溶解した後、前記ヒアルロン酸ナトリウム水溶液と混合し、水を加えて定容するステップを含む、ことを特徴とする請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項20】
前記ヒアルロン酸ナトリウムを溶解するための水の温度が40℃以下であり、及び/又は、製造過程において、撹拌状態を保持する、ことを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
眼科疾患を予防又は治療する薬物の製造における請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項22】
前記眼科疾患は、炎症である、ことを特徴とする請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記眼科疾患は、アレルギー性結膜炎又はブドウ膜炎である、ことを特徴とする請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記眼科疾患は、ドライアイである、ことを特徴とする請求項21に記載の使用。
【請求項25】
前記眼科疾患は、涙腺機能障害によるドライアイ、涙液分泌減少によるドライアイ、涙の膜の安定性の低下によるドライアイ又は角膜上皮細胞損傷によるドライアイであり、又は、
前記眼科疾患は、涙腺機能障害又は涙液分泌減少と表現されるものであり、又は、
前記眼科疾患は、涙の膜の安定性の低下であり、又は、
前記眼科疾患は、角膜上皮細胞損傷又は眼損傷による局所浮腫である、ことを特徴とする請求項24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、出願日が2021年07月09日である中国特許出願202110780094.9の優先権を主張し、それらの全内容が引用により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬分野に関し、具体的には、ロキソプロフェンナトリウム含有組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)は、抗炎症、解熱、鎮痛作用を有し、グルココルチコイド系薬物が多くの重篤な有害反応を招きやすいという欠点がなく、現在、眼科臨床で重要な抗炎症薬となっている。その点眼液は、眼外傷、レーザー手術及び白内障手術後の消炎及び術中の縮瞳の抑制に用いられ、良好な効果を奏する。
【0004】
ロキソプロフェンナトリウム(化学名:2-[4-(2-オキソシクロペンタン-1-イルメチル)フェニル]プロピオン酸ナトリウム二水和物)は、非ステロイド性抗炎症薬であり、その作用機序はプロスタグランジンの合成作用を阻害することであり、作用ターゲットポイントがシクロオキシゲナーゼである。現在、当該化合物は、関節リウマチ、腰痛、肩こり、頚肩腕症候群などの抗炎症鎮痛、手術、外傷後及び抜歯後の鎮痛消炎と急性上気道炎症の解熱鎮痛などに臨床的に用いられている。
【0005】
実使用において、ロキソプロフェンナトリウムを含有する点眼液は、長期間放置の場合で、化学的安定性が悪くなり、特に開環不純物の含有量が高い場合がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、従来技術の欠陥を解消し、安定性に優れ、保存可能期限が長いロキソプロフェンナトリウム含有組成物を提供することを目的とする。
【0007】
具体的には、本発明は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びポリソルベート80を含み、そのうち前記ヒアルロン酸ナトリウムの分子量が0.8×10~1.6×10であるロキソプロフェンナトリウム含有組成物を提供する。
【0008】
本発明の創造的な知見によれば、特定の分子量のヒアルロン酸ナトリウム及びポリソルベート80をロキソプロフェンナトリウムと併用することにより、ロキソプロフェンナトリウム自体の化学的安定性を著しく向上させ、それによってより安定した品質の組成物を得ることができる。
【0009】
本発明で使用されるヒアルロン酸ナトリウム(Sodium Hyaluronate)は、ヒアルロン酸(Hyaluronic Acid、HAと略称する)のナトリウム塩の形態である。ヒアルロン酸は、D-グルクロノとN-アセチルグルコサミンの二糖単位が交互に繰り返し形成されたホモポリマーであり、その重量平均分子量は、一般に10万~1000万Daであり、現在、臨床で応用されているヒアルロン酸ナトリウム製剤、例えば眼科手術用の粘弾剤、関節炎を治療する関節腔注射液、術後癒着防止剤、点眼液などにおいて、使用されるHAの平均分子量は、一般的に50万~500万Daである。本発明によれば、分子量が0.8×10~1.6×10の範囲であるヒアルロン酸ナトリウムを用い、ポリソルベート80と配合して使用することにより、プロソプロフェンナトリウムの安定性を著しく向上させることができることを見出した。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、0.8×10~1.4×10である。具体的には、本発明に係る組成物において、前記ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、0.8×10~1.0×10であってもよく、又は1.0×10~1.2×10、又は1.2×10~1.4×10である。本発明において、ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、重量平均分子量(M)を意味し、単位は、ダルトン(Da)である。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びポリソルベート80の質量比は、(1~4):(0.5~2):(0.1~1)、好ましくは1:(0.5~1.5):(0.1~1)、より好ましくは1:(0.8~1.2):(0.2~0.5)である。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、金属イオン錯化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、界面活性剤、抗菌剤のうちの1つ又は複数をさらに含有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、少なくとも金属イオン錯化剤をさらに含有する。ロキソプロフェンナトリウムと前記金属イオン錯化剤との質量比は、好ましくは(1~4):(0.05~0.2)、より好ましくは1:(0.05~0.1)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記金属イオン錯化剤は、エデト酸二ナトリウムである。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、少なくとも浸透圧調整剤をさらに含有する。本発明では、浸透圧調整剤の使用量は、実際の需要に応じて決定され、最終生成物の浸透圧値を人体の使用に適したレベルに調整すればよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、グルコース、塩化カリウムからなる群より選ばれる1つ又は複数であり、好ましくは塩化ナトリウムである。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、少なくともpH調整剤をさらに含有する。本発明では、pH調整剤の使用量は、実際の需要に応じて決定され、最終生成物のpHを人体の使用に適したレベルに調整すればよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記pH調整剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ホウ酸、ホウ砂からなる群より選ばれる1つ又は複数である。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、少なくとも抗菌剤をさらに含有する。ロキソプロフェンナトリウムと前記抗菌剤との質量比は、好ましくは(1~4):(0.05~0.2)、より好ましくは1:(0.05~0.1)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記抗菌剤は、チメロサール、四級アンモニウム塩類、ドミフェン、クロルヘキシジン、クロロブタノール、パラベン類、ソルビン酸からなる群より選ばれる1つ又は複数であり、好ましくは塩化ベンザルコニウムである。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、塩化ナトリウム及びポリソルベート80を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1~4部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5~2部、
エデト酸二ナトリウム 0.05~0.2部、
塩化ナトリウム 4~10部、
ポリソルベート80 0.1~1部の成分を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.8~1.2部、
エデト酸二ナトリウム 0.05~0.1部、
塩化ナトリウム 4~9部、
ポリソルベート80 0.2~0.5部の成分を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、ポリソルベート80及び塩化ベンザルコニウムを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1~4部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.5~2部、
エデト酸二ナトリウム 0.05~0.2部、
塩化ナトリウム 4~10部、
ポリソルベート80 0.1~1部、
塩化ベンザルコニウム 0.05~0.2部の成分を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、重量部で、
ロキソプロフェンナトリウム 1部、
ヒアルロン酸ナトリウム 0.8~1.2部、
エデト酸二ナトリウム 0.05~0.1部、
塩化ナトリウム 4~9部、
ポリソルベート80 0.2~0.5部、
塩化ベンザルコニウム 0.05~0.1部の成分を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、水性溶液の形態である。前記水性溶液中のロキソプロフェンナトリウムの濃度は、好ましくは0.05~5mg/mL、より好ましくは1~2mg/mLである。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、液剤、例えば点眼液である。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、ゲル剤、例えば眼用ゲルである。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記ロキソプロフェンナトリウム含有組成物は、クリーム剤、例えば眼用クリームである。
【0031】
第2の態様によれば、本発明は、前記組成物の製造方法を提供する。
【0032】
具体的には、前記組成物の製造方法は、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液を調製し、ロキソプロフェンナトリウムを含む他の成分を水で溶解した後、前記ヒアルロン酸ナトリウム水溶液と混合し、水を加えて定容するステップを含む。
【0033】
本発明に係る製造過程において、ヒアルロン酸ナトリウムが完全に溶解し、溶液が清澄になることを確保するために、全過程で撹拌状態を保持することが好ましい。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリソルベート80、金属イオン封鎖剤及び浸透圧調整剤を含有し、当該組成物を製造する方法は、
ヒアルロン酸ナトリウムを水で溶解し、溶液Iを得、ヒアルロン酸ナトリウムを溶解するための水の温度が40℃以下であることが好ましいステップ(1)と、
ロキソプロフェンナトリウムを水で溶解し、さらに金属イオン封鎖剤及び浸透圧調整剤を加えて、溶液IIを得るステップ(2)と、
溶液IIを溶液Iに加えて、溶液IIIを得るステップ(3)と、
ポリソルベート80を水で溶解し、得られた溶液を溶液IIIに加えるステップ(4)と、
水を加えて全量に定容するステップ(5)と、を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、ロキソプロフェンナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリソルベート80、金属イオン封鎖剤、浸透圧調整剤及び抗菌剤を含有し、当該組成物を製造する方法は、
ヒアルロン酸ナトリウムを水で溶解し、溶液Iを得、ヒアルロン酸ナトリウムを溶解するための水の温度が40℃以下であることが好ましいステップ(1)と、
ロキソプロフェンナトリウムを水で溶解し、さらに金属イオン封鎖剤、浸透圧調整剤を加えて、溶液IIを得るステップ(2)と、
溶液IIを溶液Iに加え、溶液IIIを得るステップ(3)と、
ポリソルベート80と抗菌剤を水でそれぞれ溶解し、得られた2つの溶液を溶液IIIに加えるステップ(4)と、
水を加えて全量に定容するステップ(5)と、を含む。
【0036】
第3の態様によれば、本発明は、眼科疾患を予防又は治療する薬物の製造における第1の態様に記載の組成物の使用を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記眼科疾患は、炎症、例えばアレルギー性結膜炎又はブドウ膜炎である。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記眼科疾患は、ドライアイ、例えば、涙腺機能障害によるドライアイ、涙液分泌減少によるドライアイ、涙の膜の安定性の低下によるドライアイ又は角膜上皮細胞損傷によるドライアイである。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記眼科疾患は、涙腺機能障害又は涙液分泌減少と表現されるものである。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記眼科疾患は、涙の膜の安定性の低下と表現されるものである。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記眼科疾患は、角膜上皮細胞損傷又は眼損傷による局所浮腫である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
以下の各実施例では、ロキソプロフェンナトリウムの質量は、C1517NaOで計算する。
【0044】
実施例1
本実施例は、ロキソプロフェンナトリウム5g、分子量が0.972×10であるヒアルロン酸ナトリウム5g、エデト酸二ナトリウム0.5g、塩化ナトリウム42.5g、ポリソルベート802.5g、塩化ベンザルコニウム0.5gを組成として、注射用水を全量5Lまで加えたロキソプロフェンナトリウム含有水溶液組成物を提供する。
本実施例は、前記組成物の製造方法を同時に提供し、具体的には、
(1)ヒアルロン酸ナトリウムを秤量し、約60%の処方量の注射用水(40℃以下)を取って、撹拌しながらヒアルロン酸ナトリウムを分散添加し、溶液Iを得、
(2)ロキソプロフェンナトリウムを秤量し、少量の水を加えて溶解させ、塩化ナトリウム、エデト酸二ナトリウムを加えて、溶解まで撹拌し、溶液IIを得、溶液IIを溶液Iに加え、溶液IIIを得、撹拌し続け、
(3)ポリソルベート80を秤量し、少量の注射用水を加え、撹拌して溶解させた後、溶液IIIに加え、
(4)10%の処方量の注射用水で塩化ベンザルコニウムを溶解し、溶液IIIに加え、溶液が清澄になるまで撹拌し続け、
(5)注射用水を加えて全量まで定容した。
上記水溶液組成物は、点眼液に直接加工されることができ、注射用水を全量まで加えた上で、0.22μmミリポアフィルタで濾過して除菌し、さらに点眼剤ボトルで無菌環境にて分注すればよい。
【0045】
実施例2
本実施例は、ロキソプロフェンナトリウム含有水溶液組成物を提供し、実施例1と比較して、ヒアルロン酸ナトリウムの分子量が1.353×10であることのみが相違する。
【0046】
実施例3
本実施例は、ロキソプロフェンナトリウム含有水溶液組成物を提供し、実施例1と比較して、ロキソプロフェンナトリウムの使用量が10gで、ヒアルロン酸ナトリウムの分子量が0.878×10であることのみが相違する。
【0047】
実施例4
本実施例は、ロキソプロフェンナトリウム含有水溶液組成物を提供し、実施例3と比較して、ヒアルロン酸ナトリウムの分子量が1.276×10であることのみが相違する。
【0048】
実施例5:アルカリ焼けによるニュージーランドウサギのドライアイへの影響
1、モデルの構築方法
各ニュージーランドウサギに対して1%のプロポフォール注射液を用いて静脈注射で麻酔し(1.5ml/kg)、動物が麻酔安定を維持した後、2%の塩酸リドカイン注射液100μlで眼表面に点眼麻酔した。動物は麻酔第三期に維持したまま、1枚の約10mm×5mmの大きさのろ紙で1mol/LのNaOH溶液をつけてから、ウサギの角膜縁上部から約2mmの瞼結膜に置き、90s後、直ちに約50mlの0.9%塩化ナトリウム注射液で結膜嚢を繰り返し洗浄した。
2、結膜ルシフェリン染色
ピペットを用いて、2μlの0.5%ウラニン溶液をニュージーランドウサギの右目結膜嚢内に滴下し、5s後に0.9%塩化ナトリウム注射液で余分なルシフェリンを洗い流し、スリットランプ顕微鏡下で、コバルトブルー分散光で結膜の染色状況を観察した。結膜蛍光染色スコア基準:結膜を4つの象限に分け、各象限は、染色の程度及び面積に基づいて、4レベルに分けられており、0点:無染色、1点:散在点状染色、2点:密集点状染色、3点:シート状染色、合計12点である(左目はモデリングされず、陰性対照眼とした)。
3、結膜ローズベンガル染色
ピペットを用いて、2μlの1%のローズベンガルをニュージーランドウサギの右目結膜嚢内に滴下し、5s後に0.9%塩化ナトリウム注射液で余分なローズベンガルを洗い流し、スリットランプ顕微鏡下で、緑光で結膜の染色状況を観察した。結膜ローズベンガル染色スコア基準は結膜蛍光染色基準と同様である。
4、涙液分泌量(両眼)
Schirmer I実験(Schirmer I test)を用いて、ニュージーランドウサギの涙液の分泌を測定した。即ち、眼科ピンセットでフェノールレッド綿線を挟み、ニュージーランドウサギの外側眼角部に置き、60秒後に取り出し、フェノールレッド綿線の濡れ長さを測定した。
5、涙の膜の破裂時間(両眼)
調整可能なピペットを用いて、2μlの0.5%ウラニン溶液をニュージーランドウサギの眼下瞼結膜嚢内に滴下し、一定力で手動で数回瞬目させた後、一定力でウサギの眼を押し広げ、スリットランプ顕微鏡、コバルトブルーライトを用いて角膜を観察し、角膜の緑色薄膜に黒い領域が現れた場合、涙の膜が破裂したことを示す。3回連続測定し、その平均値を取った。
本発明の実施例1に係る組成物は、アルカリ焼けによるウサギのドライアイモデルに対して明らかな改善効果を奏し、その改善効果は、主に、涙の膜の安定性を向上させること、涙液の分泌量を増加させること及び角膜上皮細胞の損傷を緩和すること(主に眼損傷局所浮腫を低減すること)と表わしている。
【0049】
実施例6:刺激性実験
1、点眼液由来:
プラノプロフェン点眼液:市販のもの、メーカー:Senju Pharmaceutical Co.,Ltd.Fukusaki Plant、
ジクロフェナクナトリウム点眼液:市販のもの、メーカー:鄭州卓峰製薬有限公司、
ロキソプロフェンナトリウム点眼液:実施例1(点眼液に製造したもの)。
2、実験操作:各群から20名のドライアイ患者をそれぞれ選択し、三種類の点眼液をランダム化二重盲に使用し、濃度がいずれも0.1%のプラノプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウムである点眼液の患者眼部に対する刺激性症状を比較した。眼部刺激の症状には、例えば焼け感、チクチク感、又は涙などの症状が含まれる。
本発明の実施例1に係る点眼液は患者のみが眼部刺激症状が現れ、そして刺激性が比較的小さい涙症状であり、他の患者は使用後、目の快適感が強くなることを一般に反映しているため、長期間の使用が可能であるとともに、小児のドライアイ患者への応用にも適している。
【0050】
実施例7:安定性検討
実施例1、実施例4で得られた組成物を、それぞれ6月(40±2℃/RH25%±5%)加速及び長期間24月(25±2℃/RH40%±5%)安定性検討を行った。
以上の結果から、本発明の実施例1及び実施例4に係る組成物は、加速実験及び長期間安定性実験においていずれも良好な安定性を示し、不純物の含有量が少ないことが明らかとなった。また、本発明では、実施例2及び実施例3に係る組成物に対して、同じ方法で検出したが、安定性は実施例1及び実施例4と有意差がなかった。
【0051】
実施例8 I期臨床安全性研究
1、点眼液由来:
ロキソプロフェンナトリウム点眼液:実施例1に基づいて製造した異なる濃度の点眼液。
プラセボ:実施例1においてロキソプロフェンナトリウムを添加せず、他の成分は同じであるもの。
2、研究方法:シングルサイト、ランダム、二重盲、単回及び複数回の投与量インクリメント設計を採用しており、ロキソプロフェンナトリウム点眼液の安全性、耐性及び薬物動態学的特徴を探索した。単回投与は、0.025mg(濃度0.5mg/ml)、0.05mg(濃度1mg/ml)、0.1mg(濃度2mg/ml)、0.2mg(濃度4mg/mL)投与量を含み、投与方法は、1滴/回、1回/日とし、複数回投与は、0.05mg、0.1mg、0.2mg投与量を含み、投与方法は、1滴/回、4回/日とした。薬物動態試験データを表5に示した。
注:Cmax:最高血漿中濃度
AUC0-t:時間曲線下面積(0~t時間)
max:最高血漿中濃度到達時間
結論:臨床I期の試験結果は、単回投与後に点眼液で点眼することによる局所的な有害反応に加え、全身性有害反応が発生しなかった。複数回投与後に目の不快感有害反応が発生した以外、試験薬でもプラセボでも全身性有害反応が発生しなかった。表5の薬物動態学結果を結合して分かるように、ロキソプロフェンナトリウム点眼液は、投与後に速やかに循環系に入るが、全身暴露量が低く、且つ全身の有害反応が、介入せずにすぐにベースラインレベルに戻ることができ、ロキソプロフェンナトリウム点眼液の全身性安全性が良好であることが示された。
また、単回及び複数回の投与試験眼安全性検査結果に基づいて、ロキソプロフェンナトリウム点眼液投与後の眼圧、視力はいずれも影響を受けず、ベースラインに比べて、標準的な眼科検査及びカラー撮影写真の結果もいずれも明らかに変化せず、眼部耐性観察によれば、点眼による眼の不快感及び眼刺激の総合発生率が高くなく、且つ介入せずにすぐに正常に戻ることができ、集計結果は、ロキソプロフェンナトリウム点眼液の眼部安全性が良好で、且つ本試験で設定された最大投与量で耐性が良好であることを表している。
【0052】
以上、一般的説明、具体的な実施形態及び試験を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明を基礎として、いくつかの修正又は改良ができることは当業者にとって明らかである。したがって、本発明の精神から逸脱することなく行われるこれらの修正又は改良は、いずれも本発明の特許請求の範囲に属する。
【国際調査報告】