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▶ テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 12/00 20060101AFI20240621BHJP
   C12C 1/16 20060101ALI20240621BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C12C12/00
C12C1/16
A23L2/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501092
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022069114
(87)【国際公開番号】W WO2023285311
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21185314.8
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸川 義信
(72)【発明者】
【氏名】ベーイェッソン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】スタニック、ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】リンダウ、ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】ポール、ベルナルド
(72)【発明者】
【氏名】フィニー、ランディ
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B117LG16
4B117LK24
4B117LP20
4B128CP09
4B128CP37
(57)【要約】
穀物原料からビールと非発酵飲料を組み合わせて製造する方法は、ビール製造における副産物を非発酵飲料の製造に利用し、それによって資源効率を向上させる。本方法は、穀物原料をマッシュに加工する工程(301)と、マッシュを発酵可能な麦汁と残留物とに分離する工程(302)と、残留物材料は残留物の少なくとも一部を含み、残留物材料をスラリーに加工する工程(303)と、スラリーを液体成分と固体成分とに分離する工程(304)と、液体成分を非発酵飲料に加工する工程(305)と、発酵可能な麦汁をビールに加工する工程(306)と、非発酵飲料を出力する工程(307)と、ビールを出力する工程(309)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物原料からビールと非発酵飲料を組み合わせて製造する方法であって、
前記穀物原料をマッシュに加工し(301)、
前記マッシュを発酵可能な麦汁と残留物(R1)に分離し(302)、
残留物材料(R2)は、前記残留物(R1)の少なくとも一部を含み、前記残留物材料(R2)をスラリーに加工し(303)、
前記スラリーを液体成分と固体成分に分離し(304)、
前記液体成分を非発酵飲料に加工し(305)、
前記発酵可能な麦汁をビールに加工し(306)、
前記非発酵飲料を出力し(307)、
前記ビールを出力する(309)、
方法。
【請求項2】
前記残留物材料の加工(303)が、前記残留物材料(R2)に水(303B)を添加することによって開始される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記残留物材料の加工(303)が、前記残留物材料(R2)を水と混合(303C)することを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記残留物材料の加工(303)が、前記マッシュの分離(302)から予め定義された最大時間(Δmax)以内に開始される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
予め定義された最大時間(Δmax)が8、6、4又は2時間未満である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記残留物材料の加工(303)の開始から前記非発酵飲料の前記出力(307)までの時間(ΔP2)が、予め定義された最大時間(Δmax)に等しいか、又はそれ以下である、
請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記残留物材料(R2)が、前記残留物(R1)の前記少なくとも一部の改質のための積極的な処理なしで得られる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記発酵性麦汁の加工(306)が完了する前に、非発酵飲料を出力(307)する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マッシュを分離(302)によって生成された前記残留物(R1)と、前記残留物材料(R2)とが、ほぼ同じ相対水分含量を有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記残留物材料(R2)が60%~90%の範囲、好ましくは70%~85%の範囲の相対含水率を有する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マッシュを分離すること(302)によって生成されるとき、前記残留物(R1)が、55℃~90℃の範囲、好ましくは65℃以上又は70℃以上、及び好ましくは85℃以下又は80℃以下の温度を有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記残留物材料の加工(303)が開始されるとき、前記残留物材料(R2)が、40℃~99℃の範囲、好ましくは50℃以上又は55℃以上、及び好ましくは85℃以下又は80℃以下の温度を有する、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記残留物材料の加工(303)が開始されるとき、前記残留物材料(R2)が、前記分離(302)によってマッシュが生成されるときの前記残留物(R1)の温度に等しいか、又はそれ以下の温度を有する、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記残留物材料(R2)と前記残留物(R1)との間の温度差が15℃未満、好ましくは10℃未満又は5℃未満である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記スラリーの酵素処理を行い(503A、503C)、
酵素活性を不活性化するために、前記スラリー又は液体成分を処理し(504)、
前記液体成分を非発酵飲料に加工する(305)際において、
液体成分中に植物油を均一に分散させるために、植物油を液体成分と混合し(305B)、
非発酵飲料を低温殺菌又は滅菌する(505)、
をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に飲料製造分野に関し、特にビール及び非発酵飲料の資源効率的製造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール製造用の工場には、クラフトビール醸造所や地ビール醸造所の小規模な工場から、工業的規模でビールを製造する工場まで、さまざまな形態がある。ビールの醸造は、少なくとも3つの主な工程、すなわち、マッシング、ロータリング、発酵を備える。マッシングとは、粉砕した穀物(通常は麦芽)を水と混合し、酵素が穀物中のデンプンを麦芽糖などの糖に分解するように、温度を制御しながら休ませながら加熱する工程である。マッシングの結果、マッシュが得られる。ロータリングは、マッシュを発酵可能な麦汁と残留物(retentate)に分離する工程である。ロータリングはローターチューン又はマッシュフィルターで行う。発酵は、麦汁に酵母が添加された時点から始まる。この段階で初めてビールと呼ばれる。この段階で麦汁中の発酵性糖類はアルコールと二酸化炭素に代謝される。
【0003】
ロータリングからの残留物は醸造の副産物であり、ドラフ又は醸造者の使用済み穀物として知られている。ビール製造工場では大量に生産され、例えば100リットルのビールあたり15キログラム生産される。残留物は栄養価が高く、タンパク質、繊維質、炭水化物を含む。同時に、残留物は微生物の活動によって急速に分解され、ロータリング後の数時間で腐敗することもある。現在、残留物は家畜の飼料やバイオガス製造の原料として使用されている。また、例えば、WO2019/023647号では、残留物を乾燥・製粉してタンパク質が豊富な小麦粉に加工することも提案されている。しかし、今日のビール製造工場では、大量の残留物が廃棄されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述の不都合の少なくとも部分的に克服することである。
【0005】
そのような目的の一つが、ビール製造における資源効率の改善である。
【0006】
もう一つの目的は、ビール製造の残留物を利用して、食品安全規制に適合した非発酵飲料を製造する技術を提供することである。
【0007】
さらなる目的は、既存のビール製造に簡単に統合でき、製造に柔軟性を持たせることができる技術を提供することである。
【0008】
これらの目的の1つ以上、及び以下の説明から明らかになる目的は、独立請求項に係る穀物原料からのビールと非発酵飲料の複合製造方法によって少なくとも部分的に達成され、その実施形態は従属請求項によって定義される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、穀物原料からビールと非発酵飲料を組み合わせて製造する方法である。本方法は、穀物原料をマッシュに加工する工程と、マッシュを発酵可能な麦汁と残留物とに分離する工程と、残留物材料が残留物の少なくとも一部を含み、残留物材料をスラリーに加工する工程と、スラリーを液体成分と固体成分とに分離する工程と、液体成分を非発酵飲料に加工する工程と、発酵可能な麦汁をビールに加工する工程と、非発酵飲料を出力する工程と、ビールを出力する工程とを含む。
【0010】
第1の態様は、単一の出発原料から2種類の飲料を製造することである。この方法は、ビール製造の際にマッシュから分離される残留物を利用することで、非発酵飲料の製造とビールの製造を統合する。残留物は、ビールメーカーが定期的に貯蔵し、その後廃棄する副産物であり、多くの場合、その廃棄のために料金を支払っている。本方法では、ビール製造工場内で残留物の少なくとも一部を消費し、現代社会で需要の高い非発酵飲料を製造する。この非発酵飲料は、「植物性ミルク」として知られるタイプの飲料に該当するように製造され得る植物性飲料である。植物性ミルクは、乳製品に代わる植物性飲料として飲まれているビーガン飲料であり、多くの場合、クリーミーな口当たりを提供する。植物性ミルクは、代替ミルク、模擬ミルク、又はビーガンミルクとしても知られている。第1の態様の方法は、タンパク質含量の高い非発酵飲料を製造することができるため、菜食主義者や代替タンパク質源を求める人々に適している。
【0011】
第1の態様の実施形態は、例えばエネルギー効率、食品安全規制への準拠、生産における柔軟性などの点で、さらなる技術的利点を可能にする。
【0012】
さらに他の目的、態様、ならびに特徴、実施形態及び技術的利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ビール及び非発酵飲料の製造工場の一例を示す平面図である。
図2A】ビールと非発酵飲料の複合製造における手順の例示的なタイミング図である。
図2B】ビールと非発酵飲料の複合製造における手順の例示的なタイミング図である。
図3】ビールと非発酵飲料の複合製造方法の一例である。
図4A】第1実施例に係る図3の方法における非発酵飲料の製造手順のフローチャートである。
図4B】第1実施例に係る非発酵飲料の製造ラインを示す平面図である。
図5A】第2実施例に係る図3の方法における非発酵飲料の製造手順のフローチャートである。
図5B】第2実施例に係る非発酵飲料の製造ラインを示す平面図である。
図5C図5Bの製造ラインにおける歩留まり向上ステーションの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して実施形態をより詳細に説明するが、図面には全てではなく、一部の実施形態が示されている。実際、本開示の主題は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用される法的要件を満たすことができるように提供される。
【0015】
周知の機能又は構造は、簡潔さ及び/又は明瞭さのために詳細に説明されない場合がある。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0016】
同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0017】
実施形態をより詳細に説明する前に、いくつかの定義を示す。
【0018】
本明細書で使用される「穀物原料」とは、ビールの製造に使用される、又は有用な穀物又は穀物の組み合わせを指す。シリアル(cereals)は、麦芽化された後、又は麦芽化されていないデンプン添加物としてビールの醸造に使用されてもよい。ビール製造に使われる主な原料は大麦であるが、トウモロコシ、米、小麦もよく使われる。穀物原料の他の例としては、大麦、ソルガム、キビ、オート麦、ライ麦、ライ小麦、フォニオなどが含まれる。本明細書で使用する場合、シリアルという用語には、そばのような疑似シリアルも含まれる。
【0019】
本明細書で使用される「スラリー」とは、液体中に懸濁された水より密度の高い固体の混合物を指す。
【0020】
第1の値から第2の値までの範囲は、第1の値と第2の値を含むことを意図している。
【0021】
図1は、ビールと非発酵飲料の複合製造工場1の概略ブロック図である。非発酵飲料は、酵母又は乳酸菌の添加によって、発酵を伴わずに製造される。一般に、非発酵飲料は、いわゆるレディ・トゥ・サーブ(RTS)タイプの飲料である。いくつかの実施形態において、非発酵飲料は、アルコールを添加せずに製造され、したがってノン・アルコールである。いくつかの実施形態において、非発酵飲料は、要約の項で定義したように、植物性ミルクである。以下では、非発酵飲料をNFBと略記する。
【0022】
工場1は、ビールの製造ライン10と、NFBの製造ライン20とを備える。製造ライン20は、製造ライン10からの副産物を使用してNFBを製造するように構成されている。この副産物は、ライン10における濾過工程から残留物として生成される。具体的には、濾過によって麦汁から分離された全ての固形物を含む。残留物R1は、製造ライン10によるビール製造の原料として使用される穀物原料のうち、主に果皮や外皮部分などの非でんぷん質部分を含む。従来技術において述べたように、残留物R1は、ドラフ(draff)又は醸造者使用済み穀物(BSG:Brewer‘s spent grain)と表記されることもある。
【0023】
ビール製造ライン10は、従来の構造であり、酵母102の添加により、水100及び穀物原料101をビール103に加工するように構成されている。図示の例では、ライン10は、マッシングステーション11、濾過ステーション12、及び発酵ステーション103を備える。マッシングステーション11は、水100と穀物原料101、及び任意で1つ以上のさらなる原料を受け入れるように構成される。マッシングステーションは、水と穀物原料を混合して酵素含有マッシュを形成する。酵素は、穀物原料に由来するものであっても、マッシュとは別に添加されるものであってもよい。マッシングステーション11では、酵素がデンプンを発酵可能な糖、例えばグルコース、マルトース、マルトトリオースの混合物に分解する。濾過ステーション12は、マッシュを発酵可能な糖類を含む麦汁と、使用済み穀物、すなわち上述の残留物R1とに分離するように構成されている。使用済み穀物を麦汁から分離する工程は「麦汁分離」として知られており、これは、穀物床自体がフィルター媒体として機能するロータリングによって、及び/又はフィルター枠を使用することによって実施することができる。
【0024】
残留物R1は、主に非デンプン多糖類である繊維と、大量の量のタンパク質とリグニンを含み、アラビノキシラン(AX)が一般的に最も豊富な成分である。したがって、R1は基本的にリグノセルロース系材料である。典型的には、乾燥重量ベースでR1の約半分が繊維を含む。乾燥重量ベースでR1の最大約30%は、タンパク質、例えばホルデイン、グルテリン、グロブリン、アルブミンを含んでもよい。必須アミノ酸は、総タンパク質含量の約30%を占めてもよく、リジンが最も豊富である。セルロースは通常、R1に多く含まれる多糖類である。R1に含まれる単糖類には、キシロース、グルコース、アラビノースなどが含まれてもよい。さらに、R1には、ケイ素、リン、カルシウム、マグネシウムなどの様々なミネラルが含まれてもよい。
【0025】
麦汁は濾過ステーション12から発酵ステーション13に移送され、そこで酵母102の添加により発酵が開始される。発酵ステーション13では、酵母の種類とビールの強さに応じて1週間から数ヶ月を要するプロセスで麦汁がビールになる。エタノールが生成されるだけでなく、麦汁に浮遊する微粒子状物質が発酵中に沈殿する。発酵が完了すると、発酵ステーション13からビール103が出力される。
【0026】
図1の製造ライン10は、単に非限定的な例として与えられたものであることを理解すべきである。ステーション11~13は、例えば麦汁の香味付け、麦汁の加熱、麦汁の冷却、ビールの濾過、ビールの熟成等のような付加的な処理を行うように構成されていてもよく、及び/又はライン10は、そのような付加的な処理のための付加的なステーションを含んでもよい。工場1は、複数のビール製造ライン10を備えてもよく、そのような製造ライン10は設備を共有してもよい。
【0027】
NFB生産ライン20は、従来の植物乳生産ラインと同様の構造であってもよく、異なってもよい。製造ライン20の構成例は、図4B図5B及び図5Cを参照し、さらに以下に示す。ライン20は、例えば、所望の風味及び/又は口当たりを達成するために、1つ又は複数のさらなる成分201を任意に添加することにより、水200及び残留物材料R2をNFB202に加工するように構成される。残留物材料2は、以下でさらに説明されるように、1つ以上の制約条件に従って、ビール製造ライン10からの残留物R1の少なくとも一部を含む。工場1は、複数のNFB製造ライン20から構成されてもよく、そのような製造ライン20は、設備を共有してもよい。
【0028】
図1に示すように、工場1は、製造ライン10からビール103を受け取り、ビールを第1の容器110に充填するように配置されたビール包装ステーション31を備え得る。第1の容器110は、バッチ分配用(例えば、樽又は樽)又は直接消費用(例えば、缶又は瓶)に構成され得る。工場1は、NFBパッケージングステーション32をさらに備えてもよく、このステーションは、製造ライン20からNFB202を受け取り、NFBを第2の容器210に充填するように配置される。第2の容器210は、無菌又は半無菌であり得る。第2の容器110は、バッチ分配用又は直接消費用に構成される場合がある。いくつかの実施形態では、第2の容器210は、ガラス又はプラスチックのボトル、金属缶、又はカートンをベースのパッケージを含み、これらに限定されない、任意のタイプの消費者パッケージであり、これらはその後の流通のために密封されてもよい。
【0029】
図1には示していないが、工場1には、包装準備中のビール及び/又はNFBを貯蔵するための専用の貯蔵タンクを設けてもよい。
【0030】
図1の工場1は、制御システム40を備え、制御システム40は、生産ライン10、20内の機器を含む工場1内の機器に対する制御信号Ciを生成するように構成される。例えば、制御システム40は、混合の程度、滞留時間、温度、圧力、成分の添加など、それぞれのライン内の様々なプロセスパラメータを制御することができる。しかしながら、ビール及びNFBをそれぞれ製造するための処理ステップの少なくとも一部は、オペレータによって手動で実行及び/又は制御され得る。
【0031】
ビール製造ライン10によって、残留物R1が大量に製造される。通常、100kgの穀物原料から約100~130kgの残留物R1が得られ、これは1ヘクトリットルのビールあたり約15~20kgの残留物に相当する。R1の特性は、図1のQ1で表される。R1は、ライン10で製造された直後の残留物を指すことに留意されたい。R1の主成分は水であり、主にR1中の使用済み穀粒に含まれる。一般に、R1中の相対的な水分含有量は60%から90%の範囲であり、10%から40%の範囲の全固形分(TS)に対応する。実際には、R1の相対含水率は70%から85%の範囲であることが多く、TSは15%から30%の範囲である。R1は55℃から90℃の範囲の温度で製造される。これは、ライン10によって製造される残留物のバッチ内で温度変動があり得ることを考慮すると、R1の平均温度を指す。実際には、R1の温度は、典型的には65℃以上又は70℃以上であり、好ましくは85℃以下又は80℃以下である。R1の豊富な多糖類及びタンパク質含量、高い水分含量、及びその温度は、R1を微生物の増殖及び腐敗の影響を受けやすくする。従って、R1はライン10で製造された場合、微生物学的に安定で食品として許容される範囲内であっても、微好気性細菌及び嫌気性菌の増殖により、R1中の微生物叢は急速に変化しやすくなる。NFBは人間の食用に供されるため、残留物材料R2が、バクテリアや毒素の存在に関する制限を含む食品安全規制に適合することが必須である。図1の工場1は、NFB製造ライン20がビール製造ライン10と同じ物理的施設内に配置されているため、このような規制への準拠が容易である。具体的には、ライン10からR1が出力されてから、ライン20にR2が入力されるまでの時間を制限し得る。
【0032】
ライン10は、バッチで残留物を生産するが、ライン20は、バッチでR2を消費する場合も消費しない場合もあることに留意されたい。ライン10、20のそれぞれの能力に応じて、R2はR1の全てを含んでもよく、その一部のみ含んでもよい。
【0033】
図1において、ブロック30は、R1を移送、貯蔵、又は処理するための、工場2内の任意の設備を示す。いくつかの実施形態では、ブロック30は、R1の少なくとも一部をライン10からライン20に移送するための固定設備を備える。このような固定設備は、1つ又は複数のスクリューコンベア、配管、1つ又は複数のポンプなどを含むことができる。固定設置はまた、分流機構を含んでもよく、この分流機構は、例えばR1の一部を別個の貯蔵所(図示せず)に分流させる、又はこうして分流されたR1に基づいてNFB又は別の製品を製造するための別の製造ライン(図示せず)に分流させることによって、必要量のR2がライン20で受け取られることを保証するように構成される。しかしながら、いくつかの実施形態では、ライン10からライン20への残留物の移送は、例えば、電動式又は非電動式の車輪付きのカート又はトレイによって、固定された設備なしで実施されてもよい。いくつかの実施形態において、ブロック30は、残留物を貯蔵するための中間貯蔵器を備える。いくつかの実施形態において、ブロック30は、その微生物学的活性を低下させることによって残留物を安定化させるための装置を備える。このような安定化は、残留物を加熱すること、残留物を冷却すること、残留物を乾燥させること、又は酸性化もしくはアルカリ化によって残留物のpHを変化させることのうちの1つ以上によって達成され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、このような安定化は省略される。従って、R2は、その特性を改変するためにR1に能動的な処理をすることなく生成される。本明細書で使用される「能動的な処理」は、エネルギー及び/又は1つ以上の物質の供給を意味する。能動的な処理を省略することにより、工場1の建設及び運転が簡略化され、製造コストが低く抑えられる。生産コストの低下は、エネルギー及び/又は物質の消費量の低下だけでなく、安定化装置の洗浄及びメンテナンスの必要性の低下にも起因する。
【0035】
図3は、ビールとNFBの複合生産のための方法300の例のフローチャートである。例として、図1の工場1を参照して方法300を説明する。ステップ301において、穀物原料は、例えばマッシングステーション11においてマッシュに加工される。ステップ302において、マッシュは、例えば濾過ステーション12で、発酵可能な麦汁と残留物に分離される。ステップ302により、R1が生成される。ステップ303において、残留物材料R2をスラリーに加工する。上述したように、R2はR1の少なくとも一部を含む。ステップ303は、NFBを製造する手順の出発点を形成することに留意されたい。ステップ304において、スラリーを液体成分と固体成分とに分離する。固体成分はスラッジ(sludge)であり、廃棄してもよい。ステップ305において、液体成分は、例えば、図4A及び図5Aを参照して後述する手順に従って、NFBに加工される。ステップ303~305は、図1の製造ライン20によって実施され得る。ステップ306において、発酵可能な麦汁は、例えば発酵ステーション13においてビールに加工される。ステップ306は、任意の従来の手順に従って行うことができ、麦汁への酵母の添加によって開始される。ステップ307において、NFBが製造ライン20から出力される。任意のステップ308において、NFBは、例えば第2の包装ステーション32において包装される。ステップ309では、ビールが製造ライン10から出力される。任意のステップ310において、ビールは、例えば第1包装ステーション31において包装される。例示の方法300は、ビールとNFBの複合生産を伴うことにより、R2の特性の制御を可能にすることにより、食品安全規制の遵守を容易にする。
【0036】
図1に戻り、R2の特性はQ2で表される。R2は、ライン20に供給されるとき、すなわち、ステップ303によってNFB製造手順が開始されるときの残留物材料を指すことに留意されたい。本出願人は、明確な技術的利点を提供すると考えられるQ2の制約を特定した。これらの制約は、組み合わせ可能な実施形態の観点から以下に示される。
【0037】
いくつかの実施形態では、R2の特性Q2はR1の特性Q1とほぼ同一である。この文脈では、ほぼ同一とは、各特性の差が±10%未満、好ましくは±5%未満であることを意味する。これは、R1がR2を生成するための能動的な処理を受けず、R1の出力からR2の入力までの時間が制限されることを意味する。
【0038】
いくつかの実施形態では、R2はR1とほぼ同じ相対水分含量を有し、例えば約±10%以内である。これは、R1がR2を生成するために積極的な乾燥を受けないことを意味する。
【0039】
いくつかの実施形態では、R2は60%から90%の範囲、好ましくは70%から85%の範囲の相対含水率を有する。この場合も、R1がR2を製造するために積極的な乾燥を受けないことを意味する。
【0040】
いくつかの実施形態において、R2は40℃~99℃の範囲、好ましくは50℃以上又は55℃以上、そして好ましくは85℃以下又は80℃以下の温度を有する。積極的な冷却がない場合でも、残留物の温度は時間とともに低下することが理解される。温度を40℃以上、好ましくは50℃以上又は55℃以上に制限することにより、R2中の有害細菌の増殖が防止されるか、少なくとも緩和される。温度を99℃以下、好ましくは85℃以下又は80℃以下に制限することにより、再処理液の積極的な加熱のためのエネルギー消費が低減されるか、あるいは回避される。
【0041】
いくつかの実施形態では、R2はR1の温度と等しいかそれ以下の温度を有する。これは、R1がR2を生成するために積極的な加熱を受けないことを意味する。
【0042】
いくつかの実施形態では、R2とR1の温度差は15℃未満、好ましくは10℃未満又は5℃未満である。これは、R1がR2を生成するために積極的な加熱又は冷却を受けないことを意味する。
【0043】
いくつかの実施形態では、R2のpHはR1のpHと等しいか、又はそれ以下である。これにより、安定化のために残留物を積極的に酸性化することができる。しかしながら、積極的な酸性化がない場合であっても、残留物中の自然プロセスの結果として、pHはR1よりもR2の方が低くなり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、R2のpHは5~7の範囲である。このようなpH範囲は、現在、ライン20におけるNFBの生産に適していると考えられている。
【0045】
いくつかの実施形態では、R2とR1のpH差は1未満であり、好ましくは0.6、0.4又は0.2未満である。これは、R1がR2を生成するために積極的な酸性化又はアルカリ化を受けないことを意味する。
【0046】
図2Aは、図3の方法300に従ったビールの製造手順P1とNFBの製造手順P2のタイミング図である。図1の工場1では、P1はライン10によって実行され、P2はライン20によって実行され得る。手順P1は、第1のサブ手順P1aと第2のサブ手順P1bとに分割される。第1のサブ手続きP1aは、R1が出力された時点で終了する。第2のサブ手順P1bは、P1aが終了すると開始し、ビールが出力されると終了する(図3のステップ309参照)。P1bは、麦汁をビールに加工するステップ305に実質的に相当する。P1aの継続時間をΔP1aとし、P1bの継続時間をΔP1bとする。ビール製造はゆっくりとした工程であり、ΔP1bはかなり長く、通常少なくとも4日間かかる。P1bは4~14日の範囲であることも珍しくないが、もっと長く、例えば1ヶ月以上であってもよい。図2Aでは、P2の持続時間をΔP2と表記している。P2は、R2の処理が開始されたときに開始し(ステップ303)、NFBが出力されたときに終了する(ステップ307)。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法300は、ステップ302におけるR1の生成とステップ303におけるR2の処理開始との間の期間に、予め定義された最大時間を適用してもよい。したがって、そのような実施形態に従って、方法300は、R1の少なくとも一部を含むR2の処理を、R1が生成された後の最大時間よりも遅く開始しないように要求される。図2Aでは、最大時間はΔmaxで指定され、P1aの終了から延びる。最大時間は、R2の品質が食品安全要件を満たすNFBをもたらすのに十分であることを保証するために定めることができる。いくつかの実施形態では、Δmaxは8時間以下である。このようなΔmaxは、現在、積極的な処理によって残留物を安定化させる必要性を取り除くと考えられている。しかしながら、方法300がより制限的なΔmaxを適用することも考えられる。例えば、Δmaxは6時間、4時間又は2時間に等しいか又はそれ以下であり得る。
【0048】
図2Aの例では、ΔP2がΔmaxより短い状態で方法300が構成されている。P2がΔmaxと等しいか、又はΔmaxより短いことで、製造に柔軟性がもたらされる。例えば、図2Aに破線の矢印で示すように、NFBを製造するために順番に実行される手順P2において、同じバッチの残留物材料R2を原料として使用することができる。これは、制約Δmaxに違反することなく、1つの同じ製造ライン20がビール製造ライン10から投入することができる残留物材料の量を増加させるので、少なくとも大規模なビール製造において、ビールの1バッチに対して製造される大量の残留物の観点から、重要な利点となり得る。図2Aには示されていないが、サブ手順P1aによって生成された残留物材料R2を投入するために、2つ以上の手順P2が並行して実行され得ることが理解されるべきである。
【0049】
いくつかの実施形態では、例えば図2Aに示すように、方法300は、ΔP2がΔPb1より短く、好ましくは、はるかに短く構成される。これは、麦汁のビールへの処理が完了する前にNFBが出力される(ステップ307)ことに相当する。このような実施形態は、例えば、1つの同じ製造ライン20が、2つ以上のビール製造ライン10から残留物材料R2を受け取ることを可能にすることによって、製造における柔軟性を提供する。図2Bは、2つの異なる製造ライン10によって重複して実行されるビール製造のための2つの手順P1のタイミング図である。破線の矢印で示すように、2つの手順P1からの残留物材料R2は、1つの同じ製造ライン20によって実行され得るNFBの製造のための連続的な手順P2の原料として使用され得る。手順P1間の適切なタイミングにより、1つの同じ製造ライン20は、制約Δmaxに違反することなく、複数のビール製造ライン10からの残留物材料R2を処理することができる。
【0050】
また、図2A~2Bに示す実施形態では、ビールの包装(ステップ310)の前に、NFBの包装(ステップ308)を実行し、完了することが可能であることに留意されたい。これにより、例えば、NFBとビールの両方の包装に少なくとも部分的に同じ装置を使用することにより、包装資源の最適化を可能にすることができる。図1の例では、第1及び第2の包装ステーション31、32は、装置を共有するか、あるいは同じ物理的ステーションによって実施されてもよい。同じ装置/ステーションが使用される限りにおいて、図2A~2Bの実施形態は、NFBからビールへの切り替えの前に、装置/ステーションを洗浄する時間を提供してもよい。ビールの前にNFBを包装することは、ビールとNFBの並行包装の必要性を低減することにより、工場における人員配置の必要性を低減できる。いくつかの実施形態において、NFBの包装は、ビールの包装の1~1000時間前、典型的にはビールの包装の少なくとも24~48時間前に行われる。
【0051】
図4Aは、例えば図3の方法300の一部として、NFBを製造するための第1の例示的な手順320Aのフローチャートである。手順320Aは、残留物材料R2から非発酵飲料NFBを製造する単純でありながら効果的な技術を提供する。手順320Aは、図1の製造ライン20によって実行されてもよく、順次実行される手順303、303’、304、305を含む。手順320Aは、図2A~2Bの手順P2に対応し得る。図4Aにおいて、R2をスラリーに加工するステップ303は、R2を投入し(ステップ303A)、水を加え(ステップ303B)、R2と水を混合してスラリーにする(ステップ303C)を含む。ステップ303A~303Cは、混合配置、例えば、再循環システム及び/又はロータもしくはインペラ等の、一体化された又は取り付けられた混合装置を有するタンクにおいて実施され得る。いくつかの実施形態において、混合配置は、例えば蒸気の直接注入によって、又は当該技術分野で周知のようにタンク上のジャケット内で加熱媒体を循環させることによって、タンクの内容物を加熱するための加熱装置を備える。前述から理解されるように、R2は、穀物原料がステップ301(図3)でマッシュ状に処理される際に発生する粒子を含む。ステップ303Cでの混合により、これらの粒子は、ステップ303Bで添加される水に懸濁されるより小さな粒子に切断される。ステップ303Bで添加する水の量は、R2のTSと同様に、NFBの所望のTSに依存する。非限定的な例では、NFBのTSは6%~15%、好ましくは5%~12%の範囲である。ステップ303A~303Cは、異なる順序で実施することができる。例えば、水をR2の前に添加してもよい。さらに、R2と水をバッチで添加し、バッチごとに混合を行ってもよい。
【0052】
定義上、R2の処理は、R2に水を加えることによって開始されることに留意すべきである。したがって、R1の少なくとも一部に水が加えられ、それによってR2が構成されるとすぐに、R2のNFBへの加工が開始される。
【0053】
いくつかの実施形態では、ステップ303Bで添加される水は、少なくとも70℃以上、好ましくは少なくとも75℃以上又は少なくとも80℃以上の温度を有する。これにより、スラリー中の微生物の増殖が緩和される。
【0054】
いくつかの実施形態において、ステップ303Cにおける混合は、70℃、好ましくは75℃又は80℃であってもよい最低温度以上の温度で行われる。さらに、混合中の温度は、100℃であってもよい最高温度以下であってもよい。これらの実施形態によれば、R2と水の混合物中の温度は、このようにして、混合ステップの間中、最低温度及び最高温度によって定義される温度範囲に維持される。微生物の増殖を緩和する以外に、温度の上昇は混合物の粘度を低下させる。
【0055】
いくつかの実施形態において、図4Aのステップ303’で示されるように、スラリーは、例えば、スラリー中のタンパク質の正しい収量を確実にするために、混合後、保持時間の間、上記の温度範囲に維持される。非限定的な例では、保持時間は、1~60分の範囲内とすることができる。保持時間が長いほど、スラリー中の微生物活性に対抗するために温度を維持することがより重要である。ステップ303’は、混合配置、専用貯蔵タンク、又はステップ304の準備のための移送中に実施してもよい。
【0056】
スラリーを固体成分と液体成分とに分離するステップ304は、例えばデカンタのような任意のタイプの濾過又は分離配置で実施することができる。ステップ304における分離は、スラリーから最小サイズより大きい固形物を除去する。このような固形物は、籾殻、繊維、その他の固体粒子からなるスラッジを形成する。固形成分は通常廃棄される。非限定的な例では、最小サイズは50~500μmの範囲、例えば約100μmである。いくつかの実施形態では、温度はステップ304の間にも上述の温度範囲に維持される。
【0057】
液体成分をNFBに加工するステップ305は、最終製剤としても知られている。ステップ305は、液体成分に1つ以上の成分を添加し、任意で液体成分と混合することを含む。このような成分は、植物油、香料、甘味料、塩、増粘剤、安定剤、ビタミン、又はミネラルのいずれかを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ステップ305は、ステップ304で生成された液体成分を1つ以上の貯蔵タンクに集めることを含み、成分の混和は、貯蔵タンク内の再循環混合を使用して行われる。あるいは、バッチ混合を使用してもよい。いくつかの実施形態では、ステップ305の間にも、温度は上記の温度範囲に維持される。
【0058】
図4Bは、図4Aの手順320Aを実行するように構成された例示的な生産ライン20のブロック図である。生産ライン20は、手順303を実行するように構成された混合ステーション21を備える。混合ステーション21は、本明細書で上述したような混合配置を構成することができる。混合ステーションは、R2及び水200を受け取り、スラリー200Aを出力するように配置される。分離ステーション22は、スラリー200Aを受け取るように配置され、ステップ304を実行するように構成される。分離ステーション22は、1つ又は複数のデカンタから構成され得る。分離ステーション22によって、スラリー200Aは、液体成分200Bと固体成分203とに分離される。上述したように、スラリーを上記温度範囲内の温度に維持するステップ303'は、ステーション21内及び/又はステーション21からステーション22へのスラリー200Aの移送のための配管内で実施され得る。製剤ステーション23は、液体成分200Bを受け入れるように配置され、ステップ305を実行するように構成される。製剤化ステーション23は、上記成分201を液体成分200Bに混和し、製剤化ステーション23から出力されるNFB202を生成するように構成される。
【0059】
図5Aは、例えば図3の方法300の一部として、NFBを製造するための第2の例示的な手順320Bのフローチャートである。手順320Bは、図1の製造ライン20によって実行されてもよく、順に実行される手順303、501、502、503、304、305、505を含む。手順320Bは、図2A~2Bの手順P2に対応し得る。手順320Aと比較して、手順320Bは、酵素処理によってNFB中のタンパク質及び/又は乾物含量を増加させる専用のステップを含むことによってR2からNFBを製造するための、より高度な技術を提供する。手順302Bは、R2をスラリーに処理するステップ303によって開始する。ステップ303は、手順320A(図4A)と同じでもよい。ステップ303の後に、スラリーに予備熱処理を施すステップ501が続く。いくつかの実施形態において、ステップ501は、スラリーを少なくとも100℃の温度に所定の時間、例えば110℃~130℃の範囲の温度に加熱することを含む。非限定的な例では、所定の時間は2~30分の範囲、例えば少なくとも15分である。ステップ501の目的は、スラリー中に存在する可能性のある細菌、ウイルス、及び場合によっては芽胞を死滅させることである。ステップ501は、その後の酵素処理に備えるために行われ、スラリーを低温で長時間保持する。ステップ501による熱処理を行わない場合、酵素処理中に微生物が増殖し、得られるNFBを腐敗させる可能性がある。いくつかの実施形態では、ステップ501は、オートクレーブでの処理と同様に、加圧条件下で、密閉加熱容器内で行われる。ステップ501に続いてステップ502が行われ、ここでスラリーは酵素処理のための操作温度まで冷却される。使用する酵素によっては、操作温度は40℃~95℃の範囲となる。一例では、操作温度は70℃以下である。いくつかの実施形態では、ステップ501及び/又はステップ502は省略される。
【0060】
ステップ503において、スラリーは、酵素処理によってタンパク質及び/又は乾物含量を増加させるように処理される。酵素処理は、1種以上の酵素をスラリーに添加すること、それぞれの酵素をスラリーと混合すること、及びそれぞれの酵素がスラリーの成分を分解することを予め定義された処理時間にわたって可能にすることを含む。スラリーと酵素の混合物は、処理時間中に混合してもしなくてもよい。温度、pH、処理時間などの酵素処理の制御パラメーターは、それぞれの酵素に適合する。本出願人は、スラリー中の繊維の酵素分解を含む第1の酵素処理(ステップ503A)、又はスラリー中のタンパク質の酵素分解を含む第2の酵素処理(ステップ503C)の少なくとも一方を含むことが有利であり得ることを見出した。第1の酵素処理は、スラリーに1つ以上のカルボヒドラーゼを添加することを含んでもよい。好適な炭水化物分解酵素の例としては、アラバナーゼ、セルラーゼ、β-グルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、及びキシラナーゼが挙げられる。非限定的な例では、第1の酵素処理は、3.5~6.0の範囲のpH及び40~70℃の範囲の温度で行ってもよい。第2の酵素処理は、スラリーに1種以上のプロテアーゼを添加することを含む。適切なプロテアーゼの例には、エンドプロテアーゼを含む。非限定的な例では、第2の酵素処理は、6~10の範囲のpH及び45~65℃の範囲の温度で実施されてもよい。本出願人は、驚くべきことに、第1及び第2の酵素処理を組み合わせることにより、NFB中のタンパク質及び/又は乾物の収量を有意に増加させる能力を有することを見出した。第1の酵素処理は、スラリー中の繊維を分解し、タンパク質及び他の化合物をもたらす能力を有し、第2の酵素処理は、タンパク質をより小さいポリペプチド又は単一アミノ酸に分解する能力を有する。第1の酵素処理により、第2の酵素処理の収率を向上させることができる。
【0061】
図5Aにおいて、ステップ503は、このような複合酵素処理を含み、1つ又は複数の混合装置を含んでも含まなくてもよい、1つ又は複数のタンク内で実施することができる。第1の酵素処理503Aは、例えば1~6時間の範囲の第1の処理時間にわたって実施される。ステップ503Aの後に、第2の酵素処理のためにpHを調整するステップ503Bが続く。上述したように、プロテアーゼはカルボヒドラーゼよりも高いpHでより良好に作用し得る。従って、ステップ503Bは、例えば、スラリーにアルカリ又は灰汁を添加することによって、スラリーのpHを上昇させるために実行され得る。ステップ503BによってpHが調整されると、第2の酵素処理503Cが、例えば1~6時間の範囲の第2の処理時間にわたって実施される。第2の処理時間の間、第1の酵素処理を継続してもよいことが理解される。実施態様によっては、ステップ503Cの後に、ステップ503Dにおいて、例えば酸又は酸塩の添加によってpHを下げるために、さらなるpH調整を行ってもよい。
【0062】
ステップ503の後に、スラリーから液体成分を分離するステップ304が続く。ステップ304は、手順320A(図4A)と同様であってもよい。ステップ304の後、液体成分をステップ504で処理して、ステップ503でスラリーに添加された酵素を不活性化させる。ステップ504は、例えば、液体成分を加熱し、加熱された液体成分を、例えば、10~600秒の範囲の所定の時間保持することにより、任意の従来の方法で実施してもよい。例えば、ステップ504は、液体成分を少なくとも80℃又は少なくとも85℃に加熱することを含んでもよい。代替的又は追加的に、ステップ504は、液体成分のpHを変化させることを含んでもよい。変形例では、ステップ504はステップ304の前に実行され、したがって液体成分の代わりにスラリーに対して操作される。いくつかの実施形態では、ステップ504は省略される。
【0063】
最終調合ステップ305は、手順320A(図4A)と同様とすることができる。図示の例では、手順305は、液体成分に植物油を添加するステップ305Aを含む。植物油の添加は、少なくとも部分的に、例えば所望の口当たりを達成するために、NFBの粘稠度を少なくとも部分的に形成する。植物油の量はレシピによって異なるが、NFBの0.1~5体積%の範囲であり得る。ステップ305はさらに、均質化と同様に、植物油を液体成分全体に均一に分散させるために、植物油を液体成分と混合するステップ305Bを含む。ステップ305Bは、高剪断ミキサーなどの混合装置を備えたタンク内で実施してもよい。ステップ305はさらに、例えば上記に列挙したような1つ又は複数の追加の材料を添加し、その成分を液体成分と混合してNFBを形成するステップ305Cを含む。ステップ305A又はステップ305Bの前に、代替的に1つ以上の成分を液体成分と混合してもよいことが理解される。図5Aに示すステップ305は、手順320A(図4A)でも実施できる。
【0064】
手順302Bは、ステップ305によって製造されたNFBの低温殺菌又は滅菌を行うステップ505をさらに含み、貯蔵又は包装の前にNFB中の微生物を除去する、又は少なくとも減少させることを目的とする。ステップ305は、任意の従来の手順に従って実施することができる。ステップ305は、UHT処理、超低温殺菌、又は低温殺菌用に構成され得る従来の加熱器で実施され得る。例えば、NFBは、135℃~150℃の範囲の温度で、4~30秒の範囲の時間で加熱される。ステップ505は、手順320A(図4A)でも実施することができる。いくつかの実施形態では、ステップ505は省略される。
【0065】
手順320Bは単に例として与えられていることに留意されたい。より一般的な例では、手順320Bは、ステップ303でスラリーを生成した後に、スラリーの酵素処理を行うステップと、酵素活性を不活性化するためにスラリー又は液体成分を処理するステップと、液体成分全体に植物油を均一に分散させるために液体成分に植物油を混合するステップと、液体成分から生成される非発酵飲料を低温殺菌又は滅菌するステップとを含んでもよい。
【0066】
図5Bは、図5Aの手順320Bを実行するように構成された例示的な生産ライン20のブロック図である。生産ライン20は、図4Bと同じであってもよい混合ステーション21を備える。混合ステーション21は、ステップ303、及び実施される場合には任意にステップ501~502を実施するように構成される。歩留まり向上ステーション24が、混合ステーション21からスラリー200Aを受け取るように配置される。歩留まり向上ステーション24は、1つ以上の酵素204を使用して、ステップ503を実行するように構成される。歩留まり向上ステーション24は、1つ又は複数の混合装置を含んでも含まなくてもよい、1つ又は複数のタンクから構成され得る。分離ステーション22は、得られた酵素処理スラリー200A’を収量向上ステーション24から受け取るように配置される。分離ステーション22は、図4Bと同じであってもよい。不活性化ステーション25が、分離ステーション22から液体成分200Bを受け取るように配置され、ステップ504に従って、酵素活性を不活性化するために液体成分200Bを処理するように構成される。製剤ステーション23が、不活性化ステーション25から液体成分200Bを受け取るように配置される。製剤ステーション23は、ステップ305を実行するように構成され、液体成分200Bに1つ以上の成分201を混合する。配合ステーション23は、図4Bと同じであってもよい。代替案では、不活性化ステーション25が、収率向上ステーション24と分離ステーション22との中間に配置される。安定化ステーション26は、製剤化ステーション23からNFBを受け取るように配置され、滅菌又は低温殺菌によってNFBを安定化させるステップ505を実行するように構成される。その後、NFB202は安定化ステーション26から出力される。
【0067】
図5Cは、図5Bの製造ライン20に含まれ得る、例示的な歩留まり向上ステーション24のブロック図である。第1のサブステーション241は、スラリー200Aを受け取るように配置され、1つ以上の第1の酵素204Aの添加によって、ステップ503Aに従って第1の酵素処理を行うように構成される。第2のサブステーション242は、サブステーション241からスラリーを受け取るように配置され、例えばアルカリ又は灰汁204Bの添加によって、ステップ503Bに従ってpHを調整するように構成される。第3のサブステーション243は、サブステーション242からスラリーを受け取るように配置され、1つ以上の第2の酵素204Cの添加によって、ステップ503Cに従って第2の酵素処理を行うように構成される。第4のサブステーション243は、サブステーション243からスラリーを受け取るように配置され、例えば酸又は酸塩204Dの添加によって、ステップ503Dに従ってpHを調整するように構成される。サブステーション241~244への分離は任意であることに留意すべきである。ステップ503A~503Dの2つ以上が、成分204A~204Dの逐次添加によって、同じ装置によって実行されることが考えられる。
【0068】
本明細書に示した例に従って、ビールとNFBを組み合わせて製造する方法のいくつかの実施形態を以下に述べる。
【0069】
いくつかの実施形態において、本方法は、スラリーを液体成分と固体成分とに分離する前に、スラリーを少なくとも100℃の温度に所定の時間加熱することを含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、本方法は、スラリーを液体成分と固体成分とに分離する前に、スラリー中のタンパク質及び/又は乾物含量を増加させるためにスラリーを処理することを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、タンパク質及び/又は乾物含量を増加させるためにスラリーを処理することは、スラリーの酵素処理を行うことを含む。いくつかの実施形態において、酵素処理を行うことは、スラリー中の繊維の酵素的分解を含む第1の酵素処理、又はスラリー中のタンパク質の酵素的分解を含む第2の酵素処理の少なくとも一方を行うことを含んでもよい。いくつかの実施形態において、酵素処理を行うことは、スラリーに1種以上の酵素を添加することを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の酵素は、1つ以上のカルボヒドラーゼ及び/又は1つ以上のプロテアーゼを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、酵素処理を行う前に、スラリーを70℃未満の温度まで冷却することを含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、本方法は、酵素処理に続いて、酵素活性を失活させるためにスラリー又は液体成分を処理することをさらに含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、本方法は、スラリーのpHを断続的に上昇させるためにスラリーを処理することをさらに含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、スラリーが液体成分と固体成分に分離されるまで、スラリーは少なくとも70℃の温度に維持される。
【0075】
いくつかの実施形態では、残留物材料と水の混合は、少なくとも70℃以上の温度で行われる。
【0076】
いくつかの実施形態において、液体成分を非発酵飲料に加工することは、液体成分に植物油を添加することを含む。いくつかの実施形態において、液体成分を非発酵飲料に加工することは、植物油を液体成分と混合して、植物油を液体成分全体に均一に分散させることをさらに含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、本方法は、流通のために非発酵飲料を第1の容器に包装することと、流通のためにビールを第2の容器に包装することとをさらに含み、非発酵飲料の包装はビールの包装の前に行われる。
【0078】
いくつかの実施形態において、本方法は、非発酵飲料を低温殺菌又は滅菌することをさらに含む。
【0079】
本開示はまた、工場について記載しており、この工場は、穀物原料をマッシュに加工し、マッシュを発酵可能な麦汁と残留物とに分離し、発酵可能な麦汁をビールに加工し、ビールを出力するように構成された第1の製造ラインを備え、残留物の少なくとも一部を含む残留物材料をスラリーに加工し、スラリーを液体成分と固体成分とに分離し、液体成分を非発酵飲料に加工し、非発酵飲料を出力するように構成された第2の製造ラインと、残留物材料を第1の製造ラインから第2の製造ラインに輸送するように構成された輸送配置とを含む。
【0080】
本開示の主題を、現在最も実用的であると考えられる実施形態に関連して説明してきたが、本開示の主題は、開示された実施形態に限定されるべきものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲の記載及び範囲内に含まれる様々な変更及び同等の構成を網羅することが意図されていることを理解されたい。さらに、動作が特定の順序で図面に描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が、示された特定の順序で実行されること、又は順次実行されること、又は図示されたすべての操作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】