(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】動きアーティファクト補償による改善された金属アーティファクト低減
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240621BHJP
A61B 6/51 20240101ALI20240621BHJP
【FI】
A61B6/03 550F
A61B6/51 511
A61B6/03 550Y
A61B6/03 560G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501664
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022068528
(87)【国際公開番号】W WO2023285202
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ-ガンツリン、ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】モール、スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュルスブッシュ、マルクス
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093AA21
4C093CA13
4C093DA05
4C093EB17
4C093EC15
4C093ED12
4C093FA35
4C093FD09
4C093FD20
4C093FF09
4C093FF16
4C093FF35
4C093FF42
(57)【要約】
本発明は、歯科分野におけるデジタルボリュームトモグラフィ(DVT)イメージングを再構成するための方法であって、方法が、(S1)動きアーティファクト補償(MAC)を使用して、患者イメージングのサイノグラムから投影ジオメトリを推定するステップと、(S2)推定された投影ジオメトリを使用して、第1のボリュームを再構成するステップと、(S3)第1のボリュームと推定された投影ジオメトリとを使用して、サイノグラム中の金属領域と第1のボリューム(1)中の金属領域とを検出するステップと、(S4)サイノグラム中の金属領域を補正し、補正されたサイノグラムを生成するステップと、(S5)推定された投影ジオメトリと補正されたサイノグラムとを用いて、第2のボリュームを再構成するステップと、(S6)第2のボリューム中の金属領域を補正するステップとを備えることを特徴とする、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科領域におけるデジタルボリュームトモグラフィ(DVT)イメージングを再構成するための方法であって、前記方法が、
(S1)動きアーティファクト補償(MAC)を使用して、患者イメージングのサイノグラムから投影ジオメトリを推定するステップと、
(S2)前記推定された投影ジオメトリを用いて、第1のボリュームを再構成するステップと、
(S3)前記第1のボリュームと前記推定された投影ジオメトリとを使用して、前記サイノグラム中の金属領域と前記第1のボリューム(1)中の金属領域とを検出するステップと、
(S4)前記サイノグラム中の前記金属領域を補正し、補正されたサイノグラムを生成するステップと、
(S5)前記推定された投影ジオメトリと前記補正されたサイノグラムとを用いて、第2のボリュームを再構成するステップと、
(S6)前記第2のボリューム中の前記金属領域を補正するステップと
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1のボリュームが、分解能および/または使用された投影の数および/または使用された画像処理に関して、前記第2のボリュームとは異なることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(S3)における前記サイノグラム中の前記金属領域の前記検出が、
(S3.1)好ましくはしきい値および/または金属構造の形状を使用することによって、前記第1のボリューム中の前記金属領域を検出することと、
(S3.2)前記推定された投影ジオメトリを用いて、前記検出された金属領域を前記サイノグラム中に投影することと
からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(S3)における前記サイノグラム中の前記金属領域の前記検出が、
(S3.1)前記推定された投影ジオメトリを使用して、前記第1のボリュームのシミュレートされたサイノグラムを生成することと、
(S3.2)前記シミュレートされたサイノグラム中の前記金属領域を検出し、前記検出された金属領域を前記サイノグラムに転送することと、
(S3.3)前記推定された投影ジオメトリと前記サイノグラム中の前記検出された金属領域とを使用して、前記第1のボリューム中の前記金属領域を決定することと
からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(S4)における前記サイノグラム中の前記金属領域の前記補正は、
(S4.1)前記サイノグラム中の前記金属領域を、新しいピクセル値で充填するステップと、前記新しいピクセル値が、隣接ピクセルから計算されるか、または人工ピクセル値に対応するかのいずれかである、
(S4.2)前記サイノグラムのピクセル値と、前のステップ(S4.1)からの前記新しいピクセル値を加重ブレンドするステップと
のうちの1つまたは複数からなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(S6)における前記第2のボリューム中の前記金属領域の前記補正が、
(S6.1)前記第2のボリューム中の前記金属領域を、前記再構成された第1のボリュームからの値または人工値で充填するステップと、
(S6.2)前記第2のボリュームの値と、前のステップ(S6.1)からの前記新しい値を加重ブレンドするステップと
のうちの1つまたは複数からなることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(S1)における前記MACは、
(S1.1)推定された投影ジオメトリを用いて、第3のボリュームを再構成するステップと、
(S1.2)前記サイノグラムの投影画像を前記第3のボリュームと位置合わせすることによって、前記投影ジオメトリを推定するステップと
を備え、好ましくは、収束基準が達せられるまで反復的に繰り返すことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(S1.2)における前記投影画像の前記位置合わせが、前記推定された投影ジオメトリを用いて、シミュレートされたサイノグラムを生成することと、類似性測度によって、前記シミュレートされたサイノグラムを前記サイノグラムと比較することとによって実施されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(S1)における前記MACが、前記サイノグラムにおける1つまたは複数の整合性制約に関するメトリックを評価することによって、前記投影ジオメトリの推定を実施することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(S1)における前記MACが、
(S1.1)前記推定された投影ジオメトリを用いて、第3のボリュームを再構成するステップと、
(S1.2)シャープネス測度、または滑らかさ条件の評価など、前記第3のボリュームに関する画像品質メトリックを算出するステップと、
(S1.3)前記推定された投影ジオメトリを、前記画像品質メトリックを改善するように調整するステップと
を備え、好ましくは、反復的に繰り返すことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータ支援DVTシステム(1)によって実行されたとき、前記コンピュータ支援DVTシステム(1)に、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法ステップを実施させるコンピュータ可読コードを備えるコンピュータプログラム。
【請求項12】
X線デバイス(2)と、請求項11に記載のコンピュータプログラムを実行するように構成されたコンピューティングユニット(8)とを備えるコンピュータ化DVTシステム(1)。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項によって提供される、可視化のためのデータセットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分野におけるデジタルボリュームトモグラフィ(DVT:digital volume tomography)イメージングを再構成するための方法に関する。詳細には、本発明は、DVTイメージングにおける金属アーティファクトの低減に関する。
【背景技術】
【0002】
DVTイメージングでは、イメージング構成要素のX線源とX線検出器とが、互いに対向し、患者の周りで回転する。サイノグラムを形成する、一連のX線投影画像が生成される。投影ジオメトリを知ることにより、サイノグラムからボリュームが再構成される。投影ジオメトリは、DVTデバイスの幾何学的特性と曝露中のDVTデバイスの軌道とを記述する。投影ジオメトリは、投影行列によって表され得る。
【0003】
DVTイメージングでは、金属などのX線不透過構造が、再構成されたボリューム中の画像アーティファクトにつながる。画像アーティファクトは、X線検出器の感度が、X線減衰を物理的に十分正確にイメージングするのに十分でないとき、発生する。これは特に、ノイズがそこで優勢である、強く吸収するいわゆるX線不透過構造の背後にある問題につながる。これは、ボリューム中のストライプアーティファクト(stripe artifact)としてしばしば現れる、再構成プロセスにおける不整合な値につながる。
【0004】
簡単のためにここでは金属アーティファクト低減(MAR:metal artifact reduction)プロシージャと呼ばれる、これらの画像アーティファクトを補正するためのよく知られているソフトウェアプロシージャがある。それらのプロシージャは、再構成されたボリューム全体にわたって金属アーティファクトが低減されるように、サイノグラム中の金属領域を、妥当と思われる値と置き換える。再構成の後に、ボリューム中の金属領域が、妥当と思われる値と置き換えられる。
【0005】
知られている金属アーティファクト低減技法は、患者がDVT収集中に移動するか、またはデバイスが不十分に較正された場合、低減された品質を与える。これの理由は、MAR方法の多くが、ボリューム中で検出された金属エリアをサイノグラム中に投影することを行うか、またはその逆を行うからである。患者の移動または不十分なデバイス較正の場合、アーティファクトの影響を受けたボリューム中の金属検出と金属領域の投影の両方が、投影ジオメトリの正しくない考慮により不正確である。再構成における不整合は、ボリューム中の顕著な残存金属アーティファクトにつながる。
【0006】
不正確な投影ジオメトリにより、多すぎるまたは少なすぎる補正が、サイノグラム中でならびにボリューム中で行われるか、または補正が、間違った場所で行われる。不正確な投影ジオメトリに関する前述の問題を低減するために、検出された金属領域の拡大、または検出された金属領域の周りの不確実性範囲の拡大が、通常、実施される。これは、サイノグラムの物理的に厳密に測定されたエリアも置き換えられるので、MARのさらなる不正確さにつながる。拡大強度は、投影ジオメトリの最大許容不正確さから得られる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、デジタルボリュームトモグラフィ(DVT)イメージングをX線コーンビームコンピュータトモグラフィにおいて再構成するための方法を提供することであり、それにより従来技術の上述の欠点を克服する。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。従属請求項の主題は、さらなる発展および好ましい実施形態に関する。
【0009】
本発明による方法は、DVTイメージングを再構成するためのものである。本方法は、動きアーティファクト補償(MAC:motion artifact compensation)を使用して、患者イメージングのサイノグラムから投影ジオメトリを推定するステップと、推定された投影ジオメトリを用いて、第1のボリュームを再構成するステップと、第1のボリュームと推定された投影ジオメトリとを使用して、サイノグラム中の金属領域と第1のボリューム中の金属領域とを検出するステップと、サイノグラム中の金属領域を補正し、補正されたサイノグラムを生成するステップと、推定された投影ジオメトリと補正されたサイノグラムとを用いて、第2のボリュームを再構成するステップと、第2のボリューム中の金属領域を補正するステップとを備える。
【0010】
本発明の顕著な有益な効果は、補正のより高い正確さによるものである金属アーティファクトの改善された補正と、再構成されたボリュームの結果として生じる改善された画像品質とである。
【0011】
以下の説明では、本発明は、例示的な実施形態を参照しながらおよび図面を参照しながら、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明による方法が行われ得るコンピュータ援用DVTシステムを示す図。
【
図3a】従来技術からの、不十分に補正された金属アーティファクトをもつ、MACを用いないDVTボリュームの軸方向スライスを示す図。
【
図3b】本発明の一実施形態による、明確に輪郭が描かれた「金属」充填を有する、MACを用いたDVTボリュームの軸方向スライスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面に示されている参照番号は、例示的な実施形態の以下の説明において言及される、以下に記載される要素を指定する。
【0014】
1. DVTシステム
2. X線デバイス
3. X線源
4. X線検出器
5. 制御ユニット
6. 頭部固定
7. バイト(bite)
8. コンピュータ
9. ディスプレイ
a. 顎アーチ
b. 歯
c. 金属充填
d. 金属アーティファクト
本発明による方法(
図1参照)は、歯科領域におけるデジタルボリュームトモグラフィ(DVT)イメージングを再構成するために使用される。本方法は、(S1)動きアーティファクト補償(MAC)を使用して、患者イメージングのサイノグラムから投影ジオメトリを推定するステップと、(S2)推定された投影ジオメトリを使用して、第1のボリュームを再構成するステップと、(S3)第1のボリュームと推定された投影ジオメトリとを使用して、サイノグラム中の金属領域と第1のボリューム中の金属領域とを検出するステップと、(S4)サイノグラム中の金属領域を補正し、補正されたサイノグラムを生成するステップと、(S5)推定された投影ジオメトリと補正されたサイノグラムとを使用して、第2のボリュームを再構成するステップと、(S6)第2のボリューム中の金属領域を補正するステップとを備える。
【0015】
図3aは、MACを用いない従来技術に従って再構成された、DVTボリュームの軸方向スライスを示す。
図3bは、MACを用いる本発明による方法によって生成された、DVTボリュームの同じ軸方向スライスを示す。
図3bでは、金属充填(c)が、明確な輪郭により明白である。顎アーチ(a)と個々の歯(b)の両方にわたる
図3aからの金属アーティファクト(d)は、
図3b中で明らかに低減されている。
【0016】
好ましい実施形態では、第1のボリュームは、分解能および/または使用された投影の数および/または使用された画像処理に関して、第2のボリュームとは異なる。ここで、第1のボリュームはもっぱら、MARのための金属領域を検出するために使用され、第2のボリュームは、可視化およびさらなる診断のため使用される。したがって、第1のボリュームは、算出時間とメモリ消費とを節約するために、得られた画像品質に関してより低い要求で生成され得る。詳細には、第1のボリュームを算出するとき、ボクセル分解能はより低くなり得、投影のサブサンプリングが実施され得、投影および/またはボリュームに関する画像処理ステップが省略され得る。
【0017】
別の好ましい実施形態では、ステップ(S3)におけるサイノグラム中の金属領域の検出は、2つのサブステップによって実施される。これらは、(S3.1)好ましくはしきい値および/または金属構造の形状を使用することによって、第1のボリューム中の金属領域を検出することと、(S3.2)推定された投影ジオメトリを用いて、検出された金属領域をサイノグラム中に投影することとである。金属領域の検出は、サイノグラム中の構造の重畳により、ボリューム中で、サイノグラム中よりも容易である。推定された投影ジオメトリを用いて、第1のボリューム中で検出された金属領域をサイノグラム中に投影することによって、サイノグラム中の金属領域の検出が達成される。
【0018】
好ましい代替実施形態では、ステップ(S3)におけるサイノグラム中の金属領域の検出(4)は、3つのさらなるサブステップによって実施される。これらは、(S3.1)推定された投影ジオメトリを使用して、第1のボリュームのシミュレートされたサイノグラムを生成することと、(S3.2)シミュレートされたサイノグラム中の金属領域を検出し、検出された金属領域をサイノグラムに転送することと、(S3.3)推定された投影ジオメトリとサイノグラム中の検出された金属領域とを使用して、第1のボリューム中の金属領域を決定することとである。
【0019】
推定された投影ジオメトリが、第1のボリュームの再構成においておよびシミュレートされたサイノグラムの生成において使用された場合、シミュレートされたサイノグラムからサイノグラムへの検出された金属領域の転送は、画像領域が同一であるので、単純である。シミュレートされたサイノグラムを生成するときに重畳構造の簡略表現が達成されるので、金属領域の検出は、シミュレートされたサイノグラム中で、サイノグラム中よりも容易である。サイノグラムについて推定された投影ジオメトリが、シミュレートされたサイノグラムの生成において使用されたので、シミュレートされたサイノグラム中で検出された金属領域は、サイノグラムに転送され得る。推定された投影ジオメトリを用いて、シミュレートされたサイノグラム中で検出された金属領域を第1のボリュームに投影することによって、第1のボリューム中の金属領域の検出が達成される。
【0020】
さらなる好ましい実施形態では、ステップ(S4)におけるサイノグラム中の金属領域の補正は、(S4.1)サイノグラム中の金属領域を、新しいピクセル値で充填するサブステップと、新しいピクセル値が、隣接ピクセルから計算されるか、または人工ピクセル値に対応するかのいずれかである、(S4.2)サイノグラムのピクセル値と、前のステップ(S4.1)からの新しいピクセル値を加重ブレンドするサブステップとのうちの1つまたは複数によって実施される。サイノグラム中の金属領域は、強い吸収により、正しく物理的に測定され得ない。サイノグラム中の金属領域を、妥当と思われるピクセル値と置き換えることによって、再構成中の金属アーティファクトの発生は回避され得る。新しい妥当と思われるピクセル値は、人工値であるか、またはサイノグラム中の隣接ピクセルから計算され得る。元のピクセル値と、新しいピクセル値を加重ブレンドすることが、不確実な物理情報の一部を維持する。
【0021】
さらなる好ましい実施形態では、ステップ(S6)における第2のボリューム中の金属領域の補正は、(S6.1)第2のボリューム中の金属領域を、再構成された第1のボリュームからの値または人工値で充填するサブステップと、(S6.2)加重様式で、第2のボリュームの値と、前のステップ(S6.1)からの新しい値をブレンドするサブステップとのうちの1つまたは複数によって実施される。
【0022】
サイノグラム中の金属領域の置き換えにより、再構成された第2のボリューム中の金属領域中の値は、強く変造され、それらは、明らかに低すぎる吸収を示す。第1のボリュームからの値を再挿入すること、またはそれらを、妥当と思われる人工値と置き換えることによって、第2のボリューム中の金属領域の存在が可視化される。元のボクセル値と、新しいボクセル値を加重ブレンドすることによって、満足な画像印象が達成される。
【0023】
別の好ましい実施形態では、MACは、ステップ(S1)において、(S1.1)推定された投影ジオメトリを用いて、第3のボリュームを再構成するサブステップと、(S1.2)サイノグラムの投影画像を第3のボリュームと位置合わせすることによって、投影ジオメトリを推定するサブステップとを備え、それらは、好ましくは、収束基準が達せられるまで反復的に繰り返される。
【0024】
患者の移動またはずれるデバイスの移動が、再構成されたボリュームとサイノグラムの投影画像との間のずれにつながる。位置合わせは、これらのずれを検出し、投影ジオメトリを調整することによってこれらのずれを補償する。投影ジオメトリの調整は、幾何学的パラメータを変動させることによって行われる。幾何学的パラメータは、好ましくは、内因性パラメータと外因性パラメータとを備え、ここで、内因性パラメータは、互いに対するX線検出器とX線源との投影特性を記述し、外因性パラメータは、ボリュームの投影画像および選択されたサブ領域ごとの回転と並進とからなる変換を記述する。幾何学的パラメータを推定するためのプロシージャとして、いわゆる「最適化方法」が使用され得る。調整された投影ジオメトリを用いた第3のボリュームの繰り返される再構成は、位置合わせのための基準ボリュームを更新する。可能な収束基準は、a)投影ジオメトリの変化がしきい値よりも小さいかどうか、b)位置合わせの品質がしきい値よりも大きいかどうか、c)反復ステップの数がしきい値よりも大きいかどうか、d)算出時間がしきい値よりも大きいかどうかである。
【0025】
好ましくは、ステップ(S1)におけるMACは、投影行列を使用して推定されるべき投影ジオメトリを記述し得る。好ましくは、ステップ(S1)において、MACは、既存の幾何学的デバイス較正に基づいて投影ジオメトリを推定し、それを、サイノグラムの投影画像ごとの3つの回転パラメータと3つの並進パラメータとによって記述されるさらなる剛体運動(rigid motion)で補足し得る。随意に、内因性パラメータがさらに推定され得る。
【0026】
別の好ましい実施形態では、ステップ(S1.2)における投影画像の位置合わせが、推定された投影ジオメトリを使用して、シミュレートされたサイノグラムを生成することと、類似性測度を使用して、シミュレートされたサイノグラムをサイノグラムと比較することとによって実施される。シミュレートされたサイノグラムを生成する際に、推定された投影ジオメトリを使用して、第3のボリュームの順投影が実施される。正しい投影ジオメトリが適用されたとき、シミュレートされたサイノグラムとサイノグラムとの間の類似性は最大である。いくつかの類似性測度が、類似性を評価するための文献において知られている。類似性測度の代わりに、否定差測度(negated difference measure)も使用され得る。以下の類似性測度または誤差測度、すなわち、平均2乗誤差、平均絶対差、正規化相互相関、勾配相関、勾配情報、線形スケーリングを伴う勾配情報、勾配配向、相互情報量(Mutual Information)が、位置合わせプロシージャにおいて適用され得る。
【0027】
別の好ましい代替実施形態では、ステップ(S1)におけるMACは、サイノグラムにおける1つまたは複数の整合性制約に関するメトリックを評価することによって、投影ジオメトリを推定することを備える。サイノグラムにおける整合性制約に関するメトリックを評価することによって投影ジオメトリを推定することは、ボリュームの再構成が必要とされないという利点を有する。
【0028】
以下の整合性制約、すなわち、データ整合性、エピポーラ整合性、フーリエ整合性、Grangeatの定理、相互相関が、投影ジオメトリ推定プロシージャにおいて適用され得る。
【0029】
別の好ましい代替実施形態では、ステップ(S1)におけるMACは、(S1.1)推定された投影ジオメトリを用いて、第3のボリュームを再構成するサブステップと、(S1.2)シャープネス測度、または滑らかさ条件を評価することなど、第3のボリュームに関する画像品質メトリックを算出するサブステップと、(S1.3)推定された投影ジオメトリを、画像品質メトリックを改善するように調整するサブステップとを備え、それらは、好ましくは反復的に繰り返される。画像品質メトリックは、しばしば、動きアーティファクトの存在と相関する。投影ジオメトリを調整することによって画像品質メトリックを改善することは、動きアーティファクトを低減することができる。投影ジオメトリの適応は、好ましくは反復的プロシージャにおいて、幾何学的パラメータを変動させることによって行われる。
【0030】
画像品質メトリックは、勾配分散または勾配ノルムなど、ボリュームに関するシャープネス測度であり、あるいは、グレー値のエントロピー、グレー値の分散、または総変動など、ボリュームに関する滑らかさ制約によって定義され得る。
【0031】
本発明による方法は、コンピュータ実装可能方法であり、コンピュータ化DVTシステム(1)上で実行され得る。
図2は、DVTシステム(1)のための一実施形態の一例を示す。この点について、本発明はまた、コンピュータ可読コードを有するコンピュータプログラムを含む。コンピュータプログラムは、データストレージデバイス上に設けられ得る。コンピュータ支援DVTシステム(1)は、患者イメージングを実施するためのX線デバイス(2)を備え、それにより、サイノグラムが生成される。X線デバイス(2)は、曝露中に患者の頭部の周りで回転される、X線源(3)とX線検出器(4)とを有する。曝露中のX線源(3)とX線検出器(4)との軌道は、円形経路を描き得る。代替的に、軌道は、円形経路からずれる形状を仮定し得る。いくつかのアクチュエータが同時に制御される場合、純粋な円形経路からずれる患者の頭部の周りのデバイス軌道が、達成され得る。患者の頭部は、バイト(7)および頭部固定(6)によりX線デバイス中に配置される。コンピュータ化DVTシステム(1)は、制御ユニット(5)と、好ましくは、X線デバイス(2)に接続可能なコンピュータ(8)またはコンピューティングユニットと、好ましくは、とりわけデータセットを可視化するためのディスプレイ(9)とを備える。コンピュータ(8)は、ローカルエリアネットワーク(図示せず)を介して、または代替的に、インターネットを介して、X線デバイス(2)に接続され得る。コンピュータ(8)は、クラウドの一部であり得る。代替的に、コンピュータ(8)は、X線デバイス(2)に組み込まれ得る。算出は、代替的に、クラウドにおいて行われ得る。コンピュータ(8)は、コンピュータプログラムを実行し、ディスプレイ(9)上での可視化のためのものを含む、データセットを提供する。ディスプレイ(9)は、X線デバイス(2)から空間的に分離され得る。好ましくは、コンピュータ(8)はまた、X線デバイス(2)を制御し得る。代替的に、別個のコンピュータが、制御および再構成のために使用され得る。
【0032】
本発明によれば、上記の実施形態によって生成されたデータセットは、好ましくはディスプレイ(9)またはプリントアウトによって、可視化のために、特に診断目的のために、医師に提示され得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科領域におけるデジタルボリュームトモグラフィ(DVT)イメージングを再構成するための方法であって、前記方法が、
(S1)動きアーティファクト補償(MAC)を使用して、患者イメージングのサイノグラムから投影ジオメトリを推定するステップと、
(S2)前記推定された投影ジオメトリを用いて、第1のボリュームを再構成するステップと、
(S3)前記第1のボリュームと前記推定された投影ジオメトリとを使用して、前記サイノグラム中の金属領域と前記第1のボリューム(1)中の金属領域とを検出するステップと、
(S4)前記サイノグラム中の前記金属領域を補正し、補正されたサイノグラムを生成するステップと、
(S5)前記推定された投影ジオメトリと前記補正されたサイノグラムとを用いて、第2のボリュームを再構成するステップと、
(S6)前記第2のボリューム中の前記金属領域を補正するステップと
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1のボリュームが、分解能および/または使用された投影の数および/または使用された画像処理に関して、前記第2のボリュームとは異なることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(S3)における前記サイノグラム中の前記金属領域の前記検出が、
(S3.1)好ましくはしきい値および/または金属構造の形状を使用することによって、前記第1のボリューム中の前記金属領域を検出することと、
(S3.2)前記推定された投影ジオメトリを用いて、前記検出された金属領域を前記サイノグラム中に投影することと
からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(S3)における前記サイノグラム中の前記金属領域の前記検出が、
(S3.1)前記推定された投影ジオメトリを使用して、前記第1のボリュームのシミュレートされたサイノグラムを生成することと、
(S3.2)前記シミュレートされたサイノグラム中の前記金属領域を検出し、前記検出された金属領域を前記サイノグラムに転送することと、
(S3.3)前記推定された投影ジオメトリと前記サイノグラム中の前記検出された金属領域とを使用して、前記第1のボリューム中の前記金属領域を決定することと
からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(S4)における前記サイノグラム中の前記金属領域の前記補正は、
(S4.1)前記サイノグラム中の前記金属領域を、新しいピクセル値で充填するステップと、前記新しいピクセル値が、隣接ピクセルから計算されるか、または人工ピクセル値に対応するかのいずれかである、
(S4.2)前記サイノグラムのピクセル値と、前のステップ(S4.1)からの前記新しいピクセル値を加重ブレンドするステップと
のうちの1つまたは複数からなることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(S6)における前記第2のボリューム中の前記金属領域の前記補正が、
(S6.1)前記第2のボリューム中の前記金属領域を、前記再構成された第1のボリュームからの値または人工値で充填するステップと、
(S6.2)前記第2のボリュームの値と、前のステップ(S6.1)からの前記新しい値を加重ブレンドするステップと
のうちの1つまたは複数からなることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(S1)における前記MACは、
(S1.1)推定された投影ジオメトリを用いて、第3のボリュームを再構成するステップと、
(S1.2)前記サイノグラムの投影画像を前記第3のボリュームと位置合わせすることによって、前記投影ジオメトリを推定するステップと
を備え、好ましくは、収束基準が達せられるまで反復的に繰り返すことを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(S1.2)における前記投影画像の前記位置合わせが、前記推定された投影ジオメトリを用いて、シミュレートされたサイノグラムを生成することと、類似性測度によって、前記シミュレートされたサイノグラムを前記サイノグラムと比較することとによって実施されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(S1)における前記MACが、前記サイノグラムにおける1つまたは複数の整合性制約に関するメトリックを評価することによって、前記投影ジオメトリの推定を実施することを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(S1)における前記MACが、
(S1.1)前記推定された投影ジオメトリを用いて、第3のボリュームを再構成するステップと、
(S1.2)シャープネス測度、または滑らかさ条件の評価など、前記第3のボリュームに関する画像品質メトリックを算出するステップと、
(S1.3)前記推定された投影ジオメトリを、前記画像品質メトリックを改善するように調整するステップと
を備え、好ましくは、反復的に繰り返すことを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータ支援DVTシステム(1)によって実行されたとき、前記コンピュータ支援DVTシステム(1)に、請求項1
または2に記載の方法ステップを実施させるコンピュータ可読コードを備えるコンピュータプログラム。
【請求項12】
X線デバイス(2)と、請求項11に記載のコンピュータプログラムを実行するように構成されたコンピューティングユニット(8)とを備えるコンピュータ化DVTシステム(1)。
【請求項13】
請求項1
または2に記載の方法によって提供される、可視化のためのデータセットの使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
本発明によれば、上記の実施形態によって生成されたデータセットは、好ましくはディスプレイ(9)またはプリントアウトによって、可視化のために、特に診断目的のために、医師に提示され得る。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
歯科領域におけるデジタルボリュームトモグラフィ(DVT)イメージングを再構成するための方法であって、前記方法が、
(S1)動きアーティファクト補償(MAC)を使用して、患者イメージングのサイノグラムから投影ジオメトリを推定するステップと、
(S2)前記推定された投影ジオメトリを用いて、第1のボリュームを再構成するステップと、
(S3)前記第1のボリュームと前記推定された投影ジオメトリとを使用して、前記サイノグラム中の金属領域と前記第1のボリューム(1)中の金属領域とを検出するステップと、
(S4)前記サイノグラム中の前記金属領域を補正し、補正されたサイノグラムを生成するステップと、
(S5)前記推定された投影ジオメトリと前記補正されたサイノグラムとを用いて、第2のボリュームを再構成するステップと、
(S6)前記第2のボリューム中の前記金属領域を補正するステップと
を備えることを特徴とする、方法。
[C2]
前記第1のボリュームが、分解能および/または使用された投影の数および/または使用された画像処理に関して、前記第2のボリュームとは異なることを特徴とする、C1に記載の方法。
[C3]
ステップ(S3)における前記サイノグラム中の前記金属領域の前記検出が、
(S3.1)好ましくはしきい値および/または金属構造の形状を使用することによって、前記第1のボリューム中の前記金属領域を検出することと、
(S3.2)前記推定された投影ジオメトリを用いて、前記検出された金属領域を前記サイノグラム中に投影することと
からなることを特徴とする、C1または2に記載の方法。
[C4]
ステップ(S3)における前記サイノグラム中の前記金属領域の前記検出が、
(S3.1)前記推定された投影ジオメトリを使用して、前記第1のボリュームのシミュレートされたサイノグラムを生成することと、
(S3.2)前記シミュレートされたサイノグラム中の前記金属領域を検出し、前記検出された金属領域を前記サイノグラムに転送することと、
(S3.3)前記推定された投影ジオメトリと前記サイノグラム中の前記検出された金属領域とを使用して、前記第1のボリューム中の前記金属領域を決定することと
からなることを特徴とする、C1または2に記載の方法。
[C5]
ステップ(S4)における前記サイノグラム中の前記金属領域の前記補正は、
(S4.1)前記サイノグラム中の前記金属領域を、新しいピクセル値で充填するステップと、前記新しいピクセル値が、隣接ピクセルから計算されるか、または人工ピクセル値に対応するかのいずれかである、
(S4.2)前記サイノグラムのピクセル値と、前のステップ(S4.1)からの前記新しいピクセル値を加重ブレンドするステップと
のうちの1つまたは複数からなることを特徴とする、C1から4のいずれか一項に記載の方法。
[C6]
ステップ(S6)における前記第2のボリューム中の前記金属領域の前記補正が、
(S6.1)前記第2のボリューム中の前記金属領域を、前記再構成された第1のボリュームからの値または人工値で充填するステップと、
(S6.2)前記第2のボリュームの値と、前のステップ(S6.1)からの前記新しい値を加重ブレンドするステップと
のうちの1つまたは複数からなることを特徴とする、C1から5のいずれか一項に記載の方法。
[C7]
ステップ(S1)における前記MACは、
(S1.1)推定された投影ジオメトリを用いて、第3のボリュームを再構成するステップと、
(S1.2)前記サイノグラムの投影画像を前記第3のボリュームと位置合わせすることによって、前記投影ジオメトリを推定するステップと
を備え、好ましくは、収束基準が達せられるまで反復的に繰り返すことを特徴とする、C1から6のいずれか一項に記載の方法。
[C8]
ステップ(S1.2)における前記投影画像の前記位置合わせが、前記推定された投影ジオメトリを用いて、シミュレートされたサイノグラムを生成することと、類似性測度によって、前記シミュレートされたサイノグラムを前記サイノグラムと比較することとによって実施されることを特徴とする、C7に記載の方法。
[C9]
ステップ(S1)における前記MACが、前記サイノグラムにおける1つまたは複数の整合性制約に関するメトリックを評価することによって、前記投影ジオメトリの推定を実施することを特徴とする、C1から6のいずれか一項に記載の方法。
[C10]
ステップ(S1)における前記MACが、
(S1.1)前記推定された投影ジオメトリを用いて、第3のボリュームを再構成するステップと、
(S1.2)シャープネス測度、または滑らかさ条件の評価など、前記第3のボリュームに関する画像品質メトリックを算出するステップと、
(S1.3)前記推定された投影ジオメトリを、前記画像品質メトリックを改善するように調整するステップと
を備え、好ましくは、反復的に繰り返すことを特徴とする、C1から6のいずれか一項に記載の方法。
[C11]
コンピュータ支援DVTシステム(1)によって実行されたとき、前記コンピュータ支援DVTシステム(1)に、C1から10のいずれか一項に記載の方法ステップを実施させるコンピュータ可読コードを備えるコンピュータプログラム。
[C12]
X線デバイス(2)と、C11に記載のコンピュータプログラムを実行するように構成されたコンピューティングユニット(8)とを備えるコンピュータ化DVTシステム(1)。
[C13]
C1から10のいずれか一項によって提供される、可視化のためのデータセットの使用。
【国際調査報告】