(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】迷光除去を備えた熱アシスト磁気記録(HAMR)スライダ
(51)【国際特許分類】
G11B 5/31 20060101AFI20240621BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20240621BHJP
G11B 5/10 20060101ALI20240621BHJP
G11B 5/48 20060101ALI20240621BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/02 S
G11B5/10 A
G11B5/48 D
G11B5/39
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501781
(86)(22)【出願日】2022-05-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022029341
(87)【国際公開番号】W WO2023086125
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー、ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】スタイプ、バリー カッシング
【テーマコード(参考)】
5D034
【Fターム(参考)】
5D034BA02
(57)【要約】
熱アシスト磁気記録(HAMR)ディスクドライブは、スライダに搭載された半導体レーザを使用して、スライダ内部に位置する導波路を介して、近接場トランスデューサ(NFT)に光を送達する。導波路は、コアと、レーザ光を透過し、かつコアを取り囲むクラッド材料と、を含む。迷光吸収材料の層は、スライダ内部で、コアと同一平面内の導波路コアの対向縁部と、コアの平面から離間した平面内の導波路コアの対向側部と、に位置する。導波路クラッド材料の部分は、導波路コアと迷光吸収層との間に位置する。迷光吸収層は、クラッド材料内に漏れる光を吸収し、レーザに反射される迷光を実質的に低減して、望ましくないレーザパワー変動を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の離間した実質的に平行な表面を有する熱アシスト磁気記録(HAMR)ヘッドキャリアであって、前記ヘッドキャリアが、
前記第1の表面上の半導体レーザと、
前記第2の表面に出力端を有する近接場トランスデューサ(NFT)と、
前記ヘッドキャリア上の導波路であって、前記第1及び第2のヘッドキャリア表面に実質的に直交する平面内にあり、かつ前記第1のヘッドキャリア表面から前記第2のヘッドキャリア表面に向かって延在するコアであって、前記レーザ及び前記NFTに光学的に結合されている、コアと、前記コアを取り囲むクラッド材料と、を含む、導波路と、
前記クラッド材料内に位置し、前記コアの周りに間隔をおいて配置された迷光吸収材料と、を備え、クラッド材料の部分が、前記迷光吸収材料と前記コアとの間に位置し、前記迷光吸収材料が、前記第1のヘッドキャリア表面から前記第2のヘッドキャリア表面に向かって延在する、HAMRヘッドキャリア。
【請求項2】
前記ヘッドキャリアの前記第1の表面上に反射防止コーティングを更に備える、請求項1に記載のHAMRヘッドキャリア。
【請求項3】
前記導波路コアが、前記ヘッドキャリアの前記第1の表面の近くにスポットサイズ変換器を更に備える、請求項1に記載のHAMRヘッドキャリア。
【請求項4】
前記迷光吸収材料が、0.3より大きい吸光係数kを有する材料から形成されている、請求項1に記載のHAMRヘッドキャリア。
【請求項5】
前記迷光吸収材料が、Ru、Co、Cr、W、NiFe、CoFe、NiTa、RuAl、(Cr、Ni、Ta、及びRuのうちの1つ以上を少なくとも10原子パーセント含有する)合金、並びにC、GaAs及びSiから選択される、請求項1に記載のHAMRヘッドキャリア。
【請求項6】
前記導波路コアが、前記レーザと前記NFTとの間に少なくとも2つの屈曲部を含み、前記コアが、前記第1のヘッドキャリア表面から、前記第1のヘッドキャリア表面に最も近い前記屈曲部まで実質的に真っすぐな線状に延在し、前記迷光吸収材料が、前記第1のヘッドキャリア表面から、前記第1のヘッドキャリア表面に最も近い前記屈曲部まで延在する、請求項1に記載のHAMRヘッドキャリア。
【請求項7】
前記クラッド材料が、前記コアと実質的に同一の平面内の前記コアの縁部に位置する縁部クラッド材料と、前記コア及び縁部クラッド材料を含む前記平面の対向側部に位置する側部クラッド材料と、を含み、前記迷光吸収材料が、
前記側部クラッド材料の対向側部にあり、前記第1のヘッドキャリア表面の近くから前記第2のヘッドキャリア表面に向かって延在する第1及び第2の迷光吸収層であって、前記コア及び縁部クラッド材料の前記平面に実質的に平行である、第1及び第2の迷光吸収層と、
前記縁部クラッド材料の対向縁部にあり、前記第1のヘッドキャリア表面の近くから前記第2のヘッドキャリア表面に向かって延在する第3及び第4の迷光吸収層であって、前記第1及び第2の迷光吸収層と実質的に同一平面上にありかつ前記第1及び第2の迷光吸収層に実質的に平行である、第3及び第4の迷光吸収層と、を含む、請求項1に記載のHAMRヘッドキャリア。
【請求項8】
前記迷光吸収層のうちの1つ以上が、異なる材料からなる多層を含む、請求項7に記載のHAMRヘッドキャリア。
【請求項9】
熱アシスト記録(HAMR)ディスクドライブであって、
請求項1に記載のHAMRヘッドキャリアであって、前記ヘッドキャリア上に磁気書込みヘッド及び磁気抵抗読取りヘッドを更に備える、ヘッドキャリアと、
磁気記録層を有する磁気記録ディスクと、を備える、HAMRディスクドライブ。
【請求項10】
第1及び第2の離間した実質的に平行な表面を有する熱アシスト磁気記録(HAMR)スライダであって、前記スライダが、
前記第1の表面上のダイオードレーザと、
前記第2の表面に出力端を有する近接場トランスデューサ(NFT)と、
前記スライダ上の導波路であって、前記第1及び第2のスライダ表面に実質的に直交する平面内にあり、かつ前記ダイオードレーザ及び前記NFTに光学的に結合されたコアと、前記コアと実質的に同一の平面内の前記コアの縁部に位置する縁部クラッド材料と、前記コア及び縁部クラッド材料を含む前記平面の対向側部に位置する側部クラッド材料と、を含む、導波路と、
前記側部クラッド材料の対向側部にあり、前記第1のスライダ表面の近くから前記第2のスライダ表面に向かって延在する第1及び第2の迷光吸収層であって、前記コア及び縁部クラッド材料の前記平面に実質的に平行である、第1及び第2の迷光吸収層と、
前記縁部クラッド材料の対向縁部にあり、前記第1のスライダ表面の近くから前記第2のスライダ表面に向かって延在する第3及び第4の迷光吸収層であって、前記第1及び第2の迷光吸収層と実質的に同一平面上にありかつ前記第1及び第2の迷光吸収層に実質的に平行である、第3及び第4の迷光吸収層と、を備える、HAMRスライダ。
【請求項11】
前記スライダの前記第1の表面上に反射防止コーティングを更に備える、請求項10に記載のHAMRスライダ。
【請求項12】
前記導波路コアが、前記スライダの前記第1の表面の近くにスポットサイズ変換器を更に備える、請求項10に記載のHAMRスライダ。
【請求項13】
前記導波路コアが、前記ダイオードレーザと前記NFTとの間に少なくとも2つの屈曲部を含む、請求項10に記載のHAMRスライダ。
【請求項14】
前記迷光吸収層の各々が、前記第1のスライダ表面から、前記第1のスライダ表面に最も近い前記屈曲部まで延在する、請求項12に記載のHAMRスライダ。
【請求項15】
前記第1のスライダ表面の近くの前記迷光吸収層の端部のうちの1つ以上が、前記スライダの前記第1の表面に対してテーパ状である、請求項10に記載のHAMRスライダ。
【請求項16】
前記迷光吸収層が、0.3より大きい吸光係数kを有する材料から形成されている、請求項10に記載のHAMRスライダ。
【請求項17】
前記迷光吸収層のうちの1つ以上が、Ru、Co、Cr、W、NiFe、CoFe、NiTa、RuAl、(Cr、Ni、Ta及びRuのうちの1つ以上を少なくとも10原子パーセント含有する)合金、並びにC、GaAs及びSiから選択された材料から形成されている、請求項10に記載のHAMRスライダ。
【請求項18】
熱アシスト記録(HAMR)ディスクドライブであって、
請求項10に記載のHAMRスライダであって、前記スライダ上に磁気書込みヘッド及び磁気抵抗読取りヘッドを更に備える、スライダと、
磁気記録層を有する磁気記録ディスクと、を備える、HAMRディスクドライブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年11月9日に出願された「HEAT-ASSISTED MAGNETIC RECORDING(HAMR)SLIDER WITH STRAY LIGHT REMOVAL」と題する米国非仮出願第17/522,404号の利益を主張し、その内容の全体はあらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、レーザ光源が光導波路を介して近接場トランスデューサ(near-field transducer、NFT)に対する光を生成して磁気記録層を加熱する、熱アシスト磁気記録(heat-assisted magnetic recording、HAMR)に関し、より具体的には、導波路から漏れる迷光を除去する、改善されたHAMRスライダに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の磁気記録では、記録媒体に記憶された磁化の熱的不安定性が、記録されたデータの損失を引き起こす場合がある。これを回避するために、高い磁気結晶異方性(Ku)を有する媒体が必要とされる。しかしながら、Kuを増加させることにより、媒体の保磁力も増加し、書込みヘッドの書込み磁界能力を上回り得る。記録層の磁性材料の保磁力は温度依存性であることが知られているので、熱安定性の問題に対する1つの提案された解決策は、熱アシスト磁気記録(HAMR)であり、書き込みが発生するのに十分に保磁力を低下させるために、主磁極による書き込み中に、高Kuの磁気記録材料が局所的に加熱されるが、保磁力/異方性は、ディスクドライブの周囲温度(すなわち、約15~30℃の通常動作温度又は「室温」)で記録されたビットの熱的安定性に対して十分に高い。いくつかの提案されたHAMRシステムでは、磁気記録材料は、そのキュリー温度付近又はそれを上回る温度に加熱される。次いで、記録されたデータは、従来の磁気抵抗読取りヘッドによって、周囲温度で読み戻される。HAMRディスクドライブは、磁気記録材料がディスク上の連続層である従来の連続媒体と、磁気記録材料が離散データアイランド又は「ビット」にパターン化されるビットパターン化媒体(bit-patterned media、BPM)と、の両方のために提案されている。
【0004】
HAMRディスクドライブは、典型的には、ディスク表面の近くに維持された気体軸受スライダを有する。各スライダは、半導体レーザ光源(例えば、ダイオードレーザ)と、ディスク上の記録材料を加熱するための近接場トランスデューサ(NFT)と、レーザとNFTとの間に結合された光導波路と、を支持する。「近接場」トランスデューサは、「近接場光学系」を指し、光の通路は、サブ波長フィーチャを有する素子を通り、光は、第1の素子からサブ波長距離に位置する磁気記録媒体のような基板などの第2の素子に結合される。NFTは、典型的には、気体軸受スライダの気体軸受面(gas-bearing surface、GBS)に位置し、気体軸受スライダはまた、読取り/書込みヘッドも支持し、ディスク表面に乗るか、又はディスク表面上を「飛ぶ」。
【発明の概要】
【0005】
導波路は、スライダの内部に形成されており、コアと、レーザ光を透過し、かつコアを取り囲むクラッド材料と、を含む。迷光は、コアから透過性クラッド材料を通って漏れ、スライダ構造及びスライダ/媒体界面に反射してダイオードレーザに跳ね返り得る。反射光は、ダイオードレーザのモードホップ又は周波数シフトを引き起こし、望ましくないレーザパワー変動をもたらす。ダイオードレーザがスライダ上の所望の位置からずれている場合、反射光は増加する。製造時におけるダイオードレーザの場所に公差があるので、多少の位置ずれが常に存在し得、したがって、反射光を増加させ得る。
【0006】
本発明の実施形態では、迷光吸収材料の層は、スライダ内部で、コアと同一平面内の導波路コアの対向縁部と、コアの平面から離間した平面内の導波路コアの対向側部と、に位置する。導波路クラッド材料の部分は、導波路コアと迷光吸収層との間に位置する。迷光吸収層は、クラッド材料内に漏れる光を吸収し、ダイオードレーザ内に反射される迷光を実質的に低減する。
【0007】
本発明の性質及び利点をより十分に理解するために、添付の図面とともに以下の詳細な説明を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のある実施形態による、熱アシスト磁気記録(HAMR)ディスクドライブの上面図である。
【
図2】先行技術による、HAMRディスクドライブ及びHAMRディスクの一部分で用いる気体軸受スライダの側面断面図であり、非常に小さなフィーチャを示すことが困難であるため、縮尺どおりに描かれていない。
【
図3】先行技術による、スライダの側面断面図であり、迷光の問題を図示する。
【
図4】近接場トランスデューサ(NFT)における結合効率の割合(曲線200)及びNFTにおけるモードホップパワー変動の割合(曲線210)を、スライダのフレックス表面上のダイオードレーザのクロストラック位置ずれの関数として示す。
【
図5】導波路コアを含む平面を通る側面断面図であり、本発明のある実施形態による、コアの平面内の導波路コアの対向縁部に位置する迷光吸収材料からなる2つの層(層3及び層4)を示す。
【
図6】スライダの第1及び第2の平面に平行な平面である、
図5の断面6-6の図であり、本発明のある実施形態による、導波路コアと、迷光吸収材料の4つの層と、を実質的に取り囲むクラッド材料を示す。
【
図7A】層の平面における本発明のある実施形態による、迷光吸収層の形状を示す。
【
図7B】本発明のある実施形態による、迷光吸収層のある実施形態を示し、フレックス表面に近い層の端部は、フレックス表面に対してある角度を形成する。
【
図7C】本発明のある実施形態による、迷光吸収層のある実施形態を示し、フレックス表面に近い層の端部は、フレックス表面に対して湾曲端部を形成する。
【
図8】ダイオードレーザ(ダイオードレーザ)のクロストラックオフセットの関数として、迷光吸収層なしの反射率(曲線300)と、Ruから形成された迷光吸収層ありの反射率(曲線310)と、を示す、コンピュータシミュレーションのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明のある実施形態による、熱アシスト記録(HAMR)ディスクドライブ100の上面図である。
図1では、HAMRディスクドライブ100は、半径方向に離間した円形トラック118に配置された従来の連続磁気記録材料からなる磁気記録層31を有するディスク150とともに描写されている。ディスク150の内径及び外径付近の、いくつかの代表的なトラック118のみが示されている。しかしながら、従来の連続磁気記録層の代わりに、記録層は、離散データアイランドを有するビットパターン化媒体(BPM)層であってもよい。
【0010】
ドライブ100は、アクチュエータ130と、磁気記録ディスク150を回転させるための駆動モータと、を支持するハウジング又はベース112を有する。アクチュエータ130は、剛性アーム131を有し、矢印133によって示すように、旋回軸132の周りを回転するボイスコイルモータ(voice coil motor、VCM)ロータリアクチュエータであってもよい。ヘッドサスペンションアセンブリは、アクチュエータのアーム131の端部に取り付けられた一端を有するサスペンション135と、サスペンション135の他端に取り付けられた気体軸受スライダ120などのヘッドキャリアと、を含む。サスペンション135は、ディスク150の表面の直近にスライダ120が維持されることを可能にし、矢印20の方向に回転するとき、ディスク150によって生成されたガス(典型的には、空気又はヘリウム)の軸受上でスライダ120が「縦揺れ」及び「横揺れ」することを可能にする。スライダ120は、磁気抵抗読取りヘッド、誘導書込みヘッド、近接場トランスデューサ(NFT)及び光導波路を含むHAMRヘッド(図示せず)を支持する。波長780~980nmの半導体レーザ88は、HAMR光源として使用されてもよく、スライダ120の上部で支持されるように描写されている。ディスク150が矢印20の方向に回転するにつれて、アクチュエータ130の移動により、スライダ120上のHAMRヘッドが、ディスク150上の異なるデータトラック118にアクセスすることを可能にする。スライダ120は、典型的には、アルミナ-炭化チタン(Al
2O
3/TiC)からなる複合材料などの複合材料から形成される。
図1では、関連付けられたスライダ及び読取り/書込みヘッドを有する1つのディスク表面のみが示されているが、典型的には、スピンドルモータによって回転されるハブ上に積み重ねられた複数のディスクがあり、別個のスライダ及びHAMRヘッドが各ディスクの各表面に関連付けられている。
【0011】
以下の図面では、X軸は、スライダの気体軸受面(GBS)に垂直な軸を示し、Y軸は、トラック幅又はクロストラック軸を示し、Z軸、はアロングトラック軸を示す。
図2は、先行技術による、HAMRヘッドの構成例を示す概略断面図である。
図2では、ディスク150は、磁化領域又は「ビット」34を有する磁化可能材料の従来の連続磁気記録層である記録層31とともに描写されている。気体軸受スライダ120は、サスペンション135によって支持されており、かつ、ディスク150に面し、磁気書込みヘッド50、読取りヘッド60及び透磁性読取りヘッドシールドS1及びS2を支持するGBSを有する。記録磁界は、コイル56と、コイル56によって生成された磁束を伝達するための主磁極53と、主磁極53に接続された主極52と、主磁極53及び主極52に結合されたリターン磁極54と、からなる書込みヘッド50によって生成される。コイル56によって生成された磁界は、主磁極53を通して、光近接場トランスデューサ(NFT)74の近傍に配置された主極52に伝達される。
図2は、周知の「パンケーキ」コイル56を有する書込みヘッド50を示しており、コイルセグメントは、実質的に同一の平面内にある。しかしながら、代替的に、コイルは、コイルが主磁極53の周りに巻き付けられている周知の「ヘリカル」コイルであってもよい。記録時に、ディスク150の記録層31が、NFT74によって生成された近接場光によって加熱されると同時に、領域又は「ビット」34が磁化され、したがって、主極52によって生成された記録磁界を印加することによって、記録層31に書き込まれる。
【0012】
半導体レーザ90は、スライダ120の上面に搭載されている。ダイオードレーザは、半導体レーザの一種である。他の種類には、垂直共振器面発光レーザ(vertical cavity surface emitting laser、VCSEL)が含まれる。光導波路は、レーザ90からNFT74に光を誘導するためのコア73を有する。導波路は、コア73及び周囲のクラッド材料(図示せず)を含み、スライダ120の内部に形成される。導波路コア73の屈折率が周囲のクラッド材料の屈折率よりも確実に大きいことを確実にする材料が、導波路コア73に使用され得る。例えば、Al2O3又はSiO2をクラッド材料として使用してもよく、TiO2、Ta2O5又はSiOxNyをコア材料として使用してもよい。
【0013】
図3は、先行技術による、スライダの側面断面図であり、迷光の問題を図示する。半導体レーザ、好ましくはダイオードレーザは、気体軸受スライダであり得るヘッドキャリアの第1の表面又は上面(フレックス表面とも呼ばれる)に搭載されているサブマウントに搭載されている。スライダは、様々なスライダ構成要素(例えば、読取り及び書込みヘッド、浮上高制御ヒータ)をディスクドライブハードウェアに電気的に接続するための接触パッドを含む。NFTは、フレックス表面に実質的に平行な、スライダの第2の表面又はGBSに位置する。ダイオードレーザは、ギャップを通して、導波路コアの端部に形成されたスポットサイズ変換器(spot-size converter、SSC)に光を伝達する。反射防止コーティング(例えば、Ta
2O
5+SiO
2)は、典型的には、フレックス表面上に形成される。導波路コアは、スライダの内部に形成され、光をNFTに伝達する。この例では、
図2の導波路コアの直線形状とは異なり、導波路コアは複数の屈曲部を有し得る。導波路は、光を透過し、かつコアを取り囲むクラッド材料(図示せず)を含む。迷光は、コアから透過性クラッド材料を通って漏れ、スライダ構造及びスライダ/媒体界面に反射してダイオードレーザに跳ね返る。反射光は、ダイオードレーザのモードホップ又は周波数シフトを引き起こし、望ましくないダイオードレーザパワー変動をもたらす。
【0014】
ダイオードレーザが、スライダのフレックス表面上に正確に位置合わせされていても、導波路クラッドから光が漏れ、したがって、迷光がダイオードレーザに反射される。しかしながら、ダイオードレーザが、スライダのフレックス表面上の所望の位置から少しだけずれていると、反射迷光が増加し、それによってダイオードレーザパワーが不安定になることが実験的研究によって示されている。製造時におけるダイオードレーザの場所に公差があるので、多少のダイオードレーザ位置ずれが常に存在し得、したがって、反射光を増加させ得る。
図4は、NFTにおける結合効率(任意の単位a.u.)(曲線200)及びNFTにおけるモードホップの振幅(パワー変動)(任意の単位a.u.)(曲線210)を、ダイオードレーザのクロストラック位置ずれの関数として示す。位置ずれ0において、結合効率は最も高く、モードホップの振幅は最も低いが、位置ずれの増加とともに、結合効率は減少し、モードホップパワー変動は増加する。
【0015】
本発明の実施形態では、迷光吸収材料は、クラッド材料内に位置し、コアの周りに間隔をおいて配置され、クラッド材料の部分が、迷光吸収材料とコアとの間に位置する。迷光吸収材料は、第1のスライダ表面から第2のスライダ表面に向かって延在する。迷光吸収材料は、スライダ内部で、コアと同一平面内の導波路コアの対向縁部と、コアの平面から離間した平面内の導波路コアの対向側部と、に位置する層として形成され得る。
図5は、導波路コアを含む平面を通る側面断面図であり、コアの平面内の導波路コアの対向縁部に位置する迷光吸収材料からなる2つの層(層3及び層4)を示す。
図5はまた、コア縁部に隣接する導波路コアと同一平面内に位置するクラッド材料1も示す。クラッド材料は、
図5に示すように、導波路コアを含む平面の全面を覆うことができるか、又はコア縁部からある一定の距離だけ延在することができる。
【0016】
図6は、スライダの第1及び第2の平面に平行な平面である、
図5の断面6-6の図であり、導波路コアと、迷光吸収材料の4つの層と、を実質的に取り囲むクラッド材料を示す。クラッド材料1は、SiO
2であってもよく、コアと実質的に同一の平面内にある。層3及び4は、コアの対向縁部に位置し、クラッド材料1は、コアと実質的に同一の平面内に位置する。クラッド材料2は、Al
2O
3であってもよく、コアの対向側部で、コア平面に実質的に平行な平面内にある。迷光吸収層は、コアを実質的に取り囲むクラッド材料の周りに位置し、したがって、周囲のクラッド材料から漏れる光を吸収し、それによって、ダイオードレーザに跳ね返る反射を防止するか、又は実質的に低減する。層1及び2は、20~400nmの範囲の好ましい厚さを有する。層3及び4は、20~400nmの範囲の好ましい厚さを有する。層3及び4が約300nmより厚い場合、追加反射の一因となり得る。
【0017】
図7Aは、層の平面における迷光吸収層の形状を示す。層1及び2の幅Wは、層3と4とを合わせた幅Wと同じ幅を有するものとして描写されている。層3及び4は、コアと層3及び4との間のクラッド材料の幅が、コアの幅の少なくとも4倍であることを可能にするように、導波路コアの対向縁部上に離間配置される。一例では、コアは、約0.4~0.8mmのエッジ間幅を有し得、Wは、約20mmであり得、Wgは、約6mmであり得る。層は、
図7Aに示すように、フレックス表面からコアの少なくとも第1の屈曲部まで延在するか、あるいは、コアがフレックス表面からGBSまで直線である場合、NFTの近くまでずっと延在する好ましい長さLを有する。
図7Bは、フレックス表面に近い層の端部が、フレックス表面に対してある角度を形成する層のある実施形態を示し、
図7Cは、フレックス表面に近い層の端部が、フレックス表面に対して湾曲端部を形成する層のある実施形態を示す。両方の実施形態では、層のテーパ状端部が、ダイオードレーザに跳ね返る反射を低減することができる。
【0018】
迷光吸収層は、迷光の効果的な吸収を可能にするために、ダイオードレーザ波長における高い吸光係数kを有する材料から形成されるべきである。材料はまた、高い熱応力に耐えることができなければならない。好ましい材料は、Ru、Co、Cr、W、NiFe、CoFe、NiTa及びRuAlのような金属及び金属合金材料の両方(kは、好ましくは1より大きい)、又はCr、Ni、Ta及びRuのうちの1つ以上を少なくとも10原子パーセント含有する金属合金、並びにC、GaAs及びSiのような損失性誘電体材料(kは好ましくは0.3より大きい)を含む。迷光吸収層はまた、これらの材料のうちの異なるものからなる多層であってもよく、迷光吸収材料からなる層に加えて、層のうちの1つが、光吸収によって引き起こされる高い温度上昇を回避するためのヒートシンクとして機能する、Cu又はAuのような高熱伝導性材料からなる層である多層であってもよい。
【0019】
図8は、ダイオードレーザのクロストラックオフセットの関数として、迷光吸収層なしの反射率(曲線300)と、Ruから形成された迷光吸収層ありの反射率(曲線310)と、を示す、コンピュータシミュレーションのグラフである。ダイオードレーザに跳ね返る全反射は、迷光吸収層によって約80%低減される。
【0020】
本発明は、好ましい実施形態を参照して特に示され、説明されているが、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、開示された発明は、単に例示的なものとして考慮されるべきであり、添付の特許請求の範囲に規定されるような範囲のみに限定されるべきである。
【国際調査報告】