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特表2024-523743噴霧薬物投与装置及びそれを備える噴霧薬物投与システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】噴霧薬物投与装置及びそれを備える噴霧薬物投与システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20240621BHJP
   A61M 15/08 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61M11/00 D
A61M15/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502211
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2022105940
(87)【国際公開番号】W WO2023284852
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110805974.7
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513110481
【氏名又は名称】ディン, ヤオ ウー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディン, ヤオ ウー
(57)【要約】
注射器(120)の針筒(121)を収容できる内腔が形成されるスリーブ(111)と、スリーブ(111)の先端に設けるとともに、スリーブ(111)の内腔と連通する少なくとも1つのノズル(130)と、を備える噴霧薬物投与装置(110)である。ノズル(130)の軸線方向は、スリーブ(111)の軸線方向に対して角度をなす。スリーブ(111)の後端またはその近傍には、指掛け板(112)が形成されている。スリーブ(111)の先端には、2つのノズル(130)が設けられてもよい。噴霧薬物投与装置(110)は、薬液の十分な噴射、均一な薬物投与および漏れ防止を実現することができる。噴霧薬物投与装置(110)を備える噴霧薬物投与システムにも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器の針筒を収容できる内腔が形成されるスリーブと、
前記スリーブの先端に設けるとともに、前記スリーブの内腔と連通する少なくとも1つのノズルと、を備え、
前記少なくとも1つのノズルの軸線方向は、前記スリーブの軸線方向に対して角度をなすことを特徴とする噴霧薬物投与装置。
【請求項2】
注射器の針筒を収容できる内腔が形成されるスリーブと、
前記スリーブの先端に設けるとともに、前記スリーブの内腔と連通する少なくとも1つのノズルと、
前記スリーブの後端または当該後端の近傍に形成された指掛け板と、を備えることを特徴とする噴霧薬物投与装置。
【請求項3】
注射器の針筒を収容できる内腔が形成されるスリーブと、
前記スリーブの先端に設けるとともに、前記スリーブの前記先端の左右両側のそれぞれに位置し、前記スリーブの前記内腔と連通する2つのノズルと、を備えることを特徴とする噴霧薬物投与装置。
【請求項4】
前記ノズルは、湾曲管を備え、前記湾曲管の一端は、前記噴霧薬物投与装置の前記先端に接続され、前記湾曲管の他端には、ノズルコアが挿入され、ノズルヘッドは、前記湾曲管の他端に外嵌されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項5】
前記ノズルは、前記スリーブに対して回動可能であることを特徴とする請求項4に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項6】
前記湾曲管は、蛇腹管であることを特徴とする請求項5に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項7】
前記スリーブに一体的に形成されたノズルヘッドと、前記ノズルヘッドに収容されたノズルコアとを有する一つの前記ノズルを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項8】
前記ノズルは、湾曲管とノズルコアを有し、前記湾曲管の一端は、前記噴霧薬物投与装置の前記先端に接続され、前記湾曲管の他端には、凸柱が形成され、前記ノズルコアは、前記湾曲管の前記他端から前記凸柱に外嵌されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項9】
前記湾曲管は、蛇腹管であることを特徴とする請求項8に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項10】
前記スリーブには、観察部が形成され、前記観察部を通して前記注射器を見ることができることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項11】
前記観察部は、前記スリーブに形成された透かし部又は透明部分であることを特徴とする請求項10に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項12】
前記ノズルは、吸気通路が形成されたノズルヘッドを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項13】
前記吸気通路は、吸気口と吸気溝とのうちの少なくとも1つから形成されている請求項12に記載の噴霧薬物投与装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の噴霧薬物投与装置と、前記噴霧薬物投与装置の前記スリーブの内腔に挿入可能な注射器と、を備えることを特徴とする噴霧薬物投与システム。
【請求項15】
前記注射器のプランジャに着脱可能に取り付けられたストッパクリップも備えることを特徴とする請求項14に記載の噴霧薬物投与システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、薬物投与装置に関わるものであり、特に注射器と併用して人体に薬物を噴霧形式で送ることができる薬物投与装置に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
注射器は、医療分野での一般的な医療器具であり、病気治療、ワクチン移植などの操作を行うために人体に薬物などを送る。現在、注射器と併用する噴霧薬物投与装置が市場に存在し、薬液を注射器に吸い込んだ後、この噴霧薬物投与装置は、注射器に合わせることができる。その後、噴霧薬物投与装置のノズルを鼻腔、口腔または他の薬物投与に適した人体部位に合わせ、注射器を押すことによって薬液を霧化して人体に送る。このような噴霧薬物投与装置は、従来の注射器薬物投与と比較して、必要な部位に薬液を均一に送り、人体への創傷を低減することができる。
【0003】
応用過程において、既存の噴霧薬物投与装置には、まだいくつかの問題があることが分かった。例えば、注射器を押して薬液を送る場合、注射器内の圧力は、急速に増大し、噴霧薬物投与装置と注射器の間の接続が緩み、両者の間に漏れが発生し、深刻な場合は、噴霧薬物投与装置と注射器が互いに離脱し、さらには噴霧薬物投与装置を吹き飛ばし、安全上の危険性が生じる。
【0004】
また、例えば、利用者の鼻腔に噴射を行うような用途においては、噴霧薬物投与装置や注射器の向きが不適切で、注射器は、前が高く後ろが低い姿勢をとることになる。すると、注射器の先端に空気が位置し、空気が先に吐出され、その後に薬液が吐出されることになる。そのため、噴霧薬物投与装置や注射器に残留する薬液が多くなり、投薬量が不正確になるとともに、薬液の浪費にもつながる。
【0005】
また、鼻腔に薬物を投与する場合に、2つの鼻腔にそれぞれ薬物を投与する必要がある。このような操作は、比較的煩雑であり、しかも2つの鼻腔への投薬量が等しい状態を確保することが難しく、時には2つの鼻腔への投薬量に大きな差があることもある。
そのため、上記従来の噴霧薬物投与装置に存在する技術問題を克服するために、噴霧薬物投与装置の構造をさらに改良する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記従来技術に存在する技術問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、噴霧薬物投与装置が注射器と嵌合する際に、それらが互いに離脱したり、それらの間に漏れが発生したりする問題を回避することができる、構造が改善された噴霧薬物投与装置を提供することにある。また、本発明は、噴霧薬物投与装置の構造を改良して当該装置及び注射器における薬液の十分な噴射を実現する。さらに、この構造が改良された噴霧薬物投与装置は、2つの鼻腔への均一な薬物投与を実現することもできる。
【0007】
本発明の噴霧薬物投与装置は、
注射器の針筒を収容できる内腔が形成されるスリーブと、
スリーブの先端に設けるとともに、スリーブの内腔と連通する少なくとも1つのノズルと、を備え、
この中に、当該ノズルの軸線方向は、スリーブの軸線方向に対して角度をなす。
【0008】
上記の構成において、ノズルの軸線方向は、スリーブの軸線方向に対して角度をなすので、スリーブに挿入された注射器の軸線方向に対しても同様の角度をなす。このようにすると、噴霧薬物投与装置を用いて鼻腔に薬液を輸送すると、注射器は、前が低く後ろが高い姿勢になる。このとき、注射器の先端に薬液が集まり、薬液の後部にガスが発生する。薬液を押し出す際に、このガスは圧縮され、その圧縮力が薬液を押し出すための付加的な力を提供する。そして、薬液を押し出す末に、この圧縮ガスが薬液をパージする役割を果たし、残った薬液を押し切る。
【0009】
本発明の別の構成において、噴霧薬物投与装置は、
注射器の針筒を収容できる内腔が形成されるスリーブと、
スリーブの先端に設けるとともに、スリーブの内腔と連通する少なくとも1つのノズルと、
スリーブの後端またはその近傍に形成された指掛け板と、を備える。
【0010】
指掛け板の設置は、薬液を押し出す際に噴霧薬物投与装置と注射器が一緒に保持されるのを確保し、それらの間の薬液漏れを低減または解消するとともに、噴霧薬物投与装置が吹き飛ばされるのを防止することができる。
【0011】
本発明のさらに別の構成において、噴霧薬物投与装置は、
注射器の針筒を収容できる内腔が形成されるスリーブと、
スリーブの先端に設けるとともに、スリーブの先端の左右両側のそれぞれに位置し、スリーブの内腔と連通する2つのノズルと、を備える。
【0012】
2つのノズルの設置により、2つの鼻腔に同時に薬物を送ることができ、2つの鼻腔に送る薬液の量が同じであることを確保する。
好ましくは、ノズルは、湾曲管を備え、湾曲管の一端は、噴霧薬物投与装置の先端に接続され、湾曲管の他端には、ノズルコアが挿入され、ノズルヘッドは、湾曲管の他端に外嵌される。より好ましくは、湾曲管は、湾曲管の曲げ角度を調整可能にするように、蛇腹管である。
【0013】
好ましくは、スリーブに一体的に形成されたノズルヘッドと、ノズルヘッドに収容されたノズルコアとを有する一つのノズルを備える。
好ましくは、ノズルは、湾曲管とノズルコアを有し、湾曲管の一端は、噴霧薬物投与装置の先端に接続され、湾曲管の他端には、凸柱が形成され、ノズルコアは、湾曲管の他端から凸柱に外嵌される。その中に、好ましくは、この湾曲管は、スリーブ管に対するノズルの角度を調整可能にするように、スリーブ管に対して回動可能である。さらに好ましくは、湾曲管は、スリーブに対する湾曲管の回動を容易にするように、蛇腹管である。
【0014】
もちろん、スリーブに対するノズルの角度が固定された場合も本発明の範囲にあり、例えば、スリット-突片の嵌合構造を介してスリーブに対するノズルの角度を固定することができる。
【0015】
好ましくは、スリーブには、観察部が形成され、観察部を通して注射器を見ることができる。このようすると、当該観察部は、利用者が押し出す薬液の量を制御するのに便利である。
【0016】
好ましくは、観察部は、スリーブに形成された透かし部又は透明部分である。
好ましくは、ノズルは、吸気通路が形成されたノズルヘッドを備える。この吸気通路は、利用者が薬液を付与する際に空気を吸い込むことを可能にし、薬液をより深く付与するのに寄与する。また、この吸気通路は、利用者の呼吸をスムーズにすることもできる。
【0017】
具体的には、吸気通路は、吸気口と吸気溝とのうちの少なくとも1つから形成されている。
また、上記のような噴霧薬物投与装置と、噴霧薬物投与装置のスリーブの内腔に挿入可能な注射器と、を備える噴霧薬物投与システムに関する。
【0018】
好ましくは、注射器のプランジャに着脱可能に取り付けられたストッパクリップも備える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面に本発明の非制限的且つ好適な実施構成を示し、図面に基づいて、本発明の特徴及び利点が更に明確になる。その中に、
図1図1は、本発明の第1実施例に係る噴霧薬物投与装置及びそれと共に用いられる注射器の斜視図を示す。
図2図2は、図1に示す噴霧薬物投与装置及び注射器の平面図を示す。
図3図3は、噴霧薬物投与装置への注射器の挿入過程を概略的に示す。
図4図4は、図2の線A-Aに沿って得られた断面図である。
図5図5は、図2の線B-Bに沿って得られた断面図である。
図6図6において、図6aは、図1における噴霧薬物投与装置の分解斜視図である。また、図6bは、変形構造のスリーブの斜視図を示す。また、図6cは、図6bのスリーブと嵌合する変形構造の湾曲管の斜視図を示す。
図7図7は、本発明の第2実施例に係る噴霧薬物投与装置及びそれと共に用いられる注射器の斜視図を示す。
図8図8は、図7に示す噴霧薬物投与装置及び注射器の断面図である。
図9図9は、第2実施例の変形構造の噴霧薬物投与装置及び注射器の斜視図を示す。
図10図10は、ストッパクリップを装着した際の噴霧薬物投与装置及び注射器の動作態様を概略的に示す。
図11図11は、ストッパクリップの斜視図を示す。
図12図12は、本発明の第3実施例に係る噴霧薬物投与装置及びそれと共に用いられる注射器の斜視図を示す。
図13図13は、図12における噴霧薬物投与装置の分解側面図を示す。
図14図14は、本発明の第4実施例に係る噴霧薬物投与装置及びそれと共に用いられる注射器の斜視図を示す。
図15図15は、図14に示す噴霧薬物投与装置及び注射器の局部分解斜視図を示す。
図16図16は、図14における噴霧薬物投与装置の断面図を示す。
図17図17は、本発明の第5実施例に係る噴霧薬物投与装置の斜視図を示す。
図18図18は、本発明の第6実施例に係る噴霧薬物投与装置の斜視図を示す。
図19図19は、図18における噴霧薬物投与装置の分解斜視図を示す。
図20図20は、図18におけるノズルの断面図を示す。
図21図21は、本発明の第7実施例に係る噴霧薬物投与装置の斜視図を示す。
図22図22において、図22aは、図21におけるノズルヘッドの断面図を示す。また、図22bは、図21におけるノズルヘッドの斜視図を示す。
図23図23は、図21に示す噴霧薬物投与装置のある変形構造の斜視図を示す。
図24図24において、図24aは、図23におけるノズルヘッドの断面図を示す。また、図24bは、図23におけるノズルヘッドの斜視図を示す。
図25図25は、図21に示す噴霧薬物投与装置の別の変形構造の斜視図を示す。
図26図26において、図26aは、図25におけるノズルヘッドの断面図を示す。また、図26bは、図25におけるノズルヘッドの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を容易に理解するために、以下、図面を用いて本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。図面に示すものは、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の範囲を規制するものではないと理解される。当業者は、図面に示す実施例を基にして本発明に対して各種の自明な修正、変更、同等の置き換えを行うことができ、矛盾がない限り、以下に説明される異なる実施例における技術的特徴を自由に組み合わせることができ、これらの組み合わせはいずれも本発明の保護範囲内に入る。
【0021】
以下の本発明の具体的な説明において、使用された「前」、「後」などの方向及び向きを表す用語は、使用中の噴霧薬物投与装置及び注射器の利用者を基準とするものである。その中に、「前」は、利用者から遠い側を指し、「後」は、利用者に近い側を指す。
【0022】
<第1実施例>
図1図6は、本発明の第1実施例に係る噴霧薬物投与装置110と、この噴霧薬物投与装置110と共に用いられる注射器120とを示す。図2は、噴霧薬物投与装置110と注射器120のアセンブリの平面図を示す。
【0023】
図3に概略的に示されるように、噴霧薬物投与装置110は、スリーブ111を備え、注射器120の針筒121が、スリーブ111の内腔に挿入することができる。
【0024】
図4及び5は、それぞれ図2の線A-A及びB-Bに沿って得られた断面図を示す。図4に示すように、ノズル130内には、ノズルコア131が設けられており、注射器120からの薬液は、このノズルコア131を介して霧化される。
【0025】
図6aは、噴霧薬物投与装置110の構造をより良く示すように、噴霧薬物投与装置110の分解斜視図を示す。噴霧薬物投与装置110のスリーブ111の後端または後端付近に指掛け板112が形成されていることがわかる。利用者は、親指で注射器120のプランジャ122を押してシリンジ120内の薬液を押し出すとき、指掛け板112を人差し指と中指で係止することできる。好ましくは、スリーブ111には、透かし部113が形成されており、当該透かし部113の設置により、利用者は、スリーブ111に被覆された注射器120の針筒121上の目盛を見ることができ、利用者が押し出された薬液量を制御するのに寄与する。
【0026】
透かし部113の代わりに、透明な材料を用いて噴霧薬物投与装置110の一部を形成したり、噴霧薬物投与装置110を透明なプラスチック材料など、完全に透明な材料で作ったりしてもよい。
【0027】
指掛け板112は、例えば、多角形、円形などの様々な適切な形状を採用することができ、これらはいずれも本発明の範囲内に入る。
スリーブ111の先端には、2つのノズル130が設けられている。具体的には、スリーブ111の当該先端の左右両側には、それぞれ側方開口114が形成され、すなわち、当該先端には、2つの側方開口114が形成されている。当該側方開口114の開口方向は、スリーブ111の軸線方向と角度をなし、好ましくは、この軸線方向に対して垂直である。
【0028】
各側方開口114には、ノズル130の湾曲管132が接続されている。例えば、側方開口114には、凸環構造が形成されており、これに対応して、湾曲管132において側方開口114に近い一端の内面には、凹溝構造が形成されている。湾曲管132を側方開口114に取り付けると、凸環構造と凹溝構造との間にスナップ嵌合が形成されて、湾曲管132と側方開口114とが接続される。ノズルコア131は、湾曲管132の他端に挿入され、ノズルヘッド133は、湾曲管132の当該他端に被覆されることにより、ノズル130を組み立て形成する。図5からより明らかなように、組み立てられた後、ノズル130は、その長手方向軸線がスリーブ111の長手方向軸線に対して角度をなすように、換言すると、2本の長手方向軸線が一直線上にないように配置される。また、凸環構造と凹溝構造とのスナップ嵌合は、スリーブ111の長手方向軸線に対するノズル130の長手方向軸線の角度を調整可能にするように、スリーブ111に対する湾曲管132の回動を許容する。
【0029】
湾曲管132と側方開口114との間の接続は、例えば、ねじ構造を介して互いに噛み合うなど、他の方法で接続することもできる。スリーブ111に対する湾曲管132の回動は、例えば、以下の実施例において説明されたような、他の追加の又は代替的な構造によっても達成することができる。
【0030】
湾曲管132と側方開口114との間は、回動不能に互いに固定されてもよい。
例えば、図6b及び図6cに示すように、側方開口114の位置に切欠部134が形成される一方、湾曲管132において側方開口114と接続された一端に突片135が形成され、湾曲管132を側方開口114に接続すると、突片135が切欠部134に嵌合する。切欠部134と突片135との相互作用により、湾曲管132は、回動不能となり、さらに湾曲管132のスリーブ111に対する角度が固定される。切欠部134と突片135の設置箇所は、入れ替え可能であり、すなわち、切欠部134は、湾曲管132に形成されてもよく、突片135は、側方開口114の対応する位置に形成されてもよい。
【0031】
以下、噴霧薬物投与装置110の使用方法について説明する。
まず、利用者は、注射器120を用いて薬瓶から薬液を抽出する。その後、注射器120のニードルヘッドを外し、注射器120の針筒121をスリーブ111の内腔に挿入する。その後、利用者は、注射器120のプランジャ122を押して、針筒121内の薬液をノズル130内に押し込み、ノズル130内で薬液を霧化する。ノズル130を介して霧化された薬液は、ノズル130のノズルヘッド133から吐出され、例えば、患者の鼻腔、口腔などの部位に付与することができる。
【0032】
薬液を押し出す際、利用者は、プランジャ122を(例えば親指で)押す一方、スリーブ111上の指掛け板112を(例えば人差し指と中指で)引っ掛ける。このように、薬液を押し出す際に、注射器120を噴霧薬物投与装置110に当接させて保持することで、噴霧薬物投与装置110と注射器120との間に発生する薬液の漏洩を低減ないし解消することができ、噴霧薬物投与装置110は、押し出された薬液の圧力によって吹き飛ばされることもない。
【0033】
さらに、図示した第1実施例の噴霧薬物投与装置110は、2つのノズル130を有するので、特に鼻腔への投与に適している。すなわち、投与時に、2つのノズル130をそれぞれ患者の2つの鼻孔に向けることができる。2つのノズル130は、プランジャ122を押す際に2つのノズル130に薬液を同時に供給して霧化薬液を生成することができ、吐出された霧化薬液がほぼ同じ状態を維持することができるように、実質的に同じように作製することができる。
【0034】
また、ノズル130の長手方向軸線は、スリーブ111の長手方向軸線(注射器120の長手方向軸線でもある)と角度をなしているため、2つのノズル130を患者の鼻孔に合わせて挿入すると、注射器120は、前が低く後ろが高い姿勢になる。このようにすると、投与時に、注射器120の先端に薬液が集中し、薬液とプランジャ122の先端との間に一定量のガスが存在する。このとき、プランジャ122を押すと、プランジャ122の先端と薬液との間のガスが圧縮され、この圧縮されたガスは、薬液に対して付加的な推進力を発生するので、薬液をより迅速に押し出すのに寄与する。一方、推薬工程の終わりには、圧縮空気が押し出され、その押し出される過程において、当該圧縮空気の圧力は、噴霧薬物投与装置110、注射器120、ノズル130に残っている薬液を押し出すことができ、薬液を噴射し切ることができる。
【0035】
<第2実施例>
図7図11は、本発明の第2実施例に係る噴霧薬物投与装置210及び注射器220のアセンブリの構造及びその変形構造を示す。その中に、第1実施例と同一または対応する特徴部分は、同一または類似の符号で表され、かつ、以下の開示内容において、主に第1実施例と異なる特徴について説明し、同一の特徴については詳細に説明しない。反対の説明がない限り、第1実施例に記載された特徴は、第2実施例にも適用できる。
【0036】
図7及び図8に示すように、注射器220と共に用いられる噴霧薬物投与装置210は、単一のノズル230を有する。当該ノズル230の長手方向軸線は、噴霧薬物投与装置210の長手方向軸線と実質的に一致し、換言すると、一直線になっている。ノズル230は、ノズルヘッド233と、ノズルヘッド233に収容されたノズルコア231とを備える。図に示す好ましい構成において、ノズルヘッド233は、噴霧薬物投与装置210のスリーブ211と一体に形成されてもよい。もちろん、ノズルヘッド233は、スリーブ211と別体に形成されてから、一緒に取り付けられてもよい。
【0037】
第1実施例と同様に、スリーブ211の後端には、指掛け板212が形成され、注射器220内の薬液を押し出す際に、利用者は、噴霧薬物投与装置210と注射器220を一緒に保持するように、注射器220のプランジャ222を押しながら指掛け板212を引っ掛ける。
【0038】
図9図11は、本発明の第2実施例のある変形構造の概略図である。具体的には、注射器220には、吐出された薬液量の計量を補助するためのストッパクリップ240が取り付けられている。具体的には、このストッパクリップ240は、プランジャ222に取り付けている。図11は、当該ストッパクリップ240の一つの例示的な構成を示す。
【0039】
図10に示すように、初期位置において、プランジャ222の長さは、ストッパクリップ240の長さよりもH1だけ長くなっているので、プランジャ222を先端の方向に押すことができる。プランジャ222を距離H1だけ前方へ押した後、ストッパクリップ240は、針筒221とプランジャ222との間に挟まれ、この時に、ストッパクリップ240は、プランジャ222が引き続き前方へ押されることを阻止する。この時に、1つの鼻腔への薬物投与が完了した。次に、他方の鼻腔へ薬物を投与する際に、ストッパクリップ240を外すことにより、薬液を押し切るまで、例えば図10に示すように、プランジャ222を距離H2だけ前方に押し出して薬液を押し切るように、プランジャ122を引き続き先端の方向に押すことができる。
【0040】
ストッパクリップ240の設置は、2つの鼻腔に送られた薬液の量が実質的に等しいことを確保するように、注射器220内の薬液の分配に寄与する。
【0041】
<第3実施例>
図12及び図13は、本発明の第3実施例に係る噴霧薬物投与装置310及びそれと共に用いられる注射器320の斜視図を示す。その中に、第1実施例及び第2実施例と同一または対応する特徴部分は、同一または類似の符号で表され、かつ、以下の開示内容において、主に第1実施例及び第2実施例と異なる特徴について説明し、同一の特徴については詳細に説明しない。反対の説明がない限り、第1実施例及び第2実施例に記載された特徴は、第3実施例にも同様に適用できる。
【0042】
第3実施例における噴霧薬物投与装置310は、注射器320と併用することができ、噴霧薬物投与装置310の先端に単一のノズル330を有する。第2実施例と異なるのは、図13に示すように、第3実施例の噴霧薬物投与装置310のノズル330の軸線方向が、噴霧薬物投与装置310の本体(すなわち、そのスリーブ)の軸線方向に対して角度をなすことである。
【0043】
また、ノズル330は、ノズルコア331と、ノズルコア331を収容して噴霧薬物投与装置310の本体と接続された湾曲管332と、ノズルコア331と湾曲管332に外嵌されたノズルヘッド333とを備える。
【0044】
<第4実施例>
図14図16は、本発明の第4実施例に係る噴霧薬物投与装置410及びそれと共に用いられる注射器420の斜視図を示す。その中に、第1実施例~第3実施例と同一または対応する特徴部分は、同一または類似の符号で表され、かつ、以下の開示内容において、主に第1実施例~第3実施例と異なる特徴について説明し、同一の特徴については詳細に説明しない。反対の説明がない限り、第1実施例~第3実施例に記載された特徴は、第4実施例にも同様に適用できる。
【0045】
第4実施例において、図16に示す断面図からより明らかなように、噴霧薬物投与装置410は、2つのノズル430を備え、これら2つのノズル430は、それぞれノズル本体432を備え、このノズル本体432は、噴霧薬物投与装置410と一体的に形成されている。好ましくは、ノズル430のノズル本体432は、製造を容易にするように、全体として円弧をなす。
【0046】
ノズル430は、ノズル本体432に挿入されたノズルコア431をさらに備える。
この一体的に形成されたノズル430の構造は、構造を簡略化して部品点数を減らすのに寄与する。
【0047】
<第5実施例>
図17は、本発明の第5実施例に係る噴霧薬物投与装置510を示す。その中に、第1実施例~第4実施例と同一または対応する特徴部分は、同一または類似の符号で表され、かつ、以下の開示内容において、主に第1実施例~第4実施例と異なる特徴について説明し、同一の特徴については詳細に説明しない。反対の説明がない限り、第1実施例~第4実施例に記載された特徴は、第5実施例にも同様に適用できる。
【0048】
第5実施形態における噴霧薬物投与装置510において、ノズル530は、ノズル530のノズル本体として機能する蛇腹管532を備え、この蛇腹管532は、噴霧薬物投与装置510の本体に接続されている。
【0049】
ノズル530の本体として蛇腹管532を使用することで、成形が容易になり、成形時には、この蛇腹管532をストレートにすることができ、使用時には、必要に応じて所望の曲がり角に曲げることができる。また、この蛇腹管532は、その曲げ角度を調整することも可能であり、様々な用途に適用することができる。
【0050】
<第6実施例>
図18図20は、本発明の第6実施例に係る噴霧薬物投与装置610を示す。その中に、第1実施例~第5実施例と同一または対応する特徴部分は、同一または類似の符号で表され、かつ、以下の開示内容において、主に第1実施例~第5実施例と異なる特徴について説明し、同一の特徴については詳細に説明しない。反対の説明がない限り、第1実施例~第5実施例に記載された特徴は、第6実施例にも同様に適用できる。
【0051】
噴霧薬物投与装置610は、その本体部分であるスリーブ611を備え、スリーブ611の後端に指掛け板612が形成され、スリーブ611の前端にノズル630が取り付けられている。第1実施例と同様に、当該ノズル630は、カラー-凹溝嵌合(図に示すように)、ねじ接続などの方法を介してスリーブ611に接続することができる。
【0052】
第6実施例において、ノズル630は、湾曲管632と、当該湾曲管632に挿入されたノズルコア631とを備える。図20は、ノズル630の断面図を示し、その中に、湾曲管632に凸柱633が形成され、湾曲管632に挿入されたノズルコア631は、湾曲管632のノズルコア631への固定を実現するように、当該凸柱633に外嵌可能である。
上記構成のノズル630は、上述した第1実施例~第5実施例の噴霧薬物投与装置に適用することができる。
【0053】
<第7実施例>
図21図26bは、本発明の第7実施例の噴霧薬物投与装置710及びその変形例を示す。その中に、第1実施例~第6実施例と同一または対応する特徴部分は、同一または類似の符号で表され、かつ、以下の開示内容において、主に第1実施例~第6実施例と異なる特徴について説明し、同一の特徴については詳細に説明しない。反対の説明がない限り、第1実施例~第6実施例に記載された特徴は、第7実施例にも同様に適用できる。
【0054】
図21図22bに示すように、第7実施例の噴霧薬物投与装置710において、そのノズルのノズルヘッド733には、少なくとも1つ、好ましくは複数の吸気口734が形成されている。この吸気口734は、ノズルヘッド733の周方向を囲むように配置されている。図22a及び図22bに示す一例において、吸気口734は、略矩形である。
【0055】
吸気口734を設けることにより、噴霧薬物投与装置710を用いて利用者の鼻腔に薬物を投与する際に、吸気口734は、空気を吸い込む通路を提供する。吸い込まれた空気は、霧化した薬液を鼻腔の奥に持ち込むのに寄与し、ひいては鼻腔粘膜による薬液吸収に有利である。また、この吸気口734の設置は、薬物投与中も利用者の呼吸をスムーズに保つことができ、子供などに特に有用である。
【0056】
図23図24bは、第7実施例の噴霧薬物投与装置710のある変形構造を示す。その中に、ノズルヘッド733’には、いくつかの円形の吸気口734’が設けられている。
【0057】
図25図26bは、第7実施例の噴霧薬物投与装置710の別の変形構造を示す。その中に、ノズルヘッド733”の外周面には、複数の吸気溝734”が形成されている。これらの吸気溝734”は、ノズルヘッド733”の前端から後端まで延びている。利用者の鼻腔に薬物を投与する際に、これらの吸気溝734”は、空気を吸い込む通路を形成することができる。
図1
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【国際調査報告】