(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】脱硫添加剤、関連する脱硫方法及び脱硫生成物
(51)【国際特許分類】
C08J 11/28 20060101AFI20240621BHJP
C08C 19/22 20060101ALI20240621BHJP
C08J 11/22 20060101ALI20240621BHJP
C08J 3/18 20060101ALI20240621BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240621BHJP
B29B 7/10 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08J11/28 CEQ
C08C19/22
C08J11/22 ZAB
C08J3/18
C08J3/20 Z
B29B7/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024519140
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 IB2022055186
(87)【国際公開番号】W WO2022254390
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021000014606
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523457419
【氏名又は名称】ラバー コンバージョン エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォケザート コロンバーニ、フィリッポ
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4F401
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA05
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4F401FA09Z
4J100HA59
4J100HC47
4J100HE17
4J100HG31
(57)【要約】
加硫エラストマーのための脱硫添加剤が記載され、添加剤は、連続式及びバッチ式の関連する脱硫方法と共に改善された効率及び選択性を有し、脱硫生成物は加硫エラストマーの当該脱硫方法によって得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫エラストマー、特に硫黄加硫ゴムのための脱硫添加剤であって、
2~18の範囲の炭素原子数を有するモノカルボン有機酸又はジカルボン有機酸、及び、尿素又は以下の式を有する尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から出発して得られる、酸-塩基付加物と、
【化1】
〔式中、R
1、R
2及びR
3は、互いに同じであるか異なっており、水素、2個~18個の炭素原子、好ましくは2個~10個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖であり得る〕
過酸化物と、
を含むか、又はこれらからなり、
前記酸-塩基付加物が、1:1~1:2の範囲のモル比の、有機モノカルボン酸又は有機ジカルボン酸、及び、尿素又は尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から出発して得られる、
添加剤。
【請求項2】
前記酸-塩基付加物が、1:1~1:2の範囲のモル比、好ましくは1:2に等しいモル比の、2~18、好ましくは2~10の範囲の炭素原子数を有するモノカルボン有機酸又はジカルボン有機酸、及び、尿素又は尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から出発して得られる、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
前記脱硫添加剤が固体であり、好ましくは粉末の形態である、請求項1~請求項2の一項以上に記載の添加剤。
【請求項4】
前記有機モノカルボン酸又は有機ジカルボン酸が、シュウ酸、酒石酸、及びリンゴ酸から選択され、好ましくはシュウ酸であり、前記塩基が尿素である、請求項1~請求項3の一項以上に記載の添加剤。
【請求項5】
前記酸-塩基付加物が、1:2のモル比のシュウ酸-尿素付加物である、請求項1~請求項4の一項以上に記載の添加剤。
【請求項6】
前記過酸化物が、有機過酸化物又は無機過酸化物から選択され、好ましくはジクミルペルオキシド、1,3-1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tertブチルペルオキシ)ヘキサ-3-イン、n-ブチル-4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレリエート、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ(2,4-ジクロロ-ベンゾイル)ペルオキシド及びそれらの混合物から、場合によりスコーチ保護を伴って選択される有機過酸化物であり、より好ましくはジクミルペルオキシド及び1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから選択され、更により好ましくはジクミルペルオキシドである、請求項1~請求項5の一項以上に記載の添加剤。
【請求項7】
前記過酸化物が、不活性無機充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸アルミニウム及び粘土)に混合及び吸収され、好ましくはシリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン又は関連する混合物に吸収され、より好ましくはシリカ、炭酸カルシウム又は関連する混合物に吸収される、請求項1~請求項6の一項以上に記載の添加剤。
【請求項8】
前記過酸化物が、炭酸カルシウム及びシリカに吸収されたジクミルペルオキシドである、請求項1~請求項7の一項以上に記載の添加剤。
【請求項9】
前記添加剤が、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ジメチルアクリル酸亜鉛、NR-g-PDMMMP(天然ゴム(NR)とポリ(ジメチル(メタクリロイルオキシメチル)ホスホネート(PDMMMP)とのグラフト化共重合体)、液体ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、GMA及びMAH(グラフト化ポリオレフィンポリマー)、エポキシ化天然ゴム、トランス-ポリオクテナマー(TOR)及びそれらの混合物から選択される相溶化剤を更に含み、前記相溶化剤が、好ましくはトランス-ポリオクテナマー(TOR)である、請求項1~請求項8の一項以上に記載の添加剤。
【請求項10】
前記トランス-ポリオクテナマー(TOR)が、粉末若しくは純粋な粒状物、又は鉱物、ナフテン、パラフィン油若しくはそれらの混合物中に10重量%~40重量%の粒状物を含む前記粒状物の溶液である、請求項9に記載の添加剤。
【請求項11】
前記添加剤が、脱硫されるエラストマーの重量に対して0.5重量%~5重量%の範囲の量で添加され、前記付加物が、0.4重量%~4.5重量%の範囲の量で添加され、前記過酸化物が、脱硫されるエラストマーの重量に対して0.1重量%~3重量%の範囲の量で添加される、請求項1~請求項8の一項以上に記載の添加剤の使用。
【請求項12】
前記添加剤が、脱硫されるエラストマーの重量に対して1重量%~20重量%の範囲の量で添加され、前記付加物が0.5重量%~4.5重量%の範囲の量で添加され、前記過酸化物が0.1重量%~3重量%の範囲の量で添加され、前記相溶化剤が、脱硫されるエラストマーの重量に対して0.4重量%~19.4重量%の範囲の量で添加される、請求項9~請求項10の一項以上に記載の添加剤の使用。
【請求項13】
バッチ式の、加硫エラストマー、特に硫黄加硫ゴムの脱硫のための方法であって、以下の工程、
i)脱硫添加剤を脱硫される加硫エラストマーと混合する工程、ここで、前記脱硫添加剤が、2~18の範囲の炭素原子数を有するモノカルボン有機酸又はジカルボン有機酸、及び、尿素又は以下の式を有する尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から出発して得られる、酸-塩基付加物と、
【化2】
〔式中、R
1、R
2及びR
3は、互いに同じであるか異なっており、水素、2個~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖であり得る〕
過酸化物と、
を含むか又はこれらからなる、
ii)場合により、相溶化剤及び更なる添加剤を添加する工程、
iii)任意選択で、このようにして得られた前記混合物を好ましくは20℃~80℃の範囲の温度に加熱する工程、
iv)特に開放型ミキサー又は閉鎖型ミキサーにおける圧縮及び機械的延伸工程、及び、
v)0~40の範囲の回数で前記圧縮及び機械的延伸工程iv)を繰返す工程、
を含む、方法。
【請求項14】
工程iv)及び工程v)が、20℃~110℃の範囲の温度に制御することによって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
連続式の、加硫エラストマー、特に硫黄加硫ゴムの脱硫のための方法であって、以下の工程、
i)脱硫添加剤を脱硫される加硫エラストマーと混合する工程、ここで、前記脱硫添加剤が、2~18の範囲の炭素原子数を有するモノカルボン有機酸又はジカルボン有機酸、及び、尿素又は以下の式を有する尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から出発して得られる、酸-塩基付加物と、
【化3】
〔式中、R
1、R
2及びR
3は、互いに同じであるか異なっており、水素、2個~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖であり得る〕
過酸化物と、
を含むか又はこれらからなる、
ii)場合により、相溶化剤及び更なる添加剤を添加する工程、
iii)任意選択で、このようにして得られた前記混合物を好ましくは20℃~80℃の範囲の温度に加熱する工程、及び、
iv)前記脱硫生成物の押出工程、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項2~請求項12の一項以上に記載の脱硫添加剤の工程i)及び工程ii)における使用を提供する、請求項13~請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項13~請求項16のいずれかに記載の方法を用いて得ることが可能な、バージンエラストマーとブレンドして再加硫エラストマー、特に硫黄加硫ゴムを得る原料として使用するのに適した、前記ブレンドの重量に対して5重量%~100重量%、好ましくは20重量%~60重量%の範囲の割合の脱硫生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された効率及び選択性を有する加硫エラストマー用の脱硫添加剤、連続式及びバッチ式の関連する脱硫方法、及び加硫エラストマーの脱硫方法によって得られる脱硫生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加硫エラストマーがエラストマーポリマーの架橋処理によって得られる生成物であることは周知である。架橋プロセスは、最終製品に特定の物理的-機械的特性(例えば、硬度、弾性、耐摩耗性及び耐久性)を与える三次元架橋構造を作り出す。これらの固有の特性のおかげで、こうして得られた加硫物は多様な民間及び産業用途に適する。
【0003】
様々な加硫方法がある。主要な方法は硫黄及びその誘導体(硫黄又は硫黄硬化加硫)の使用を含み、2番目に広く使用されている加硫方法は過酸化物(過酸化物又は過酸化物硬化加硫)の使用を含む。各タイプの加硫について、反応の効率、反応速度論及び使用される添加剤に応じて多数のサブクラスが識別される。
【0004】
したがって、加硫は3種類の結合:S-S(硫黄-硫黄)、C-S(炭素-硫黄)、C-C(異なる分子鎖間の炭素-炭素)を有する分子鎖間の結合のネットワークを形成する。
【0005】
脱硫は、架橋結合を切断しエラストマーの元の非架橋構造を回復させることを含むが、一方で同じ分子鎖中のC-C結合の切断は脱硫度をはっきりと増加させ、ポリマーの平均分子量が低下を伴い、得られる最終生成物の物理的-機械的特性が劇的に低下する。ポリマーは、事実上その初期特性には戻らず、ランダムに分解されてポリマー鎖の直線性のフラグメンテーションを生じ、この結果、得られる生成物の有効な再利用ができなくなる。一方、脱硫が架橋結合に対して選択的であるほどポリマーの物理的-機械的特性を保護することが可能になり、こうして得られた脱硫生成物を新たな製品に再利用することが出来る。
【0006】
脱硫の最も広範な定義は規格ASTM D6814-02によって与えられ、これは脱硫を「硬化ゴム中の化学架橋を分解するプロセス」と定義している。そして、この規則は脱硫度を測定するための規格を定義している。
【0007】
寿命末期タイヤ(ELT)から回収された製品に典型的な充填剤(例えば、カーボンブラック及びシリカ)が多く添加された加硫ブレンドの場合、混合物の不活性部分を十分に考慮してより高い精度で脱硫度を計算するKraus補正(Kraus correction)が有用であり得る(KRAUS,G.(1963)Swelling of Filler Reinforced Vulcanisates.J.appl.Polym.Sci.,7,861-871)。
【0008】
反応の選択性、すなわち架橋結合だけの切断に係る脱硫の特異性は、Horikx方程式及び対応するHorikx線図によって計算される(Seghar,Said;Asaro,Lucia;Ait Hocine,Nourredine;Experimental Validation of the Horikx Theory to be Used in the Rubber Devulcanization Analysis;Springer/Plenum Publishers;Journal of Polymers and the Environment;27;10;7-2019;2318-2323)。
【0009】
この図は架橋結合のみの選択的開裂に関連する理論曲線を算出する。そして、得られた脱硫生成物に関する値が続いて計算される。これらの値を理論曲線に重ねることができるほど、理論曲線の架橋結合のみの開裂における選択性を反映する。
【0010】
エラストマーの選択的脱硫は前世紀の半ばから活発に研究されている。しかしながら、これらは、エネルギー回収のための燃焼持続剤(comburent)、セメント質製品用の不活性物質、又は熱可塑性若しくはエラストマー系ブレンド中の非反応性充填剤として再利用するために原料を回収することを目的とした、一般に効果のない粗いアプローチであった。
【0011】
最も単純な機械的及び熱的方法は、加硫生成物の粒径を減少させるだけの粉砕による単純な機械的処理に限られ、実際に効果的な脱硫を行うものではない。脱硫エラストマーを回収するため方法はすべて、通常サイズが大きい出発加硫物の第1粉砕工程を提供することが実際知られている。そして、例えば、タイヤが数センチメートル又は数ミリメートルの不規則な粉砕物に粉砕することによって縮小され、次いで密度によってその主要なコンポーネントに分離される。
【0012】
他の方法は、機械的応力によって得られた高温を、開放型若しくは閉鎖型ミキサー又は共回転型若しくは逆回転型二軸スクリュー押出機中で使用することを含む。これらの方法は区別されない様式で加硫エラストマーにエネルギーを与え、非選択的な脱硫を引き起こし、分子量及び機械的特性を大幅に低下させる。これらの方法は、処理されたエラストマーに含まれる生成物の熱分解により生じる二酸化硫黄又は他のガスを含むガスの大量放出を引き起こすことが多い。この処理を受けるマス(mass)の真空吸引システムによる処理は臭気を低減させるものの、生成物の機械的な劣化を防ぐものではない。
【0013】
あるいは、このエネルギーはマイクロ波又は超音波によって部分的に選択的に供給される。この場合も、最適でない脱硫が引き起こされ、分子量及び機械的特性が大幅に低下する。
【0014】
化学的方法又は機械化学的方法の中は、有機溶媒を室温又は当該溶媒の沸点未満の温度で用いて加硫エラストマーを処理するものもある。溶媒を取り扱う際の長い時間及び困難さはこれらの方法をあまり適用可能にしない。
【0015】
あるいは、例えば溶融塊への添加によって適用される超臨界CO2の化学的特性を使用する方法が知られている。しかしながら、この方法は高温押出処理を提供し、その結果、脱硫選択性が失われる。
【0016】
最新の機械化学的方法は、特に硫黄加硫エラストマーの場合、加硫反応を誘発、調整、又は終結するために使用される原料のいくつかが加硫エラストマーに適切な条件及び量で適用されたら効率的な脱硫にどのように寄与し得るかを示す。ジメチルジチオカルバメート及びメルカプトベンゾチアゾールを使用する化学的方法、又は芳香族でもある第一級アミン及び第二級アミン及びイミンを使用する方法は、この一連の研究に属する。
【0017】
他の方法は、ジカルボン酸と混合された尿素の誘導体を使用するものであり、開放型ミキサー又は閉鎖型ミキサーで低温で処理される。
【0018】
これらのつい最近の機械化学的方法は反応の選択性を改善するが、多くの欠点を有する。第1の問題は、これらの試薬のいくつかが特に低温プロセスで適用された場合に脱硫中に完全に反応せず、したがって脱硫生成物中で未反応のままであるという事実に関連する。これらの試薬は、加硫に通常使用される化学クラス又はこれらの化学クラスから誘導される化学クラスに属するため、脱硫混合物中で未反応のままであると、特に激しい温度変化の存在下では既に材料の保存段階にある脱硫混合物の後続の再加硫を引き起こす可能性があり、事実上脱硫プロセスを完全に又は部分的に無効にする。更に、これらの試薬は、後続の加硫反応の全体的な化学量論的平衡に影響を及ぼし、新たなブレンドのレオロジーを変化させ、脱硫生成物がバージンエラストマーとのブレンド中で使用されて第2の加硫生成物を得る。
【0019】
ごく最近、機械的方法に伴う脱硫生成物の再加硫現象を防止するための重合禁止剤として使用される複素環式化合物(例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オシル(4-ヒドロキシ-TEMPO))の使用に関する研究が行われている。
【0020】
つい最近の機械化学的方法の別の欠点は、反応物の分子量が低いために、脱硫生成物が新しいブレンド又は新しい製品に使用されるとそれらが脱硫生成物の表面に移動する可能性があり、特にアミン及びイミン、芳香族生成物又は硫黄及びその前駆体などの試薬を含有する生成物の場合、使用者の健康に対して目障りな潜在的に危険な堆積物を生じることである。
【0021】
これらの表面移動現象、特にアミンの表面移動現象は、バージンエラストマーとの新たなブレンドにおいても起こるし、また、脱硫生成物がブレンド中で低い割合で使用される場合にも起こる。したがって、ブレンド中での後続の再処理及び後続の再加硫は、製造された製品の表面上の潜在的に有害な化合物の移動の問題を排除するのに十分でないことが多い。
【0022】
更に、記載されている全ての化学的方法及び機械化学的方法は、脱硫プロセスの速度論を実質的に考慮しておらず、速度論の観点から脱硫反応を効果的に制御することを目的とする脱硫方法は最新技術では実際のところ知られていない。最新の機械化学的方法の別の欠点は要するに以下のことにある:関与する化学試薬が、それらが堆積した領域周辺で実質的に制御されない方法で反応し、したがってエラストマー粒子の表面で非常に急速に消耗されるか、又は加えられた摩擦力学により、材料がより急速な温度上昇を受ける。粒子の内部又は粉砕に起因する表面に典型的な窪み及び亀裂では、対照的にこれらの試薬はより少量で到達し、機械的摩擦及び熱から保護されるため(エラストマーは非常に乏しい熱伝導体であるため)、それらは作用を発揮せず未反応のままである。この効果は、硫黄結合の大部分が粒子の内部に向けられ、硫黄がより低いエネルギーの状態で熱力学的に配置されるが、冷たい粒子の表面では硫黄がほとんど存在しないことを考慮すると脱硫にとって特に抑制的である(J.S.Dick,Rubber Technology,page 353,3rd Edition,2020)。
【0023】
その結果、反応を可能にする最低温度に達するまで、動力学的観点から、試薬はエラストマーの表面に主に分布したままであり、硫黄結合があまり豊富ではない。そして、それらは急速に排出されるか、又は処理を受けている粒子の内部に組み込まれ蓄積され、より低い温度ではそれらの効果的な反応を可能にしない。室温での反応を要求するプロセスでさえ、実際には温度を利用するプロセスであり、そのピーク値は、マス(mass)全体を室温で出現させるなどのために、非常に短い時間粒子の表面にのみ局在する。この記述は、例えば室温のビーカー中で加硫エラストマーと試薬とを混合することによる摩擦なしの単純な混合では反応を引き起こさないという事実によって証明される。したがって、既知の化学的方法及び機械化学的方法では表面反応が速すぎて、脱硫される粒子の新しい内部層を徐々に脱硫可能する効果的な脱硫を可能にできない。
【0024】
オープン多段階ロールミルの使用を含む脱硫方法であっても、工程のほとんどは温度を上昇させる役割を果たすだけであり、最終工程のみが、表面で非常に急速に消費され最内部で未反応のままであり得る試薬の高速反応を生じさせる。
【0025】
したがって、物理的、巨視的及び機械的挙動の観点から、記載されている全ての方法は、加硫ネットワークに入り込めず加硫エラストマー粒子内部の架橋結合の選択的開裂を行うことができないため、粉砕又は主に表面の脱硫を行うだけという欠点を有する。
【0026】
したがって、均質な脱硫を達成するためには、まず、極めて規則的な粒度曲線を用いて生成物の最適な粉砕を実施し、特に他の粒子よりも大きい寸法を有する粒子が、それらの好ましくない表面/体積比のために非常に低い脱硫度を有する可能性があることを回避する必要がある。これらの難脱硫粒子は、実際には、新しいブレンドに挿入されたときに不十分な界面特性を有することを特徴とし、したがって機械的な裂け目が伝播するという弱点を生み出し、均質性及び物理的形態のために選択されていない原料から誘導される脱硫生成物の性能の劇的な低下の原因となる。
【0027】
トレッドが脱硫プロセスのための経済的に興味深いエラストマーである加硫天然ゴム(NR)に富むトラックタイヤの最も一般的な場合、それらは数十kgまでの重量を有し得、構造及び化学組成のための多くの異なる部品から構成される。より構造的な内部部品は、金属又は合成繊維強化材でもあまり価値のない材料で製造されるのに対して、トレッド部は天然ゴム(NR)などのより不活性な材料で製造される。
【0028】
寿命末期タイヤ(ELT)の回復プロセスにおいて、タイヤは次いで、トレッドの表面バフ(surface buffing)、後続の金属の分離のための粉砕及びスクリーニングのプロセスを受ける。「バフ」と呼ばれるバフ研磨製品は、非常に粗くサイズが可変である。その後、バフを更に粉砕及びスクリーニングして、組成物の粒径及び均質性に応じた品質で、いわゆる「粉末」又は微粉化ゴム粉末(MRP)を生成する。
【0029】
現在のところ、出発生成物の多様性は、既知の解硫(devulcanizzazione)技術で処理された脱硫最終生成物の特性に強く影響する。
【0030】
したがって、選択的な脱硫を得ることができない、現在使用されている脱硫方法の先に示された制限に加えて、高品質の脱硫最終生成物を得ることを更により困難にすることに寄与する更なる要素も、十分に均質な脱硫を得ることに関連する。
【0031】
この点において、均質な脱硫化を得るために、微粉砕及び最適な粒径分布の重要な要因に加えて、被脱硫物の架橋密度及び架橋ネットワーク中に生成される分子間結合のタイプに存在する多様性が当該加硫物が供された加硫方法に応じて多様性に寄与する。
【0032】
硫黄系加硫の場合、例えば、従来の加硫(CV)、半効率的加硫(Semi EV)及び効率的加硫(EV)として定義される複数の加硫システムが存在し得るが、例示であり網羅的なものではない。これらのシステムは、同じポリマーベースから出発して、例えばポリスルフィド、ジスルフィド又はモノスルフィド結合の保有率(prevalence)が異なるなど、異なる特性を有する加硫物を生じる。
【0033】
硫黄硬化ゴムは、使用される加硫技術に応じて、共有C-C(炭素-炭素)結合及びS-S(硫黄-硫黄)結合間で異なる割合を有し、この2つめ基の結合に関して、ポリスルフィド結合、モノスルフィド結合及びジスルフィド結合間で異なる割合を有することが実際に知られている。それらはまた、異なる架橋密度を有する。
【0034】
加硫は、硫黄の量、促進剤の種類、促進剤/硫黄比、加硫時間に依存する。高い促進剤/硫黄比及びより長い加硫時間は、ポリスルフィド結合と比較してより多数のモノスルフィド結合及びジスルフィド結合の形成をもたらす。モノスルフィド結合及びジスルフィド結合は、熱及び溶媒に対するより良好な耐性を付与するが、一般により剛性であり、より低い引張強度を有する。一方、ポリスルフィド結合は、より良好な引張強度、より良好な破壊耐性を有するが、より低い耐薬品性及び耐熱性を有する。
【0035】
脱硫反応において、このバラツキ性が特に寿命末期タイヤ由来の製品において挙動の多様性を生じることは明らかである。ポリスルフィド結合は、より反応性が高く、系の温度上昇の助けを借りて最初に解離する。熱機械的処理だけでもわずかな割合の脱硫が得られ得、ポリスルフィド結合に影響を及ぼすことが実際に知られている。
【0036】
モノスルフィド結合が広く存在するゴムの存在下又は高い架橋密度の存在下では、単一の化学種に基づく脱硫添加剤の使用は効果的でないことが多い。例えば、ポリスルフィド結合は、チオレートイオンによる求核攻撃を受けやすいが、モノ及びジスルフィド結合は無傷(intact)のままである。他方、より攻撃的な化学種の使用は過剰であり得、あまりにも多くの結合を同時切断させ、選択性を失う可能性がある。更に、破壊された結合が多すぎると、ラジカル的にもイオン的にも互いに反応する傾向があり、それ自体が新たに架橋された構造に再組織化し、脱硫を実質的に無効にし、生成物の平均分子量を負に低下させる。
【0037】
先に示した態様はすべて、現行の脱硫方法、機械的、機械熱的、化学的、又は、機械化学的脱硫方法が、
-架橋結合のみの効果的な開裂に対してあまり選択的ではなく、
-保管中及び輸送中に経時的に安定な脱硫生成物を生成するのに部分的に効果がなく、これらの生成物は有害な残留物の移動のリスクにさらされており、
-最終的な脱硫生成物の物理的機械的特性、及びこの脱硫生成物がバージンエラストマーと混合され後続の第2の加硫に供される混合物の物理的機械的特性の一定性に関して、加硫方法、粉砕及び出発生成物の粒度分布に極めて依存する、
ことを実証している。
【0038】
既知の脱硫方法で使用される機械及びプラントに関しては、3つのカテゴリの機器が主に見出され得、第1のより単純なカテゴリは、ブレードミルなどの直接切断によって、又はディスクミルなどの圧力下で擦ることによって細断する、ミル、又はグレーター又はスクイーザを思い起こさせる種々の独創的な形状を有する機器を含む。第2のカテゴリは、オープンミキサー及びクローズドミキサーなどのバッチシステムに代表され、オープンミキサーは、一般に、異なる絶対回転速度及び相対回転速度を有する2つの逆回転鋼ロール(Roll-Mill)を有するミキサーであり、ロール間のスパンは0ミリメートル~数ミリメートルの範囲であり、ロールの温度は調整可能である。閉鎖型のミキサーは、一般に、砂時計形状のチャンバ内の逆回転鋼ブレードからなる「バンバリー(Bambury)」タイプのものである。第3のカテゴリは、一般に押出機によって連続システムに代表され、脱硫プロセスにおける最も一般的な種類の押出機は、二軸スクリュー、同方向回転又は逆方向回転である。
【0039】
先行文献の例は、国際公開第2020/169589号パンフレット、米国特許第4305850号明細書、国際公開第01/29122号パンフレット、米国特許第9175155号明細書、米国特許出願公開第2017/362407号明細書、中国特許出願公開第112458445号明細書である。
【0040】
これらの文献は、脱硫、ゴム脱硫プロセス、酸-塩基付加物、エラストマー材料の官能化方法によるポリマーの合成方法を例示しているが、先に特定した問題を解決していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明は、従来技術の欠点を克服する関連する脱硫方法に加えて、既知の脱硫方法の限界を克服し、加硫エラストマー用の脱硫添加剤を定義することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明は最初に、加硫エラストマー、特に硫黄加硫ゴムのための脱硫添加剤であって、
2~18の範囲の炭素原子数を有するモノカルボン有機酸又はジカルボン有機酸、及び、尿素又は以下の式を有する尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から得られる、酸-塩基付加物と、
【化1】
〔式中、R
1、R
2及びR
3は、互いに同じであるか異なっており、水素、2個~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖であり得る〕
過酸化物と、
を含むか、又はこれらからなり、
酸-塩基付加物が、1:1~1:2の範囲のモル比の、有機モノカルボン酸又は有機ジカルボン酸、及び、尿素又は尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から出発して得られる、
加硫エラストマー、特に硫黄加硫ゴムのための脱硫添加剤に関する。
【0043】
本発明は更に、バッチ式の、加硫エラストマー、特に硫黄加硫ゴムの脱硫のための方法であって、以下の工程、
i)脱硫添加剤を脱硫される加硫エラストマーと混合する工程、ここで、脱硫添加剤が、2~18の範囲の炭素原子数を有するモノカルボン有機酸又はジカルボン有機酸、及び、尿素又は以下の式を有する尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から出発して得られる、酸-塩基付加物と、
【化2】
〔式中、R
1、R
2及びR
3は、互いに同じであるか異なっており、水素、2個~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖であり得る〕
過酸化物と、
を含むか又はこれらからなる、
ii)場合により、相溶化剤及び更なる添加剤を添加する工程、
iii)任意選択で、このようにして得られた混合物を好ましくは20℃~80℃の範囲の温度に加熱する工程、
iv)特に開放型ミキサー又は閉鎖型ミキサーにおける圧縮及び機械的延伸工程、及び、
v)0~40の範囲の回数の圧縮及び機械的延伸工程iv)を繰返す工程、
を含む、方法に関する。
【0044】
工程iv)及び工程v)は、好ましくは、20℃~110℃の範囲の温度に制御することによって行われる。
【0045】
本発明は更に、連続式の、加硫エラストマー、特に硫黄加硫ゴムの脱硫のための方法であって、以下の工程、
i)脱硫添加剤を脱硫される加硫エラストマーと混合する工程、ここで、脱硫添加剤が、2~18の範囲の炭素原子数を有するモノカルボン有機酸又はジカルボン有機酸、及び、尿素又は以下の式を有する尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から出発して得られる、酸-塩基付加物と、
【化3】
〔式中、R
1、R
2及びR
3は、互いに同じであるか異なっており、水素、2個~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖であり得る〕
過酸化物と、
を含むか又はこれらからなる、
ii)場合により、相溶化剤及び更なる添加剤を添加する工程、
iii)任意選択で、このようにして得られた混合物を好ましくは20℃~80℃の範囲の温度に加熱する工程、及び、
iv)脱硫生成物の押出工程、
を含む、方法に関する。
【0046】
最後に、本発明は、本発明に係る方法を用いて得ることが可能な、バージンエラストマーとブレンドして再加硫エラストマー、特に硫黄加硫ゴムを得る原料として使用するのに適した、ブレンドの重量に対して5重量%~100重量%、好ましくは20重量%~60重量%の範囲の割合の脱硫生成物に関する。
【0047】
加硫エラストマー用の脱硫添加剤は、硫黄加硫ゴムの場合に特に有効である。
【0048】
酸-塩基付加物は、1:1~1:2の範囲のモル比、好ましくは1:2に等しいモル比の、2~18の範囲の炭素原子数を有する有機モノカルボン酸又は有機ジカルボン酸、及び、尿素又は尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体から出発して得られる。
【0049】
この脱硫添加剤は固体であり、好ましくは粉末の形態である。
【0050】
酸-塩基付加物は、有機モノカルボン酸若しくは有機ジカルボン酸と尿素又は尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体の溶液中での沈殿(precipitation)又は湿度の存在下で密接に混合された固体間の反応によって得られる。
【0051】
2~18、好ましくは2~10の範囲の炭素原子数を有する有機モノカルボン酸又は有機ジカルボン酸は、より好ましくはシュウ酸、酒石酸、及びリンゴ酸から選択され、更により好ましくはシュウ酸である。
【0052】
塩基は、尿素又は以下の式を有する尿素の一置換誘導体、二置換誘導体若しくは三置換誘導体であり
【化4】
〔式中、R
1、R
2及びR
3は、互いに同じであるか異なっており、水素、2個~18個の炭素原子、好ましくは2個~10個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖であり得る〕、塩基は好ましくは尿素である。
【0053】
酸-塩基付加物は、1:2のモル比のシュウ酸-尿素付加物であることが更に好ましい。
【0054】
過酸化物は、有機過酸化物又は無機過酸化物であり得、好ましくは有機過酸化物である。
【0055】
有機過酸化物は、好ましくは、ジクミルペルオキシド、1,3-1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tertブチルペルオキシ)ヘキサ-3-イン、n-ブチル-4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレリエート、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3、3,5トリメチルシクロヘキサン、ジ(2,4-ジクロロ-ベンゾイル)ペルオキシド及びそれらの混合物から選択される。
【0056】
有機過酸化物は、好ましくはジクミルペルオキシド及び1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5トリメチルシクロヘキサンから選択され、更に好ましくはジクミルペルオキシドである。
【0057】
有機過酸化物は、好ましくは、不活性無機充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸アルミニウム及び粘土)に混合及び吸収され、より好ましくはシリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン又は関連する混合物に吸収され、更により好ましくはシリカ、炭酸カルシウム又は関連する混合物に吸収される。
【0058】
好ましい有機過酸化物は、炭酸カルシウム及びシリカに吸収されたジクミルペルオキシドである。過酸化物のこの製剤は、貯蔵、処理及び投与をより容易にする。
【0059】
加硫剤としても一般的に使用される過酸化物は、脱硫プロセスのための有効な共試薬を代表し、分子間結合の選択的切断を得るために、及び後続の鎖末端安定化のために相乗的であり、したがって再加硫を防止することが証明されていることに留意するのは興味深い。
【0060】
加硫エラストマー粒子の外部での過度に急速な反応速度及び主に表面反応を防止するために、スコーチ保護を伴う有機過酸化物を使用することも可能である。これらは、反応における過酸化物ラジカルの利用可能性を遅延させる適切な薬剤と混合された有機過酸化物であり、より均一な反応を促進する。これらの適切な薬剤の例は、ニトロキシド及びそれらの誘導体である(米国特許第7829634号)。他の可能な薬剤は、硫黄ドナー及び単官能ビニルモノマー、単官能アリルモノマー、多官能ビニルモノマー、多官能アリルモノマー及びそれらの混合物など助剤と混合された、ヒドロキノン及びその誘導体である(米国特許第5849214号)。
【0061】
市販の過酸化物の場合、このスコーチ保護は製造業者によって過酸化物に既に密接に組み込まれており、これらの過酸化物の一例は、Arkemaによって上市されている市販の過酸化物Luperox SP Scorch Protectionである。
【0062】
また、スコーチ保護を伴う過酸化物の場合、過酸化物は、シリカ、炭酸カルシウム及び関連する混合物から選択される不活性無機充填剤に吸収されていることが好ましい。
【0063】
過酸化物は、好ましくは粒状又は粉末形態であり、ポリマー担体上で燃焼(burn)させることもできる。
【0064】
本発明に係る脱硫添加剤はまた、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸ジメチル亜鉛、NR-g-PDMMMP(天然ゴム(NR)とポリ(ジメチル(メタクリロキシメチル)ホスホネート(PDMMMP)とのグラフト化共重合体)、ブタジエン-イソプレン液体共重合体ゴム、GMA及びMAH(グラフト化ポリオレフィンポリマー)、エポキシ化天然ゴム、トランス-ポリオクテナマー(TOR)及びそれらの混合物から選択される相溶化剤を含むことができる。
【0065】
相溶化剤は、好ましくはトランス-ポリオクテナマー(TOR)である。トランス-ポリオクテナマー(TOR)は、更により好ましくは、純粋な粉末若しくは粒状物、又は鉱物、ナフテン、パラフィン油若しくはそれらの混合物、すなわちタイヤで一般的に使用されるオイル中に10重量%~40重量%の粒状物を含む当該粒状物の溶液である。粉末形態は、投与の容易さ、混合及び結果の統一性について目的に特に適していることが判明した。オイル中のTOR溶液も特に実用的で効果的である。
【0066】
相溶化剤は、完全に脱硫されていない粒子のブレンドにおける挙動を改善することを可能にする。この相溶化剤は、融点が低く、粘度が完全に脱硫されていない粒子の間隙(porosities)に効果的に浸透するなどの性質を有し、ブレンドに対して数ミクロン~数百ミクロンの範囲の厚さを有する界面膜を形成する。相溶化剤の固有の化学構造は新しいブレンドと非常に類似しており、場合によりバージンエラストマーと混合された脱硫生成物からなるブレンドの新しい加硫反応における反応部位を有することもでき、ネットワーク内に完全に脱硫されていない粒子を効果的に組み入れる。
【0067】
本発明に係る脱硫添加剤は、脱硫されるエラストマーに添加される前に調製することができ、次いで、脱硫されるエラストマー粉末と混合することができるか、又は、脱硫添加剤の異なる成分が同時に又は後続の段階で脱硫されるエラストマーと直接混合することができる。
【0068】
相溶化剤は、例えば、酸-塩基付加物及び過酸化物を用いる単一の工程と後続の工程の両方で、粘度調整剤としても作用する既に脱硫された生成物に添加することができる。
【0069】
このメカニズムは、相溶化剤を含まない生成物と比較して、脱硫生成物の機械的レオロジー特性の改善を可能にする。
【0070】
仕上げた脱硫生成物の審美性の改善もあり、脱硫生成物はより滑らかで均質であり、表面から現れる非脱硫粒子によって引き起こされる表面欠陥がない。
【0071】
寿命末期タイヤ(Ground Tyre Rubber又はGTR)に由来する粉砕物への相溶化剤の使用は最新技術から知られているが、脱硫添加剤、特に酸-塩基付加物及び過酸化物に基づく脱硫添加剤と組み合わせた使用は全く新しい。
【0072】
場合によっては、脱硫されるゴムの種類に応じて、脱硫添加剤が長鎖脂肪酸又はそれらの関連する塩も含み得ることを提供することが有用であり得る。この更なる成分は、酸-塩基付加物、過酸化物、及び場合によっては相溶化剤と共に、前処理で使用するか、又は混合物に添加して脱硫することができる。
【0073】
好ましい長鎖脂肪酸は、10個より長い、より好ましくは16個より長い脂肪族鎖を有するカルボン酸である。これらの酸又は関連する塩は、酸-塩基付加物及び過酸化物との全体の相乗効果で作用する脱硫反応に好ましい範囲内でpHを最適化及び安定化することによって、脱硫されるゴムを調製する。
【0074】
pHは、脱硫反応前に、添加剤入りゴム10gを熱水100mlに浸漬し、混合物全体を1時間静置して測定される。酸が使用される場合、水のpHは2以下でなければならず、好ましくは0.5未満でなければならない。
【0075】
脱硫添加剤が付加物及び過酸化物を含む場合、脱硫されるエラストマーの重量に対して0.5重量%~5重量%の範囲の量で添加され、付加物は0、4重量%~4.5重量%の範囲の量で添加され、過酸化物は脱硫されるエラストマーの重量に対して0.1重量%~3重量%の範囲の量で添加される。
【0076】
脱硫添加剤が付加物、過酸化物及び相溶化剤を含む場合、脱硫されるエラストマーの重量に対して1重量%~20重量%の範囲の量で添加され、付加物は0.5重量%~4.5重量%の範囲の量で添加され、過酸化物は0.1重量%~3重量%の範囲の量で添加され、相溶化剤は脱硫されるエラストマーの重量に対して0.4重量%~19.4重量%の範囲の量で添加される。
【0077】
少なくとも酸-塩基付加物及び過酸化物、並びに場合により相溶化剤及び/又は脂肪酸の同時使用のおかげで、本発明に係る脱硫添加剤は、ELT又は履物ソールの処理からの廃棄物などの消耗後又は処理廃棄物に由来する製品中に存在し得る全ての異なる硫黄架橋ゴムの脱硫のより良好な管理を可能にする。
【0078】
相溶化剤の使用は、既述のように、非脱硫残基のブレンド中の挙動を最適化し、それらを取り入れ、組成及び初期加硫モードにかかわらず、後続の再加硫において効果的かつ化学的に活性な方法で相溶化する反応性機能界面でそれらを覆うことも可能にする。
【0079】
混合及び加熱デバイスと反応デバイスとを備える、脱硫のための装置も記載される。
【0080】
脱硫装置において、混合及び加熱装置は、高速ミキサー(ターボミキサー)又は熱風又は赤外線又はマイクロ波装置から選択される。
【0081】
混合及び加熱装置では、脱硫を開始せずに、脱硫処理の前に脱硫される加硫エラストマーを予備加熱して本発明に係る脱硫添加剤と混合した後、反応装置内で脱硫させる。
【0082】
脱硫装置では、反応装置は、単段ロールミル又は多段ロールミル、温度を可能な限りエラストマーの解重合値未満に維持するのに適したスクリュープロファイルを有する共回転二軸スクリュー押出機、温度を可能な限りエラストマーの解重合値未満に維持するのに適したスクリュープロファイルを有する逆回転二軸スクリュー押出機、温度を本質的にエラストマーの解重合値未満に維持するのに適した多軸スクリュー押出機(リング押出機又はプラネタリー押出機)、温度をエラストマーの解重合値未満に維持するのに適した単軸スクリュー押出機であり得、好ましくはロールミル、単段又は多段スクリュー押出機、又は多軸スクリュー押出機(リング押出機又はプラネタリー押出機)であり得る。
【0083】
特に、スクリュープロファイルは、高い機械的応力に起因して主に材料の温度上昇に寄与する混合及び粉砕要素に対して輸送要素の支配的な部分を有する。溶融物の圧力を上昇させ、大気又は真空脱気装置の挿入に適した窪み領域を作製するのに寄与する逆(inverse)要素の数はまた、溶融物に過度でない機械的応力を誘発し、エラストマーの劣化温度を超えるように適切に付与及び配置される。
【0084】
必要に応じて、相溶化剤は、反応装置に設けられた適切なサイド押出機によって、初期混合、すなわち混合装置の両方で、又はより効果的には溶融物に添加され得る。
【0085】
本発明はまた、添付の図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1】
図1は、規格ASTM D6814に従って測定した、以下の実施例1、2、4、5及び6で得られた脱硫生成物の脱硫度を示す図である。
【
図2】
図2は、以下の実施例1、2、4、5及び6で得られた脱硫生成物のHorikx線図の分析を示す図である。
【
図3】
図3は、12個の共回転スクリューを備えた多軸スクリュー押出機、プラネタリー押出機又はリング押出機を示す図である。
【
図4】
図4は、冷却がスクリューのプラネタリー配置の内側及び外側の両方で有効であることを実証するための多軸押出機の概略断面図である。
【
図5】
図5は、多軸押出機の「伸長流(elongational flow)」値が通常の二軸押出機の値よりも高いことを示す図である。
【
図6】
図6は、試験に供された技術的物品(例「ブッシング(Bushing)」)について測定された物理的機械的特性を示す表である。
【
図7】
図7は、試験に供されたタイヤ、トラックトレッド-プレミアムトラックタイヤについて測定された物理的機械的特性を示す表である。
【
図8】
図8は、「未加工(raw)」生成物の視覚的比較、すなわち最新技術の生成物の外観と本発明に係る生成物の外観との比較を示す図であり、脱硫生成物は、加硫生成物及び促進生成物も含む工業用物品(ブッシング)のベースブレンドに10重量%「オントップ(on top)」で添加されており、次いで、ブレンドは加硫前に処理され撮影された。
【
図9】
図9は、トラックトレッド用ベースブレンド-プレミアムトラックタイヤから出発して、
図8に示す方法に従って得られた「硬化」生成物の外観、すなわち最新技術の生成物の外観と本発明に係る生成物の外観の視覚的比較を示す図であり、製品は加硫後に撮影された。
【
図10】
図10は、試験されたタイヤ、カートレッド-乗用車タイヤについて測定された物理的機械的特性を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
本発明の非限定的な例として、本発明のいくつかの代表的な例を以下に提供する。
【0088】
以下の実施例1~実施例3では、熱重量分析(TGA)から導出した以下の特性を有するELT粉末を使用した:
【表1】
【0089】
<実施例1>
ロールミルを用いたバッチプラントによる脱硫の例を以下のように本発明に係る脱硫添加剤を用いて実施した。
【0090】
粒径が0.05mm~3mmの範囲であり、主に0.8mmに等しい、トラックトレッドに由来するELT粉末100kgを秤量した。
【0091】
3重量%の1:2のモル比のシュウ酸-尿素付加物、及び、0.25重量%の40%でシリカと炭酸カルシウムの混合物に吸着させたジクミルペルオキシドを粉末に添加した。
【0092】
こうして得られた混合物を5分間ホモジナイズし、高速ターボミキサーによって、正確な混合「コーン(cone)」を形成し、同時に、定めた時間内の一定の温度上昇に十分なエネルギーを伝達するために、運動量を混合物に伝達するのに適した混合ツールプロファイル及びいくつかのブレードを用いて、70℃の表面温度(赤外線温度計によって測定)にした。
【0093】
この目的に適した混合ツールは、材料の適切な流動化を可能にするための鈍い又は丸みを帯びたブレードプロファイルを有する、1つ~4つの混合工程、この例の場合には3つの混合工程を有する。
【0094】
温度は、解釈の誤差の影響を受ける可能性があるパラメータであり、ゴムは実際には機械的作用により加熱され、赤外線温度計で測定されるその温度は経時的に非常に急速に低下する。このため、ロールから遠すぎる下流に赤外線プローブを配置すると、温度の測定値が著しく低下する可能性がある。生成物は非常に短時間で微温になり、そのため、低温プロセスの影響を誤って誘発する。
【0095】
こうしてホモジナイズ及び加熱した混合物を、相対速度1:1.2、最小(実質的にゼロであり、ロールの粉砕と適合性がある)に設定されたロール間のスパン、ロールの適切な温度調節でロールミルに6分間通した。ロールは35℃未満の温度に保たれる。より具体的には、ロール間のスパンは0.1mmである。
【0096】
粉末形態の2重量%のTORをこうして処理した混合物に添加し、混合物のマス(mass)全体に均一に分配した。
【0097】
混合物を、完全に溶融し混合物中に相溶化剤を組み込むまで、更に4分間ロールミルで再び処理した。
【0098】
次いで、混合物を排出し、パッケージングに送り、次いで新しい処理バッチを進めた。
【0099】
予熱温度、ミキサー内の工程数、時間、ロールの回転速度と相対速度、並びに改質剤と相溶化剤の割合、操作温度は、粉末の種類に応じて変化し得、これは最良のプロセス条件を決めるために事前に分析しなければならない。
【0100】
<実施例2>
本発明に係る脱硫添加剤による脱硫の第2の例は、使用される過酸化物がスコーチ保護システムを備えたジクミルペルオキシド(Arkemaから販売されている、Scorch Protection SP2を備えたLuperox)であるという点を除いて、実施例1と全く同じ方法に従って実施した。
【0101】
<実施例3>
本発明に係る脱硫添加剤による脱硫の第3の例は、脱硫される材料が履物産業の廃棄物処理、特に靴底の粉砕に由来する、同じ用途での再使用を目的としたSBR(スチレンブタジエンゴム)であり、100kgのSBRゴム粉末を、0.5mm~3mmの範囲、主に1、2mmに等しい粒径で続いて秤量したという点を除いて、実施例1と全く同じ方法に従って実施した。
【0102】
<実施例4>
本発明に係る脱硫添加剤による脱硫の第4実施例は、以下のようにして行った。
前の実施例とは異なり、以前に分析されていない、粒径が0.5mm~3mmの範囲であり、主に1.2mmに等しい製造バッチの、トラックトレッドに由来するELT粉末100kgを秤量した。
【0103】
3.5重量%のモル比1:2のシュウ酸-尿素付加物、及び、0.30重量%の40%でシリカと炭酸カルシウムの混合物に吸着されたジクミルペルオキシドを粉末に添加した。
【0104】
こうして得られた混合物を、低温条件下、低速水平ミキサーで8分間ホモジナイズした。
【0105】
こうしてホモジナイズされた混合物を、生成物のより大きな粒径に適合させるためにロール間のスパンが0.2mmに等しいロールミル内で25回通し、一方、生成物の延伸を増加させるために速度比を1:1.3にした。ロールの適切なサーモスタット調節が常に維持され、ロールを35℃未満の温度に維持した。
【0106】
このプロセスは、赤外線温度計を用いてゴムに対して測定した温度が95℃に達するのに12分かかった。
【0107】
次いで、混合物を排出し、パッケージングに送り、次いで新しい処理バッチを進めた。
【0108】
この実施例では、混合物は、その特性のためにより多くの工程で処理され、相溶化剤の使用又は予熱を必要とせず、したがって、この場合、低速回転の内部混合リールを用いて水平ミキサー内で低温条件下で成分をホモジナイズし、こうして得られた混合物をロールミルで直接処理することが可能であった。特に、水平混合器はリボンブレンダーである。
【0109】
<実施例5>
使用した過酸化物が無機過酸化物であるという点を除いて、実施例4と同じ方法を使用して、本発明に係る脱硫添加剤による脱硫の更なる実施例を行った。
【0110】
以前に分析されていない0.5mm~3mmの範囲、主に1.2mmに等しい粒径を有するELT粉末に、3.5重量%のモル比1:2のシュウ酸-尿素付加物及び0.15重量%のペルオキシ一硫酸カリウム(Oxoneと称する、三重複塩(triple salt)としての顆粒粉末の形態)を添加した。
【0111】
この場合も、相溶化剤又は予熱を使用する必要はなかった。
【0112】
<実施例6>
本発明に係る脱硫添加剤による脱硫の第6実施例は、以下のようにして行った。
【0113】
0.5mm~10mmの範囲の非常に不規則な粒径を有する、寿命末期タイヤに由来する100kgのゴムバフ(Rubber Buffing)を秤量した。これはタイヤトレッドの粗粉砕に由来する製品である。ゴムバフと称するこの製品は、バフ研磨(buffing)から直接得られ、数センチメートルの寸法を有する非常に不規則で細長くほつれた形状を有する。
【0114】
3phr(ゴム100部当たりの部数)の1:2のモル比のシュウ酸-尿素付加物、及び、2.5phrの40%で炭酸カルシウムとケイ酸ナトリウムアルミニウムの混合物に吸着させた1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5トリメチルシクロヘキサンを、ゴムバフに加えた。
【0115】
こうして得られた混合物を、低温条件下、低速水平ミキサーで8分間ホモジナイズした。
【0116】
ホモジナイズした混合物を、ロール間のスパンを0.1mmに設定し、速度比を1:1.5に設定したロールミルに20回通過させた。ロールの適切なサーモスタット調節は、加熱/冷却ユニットによって、又は冷蔵室のみによって常に維持され、ロールの温度を40℃未満に維持した。
【0117】
ローラの速度を80RPMに設定し、バフ形態が溶解し、脱硫によって得られる標準的な「フレーク状」形態が生成されるまで処理を続けた。
【0118】
次いで、混合物を排出し、パッケージングに送り、次いで新しい処理バッチを進めた。
【0119】
<実施例7>
更なる実施例を、混合物を多軸押出機、プラネタリー押出機又はリング押出機を用い、12個の共回転スクリュー(
図3に示す)を用い、目的に適したプロファイルで処理した点を除いて、実施例4と同じ方策で実施した。この押出機の固有の特徴は、ロールの冷却された部分との高い接触面積のおかげで、解重合現象を回避するための最適な温度制御を可能にすることである。冷却はまた、スクリューのプラネタリー配置の外側と内側の両方で有効である(
図4)。
【0120】
この押出機は、最適な熱制御の特性のため、脱硫反応に特に適していることが判明した。使用されるスクリュープロファイルは、基本的に、大部分の搬送要素と、より大きな機械的応力及び温度上昇の原因となる最終部品に集中する混合要素の量の減少とを提供する。速度及び圧力は通常の押出プロセスと同様であるが、リング押出機自体の特定の幾何学的形状はより大きな噛み合い面積を有し、したがって温度を低く保ちながらより良好な混合を達成する。更に、この押出機は、通常の二軸スクリュー押出機と比較して、更に50%高い値のはるかに高い「伸長流(elongational flow)」値(
図5)を得ることを可能にする。これにより、ロールミルで行われるのと同様に、ゴムのより多くの圧縮及び減圧運動が可能になり、この種の機械的応力は、高度に選択的な脱硫プロセスに非常に有効であることが証明されている。
【0121】
この特定の温度管理が利用されるゴムブレンド調製のためのこれらの押出機の使用は、最新技術(ドイツ特許出願公開第102015120586号明細書)から知られているが、対照的に、脱硫のための使用は革新的である。
【0122】
粒径が0.5mm~3mmの範囲であり、主に1.2mmに等しい、トラックトレッドに由来するELT粉末200kgを秤量した。
【0123】
2.5重量%のモル比1:2のシュウ酸-尿素付加物及び0.25重量%の40%でシリカ及び炭酸カルシウムの混合物に吸着されたジクミルペルオキシドを粉末に添加した。
【0124】
こうして得られた混合物を、40℃に到達した温度を大幅に上昇させることなく、2分間ターボミキサー内でホモジナイズした。
【0125】
ホモジナイズされた混合物を、常にポリマー解重合温度未満の温度を維持しながら、リング押出機又はプラネタリー押出機とも称する多軸押出機で押し出した。操作温度は、領域に応じて100℃~150℃の範囲の値に維持され、スクリュー回転数は600RPMに等しく、スクリューの直径は30mmであり、L/D比は55であった。生産性は350kg/時間であった。
【0126】
この装置の特別な形態はプロセスの最適な管理を可能にした。次いで、押出された混合物をパッケージングのために送った。
【0127】
明確に説明されているように、この特別な押出機は、他のタイプとは異なり、効率的な処理を可能にし、同じ応力が印加された最適な温度制御、優れた生産性、及び必要に応じて効果的な脱気をもたらす。
【0128】
<実施例8>
この実施例は、混合物をこの目的に適した特別なプロファイルのスクリューを有する共回転二軸スクリュー押出機によって処理した点を除いて実施例7と同じ方策で実施した。これは、特に、過剰な温度上昇を効果的に制御するために、搬送スクリュー要素の数が増加し、粉砕及び混合要素の数のバランスがとれている。
【0129】
プロセス温度は、-850mbarの真空脱気及び7barの圧力で、領域に応じて80℃~270℃の範囲の値に維持された。押出機のスクリュー直径は35mm、L/D比は48、スクリュー回転数は約300RPMであり、生産性は約50kg/時間に等しかった。
【0130】
逆(inverse)プロファイルを有する十分な数の要素の存在は、溶融圧力の正確な管理を可能にし、ガスの効果的な除去のために真空脱気装置を挿入することを可能にした。サプライチェーンの前に、最終脱気を特に効率的な方法で配備することが可能であった。
【0131】
<結果分析>
実施例1~実施例8の終わりに得られた脱硫生成物を分析したところ、74%~45%の範囲内の脱硫度を特徴とし、1:2のモル比のシュウ酸-尿素付加物単独で処理した生成物に対して+80%~+32%のパーセンテージ増加した。
【0132】
特に、1:2のモル比のシュウ酸-尿素付加物だけで処理した生成物について測定された脱硫度は、56%±1に等しかったのに対して、実施例1に従って得られた生成物の脱硫度は74%±3に等しく、+32%増加した(
図1参照)、最新技術と比較して、本発明に係る脱硫添加剤を用いて得られた脱硫効力に関してかなりの改善を実証した。
【0133】
実施例2では、モル比1:2のシュウ酸-尿素付加物だけで処理した生成物について測定した脱硫度は56%±1に等しかったのに対して、実施例2に従って得られた生成物の脱硫度は64%±1に等しく、+14%改善した。
【0134】
実施例3では、脱硫度は測定しなかったが、ブレンドにおける加工性と、スクラップが生じる新たなシューズ用ソールの製造において得られた性能を測定した。本発明に係る脱硫添加剤で処理した混合物の加工性が最適であることが判明し、最新技術よりも最大66%高い新たなブレンドにおける再使用の割合が得られた。
【0135】
実施例4では、低温で1:2のモル比のシュウ酸-尿素付加物だけで処理した生成物について測定した脱硫度は13%±3に等しかったのに対して、実施例4に従って得られた生成物の脱硫度は63%に等しく、大幅に改善された。
【0136】
実施例5では、実施例4と同様に、低温でモル比1:2のシュウ酸-尿素付加物だけ用いた脱硫度は13%±3に等しかったのに対して、実施例5に係る生成物の脱硫度は60%に等しく、相当に改善され、本発明の目的のために無機過酸化物を使用することの有効性及び可能性も実証している。
【0137】
実施例6では、1:2のモル比のシュウ酸-尿素付加物だけで処理した生成物について測定した脱硫度は31%±18に等しく、結果の広いバラツキはバフの不ぞろいな粒径の結果である。これに対して、実施例6に従って得られた生成物の脱硫度は45%±7に等しく、本実施例では+45%改善したが、脱硫度についてだけでなく、同じバフ研磨粒径で結果のバラツキがより小さかった。
【0138】
多軸及び二軸押出における実施例7及び8の結果は、ロールミルで行われた先の実施例の改善を裏付けている。より大きな温度変動及び脱気によって取り出される揮発性ガスのより大きな画分を有する異なる処理方法を考慮に入れるために、脱硫度は評価されず、むしろブレンド中の挙動が評価され、最新技術よりも最大50%高い、新しいブレンド中の再使用の割合をもたらす。
【0139】
Horikx線図(
図2参照)の分析はまた、ポリスルフィド、モノスルフィド及びジスルフィドの両方の硫黄結合に関して極めて選択的な脱硫を示し、分子鎖の炭素-炭素結合を開裂から保護し、したがってエラストマーの分子量を維持する。
【0140】
したがって、本発明に係る脱硫添加剤は、従来技術と比較して高脱硫度を特徴とすると同時に均質で高品質の脱硫を特徴とする脱硫生成物を得ることを可能にすると結論付けることができる。
【0141】
本特許出願において、ベースブレンドとは、エラストマー及びバージンポリマー、充填剤、添加剤及び特定の加硫物のパッケージのみを用いて製造されたブレンドを指す。
【0142】
本特許出願において、最終ブレンドとは、本発明に係る一定量の脱硫生成物が添加されたベースブレンドを指す。
【0143】
先に示したように、こうして得られた脱硫生成物は、ベースブレンド、すなわち添加剤、充填剤、加硫剤及び促進剤を含むエラストマー及びバージンポリマーとのブレンドと混合することができ、脱硫生成物は、最終ブレンドの重量に対する重量パーセントとして意図された10重量%~90重量%の範囲の量で添加される。
【0144】
最終ブレンドは、加硫されると、脱硫生成物を含まない、すなわち、エラストマー及びバージンポリマー、添加剤、充填剤、加硫剤及び促進剤のみを用いて製造された各出発ベースブレンドと非常に類似した機械的及び化学的特性を有し、本発明に係る脱硫生成物が効果的に脱硫され、一級のバージン成分のみを用いて製造されたブレンドと非常に類似して挙動する最終ブレンドを得ることができることを実証している。
【0145】
規格ASTM D6814-02に従い脱硫度及び脱硫の選択性を測定したHorikx線図を用いて結果を分析した後、本発明の脱硫生成物の最終ブレンドにおける物理機械的特性を検証するための試験キャンペーンを行った。ここでは、本発明に係る脱硫生成物が、最終ブレンドが意図される用途部門に依存する割合でエラストマー及びバージンポリマーの代わりに使用される
【0146】
本発明によれば、脱硫処理されたゴム/製品自体の物理的-機械的特性を試験することは重要ではなく、可能でないこともある。これらの特性は、実際には最終化合物の総重量に対して5重量%~90重量%(より一般的には10重量%~30重量%)の範囲の割合で脱硫処理されたゴムが添加され、特定の加硫物の充填剤及びパッケージが添加され、次いで混合物全体が加硫される非加硫ブレンドから出発して得られた試験片で試験されなければならず、次いで、試験片は、物理的-機械的特性が測定される最終加硫及び成形ブレンドから得られ、次いで、これは、脱硫処理されたゴムを含まずに、対応するベースブレンドから同様に得られた試験片の対応する特性と比較される。
【0147】
したがって、脱硫ゴムの物理的-機械的特性は、様々な用途分野の特定の最終ブレンドで試験した場合、より重要であり、脱硫ゴムは、用途の臨界に応じて様々な割合で添加される。例えば、タイヤでは、ブレンド中に存在する脱硫生成物の量を最終ブレンドの重量に対して10重量%~30重量%の範囲に制限することが好ましく、一方、あまり厳格でない技術的要件を有する履物では、最終ブレンドの重量に対して50重量%~80重量%の範囲のブレンド中の脱硫生成物の量を使用することが可能である。
【0148】
より具体的には、本発明に係るELTからの脱硫ゴムの使用を、以下の用途分野のブレンドで試験した。
【0149】
-技術的物品(「ブッシング」、自動車セクタ用ブッシュの例)、
-タイヤ、トラックトレッド(プレミアムトラックタイヤの例)、
-タイヤ、カートレッド(乗用車タイヤの例)。
【0150】
本発明に従って脱硫された処理屑からの再生ゴムの使用も、以下の分野で試験した:
-履物(靴底の一例)。
【0151】
脱硫ゴムを、用途に応じて最終ブレンドの総重量に対して10重量%~50重量%の範囲の量で添加した。
【0152】
様々な用途分野で使用される最終ブレンドは、化学組成、混合及び加硫方法が大きく異なり、本発明に係る脱硫ゴムの添加はその最適な再使用を可能にし、ブレンドの種類に応じて異なる効果を有する。
【0153】
エラストマー及びバージンポリマー、充填剤、添加剤、並びに種々な用途分野に特有の加硫物のパッケージのみで製造されたベースブレンドは、以下の表に示すように例示され得る。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
先の表に示されるベースブレンド(脱硫生成物/ゴムなし)は、ブレンド中の物理的機械試験の検証のための標準的なブレンド処方を表わす。そして、ゴムブレンドの多くの製造者は、多くの場合保存され、実施例と比較して様々な濃度の、他の製品又は添加剤又は成分を使用する。しかしながら、これらの違いは、本明細書で規定されたものと一致する結果をもたらすことに留意されたい。
【0159】
したがって、ベースブレンド(基準としての脱硫生成物/ゴムなし)を各適用分野について作成し、更に、比較として、シュウ酸-尿素付加物で得られた異なる量の脱硫生成物を含有するブレンド物「尿素-シュウ酸」を製造し、最後に、異なる量の本発明に係る脱硫生成物を含有するブレンド、すなわち本発明に係る脱硫剤で得られたブレンド物(「本特許」ブレンド)を製造した。
【0160】
機械的特性の改善は百分率として示しており、ベースブレンドについて得られた結果を100に正規化している。
【0161】
示された物理的-機械的特性は、特定の基準セクタについて最も有意なものを特定することによって選択した。
【0162】
添付の図に示されるこれらの特性の測定に使用される標準的な方法は、以下の通りである。
【0163】
ASTM D6814-02(2018) % 脱硫度
ASTM D2240-15(2021) ショアA 硬度
ASTM D412-16(2021) Mpa 引張
ASTM D624-00(2020) N/mm 引裂
UNI7716:2000 % 反発
UNI9185:1988 mm3 摩耗
ASTM D395-18(2018) % 圧縮永久ひずみ
ASTM D5992-96(2018) Mpa 動的
ASTM D1646-19a(2019) MU ムーニー粘度
ASTM D5289-19a(2019) 分 硬化
【0164】
添付の
図6から明らかなように、技術的物品(例えば「ブッシング」)について、引裂強度、引張強度、反発、スコーチ(t5)及び硬化効率の有意な増加が見出された(t90)。更に、この用途にとって極めて重要な側面、ムーニー粘度の正規化及び振動の吸収に不可欠な動的特性の改善が観察された。
【0165】
添付の
図7から明らかなように、タイヤ、トラックトレッド-プレミアムトラックタイヤでは、引張強度、引裂耐性、300%伸びでの弾性率の有意な増加、及び摩耗の正常化が観察された。更に、これらの両方の用途にとって極めて重要な態様では、ブレンドの外観の改善が(
図8及び
図9に示すように)未加工(raw)ブレンド(加硫前)及び加硫後のブレンドの両方で観察され、より良好でより強力な脱硫の明らかな証拠が得られた。
図8及び
図9の写真を比較すると、実際、ELT粒子は本発明のブレンド物体ではもはや見えないが、シュウ酸-尿素付加物を用いて得られた最新技術によるブレンドではそれらが依然として見られることが明らかである。
【0166】
図10から明らかなように、タイヤ、カートレッド-乗用車タイヤでは、タフネス(Toughness)における100%伸びでの弾性率における引張強度の有意な増加が検出された。セクタにとって特に興味深いのは、引裂抵抗の基準を超える増加である。
【0167】
履物-ソールについては、その処理廃棄物から得られた脱硫生成物を50重量%の量でベースブレンドに添加した。
【0168】
このセクターは、特に重要な技術的-機械的要件を提供せず、むしろ加工性及び再着色性(脱硫生成物を含有するブレンドを大量に再着色する可能性として理解される)が最適であることを必要とする。
【0169】
最新技術に係る脱硫生成物の再使用は、橙皮状の外観を有し、再着色が困難な加硫ブレンドを得ることにつながることが確認されている。非再着色性は、染料が最新技術に係る脱硫生成物に十分に浸透せず、その結果、加硫ブレンドは、低い割合の脱硫生成物であっても、非常にはっきりした縞及び審美的欠陥を示すという事実に起因する。
【0170】
一方、本発明に係る脱硫生成物では加工性が改善され、着色性、例えば黒色又は灰色への再着色性が均一で欠陥がない。
【国際調査報告】