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特表2024-523746多層複合材料を分離する方法および装置
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  • 特表-多層複合材料を分離する方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】多層複合材料を分離する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20240621BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240621BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20240621BHJP
   B09B 101/15 20220101ALN20240621BHJP
【FI】
B09B3/30
B09B5/00 A ZAB
B09B3/35
B09B5/00 Z
B09B101:15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519964
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 DE2022100292
(87)【国際公開番号】W WO2022218481
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】102021109591.3
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515234071
【氏名又は名称】ヴォルフラム・パリッチュ
(71)【出願人】
【識別番号】523468426
【氏名又は名称】インゴ・レーヴァー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフラム・パリッチュ
(72)【発明者】
【氏名】インゴ・レーヴァー
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA22
4D004AA23
4D004BA00
4D004BA05
4D004CA02
4D004CA07
4D004CB12
4D004CC03
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA07
4D004DA12
(57)【要約】
本願発明は、特に、少なくとも1つの下層硬質層(1)と、下層硬質層(1)上に位置する少なくとも1つの軟質層(2、3)と、から構成される太陽電池モジュール(PV)、TFT、OLEDまたはLCDディスプレイの形態である多層複合材料の二つの層間において貴重な材料が位置するような多層複合材料を分離するための方法および装置に関する。ここで、分離される多層複合材料の1つまたは複数の層は、少なくとも1つの高圧ウォータージェットを用いて層ごとにまたは全体として切断され、その後、持ち上げられ、個別化される。そして、高圧ウォータージェットを噴射する1つまたは複数のノズルは、回転可能なノズルヘッド(DK)によって、ノズルヘッド(DK)の回転軸(L)の周りを回転する。これと同時に、ノズルヘッド(DK)および多層複合材料は、分離プロセスの後において貴重な材料が個々にまたは分離された層上において自由に存在できるようにお互いに相対移動する。本願発明の装置はそれぞれ少なくとも1つの高圧ウォータージェットを噴射するための少なくとも1つのノズル(D1、D2)と、ノズルヘッド(DK)の回転軸の外側に配置されたノズルを有する少なくとも1つのノズルヘッドと、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層複合材料を分離する方法であって、
前記多層複合材料は、特に太陽電池モジュール、TFT、OLEDまたはLCDディスプレイの形態であり、
前記多層複合材料において、層間に貴重な材料が位置しており、
前記多層複合材料はキャリア層の形態である少なくとも1つの下層(1)および前記下層(1)上に位置する少なくとも1つのより軟質な層(2、3)から構成され、
分離される多層複合材料の1つまたは複数の層(2、3)は、少なくとも1つの高圧ウォータージェットによって切断および持ち上げられて層ごとにまたは完全に個別化され、
回転可能なノズルヘッド(DK)によって、高圧ウォータージェットを噴射する1つまたは複数のノズル(D1、D2)がノズルヘッド(DK)の回転軸(L)の周りを回転し、
分離後に貴重な材料が個々にまたは分離された層(1、2、3)において露出され、少なくとも層(1、2、3)間に位置していた貴重な材料が分離後にリサイクルされるように、ノズルヘッド(DK)と多層複合材料が同時に相対運動することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
多層複合材料の分離プロセスが、
対で配置された少なくとも2つのノズルが、回転と同時に被処理材料またはノズルヘッド(DK)自体が前進することによって、1つまたは複数の層(2、3)を貫通することと、
切断された部分を持ち上げることと、
下層(1)を綺麗にすることと、を同時に実行することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
送り速度は、分離される材料の層(2、3)がそれぞれ貫通され、ノズル(D1、D2)の適切な噴射角度(α)によって、前記材料が基材から持ち上げられ、ひいては、ばらばらになるように設計されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法であって、
多層複合材料の複合物の破壊、ひいては分離に必要な圧力が750と3000barとの間で供給されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、
個々の層(2、3)それぞれの切断および持ち上げが次々と行われるように、ノズルヘッド(DK)の回転速度が各送り速度に適合されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法であって、
ノズルヘッド(DK)が回転するのと同時に送ることにより個々のウォータージェットによって分離される1つまたは複数の層(2、3)の材料が、切断ジェットおよび持ち上げジェットの急激な変化を生み出すことによって、個々の層が下層(1)の形態であるキャリア層に至るまで分離されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法であって、
回転の一方向において先行するノズル(D1、D2)のウォータージェットが衝突する層(2、3)を切断し、
前記回転の一方向において追随するノズル(D1、D2)のウォータージェットが、1つまたは複数の層(2、3)の切断された部分を持ち上げることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法であって、
ウォータージェットによって下層(1)から分離された個々の層(2、3)は、ブラストキャビネットの壁からウォーターカーテンによって一緒に濯がれ、スチールキャビネット(K)からチャネルに洗い落されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法であって、
ウォータージェット処理はノズルヘッド(DK)の作業幅に応じてストリップ状に実施され、
処理される多層複合材料は、走査される、または、直線経路の場合には、処理される多層複合材料の幅に応じて複数のノズルヘッド(DK)が互いに隣接して取り付けられることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法であって、
ノズル(D1、D2)および/またはノズルヘッド(DK)はA)ジェットの形状と、B)角度と、C)個数とに関して適合され、A)貫通深さと、B)持ち上げと、C)作業速度および/または切断片の形状と、を調整できるようにすることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法を実施するための装置であって、
多層複合材料の層間に貴重な材料が入っている多層複合材料を分離し、
いずれの場合にも少なくとも1つの高圧ウォータージェットを噴射するために、少なくとも1つのノズル(D1、D2)が設けられ、
少なくとも1つのノズルヘッド(DK)は、ノズルヘッド(DK)の回転軸の外側に配置されたノズルを有することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、
それぞれが少なくとも1つの高圧ウォータージェットを噴射するように、少なくとも2つのノズル(D1、D2)が設けられ、
多層複合材料の表面に衝突する高圧ウォータージェットがお互いに離隔するようにノズル(D1、D2)が配置されることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の装置であって、
少なくとも2つのノズルが回転軸(L)周りに回転可能なノズルヘッド(DK)内または2つの離れたノズルヘッド(DK)内に配置され、
お互いに向かい合うノズル(D1、D2)からウォータージェットが噴射されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の装置であって、
少なくとも2つのノズル(D1、D2)を有する少なくとも1つのノズルヘッド(DK)が多層複合材料の上面から距離(L)の位置に取り付けられ、
ノズル(D1、D2)がノズルヘッド(DK)においてお互いに角度(α)で傾斜して配置された際、多層複合材料の上面に衝突するウォータージェットの間隔(b)を確保することを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項11から13のいずれか一項に記載の装置であって、
それぞれが少なくとも1つのノズル(D1、D2)を有する少なくとも2つのノズルヘッド(DK)が多層複合材料の上面から距離(L)の位置に取り付けられ、
距離(L)によって、ノズルヘッド(DK)のノズル(D1、D2)がお互いに角度(α)で傾斜して配置された際に多層複合材料の上面に衝突するウォータージェット同士の間隔(b)が確保されることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか一項に記載の装置であって、
少なくとも1つのノズル(D1、D2)が1つまたは複数の層(2、3)を切断し、少なくとも1つの更なるノズル(D1、D2)が1つまたは複数の層(2、3)の切断片を持ち上げおよび個別化することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は請求項1の前提部に係る複合材料または多層システムを分離する方法および請求項11の前提部に係る関連装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システム、いわゆるタブレット型コンピュータ、スマートフォン、ノートパソコンの画面、およびOLED(organic light-emitting diodes、有機発光ダイオード)に基づく製品は多層技術が主要な役割を果たす電子製品の例である。これら製品の鍵となる共通の特徴は、これら製品が多層構造を有することおよび、しばしば例えばガラスなどの基板キャリア(carrier)上に構築された関連する機能層を有し、この基板キャリアは通常は未だに保護のためにプラスチック膜が被せられている、または例えばTFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)モニターにおける偏光フィルム(polarization film)のような様々なプラスチックなどの更なる層を有する。この機能層はシリコン、インジウム、ガリウム、ヒ素、カドミウム、テルル、モリブデン、銅、銀、スズおよび/またはセレンなどの貴重な化学化合物だけでなく、特殊な有機物質(液晶など)を含むことができ、これら列挙された要素(elements)は化合物半導体(ヒ化ガリウム、テルル化カドミウムなど)や導電性構造(モリブデン、酸化インジウムスズ)などの中間物(intermediates)として存在することが多い。
【0003】
インジウム、セレン、テルル、ガリウムは原料に乏しいドイツのような国ではほとんど全て輸入しなければならない元素である。したがって、使用済み太陽電池モジュールのようにこれらの物質を含む廃棄物のリサイクルおよびそれに伴うこれら金属を再利用することの経済的重要性は現在重要な課題となっている。しかし、数え切れないほどの製品(太陽電池モジュール、携帯電話、フラットスクリーンなど)において多くの特殊材料が消散的(dissipative)に使用されているため、リサイクルが困難になり、リサイクルループ(recycling loop)に戻すことができるのはある程度までである。
【0004】
廃電気・電子機器に関する欧州議会・理事会指令(the Directive of the European Parliament and Council on Wasete Electrical and Electronic Equipment、WEEE 2)の施行に伴い、EUの各国レベルで対応する改正が行われた。欧州連合(European Union)の廃電気電子機器指令(WEEE、2012/19/EU)が改正され、ドイツでは電気電子機器法(ElektroG)によって国内法に移管された。2015年10月24日に新電気電子機器法が施行されたことにより、例えば太陽電池モジュールは第4類「家電機器及び太陽電池モジュール」に該当し、法律に従ってリサイクルしなければならなくなった。機器のカテゴリーによっては、リサイクル率は55から80%、回収率は75から85%に引き上げられた。
【0005】
しかし、立法者が定めた回収廃棄物のリサイクル率80%は、太陽電池モジュールが95%のガラスで構成されていると仮定すれば、簡単な破砕・選別工程でこの要件を満たすことができる。しかし、この技術ではレアメタルやシリコンなど上述した他の全ての物質は失われる。得られる二次ガラス(secondary glass)の品質が、板ガラス製造における再溶解のような高品質のリサイクルと比較して十分であるとはとてもではないが言い難い。これは同様に、現在のドイツのリサイクル経済法(Kreislaufwirtschaftsgesetz)のような、リサイクルの最大可能枠を定めた、すでに有効な法的規制とは相容れない。このことは、新しい経済的かつ全体論的なリサイクル・プロセスへのさらなる関心を生む。
【0006】
経済的な観点に加えて、今日においては環境的な観点も無視されるべきではない。含まれる材料の環境毒性(ecotoxicity)を見ると、特にこれまで使用されてきた製品において、太陽電池モジュールに含まれる鉛などの有害元素が重要な役割を果たしていることが注目に値する。現在のところ、先行技術では経済的かつ環境的に望ましい方法においてサンドイッチ構造(sandwich structure)から個々の要素を分離することに成功していない。その代わり、「ダウンサイクル(downcycling)」の結果生じる低品質な製品(グラスウールのような断熱材に含まれる銀など)、スラグ(slag)または埋立地に消えることが多い。したがって、生産廃棄物、不良品または廃棄製品の環境に優しいリサイクル工程を提供することがより一層重要であり、これが本願発明の目的である。
【0007】
現在、太陽電池廃棄物は米国とマレーシアで処理されているが、その処理は非常にコストがかかるとされている(US 5453111)。実際の分離の問題は破砕することによって解決され、大きなサンドイッチから多くの小さなサンドイッチを生み出す。しかし、チッピング(chipping)によって露出面積が大きくなるため、湿式化学プロセスで半導体を攻撃(attack)することができるが、廃棄物全体は破砕処理されるため、結局は実際に分離することが難しくなる。破砕モジュール(crushed module)を温硝酸処理した後、プラスチックの上澄みをすくい取る(skimming)ことは、経済的にも環境的にも良い解決策ではない。同様に、熱処理(熱分解)および気相中の一部の金属除去(EP 1187224 B1)は、最終的に廃棄物全量(90%以上はガラス)を熱分解温度まで加熱しなければならないため、費用対効果の高い工程にはつながらない。一方では、これは非常に高いエネルギー投入を必要とし、他方では、その後の工程で高温の基材(substrate)をさらに処理できるようにするために、さらなる冷却工程を使用することが追加的に必要となる。
【0008】
加熱と冷却用にエネルギー投入量が増加することに加え、工程に関連した長時間のステップも必要となり、連続稼動するインライン・システム(in-line system)では、CO2フットプリントも不利になる可能性がある。ナノスケール分散液の特性を利用した方法(DE 10 2011 000 322 A1)には、興味深い環境的アプローチが見られるが、処理能力は「浸透」の速度に依存し、最終的には高価な方法で混合物質を分離しなければならない。薄膜太陽電池製品のエッジ除去に応用されているレーザー技術をリサイクル工程に使用するアプローチ(DE 10 2008 047 675 B4)も、よく調べてみると多くの欠点があることがわかる。例えば、レーザーが高エネルギーのため、貴重な層を完全に除去してしまう、または、基板に損傷を与え、最悪の場合では貴重な層が基板内へと溶け込んでしまう。試験的にシリコンモジュール用にフラッシュランプ(flash lamp)が代替案として適用されたが、オーブンでの基板処理またはハロゲンランプもしくは熱風による加熱といった従来の熱処理(一般に工程時間が数秒から数分かかり、いつも基板が完全に加熱されてしまい、エネルギーの観点から理にかなっていないように思われる)と同様にプラスチックの熱分解やそれに伴う有毒ガスの発生など複雑な問題が発生した。
【0009】
公報DE 19703104 A1によると、多層複合材料の層を互いに分離することはできないが、D-ROMS、オーディオCD(Compact Disc)またはその他ディスクのようなデータキャリアディスク(data carrier disk)の製造時に発生する残留物質は、データキャリアディスクから除去される。
【0010】
例えばポリカーボネート(polycarbonate)の洗浄が記載されており、表面に存在する残留物質(廃棄物)はポリカーボネートの表面から除去される。
【0011】
公報DE 44 40 483 A1には、ウォータージェットと、互いに離れた方向にウォータージェットが噴射される回転ノズルと、を用いて表面の大面積を洗浄する方法が記載されている。多層複合材(multilayer composite)の層を切断および持ち上げることは、この方法では実現不可能であり、検討もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5453111号明細書
【特許文献2】欧州特許第1187224号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102011000322号明細書
【特許文献4】独特特許発明第102008047675号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第19703104号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第4440483号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102014102389号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、プラスチックまたは半導体のような基板またはその他材料を著しく加熱することなく、太陽電池モジュールのような多層システムを分離するための、汎用的に適用可能な方法およびプラント(plant)に関する。
【0014】
したがって、本願発明の目的はハイテク(high-tech)もしくはグリーンテック(green-tech)廃棄物または電気電子廃棄物に見られるような、このような複合システムまたは典型的な多層システムを分離するための、低コスト、簡潔(elegant)、低エネルギーおよび同時に環境に適合した方法および装置を提供することである。本願発明は、上述の欠点を回避し、特に、基板またはプラスチックもしくはガラスなどその他材料を著しく加熱することなく、アブレーション(ablation)や蒸発による損失を発生させず、ガラスなどの基材や保護層を破壊せず、ひいては、リサイクルする目的で貴重な半導体材料または導電層など封入(encapsulated)された貴重な材料を容易に入手することができる。同時に、フロントガラスのような多層システム、個々のプラスチック層もしくはプライ(plies)、またはその他構成要素、における主な構成要素は、より簡単に選別し、リサイクル工程や更なる使用に対して貴重な材料として供給できるようにするために、個別化(individualized)されるべきである。
【0015】
この目的は請求項1に係る方法および請求項9に係る装置により、本願発明によって解決される。さらなる有利な実施形態は、従属請求項(subclaims)に記載されている。
【0016】
本願発明の方法によれば、キャリア層の形態の少なくとも1つの硬質下層(lower layer)と当該下層上に位置しキャリア層から分離されるべき少なくとも1つのより軟質な層と、から成る、特に太陽電池モジュール(PV)、TFT、OLEDまたはLCD(liquid crystal display、液晶)ディスプレイの形態である多層複合材料を分離するために、分離されるべき多層複合材料の1つまたは複数の層が、少なくとも1つの高圧ウォータージェットにより切断され、持ち上げられ、個々に分離(individualized)される。ここで、高圧ウォータージェットを噴射する1つまたは複数のノズルが、回転可能なノズルヘッド(DK)によりノズルヘッド(DK)の回転軸(L)を中心に回転し、同時にノズルヘッド(DK)と多層複合材料とが相対運動(relative movement)することにより、分離後、貴重な材料が個々に又は分離された層上に露出し、少なくとも層間に位置していた貴重な材料は分離後にリサイクルされるようになる。
【0017】
本願発明に係る方法および装置によって、多層複合材料の層間に位置する多層複合材料内部の貴重な材料、例えば半導体材料および/または金属、無機材料または有機材料は、例えば多層システムの層も形成することができ、リサイクルの目的で分離した後、目標とするリサイクル技術にアクセスできるようにすることができる。
【0018】
多層複合材料の分離後、これまで多層複合材料の層間に埋め込まれていた貴重な材料は個々に又は分離された層上に露出するため、少なくとも貴重な材料は分離後にリサイクルすることができる。
【0019】
少なくとも1つのノズルが回転軸から離隔した状態でノズルヘッドが回転することにより、キャリア層の形態である下層上に存在する少なくとも1つのその他層におけるより軟質な材料が分離され、1片ずつ持ち上がる。
【0020】
好ましくは、多層複合材料の分離方法(キャリア層の形態である、より硬質な下層から下層上に堆積された少なくとも1つのより軟質な層との分離)は、対になって配置された少なくとも2つのノズルが、下層の硬質キャリア層の上方に位置する1つまたは複数のより軟質な層を回転によって切断すると同時に、処理される材料またはノズルヘッド(DK)自体を前進させ、切断された部分を持ち上げて、同時に下層を洗浄することによって、実行される。
【0021】
特に、送り速度(feed rate)は、分離される材料の層がそれぞれ貫通され、ノズルの適切な噴射角度(α)によって、この材料が基材(substrate)から持ち上げられ、ひいては、ばらばらになるように設計される。
【0022】
多層複合材料における複合物の破壊、ひいては分離に必要な圧力は、特に750~3000バールである。
【0023】
ノズルヘッド(DK)の回転速度は、有利なことには、個々の層(2、3)それぞれの切断および持ち上げが次々に行われるように、各送り速度に対して適合される。
【0024】
ウォータージェットによってキャリア層の形態である下層から分離された個々のさらなる層は、ブラストキャビネット(blasting cabinet)の壁からのウォーターカーテン(water curtain)によって一緒に濯がれ、例えばスチールキャビネット(steel cabinet)からチャネル(channel)へ洗い落とされる。
【0025】
好ましくは、ウォータージェット処理は、ノズルヘッドの作業幅に応じてストリップ状(strip)に実施され、処理される多層複合材料は、走査されるか、または直線経路(linear pass)の場合には、処理される多層複合材料の幅に応じて複数のノズルヘッドが互いに隣接して取り付けられる。
【0026】
ノズルヘッドとこれに使用されるノズルは、特にA)ジェットの形状(jet shape)、B)角度、C)個数に関して適合され、A)貫通深さ、B)持ち上げ(lift-off)、C)作業速度および/または切断片の形状、を調整できるようにする。
【0027】
本願発明によれば、特に太陽電池モジュール(PV)、TFT、OLEDまたはLCDディスプレイの形態である、キャリア層の形態である少なくとも1つの硬質下層と少なくとも1つの軟質層とから構成される多層複合材料を分離するための装置は、いずれの場合にも少なくとも1つの高圧ウォータージェットを噴射するような2つのノズルを有し、ノズルは、多層複合材料の表面に衝突する高圧ウォータージェットが互いに離隔するように配置される。
【0028】
好ましくは、この場合、少なくとも2つのノズルが回転軸を中心に回転可能なノズルヘッド内に配置され、ノズルヘッドは、ノズルヘッド内のノズルが互いに角度(α)で傾斜して配置されたときに、多層複合材料上面において衝突するウォータージェットの間隔を確保するような、多層複合材料上面からの距離に設置される。
【0029】
特に多層複合(multilayer composite)で構成される、分離される多層複合材料は、例えば太陽電池モジュール(PV)、TFT、OLEDまたはLCDディスプレイなどの機能性電子部品である。
【0030】
第1層の形態であるキャリア層は、例えば、ガラス、金属、プラスチック(好ましくは、当該キャリア層の上にある他の層の材料よりも硬い)またはセラミックからなる。キャリア層の形態である下層は、これらの材料の組み合わせも可能である。
【0031】
キャリア層上のその他層は、好ましくはキャリア層(下層(1))よりも柔らかい材料、例えばEVA(ethylene vinyl acetate、エチレンビニルアセテート)、ポリフッ化ビニル(polyvinyl fluoride、PVF)、ポリオレフィン(polyolefin)、PET(polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)からなる。これらの層は、同一または異なる前述の材料の複数の層から構成されてもよい。
【0032】
これらのさらなる層は、特に箔(foil)として存在する。
【0033】
層間に埋め込まれる材料/有価物は、例えば半導体材料(例えばシリコン)、機能性材料または構造物(例えば接点を有する半導体材料/シリコンセル、金属、または無機もしくは有機材料および前述した材料のスパッタリング層またはその他の塗布層)である。
【0034】
前述の材料を任意に組み合わせて層間に埋め込んでもよい。
【0035】
本願発明によれば、上述の多層複合材料の形態である廃棄物、例えば特に太陽電池モジュールのように半導体を含有する多層システムは、驚くべきことに、水によって正確に切断され(研磨剤の添加は必要ではなく、これはまた製品を汚染することになり、望ましくない)、同時に、1つまたは複数の切断された層を例えばガラスなどのキャリア層の方向に軟質側から持ち上げることにより、分離される。
【0036】
この目的のために、水は高圧ポンプによってノズルヘッドに供給され、ノズルヘッドは少なくとも1対のノズルを持ち、個々のウォータージェットを被処理材料に向ける。ノズルヘッドは回転し、被処理材料は回転するノズルヘッドの下を通過する、または、ノズルヘッドが被処理材料の上を移動する。
【0037】
処理されるマルチレイヤー(multilayer)の性質や個々の層の数にもよるが、多層複合材の表面に対して噴射角度が90°からある程度ずれている方が分離効果(separation effect)に有利である。
【0038】
ウォータージェット処理がストリップ状に行われ、被処理材料が連続的に走査されることが特に有利であることが判明した。
【0039】
あるいは、それぞれの作業幅に基づいて、最終的に被処理材料の全幅をカバーできるように、必要な数だけノズルヘッドを配置するのが理にかなっている。
【0040】
こうして全ての層から解放された基板ベース(substrate base)(キャリア層)は、例えば太陽電池モジュールの場合は単にガラス板またはプラスチック板または層であり、その後必要に応じてゴム製リップ(rubber lip)または送風機で乾燥され、ラックもしくはパレットに積み重ねられる、または、コンテナに投入され、プラント(plant)を離れることができる。
【0041】
構造物の個別化された部品は、プラント(plant)から、壁面からのウォーターカーテンを通じて、流れのある導水路に排出され、固液分離に供給される。
【0042】
水は再利用のために処理されるか廃棄される。
【0043】
散らばった粒子は回収され、単純な密度分離(density separation)または、廃棄物の種類によっては後で軽く化学処理を行うことによって、さらに粉砕して均質化することができる。
【0044】
半導体材料および/または金属および/または金属合金からなる層/貴重な材料は、太陽電池モジュールの例においては、これまで2つの層の間に封入されていた接触するシリコンセル片(silicon cell fragment)が、分離された層において個別に存在および/または自由にアクセスできるようになる。
【0045】
適切な選別技術を用いれば、EVAやテドラー(Tedlar)のような異なるプラスチックフィルムを密度分離(density separation)によって最も簡単な方法で選別し、ひいては最高品質の2次原材料(secondary raw material)を生成することも可能になる。全工程は完全自動で行われる。
【0046】
好ましくは、分離工程は、多層複合材料、特に太陽電池モジュール、TFT、OLEDまたはLCDディスプレイを分離するため水によって実施される。この際、個々のウォータージェットによって分離される材料は、回転と同時に送ることによって、切断ジェットと持ち上げジェットとを素早く交互に発生させ、これによって個々の層を基板まで分離する。
【0047】
代表的(typical)な水圧は750から3000bar、またはそれ以上である。
【0048】
有利なことに、個々の層は、最後の層が基板キャリア材料、例えばガラスから除去され、基板に残渣がなくなるまで分割および切断されるように、回転速度、個数(number)、角度および送り速度が処理される材料に適合される。
【0049】
ノズルヘッドと被処理材料との間の相対速度は、分離作業に応じて200mm/sから1mm/sの間であることが望ましい。ノズルヘッドの速度は200/minから2000/minの間である。10から100L/minの水が必要とされ、この量は使用されるノズルの個数に大きく影響される。ガラス、EVA、バスバー(busbar)付きシリコンセル、EVAおよびテドラーで構成される太陽電池モジュールの典型的な層構造に対しては、以下のパラメータが特に有利であることが証明されている:
回転数が1500rpmであるノズルを3対備えたノズルヘッドの速度、および1600barにおける相対速度(太陽電池モジュールの送り)が50mm/s。
【0050】
好ましくは、複合物(composite)を破壊するのに必要な水圧は高圧ポンプで発生させる。
【0051】
有利なことに、プラント(plant)設計に応じて、処理を水平または垂直に実施してもよい。
【0052】
自由にアクセスできるようになった貴重な材料は、例えばDE102014102389A1に係る湿式冶金(hydrometallurgical)など、さまざまな処理方法を用いてさらにリサイクルすることができる。
【0053】
このプロセスにおいて、回転する複数のノズルを選択的に使用して、より硬質な基部(base)を有する、動く(moving)多層システムに対して高圧で個々のウォータージェットを送ることによって、多層システムの完全な分離が大面積処理で観察されたのは驚くべきことであった。
【0054】
この新しい普遍的な方法は、これまで使用されてきた方法の欠点、すなわち、半導体層を失うという代償を伴う古典的な粉砕(comminution)、液体から複雑なガラス/プラスチック/金属片(flake)を分離すること、または材料全体を完全に加熱してしまうこと、の制約を克服している。
【0055】
この方法は、単なる水を使用し、この水は再利用できるため他の分離プロセスよりも環境的にも優れている。
【0056】
1つまたは複数のウォータージェットの圧力は、より軟質な層は確実に分離されるが、より硬質な基材またはより硬質なキャリア層は分離されないように調整される。
【0057】
これは、例えば参考試験(reference test)によって決定することができる。
【0058】
以下、本願発明について例示的な実施形態および関連図面を参照してより詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】太陽電池モジュール(PV)の形態である多層複合材料を分離する基本的な手順。
図2】回転軸(L)が多層複合材料の表面(O)に垂直に配置され、2つのノズル(D1、D2)が角度(α)で挿入されたノズルヘッド(DK)の概略図。
図3】回転軸(L)が多層複合材料の表面(O)に対して角度(β)で傾斜しており、2つの互いに平行なノズル(D1、D2)を有するノズルヘッド(DK)の概略図。
図4】回転軸(L)が多層複合材料の表面(O)に対して垂直に配置され、2つの互いに平行なノズル(D1、D2)を有するノズルヘッド(DK)の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、太陽電池モジュール(PV)の形態である多層複合材料を分離する基本的な手順を示している。
【0061】
太陽電池モジュール(PV)のキャリア層の形態において、ここでは下側のものである第1の層(1)は、通常、安全ガラスのガラス板またはプラスチック板の形態である、より硬質なキャリア層で構成される。
【0062】
下層(1)の上には、下層(1)に比べて軟質な材料でできた2つの層(2)がある。この層(2)は、EVAなどのプラスチックフィルム、および/またはシリコンセルなどの機能性材料であってもよい。後側(rear)の層(3)は、ここでは上側の層であり、1つまたは複数のプラスチックまたは金属箔で構成されている。
【0063】
最初のステップAでは、太陽電池モジュール(PV)が対応する(corresponding)装置に供給され、1つもしくは複数のウォータージェットノズルまたはここでは特定しない複数のウォータージェットノズルを備えたノズルヘッド(DK)の下に移動される。さらなるステップBにおいて、太陽電池モジュール(PV)のウォータージェット処理は、好ましくはノズルヘッド(DK)のノズルの下で均一な相対移動で動くノズルヘッド(DK)のノズルを介して行われる。この工程では、下層(1)だけが残るまで、1つの層(2、3)が次々に切断および除去される(C参照)。ステップDでは、下層(1)(ガラス板またはプラスチック板(キャリア層/基板支持体(substrate support)))が取り除かれ、適切に選別される。
【0064】
分離された粒子は、水流でプラントの外に運ばれ(ステップE)、必要に応じて脱水される。
【0065】
図1からわかるように、相対的な動きによって、まず上層(3)が分離および剥離され、次にこの上の上層(2)が一枚ずつ分離および剥離される。
【0066】
ノズルヘッド(DK)において、2つのノズルは、噴射されるウォータージェットが多層複合材料の方向にお互いに向き合うように配置される。2つのウォータージェットは、好ましくは距離(b)離れて基板表面に衝突する。
【0067】
ノズルヘッド(DK)の回転軸(L)の外側に配置されたノズルは、ノズルボディ(DK)が回転する際に円形の回転運動を描く。これにより、個々の層(2、3)がそれぞれの下の層から三日月形に1つ1つ分離され、持ち上げられる。
【0068】
半導体材料と、オプションにはなるが層におけるその他金属および/または合金と、など、層間に位置していた貴重な材料は、もはや分離された層(2)の混合物中において自由にアクセス可能であり、従来のプロセスによって分離、溶解、回収することができる(例えば、接点および導体トラック(conductor track)において存在する金属および/または合金も同様である可能性がある)。
【0069】
試験では、例えば、フレーム付きおよびフレーム無しの太陽電池モジュール全体が使用された。この材料は、多層システムの一例として、前面ガラス(front glass)(下層(1))および構造体(箔、相互接続導体付きシリコンセル、箔、背面箔)=層(2、3)から構成されている。
【0070】
作業幅25cmの回転ノズルヘッド(DK)により、太陽電池モジュールは表面全体に動かされた。使用された水圧は、モジュール(module)のタイプによって、750から2000barであった。多層構造はアルミフレーム上で鋭く切断され、下層(1)(キャリア層)であるガラスから完全に取り除かれた。
【0071】
したがって、キャリア材料の形態であるより硬質な下層(1)はウォータージェットによって切断されず、この上に配置された層のみが除去または分離され、破砕される。
【0072】
破砕された個々の層(2、3)と、破断したシリコンセル、スズメッキされた銅ストリップ(strip)、EVAおよびテドラー箔などの層間にあった貴重な材料と、の混合物であるブラスト材料(blasting material)は、回収され、さらなるリサイクルへと送られる。
【0073】
フレーム付きのガラス(キャリア層、層(1))は、針のついた格子上に落とされ、ガラスは砕け、格子を通り抜けて容器に落ち、フレームおよびケーブルボックスは格子上に残った。もはやどちらも金属リサイクルできるようにそれぞれの回収容器に入れられるようになった。
【0074】
ノズルヘッド(DK)と被処理基板(太陽電池モジュール(PV))との距離は4cm、水の消費量は平均30L/分であった。
【0075】
総括すると、本願発明は、化学添加物を使用せず、水のみを手段(tool)として大面積の多層複合材料(複合材料または多層システム)を分離または解きほぐす(unravel)方法を提供する最初のものである。
【0076】
上側の層は破砕され、互いに持ち上げられ、選別され、また貴重な材料としてリサイクル工程に供給される。
【0077】
半導体および/または金属または金属合金のような、層(2)の間に位置していたもはや露出している貴重な材料も回収することができる。キャリア層(1)および/または背面(back)層(3)も、層(2)と同様に貴重な材料としてリサイクルすることができる。
【0078】
このようにして製造されたガラスカレット(cullet)(図1の下部キャリア層/層(1))は純度が高く、ガラス工業において2次原材料として需要の高いカレットであり、微量成分(minor constituent)の合計は0.7%以下である。次の表1はこれを示している。
【0079】
【表1】
【0080】
ノズルヘッド速度および/または送り速度および/または相対速度および/または水圧および/または攻撃(attack)の角度および/またはノズルの数などの工程パラメータは参考試験によって決定することができる。
【0081】
図2から図4に、ノズルヘッド(DK)と、例えばここではノズルヘッド(DK)に備え付けられた2つのノズル(D1、D2)とについて、本願発明におけるデザインおよび位置付け(orientation)の変形例(variant)を示す。
【0082】
図2にノズルヘッド(DK)の概略図を示す。ここで、ノズルヘッド(DK)の回転軸(L)は多層複合材料の表面(O)と垂直に配置される。2つのノズル(D1、D2)はノズルボディに挿入され、ノズル(D1、D2)の縦軸(A1、A2)はお互いに角度(α)で傾斜している。ここで、この角の二等分線はノズルヘッド(DK)の縦軸(L)上に位置する。太い破線(dashed line)は圧力下で供給される水の誘導(guidance)を示している。ここには図示されていない圧力ライン(pressure line)によって供給される水はノズルヘッドにおいて二つのノズル(D1、D2)の間で分割され、2つのウォータージェットが噴射される。これら2つのウォータージェットは多層複合材料の表面(O)において距離(b)離れて衝突する(meet)。
【0083】
図3にノズルヘッド(DK)の概略図を示す。ここで、ノズルヘッド(DK)の回転軸(L)は多層複合材料の表面(O)に対して角度(β)だけ傾斜しており、互いに平行な2つのノズル(D1、D2)を有する。したがって、2つのノズル(D1、D2)は表面(O)に対してノズルヘッド(DK)と同じ角度(β)を有する。
【0084】
図示されていない一例に係る傾斜したノズルボディでは、さらに図2のようにノズル(D1、D2)がお互いに角度(α)をなすように配置することもできる。
【0085】
図4にノズルヘッド(DK)の概略図を示す。ここで、ノズルヘッド(DK)の回転軸(L)は多層複合材料の表面(O)に対して垂直に配置され、お互いに平行なノズル(D1、D2)を有する。
【0086】
また、図示されていない変形例(variants)に係り、ノズルヘッドにおいて回転軸(L)に対して平行な縦軸(longitudinal axes)を有する1つまたは複数のノズルを使用することもでき、これをノズルヘッド(DK)の回転軸(L)に対してある角度をなす縦軸を有する1つまたは複数のノズルと組み合わせることもできる。
【0087】
さらに、例えば、構造設計(structural design)が同一または異なる2つまたはそれ以上のノズルヘッド(D1、D2)を設ける(provide)ことも可能である。
【0088】
例えば、ノズルヘッド(DK)においてノズルは1つだけ挿入されてもよく、ノズルの縦軸はノズルヘッドの回転軸から離れていてもよい。そして、これら2つのノズルヘッドはお互いに隣同士で対になって回転することができる。ノズルヘッドにおけるノズルの方向は同一または異なってもよい。
【0089】
さらに、ノズル(D1、D2)から噴射されるウォータージェットがお互いにある角度で向かい合うように、ノズルヘッド(DK)はお互いに傾斜していてもよい(図2と同様)。
【0090】
ノズルヘッド(DK)の回転軸(L)の周りをノズルが回転することにより、円形の切断経路(cutting path)が実現される。
【0091】
とりわけ、層(layers)を切断した後にノズルおよび/またはノズルヘッドが傾斜位置(inclined position)にあることにより、切断された層がそれぞれの下の層から持ち上げられる。
【0092】
この工程において、回転と同時に送る(feed)ことにより、切断ジェット(cutting jet)と持ち上げジェット(lifting jet)を高速で切り替えることができる。
【0093】
回転方向において最初に衝突するジェットは、したがって、それぞれの層を切断し、回転方向において次に来るジェットは基板から分離された部分の層を持ち上げる。
【0094】
結果として、個々の層は個々の部分(part)またはセクション(section)に分離および持ち上げられ、したがって、ベース(base)に至るまで分離される。
【0095】
前述したように、層ごとに(layer-by-layer)、および、一つ一つ(piece-by-piece)、層を分離および持ち上げることで、間にある材料を徐々に露出させる。
【0096】
したがって、本願発明は複合材料または多層システムを分離する簡単で効率的な解決策を提供する。この解決策によって、多層システムの層を形成することができるような半導体材料および/もしくは金属、または、無機材料もしくは有機材料などの、複合材料または多層システム内部にある貴重な材料は、硬いキャリア層(carrier layer)を保持(retain)したまま、更なる利用/リサイクルのために利用できるようになる。
【0097】
キャリア層(層(1))と破砕された層(2、3)の断片(section)との両方はまた、貴重な材料としてリサイクルされることができる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層複合材料を分離する方法であって、
前記多層複合材料は、特に太陽電池モジュール、TFT、OLEDまたはLCDディスプレイの形態であり、
前記多層複合材料において、層間に貴重な材料が位置しており、
前記多層複合材料はキャリア層の形態である少なくとも1つの下層(1)および前記下層(1)上に位置する少なくとも1つのより軟質な層(2、3)から構成され、
分離される多層複合材料の1つまたは複数の層(2、3)は、少なくとも1つの高圧ウォータージェットによって切断および持ち上げられて層ごとにまたは完全に個別化され、
少なくとも1つのノズルヘッド(DK)は、ノズルヘッド(DK)の回転軸の外側に配置されたノズルを有し、
回転可能なノズルヘッド(DK)によって、高圧ウォータージェットを噴射する1つまたは複数のノズル(D1、D2)がノズルヘッド(DK)の回転軸(L)の周りを回転し、
分離後に貴重な材料が個々にまたは分離された層(1、2、3)において露出され、少なくとも層(1、2、3)間に位置していた貴重な材料が分離後にリサイクルされるように、ノズルヘッド(DK)と多層複合材料が同時に相対運動し、
ウォータージェット処理は、ノズルヘッド(DK)の作業幅に応じてストリップ状に実施され、
処理される多層複合材料が走査されるか、または、直線経路の場合には処理される多層複合材料の幅に応じて複数のノズルヘッド(DK)が互いに隣接して取り付けられることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
多層複合材料の分離プロセスが、
対で配置された少なくとも2つのノズルが、回転と同時に被処理材料またはノズルヘッド(DK)自体が前進することによって、1つまたは複数の層(2、3)を貫通することと、
切断された部分を持ち上げることと、
下層(1)を綺麗にすることと、を同時に実行することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
送り速度は、分離される材料の層(2、3)がそれぞれ貫通され、ノズル(D1、D2)の適切な噴射角度(α)によって、前記材料が基材から持ち上げられ、ひいては、ばらばらになるように設計されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法であって、
多層複合材料の複合物の破壊、ひいては分離に必要な圧力が750と3000barとの間で供給されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、
個々の層(2、3)それぞれの切断および持ち上げが次々と行われるように、ノズルヘッド(DK)の回転速度が各送り速度に適合されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法であって、
ノズルヘッド(DK)が回転するのと同時に送ることにより個々のウォータージェットによって分離される1つまたは複数の層(2、3)の材料が、切断ジェットおよび持ち上げジェットの急激な変化を生み出すことによって、個々の層が下層(1)の形態であるキャリア層に至るまで分離されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法であって、
回転の一方向において先行するノズル(D1、D2)のウォータージェットが衝突する層(2、3)を切断し、
前記回転の一方向において追随するノズル(D1、D2)のウォータージェットが、1つまたは複数の層(2、3)の切断された部分を持ち上げることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法であって、
ウォータージェットによって下層(1)から分離された個々の層(2、3)は、ブラストキャビネットの壁からウォーターカーテンによって一緒に濯がれ、スチールキャビネット(K)からチャネルに洗い落されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法であって、
ノズル(D1、D2)および/またはノズルヘッド(DK)はA)ジェットの形状と、B)角度と、C)個数とに関して適合され、A)貫通深さと、B)持ち上げと、C)作業速度および/または切断片の形状と、を調整できるようにすることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法を実施するための装置であって、
多層複合材料の層間に貴重な材料が入っている多層複合材料を分離し、
いずれの場合にも少なくとも1つの高圧ウォータージェットを噴射するために、少なくとも1つのノズル(D1、D2)が設けられ、
少なくとも1つのノズルヘッド(DK)は、ノズルヘッド(DK)の回転軸の外側に配置されたノズルを有することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
それぞれが少なくとも1つの高圧ウォータージェットを噴射するように、少なくとも2つのノズル(D1、D2)が設けられ、
多層複合材料の表面に衝突する高圧ウォータージェットがお互いに離隔するようにノズル(D1、D2)が配置されることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の装置であって、
少なくとも2つのノズルが回転軸(L)周りに回転可能なノズルヘッド(DK)内または2つの離れたノズルヘッド(DK)内に配置され、
お互いに向かい合うノズル(D1、D2)からウォータージェットが噴射されることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の装置であって、
少なくとも2つのノズル(D1、D2)を有する少なくとも1つのノズルヘッド(DK)が多層複合材料の上面から距離(L)の位置に取り付けられ、
ノズル(D1、D2)がノズルヘッド(DK)においてお互いに角度(α)で傾斜して配置された際、多層複合材料の上面に衝突するウォータージェットの間隔(b)を確保することを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項10から12のいずれか一項に記載の装置であって、
それぞれが少なくとも1つのノズル(D1、D2)を有する少なくとも2つのノズルヘッド(DK)が多層複合材料の上面から距離(L)の位置に取り付けられ、
距離(L)によって、ノズルヘッド(DK)のノズル(D1、D2)がお互いに角度(α)で傾斜して配置された際に多層複合材料の上面に衝突するウォータージェット同士の間隔(b)が確保されることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか一項に記載の装置であって、
少なくとも1つのノズル(D1、D2)が1つまたは複数の層(2、3)を切断し、少なくとも1つの更なるノズル(D1、D2)が1つまたは複数の層(2、3)の切断片を持ち上げおよび個別化することを特徴とする装置。
【国際調査報告】