(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電極センサを有するマイクロチャネル
(51)【国際特許分類】
G01N 27/02 20060101AFI20240621BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240621BHJP
G01N 33/86 20060101ALI20240621BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G01N27/02 D
G01N37/00 101
G01N33/86
G01N33/483 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520655
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022032914
(87)【国際公開番号】W WO2022261379
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523467142
【氏名又は名称】コアグロー・メディカル・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Coagulo Medical Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,ガリット エイチ
(72)【発明者】
【氏名】モース,ジャスティン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン,レオニード
【テーマコード(参考)】
2G045
2G060
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045FA34
2G045JA07
2G060AA07
2G060AE21
2G060AF06
2G060AF07
2G060AF10
2G060AG03
2G060FA01
2G060JA06
2G060KA05
(57)【要約】
本発明の様々な実施形態は、マイクロチャネル内で均一な電流密度が達成されるマイクロチャネル及び電極形態を提供する。本発明はこれと他の利点とを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチャネルであって、当該マイクロチャネルの単平面上に配置された2つの電極を有しており、前記マイクロチャネルの形状は6つの辺を有する六角形であり、前記2つの電極のそれぞれが矩形領域を有しており、各電極の矩形領域は前記マイクロチャネルの6つの辺のうちの1つに平行であり且つ他方の電極の矩形領域に平行であり、
以下の特徴
a.電極高さ:チャネル高さの比が少なくとも0.1である
b.電極間隔:チャネル幅の比が少なくとも0.5である
c.前記2つの電極のそれぞれが2つの円形領域を有しており、各円形領域が電極端に位置している
の1つ又は複数が存在する、マイクロチャネル。
【請求項2】
電極高さ:チャネル高さの比が0.3以上である、
請求項1に記載のマイクロチャネル。
【請求項3】
電極高さ:チャネル高さの比が0.5以上である、
請求項1に記載のマイクロチャネル。
【請求項4】
電極高さ:チャネル高さの比が0.6以上である、
請求項1に記載のマイクロチャネル。
【請求項5】
電極高さ:チャネル高さの比が0.8以上である、
請求項1に記載のマイクロチャネル。
【請求項6】
前記2つの電極のそれぞれが2つの円形領域を有しており、各円形領域が電極端に位置しており、各円形領域は直径が500ミクロンである、
請求項1に記載のマイクロチャネル。
【請求項7】
前記2つの電極のそれぞれが2つの円形領域を有しており、各円形領域が電極端に位置しており、各円形領域は直径が300ミクロンから600ミクロンの範囲内である、
請求項1に記載のマイクロチャネル。
【請求項8】
各円形領域は直径が600ミクロンである、
請求項7に記載のマイクロチャネル。
【請求項9】
前記マイクロチャネルの容積が2.5マイクロリットル以下である、
請求項1~8のいずれか1つに記載のマイクロチャネル。
【請求項10】
前記マイクロチャネルの容積が2.0マイクロリットル以下である、
請求項1~8のいずれか1つに記載のマイクロチャネル。
【請求項11】
前記マイクロチャネルの容積が2.0~2.5マイクロリットルである、
請求項1~8のいずれか1つに記載のマイクロチャネル。
【請求項12】
前記マイクロチャネルの内面は血栓形成性が最小限である、
請求項1~11のいずれか1つに記載のマイクロチャネル。
【請求項13】
前記マイクロチャネルの内面は導電性が最小限である、
請求項1~12のいずれか1つに記載のマイクロチャネル。
【請求項14】
前記2つの電極のそれぞれが、前記マイクロチャネル内の全ての他の表面よりも血栓形成性が高い表面を提供する、
請求項1~13のいずれか1つに記載のマイクロチャネル。
【請求項15】
前記マイクロチャネルのフロアがポリイミドを有する、
請求項1~14のいずれか1つに記載のマイクロチャネル。
【請求項16】
前記2つの電極のそれぞれが血栓形成性コーティングを有する、
請求項1~15のいずれか1つに記載のマイクロチャネル。
【請求項17】
前記血栓形成性コーティングが、金、銀、及び白金のうちの1つ又は複数を有する、
請求項16に記載のマイクロチャネル。
【請求項18】
電極高さ:チャネル高さの比が少なくとも0.1であり、電極間隔:チャネル幅の比が少なくとも0.5であり、前記2つの電極のそれぞれが2つの円形領域を有しており、各円形領域が電極端に位置している、
請求項1~17のいずれか1つに記載のマイクロチャネル。
【請求項19】
六角形マイクロチャネルであって、互いに対向するように且つ前記六角形マイクロチャネルの同一平面上に配向された2つの電極を有しており、各電極は、六角形マイクロチャネルの6つの辺のうちの1つに平行であり且つ平行である前記辺から500ミクロン以下の位置にある矩形領域を有しており、前記電極の矩形領域間の距離は少なくとも4,000ミクロンであり、各辺の長さは4,000ミクロン以下である、六角形マイクロチャネル。
【請求項20】
電極高さ:チャネル高さの比が0.3以上である、
請求項19に記載の六角形マイクロチャネル。
【請求項21】
前記六角形マイクロチャネルの内面は血栓形成性が最小限である、
請求項19~20のいずれか1つに記載の六角形マイクロチャネル。
【請求項22】
前記六角形マイクロチャネルの内面は導電性が最小限である、
請求項19~21のいずれか1つに記載の六角形マイクロチャネル。
【請求項23】
前記六角形マイクロチャネルのフロアがポリイミドを有する、
請求項19~22のいずれか1つに記載の六角形マイクロチャネル。
【請求項24】
前記2つの電極のそれぞれが血栓形成性コーティングを有する、
請求項19~23のいずれか1つに記載の六角形マイクロチャネル。
【請求項25】
前記血栓形成性コーティングが、金、銀、及び白金のうちの1つ又は複数を有する、
請求項24に記載の六角形マイクロチャネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単平面電極(ユニプレーナ電極)を用いてマイクロチャネル内に電流を発生させる装置および方法に関し、電流密度はマイクロチャネル内の電気特性の高感度な検出及び測定を提供するのに十分に均一である。したがって、本発明の様々な実施形態は、マイクロチャネル内の媒体及びマイクロチャネル内の媒体全体の電気特性(例えば、抵抗、キャパシタンス、インダクタンス、インピーダンス、誘電率)の変化を高感度に測定することを可能にする、マイクロチャネル及び電極構成を提供する。本明細書で説明される装置及び方法は、血液サンプルの凝固評価用を含む様々な用途に使用できる。
【背景技術】
【0002】
診断やその他の用途にマイクロ流体を使用することは、ますます一般的になってきている。電気特性の変化を読み出し値として測定するために、マイクロ流体デバイス内に電極(例えば、電極センサ)を使用することは、堅牢で低コストの傾向があるため、有用なアプローチである。
【0003】
マイクロチャネル内の電極センサの感知能力に影響を与える多くの要因がある。電極の形状、大きさ、向き、材質は、マイクロチャネルの特徴と同様に、マイクロチャネル内の電流のレベル及び分布に影響を与える要因であり、各要因は順番に、マイクロチャネルに含まれる媒体内の変化を、その媒体が液体、半固体、又は空気のいずれであっても、感知する電極の能力に影響を与える可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロチャネル内に電流を供給する電極を有するマイクロ流体デバイスに対する必要性が当該技術分野において存在し、ここで、電流は、十分に高密度であり、かつ十分に均一な分布であり、その結果、電極は、マイクロチャネル内の媒体内の電気特性の変化を、大きさが小さい変化、及び/又はマイクロチャネル内の異なる位置(例えば、電極に近接していない位置を含む)で生じ得る変化を含めて、高感度に検出できる。さらに、単平面電極は、多平面電極(マルチプレーナ電極)に比べて製造が複雑でなく、より多くの種類の(そして場合によってはより安価な)製造技術を可能にし得るので、単平面電極を有するこのようなマイクロチャネルを提供する必要性が当技術分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、単平面電極を有するマイクロチャネルを提供する。特定の実施形態では、マイクロチャネルは6つのエッジを有する六角形の形状を有し、単平面形態の2つの電極を有しており、2つの電極はマイクロチャネル内の同一平面上で互いに対向するように配向される。幾つかの実施形態では、2つの電極はそれぞれ、マイクロチャネルの6つのエッジのうちの1つに平行であるように配向された矩形部分を有しており、該矩形部分は他方の電極の矩形部分と平行になるように配向されている。さらなる実施形態では、次の特徴、すなわち電極の高さ:チャネル高さの比が少なくとも0.1であること、電極間隔:チャネル幅の比が少なくとも0.5であること、2つの電極がそれぞれ2つの円形領域を有しており、各円形領域が電極端部に位置すること、の1つ又は複数が存在する。
【0006】
特定の実施形態では、このようなマイクロチャネルの電極高さ:チャネル高さの比は、少なくとも0.1、少なくとも0.3、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.8、又は少なくとも0.9である。特定の実施形態では、電極高さ:チャネル高さの比は0.3~0.5の範囲内である。幾つかの実施形態では、電極高さ:チャネル高さの比は0.5以上である。
【0007】
特定の実施形態では、電極間隔(電極の矩形部分間で測定される電極間の距離-
図6A(ii)(電極間隔)参照)のチャネル幅に対する比は、0.5以上である。さらなる実施形態では、電極間隔:チャネル幅の比は0.6以上、又は0.7以上である。特定の実施形態では、電極間隔:チャネル幅の比は0.8以上である。さらなる実施形態では、電極間隔:チャネル幅の比は0.9以上である。
【0008】
2つの電極の各々がその両端に円形領域を有する特定の実施形態では、各円形領域は直径が300ミクロンから600ミクロンの範囲である。さらなる実施形態では、各円形領域は直径が500ミクロンである。各電極には、円形領域の1つ内に電気ビアが配置されている。
【0009】
特定の実施形態では、マイクロチャネル容積は2.5マイクロリットル以下である。さらなる実施形態では、マイクロチャネル容積は2.0マイクロリットル以下である。
【0010】
特定の実施形態では、マイクロチャネルは、1つ又は複数の血栓形成性が最小限である材料(例えば、ポリイミドなど)を用いて作製される。マイクロチャネルは、マイクロチャネルの内面(及びサンプルと接触する面)が最小限の血栓形成性を有するように作製されてもよい。
【0011】
特定の実施形態では、電極は血栓形成性材料を有する。例えば、電極は血栓形成性材料で作られてもよく、及び/又はコーティングを含んでもよく、該コーティングは血栓形成性材料を有する(このようなコーティングは血栓形成性コーティングと呼ばれることがある)。コーティングに使用されてもよい血栓形成物質には、例えば、金、銀、白金などの金属が含まれる。このようなコーティングを使用すると、電極の表面は血栓を生じやすくなる。
【0012】
本発明の実施形態はまた、同じ形状を有し、マイクロチャネル内の同一平面上で互いに対向するように配向された2つの電極を有する六角形マイクロチャネルを提供する。各電極は、マイクロチャネルの6つのエッジの1つに平行であり、且つ、平行であるエッジから500ミクロン以内に位置する、矩形部分又は直線部分を有してもよい。さらに、特定の実施形態では、電極間の距離(電極の矩形部分又は直線部分間の距離)は、少なくとも4,000ミクロンであり、さらなる実施形態では、各エッジの長さは4,000ミクロン以下である。特定の実施形態では、このようなマイクロチャネルの電極高さ:チャネル高さの比は、少なくとも0.1、少なくとも0.3、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.8、又は少なくとも0.9であり、特定の実施形態では、電極高さ:チャネル高さの比は0.5以上である。さらなる実施形態では、マイクロチャネルは、マイクロチャネルの内表面(および試料と接触する表面)が最小限の血栓形成性を有するように、最小限の血栓形成性を有する材料で作製できる。付加的な実施形態では、電極は血栓形成性材料で作られてもよく、および/またはコーティングを含んでもよく、コーティングは血栓形成性材料からなる。特定の実施形態では、マイクロチャネル容積は2.5マイクロリットル以下であり、さらなる実施形態では、マイクロチャネル容積は2.0マイクロリットル以下である。
【0013】
本明細書で提供されるマイクロチャネル-電極形態は、電圧印加時にマイクロチャネル全体に均一な電流分布を提供する。例えば、特定の実施形態では、凝固していない血液と同様の電気特性(例えば、導電性)を有する媒体を含むマイクロチャネルに励起電圧を印加すると、マイクロチャネルの横断面の面積の少なくとも70%にわたる電流密度は20%を超過して変化しない。さらなる実施形態では、マイクロチャネルの横断面の面積の少なくとも80%にわたる電流密度は、20%を超過して変化しない。さらに、特定の実施形態では、マイクロチャネル容積の少なくとも80%の電流密度は20%を超過して変化しない。
【0014】
本発明は、本明細書に記載されているように、これらおよびその他の重要な側面に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】血液中を流れる電流の模式図であり、電極がどのように電気インピーダンスの変化を検出するかを示している。
【
図2A-1】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2A-2】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2A-3】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2A-4】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2B-1】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2B-2】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2C-1】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2C-2】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2C-3】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2D-1】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2D-2】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図2D-3】様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。
【
図3A-1】電極を含むマイクロチャネルの2つの形態を提供しており、シミュレーションされた各マイクロチャネル形態での電流発生を示している。
【
図3A-2】電極を含むマイクロチャネルの2つの形態を提供しており、シミュレーションされた各マイクロチャネル形態での電流発生を示している。
【
図3A-3】電極を含むマイクロチャネルの2つの形態を提供しており、シミュレーションされた各マイクロチャネル形態での電流発生を示している。
【
図3B-1】電極を含むマイクロチャネルの2つの形態を提供しており、シミュレーションされた各マイクロチャネル形態での電流発生を示している。
【
図3B-2】電極を含むマイクロチャネルの2つの形態を提供しており、シミュレーションされた各マイクロチャネル形態での電流発生を示している。
【
図3C】電極を含むマイクロチャネルの2つの形態を提供しており、シミュレーションされた各マイクロチャネル形態での電流発生を示している。
【
図4A-1】2つの異なる形態におけるシミュレーションされた電流発生及び血栓検出を示す概略図である。
【
図4A-2】2つの異なる形態におけるシミュレーションされた電流発生及び血栓検出を示す概略図である。
【
図4A-3】2つの異なる形態におけるシミュレーションされた電流発生及び血栓検出を示す概略図である。
【
図4B-1】2つの異なる形態におけるシミュレーションされた電流発生及び血栓検出を示す概略図である。
【
図4B-2】2つの異なる形態におけるシミュレーションされた電流発生及び血栓検出を示す概略図である。
【
図4B-3】2つの異なる形態におけるシミュレーションされた電流発生及び血栓検出を示す概略図である。
【
図5A】実施例4に記載した6つの形態についての血栓検出データを提供している。
【
図5B】実施例4に記載した6つの形態についての血栓検出データを提供している。
【
図5C】実施例4に記載した6つの形態についての血栓検出データを提供している。
【
図5D】実施例4に記載した6つの形態についての血栓検出データを提供している。
【
図5E】実施例4に記載した6つの形態についての血栓検出データを提供している。
【
図5F】実施例4に記載した6つの形態についての血栓検出データを提供している。
【
図6A-1】2電極マイクロチャネル形態を用いた、様々なチャネル高さのマイクロチャネル内の電流のシミュレーションを提供している。
【
図6A-2】2電極マイクロチャネル形態を用いた、様々なチャネル高さのマイクロチャネル内の電流のシミュレーションを提供している。
【
図6B-1】2電極マイクロチャネル形態を用いた、様々なチャネル高さのマイクロチャネル内の電流のシミュレーションを提供している。
【
図6B-2】2電極マイクロチャネル形態を用いた、様々なチャネル高さのマイクロチャネル内の電流のシミュレーションを提供している。
【
図6B-3】2電極マイクロチャネル形態を用いた、様々なチャネル高さのマイクロチャネル内の電流のシミュレーションを提供している。
【
図6B-4】2電極マイクロチャネル形態を用いた、様々なチャネル高さのマイクロチャネル内の電流のシミュレーションを提供している。
【
図6B-5】2電極マイクロチャネル形態を用いた、様々なチャネル高さのマイクロチャネル内の電流のシミュレーションを提供している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1A~
図1Cは、血液中を流れる電流の模式図であり、電極がどのように電気インピーダンスの変化を検出するかを示している。電気インピーダンスは、血液サンプルの成分の容量性リアクタンス及び誘導性リアクタンスと同様に、オーム抵抗から生じる可能性がある。例えば、
図1Aの場合、血液は赤血球を含んでおり、Cmは赤血球の膜のキャパシタンスであり、Riは赤血球の内部抵抗であり、Rpは血漿の抵抗である。
図1B及び
図1Cは、赤血球と白血球とを含む血液サンプルを通過する電流の流れを示す概略図である。
図1Bは、凝固していない血液を示しており、細胞が分離している。
図1Cは、凝固した血液を示しており、赤血球と白血球とが凝集している。
図1Bと
図1Cの両方において、実線の矢印は低周波電流を表し、破線の矢印は高周波電流を表している。これらの概略図は、例えばサンプルに電圧を印加したときの電気インピーダンス(又はその他の電気特性)の変化を検出及び測定するために、低周波と高周波をどのように使用できるかを示している。
【0017】
図2A~
図2Dは、様々な電極の向き及び形状を有する電極と様々なマイクロチャネルの形状とを有する、電極を含むマイクロチャネルの様々な形態を提供し、シュミレーションされたマイクロチャネル内での電流発生を示している。様々な形態で行われたシミュレーションは、マイクロチャネルの形状と電極の形状及び配置との結果として、マイクロチャネル内の電流分布がどのように変化するかを示している。これらの形態はいずれも、マイクロチャネル全体に均一な電流密度を提供していない。
【0018】
図3A~
図3Cは、電極を含むマイクロチャネルの2つの形態を提供しており、シミュレーションされた各マイクロチャネル形態での電流発生を示している。
【0019】
図4A~
図4Bは、2つの異なる形態におけるシミュレーションされた電流発生及び血栓検出を示す概略図である。
図4Aはインターデジット形態を示しており、
図4Bは2電極形態を示している。
【0020】
図5A~
図5Fは、実施例4に記載した6つの形態についての血栓検出データを提供している。各グラフでは、インピーダンス(オーム、Y軸)が時間(秒、X軸)に対してプロットされている。
【0021】
図6A~
図6Bは、2電極マイクロチャネル形態を用いた、様々なチャネル高さのマイクロチャネル内の電流のシミュレーションを提供しており、マイクロチャネルの高さが増大するにつれて電流分布が均一でなくなる様子を示している。
【0022】
電極を有するマイクロチャネル装置は、生物学的流体分析だけでなく、水質検査などの環境分析にも使用できる。装置は電極とは分離したセンサを含んでもよく、又は電極自体がセンサとして作動してもよく、いずれの場合においても、センサは、例えば媒体の化学反応又は物理的変化の結果、あるいはその両方の結果として生じる、チャネル媒体における電気的変化(例えばアドミッタンス、導電率、インピーダンス、抵抗、誘電率などの1つ又は複数の電気特性の変化)を検出する。サンプル中の電気的変化の検出及び測定は、インピーダンス分光法又は誘電分光法と呼ばれることもある。サンプルの凝固を評価する場合、インピーダンス分光法は、例えば血漿と血球の両方を含む全血を調べる場合、周波数範囲にわたるインピーダンスの変化を評価することを伴い得る。
【0023】
本明細書に記載されている特定の実施形態では、電極はマイクロチャネル媒体中の電気特性の変化を測定するセンサとして作動する。
【0024】
幾つかの実施形態では、マイクロチャネル内の電極は、さらなる機能を果たすことがある。例えば、化学反応を伴う特定のケースでは、電極自体が化学反応を引き起こす役割を果たすことがある。場合によっては、電極は、化学反応に関与する材料(例えば、電極上のコーティングの形態など)を含むことがある。
【0025】
さらに、電極は1つ又は複数の種類の薬剤(物質)で機能化されてもよい。このような薬剤は、化学反応に参加すること、反応をセンサ領域に局在させること、又はその両方など、幾つかの役割を果たすことができる。例えば、直接又は間接的なELISAを目的として、電極が抗体や抗原などのタンパク質で機能化されてもよい。
【0026】
マイクロチャネル内の電極がマイクロチャネル内の媒体と他の内容物との混合を促進することもある。例えば、電極は、マイクロチャネル内の媒体の流れに物理的な障害物を提供することによって、混合を促進するように媒体の流れを乱してもよい。Nguyen他著,マイクロ流体の液体取り扱いに関する最近の進展と将来の展望,Micromachines 8: 186(2017)、及びWard及びFan著,マイクロ流体装置における混合とその促進方法,Micromech. Microeng.,25,094001(2015)を、全体に参照のこと。追加的又は代替的に、印加電圧は混合効果をもたらし得る。例えば、Song他著,集積型マイクロ電極上に生成される低周波切り替え横断電気浸透性流れを介したマイクロチャネルにおけるカオス混合,Lab on a Chip,10:734-740(2010)。特定の実施形態では、望まれる混合のメカニズムによっては、電極高さ:チャネル高さの比がより低い方が好ましい場合がある。
【0027】
電極を有するマイクロ流体チャネルは、血液中、又は血液中の1つ又は複数の成分中の、様々な変化を測定するために使用され得る。本発明の実施形態では、凝固の検出及び評価は、架橋フィブリン血栓の形成をもたらすプロセスであるが、凝固の検出及び評価に特に有用なマイクロチャネル-電極形態が提供される。さらに、全血の場合、本明細書に記載の装置及び方法は、赤血球膜のキャパシタンスの変化など、循環細胞の変化を検出及び/又は測定するために使用され得る。他の実施形態では、装置及び方法は、血小板の形態及び活性化(例えば、付着及び凝集)の変化を検出及び/又は測定するために使用され得る。
【0028】
例えば、電気インピーダンス(又は抵抗、キャパシタンス、インダクタンス、及び誘電率などの1つ又は複数の他の電気特性)の変化を測定することは、マイクロ流体チャネルにおける血栓検出に使用されてもよい。幾つかの例では、電極は、凝固接触経路を活性化するガラス又は他の基材上に配置されてもよい。電極を凝固接触経路活性化基材(例えば、ガラス)上に配置することは、そのような基材上すなわち電極が配置されている近傍での血栓形成の局在化を促進し、電極周りに血栓の形成を促進することが電極による血栓検出を向上させてもよい。したがって、特定の実施形態では、電極は血栓性基材上に直接に配置され得る。
【0029】
電極が配置される基材は、マイクロチャネルの表面を形成する材料(又は複数の材料)と同じであってもよく又は異なってもよい。例えば、ある実施形態では、電極はマイクロチャネルのフロア上に直接に在るように配置され、マイクロチャネルのフロアは電極が載置される基材であり、他の実施形態では、電極が載置される基材として機能する追加の材料(マイクロチャネルのフロアとは異なる材料)がある。
【0030】
幾つかの実施形態では、電極は血栓形成性が最小限である基材(例えばKapton(登録商標)など)上に載置され、電極自体がマイクロチャネル内で最も血栓形成性の高い表面となる。同様に、電極が載置される基材も血栓形成性である特定の実施形態では、電極は基材(及びマイクロチャネル内の他の全ての表面)よりも血栓形成性が高く、それによって電極がマイクロチャネル内で最も血栓形成性の高い表面となる。電極がサンプルに接触する最も血栓形成性の高い表面を提供するこのような実施形態では、電極は、センサの近傍(又は、電極がセンサとしても作動する実施形態では、該センサ上)に血栓形成を局在化するのに役立ち、これにより、血栓形成を検出する装置の能力をさらに向上させることができる。このような装置を用いて凝固を評価することは、電極が内在性凝固経路の活性化因子として機能するため、活性化因子を加えることなく行うことができる。代替的に、活性化因子(例えば、ガラス微小球、又は粉末ガラス、カオリン、シリカ、活性化凝固因子、リン脂質、組織因子など)が追加されてもよい。電極は、例えば、電極上にコーティング(金又は他の金属コーティング)を含むことによって血栓形成性を持たせることができる。Hulander他著,貴金属との血液相互作用:凝固と免疫の補体活性化,ACS Appl.Mater Interfaces 2009 May;1(5):1053-62を全体にて参照のこと。
【0031】
血栓形成性が最小限である材料(例えば、ポリイミドを含むがこれに限定されない様々なプラスチックなどの材料)で全体的又は部分的に形成されたマイクロチャネルにおける凝固検出に関する記述はほとんどない。一例として、チャネルの平行面に配置された平面電極の使用がある。例えば、Kucukal他著,表面が機能化されたマイクロ流体誘電センサを用いた血液凝固のモニタリング,2017 IEEE 12th International Conference on Nano/Micro Engineered and Molecular Systems(NEMS),752(755(polyethylene glycol-coated microchannel)、及びMaji他著,マイクロ流体誘電センサを用いた全血凝固の評価,J.Thromb.Haemost.16:2050(2056(2018)(polymethyl methacrylate (PMMA) plastic substrate)。別の例では、電極が独自のチャネル(サンプルを含むチャネルとは別)に載置されており、電流は血栓形成の検出のためマイクロチューブを通過しなければならない。
【0032】
本発明の実施形態は、単平面形態の電極を有するマイクロチャネルを提供する。単平面電極を使用することは幾つかの利点を提供する。例えば、単平面電極(多平面とは反対である)を使用することは、電極をマイクロチャネルに組み込むためのより多くの方法を含む、より多くの種類の製造技術及び材料を使用することを可能にしてもよい。特に、単平面電極を使用することは、単平面電極が載置される基材としてプリント回路基板(PCB)を使用できるので、1つ又は複数のマイクロチャネル表面を形成するためのPCBを使用できる。
【0033】
さらなる実施形態では、単平面電極は血栓形成性が最小限である基材上に載置され得る。血栓形成性が最小限である基材を使用することは、マイクロチャネル-電極システムの作製に関しても同様の利点を提供し得る。例えば、PCBを使用することに関して、PCBを例えばポリイミドなど血栓形成性が最小限である材料で作ることができる。血栓形成性が最小限である材料には、血栓形成性があると考えられる他の材料(例えば、ガラス及び金などの材料)と比較して、血液と接触したときに血栓を生み出す傾向が一般的に低い材料が含まれる。血栓形成性が最小限である材料には、非血栓形成性と呼ばれる場合がある材料が含まれる。基材上に電極を載置するために使用され得る、例えば、メッキ、印刷、電子スプレー蒸着、スパッタリング、アニール、及び(接着剤又は他の方法による)接着など、様々な技術があることが理解されるべきである。
【0034】
特定の実施形態では、基材の表面に使用される材料、及びマイクロチャネルの内面に使用される材料(基材又は基材の材質と異なる場合)は、導電性が最小限(導電性の低い素材には非導電性と呼ばれる材料も含まれる)である。材料の導電性とはその材料が電流を伝導する能力のことである。本明細書に記載される実施形態では、マイクロチャネル内でサンプルに接触する材料(例えば、マイクロチャネルの内表面に使用される材料)は、サンプルの導電率と比較して低い電気導電率を有し、無視できる量の電流が材料を流れる。したがって、導電性が最小限である材料には、例えば、金及び血液などの材料に比べて導電性が低い材料(例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、及びアクリルなど)が含まれる(表2参照)。
【0035】
したがって、幾つかの実施形態では、本発明は単一のマイクロ流体チャネルに単平面電極を提供する。このような実施形態はさらに、均一な電流分布を生み出すマイクロチャネル-電極形態を提供する。本明細書に記載された実施例では、血栓形成性が最小限であり導電性が最小限である基材(例えば、ポリイミドなどのプラスチックを有する又はプラスチックでコーティングされた基材)上に配置された単平面電極の使用が、マイクロチャネル全体に均一な電流密度を生み出し、マイクロチャネル全体で血栓形成の上手い検出を可能にする(マイクロチャネル内の特定の場所又は部分だけとは反対であるように)。本明細書に記載した実施例の幾つかは、サンプルにおける凝固の検出に関するものであるが、本明細書に記載したマイクロチャネルは、マイクロチャネル内の均一な電流が望ましい任意の用途(例えば、凝集及び/又は凝集度測定)に有用である。例えば、本明細書に記載されている様々なマイクロチャネル-電極形態は、サンプルを電流で処理するのみならず、サンプルの任意のインピーダンス測定(又は導電度測定など)分析(凝固の検出などだけでなく、電気特性に影響を与えるサンプルにおける他の変化の検出など)にも使用できる。
【0036】
均一な電流分布を提供することに加えて、本明細書に記載されたマイクロチャネルは、マイクロチャネル容積が2.0(2.5μL)と小さいので、少量のサンプルに使用できる。また、本明細書に記載されるマイクロチャネルは単平面電極であるので、多平面電極を使用する他の装置よりも製造が複雑ではない。例えば、
図3B及び
図6に示されるマイクロチャネル形態は、PCBを使用して作製され得る。
【0037】
本明細書で説明されるように、マイクロチャネル全体に均一な電流密度を有すること、又はマイクロチャネル全体に均一な電流分布を有することは、電流密度が周囲の領域よりも実質的に低いコールドスポットがほとんど無いか全く無く、マイクロチャネル全体に概ね均一に分布する電流を有することを意味する。
【0038】
本発明の実施形態は、本明細書に記載された利点を達成するために、マイクロチャネル形状に関する電極の構成を提供する。電極とマイクロチャネル形状との間の関係は、特に、血栓形成性が最小限であり且つ導電性が最小限である基材(本明細書に記載の実施例では、マイクロチャネルのフロアである)上の血栓形成を検出することを目的とする場合、重要(クリティカル)であり得る。例えば、本明細書で示されるように、様々なマイクロチャネル-電極形態内の電流分布を評価する場合、電流分布、ひいてはマイクロチャネル内の電流の変化を検出する能力は、電極の位置に基づいて偏る。例えば、
図2B及び
図4Aに示されるように、インターデジット電極形態を示しているが、中間電極と各外側電極との間に電圧が印加されると、電流は中間電極と両外側電極との間を流れるが、マイクロチャネルの他の領域には流れない。別の例としては、
図2Cに示される形態があり、これは6つの電極(六角形の中心の1つの電極、六角形の各辺にまたがる1つの電極)を有する。この構成のシミュレーションでは、中央の電極と6つの外側の電極のうち1つの電極の間に、ある時間ごとに電圧が印加された。この形態のシミュレーションは、どのようにして電流が中心電極ではなく、最も近い外側の電極(最も近い導電性材料である)に優先的に流れるかを示している。上述したような形態の場合、電流密度が相対的に低いチャネルの領域(例えば、図に示す青色および紫色の領域)に血栓が形成されると、血栓検出の分解能及び血栓検出の感度が悪くなる(例えば、
図4参照)。
【0039】
加えて、六角形の2電極マイクロチャネル形態では、例えば、該電極は電極間に均一な電流分布を有するかもしれないが、マイクロチャネルが電極を越えて横方向又は背側に延びる場合、そのような延びはマイクロチャネル内の電流密度の均一性を低下させる可能性がある。本明細書で提供される実施例は、この起こり得る結果を示している。実施例4では、六角形の2電極マイクロチャネルの様々な形態で、電気インピーダンスの血栓検出を行った(表1及び
図5参照)。一般に、電極:チャネル高さの比が0.5より大きいと、高感度の血栓検出が可能になる(例えば、形態1及び2を参照)。実施例5では、
図6Aに示される形態について、様々なチャネル高さを用いて電流分布のシミュレーションを行った。電極:チャネル高さ比が0.0875の場合、電流密度は相対的に均一に分布したが(
図6B(ii)参照)、電極:チャネルの高さ比が0.35の場合、比較的高い密度レベルで、均一な電流密度分布が得られた(
図6B(i)参照)。
【0040】
マイクロチャネル内の電流分布は、マイクロチャネルの幅に対する電極間の距離によっても影響を受け得る。電極の間隔をより近づけ、チャネルの端から遠くすると、場合によっては、血栓の検出が悪くなることがある(例えば、
図5の形態5及び表1を参照)。
【0041】
本明細書で示されたように、特定のマイクロチャネル形状と、適切な電極:チャネル高さの比及び電極間隔とを有する電極形態成を使用することにより、マイクロチャネル内で均一な電流分布が達成され、電極及びマイクロチャネルの表面に血栓形成性が最小限である基材を使用した場合でも、強力な血栓検出が可能となった。
【0042】
本明細書で提供されるマイクロチャネル-電極形態は、血液凝固の評価以外の用途にも使用でき、マイクロチャネル内の物質の電気特性の変化を検出又は測定することが望まれる任意の用途に有用である。また、本形態は、電気特性の変化を検出又は測定する必要がない場合でも、マイクロチャネル内の物質に均一な電流を生成させるために使用することもできる。例えば、特定のシナリオでは、物質に電流を流し、物質にわたって均一に電流を流すことが望ましい場合がある。本発明は、電流のこのような均一な印加を可能にする、単平面電極を有するマイクロチャネル-電極形態を提供する。
【0043】
本発明は、血栓形成を上手く検出するために血栓形成性基材を必要としないマイクロチャネル-電極システムを提供するが、血栓形成性基材は、本明細書に記載されるマイクロチャネル-電極形態の様々な実施形態のいずれにおいても使用され得ることが理解されるべきである。血栓形成性基材は、その物質が血液と接触したときに凝固を活性化する表面特性を有している。血栓形成性基材の例には、例えばガラスと金などの金属とが含まれる。
【0044】
加えて、幾つかの実施形態では、電極は血栓形成性材料を有することができる。例えば、特定の実施形態では、電極は、血栓形成性材料を有するコーティングを有するか、そうでなければ血栓形成性材料を有する材料で作られる。電極をコーティングするのに使用できる血栓形成性材料には、コラーゲンなどの非金属のみならず、血液に接触すると凝固を刺激する、例えば、金、銀、白金、及びその他の金属が含まれる。血栓形成性材料を有する電極を使用することにより、血栓形成の電極領域への局在化を促進でき、血栓検出の感度を高めることができる。
【0045】
以下の実施例は、本発明とその実施例を説明するためのみのものである。実施例は、本発明の範囲または精神を制限するものとして解釈されるものではない。
【実施例】
【0046】
実施例1:
図2A-2Dに示されるように、マイクロチャネル-電極形態の様々な形態について、電流発生のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、各形態によって異なる電流密度分布が得られた。しかしながら、いずれもマイクロチャネル全体に均一な電流分布は得られなかった。
図2Bに示された形態は、マイクロチャネル内の電流密度が相対的に均一であることを示しているが、電流は両極と各電極の中心とに集中している。シミュレーションは、COMSOL Multiphysics 5.4 with the AC/DC Module(COMSOL,Inc.,Burlington,MA,USA)を使用して実行された。マイクロチャネル内の媒質の特性は、凝固していない血液に近似していた(導電率:0.703S/m、比誘電率:5120)。
【0047】
図2Aはインターデジット形態を示している。励起電圧は、2つの外側電極のそれぞれと中間電極との間に0.6V ACであった。
図2Bは2電極形態を示している。励起電圧は2つの電極間で0.6V ACであった。
図2Cは六角形の多重化形態を示している。中心電極と6つのエッジ電極のうちの1つの電極との間に、0.6V ACの励磁電圧が一定時間印加された。この形態は、マイクロチャネルの小さな部分を一度に測定することにより、マイクロチャネル内の血栓検出の空間分解能を向上させる試みを反映している。しかしながら、不活性電極は電流を媒体から遠ざけ、電流密度の均一性を低下させた。
図2Dは3つの電極対を有する多重化形態を示している。電流変化を検出する空間分解能を向上させるもう一つの試みとして、マイクロチャネル内の3つの電極対のうち1対の電極の間に、0.6V ACの励起電圧が印加された。しかしながら、この形態は、
図2Cの形態と同様に、電流密度の均一性が悪かった。
【0048】
電流密度を示すすべての図(
図2A(ii)(v)、
図2B(ii)(iii)、
図2C(ii)(iii)、
図2D(ii)-(iv)、
図3A(ii)(iii)、
図3B(ii)(iii)、
図4A(ii)、
図4B(ii)、及び
図6B(i)(v))について、マイクロチャネル図の右側の2つの縦の凡例が電流密度(A/m
2)を示している。第1の(左側の)縦の凡例は等高線プロットの値を提供しており、第2の(右側の)縦の凡例はサーフェスプロットの値を提供している。
【0049】
実施例2:
図3A-3Cに示されるように、同じ形状であるが電極形態が異なるマイクロチャネルについて、シミュレーションによる電流発生を比較した。
図3Aと
図3Bの電極は同じ高さ(35μm)と幅(100μm)を有するが、
図3Bでは電気ビアの位置が(
図3Aの位置に対して)変更された。さらに、
図3Bの各電極は、2つの円形領域又はバルブ領域を有しており、各電極端に1つの円形領域があるのに対し、
図3Aの各電極は、1つの円形領域(ビアを含み、電極の中心に位置する)を有する。
図3Bでは、各電極端の円形領域は直径が0.5mmである(
図3Cも参照)。これらの電極形状の違いは、マイクロチャネル内の電流分布に大きく影響を与えた(
図3A(ii)と
図3B(ii)を比較)。マイクロチャネル内の各電極の円形領域の位置、大きさ、及び数を変化させることにより、
図3Bに示されるように、マイクロチャネル内の電流の均一性が改善され、さらに、電流密度レベルは概して高くなる(例えば、
図3A(ii)と
図3B(ii)の中央領域の電流密度レベルを比較)。これらの形態を比較は、電極の極などの電極形状を変化させることにより、マイクロチャネル内の電流分布にどのような影響を与えるかを示す。シミュレーションは、COMSOL Multiphysics 5.4 with the AC/DC Module(COMSOL,Inc.,Burlington,MA,USA)を使用して実行された。マイクロチャネル内の媒質の特性は、凝固していない血液に近似していた(導電率:0.703S/m、比誘電率:5120)。励磁電圧はいずれの場合も2つの電極間で0.6V ACであった。
【0050】
実施例3:
図4A-4Bに示されるように、2つのマイクロチャネル-電極形態について、シミュレーションした電流密度を比較した。
図4Aはインターデジット形態を示しており、
図4Bは2電極形態を示している。シミュレーションは、COMSOL Multiphysics 5.4 with the AC/DC Module(COMSOL,Inc.,Burlington,MA,USA)を使用して実行された。マイクロチャネル内の媒質の特性は、凝固していない血液に近似していた(導電率:0.703S/m、比誘電率:5120)。励起電圧は、
図4A(インターデジット形態)の2つの外側電極と中間電極との間と、
図4B(2電極形態)の2つの電極の間では、0.6V ACであった。
図4A(iii)及び
図4B(iii)の概略図は、より均一な電流分布が血栓検出をいかに改善するかを示している。
図4A(iii)では、青色領域(電流密度の低い領域)の血栓(白い円の集合体で表される)は検出されにくく、この形態で血栓を検出するには、血栓は、より高い電流の緑色領域と重なるのに十分な大きさでなければならず、したがって、血栓検出は、マイクロチャネル内の血栓の位置と血栓の大きさとに依存する。対照的に、
図4B(iii)のより均一な電流分布は、検出が血栓形成の位置にあまり依存しないので、マイクロチャネル内の血栓形成を早期に上手く検出する可能性を増大させる。
【0051】
実施例4:電気インピーダンスの変化に基づく血栓形成を検出する能力について、6つの形態が評価された。その形態は、
図5に示されており、表1に記載されている。各形態で使用された電極は金メッキ電極であった。各電極には、電極の一方の極(端)に位置する円形のビア(外部電子機器とのインターフェースとなる回路基板の他方側への接続部)が1つ含まれていた。円形ビアは、電極内の円形領域又はバルブにより囲まれている。
図5の形態1、2、3、6を参照して、特定の形態では、電極の他方端で円形形状が模倣された。両方の電極端に円形形状を有する電極を使用することによって、対称的な電流分布が促進されるが、一方端にのみ円形形状を有する電極を使用することは、円形形状がない端に向かってより冷たいスポット(コールドスポット)が生じる可能性があり、これは電極のその部分が円形形状を有する電極端よりも対向する電極から離れているためである。
【0052】
インピーダンスの傾きがマイナスからプラスに変化したときに血栓が検出される。表1では、傾きのこの変化に対応する時間が“血栓検出時間”として提供されている。架橋フィブリン血栓が形成され続けると、電気インピーダンスはピークに達するまで増大する。
図5のグラフは、電極の形状及び配置とマイクロチャネルの形状とが、いかにして、電極が電気インピーダンスの変化を感知して血栓形成を検出するのにどの程度影響するかを示している。全ての形態で血栓の検出に成功したが、マイクロチャネル-電極システムの感度の指標である血栓検出時間は形態によって異なる。例えば、形態2(
図5B)は300秒で血栓を検出するが、形態3(
図5C)は約480秒まで血栓を検出しない。追加のパラメータは血栓が形成されるときに生じるインピーダンスの変化であり、インピーダンスの傾きがマイナスからプラスに変化したときから開始するインピーダンスの増加が大きいほど、血栓検出がより高感度になり、これは凝固に伴う細胞膜のキャパシタンスの変化に対する感度が高まり、検出能力が向上したためである可能性がある。例えば、形態1(
図5A)は、200オーム超のインピーダンス変化を有する強い血栓検出信号を呈したが、形態6(
図5F)は、100オーム未満のインピーダンス変化を有する比較的貧弱な血栓信号を呈した。形態2(
図5B)も高感度の血栓検出を呈した。
【0053】
実施例5:
図6A-6Bに示されるように、電流分布に対するチャネル高さの影響を評価するため、2電極形態で電流発生のシミュレーションを行った。シミュレーションは、COMSOL Multiphysics 5.4 with the AC/DC Module(COMSOL,Inc.,Burlington,MA,USA)を使用して実行された。マイクロチャネル内の媒質の特性は、凝固していない血液に近似していた(導電率:0.703S/m、比誘電率:5120)。励起電圧は、周波数10kHzにおいて2つの電極間で0.6V ACであった。100μmから2400μmまで(100、200、300、400、600、800、1200、1600、2400μm)の異なる高さにわたるマイクロチャネルについて、指示面(
図6A(iii)参照)に沿った媒体中の電流密度(A/m
2)をプロットした。他の全てのチャネル寸法は一定に保たれ、
図6A(ii)に示されている(長さ=6mm、端部=4mm、幅=5mm、電極間隔=4.5mm)。電極の高さは35μmだった。電極間隔(4.5mm)は、丸い端部を除いた電極の直線部分の間隔である。
図6Bは、マイクロチャネル高さが100μm、400μm、1,200μm、1,600μm、及び2,400μmの場合の電流密度のプロットである。マイクロチャネル高さが高くなるにつれて、電流分布は均一でなくなる。マイクロチャネル高さが高くなると、電流は広がるためのより大きな容積が与えられ、電極から遠くなるほど電流密度が低下し、全体として電流密度の均一性が低下する。
【0054】
さらに、シミュレーションには100Hzから1MHzの範囲の励起周波数が使用された。周波数を変化させることは電流分布への無視できる影響を呈し、このモデルでは電極間のインピーダンスが主に抵抗性であることを示している。
図6Bでは、全ての場合について10kHzの周波数が示されている。
【0055】
2つの電極を持つマイクロチャネルの形態例
【表1】
【0056】
【0057】
明示的に特定されない限り、寸法の比の値など、本明細書に記載された数値範囲及び値は、数値範囲または値とともに「約」という用語が明示的に表示されなくても、「約」という語によって前置きされているものとして読んでもよい。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みではないが、各数値は、報告された有効数字の桁数を考慮し、通常の四捨五入技術を適用して解釈されるべきである。さらに、数値範囲が本明細書で規定されている場合、これらの範囲は、言及されている範囲の端点を含む(例えば、端点が使用されてもよい)。
【0058】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、その形態および詳細において様々な変更がなされ得ることは、当業者には本開示に照らして理解されるであろう。
【国際調査報告】