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特表2024-523757多発性骨髄腫を含む形質細胞障害をワクチン組成物及び骨髄腫特異的CAR-T細胞により治療する組成物及び方法
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  • 特表-多発性骨髄腫を含む形質細胞障害をワクチン組成物及び骨髄腫特異的CAR-T細胞により治療する組成物及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】多発性骨髄腫を含む形質細胞障害をワクチン組成物及び骨髄腫特異的CAR-T細胞により治療する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240621BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P37/04
A61P37/02
A61K39/00 H
A61K31/454
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523380
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 US2022035097
(87)【国際公開番号】W WO2023278310
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/215,708
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523489052
【氏名又は名称】メリディアン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ボレロ アイヴァン エム
(72)【発明者】
【氏名】アールストロム ジェニファー マイヤーズ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BB01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB07
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZB07
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
(57)【要約】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞組成物並びに3種の細胞株、U266、H929、及びK562で構成されるワクチン組成物を記載する。多発性骨髄腫及び関連する障害を含む形質細胞障害に対して免疫する方法においてワクチン組成物をMM特異的CAR+T細胞組成物と併せて使用するための方法を記載する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含む、対象における形質細胞障害に対する免疫応答の惹起における使用のための組成物。
【請求項2】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞が、BCMA特異的CAR+T細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞が、GDRC5D特異的CAR+T細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
同種異系である、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記対象に投与された場合に対象において免疫応答を誘導する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
免疫応答により対象において前記形質細胞障害の完全寛解が誘導される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記対象において無増悪生存を延長する、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記完全寛解がMスパイク検出不能及び免疫固定電気泳動陰性として判定される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
対象がヒトである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、対象において形質細胞障害を治療する方法。
【請求項11】
前記投与する工程が、免疫調節薬を前記対象に投与する工程をも含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫調節薬がレナリドミドである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記投与する工程の前、間、及び/又は後に前記免疫調節薬を前記対象に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ワクチン組成物が同種異系である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
K562細胞がGM-CSF遺伝子を発現する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
K562細胞が、GM-CSFをコードする遺伝子をトランスフェクトされている、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
GM-CSF遺伝子が、最大約1500ng/1×106細胞/24時間の量のGM-CSFを発現可能である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
発現するGM-CSFの量が、約35~1200ng/1×106細胞/24時間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
平均で24時間毎にGM-CSFの量が産生される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
GM-CSFがヒトに由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
U266及びH929細胞の組合せ対K562細胞の比率が、約20:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記ワクチン組成物の用量が、前記対象中の腫瘍細胞対前記組成物中のK562細胞の比率が2:1を超えるような用量である、請求項10に記載の方法。
【請求項23】
U266及びH929細胞が前記ワクチン組成物中に等量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記U266及びH929細胞が約5×107細胞の量で前記ワクチン組成物中に存在し、K562細胞が約5×106細胞の量で前記ワクチン組成物中に存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項25】
前記対象において完全寛解に近い寛解又は完全寛解が達成される、請求項10に記載の方法。
【請求項26】
前記対象において最大5年間、前記完全寛解に近い寛解又は完全寛解が持続する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
モノクローナルスパイク検出不能及び免疫固定電気泳動陰性を測定することにより前記完全寛解が判定される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が微小残存病変に対して陽性である、請求項10に記載の方法。
【請求項29】
前記ワクチン組成物が対象において非特異的免疫応答を最小化する、請求項10に記載の方法。
【請求項30】
ワクチン組成物をCAR+T細胞組成物の前に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項31】
CAR+T細胞組成物をワクチン組成物の前に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項32】
ワクチン組成物を、その後にCAR+T細胞組成物を、その後に2回目の用量のワクチン組成物を投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項33】
各投与間が1日を超える間隔で、1~5回用量の前記ワクチン組成物を前記対象に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項34】
各投与間が2週間を超える間隔で、2~4回用量のワクチン組成物を投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
各投与間が4週間を超える、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
各投与間が約1カ月の間隔で4回用量を投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
最初の3回の投与が等間隔である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
全ての用量を互いに対して1年以内に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
レナリドミドコースの開始から7~18日目及びこれらを含む日数の間に、少なくとも1回用量のワクチン組成物を投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項40】
レナリドミドコースの開始から約15日目に少なくとも1回用量を投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項41】
前記形質細胞障害が、MGUS、SMM、多発性骨髄腫、非分泌性多発性骨髄腫、無痛性骨髄腫、軽鎖型骨髄腫、形質細胞白血病、及び原発性アミロイドーシスからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項42】
前記形質細胞障害が多発性骨髄腫である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、多発性骨髄腫を有する対象において無増悪生存を延長する方法。
【請求項44】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、多発性骨髄腫を有する対象においてクローンT細胞の増殖及び骨髄腫特異的サイトカイン応答の上昇を誘導する方法。
【請求項45】
前記対象における前記上昇が前記投与する工程の後最大7年間持続する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象における前記上昇が前記投与する工程の後最大5年間持続する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、対象において多発性骨髄腫特異的免疫を誘導する方法。
【請求項48】
前記対象が、前記投与する工程の時点で微小残存病変に対して陽性である、請求項10に記載の方法。
【請求項49】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、対象において多発性骨髄腫の再発を予防する方法。
【請求項50】
対象が、前記投与する工程の時点で微小残存病変に対して陽性である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
対象がヒトである、請求項10に記載の方法。
【請求項52】
多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞が、BCMA特異的CAR+T細胞及び/又はGPRC5D特異的CAR+T細胞である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多発性骨髄腫(MM)を含む形質細胞障害に対するワクチン接種及びMM特異的キメラ抗原受容体T細胞との併用療法を使用するその治療に有用な組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毒性が低く腫瘍特異性が高い新規の治療剤の出現により、多発性骨髄腫(MM)を有する患者の臨床アウトカムが顕著に向上した。詳細には、プロテアソーム阻害物質、免疫調節性薬物(IMiD)、及びステロイドによる3剤併用により、奏効率の向上及びさらに長期持続性の寛解がもたらされる(Attal et al.; N. Engl. J. Med. (2017) 376:1311-20;Durie et al.; Lancet (2017) 389:519-27)。これは、無増悪生存(PFS)及び全生存(OS)の向上につながる(Richardson et al.; Hematology (2014) 255-61)。
しかし、顕著な割合の患者が、このような薬剤に対して最終的に耐性が生じて再発する。このような奏効を深め延長することを目標とする手法には、地固めレジメンを有するか又は有しない長期維持療法が含まれる。特には、移植及び非移植の両状況におけるレナリドミド(Len)維持では、このような手法の顕著な臨床的利点がみられた(McCarthy et al.; J Clin Oncol (2017) 35:3279-89)。
MMに対するさらに有用な治療の導入により、臨床アウトカムにおける全体的向上の大半が、さらに深い奏効を達成する能力による可能性を有する。実際、フローサイトメトリー又は次世代シーケンシングのいずれかによる微小残存病変(MRD)評価により、現在わずか100万に1つの細胞を検出することができる(ClonoSEQ Cleared for Residual Cancer Testing. Cancer Discov (2018) 8:OF6- OF6)。
【0003】
増え続ける文献により、奏効の深さと臨床アウトカムの向上との強力な相関関係が示され、MRD陰性が、潜在的に承認可能な臨床試験エンドポイントであると現在判断されるほどである(Perrot et al.; Blood (2018) 132:2456-64)。しかし、MRD陽性MM患者の管理のための決定的臨床ガイダンス及び安全な治療選択は、当技術分野において切望されている。
免疫療法では、がん細胞を特異的に認識して除去する免疫系の能力を開拓している。実際、免疫チェックポイント遮断(Hargadon et al.; Int. Immunopharmacol. (2018) 62:29-39)及びキメラ抗原受容体を有する遺伝子改変T細胞(CAR-T)(Raje et al.; N. Engl. J. Med. (2019) 380:1726-37)では、血液系悪性腫瘍、及びさらに制限すれば、固形腫瘍における臨床的有効性とが実証された。反対に、現在までのがんワクチンでは、同様の利点は示していなかった(Hu et al.; Nat. Rev. Immunol. (2018) 18:168-82)。
【0004】
キメラ抗原受容体T細胞療法は、白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫を含む血液がんに対して有力な治療と判断される。B細胞成熟抗原(BCMA)は、悪性及び正常の形質細胞が第1に発現するタンパク質の腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバーである。通常、毛包において発現するGタンパク質共役受容体、群6のメンバーDは、MM患者由来の骨髄穿刺液中でmRNAが発現すると同定されており、BCMAとは類似の分布であるが、独立的にCD138+細胞上に発現する(Smith et al., Sci Transl. Med. 11:485 (2019))。
増殖性のワクチン特異的免疫応答の生成は、腫瘍関連抗原、有効なアジュバント及び併用する免疫刺激療法の多様性及び存在量に依存する。確立されている細胞株K562は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を産生するように遺伝子修飾する。これは、効率的抗原提示を向上させることがわかっている鍵となる免疫刺激因子である(Borrello et al.; Hum. Gene Ther. (1999) 10:1983-91;Borrello et al.; Cytokine Growth Factor Rev. (2002) 13:185-93)。
【0005】
不十分な腫瘍抗原選択、ワクチンアジュバントの選択及び併用する免疫調節療法の非存在のようないくつかの因子が臨床的有効性欠如の原因となり得るが、疾患による負担は、臨床アウトカムに対して重要な影響を与える可能性を有する。ワクチン特異的な細胞性及び液性免疫を増大させるレナリドミドの能力が実証されているが(Noonan et al.; Clin. Cancer Res. (2012) 18:1426-34)、MRD陽性多発性骨髄腫では、疾患による負担が非常に少ないことを意味するが、レナリドミドと併用する多発性骨髄腫ワクチン接種は、さらなる毒性もなく治療有効性を増強する有力な治療的手法であることがわかっていなかった。MRD陽性MM及び他の形質細胞障害の治療のための有効な療法は現在不足しており、このますます増加する患者集団の管理に対する共通認識も存在していない。本明細書では、治療が成功している、微小疾患による負担を有する患者においてMM特異的ワクチンをMM特異的CAR-T細胞組成物と併せて使用して、疾患奏効を向上させるだけでなく疾患増悪を予防する治療レジメンを記載する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、有効量の多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含む、対象における形質細胞障害に対する免疫応答の惹起における使用のための組成物を提供する。
本発明の別の態様によれば、多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞が、BCMA特異的CAR+T細胞又はGPRC5D特異的CAR+T細胞である、上記の組成物を提供する。
本発明の別の態様によれば、同種異系である、上記の組成物を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記対象に投与された場合に対象において免疫応答を誘導する、上記の組成物を提供する。
本発明の別の態様によれば、免疫応答により対象において前記形質細胞障害の完全寛解が誘導される、上記の組成物を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記対象において無増悪生存を延長する、上記の組成物を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記完全寛解がMスパイク検出不能及び免疫固定電気泳動陽性として判定される、上記の組成物を提供する。
本発明の別の態様によれば、対象がヒトである、上記の組成物を提供する。
本発明の別の態様によれば、多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、対象において形質細胞障害を治療する方法を提供する。
【0007】
本発明の別の態様によれば、前記投与する工程が、免疫調節薬を前記対象に与える工程をも含む、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記免疫調節薬がレナリドミド(lenolidimide)である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記投与する工程の前、間、及び/又は後に前記免疫調節薬を前記対象に与える、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、ワクチン組成物が同種異系である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、K562細胞がGM-CSF遺伝子を発現する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、K562細胞が、GM-CSFをコードする遺伝子をトランスフェクトされている、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、GM-CSF遺伝子が、最大約1500ng/1×106細胞の量のGM-CSFを発現可能である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、GM-CSF遺伝子が、約35~1200ng/1×106細胞の量のGM-CSFを発現可能である、上記の方法を提供する。
【0008】
本発明の別の態様によれば、平均で24時間毎にGM-CSFの量が産生される、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、GM-CSFがヒトに由来する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、U266及びH929細胞の組合せ対K562細胞の比率が、約20:1である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記組成物の用量が、前記対象中の腫瘍細胞対前記ワクチン組成物中のK562細胞の比率が2:1を超えるような用量である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、U266及びH929細胞が、前記ワクチン組成物中に等量で存在する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記U266及びH929細胞が約5×107細胞の量で前記ワクチン組成物中に存在し、K562細胞が約5×106細胞の量で前記組成物中に存在する、上記の方法を提供する。
【0009】
本発明の別の態様によれば、前記対象において完全寛解に近い寛解又は完全寛解が達成される、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記対象において最大5年間、前記完全寛解が持続する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、モノクローナルスパイク検出不能及び免疫固定電気泳動陰性を測定することにより前記完全寛解が判定される、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記対象が微小残存病変に対して陽性である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記組成物が対象において非特異的免疫応答を最小化する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、ワクチン組成物をCAR+T細胞組成物の前に投与する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、CAR+T細胞組成物をワクチン組成物の前に投与する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、ワクチン組成物を、その後にCAR+T細胞組成物を、その後に2回目の用量のワクチン組成物を投与する、上記の方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様によれば、各投与間が1日を超える間隔で、1~5回用量の前記ワクチン組成物を前記対象に投与する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、各投与間が2週間を超える間隔で、2~4回用量のワクチン組成物を投与する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、各投与間が4週間を超える間隔で、2~4回用量のワクチン組成物を投与する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、各投与間が約1カ月の間隔で4回用量を投与する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、最初の3回の投与が等間隔である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、全ての用量を互いに対して1年以内に投与する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、レナリドミドコースの開始から7~18日目及びこれらを含む日数の間に、少なくとも1回用量のワクチン組成物を投与する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、レナリドミドコースの開始から約15日目に少なくとも1回用量を投与する、上記の方法を提供する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、前記形質細胞障害が、MGUS、SMM、多発性骨髄腫、非分泌性多発性骨髄腫、無痛性骨髄腫、軽鎖型骨髄腫、形質細胞白血病、及び原発性アミロイドーシスからなる群から選択される、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記形質細胞障害が多発性骨髄腫である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、多発性骨髄腫を有する対象において無増悪生存を延長する方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、多発性骨髄腫を有する対象においてクローンT細胞の増殖及び骨髄腫特異的サイトカイン応答の上昇を誘導する方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、前記対象における前記上昇が前記投与する工程の後最大7年間持続する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記対象における前記上昇が前記投与する工程の後最大5年間持続する、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、対象において多発性骨髄腫特異的免疫を誘導する方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、前記対象が、前記投与する工程の時点で微小残存病変に対して陽性である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞を含むCAR+T細胞組成物並びにU266、H929、及びK562細胞を含むワクチン組成物を対象に投与する工程を含む、対象において多発性骨髄腫の再発を予防する方法を提供する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、対象が、前記投与する工程の時点で微小残存病変に対して陽性である、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、対象がヒトである、上記の方法を提供する。
本発明の別の態様によれば、多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞が、GPRC5D多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞及び/又はBCMA特異的CAR+T細胞である、上記の方法を提供する。
本発明のさらに他の対象、特徴、及び付随する利点は、添付の図面と併せて、それに従って作成した次の実施形態の詳細な説明を読解することにより当業者に明らかとなるであろう。
ここで、本出願の発明は、単なる例として示す組成物及び方法の例となる実施形態、並びに添付の図面を参照して、さらに詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】臨床試験の模式図である。患者には、Lenを維持しながら指示時点(矢印)でワクチンを4回投与した。「*」は、免疫監視時点を示す。
図2】C3D14において増殖させ経時的に追跡した、全ての患者の血液及び骨髄中のT細胞クローンの出現頻度を示す図である。
図3】患者2名の代表的な対による散布図であり、ワクチン接種後の既存のT細胞クローンのクローン増殖並びにPB又はBMのいずれかにおいてそれまでには存在しなかった新規クローン型の漸増を示す。
図4】PB及びBM中の増殖T細胞クローンの出現頻度における倍率変化を比較する代表的な対による散布図である。
図5】森下指数における変化を表すデータを示す図である。これは、ワクチン接種の前、間(C3D14)、及び後のBM及びPBのT細胞レパートリー間の類似性の程度を定量する。TCR=T細胞受容体。
図6】CD8+及びCD4+の両T細胞区画におけるワクチン接種の前、間(C3D14)、及び後のIFNγ及びTNFα産生を示す代表的プロットを示す図である。
図7】サイトカイン産生がワクチン接種後に全ての患者において上昇し、4年を超える間維持されたことを示す図である(CD8+及びCD4+の両区画についてp<0.0001)。
図8】複数の患者及び時点にわたる個々の各クラスターの出現頻度を示すボックスプロットを示す図である。
図9】ワクチン接種後に増殖させ、PB及びBMの両方においてMM-GVAX投与後最大7年追跡したT細胞クローンを示す図である。
図10】指示する長期追跡時点におけるワクチン接種患者由来BMのインビトロでの抗原刺激時のIFNγ及びTNFα産生を示す代表的プロットを示す図である。*,p<0.05;**,p<0.01;***,p<0.001;****,p<0.0001。
図11】CD69+T細胞の出現頻度が、CD8+サブセットにおいて有意に高くなることを示す図である(p<0.001)。
図12】CD69+BM T細胞の古典的表現型を示す代表的ドットプロット及びヒストグラムを示す図である。
図13】CD69+(赤)及びCD69-(明るい青)のBM T細胞上での種々のマーカーの発現を表す代表的ヒストグラムを示す図である。*,p<0.05;**,p<0.01;***,p<0.001;****,p<0.0001。
図14】2群(再発及び奏効者)におけるFlowSOMメタクラスター8種の相対的存在量を表すボックスプロットを示す図である。
図15】DNAM1-/lowCD27-CD8+T細胞(左)の手動ゲーティング解析を示す代表的ドットプロット及び両群におけるこのCD8+T細胞サブセットの出現頻度の要約を示す図である。*,p<0.05;**,p<0.01;***,p<0.001;****,p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0015】
同種異系全細胞GM-CSF分泌多発性骨髄腫(MM)ワクチン(MM-GVAX)、並びにこのワクチンを、「Len」とも呼び得るレナリドミド、及びMM特異的CAR+T細胞と併用して、モノクローナルスパイク検出不能であるが、免疫固定電気泳動(IFE)陽性として定義する、微小残存病変による負担を有するMM患者に投与し、残存疾患の根絶及び完全寛解(CR)への転換を実証する方法を本明細書において記載する。ワクチン/Len/CAR併用療法は、モノクローナルスパイクタンパク質が検出可能であるか又は検出不能な他の形質細胞障害に対しても有効である可能性を有する。また、ワクチン及びMM特異的T細胞応答の安全性、応答時間、及び免疫監視を記載する。我々の知るところでは、これは、微小疾患による負担を有する患者をMM特異的CAR+により、MM-GVAXと併用して治療して、疾患の奏効をさらに向上させるだけでなく疾患の増悪を予防しようと試みる最初の記載である。
【0016】
本明細書において使用し、他に指示しない限り、「約」の用語は、修飾する値の±5%を意味することを意図する。従って、「約100」は、95~105を意味する。加えて、「約」の用語は、「約1、2、3、4、又は5」のように、一連の用語において用語を修飾する。「約」の用語は、「約1、2、3、4、又は5」が「約1、約2、約3、約4、又は約5」を意味すると理解され得るように、一覧の各メンバーを修飾することが理解されるはずである。「少なくとも」の用語又は他の数量的修飾語句、例えば、制限されないが、「未満」、「を超える」等により修飾する一覧についても同様である。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈上明白に他に指示しない限り複数参照を含む。
【0017】
本明細書において使用する場合、「comprising(含む)」(並びにcomprisingのあらゆる形態、例えば、「comprise」、「comprises」、及び「comprised」)、「having(有する)」(並びにhavingのあらゆる形態、例えば、「have」及び「has」)、「including(含む)」(並びにincludingのあらゆる形態、例えば、「includes」及び「include」)、又は「containing(含む)」(並びにcontainingのあらゆる形態、例えば、「contains」及び「contain」)の用語は、包括的又は無制限であり、さらなる列挙しない要素又は方法工程を除外しない。
本明細書において使用する場合、「treat」、「treated」、又は「treating」(治療)の用語は、目的が、望まない生理学的症状、障害、若しくは疾患の緩徐化(減少)、又は有利な若しくは所望の臨床結果の獲得である治療的処置の両方を意味する。本明細書に記載の実施形態の目的では、有利な又は所望の臨床結果は、症候の軽減;症状、障害又は疾患の程度の減少;症状、障害又は疾患の状態の安定化(即ち、非悪化);発症の遅延又は症状、障害若しくは疾患増悪の緩徐化;検出可能又は検出不能な、症状、障害若しくは疾患の状態の回復又は寛解(部分的又は完全);患者により必ずしも識別可能ではない、少なくとも1種の測定可能な理学的パラメーターの回復;或いは症状、障害又は疾患の増強又は改善を含むが、これらに制限されない。従って、「がんの治療」若しくは「がん治療」又は「多発性骨髄腫」の治療若しくは「多発性骨髄腫」治療又は「形質細胞障害の治療」若しくは「形質細胞障害治療」は、原発性の事象又は続発性の症候又はがん、多発性骨髄腫、若しくは本明細書に記載の他のあらゆる症状と関連する症状のいずれかを軽減又は回復させる活性を意味する。一部の実施形態では、治療するがんは、本明細書に列挙するがんのうちの1種である。一実施形態では、がんは多発性骨髄腫である。
【0018】
本明細書において使用する場合、「対象」の用語は、「患者」の用語と互換的に使用することができる。対象は、例えば、イヌ、ネコ、サル、ウマ、又はウシのような哺乳動物であり得る。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は、血液がんと診断されている。一部の実施形態では、対象は、多発性骨髄腫と診断されている。一部の実施形態では、対象は、多発性骨髄腫を有するものと疑われる。
本明細書において使用する場合、細胞表面受容体、例えば、制限されないが、CD3、CD4、及びCD8に言及する場合の「発現する」の用語は、それらのマーカーに対して陽性の細胞をも指し得る。例えば、CD3を発現する細胞は、CD3陽性(CD3+)細胞をも指し得る。
本明細書において使用する場合、「発現する」の用語は、染色体DNAの一部として細胞内に又は他の一部のベクター上に位置する遺伝子をも指し得る。遺伝子がコードするタンパク質を産生するように誘導される場合、細胞は、遺伝子を「発現する」。産生されるタンパク質は、細胞に内包されるか又は細胞外に輸送され得る。
【0019】
本明細書において使用する場合、「ワクチン」の用語は、対象の免疫系を刺激して特定の疾患又は症状に対する免疫をもたらし、これにより、その疾患又は症状から対象を防御する産物又は組成物を指す。ワクチンは、組成物の一部であってもよく、組成物は、制限されないが、アジュバントを含む他の成分を含んでも含まなくてもよい。
本明細書において使用する場合、「アジュバント」の用語は、主要成分、例えば、ワクチンの作用を修飾する成分を指す。アジュバントは、ワクチン組成物において使用する場合、ワクチン組成物を投与する対象において、さらに強力な免疫応答を生じさせるのに役立ち得る。
「がん」の用語は、本明細書において使用する場合、異常細胞の急速かつ制御不能な増殖により特徴づけられる疾患として定義する。がん細胞は、局所的に又は血流若しくはリンパ系を通じて体の他の部位に広がり得る。
【0020】
「多発性骨髄腫」の用語は、本明細書において使用する場合、白血球細胞に生じるがんとして定義する。一部の実施形態では、白血球細胞は、骨髄中の白血球細胞である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、形質細胞に生じる。
「形質細胞障害」の用語は、本明細書において使用する場合、「Mタンパク質」若しくは「Mスパイク」とも呼ばれるモノクローナル免疫グロブリンタンパク質の血清レベルの上昇、又は骨髄形質細胞の血清レベルの上昇により特徴づけられる障害として定義する。
「抗原」の用語は、本明細書において使用する場合、免疫応答を誘発する分子として定義する。免疫応答は、抗体の産生若しくは特定の免疫適格細胞の活性化のいずれか、又はこの両方を含み得る。当業者は、実質的全てのタンパク質又はペプチドを含むあらゆる高分子が、抗原として作用し得ることを理解するであろう。その上、抗原は、組換え又はゲノムDNAに由来し得る。当業者は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列又はヌクレオチド配列の部分を含むあらゆるDNAが、この用語を本明細書において使用する場合、免疫応答を誘発し、これにより「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに当業者は、抗原が、遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によりもっぱらコードされる必要を有しないことを理解するであろう。実施形態は、2種以上の遺伝子のヌクレオチド配列の部分の使用を含むが、これらに制限されず、その上、このようなヌクレオチド配列を、所望の免疫応答を誘発するように種々の組合せで構成することは、容易に明らかである。その上、当業者は、抗原が「遺伝子」によりコードされる必要を全く有しないことを理解するであろう。抗原を合成し得るか又は生体試料から得得ることは、容易に明らかである。このような生体試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞又は生体液を含み得るが、これらに制限されない。
【0021】
「抗腫瘍作用」の用語は、本明細書において使用する場合、腫瘍量の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の延長、又はがんの症状と関連する種々の生理学的症候の回復により現れ得る生物学的作用を指す。「抗腫瘍作用」は、腫瘍の原発を予防するペプチド、ポリヌクレオチド、細胞及び抗体の能力によっても現れ得る。
本明細書において使用する場合、「自己」の用語は、その個体に後に再導入する、同一の個体に由来するあらゆる物質を指すことを意図する。
「キメラ抗原受容体」又は「CAR」の用語は、本明細書において使用する場合、所望の抗原に対する抗体ベースの特異性を、細胞内ドメインを活性化するT細胞受容体と複合させて、特異的抗腫瘍細胞性免疫活性を示すキメラタンパク質を産生させる分子として定義する。
【0022】
「B細胞成熟抗原」又は「BCMA」の用語は、腫瘍壊死因子(「TNF」)受容体スーパーファミリーのメンバーであり、TNF受容体スーパーファミリーメンバー17、又は「TNFRSF17」とも呼ばれるタンパク質を指す。TNFRSF17は、B細胞活性化因子を認識する細胞表面受容体である。成熟Bリンパ球において優先的に発現することがわかっており、B細胞の発生及び自己免疫応答、並びに細胞の生存及び増殖に重要であり得る。
「Gタンパク質共役受容体5D」又は「GPRC5D」の用語は、通常、毛包において発現するが、多発性骨髄腫を有する患者の骨髄において発現することが見出されている、オーファンGタンパク質受容体を指す。
「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書において互換的に使用し、特定の生物学的結果を達成するのに有効な本明細書に記載の化合物、製剤、物質、又は組成物の量を指す。このような結果は、当技術分野において適するあらゆる手段により決定した場合のがん細胞増殖の阻害を含み得るが、これらに制限されない。
【0023】
本明細書において使用する場合、GM-CSFは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を指し、これは、がん治療において使用することが多い公知のタンパク質である。文献における「Leukine」とも呼ばれるGM-CSFによる最初の研究では、用量強化化学療法と関連する造血毒性を低下させるために、マクロファージ及び好中球の増殖刺激を含んだ。GM-CSF遺伝子により、腫瘍細胞内にトランスフェクトし、ワクチンとして投与する場合、動物モデル及び早期臨床試験の両方において腫瘍の退縮及び生存の延長が実証された(Nemunaitis, Expert Rev Vaccines; 2005; 4(3): 259-74)。
本明細書において使用する場合、「GVAX」の用語は、免疫刺激サイトカインGM-CSFを分泌するように遺伝子修飾した全腫瘍細胞で構成されるがんワクチンを指す。1種又は複数の細胞型をGVAXワクチンに含み得る。一例は、MM-GVAX、又は多発性骨髄腫の治療のための全細胞で構成されるがんワクチンである。
本明細書において使用する場合、「免疫調節薬」の用語は、「IMiD」とも呼び、血清抗体の産生を上昇又は低下させることにより免疫系の応答を修飾する薬物を指し得る。免疫刺激因子は、感染性疾患、腫瘍、及び原発性又は続発性の免疫不全に対する免疫応答を増強し得る。免疫抑制薬は、移植器官に対する免疫応答を低下させ、自己免疫疾患を治療するために使用する。
【0024】
本明細書において使用する場合、レブラミド(Revlimid)の商標によっても知られる「レナリドミド」の用語は、多発性骨髄腫及び骨髄異形成症候群(MDS)を治療するために使用する免疫調節薬を指す。これは、単独で又は制限されないが、デキサメタゾンを含むステロイドとともに投与し得る。
本明細書において使用する場合、「微小残存病変」又は「MRD」の用語は、治療後、体内に残っている少数のがん細胞を指す。残っている細胞数は非常に少数であって、いかなる理学的兆候又は症候をも生じず、従来の方法、例えば、顕微鏡下での細胞の観察及び/又は血中の異常血清タンパク質の追跡により検出することも不可能であることが多いほどであり得る。MRDの陽性検査結果は、残存(残余)疾患が検出されたことを意味する。陰性結果は、残存疾患が検出されなかったことを意味する。本明細書に記載のように、MRDは、治療の有効性を測定し、再発リスクを有する患者を予測するために使用する。患者がMRDに対して陽性であると検査される場合、治療後、体内に残存がん細胞がなお存在することを意味する。MRDが検出される場合、「MRD陽性」として知られる。患者が陰性であると検査される場合、残存がん細胞は見出されなかったことを意味する。MRDが検出されない場合、「MRD陰性」として知られる。
【0025】
また、本明細書に記載のワクチン組成物及びCAR+T細胞の投与候補である対象は、制限されないが、サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミドを含む免疫調節薬、並びに制限されないが、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブを含むプロテアソーム阻害物質を投与したか又は現在投与していてもよい。本明細書に記載のワクチン組成物の投与候補である対象は、形質細胞障害を有し得る。形質細胞障害を有する対象は、Mスパイクタンパク質、又は「Mスパイク」の血清レベルが上昇し得るが、これが常に当てはまるとは限らず、このような対象は、診断時に血清中の特定量の骨髄形質細胞の存在により同定することもできる。形質細胞障害を有する対象は、意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症(「MGUS」);くすぶり型骨髄腫(「SMM」)、非分泌性多発性骨髄腫、無痛性骨髄腫、及び軽鎖型骨髄腫を含む多発性骨髄腫(「MM」);基底細胞白血病を含む形質細胞白血病;並びに原発性アミロイドーシスと診断される対象を含むが、これらに制限されない。
次世代シーケンシング(NGS)技術並びにフローサイトメトリーにより、MMを有する患者における「微小残存病変」(MRD)による負担の定量が可能となった。MRD陰性は、MMの主要な予後因子であり、現在さらに達成可能であるため、試験並びに治療の測定可能なエンドポイントとなってきている。しかし、完全寛解(CR)状態にあるが、なおMRD陽性であるMM患者の最適な治療方法のガイダンスは、現在欠如している。本明細書に記載のワクチン組成物は、微小残存病変による負担を根絶するMM形質細胞に対する特異的免疫応答をもたらし、これにより臨床的に有意義なアウトカムへと転換することができる。
【0026】
本明細書に記載の同種異系GM-CSF産生MMワクチン(MM-GVAX)は、3種以上の別個の細胞株を含んでもよく、細胞株受託所、例えば、ATCC(Manassas,VA;ATCC.org)からともに公的に入手可能な公知の異種MM細胞株H929及びU266、並びにやはり公的に入手可能なK562細胞を含むが、これらに制限されない。K562細胞株は、発現可能な立体配置のGM-CSFをコードする遺伝子をトランスフェクトする又はそれで形質転換することができる。使用可能な発現構築物は、GM-CSFコード配列に作動可能に連結する、宿主細胞において最適な発現が可能となるような典型的な公知の成分、例えば、プロモーター、オペレーター、複製起点等を含むものを含む。
【0027】
ワクチン組成物中の各細胞株の細胞量は制限されず、互いに対して等しいか又は不等な各細胞株量であり得る。H929及びU266の比率は、1:1であり得るが、この比率に制限されず、不等量でも存在し得る。H929/U266混合細胞対K562/GM-CSFの量の比率は、K562/GM-CSFに対して約40:1であり得るか、又は約35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、若しくは10:1であり得る。一実施形態では、約20:1の比率である。細胞株の比率にかかわらず、一実施形態では、約50~1500ng/1×106細胞/24時間のGM-CSFが存在する。
ワクチンに存在する細胞の絶対量は、H929及びU266細胞のそれぞれについて約1×107~約1×109細胞であってもよく、1、5、10、50、又は100×107細胞間の全ての量を含む。ある実施形態は、組成物が、H929及びU266細胞のそれぞれが5×107細胞の等量である場合を含む。K562/GM-CSF細胞は、約1×104~約1×107細胞の量で存在してもよく、1、5、10、50、又は100×107細胞間の全ての量を含む。ある実施形態は、組成物が、1×106のK562/GF-CSF細胞の量である場合を含む。
【0028】
ワクチン組成物は、3種以上の細胞株以外の成分を含んでもよく、他の細胞株、アジュバント、例えば、アルミニウム、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウムカリウム;スクアレン油、例えば、MF59;保存剤、例えば、チオメルサール又はチメロサール;安定剤、例えば、ゼラチン、ソルビトール、スクロース、ラクトース、マンニトール、グリセロール、199培地、塩酸アルギニン、グルタミン酸ナトリウム、及び尿素;並びに乳化剤、例えば、ポリソルベート(polyforbate)80、トリオレイン酸ソルビタン、及びクエン酸ナトリウムを含むが、これらに制限されない。ワクチン製造に一般に使用する他の成分が存在してもよく、抗生物質、オボアルブミン、酵母タンパク質、ラテックス、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド;並びに調節物質、例えば、酸性度調節物質、例えば、ナトリウム及び/又はカリウムベースの塩、アジピン酸二ナトリウム、コハク酸、水酸化ナトリウム、ヒスチジン、ホウ酸ナトリウム、トロメタモール、並びにヒト血清アルブミンを含み得る。このような成分は、ワクチン製剤に典型的な量で含んでもよく、成分の存在がワクチンの有効性に負に作用しない限り、典型的には非常に少量であるが、あらゆる量であり得る。ヒト血清アルブミンは、0~10%で典型的に使用する。
CARは、抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質細胞シグナル伝達ドメインを有する細胞外ドメインを含む。一部の実施形態では、CARのドメインのうちの1種と天然に結合する膜貫通ドメインを使用する。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、アミノ酸の置換により選択又は修飾して、このようなドメインが同一又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへ結合することを回避し、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化することができる。例えば、膜貫通ドメインは、CD8αヒンジドメインであり得る。
【0029】
多発性骨髄腫特異的CARは、BCMA、GPRC5D、又は他の多発性骨髄腫特異的抗原に結合する細胞外リガンド結合ドメイン;膜貫通ドメイン;4-1BB同時刺激シグナル伝達ドメイン;及び細胞内CD3ζシグナル伝達ドメインを含み得る。膜貫通ドメインは、CD3ζ、CD4、CD8、又はCD28の膜貫通ドメインであり得る。細胞質ドメインに関しては、例えば、CARは、CD28及び/若しくは4-1BBシグナル伝達ドメインそれ自体を有するように設計するか、又はCARの文脈において有用な他の所望のあらゆる細胞質ドメインと組み合わせることができる。一部の実施形態では、CARの細胞質ドメインは、CD3ζのシグナル伝達ドメインをさらに含むように設計することができる。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ζ、4-1BB、及びCD28シグナル伝達モジュール、並びにこれらの組合せを含み得るが、これらに制限されない。CARは、患者のT細胞において発現し、細胞は、患者への投与のために製剤化する。
【0030】
本明細書に記載のワクチンによる投与のための多発性骨髄腫特異的CAR+組成物は、次のように生成することができる。自己末梢血単核細胞に、抗多発性骨髄腫CARを含むレンチウイルスベクターを形質導入し、CD3及びCD28に対する抗体で刺激し、ある期間、例えば、8~10日にわたって増殖させる(Friedman et al., Hum Gene Ther 2018; 29:585-601を参照)。多発性骨髄腫特異的CARの発現は、当技術分野において公知の方法により確認することができる。組成物は、多発性骨髄腫特異的CAR+T細胞又はMM特異的CAR+T細胞と呼び得る。
対象に投与し得るMM特異的CAR+T細胞組成物の量は、50×106、150×106、450×106、800×106細胞の用量であり、各用量は、プラス又はマイナス20%の分散を有し、この間の全ての用量を含む。MMにおけるCAR+T細胞有効性のさらなる投与情報及び投与結果については、Raje et al. NEJM 2019; 380:1726-37を参照されたい。
本明細書に記載の同種異系GM-CSF産生MMワクチン(MM-GVAX)は、形質細胞障害、例えば、多発性骨髄腫(MM)と診断された対象に投与し得る。候補MM患者は、MRD陽性又は陰性であり得る。候補MM患者は、疾患による負担が少ない可能性を有する。候補MM患者は、安定なCRに近い寛解(nCR)を達成している可能性を有し、これは少なくとも4カ月間の血清又は尿のいずれかにおけるMスパイクの非存在及びIFE陽性として定義される。nCRから真性CRへの転換の割合は53.3%であり、8名の患者が、登録から11.6カ月の平均期間以内に臨床奏効を向上させた。
【0031】
本明細書に記載の同種異系GM-CSF産生MMワクチン(MM-GVAX)及びMM特異的CAR+T細胞組成物は、いくつかの種々の治療レジメンの一部として投与し得る。投与レジメンの一例では、T細胞の採取前にMM-GVAXを投与し、次いで、患者からT細胞を採取する。次いで、これを使用して本明細書に記載のMMスパイクCARを生成し、次いで、MM特異的CAR+T細胞組成物を投与し、最終的に、MM-GVAXの2回目の投与を引き続いて行う。投与レジメンの別の例では、患者からT細胞を採取してMM特異的CARを生成し、MM特異的CAR+T細胞を投与して患者の寛解を達成し、次いで、MM-GVAXを1又は複数回投与して寛解持続期間の長期持続性を高める。CAR+T細胞投与からGVAX投与までの時間は、CAR T細胞の投与後2カ月から最大2年までのあらゆる時点であってもよく、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、及び24カ月並びにこの間の全ての時点を含むが、これらに制限されない。CAR T細胞投与後のMM-GVAXの投与に適格な患者は、MRD-である患者、又はMRD+であるが寛解状態にある患者、又は疾患の安定が検出不能である患者を含む。
【0032】
本明細書に記載のワクチン組成物及びMM特異的CAR+T細胞組成物の投与方法は、特には制限されず、経口経路、皮下経路、筋肉内経路、皮内経路、鼻腔内、又は静脈内経路を含み得る。静脈内経路は、特定の一例である。組成物は、1回、2回、3回、4回、又は5回以上投与することができる。本明細書に記載のワクチン組成物の用量の投与間の時間は制限されず、投与間が1週間から4カ月までのあらゆる時間、例えば、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月、及び各投与間のあらゆる時間であり得る。複数回投与間の時間は、同一でなくてもよい。特定の例では、投与間が1カ月である。投与スケジュールの例では、全てのワクチン用量は、1年、11カ月、10カ月、9カ月、8カ月、7カ月、6カ月、又は5カ月以下、及びこの間の全ての時点を含む期間以内に投与する。CAR T細胞は、ワクチン投与のいずれか間に投与することができるか、又はあらゆるワクチンを投与する前に投与することができる。
【0033】
いくつかの因子により、ワクチン及びMM特異的CAR+T細胞の投与の結果として活性な腫瘍特異的T細胞の生成が影響され、詳細には、適切な抗原の存在、有効な抗原提示、抑制性腫瘍微小環境の阻害及び適切なケモカインの発現の全てにより、腫瘍部位へのT細胞の効率的な輸送が促進される。本明細書に記載のワクチン組成物では、このような鍵となる成分のいくつかを考慮する。
第1に、本明細書に記載のワクチン組成物は、2種の確立された異種MM細胞株であるH929及びU266の存在により腫瘍関連抗原(TAA)の源として作用する。このような細胞株は、高いリスク及びMMの再発と関連することが多い多様なパターンの体細胞変異を呈する。詳細には、H929は、t(4;14)転座及びNRASの変異を内包するが、U266は、BRAF及びTP53経路を含むいくつかの変異を有する(Moreaux et al.; Haematologica; 2011;96:574-82)。疾患の再発はクローン進化の結果として生じ、これは、さらに侵襲性の遺伝子変異を引き起こすことがあることがわかっている。本明細書に記載のワクチン組成物は、疾患増悪と関連するクローン進化のプロセスにおいてこのような推定的に高リスクを有する抗原のいくつかが出現する前に、これらの抗原に対する免疫系を刺激するように設計した。本明細書に記載のワクチン組成物によるこのような高リスク抗原の提示は、疾患再発のタイミング及び/又は侵襲性に顕著に影響することが示される。
【0034】
第2に、本明細書に記載のワクチン組成物は、2種の非修飾MM細胞株H929及びU266とともに、遺伝子修飾したバイスタンダーGM-CSF分泌細胞株であるK562/GM-CSFを含み得る。K562細胞をトランスフェクトするのに使用するGM-CSF遺伝子は、制限されないが、ヒトを含むあらゆる源に由来し得る。「に由来する」は、本明細書において使用する場合、GM-CSFが自然に存在する方法又は場所に対して天然であることを意味し得る。
GM-CSFは、鍵となる免疫アジュバントであることがわかっている。重要なことには、K562/GM-CSF細胞株の使用によりGM-CSF量を滴定し、これによって本明細書に記載のワクチン組成物中の最適用量を送達することが可能となる。このGM-CSF用量は不十分でも治療的に過剰でもなく、このため高用量の抗原をなお送達しても、骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の誘導によって有効性は低下し得る。有効なワクチンには、「治療的」用量のGM-CSF及び十分な量の抗原が必要とされることがわかっている(Serafini et al.; Cancer Res. 2004; 64:6337-43)。本明細書に記載のように、K562細胞は、約50ng~約1500ng/1×106細胞/24時間の量のGM-CSFを発現することができる。GM-CSFを産生可能な期間は、ELISAで測定した場合、最大約72時間であり得るが、有効量のワクチン組成物を維持するのに必要に応じて、これを超えるか又はこれ未満であり得る。上記の量は、24時間毎に平均的に産生することができる。抗原細胞源、即ち、腫瘍細胞が過剰に存在し、これにより腫瘍細胞:バイスタンダー細胞の化学量論が、少なくとも2:1を超えることも必要とされる。GM-CSFの量は、制限されないが、酵素結合免疫吸着アッセイ(「ELISA」)を含む、あらゆる公知の方法により測定することができる。
【0035】
ワクチン組成物は、腫瘍細胞株の増殖を阻害し、免疫原性細胞死を誘導して抗原の送達を向上させ得る、公知の方法を使用して放射線照射することができる。ワクチンの用量は典型的に、腫瘍細胞に対して2:1の比率であり、特には、腫瘍細胞対K562/GM-CSF細胞の比率は、2:1である。腫瘍細胞量の決定は、制限されないが、フローサイトメトリーを含む公知の方法により決定することができる。
第3に、制限されないが、レナリドミドを含む免疫調節薬(IMiD)は、がん患者におけるT細胞応答を著しく向上させ、本明細書に記載のワクチン組成物のワクチン有効性を増強し得る。本明細書に記載のワクチン組成物により投与可能なIMiDは、レナリドミド、サリドマイド、及びポマリドミドを含むが、これらに制限されない。レナリドミドは特定の例である。
レナリドミド(文献では「Len」と呼ぶことがある)は、本明細書に記載の方法において、ワクチンアジュバントとして使用し得るか、又はワクチン組成物と同時投与し得る。レナリドミドは、ワクチン組成物の投与前にいつでも投与し得るか、ワクチン組成物と同時投与し得るか、又はワクチン組成物後に投与し得る。レナリドミドの用量は、2.5~25mg/用量の範囲に及び得る。ワクチン組成物の投与前後の時間は、制限されず、投与前後のいずれかに最大10年を含み、前後最大4年であり得るか、前後3年であり得るか、前後2年であり得るか、又は前後1年、並びに制限されないが、前後12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、及び1カ月を含む、このような時点間のあらゆる時点であり得る。レナリドミドの投与は、継続的投与、又は数回の別々の投与であり得る。本明細書に記載のワクチン組成物の投与は、レナリドミドの継続的投与及び腫瘍による少ない負担と併せて、有効な持続性の抗MM免疫をもたらすことが示される。
【0036】
TCRレパートリーのバルク解析によるT細胞クローン型の増殖及び持続は、本明細書に記載のワクチン組成物の投与後に血液及び骨髄(BM)の両方において観察することができる。従って、骨髄中の本明細書に記載のワクチン組成物により誘導されるMM特異的クローンの局所的増殖、及び末梢に由来するクローン型による浸潤可能性の両方により、長期持続性免疫応答の発生及び維持が生じ得る。その上、ワクチン組成物関連抗原及び非ワクチン関連MM抗原の両方による刺激に応答した多機能性サイトカイン産生T細胞の増加により、多様な異種共有MM抗原に対する広範な免疫応答性の発生が支持される。従って、本明細書に記載の同種異系全細胞ワクチンによって、患者に特異的な腫瘍多様性により課せられた障壁が克服されて、共有腫瘍特異的抗原に対する有効なT細胞応答を誘発し、その上、持続性の抗腫瘍免疫を付与することができる。
本明細書に記載のワクチン組成物は、ワクチン接種後に増殖したT細胞クローン型を検出し、多機能性サイトカインT細胞応答を特性決定する能力を、ワクチン接種後最大7年間促進することが示される。
【0037】
従って、本明細書に記載のワクチン組成物は、「MGUS」として知られ、早期の多発性骨髄腫であって、実際は全くがんではない意義不明状態の骨髄腫-モノクローナル免疫グロブリン血症の復帰及び維持を可能とする。MGUSは、低レベルのMタンパク質、低レベルの骨髄中異常形質細胞、及び活動性疾患指標の非存在により示される良性症状である。この状態は、本明細書に記載のワクチン組成物により誘導されるT細胞媒介免疫の継続的活性により妨害される可能性を有し、このような患者の骨髄中の組織常在様CD8+T細胞集団の存在により同定される。従って、MGUSと診断されているが、多発性骨髄腫に増悪していない患者も、本明細書に記載のワクチンの候補である。本明細書に記載のワクチンの投与によるMGUS患者の維持により、骨髄腫への増悪の予防が可能となり得る。
多発性骨髄腫を有する患者における完全寛解は、Mスパイクタンパク質検出不能であり免疫固定電気泳動における負の測定値を有する患者により測定した場合、本明細書に記載の方法及び投与スケジュールによるワクチン組成物の投与によって達成することができ、従って、このような患者において完全寛解を誘導する方法は、実現可能である。完全寛解は、患者において最大5年、最大6年、又は最大7年の間持続し得る。
【0038】
多発性骨髄腫を有する対象における無増悪生存の延長は、増悪、再発又は再発の日までの診断時間の決定により測定した場合、本明細書に記載の方法及び投与スケジュールによりワクチン組成物を投与することによって達成することができ、従って、このような患者において無増悪生存を延長する方法は、実現可能である。無増悪生存は、最大5年、6年、又は最大7年の間測定することができる。
多発性骨髄腫を有する患者におけるクローンT細胞発現及び骨髄腫特異的サイトカイン応答の上昇は、本明細書に記載の方法及び投与スケジュールによるCAR T細胞と併用したワクチン組成物の投与によって達成することができ、従って、このような患者においてクローンT細胞発現及び骨髄腫特異的サイトカイン応答を上昇させる方法は、実現可能である。
多発性骨髄腫を有する患者における多発性骨髄腫特異的免疫の誘導は、本明細書に記載の方法及び投与スケジュールによるワクチン組成物及びCAR T細胞の投与によって達成することができ、従って、このような患者において多発性骨髄腫特異的免疫を誘導し、無増悪生存を達成する方法は、実現可能である。
【0039】
多発性骨髄腫の陽性診断をそれまでに有していたが、MRD陰性をそれまでに達成している患者における多発性骨髄腫再発の予防は、本明細書に記載の方法及び投与スケジュールによる、MM特異的CAR T細胞投与前後のいずれかにおけるワクチン組成物の投与によって達成することができ、従って、このような患者において多発性骨髄腫の再発を予防する方法は、実現可能である。
従って、枯渇及び老化の特徴を欠き、高いPD1レベル及びエフェクターメモリー様表現型を呈する骨髄(組織)常在性静止T細胞集団の存在の証拠を本明細書において記載する。このような所見により、抗原経験メモリーT細胞の貯蔵所としてのBMの概念が支持され、これが生じる推定機構の証拠がもたらされる。本明細書に記載のワクチン接種後骨髄CD8+T細胞の教師なしクラスタリングにより、長期の疾患寛解にある患者において優先的に濃縮された亜集団の同定が可能となる。DNAM1lowCD27-CD8+T細胞のこの集団は、ワクチン後早期の再発にある患者の骨髄中に実質的に存在しなかった。従って、枯渇及び活性化の両マーカーの複合的発現により定義される、異種性の部分機能障害表現型を有するCD27-CD8+T細胞は、MM反応性リンパ球の源として同定される。本明細書に記載のワクチン組成物により誘導されるこれらの存在量は、新たに診断された多発性骨髄腫患者において前向きな予後的意義を表す。持続的免疫監視のMM-MGUSモデルに基づくと、腫瘍反応性CD8+T細胞亜集団の減少は、免疫回避及び臨床的に有意義な疾患増悪に顕著に寄与する。本明細書に提示の証拠により、潜在的腫瘍反応性CD8+T細胞亜集団の減少が臨床的に明らかな疾患再発よりも先に生じ、その上、この持続が長期の疾患寛解と相関することが明白に実証される(図14及び15)。
【0040】
その上、本明細書に提示の証拠により、ワクチン接種により抗腫瘍免疫が付与される機構が、さらなるMM特異的T細胞の生成、及び骨髄中の幹様静止TRM集団の増加をも含むという結論が支持される。さらに、その減少が臨床的に明らかな疾患再発よりも先に生じるCD8+T細胞の異種集団が同定される。本明細書に記載のBM常在メモリーT細胞の免疫表現型の表現型特性決定により、本明細書に記載のワクチン組成物によるワクチン接種後数年間のMM特異的免疫の維持において骨髄T細胞が果たす重要な役割に対するさらなる洞察がもたらされる。
本明細書に記載のデータにより、MRDの奏効の深さ及び臨床アウトカムの間の正の相関が十分に支持される。本明細書に記載の疾患増悪の基準を満たさないモノクローナルタンパク質の安定な再出現により、本明細書に記載のMM特異的CAR+T細胞と併用して投与したワクチン組成物が、疾患による負担が少ない状態において投与した場合、臨床的奏効の上昇及び/又は疾患増悪を顕著に遅延させるMM-MGUS平衡の確立の両方による増悪の制御及び多発性骨髄腫の治療において有効である証拠がもたらされる。
【実施例
【0041】
本明細書に記載の実施形態及び説明は、次の非制限的な例を参照して以下にさらに詳細に説明する。
(実施例1)
患者の選択及び適格性
MM-GVAX単独の投与に適格な患者は次のとおりであり、このような患者は少なくとも18歳であって、多発性骨髄腫の診断及び0~2の東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)による一般状態とともに十分な造血、肝臓及び腎臓の機能を有した。患者は、それまでの治療経験数にかかわらず適格となった。自己造血幹細胞移植は過去12カ月以内に生じていない可能性を有し、それまでの同種異系骨髄移植は不可能であった。登録するためには、患者は、Len含有レジメンによる少なくとも4カ月の観察期間中に完全寛解に近い寛解を持続的に維持しなければならなかった。鍵となる除外基準は、ステロイド中止後の疾患増悪であり、観察期間中の検出可能なMスパイク>0.5g/dL又は真性完全寛解への転換(Mスパイクの非存在及び血清/尿免疫固定陰性として定義)として定義した。
【0042】
安定な完全寛解に近い寛解(nCR)を少なくとも4カ月間達成したLen含有レジメンによる多発性骨髄腫(MM)を有する患者15名が、試験に登録した。nCRは、Mスパイク検出不能並びに血清及び/又は尿免疫固定(IFE)陽性として定義した(BladE et al. Br J Haematol 1998;102:1115-23)。診断時では、患者の53%がステージI(国際病期分類(International Staging System)、ISS)の疾患を有した(Palumbo et al. J Clin Oncol 2015;33:2863-9)。注目すべきことには、登録患者のいずれもIMWG(国際骨髄腫ワーキンググループ(International Myeloma Working Group))の細胞遺伝学的基準により定義される高リスクMMの特徴を有しなかった。
【0043】
登録の時点では、Lenは継続したが、他の全ての抗MM療法は中止した。患者には1、2、3、及び6カ月に4回のMM-GVAXワクチン接種を、15mgの用量中央値(範囲2.5~25mg)による現在の用量のLenと併用して(図1)、少なくとも1年間行った。登録時の年齢中央値は、69歳であった(範囲45~81歳)。
MM-GVAX及びMM特異的CAR+T細胞の併用療法の投与に適格な患者は、CAR-T細胞を過去に投与し、あらゆるCAR-T毒性から回復している患者を含む。その上、適格な患者は、0~2の東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)による一般状態を有するとともに造血系が十分に回復しており、NGSシーケンシング若しくはフローサイトメトリーにより判定した場合のMRD陰性状態、MRD検出可能による完全寛解状態、又はMスパイク検出不能であるが血清及び/若しくは尿中の免疫固定陽性として定義する完全寛解に近い寛解の状態のいずれかを有するか、或いは反復測定値に対する25%未満の変化として定義する少なくとも3カ月間安定している測定可能な疾患を有する。
【0044】
(実施例2)
ワクチンの有効性
全ての患者15名が、最初のMM-GVAX用量の投与後1年の臨床奏効評価に参加可能であった。患者15名のうち8名(53.3%)が真性完全寛解(CR)と一致する疾患奏効を達成し、これは、Mスパイクの非存在及びIFE陰性として定義され、登録から11.6カ月のCR達成までの時間中央値を有した(範囲1.4~13.9カ月)。53.3%のこのCR転換の割合は(95%CI:26.6~78.7%)、設計により定義したCR転換の割合25%の帰無仮説よりも有意に高く(p=0.011)、これにより臨床活性が示され、この試験のプライマリーエンドポイントが満たされた。際立ったことには、登録患者15名のうちわずか6名が疾患増悪を経験し、これは、少なくとも0.5g/dLのMスパイクの出現及び/又は10mg/dLを超える含有遊離軽鎖の上昇として定義し、反復測定により確認した。Pt6、Pt7及びPt9は、試験登録の初年内に早期の疾患再発を経験した。その後、患者7名(46.7%)において検出可能なMスパイクが発生し、これは疾患再発の基準を満たさなかった。これは、経時的には可変に持続性であったが、いかなる治療の変更も必要としなかった。解析時点では、推定全生存(OS)中央値は、MM診断から11.5年であり(95%CI:5.9~n/a年)、登録から7.8年であった(95%CI:4.2~7.8年、n=6/15、40%)。CRを達成した患者のサブグループ解析では、安定なnCRを維持した患者又はその後に測定可能なMスパイクが発生した患者と比較して、PFS及びOSに関して統計学的有意差は示されなかった。この知見は、ワクチン接種により、悪性MM形質細胞クローンが完全には根絶されなくても、長期の疾患制御を維持することが可能な免疫平衡を誘導可能であることを示唆する。
【0045】
(実施例3)
ワクチン製剤及び投与
ワクチン製剤に使用する細胞株は、GMPを遵守したジョンズホプキンス大学シドニーキンメル総合がんセンター(the Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center at Johns Hopkins)のCell Processing and Gene Therapy Facilityにより製造した。U266及びH929は、ATCCから最初に得た。K562/GM-CSFは、これまでに記載のように生成した(Borrello et al.; Hum Gene Ther. 1999;10:1983-91)。簡潔には、K562細胞をインビトロで、20%のウシ胎仔血清(FCS)及びペニシリン-ストレプトマイシン(50U/ml)を添加したRPMI1640培地(腫瘍培地)中に培養し、37℃、5%CO2の懸濁培養により増殖させた。
【0046】
K562細胞のエレクトロポレーションをK562GM-CSF株の生成におけるトランスフェクションに使用した。K562細胞(1×107)を無血清RPMIにより1回洗浄し、次いで、腫瘍培地1mlに再懸濁してGM-CSFプラスミドDNA40μgと混合した。プラスミドpCEP4hGM-CSFベクター(Invitrogen社、San Diego,CA)は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの調節下にヒトGM-CSF遺伝子並びにハイグロマイシン耐性遺伝子及びEBNA-1複製起点配列を含む。構築物は、ClaI及びAvrIIにより分解してEBNA-1配列を切除した。細胞は、Bio-Rad社(Hercules,CA)のGene Pulserキュベット(電極ギャップ0.4-cm)によりショックを与える(0.4V、960mF)エレクトロポレーションを行い、完全腫瘍培地中で24時間培養した後、薬物選択を行った。
【0047】
K562-GMを選択して、ハイグロマイシン(400μg/ml)及び0.1MのHEPESを添加した腫瘍培地中で増殖させた。このような細胞を高用量のハイグロマイシン(1200jg/ml)中でさらに選択し、限界希釈アッセイによりサブクローニングした。その後、GM-CSF高発現サブクローンを、ハイグロマイシン(Calbiochem社、LaJolla,CA)の存在下で無血清培地AIM-Vに適応させた。
同数(各5×107)のMM細胞株U266及びH929を5×106細胞のバイスタンダー細胞株K562GM-CSFと混合した。ワクチン細胞を放射線照射した後、凍結保存して使用する日まで液体窒素中に貯蔵した。ワクチン接種日に、個々の細胞を解凍し、適切な濃度で混合して3種のシリンジ内に吸い上げた。最終的なワクチンシリンジは投与まで氷上に維持し、この投与は解凍後60分以内に行った。
【0048】
登録から1、2、3及び6カ月目の14日目に患者にワクチン接種を4回行い(それぞれサイクル1、2、3、及び6)、その上、登録前に投与した用量でLenを少なくとも1年間継続した。Lenは、28日のうち21日間投与した。単回ワクチン接種による受診では、患者の三肢に対して1mL以下の総容量で皮内MM-GVAX投与を行い、肺炎球菌結合ワクチン13(PCV-13、プレベナー(Prevnar)(登録商標))を一方の腕の筋肉内に注射した。試験の終了時には、患者はLenによる治療を継続し、臨床的有効性の証拠が想定された。全ての対象には、治療直前(ベースライン)、サイクル3の14日目(C3D14、3回目のワクチン投与前)及び登録後1年に安全性の評価、疾患奏効の決定並びにバイオマーカーの相関性解析のためのBM及びPBの試料採取を行った。一部の患者では、試験登録後1年を過ぎた時点及び最大7年にBM及びPBのさらなる追跡試料を採取した。
【0049】
(実施例4)
MRDによる負担によってワクチンによる奏効の予測が可能となる
MM疾患による負担を定量及び追跡するために、次世代シーケンシングによる微小残存病変(MRD)検査をベースラインMM DNAが利用可能であった患者7名(46.7%)に実施した(Rawstron et al. “A complementary role of multiparameter flow cytometry and high-throughput sequencing for minimal residual disease detection in chronic lymphocytic leukemia: an European Research Initiative on CLL study”; Leukemia [Internet]. 2016;30:929-36. nature.com/articles/leu2015313から入手可能)。1名を除いて全ての対象における検査試料でB細胞レパートリーのMRD出現頻度が10-6(10-4%)を超えたため、骨髄における10-3(10-1%)の任意閾値を、この閾値を超えて(高レベルMRD+)この閾値未満で(低レベルMRD+)疾患による負担の臨床的有意性の評価が可能となるものと同定した。
【0050】
優位なIGH及びIGK/Lがんクローンを、治療前の骨髄における免疫シーケンシング結果から次の基準を使用して同定した。1)配列は、5%を超える出現頻度を有しなければならない。2)配列は、総有核細胞の0.1%を超えて存在しなければならない。3)配列は、非連続的に分布しなければならない(今後10年の配列頻度で配列4種以下)。4)試料は、200種を超える推定鋳型を有しなければならない。骨髄において同定されたこのような優位なクローンを経時的に追跡して、治療後の引き続く時点におけるがんクローンの出現頻度を決定した。体細胞超変異(SHM)を説明するために、骨髄において優位なクローンとのミスマッチが2つ以下であるIGHクローンをも経時的に追跡した。各試料におけるMRD出現頻度は、検査する座位の全ての増殖性再構成におけるがんクローンの出現頻度として測定した。
全ての高レベルMRD+患者は、登録から1年以内に疾患再発を経験し(中央値=4.8カ月、範囲:2.8~9.5カ月)、一方、低レベルMRD+患者は、有意に長いPFSを有した(中央値=84.15カ月、範囲:51.9~97.3カ月、p=0.01)。低レベルMRDと比較した高レベルMRDの検出は、臨床的再発の尤度の上昇と関連した(ハザード比、HR=25.79、95%CI:2.17~306.4)。注目すべきことには、Pt2及びPt4は、可変に検出可能なMスパイクの発生にもかかわらず臨床奏効が延長し、このMスパイクは、疾患増悪の基準を全く満たさなかった。対照的に、Pt12及びPt13は、真性CRを達成し、経時的に奏効を維持した。従って、ワクチン接種時点におけるMRDによる負担により、長期の臨床アウトカムが予測可能である。
【0051】
(実施例5)
MM-GVAXワクチン接種により全身性の骨髄腫免疫が誘導される
T細胞受容体(TCR)レパートリー全体に対するMM-GVAXワクチン接種の影響を決定するために、TCR鎖Vβ(TRBV)のディープシーケンシング解析を、ベースライン、3回目のMM-GVAX投与前(C3D14)及び1年において全ての患者由来のマッチする末梢血(PB)及び骨髄(BM)試料に対して実施した。T細胞及びB細胞のヒトTCRβ並びにIGH及びIGK/L鎖のCDR3領域の免疫シーケンシングを、BM又はPB試料から抽出したゲノムDNAに対して、immunoSEQ(登録商標)アッセイ(Adaptive Biotechnologies社、Seattle,WA)を使用してそれぞれ実施した。抽出したゲノムDNAは、バイアス制御マルチプレックスPCRにより増幅した後、ハイスループットシーケンシングを行った。配列を崩壊及び濾過することにより、ユニークな各CDR3領域の絶対存在量を同定及び定量して、これまでに記載のようにさらに解析した(Robins et al. “Comprehensive assessment of T-cell receptor β-chain diversity in αβ T cells”;Blood [Internet]. 2009;114:4099-107. ashpublications.org/blood/article/114/19/4099/26771から入手可能;Carlson et al. “Using synthetic templates to design an unbiased multiplex PCR assay”;Nat Commun [Internet]. 2013;4:2680. nature.com/articles/ncomms3680から入手可能;Robins et al. “Ultra- sensitive detection of rare T cell clones”;J Immunol Methods [Internet]. 2012;375:14-9. linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0022175911002468から入手可能;Kirsch et al. “T-cell receptor profiling in cancer:;Mol Oncol [Internet]. 2015;9:2063-70. doi.wiley.com/10.1016/j.molonc.2015.09.003から入手可能;DeWitt et al. “A Public Database of Memory and Naive B-Cell Receptor Sequences”;Turner SJ, editor. PLoS One [Internet]. 2016;11:e0160853. dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0160853から入手可能)。増殖性再構成のみをレパートリー解析に使用した。
【0052】
ワクチン接種前にTCRクローン型組成物は変動し、最小レパートリーバイアスから顕著なオリゴクローン増殖まで及んだ。ワクチン接種によりクローン性の上昇に対するTCRレパートリーが非対称となるはずであるという仮説にもかかわらず、いずれかの区画におけるTCR増殖性再構成の相対的割合において主な変化は観察しなかった。増殖的クローン性は、種々の患者間で経時的に大いに変動したが、ワクチン関連のパターンは、同定できなかった。全体的にみて、増殖的クローン性は、殆どの対象において相対的に経時的に安定であると思われ、臨床アウトカムと相関しなかった。最小TCRレパートリーの非対称性がワクチン接種により観察されたことを考慮して、各クローンの出現頻度を比較することによりワクチン接種前後のクローン存在量の変化を調べた。注目すべきことには、最初の2回のMM-GVAX投与後(C3D14)、全ての対象のPB及びBMの両方においてT細胞クローンが顕著に増殖し、このようなクローンは、ワクチン接種後最初の増殖後に高頻度に達してこれを持続した(図2)。ワクチン接種と関連する全体的クローン性の変化がないにもかかわらず、PB及びBMの両試料におけるクローンの増殖及び収縮の明らかな証拠が存在する。興味深いことには、ワクチン接種後顕著に増殖したクローンの多くがワクチン接種前には観察されず、ワクチン接種時にそれまでに未検出のクローンが増殖したか又は新規のクローン型が漸増したかのいずれかが示唆された(図3)。PB及びBMの両方におけるT細胞クローンの増殖により、広範な全身性免疫応答を誘導するMM-GVAXの能力が強調される。殆どのクローンはPB及びBM中に匹敵する出現頻度で存在したが、一部のクローン型は、BM中で優先的に濃縮された(図4)。ワクチン接種と関連するクローン動態をより良く理解するために、森下指数を使用して、このような2つの区画におけるTCRレパートリー間の類似性を判定した。一部の患者では(Pt7、Pt10及びPt15)、BM及びPBのTCRレパートリーは、ワクチン接種後、ベースラインと比較して相互にさらに異なったが、殆どの対象では、ワクチン接種後、2つの区画間の類似性の変化は殆どなかった(図5)。ワクチン接種後のBM及びPBの増殖T細胞クローンのさらなる解析により、患者にわたる多様なクローン増殖の挙動が明らかとなった。一部では、増殖クローン型の出現頻度がPB及びBMの両方において上昇し、両区画において並行プロセスが存在することが示唆された。反対に、他では、BM又はPBのいずれかにおいて、一方の区画では一部のクローンが増殖したが他方では増殖せず、又は両区画で増殖したが優先的な濃縮を呈した。まとめると、このような結果により、MM-GVAXが全身性T細胞応答を誘導し、BM又はPBの両方においてクローン増殖が測定可能であったことが示される。
【0053】
(実施例6)
ワクチン接種により骨髄においてMM特異的多機能性T細胞応答が誘導される
T細胞応答をBMにおいてワクチン関連及び非関連のMM抗原の両方に機能的に特性決定した。全ての患者及び時点の試料をインビトロでMM-GVAX細胞株(U266及びH929)のいずれかの溶解物により刺激し、細胞内サイトカイン産生について解析した。MM-GVAX特異的インターフェロンγ(IFNγ)及びTNFαの応答は、C3D14及び1年のCD8+及びCD4+の両T細胞サブセットにおいてワクチン接種時に著しく上昇した(図6)。ワクチン関連及び非関連MM抗原に応答してIFNγ及び/又はTNFαを産生するCD4+又はCD8+T細胞の出現頻度は、わずか2回のワクチン接種により有意に上昇し、最大4年間以上の持続的上昇を維持した(p<0.0001、図7)。ワクチン接種前後に指示時点で得られたBM由来単核細胞を、2%のヒトAB血清単独又はSW780(膀胱癌細胞株)溶解物又はU266/H929(MM-GVAX細胞株)溶解物を加えたAIM-V培地のいずれかによりそれぞれ刺激した。5日後、細胞を回収し、染色して細胞内サイトカイン産生のフローサイトメトリー解析を行った。
【0054】
注目すべきことには、MM-GVAXにより、多機能性CD4+及びCD8+T細胞の出現頻度が有意に上昇した。これは、程度が低くても、同時産生IFNγ及びTNFα、並びに単一サイトカイン産生T細胞の割合として定義した。興味深いことには、最も著明な変化は、TNFα又はIFNγ/TNFαのいずれかを産生するCD8+T細胞の生成であると思われた(図8)。ワクチン接種後早期に再発したPt6、Pt7及びPt9は、長期の疾患寛解を達成した患者に匹敵するワクチン特異的T細胞サイトカイン応答を生じた。このような結果により、MM-GVAX誘導免疫応答が、多機能性であり、広い範囲の一般に共有されるMM関連抗原に方向づけられ、CD8+及びCD4+の両T細胞に関与することが実証される。このような知見は、有効なワクチン誘導抗腫瘍免疫がCD8+及びCD4+の両腫瘍特異的T細胞を必要とすることを示す他の試験のデータを支持する(Bennett et al. “Induction of a CD8++ Cytotoxic T Lymphocyte Response by Cross-priming Requires Cognate CD4++ T Cell Help”;J Exp Med [Internet]. 1997;186:65-70. rupress.org/jem/article/186/1/65/7193から入手可能;及びAlspach E, Lussier et al.; “MHC-II neoantigens shape tumour immunity and response to immunotherapy”; Nature [Internet]. 2019;574:696-701. nature.com/articles/s41586-019-1671-8から入手可能)。
【0055】
(実施例7)
ワクチン誘導MM特異的T細胞免疫はワクチン接種後数年間持続する
適応免疫の重要な特徴は、その経時的持続及び抗原との再遭遇時に有効な応答を開始する能力である。従って、ワクチン接種後に数年採取した利用可能な試料におけるMM-GVAX特異的応答を検出及び特性決定した。
【0056】
骨髄及び末梢血の試料を事前に確立した時点で採取し、Lymphoprep(STEMCELL Technologies社(登録商標))による勾配を使用して単核細胞を濃縮して、凍結培地(50%の完全AIM-V培地、40%の補体除去ヒトAB血清及び10%のDMSO)中に凍結保存した。次いで、試料を解凍し、0.02mg/mLのDNase及びリン酸緩衝食塩水(PBS)を加え予熱した(37C)AIM-Vで2回それぞれ洗浄した。フローサイトメトリー試薬は、BioLegend社、BD Biosciences社及びInvitrogen社から購入した。モノクローナル抗体は、それまでに最適濃度に滴定した。表面染色を37Cで20分間実施し、その上、CytoFix/CytoPermキット(BD Biosciences社)により製造者の指示に従って細胞を固定した後、特定のmAbカクテルとともに室温で20分間細胞をインキュベートすることによりサイトカインの細胞内検出を実施した。全てのデータは、3種のレーザー(紫、405nm;青、488nm;赤、633nm)を備え、10種のパラメーターを検出可能なGallios(登録商標)フローサイトメーター(Beckmann-Coulter社)上で取得した。フローサイトメトリーデータは、FlowJoにより単一染色細胞制御及びコンペンセーションビーズ(BioLegend社)を使用して補正した。双指数関数的変換による前処理、凝集物及び死細胞を除去する標準的ゲーティングの後、CD3+CD8+T細胞をFlowJoから引き続いてエクスポートし、R(バージョン4.0.1)によってBioconductorライブラリー及びRパッケージを使用するカスタムメイドスクリプトによりさらに解析した。簡潔には、教師なしクラスタリングのためのFlowSOMアルゴリズムを使用してデータを解析し、UMAPにより可視化した。差次的発見解析をR上でdiffcytフレームワーク及びCATALYSTワークフローを使用して実施した(Nowicka et al.; “CyTOF workflow: differential discovery in high-throughput high-dimensional cytometry datasets”; F1000Research [Internet]. 2019;6:748. f1000research.com/articles/6-748/v3から入手可能)。次いで、データを各クラスター毎に1種の新たなファイルとして認識させ、FlowJoによりさらに解析して、各マーカーについての陽性細胞出現頻度及び平均蛍光強度(MFI)を決定した。
【0057】
長期の試料が利用可能な患者3名では、C3D14において検出した増殖クローン型がワクチン接種後最大7年まで、なお存在した。驚くべきことには、各区画における増殖クローンの出現頻度は、BM及びPBの両方において、ワクチン接種以降1-年から相対的に安定を維持し、免疫平衡定常状態の確立が示唆された(図9)。MM-GVAX関連及び非関連の両MM抗原で刺激したこのようなBM試料の細胞内サイトカイン染色では、持続的な多機能性CD4+及びCD8+T細胞応答がワクチン接種後最大7年示された(図10)。要約すると、PB及びBMにおけるワクチン特異的クローン並びにMM特異的多機能性T細胞が、検出可能な疾患の存在下であってもワクチン接種後7年間持続することは、免疫平衡の確立を示唆し、これは、この試験において観察された長期疾患制御の原因である可能性を有する。
【0058】
(実施例8)
BM中のT細胞はエフェクター表現型及び組織常在様特性を呈する
BM T細胞の表現型組成物を、チェックポイント分子、同時刺激分子及びケモカイン受容体の発現について調べた。BM T細胞組成物は、複数の時点にわたって著しく類似した(データ非表示)。CD69発現組織常在様T細胞集団(TRM)は、全てのBM試料に一貫して存在するものと同定した。CD69+RMの割合は、経時的に殆ど変動しないが、CD8+RMは、CD4+の対応物よりも優位となった(図11)。T細胞サブセットの古典的表現型同定により、より高い割合のCD4+T細胞が、セントラルメモリー表現型(TCM)を呈し、一方、CD8+T細胞では、エフェクターメモリー(TEM)及びエフェクター(TEMRA)サブセットが典型となることが明らかとなった。興味深いことには、CD8+T細胞では、CD4+サブセットと比較して高頻度で幹細胞メモリー様T細胞(TSCM)が存在した(図12)。BM TRMは、TEM及びTEMRA表現型を主に示したが、TCM及びTSCM様TRMは、低い程度でしか検出することができなかった。BM中のCD69+CD8+T細胞は、メモリー集団の典型であり、組織常在性の特徴を有する。興味深いことには、これらは枯渇マーカー、例えば、TIGIT及びTIM3、並びに老化マーカー(CD57)を欠くが、活性化マーカーCD27及びPD1を発現する。興味深いことには、BM TRMは、BMホーミングケモカイン受容体であるCXCR4、及びCXCR6の両方をより高レベルで発現し、これは、組織常在T細胞の特徴であると考えられる(Kumar et al., “Human Tissue- Resident Memory T Cells Are Defined by Core Transcriptional and Functional Signatures in Lymphoid and Mucosal Sites”; Cell Rep [Internet]. ElsevierCompany.; 2017;20:2921-34. dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2017.08.078から入手可能)(図13)。低レベルのモノクローナルタンパク質が再出現したが、顕著な割合の患者が疾患制御を維持した。この再出現は経時的に持続したが、再発基準は満たさなかった。この安定な低レベルの疾患は、免疫平衡状態の確立を示唆する。このコホートに一貫して存在するBM常在T細胞集団の同定により、免疫平衡の維持及び腫瘍の監視においてTRMが基本的役割を有するというこれまでの知見が支持される(Park et al., “Tissue-resident memory CD8++ T cells promote melanoma-immune equilibrium in skin”; Nature [Internet]. 2019;565:366-71. nature.com/articles/s41586-018- 0812-9から入手可能)。
【0059】
(実施例9)
MM-GVAXワクチン接種後の臨床アウトカムとの免疫相関
ワクチン接種後のBM CD8+T細胞の免疫表現型への洞察及び臨床アウトカムとのこれらの関連を得るために、C3D14のBM CD8+T細胞を教師なしクラスタリングアルゴリズムであるFlowSOMにより解析し、次元削減の手法、例えば、均一多様体近似と射影(Uniform Manifold Approximation and Projection、UMAP)を使用して、種々のT細胞クラスターの可視化を単純化した。FlowSOMクラスターの階層的メタクラスタリングにより、CD8+T細胞亜集団を類似の免疫表現型に群化してCD8+T細胞の2種のサブセット、即ち、C1及びC2を同定した。これらのサブセットは、ワクチン接種後の初年内に、疾患制御が長期持続性の患者(奏効者群)において、早期の進行性疾患を示す患者(再発群)と比較して濃縮された(図14、*,p<0.05;**,p<0.01)。著しくは、クラスターC1及びC2がDNAM1の低発現から非存在及びCD27の欠如により定義され、老化、エフェクター及び枯渇CD8+T細胞を含む相対的異種性の亜集団が含まれた。クラスターC2のさらなる特性決定により、PD1を中等度に発現するCD69+CD57-亜集団が同定され、奏効者群において濃縮されたCD8+T細胞がBMに常在し、長期のMM制御に関与する可能性を有することが示唆された。興味深いことには、クラスターC1は、CD57発現の上昇により特性決定され、増殖能が欠如しているにもかかわらず、このようなエフェクター-老化細胞が、なお機能性であり得ることが示唆された。その後、FlowSOMアルゴリズムにより得られた結果は、フローサイトメトリーの標準的手法により再現され、ここで、手動によりゲーティングしたCD27-DNAM1low/-CD8+T細胞が、ワクチン奏効者において濃縮された(図15)。このような知見によって、CD8+T細胞組成物の変化が、臨床的に明らかな疾患再発よりも早期に生じるとともに、腫瘍特異的T細胞の貯蔵所である可能性を有し、ワクチン誘導免疫平衡の確立及び維持における役割を果たす可能性を有する、BM CD8+T細胞のサブセットが同定されるという証拠がもたらされる。
【0060】
(実施例10)
MM特異的CAR+T細胞の生成
キメラ抗原受容体は、自己(同種異系)T細胞である、T細胞を患者から採取し、このような細胞に、抗MM特異的一本鎖可変断片抗体、例えば、抗BCMA、CD137(4-1BB)又はCD28同時刺激モチーフ、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを有する第2世代CARをコードするレンチウイルスベクターを形質導入することにより生成することができる。T細胞の形質導入後、細胞をエクスビボで少なくとも7日から最大30日の期間にわたって増殖させることができる。細胞は、公知の方法を使用して注入に適する組成物に製剤化することができる。
【0061】
(実施例11)
ワクチン投与前及び/又は後のMM特異的CAR+T細胞の投与
MM-GVAX投与の前又は後のいずれかに、MM特異的CAR+T細胞組成物を適格な患者に投与することができる。
-5、-4、及び-3日目に患者にフルダラビン(1日に体表面積1平方メートルあたり30mg)及びシクロホスファミド(1日に1平方メートルあたり300mg)によりリンパ球枯渇を行った後、0日目にMM特異的CAR+T細胞を注入することができる。用量漸増期に総CAR陽性T細胞50×106、150×106、450×106、又は800×106細胞(+/-20%)及び増殖期に総CAR+T細胞150×106~450×106細胞の用量を投与することができる。臨床奏効及び疾患増悪をIMWGによる多発性骨髄腫の統一効果判定基準(Uniform Response Criteria)に従って評価することができる。MRDの評価を含み得るエンドポイントは、次世代シーケンシング、全生存、及び無増悪生存、サイトカイン及びケモカインの測定、並びに血中のMM特異的抗原の定量により決定し得る。
【0062】
MM特異的CAR+T細胞投与の後、MM-GVAXを2、3、又は4回目の用量として再び投与することができる。
或いは、患者にMM特異的CAR+T細胞を最初に投与した後、上記のMM-GVAXを投与することができる。MM特異的CAR+T細胞の投与後に1、2、3回、又はこれ以上のMM-GVAX投与を行うことができる。MM-GVAXは、MM特異的CAR+T細胞の投与後、最低でも2カ月から最大2年に投与することができる。MM-GVAXは、この時間枠内に少なくとも1回投与することができ、複数回投与することもできる。
MM-GVAXの有効性を増強するために、制限されないが、レナリドミド及びポマリドミドを含むいくつかの免疫増強剤と同時投与することができる。
【0063】
MM-GVAX及びMM特異的CAR+T細胞のこの併用投与の有効性により、エンドポイント、例えば、MRD陰性及び無増悪生存がもたらされる。
本発明はこの例となる実施形態を参照して詳細に記載しているが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更をなし、等価物を利用することが可能であることが当業者に明らかであろう。前述の文書のそれぞれは、その全体を参照により本明細書に組み込む。
図1
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【国際調査報告】