IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ 晶科能源股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特表-太陽電池および光起電力モジュール 図1
  • 特表-太陽電池および光起電力モジュール 図2
  • 特表-太陽電池および光起電力モジュール 図3
  • 特表-太陽電池および光起電力モジュール 図4
  • 特表-太陽電池および光起電力モジュール 図5
  • 特表-太陽電池および光起電力モジュール 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】太陽電池および光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H01L31/04 260
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514503
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 CN2022124851
(87)【国際公開番号】W WO2023206980
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】202210474482.9
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202221032637.5
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】512083920
【氏名又は名称】晶科能源股分有限公司
【氏名又は名称原語表記】JINKO SOLAR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1,Jinko Road, Shangrao Economic Development Zone Jiangxi 334100 CN
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】ディン ユー
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンチー リー
(72)【発明者】
【氏名】ジアハオ ウー
(72)【発明者】
【氏名】ハオ ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジアレイ チャイ
(72)【発明者】
【氏名】シアオウェン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シージェ ジャオ
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA16
5F251CB11
5F251CB21
5F251CB24
5F251FA06
5F251HA03
(57)【要約】
【課題】本発明は太陽電池を開示し、電池技術分野に関する。
【解決手段】太陽電池は、結晶シリコン基板の表面に設けられる第1パッシベーションコンタクト段差と、第1パッシベーションコンタクト段差の結晶シリコン基板から離間する面に設けられる第2パッシベーションコンタクト段差と、第1パッシベーションコンタクト段差の結晶シリコン基板から離間する面に設けられる第1パッシベーション反射防止段差と、第2パッシベーションコンタクト段差の第1パッシベーションコンタクト段差から離間する面に設けられる第2パッシベーション反射防止段差と、一方側が第1パッシベーションコンタクト段差に接触し、他方側が第2パッシベーションコンタクト段差及び第2パッシベーション反射防止段差を貫通する電極とを含む。本発明に係る技術案では、多段のパッシベーションコンタクト段差が設けられ、第1パッシベーションコンタクト段差の厚さが薄く、長波長帯域の光線に対する寄生吸収を減少させ、太陽電池の長波応答及び両面率を効果的に向上させることができる。第2パッシベーションコンタクト段差の厚さが厚く、金属化過程において金属ペーストと良好なオーミックコンタクトを形成することを保証することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池であって、
結晶シリコン基板と、第1パッシベーションコンタクト段差と、第2パッシベーションコンタクト段差と、第1パッシベーション反射防止段差と、第2パッシベーション反射防止段差と、電極とを含み、
前記第1パッシベーションコンタクト段差は、前記結晶シリコン基板の表面に設けられ、
前記第2パッシベーションコンタクト段差は、前記第1パッシベーションコンタクト段差の前記結晶シリコン基板から離間する面に設けられ、かつ前記電極に対応する領域に位置し、
前記第1パッシベーション反射防止段差は、前記第1パッシベーションコンタクト段差の前記結晶シリコン基板から離間する面に設けられ、かつ前記第2パッシベーションコンタクト段差と接触しない領域に位置し、
前記第2パッシベーション反射防止段差は、前記第2パッシベーションコンタクト段差の前記第1パッシベーションコンタクト段差から離間する面に設けられ、
前記電極は、一方側が前記第1パッシベーションコンタクト段差に接触し、他方側が前記第2パッシベーションコンタクト段差及び前記第2パッシベーション反射防止段差を貫通する、ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第1パッシベーションコンタクト段差は、第1トンネル酸化層及び第1ドープトポリシリコン層を含み、
前記第1トンネル酸化層は、前記結晶シリコン基板の表面に設けられ、前記第1ドープトポリシリコン層は、前記第1トンネル酸化層の前記結晶シリコン基板から離間する面に設けられ、
前記第2パッシベーションコンタクト段差は、第2トンネル酸化層及び第2ドープトポリシリコン層を含み、
前記第2トンネル酸化層は、前記第1ドープトポリシリコン層の前記第1トンネル酸化層から離間する面に設けられ、かつ前記電極に対応する領域に位置し、
前記第2ドープトポリシリコン層は、前記第2トンネル酸化層の前記第2ドープトポリシリコン層から離間する面に設けられ、
前記電極の一方側は、前記第1ドープトポリシリコン層に接触する、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1トンネル酸化層は、リン含有酸化シリコン、リン含有酸化アルミニウム、リン含有酸窒化シリコン、リン含有炭化酸化シリコンのうちの少なくとも一種を含み、前記第1トンネル酸化層のリン元素濃度は、9×1020cm-3以下である、ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1トンネル酸化層の厚さは、0.5nm~10nmである、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1ドープトポリシリコン層の活性化されたリン元素濃度は、9×1019cm-3~1×1021cm-3である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第1ドープトポリシリコン層の厚さは、3nm~150nmである、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第2トンネル酸化層は、リン含有酸化シリコン、リン含有酸化アルミニウム、リン含有酸窒化シリコン、リン含有炭化酸化シリコンのうちの少なくとも一種を含み、前記第2トンネル酸化層のリン元素濃度は、1×1021cm-3以下である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第2トンネル酸化層の厚さは、0.1nm~5nmであり、かつ前記第2トンネル酸化層の厚さは、前記第1トンネル酸化層の厚さ以下である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第2トンネル酸化層のパターン化線幅は、前記第1ドープトポリシリコン層のパターン化線幅の0.5%~20%を占め、かつ前記第2トンネル酸化層のパターン化線幅は、1000μm以下である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第2ドープトポリシリコン層の活性化されたリン元素濃度は、1×1020cm-3~1×1021cm-3である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第2ドープトポリシリコン層の厚さは、5nm~300nmであり、かつ前記第2ドープトポリシリコン層の厚さは、前記第1ドープトポリシリコン層の厚さよりも大きい、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第2ドープトポリシリコン層のパターン化線幅は、前記第2トンネル酸化層のパターン化線幅以下である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第1パッシベーション反射防止段差は、少なくとも1つのパッシベーション反射防止層を含み、前記第1パッシベーション反射防止段差の厚さは、30nm~300nmであり、かつ前記第2パッシベーションコンタクト段差の厚さ以上である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記第2パッシベーション反射防止段差の厚さは、30nm~500nmである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記第2パッシベーション反射防止段差のパターン化線幅は、1000μm以下であり、かつ前記第2パッシベーションコンタクト段差のパターン化線幅以上である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記電極の前記第1パッシベーションコンタクト段差と接触する一方側から前記第2パッシベーション反射防止段差の前記第2パッシベーションコンタクト段差から離間する表面までの距離は、40nm以上である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項17】
前記電極のパターン化線幅は、100nm以下であり、かつ前記第2パッシベーションコンタクト段差のパターン化線幅以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項18】
光起電力モジュールであって、
請求項1~17のいずれか一項に記載の太陽電池を含み、
少なくとも一部の前記太陽電池は、つなぎ合わせ又は積層の形態で電気的に接続されて、封止材料により封止される、ことを特徴とする光起電力モジュール。
【請求項19】
太陽電池の製造方法であって、
結晶シリコン基板の表面にエッチング及び洗浄を行うことと、
前記結晶シリコン基板の表面に第1トンネル酸化層を形成することと、
前記第1トンネル酸化層の前記結晶シリコン基板から離間する表面に第1ノンドープトポリシリコン層を形成することと、
前記第1ノンドープトポリシリコン層の前記第1トンネル酸化層から離間する表面に第2初期トンネル酸化層を形成することと、
前記第2初期トンネル酸化層の前記第1ノンドープトポリシリコン層から離間する表面に第2初期ノンドープトポリシリコン層を形成することと、
前記第1ノンドープトポリシリコン層と前記第2初期ノンドープトポリシリコン層に拡散処理を行い、それぞれ第1リンドープトポリシリコン層と第2初期リンドープトポリシリコン層を形成し、前記第2初期リンドープトポリシリコン層の表面にリンシリケートガラス(PSG)層を形成することと、
前記リンシリケートガラス層の表面に有機コーティング層を印刷し、高温乾燥により有機コーティング層にパターン化マスクを形成させることと、
前記第2初期リンドープトポリシリコン層の前記第2初期トンネル酸化層から離間する前記パターン化マスクで覆われていない表面にエッチングを行い、前記第1トンネル酸化層、前記第1リンドープトポリシリコン層、並びに、前記パターン化マスクで覆われたリンシリケートガラス層、前記第2初期トンネル酸化層および第2初期リンドープトポリシリコン層を残し、前記第1パッシベーションコンタクト段差は、前記第1トンネル酸化層及び前記第1リンドープトポリシリコン層を含むことと、
前記パターン化マスクの表面にエッチングを行い、前記第1トンネル酸化層、前記第1ドープトポリシリコン層、前記第2トンネル酸化層及び前記第2リンドープトポリシリコン層を残すことと、
前記第1リンドープトポリシリコン層及び前記第2リンドープトポリシリコン層の前記結晶シリコン基板から離間する表面に第1パッシベーション反射防止段差及び第2パッシベーション反射防止段差を形成することと、
前記第2パッシベーションコンタクト段差と前記第2パッシベーション反射防止段差の対応する領域に電極を形成することとを含む、ことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項20】
太陽電池の製造方法であって、
結晶シリコン基板の表面にエッチング及び洗浄を行うことと、
前記結晶シリコン基板の表面に第1トンネル酸化層を形成することと、
前記第1トンネル酸化層の前記結晶シリコン基板から離間する表面にインサイチュドープトポリシリコン堆積を行い、第1初期リンドープトポリシリコン層を形成することと、
前記第1初期リンドープトポリシリコン層の前記第1トンネル酸化層から離間する表面に前記第2初期トンネル酸化層を形成することと、
前記第2初期トンネル酸化層の前記第1初期リンドープトポリシリコン層から離間する表面にインサイチュドープトポリシリコン堆積を行い、第2初期リンドープトポリシリコン層を形成することと、
前記第2初期リンドープトポリシリコン層の表面に酸化シリコンマスクを形成することと、
前記酸化シリコンマスクの表面に有機コーティング層を印刷し、高温乾燥により前記有機コーティング層にパターン化マスクを形成させることと、
前記第2初期リンドープトポリシリコン層の前記第2初期トンネル酸化層から離間する前記パターン化マスクで覆われていない表面にエッチングを行い、前記第1トンネル酸化層、前記第1初期リンドープトポリシリコン層、並びに、前記パターン化マスクで覆われた前記酸化シリコンマスク、前記第2初期トンネル酸化層及び前記第2初期リンドープトポリシリコン層を残すことと、
前記パターン化マスクの表面にエッチングを行い、前記第1トンネル酸化層、前記第1初期リンドープトポリシリコン層、前記第2初期トンネル酸化層及び前記第2初期リンドープトポリシリコン層を残すことと、
前記太陽電池に高温アニール処理を行うことと、
前記第1リンドープトポリシリコン層及び前記第2リンドープトポリシリコン層の結晶シリコン基板から離間する表面に第1パッシベーション反射防止段差及び第2パッシベーション反射防止段差を形成することと、
前記第2パッシベーションコンタクト段差と前記第2パッシベーション反射防止段差の対応する領域に電極を形成することと、を含む、ことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2022年4月29日に出願された出願番号が「202210474482.9」であり、かつ発明の名称が「太陽電池および光起電力モジュール」である中国特許出願の優先権を要求し、その内容の全体が参照により組み込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、電池技術分野に関し、より具体的には、太陽電池及び光起電力モジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
TOPCon(Tunnel Oxide Passivating Contacts)電池は、選択的キャリア原理に基づくトンネル酸化層パッシベーションコンタクトの太陽電池である。その裏面は、一般的に、超薄トンネル酸化シリコンとドープトポリシリコン薄膜とを組み合わせた構造を採用し、パッシベーションコンタクト効果を実現する。
【0004】
関連技術において、金属化ペーストのマッチング及びパッシベーション効果を保証するために、ドープトポリシリコン薄膜の厚さが厚くなる。しかしながら、厚すぎるドープトポリシリコン薄膜は、裏面における赤外波長帯域の寄生吸収を引き起こし、さらに電池の長波応答が悪く、両面率が低いなどの問題をもたらすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本発明は、ドープトポリシリコン薄膜の厚さを減少させ、さらに赤外波長帯域への寄生吸収を減少させ、太陽電池の長波応答及び両面率を向上させることができる太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様において、本発明は、太陽電池を提供し、当該太陽電池は、結晶シリコン基板と、第1パッシベーションコンタクト段差と、第2パッシベーションコンタクト段差と、第1パッシベーション反射防止段差と、第2パッシベーション反射防止段差と、電極とを含み、
前記第1パッシベーションコンタクト段差は、前記結晶シリコン基板の表面に設けられ、
前記第2パッシベーションコンタクト段差は、前記第1パッシベーションコンタクト段差の前記結晶シリコン基板から離間する面に設けられ、かつ前記電極に対応する領域に位置し、
前記第1パッシベーション反射防止段差は、前記第1パッシベーションコンタクト段差の前記結晶シリコン基板から離間する面に設けられ、かつ前記第2パッシベーションコンタクト段差と接触しない領域に位置し、
前記第2パッシベーション反射防止段差は、前記第2パッシベーションコンタクト段差の前記第1パッシベーションコンタクト段差から離間する面に設けられ、
前記電極は、一方側が前記第1パッシベーションコンタクト段差に接触し、他方側が前記第2パッシベーションコンタクト段差及び前記第2パッシベーション反射防止段差を順に貫通する。
【0007】
一つの可能な実施形態において、前記第1パッシベーションコンタクト段差は、第1トンネル酸化層及び第1ドープトポリシリコン層を含み、
前記第1トンネル酸化層は、前記結晶シリコン基板の表面に設けられ、前記第1ドープトポリシリコン層は、前記第1トンネル酸化層の前記結晶シリコン基板から離間する面に設けられ、
前記第2パッシベーションコンタクト段差は、第2トンネル酸化層及び第2ドープトポリシリコン層を含み、
前記第2トンネル酸化層は、前記第1ドープトポリシリコン層の前記第1トンネル酸化層から離間する面に設けられ、かつ前記電極に対応する領域に位置し、
前記第2ドープトポリシリコン層は、前記第2トンネル酸化層の前記第2ドープトポリシリコン層から離間する面に設けられ、
前記電極の一方側は、前記第1ドープトポリシリコン層に接触する。
【0008】
一つの可能な実施形態において、前記第1トンネル酸化層は、リン含有酸化シリコン、リン含有酸化アルミニウム、リン含有酸窒化シリコン、リン含有炭化酸化シリコンのうちの少なくとも一種を含み、前記第1トンネル酸化層のリン元素濃度は、9×1020cm-3以下である。
【0009】
一つの可能な実施形態において、前記第1トンネル酸化層の厚さは、0.5nm~10nmである。
【0010】
一つの可能な実施形態において、前記第1ドープトポリシリコン層の活性化されたリン元素濃度は、9×1019cm-3~1×1021cm-3である。
【0011】
一つの可能な実施形態において、前記第1ドープトポリシリコン層の厚さは、3nm~150nmである。
【0012】
一つの可能な実施形態において、前記第2トンネル酸化層は、リン含有酸化シリコン、リン含有酸化アルミニウム、リン含有酸窒化シリコン、リン含有炭化酸化シリコンのうちの少なくとも一種を含み、前記第2トンネル酸化層のリン元素濃度は、1×1021cm-3以下である。
【0013】
一つの可能な実施形態において、前記第2トンネル酸化層の厚さは、0.1nm~5nmであり、かつ前記第2トンネル酸化層の厚さは、前記第1トンネル酸化層の厚さ以下である。
【0014】
一つの可能な実施形態において、前記第2トンネル酸化層のパターン化線幅は、前記第1ドープトポリシリコン層のパターン化線幅の0.5%~20%を占め、かつ前記第2トンネル酸化層のパターン化線幅は、1000μm以下である。
【0015】
一つの可能な実施形態において、前記第2ドープトポリシリコン層の活性化されたリン元素濃度は、1×1020cm-3~1×1021cm-3以下である。
【0016】
一つの可能な実施形態において、前記第2ドープトポリシリコン層の厚さは、5nm~300nmであり、かつ前記第2ドープトポリシリコン層の厚さは、前記第1ドープトポリシリコン層の厚さよりも大きい。
【0017】
一つの可能な実施形態において、前記第2ドープトポリシリコン層のパターン化線幅は、前記第2トンネル酸化層のパターン化線幅以下である。
【0018】
一つの可能な実施形態において、前記第1パッシベーション反射防止段差は、少なくとも1つのパッシベーション反射防止層を含み、前記第1パッシベーション反射防止段差の厚さは、30nm~300nmであり、かつ前記第2パッシベーションコンタクト段差の厚さ以上である。
【0019】
一つの可能な実施形態において、前記第2パッシベーション反射防止段差の厚さは、30nm~500nmである。
【0020】
一つの可能な実施形態において、前記第2パッシベーション反射防止段差のパターン化線幅は、1000μm以下であり、かつ前記第2パッシベーションコンタクト段差のパターン化線幅以上である。
【0021】
一つの可能な実施形態において、前記電極の前記第1パッシベーションコンタクト段差と接触する一方側から前記第2パッシベーション反射防止段差の前記第2パッシベーションコンタクト段差から離間する表面までの距離は、40nm以上である。
【0022】
第2態様において、本発明は、光起電力モジュールを提供し、前記光起電力モジュールは、第1態様及びそのいずれか一つの可能な実施形態における太陽電池を含み、少なくとも一部の前記太陽電池は、つなぎ合わせ又は積層の形態で電気的に接続され、かつ封止材料により封止される。
【0023】
第3態様において、本発明は、太陽電池の製造方法を提供し、前記太陽電池の製造方法は、結晶シリコン基板の表面にエッチング及び洗浄を行うことと、前記結晶シリコン基板の表面に第1トンネル酸化層を形成することと、前記第1トンネル酸化層の前記結晶シリコン基板から離間する表面に第1ノンドープトポリシリコン層を形成することと、前記第1ノンドープトポリシリコン層の前記第1トンネル酸化層から離間する表面に第2初期トンネル酸化層を形成することと、前記第2初期トンネル酸化層の前記第1ノンドープトポリシリコン層から離間する表面に第2初期ノンドープトポリシリコン層を形成することと、前記第1ノンドープトポリシリコン層と前記第2初期ノンドープトポリシリコン層に拡散処理を行い、それぞれ第1リンドープトポリシリコン層と第2初期リンドープトポリシリコン層を形成し、前記第2初期リンドープトポリシリコン層の表面にリンシリケートガラス(PSG)層を形成することと、前記リンシリケートガラス層の表面に有機コーティング層を印刷し、高温乾燥により有機コーティング層にパターン化マスクを形成させることと、前記第2初期リンドープトポリシリコン層の前記第2初期トンネル酸化層から離間する前記パターン化マスクで覆われていない表面にエッチングを行い、前記第1トンネル酸化層、前記第1リンドープトポリシリコン層、並びに、前記パターン化マスクで覆われたリンシリケートガラス層、前記第2初期トンネル酸化層および第2初期リンドープトポリシリコン層を残し、前記第1パッシベーションコンタクト段差は、前記第1トンネル酸化層及び前記第1リンドープトポリシリコン層を含むことと、前記パターン化マスクの表面にエッチングを行い、前記第1トンネル酸化層、前記第1ドープトポリシリコン層、前記第2トンネル酸化層及び前記第2リンドープトポリシリコン層を残すことと、前記第1リンドープトポリシリコン層及び前記第2リンドープトポリシリコン層の前記結晶シリコン基板から離間する表面に第1パッシベーション反射防止段差及び第2パッシベーション反射防止段差を形成することと、前記第2パッシベーションコンタクト段差と前記第2パッシベーション反射防止段差の対応する領域に電極を形成することとを含む。
【0024】
第4態様において、本発明は、太陽電池の製造方法を提供し、前記太陽電池の製造方法は、結晶シリコン基板の表面にエッチング及び洗浄を行うことと、前記結晶シリコン基板の表面に第1トンネル酸化層を形成することと、
前記第1トンネル酸化層の前記結晶シリコン基板から離間する表面にインサイチュドープトポリシリコン堆積を行い、第1初期リンドープトポリシリコン層を形成することと、前記第1初期リンドープトポリシリコン層の前記第1トンネル酸化層から離間する表面に前記第2初期トンネル酸化層を形成することと、前記第2初期トンネル酸化層の前記第1初期リンドープトポリシリコン層から離間する表面にインサイチュドープトポリシリコン堆積を行い、第2初期リンドープトポリシリコン層を形成することと、前記第2初期リンドープトポリシリコン層の表面に酸化シリコンマスクを形成することと、前記酸化シリコンマスクの表面に有機コーティング層を印刷し、高温乾燥により前記有機コーティング層にパターン化マスクを形成させることと、前記第2初期リンドープトポリシリコン層の前記第2初期トンネル酸化層から離間する前記パターン化マスクで覆われていない表面にエッチングを行い、前記第1トンネル酸化層、前記第1初期リンドープトポリシリコン層、並びに、前記パターン化マスクで覆われた前記酸化シリコンマスク、前記第2初期トンネル酸化層及び前記第2初期リンドープトポリシリコン層を残すことと、前記パターン化マスクの表面にエッチングを行い、前記第1トンネル酸化層、前記第1初期リンドープトポリシリコン層、前記第2初期トンネル酸化層及び前記第2初期リンドープトポリシリコン層を残すことと、前記太陽電池に高温アニール処理を行うことと、前記第1リンドープトポリシリコン層及び前記第2リンドープトポリシリコン層の結晶シリコン基板から離間する表面に第1パッシベーション反射防止段差及び第2パッシベーション反射防止段差を形成することと、前記第2パッシベーションコンタクト段差と前記第2パッシベーション反射防止段差の対応する領域に電極を形成することと、を含む。
【発明の効果】
【0025】
従来技術に比べて、本発明に係る太陽電池は、少なくとも以下の有益な効果を奏することができる。
本発明による実施例は、多段のパッシベーションコンタクト段差が設けられ、また、第1パッシベーションコンタクト段差が結晶シリコン基板の表面に設けられ、太陽電池の表面パッシベーションが実現される。第1パッシベーションコンタクト段差の厚さが薄いため、長波長帯域の光線に対する寄生吸収を減少させ、太陽電池の長波応答及び両面率を効果的に向上させることができる。第2パッシベーションコンタクト段差は、第1パッシベーションコンタクト段差の結晶シリコン基板から離間する面に設けられ、かつ前記電極に対応する領域に位置し、第2パッシベーションコンタクト段差の厚さが厚いため、金属化過程において金属ペーストと良好なオーミックコンタクトを形成することを保証することができる。
【0026】
当然のことながら、本発明を実施するいずれかの製品は、必ずしも上記した技術効果の全てを同時に達成する必要があるとは限らない。
【0027】
以下に図面を参照しながら本発明の例示的な実施例を詳しく述べることにより、本発明の他の特徴及びその利点は明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
明細書に結合されて明細書の一部を構成する図面は、本発明の実施例を示すとともに、その説明と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】本発明の実施例に係る太陽電池の一部断面構成の拡大概略図である。
図2】本発明の実施例に係る太陽電池の断面構成概略図(その一)である。
図3】本発明の実施例に係る太陽電池の断面構成概略図(その二)である。
図4】本発明の実施例に係る太陽電池の内部量子変換効率図である。
図5】本発明の実施例に係る太陽電池の製造方法のフローチャート(その一)である。
図6】本発明の実施例に係る太陽電池の製造方法のフローチャート(その二)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の種々の例示的な実施形態を詳しく述べる。注意すべきことは、特に具体的に説明しない限り、これらの実施例において述べた部品及びステップの相対的な配置、数式及び数値は本発明の範囲を限定しないものとすることである。
【0030】
以下の少なくとも一つの例示的な実施例に対する説明は、実際に単に例示的なものであり、本発明及びその応用又は使用に対するいかなる制限とするものではない。
【0031】
関連分野の当業者に知られている技術、方法及び装置について詳細に説明しない可能性があるが、適切な場合に、前記技術、方法及び装置は、明細書の一部と見なされるべきである。
【0032】
ここで示されて検討される全ての例において、如何なる具体的な値は、単に例示的なものであり、限定するものではないと解釈されるべきである。したがって、例示的な実施例の他の例は、異なる値を有することができる。
【0033】
類似する符号及びアルファベットは、以下の図面において類似要素を示すため、ある要素が一つの図面において定義されると、その後の図面においてそれをさらに検討する必要がないことに注意すべきである。
【0034】
従来技術において、金属化ペーストのマッチング及びパッシベーション効果を保証するために、ドープトポリシリコン薄膜の厚さを90nm以上に制御する必要がある。厚すぎるドープトポリシリコン薄膜は、裏面における赤外波長帯域の寄生吸収を引き起こし、さらに電池の長波応答が悪く、両面率が低いなどの問題をもたらすことになる。
【0035】
関連技術に存在した上記問題を解決するために、本発明の実施例は、太陽電池を提供し、当該太陽電池は、ドープトポリシリコン薄膜の厚さを減少させ、さらに赤外波長帯域への寄生吸収を減少させ、太陽電池の長波応答及び両面率を向上させることができる。
【0036】
図1を参照し、本発明の実施例は、太陽電池を提供し、当該太陽電池は、結晶シリコン基板1と、第1パッシベーションコンタクト段差2と、第2パッシベーションコンタクト段差3と、第1パッシベーション反射防止段差4と、第2パッシベーション反射防止段差5と、電極6とを含み、
第1パッシベーションコンタクト段差2は、結晶シリコン基板1の表面に設けられ、
第2パッシベーションコンタクト段差3は、第1パッシベーションコンタクト段差2の結晶シリコン基板1から離間する面に設けられ、かつ電極6に対応する領域に位置し、
第1パッシベーション反射防止段差4は、第1パッシベーションコンタクト段差2の結晶シリコン基板1から離間する面に設けられ、かつ第2パッシベーションコンタクト段差3と接触しない領域に位置し、
第2パッシベーション反射防止段差5は、第2パッシベーションコンタクト段差3の第1パッシベーションコンタクト段差2から離間する面に設けられ、
電極6は、一方側(即ち、第1部分)が第1パッシベーションコンタクト段差2と接触し、他方側(即ち、第2部分)が第2パッシベーションコンタクト段差3及び第2パッシベーション反射防止段差5を貫通する。
いくつかの実施例において、前記電極6の第1部分は、第1パッシベーションコンタクト段差2に接触するが、前記第1パッシベーションコンタクト段差構造2を貫通しないことにより、電極と基板との直接接触による金属複合問題を低減させる。
【0037】
なお、本願に述べた「段差」とは、段差構造に類似する設計を指し、例えば、段差の底部に位置する層は、基板表面全体を覆う層であってもよく、段差の頂部に位置する層は、前記段差の底部を部分的に覆う層である。
【0038】
理解されるように、結晶シリコン基板1の表面は、上表面及び/又は下表面であってもよい。いくつかの実施例において、上表面は、光入射面を指し、すなわち太陽に向かう表面である。下表面は、上表面に対向する表面である。両面電池に対して、下表面も受光面とすることができる。
【0039】
図2を参照し、本発明の選択可能な実施例において、第1パッシベーションコンタクト段差2、第2パッシベーションコンタクト段差3、第1パッシベーション反射防止段差4、第2パッシベーション反射防止段差5、および、電極6は、結晶シリコン基板1の下表面に設けられ、このとき、結晶シリコン基板1の上表面に拡散層7、界面修飾層8、正面パッシベーション層9、遷移層10、正面パッシベーション反射防止層11及び正面電極12が順に設けられる。ここで、拡散層7は、結晶シリコン基板1の上面又は下面に位置することができる。結晶シリコン基板1がN型結晶シリコン基板である場合、拡散層7の元素は、ホウ素又は他のP型ドーパントである。界面修飾層8は、酸化層とすることができ、例示的には、界面修飾層8は、酸化シリコン層であってもよい。界面修飾層8の厚さは大きく、3nm~10nmである。正面パッシベーション層9は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸炭窒化シリコン、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウムのうちの少なくとも一種であってもよい。遷移層10は、酸化シリコン、酸窒化シリコンのうちの少なくとも一種であってもよい。正面パッシベーション反射防止層11は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸窒化炭素のうちの少なくとも一種であってもよい。上記した界面修飾層8、正面パッシベーション層9、遷移層10、正面パッシベーション反射防止層11は、太陽電池の正面パッシベーション反射防止構造を構成している。しかしながら、上記した説明及び図面に制限されず、正面パッシベーション反射防止構造は、類似の単層又は多層構造であってもよい。
【0040】
図3を参照し、本発明の選択可能な実施例において、第1パッシベーションコンタクト段差2、第2パッシベーションコンタクト段差3、第1パッシベーション反射防止段差4、第2パッシベーション反射防止段差5及び電極6は、結晶シリコン基板1の上表面及び下表面に設けられる。このとき、パッシベーションコンタクト段差は、それぞれ正面パッシベーションコンタクト段差と背面パッシベーションコンタクト段差であり、パッシベーション反射防止段差はそれぞれ正面パッシベーション反射防止段差と背面パッシベーション反射防止段差であり、電極6は、それぞれ正面電極と背面電極である。
【0041】
引き続き図1を参照し、本発明の選択可能な実施例において、第1パッシベーションコンタクト段差2は、第1トンネル酸化層21及び第1ドープトポリシリコン層22を含み、第1トンネル酸化層21は、結晶シリコン基板1の表面に設けられ、第1ドープトポリシリコン層22は、第1トンネル酸化層21の結晶シリコン基板1から離間する面に設けられる。
【0042】
図1を参照し、本発明の実施例は、段差式パッシベーションコンタクト構造を採用し、ここで、第1トンネル酸化層21の厚さは、0.5nm~10nmであり、前記厚さが0.5nm~3nmであることが好ましく、第1ドープトポリシリコン層22の厚さは、3nm~150nmであり、前記厚さが30nm~80nmであることが好ましい。第1パッシベーションコンタクト段差2において、第1トンネル酸化層21と第1ドープトポリシリコン層22の複合膜層を採用し、結晶シリコン基板1の表面に対して良好なパッシベーションを形成することができる。同時に、PN接合又は高低接合を形成することにより、光生成キャリアの効果的な分離を実現する。
【0043】
図4を参照し、関連技術における表面に段差式パッシベーションコンタクト構造を有しない太陽電池の内部量子変換効率は、破線で示すとおりであり、本発明の実施例に係る段差式パッシベーションコンタクト構造を有する太陽電池の内部量子変換効率は、実線で示すとおりである。明らかなように、関連技術に比べて、本発明の実施例は、赤外波長帯域(1000~1200nm)への寄生吸収を減少させることができ、太陽電池は、長波長帯域でより高い内部量子変換効率(IQE、Internal Quantum Efficiency)を得ることができる。ここで、1100~1150nmの波長帯域のIQE向上は、10%よりも大きくすることができる。
【0044】
第1トンネル酸化層21は、リン含有酸化シリコン、リン含有酸化アルミニウム、リン含有酸窒化シリコン、リン含有酸炭化シリコンのうちの少なくとも一種を含む。
【0045】
第1ドープトポリシリコン層22のドーピング元素は、結晶シリコン基板1に適合する。例示的には、結晶シリコン基板1がN型結晶シリコン基板である場合、第1ドープトポリシリコン層22のドーピング元素は、リン又は他のN型ドーピング元素であり、結晶シリコン基板1がP型結晶シリコン基板である場合、第1ドープトポリシリコン層22のドーピング元素は、ホウ素又は他のP型ドーピング元素である。
【0046】
なお、第1パッシベーションコンタクト段差2、第2パッシベーションコンタクト段差3、第1パッシベーション反射防止段差4、第2パッシベーション反射防止段差5及び電極6が結晶シリコン基板1の上表面及び下表面に設けられる場合、結晶シリコン基板1の上表面に位置する第1ドープトポリシリコン層22及び第2ドープトポリシリコン層32は、結晶シリコン基板1の下表面に位置する第1ドープトポリシリコン層22及び第2ドープトポリシリコン層32とはドーピング元素が逆である。例示的には、結晶シリコン基板1の下表面の第1ドープトポリシリコン層22及び第2ドープトポリシリコン層32のドーピング元素がリン又は他のN型ドーピング元素である場合、結晶シリコン基板1の上表面の第1ドープトポリシリコン層22及び第2ドープトポリシリコン層32のドーピング元素がホウ素又は他のP型ドーピング元素である。
【0047】
第1ドープトポリシリコン層22のドーピング元素がリンである場合、リン元素が拡散した後の第1トンネル酸化層21のリン元素濃度は、9×1020cm-3以下であり、5×1019cm-3以下であることが好ましい。第1ドープトポリシリコン層22の活性化されたリン元素濃度は、9×1019cm-3~1×1021cm-3であり、前記活性化されたリン元素濃度が1×1020cm-3~3×1020cm-3であることが好ましい。
【0048】
引き続き図1を参照し、本発明の選択可能な実施例において、第2パッシベーションコンタクト段差3は、第2トンネル酸化層31及び第2ドープトポリシリコン層32を含み、第2トンネル酸化層31は、第1ドープトポリシリコン層22の第1トンネル酸化層21から離間する面に設けられ、かつ電極6に対応する領域に位置し、第2ドープトポリシリコン層32は、第2トンネル酸化層31の第2ドープトポリシリコン層32から離間する面に設けられ、電極6の一方側は、第1ドープトポリシリコン層22に接触する。
【0049】
理解されるように、第2トンネル酸化層31の厚さは、0.1nm~5nmであり、前記厚さが0.5nm~5nmであることが好ましく、かつ第2トンネル酸化層31の厚さは、第1トンネル酸化層21の厚さ以下である。第2ドープトポリシリコン層32の厚さは、5nm~300nmであり、前記厚さが30nm~80nmであることが好ましく、かつ第2ドープトポリシリコン層32の厚さは、第1ドープトポリシリコン層22の厚さよりも大きい。第2パッシベーションコンタクト段差3において、第2トンネル酸化層31と第2ドープトポリシリコン層32との複合構造を採用し、第2トンネル酸化層31と第2ドープトポリシリコン層32の厚さは、それぞれ第1トンネル酸化層21と第1ドープトポリシリコン層22との複合構造よりも大きいため、第2パッシベーションコンタクト段差3の全体の厚さが大きく、金属化過程において金属ペーストと良好なオーミックコンタクトを形成することを保証することができる。
【0050】
図2を参照し、第2トンネル酸化層31が電極6に対応する領域に位置し、複数の電極6が設けられる場合、複数の第2パッシベーションコンタクト段差3が設けられ、すなわち、複数の第2トンネル酸化層31を含む。第2トンネル酸化層31のパターン化線幅は、第1ドープトポリシリコン層22のパターン化線幅の0.5%~20%を占め、両者のパターン化線幅の占める比率が1%~7%であることが好ましく、かつ第2トンネル酸化層31のパターン化線幅は、1000μm以下であり、100μm以下であることが好ましく、かつ第2ドープトポリシリコン層32のパターン化線幅は、第2トンネル酸化層31のパターン化線幅以下であり、ここで、パターン化線幅とは、太陽電池の断面構成におけるX方向の幅を指す。
【0051】
第2トンネル酸化層31は、リン含有酸化シリコン、リン含有酸化アルミニウム、リン含有酸窒化シリコン、リン含有酸炭化シリコンのうちの少なくとも一種を含む。
【0052】
第2ドープトポリシリコン層32のドーピング元素は、第1ドープトポリシリコン層22と同じであり、いずれも結晶シリコン基板1に適合する。結晶シリコン基板1がN型結晶シリコン基板である場合、第2ドープトポリシリコン層32のドーピング元素がリンであり、結晶シリコン基板1がP型結晶シリコン基板である場合、第2ドープトポリシリコン層32のドーピング元素がホウ素である。
【0053】
第2ドープトポリシリコン層32のドーピング元素がリンである場合、リン元素が拡散した後の第2トンネル酸化層31のリン元素濃度は、1×1021cm-3以下であり、8×1019cm-3~2×1020cm-3であることが好ましい。第2ドープトポリシリコン層32の活性化されたリン元素濃度は、1×1020cm-3~1×1021cm-3であり、2×1020cm-3~4×1020cm-3であることが好ましい。
【0054】
引き続き図1を参照し、本発明の選択可能な実施例において、第1パッシベーション反射防止段差4は、少なくとも1つのパッシベーション反射防止層を含み、パッシベーション反射防止層は、窒化シリコン、酸窒化シリコン及び酸化シリコンのうちの少なくとも一種を含む。第1パッシベーション反射防止段差4の厚さは、30nm~300nmであり、70nm~110nmであることが好ましく、かつ第2パッシベーションコンタクト段差3の厚さ以上である。
【0055】
引き続き図1を参照し、本発明の選択可能な実施例において、第2パッシベーション反射防止段差5は、少なくとも1つのパッシベーション反射防止層を含み、パッシベーション反射防止層は、窒化シリコン、酸窒化シリコン及び酸化シリコンのうちの少なくとも一種を含む。第2パッシベーション反射防止段差5の厚さは、30nm~500nmであり、50nm~110nmであることが好ましい。第2パッシベーション反射防止段差5のパターン化線幅は、1000μm以下であり、100μm以下であることが好ましく、かつ第2パッシベーションコンタクト段差3のパターン化線幅以上である。
【0056】
引き続き図1を参照し、本発明の選択可能な実施例において、電極6の第1パッシベーションコンタクト段差2と接触する一方側から第2パッシベーション反射防止段差5の第2パッシベーションコンタクト段差3から離間する表面までの距離は、40nm以上であり、100nm以上であることが好ましい。
【0057】
理解されるように、電極6の材質は、銀、アルミニウム、銅、又は銀、アルミニウム、銅のうちの少なくとも二種で構成された合金を含む。電極6のパターン化線幅は、100nm以下であり、かつ第2パッシベーションコンタクト段差3のパターン化線幅以下である。
【0058】
以上をまとめて、本発明に係る太陽電池は、少なくとも以下の有益な効果を得ることができる。
本発明に係る実施例は、多段のパッシベーションコンタクト段差が設けられ、また、第1パッシベーションコンタクト段差2が結晶シリコン基板1の表面に設けられ、太陽電池の表面のパッシベーションが実現される。第1パッシベーションコンタクト段差2の厚さが薄いため、長波長帯域の光線に対する寄生吸収を減少させ、太陽電池の長波応答及び両面率を効果的に向上させることができる。第2パッシベーションコンタクト段差3は、第1パッシベーションコンタクト段差2の結晶シリコン基板1から離間する面に設けられ、かつ前記電極6に対応する領域に位置し、第2パッシベーションコンタクト段差3の厚さが厚いため、金属化過程において金属ペーストと良好なオーミックコンタクトを形成することを保証することができる。
【0059】
同じ発明構想に基づいて、本発明の実施例は、さらに光起電力モジュールを提供し、前記光起電力モジュールは、前述した太陽電池を含み、少なくとも一部の前記太陽電池は、つなぎ合わせ又は積層の形態で接続されて、封止材料により封止される。
【0060】
いくつかの実施例において、複数の太陽電池は、同一平面に位置し、かつ一定の隙間(小さな隙間)又は隙間のない形式で電気的に接続されて、前記光起電力モジュールを形成する。いくつかの実施例において、複数の太陽電池は、互いに積層される(即ち異なる平面に位置する)形式で電気的に接続されて前記光起電力モジュールを形成する。前記太陽電池は、図1図3に示すいずれかの電池を採用することができる。
【0061】
当業者であれば理解されるように、当該光起電力モジュールと前述の太陽電池は、同一発明構想に基づくものであり、前に太陽電池について説明された特徴及び利点は、同様に当該光起電力モジュールの応用に適用される。したがって、当該光起電力モジュールは、少なくとも前述太陽電池と同様の特徴及び利点を有し、ここでは説明を省略する。
【0062】
例示的には、当該光起電力モジュールは、下から上へ順にバックプレート、封止材料、電池ストリング、封止材料及びガラスを含むことができる。ここで、封止材料は、EVA、POEなどの当技術分野で周知された封止膜材料であってもよい。電池ストリングは、上記太陽電池によりつなぎ合わせ又は積層などの形態で形成されてもよく、かつつなぎ合わせの形態で形成されるときに電池の間に隙間があってもよく、隙間がなくてもよい。
【0063】
同じ発明構想に基づいて、本発明の実施例は、さらに太陽電池の製造方法を提供し、図5に示すように、当該製造方法は、以下のステップを含む。
【0064】
S01では、結晶シリコン基板1の表面にエッチング及び洗浄を行う。
理解されるように、湿式化学エッチング方法によって、結晶シリコン基板1の表面に対してエッチング及び洗浄を行って、平坦で滑らかな結晶シリコン基板1の表面形態を得ることができる。
【0065】
S02では、結晶シリコン基板1の表面に第1トンネル酸化層21を形成する。
理解されるように、600℃以上の熱酸化法などの製造方法によって、結晶シリコン基板1の表面に0.5nm~10nm(例えば、0.5nm~3nm)の第1トンネル酸化層21を形成することができる。
【0066】
S03では、第1トンネル酸化層21の結晶シリコン基板1から離間する表面に第1ノンドープトポリシリコン層を形成する。
理解されるように、低圧化学気相堆積法、プラズマ強化化学気相堆積法のいずれかの方法によって、第1トンネル酸化層21の結晶シリコン基板1から離間する表面に厚さが3nm~150nm(例えば、30nm~80nm)の第1ノンドープトポリシリコン層22を形成することができる。
【0067】
S04では、第1ノンドープトポリシリコン層の第1トンネル酸化層21から離間する表面に第2初期トンネル酸化層を形成する。
理解されるように、600℃以上の熱酸化法などの製造方法によって、第1ノンドープトポリシリコン層22の第1トンネル酸化層21から離間する表面に厚さが0.1nm~5nm(例えば、0.5nm~5nm)の第2初期トンネル酸化層を形成し、かつ第2初期トンネル酸化層の厚さが第1トンネル酸化層21の厚さ以下である。
【0068】
S05では、第2初期トンネル酸化層の第1ノンドープトポリシリコン層から離間する表面に第2初期ノンドープトポリシリコン層を形成する。
理解されるように、低圧化学気相堆積法、プラズマ強化化学気相堆積法のいずれかの方法によって、第2初期トンネル酸化層の第1ノンドープトポリシリコン層から離間する表面に厚さが5nm~300nm(例えば、30nm~80nm)の第2初期ノンドープトポリシリコン層を形成することができ、かつ第2初期ノンドープトポリシリコン層の厚さが第1ノンドープトポリシリコン層の厚さよりも大きい。
【0069】
S06では、第1ノンドープトポリシリコン層と第2初期ノンドープトポリシリコン層に拡散処理を行い、それぞれ第1リンドープトポリシリコン層と第2初期リンドープトポリシリコン層を形成し、第2初期リンドープトポリシリコン層の表面にリンシリケートガラス層(PSG、Phospho Silicate Glass)を形成する。
理解されるように、拡散処理は、低圧拡散法を採用することができる。結晶シリコン基板1がP型結晶シリコン基板である場合、ドーピング元素がリンである。リン拡散処理後に得られた第1リンドープトポリシリコン層は、第1ドープトポリシリコン層22である。第1リンドープトポリシリコン層及び第2初期リンドープトポリシリコン層のリン元素濃度は、1×1019cm-3~1×1021cm-3である。
【0070】
S07では、リンシリケートガラスの表面に有機コーティング層を印刷し、高温乾燥により有機コーティング層にパターン化マスクを形成させ、パターン化マスクのX方向における幅が1000μm以下(例えば、100μm以下)である。
理解されるように、有機コーティング層は、スクリーン印刷法で製造され、パターン化マスクの形状は、第2パッシベーションコンタクト段差3の形状に適合する。
【0071】
S08では、第2初期リンドープトポリシリコン層の第2初期トンネル酸化層から離間するパターン化マスクで覆われていない表面にエッチングを行い、第1トンネル酸化層21、第1リンドープトポリシリコン層、並びに、パターン化マスクで覆われたリンシリケートガラス層、第2初期トンネル酸化層および第2初期リンドープトポリシリコン層を残し、第1パッシベーションコンタクト段差2は、第1トンネル酸化層21及び第1リンドープトポリシリコン層を含む。
理解されるように、湿式化学エッチング法によって、結晶シリコン基板1に一回目の選択的エッチングを行うことができる。上記ステップにおいて、パターン化マスクで覆われていないリンシリケートガラス層、第2初期トンネル酸化層及び第2初期リンドープトポリシリコン層を腐食する。腐食した後、パターン化マスクで覆われた第2初期トンネル酸化層は、第2トンネル酸化層31となり、第2初期リンドープトポリシリコン層は、第2リンドープトポリシリコン層となり、第2リンドープトポリシリコン層は、第2ドープトポリシリコン層32となる。
【0072】
S09では、パターン化マスクの表面にエッチングを行い、第1トンネル酸化層21、第1ドープトポリシリコン層、第2トンネル酸化層31及び第2リンドープトポリシリコン層を残す。
理解されるように、同様に、湿式化学エッチング法によって、結晶シリコン基板1に二回目の選択的エッチングを行うことができる。上記ステップにおいて、パターン化マスク及びパターン化マスクで被覆されたリンシリケートガラス層をエッチングする。
【0073】
S10では、第1リンドープトポリシリコン層及び第2リンドープトポリシリコン層の結晶シリコン基板1から離間する表面に第1パッシベーション反射防止段差4及び第2パッシベーション反射防止段差5を形成する。
理解されるように、第1パッシベーション反射防止段差4及び第2パッシベーション反射防止段差5は、プラズマ強化化学気相堆積法によって製造される。第1パッシベーション反射防止段差4及び第2パッシベーション反射防止段差5は、窒化シリコン、酸窒化シリコン及び酸化シリコンのうちの少なくとも一種で製造され、厚さが30nm~300nm(例えば70nm~110nm)である。
【0074】
S11では、第2パッシベーションコンタクト段差3と第2パッシベーション反射防止段差5の対応する領域に電極6を形成する。
理解されるように、電極6は、スクリーン印刷法、電気メッキ法のいずれかの方法によって製造される。電極6のX方向におけるパターン化線幅は、100nm以下である。
【0075】
本発明の実施例は、さらに別の太陽電池の製造方法を提供し、図6に示すように、当該製造方法は、以下のステップを含む。
【0076】
S21では、結晶シリコン基板1の表面にエッチング及び洗浄を行う。
【0077】
S22では、結晶シリコン基板1の表面に第1トンネル酸化層21を形成する。
【0078】
S23では、第1トンネル酸化層21の結晶シリコン基板1から離間する表面にインサイチュドープトポリシリコン堆積を行い、第1初期リンドープトポリシリコン層を形成する。
【0079】
S24では、第1初期リンドープトポリシリコン層の第1トンネル酸化層21から離間する表面に第2初期トンネル酸化層を形成する。
【0080】
S25では、第2初期トンネル酸化層の第1初期リンドープトポリシリコン層から離間する表面にインサイチュドープトポリシリコン堆積を行い、第2初期リンドープトポリシリコン層を形成する。
【0081】
S26では、第2初期リンドープトポリシリコン層の表面に酸化シリコンマスクを形成する。
理解されるように、プラズマ強化化学気相堆積法によって酸化シリコンマスクを製造することができ、酸化シリコンマスクの厚さが10nm以上である。
【0082】
S27では、酸化シリコンマスクの表面に有機コーティング層を印刷し、高温乾燥により有機コーティング層にパターン化マスクを形成させ、画像化マスクのX方向における幅が1000μm以下(例えば、100μm以下)である。
【0083】
S28では、第2初期リンドープトポリシリコン層の第2初期トンネル酸化層から離間するパターン化マスクで覆われていない表面にエッチングを行い、第1トンネル酸化層21、第1初期リンドープトポリシリコン層、並びに、パターン化マスクで覆われた酸化シリコンマスク、第2初期トンネル酸化層及び第2初期リンドープトポリシリコン層を残す。
理解されるように、腐食後の第2初期トンネル酸化層は、第2トンネル酸化層31となる。
【0084】
S29では、パターン化マスクの表面にエッチングを行い、第1トンネル酸化層21、第1初期リンドープトポリシリコン層、第2初期トンネル酸化層及び第2初期リンドープトポリシリコン層を残す。
【0085】
S30では、太陽電池に高温アニール処理を行う。
理解されるように、アニール温度が750℃~950℃であり、アニール処理後、第1初期リンドープトポリシリコン及び第2初期リンドープトポリシリコン膜層中のリン不純物を活性化し、活性化されたリン元素濃度が1×1020cm-3~1×1021cm-3である。活性化された第1初期リンドープトポリシリコンは、第1リンドープトポリシリコン層となり、第1リンドープトポリシリコン層は、第1ドープトポリシリコン層22となり、活性化された第2初期リンドープトポリシリコンは、第2リンドープトポリシリコン層となり、第2リンドープトポリシリコン層は、第2ドープトポリシリコン層32となる。
【0086】
S31では、第1リンドープトポリシリコン層及び第2リンドープトポリシリコン層の結晶シリコン基板1から離間する表面に第1パッシベーション反射防止段差4及び第2パッシベーション反射防止段差5を形成する。
【0087】
S32では、第2パッシベーションコンタクト段差4と第2パッシベーション反射防止段差5の対応する領域に電極6を形成する。
【0088】
本発明のいくつかの特定の実施例を例によって詳細に説明したが、当業者であれば、以上の例は単に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。当業者であれば理解されるように、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、以上の実施例を修正することができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】