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特表2024-523778MRIスキャン中の物体の動き及び/又は磁場オフセットを推定する方法
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  • 特表-MRIスキャン中の物体の動き及び/又は磁場オフセットを推定する方法 図1
  • 特表-MRIスキャン中の物体の動き及び/又は磁場オフセットを推定する方法 図2a
  • 特表-MRIスキャン中の物体の動き及び/又は磁場オフセットを推定する方法 図2b
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  • 特表-MRIスキャン中の物体の動き及び/又は磁場オフセットを推定する方法 図6
  • 特表-MRIスキャン中の物体の動き及び/又は磁場オフセットを推定する方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】MRIスキャン中の物体の動き及び/又は磁場オフセットを推定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61B5/055 382
A61B5/055 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567115
(86)(22)【出願日】2022-04-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2022061641
(87)【国際公開番号】W WO2022229465
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】21171727.7
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21211414.4
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22165204.3
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523411569
【氏名又は名称】アイトゲネシッシェ テヒニッシェ ホーホシューレ(エーテーハー)
【氏名又は名称原語表記】EIDGENOESSISCHE TECHNISCHE HOCHSCHULE(ETH)
(71)【出願人】
【識別番号】503148096
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート・ツューリヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】プリュスマン、クラース
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AD06
4C096BA06
4C096BA13
4C096BA18
4C096BA22
4C096BB02
(57)【要約】
物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に、物体の動き、及び/又は物体を取り囲む領域における磁場オフセットを推定する方法において、画像を形成するためのMRシーケンスに従って重畳磁場及び無線周波磁場が発生し、MRシーケンスはシーケンスモジュールの列を含み、各シーケンスモジュールは無線周波(RF)励起セグメント及び画像符号化勾配セグメントを含み、MRシーケンスは複数のナビゲータ勾配セグメントをさらに含む。ナビゲータ信号は、k空間の軌跡に沿って収集され、予め定義された数の複素値信号データポイントを含む離散時系列として表される。第1シーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号を使用して、回転角度及び並進移動量、並びに/又は磁場の変化を、ナビゲータ信号の対応する変化に1次近似で関連付ける変換行列が計算される。後続するシーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号を使用して、対応する線形最小二乗推定問題を解くことにより、物体の並進変位及び回転変位に関して物体の動きが推定され、並びに/又は第1シーケンスモジュールと後続するシーケンスモジュールとの間のスカラー磁場変動及びベクトル磁場変動に関して磁場オフセットが推定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に前記物体の動きを推定する方法であって、主磁石によって前記物体に主磁場が発生し、画像を形成するためのMRシーケンスに従って重畳磁場及び無線周波磁場が発生し、
- 前記MRシーケンスがシーケンスモジュールの列を含み、
- 各シーケンスモジュールが、無線周波(RF)励起セグメント及び画像符号化勾配セグメントを含み、
- 前記MRシーケンスが、複数のナビゲータ勾配セグメントをさらに含み、
前記方法では
- 各シーケンスモジュールの測定セグメントの間、RF受信コイル又はコイルアレイを用いて物体信号が収集され、
- 前記ナビゲータ勾配セグメントの各々の間、前記RF受信コイル又はコイルアレイを用いてナビゲータ信号が収集される
方法において、
- 前記ナビゲータ信号が、k空間の軌跡k(t)に沿って収集され、
- 所与のシーケンスモジュールにおける前記ナビゲータ信号が、予め定義された数Nの複素数値信号データ点を含む離散時系列として表され
s(k(t))、式中、i=1~N、
- 回転角度及び並進移動量をナビゲータ信号の対応する変化に1次近似で関連付ける変換行列Mが、第1シーケンスモジュールで収集された前記ナビゲータ信号s(k(t))から計算され、前記ナビゲータ信号s(k(t))が、任意選択的に、少なくとも1つのさらなるシーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号s(k(t))を含み、
- 後続するシーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号
【数1】

を使用して、以下の線形最小二乗推定問題
【数2】

を解くことにより、前記第1シーケンスモジュールと前記後続するシーケンスモジュールとの間の前記物体の並進変位Δx及び回転変位θに関して物体の動きが推定される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記線形最小二乗推定問題が、前記ナビゲータ信号の差と前記変換行列Mのムーア・ペンローズ擬似逆行列Mとの乗算によって解かれる、請求項1に記載の動き推定方法。
【請求項3】
前記シーケンスモジュールの各々において1つのナビゲータ勾配セグメントが実行される、請求項1又は2に記載の動き推定方法。
【請求項4】
それぞれのシーケンスモジュールの前記ナビゲータ勾配セグメントが、前記それぞれのシーケンスモジュールの前記RF励起セグメントと前記画像符号化セグメントとの間で実行される、請求項3に記載の動き推定方法。
【請求項5】
それぞれのシーケンスモジュールの各ナビゲータ勾配セグメントが、前記それぞれのシーケンスモジュールの前記画像符号化セグメントの後であるが、前記それぞれのシーケンスモジュールに続くシーケンスモジュールの前記RF励起セグメントの前に実行される、請求項3に記載の動き推定方法。
【請求項6】
物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に前記物体を取り囲む領域における磁場オフセットを推定する方法であって、主磁石によって前記物体に主磁場が発生し、画像を形成するためのMRシーケンスに従って重畳磁場及び無線周波磁場が発生し、
- 前記MRシーケンスがシーケンスモジュールの列を含み、
- 各シーケンスモジュールが、無線周波(RF)励起セグメント及び画像符号化勾配セグメントを含み、
- 前記MRシーケンスが、複数のナビゲータ勾配セグメントをさらに含み、
前記方法では
- 各シーケンスモジュールの測定セグメントの間、RF受信コイル又はコイルアレイを用いて物体信号が収集され、
- 前記ナビゲータ勾配セグメントの各々の間、前記RF受信コイル又はコイルアレイを用いてナビゲータ信号が収集される
方法において、
- 前記ナビゲータ信号が、k空間の軌跡k(t)に沿って収集され、
- 所与のシーケンスモジュールにおける前記ナビゲータ信号が、予め定義された数Nの複素数値信号データ点を含む離散時系列として表され
s(k(t))、式中、i=1~N、
- 前記磁場の変化をナビゲータ信号の対応する変化に1次近似で関連付ける変換行列Qが、第1シーケンスモジュールで収集された前記ナビゲータ信号s(k(t))から計算され、前記ナビゲータ信号s(k(t))が、任意選択的に、少なくとも1つのさらなるシーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号s(k(t))を含み、
- 後続するシーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号
【数3】

を使用して、以下の線形最小二乗推定問題
【数4】

を解くことにより、前記第1シーケンスモジュールと前記後続するシーケンスモジュールとの間のゼロ次磁場変動ΔB及び1次磁場変動
【数5】

に関して、磁場オフセットが推定される
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に前記物体を取り囲む領域における前記物体の動き及び磁場オフセットを推定する方法であって、画像を形成するためのMRシーケンスに従って重畳磁場及び無線周波磁場が発生し、
- 前記MRシーケンスがシーケンスモジュールの列を含み、
- 各シーケンスモジュールが、無線周波(RF)励起セグメント及び画像符号化勾配セグメントを含み、
- 前記MRシーケンスが、複数のナビゲータ勾配セグメントをさらに含み、
前記方法では
- 各シーケンスモジュールの測定セグメントの間、RF受信コイル又はコイルアレイを用いて物体信号が収集され、
- 前記ナビゲータ勾配セグメントの各々の間、前記RF受信コイル又はコイルアレイを用いてナビゲータ信号が収集される
方法において、
- 前記ナビゲータ信号が、k空間の軌跡k(t)に沿って収集され、
- 所与のシーケンスモジュールにおける前記ナビゲータ信号が、予め定義された数Nの複素数値信号データ点を含む離散時系列として表され
s(k(t))、式中、i=1~N、
- 回転角度、並進移動量、及び前記磁場の変化をナビゲータ信号の対応する変化に1次近似で関連付ける変換行列Rが、第1シーケンスモジュールで収集された前記ナビゲータ信号s(k(t))から計算され、前記ナビゲータ信号s(k(t))が、任意選択的に、少なくとも1つのさらなるシーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号s(k(t))を含み、
- 後続するシーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号
【数6】

を使用して、以下の線形最小二乗推定問題
【数7】

を解くことにより、前記物体の並進変位Δx及び回転変位θに関して物体の動きが推定され、前記第1シーケンスモジュールと前記後続するシーケンスモジュールとの間のスカラー磁場変動ΔB及びベクトル磁場変動
【数8】

に関して、磁場オフセットが推定される
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に、前記物体の動き及び/又は前記物体を取り囲む領域における磁場オフセットをプロスペクティブに補正する方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法が実施されて、前記物体の動き及び/又は前記磁場オフセットの推定値がもたらされ、前記推定値が、前記ナビゲータを含む前記シーケンスモジュールの後続する実行を補正するために使用される、方法。
【請求項9】
物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に、前記物体の動き及び/又は前記物体を取り囲む領域における磁場オフセットをレトロスペクティブに補正する方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法が実施されて、前記物体の動き及び/又は前記磁場オフセットの推定値がもたらされ、前記推定値が、前記MR画像形成シーケンスから再構成されたMR画像を補正するために使用される、方法。
【請求項10】
物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に、前記物体の動き及び/又は前記物体を取り囲む領域における磁場オフセットを補正する方法であって、請求項8及び9のステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中の物体の動き及び/又は磁場オフセットを推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の動きは、MR撮像における画像アーチファクトの主要な原因の1つである。過去数十年の間に、動き補正のための多くの異なる方法が開発されてきた(非特許文献1~3)。k空間ナビゲータは、いかなる追加のハードウェアも必要としない、純粋にMR信号に基づく手法であるため、特に有望な手法である。
【0003】
ナビゲータベースの動き推定方法は、とりわけ、(特許文献1)及び(特許文献2)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6771068号明細書
【特許文献2】米国特許第7358732号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ザイツェフ・マキシム(Zaitsev Maxim)、マクラーレン・ジュリアン(Maclaren Julian)及びヘルブスト・ミヒャエル(Herbst Michael)著、「MRIにおける動きアーチファクト:多くの部分解を有する複雑な問題(Motion artifacts in MRI:A complex problem with many partial solutions)」、磁気共鳴医学会雑誌(Journal of Magnetic Resonance Imaging)、第42巻、p.887~901、2015年
【非特許文献2】ゴーデンシュウェジェル,F(Godenschweger,F.)ら著、「脳のMRIにおける動き補正(Motion correction in MRI of the brain)」、医学・生物学における物理学(Phys.Med.Biol.)、第61巻、R32頁、2016年
【非特許文献3】マクラーレン,J.(Maclaren,J.)、ヘルブスト,M.(Herbst,M.)、スペック,O.(Speck,O.)及びザイツェフ,M.(Zaitsev,M.)著、「脳撮像におけるプロスペクティブ動き補正:レビュー(Prospective motion correction in brain imaging:A review)」、磁気共鳴医学会(Magnetic Resonance in Medicine)、第69巻、p.621~636頁、2013年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、現時点で知られている方法の限界及び欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に物体の動きを推定する方法が提供され、そこでは、主磁石によって対象の物体に主磁場が発生し、画像を形成するためのMRシーケンスに従って重畳磁場及び無線周波磁場が発生し、
- MRシーケンスはシーケンスモジュールの列を含み、
- 各シーケンスモジュールは、無線周波(RF)励起セグメント及び画像符号化勾配セグメントを含み、
- 前記MRシーケンスは、複数のナビゲータ勾配セグメントをさらに含み、
この方法では、
- 各シーケンスモジュールの測定セグメントの間、RF受信コイル又はコイルアレイを用いて物体信号が収集され、
- 前記ナビゲータ勾配セグメントの各々の間、前記RF受信コイルを用いてナビゲータ信号が収集される。
【0008】
「対象物体」という用語は、磁気共鳴撮像に適している任意の物体を含むと理解されるものとする。特に、この用語は、診断及び/又は治療介入を必要とするヒト患者を含む、任意のヒト又は動物の対象も含むものとする。
【0009】
この態様によれば、
- 前記ナビゲータ信号は、k空間の軌跡k(t)に沿って収集され、
- 所与のシーケンスモジュールにおける前記ナビゲータ信号は、予め定義された数Nの複素数値信号データ点を含む離散時系列として表され
s(k(t))、式中、i=1~N、
- 第1シーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号s(k(t))を使用して、回転角度及び並進移動量をナビゲータ信号の対応する変化に1次近似で関連付ける変換行列Mが計算され、
- 後続するシーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号
【0010】
【数1】
【0011】
を使用して、以下の線形最小二乗推定問題
【0012】
【数2】
【0013】
を解くことにより、前記第1シーケンスモジュールと前記後続するシーケンスモジュールとの間の物体の並進変位Δx及び回転変位θに関して物体の動きが推定される。
簡潔にするために、後続するシーケンスモジュールで収集された前記ナビゲータ信号
【0014】
【数3】
【0015】
は、「後続するナビゲータ信号
【0016】
【数4】
【0017】
」ともいう。さらに、明確且つより簡単な表記のために、本方法について、最初に、マルチチャネルRF受信アレイに関係なく説明する。その後、マルチチャネルアレイを使用して収集されたナビゲータ信号を処理する方法について説明する。
【0018】
有利な実施形態について、以下に、及び従属請求項において定義する。
本発明は、撮像された物体の回転により、それに応じてk空間信号が回転し、並進により、信号に線形位相シフトがもたらされる、という原理に依拠している。これらは、フーリエ変換の既知の特性である。形式的にはs(k(t))及び
【0019】
【数5】
【0020】
によって、3×3回転行列R(θ)及びベクトルΔxの3次元(3D)移動量を適用する前及び後のk空間信号を示す場合、以下のようになる。
【0021】
【数6】
【0022】
ここでθ=(θ,θ,θは3つの回転角度の列ベクトルを示し、各々が1つの座標軸の周りにある。同様にΔx=(Δx,Δx,Δxは3要素の列ベクトルであり、3つの座標軸に沿った並進変位を表す。
回転角度及び並進ベクトルが小さい場合、上記式は1次テイラー展開によって近似することができ、それは、角度及び移動量の1次関数として書くことができる。このためには、
【0023】
【数7】
【0024】
を回転角度θ及び移動量Δxの関数として解釈する必要がある。
回転角度及び移動量が小さいという仮定は、撮像された物体が撮像スキャン中に小さい動きしか行わない場合に満足される。物体がより大きい動きを行う場合、この仮定は通常、米国特許第6771068B2号明細書に説明されているように、推定された動きパラメータが直ちにMRスキャナシステムにフィードバックされ、スキャナが物体の動きをリアルタイムで補正する場合、依然として満足される。特に、スキャナ勾配座標系の向きは、撮像された物体の回転に従わなければならない。さらに、物体の並進を補償するために、ナビゲータ信号及び撮像信号に位相オフセットを加えなければならない。
【0025】
複素指数関数は以下の既知のべき級数展開を有しているため、Δx、Δx、Δxに関する上記式の導関数を計算するのは簡単である。
【0026】
【数8】
【0027】
回転角度θ、θ、θに関する式の導関数(又はその近似値)を求めることは、より困難であり、それについては後に説明する。これらの導関数をds/dθ・θ(d=1,2,3)によって示す場合、テイラー展開は以下のようになる。
【0028】
【数9】
【0029】
理論的には、導関数ds/dθは以下の微分の連鎖律を使用して計算することができる。
ds/dθ=∂s/∂k・∂/∂θ[R(θ)k(t)]
しかしながら、実際には、偏微分∂s/∂kは未知である。代わりに、信号s(k(t))を時間の関数として解釈した場合、時間微分
【0030】
【数10】
【0031】
を計算することができる。これは、
【0032】
【数11】
【0033】
の方向におけるs(k(t))の方向微分と等価であり、以下のように、ナビゲータのk空間軌跡の接線ベクトルである。
【0034】
【数12】
【0035】
線形代数学から、2つのベクトルv及びwが与えられたとき、ベクトルvは、第1ベクトルがwに平行であり、第2ベクトルがwに直交するような、2つのベクトルの和として書くことができることが知られている。これらの2つのベクトルのうちの第1ベクトルは、vのwへの正投影とも称される。このように、回転変位∂/∂θ[R(θ)k(t)]は、k空間軌跡の接線成分(
【0036】
【数13】
【0037】
の倍数)と、
【0038】
【数14】
【0039】
に直交する成分とに分割することができる。
【0040】
【数15】
【0041】
最後の3つの式を組み合わせることにより、導関数ds/dθを接線部分と直交部分とに分割することができることが分かる。
【0042】
【数16】
【0043】
【数17】
【0044】
に直交する任意の方向における導関数を計算するには、ナビゲータ軌跡の近傍からのk空間データが必要になるが、これはサンプリングされていない。この問題に対する1つの実用的な解決策は、ここではηとして示す、導関数ds/dθの接線成分のみを考慮することである。
【0045】
【数18】
【0046】
別法として、小さい回転の下での有限差分の参照測定によって完全導関数ds/dθを求めることができる。十分に小さい角度αに対して、以下のように導関数を求めることができる。
【0047】
ds/dθ≒1/α[s(R(α・e)k(t))-s(k(t))]
ここで、eは、d番目の基本単位ベクトルを示す。ナビゲータ信号s(R(α・e)k(t))は、3つの座標軸の各々を中心とする小さい回転に対して収集される。言い換えれば、変換行列Mは、初期ナビゲータ信号のセット、すなわち、すべて物体の動きを推定するために使用される前記後続するナビゲータ信号
【0048】
【数19】
【0049】
の前に実行される、前記第1シーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号s(k(t))と、1つ又はさらなるシーケンスモジュールで収集されたナビゲータ信号s(k(t))とから計算される。
【0050】
複素数値ナビゲータ信号の測定ノイズはゼロ平均ガウス分布に従うため、線形最小二乗推定によって角度θ及び移動ベクトルΔxを計算する。分光計は、離散的な時点t、t、…、tでのみMR信号をサンプリングする。推定問題を行列-ベクトル形式で書くことが有利である。回転角度及び移動量を信号摂動に関係付ける、以下の行列Mを定義する。Mの各行は、分光計が信号値s(k(t))を収集した1つの時点tに対応する。Mの最初の3つの列は、移動量Δx、Δx及びΔxに関する信号の導関数を表す。最後の3つの列は、回転角度θ、θ、θに関する導関数(又はその近似値)を表す。
【0051】
【数20】
【0052】
サンプリングされたMR信号を列ベクトルs、
【0053】
【数21】
【0054】
にスタックした場合、以下の線形最小二乗推定問題を解く必要がある。
【0055】
【数22】
【0056】
有利な実施形態(請求項2)によれば、これは信号ベクトルとMのムーア・ペンローズ擬似逆行列との乗算によって行われる。
【0057】
【数23】
【0058】
磁気共鳴撮像における通常の収集帯域幅と、ナビゲータ信号の予期される読出し時間とを考慮すると、行列Mの行の数は列の数よりも著しく大きくなる。したがって、推定問題は非常に過剰決定的である。
【0059】
ムーア・ペンローズ擬似逆行列の適用とは別に、上記の最小二乗推定問題の解を計算するための多くの異なる確立された方法が存在することは、当業者には明らかとなろう。これらには、とりわけ、QR分解又は特異値分解(SVD)が含まれる。さらに、厳密な解を計算する代わりに、共役勾配(CG)アルゴリズムのような方法を使用して解を近似することができる。推定問題の条件付けを改善するために、行列Mに何らかの形態の正則化を適用してもよい。最も一般的な選択は、チホノフ(Tikhonov)正則化であるが、他の多くの変形例が可能である。
【0060】
ナビゲータ信号がいくつかの別個の受信チャネルを有するRFコイルアレイを使用して収集される場合、各受信チャネルからのナビゲータ信号に対して別個に行列Mを計算することができる。s
【0061】
【数24】
【0062】
が、チャネルcから収集された信号を示し、Mが、チャネルcからの信号のみから計算された行列を示す場合、以下のように、線形最小二乗問題に受信チャネルにわたる和を導入することにより、θ及びΔxを計算することができる。
【0063】
【数25】
【0064】
別法として、別個の受信チャネルからの信号値を、加重和を用いて結合して1つの仮想受信チャネルにすることもできる。このプロセスは、MRIの文献ではコイル圧縮又はアレイ圧縮として知られている。行列M、最終的にはθ及びΔxの値は、結合されたナビゲータ信号から計算される。
【0065】
簡単に言えば、本発明は、ナビゲータベースの動き推定のための新たなアルゴリズムに依存し、このアルゴリズムは、正確度が高く計算複雑性の低い、回転及び並進を推定する複素数値信号変化の線形摂動モデルを使用する。
【0066】
ナビゲータ勾配セグメントのタイミングは、MRIスキャンの他の要件に従って選択することができる。後続するナビゲータ勾配セグメント間の時間的分離は、適用される形式論における高次の項の無視を可能にするのに十分小さくあるべきであることが理解されよう。
【0067】
有利な実施形態(請求項3)によれば、シーケンスモジュールの各々において1つのナビゲータ勾配セグメントが実行される。他の実施形態では、ナビゲータ勾配セグメントは、例えば1つおき又は2つおきのシーケンスモジュールに適用される。原則としては、一連の非等距離ナビゲータ勾配セグメントを適用することもできる。
【0068】
同様に理解されるように、ナビゲータ勾配セグメントは、MRシーケンスの適切な領域に、すなわち、RF励起セグメント又は画像符号化セグメントと重ならない領域に、適用されるべきである。有利な実施形態(請求項4)によれば、それぞれのシーケンスモジュールの各ナビゲータ勾配セグメントは、前記それぞれのシーケンスモジュールのRF励起セグメントと画像符号化セグメントとの間で実行される。別の有利な実施形態(請求項5)によれば、それぞれのシーケンスモジュールの各ナビゲータ勾配セグメントは、前記それぞれのシーケンスモジュールの画像符号化セグメントの後であるが、前記それぞれのシーケンスモジュールに続くシーケンスモジュールのRF励起セグメントの前に実行される。
【0069】
本発明のさらなる態様(請求項6)によれば、物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に物体を取り囲む領域における磁場オフセットを推定する方法が提供される。
テイラー展開及び線形最小二乗法による推定と同じ原理を使用して、磁場オフセットも推定することができる。スキャナのボア内に配置される物体のMR信号は、その横磁化が3次元空間座標xの関数ρ(x)によって記述され、以下の式によって与えられる。
【0070】
【数26】
【0071】
磁場における不要なオフセットΔB(x,t)の場合、式は以下のように変化する。
【0072】
【数27】
【0073】
磁場オフセットΔB(x,t)を推定するために、最初に、それをパラメータ化し、有限の数のパラメータで表現することができるようにしなければならない。したがって、磁場オフセットを表現するのに好適であると考えられる基底関数のセットを選択する。空間座標xに関するパラメータ化の1つの自然な選択は、広範囲の一般的な磁場展開の中で、球面調和関数(例えば、最大2次又は3次)のサブセットである。時間座標tに関しては、例えば多項式基底を選択することができる。
【0074】
ゼロ次球面調和関数は、空間的に均一な磁場オフセットを記述する。特に、オフセットが位置x及び(1回のナビゲータ収集中の)収集時間tに対して一定である場合、
【0075】
【数28】
【0076】
と書くことができる。符号化中のこうした背景磁場オフセットの影響は、時間に対して線形である位相オフセットを非摂動信号に乗算することと等価である。
【0077】
【数29】
【0078】
1次球面調和関数は、3つの座標方向のうちの1つにおいて線形に増大する磁場(いわゆる勾配磁場)を記述する。勾配磁場は、位置xにおいて線形であるため、形態ΔB(x,t)=G+G+G(それらは時間的に一定であると仮定する)をとり、ここで、係数Gは、3つの座標方向の勾配強度を示すスカラーである。
【0079】
【数30】
【0080】
これらの背景磁場勾配の影響は、修正されたk空間軌跡
【0081】
【数31】
【0082】
で信号を収集することと等価である。
【0083】
【数32】
【0084】
回転推定の場合と同様に、変位係数λ(t)を計算することができる。
【0085】
【数33】
【0086】
回転及び並進の推定に関しては、磁場オフセットパラメータを結果として得られる信号の変化に関連付ける行列Qを構築する。
【0087】
【数34】
【0088】
この行列を使用して、線形最小二乗推定により磁場パラメータを計算する。
【0089】
【数35】
【0090】
空間的に均一な(ΔB)磁場オフセット及び空間的に線形の(G,G,G)磁場オフセット以外に、同じ原理を、予期される磁場オフセットを展開するのに好適であると考えられる基底関数の他の任意のセットとともに、等しく使用することができる。1つの自然な選択は、広範囲の一般的な磁場展開の中で、球面調和関数(例えば、最大2次又は3次)のサブセットである。磁場展開はまた、好適な基底関数を決定するための(例えば、磁場マッピングによる)事前測定又はシミュレーションを使用して、所与の物体、被験者又は身体部位に対して特別に選択してもよい。これらの場合の各々において、提案する方法を展開するために、重要なステップは、磁場展開の係数に関してナビゲータ信号の導関数を求めることであり、それらの導関数は、モデル行列Qの列を形成する。基底関数に応じて、これらの導関数又はその近似値は、解析的に入手可能であり得るか、又は、測定若しくはシミュレーションによって決定しなければならない。信号導関数の測定のために、1つの選択肢は、まず参照状態でナビゲータ信号を収集し、次いで、問題の基底関数によって与えられる空間構造の小さい磁場オフセットが存在する状態で再度ナビゲータ信号を収集するというものである。導関数の優れた近似値は、ナビゲータ信号の差を基底関数のスケールの摂動の強度で割った値で与えられる。この選択肢は、例えば、利用可能な勾配コイル及びシムコイルで発生させることができる磁場パターンから形成される基底の場合、簡単である。利用可能な勾配磁場及びシム磁場は、それぞれの信号導関数の測定を容易に可能にするだけでなく、一度検出された磁場オフセットの能動的な補償を、同じ勾配チャネル及びシムチャネルの作動によって可能にするという点で、特に有利な基底を形成する。
【0091】
さらに、任意の空間的パターンの他に、磁場展開のための基底関数に、ナビゲータ収集の持続時間にわたる時間的変化も与えることができる。1つの自然な選択肢は、時間に対するテイラー級数の決定を可能にする、時間のべき乗(1,t,t,t…)による時間的変化である。別の有用な選択肢は、渦電流によって引き起こされる磁場オフセットを捕捉する経時的な指数関数的減衰(e-at)である。各基底関数に対する選択された空間的変動及び時間的変動の任意の組合せにより、Q行列の対応する列は、解析的に、測定により、又はシミュレーションにより決定された、関連する展開係数に対するナビゲータ信号の導関数で与えられる。
【0092】
本発明のさらなる態様(請求項7)によれば、物体の磁気共鳴(MR)撮像スキャン中に物体を取り囲む領域における(i)物体の動き、及び(ii)磁場オフセットを推定する方法が提供される。この方法は、上述した態様を組み合わせ、上記に定義された行列M及びQを組み合わせた変換行列R、すなわち以下の行を有する行列に依拠する。
【0093】
【数36】
【0094】
本発明のさらなる態様は、請求項7、8及び9に定義されており、それらについては後に説明する。
推定された回転角度、並進移動量及び/又は磁場オフセットを使用して、スキャン手順の間にリアルタイムで物体の動き及び磁場オフセットの影響を補償することができる。これは一般に、プロスペクティブ補正と称される。
【0095】
簡単に言えば、物体の動きは、回転及び移動した物体に撮像ボリュームを再度位置合わせすることによりリアルタイムに補償される。物体の回転は、それに応じて後続する勾配波形を回転させることにより補償される。並進は、後続するMR信号に線形位相オフセットを加えることにより補正される。
【0096】
一定の磁場オフセットは、収集時間に対して線形であるMR信号に位相を加えるため、この位相オフセットを信号値から除去することにより、磁場オフセットを補償することができる。高次の磁場オフセットは、MRシステムのシムコイルを使用して補償することができる。
【0097】
別法として、スキャンが完了した後、画像再構成中に、物体の動き及び/又は磁場オフセットの影響を補償することができる。これは一般にレトロスペクティブ補正と称される。
【0098】
プロスペクティブ補正とレトロスペクティブ補正とを組み合わせることもできる。これは、例えば、リアルタイム補正により、動き及び磁場パラメータを推定する時点と補償を適用する時点との間に時間遅延が生じる場合に有用である。この場合、時間遅延のためにプロスペクティブ補正中に補償することができなかった残留誤差を、レトロスペクティブ補正を使用して補正することができる。
【0099】
上述したような(動きパラメータ、磁場オフセットパラメータ、又は両方の)推定のすべての実施態様に対して、それぞれのMRIスキャン中に能動的補償のために結果として得られる推定を使用することが有利である。動きの能動的補償は、典型的には、ナビゲータを含むMRIシーケンスが展開される座標系の対応する回転及び並進によって行われる。この概念は、プロスペクティブ動き補正(PMC:prospective motion correction)として知られている。磁場オフセットの能動的補償は、対応する勾配及びシムの作動並びにゼロ次シム(均一磁場)の作動、又は同等の信号復調によって行われる。重要なことには、収集された画像データから誤差を取り除くだけでなく、こうした補償は、参照ナビゲータが収集された参照状況を模倣し、それにより、ナビゲータの各個々の繰返しで検出される動き及び磁場オフセットの増分は小さく、したがって、この方法論の基礎となる1次摂動法と一貫する。
【0100】
ランタイム補償の有無にかかわらず、収集された生画像データの、残留する有効な動き及び/又は磁場オフセットによる摂動は、画像再構成段階で対処することができる。この段階は通常、基礎となる有効な動き及び磁場オフセットが小さい場合に、数値的に最も良好である(最適に調整される)。したがって、検出された動き及び磁場オフセットを再構成レベルで補正することは、概して、先行するランタイム補償と組み合わせて最も効果的である。
【0101】
添付の図面とともに本発明のさまざまな実施形態の以下の説明を参照することにより、本発明の上述した及びその他の特徴及び目的、並びにそれらを達成する方法がより明らかになり、本発明自体もよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】励起後、及び画像符号化勾配の前に、3D軌道ナビゲータ勾配が挿入されている3D T2重み付きFFEシーケンスのシーケンス図を示す。
図2a】軌道ナビゲータk空間軌跡であって、軌跡形状のパラメトリックプロットである。
図2b】軌道ナビゲータk空間軌跡であって、経時的な軌跡、勾配及びスルーレートのプロットを示し、軌跡は、3つの直交する円で構成され、それの間に滑らかな遷移があり、200rad/mの半径では、ナビゲータ勾配は約1.65ミリ秒で実行することができる。
図3a】静止ファントム(パイナップル)を用いた実験から推定された回転角度(上段)及び並進移動量(下段)を示す。
図3b】経時的な回転角度及び並進パラメータの標準偏差(下段)及び二乗平均平方根(上段)を示す。
図4a】志願者が静止したままであるように指示された生体内実験から推定された動きパラメータ、すなわちAP軸周りの回転(上図)及び前後(AP)軸に沿った移動量(下図)を示す。
図4b】2つの選択された軸の運動時系列のスペクトル、すなわち、1.22Hzでスペクトルのピークを示す左右(LR)軸周りの回転のスペクトル(上図)と、0.30Hzでピークを示す頭足(HF)軸に沿った移動量のスペクトル(下図)とを示す。
図5】志願者が頭を6自由度すべてにおいてランダムに動かすよう指示された生体内実験から回転角度に関する推定された動きパラメータ(上図)と、移動量に関連する推定された動きパラメータ(下図)の観点から推定された動きパラメータを示す。
図6】プロスペクティブ補正とレトロスペクティブ補正とを組み合わせて動きを推定する方法の一実施形態の概略図を示す。
図7】プロスペクティブ補正とレトロスペクティブ補正を組み合わせて動きを推定する方法の第2変形例の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0103】
MRの分野で一般に知られているように、MRシーケンスは、連続するシーケンスモジュールの各組の間にシーケンス繰返し期間TRを有するシーケンスモジュールの列を含む。こうしたシーケンスモジュールの1つを図1に概略的に示し、図1は、図示する例では、励起後、及び画像符号化勾配セグメントの前に位置している、ナビゲータ勾配セグメントのセットも示す。
【0104】
(実施例)
32チャネルヘッドコイルを使用する7Tフィリップス(Philips)アチーバ(Achieva)スキャナで、実験を行った。図2に示すシングルショット3D軌道ナビゲータ(ウルリッヒ,T.(Ulrich,T.)、パツィヒ,F.(Patzig,F.)、ウィルム,B.J.(Wilm,B.J.)及びプルースマン,K.P.(Pruessmann,K.P.)著、「3次元剛体動き推定のための軌道K空間ナビゲータの最適設計に向けて(Towards Optimal Design of Orbital K-Space Navigators for 3D Rigid-Body Motion Estimation)」、ISMRM & SMRTバーチャルカンファレンス&エキシビション(Virtual Conference & Exhibition)、2020年)を使用した。
【0105】
本方法の精度を調べるため、静止ファントム(パイナップル)をヘッドコイル内に配置した。3D T2w-FFE撮像スキャン中にナビゲータ信号を収集し、ナビゲータ信号から動きパラメータを推定した。
【0106】
2つの生体内実験も行った。第1実験では、2.5分間のFFEスキャンシーケンスの間、志願者に静止したままでいるように指示した。第2目の実験の間、志願者に6自由度すべてにおいて頭を動かすように指示した。本出願で提案するアルゴリズムを使用して、動きパラメータを推定した。
【0107】
図3は、静止ファントムを用いた実験の結果を示す。このアルゴリズムにより、±0.15度の範囲の回転角度と、±60μmの範囲の移動量とがもたらされ、二乗平均平方根値は最大0.04度及び25μmであった。
【0108】
図4及び図5は、2つの生体内実験から推定された回転角度及び移動量を示す。意図的な動きを伴わない実験の間、回転は±0.2度及び±0.25mmの範囲内であるように推定されたが、HF軸では、推定された移動量の値が約-0.2mmでドリフトして振動しているように見える。スペクトルは、0.30Hz及び1.22Hzで明確なピークを示した。
【0109】
志願者が意図的に動いた場合、本出願のアルゴリズムにより、最大±2度の回転角度及び±3.5mmの移動量が報告された。
ファントム実験により、本出願の方法が高い精度及び正確度を示すことが実証される。実際の物体の動きが発生していないことが分かっているため、本発明の方法の推定値は最大0.04度、25μmのRMS誤差で正確であり、標準偏差もほぼ同じ大きさであると結論づけることができる。
【0110】
生体内実験の場合、残念ながらグランドトゥルースが得られない。しかしながら、結果は、本発明のアルゴリズムが頭部の動きに対して高感度であることを示している。0.30Hz及び1.22Hzでのスペクトルのピークは、呼吸及び心拍による可能性が高い。頭部の動き推定の正確度及び精度については、今後さらなる調査を行う予定である。
【0111】
結論として、本発明の動き推定アルゴリズムを使用して剛体運動を正確に且つ高精度に特徴付けることができることを実証した。ナビゲータの読出しは非常に高速であり、アルゴリズムは、非常に低い計算複雑性を有するため、動きパラメータはミリ秒以内に計算することができる。
【0112】
プロスペクティブ補正とレトロスペクティブ補正とを組み合わせて動きを推定する方法の第1変形例を図6に示す。
プロスペクティブ補正とレトロスペクティブ補正とを組み合わせて動きを推定する方法の第2変形を図7に示す。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
【国際調査報告】