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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】薄膜の蒸着方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20240625BHJP
   H01L 21/314 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240625BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/314 A
H01L29/78 301B
H01L29/78 301G
C23C16/455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571349
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2022006409
(87)【国際公開番号】W WO2022245021
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0063491
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504210651
【氏名又は名称】ジュスン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュン キュン
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
5F140
【Fターム(参考)】
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA01
4K030BA10
4K030BA17
4K030BA18
4K030BA42
4K030BA44
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA02
4K030FA01
4K030FA10
4K030JA10
4K030LA15
5F058BA01
5F058BB01
5F058BB06
5F058BC02
5F058BC03
5F058BC08
5F058BC11
5F058BD04
5F058BD05
5F058BD10
5F058BD15
5F058BE10
5F058BF07
5F058BF37
5F058BG01
5F058BH16
5F058BJ01
5F140BA02
5F140BD11
5F140BD13
5F140BE09
(57)【要約】
本発明は、薄膜の蒸着方法に関し、より詳細には、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成するための薄膜の蒸着方法に関する。
本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、複数の半導体領域を有する炭化ケイ素基板を設けるステップと、前記炭化ケイ素基板の上に、100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体領域を有する炭化ケイ素基板を設けるステップと、
前記炭化ケイ素基板の上に、100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップと、
を含む、薄膜の蒸着方法。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜を形成するステップの前に、
前記炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップをさらに含む、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項3】
前記ゲート絶縁膜を形成するステップは、
前記炭化水素基板の上に原料ガスを供給するステップと、
前記炭化水素基板をプラズマを用いて前処理するステップと、
前記炭化水素基板の上に反応ガスを供給するステップと、
前記炭化水素基板をプラズマを用いて後処理するステップと、
を含み、
前記原料ガスを供給するステップ、前処理するステップ、反応ガスを供給するステップ、及び後処理するステップを含む工程サイクルは複数回行われる、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項4】
前記前処理するステップ及び後処理するステップは、
前記炭化水素基板の上に水素ガスを噴射するステップと、
前記水素ガスを放電して、前記炭化水素基板の上にプラズマを生じさせるステップと、
を含む、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項5】
前記ゲート絶縁膜は、ハイ-K(high-K)誘電体層を備える、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項6】
前記ゲート絶縁膜は、前記ハイ-K(high-K)誘電体層の上部及び下部のうちの少なくとも一方に設けられる酸化ケイ素層または窒化ケイ素層をさらに備える、請求項5に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項7】
前記炭化水素基板を設けるステップは、ソース領域、ウェル領域及びドレイン領域を有する炭化ケイ素基板を設けるものであり、
前記ゲート絶縁膜を形成するステップは、前記ウェル領域の上にゲート絶縁膜を形成するものである、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の蒸着方法に関し、より詳細には、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成するための薄膜の蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC;silicon carbide)は、通常のケイ素に比べてバンドギャップ(band gap)が高い半導体であって、ケイ素よりも高い降伏電圧を有しながらも、損失は少なく、しかも、放熱性には優れているという特性を示す。特に、絶縁破壊電界がケイ素に比べて約10倍ほど抜群であることから、ケイ素を用いた半導体素子に比べて電圧の降下を約200分の1までに減少させることができるという大きな長所がある。この理由から、炭化ケイ素は、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子の分野においてケイ素に代え得る有力な半導体材料としてみなされている。
【0003】
トランジスター(Transistor)は、ディスプレイ装置や半導体素子においてスイッチング回路として用いられる。このようなトランジスターは、ソース(source)とドレイン(drain)との間の電流を遮断するためのゲート絶縁膜を有する。
【0004】
従来には、このような薄膜トランジスターを製造するに際して、炭化ケイ素基板の上に形成されるゲート絶縁膜を約1200℃の高温において蒸着していた。
【0005】
しかしながら、このように、炭化ケイ素基板を高温に加熱した状態で、ゲート絶縁膜を形成すると、基板または前記基板の上に形成される薄膜に損傷が生じてしまうという問題がある。これは、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子のトランジスターの機能を低下させたり不良を引き起こしたりする要因として働き、特に、トランジスターをスイッチング回路として用いるディスプレイ装置やパワー半導体素子の品質及び信頼性を大幅に低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2009-0055368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低温において炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成することのできる薄膜の蒸着方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、複数の半導体領域を有する炭化ケイ素基板を設けるステップと、前記炭化ケイ素基板の上に、100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップと、を含む。
【0009】
前記薄膜の蒸着方法は、前記ゲート絶縁膜を形成するステップの前に、前記炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップをさらに含んでいてもよい。
【0010】
前記ゲート絶縁膜を形成するステップは、前記炭化水素基板の上に原料ガスを供給するステップと、前記炭化水素基板をプラズマを用いて前処理するステップと、前記炭化水素基板の上に反応ガスを供給するステップと、前記炭化水素基板をプラズマを用いて後処理するステップと、を含み、前記原料ガスを供給するステップ、前処理するステップ、反応ガスを供給するステップ、及び後処理するステップを含む工程サイクルは複数回行われてもよい。
【0011】
前記前処理するステップ及び後処理するステップは、前記炭化水素基板の上に水素ガスを噴射するステップと、前記水素ガスを放電して、前記炭化水素基板の上にプラズマを生じさせるステップと、を含んでいてもよい。
【0012】
前記ゲート絶縁膜は、ハイ-K(high-K)誘電体層を備えていてもよい。
【0013】
前記ゲート絶縁膜は、前記ハイ-K(high-K)誘電体層の上部及び下部のうちの少なくとも一方に設けられる酸化ケイ素層または窒化ケイ素層をさらに備えていてもよい。
【0014】
前記炭化水素基板を設けるステップは、ソース領域、ウェル領域及びドレイン領域を有する炭化ケイ素基板を設けるものであり、前記ゲート絶縁膜を形成するステップは、前記ウェル領域の上にゲート絶縁膜を形成するものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、低温工程を用いて炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成することができる。また、ゲート絶縁膜を形成するために基板を昇温させる時間を節約することができ、これにより、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子の製造時間を短縮させることができる。
【0016】
また、本発明の実施形態によれば、高い降伏電圧を有しながらも、放熱性に優れたディスプレイ装置またはパワー半導体素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る蒸着装置を概略的に示す図。
図2】本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法を概略的に示す図。
図3】本発明の実施形態に従ってゲート絶縁膜を形成する工程サイクルを説明するための図。
図4】本発明の実施形態に従って製造される薄膜トランジスターの一例を示す図。
図5】本発明の実施形態に従って製造されるパワー半導体素子の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化されることが可能なものであって、以下の実施形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものである。
【0019】
明細書の全般にわたって、層、膜、領域または基板などのある構成要素が他の構成要素の「上に」位置すると言及するときには、前記ある構成要素が直接的に他の構成要素の「上に」接触してもよいし、これらの間に介在する他のさらなる構成要素が存在してもよいと解釈され得る。
【0020】
また、「上部」または「下部」のような相対的な用語は、図示のごとく、他の要素に対するある要素の相対的な関係を述べるためにここで使用可能である。相対的な用語は、図中に描かれる方向に加えて、素子の他の方向を含むことを意図するものであると理解されるべきである。発明を詳細に説明するために図面は誇張されて示されていてもよく、図中、同じ参照符号は、同じ構成要素を示す。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る蒸着装置を概略的に示す図である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る蒸着装置は、炭化ケイ素基板の上に薄膜、すなわち、ゲート絶縁膜を蒸着するための装置であって、チャンバー10と、前記チャンバー10内に設けられ、前記チャンバー10内に配設される基板を支持するための基板支持部20と、前記基板支持部20と対向配置されるように前記チャンバー10内に設けられ、前記基板支持部20に向かって工程ガスを噴射するためのガス噴射部30、及び前記チャンバー10内にプラズマを生じさせるように電源を供給するRF電源50を備える。また、前記蒸着装置は、ガス噴射部30にガスを与えるためのガス供給部40をさらに備えていてもよく、これに加えて、前記RF電源50を制御する制御部(図示せず)をさらに備えていてもよい。ここで、ガス噴射部30には、第1のガス、例えば、原料ガスを供給するための第1のガス供給経路と、第2のガス、例えば、反応ガスを供給するための第2のガス供給経路とが分離されて形成される。
【0023】
チャンバー10は、所定の工程空間を設け、これを気密に保持する。チャンバー10は、概ね円形状または四角い形状の平面部及び平面部から上向きに延びた側壁部を備えて所定の工程空間を有する胴体12と、概ね円形状または四角い形状に胴体12の上に位置してチャンバー10を気密に保持する蓋体14と、を備えていてもよい。しかしながら、チャンバー10は、これに何ら限定されるものではなく、基板の形状に対応する様々な形状に作製されてもよい。
【0024】
チャンバー10の下面の所定の領域には排気口(図示せず)が形成され、チャンバー10の外側には排気口と連絡される排気管(図示せず)が設けられてもよい。また、排気管は、排気装置(図示せず)と連絡されてもよい。排気装置としては、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプが利用可能である。したがって、排気装置によりチャンバー10の内部を所定の減圧雰囲気、例えば、0.1mTorr以下の所定の圧力まで真空引きすることができる。排気管は、チャンバー10の下面のみならず、後述する基板支持部20の下側のチャンバー10の側面に配設されてもよい。また、排気される時間を短縮させるために、多数本の排気管及びそれに付随する排気装置がさらに配設されてもよいということはいうまでもない。
【0025】
一方、基板支持部20には、薄膜の形成工程のためにチャンバー10内に与えられた基板が載置されてもよい。ここで、基板としては、炭化ケイ素(SiC)を主成分として含有する炭化ケイ素基板が挙げられる。また、基板は、炭化ケイ素単結晶ウェーハを備えていてもよく、炭化ケイ素単結晶ウェーハの内部にドーパントが注入されてウェーハ内に複数の半導体領域が形成された炭化ケイ素単結晶ウェーハを備えていてもよい。このとき、複数の半導体領域は、ソース(source)領域、ドレイン(drain)領域及びウェル(well)領域を備えていてもよい。基板支持部20は、このような基板が載置されて支持できるように、例えば、静電チャックなどが設けられて基板を静電力により吸着保持してもよいし、あるいは、真空吸着や機械的な力により基板を支持してもよい。
【0026】
基板支持部20は、基板の形状と対応する形状、例えば、円形状または四角い形状に設けられてもよい。基板支持部20は、基板が載置される基板支持台及び前記基板支持台の下部に配置されて基板支持台を昇降動させる昇降器22を備えていてもよい。ここで、基板支持台は、基板よりも大きく作製されてもよく、昇降器22は、基板支持台の少なくとも1つの領域、例えば、中心部を支持するように設けられ、基板支持台の上に基板が載置されれば、基板支持台をガス噴射部30に近づくように移動させてもよい。また、基板支持台の内部にはヒーター(図示せず)が配設されてもよい。ヒーターは、所定の温度にて発熱して基板支持台及び前記基板支持台に載置された基板を加熱して、基板に均一に薄膜が蒸着されるようにする。
【0027】
ガス供給部40は、チャンバー10の蓋体14を貫通するように配設されてもよく、第1のガス及び第2のガスをそれぞれ前記ガス噴射部30に与えるために第1のガス供給器42及び第2のガス供給器44を備えていてもよい。ここで、前記第1のガスは、ゲート絶縁膜を形成するための原料ガスを含んでいてもよく、第2のガスは、反応ガスを含んでいてもよい。しかしながら、第1のガス供給器42及び第2のガス供給器44は、それぞれ必ずしも単一種のガスを与えるものであるとは限らず、第1のガス供給器42及び第2のガス供給器44は、それぞれ複数種のガスを同時に供給したり、複数種のガスのうちから選択されたガスを供給したりするように構成されてもよい。
【0028】
例えば、第1のガス供給器42は、原料ガスとしてケイ素(Si)成分を含有するガスを供給してもよいし、あるいは、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)及びイリジウム(Ir)のうちの少なくとも1種を含むガスを供給してもよい。また、第2のガス供給器44は、反応ガスとして酸素(O)または窒素(N)を含有するガスを供給してもよい。
【0029】
ガス噴射部30は、前記チャンバー10の内部、例えば、チャンバーリッド12の下面に配設され、ガス噴射部30の内部には、第1のガスを基板の上に噴射して供給するための第1のガス供給経路と、第2のガスを基板の上に噴射して供給するための第2のガス供給経路とが形成される。前記第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路は互いに独立して、しかも互いに分離されて形成されて、前記第1のガス及び前記第2のガスがガス噴射部30の内において混合されないように分離して基板の上に供給することができる。
【0030】
前記ガス噴射部30は、上フレーム32及び下フレーム34を備えていてもよい。ここで、前記上フレーム32は、前記チャンバーリッド12の下面に着脱自在に結合されるとともに、上面の一部、例えば、上面の中心部が前記チャンバーリッド12の下面から所定の距離だけ離れている。これにより、前記上フレーム32の上面と前記チャンバーリッド12の下面との間の空間において第1のガス供給部42から第1のガスが拡散することが可能になる。また、前記下フレーム34は、前記上フレーム32の下面に一定の間隔だけ離れて配設される。これにより、前記下フレーム34の上面と前記上フレーム32の下面との間の空間において第2のガス供給部44からの第2のガスが拡散することが可能になる。前記上フレーム32と前記下フレーム34は、外周面に沿って連結されて内部に離隔空間を形成して一体に形成されてもよいし、あるいは、別途の密封部材によって外周面を密閉するような構造となっていてもよいということはいうまでもない。
【0031】
前記第1のガス供給経路は、第1のガス供給部42からの第1のガスが前記チャンバーリッド12の下面と前記上フレーム32との間の空間において拡散して、前記上フレーム32及び前記下フレーム34を貫通してチャンバー10の内部に供給されるように形成されてもよい。また、前記第2のガス供給経路は、第2のガス供給部44からの第2のガスが前記上フレーム32の下面と前記下フレーム34の上面との間の空間において拡散して前記下フレーム34を貫通してチャンバー10の内部に供給されるように形成されてもよい。前記第1のガス供給経路及び前記第2のガス供給経路は、互いに連通していなくてもよく、これにより、前記第1のガス及び第2のガスは、前記ガス供給部40からガス噴射部30を経て前記チャンバー10の内部に分離されて供給されることが可能になる。
【0032】
前記下フレーム34の下面には第1の電極38が配設されてもよく、前記下フレーム24の下側及び第1の電極28の外側には、所定の間隔だけ離れて第2の電極36が配設されてもよい。このとき、下フレーム34と第2の電極36は、外周面に沿って連結されて形成されてもよいし、あるいは、別途の密封部材によって外周面を密閉するような構造となっていてもよいということはいうまでもない。
【0033】
このように、第1の電極38及び第2の電極36が配設される場合、第1のガスは、第1の電極38を貫通して基板の上に噴射されてもよく、第2のガスは、第1の電極38と第2の電極36との間の離隔空間を介して基板の上に噴射されてもよい。
【0034】
下フレーム34と第2の電極36のうちのどちらか一方にはRF電源50からRF電力が印加されてもよい。図1においては、下フレーム34が接地され、第2の電極36にRF電力が印加される構造を例にとって示している。下フレーム34が接地される場合、前記下フレーム34の下面に配設された第1の電極38もまた接地される。したがって、第2の電極36にRF電源50が供給される場合、前記ガス噴射部30と前記基板支持部20との間には第1の活性化領域、すなわち、第1のプラズマ領域が形成され、前記第1の電極38と前記第2の電極36との間には第2の活性化領域、すなわち、第2のプラズマ領域が形成されることが可能になる。
【0035】
したがって、第2のガスが第1の電極38及び第2の電極36との間の離隔空間を介して噴射される場合、前記第2のガスは、ガス噴射部30の内部に相当する前記第1の電極38と前記第2の電極36との間、すなわち、第2のプラズマ領域から第1のプラズマ領域までの領域にわたって活性化される。したがって、本発明の実施形態に係る蒸着装置においては、第2のガスをガス噴射部30の内部において活性化させて基板の上に噴射することができる。また、第1のガスを供給するための第1のガス供給経路と第2のガスを供給するための第2のガス供給経路とが分離されて形成されることにより、例えば、原料ガス及び反応ガスを薄膜を蒸着するための最適な供給経路に振り分けて噴射することができる。
【0036】
以下では、図2及び図3を参照して本発明の薄膜の蒸着方法について詳しく説明する。本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法についての説明に際して、前述した蒸着装置に関する説明と重複する説明は省略する。
【0037】
図2は、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法を概略的に示す図であり、図3は、本発明の実施形態に従ってゲート絶縁膜を形成する工程サイクルを説明するための図である。
【0038】
図2及び図3を参照すると、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、複数の半導体領域を有する炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)及び前記炭化ケイ素基板の上に100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)を含む。
【0039】
炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)は、炭化ケイ素(SiC)を主成分として含有する炭化ケイ素基板を前述した蒸着装置のチャンバー10内に搬入して基板支持部20の上に載置する。このような炭化ケイ素基板には、複数の半導体領域が形成されてもよい。すなわち、炭化ケイ素基板は、炭化ケイ素単結晶ウェーハを備えていてもよく、炭化ケイ素単結晶ウェーハの内部にドーパントが注入されて炭化ケイ素基板内に複数の半導体領域が形成されてもよい。ここで、複数の半導体領域は、ソース(source)領域、ドレイン(drain)領域及びウェル(well)領域を備えていてもよく、ソース領域、ドレイン領域及びウェル領域を備える炭化ケイ素基板を用いて製造されたパワー半導体素子に関しては、図5を参照して後述する。
【0040】
炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)の後には、前記炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)が行われる。ここで、ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)は、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)の後に行われるものであって、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)とゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)との間には、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子などを製造するために付加される他のさらなるステップが行われてもよいということはいうまでもない。すなわち、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)において、ゲート電極が既に形成された炭化ケイ素基板を設けてもよいが、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)とゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)との間に、例えば、炭化ケイ素基板の上にゲート電極を形成するステップがさらに行われてもよいということはいうまでもない。
【0041】
ここで、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成する前に、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップをさらに含んでいてもよい。
【0042】
炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップは、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)において炭化ケイ素基板に形成された自然酸化膜を取り除くために行われてもよい。
【0043】
炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップにおいては、前述した蒸着装置の第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくとも一方の経路を介して炭化ケイ素基板の上に表面処理ガスを噴射し、表面処理ガスを活性化させてプラズマが生じるように工程空間にRF電源50を供給してもよい。ここで、表面処理ガスとしては、亜酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、窒素(N)、水素(H)、酸素(O)及びアルゴンガスのうちの少なくとも1種のガスを用いてもよい。このように、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理施することにより、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成する前に、ゲート絶縁膜を蒸着するための蒸着面を含む炭化ケイ素基板の表面に形成された自然酸化膜を取り除くことができる。
【0044】
ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)においては、炭化ケイ素基板の上に、100~400℃の温度において原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)工程によりゲート絶縁膜を形成する。
【0045】
従来には、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を約1200℃以上の高温において熱蒸着(thermal deposition)工程を用いて形成していた。しかしながら、このように、炭化ケイ素基板を高温に加熱した状態でゲート絶縁膜を形成すると、炭化ケイ素基板及び前記炭化ケイ素基板の上に既に形成された薄膜に損傷が生じる虞があり、これは、製造されるディスプレイ装置またはパワー半導体素子の品質及び信頼性を大幅に低下させてしまうという問題を引き起こす。この理由から、本発明の実施形態においては、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を100~400℃の低温において原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)工程により形成する。以下では、ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)についてさらに詳しく説明する。
【0046】
ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)は、炭化水素基板の上に原料ガスを供給するステップ(S210)及び炭化水素基板の上に反応ガスを供給するステップ(S230)をこの順に行う工程サイクルが複数回行われて行われてもよい。
【0047】
原料ガスを供給するステップ(S210)においては、炭化水素基板の上に原料ガスを供給する。ここで、原料ガスを供給するステップ(S210)においては、前述した蒸着装置の第1のガス供給経路を介して炭化水素基板の上に原料ガスを供給する。このとき、原料ガスは、ゲート絶縁膜を形成するための多種種の原料物質のうちの少なくとも1種を含むガスであってもよい。例えば、ゲート絶縁膜として酸化ケイ素(SiO)層または窒化ケイ素(SiN)層を形成する場合、原料ガスとしてはケイ素(Si)成分を含有するガスが使用可能であり、ゲート絶縁膜としてハイ-K(high-K)誘電体層を形成する場合、原料ガスは、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)及びイリジウム(Ir)のうちの少なくとも1種を含むガスであってもよい。原料ガスを供給するステップ(S210)においては、炭化水素基板の上に原料ガスを噴射して吸着させる。このとき、原料ガスを供給するステップ(S210)は、電源を供給せずに行われてもよい。
【0048】
このとき、ゲート絶縁膜は、ハイ-K(high-K)誘電体層を備えていてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜は、ハイ-K(high-K)誘電体層から形成されてもよく、ハイ-K(high-K)誘電体層のみならず、ハイ-K(high-K)誘電体層の上部及び下部のうちの少なくとも一方に設けられる酸化ケイ素(SiO)層または窒化ケイ素(SiN)層をさらに備えていてもよい。ここで、ゲート絶縁膜は、炭化ケイ素基板の上に酸化ケイ素(SiO)層が設けられ、酸化ケイ素(SiO)層の上にハイ-K(high-K)誘電体層が設けられ、ハイ-K(high-K)誘電体層の上に再び酸化ケイ素(SiO)層が設けられて形成されてもよい。このような積層構造にゲート絶縁膜を形成する場合、ハイ-K(high-K)誘電体層を形成するハイ-K(high-K)物質によって薄膜トランジスターまたはパワー半導体素子の活性層が損傷(damage)を受けることを防ぐように保護することができる。このとき、ハイ-K(high-K)誘電体層の上部及び下部に設けられる酸化ケイ素(SiO)層は、少なくとも一部が窒化ケイ素(SiN)層に置き換えられてもよいということはいうまでもない。
【0049】
原料ガスを供給するステップ(S210)の後には、原料ガスをパージするステップが行われてもよい。原料ガスをパージするステップにおいては、チャンバー10の工程空間に残留する原料ガスを取り除いてもよい。このような原料ガスをパージするステップは、工程空間に不活性ガス、例えば、アルゴン(Ar)ガスを供給して行われてもよく、アルゴン(Ar)ガスは、第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくともどちらか一方の経路を介して供給されてもよい。このとき、原料ガスをパージする最中には、RF電源50が供給されなくてもよい。
【0050】
原料ガスをパージするステップの後には、炭化水素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)が行われてもよい。炭化水素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)においては、水素を含有する前処理ガス、例えば、水素(H)ガスを基板の上に供給し、RF電源50を供給して炭化水素基板の上に水素プラズマを生じさせてもよい。ここで、水素(H)ガスは、第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくともどちらか一方の経路を介して供給されてもよく、このように、原料物質が炭化水素基板に吸着された後に水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)が行われると、水素プラズマにより炭化水素基板に吸着された原料物質に含まれている不純物を取り除くことができ、原料物質を炭化水素基板になお一層強固に吸着させることができる。
【0051】
炭化水素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)の後には、反応ガスを供給するステップ(S230)が行われる。反応ガスを供給するステップ(S230)は、炭化水素基板の上に、例えば、酸素を含有する反応ガスを供給する。ここで、反応ガスを供給するステップ(S230)においては、前述した蒸着装置の第2のガス供給経路を介して基板の上に酸素を含有する反応ガスを供給する。原料物質が吸着された基板の上に反応ガスを供給すると、原料物質は、反応ガスに含まれている反応物質と反応することになる。
【0052】
このとき、反応ガスを供給するステップ(S230)においては、反応ガスに含まれる酸素成分を原料物質と効果的に反応させるために、反応ガスを活性化させてプラズマが生じるように工程空間にRF電源50を供給してもよい。このように、反応ガスを供給するステップ(S230)において反応ガスを活性化させて供給することにより、供給される酸素含有ガスを酸素ラジカルで活性化させて原料物質と反応させ、基板の上にゲート絶縁膜をさらに低い工程温度において形成することが可能になる。すなわち、反応ガスを活性化させて基板の上に供給する場合、ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)は、チャンバー10の工程空間を100℃以上、400℃以下の低温に制御して行われてもよい。
【0053】
反応ガスを供給するステップ(S230)の後には、反応ガスをパージするステップが行われてもよい。反応ガスをパージするステップにおいては、チャンバー10の工程空間に残留する反応ガスを取り除いてもよい。このような反応ガスをパージするステップは、原料ガスをパージするステップと同様に、工程空間に不活性ガス、例えば、アルゴン(Ar)ガスを供給して行われてもよく、アルゴン(Ar)ガスは、第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくともどちらか一方の経路を介して供給されてもよい。
【0054】
反応ガスをパージするステップの後には、炭化水素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)が行われてもよい。炭化水素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)においては、水素を含有する後処理ガス、例えば、水素(H)ガスを炭化水素基板の上に供給し、RF電源50を供給して基板の上に水素プラズマを生じさせてもよい。ここで、水素(H)ガスは、第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくともどちらか一方の経路を介して供給されてもよい。
【0055】
原料ガス及び反応ガスが噴射されて炭化水素基板の上にゲート絶縁膜が形成された後、基板の上に水素プラズマを生じさせると、ゲート絶縁膜、特に、ハイ-K(high-K)誘電体層から形成されたゲート絶縁膜をチャンバー10の内部または炭化ケイ素基板の温度が低温である場合であっても容易に形成することができる。すなわち、チャンバー10の内部または炭化ケイ素基板の温度が低温である場合、例えば、100℃~400℃の低温状態でハイ-K(high-K)誘電体層から形成されたゲート絶縁膜を形成することができる。のみならず、炭化水素基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S240)によってチャンバー10の内部に残留する不純物やゲート絶縁膜に含まれている不純物を効果的に取り除くこともできるということはいうまでもない。
【0056】
このように、原料ガスを供給するステップ(S210)、炭化水素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)、反応ガスを供給するステップ(S230)及び炭化水素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)を含む工程サイクルが複数回行われてもよい。より詳細には、原料ガスを供給するステップ(S210)、原料ガスをパージするステップ、炭化水素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)、反応ガスを供給するステップ(S230)、反応ガスをパージするステップ及び炭化水素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)は、1つの工程サイクルをなすことができ、前記工程サイクルは、基板の上に所望の膜厚のゲート絶縁膜が形成されるまで繰り返し行われてもよい。
【0057】
図4は、本発明の実施形態に従って製造される薄膜トランジスターの一例を示す図である。
【0058】
図4を参照すると、本発明の実施形態に従って製造される薄膜トランジスターは、ゲート電極200aと、前記ゲート電極200aの上部または下部に配置され、水平方向に互いに離れ合うソース電極510a及びドレイン電極520aと、前記ゲート電極200aとソース電極510a及びドレイン電極520aの間に配置される活性層400aと、前記ゲート電極200aと活性層400aとの間に配置されるゲート絶縁膜300aと、を備える。
【0059】
ここで、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターは、図4に示されているように、炭化ケイ素基板100aの上に形成されるゲート電極200aと、ゲート電極200aの上に形成されるゲート絶縁膜300aと、ゲート絶縁膜300aの上に形成される活性層400aと、活性層400aの上に互いに離れ合うように形成されるソース電極510a及びドレイン電極520aと、を備えるボトムゲート(bottom gate)型薄膜トランジスターであってもよいが、これとは異なり、ゲート電極200aが上部に配置されるトップゲート(top gate)型薄膜トランジスターにも同様に適用可能であるということはいうまでもない。
【0060】
ここで、炭化ケイ素基板100aとしては、炭化ケイ素(SiC)を主成分として含有する基板が挙げられる。このとき、基板は、炭化ケイ素単結晶ウェーハを備えていてもよい。
【0061】
ゲート電極200aは、導電物質を用いて形成してもよいが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)及び銅(Cu)のうちの少なくともいずれか1種の金属またはこれらを含む合金から形成してもよい。また、ゲート電極200aは、単一層のみならず、複数の金属層からなる多重層に形成してもよい。すなわち、物理化学的な特性に優れたクロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)などの金属層と比抵抗の小さなアルミニウム(Al)系、銀(Ag)系または銅(Cu)系の金属層を備える二重層に形成してもよい。
【0062】
ゲート絶縁膜300aは、ゲート電極200aの上に形成される。すなわち、ゲート絶縁膜300aは、ゲート電極200aの上部及び側部を含む炭化ケイ素基板100aの上に形成されてもよい。ゲート絶縁膜300aは、金属物質との密着性に優れており、しかも、絶縁耐圧が抜群である酸化ケイ素(SiO)を用いた薄膜から形成してもよいが、酸化ケイ素(SiO)よりも高い誘電率を有するハイ-K(high-K)誘電体から形成されてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜300aは、少なくとも1つのハイ-K(high-K)誘電体層を備えていてもよい。このとき、ハイ-K(high-K)誘電体は、ハフニウム酸化物(HfO)、ハフニウムシリコン酸化物(HfSiO)、ランタン酸化物(LaO)、ランタンアルミニウム酸化物(LaAlO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、ジルコニウムシリコン酸化物(ZrSiO)、タンタル酸化物(Ta)、チタン酸化物(TiO)、バリウムストロンチウムチタン酸化物(BaSrTiO)、バリウムチタン酸化物(BaTiO)、ストロンチウムチタン酸化物(SrTiO)、イリジウム酸化物(IrO)のうちの少なくとも1種の物質を含んでいてもよい。
【0063】
このようなゲート絶縁膜300aは、前述したように、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)及び炭化ケイ素基板の上に100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)を含む本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法により形成されてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜300aは、原料ガスを供給するステップ(S210)と、炭化水素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)と、反応ガスを供給するステップ(S230)、及び炭化水素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)を含む工程サイクルを複数回行う薄膜の蒸着方法により形成されてもよい。
【0064】
活性層400aは、ゲート絶縁膜300aの上に形成され、少なくとも一部がゲート電極200aと重なり合うように形成される。活性層400aは、例えば、金属酸化物薄膜から形成されてもよいが、単一の金属酸化物薄膜から形成されてもよいし、あるいは、複数の金属酸化物薄膜から形成されてもよい。このような金属酸化物薄膜は、亜鉛酸化物(ZnO)を含んでいてもよいし、亜鉛酸化物(ZnO)にインジウム(In)及びガリウム(Ga)のうちの少なくともどちらか一方がドープされた物質を含んでいてもよい。
【0065】
ソース電極510a及びドレイン電極520aは、活性層400aの上部に形成され、ゲート電極200aと一部重なり合ってゲート電極200aを挟んでソース電極510aとドレイン電極520aとが互いに離れ合うように形成されてもよい。ソース電極510a及びドレイン電極520aは、互いに同一の物質を用いた同一の工程により形成してもよく、導電性物質を用いて形成してもよいが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)及びモリブデン(Mo)のうちの少なくともいずれか1種の金属またはこれらを含む合金から形成してもよい。すなわち、ゲート電極200aと同一の物質から形成してもよいが、ゲート電極200aとは異なる物質から形成してもよい。また、ソース電極510a及びドレイン電極520aは、それぞれ単一層のみならず、複数の金属層の多重層に形成してもよいということはいうまでもない。
【0066】
図5は、本発明の実施形態に従って製造されるパワー半導体素子の一例を示す図である。
【0067】
図5を参照すると、本発明の実施形態に従って製造されるパワー半導体素子、例えば、電界効果トランジスター(FET;Field Effect Transistor)は、炭化ケイ素基板100bと、炭化ケイ素基板100bの上に形成されるゲート絶縁膜300bと、炭化ケイ素基板100bの上においてゲート絶縁膜300bを挟んで水平方向に互いに離れ合うように設けられたソース電極510b及びドレイン電極520bと、ソース電極510bとドレイン電極520bとの間においてゲート絶縁膜300bの上に設けられたゲート電極200bと、を備える。ここで、炭化ケイ素基板100bとしては、内部にドーパントが注入されて複数の半導体領域が形成された基板が挙げられ、複数の半導体領域は、電界効果トランジスターのソースとして機能するソース領域110bと、電界効果トランジスターのドレインとして機能するドレイン領域120bと、電界効果トランジスターの活性層として機能するウェル領域130bと、を備えていてもよい。
【0068】
このとき、本発明の実施形態においては、パワー半導体素子を製造するに際して、炭化ケイ素基板100bの上にゲート絶縁膜200bを形成するために、前述したように炭化ケイ素基板100bを設けるステップ(S100)及び炭化ケイ素基板100bの上に100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)を含む本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法を利用してもよい。
【0069】
すなわち、パワー半導体素子において、ゲート絶縁膜300bに原料ガスを供給するステップ(S210)と、炭化水素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)と、反応ガスを供給するステップ(S230)、及び炭化水素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)を含む工程サイクルを複数回行う薄膜の蒸着方法により形成してもよい。
【0070】
このとき、ゲート絶縁膜300bは、少なくとも1つのハイ-K(high-K)誘電体層を備えていてもよく、ハイ-K(high-K)誘電体は、ハフニウム酸化物(HfO)、ハフニウムシリコン酸化物(HfSiO)、ランタン酸化物(LaO)、ランタンアルミニウム酸化物(LaAlO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、ジルコニウムシリコン酸化物(ZrSiO)、タンタル酸化物(Ta)、チタン酸化物(TiO)、バリウムストロンチウムチタン酸化物(BaSrTiO)、バリウムチタン酸化物(BaTiO)、ストロンチウムチタン酸化物(SrTiO)、イリジウム酸化物(IrO)のうちの少なくとも1種の物質を含んでいてもよいということは、前述した薄膜トランジスターの場合と同様であるため、これについての重複する説明は省略する。
【0071】
このように、本発明の実施形態によれば、低温工程を用いて炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成することができる。また、ゲート絶縁膜を形成するために基板を昇温させる時間を節約することができ、これにより、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子の製造時間を短縮させることができる。
【0072】
また、本発明の実施形態によれば、高い降伏電圧を有しながらも、放熱性に優れたディスプレイ装置またはパワー半導体素子を製造することができる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態が特定の用語を用いて説明及び図示されたが、これらの用語は、単に本発明を明確に説明するためのものに過ぎず、本発明の実施形態及び記述された用語は、特許請求の範囲の技術的思想及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変化が加えられるということは明らかである。これらの変形された実施形態は、本発明の思想及び範囲から個別的に理解されてはならず、本発明の特許請求の範囲内に属するものといえるべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体領域を有する炭化ケイ素基板を設けるステップと、
前記炭化ケイ素基板の上に、100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップと、
を含む、薄膜の蒸着方法。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜を形成するステップの前に、前記炭化ケイ素基板の不純物を取り除くステップをさらに含む、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項3】
前記不純物は、自然酸化膜を含む、請求項2に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項4】
前記不純物を取り除くステップは、前記炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップをさらに含む、請求項に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項5】
前記プラズマを用いて表面処理するステップにおいては、前記炭化ケイ素基板の上に亜酸化窒素(N O)、一酸化窒素(NO)、窒素(N )、水素(H )、酸素(O )及びアルゴンガスの少なくとも1種のガスを供給し、かつ活性化させてプラズマを形成する、請求項4に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項6】
前記ゲート絶縁膜を形成するステップは、
前記炭化ケイ素基板の上に原料ガスを供給するステップと、
前記炭化ケイ素基板をプラズマを用いて前処理するステップと、
前記炭化ケイ素基板の上に反応ガスを供給するステップと、
前記炭化ケイ素基板をプラズマを用いて後処理するステップと、
を含み、
前記原料ガスを供給するステップ、前処理するステップ、反応ガスを供給するステップ、及び後処理するステップを含む工程サイクルは複数回行われる、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項7】
前記前処理するステップ及び後処理するステップは、
前記炭化ケイ素基板の上に水素ガスを噴射するステップと、
前記水素ガスを放電して、前記炭化ケイ素基板の上にプラズマを生じさせるステップと、
を含む、請求項に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項8】
前記ゲート絶縁膜は、ハイ-K(high-K)誘電体層を備える、請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項9】
前記ゲート絶縁膜は、前記ハイ-K(high-K)誘電体層の上部及び下部のうちの少なくとも一方に設けられる酸化ケイ素層または窒化ケイ素層をさらに備える、請求項に記載の薄膜の蒸着方法。
【請求項10】
前記炭化ケイ素基板を設けるステップは、ソース領域、ウェル領域及びドレイン領域を有する炭化ケイ素基板を設けるものであり、
前記ゲート絶縁膜を形成するステップは、前記ウェル領域の上にゲート絶縁膜を形成するものである、
請求項1に記載の薄膜の蒸着方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の蒸着方法に関し、より詳細には、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成するための薄膜の蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC;silicon carbide)は、通常のケイ素に比べてバンドギャップ(band gap)が高い半導体であって、ケイ素よりも高い降伏電圧を有しながらも、損失は少なく、しかも、放熱性には優れているという特性を示す。特に、絶縁破壊電界がケイ素に比べて約10倍ほど抜群であることから、ケイ素を用いた半導体素子に比べて電圧の降下を約200分の1までに減少させることができるという大きな長所がある。この理由から、炭化ケイ素は、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子の分野においてケイ素に代え得る有力な半導体材料としてみなされている。
【0003】
トランジスター(Transistor)は、ディスプレイ装置や半導体素子においてスイッチング回路として用いられる。このようなトランジスターは、ソース(source)とドレイン(drain)との間の電流を遮断するためのゲート絶縁膜を有する。
【0004】
従来には、このような薄膜トランジスターを製造するに際して、炭化ケイ素基板の上に形成されるゲート絶縁膜を約1200℃の高温において蒸着していた。
【0005】
しかしながら、このように、炭化ケイ素基板を高温に加熱した状態で、ゲート絶縁膜を形成すると、基板または前記基板の上に形成される薄膜に損傷が生じてしまうという問題がある。これは、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子のトランジスターの機能を低下させたり不良を引き起こしたりする要因として働き、特に、トランジスターをスイッチング回路として用いるディスプレイ装置やパワー半導体素子の品質及び信頼性を大幅に低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2009-0055368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低温において炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成することのできる薄膜の蒸着方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、複数の半導体領域を有する炭化ケイ素基板を設けるステップと、前記炭化ケイ素基板の上に、100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップと、を含む。
【0009】
前記薄膜の蒸着方法は、前記ゲート絶縁膜を形成するステップの前に、前記炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップをさらに含んでいてもよい。
【0010】
前記ゲート絶縁膜を形成するステップは、前記炭化ケイ素基板の上に原料ガスを供給するステップと、前記炭化ケイ素基板をプラズマを用いて前処理するステップと、前記炭化ケイ素基板の上に反応ガスを供給するステップと、前記炭化ケイ素基板をプラズマを用いて後処理するステップと、を含み、前記原料ガスを供給するステップ、前処理するステップ、反応ガスを供給するステップ、及び後処理するステップを含む工程サイクルは複数回行われてもよい。
【0011】
前記前処理するステップ及び後処理するステップは、前記炭化ケイ素基板の上に水素ガスを噴射するステップと、前記水素ガスを放電して、前記炭化ケイ素基板の上にプラズマを生じさせるステップと、を含んでいてもよい。
【0012】
前記ゲート絶縁膜は、ハイ-K(high-K)誘電体層を備えていてもよい。
【0013】
前記ゲート絶縁膜は、前記ハイ-K(high-K)誘電体層の上部及び下部のうちの少なくとも一方に設けられる酸化ケイ素層または窒化ケイ素層をさらに備えていてもよい。
【0014】
前記炭化ケイ素基板を設けるステップは、ソース領域、ウェル領域及びドレイン領域を有する炭化ケイ素基板を設けるものであり、前記ゲート絶縁膜を形成するステップは、前記ウェル領域の上にゲート絶縁膜を形成するものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、低温工程を用いて炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成することができる。また、ゲート絶縁膜を形成するために基板を昇温させる時間を節約することができ、これにより、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子の製造時間を短縮させることができる。
【0016】
また、本発明の実施形態によれば、高い降伏電圧を有しながらも、放熱性に優れたディスプレイ装置またはパワー半導体素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る蒸着装置を概略的に示す図。
図2】本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法を概略的に示す図。
図3】本発明の実施形態に従ってゲート絶縁膜を形成する工程サイクルを説明するための図。
図4】本発明の実施形態に従って製造される薄膜トランジスターの一例を示す図。
図5】本発明の実施形態に従って製造されるパワー半導体素子の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化されることが可能なものであって、以下の実施形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものである。
【0019】
明細書の全般にわたって、層、膜、領域または基板などのある構成要素が他の構成要素の「上に」位置すると言及するときには、前記ある構成要素が直接的に他の構成要素の「上に」接触してもよいし、これらの間に介在する他のさらなる構成要素が存在してもよいと解釈され得る。
【0020】
また、「上部」または「下部」のような相対的な用語は、図示のごとく、他の要素に対するある要素の相対的な関係を述べるためにここで使用可能である。相対的な用語は、図中に描かれる方向に加えて、素子の他の方向を含むことを意図するものであると理解されるべきである。発明を詳細に説明するために図面は誇張されて示されていてもよく、図中、同じ参照符号は、同じ構成要素を示す。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る蒸着装置を概略的に示す図である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る蒸着装置は、炭化ケイ素基板の上に薄膜、すなわち、ゲート絶縁膜を蒸着するための装置であって、チャンバー10と、前記チャンバー10内に設けられ、前記チャンバー10内に配設される基板を支持するための基板支持部20と、前記基板支持部20と対向配置されるように前記チャンバー10内に設けられ、前記基板支持部20に向かって工程ガスを噴射するためのガス噴射部30、及び前記チャンバー10内にプラズマを生じさせるように電源を供給するRF電源50を備える。また、前記蒸着装置は、ガス噴射部30にガスを与えるためのガス供給部40をさらに備えていてもよく、これに加えて、前記RF電源50を制御する制御部(図示せず)をさらに備えていてもよい。ここで、ガス噴射部30には、第1のガス、例えば、原料ガスを供給するための第1のガス供給経路と、第2のガス、例えば、反応ガスを供給するための第2のガス供給経路とが分離されて形成される。
【0023】
チャンバー10は、所定の工程空間を設け、これを気密に保持する。チャンバー10は、概ね円形状または四角い形状の平面部及び平面部から上向きに延びた側壁部を備えて所定の工程空間を有する胴体12と、概ね円形状または四角い形状に胴体12の上に位置してチャンバー10を気密に保持する蓋体14と、を備えていてもよい。しかしながら、チャンバー10は、これに何ら限定されるものではなく、基板の形状に対応する様々な形状に作製されてもよい。
【0024】
チャンバー10の下面の所定の領域には排気口(図示せず)が形成され、チャンバー10の外側には排気口と連絡される排気管(図示せず)が設けられてもよい。また、排気管は、排気装置(図示せず)と連絡されてもよい。排気装置としては、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプが利用可能である。したがって、排気装置によりチャンバー10の内部を所定の減圧雰囲気、例えば、0.1mTorr以下の所定の圧力まで真空引きすることができる。排気管は、チャンバー10の下面のみならず、後述する基板支持部20の下側のチャンバー10の側面に配設されてもよい。また、排気される時間を短縮させるために、多数本の排気管及びそれに付随する排気装置がさらに配設されてもよいということはいうまでもない。
【0025】
一方、基板支持部20には、薄膜の形成工程のためにチャンバー10内に与えられた基板が載置されてもよい。ここで、基板としては、炭化ケイ素(SiC)を主成分として含有する炭化ケイ素基板が挙げられる。また、基板は、炭化ケイ素単結晶ウェーハを備えていてもよく、炭化ケイ素単結晶ウェーハの内部にドーパントが注入されてウェーハ内に複数の半導体領域が形成された炭化ケイ素単結晶ウェーハを備えていてもよい。このとき、複数の半導体領域は、ソース(source)領域、ドレイン(drain)領域及びウェル(well)領域を備えていてもよい。基板支持部20は、このような基板が載置されて支持できるように、例えば、静電チャックなどが設けられて基板を静電力により吸着保持してもよいし、あるいは、真空吸着や機械的な力により基板を支持してもよい。
【0026】
基板支持部20は、基板の形状と対応する形状、例えば、円形状または四角い形状に設けられてもよい。基板支持部20は、基板が載置される基板支持台及び前記基板支持台の下部に配置されて基板支持台を昇降動させる昇降器22を備えていてもよい。ここで、基板支持台は、基板よりも大きく作製されてもよく、昇降器22は、基板支持台の少なくとも1つの領域、例えば、中心部を支持するように設けられ、基板支持台の上に基板が載置されれば、基板支持台をガス噴射部30に近づくように移動させてもよい。また、基板支持台の内部にはヒーター(図示せず)が配設されてもよい。ヒーターは、所定の温度にて発熱して基板支持台及び前記基板支持台に載置された基板を加熱して、基板に均一に薄膜が蒸着されるようにする。
【0027】
ガス供給部40は、チャンバー10の蓋体14を貫通するように配設されてもよく、第1のガス及び第2のガスをそれぞれ前記ガス噴射部30に与えるために第1のガス供給器42及び第2のガス供給器44を備えていてもよい。ここで、前記第1のガスは、ゲート絶縁膜を形成するための原料ガスを含んでいてもよく、第2のガスは、反応ガスを含んでいてもよい。しかしながら、第1のガス供給器42及び第2のガス供給器44は、それぞれ必ずしも単一種のガスを与えるものであるとは限らず、第1のガス供給器42及び第2のガス供給器44は、それぞれ複数種のガスを同時に供給したり、複数種のガスのうちから選択されたガスを供給したりするように構成されてもよい。
【0028】
例えば、第1のガス供給器42は、原料ガスとしてケイ素(Si)成分を含有するガスを供給してもよいし、あるいは、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、ジルコニウム
(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)及びイリジウム(Ir)のうちの少なくとも1種を含むガスを供給してもよい。また、第2のガス供給器44は、反応ガスとして酸素(O)または窒素(N)を含有するガスを供給してもよい。
【0029】
ガス噴射部30は、前記チャンバー10の内部、例えば、チャンバーリッド12の下面に配設され、ガス噴射部30の内部には、第1のガスを基板の上に噴射して供給するための第1のガス供給経路と、第2のガスを基板の上に噴射して供給するための第2のガス供給経路とが形成される。前記第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路は互いに独立して、しかも互いに分離されて形成されて、前記第1のガス及び前記第2のガスがガス噴射部30の内において混合されないように分離して基板の上に供給することができる。
【0030】
前記ガス噴射部30は、上フレーム32及び下フレーム34を備えていてもよい。ここで、前記上フレーム32は、前記チャンバーリッド12の下面に着脱自在に結合されるとともに、上面の一部、例えば、上面の中心部が前記チャンバーリッド12の下面から所定の距離だけ離れている。これにより、前記上フレーム32の上面と前記チャンバーリッド12の下面との間の空間において第1のガス供給部42から第1のガスが拡散することが可能になる。また、前記下フレーム34は、前記上フレーム32の下面に一定の間隔だけ離れて配設される。これにより、前記下フレーム34の上面と前記上フレーム32の下面との間の空間において第2のガス供給部44からの第2のガスが拡散することが可能になる。前記上フレーム32と前記下フレーム34は、外周面に沿って連結されて内部に離隔空間を形成して一体に形成されてもよいし、あるいは、別途の密封部材によって外周面を密閉するような構造となっていてもよいということはいうまでもない。
【0031】
前記第1のガス供給経路は、第1のガス供給部42からの第1のガスが前記チャンバーリッド12の下面と前記上フレーム32との間の空間において拡散して、前記上フレーム32及び前記下フレーム34を貫通してチャンバー10の内部に供給されるように形成されてもよい。また、前記第2のガス供給経路は、第2のガス供給部44からの第2のガスが前記上フレーム32の下面と前記下フレーム34の上面との間の空間において拡散して前記下フレーム34を貫通してチャンバー10の内部に供給されるように形成されてもよい。前記第1のガス供給経路及び前記第2のガス供給経路は、互いに連通していなくてもよく、これにより、前記第1のガス及び第2のガスは、前記ガス供給部40からガス噴射部30を経て前記チャンバー10の内部に分離されて供給されることが可能になる。
【0032】
前記下フレーム34の下面には第1の電極38が配設されてもよく、前記下フレーム24の下側及び第1の電極28の外側には、所定の間隔だけ離れて第2の電極36が配設されてもよい。このとき、下フレーム34と第2の電極36は、外周面に沿って連結されて形成されてもよいし、あるいは、別途の密封部材によって外周面を密閉するような構造となっていてもよいということはいうまでもない。
【0033】
このように、第1の電極38及び第2の電極36が配設される場合、第1のガスは、第1の電極38を貫通して基板の上に噴射されてもよく、第2のガスは、第1の電極38と第2の電極36との間の離隔空間を介して基板の上に噴射されてもよい。
【0034】
下フレーム34と第2の電極36のうちのどちらか一方にはRF電源50からRF電力が印加されてもよい。図1においては、下フレーム34が接地され、第2の電極36にRF電力が印加される構造を例にとって示している。下フレーム34が接地される場合、前記下フレーム34の下面に配設された第1の電極38もまた接地される。したがって、第2の電極36にRF電源50が供給される場合、前記ガス噴射部30と前記基板支持部20との間には第1の活性化領域、すなわち、第1のプラズマ領域が形成され、前記第1の電極38と前記第2の電極36との間には第2の活性化領域、すなわち、第2のプラズマ領域が形成されることが可能になる。
【0035】
したがって、第2のガスが第1の電極38及び第2の電極36との間の離隔空間を介して噴射される場合、前記第2のガスは、ガス噴射部30の内部に相当する前記第1の電極38と前記第2の電極36との間、すなわち、第2のプラズマ領域から第1のプラズマ領域までの領域にわたって活性化される。したがって、本発明の実施形態に係る蒸着装置においては、第2のガスをガス噴射部30の内部において活性化させて基板の上に噴射することができる。また、第1のガスを供給するための第1のガス供給経路と第2のガスを供給するための第2のガス供給経路とが分離されて形成されることにより、例えば、原料ガス及び反応ガスを薄膜を蒸着するための最適な供給経路に振り分けて噴射することができる。
【0036】
以下では、図2及び図3を参照して本発明の薄膜の蒸着方法について詳しく説明する。本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法についての説明に際して、前述した蒸着装置に関する説明と重複する説明は省略する。
【0037】
図2は、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法を概略的に示す図であり、図3は、本発明の実施形態に従ってゲート絶縁膜を形成する工程サイクルを説明するための図である。
【0038】
図2及び図3を参照すると、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、複数の半導体領域を有する炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)及び前記炭化ケイ素基板の上に100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)を含む。
【0039】
炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)は、炭化ケイ素(SiC)を主成分として含有する炭化ケイ素基板を前述した蒸着装置のチャンバー10内に搬入して基板支持部20の上に載置する。このような炭化ケイ素基板には、複数の半導体領域が形成されてもよい。すなわち、炭化ケイ素基板は、炭化ケイ素単結晶ウェーハを備えていてもよく、炭化ケイ素単結晶ウェーハの内部にドーパントが注入されて炭化ケイ素基板内に複数の半導体領域が形成されてもよい。ここで、複数の半導体領域は、ソース(source)領域、ドレイン(drain)領域及びウェル(well)領域を備えていてもよく、ソース領域、ドレイン領域及びウェル領域を備える炭化ケイ素基板を用いて製造されたパワー半導体素子に関しては、図5を参照して後述する。
【0040】
炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)の後には、前記炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)が行われる。ここで、ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)は、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)の後に行われるものであって、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)とゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)との間には、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子などを製造するために付加される他のさらなるステップが行われてもよいということはいうまでもない。すなわち、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)において、ゲート電極が既に形成された炭化ケイ素基板を設けてもよいが、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)とゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)との間に、例えば、炭化ケイ素基板の上にゲート電極を形成するステップがさらに行われてもよいということはいうまでもない。
【0041】
ここで、本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法は、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成する前に、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップをさらに含んでいてもよい。
【0042】
炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップは、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)において炭化ケイ素基板に形成された自然酸化膜を取り除くために行われてもよい。
【0043】
炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理するステップにおいては、前述した蒸着装置の第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくとも一方の経路を介して炭化ケイ素基板の上に表面処理ガスを噴射し、表面処理ガスを活性化させてプラズマが生じるように工程空間にRF電源50を供給してもよい。ここで、表面処理ガスとしては、亜酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、窒素(N)、水素(H)、酸素(O)及びアルゴンガスのうちの少なくとも1種のガスを用いてもよい。このように、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて表面処理施することにより、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成する前に、ゲート絶縁膜を蒸着するための蒸着面を含む炭化ケイ素基板の表面に形成された自然酸化膜を取り除くことができる。
【0044】
ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)においては、炭化ケイ素基板の上に、100~400℃の温度において原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)工程によりゲート絶縁膜を形成する。
【0045】
従来には、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を約1200℃以上の高温において熱蒸着(thermal deposition)工程を用いて形成していた。しかしながら、このように、炭化ケイ素基板を高温に加熱した状態でゲート絶縁膜を形成すると、炭化ケイ素基板及び前記炭化ケイ素基板の上に既に形成された薄膜に損傷が生じる虞があり、これは、製造されるディスプレイ装置またはパワー半導体素子の品質及び信頼性を大幅に低下させてしまうという問題を引き起こす。この理由から、本発明の実施形態においては、炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を100~400℃の低温において原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)工程により形成する。以下では、ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)についてさらに詳しく説明する。
【0046】
ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)は、炭化ケイ素基板の上に原料ガスを供給するステップ(S210)及び炭化ケイ素基板の上に反応ガスを供給するステップ(S230)をこの順に行う工程サイクルが複数回行われて行われてもよい。
【0047】
原料ガスを供給するステップ(S210)においては、炭化ケイ素基板の上に原料ガスを供給する。ここで、原料ガスを供給するステップ(S210)においては、前述した蒸着装置の第1のガス供給経路を介して炭化ケイ素基板の上に原料ガスを供給する。このとき、原料ガスは、ゲート絶縁膜を形成するための多種種の原料物質のうちの少なくとも1種を含むガスであってもよい。例えば、ゲート絶縁膜として酸化ケイ素(SiO)層または窒化ケイ素(SiN)層を形成する場合、原料ガスとしてはケイ素(Si)成分を含有するガスが使用可能であり、ゲート絶縁膜としてハイ-K(high-K)誘電体層を形成する場合、原料ガスは、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)及びイリジウム(Ir)のうちの少なくとも1種を含むガスであってもよい。原料ガスを供給するステップ(S210)においては、炭化ケイ素基板の上に原料ガスを噴射して吸着させる。このとき、原料ガスを供給するステップ(S210)は、電源を供給せずに行われてもよい。
【0048】
このとき、ゲート絶縁膜は、ハイ-K(high-K)誘電体層を備えていてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜は、ハイ-K(high-K)誘電体層から形成されてもよく、ハイ-K(high-K)誘電体層のみならず、ハイ-K(high-K)誘電体層の上部及び下部のうちの少なくとも一方に設けられる酸化ケイ素(SiO)層または窒化ケイ素(SiN)層をさらに備えていてもよい。ここで、ゲート絶縁膜は、炭化ケイ素基板の上に酸化ケイ素(SiO)層が設けられ、酸化ケイ素(SiO)層の上にハイ-K(high-K)誘電体層が設けられ、ハイ-K(high-K)誘電体層の上に再び酸化ケイ素(SiO)層が設けられて形成されてもよい。このような積層構造にゲート絶縁膜を形成する場合、ハイ-K(high-K)誘電体層を形成するハイ-K(high-K)物質によって薄膜トランジスターまたはパワー半導体素子の活性層が損傷(damage)を受けることを防ぐように保護することができる。このとき、ハイ-K(high-K)誘電体層の上部及び下部に設けられる酸化ケイ素(SiO)層は、少なくとも一部が窒化ケイ素(SiN)層に置き換えられてもよいということはいうまでもない。
【0049】
原料ガスを供給するステップ(S210)の後には、原料ガスをパージするステップが行われてもよい。原料ガスをパージするステップにおいては、チャンバー10の工程空間に残留する原料ガスを取り除いてもよい。このような原料ガスをパージするステップは、工程空間に不活性ガス、例えば、アルゴン(Ar)ガスを供給して行われてもよく、アルゴン(Ar)ガスは、第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくともどちらか一方の経路を介して供給されてもよい。このとき、原料ガスをパージする最中には、RF電源50が供給されなくてもよい。
【0050】
原料ガスをパージするステップの後には、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)が行われてもよい。炭化ケイ素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)においては、水素を含有する前処理ガス、例えば、水素(H)ガスを基板の上に供給し、RF電源50を供給して炭化ケイ素基板の上に水素プラズマを生じさせてもよい。ここで、水素(H)ガスは、第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくともどちらか一方の経路を介して供給されてもよく、このように、原料物質が炭化ケイ素基板に吸着された後に水素を含有する前処理ガスを活性化させて供給するステップ(S230)が行われると、水素プラズマにより炭化ケイ素基板に吸着された原料物質に含まれている不純物を取り除くことができ、原料物質を炭化ケイ素基板になお一層強固に吸着させることができる。
【0051】
炭化ケイ素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)の後には、反応ガスを供給するステップ(S230)が行われる。反応ガスを供給するステップ(S230)は、炭化ケイ素基板の上に、例えば、酸素を含有する反応ガスを供給する。ここで、反応ガスを供給するステップ(S230)においては、前述した蒸着装置の第2のガス供給経路を介して基板の上に酸素を含有する反応ガスを供給する。原料物質が吸着された基板の上に反応ガスを供給すると、原料物質は、反応ガスに含まれている反応物質と反応することになる。
【0052】
このとき、反応ガスを供給するステップ(S230)においては、反応ガスに含まれる酸素成分を原料物質と効果的に反応させるために、反応ガスを活性化させてプラズマが生じるように工程空間にRF電源50を供給してもよい。このように、反応ガスを供給するステップ(S230)において反応ガスを活性化させて供給することにより、供給される酸素含有ガスを酸素ラジカルで活性化させて原料物質と反応させ、基板の上にゲート絶縁膜をさらに低い工程温度において形成することが可能になる。すなわち、反応ガスを活性化させて基板の上に供給する場合、ゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)は、チャンバー10の工程空間を100℃以上、400℃以下の低温に制御して行われてもよい。
【0053】
反応ガスを供給するステップ(S230)の後には、反応ガスをパージするステップが行われてもよい。反応ガスをパージするステップにおいては、チャンバー10の工程空間に残留する反応ガスを取り除いてもよい。このような反応ガスをパージするステップは、原料ガスをパージするステップと同様に、工程空間に不活性ガス、例えば、アルゴン(Ar)ガスを供給して行われてもよく、アルゴン(Ar)ガスは、第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくともどちらか一方の経路を介して供給されてもよい。
【0054】
反応ガスをパージするステップの後には、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)が行われてもよい。炭化ケイ素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)においては、水素を含有する後処理ガス、例えば、水素(H)ガスを炭化ケイ素基板の上に供給し、RF電源50を供給して基板の上に水素プラズマを生じさせてもよい。ここで、水素(H)ガスは、第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路のうちの少なくともどちらか一方の経路を介して供給されてもよい。
【0055】
原料ガス及び反応ガスが噴射されて炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜が形成された後、基板の上に水素プラズマを生じさせると、ゲート絶縁膜、特に、ハイ-K(high-K)誘電体層から形成されたゲート絶縁膜をチャンバー10の内部または炭化ケイ素基板の温度が低温である場合であっても容易に形成することができる。すなわち、チャンバー10の内部または炭化ケイ素基板の温度が低温である場合、例えば、100℃~400℃の低温状態でハイ-K(high-K)誘電体層から形成されたゲート絶縁膜を形成することができる。のみならず、炭化ケイ素基板の上に水素を含有する後処理ガスを活性化させて供給するステップ(S240)によってチャンバー10の内部に残留する不純物やゲート絶縁膜に含まれている不純物を効果的に取り除くこともできるということはいうまでもない。
【0056】
このように、原料ガスを供給するステップ(S210)、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)、反応ガスを供給するステップ(S230)及び炭化ケイ素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)を含む工程サイクルが複数回行われてもよい。より詳細には、原料ガスを供給するステップ(S210)、原料ガスをパージするステップ、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)、反応ガスを供給するステップ(S230)、反応ガスをパージするステップ及び炭化ケイ素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)は、1つの工程サイクルをなすことができ、前記工程サイクルは、基板の上に所望の膜厚のゲート絶縁膜が形成されるまで繰り返し行われてもよい。
【0057】
図4は、本発明の実施形態に従って製造される薄膜トランジスターの一例を示す図である。
【0058】
図4を参照すると、本発明の実施形態に従って製造される薄膜トランジスターは、ゲート電極200aと、前記ゲート電極200aの上部または下部に配置され、水平方向に互いに離れ合うソース電極510a及びドレイン電極520aと、前記ゲート電極200aとソース電極510a及びドレイン電極520aの間に配置される活性層400aと、前記ゲート電極200aと活性層400aとの間に配置されるゲート絶縁膜300aと、を備える。
【0059】
ここで、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスターは、図4に示されているように、炭化ケイ素基板100aの上に形成されるゲート電極200aと、ゲート電極200aの上に形成されるゲート絶縁膜300aと、ゲート絶縁膜300aの上に形成される活性層400aと、活性層400aの上に互いに離れ合うように形成されるソース電極510a及びドレイン電極520aと、を備えるボトムゲート(bottom gate)型薄膜トランジスターであってもよいが、これとは異なり、ゲート電極200aが上部に配置されるトップゲート(top gate)型薄膜トランジスターにも同様に適用可能であるということはいうまでもない。
【0060】
ここで、炭化ケイ素基板100aとしては、炭化ケイ素(SiC)を主成分として含有する基板が挙げられる。このとき、基板は、炭化ケイ素単結晶ウェーハを備えていてもよい。
【0061】
ゲート電極200aは、導電物質を用いて形成してもよいが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)及び銅(Cu)のうちの少なくともいずれか1種の金属またはこれらを含む合金から形成してもよい。また、ゲート電極200aは、単一層のみならず、複数の金属層からなる多重層に形成してもよい。すなわち、物理化学的な特性に優れたクロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)などの金属層と比抵抗の小さなアルミニウム(Al)系、銀(Ag)系または銅(Cu)系の金属層を備える二重層に形成してもよい。
【0062】
ゲート絶縁膜300aは、ゲート電極200aの上に形成される。すなわち、ゲート絶縁膜300aは、ゲート電極200aの上部及び側部を含む炭化ケイ素基板100aの上に形成されてもよい。ゲート絶縁膜300aは、金属物質との密着性に優れており、しかも、絶縁耐圧が抜群である酸化ケイ素(SiO)を用いた薄膜から形成してもよいが、酸化ケイ素(SiO)よりも高い誘電率を有するハイ-K(high-K)誘電体から形成されてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜300aは、少なくとも1つのハイ-K(high-K)誘電体層を備えていてもよい。このとき、ハイ-K(high-K)誘電体は、ハフニウム酸化物(HfO)、ハフニウムシリコン酸化物(HfSiO)、ランタン酸化物(LaO)、ランタンアルミニウム酸化物(LaAlO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、ジルコニウムシリコン酸化物(ZrSiO)、タンタル酸化物(Ta)、チタン酸化物(TiO)、バリウムストロンチウムチタン酸化物(BaSrTiO)、バリウムチタン酸化物(BaTiO)、ストロンチウムチタン酸化物(SrTiO)、イリジウム酸化物(IrO)のうちの少なくとも1種の物質を含んでいてもよい。
【0063】
このようなゲート絶縁膜300aは、前述したように、炭化ケイ素基板を設けるステップ(S100)及び炭化ケイ素基板の上に100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)を含む本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法により形成されてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜300aは、原料ガスを供給するステップ(S210)と、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)と、反応ガスを供給するステップ(S230)、及び炭化ケイ素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)を含む工程サイクルを複数回行う薄膜の蒸着方法により形成されてもよい。
【0064】
活性層400aは、ゲート絶縁膜300aの上に形成され、少なくとも一部がゲート電極200aと重なり合うように形成される。活性層400aは、例えば、金属酸化物薄膜から形成されてもよいが、単一の金属酸化物薄膜から形成されてもよいし、あるいは、複数の金属酸化物薄膜から形成されてもよい。このような金属酸化物薄膜は、亜鉛酸化物(ZnO)を含んでいてもよいし、亜鉛酸化物(ZnO)にインジウム(In)及びガリウム(Ga)のうちの少なくともどちらか一方がドープされた物質を含んでいてもよい。
【0065】
ソース電極510a及びドレイン電極520aは、活性層400aの上部に形成され、ゲート電極200aと一部重なり合ってゲート電極200aを挟んでソース電極510aとドレイン電極520aとが互いに離れ合うように形成されてもよい。ソース電極510a及びドレイン電極520aは、互いに同一の物質を用いた同一の工程により形成してもよく、導電性物質を用いて形成してもよいが、例えば、アルミニウム(Al)、ネオジム(Nd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)及びモリブデン(Mo)のうちの少なくともいずれか1種の金属またはこれらを含む合金から形成してもよい。すなわち、ゲート電極200aと同一の物質から形成してもよいが、ゲート電極200aとは異なる物質から形成してもよい。また、ソース電極510a及びドレイン電極520aは、それぞれ単一層のみならず、複数の金属層の多重層に形成してもよいということはいうまでもない。
【0066】
図5は、本発明の実施形態に従って製造されるパワー半導体素子の一例を示す図である。
【0067】
図5を参照すると、本発明の実施形態に従って製造されるパワー半導体素子、例えば、電界効果トランジスター(FET;Field Effect Transistor)は、炭化ケイ素基板100bと、炭化ケイ素基板100bの上に形成されるゲート絶縁膜300bと、炭化ケイ素基板100bの上においてゲート絶縁膜300bを挟んで水平方向に互いに離れ合うように設けられたソース電極510b及びドレイン電極520bと、ソース電極510bとドレイン電極520bとの間においてゲート絶縁膜300bの上に設けられたゲート電極200bと、を備える。ここで、炭化ケイ素基板100bとしては、内部にドーパントが注入されて複数の半導体領域が形成された基板が挙げられ、複数の半導体領域は、電界効果トランジスターのソースとして機能するソース領域110bと、電界効果トランジスターのドレインとして機能するドレイン領域120bと、電界効果トランジスターの活性層として機能するウェル領域130bと、を備えていてもよい。
【0068】
このとき、本発明の実施形態においては、パワー半導体素子を製造するに際して、炭化ケイ素基板100bの上にゲート絶縁膜200bを形成するために、前述したように炭化ケイ素基板100bを設けるステップ(S100)及び炭化ケイ素基板100bの上に100~400℃の温度において原子層蒸着工程によりゲート絶縁膜を形成するステップ(S200)を含む本発明の実施形態に係る薄膜の蒸着方法を利用してもよい。
【0069】
すなわち、パワー半導体素子において、ゲート絶縁膜300bに原料ガスを供給するステップ(S210)と、炭化ケイ素基板をプラズマを用いて前処理するステップ(S220)と、反応ガスを供給するステップ(S230)、及び炭化ケイ素基板をプラズマを用いて後処理するステップ(S240)を含む工程サイクルを複数回行う薄膜の蒸着方法により形成してもよい。
【0070】
このとき、ゲート絶縁膜300bは、少なくとも1つのハイ-K(high-K)誘電体層を備えていてもよく、ハイ-K(high-K)誘電体は、ハフニウム酸化物(HfO)、ハフニウムシリコン酸化物(HfSiO)、ランタン酸化物(LaO)、ランタンアルミニウム酸化物(LaAlO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、ジルコニウムシリコン酸化物(ZrSiO)、タンタル酸化物(Ta)、チタン酸化物(TiO)、バリウムストロンチウムチタン酸化物(BaSrTiO)、バリウムチタン酸化物(BaTiO)、ストロンチウムチタン酸化物(SrTiO)、イリジウム酸化物(IrO)のうちの少なくとも1種の物質を含んでいてもよいということは、前述した薄膜トランジスターの場合と同様であるため、これについての重複する説明は省略する。
【0071】
このように、本発明の実施形態によれば、低温工程を用いて炭化ケイ素基板の上にゲート絶縁膜を形成することができる。また、ゲート絶縁膜を形成するために基板を昇温させる時間を節約することができ、これにより、ディスプレイ装置またはパワー半導体素子の製造時間を短縮させることができる。
【0072】
また、本発明の実施形態によれば、高い降伏電圧を有しながらも、放熱性に優れたディスプレイ装置またはパワー半導体素子を製造することができる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態が特定の用語を用いて説明及び図示されたが、これらの用語は、単に本発明を明確に説明するためのものに過ぎず、本発明の実施形態及び記述された用語は、特許請求の範囲の技術的思想及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変化が加えられるということは明らかである。これらの変形された実施形態は、本発明の思想及び範囲から個別的に理解されてはならず、本発明の特許請求の範囲内に属するものといえるべきである。
【国際調査報告】