(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】細胞のカプセル化のための超多孔性ゲルマトリックス
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20240625BHJP
A61M 1/34 20060101ALI20240625BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20240625BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20240625BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240625BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
A61M1/34 100
C12N5/071
C12N5/0735
C12N5/10
C07K14/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572627
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022031355
(87)【国際公開番号】W WO2022251643
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】バラハ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,シューボ
(72)【発明者】
【氏名】ムンナンギ,プジタ
(72)【発明者】
【氏名】サンタンドレウ,アナ
(72)【発明者】
【氏名】シャヒーン,レベッカ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C077
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB11
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BB15
4B065BC46
4B065CA24
4B065CA44
4C077BB02
4C077KK12
4C077NN03
4C077PP02
4C077PP05
4H045AA10
4H045CA40
4H045EA34
(57)【要約】
ゲルを形成することができる水溶性材料と生体適合性疎水性物質とを含むエマルションから生成される生体適合性ゲルマトリックスが提供される。特定の態様では、本開示の生体適合性ゲルマトリックスは、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルであって、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルは、パターン化されたマイクロチャネル及びナノチャネルではない、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルと、複数の細胞であって、細胞は、複数のマイクロチャネルに隣接しており、複数の細胞の大部分は、複数のマイクロチャネルのうちの少なくとも1つから50ミクロン以下の距離内にある、複数の細胞とを含み得、複数のマイクロチャネルは、5~500ミクロンの幅を有し、複数のナノチャネルは、1nm~500nmの幅を有する。マトリックスの使用方法及びマトリックスを作製する方法も提供される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ゲルマトリックスであって、
複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルであって、前記複数のマイクロチャネル及び前記複数のナノチャネルは、パターン化されたマイクロチャネル及びナノチャネルではない、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルと、
複数の細胞であって、前記細胞は、前記複数のマイクロチャネルに隣接しており、前記複数の細胞の大部分は、前記複数のマイクロチャネルのうちの少なくとも1つから50ミクロン以下の距離内にある、複数の細胞と、を含み、
前記複数のマイクロチャネルは、5~500ミクロンの幅を有し、前記複数のナノチャネルは、1nm~500nmの幅を有する、生体適合性ゲルマトリックス。
【請求項2】
前記ゲルマトリックスが、アガロースで構成されている、請求項1に記載のゲルマトリックス。
【請求項3】
前記ゲルマトリックスが、コラーゲン、アルギネート、セルロース、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン(PCL)、ゼラチン、又はデキストランで構成されている、請求項1に記載のゲルマトリックス。
【請求項4】
前記マトリックスが、平面スキャフォールド、円筒、球体、又は繊維の形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載のゲルマトリックス。
【請求項5】
前記マイクロチャネルが、前記複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、前記マトリックス中にカプセル化された前記複数の細胞の少なくとも80%が、少なくとも1日間生存可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゲルマトリックス。
【請求項6】
前記マイクロチャネルが、前記複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、前記マトリックス中にカプセル化された前記複数の細胞の少なくとも80%が、最大1ヶ月間生存可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載のゲルマトリックス。
【請求項7】
前記マイクロチャネルが、前記複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、前記マトリックス中にカプセル化された前記複数の細胞の少なくとも80%が、少なくとも1日間生存可能かつ機能的である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゲルマトリックス。
【請求項8】
前記マイクロチャネルが、前記複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、前記マトリックス中にカプセル化された前記複数の細胞の少なくとも80%が、最大1ヶ月間生存可能かつ機能的である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゲルマトリックス。
【請求項9】
前記複数の細胞が、インスリン産生細胞である、請求項1~8のいずれか一項に記載のゲルマトリックス。
【請求項10】
前記インスリン産生細胞が、幹細胞の分化に由来する、請求項9に記載のゲルマトリックス。
【請求項11】
前記インスリン産生細胞が、膵島から単離された膵細胞である、請求項9に記載のゲルマトリックス。
【請求項12】
前記インスリン産生細胞が、膵臓から単離された膵島内にあり、前記膵島が、前記マトリックス中にカプセル化されている、請求項9に記載のゲルマトリックス。
【請求項13】
前記膵島が各々、約1000個の細胞を含む、請求項12に記載のゲルマトリックス。
【請求項14】
各膵島が、約100ミクロンの直径を有する、請求項12又は13に記載のゲルマトリックス。
【請求項15】
前記インスリン産生細胞が、幹細胞由来の濃縮βクラスター(eBC)内にある、請求項9に記載のゲルマトリックス。
【請求項16】
各eBCが、約1000個の細胞を含む、請求項15に記載のゲルマトリックス。
【請求項17】
各eBCが、約100ミクロンの直径を有する、請求項15又は16に記載のゲルマトリックス。
【請求項18】
生体人工限外ろ過デバイスであって、
請求項1~17のいずれか一項に記載のマトリックスを含む、平面スキャフォールドと、
前記平面スキャフォールドの第1の表面に配置された第1の半透過性限外ろ過膜と、
前記平面スキャフォールドの前記第1の表面に隣接し、かつ前記第1の半透過性限外ろ過膜を介して前記平面スキャフォールドと流体連通し、かつ入口及び出口を含む、第1のコンパートメントと、
前記平面スキャフォールドの第2の表面に隣接し、かつ出口を含む、第2のコンパートメントと、を含み、
前記第1の半透過性限外ろ過膜は、5nm~5ミクロンの範囲の幅を有する複数の細孔を含み、
前記第1の半透過性限外ろ過膜は、前記第1のコンパートメントから前記マトリックスへの限外ろ過液の輸送を可能にし、前記限外ろ過液は、前記マトリックスを通って前記第2のコンパートメントへと横断する、生体人工限外ろ過デバイス。
【請求項19】
前記デバイスが、前記平面スキャフォールドの前記第2の表面に配置された第2の半透過性限外ろ過膜を更に含み、前記限外ろ過液は、前記複数のマイクロチャネルから前記第2の半透過性限外ろ過膜を横切って前記第2のコンパートメントへと横断する、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記第2の半透過性限外ろ過膜が、5nm~5ミクロンの範囲の幅を有する複数の細孔を含む、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記第1及び第2の半透過性限外ろ過膜が、0.1ミクロン~2ミクロンの範囲範囲の幅を有する複数の細孔を含む、請求項19又は20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記第2の半透過性限外ろ過膜が、前記第1の半透過性限外ろ過膜における前記複数の細孔の前記幅よりも大きい幅を有する複数の細孔を含む、請求項19~21のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記第1のコンパートメントの前記入口が、対象の血管に接続するためのチューブに取り付け可能であり、任意選択で、前記血管は、前記対象の動脈である、請求項18~22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記第1のコンパートメントの前記出口が、対象の血管に接続するためのチューブに取り付け可能であり、任意選択で、前記血管は、前記対象の静脈又は前記対象の動脈である、請求項18~23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記第2のコンパートメントの前記出口が、(i)対象の血管に接続するためのチューブに取り付け可能であり、任意選択で、前記限外ろ過液を、前記対象の1つ以上の血管、(ii)前記対象の1つ以上の静脈、(iii)前記対象の1つ以上の動脈、及び/又は(iv)分析物分析デバイスに提供する、請求項18~24のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
前記第1の半透過性膜における前記複数の細孔が、0.2μm~0.5μm、20nm~2ミクロン、又は20nm~50nmの範囲の幅を有する、請求項18~25のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項27】
前記第2の半透過性膜における前記複数の細孔が、0.2μm~0.5μm、20nm~2ミクロン、又は20nm~50nmの範囲の幅を有する、請求項19~26のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
前記第1の半透過性限外ろ過膜の厚さが、0.1ミクロン~100ミクロン、0.5μm~10μmの範囲内である、請求項18~27のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項29】
前記第2の半透過性限外ろ過膜の厚さが、0.1ミクロン~100ミクロン又は0.5μm~10μmの範囲内である、請求項19~28のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記平面スキャフォールドの第1及び/又は第2の表面の表面が、1cm
2~100cm
2又は15cm
2~30cm
2の範囲内である、請求項18~29のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記第1の半透過性限外ろ過膜の表面積が、1cm
2~1000cm
2又は15cm
2~30cm
2の範囲内である、請求項18~30のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項32】
前記第2の半透過性限外ろ過膜の表面積が、1cm
2~1000cm
2又は15cm
2~30cm
2の範囲内である、請求項19~31のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項33】
前記複数の細孔が、円形の形状をしており、前記幅が、前記細孔の直径を指す、請求項18~32のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項34】
前記複数の細孔が、スリット形状である、請求項18~33のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項35】
前記複数の細孔が、スリット形状であり、前記細孔の幅が、5nm~100nmである、請求項18~34のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項36】
前記複数の細孔が、スリット形状であり、前記細孔の長さが、0.1ミクロン~5ミクロンの範囲である、請求項18~44のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
前記複数の細孔がスリット形状であり、前記細孔の長さが1μm~3μmの範囲内である、請求項18~36のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項38】
前記細胞が、前記デバイスを含む前記対象に対して自家由来である、請求項18~37のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項39】
前記細胞が、前記デバイスを含む前記対象に対して異種由来である、請求項18~37のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項40】
前記細胞が、前記デバイスを含む前記対象に対して同種異系由来である、請求項18~37のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項41】
生体人工限外ろ過デバイスであって、
請求項1~17のいずれか一項に記載のマトリックスを含む、平面スキャフォールドと、
前記平面スキャフォールドの第1の表面に配置された請求項18~40のいずれか1項に記載の第1の半透過性限外ろ過膜と、第2の表面に配置された請求項19~40のいずれか1項に記載の第2の半透過性限外ろ過膜と、
第1の入口及び第1の出口を含む第1のコンパートメントであって、前記第1のコンパートメントは前記平面スキャフォールドの前記第1の表面に隣接している、第1のコンパートメントと、
第2の入口及び第2の出口を含む第2のコンパートメントであって、前記第2のコンパートメントは前記平面スキャフォールドの前記第2の表面に隣接している、第2のコンパートメントと、を含み、
前記第1の入口は、対象の動脈に接続するように構成され、前記第1の出口は、前記第2のコンパートメントの前記第2の入口に接続され、
前記第2のコンパートメントの前記第2の出口は、前記対象の静脈に接続するように構成され、
前記半透過性限外ろ過膜は、5nm~5ミクロンの範囲の幅を有する複数の細孔を含み、
前記第1の半透過性限外ろ過膜は、前記第1のコンパートメントから前記スキャフォールドへの限外ろ過液の輸送を可能にし、前記第2の半透過性限外ろ過膜は、前記スキャフォールド内の前記複数のマイクロチャネルから前記第2のコンパートメントへの前記限外ろ過液の輸送を可能にする、生体人工限外ろ過デバイス。
【請求項42】
前記細胞が、前記対象に対して自家由来である、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
前記細胞が、前記対象に対して異種由来である、請求項41に記載のデバイス。
【請求項44】
前記細胞が、前記対象に対して同種異系由来である、請求項41に記載のデバイス。
【請求項45】
前記第2の半透過性限外ろ過膜の前記複数の細孔が、前記第1の半透過性限外ろ過膜の前記複数の細孔の幅よりも大きい幅を有するか、又は前記第2の半透過性限外ろ過膜の前記複数の細孔が、前記第1の半透過性限外ろ過膜の前記複数の細孔の幅よりも小さい幅を有する、請求項41~44のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項46】
細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスの提供を必要とする対象に、細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスを提供する方法であって、前記方法は、
請求項18~40のいずれか一項に記載の生体人工限外ろ過デバイスを前記対象に接続すること、を含み、前記接続することは、
前記第1のコンパートメントの前記入口を前記対象の動脈に接続し、前記第1のコンパートメントの前記出口を前記対象の血管に接続することと、
前記第2のコンパートメントの前記出口を前記対象の血管又は体腔に接続するか、又は
前記第2のコンパートメントの前記出口を分析物分析デバイスに接続することと、を含む、方法。
【請求項47】
細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスの提供を必要とする対象に、細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスを提供する方法であって、前記方法は、
請求項41~45のいずれか一項に記載の生体人工限外ろ過デバイスを前記対象に接続すること、を含み、前記接続することは、
前記第1の入口を対象の動脈に接続することと、
前記第2の出口を前記対象の静脈に接続することと、を含む、方法。
【請求項48】
前記方法が、前記対象にインスリンを提供することを含み、前記細胞が、インスリン産生細胞を含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記生体人工デバイスの接続を必要とする前記対象に生体人工デバイスを接続することは、前記スキャフォールド内の細胞の生存率の増加をもたらす、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記限外ろ過液が、グルコース及び酸素のうちの1つ以上を含む、請求項46~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記限外ろ過液が、グルコース及び酸素のうちの1つ以上を含み、前記インスリン産生細胞が、前記限外ろ過液中のグルコースの存在に応答してインスリンを排出し、前記複数のマイクロチャネルが、前記インスリンを前記第2のコンパートメントに輸送する、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記排出されたインスリンが、前記スキャフォールド内の前記複数のマイクロチャネルに輸送される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記半透過性限外ろ過膜が、前記スキャフォールドへの免疫系成分の通過を防止する、請求項46~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記半透過性限外ろ過膜が、前記スキャフォールドへの抗体の通過を防止する、請求項46~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記半透過性限外ろ過膜が、前記スキャフォールドへのサイトカインの通過を防止する、請求項46~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記半透過性限外ろ過膜が、前記スキャフォールドへのTNF-α、IFN-γ、及び/又はIL-1βの通過を防止する、請求項46~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルを含む、アガロース、コラーゲン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、アルギネート、デキストラン、又はセルロースを含む、マトリックスを作製する方法であって、前記複数のマイクロチャネル及び前記複数のナノチャネルは、パターン化されたマイクロチャネル及びナノチャネルではなく、前記複数のマイクロチャネルは、5~500ミクロンの幅を有し、前記複数のナノチャネルは、1nm~500nmの幅を有し、前記方法は、
溶解したアガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースを含む水溶液を生成することと、
水不混和性試薬及び界面活性剤を前記水溶液に添加することと、
前記水溶液を、前記溶解したアガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロース、水不混和性試薬及び界面活性剤を含むエマルションを生成するのに十分な条件下で混合することと、
前記エマルションを、アガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースのゲル化を可能にするのに十分な温度に置くことによって前記マトリックスを生成し、それによってマトリックスを作製することと、を含む、方法。
【請求項58】
前記マトリックスを生成するステップの前に、細胞を前記エマルションに添加することを更に含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記マトリックスを生成することが、平面を含むモールドに前記エマルションをキャストし、それによって平面スキャフォールドを作製することを含む、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
方法が、前記平面スキャフォールドの第1の表面に第1の半透過性限外ろ過膜を配置することを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
方法が、前記平面スキャフォールドの第2の表面に第2の半透過性限外ろ過膜を配置することを含む、請求項57~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記アガロースが、超低ゲル化アガロースである、請求項57~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記アガロースが、水溶液中に1%~10%w/v、2%~10%w/v、2%~8%w/v、又は3%~6%w/vの濃度で存在する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記アガロースを溶解することが、水溶液を約37℃の温度に加熱し、前記溶液を約300回転/分(RPM)で撹拌することを含む、請求項57~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記水不混和性試薬が、ペルフルオロデカリン(PFD)である、請求項57~64のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月27日に出願された米国仮特許出願第63/194,000号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
序論
1型糖尿病(T1D)は、ランゲルハンスの膵島内のインスリン産生β細胞の自己免疫破壊に起因する。レシピエントの肝臓の門脈に死体膵島を直接注入することによる膵島移植は、1型糖尿病(T1D mellitus 1)の患者に非侵襲的な治癒を提供する。しかしながら、ドナーの入手可能性、不十分な生着、及び全般的な免疫抑制からの副作用は、このアプローチのより広範な適用のための障害として残っている。更に、注入された膵島の最大60%が、外科的な送出後の数日以内に生存不能となり、長期的なインスリン非依存性が5年間の移植までに失われることが多い。自然免疫及び適応免疫の活性化が膵島移植片不全の主な原因のうちの1つである。膵島をカプセル化するというアイデアは、非常に大きな関心を集めている。しかしながら、機能を維持し、患者の免疫系から保護されるカプセル化された膵島を提供するための改良されたデバイス及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0003】
ゲルを形成することができる水溶性材料と生体適合性疎水性物質とを含むエマルションから生成される生体適合性ゲルマトリックスが提供される。生体適合性疎水性物質の使用は、細胞に対して無毒であり、かつ細胞への栄養素の流れをサポートすることができるマイクロチャネルを含む生体適合性ゲルマトリックスの生成を可能にする。マトリックスはまた、細胞への栄養素の拡散をサポートするナノチャネルを含む。
【0004】
特定の態様では、本開示の生体適合性ゲルマトリックスは、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルであって、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルは、パターン化されたマイクロチャネル及びナノチャネルではない、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルと、複数の細胞であって、細胞は、複数のマイクロチャネルに隣接しており、複数の細胞の大部分は、複数のマイクロチャネルのうちの少なくとも1つから50ミクロン以下の距離内にある、複数の細胞とを含み得、複数のマイクロチャネルは、5~500ミクロン、例えば、5~100ミクロン又は5~50ミクロンの幅を有し、複数のナノチャネルは、1nm~500nmの幅を有する。
【0005】
特定の態様では、生体適合性ゲルマトリックスを生成するためのエマルションが提供される。エマルションは、ゲルを形成することができる水溶性材料と生体適合性疎水性物質と任意選択で界面活性剤とを含む水中油型エマルションであり得る。エマルションは、生細胞を更に含んでいてもよい。エマルションを冷却すると、マトリックスが形成され、このマトリックスは、本明細書に記載されるようにマイクロチャネル及びナノチャネルを含む。
【0006】
特定の態様では、ゲルマトリックスは、水溶性材料アガロース、例えば、超低ゲル化アガロースで構成されている。低ゲル化アガロースの例としては、IX型アガロース、例えば、IX-A型アガロースが挙げられる。特定の態様では、ゲルマトリックスは、コラーゲン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、アルギネート、セルロース、PCL、又はデキストランなどの水溶性材料で構成されている。
【0007】
特定の態様では、ゲルマトリックスは、平面スキャフォールド、円筒、球体、又は繊維の形態である。特定の態様では、ゲルマトリックスは、少なくとも1cm3~約10,000cm3の体積を含む。特定の態様では、ゲルマトリックスは、1cm2~1000cm2又は15cm2~30cm2の範囲の表面積を含む。
【0008】
特定の態様では、ゲルマトリックスは、少なくとも100個の細胞を含む。特定の態様では、細胞は、マトリックス中に均一に分散されてよい。特定の態様では、細胞は、単一細胞又は細胞のクラスターであってもよい。特定の態様では、細胞は、インスリン産生細胞である。特定の態様では、インスリン産生細胞は、幹細胞の分化に由来する。特定の態様では、インスリン産生細胞は、膵島から単離された膵細胞である。特定の態様では、インスリン産生細胞は、膵臓から単離された膵島にあり、膵島は、マトリックス中にカプセル化されている。特定の態様では、膵島は各々、約1000個の細胞を含む。特定の態様では、各膵島は、約100ミクロンの直径を有する。特定の態様では、インスリン産生細胞は、幹細胞由来の濃縮βクラスター(eBC)内にある。特定の態様では、各eBCは、約1000個の細胞を含む。特定の態様では、各eBCは、約100ミクロンの直径を有する。
【0009】
特定の態様では、マイクロチャネルは、複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、マトリックス中にカプセル化された複数の細胞の少なくとも80%は、少なくとも1日間生存可能である。
【0010】
特定の態様では、マイクロチャネルは、複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、マトリックス中にカプセル化された複数の細胞の少なくとも80%は、最大1ヶ月間生存可能である。
【0011】
特定の態様では、マイクロチャネルは、複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、マトリックス中にカプセル化された複数の細胞の少なくとも80%は、少なくとも1日間生存可能かつ機能的である。
【0012】
特定の態様では、マイクロチャネルは、複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、マトリックス中にカプセル化された複数の細胞の少なくとも80%は、最大1ヶ月間生存可能かつ機能的である。
【0013】
特定の態様では、細胞は、インスリン産生細胞であり、細胞をグルコースに曝露し、インスリン産生を測定することによって、細胞の機能を評価する。特定の態様では、細胞は、マトリックスを通して血液を流すことによってインスリンに曝露される。
【0014】
特定の態様では、本明細書に開示されるような生体適合性ゲルマトリックスを含む平面スキャフォールドを含む生体人工限外ろ過デバイスが提供される。本デバイスは、平面スキャフォールドの第1の表面に配置された第1の半透過性限外ろ過膜と、平面スキャフォールドの第1の表面に隣接し、かつ第1の半透過性限外ろ過膜を介して平面スキャフォールドと流体連通し、かつ入口及び出口を含む、第1のコンパートメントと、平面スキャフォールドの第2の表面に隣接し、かつ出口を含む、第2のコンパートメントと、を含み得、第1の半透過性限外ろ過膜は、5nm~5ミクロンの範囲の幅を有する複数の細孔を含み、第1の半透過性限外ろ過膜は、第1のコンパートメントからマトリックスへの限外ろ過液の輸送を可能にし、限外ろ過液は、マトリックスを通って第2のコンパートメントへと横断する。
【0015】
特定の態様では、本デバイスは、平面スキャフォールドの第2の表面に配置された第2の半透過性限外ろ過膜を更に含み、限外ろ過液は、複数のマイクロチャネルから第2の半透過性限外ろ過膜を横切って第2へのコンパートメントへと横断する。
【0016】
特定の態様では、第2の半透過性限外ろ過膜は、5nm~5ミクロンの範囲の幅を有する複数の細孔を含む。特定の態様では、第1及び第2の半透過性限外ろ過膜は、0.1ミクロン~2ミクロン、0.2ミクロン~0.5ミクロン、20nm~2ミクロン、又は20nm~50nmの範囲範囲の幅を有する複数の細孔を含む。
【0017】
特定の態様では、第2の半透過性限外ろ過膜は、第1の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔の幅よりも大きい幅を有する複数の細孔を含む。
【0018】
特定の態様では、第1のコンパートメントの入口は、対象の血管に接続するためのチューブに取り付け可能であり、任意選択で、血管は、対象の動脈である。特定の態様では、第1のコンパートメントの出口は、対象の血管に接続するためのチューブに取り付け可能であり、任意選択で、血管は、対象の静脈又は対象の動脈である。特定の態様では、出口に接続された動脈は、入口に接続された動脈と同じ動脈である。特定の態様では、第2のコンパートメントの出口は、(i)対象の血管に接続するためのチューブに取り付け可能であり、任意選択で、限外ろ過液を、対象の1つ以上の血管、(ii)対象の1つ以上の静脈、(iii)対象の1つ以上の動脈、及び/又は(iv)分析物分析デバイスに提供する。
【0019】
特定の態様では、第1の半透過性限外ろ過膜の厚さは、0.1ミクロン~100ミクロン又は0.5ミクロン~10ミクロンの範囲である。
【0020】
特定の態様では、平面スキャフォールドの第1及び/又は第2の表面の表面は、1cm2~1000cm2、1cm2~100cm2、10cm2~100cm2、又は15cm2~30cm2の範囲である。特定の態様では、第1の半透過性限外ろ過膜の表面積は、1cm2~100cm2又は15cm2~30cm2の範囲である。
【0021】
特定の態様では、複数の細孔は、円形の形状をしており、幅は、細孔の直径を指す。特定の態様では、複数の細孔はスリット形状である。特定の態様では、複数の細孔は、スリット形状であり、細孔の幅は、5nm~500nm、例えば、5nm~300nm、5nm~200nm、又は5nm~100nmである。特定の態様では、複数の細孔は、スリット形状であり、細孔の長さは、0.1ミクロン~5ミクロンの範囲である。特定の態様では、複数の細孔は、スリット形状であり、細孔の長さは、1μm~3μmの範囲内であり、細孔の幅は、5nm~100nmである。特定の態様では、デバイス内の細胞は、対象に対して自家由来であるか、対象に対して異種由来であるか、又は対象に対して同種他家由来である。
【0022】
特定の態様では、本明細書に開示されるマトリックスを含む平面スキャフォールドを含む生体人工限外ろ過デバイスが提供される。本デバイスは、平面スキャフォールドの第1の表面に配置された本明細書に開示されるような第1の半透過性限外ろ過膜と、第2の表面に配置された本明細書に開示されるような第2の半透過性限外ろ過膜と、第1の入口及び第1の出口を含む第1のコンパートメントであって、第1のコンパートメントは平面スキャフォールドの第1の表面に隣接している、第1のコンパートメントと、第2の入口及び第2の出口を含む第2のコンパートメントであって、第2のコンパートメントは平面スキャフォールドの第2の表面に隣接している、第2のコンパートメントと、を含み、第1の入口は、対象の動脈に接続するように構成され、第1の出口は、第2のコンパートメントの第2の入口に接続され、第2のコンパートメントの第2の出口は、対象の静脈に接続するように構成され、半透過性限外ろ過膜は、5nm~5ミクロンの範囲の幅を有する複数の細孔を含み、第1の半透過性限外ろ過膜は、第1のコンパートメントからスキャフォールドへの限外ろ過の輸送を可能にし、第2の半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールド内の複数のマイクロチャネルから第2のコンパートメントへの限外ろ過液の輸送を可能にする。特定の態様では、デバイス内の細胞は、対象に対して自家由来であるか、対象に対して異種由来であるか、又は対象に対して同種他家由来である。特定の態様では、第2の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔は、第1の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔の幅よりも大きい幅を有するか、又は第2の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔は、第1の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔の幅よりも小さい幅を有する。
【0023】
細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスの提供を必要とする対象に、細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスを提供する方法が開示される。本方法は、本明細書に開示されるような生体人工限外ろ過デバイスを対象に接続することを含み得、接続することは、第1のコンパートメントの入口を対象の動脈に接続し、第1のコンパートメントの出口を対象の血管に接続することと、第2のコンパートメントの出口を対象の血管又は体腔に接続するか、又は第2のコンパートメントの出口を分析物分析デバイスに接続することと、を含む。
【0024】
細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスの提供を必要とする対象に、細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスを提供する方法が開示される。本方法は、本明細書に開示されるような生体人工限外ろ過デバイスを対象に接続することを含み得、接続することは、第1の入口を対象の動脈に接続することと、第2の出口を対象の静脈に接続することと、を含む。
【0025】
特定の態様では、本方法は、対象にインスリンを提供することを含み、細胞はインスリン産生細胞を含む。特定の態様では、生体人工デバイスの接続を必要とする対象に生体人工デバイスを接続することは、スキャフォールド内の細胞の生存率の増加をもたらす。特定の態様では、限外ろ過液は、グルコース及び酸素のうちの1つ以上を含む。特定の態様では、限外ろ過液は、グルコース及び酸素のうちの1つ以上を含み、インスリン産生細胞は、限外ろ過液中のグルコースの存在に応答してインスリンを排出し、複数のマイクロチャネルは、インスリンを第2のコンパートメントに輸送する。
【0026】
特定の態様では、排出されたインスリンは、スキャフォールド内の複数のマイクロチャネルに輸送される。特定の態様では、半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールドへの免疫系成分の通過を防止する。特定の態様では、半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールドへの抗体の通過を防止する。特定の態様では、半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールドへのサイトカインの通過を防止する。特定の態様では、半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールドへのTNF-α、IFN-γ、及び/又はIL-1βの通過を防止する。
【0027】
特定の態様では、本明細書に開示される生体適合性ゲルマトリックスを作製する方法が提供される。生体適合性ゲルマトリックスは、アガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン(PCL)、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースから生成され得、かつ複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルを含み、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルは、パターン化されたマイクロチャネル及びナノチャネルではなく、複数のマイクロチャネルは、5~500ミクロン、5~100ミクロン、又は5~50ミクロンの幅を有し、複数のナノチャネルは、1nm~500nmの幅を有する。特定の態様では、本方法は、アガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースを水溶液に溶解させることと、生体適合性疎水性物質及び界面活性剤を水溶液に添加することと、水溶液を、溶解したアガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロース、生体適合性疎水性物質及び界面活性剤を含むエマルションを生成するのに十分な条件下で混合することと、アガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースのゲル化を可能にするのに十分な温度にエマルションを置くことによってマトリックスを生成し、それによってマトリックスを作製することと、を含む。特定の態様では、本方法は、マトリックスを生成するステップの前に、細胞をエマルションに添加することを更に含み得る。特定の態様では、マトリックスを生成することは、平面を含むモールドにエマルションをキャストし、それによって平面スキャフォールドを作製することを含む。特定の態様では、本方法は、平面スキャフォールドの第1の表面に第1の半透過性限外ろ過膜を配置することを更に含む。特定の態様では、本方法は、第2の半透過性限外ろ過膜を平面スキャフォールドの第2の表面に配置することを更に含む。特定の態様では、アガロースは、超低ゲル化アガロースである。特定の態様では、アガロースは、水溶液中に1%~10%w/v、2%~10%w/v、2%~8%w/v、又は3%~6%w/vの濃度で存在する。特定の態様では、アガロースを溶解することは、水溶液を約37℃の温度に加熱し、溶液を約300回転/分(RPM)で撹拌することを含む。特定の態様では、マトリックスを生成することは、アガロース、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースがゲルを形成する温度までエマルションを冷却することを含む。特定の態様では、水不混和性試薬は、ペルフルオロデカリン(PFD)である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】SPAスキャフォールド及び血管内生体人工膵臓(iBAP)デバイスアセンブリを示す。
図1Aは、アガロース中の対流孔及び拡散孔を示すSPAスキャフォールドの概略断面図を提示する。
図1Bは、膵島チャンバハウジング内のSPAスキャフォールドを提示する。
図1Cは、iBAPの構成要素、すなわち流路、シリコンナノポア膜(SNM)、細胞チャンバ内の細胞スキャフォールド、及びポリカーボネート(PC)裏面及び限外ろ過液出口の分解図を示す。
図1Dは、インビトロ試験に使用されるアセンブルされたiBAPを示す。
【
図1B】SPAスキャフォールド及び血管内生体人工膵臓(iBAP)デバイスアセンブリを示す。
図1Aは、アガロース中の対流孔及び拡散孔を示すSPAスキャフォールドの概略断面図を提示する。
図1Bは、膵島チャンバハウジング内のSPAスキャフォールドを提示する。
図1Cは、iBAPの構成要素、すなわち流路、シリコンナノポア膜(SNM)、細胞チャンバ内の細胞スキャフォールド、及びポリカーボネート(PC)裏面及び限外ろ過液出口の分解図を示す。
図1Dは、インビトロ試験に使用されるアセンブルされたiBAPを示す。
【
図1C】SPAスキャフォールド及び血管内生体人工膵臓(iBAP)デバイスアセンブリを示す。
図1Aは、アガロース中の対流孔及び拡散孔を示すSPAスキャフォールドの概略断面図を提示する。
図1Bは、膵島チャンバハウジング内のSPAスキャフォールドを提示する。
図1Cは、iBAPの構成要素、すなわち流路、シリコンナノポア膜(SNM)、細胞チャンバ内の細胞スキャフォールド、及びポリカーボネート(PC)裏面及び限外ろ過液出口の分解図を示す。
図1Dは、インビトロ試験に使用されるアセンブルされたiBAPを示す。
【
図1D】SPAスキャフォールド及び血管内生体人工膵臓(iBAP)デバイスアセンブリを示す。
図1Aは、アガロース中の対流孔及び拡散孔を示すSPAスキャフォールドの概略断面図を提示する。
図1Bは、膵島チャンバハウジング内のSPAスキャフォールドを提示する。
図1Cは、iBAPの構成要素、すなわち流路、シリコンナノポア膜(SNM)、細胞チャンバ内の細胞スキャフォールド、及びポリカーボネート(PC)裏面及び限外ろ過液出口の分解図を示す。
図1Dは、インビトロ試験に使用されるアセンブルされたiBAPを示す。
【
図2】iBAP、蠕動ポンプ、及び圧力計からなる透水試験デバイスを示す。目盛り付きシリンジ及びタイマーを使用して、限外ろ過測定を決定した。
【
図3】SPA及び非乳化アガロースで作製されたスキャフォールドの透水値(平均±SD、**は<p0.001を表す)が統計的に有意であることが示され、F(1,12)=6986である。
【
図4A】PFD液滴サイズ分析を示す。
図4Aは、液滴分析に使用した3%SPAスキャフォールドの代表的なDIC画像を示す。
図4Bは、各スキャフォールドについて平均±SDとして表されるPFD液滴を代表表するPFD液滴のサイズ分布を示すヒストグラムを示す。
図4Cは、各DIC画像について計算され、次いで平均化されたスキャフォールドの相対的な液滴面積を示す。線は、各スキャフォールドの平均±SDを表し、*はp<0.05を表す。
【
図4B】PFD液滴サイズ分析を示す。
図4Aは、液滴分析に使用した3%SPAスキャフォールドの代表的なDIC画像を示す。
図4Bは、各スキャフォールドについて平均±SDとして表されるPFD液滴を代表表するPFD液滴のサイズ分布を示すヒストグラムを示す。
図4Cは、各DIC画像について計算され、次いで平均化されたスキャフォールドの相対的な液滴面積を示す。線は、各スキャフォールドの平均±SDを表し、*はp<0.05を表す。
【
図4C】PFD液滴サイズ分析を示す。
図4Aは、液滴分析に使用した3%SPAスキャフォールドの代表的なDIC画像を示す。
図4Bは、各スキャフォールドについて平均±SDとして表されるPFD液滴を代表表するPFD液滴のサイズ分布を示すヒストグラムを示す。
図4Cは、各DIC画像について計算され、次いで平均化されたスキャフォールドの相対的な液滴面積を示す。線は、各スキャフォールドの平均±SDを表し、*はp<0.05を表す。
【
図5A】3%SPAスキャフォールドの分解を示す。
図5Aは、28日間の分解研究で体重の変化を測定し、異なる時点で有意差が見出されなかったことを示す。データは、平均±SDとして示される。
図5Bは、0、7、21、及び28日間の培養におけるスキャフォールドの代表的な画像を示す。
【
図5B】3%SPAスキャフォールドの分解を示す。
図5Aは、28日間の分解研究で体重の変化を測定し、異なる時点で有意差が見出されなかったことを示す。データは、平均±SDとして示される。
図5Bは、0、7、21、及び28日間の培養におけるスキャフォールドの代表的な画像を示す。
【
図6A】3%の従来のアガロース及びSPAスキャフォールドにおけるヒト膵島及びeBCの組織学的評価及び生存率を提示する。
図6Aは、従来のアガロース及びSPAスキャフォールドにおけるヒト膵島及びeBCのH&E及び生存率染色からの代表的な画像を示す。
図6Bは、平均+SDとして報告される生存率の結果を提示する。
【
図6B】3%の従来のアガロース及びSPAスキャフォールドにおけるヒト膵島及びeBCの組織学的評価及び生存率を提示する。
図6Aは、従来のアガロース及びSPAスキャフォールドにおけるヒト膵島及びeBCのH&E及び生存率染色からの代表的な画像を示す。
図6Bは、平均+SDとして報告される生存率の結果を提示する。
【
図7A】最適化されたSPA製剤におけるヒト膵島及びeBCインスリン産生のインビトロ評価を示す。
図7Aのヒト膵島(n=4)及び
図7BのeBC(n=8)の両方について、5mMのグルコース(G5)、28mMのグルコース(G28)、続いて第2のG5段階へのGSIS曝露中のSPAスキャフォールドにおけるインスリン産生が示される。データは、平均±SDを表す。
【
図7B】最適化されたSPA製剤におけるヒト膵島及びeBCインスリン産生のインビトロ評価を示す。
図7Aのヒト膵島(n=4)及び
図7BのeBC(n=8)の両方について、5mMのグルコース(G5)、28mMのグルコース(G28)、続いて第2のG5段階へのGSIS曝露中のSPAスキャフォールドにおけるインスリン産生が示される。データは、平均±SDを表す。
【0029】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料も、本教示の実施又は試験に使用され得るが、いくつかの例示的な方法及び材料が、以下に記載される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ろ過」という用語は、微粒子を通過させない媒体(例えば、半透過性膜)に流体キャリアを通過させることによって、空気又は液体などの流体から粒子状物質を分離するプロセスを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「限外ろ過」という用語は、流体をろ過に供することを指し、ろ過される材料は、非常に小さく、典型的には、流体は、コロイド状の、溶解溶質、又は非常に微細な固体材料を含み、フィルタは、微小多孔性又はナノ多孔性である。フィルタは、半透過性膜などの膜であり得る。ろ過される流体は、「供給流体」と称される。特定の実施形態では、供給流体は、動脈血であってもよい。限外ろ過中、供給流体は、フィルタを通してろ過された「透過液」又は「ろ過液」又は「限外ろ過液」と、膜を通してろ過されなかった供給流体の一部である「保持液」とに分離される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」という用語は、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト又は非ヒト霊長類)、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、又はげっ歯類を指す。特定の実施形態では、対象又は患者は、ヒトであってもよい。特定の実施形態では、対象又は患者は、糖尿病予備軍であってもよく、又は1型糖尿病(T1D)又は2型糖尿病などの糖尿病を有していてもよい。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置」、「処理すること」という用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に又は部分的に予防するという点では予防的であり得、かつ/あるいは疾患及び/若しくは疾患に起因する有害作用に対する部分的又は完全な治癒という点では治療的であり得る。本明細書で使用される「処置」は、対象、特にヒトにおける疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患の素因であり得るが、疾患を有するとまだ診断されていない対象において疾患が発生するのを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、及び(c)疾患を緩和すること、例えば、疾患の退縮を引き起こすこと、例えば、疾患の症候を完全に又は部分的に取り除くことを含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、本開示のデバイスの文脈で使用される「層」、「フィルム」、又は「膜」という用語、及びそれらの複数形は、シリコン膜、窒化ケイ素、シリカ、原子的に薄い膜、例えば、グラフェン、シリコン、シリセン、二硫化モリブデン(MoS2)など、若しくはそれらの組み合わせ、又はポリマーから形成され得るデバイスの個々の層を指す。本開示の多孔性層を製造するために使用される「層」、「フィルム」、又は「膜」は、典型的には多孔性であり、ナノ多孔性又は微小多孔性であり得る。「ナノ多孔性層」、「ナノポア層」、「ナノ多孔性膜」、「ナノポア膜」、「ナノ多孔性フィルム」、及び「ナノポアフィルム」という語句は、互換的に使用され、全てナノポアが作製されたポリマー層を指す。ナノ多孔性層は、層を支持するためのフレームを含み得る。「微小多孔性層」、「マイクロポア層」、「微小多孔性膜」、「マイクロポア膜」、「微小多孔性フィルム」、及び「マイクロポアフィルム」という語句は、互換的に使用され、全てマイクロポアが作製されたポリマー層を指す。微小多孔性層は、層を支持するためのフレームを含み得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、本明細書で説明されるようなマトリックス中に配置された細胞の文脈で使用される「カプセル化された」という用語は、マトリックス中のマイクロチャネル内に存在するのではなく、マトリックスによって取り囲まれている細胞を指す。カプセル化された細胞は、マトリックス中で大きく移動しないようにマトリックス中に固定化される。カプセル化された細胞は、細胞を取り囲むマトリックス中のマイクロチャネル内の溶液の流れを介して栄養素を受け取る。カプセル化された細胞は、細胞を取り囲むマトリックス中のナノチャネル内の栄養素の拡散を介して栄養素を受け取る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「生体適合性」という用語は、細胞、例えば、哺乳動物細胞に対して大きな毒性を示さない材料、マトリックス、又はデバイスを指す。
【0037】
本発明を更に説明する前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されず、それ自体は勿論、変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、限定することが意図されるものではないことも理解されるべきである。
【0038】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びこの記載の範囲内の任意の他の記載される値又は中間値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の特異的に除外された制限に従って、本発明内に包含されてもよい。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0039】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料も、本発明の実施又は試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料が、以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「チャネル」への言及は、複数のそのようなチャネルを含み、「アガロース細胞領域」への言及は、1つ以上のアガロース細胞領域及び当業者に知られているその等価物への言及などを含む。特許請求の範囲は、あらゆる任意選択的要素を除外するように起草され得ることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」及び「のみ(only)」などの排他的用語の使用のための、又は「消極的な」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0041】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態では組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本発明の様々な特徴はまた、別個に又は任意の適切なサブコンビネーションで提供され得る。本発明に係る実施形態の全ての組み合わせが本発明によって具体的に包含され、各々及び全ての組み合わせが個別にかつ明示的に開示されたかのように本明細書に開示される。加えて、そのような可変部を説明する実施形態に列挙されている全てのサブコンビネーションもまた、本発明によって具体的に包含され、各々及び全てのそのようなサブコンビネーションが本明細書に個別にかつ明示的に開示されたかのように本明細書に開示される。
【0042】
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のために、そのような刊行物に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。更に、提供された公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、個別に確認される必要がある場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0043】
上記に要約されるように、ゲルを形成することができる水溶性材料と生体適合性疎水性物質とを含むエマルションから生成される生体適合性ゲルマトリックスが提供される。生体適合性疎水性物質の使用は、細胞に対して無毒であり、かつ細胞への栄養素の流れをサポートすることができるマイクロチャネルを含む生体適合性ゲルマトリックスの生成を可能にする。マトリックスはまた、細胞への栄養素の拡散をサポートするナノチャネルを含む。エマルションを生成するために疎水性物質の使用がない場合、ゲルを形成することができる水溶性材料から形成される生体適合性ゲルマトリックスは、マイクロチャネルを含まない。マイクロチャネルがないと、マトリックスの透水性を著しく低下させ、生細胞を支持するために使用したり、様々な用途のために細胞を提供するためのデバイスとして使用したりすることに適さない。生体適合性疎水性物質の使用は、マトリックス中の生細胞のカプセル化を可能にする。
【0044】
特定の態様では、本開示の生体適合性ゲルマトリックスは、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルであって、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルは、パターン化されたマイクロチャネル及びナノチャネルではない、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルと、複数の細胞であって、細胞は、複数のマイクロチャネルに隣接しており、複数の細胞の大部分は、複数のマイクロチャネルのうちの少なくとも1つから50ミクロン以下の距離内にある、複数の細胞とを含み得、複数のマイクロチャネルは、5~500ミクロン、例えば、5~100ミクロン又は5~50ミクロンの幅を有し、複数のナノチャネルは、1nm~500nmの幅を有するマイクロチャネルを形成するプロセスの結果として、マイクロチャネルは、パターニングから得られたものなどの直線チャネル及び/又は均一に配置されたチャネルではない。
【0045】
特定の態様では、本開示の生体適合性ゲルマトリックスは、マトリックスに貫通チャネルを含めるために、中空チューブの周りにマトリックスを固化させることによって導入されるレーザーカットボイド又はボイドを含まない。
【0046】
特定の態様では、複数のセルの大部分は、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、1ミクロン以下の距離内にあるか、又は複数のマイクロチャネルのうちの少なくとも1つに直接隣接している。特定の態様では、複数の細胞の大部分は、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、又は85%以上である。
【0047】
特定の態様では、複数のマイクロチャネルは、5~500ミクロン、5~100ミクロン、又は5~50ミクロンの幅を有する。特定の態様では、複数のマイクロチャネルは円形であり、幅はマイクロチャネルの平均直径を指す。したがって、例えば、マイクロチャネルの直径は、5~100ミクロンの範囲であってもよい。特定の態様では、複数のマイクロチャネルは、5~30ミクロン、5~20ミクロン、10~30ミクロン、又は20~30ミクロンの幅を有する。
【0048】
特定の態様では、複数のナノチャネルは、1nm~500nmの幅を有する。特定の態様では、複数のナノチャネルは円形であり、幅はナノチャネルの平均直径を指す。したがって、例えば、ナノチャネルの直径は、1nm~500nm、1nm~250nm、1nm~200nm、1nm~100nm、10nm~100nm、又は1nm~50nmの範囲であってもよい。
【0049】
複数のマイクロチャネル及びナノチャネルは、PCL又は炭化ケイ素などからチャネルを生成するために使用されるものなどのパターニング技術を使用することによってパターン化されず、製造されない。
【0050】
特定の態様では、生体適合性ゲルマトリックスを生成するためのエマルションが提供される。エマルションは、ゲルを形成することができる水溶性材料と生体適合性疎水性物質と任意選択で界面活性剤とを含む水中油型エマルションであり得る。エマルションは、生細胞を更に含んでいてもよい。エマルションを冷却すると、マトリックスが形成され、このマトリックスは、本明細書に記載されるようにマイクロチャネル及びナノチャネルを含む。
【0051】
特定の態様では、ゲルマトリックスは、水溶性材料、例えばアガロース、例えば、超低ゲル化アガロースで構成されている。特定の態様では、ゲルマトリックスは、コラーゲン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、アルギネート、セルロース、又はデキストランなどの水溶性材料で構成されている。
【0052】
特定の態様では、ゲルマトリックスは、平面スキャフォールド、円筒、球体、又は繊維の形状である。例えば、エマルションは、任意の所望の形状のモールドに移され、冷却され、モールドから除去され得る。特定の態様では、モールドは、半透過性限外ろ過膜から形成され得る。特定の態様では、平面スキャフォールドは、直方体形状を有する形状を指す。
【0053】
特定の態様では、ゲルマトリックスは、少なくとも1cm3~約10,000cm3の体積を含む。例えば、ゲルマトリックスは、1cm3~1000cm3、10cm3~約10,000cm3、又は10cm3~約1000cm3の体積を有し得る。特定の態様では、ゲルマトリックスは、1cm2~1000cm2、例えば、1cm2~50cm2、10cm2~100cm2、10cm2~50cm2、又は15cm2~30cm2の範囲の表面積を含む。
【0054】
特定の態様では、ゲルマトリックスは、少なくとも100個の細胞、例えば、1000個の細胞、10,000個の細胞、100,000個の細胞、106個の細胞、108個の細胞、1010個の細胞、1012個の細胞、1014個の細胞、又はそれ以上を含む。特定の態様では、細胞は、マトリックス中に均一に分散されていてもよい。特定の態様では、細胞は、単一細胞又は細胞のクラスターであってもよい。特定の態様では、細胞は、インスリン産生細胞である。特定の態様では、インスリン産生細胞は、幹細胞の分化に由来する。特定の態様では、インスリン産生細胞は、膵島から単離された膵細胞である。特定の態様では、インスリン産生細胞は、膵臓から単離された膵島にあり、膵島は、マトリックス中にカプセル化されている。特定の態様では、膵島は各々、約1000個の細胞、例えば、500~5000個の細胞又は800~1500個の細胞を含む。特定の態様では、各膵島は、約100ミクロン、例えば、50~200mm、50~150mm、80~200mm、80~150mm、又は90~125mmの直径を有する。特定の態様では、インスリン産生細胞は、幹細胞由来の濃縮βクラスター(eBC)中にある。特定の態様では、各eBCは、約1000個の細胞、例えば、500~5000個の細胞又は800~1500個の細胞を含む。特定の態様では、各eBCは、約100ミクロン、例えば、50~200mm、50~150mm、80~200mm、80~150mm、又は90~125mmの直径を有する。
【0055】
特定の態様では、マイクロチャネルは、複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、マトリックス中にカプセル化された複数の細胞の少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%が、少なくとも1日間、少なくとも10日間、少なくとも30日間、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、又はそれ以上生存可能である。
【0056】
特定の態様では、マイクロチャネルは、複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、マトリックス中にカプセル化された複数の細胞の少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%が、最大1ヶ月間、最大2ヶ月間、最大3ヶ月間、又は最大6ヶ月間生存可能である。
【0057】
特定の態様では、マイクロチャネルは、複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、マトリックス中にカプセル化された複数の細胞の少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%が、少なくとも1日間、少なくとも10日間、少なくとも30日間、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、又はそれ以上生存可能かつ機能的である。
【0058】
特定の態様では、マイクロチャネルは、複数の細胞への栄養素の流れを可能にし、マトリックス中にカプセル化された複数の細胞の少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%が、最大1ヶ月間、最大2ヶ月間、最大3ヶ月間、又は最大6ヶ月間生存可能かつ機能的である。
【0059】
特定の態様では、細胞は、インスリン産生細胞であり、細胞をグルコースに曝露し、インスリン産生を測定することによって、細胞の機能を評価する。特定の態様では、細胞は、マトリックスを通して血液を流すことによってインスリンに曝露される。
【0060】
特定の態様では、生体適合性ゲルマトリックスは、最初にエマルションを形成することなく形成された生体適合性ゲルマトリックスが有意な数のマイクロチャネルを含まないため、エマルションを形成することなく形成された生体適合性ゲルマトリックスよりも高い透水性を有する。実施例の項で説明されるように、マイクロチャネルは、疎水性物質の使用によって形成された気泡から形成され、この気泡はマトリックスの形成中にエマルションの冷却中に合体する。
【0061】
特定の態様では、ゲルマトリックスは、冷却時にゲルを形成することができる水溶性物質を含む。そのような物質の例としては、アガロース及びコラーゲンが挙げられる。特定の態様では、ゲルマトリックスは、アルギネート、アルギネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、マトリゲル、天然多糖類、合成多糖類、ポリアミノ酸、ポリエステル、ポリ無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、変性スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、又はポリ(ビニルピロリドン)ポリマーポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、ポリエステル、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、ポリエチレングリコール、フィブリン、PCL、及びポリ(メチルメタクリレート)及び上記のいずれかのコポリマー又はグラフトコポリマーを含まない。
【0062】
本明細書で使用される場合、ゲルという用語は、水と、水溶性物質とを含むマトリックスを指し、水溶液に溶解した後、特定の温度未満で冷却すると、ゲル又はマトリックスを形成するものである。水溶性物質は、親水性で膨潤性であり、架橋を形成してゲルを作製する。ゲルは、形成後、水溶性物質が硬化してゲルを形成する温度よりも高い温度にゲルを曝露することによって、溶解することができる。
【0063】
本明細書に記載されるマトリックス、スキャフォールド、及びデバイスに含まれ得る細胞には、骨髄細胞;間葉系幹細胞、間質細胞、多能性幹細胞(例えば、人工多能性幹細胞若しくは胚性幹細胞)、血管細胞、脂肪組織に由来する前駆細胞、骨髄由来の前駆細胞、腸細胞、膵島、セルトリ細胞、β細胞、膵島の前駆細胞、β細胞の前駆細胞、末梢血前駆細胞、成体組織から単離された幹細胞、網膜前駆細胞、心筋前駆細胞、骨前駆細胞、神経前駆細胞、及び遺伝的に形質転換された細胞、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。細胞の集団は、対象由来(自家細胞)、別のドナー由来(同種他家細胞)、又は他の種由来(異種細胞)であり得る。細胞をマトリックスに導入することができ、マトリックスを即座に(1日以内に)対象に移植してもよいか、又は細胞を、移植前に細胞増殖を可能にするために、より長い期間、例えば1日を超えて培養してもよい。
【0064】
特定の実施形態では、マトリックス中の細胞の集団は、幹細胞である。特定の実施形態では、マトリックス中の細胞の集団は、膵臓前駆細胞である。特定の実施形態では、マトリックス中の細胞の集団は、膵島から単離された膵細胞である。特定の実施形態では、マトリックス中の細胞の集団は、膵臓から単離された膵島である。特定の実施形態では、マトリックス中の細胞集団は、ランゲルハンス島などの組織片の形態であり得、これは、デバイスを受ける対象又は別の対象から単離されたものであってもよい。
【0065】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるデバイスは、1型糖尿病などの糖尿病を有する人を処置するために使用されてもよい。デバイスは、膵島細胞を含んでもよく、又はインスリン産生膵細胞に分化することができる幹細胞を含んでもよい。特定の実施形態では、多能性幹細胞(PSC)は、デバイス内でインスリン産生膵細胞に分化されてもよく、次いで、分化したインスリン産生膵細胞を含む生体人工デバイスは、対象に(例えば、腹膜に、膵臓若しくは肝臓に隣接して、腎臓、肺、若しくは心臓に隣接して、又は皮下、例えば、腕若しくは腹部に)据え付けられる。場合によっては、デバイスは、PSCを含み得、デバイスは、対象の膵臓又は肝臓に隣接して移植され得る。
【0066】
特定の態様では、本明細書に開示される生体適合性ゲルマトリックスを含む平面スキャフォールドを含む生体人工限外ろ過デバイスが提供される。デバイスは、平面スキャフォールドの第1の表面に配置された第1の半透過性限外ろ過膜と、平面スキャフォールドの第1の表面に隣接し、かつ第1の半透過性限外ろ過膜を介して平面スキャフォールドと流体連通し、かつ入口及び出口を含む、第1のコンパートメントと、平面スキャフォールドの第2の表面に隣接し、かつ出口を含む、第2のコンパートメントと、を含み、第1の半透過性限外ろ過膜は、5nm~5ミクロンの範囲の幅を有する複数の細孔を含み、第1の半透過性限外ろ過膜は、第1のコンパートメントからマトリックスへの限外ろ過液の輸送を可能にし、限外ろ過液は、マトリックスを通って第2のコンパートメントへと横断する。
【0067】
特定の態様では、本デバイスは、平面スキャフォールドの第2の表面に配置された第2の半透過性限外ろ過膜を更に含み、限外ろ過液は、第2の半透過性限外ろ過膜を横切って複数のマイクロチャネルから第2のコンパートメントに横断する。
【0068】
特定の態様では、第2の半透過性限外ろ過膜は、5nm~5ミクロンの範囲の幅を有する複数の細孔を含む。特定の態様では、第1及び第2の半透過性限外ろ過膜は、0.1ミクロン~2ミクロン、0.2ミクロン~0.5ミクロン、20nm~2ミクロン、又は20nm~50nmの範囲範囲の幅を有する複数の細孔を含む。
【0069】
特定の態様では、第2の半透過性限外ろ過膜は、第1の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔の幅よりも大きい幅を有する複数の細孔を備える。
【0070】
特定の態様では、第1のコンパートメントの入口は、任意選択で、対象の血管に接続するためのチューブに取り付け可能であり、血管は、対象の動脈である。特定の態様では、第1のコンパートメントの出口は、任意選択で、対象の血管に接続するためのチューブに取り付け可能であり、血管は、対象の静脈又は対象の動脈である。特定の態様では、出口に接続された動脈は、入口に接続された動脈と同じ動脈である。特定の態様では、第2のコンパートメントの出口は、(i)対象の血管に接続するためのチューブに取り付け可能であり、任意選択で、限外ろ過液を、対象の1つ以上の血管、(ii)対象の1つ以上の静脈、(iii)対象の1つ以上の動脈、及び/又は(iv)分析物分析デバイスに提供する。
【0071】
特定の態様では、第1の半透過性限外ろ過膜の厚さは、0.1ミクロン~100ミクロン又は0.5ミクロン~10ミクロンの範囲である。
【0072】
特定の態様では、平面スキャフォールドの第1及び/又は第2の表面の表面は、1cm2~100cm2又は15cm2~30cm2の範囲である。特定の態様では、第1の半透過性限外ろ過膜における表面積は、1cm2~100cm2又は15cm2~30cm2の範囲である。
【0073】
特定の態様では、複数の細孔は、円形の形状をしており、ここで、幅は、細孔の直径を指す。特定の態様では、複数の細孔はスリット形状である。特定の態様では、複数の細孔は、スリット形状であり、細孔の幅は、5nm~500nm、5nm~400nm、5nm~300nm、5nm~200nm、5nm~100nm、又は5nm~50nmである。特定の態様では、複数の細孔は、スリット形状であり、細孔の長さは、0.1ミクロン~5ミクロンの範囲である。特定の態様では、複数の細孔は、スリット形状であり、細孔の長さは、1μm~3μmの範囲内であり、細孔の幅は、5nm~100nmである。特定の態様では、デバイス内の細胞は、対象に対して自家由来であるか、対象に対して異種由来であるか、又は対象に対して同種異系由来である。
【0074】
特定の態様では、本明細書に開示されるマトリックスを含む平面スキャフォールドを含む生体人工限外ろ過デバイスが提供される。本デバイスは、平面スキャフォールドの第1の表面に配置された本明細書に開示されるような第1の半透過性限外ろ過膜と、第2の表面に配置された本明細書に開示されるような第2の半透過性限外ろ過膜と、第1の入口及び第1の出口を含む第1のコンパートメントであって、第1のコンパートメントは平面スキャフォールドの第1の表面に隣接している、第1のコンパートメントと、第2の入口及び第2の出口を含む第2のコンパートメントであって、第2のコンパートメントは平面スキャフォールドの第2の表面に隣接している、第2のコンパートメントと、を含み、第1の入口は、対象の動脈に接続するように構成され、第1の出口は、第2のコンパートメントの第2の入口に接続され、第2のコンパートメントの第2の出口は、対象の静脈に接続するように構成され、半透過性限外ろ過膜は、5nm~5ミクロンの範囲の幅を有する複数の細孔を含み、第1の半透過性限外ろ過膜は、第1のコンパートメントからスキャフォールドへの限外ろ過の輸送を可能にし、第2の半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールド内の複数のマイクロチャネルから第2のコンパートメントへの限外ろ過液の輸送を可能にする。特定の態様では、デバイス内の細胞は、対象に対して自家由来であるか、対象に対して異種由来であるか、又は対象に対して同種異系由来である。特定の態様では、第2の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔は、第1の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔の幅よりも大きい幅を有するか、又は第2の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔は、第1の半透過性限外ろ過膜における複数の細孔の幅よりも小さい幅を有する。
【0075】
場合によっては、血液がデバイスに導入される第1のコンパートメントは、血液の限外ろ過を容易にするのに適した寸法を有し得る。例えば、第1のコンパートメントは、100ミクロン~6mm、例えば、500ミクロン~4mm、1mm~3mm、又は2mm~3mmの高さを有し得る。
【0076】
特定の実施形態では、生体人工デバイスは、対象の体腔に適合するように寸法決めされる。デバイスは、矩形又は円筒の形状であってもよい。特定の場合では、本デバイスは、50cm2以下、例えば10~30cm2、10~25cm2、15~25cm2、20~25cm2、15~30cm2の表面積を有し得る。特定の場合では、本デバイスは、矩形であり得、3cm~10cmの長さ、1cm~6cmの幅、及び0.3cm~2cmの高さ、例えば3cm×1cm×0.5cm~6cm×4cm×1cmの寸法(長さ×幅×高さ)、例えば、3cm×1cm×0.5cm、5cm×2cm×1cm、又は6cm×4cm×1cmの寸法を有する。
【0077】
本明細書に記載されるように、本明細書に開示されるデバイスは、移植された細胞を、機能的かつ生存可能な状態で、少なくとも1ヶ月間かつ最大で少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、3年、5年、10年、又は最大50年、又はそれ以上、例えば1ヶ月~50年、1年~25年、5年~50年、5年~25年、10年~50年、又は15年~25年の期間にわたって維持し得る。
【0078】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるデバイスは、対象に据え付けられときに分解又は腐敗しない不活性材料から作られたハウジングにカプセル化され得る。対象に配置される医療用具として承認された任意の材料を利用することができ、医療グレードのプラスチック、不活性金属、例えばチタン、ステンレス鋼などが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
特定の実施形態では、生体人工デバイスは、2つ以上の半透過性限外ろ過膜を含む。特定の実施形態では、半透過性限外ろ過膜は、平面スキャフォールドの第1の表面及び第2の表面に配置される。スキャフォールドの第1の表面に配置された半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールドの第2の表面に配置された半透過性限外ろ過膜と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、動脈血を含むコンパートメントに隣接する半透過性限外ろ過膜は、マトリックス中のチャネルを通って流れる限外ろ過液を含むコンパートメントに隣接する半透過性限外ろ過膜よりも小さい細孔を有し得る。場合によっては、動脈血を含むコンパートメントに隣接する半透過性限外ろ過膜は、マトリックス中のチャネルを通って流れる限外ろ過液を含むコンパートメントに隣接する半透過性限外ろ過膜よりも大きな細孔を有し得る。特定の実施形態では、半透過性膜は、動脈血を含むコンパートメントからの限外ろ過液のろ過を可能にし、限外ろ過液は、スキャフォールド内の複数のマイクロチャネルに輸送される。複数のマイクロチャネルは細胞に隣接しており、これにより、マイクロチャネル内の限外ろ過液中の分子と、細胞によって放出された分子との効率的な交換を提供する。これらの分子は、マイクロチャネルの管腔と細胞を取り囲むマトリックスとの間で濃度依存的に拡散する。例えば、酸素、グルコース、脂質、ビタミン、及びミネラルなどの分子は、チャネルの内腔からマトリックスに拡散し、尿素、二酸化炭素、インスリンなどの細胞によって分泌される分子は、マイクロチャネルの内腔に輸送される。いくつかの実施形態では、限外ろ過液中の分子の拡散及び交換は、例えば、限外ろ過液がマイクロチャネルに入らず、例えばナノチャネルを介してマトリックスを透過するなど、マイクロチャネルの外側で起こり得ることが理解される。
【0080】
特定の実施形態では、半透過性限外ろ過膜は、生体液のろ過のために構成される。特定の実施形態では、膜は、複数のナノポアを含み、細孔の形状及びサイズが制御される。特定の実施形態では、膜は、複数の細孔を含む。特定の実施形態では、複数の細孔は、マイクロポアであってもよく、0.1μm~5μm、例えば、0.1μm~3μm、0.1μm~0.5μm、0.5μm~1μm、1μm~1.5μm、1.5μm~2μm、0.1μm~1μm、0.1μm~0.8μm、0.2μm~0.7μm、0.2μm~0.6μm、0.2μm~0.5μmの範囲の幅を有し得る。特定の実施形態では、複数の細孔は、ナノポアであってもよく、1nm~500nm、例えば、1nm~90nm、2nm~50nm、3nm~40nm、4nm~50nm、4nm~40nm、5nm~50nm、5nm~20nm、4nm~20nm、7nm~100nm、12nm~20nm、又は5nm~10nmの幅を有し得る。特定の実施形態では、複数の細孔は、スリット形状であり、本明細書に列挙される幅を有し、1μm~10μm、例えば、2μm~3μm、3μm~4μm、4μm~5μm、5μm~6μm、6μm~7μm、7μm~8μm、8μm~9μm、又は9μm~10μmの範囲の長さを有する。特定の場合では、長方形の細孔は、100~1000nmの深さ、3nm~50nmの幅、及び1ミクロン~5ミクロンの長さ、例えば、5nm~50nm×1ミクロン~2ミクロン×200nm~500nmの幅×長さ×深さを有する。
【0081】
特定の実施形態では、本開示のデバイスは、6mm×6mm、5mm×5mm、7mm×7mm、8mm×8mm、9mm×9mm、10mm×10mm、10cm×10cm、例えば、10mm×10mm~10cm×10cmの寸法(長さ×幅)を有する半透過性限外ろ過膜を含む。いくつかの実施形態では、半透過性限外ろ過膜は、矩形であり得る。特定の実施形態では、半透過性限外ろ過膜は、0.5~100cm2、例えば、30~100cm2、10~30cm2、15~30cm2、15~20cm2、20~25cm2、25~30cm2、0.5~10cm2、0.75~5cm2、0.75~3cm2、又は0.75~2cm2の範囲の表面積を有する。
【0082】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるデバイスは、実質的に平面であってもよく、20~100cm2(各平面側)の範囲の表面積及び1cm~3cmの厚さを有するように寸法決定されてもよい。特定の実施形態では、本明細書に開示されるデバイスは、最大500cm3、例えば50~500cm3、100~500cm3、100~300cm3、100~150cm3の体積を有し得る。特定の場合では、本デバイスは、5~75cm2、例えば、5~50cm2、10~30cm2、又は15~30cm2の表面を有する半透過性膜を含み得る。膜における細孔のサイズは、10nm~100nm、例えば10nm~20nmの幅であり得る。
【0083】
本開示の半透過性限外ろ過膜は、生体液のろ過に使用するのに適した任意の膜材料を含み、膜は、構造的に細孔の形成を支持することができる。適切な膜材料の例は、当該技術分野で知られており、本明細書に記載されている。
【0084】
特定の実施形態では、膜材料は、合成、生物学的、及び/又は生体適合性である(例えば、体外又は体内で使用するため)。材料には、生体適合性のあるシリコン、コーティングされたシリコン材料、ポリシリコン、炭化ケイ素、超ナノ結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、二酸化ケイ素、PMMA、SU-8、及びPTFEが含まれるが、これらに限定されない。他の可能な材料には、金属(例えば、チタン)、セラミック(例えば、シリカ又は窒化シリコン)、及びポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、及びシリコーン)が含まれる。膜用の材料は、例えば、米国特許出願公開第2009/0131858号に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
本開示の半透過性限外ろ過膜は、複数の細孔を含み、細孔の形状は、線形、正方形、長方形(スリット形)、円形、卵形、楕円形、又は他の形状を含む。本明細書で使用される場合、細孔の幅とは、細孔が円形、卵形、又は楕円形である場合の直径を指す。特定の実施形態では、膜は、単一の形状又は形状の任意の組み合わせを含む細孔を含む。特定の実施形態では、細孔のサイズは高度に均一である。特定の実施形態では、細孔は、スリット形状の細孔の寸法間に20%未満のサイズ変動、10%未満のサイズ変動、又は5%未満のサイズ変動が存在するように微細加工される。特定の実施形態では、適切な細孔のサイズ及び形状を決定する要因には、透水性と溶質透過選択性との間のバランスが含まれる。特定の実施形態では、複数の細孔は、膜を横切る分子の効率的な輸送を可能にする最適なフラックス効率を提供するスリット形状の細孔である。特定の実施形態では、膜は、スリット形状のナノポアを含む。特定の実施形態では、半透過性限外ろ過膜は、例えば、1cm2、0.5cm2、又は0.4cm2の膜表面積上に、約103~108個の長方形のスリット形状のナノポア(例えば、104~108個、又は105~107個)を有する。特定の実施形態では、半透過性限外ろ過膜上のスリット形状のナノポアの数は、膜が毛細血管灌流圧で生理学的に十分な限外ろ過体積を生成することを可能にするのに十分である。特定の実施形態では、半透過性限外ろ過膜の空隙率は、約1%~50%、例えば、10%~50%、20%~50%、又は20%~75%などである)。
【0086】
使用する方法
細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスの提供を必要とする対象に、細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスを提供する方法が開示される。本方法は、本明細書に開示されるような生体人工限外ろ過デバイスを対象に接続することを含み得、接続することは、第1のコンパートメントの入口を対象の動脈に接続し、第1のコンパートメントの出口を対象の血管に接続することと、第2のコンパートメントの出口を対象の血管又は体腔に接続するか、又は第2のコンパートメントの出口を分析物分析デバイスに接続することと、を含む。
【0087】
細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスの提供を必要とする対象に、細胞を含む生体人工限外ろ過デバイスを提供する方法が開示される。本方法は、本明細書に開示されるような生体人工限外ろ過デバイスを対象に接続することを含み得、接続することは、第1の入口を対象の動脈に接続することと、第2の出口を対象の静脈に接続することと、を含む。
【0088】
特定の態様では、本方法は、対象にインスリンを提供することを含み、細胞はインスリン産生細胞を含む。特定の態様では、生体人工デバイスの接続を必要とする対象に生体人工デバイスを接続することは、スキャフォールド内の細胞の生存率の増加をもたらす。特定の態様では、限外ろ過液は、グルコース及び酸素のうちの1つ以上を含む。特定の態様では、限外ろ過液は、グルコース及び酸素のうちの1つ以上を含み、インスリン産生細胞は、限外ろ過液中のグルコースの存在に応答してインスリンを排出し、複数のマイクロチャネルは、インスリンを第2のコンパートメントに輸送する。
【0089】
特定の態様では、排出されたインスリンは、スキャフォールド内の複数のマイクロチャネルに輸送される。特定の態様では、半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールドへの免疫系成分の通過を防止する。特定の態様では、半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールドへの抗体の通過を防止する。特定の態様では、半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールドへのサイトカインの通過を防止する。特定の態様では、半透過性限外ろ過膜は、スキャフォールドへのTNF-α、IFN-γ、及び/又はIL-1βの通過を防止する。特定の実施形態では、本開示の生体人工デバイスは、対象の血液からデバイス内の細胞への栄養素の輸送を可能にしながら、TNF-α、IFN-γ、及び/又はIL-1βの通過を減少させることができる。特定の実施形態では、本開示の生体人工デバイスは、免疫系の構成要素(例えば、免疫細胞、抗体、サイトカイン、例えば、TNF-α、IFN-γ、及び/又はIL-1β)の通過を少なくとも50%(例えば、60%~80%)減少させることができる。特定の実施形態では、本開示の生体人工デバイスは、ナノポアを有する半透過性限外ろ過膜を有する(例えば、本開示の生体人工デバイスは、処置を必要とする対象の処置のために、生体人工デバイス内の細胞の有効数を収容するようなサイズである。例えば、対象は、機能細胞の欠如によって引き起こされる症状、例えば、機能細胞によって通常分泌される分子が分泌されないか、又は症状をもたらすレベルで分泌される症状に罹患していてもよい。本開示の生体人工デバイス内に機能細胞を提供することで、症状を緩和することができる。例示的な症状としては、1型糖尿病、パーキンソン病、筋ジストロフィーなどが挙げられる。
【0090】
本デバイスは、皮下、腹腔内、又は脳、脊髄、膵臓、肝臓、子宮、皮膚、膀胱、腎臓、筋肉などの体内の任意の適切な場所に移植され得る。移植部位は、処置を必要とする疾患/損傷組織に基づいて選択することができる。糖尿病(DM)などの疾患の処置のために、本デバイスは、皮下腔又は腹膜などの臨床的に好都合な部位に据え付けられてもよい。デバイスは、本明細書に記載されるように対象の血管系に接続され得る。場合によっては、本デバイスは、血管移植片にインラインで接続され得る。場合によっては、本デバイスは、対象に接続されて、限外ろ過液を、対象の動脈、静脈、体腔(例えば、腹腔)、又はそれらの組み合わせに供給し得る。場合によっては、本デバイスは、カテーテルに接続されて、カテーテルが接続された静脈に限外ろ過液を供給する。
【0091】
本明細書に開示される方法及びデバイスは、ヒト臨床及び獣医学的用途の両方に使用することができる。したがって、生体人工デバイスが投与される対象又は患者は、ヒトであってもよく、又は獣医学的用途の場合には、実験動物、農業動物、家畜、若しくは野生動物であってもよい。主題のデバイス及び方法は、ヒト、サル及びチンパンジーなどの実験動物、イヌ及びネコなどの家畜、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの農業動物、並びにクマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカ、及びクジラなどの飼育下の野生動物を含むが、これらに限定されない動物に適用することができる。
【0092】
動作中、血液は、患者の血管系(すなわち、動脈)から生体人工デバイスの第1のコンパートメントの入口に送られる。血液は、生体人工デバイスの第1のコンパートメントを通って流れ、血液からの栄養素及び小分子は、半透過性限外ろ過膜を通過し、一方、血液内の免疫グロブリン及びサイトカインなどの大分子は、デバイス内の細胞との接触が妨げられる。栄養素及び小分子には、グルコース、酸素、及びインスリンが含まれるが、これらに限定されない。半透過性限外ろ過膜を通過する小分子及び栄養素をろ過して、細胞の集団を含むデバイスのマトリックスに接触する限外ろ過液を形成する。特定の実施形態では、細胞集団がインスリンを限外ろ過液に放出する。次いで、限外ろ過液は、マトリックスの限外ろ過チャネルを通過し、マトリックスは、次いで、第2の半透過性限外ろ過膜を通過する。任意選択で、第2のコンパートメントの出口は、カテーテルに接続するように構成され得る。特定の実施形態では、カテーテルは第2の静脈に接続する。
【0093】
本開示のデバイスは、血流の生理学的速度で1~15ml/分の速度で限外ろ過液を生じさせる高い限外ろ過速度を提供する。
【0094】
作製方法
特定の態様では、本明細書に開示される生体適合性ゲルマトリックスを作製する方法が提供される。生体適合性ゲルマトリックスは、アガロース、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースなどの水溶性ゲル形成材料から生成され得、かつ複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルを含み、複数のマイクロチャネル及び複数のナノチャネルは、パターン化されたマイクロチャネル及びナノチャネルではなく、複数のマイクロチャネルは、5~100ミクロンの幅を有し、複数のナノチャネルは、1nm~500nmの幅を有する。
【0095】
特定の態様では、本方法は、アガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースを水溶液に溶解させることと、生体適合性疎水性物質及び界面活性剤を水溶液に添加することと、水溶液を、溶解したアガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロース、生体適合性疎水性物質及び界面活性剤を含むエマルションを生成するのに十分な条件下で混合することと、アガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースのゲル化を可能にするのに十分な温度にエマルションを置くことによってマトリックスを生成し、それによってマトリックスを作製することと、を含む。特定の態様では、本方法は、マトリックスを生成するステップの前に、細胞をエマルションに添加することを更に含み得る。
【0096】
特定の態様では、水溶性ゲル形成材料を水溶液に溶解することは、水溶性ゲル形成材料と緩衝液又は平衡塩溶液との溶液を混合、例えば撹拌することを含み得る。特定の態様では、溶解はまた、混合ステップの前、間、及び/又は後に溶液に熱を加えることを含み得る。
【0097】
特定の態様では、生体適合性疎水性物質及び界面活性剤を水溶液に添加し、混合することは、水溶性ゲル形成材料の溶液と生体適合性疎水性物質との溶液を混合し、その溶液を37℃の温度に加熱し、約300RPM(例えば、100~500RPM)で撹拌し、界面活性剤(例えば、Tween80又はTween20)を添加し、一定期間撹拌するステップを含み得る。溶液を、より高い速度、例えば、500RPMよりも高い速度(例えば、600~1000RPMよりも高い速度)で撹拌して、エマルションを作製してもよい。
【0098】
アガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースのゲル化を可能にするのに十分な温度にエマルションを置くことによってマトリックスを生成するステップは、水溶性ゲル形成材料のゲル化に十分な期間、室温(例えば、25℃)及び/又は4℃にエマルションを置くことを含み得る。
【0099】
特定の態様では、マトリックスを生成することは、平面を含むモールドにエマルションをキャストし、それによって平面スキャフォールドを作製することを含む。特定の態様では、本方法は、平面スキャフォールドの第1の表面に第1の半透過性限外ろ過膜を配置することを更に含む。特定の態様では、本方法は、第2の半透過性限外ろ過膜を平面スキャフォールドの第2の表面に配置することを更に含む。
【0100】
特定の態様では、アガロースは、超低ゲル化アガロースである。特定の態様では、アガロースは、水溶液中に1%~10%w/v、2%~10%w/v、2%~8%w/v、又は3%~6%w/vの濃度で存在する。特定の態様では、アガロースを溶解することは、水溶液を約37℃の温度に加熱し、溶液を約300回転/分(RPM)で撹拌することを含む。特定の態様では、エマルションを作製することは、溶液を約500~1000RPMで撹拌することを含む。特定の態様では、マトリックスを生成することは、アガロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、PCL、コラーゲン、アルギネート、デキストラン、又はセルロースがゲルを形成する温度までエマルションを冷却することを含む。
【0101】
特定の態様では、生体適合性疎水性物質は、ペルフルオロデカリン(PFD)などの水不混和性試薬である。特定の態様では、アガロース溶液、PFD溶液、及び界面活性剤溶液は、約63%~65%(v/v)のアガロース溶液、約32%~33%(v/v)のPFD、及び約5%~2%(v/v)の界面活性剤で組み合わされる。
【0102】
特定の態様では、マトリックスは、水不混和性試薬を溶解して水不混和性試薬を除去する溶媒で洗浄され得る。特定の態様では、マトリックスは、界面活性剤を除去するために水溶液で洗浄され得る。特定の態様では、マトリックスは、水不混和性試薬及び界面活性剤を除去するために、疎水性材料と水溶液との混合物で洗浄され得る。
【0103】
実験
上記で提供される開示から理解され得るように、本開示は、多種多様な用途を有する。したがって、以下の実施例は、本発明の作製方法及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されるものであり、本発明者が本発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が実施される全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。当業者であれば、本質的に同様の結果を得るために変更又は修正可能な様々な非重要なパラメータを容易に認識するであろう。したがって、以下の実施例は、本発明の作製方法及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために提出されるものであり、本発明者が本発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、以下の実験が実施される全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、寸法など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、若干の実験誤差及び逸脱は考慮されるべきである。
【0104】
材料及び方法
SPAスキャフォールドの作製
超多孔性化アガロース(SPA)スキャフォールドを、超低ゲル化アガロース(Sigma-Aldrich:A2576)を5mLのハンクス平衡塩溶液(HBSS)(UCSF Cell Culture Facility:CCFAJ002)に溶解し、ビーカーに3%又は6%w/v溶液を作ることによって構築した。溶液を、マイクロ波で加熱し、各サイクル間で穏やかに混合する5つの短いサイクルで更に溶解した。次いで、アガロース溶液をホットプレート上で37℃に加熱し、毎分300回転(RPM)で撹拌した。次いで、ペルフルオロデカリン(PFD)(Sigma-Aldrich:P9900)及びTween(商標)80(Sigma-Aldrich:P4780)をアガロース溶液に添加して、アガロース(64%、v/v)、PFD(33%、v/v)、及びTween(商標)80(3%、v/v)からなるエマルションを作製した。PFDは、その生体適合性及び類似の環状構造を持つことから、水不混和性溶媒としてシクロヘキサンの代わりに選択した[1]。次いで、ビーカーをパラフィルム(Bemis Co.,Inc)で密封し、750rpmで約10分間撹拌して完全に混合し、その濁った色によって示されるように乳化した。
【0105】
次いで、完全に混合された超多孔性アガロースエマルションを、316Lステンレス鋼製細胞スキャフォールドハウジングにキャストした。実験が細胞を含む場合、36uLのエマルションを、細胞スキャフォールドハウジングにキャストする前に、所望の数の細胞と混合した。ゲル化を達成するために、スキャフォールドを室温(25℃)で20分間置き、その後に4℃で10分間冷却した。ゲル化されたスキャフォールドは、PFD液滴によって作り出された対流孔と、アガロースの本来の微細構造内に既に存在する拡散孔とから構成される(
図1A)。次いで、スキャフォールド(
図1B)を血管内生体人工膵臓(iBAP)デバイス(
図1C)に挿入した。全てのインビトロ試験では、我々のグループによって以前に開発された対流性物質輸送下での膵島カプセル化用のiBAPデバイスプロトタイプを使用した(
図1D)[2]。
【0106】
図1A~1Dは、SPAスキャフォールド及び血管内生体人工膵臓(iBAP)デバイスアセンブリを示す。
図1Aは、アガロース中の対流孔及び拡散孔を示すSPAスキャフォールドの概略断面図を提示する。
図1Bは、膵島チャンバハウジング内のSPAスキャフォールドを提示する。
図1Cは、iBAPの構成要素である流路、シリコンナノポア膜(SNM)、細胞チャンバ内の細胞スキャフォールド、及びポリカーボネート(PC)裏面及び限外ろ過液出口の分解図を示す。
図1Dは、インビトロ試験に使用されるアセンブルされたiBAPを示す。
【0107】
透水性測定
SPA細胞スキャフォールドの透水性のみを試験するために、iBAPプロトタイプをSNMなしでアセンブルし、カスタムフロー回路に接続した(
図2)。Masterflex L/S25チューブ(Cole-Parmer)を、デバイスの入口及び出口の両方に接続した。蠕動ポンプ(Cole-Parmer)がデバイス内のクロスフロー速度を制御した。圧力計(General Electric)をチューブと直列に配置して、スキャフォールドを横断する膜貫通圧力(TMP)を評価した。限外ろ過液出口をMasterflex L/S14チューブ(Cole-Parmer)に接続した。限外ろ過速度は、スキャフォールド当たり3回測定した、1mLの限外ろ過液を生成するのに必要な時間によって決定した。TMP、限外ろ過速度(UF)、及び表面積(SA)を使用して、ダルシーの法則(式1)から導かれる式を使用して、透水率(Lp)を計算した。
【数1】
【0108】
図2は、iBAP、蠕動ポンプ、及び圧力計からなる透水試験セットアップを示す。目盛り付きシリンジ及びタイマーを使用して、限外ろ過測定を決定した。
【0109】
液滴画像の取得及び分析
イメージングに使用したSPAスキャフォールドは、前述と同じ方法で3%(w/v)アガロース溶液を用いて調製した。ゲル化後、(n=3)スキャフォールドを、細菌の成長を防ぐために10%ホルマリンに固定し、ガラス底マイクロウェルディッシュ(MatTek:P35G-1.5-14-C)に置いた。タイムラプス広域顕微鏡(Nikon Instruments)を使用して、微分干渉コントラスト(DIC)20倍レンズでスキャフォールドをイメージングした。Zスタック画像を、スキャフォールド上の3つの異なる位置で撮影し、FIJI(ImageJ)ソフトウェアを使用して分析した。Hough Circle Transformプラグイン(UCB Vision Sciences)を、1スタック当たり3スライス(スキャフォールド当たりn=9画像)上で使用して、スキャフォールド内のPFD液滴サイズを決定した。次いで、液滴サイズの結果を使用して、液滴の面積を決定し、次いで画像の総面積で除算することによって、相対的な液滴面積を計算した。SPAバッチ間のばらつきを可視化するために、スキャフォールド当たりの液滴サイズ及び相対液滴面積(%)の結果を平均した。
【0110】
分解試験
3%(w/v)のアガロース溶液で作製したSPA(n=15)スキャフォールドを使用して、28日間静置条件下で分解試験を行った。スキャフォールドを、10%ペニシリン-ストレプトマイシン(UCSF Cell Culture Facility:CCFGK004)を補充した1mLのFBS(Corning:35011CV)を入れた12ウェルTranswellディッシュ(Millipore Sigma:PIXP01250)に入れた。実験期間中、スキャフォールドを5%CO2及び37℃に維持し、FBSはウェル内で3~4日ごとに交換した。7日ごとに培養皿から3つのスキャフォールドを取り出し、水和した状態で重量を測定した。
【0111】
細胞調達、培養、カプセル化
成人ヒト膵島は、UCSF膵島及び細胞産生施設(Mission Center Building、San Francisco,CA)及びProdo Laboratories,Inc(Aliso Viejo,CA)の両方から得た。UCSFから単離された膵島を、単離の24時間以内にCMRL1066培地(Corning:15110CV)で輸送した。Prodo Labsからの膵島を洗浄し、PIM培地(Prodo Laboratories,Inc)でインキュベートした。濃縮されたβクラスター(eBC)を、前述のように産生した[3]。簡潔に述べると、MEL-1 INSGFP/w hPSCを、分化誘導因子とともに、20日間にわたる6つのステージからなる膵臓発生を段階的に再現する方法で培養した。次いで、細胞を蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって選別し、未成熟のβ様細胞を再結合し、更に培養してeBCを形成した。eBCは、28日目までに機能的及び生理学的研究の準備ができていた。eBCをGN9培地(1%のペニシリン-ストレプトマイシン、10%FBS、1:100glutamax、1:100NEAA、10μMのAlki II、0.5mMのVitC、1μMのT3、1mMのシステイン、10μMの亜鉛、及び10μg/mlのヘパリンを補充したCMRL培地)で輸送した。全ての供給源からの細胞を、カプセル化の前に、5%CO2及び37℃で非処理のT75フラスコ内で一晩維持した。36μLのSPAに500個のIEQ又は500個のeBC(平均直径100μmのクラスター当たり約1000個の細胞)のいずれかの細胞を、混合ステップの後、3%SPAエマルションに添加し、前述のようにゲル化させた。
【0112】
生存率及び組織学
細胞生存を、カプセル化直後に評価した。ゲル化後、共焦点イメージングのために、スキャフォールドをガラス底マイクロウェルディッシュ(MatTek:P35G-1.5-14-C)に入れた。スキャフォールドを、蛍光スピニングディスク共焦点顕微鏡(Nikon Instruments)でイメージングする前に、生細胞/死細胞染色剤(Invitrogen:L3224)を用いて室温で15分間インキュベートし、PBSで3回洗浄した。生存率は、FIJI(ImageJ)ソフトウェアを使用して、全細胞面積から死細胞の面積を差し引き、次いで全細胞面積で除算することによって定量化した[4]。生存率を、SPAスキャフォールドにおけるヒト膵島(n=11)及びeBC (n=7)について平均し、ここで、nは、分析されたクラスターの数を指す。非乳化3%アガロースを使用して、ヒト膵島(n=9)及びeBC(n=5)の両方を比較した。
【0113】
スキャフォールドを4%のパラホルムアルデヒドで固定し、グラッドストーン研究所(San Francisco,CA)で処理した。スキャフォールドを切片にする前にパラフィンに包埋した。5ミクロン厚の切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。画像は、光学顕微鏡(Leica)により20倍の倍率で撮影した。膵島及びスキャフォールド材料の画像は、ガンマ線を1.3に増加させ、FIJIの細孔領域を輪郭強調した。
【0114】
インビトロでのグルコース刺激インスリン分泌アッセイ
動的グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)アッセイでは、37℃5%CO2加湿インキュベーター内で、ヒト膵島用のCMRL培地(10%ウシ胎仔血清(FBS)v/vを補充)又はeBC用のGN9培地のいずれかを含有する閉鎖型モックループ回路を使用した。Masterflex L/S14及び25チューブ(Cole-Parmer)を、それぞれ、限外ろ過液出口と、iBAPデバイスの入口及び出口の両方とに接続した。蠕動ポンプ(Cole-Parmer)でiBAPデバイス内のスキャフォールドを通して一定の流れを維持し、50μL/分の限外ろ過速度をもたらした。GSIS試験を実施する前に、細胞を低グルコース(5mM)培地中で120分間安定化させた。限外ろ過液試料を、第1の低グルコース(5mM)段階中に16分間にわたって収集した。次いで、グルコース濃度を、培地にグルコースを加えることによって増加させ(28mM)、限外ろ過液収集を30分間継続した。グルコース刺激のための28mMの選択は、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)からのプロトコル(SOP文書:3104、A03)に基づく[5]。その後、グルコース濃度を基礎濃度に下げ、試料を44分間収集した。限外ろ過液試料を、それらがインスリン濃度について分析され得るまで、-20℃で保持した。GSIS実験からの限外ろ過液試料中の分泌インスリン濃度は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(Mercodia:10-1113-01)を使用して決定した。インスリン濃度(pg/L)と限外ろ過速度(mL/分)との積を、膵島又はeBCの数で正規化して、インスリン産生(pg/分/IEQ)を算出するために使用した。刺激指数(SI)は、第1相インスリン産生を平均化された基礎インスリン産生で除算することによって算出した。
【0115】
統計方法
データは、透水性、相対液滴面積、分解及び生存率実験の平均±SDで表した。GraphPad Prismバージョン8.2を使用して、異なる試験で平均値の統計的評価を評価した。透水及び生存率データを、二元配置分散分析(ANOVA)で分析し、相対液滴面積及び分解を一元配置分散分析で評価した。事後比較は、Tukeyの多重比較検定を使用して実施した。p値<0.05が、全ての分析について統計的に有意であると認められた。
【0116】
結果
透水性
最適化実験では、3%(w/v)及び6%(w/v)のアガロース濃度で作製したSPAスキャフォールド及び非乳化アガロースの透水性(Lp)を比較した(
図3)。二元配置分散分析は、アガロース濃度(3%及び6%)の効果と、スキャフォールドがSPAで作製されたか、又は非乳化アガロースで作製されたかの間の透水性に及ぼす有意な相互作用が見出された(F(1,12)=81.6、p<0.001)。SPAは、両方のアガロース濃度について、非乳化アガロース(F(1,12)=6986、p<0.001)よりも高い透水性を有した。更に、3%SPA及び3%アガロースは、それらの6%対応物と比較して高い透水性を有した(F(1,12)=86.1、p<0.001)。多重比較検定は、3%及び6%の非乳化アガロース(それぞれ0.0025及び0.0008mL/分/cm
2/mmHg)で作製されたスキャフォールドを除いて、全ての群間で有意差を示した(p<0.001)。3%SPAスキャフォールド(n=4)は、最高の透水性を有し、6%SPAスキャフォールド(n=4)(それぞれ0.66mL/分/cm
2/mmHg、0.53mL/分/cm
2/mmHg)と有意に異なっていた(p<0.001)。
【0117】
図3は、SPA及び非乳化アガロースで作製されたスキャフォールドの透水値(平均±SD、**はp<0.001を表す)が統計的に有意であったことを示しており、F(1,12)=6986である。また、アガロース濃度(3%対6%)の有意な効果F(1,12)=86.14もあった。事後検定では、3%及び6%の非乳化アガロースで作製したスキャフォールドを除く全ての群間で有意な差を示した(p=0.998)。透水性は、3%(w/v)のSPAで作製されたスキャフォールドでは、他の3つのスキャフォールドとは有意に異なっていた。
【0118】
PFD液滴分析
3つの3%SPAスキャフォールドをPFD液滴サイズについて分析して、SPAバッチ間のばらつきを比較した(
図4A)。各スキャフォールドについて、zスタック画像を3つの位置及び3つの異なる高さで得て、スキャフォールドごとに合計9つのDIC画像を得た(n=9)。PFD液滴は十分に分散され、スキャフォールド内の配置に目に見える傾向は示されなかった。各スキャフォールドのPFD液滴サイズの分布は、直径がより小さい直径に方に著しく偏っていた(
図4B)。PFD液滴の中央値直径は、3つのスキャフォールドについて、それぞれ18.2、13、及び14.3μmであった。スキャフォールドの相対液滴面積を各DIC画像について計算し、次いで平均化した(
図4C)。異なるスキャフォールドバッチにおける平均液滴面積(それぞれ17.6±5.0、19.7±6.9、及び13.2±2.7%)を比較するために一元配置分散分析を実施し、平均間に有意差を見出した(F(2,24)=3.8、p=0.037)。多重比較検定では、スキャフォールド2と3との間にのみ有意差が見出され(p<0.05)、スキャフォールド間にある程度のばらつきがあることが示された。
【0119】
図4A~4Bは、PFD液滴サイズ分析を示す。
図4Aは、液滴分析に使用した3%SPAスキャフォールドの代表的なDIC画像を示す。
図4Bは、各スキャフォールドについて平均±SDとして表されるPFD液滴を表すPFD液滴のサイズ分布を示すヒストグラムを示す。
図4Cは、各DIC画像について計算され、次いで平均化されたスキャフォールドの相対的な液滴面積を示す。線は、各スキャフォールドの平均±SDを表し、*はp<0.05を表す。
【0120】
スキャフォールド分解研究
水和したスキャフォールド重量の変化を、静置培養条件で28日間にわたって評価した。0日目のスキャフォールドの平均重量は45.8±9.78mgであったが、28日目のスキャフォールドの平均重量は42.7±4.81mgであった(
図5A)。一元配置分散分析では、経時的にスキャフォールドの平均重量に有意な変化はない(F(4,10)=0.048、p=0.75)ことが判定された。しかしながら、スキャフォールドの外観は、28日間の研究を通して変化した。21日後にスキャフォールドは半透明性ではなくなり、28日目にはほぼ白く見えた(
図5B)が、これは培地中のFBSによるタンパク質沈着による可能性がある。
【0121】
図5A~5Bは、3%SPAスキャフォールドの分解を示す。
図5Aは、28日間の分解研究で重量の変化を測定し、異なる時点で有意差を見出されなかったことを示す。データは、平均±SDとして示される。
図5Bは、0、7、21、及び28日間の培養におけるスキャフォールドの代表的な画像を示す。
【0122】
組織学及び細胞生存率評価
細胞及びスキャフォールドの両方の形態を可視化するために、組織切片をH&Eで染色した(
図6A、上部)。SPA及び従来のアガロースの両方におけるヒト膵島及びeBCは、同様の形態を示す。SPAセクションは、点線の輪郭で示されるスキャフォールド内の開放領域(細孔)を表示する。細孔は、スキャフォールド全体、及びカプセル化された細胞の近く(<10μm、
図6A、上部)に分布しているように見える。
【0123】
成人ヒト膵島及びeBC生存率を、最適化されたSPA製剤及び従来の非乳化アガロースの両方におけるカプセル化直後に測定した(
図6A、下部)。複数の細胞クラスターを、ヒト膵島及びeBCの両方についてイメージングした(
図6B)。SPAスキャフォールドにおいて、ヒト膵島は、95.8±3%(n=11)が生存可能であり、eBCは、95.8±2%(n=7)が生存可能であった。非乳化3%アガローススキャフォールドにおいて、ヒト膵島及びeBCは、96.1±3%(n=9)及び96.6±3%(n=5)が生存可能であった。死細胞の多くは膵島の周辺部で観察された。eBCについては、死細胞は主に周辺部に見られたが、SPAスキャフォールド内のクラスターの中心でわずかに観察された。二元配置分散分析により、異なるスキャフォールド間の平均生存率に有意差はなく(F(1,28)=0.2109、p=0.65)、異なる細胞型間にも有意差はない(F(1,128)=0.050、p=0.83)と判定された。全体として、高い生存率は、カプセル化プロセスが細胞を損傷しないことを実証し、更なる動的グルコース刺激インスリン分泌評価を可能にした。
【0124】
図6A~6Bは、3%の従来のアガロース及びSPAスキャフォールドにおけるヒト膵島及びeBCの組織学的評価及び生存率を提示する。
図6Aは、従来のアガロース及びSPAスキャフォールドにおけるヒト膵島及びeBCのH&E及び生存率染色からの代表的な画像を示す。H&E染色は、核及び細胞質を示し、点線は、SPA内のカプセル化された細胞クラスターを取り囲む細孔(矢印)を示す。スケールバーは、長さが50μmを表す。生存率染色は、蛍光顕微鏡でイメージングした死細胞及び生細胞を示す。
図6Bは、平均+SDとして報告された生存率の結果を提示する。ヒト膵島は、SPAスキャフォールドで95.8±3%生存可能であり、従来のアガローススキャフォールドで96.6±3%生存可能であった。eBCは、SPAスキャフォールドで95.8±2%生存可能であり、従来のアガローススキャフォールドで96.6±3%生存可能であった。二元配置分散分析により、群の平均生存率の間に有意差はなかったと判定された。
【0125】
インスリン産生の評価
36μLのSPA中に500個のIEQ又はeBCを有するヒト膵島(n=4)又はeBC(n=8)のいずれかを含有するSPAスキャフォールドを、インビトロGSISアッセイを使用してiBAPで試験した。第1の低グルコース曝露中の平均インスリン産生は、ヒト膵島では6.8±2.7pg/分/IEQ(
図7A)であり、eBCでは2.1±0.9pg/分/eBC(
図7B)であった。より高いレベルのグルコース(28mM)に曝露した場合、成人ヒト膵島及びeBCの両方がインスリン産生を増加させ、二相性インスリン応答を示した。28mMのグルコース濃度に曝露した後の第1相インスリン産生は、ヒト膵島では83.4±20.5pg/分/IEQであり、eBCでは8.0±2.7pg/分/eBCであった。第2相中、インスリン産生は第1相のピークから徐々に減少し、ヒト膵島及びeBCの平均インスリン産生は、それぞれ27.8±14.0pg/分/IEQ及び3.3±2.1pg/分/eBCであった。全てのスキャフォールドは、第2相中、ベースラインインスリンレベルを上回るインスリン産生を維持し、第2の低グルコース曝露後にインスリン産生のわずかなスパイクを示した。第2の低グルコース曝露中、基礎インスリン産生は、高グルコース刺激前のレベル(6.4±3.3pg/分/IEQ及び2.0±1.6pg/分/eBC)に戻った。刺激指数(SI)、すなわち基礎インスリン産生に対する高グルコース曝露中の第1相インスリン産生の比は、ヒト膵島で13.6±6.1であり、eBCで4.9±3.4であった。
【0126】
図7A~7Bは、最適化されたSPA製剤におけるヒト膵島及びeBCインスリン産生のインビトロ評価を示す。SPAスキャフォールドにおけるインスリン産生は、5mMのグルコース(G5)、28mMのグルコース(G28)、続いて第2のG5段階へのGSIS曝露中に、
図7Aのヒト膵島(n=4)及び
図7BのeBC(n=8)の両方について示される。データは、平均±SDを表す。
【0127】
考察
iBAP内のeBC及び膵島生存率並びにインスリン産生を支持する新規の超多孔性アガロース系細胞スキャフォールドを作製した。このスキャフォールドは、2つの方法で膵島への及び膵島からの主要溶質の物質移動を最適化することを目的とする。第一に、高多孔性(超多孔性)構造により、透水性及び多孔性実験によって示されるように、スキャフォールド全体にわたって限外ろ過液の透過を可能にし、したがって、限外ろ過液から膵島又はeBCまでの拡散距離(<10μm)を最小限に抑える。第ニに、スキャフォールドの高い透水性は、細胞スキャフォールドを通るSNM生成限外ろ過液の流れを制限しない。限外ろ過に使用されるほとんどのポリマー膜は、膵島生存率及びインスリン産生を維持するのに必要な膜厚(30~100μm)のために、不十分な透水性を示さない[6]。従来のポリマー膜とは異なり、SNMは1μm未満の厚さであり、非常に均一な孔径分布を有し、より多量の限外ろ過を可能にし、膵島の機能性を向上させることできる[6,7,2]。iBAP設計がカプセル化された膵島に十分な量の限外ろ過液を送達するためには、細胞スキャフォールドの透水性がSNMよりも大きくなければならない。高いアガロース濃度(6%w/v)は、その小さな孔径のために、バイオ分離及びクロマトグラフィープロセスで広く使用され、好まれている[8]。高濃度のアガロースでは孔径が小さいため、硬質の微小環境が作り出され、カプセル化された膵島でメカノトランスダクションが開始されることが知られている[9]。また、高濃度のアガロースでは孔径が小さいため、透水性が制限される可能性があり[10]、これは、3%(w/v)SPAスキャフォールドが6%(w/v)SPAスキャフォールドよりも有意に高い透水性を有していたという我々の発見と一致している。3%(w/v)のアガロースで作製されたSPAスキャフォールドは、SNMよりも70倍高い透水性を有する(それぞれ0.66及び0.010mL/分/cm
2/mmHg)[7]。透水性は、流体の流れに対する抵抗と反比例するため、したがって、スキャフォールドの高い透水性は、SNMよりも流体の流れに対する抵抗が小さくなる。iBAPの限外ろ過速度を最大化するために、細胞スキャフォールド(L
p)とSNM(L
SNM)の透水性の逆和を取ることによって、全体の透水性(L
o)を計算することができる(式2)[11]。
【数2】
したがって、支配的な水圧抵抗はSNMとなり、限外ろ過速度はSNMの水圧抵抗に大きく依存することになる。したがって、SPAスキャフォールドの使用は、iBAPによる全体的な限外ろ過速度を低下させない。
【0128】
ヒト膵島は、SPAスキャフォールドにおけるグルコース刺激に応答して動的インスリン産生を示した。最初の低グルコース曝露中のベースラインインスリン産生速度は、6~7pg/分/IEQであり、約5mMのグルコース濃度でのインビトロの他のヒト膵島研究と一致していた[12]。灌流されたヒト膵島を使用した研究では、16.7mMのグルコースに曝露したときに12~40pg/分/IEQからのインスリン産生ピークを示したが[12~14]、SPAスキャフォールドは28mMのグルコースでより高い産生(60~99pg/分/IEQ)を示した。臨床移植評価のための静的GSISアッセイで伝統的に使用されているため、グルコース刺激の濃度として28mMの濃度を選択した[5]。グルコース刺激に応答する別個の二相性曲線は、インスリン療法の有望性を示しているが、確認のためにインスリン応答の長期評価及び糖尿病ブタ研究が必要である。これらの研究は、初期の実現可能性と、明確な第1相及び低グルコースレベルへ戻った後のインスリン産生の停止を伴う高グルコース刺激に対する二相応答とを実証し、インビトロでのSPAスキャフォールドにおける生理学的膵島機能を示した。
【0129】
最近では、インスリン分泌を改善するために、hPSCからβ細胞を形成し、成熟したβ細胞に類似した応答を示すようにするという進歩があった[3、15、16]が、これらの細胞を移植可能なデバイスに組み込みはまだ初期段階である。Semma Therapeutics(Vertex Pharmaceuticalsの子会社、Boston,MA)及びViaCyte(San Diego,CA)など、前臨床研究及び臨床試験を実施し、前世代のhPSC由来細胞を用いたBAPデバイスを研究しているグループがある[17~20]。ヒト膵島及びeBCは、SPAスキャフォールドにおけるグルコース刺激と同様のインスリン応答プロファイルを示すことが見出された。この研究は、インビトロでマクロカプセル化デバイスにおいて、幹細胞由来のβ細胞を用いた動的インスリン分泌動態を実証した最初のものであると考えられる。第1相は、グルコース-インスリン動態に遅れがないことを示す高グルコースチャレンジの最初の時点で、両方の細胞型で始まった[21]。インスリン分泌の大きさは、ヒト膵島よりもeBCの方がかなり小さく、この知見は、本研究で使用されるMEL-1 INSGFP/w株が1つの機能的インスリン対立遺伝子しか持っていないという事実に加えて、他の多くのhPSC由来β細胞研究[22~24]と一致する[23]。eBC内の他のインスリン対立遺伝子は、選別目的のためにGFPによって置き換えられ[3]、第2のインスリン対立遺伝子を回復させれば、理論的にインスリン産生を2倍にすることができる。更に、eBC及びヒト膵島の両方において、第2の低グルコース濃度培地への曝露後に、第2のインスリン産生ピークが観察された。Henquinらは、インスリンが基礎レベルに戻る前にピークに達する灌流された乳児及び成人ヒト膵島において、オフレスポンスと呼ばれる同様の観察を行った[25]。他の報告では、hPSC由来のβ細胞は、未成熟のβ細胞の特徴である、低下したグルコース濃度に対するインスリン応答を終わらせることができないことが示されている[19、26、27]。eBCにおけるインスリン産生の上昇の適切な停止は、それらが成人ヒト膵島と同様に機能し、低血糖を予防することができることを示す[15、28]。全体的なインスリン産生は、eBCの方が低かったが、SPAスキャフォールドにおける最適な物質輸送は、iBAPにおいて正常酸素環境を維持しながら、より大きな細胞密度を支持する有望性を示した。要約すると、本知見は、eBCがSPAスキャフォールドの成人ヒト膵島とグルコース刺激に対する同様のインスリン応答プロファイルを有することを初めて実証した。
【0130】
iBAP内のSPAマクロ多孔性スキャフォールドは、限外ろ過液と膵島との間の拡散距離を最小限に抑えることによって、マクロカプセル化されたインスリン産生細胞に十分な物質移動を提供するように見えた。SNMベースのiBAPの以前の報告では、限外ろ過液を媒介した対流ベースの物質移動が、SNMを横切って、アガロース細胞スキャフォールドを介して膵島機能を支持することが示されている[2]。従来のアガロースは、膵島カプセル化に幅広く使用されているが[29~31]、溶質の高い流束を可能にしていない。SPAスキャフォールドの更なる特徴付けにより、相対的なPFD液滴面積(>13.2±2.7%)に基づくより高い多孔性及び28日間にわたる最小限の分解が示された。PFDが液滴としてどれだけ残っており、どれだけのPFDが除去された開気孔が形成されるのかは現在のところ不明である。SPAスキャフォールドにおける見かけの色の変化は、FBSからのタンパク質又はアルブミンの沈着のいずれかに起因する可能性がある。別の仮説には、経時的にエマルションが不安定になることが含まれる。現在進行中のフッ素核磁気共鳴(fNMR)分光法の研究は、SPAスキャフォールド内のPFDレベルを経時的に決定するのに役立つ。SPAスキャフォールドの組織学的評価では、膵島の外面を取り囲む細孔(細孔から膵島表面まで<10μm)が明らかになり、限外ろ過液が膵島表面をほぼ直接横切って流れることを可能にした。したがって、限外ろ過液から膵島の中心までの拡散距離は、島の直径によって定義される。更に、スキャフォールドをアガロースからSPAに変更すると、透水性又は流体速度が増加し、したがって、レイノルズ数が増加し、スキャフォールド内の全体的な物質移動が改善される[11、32]。短い拡散距離及び増加した透水は、細胞スキャフォールド内の酸素、グルコース、及びインスリンの輸送を有意に増加させる。膵島カプセル化のためのSPA細胞スキャフォールドは、正常酸素状態を維持し、対流ベースのデバイス内のヒト膵島及び幹細胞由来のeBCの両方に高速グルコース-インスリン動態を提供するのに理想的であり、血管内生体人工膵臓におけるその潜在的な用途を実証する。
【0131】
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