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特表2024-523797脳卒中を検出するための上肢運動の監視
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】脳卒中を検出するための上肢運動の監視
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240625BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240625BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240625BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A61B5/00 102A
A61B10/00 H
G08B25/04 K
G08B21/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572928
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 US2022030092
(87)【国際公開番号】W WO2022251041
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/193,053
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ANDROID
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイマー,ジェイムズ・エリック
(72)【発明者】
【氏名】メッセ,スティーブン・ラッセル
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB12
4C038VC20
4C117XB01
4C117XB04
4C117XC13
4C117XD15
4C117XE26
4C117XE52
5C086AA22
5C086BA07
5C086CA21
5C086CA25
5C086DA14
5C086FA17
5C087AA10
5C087BB18
5C087BB74
5C087DD29
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG66
(57)【要約】
上肢の運動を監視することによって脳卒中を検出するための方法、システム、およびコンピュータ可読媒体。いくつかの例では、脳卒中を検出するための方法は、少なくとも1つのプロセッサに実装された脳卒中検出器において、一定期間にわたって患者の上肢に取り付けられた加速度計から運動データを受信することを含む。本方法は、患者の受動的監視を可能にするように、脳卒中検出器において、運動分布共変量シフトに対して堅牢な検定統計量を使用して運動データを分析することを含む。本方法は、脳卒中検出器において、運動データを使用して脳卒中を検出したことに応答して警告信号を出力することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳卒中を検出するための方法であって、前記方法は、
少なくとも1つのプロセッサに実装された脳卒中検出器において、一定期間にわたって患者の上肢に取り付けられた加速度計から運動データを受信することと、
前記患者の受動的監視を可能にするように、前記脳卒中検出器において、運動分布共変量シフトに対して堅牢な検定統計量を使用して前記運動データを分析することと、
前記脳卒中検出器において、前記運動データを使用して脳卒中を検出したことに応答して警告信号を出力することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記検定統計量を使用して前記運動データを分析することは、パラメータ不変(PAIN)統計量を使用して前記運動データを分析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検定統計量は、コルモゴロフ-スミルノフ統計量である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記運動データを受信することは、前記患者の第1の手首にある第1の手首装着型加速度計からの第1の無線信号によって前記運動データを受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記運動データを受信することは、前記患者の第2の手首にある第2の手首装着型加速度計から第2の無線信号を受信することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記運動データを受信することは、前記加速度計およびバイアスの回転/摺動の影響を除去するために前記運動データを前処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記警告信号を出力することは、表示画面に警告メッセージを表示することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
脳卒中を検出するためのシステムであって、前記システムは、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに実装され、
一定期間にわたって患者の上肢に取り付けられた加速度計から運動データを受信し、
前記患者の受動的監視を可能にするように、運動分布共変量シフトに対して堅牢な検定統計量を使用して前記運動データを分析し、
前記運動データを使用して脳卒中を検出したことに応答して警告信号を出力する、動作を実行するように構成された脳卒中検出器と、を備える、システム。
【請求項9】
前記検定統計量を使用して前記運動データを分析することは、パラメータ不変(PAIN)統計量を使用して前記運動データを分析することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記検定統計量は、コルモゴロフ-スミルノフ統計量である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記運動データを受信することは、前記患者の第1の手首にある第1の手首装着型加速度計からの第1の無線信号によって前記運動データを受信することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記運動データを受信することは、前記患者の第2の手首にある第2の手首装着型加速度計から第2の無線信号を受信することを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記運動データを受信することは、前記加速度計およびバイアスの回転/摺動の影響を除去するために前記運動データを前処理することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記警告信号を出力することは、表示画面に警告メッセージを表示することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
コンピュータの少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、
一定期間にわたって患者の上肢に取り付けられた加速度計から運動データを受信し、
前記患者の受動的監視を可能にするように、運動分布共変量シフトに対して堅牢な検定統計量を使用して前記運動データを分析し、
前記運動データを使用して脳卒中を検出したことに応答して警告信号を出力する、動作を実行するように前記コンピュータを制御する実行可能命令を記憶する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記検定統計量を使用して前記運動データを分析することは、パラメータ不変(PAIN)統計量を使用して前記運動データを分析することを含む、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記検定統計量は、コルモゴロフ-スミルノフ統計量である、請求項16に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記運動データを受信することは、前記患者の第1の手首にある第1の手首装着型加速度計からの第1の無線信号によって前記運動データを受信することを含む、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記運動データを受信することは、前記患者の第2の手首にある第2の手首装着型加速度計から第2の無線信号を受信することを含む、請求項18に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記運動データを受信することは、前記加速度計およびバイアスの回転/摺動の影響を除去するために前記運動データを前処理することを含む、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2021年5月25日に出願された米国特許出願第63/193,053号の利益を主張し、その開示はその全体が参照により組み込まれる。
【0002】
政府の利益
本発明は、全米科学財団から授与された1915398および空軍研究所から授与されたFA8750-18-C-0090の下で連邦政府の支援によってなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書は、一般に、上肢運動の監視による脳卒中の検出に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
脳卒中治療の適格性および治療に対する良好な応答の可能性は、脳卒中が識別される速さに関連する。既に入院している患者の脳卒中は、市中における脳卒中と比較して、症状の検出と評価の遅れ、介入の少なさ、ならびに転帰の悪化に関連する。
【0005】
腕の強度と運動の非対称性は、急性脳卒中の最も一般的な徴候の1つである。残念ながら、患者は、発症後早期に脳卒中を常に検出し、実証されているが時間的に制限された介入を可能にするのに十分な頻度で検査することができない。したがって、脳卒中を迅速に検出するように構成された自動化された方法、システム、およびコンピュータ可読媒体が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本明細書は、上肢の運動を監視することによって、例えば非対称的な運動を監視することによって、脳卒中を検出するための方法、システム、およびコンピュータ可読媒体を記載する。いくつかの例では、脳卒中を検出するための方法は、少なくとも1つのプロセッサに実装された脳卒中検出器において、一定期間にわたって患者の上肢に取り付けられた加速度計から運動データを受信することを含む。本方法は、各患者に関するいかなる特定の情報(例えば、利き手)も知らずに患者の受動的監視を可能にするように、脳卒中検出器において、運動分布共変量シフトに対して堅牢な検定統計量を使用して運動データを分析することを含む。本方法は、脳卒中検出器において、運動データを使用して脳卒中を検出したことに応答して警告信号を出力することを含む。
【0007】
いくつかの例では、検定統計量を使用して運動データを分析することは、パラメータ不変(PAIN)統計量を使用して運動データを分析することを含む。検定統計量は、例えば、コルモゴロフ-スミルノフ統計量とすることができる。
【0008】
いくつかの例では、運動データを受信することは、患者の第1の手首にある第1の手首装着型加速度計からの第1の無線信号によって運動データを受信することを含む。運動データを受信することは、患者の第2の手首に取り付けられた第2の手首装着型加速度計から第2の無線信号を受信することを含むことができる。運動データを受信することは、加速度計およびバイアスの回転/摺動の影響を除去するために運動データを前処理することを含むことができる。
【0009】
いくつかの例では、警告信号を出力することは、表示画面に警告メッセージを表示することを含む。警告信号を出力することは、介護者のモバイルデバイスにメッセージを送信することを含むことができる。
【0010】
本明細書に記載の主題は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装することができる。したがって、本明細書で使用される「機能」または「ノード」という用語は、記載されている特徴を実装するためのソフトウェアおよび/またはファームウェア構成要素も含むことができるハードウェアを指す。いくつかの例示的な実装形態では、本明細書に記載の主題は、コンピュータのプロセッサによって実行されると、ステップを実行するようにコンピュータを制御するコンピュータ実行可能命令を記憶したコンピュータ可読媒体を使用して実装することができる。
【0011】
本明細書に記載の主題を実施するのに適した例示的なコンピュータ可読媒体は、ディスクメモリデバイス、チップメモリデバイス、プログラマブルロジックデバイス、および特定用途向け集積回路などの非一時的コンピュータ可読媒体を含む。さらに、本明細書に記載の主題を実装するコンピュータ可読媒体は、単一のデバイスまたはコンピューティングプラットフォーム上に配置されてもよく、または複数のデバイスまたはコンピューティングプラットフォームにわたって分散されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】脳卒中検出のための例示的なシステムのブロック図である。
図1B】介護者に警告するためのシステムの例示的な構成を示すブロック図である。
図2A】2つの異なる警告閾値を使用して監視時間が増加するにつれて警告する脳卒中症例の割合の中央値および四分位範囲(IQR)を表示する。
図2B】2つの異なる警告閾値を使用して監視時間が増加するにつれて警告する脳卒中症例の割合の中央値および四分位範囲(IQR)を表示する。
図2C】2つの異なる警告閾値を使用して監視時間が増加するにつれて警告する脳卒中症例の割合の中央値および四分位範囲(IQR)を表示する。
図2D】2つの異なる警告閾値を使用して監視時間が増加するにつれて警告する脳卒中症例の割合の中央値および四分位範囲(IQR)を表示する。
図3】脳卒中を検出するための例示的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本明細書は、上肢の運動を監視することによって脳卒中を検出するための方法、システム、およびコンピュータ可読媒体を記載する。この文書に記載されている脳卒中検出システムは、患者の継続的な監視を可能にし、通常のケアよりも迅速に側性脱力を伴う脳卒中を検出し、これにより、より早期の脳卒中介入および改善された転帰をもたらし得る。
【0014】
図1Aは、脳卒中検出のための例示的なシステム100のブロック図である。システム100は、例えば、病院、または脳卒中を検出するための任意の適切な環境に配備することができる。介護者102は、患者104に医療処置を提供している。しかしながら、介護者102は、患者104と常に一緒にいるとは限らない。
【0015】
患者104の上肢には、2つの加速度計106、108が取り付けられている。例えば、第1の加速度計106は患者104の第1の手首の周りに装着することができ、第2の加速度計108は患者104の第2の手首の周りに装着することができる。
【0016】
介護者コンピュータシステム110は、少なくとも1つのプロセッサ112と、プロセッサ112のための実行可能命令を記憶するメモリ114とを含む。介護者コンピュータシステム110は、例えば、介護者102に警告するための表示装置およびスピーカを備えたタブレット、ラップトップ、または電話とすることができる。介護者コンピュータシステム110は、プロセッサ112およびメモリ114を使用して実装される脳卒中検出器116を含む。
【0017】
脳卒中検出器116は、加速度計106および108から運動データを受信することによって患者104を受動的に監視するように構成される。監視は、介護者102が患者104に特定の物理的運動を実行するようにいかなる指示も与える必要がないという点で受動的である。例えば、脳卒中検出器116は、非対称の腕の運動を監視することができる。
【0018】
脳卒中検出器106は、患者の受動的監視を可能にするように、運動分布共変量シフトに対して堅牢な検定統計量を使用して運動データを分析する。脳卒中検出器106は、運動データを使用した脳卒中の検出に応じて警告信号を出力する。例えば、脳卒中検出器106は、介護者コンピュータシステム110からの警告画像を表示し、および/または警告音を再生することができ、または脳卒中検出器106は、遠隔コンピュータシステムに信号を送信することができる。
【0019】
図1Bは、介護者102に警告するためのシステムの例示的な構成150を示すブロック図である。この例では、加速度計106および108は、例えばインターネットへの無線ルータに送信することによって、データ通信ネットワーク152を介して脳卒中検出器116に運動データを送信するように構成される。脳卒中検出器116は、例えば、クラウドコンピューティングサーバ上で実行することができる。
【0020】
脳卒中検出器116は、脳卒中の検出に応答して、例えば電話、タブレット、またはラップトップなどの介護者装置154に送信することによって警告信号を出力する。例えば、脳卒中検出器116は、介護者装置154にテキストメッセージを送信することができる。次いで、介護者102は、患者104に適切な医療を提供することができる。
【0021】
一般に、システムは、介護者102に警告するための任意の適切な方法で構成することができる。例えば、加速度計106および108は、脳卒中検出器116を実行するように構成された手首装着型コンピュータシステムに含めることができ、次いで、脳卒中検出器は、音声警告を再生することによって警告信号を出力することができる。
【0022】
脳卒中検出のための方法およびシステムは、方法論に対して行われた試験に関して以下でさらに説明される。
【0023】
序論
静脈内血栓溶解および機械的血栓除去を含む実証された脳卒中治療は、時間依存性が高い。処置された場合の介入の適格性および良好な転帰の確率は、症状の発症からの時間が増加するにつれて連続的に低下する。1-3したがって、脳卒中症状の発症の迅速な検出が最も重要である。4-6
米国で毎年発生する80万件の脳卒中のうち、5~17%が既に入院している患者に発症し、大部分が最近介入または処置を受けた患者に発症する。7-9市中で発生する脳卒中と比較して、院内脳卒中は、検出および評価の遅れ、介入の少なさ、ならびに転帰の悪化に関連する。7-11したがって、これらの合併症は、病院および介護者の費用、滞在期間、罹患率、死亡率、および法医学的責任を著しく増加させる。7,8,10-14
上肢脱力は、急性脳卒中における最も一般的な所見の1つである。15その結果、脳卒中のすべてのスクリーニングツールで非対称の腕の強度が使用される。16,17加えて、無視は、脳卒中で頻繁に見られる症状で、罹患側で腕をあまり動かさなくなる傾向もある。18,19この文書は、入院患者の脳卒中を迅速に特定し、より早期の急性脳卒中治療を容易にし、転帰を改善するために手首装着型加速度計と併せて使用することができる、非対称的な腕の動きを自動監視するための警告システムを記載する。
【0024】
方法
脳卒中検出アルゴリズムを導出および検証するために、ペンシルバニア大学病院に入院した患者の上肢運動の前向き症例対照試験を実施した。この研究は、ペンシルバニア大学病院の施設内審査委員会によって承認された。
【0025】
被験者
すべての被験者は、入院患者から募集した。対照は、脳卒中の病歴がなく神経学的に正常であり、磁気共鳴画像法(MRI)で急性梗塞を有さない一過性虚血発作(TIA)患者、MRIが正常で原因が不確定な一過性発作の検査を受けている患者、および明白な神経学的合併症がない心胸郭手術または血管手術を最近受けた患者であった。症例には、国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコア≧1および側性四肢脱力(罹患側でより大きい、NIHSSの項目5aまたは5bの上肢脱力についての少なくとも1点)を有する急性虚血性または出血性脳卒中で入院した患者が含まれた。監視の開始前に、被験者にNIHSSを含む神経学的評価と、メディカルリサーチカウンシルスケールを使用した強度評価を受けさせ、三角筋、二頭筋、三頭筋、手首の伸展、手首の屈曲、内指、股関節屈筋、四頭筋、膝腱、足首の伸展、および足首の屈曲を各側で0(動きなし)~5(最大強度)の範囲で評価する。
【0026】
監視
被験者は、両腕に配置された加速度計を組み込んだ手首ストラップを有していた。アルゴリズム導出コホートのために、市販のバッテリ駆動のBluetooth(登録商標)対応加速度計/ジャイロスコープである、Wit Motion社(中国深セン市)のBWT901CL Bluetooth出力9軸加速度計ジャイロスコープを使用し、Androidタブレットと同期させてデータをクラウドベースのサーバ(Heroku社、カリフォルニア州サンフランシスコ)にストリーミングした。加速度測定装置は、2~3時間の予想バッテリ寿命を有していた。より多くのデータを捕捉し、昼間と夜間との間の性能の比較を可能にするために、本発明者らはより長持ちする加速度測定装置を必要とした。したがって、検証コホートでは、市販のサムスン社のGalaxy Watch Activeを使用して加速度測定データを収集した。アプリケーションは、WiFiを介してクラウドベースのストレージプラットフォーム(Thingsboard社、ニューヨーク州ニューヨーク)に送信された加速度測定データ(ラプロト、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)を収集した。20この装置の予想バッテリ寿命は18~24時間であった。試験の両方の段階について、患者および臨床スタッフは、不快であるか、臨床治療を妨げるか、または彼らが選択した任意の他の理由でいつでもストラップを取り外すことができると言われた。条件が実際の実践を表すものであることを保証するために、患者が監視されている間、治療または罹患肢の受動的な可動域の動きを制限する指示は与えられなかった。監視が完了した後に神経学的評価を繰り返して、神経学的状態に変化がないことを確認した。
【0027】
アルゴリズム導出
アルゴリズムは、診断性能および一般化可能性を最大化するように設計されたパラメータ不変(PAIN)法を使用して導出された。21-25この手法は、異常値を伴わずに患者全体で安定した性能と共に高い感度および特異性を必要とする複数の医療分類アルゴリズムを開発するために以前に使用された。22PAIN法は、統計的第1原理手法を使用して、患者固有のパラメータ(例えば、左利きまたは右利きである、起きている/眠っている、拘束されている/自由に動ける)ならびに加速度計ベースのシステムで一般的なシステム異常(例えば、加速度計のバイアス/ドリフトまたはデバイスの向き)に対して不変のアルゴリズムを導出する。結果として、アルゴリズムは、個々の調整を必要とせずに母集団にわたって安定した性能を達成する。
【0028】
アルゴリズム導出方法は、以下でさらに説明される。手短に言えば、導出コホート加速度測定データを利用して、本発明者らは、患者固有のパラメータに対して不変の特徴を特定し、次いで、脳卒中患者に見られる非対称運動パターンの検出の安定性および精度を最大化するために特徴を組み合わせた構造化分類木を訓練した。様々な持続時間の複数の同時閾値試験を使用すると、精度と検出までの時間との間のトレードオフのバランスをとることができる。26監視期間が短い閾値試験は検出までの時間をより速くし、監視期間がより長いと精度が向上する。アルゴリズムは、(利用可能な場合)先行データの継続時間が増加する複数のウィンドウを同時に利用し、いずれかのウィンドウが脳卒中の存在の可能性を検出した場合に警告する。
【0029】
いくつかの例では、脳卒中の識別をもたらす警告は、装置を取り外すことを含む臨床的介入をトリガする。したがって、運動データが警告後に発生し続ける場合、アルゴリズムは、以前の警告が偽陽性であったと仮定し、監視ウィンドウが新しいデータを蓄積することを可能にするために1時間にわたってさらなる警告は生成されない。前の警告から4時間以内の後続の警告ごとに、警告の一時停止をさらに1時間延長し、最大4時間まで延長する。8時間以内に生成された警告がない場合、警告の休止期間は1時間にリセットされる。提案された戦略は、最初の24時間で8回の警告という最大誤警告率をもたらし、それ以降は1日あたり6回の警告となることに留意されたい。
【0030】
検証
候補アルゴリズムは、上記のように異なるより長持ちする加速度計を使用してアルゴリズム導出に使用されたデータセットとは別に収集された独立した盲検試験データセットを使用して検証された。27この分析のために、アルゴリズムは個々の患者データを評価し、15分ごとに実行された。脳卒中のない対照被験者について、本発明者らは、警告の数を監視時間(日)で割ったものとして定義される、1日当たりの患者あたりの誤警告に関してアルゴリズム性能を評価した。本発明者らは、すべての対照被験者について1日当たりの誤警告の中央値をとることによって1日当たりの誤警告の中央値を報告する。脳卒中の各症例被験者について、監視の開始からの時間が増加するにつれて、検出率に関してアルゴリズム性能を評価した。監視の開始時間は、各患者の監視期間全体を通して15分刻みであった。本発明者らの研究では、監視中に神経学的に無傷から脳卒中に移行した被験者のデータは利用できなかったので、最速検出の文献で一般的に使用されている検出率対検出までの時間という保守的な評価を利用した。28監視開始からの時間が増加するにつれて、集計試験はより短い持続時間のウィンドウのみを含み、検出率は、脳卒中を識別した集計試験の割合に基づいて計算される。
【0031】
上述したように、誤警告は、警告生成における一時的な停止をもたらす。この特徴が脳卒中症例の検出までの時間にどのように影響するかを説明するために、本発明者らは、対照被験者のアルゴリズム性能に基づいて1日当たりに警告が一時停止された期間を計算した。次に、停止による遅延の中央値および四分位間の範囲を、脳卒中症例の検出までの時間に加えた。例えば、対照における誤警告率の中央値が1日あたり1であった場合、警告は24時間のうちの1時間一時停止される。24時間の期間中の任意の時間に脳卒中が発生する可能性があると仮定すると、追加の遅延なしの23時間と、警告が一時停止される1時間(遅延の中央値は30分)があり、(23/24)*0分+(1/24)*30分=1日あたりの追加の予想遅延1.25分である。27最後に、患者特有の要因がアルゴリズムの性能の変動をもたらすかどうかを、中央値の検出時間と、利き手、非優位半球の関与による誤警告率とを比較することによって評価し、監視がウィルコクソン順位和検定を使用して夜間または昼間に発生したかどうかを評価した。
【0032】
結果
2018年5月8日から2021年11月23日まで、本発明者らは、導出コホートに200名、検証コホートに205名を含む405名の患者を登録した。技術的困難のために、検証コホートの5人の対照被験者について加速度測定データは利用できず、分析から除外した。アルゴリズム導出コホートには、急性脳卒中および側性腕脱力を有する77人の患者ならびに123人の神経学的に無傷の対照被験者が含まれた。この段階で合計540時間の両側腕加速度測定データを取得した。アルゴリズム検証コホートは、急性脳卒中の33人の患者および167人の対照を含み、合計4169時間の両側腕加速度測定データであった。表1は、導出コホートおよび検証コホートについての対照の臨床的および人口統計学的特徴を示し、表2は、脳卒中症例についてのこれらのデータを提供する。非脳卒中対照の中で、検証コホートの被験者は女性である可能性が低く、最近手術を受けた可能性が高かった。脳卒中症例については、検証コホートは、NIHSS上肢運動スコアの差は類似していたが、メディカルリサーチカウンシル上肢運動スコアの合計によって測定した場合の罹患側と非罹患側との間の腕の強度のより大きな差を除いて、導出コホートと類似していた。
【0033】
検証コホート内で、脳卒中症例は、対照と比較して同様の年齢(平均68歳対65歳、P=0.25)、女性の割合(45%対32%、p=0.15)、および右手系である割合(94%対84%、p=0.13)を有していたが、脳卒中患者は非白人であることがより多く(45%対11%、p<0.001)、ICUまたは降圧ユニットにいることがより多かった(85%対34%、p<0.001)。全体として、検証コホートにおける脳卒中の症例は、主に虚血性であり(73%)、中程度に重症であった(NIHSS中央値14、IQR9~18)。アルゴリズム導出コホートおよび検証コホートの両方について、手首ストラップは十分に許容された。導出コホートの患者のいずれもおよび検証コホートの2人の患者もデバイスを取り外さず、試験を時期尚早に終了した(それぞれ1時間および22時間の監視後)。看護師は、臨床ケアを妨げるストラップに関する問題を報告しなかった。ベースライン時と試験完了時の検査を比較して、患者の上肢強度または無視の存在に変化はなかった。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
*メディカルリサーチカウンシルの筋力スコア(0~5の範囲)で評価した上肢筋群には、三角筋、二頭筋、三頭筋、手首の伸展、手首の屈曲、および内指の筋力が含まれ、試験した6つの筋肉すべてで最大筋力であり、スコアは30であった。
【0037】
アルゴリズム性能
図2A図2Dは、2つの異なる警告閾値を使用して監視時間が増加するにつれて警告する脳卒中症例の割合の中央値および四分位範囲(IQR)を表示する。図2A図2Dは、経時的な脳卒中検出率および1日当たりの誤警告率を示す。
【0038】
図2Aは、監視期間が長くなるにつれて脳卒中警告が出た患者の割合の中央値(実線)および四分位範囲(破線)を示す。図2Bは、非脳卒中対照における1日当たりの患者ごとの誤警告の分布を示す。黒い線は、患者の累積割合を表す。図2Cは、警告閾値を低くすることによる検出までの時間に対する影響を示す。図2Dは、警告閾値を低くすることによる誤警告率に対する影響を示す。
【0039】
感度(すなわち、脳卒中を有するとして検出された脳卒中患者の割合)は監視期間と正の相関があった。2つの異なる標的誤警告率の結果を比較すると、感度と誤警告率も相関していることが実証される。
【0040】
誤警告率が増加するにつれて、検出までの時間は減少する。非脳卒中対照間の誤警告率の中央値が1日あたり患者あたり1.1警告(1日あたり患者あたりIQR0~2.2警告)であると、脳卒中症例における警告までの時間の中央値は29分(IQR11~58分)であった。60分で、アルゴリズムは脳卒中の76%を検出すると予想される。誤警告率の中央値が1日当たり患者あたり3.6警告(IQR2.1~5.0誤警告)であると、脳卒中症例における検出までの時間の中央値は15分(IQR8~74分)であった。この設定では、アルゴリズムは、60分で脳卒中の91%を検出すると予想される。重要なことに、アルゴリズムは、理論的には可変性能をもたらし得る患者特有の要因の影響を受けなかった。具体的には、より低い感度閾値を使用すると、右利き患者と左利き患者とを比較して、誤警告率(中央値1.2対1.0警告/日、p=0.17)または検出までの時間(中央値29対27分、p=0.83)に有意差はなかった。同様に、脳卒中が優位半球または非優位半球を含む場合、検出までの時間に差はなかった(中央値29対29分、p=1.0)。最も重要なことには、昼間と夜間とを比較して、検出された誤警告(中央値0対0警告、p=0.57)または検出までの時間(中央値28対26分、p=0.79)に差はなかった。これらの結果は、感度を上げた閾値を使用して評価した場合も同様であった。
【0041】
考察
この研究は、腕の加速度測定データを使用して、急性脳卒中によって引き起こされた脱力を有する患者と神経学的に無傷の入院患者とを区別することができることを実証している。アルゴリズムの診断性能は、低い誤警告率を維持しながら脳卒中の発症を迅速に検出するための臨床的に有用な監視を提供することができるように、高い感度および特異度を達成する。警告閾値は変更可能であり、閾値を低くすると感度が高くなり検出までの時間が短くなるが、それに伴って誤警告率が高くなった。重要なことに、検出までの時間の推定値は控えめであり、臨床使用においてより速くなり得る。検出までの時間の分析では、本発明者らは脳卒中患者の運動データのみを含めた。
【0042】
実際には、患者は評価ウィンドウの途中で非脳卒中から脳卒中に転じることがあり、その場合でも警告がトリガされる可能性があるため、発症から発見までの時間は本発明者らの報告よりも早くなる。さらに、脳卒中の症例は、監視されている間に現実の日常的な臨床診療でケアされ、ケアチームまたは家族が患者の脱力した腕を動かすことがあった。これらの期間は、検証分析のために打ち切られなかった。臨床用途では、本発明者らは、アルゴリズムが、大多数の患者について1日当たり2回未満の誤警告を十分に維持しながら、発症から30分以内に脳卒中の半分以上を検出すると予想する。最も重要なのは、利き手、非優位半球の関与、または日中対夜間に監視していたかどうかに基づいて、アルゴリズム性能に大きな変動は見られなかったことである。この後者の発見は、睡眠中または覚醒中に脳卒中を等しく検出することができることを示唆しており、これは有用な脳卒中モニターの重要な特徴である。
【0043】
院内脳卒中は、すべての脳卒中の重要な部分を占める主要な公衆衛生問題であり、評価および治療の遅れ、不良な転帰、ならびに滞在期間の費用および長さの劇的な増加に関連する。7-12重要なことに、ほとんどのシリーズの症例の大部分は周術期脳卒中が占めており、大動脈弁手術などの一般的な処置の脳卒中率は、前向き評価が行われる場合に一般的に報告されるよりもはるかに高い。7-9,29-31アルゴリズムが非対称性を検出し、ベースライン期間の運動パターンの変化に基づいていないことを考えると、患者が脱力したまま麻酔から覚醒する可能性がある周術期の脳卒中を検出するのに特によく適している。院内脳卒中の以前の研究では、最後に知られた正常から症状検出までの時間が約2~10時間の範囲で報告されている。29-31実証された脳卒中治療は堅牢な利益を有することができるが、これらの治療を受けることができる可能性および治療に対する応答は経時的に着実に低下する1-3。したがって、脳卒中の発症の迅速な検出は依然として決定的に重要である。脳卒中の発症を継続的に監視するためにこのアルゴリズムを組み込んだ装置は、評価までの時間を劇的に短縮し、より迅速な介入および患者のより良好な転帰をもたらすことができる。
【0044】
上肢脱力は、急性脳卒中の最も一般的な症状の1つであり、患者の約75%に見られる。15このため、大きな血管閉塞を有する可能性が最も高い患者を特定することを目的とする病院到着前の脳卒中スクリーニングツールおよびスケールはすべて、腕の強度を含んでいる。16,17,32さらに、注意力無視は脳卒中の20~70%に存在し、手首装着型加速度計を使用した脳卒中患者の研究は、無視が非対称運動に関連することを実証している。18,19重要なことに、脱力および無視は両方とも、脳卒中からの長期の身体障害と強く関連している。33,34したがって、上肢加速度測定監視はすべての脳卒中を捕捉するわけではないが、障害をもたらす可能性が最も高い脳卒中や、転帰を劇的に改善することが証明されている血栓除去術が最も適応となる脳卒中など、大部分の脳卒中を特定することができる。
【0045】
患者の生理学的監視は、一般に病院および特に集中治療室で普及しており、マルチモーダル監視が治療の標準である。残念ながら、このような監視が蔓延していると、応答の遅れまたは欠如につながる警告疲労をもたらす可能性がある。35疲労は、対処不可能な警告が、臨床的認識および介入の両方を必要とする対処可能な警告よりもはるかに多い場合に起こりやすい。脳卒中は、対処可能かつ極めて時間的制約のある重要な患者事象である。集中治療室で治療された461人の成人の研究は、31日間の研究期間にわたって合計381,560の固有の可聴警告に注釈を付けた。36潜在的に重大な患者異常である心室性不整脈警告の加速は、監視の1日当たり患者当たり平均4.5警告で発生し、そのうち臨床的に関連する対処可能な事象はわずか12(0.3%)であった。この脳卒中検出アルゴリズムは、現在の臨床診療と比較して、症状の発症から脳卒中検出までの時間を大幅に短縮しながら、はるかに低い誤警告率を提供する。
【0046】
この研究は、腕の加速度測定データが急性脳卒中の患者を脳卒中のリスクがある神経学的に正常な入院患者と区別できることを実証している。特に、本発明者らは、アルゴリズムを導出するためにデータを収集するために使用されたものとは異なる加速度測定装置を使用して、別個の前向きに取得された患者コホートに対して検証分析を行った。これらの条件下でのアルゴリズムの性能は、その堅牢性および一般化可能性を反映する。検証コホートには、脳卒中のリスクが高く、連続的な脳卒中監視から利益を得る集団を反映する心胸郭手術または血管手術を受けた対照患者が含まれた。
【0047】
結論
院内脳卒中は主要な公衆衛生上の問題であり、脳卒中の発症を迅速に検出し、迅速な評価および治療を容易にすることができるモニターは、患者の転帰を大幅に改善する。本発明者らは、前向き検証コホートにおける有望な診断性能を実証する入院患者からの上肢加速度測定データを使用して脳卒中検出アルゴリズムを導出した。脳卒中のリスクがある患者を前向きに監視するための試験は、臨床的有用性および忍容性を実証するために必要である。
【0048】
参照文献:
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
図3は、脳卒中を検出するための例示的な方法300を示すフロー図である。方法300は、訓練段階302および検出段階304を含む。典型的には、訓練段階302は、最初に第1のコンピュータシステムによって実行されて、脳卒中検出器、すなわち他のコンピュータシステムに配信されるデータを含むモデルを生成する。次いで、他のコンピュータシステムは、検出段階304を個別に実行することができ、モデルは、患者の脳卒中を検出するために使用される。
【0054】
方法300は、訓練データを収集または取得すること(306)を含む。訓練データは、患者から得られた加速度計データと、対応する加速度計データが脳卒中を経験した患者からかどうかを示す脳卒中データとを含む。
【0055】
方法300は、訓練データと、運動分布共変量シフトに対して堅牢な検定統計量とを使用して脳卒中検出器を訓練すること(308)を含む。脳卒中検出器を訓練した結果、モデルが生成される。モデルは、例えば、図1Aおよび図1Bを参照して上述したように、個々のコンピュータシステムまたはクラウドシステムに格納することができるデータを含む。脳卒中検出器の訓練は、一例に関して以下でさらに説明される。
【0056】
方法300は、1つまたは複数の患者加速度計から運動データを受信すること(310)を含む。いくつかの例では、運動データを受信することは、患者の両手首の手首装着型加速度計からの無線信号から運動データを受信することを含む。運動データを受信することは、加速度計およびバイアスの回転/摺動の影響を除去するために運動データを前処理することを含むことができる。加速度測定データのみで脳卒中検出に十分であり得るが、いくつかの例では、他のデータ、例えばジャイロスコープおよび磁力計などの動きを検出するための他のセンサからのデータが収集される。
【0057】
方法300は、訓練された脳卒中検出器を使用して運動データを分析すること(312)と、患者が脳卒中を経験しているかどうかを判定すること(314)とを含む。患者が脳卒中を経験していると脳卒中検出器が判定した場合、方法300は、介護者への警告をトリガすること(316)を含む。そうでなければ、方法300は、脳卒中が検出されるか、または患者監視が終了するまで、運動データを受信し続ける(310に戻る)。
【0058】
脳卒中検出器訓練例
データ前処理
脳卒中検出のための低コストで軽量で快適な手首装着型装置を設計するために、本発明者らは、本発明者らの脳卒中検出分析において加速度測定データのみを利用しようとした。ジャイロスコープおよび磁力計などの追加のセンサを組み込むことは、理論的には装置の向きおよび腕の位置の推定を可能にするが、それらはまた、装置のコスト、電力消費、電池のサイズ、および重量を増加させる。その結果、市販の低出力加速度計を利用して脳卒中を検出することを目的としたこの研究および本明細書で考慮される前処理は、加速度測定データのみが利用可能であったと仮定した。
【0059】
手首装着型装置で一般的な低コストの低電力加速度計は、時間kにおいて3次元データax(k)、ay(k)、およびaz(k)を生成するが、手首のバイアスおよび回転/摺動を受けやすい。本発明者らは、一定のバイアスをcx(k)、cy(k)、およびcz(k)として示し、加速度の一次導関数(「ジャーク」として知られる)を利用することによってそれらの影響を除去した。なぜならJx(k)=d/dk(ax(k)+cx)=d/dk(ax(k)であり、yおよびz次元についても同様である。バイアスが除去されると、本発明者らは、
【0060】
【数1】
【0061】
として左腕の運動データについて書かれたジャークの大きさのみを考慮することによって手首に対する回転/摺動の影響を除去し、ここで、Xは特徴空間を表し、類似の式が右腕xR(k)について存在する。この前処理ステップは、実世界での配備時に発生しやすいシステム固有のバイアスを除去するためのもので、ジャイロスコープや磁力計を利用できない加速度計データの他のデータ前処理技術とも一致している。
【0062】
検定統計処理
脳卒中被験者と神経学的に無傷の被験者とを区別するための検定統計量を設計するために、特徴空間を確率にマッピングする確率分布の空間である
【0063】
【数2】
【0064】
を記述することから始めた。被験者が所定の一連の動作/動きを行う(理想化された)制御された評価環境では、
【0065】
【数3】
【0066】
を区別することができる。この理想化されたシナリオは、非常に高感度で特異的な脳卒中検出をもたらすことができるが、実際には侵襲的すぎる、すなわち脳卒中を適時に検出するために頻繁な神経学的評価を必要とする。
【0067】
患者が設定された間隔で所定のタスクのセットを実行することを要求するのではなく、本発明者らは、受動的監視シナリオに適した検定統計量を設計しようとした。そのような検定統計量は、統計文献において共変量シフトと呼ばれる、基礎となる患者の動き分布の変化に対して堅牢でなければならない。運動分布共変量シフトは、受動的監視シナリオでは一般的であり、データ内の任意の患者固有の傾向(例えば、利き手、併存症など)の影響を取り込む。しかしながら、運動共変量シフトの影響は、試験時に未知であると推定される患者の神経学的状態によって制限される。その結果、本発明者らは、運動共変量シフトのファミリーを、患者の(未知の)神経学的状態、すなわち
【0068】
【数4】
【0069】
その結果、本発明者らは、運動分布共変量シフトに対して堅牢な神経学的状態を評価することができる検定統計量を求める。
【0070】
堅牢な検定統計量を実現するための1つの例示的な手法は、複数のドメインで以前に適用されたパラメータ不変(PAIN)統計量を利用する。2-5厄介な変換のグループを考慮すると、PAIN統計tは、厄介な変換によって影響を受ける情報を排除する(すなわち、最大
【0071】
【数5】
【0072】
【数6】
【0073】
【数7】
【0074】
と証明した。
さらに、t(fL)およびt(fR)は魅力的な特性を有する、すなわち、(理想化されたシナリオにおける神経学的に無傷の被験者の場合のように)fL=Rである場合、t(fL)=t(fR)であり、
【0075】
【数8】
【0076】
として正式に述べられることに留意されたい。これは、理想化された監視シナリオでは、被験者が神経学的に無傷である場合、受動的監視シナリオでも、彼らが神経学的に無傷に見えるはずであることを意味する。
【0077】
したがって、本発明者らは、神経学的に無傷の被験者(すなわち、t(fL)=t(fR))と脳卒中被験者(すなわち、
【0078】
【数9】
【0079】
)とを識別する検定統計量を生成することを目的とした。このシナリオでは、tL=t(fL)およびtR=t(fR)とすること、および
検定統計量
【0080】
【数10】
【0081】
を書くことによるコルモゴロフ-スミルノフ(KS)統計量を利用し、6、7
これは、確率質量関数tLおよびtRに対応する累積分布関数の最大絶対偏差に等しい分布等式の非パラメトリック統計量を表す。KS統計量は、基礎となる検定分布ファミリーが未知であるかまたはパラメータ化されていない(すなわち、ノンパラメトリック)場合の分布等価性の広く使用されている検定である。
【0082】
試験生成
次に、本発明者らは、前のセクションで導出された検定統計量sの閾値検定を開発した。検定統計量は、確率質量関数tLおよびtRに対応する累積分布関数を必要とする。残念ながら、これらは一般に知られておらず、前処理されたサンプリングされたデータX(k){(xL(k),xR(k)),(xL(k-1),xR(k-2)),...}=の最近の履歴(1時間)から推定されなければならない。実際の分布の代わりにサンプリングされたデータ推定値を利用することは、2つの潜在的な懸念を提示する。第1に、有意な欠落データがある場合、サンプリングされたデータに含まれる情報の量は減少する。第2に、データが技術的に欠落していない間に患者が動かない(すなわち、完全に静止している)ときはいつでも、それは脳卒中対神経学的に無傷の検査のための識別情報を提供しない。したがって、X(k)を使用して推定された検定統計量となるようにs(k)と書き、X(k)のデータ点の数となるようにr(k)=X(k)と書き、患者の動きがある場合のX(k)の割合となるように
【0083】
【数11】
【0084】
と書く。
閾値試験を導出するために、本発明者らはr1およびr2を活用し、結果として得られる検定が一定の誤警告率
【0085】
【数12】
【0086】
を有するように閾値を適合させた。これを達成するために、本発明者らは、[(r(1),r(1)),(r(2),r(2)),...]に対してk=100のkmeansを使用してデータをグループ化し、一定の誤警告率αを達成するために各グループの対応する閾値を生成した。誤警告率を調整する際の最大の分布精度を達成するために、閾値選択の前に閾値試験を較正した。実行時に、対応するr(k)およびr(k)を用いて新しいs(k)を生成した。s(k)を検定するのに利用される判定閾値は、(r(k)、r(k))を含むグループに対応する。以下では、上記の閾値試験を
【0087】
【数13】
【0088】
と呼び、φ=0は脳卒中の不在を予測し、φ=1は脳卒中の存在を予測する。
脳卒中の発症に対する感受性を改善するために、本発明者らは、それぞれ異なる監視期間d、・・・dを用いて同時に複数の閾値試験φ、・・・φを実行した。例えば、時間tにおける各
【0089】
【数14】
【0090】
について、φは時間範囲[t-d1,t]内のデータを利用する。複数の閾値試験を活用して、本発明者らは、L監視期間のうちの1つが脳卒中の存在を予測する場合に限り、脳卒中の存在を予測する集約閾値試験
【0091】
【数15】
【0092】
を定義した。集約試験の誤警告率は常にαより大きいことに留意されたい。その結果、本発明者らは、閾値試験設計におけるαを、集約試験が本発明者らの所望の誤警告率を達成するよう十分に小さくなるように選択する。
【0093】
参照文献:
【0094】
【表7】
【0095】
特定の例および特徴を上述したが、これらの例および特徴は、特定の特徴に関して単一の例のみが記載されている場合であっても、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示で提供される特徴の例は、特に明記しない限り、限定的ではなく例示的であることを意図している。上記の説明は、本開示の利益を有する当業者に明らかであるような代替、修正、および均等物を包含することを意図している。
【0096】
本開示の範囲は、そのような特徴または一般化が本明細書に記載された問題のいずれかまたはすべてを軽減するかどうかにかかわらず、本明細書に(明示的または暗黙的に)開示された特徴または特徴の組み合わせ、または開示された特徴の任意の一般化を含む。したがって、本出願(または本出願に対する優先権を主張する出願)の遂行中に、任意のそのような特徴の組み合わせに対して新しい請求項を策定することができる。特に、添付の特許請求の範囲を参照すると、従属請求項からの特徴は独立請求項の特徴と組み合わせることができ、それぞれの独立請求項からの特徴は、添付の特許請求の範囲に列挙された特定の組み合わせだけでなく、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
【国際調査報告】