(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】不飽和脂肪族炭化水素系被覆材料および電気化学的適用におけるその使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240625BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240625BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240625BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240625BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240625BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240625BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240625BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20240625BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240625BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240625BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240625BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240625BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240625BHJP
C07C 9/15 20060101ALI20240625BHJP
C07C 11/21 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/36 C
H01M10/0562
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M4/13
H01M10/0565
H01M4/131
H01M4/66 A
H01M4/48
C07C9/15
C07C11/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574152
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 CA2022050889
(87)【国際公開番号】W WO2022251968
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フルート, ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ガリット, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】マレー, シャルロット
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラポルト, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ジラール, マルク-アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】デュシェーヌ, スティーブ
【テーマコード(参考)】
4H006
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB78
4H006AB91
4H006BB20
4H006BB21
4H006BB25
5H017AA04
5H017AS02
5H017CC01
5H017DD05
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029DJ16
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA11
5H050EA12
5H050EA13
5H050EA14
5H050EA22
5H050EA24
5H050EA26
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
(57)【要約】
本技術は、電気化学的適用、特に全固体バッテリーなどの電気化学蓄電池における使用のための被覆材料であって、10~50個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素-炭素二重または三重結合を有する、少なくとも1種の分枝状または直鎖状の不飽和脂肪族炭化水素を含む、被覆材料に関する。本技術は、前記被覆材料を含む被覆された粒子、およびそれを製造する方法にも関する。前記被覆された粒子を含む、電極材料、電極、電解質、集電体被覆材料および集電体ならびに電気化学セルにおける、例えば電気化学蓄電池における、特に全固体バッテリーにおける、それらの使用も記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルにおける使用のための被覆材料であって、10~50個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素-炭素二重または三重結合を有する、少なくとも1種の分枝状または直鎖状の不飽和脂肪族炭化水素を含む、被覆材料。
【請求項2】
前記不飽和脂肪族炭化水素の沸点が、150℃超である、請求項1に記載の被覆材料。
【請求項3】
前記不飽和脂肪族炭化水素の前記沸点が、上限および下限を含めて、約150℃~約675℃、または約155℃~約670℃、または約160℃~約665℃、または約165℃~約660℃、または約170℃~約655℃の範囲内である、請求項1または2に記載の被覆材料。
【請求項4】
前記不飽和脂肪族炭化水素が、デセン、ドデセン、ウンデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、1,9-デカジエン、ドコセン、ヘキサコセン、エイコセン、テトラコセン、スクアレン、ファルネセン、β-カロテン、ピネン、ジシクロペンタジエン、カンフェン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、テルピネン、β-ミルセン、リモネン、2-カレン、サビネン、α-セドレン、コパエン、β-セドレン、デシン、ドデシン、オクタデシン、ヘキサデシン、トリデシン、テトラデシン、ドコシン、およびそれらの少なくとも2種の組合せからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の被覆材料。
【請求項5】
前記不飽和脂肪族炭化水素が、デセン、ドデセン、ウンデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、1,9-デカジエン、ドコセン、ヘキサコセン、エイコセン、テトラコセン、スクアレン、ファルネセン、β-カロテン、およびそれらの少なくとも2種の組合せからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の被覆材料。
【請求項6】
前記不飽和脂肪族炭化水素が、デセン、ウンデセン、オクタデセン、スクアレン、ファルネセン、β-カロテン、およびそれらの少なくとも2種の組合せからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の被覆材料。
【請求項7】
前記不飽和脂肪族炭化水素が、スクアレンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の被覆材料。
【請求項8】
前記不飽和脂肪族炭化水素が、ファルネセンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の被覆材料。
【請求項9】
前記不飽和脂肪族炭化水素が、スクアレンおよびファルネセンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の被覆材料。
【請求項10】
前記不飽和脂肪族炭化水素および追加成分を含む混合物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の被覆材料。
【請求項11】
前記追加成分が、アルカン、またはアルカンおよび極性溶媒を含む混合物である、請求項10に記載の被覆材料。
【請求項12】
前記アルカンが、10~50個の炭素原子を含む、請求項11に記載の被覆材料。
【請求項13】
前記アルカンが、デカンである、請求項11または12に記載の被覆材料。
【請求項14】
前記極性溶媒が、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、およびそれらの少なくとも2種の混和性組合せから選択される、請求項11から13のいずれか一項に記載の被覆材料。
【請求項15】
前記極性溶媒が、テトラヒドロフランである、請求項14に記載の被覆材料。
【請求項16】
電気化学セルにおける使用のための被覆された粒子であって、前記被覆された粒子が、
- 電気化学的活性材料、電子伝導性材料またはイオン伝導性無機材料を含むコア;および
- 請求項1から15に定義される被覆材料であって、前記コアの表面に配置されている、被覆材料
を含む、被覆された粒子。
【請求項17】
前記被覆材料が、前記コアの前記表面に均一な被覆層を形成している、請求項16に記載の被覆された粒子。
【請求項18】
前記被覆材料が、前記コアの前記表面の少なくとも一部分に被覆層を形成している、請求項16に記載の被覆された粒子。
【請求項19】
前記被覆材料が、前記コアの前記表面に不均一に分散している、請求項18に記載の被覆された粒子。
【請求項20】
電極材料において使用される、請求項16から19のいずれか一項に記載の被覆された粒子。
【請求項21】
電解質において使用される、請求項16から19のいずれか一項に記載の被覆された粒子。
【請求項22】
集電体において使用される、請求項16から19のいずれか一項に記載の被覆された粒子。
【請求項23】
請求項16から19のいずれか一項に定義される被覆された粒子を製造するための方法であって、前記コアの前記表面の少なくとも一部分を前記被覆材料で被覆する少なくとも1つのステップを含む、方法。
【請求項24】
前記被覆するステップが、乾式被覆プロセスによって行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記被覆するステップが、湿式被覆プロセスによって行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記湿式被覆プロセスが、機械的被覆プロセスである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記機械的被覆プロセスが、メカノ合成プロセスまたはメカノフュージョンプロセスである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記被覆された粒子の前記コアの電気化学的活性材料、電子伝導性材料またはイオン伝導性無機材料を粉砕するステップをさらに含む、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記被覆するステップおよび粉砕するステップが、同時に、逐次的に、または時間が部分的に重複して行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記被覆するステップおよび粉砕するステップが、同時に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
- 請求項16から19のいずれか一項に定義される被覆された粒子であり、前記被覆された粒子のコアが電気化学的活性材料を含む、被覆された粒子;ならびに/または
- 電気化学的活性材料、および請求項16から19のいずれか一項に定義される被覆された粒子
を含む、電極材料。
【請求項32】
前記被覆された粒子の前記コアが、前記電気化学的活性材料を含む、請求項31に記載の電極材料。
【請求項33】
前記電気化学的活性材料が、金属酸化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、金属リン酸塩、金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、硫黄、セレン、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項31または32に記載の電極材料。
【請求項34】
前記電気化学的活性材料の金属が、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項33に記載の電極材料。
【請求項35】
前記電気化学的活性材料の金属が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、およびマグネシウム(Mg)から選択されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属をさらに含む、請求項33に記載の電極材料。
【請求項36】
前記電気化学的活性材料が、リチウム金属酸化物である、請求項31から35のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項37】
前記リチウム金属酸化物が、リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトの混合酸化物(NMC)である、請求項36に記載の電極材料。
【請求項38】
前記電気化学的活性材料が、リチウム化金属リン酸塩である、請求項31から35のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項39】
前記リチウム化金属リン酸塩が、リチウム化鉄リン酸塩である、請求項38に記載の電極材料。
【請求項40】
前記電気化学的活性材料が、非アルカリ金属または非アルカリ土類金属、金属間化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属リン酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、炭素、ケイ素(Si)、ケイ素-炭素複合体(Si-C)、酸化ケイ素(SiO
x)、酸化ケイ素-炭素複合体(SiO
x-C)、スズ(Sn)、スズ-炭素複合体(Sn-C)、酸化スズ(SnO
x)、酸化スズ-炭素複合体(SnO
x-C)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項31または32に記載の電極材料。
【請求項41】
前記電気化学的活性材料が、ドーピング元素をさらに含む、請求項31から40のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項42】
前記電気化学的活性材料が、埋込材料をさらに含む、請求項31から41のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項43】
前記埋込材料が、前記電気化学的活性材料の前記表面に埋込層を形成し、被覆材料が、前記埋込層の表面に配置される、請求項42に記載の電極材料。
【請求項44】
前記埋込材料が、Li
2SiO
3、LiTaO
3、LiAlO
2、Li
2O-ZrO
2、LiNbO
3、他の類似の埋込材料、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項42または43に記載の電極材料。
【請求項45】
前記埋込材料が、LiNbO
3である、請求項42から44のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項46】
前記埋込材料が、電子伝導性材料である、請求項42または43に記載の電極材料。
【請求項47】
前記電子伝導性材料が、炭素である、請求項46に記載の電極材料。
【請求項48】
少なくとも1種の電子伝導性材料をさらに含む、請求項31から47のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項49】
前記被覆された粒子の前記コアが、前記電子伝導性材料を含む、請求項48に記載の電極材料。
【請求項50】
前記電子伝導性材料が、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ、およびそれらの少なくとも2種の組合せからなる群から選択される、請求項48または49に記載の電極材料。
【請求項51】
前記電子伝導性材料が、カーボンブラックである、請求項50に記載の電極材料。
【請求項52】
前記電子伝導性材料の前記表面が、式I:
【化9】
[式中、
FGは、親水性官能基であり;
nは、1~5の範囲内の整数であり、好ましくはnは1~3の範囲内であり、好ましくはnは1もしくは2であり、またはより好ましくはnは1である]
の少なくとも1個のアリール基でグラフト化されている、請求項48から51のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項53】
前記親水性官能基が、カルボン酸官能基またはスルホン酸官能基である、請求項52に記載の電極材料。
【請求項54】
前記式Iのアリール基が、p-安息香酸またはp-ベンゼンスルホン酸である、請求項52に記載の電極材料。
【請求項55】
少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項31から54のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項56】
前記被覆された粒子の前記コアが、前記添加剤を含む、請求項55に記載の電極材料。
【請求項57】
前記添加剤が、無機イオン伝導性材料、無機材料、ガラス、ガラス-セラミック、セラミック、ナノセラミック、塩、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項55または56に記載の電極材料。
【請求項58】
前記添加剤が、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物または酸化物系の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子を含む、請求項55から57のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項59】
前記添加剤が、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、オキシ硫化物、リン化物、フッ化物、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項55から58のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項60】
前記添加剤が、式:
- MLZO(例えば、M
7La
3Zr
2O
12、M
(7-a)La
3Zr
2Al
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
2Ga
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
(2-b)Ta
bO
12、およびM
(7-a)La
3Zr
(2-b)Nb
bO
12);
- MLTaO(例えば、M
7La
3Ta
2O
12、M
5La
3Ta
2O
12、およびM
6La
3Ta
1.5Y
0.5O
12);
- MLSnO(例えば、M
7La
3Sn
2O
12);
- MAGP(例えば、M
1+aAl
aGe
2-a(PO
4)
3);
- MATP(例えば、M
1+aAl
aTi
2-a(PO
4)
3);
- MLTiO(例えば、M
3aLa
(2/3-a)TiO
3);
- MZP(例えば、M
aZr
b(PO
4)
c);
- MCZP(例えば、M
aCa
bZr
c(PO
4)
d);
- MGPS(例えば、M
10GeP
2S
12などのM
aGe
bP
cS
d);
- MGPSO(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
e);
- MSiPS(例えば、M
10SiP
2S
12などのM
aSi
bP
cS
d);
- MSiPSO(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
e);
- MSnPS(例えば、M
10SnP
2S
12などのM
aSn
bP
cS
d);
- MSnPSO(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
e);
- MPS(例えば、M
7P
3S
11などのM
aP
bS
c);
- MPSO(例えば、M
aP
bS
cO
d);
- MZPS(例えば、M
aZn
bP
cS
d);
- MZPSO(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
e);
- xM
2S-yP
2S
5;
- xM
2S-yP
2S
5-zMX;
- xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5;
- xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5-wMX;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wMX;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5-vMX;
- xM
2S-ySiS
2;
- MPSX(例えば、M
7P
3S
11X、M
7P
2S
8XおよびM
6PS
5XなどのM
aP
bS
cX
d);
- MPSOX(例えば、M
aP
bS
cO
dX
e);
- MGPSX(例えば、M
aGe
bP
cS
dX
e);
- MGPSOX(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
eX
f);
- MSiPSX(例えば、M
aSi
bP
cS
dX
e);
- MSiPSOX(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
eX
f);
- MSnPSX(例えば、M
aSn
bP
cS
dX
e);
- MSnPSOX(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
eX
f);
- MZPSX(例えば、M
aZn
bP
cS
dX
e);
- MZPSOX(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
eX
f);
- M
3OX;
- M
2HOX;
- M
3PO
4;
- M
3PS
4;および
- M
aPO
bN
c[式中、a=2b+3c-5である];
[式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される]
の無機化合物から選択される、請求項55から59のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項61】
Mが、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項60に記載の電極材料。
【請求項62】
MがLiである、請求項61に記載の電極材料。
【請求項63】
前記添加剤が、式Li
6PS
5X[式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの組合せである]の無機アルジロダイト型化合物から選択される、請求項55から62のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項64】
前記添加剤が、Li
6PS
5Clである、請求項55から63のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項65】
バインダーをさらに含む、請求項31から64のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項66】
前記バインダーが、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリエステル型、フッ素化ポリマー、および水溶性バインダーからなる群から選択される、請求項65に記載の電極材料。
【請求項67】
前記バインダーが、ポリブタジエン系ポリマーと、式IIの化合物:
【化10】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれの出現において独立して、水素原子、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SO
3H)、ヒドロキシル基(-OH)、フッ素原子、および塩素原子から選択される]
の重合に由来するノルボルネン系モノマー単位を含むポリマーとのブレンドを含む、請求項65に記載の電極材料。
【請求項68】
前記ポリマーが、式III:
【化11】
[式中、
R
1およびR
2は、請求項67において定義された通りであり;
nは、式IIIのポリマーの質量平均分子量が、上限および下限を含めて約10000g/mol~約100000g/molであるように選択される整数である]
のポリマーである、請求項67に記載の電極材料。
【請求項69】
R
1およびR
2が、それぞれの出現において独立して、水素原子および-COOH基から選択される、請求項67および68に記載の電極材料。
【請求項70】
R
1が-COOH基であり、R
2が水素原子である、請求項69に記載の電極材料。
【請求項71】
R
1およびR
2が、両方とも-COOH基である、請求項69に記載の電極材料。
【請求項72】
前記ポリブタジエン系ポリマーが、ポリブタジエンである、請求項67から71のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項73】
前記ポリブタジエン系ポリマーが、エポキシ化ポリブタジエンから選択される、請求項67から71のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項74】
前記エポキシ化ポリブタジエンが、式IV、VおよびVI:
【化12】
の繰り返し単位、ならびに2つのヒドロキシル末端基を含む、請求項73に記載の電極材料。
【請求項75】
前記エポキシ化ポリブタジエンが、式VII:
【化13】
[式中、
mは、式VIIのエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量が、上限および下限を含めて約1000g/mol~約1500g/molであるように選択される整数である]
のものであり;
エポキシド等価重量が、上限および下限を含めて約100g/mol~約600g/molである、
請求項74に記載の電極材料。
【請求項76】
前記式VIIのエポキシ化ポリブタジエンの前記質量平均分子量が、約1300g/molである、請求項75に記載の電極材料。
【請求項77】
前記エポキシド等価重量が、上限および下限を含めて約210g/mol~約550g/molである、請求項75または76に記載の電極材料。
【請求項78】
前記式VIIのエポキシ化ポリブタジエンが、約1300g/molの質量平均分子量、ならびに上限および下限を含めて約400g/mol~約500g/molのエポキシド等価重量を有するPoly bd(商標)600E樹脂である、請求項75から77のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項79】
前記式VIIのエポキシ化ポリブタジエンが、約1300g/molの質量平均分子量、ならびに上限および下限を含めて約260g/mol~約330g/molのエポキシド等価重量を有するPoly bd(商標)605E樹脂である、請求項75から77のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項80】
ポリブタジエン系ポリマー:前記式IIの化合物の重合に由来するノルボルネン系モノマー単位を含むポリマーの重量比が、上限および下限を含めて約6:1~約2:3の範囲内である、請求項67から79のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項81】
前記重量比が、上限および下限を含めて、約5.5:1~約2:3、または約5:1~約2:3、または約4.5:1~約2:3、または約4:1~約2:3、または約6:1~約1:1、または約5.5:1~約1:1、または約5:1~約1:1、または約4.5:1~約1:1、または約4:1~約1:1の範囲内である、請求項80に記載の電極材料。
【請求項82】
前記重量比が、上限および下限を含めて約4:1~約1:1の範囲内である、請求項81に記載の電極材料。
【請求項83】
集電体上に請求項31から82のいずれか一項に定義される電極材料を備える電極。
【請求項84】
請求項31から82のいずれか一項に定義される電極材料を含む自立電極。
【請求項85】
前記電極が正極である、請求項83または84に記載の電極。
【請求項86】
請求項16から19のいずれか一項に定義される被覆された粒子を含む電解質であって、前記被覆された粒子のコアがイオン伝導性無機材料を含む、電解質。
【請求項87】
前記イオン伝導性無機材料が、ガラス、ガラス-セラミック、セラミック、ナノセラミック、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項86に記載の電解質。
【請求項88】
前記イオン伝導性無機材料が、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物または酸化物系の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミックを含む、請求項86および87に記載の電解質。
【請求項89】
前記イオン伝導性無機材料が、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、オキシ硫化物、リン化物、フッ化物、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項86から88のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項90】
前記イオン伝導性無機材料が、式:
- MLZO(例えば、M
7La
3Zr
2O
12、M
(7-a)La
3Zr
2Al
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
2Ga
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
(2-b)Ta
bO
12、およびM
(7-a)La
3Zr
(2-b)Nb
bO
12);
- MLTaO(例えば、M
7La
3Ta
2O
12、M
5La
3Ta
2O
12、およびM
6La
3Ta
1.5Y
0.5O
12);
- MLSnO(例えば、M
7La
3Sn
2O
12);
- MAGP(例えば、M
1+aAl
aGe
2-a(PO
4)
3);
- MATP(例えば、M
1+aAl
aTi
2-a(PO
4)
3);
- MLTiO(例えば、M
3aLa
(2/3-a)TiO
3);
- MZP(例えば、M
aZr
b(PO
4)
c);
- MCZP(例えば、M
aCa
bZr
c(PO
4)
d);
- MGPS(例えば、M
10GeP
2S
12などのM
aGe
bP
cS
d);
- MGPSO(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
e);
- MSiPS(例えば、M
10SiP
2S
12などのM
aSi
bP
cS
d);
- MSiPSO(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
e);
- MSnPS(例えば、M
10SnP
2S
12などのM
aSn
bP
cS
d);
- MSnPSO(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
e);
- MPS(例えば、M
7P
3S
11などのM
aP
bS
c);
- MPSO(例えば、M
aP
bS
cO
d);
- MZPS(例えば、M
aZn
bP
cS
d);
- MZPSO(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
e);
- xM
2S-yP
2S
5;
- xM
2S-yP
2S
5-zMX;
- xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5;
- xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5-wMX;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wMX;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5;
- xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5-vMX;
- xM
2S-ySiS
2;
- MPSX(例えば、M
7P
3S
11X、M
7P
2S
8XおよびM
6PS
5XなどのM
aP
bS
cX
d);
- MPSOX(例えば、M
aP
bS
cO
dX
e);
- MGPSX(例えば、M
aGe
bP
cS
dX
e);
- MGPSOX(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
eX
f);
- MSiPSX(例えば、M
aSi
bP
cS
dX
e);
- MSiPSOX(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
eX
f);
- MSnPSX(例えば、M
aSn
bP
cS
dX
e);
- MSnPSOX(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
eX
f);
- MZPSX(例えば、M
aZn
bP
cS
dX
e);
- MZPSOX(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
eX
f);
- M
3OX;
- M
2HOX;
- M
3PO
4;
- M
3PS
4;および
- M
aPO
bN
c[式中、a=2b+3c-5である];
[式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、Iまたはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される]
の無機化合物から選択される、請求項86から89のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項91】
Mが、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項90に記載の電解質。
【請求項92】
MがLiである、請求項91に記載の電解質。
【請求項93】
前記イオン伝導性無機材料が、式Li
6PS
5X[式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである]のアルジロダイト型無機化合物から選択される、請求項86から92のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項94】
前記イオン伝導性無機材料が、Li
6PS
5Clである、請求項86から93のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項95】
溶媒中に塩を含む液体電解質である、請求項86から94のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項96】
溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である、請求項86から94のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項97】
ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質である、請求項86から94のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項98】
無機固体電解質である、請求項86から94のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項99】
セラミック型無機固体電解質である、請求項98に記載の電解質。
【請求項100】
請求項16から19のいずれか一項に定義される被覆された粒子を含む集電体のための被覆材料であって、前記被覆された粒子のコアが電子伝導性材料を含む、被覆材料。
【請求項101】
前記電子伝導性材料が炭素である、請求項100に記載の被覆材料。
【請求項102】
金属箔上に配置された請求項100または101に定義される被覆材料を含む集電体。
【請求項103】
負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、前記正極または前記負極の少なくとも1つが請求項83もしくは84に定義される通りであるか、または請求項31から82のいずれか一項に定義される電極材料を含む、電気化学セル。
【請求項104】
負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、前記電解質が、請求項86から99のいずれか一項に定義される通りである、電気化学セル。
【請求項105】
負極、正極、および電解質を含む電気化学セルであって、前記正極および前記負極の少なくとも1つが請求項102に定義される集電体上にあるか、または請求項100もしくは101に定義される被覆材料を含む、電気化学セル。
【請求項106】
前記負極が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属の少なくとも1種を含む合金、または金属間合金もしくは金属間化合物を含む電気化学的活性材料を含む、請求項104または105に記載の電気化学セル。
【請求項107】
前記負極の前記電気化学的活性材料が、金属リチウムまたは金属リチウムを含む合金もしくは金属リチウム系合金を含む、請求項106に記載の電気化学セル。
【請求項108】
前記負極の前記電気化学的活性材料が、上限および下限を含めて約5μm~約500μmの範囲内の厚さを有するフィルムの形態である、請求項106または107に記載の電気化学セル。
【請求項109】
前記負極の前記電気化学的活性材料の前記フィルムの厚さが、上限および下限を含めて約10μm~約100μmの範囲内である、請求項108に記載の電気化学セル。
【請求項110】
前記正極が、予めリチウム化されており、前記負極が、リチウムを実質的に含まない、請求項104から106のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項111】
前記負極が、前記電気化学セルのサイクリングの間にその場でリチウム化される、請求項110のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項112】
請求項104から111のいずれか一項に定義される電気化学セルを少なくとも1つ含む電気化学蓄電池。
【請求項113】
前記電気化学蓄電池が、リチウムバッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、ナトリウムイオンバッテリー、マグネシウムバッテリー、およびマグネシウムイオンバッテリーから選択されるバッテリーである、請求項112に記載の電気化学蓄電池。
【請求項114】
前記バッテリーが、リチウムバッテリーまたはリチウムイオンバッテリーである、請求項112に記載の電気化学蓄電池。
【請求項115】
前記電気化学蓄電池が、全固体バッテリーである、請求項112に記載の電気化学蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用法の下において、2021年6月3日に出願されたカナダ仮特許出願第3,120,989号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、被覆、および電気化学的適用におけるそれらの使用の分野に関する。より具体的には、本出願は、イオン伝導性無機材料、電気化学的活性材料、電子伝導体の粒子のための被覆、それらの製造方法、および電気化学セルにおける、特に全固体バッテリーにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
全固体電気化学システムは、液体電解質の使用に基づくそれらの対応物よりも、実質的に安全で、軽く、柔軟で、効率的である。しかしながら、固体電解質のための適用の分野は、依然として限定されている。
【0004】
実際に、固体ポリマー電解質には、それらの限定的な電気化学的安定性、それらの低い輸率、および室温でのそれらの比較的低いイオン伝導性に関連する問題が存在する。
【0005】
セラミック系固体電解質は、電気化学的安定性、および室温での実質的により高いイオン伝導性の広い機会を提供する。しかしながら、それらは、それらの界面安定性、ならびに周囲空気および湿気に対するそれらの安定性に関連する問題に関連する。
【0006】
さらにまた、全固体電気化学システムのための固体電解質および電極材料の製造は、特に複合電極および電解質を形成する際に、分散の問題に非常に頻繁に遭遇する。より具体的には、複合体の要素、例えばポリマーおよび無機粒子の性質は異なり、固体要素は、ポリマーマトリックスまたは電極バインダー内で凝集体を形成する傾向があり得、これは、システムの性能、効率または安定性に悪影響を及ぼし得る。
【0007】
これらの分散の問題はまた、粒子分散を改善するバインダー、添加剤または分散媒の使用により著しく低減され得る。
【0008】
固体電解質の組成物中に存在する分散媒の例は、EP3467845号で公開された欧州特許に記載されている。
【0009】
セラミック系固体電解質の製造は、乾燥圧縮プロセス後のクラッキングの問題に関連する。この問題を解決するために用いられる1つの戦略は、実質的に柔軟な(または弾性の)ポリマーによるセラミック系固体電解質粒子の封入を含む。例えば、KR10-2003300号で公開された韓国特許は、結晶性硫化物系電解質粒子の表面に適用されたアクリル、フッ素、ジエン、シリコーンまたはセルロース系のポリマーを含むポリマー被覆層を記載している。固体電解質のクラッキングのリスクを最小化することに加えて、ポリマー被覆層はまた、それらのイオン伝導性を低下させることなく電解質粒子の凝集を可能にし、サイクリングの間に体積変動を吸収するのを助ける。この戦略は、興味深い性質を得ることを可能にするが、前に挙げた分散の問題は解決しない。
したがって、従来の全固体電気化学システムの欠点の1つまたは複数を排除する全固体電気化学システムの開発についての必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3467845号明細書
【特許文献2】韓国特許出願公開第10-2003300号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
ある態様によれば、本技術は、電気化学セルにおける使用のための被覆材料であって、10~50個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素-炭素二重または三重結合を有する、少なくとも1種の分枝状または直鎖状の不飽和脂肪族炭化水素を含む、被覆材料に関する。
【0012】
一実施形態では、不飽和脂肪族炭化水素の沸点は、150℃超である。例えば、不飽和脂肪族炭化水素の沸点は、上限および下限を含めて、約150℃~約675℃、または約155℃~約670℃、または約160℃~約665℃、または約165℃~約660℃、または約170℃~約655℃の範囲内である。
【0013】
別の実施形態では、不飽和脂肪族炭化水素は、デセン、ドデセン、ウンデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、1,9-デカジエン、ドコセン、ヘキサコセン、エイコセン、テトラコセン、スクアレン、ファルネセン、β-カロテン、ピネン、ジシクロペンタジエン、カンフェン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、テルピネン、β-ミルセン、リモネン、2-カレン、サビネン、α-セドレン、コパエン、β-セドレン、デシン、ドデシン、オクタデシン、ヘキサデシン、トリデシン、テトラデシン、ドコシン、およびそれらの少なくとも2種の組合せからなる群から選択される。目的の変形によれば、不飽和脂肪族炭化水素は、スクアレンを含む。目的の別の変形によれば、不飽和脂肪族炭化水素は、ファルネセンを含む。目的の別の変形によれば、不飽和脂肪族炭化水素は、スクアレンおよびファルネセンを含む。
【0014】
別の実施形態では、被覆材料は、不飽和脂肪族炭化水素および追加成分を含む混合物である。例えば、追加成分は、アルカン、またはアルカンおよび極性溶媒を含む混合物である。
別の態様によれば、本技術は、電気化学セルにおける使用のための被覆された粒子であって、前記被覆された粒子が、
- 電気化学的活性材料、電子伝導性材料、またはイオン伝導性無機材料を含むコア;および
- 本明細書に定義される被覆材料であって、コアの表面に配置されている、被覆材料
を含む、被覆された粒子に関する。
【0015】
別の態様によれば、本技術は、本明細書に定義される被覆された粒子を製造するための方法であって、コアの表面の少なくとも一部分を被覆材料で被覆する少なくとも1つのステップを含む、方法に関する。
【0016】
一実施形態では、方法は、被覆された粒子のコアの電気化学的活性材料、電子伝導性材料またはイオン伝導性無機材料を粉砕するステップをさらに含む。
【0017】
別の態様によれば、本技術は、
- 本明細書に定義される被覆された粒子であり、被覆された粒子のコアが、電気化学的活性材料を含む、被覆された粒子;ならびに/または
- 電気化学的活性材料、および本明細書に定義される被覆された粒子
を含む、電極材料に関する。
【0018】
一実施形態では、被覆された粒子のコアは、電気化学的活性材料を含む。ある例によれば、電気化学的活性材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、金属リン酸塩、金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、硫黄、セレン、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。例えば、電気化学的活性材料の金属は、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。ある例によれば、電気化学的活性材料は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、およびマグネシウム(Mg)から選択されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属をさらに含む。別の例によれば、電気化学的活性材料は、非アルカリ金属または非アルカリ土類金属、金属間化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属リン酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、炭素、ケイ素(Si)、ケイ素-炭素複合体(Si-C)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化ケイ素-炭素複合体(SiOx-C)、スズ(Sn)、スズ-炭素複合体(Sn-C)、酸化スズ(SnOx)、酸化スズ-炭素複合体(SnOx-C)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。
【0019】
別の実施形態では、電極材料は、少なくとも1種の電子伝導性材料をさらに含む。目的の変形によれば、被覆された粒子のコアは、電子伝導性材料を含む。例えば、電子伝導性材料は、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ、およびそれらの少なくとも2種の組合せからなる群から選択される。
【0020】
別の実施形態では、電極材料は、少なくとも1種の添加剤をさらに含む。目的の変形によれば、被覆された粒子のコアは、添加剤を含む。ある例によれば、添加剤は、無機イオン伝導性材料、無機材料、ガラス、ガラス-セラミック、セラミック、ナノセラミック、塩、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、添加剤は、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物または酸化物系の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子を含む。別の例によれば、添加剤は、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、オキシ硫化物、リン化物、フッ化物、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、添加剤は、式MLZO(例えば、M7La3Zr2O12、M(7-a)La3Zr2AlbO12、M(7-a)La3Zr2GabO12、M(7-a)La3Zr(2-b)TabO12、およびM(7-a)La3Zr(2-b)NbbO12);MLTaO(例えば、M7La3Ta2O12、M5La3Ta2O12、およびM6La3Ta1.5Y0.5O12);MLSnO(例えば、M7La3Sn2O12);MAGP(例えば、M1+aAlaGe2-a(PO4)3);MATP(例えば、M1+aAlaTi2-a(PO4)3);MLTiO(例えば、M3aLa(2/3-a)TiO3);MZP(例えば、MaZrb(PO4)c);MCZP(例えば、MaCabZrc(PO4)d);MGPS(例えば、M10GeP2S12などのMaGebPcSd);MGPSO(例えば、MaGebPcSdOe);MSiPS(例えば、M10SiP2S12などのMaSibPcSd);MSiPSO(例えば、MaSibPcSdOe);MSnPS(例えば、M10SnP2S12などのMaSnbPcSd);MSnPSO(例えば、MaSnbPcSdOe);MPS(例えば、M7P3S11などのMaPbSc);MPSO(例えば、MaPbScOd);MZPS(例えば、MaZnbPcSd);MZPSO(例えば、MaZnbPcSdOe);xM2S-yP2S5;xM2S-yP2S5-zMX;xM2S-yP2S5-zP2O5;xM2S-yP2S5-zP2O5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5;xM2S-yM2O-zP2S5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5-vMX;xM2S-ySiS2;MPSX(例えば、M7P3S11X、M7P2S8XおよびM6PS5XなどのMaPbScXd);MPSOX(例えば、MaPbScOdXe);MGPSX(例えば、MaGebPcSdXe);MGPSOX(例えば、MaGebPcSdOeXf);MSiPSX(例えば、MaSibPcSdXe);MSiPSOX(例えば、MaSibPcSdOeXf);MSnPSX(例えば、MaSnbPcSdXe);MSnPSOX(例えば、MaSnbPcSdOeXf);MZPSX(例えば、MaZnbPcSdXe);MZPSOX(例えば、MaZnbPcSdOeXf);M3OX;M2HOX;M3PO4;M3PS4;およびMaPObNc(式中、a=2b+3c-5である);
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の無機化合物から選択される。
【0021】
目的の変形によれば、添加剤は、式Li6PS5X(式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである)のアルジロダイト型無機化合物から選択される。例えば、添加剤は、Li6PS5Clである。
【0022】
別の態様によれば、本技術は、集電体上に本明細書に定義される電極材料を含む電極に関する。別の態様によれば、本技術は、本明細書に定義される電極材料を含む自立電極に関する。一実施形態では、前記電極は、正極である。
【0023】
別の態様によれば、本技術は、本明細書に定義される被覆された粒子を含む電解質であって、被覆された粒子のコアが、イオン伝導性無機材料を含む、電解質に関する。ある例によれば、イオン伝導性無機材料は、ガラス、ガラス-セラミック、セラミック、ナノセラミック、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、イオン伝導性無機材料は、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物または酸化物系の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子を含む。別の例によれば、イオン伝導性無機材料は、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、オキシ硫化物、リン化物、フッ化物、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、イオン伝導性無機材料は、式MLZO(例えば、M7La3Zr2O12、M(7-a)La3Zr2AlbO12、M(7-a)La3Zr2GabO12、M(7-a)La3Zr(2-b)TabO12、およびM(7-a)La3Zr(2-b)NbbO12);MLTaO(例えば、M7La3Ta2O12、M5La3Ta2O12、およびM6La3Ta1.5Y0.5O12);MLSnO(例えば、M7La3Sn2O12);MAGP(例えば、M1+aAlaGe2-a(PO4)3);MATP(例えば、M1+aAlaTi2-a(PO4)3);MLTiO(例えば、M3aLa(2/3-a)TiO3);MZP(例えば、MaZrb(PO4)c);MCZP(例えば、MaCabZrc(PO4)d);MGPS(例えば、M10GeP2S12などのMaGebPcSd);MGPSO(例えば、MaGebPcSdOe);MSiPS(例えば、M10SiP2S12などのMaSibPcSd);MSiPSO(例えば、MaSibPcSdOe);MSnPS(例えば、M10SnP2S12などのMaSnbPcSd);MSnPSO(例えば、MaSnbPcSdOe);MPS(例えば、M7P3S11などのMaPbSc);MPSO(例えば、MaPbScOd);MZPS(例えば、MaZnbPcSd);MZPSO(例えば、MaZnbPcSdOe);xM2S-yP2S5;xM2S-yP2S5-zMX;xM2S-yP2S5-zP2O5;xM2S-yP2S5-zP2O5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5;xM2S-yM2O-zP2S5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5-vMX;xM2S-ySiS2;MPSX(例えば、M7P3S11X、M7P2S8XおよびM6PS5XなどのMaPbScXd);MPSOX(例えば、MaPbScOdXe);MGPSX(例えば、MaGebPcSdXe);MGPSOX(例えば、MaGebPcSdOeXf);MSiPSX(例えば、MaSibPcSdXe);MSiPSOX(例えば、MaSibPcSdOeXf);MSnPSX(例えば、MaSnbPcSdXe);MSnPSOX(例えば、MaSnbPcSdOeXf);MZPSX(例えば、MaZnbPcSdXe);MZPSOX(例えば、MaZnbPcSdOeXf);M3OX;M2HOX;M3PO4;M3PS4;およびMaPObNc(式中、a=2b+3c-5である);
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の無機化合物から選択される。
【0024】
目的の変形によれば、イオン伝導性無機材料は、式Li6PS5X(式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである)のアルジロダイト型無機化合物から選択される。例えば、イオン伝導性無機材料は、Li6PS5Clである。
【0025】
別の態様によれば、本技術は、本明細書に定義される被覆された粒子を含む集電体のための被覆材料であって、被覆された粒子のコアが、電子伝導性材料を含む、被覆材料に関する。例えば、電子伝導性材料は炭素である。
【0026】
別の態様によれば、本技術は、金属箔上に配置された本明細書において定義される被覆材料を含む集電体に関する。
【0027】
別の態様によれば、本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、正極または負極の少なくとも1つが本明細書に定義される通りであるか、または本明細書に定義される電極材料を含む、電気化学セルに関する。
【0028】
別の態様によれば、本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、電解質が、本明細書に定義される通りである、電気化学セルに関する。
【0029】
別の態様によれば、本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、正極および負極の少なくとも1つが本明細書に定義される集電体上にあるか、または本明細書に定義される被覆材料を含む、電気化学セルに関する。
【0030】
別の態様によれば、本技術は、本明細書に定義される少なくとも1つの電気化学セルを含む電気化学蓄電池に関する。
【0031】
一実施形態では、電気化学蓄電池は、リチウムバッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、ナトリウムイオンバッテリー、マグネシウムバッテリー、およびマグネシウムイオンバッテリーから選択されるバッテリーである。
【0032】
別の実施形態では、電気化学蓄電池は、全固体バッテリーである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、実施例3(a)に記載される、(A)粉砕および被覆するステップの前のLi
6PS
5Cl粒子、ならびに(B)デカンおよびスクアレンの混合物で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子の走査型電子顕微鏡法(SEM)によって得られた画像を示す。
【0034】
【
図2】
図2は、実施例3(b)に記載される、スクアレン(菱形;曲線1)ならびにデカンおよびスクアレンの混合物で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子(丸;曲線2)についての熱重量分析結果を提示する。
【0035】
【
図3】
図3は、(A)および(B)において、実施例3(c)に記載される、デカンおよびスクアレンの混合物で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子について得られたプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)および炭素核磁気共鳴(
13C NMR)スペクトルをそれぞれ提示する。
【0036】
【
図4】
図4は、実施例3(c)に記載される、純粋なファルネセンならびにデカンおよびファルネセンの混合物で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子について得られたプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルを提示する。
【0037】
【
図5】
図5は、実施例3(c)に記載される、純粋なファルネセンおよびスクアレンならびにデカン、スクアレンおよびファルネセンの混合物で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子について得られたプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルを提示する。
【0038】
【
図6】
図6は、(A)および(B)において、実施例4(b)に記載されるフィルム1および2について、それぞれ、SEMによって得られた画像、ならびに得られたエネルギー分散X線分光分析(EDS)のNiおよびS元素マッピング画像を示す。
【0039】
【
図7】
図7は、実施例4(b)に記載されるフィルム3および4について、それぞれ、後方散乱電子SEMによって得られた画像およびこれらの画像の拡大図を(A)および(B)に示す。
【0040】
【
図8】
図8は、実施例5(b)に記載されるセル1(三角形)およびセル2(四角形)について、(A)において、サイクル数の関数として放電容量(mAh/g)およびクーロン効率(%)のグラフ、ならびに(B)において、サイクル数の関数として平均充電および放電電位(V)のグラフを示す。
【0041】
【
図9】
図9は、実施例5(b)に記載される、セル2(四角形)、セル3(三角形)、セル4(逆三角形)、およびセル5(丸)について、(A)において、サイクル数の関数として放電容量およびクーロン効率のグラフ、ならびに(B)において、サイクル数の関数として平均充電および放電電位(V)のグラフを示す。
【0042】
【
図10】
図10は、実施例5(b)に記載されるセル2(四角形)、セル6(五角形)、およびセル7(星)について、サイクル数の関数として放電容量およびクーロン効率のグラフを示す。
【0043】
【
図11】
図11は、実施例6(a)に記載される、サイクリング前(青色)およびサイクリング後(赤色)の溶液中のフィルム4試料についての、プロトン核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルを示す。
【0044】
【
図12】
図12は、実施例6(b)に記載される、デカンで被覆(破線)、デカン:スクアレン混合物(体積で85:15)で被覆(二点鎖線)、およびデカン:スクアレン混合物(体積で75:25)で被覆(実線)されたLi
6PS
5Cl粉末についての、時間(時間)の関数として発生した硫化水素(H
2S)ガスの量(mL/g)のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
本明細書で使用されるすべての技術および科学用語および表現は、本技術の分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ定義を有する。しかしながら、使用される一部の用語および表現の定義を下記に提供する。
【0046】
「約」という用語が本明細書で使用される場合、これは、およそ、範囲内、またはおおよそを意味する。例えば、「約」という用語が数値に関連して使用される場合、これは、その名目上の値から10%の変動だけその数値を上下に改変する。この用語は、例えば、測定するデバイスの実験誤差または丸めも考慮し得る。
【0047】
値の範囲が本出願で言及される場合、その範囲の下限および上限は、他に指示されない限り、常に定義内に含まれる。値の範囲が本出願で言及される場合、すべての介在する範囲および下位範囲、ならびに値の範囲内に含まれる個々の値は、定義内に含まれる。
【0048】
冠詞「a(1つの)」が本出願における要素を導入するために使用される場合、これは、「唯一」の意味ではなく、むしろ「1つまたは複数」の意味を有する。当然ながら、特定のステップ、成分、要素または特性を含んで「いてもよい」または含む「ことができる」ことを本記載が述べる場合、その特定のステップ、成分、要素または特性は、それぞれの実施形態に含まれる必要はない。
【0049】
本明細書に記載される化学構造は、本分野の慣習に従って描かれる。また、描かれている炭素原子などの原子が、不完全な原子価を含むように見える場合、原子価は、水素原子が明白に描かれていないとしても、1つまたは複数の水素原子によって充足されていると見なされる。
【0050】
本技術は、電気化学セルにおける使用のための被覆材料であって、10~50個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素-炭素二重または三重結合を有する、少なくとも1種の分枝状または直鎖状の不飽和脂肪族炭化水素を含む、被覆材料に関する。
【0051】
ある例によれば、本明細書に定義される不飽和脂肪族炭化水素は、約150℃超の沸点によって特徴付けられる。例えば、不飽和脂肪族炭化水素は、上限および下限を含めて、約150℃~約675℃、または約155℃~約670℃、または約160℃~約665℃、または約165℃~約660℃、または約170℃~約655℃の範囲内の沸点によって特徴付けられる。
【0052】
別の例によれば、本明細書に定義される不飽和脂肪族炭化水素は、単一の炭素-炭素二重または三重結合、例えば、アルケン、アルキンまたは非環状オレフィンを含む。あるいは、不飽和脂肪族炭化水素は、少なくとも2個の共役または非共役炭素-炭素二重結合、例えば、アルカジエン、アルカトリエンなど、またはポリエンを含む。あるいは、不飽和脂肪族炭化水素は、少なくとも2個の炭素-炭素三重結合、例えば、アルカジイン、アルカトリインなど、またはポリインを含む。あるいは、不飽和脂肪族炭化水素は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合および少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含む。
【0053】
本明細書に定義される少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、デセン、ドデセン、ウンデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、1,9-デカジエン、ドコセン、ヘキサコセン、エイコセン、テトラコセン、スクアレン、ファルネセン、β-カロテン、ピネン、ジシクロペンタジエン、カンフェン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、テルピネン、β-ミルセン、リモネン、2-カレン、サビネン、α-セドレン、コパエン、β-セドレン、およびそれらの組合せが挙げられる。ある例によれば、不飽和脂肪族炭化水素は、デセン、ドデセン、ウンデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、1,9-デカジエン、ドコセン、ヘキサコセン、エイコセン、テトラコセン、スクアレン、β-カロテン、およびそれらの組合せから選択される。別の例によれば、不飽和脂肪族炭化水素は、デセン、ウンデセン、スクアレン、オクタデセン、β-カロテン、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。目的の変形によれば、不飽和脂肪族炭化水素は、スクアレンを含む。目的の別の変形によれば、不飽和脂肪族炭化水素は、ファルネセンを含む。目的の別の変形によれば、不飽和脂肪族炭化水素は、スクアレンおよびファルネセンを含む混合物を含む。
【0054】
本明細書に定義される少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、デシン、ドデシン、オクタデシン、ヘキサデシン、トリデシン、テトラデシン、ドコシン、およびそれらの少なくとも2種の組合せが挙げられる。別の例によれば、本明細書に定義される被覆材料は、本明細書に定義される不飽和脂肪族炭化水素および少なくとも1種の追加成分を含む混合物である。ある例によれば、追加成分は、アルカン、例えば、10~50個の炭素原子を有するアルカンであってもよい。別の例によれば、追加成分は、本明細書に定義されるアルカンおよび極性溶媒を含む混合物であってもよい。極性溶媒の非限定的な例としては、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、およびそれらの少なくとも2種の混和性組合せが挙げられる。目的の変形によれば、追加成分は、デカンである。
【0055】
本技術は、電気化学セルにおける使用のための被覆された粒子にも関する。より具体的には、被覆された粒子は、
- 電気化学的活性材料、電子伝導性材料またはイオン伝導性無機材料を含むコア;および
- 前記コアの表面に配置されている、本明細書に定義される被覆材料
を含む。
【0056】
ある例によれば、被覆材料は、コアの表面に均一な被覆層を形成してもよい。すなわち、これは、コアの表面に実質的に均質な被覆層を形成してもよい。
【0057】
別の例によれば、被覆材料は、コアの表面の少なくとも一部分上に被覆層を形成してもよい。言い換えれば、これは、コアの表面に不均一に分散されていてもよい。
【0058】
被覆材料および前記コアの材料の体積または質量比、ならびに被覆プロセスの条件が、被覆材料による前記コアの表面の被覆度および/または被覆された粒子試料の均一性に影響を及ぼすことが理解されなければならない。
【0059】
電気化学的適用における本明細書に定義される被覆された粒子の使用も企図される。ある例によれば、被覆された粒子は、電気化学セル、電気化学蓄電池において、特に全固体バッテリーにおいて使用され得る。例えば、被覆された粒子は、電極材料において、電解質において、またはその2つの間の界面で追加層として、使用されてもよい。
【0060】
本技術は、本明細書に定義される被覆された粒子を製造するための方法であって、コアの表面の少なくとも一部分を被覆材料で被覆する少なくとも1つのステップを含む、方法にも関する。被覆するステップは、任意の適合する被覆方法によって行われてよい。例えば、被覆するステップは、乾式または湿式被覆プロセスによって行われてよい。目的の変形によれば、被覆するステップは、湿式被覆プロセスによって、例えば、混合、粉砕、またはメカノ合成プロセスなどの機械的被覆プロセスによって行われてもよい。
【0061】
ある例によれば、方法は、被覆された粒子の前記コアの電気化学的活性材料、電子伝導性材料またはイオン伝導性無機材料を粉砕する(または微粉砕する)ステップをさらに含む。例えば、被覆するステップおよび製粉するステップは、同時に、逐次的に行われてもよく、または時間が部分的に重複していてもよい。被覆するステップおよび製粉するステップが逐次的に行われる場合、製粉するステップは、被覆するステップの前に行われてもよい。目的の変形によれば、被覆するステップおよび粉砕するステップは、例えば、遊星ミルまたは遊星マイクロミルを使用して、同時に行われる。
【0062】
別の例によれば、被覆するステップおよび製粉するステップは、最適な粒子径もしくは直径、被覆材料による粒子のコアの表面の所望の被覆度、および/または被覆された粒子試料の所望の均一性を達成するような回転速度および設定時間で行われ得る。
【0063】
一部の例によれば、粒子は、硫化物系セラミック粒子(例えば、Li6PS5Clアルジロダイト粒子)である。被覆するステップおよび粉砕するステップは、約300rpmの回転速度で約7.5時間行って、約1μm未満または約1μmに等しい最終粒子径を有する被覆されたLi6PS5Cl粒子が得られる。
【0064】
別の例によれば、方法は、被覆された粒子を乾燥させるステップをさらに含む。ある例によれば、乾燥させるステップは、水分および/または残留溶媒を除去するために行われ得る。別の例によれば、乾燥させるプロセスは、被覆材料を蒸発させることなく、または被覆材料を著しく蒸発させることなく、被覆された粒子を乾燥させるために、低温および設定時間で行われ得る。例えば、乾燥させるステップは、被覆材料の不飽和脂肪族炭化水素の沸点を下回る温度、およびそれを蒸発させないまたはそれを著しく蒸発させない設定時間で行われ得る。被覆材料が混合物を含む場合、少なくとも1種の不飽和脂肪族炭化水素は、乾燥させるステップの間に全部が蒸発せず、したがって、粒子のコアの表面に配置された被覆層中に存在したままであることが理解される。例えば、混合物が追加成分(例えば、上記に定義された、アルカン、またはアルカンおよび極性溶媒を含む混合物)を含む場合、これは、乾燥させるステップの間に、部分的にまたは完全に蒸発してもよい。ある例によれば、乾燥させるステップは、約80℃の温度で、約5時間行われ得る。
【0065】
別の例によれば、被覆材料が混合物を含む場合、前記混合物の組成は、被覆するステップの間に、少なくとも約2体積%の、本明細書に定義される不飽和脂肪族炭化水素を含む。例えば、前記混合物の組成は、被覆するステップの間に、少なくとも約3体積%、または少なくとも約体積4%、または少なくとも約5体積%の、本明細書に定義される不飽和脂肪族炭化水素を含む。
【0066】
別の例によれば、方法は、前記被覆された粒子を含む懸濁液を被覆する(広げるとも呼ばれる)ステップをさらに含み、前記被覆するステップは、例えば、ドクターブレード被覆法、コンマ被覆法、逆コンマ被覆法、グラビア被覆などの印刷法、またはスロットダイ被覆法の少なくとも1つによって行われる。目的の変形によれば、前記被覆するステップは、ドクターブレード被覆法によって行われる。ある例によれば、前記被覆された粒子を含む懸濁液は、支持基材またはフィルムに被覆されてもよく、前記支持基材またはフィルムは、その後除去される。別の例によれば、前記粒子を含む懸濁液は、集電体に直接被覆されてもよい。
【0067】
本技術は、
- 本明細書に定義される被覆された粒子であり、コアが電気化学的活性材料を含む、被覆された粒子;ならびに/または
- 電気化学的活性材料、および本明細書に定義される被覆された粒子
を含む電極材料にも関する。
【0068】
別の例によれば、前記電極材料は、正極材料であり、電気化学的活性材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属オキシ硫化物、金属リン酸塩、金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物(例えば、金属フッ化物)、硫黄、セレン、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、電気化学的活性材料の金属は、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、および適合する場合にはそれらの組合せから選択される。電気化学的活性材料は、必要に応じて、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはマグネシウム(Mg)をさらに含んでいてもよい。
【0069】
電気化学的活性材料の非限定的な例としては、リチウム金属リン酸塩、複合酸化物、例えば、LiM’PO4(式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはそれらの組合せである)、LiV3O8、V2O5、LiMn2O4、LiM’’O2(式中、M’’は、Mn、Co、Ni、またはそれらの組合せである)、Li(NiM’’’)O2(式中、M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、もしくはZr、またはそれらの組合せである)、および適合する場合にはそれらの組合せが挙げられる。
【0070】
目的のある例によれば、電気化学的活性材料は、上記に記載された酸化物またはリン酸塩である。
【0071】
例えば、電気化学的活性材料は、リチウムマンガン酸化物であり、ここで、マンガンは、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)のように、第2の遷移金属で部分的に置換されていてもよい。ある代替によれば、電気化学的活性材料は、リチウム化鉄リン酸塩である。別の代替によれば、電気化学的活性材料は、上記に記載されたものなどのマンガン含有リチウム化金属リン酸塩であり、例えば、マンガン含有リチウム化金属リン酸塩は、リチウム化鉄およびリン酸マンガン(LiMn1-xFexPO4;式中、xは、0.2~0.5である)である。
【0072】
別の例によれば、前記電極材料は、負極材料であり、電気化学的活性材料は、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属(例えば、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、およびビスマス(Bi))、金属間化合物(例えば、SnSb、TiSnSb、Cu2Sb、AlSb、FeSb2、FeSn2、およびCoSn2)、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属リン酸塩(例えば、LiTi2(PO4)3)、金属ハロゲン化物(例えば、金属フッ化物)、金属硫化物、金属オキシ硫化物、炭素(例えば、グラファイト、グラフェン、還元型酸化グラフェン、ハードカーボン、ソフトカーボン、膨張グラファイト、および非晶質カーボン)、ケイ素(Si)、ケイ素-炭素複合体(Si-C)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化ケイ素-炭素複合体(SiOx-C)、スズ(Sn)、スズ-炭素複合体(Sn-C)、酸化スズ(SnOx)、酸化スズ-炭素複合体(SnOx-C)、および適合する場合にはそれらの組合せから選択される。例えば、金属酸化物は、式M’’’’bOcの化合物(式中、M’’’’は、Ti、Mo、Mn、Ni、Co、Cu、V、Fe、Zn、Nb、またはそれらの組合せであり;bおよびcは、比c:bが2~3の範囲内にあるような数である)(例えば、MoO3、MoO2、MoS2、V2O5、およびTiNb2O7)、スピネル酸化物(例えば、NiCo2O4、ZnCo2O4、MnCo2O4、CuCo2O4、およびCoFe2O4)、およびLiM’’’’’O(式中、M’’’’’は、Ti、Mo、Mn、Ni、Co、Cu、V、Fe、Zn、Nb、またはそれらの少なくとも2種の組合せである)(例えば、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12など)またはリチウムモリブデン酸化物(Li2Mo4O13など))の化合物から選択されてもよい。
【0073】
別の例によれば、電気化学的活性材料は、必要に応じて、少量の他の包含元素でドープされて、例えば、その電気化学的性質が調節または最適化されてもよい。電気化学的活性材料は、他のイオンによる金属の部分的置換によってドープされてもよい。例えば、電気化学的活性材料は、遷移金属(例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、またはY)、および/または遷移金属以外の金属(例えば、Mg、Al、またはSb)でドープされてもよい。
【0074】
別の例によれば、電気化学的活性材料は、新たに形成され得るか、または商用起源由来であり得る、粒子(例えば、マイクロ粒子および/またはナノ粒子)の形態であってもよい。例えば、埋込材料は、電気化学的活性材料の表面に埋込層を形成し、被覆材料は、埋込層の表面に配置される。例えば、電気化学的活性材料は、埋込材料の層で被覆された粒子の形態であってもよい。埋込材料は、電子伝導性材料、例えば伝導性炭素埋込であってもよい。あるいは、埋込材料は、電気化学的活性材料と、電解質、例えば固体電解質、特に硫化物系(例えば、Li6PS5Cl系)の無機セラミック型固体電解質との間の界面で、界面反応を実質的に低減することが可能であり得る。例えば、埋込材料は、Li2SiO3、LiTaO3、LiAlO2、Li2O-ZrO2、LiNbO3、適合する場合にはそれらの組合せ、および他の類似の材料から選択されてもよい。目的の変形によれば、埋込材料は、LiNbO3を含む。
【0075】
別の例によれば、本明細書に定義される電極材料は、伝導性材料をさらに含む。目的の変形によれば、被覆された粒子のコアは、電子伝導性材料を含む。
【0076】
電子伝導性材料の非限定的な例としては、炭素源、例えば、カーボンブラック(例えば、Ketjen(商標)カーボンおよびSuper P(商標)カーボン)、アセチレンブラック(例えば、ShawiniganカーボンおよびDenka(商標)カーボンブラック)、グラファイト、グラフェン、炭素繊維(例えば、気相成長炭素繊維(VGCF))、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、およびそれらの少なくとも2種の組合せが挙げられる。
【0077】
別の例によれば、電子伝導性材料は、電極材料中に存在する場合、WO2019/218067号(Delaporteら)で公開されたPCT特許出願に記載されているものなどの改変電子伝導性材料であってもよい。例えば、改変電子伝導性材料は、式I:
【化1】
(式中:
FGは、親水性官能基であり;
nは、1~5の範囲内の整数であり、好ましくはnは1~3の範囲内であり、好ましくはnは1もしくは2であり、またはより好ましくはnは1である)
の少なくとも1個のアリール基でグラフト化されていてもよい。
【0078】
親水性官能基の例としては、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン酸、リン酸、アミン、アミド、および他の類似の基が挙げられる。例えば、親水性官能基は、カルボキシル官能基またはスルホン酸官能基である。官能基は、必要に応じて、水素のリチウムによる交換によってリチウム化されていてもよい。式Iのアリール基の好ましい例は、p-安息香酸またはp-ベンゼンスルホン酸である。
【0079】
目的の変形によれば、電子伝導性材料は、少なくとも1個の式Iのアリール基で必要に応じてグラフト化されたカーボンブラックである。目的の別の変形によれば、電子伝導性材料は、少なくとも1種の改変電子伝導性材料を含む混合物であってもよい。例えば、少なくとも1個の式Iのアリール基でグラフト化されたカーボンブラックと、炭素繊維(例えば、気相成長炭素繊維(VGCF))、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、またはそれらの少なくとも2種の組合せとの混合物。
【0080】
別の例によれば、本明細書に定義される電極材料は、添加剤をさらに含む。例えば、被覆された粒子のコアは、添加剤を含む。例えば、添加剤は、無機イオン伝導性材料、無機材料、ガラス、ガラス-セラミック、ナノセラミックを含むセラミック(例えば、Al2O3、TiO2、SiO2、および他の類似の化合物)、塩(例えば、リチウム塩)、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。例えば、添加剤は、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、リン化物、フッ化物、ハロゲン化硫黄、リン酸塩、チオリン酸塩、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される無機イオン伝導体であってもよい。
【0081】
目的の変形によれば、添加剤は、電極材料中に存在する場合、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物、酸化物系の、セラミック、ガラス、もしくはガラス-セラミック粒子、またはそれらの少なくとも2種の組合せであってもよい。セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子の非限定的な例としては、式MLZO(例えば、M7La3Zr2O12、M(7-a)La3Zr2AlbO12、M(7-a)La3Zr2GabO12、M(7-a)La3Zr(2-b)TabO12、およびM(7-a)La3Zr(2-b)NbbO12);MLTaO(例えば、M7La3Ta2O12、M5La3Ta2O12、およびM6La3Ta1.5Y0.5O12);MLSnO(例えば、M7La3Sn2O12);MAGP(例えば、M1+aAlaGe2-a(PO4)3);MATP(例えば、M1+aAlaTi2-a(PO4)3);MLTiO(例えば、M3aLa(2/3-a)TiO3);MZP(例えば、MaZrb(PO4)c);MCZP(例えば、MaCabZrc(PO4)d);MGPS(例えば、M10GeP2S12などのMaGebPcSd);MGPSO(例えば、MaGebPcSdOe);MSiPS(例えば、M10SiP2S12などのMaSibPcSd);MSiPSO(例えば、MaSibPcSdOe);MSnPS(例えば、M10SnP2S12などのMaSnbPcSd);MSnPSO(例えば、MaSnbPcSdOe);MPS(例えば、M7P3S11などのMaPbSc);MPSO(例えば、MaPbScOd);MZPS(例えば、MaZnbPcSd);MZPSO(例えば、MaZnbPcSdOe);xM2S-yP2S5;xM2S-yP2S5-zMX;xM2S-yP2S5-zP2O5;xM2S-yP2S5-zP2O5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5;xM2S-yM2O-zP2S5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5-vMX;xM2S-ySiS2;MPSX(例えば、M7P3S11X、M7P2S8X、およびM6PS5X(Li6PS5Clなど)などのMaPbScXd);MPSOX(例えば、MaPbScOdXe);MGPSX(例えば、MaGebPcSdXe);MGPSOX(例えば、MaGebPcSdOeXf);MSiPSX(例えば、MaSibPcSdXe);MSiPSOX(例えば、MaSibPcSdOeXf);MSnPSX(例えば、MaSnbPcSdXe);MSnPSOX(例えば、MaSnbPcSdOeXf);MZPSX(例えば、MaZnbPcSdXe);MZPSOX(例えば、MaZnbPcSdOeXf);M3OX;M2HOX;M3PO4;M3PS4;およびMaPObNc(式中、a=2b+3c-5である);
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の無機化合物が挙げられる。
【0082】
例えば、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。目的の変形によれば、Mは、Liを含み、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Baの組合せの少なくとも1種、またはそれらの少なくとも2種をさらに含んでいてもよい。目的の変形によれば、Mは、Na、K、Mg、またはそれらの少なくとも2種の組合せを含む。
【0083】
例えば、添加剤は、電極材料中に存在する場合、硫化物系セラミック粒子、例えば、式Li6PS5X(式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである)のアルジロダイト型セラミック粒子であってもよい。目的の変形によれば、添加剤は、アルジロダイトLi6PS5Clである。
【0084】
別の例によれば、本明細書に定義される電極材料は、バインダーをさらに含む。例えば、バインダーは、電気化学セルのさまざまな要素とのその適合性のために選択される。任意の公知の適合性バインダーが企図される。例えば、バインダーは、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリエステル型のポリマーバインダー、フッ素化ポリマー、および水溶性バインダーから選択されてもよい。ある例によれば、バインダーは、フッ素化ポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。別の例によれば、バインダーは、水溶性バインダー、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR(HNBR)、エピクロロヒドリンゴム(CHR)、またはアクリル酸ゴム(ACM)であり、必要に応じて、増粘剤、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、またはポリマー、例えば、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、もしくはそれらの少なくとも2種の組合せを含む。別の例によれば、バインダーは、ポリエーテル型のポリマーバインダーである。例えば、ポリエーテル型のポリマーバインダーは、線状、分枝状および/または架橋されたものであり、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、またはその2つの組合せ(EO/POコポリマーなど)系であり、必要に応じて、架橋可能単位を含む。例えば、ポリマーの架橋可能なセグメントは、照射または熱処理によって複数次元で架橋可能である少なくとも1個の官能基を含むポリマーセグメントであり得る。
【0085】
目的の変形によれば、バインダーは、電極材料中に存在する場合、ポリブタジエン系ポリマーと、式II:
【化2】
(式中、
R
1およびR
2は、それぞれの出現において独立して、水素原子、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SO
3H)、ヒドロキシル基(-OH)、フッ素原子、および塩素原子から選択される)
の化合物の重合に由来するノルボルネン系モノマー単位を含むポリマーとを含む、ブレンドを含んでいてもよい。
【0086】
ある例によれば、R1またはR2の少なくとも1つは、-COOH、-SO3H、-OH、-F、および-Clから選択され、これは、R1またはR2の少なくとも1つは、水素原子とは異なることを意味する。
【0087】
別の例によれば、R1は、-COOH基であり、R2は、水素原子である。
【0088】
別の例によれば、R1またはR2の少なくとも1つは、-COOH基であり、ノルボルネン系モノマー単位は、カルボン酸官能化ノルボルネン系モノマー単位である。目的の変形によれば、R1は-COOH基であり、R2は水素原子である。目的の別の変形によれば、R1およびR2は、両方とも-COOH基である。
【0089】
目的の別の変形によれば、バインダーは、電極材料中に存在する場合、ポリブタジエン系ポリマー、および式III:
【化3】
(式中、
R
1およびR
2は、上記に定義された通りであり、nは、式IIIのポリマーの質量平均分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、上限および下限を含めて約10000g/mol~約100000g/molであるように選択される整数である)
のポリマーを含む、ブレンドを含んでいてもよい。
【0090】
別の例によれば、式IIIのポリマーの質量平均分子量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて、約12000g/mol~約85000g/mol、または約15000g/mol~約75000g/mol、または約20000g/mol~約65000g/mol、または約25000g/mol~約55000g/mol、または約25000g/mol~約50000g/molである。
【0091】
目的の変形によれば、R1およびR2は、-COOH基である。
【0092】
ある例によれば、ポリマーは、式III(a):
【化4】
(式中、
R
2およびnは、上記に定義された通りである)
のポリマーである。
【0093】
別の例によれば、ポリマーは、式III(b):
【化5】
(式中、
nは、上記に定義された通りである)
のポリマーである。
【0094】
別の例によれば、式IIのノルボルネン系ポリマー、または式III、III(a)、もしくはIII(b)のポリマーは、ホモポリマーである。
【0095】
別の例によれば、式IIのノルボルネン系モノマーの重合は、任意の公知の適合する重合法によって行われ得る。目的の変形によれば、式IIの化合物の重合は、Commarieu,Bら(Commarieu, Basile, et al. "Ultrahigh Tg Epoxy Thermosets Based on Insertion Polynorbornenes", Macromolecules, 49.3 (2016): 920-925)に記載されている合成プロセスによって行われてもよい。例えば、式IIの化合物の重合はまた、付加重合プロセスによって行われてもよい。
【0096】
例えば、付加重合プロセスによって生成されたノルボルネン系ポリマーは、厳しい条件(例えば、酸性および塩基性条件)下で実質的に安定である。ノルボルネン系ポリマーの付加重合は、安価なノルボルネン系モノマーを使用して行われ得る。この重合経路によって生成するノルボルネン系ポリマーにより得られるガラス転移温度(Tg)は、約300℃に等しいか、またはそれよりも高く、例えば、350℃程度の高さであってもよい。
【0097】
別の例によれば、ポリブタジエン系ポリマーは、式III、III(a)、またはIII(b)のノルボルネン系ポリマーのものよりも実質的に高い弾性もしくは柔軟性、および/またはそれよりも実質的に低いガラス転移温度(Tg)によって特徴付けられ得る。
【0098】
別の例によれば、ポリブタジエン系ポリマーは、ポリブタジエンであってもよい。あるいは、ポリブタジエン系ポリマーは、官能化ポリブタジエンまたはポリブタジエン由来ポリマーであってもよい。例えば、非官能化ポリブタジエンと比較して、官能化ポリブタジエンまたはポリブタジエン由来ポリマーは、実質的により高い弾性もしくは柔軟性、および/または実質的により低いガラス転移温度(Tg)によって特徴付けられてもよく、ならびに/あるいは電極バインダーの機械的性質または接着性を改善してもよい。
【0099】
別の例によれば、ポリブタジエン系ポリマーは、エポキシ化ポリブタジエン、例えば、反応性末端基を有するエポキシ化ポリブタジエンから選択される。例えば、反応性末端基は、ヒドロキシル基であってもよい。エポキシ化ポリブタジエンは、式IV、VおよびVI:
【化6】
の繰り返し単位、ならびに2つのヒドロキシル末端基を含んでいてもよい。
【0100】
別の例によれば、式IV、VおよびVIの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて約1000g/mol~約1500g/molであってもよい。
【0101】
別の例によれば、式IV、VおよびVIの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエンのエポキシド等価重量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて約100g/mol~約600g/molである。エポキシド等価重量は、1molのエポキシド官能基を含有する樹脂の質量に対応する。
【0102】
目的の変形によれば、エポキシ化ポリブタジエンは、式VII:
【化7】
(式中、
mは、式VIIのエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量が、GPCによって決定して、上限および下限を含めて約1000g/mol~約1500g/molであるように選択される整数である)
のものであり、
エポキシド等価重量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて約100g/mol~約600g/molである。
【0103】
別の例によれば、式IV、VおよびVIの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエン、または式VIIのエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて、約1050g/mol~約1450g/mol、または約1100g/mol~約1400g/mol、または約1150g/mol~約1350g/mol、または約1200g/mol~約1350g/mol、または約1250g/mol~約1350g/molである。目的の変形によれば、式IV、VおよびVIの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエンまたは式VIIのエポキシ化ポリブタジエンの質量平均分子量は、GPCによって決定して約1300g/molである。
【0104】
別の例によれば、式IV、VおよびVIの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエンまたは式VIIのエポキシ化ポリブタジエンのエポキシド等価重量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて、約150g/mol~約550g/mol、または約200g/mol~約550g/mol、または約210g/mol~約550g/mol、または約260g/mol~約500g/molである。目的の変形によれば、式IV、VおよびVIの繰り返し単位を含むエポキシ化ポリブタジエンまたは式VIIのエポキシ化ポリブタジエンのエポキシド等価重量は、GPCによって決定して、上限および下限を含めて、約400g/mol~約500g/mol、または約260g/mol~約330g/molである。
【0105】
例えば、式VIIのエポキシ化ポリブタジエンは、Cray Valleyによって販売されているPoly bd(商標)600Eまたは605E型の市販のヒドロキシル末端エポキシ化ポリブタジエン樹脂である。これらの樹脂の物理化学的性質を表1に提示する。
【表1】
【0106】
電極バインダーが、少なくとも1種の第1のポリマーおよび少なくとも1種の第2のポリマーを含むポリマーブレンドを含むことが理解される。第1のポリマーは、ポリブタジエン系ポリマーであり、第2のポリマーは、式IIの化合物の重合に由来するノルボルネン系モノマー単位を含むポリマー、または式III、III(a)、もしくはIII(b)のポリマーである。
【0107】
別の例によれば、「第1のポリマー:第2のポリマー」比は、上限および下限を含めて、約6:1~約2:3の範囲内である。例えば、「第1のポリマー:第2のポリマー」比は、上限および下限を含めて、約5.5:1~約2:3、または約5:1~約2:3、または約4.5:1~約2:3、または約4:1~約2:3、または約6:1~約1:1、または約5.5:1~約1:1、または約5:1~約1:1、または約4.5:1~約1:1、または約4:1~約1:1の範囲内である。目的の変形によれば、「第1のポリマー:第2のポリマー」比は、上限および下限を含めて、約4:1~約1:1の範囲内である。
【0108】
本技術は、本明細書に定義される電極材料を含む電極にも関する。ある例によれば、電極は、集電体(例えば、アルミニウム箔または銅箔)上にあってもよい。あるいは、電極は、自立電極であってもよい。
【0109】
本技術は、本明細書に定義される被覆された粒子を含む電解質であって、被覆された粒子のコアがイオン伝導性無機材料を含む、電解質にも関する。
【0110】
ある例によれば、電解質は、電気化学セルのさまざまな要素とのその適合性のために選択されてもよい。適合性のある任意の種類の電解質が企図される。ある例によれば、電解質は、溶媒中に塩を含む液体電解質である。ある代替によれば、電解質は、溶媒および必要に応じて溶媒和ポリマー中に塩を含むゲル電解質である。別の代替によれば、電解質は、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である。別の代替によれば、電解質は無機固体電解質材料を含み、例えば、電解質はセラミック型固体電解質であってもよい。別の代替によれば、電解質は、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質である。
【0111】
別の例によれば、無機イオン伝導性材料は、無機イオン伝導性材料のガラス、ガラス-セラミック、セラミック、ナノセラミック、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。
【0112】
別の例によれば、イオン伝導性無機材料は、結晶形態および/または非晶質形態の、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミックを含む。例えば、セラミック、ガラス、またはガラス-セラミック粒子は、フッ化物、リン化物、硫化物、オキシ硫化物、酸化物系、またはそれらの組合せであってもよい。別の例によれば、イオン伝導性無機材料は、結晶形態および/または非晶質形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト型化合物、酸化物、硫化物、オキシ硫化物、リン化物、フッ化物、およびそれらの少なくとも2種の組合せから選択される。
【0113】
別の例によれば、イオン伝導性無機材料は、式MLZO(例えば、M7La3Zr2O12、M(7-a)La3Zr2AlbO12、M(7-a)La3Zr2GabO12、M(7-a)La3Zr(2-b)TabO12、およびM(7-a)La3Zr(2-b)NbbO12);MLTaO(例えば、M7La3Ta2O12、M5La3Ta2O12、およびM6La3Ta1.5Y0.5O12);MLSnO(例えば、M7La3Sn2O12);MAGP(例えば、M1+aAlaGe2-a(PO4)3);MATP(例えば、M1+aAlaTi2-a(PO4)3);MLTiO(例えば、M3aLa(2/3-a)TiO3);MZP(例えば、MaZrb(PO4)c);MCZP(例えば、MaCabZrc(PO4)d);MGPS(例えば、M10GeP2S12などのMaGebPcSd);MGPSO(例えば、MaGebPcSdOe);MSiPS(例えば、M10SiP2S12などのMaSibPcSd);MSiPSO(例えば、MaSibPcSdOe);MSnPS(例えば、M10SnP2S12などのMaSnbPcSd);MSnPSO(例えば、MaSnbPcSdOe);MPS(例えば、M7P3S11などのMaPbSc);MPSO(例えば、MaPbScOd);MZPS(例えば、MaZnbPcSd);MZPSO(例えば、MaZnbPcSdOe);xM2S-yP2S5;xM2S-yP2S5-zMX;xM2S-yP2S5-zP2O5;xM2S-yP2S5-zP2O5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5;xM2S-yM2O-zP2S5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5-vMX;xM2S-ySiS2;MPSX(例えば、M7P3S11X、M7P2S8X、およびM6PS5XなどのMaPbScXd);MPSOX(例えば、MaPbScOdXe);MGPSX(例えば、MaGebPcSdXe);MGPSOX(例えば、MaGebPcSdOeXf);MSiPSX(例えば、MaSibPcSdXe);MSiPSOX(例えば、MaSibPcSdOeXf);MSnPSX(例えば、MaSnbPcSdXe);MSnPSOX(例えば、MaSnbPcSdOeXf);MZPSX(例えば、MaZnbPcSdXe);MZPSOX(例えば、MaZnbPcSdOeXf);M3OX;M2HOX;M3PO4;M3PS4;およびMaPObNc(式中、a=2b+3c-5である);
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはそれらの組合せであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合、Mの数は、電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは、ゼロ以外の数であり、それぞれの式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の無機化合物から選択される。
【0114】
目的の変形によれば、イオン伝導性無機材料は、式Li6PS5X(式中、Xは、Cl、Br、I、またはそれらの少なくとも2種の組合せである)のアルジロダイト型無機化合物から選択される。例えば、イオン伝導性無機材料はLi6PS5Clである。
【0115】
別の例によれば、塩は、電解質中に存在する場合、イオン性塩、例えばリチウム塩であってもよい。リチウム塩の非限定的な例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、ジフルオロリン酸リチウム(LiDFP)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO3)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)(LiOTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF3(CF2CF3)3](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF3)4](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C6O2)2](LiBBB)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF2(C2O4))(LiFOB)、式LiBF2O4Rx(式中、Rx=C2~4アルキルである)の塩、およびそれらの少なくとも2種の組合せが挙げられる。
【0116】
別の例によれば、溶媒は、電解質中に存在する場合、非水性溶媒であってもよい。溶媒の非限定的な例としては、環状カーボネート、例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、および炭酸ビニレン(VC);非環状カーボネート、例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、および炭酸ジプロピル(DPC);ラクトン、例えば、γ-ブチロラクトン(γ-BL)およびγ-バレロラクトン(γ-VL);非環状エーテル、例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、トリメトキシメタン、およびエチルモノグリム;環状エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、およびジオキソラン誘導体;ならびに他の溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、リン酸トリエステル、スルホラン、メチルスルホラン、炭酸プロピレン誘導体、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0117】
別の例によれば、電解質は、ゲル電解質またはゲルポリマー電解質である。ゲルポリマー電解質は、例えば、ポリマー前駆体および塩(例えば、前に定義された塩)、溶媒(例えば、前に定義された溶媒)、ならびに必要により、重合および/または架橋開始剤を含んでいてもよい。ゲル電解質の例としては、限定されないが、WO2009/111860号(Zaghibら)およびWO2004/068610号(Zaghibら)で公開されたPCT特許出願に記載されているものなどのゲル電解質が挙げられる。
【0118】
別の例によれば、上記に定義されたゲル電解質または液体電解質はまた、セパレーター、例えばポリマーセパレーターに含浸されていてもよい。セパレーターの例としては、限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン(PP/PE/PP)セパレーターが挙げられる。例えば、セパレーターは、Celgard(商標)型の市販のポリマーセパレーターである。
【0119】
別の例によれば、電解質は、固体ポリマー電解質である。例えば、固体ポリマー電解質は、任意の公知の固体ポリマー電解質から選択されてもよく、電気化学セルのさまざまな成分とのその適合性のために選択されてもよい。固体ポリマー電解質は、一般に、塩、および必要に応じて架橋される1種または複数種の固体極性ポリマーを含む。ポリエチレンオキシド(POE)系のものなどのポリエーテル型ポリマーが使用されてもよいが、いくつかの他の適合性ポリマーも、固体ポリマー電解質の調製のために公知であり、これも企図される。ポリマーは、架橋されていてもよい。そのようなポリマーの例としては、WO2003/063287号(Zaghibら)で公開されたPCT特許出願に記載されているものなどの分枝状ポリマー、例えば、星形ポリマーまたはくし形ポリマーが挙げられる。
【0120】
別の例によれば、固体ポリマー電解質は、少なくとも1種のリチウムイオンを溶媒和するセグメント、および必要に応じて少なくとも1種の架橋可能セグメントから構成されるブロックコポリマーを含み得る。好ましくは、リチウムイオン溶媒和セグメントは、式VIII:
【化8】
(式中、
Rは、水素原子、およびC
1~C
10アルキル基または-(CH
2-O-R
aR
b)基から選択され;
R
aは、(CH
2-CH
2-O)
yであり;
R
bは、水素原子およびC
1~C
10アルキル基から選択され;
xは、10~200000の範囲から選択される整数であり;
yは、0~10の範囲から選択される整数である)
の繰り返し単位を有するホモポリマーまたはコポリマーから選択される。
【0121】
別の例によれば、コポリマーの架橋可能セグメントは、照射または熱処理によって複数次元で架橋可能である少なくとも1個の官能基を含むポリマーセグメントである。
【0122】
電解質が、液体電解質、ゲル電解質または固体ポリマー電解質である場合、本明細書に定義される被覆された粒子は、電解質中に添加剤として存在してもよい。
【0123】
電解質が、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質またはセラミック型固体電解質である場合、本明細書に定義される被覆された粒子は、無機固体電解質(セラミック)材料として存在してもよい。
【0124】
別の例によれば、電解質はまた、必要に応じて、追加成分、例えば、上記で定義されたイオン伝導性材料、無機粒子、ガラスまたはセラミック粒子、および同じ種類の他の添加剤を含んでいてもよい。別の例によれば、追加成分は、WO2018/116529号(Asakawaら)で公開されたPCT特許出願に記載されているものなどのジカルボニル化合物であってもよい。例えば、追加成分は、ポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸)(PEMA)であってもよい。追加成分は、電気化学セルのさまざまな要素とのその適合性のために選択されてもよい。ある例によれば、追加成分は、電解質中に実質的に分散されていてもよい。あるいは、追加成分は、別々の層中に存在してもよい。
【0125】
本技術は、本明細書に定義される被覆された粒子を含む集電体のための被覆材料であって、被覆された粒子のコアが電子伝導性材料を含む、被覆材料にも関する。例えば、被覆された粒子は、金属集電体箔(例えば、アルミニウム箔または銅箔)上に適用され得る被覆された伝導性炭素粒子であってもよい。金属箔上に適用される被覆材料を含む集電体も企図される。
【0126】
本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、正極または負極の少なくとも1つが、本明細書に定義される通りであるか、または本明細書に定義される電極材料を含む、電気化学セルにも関する。
【0127】
目的の変形によれば、負極は、本明細書に定義される通りであるか、または本明細書に定義される電極材料を含む。例えば、電気化学的負極材料は、本明細書に定義される電気化学セルのさまざまな要素とのその電気化学的適合性のために選択されてもよい。例えば、負極材料の電気化学的活性材料は、正極の電気化学的活性材料のものよりも実質的に低い酸化還元電位を有していてもよい。
【0128】
目的の別の変形によれば、正極は、本明細書に定義される通りであるか、または本明細書に定義される電極材料を含み、負極は、すべての公知の適合性の電気化学的活性材料から選択される電気化学的活性材料を含む。例えば、負極の電気化学的活性材料は、本明細書に定義される電気化学セルのさまざまな要素とのその電気化学的適合性のために選択されてもよい。負極の電気化学的活性材料の非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属(例えば、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、およびビスマス(Bi))を含む合金、ならびに金属間合金または金属間化合物(例えば、SnSb、TiSnSb、Cu2Sb、AlSb、FeSb2、FeSn2、およびCoSn2)が挙げられる。例えば、負極の電気化学的活性材料は、上限および下限を含めて、約5μm~約500μmの範囲内、好ましくは約10μm~約100μmの範囲内の厚さを有するフィルムの形態であってもよい。目的の変形によれば、負極の電気化学的活性材料は、金属リチウムまたは金属リチウムを含む合金もしくは金属リチウム系合金のフィルムを含んでいてもよい。
【0129】
別の例によれば、正極は、予めリチウム化されていてもよく、負極は、最初に(すなわち、電気化学セルのサイクリングの前に)、実質的にまたは完全にリチウムを含んでいなくてもよい。負極は、前記電気化学セルのサイクリングの間に、特に最初の充電の間に、その場でリチウム化されてもよい。ある例によれば、金属リチウムは、電気化学セルのサイクリングの間に、特に最初の充電の間に、その場で集電体(例えば、銅集電体)上に配置されてもよい。別の例によれば、金属リチウムを含む合金は、電気化学セルのサイクリングの間に、特に最初の充電の間に、集電体(例えば、アルミニウム集電体)の表面で発生してもよい。負極は、電気化学セルのサイクリングの間に、特に最初の充電の間に、その場で発生してもよいことが理解される。
【0130】
目的の別の変形によれば、正極および負極は、両方とも本明細書に定義される通りであるか、または両方とも本明細書に定義される電極材料を含む。
【0131】
本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、電解質が、本明細書に定義される通りである、電気化学セルにも関する。
【0132】
本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、正極および負極の少なくとも1つが、本明細書に定義される集電体上にあるか、または本明細書に定義される被覆材料を含む、電気化学セルにも関する。
【0133】
本技術は、本明細書に定義される少なくとも1種の電気化学セルを含むバッテリーにも関する。例えば、バッテリーは、一次バッテリー(セル)または二次バッテリー(蓄電池)であり得る。ある例によれば、バッテリーは、リチウムバッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、ナトリウムイオンバッテリー、マグネシウムバッテリー、マグネシウムイオンバッテリー、カリウムバッテリー、およびカリウムイオンバッテリーからなる群から選択される。目的の変形によれば、バッテリーは、全固体バッテリーである。
【0134】
別の例によれば、被覆材料は、分散液中の粒子凝集体の数およびサイズの実質的な低減を可能にし得る。例えば、被覆材料は、電子伝導性材料またはセラミック型電解質材料の粒子の凝集体の数およびサイズの実質的な低減を可能にする。理論に縛られることを望まないが、例えば、被覆材料に関連する反発相互作用は、分散液中の正極成分のより良好な分散を可能にし得、これは、この種類の相互作用を可能にする他の成分を改変するまたは改変しないことによってであり得る。例えば、反発相互作用は、π-πおよび/または極性型相互作用であってもよい。
【0135】
別の例によれば、被覆材料はまた、電気化学セルの他の成分との寄生反応を実質的に制限し得、このようにして、電気化学セルのサイクリングおよびエージング安定性を改善し得る。
【0136】
別の例によれば、被覆材料はまた、電荷移動に対する抵抗性を実質的に制限し得、被覆材料中に存在する二重または三重結合のおかげで、イオン伝導性および/または電子伝導性を実質的に改善するのを可能にし得る。理論に縛られることを望まないが、本明細書に定義される被覆材料のπ軌道は、軌道の非局在化、ならびにこのようにしてイオンおよび/または電子との軌道相互作用を可能にし得る。
【0137】
別の例によれば、被覆材料はまた、例えば、ガスの発生を低減することによって、電気化学セルの安全性を実質的に改善し得る。例えば、硫化物系セラミック電解質材料粒子に適用される場合、被覆は、水分または周囲空気への被覆材料の曝露によって発生する硫化水素(H2S)の量を実質的に低減し得る。
【0138】
ある例によれば、被覆材料は、ガス分子(例えば、H2S)の捕捉を可能にするおよび/または湿気の導入を低減するためにバリアを形成してH2Sの形成を低減することを可能にする、有機化合物または分子も含み得る。
【実施例】
【0139】
以下の実施例は例示目的のものであり、企図される本発明の範囲をさらに限定するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図面を参照することによって、より良好に理解される。
(実施例1)
式Li6PS5Clのアルジロダイト型セラミック粒子の調製
【0140】
Li6PS5Cl粒子の被覆を、湿式粒子粉砕プロセスによって行った。
【0141】
Li6PS5Cl粒子の被覆を、PULVERISETTE(商標)7遊星マイクロミルを使用して行った。4gのLi6PS5Cl粒子を、80mlの酸化ジルコニウム(またはジルコニア)粉砕ジャーに入れた。20mlの無水デカンおよび7mlのスクアレンを含む混合物(体積で75:25)、ならびに2mmの直径を有する粉砕ビーズを、ジャーに添加した。Li6PS5Cl粒子ならびにデカンおよびスクアレンの混合物を、約300rpmの速度で約7.5時間粉砕することによって混ぜ合わせて、デカンおよびスクアレンの混合物で被覆されたLi6PS5Cl粒子を生成した。次いで、得られた粒子を、約80℃の温度で、真空下乾燥させた。
【0142】
同じ被覆プロセスを、(i)デカン、(ii)デカンおよびスクアレンの混合物(体積で90:10)、(iii)デカンおよびファルネセンの混合物(体積で85:15)、ならびに(iV)デカン、ファルネセンおよびスクアレンの混合物(体積で85:7.5:7.5)を用いて行った。
(実施例2)
改変電子伝導性材料の調製
a)デカンおよびスクアレンの混合物(体積で75:25)による電子伝導性粒子の被覆
【0143】
実施例1に記載された被覆プロセスを使用して、電子伝導性材料を被覆する。より具体的には、湿式粒子製粉プロセスを使用して、デカンおよびスクアレンの混合物(体積で75:25)を含む被覆材料でカーボンブラックを被覆する。
b)少なくとも1個の式Iのアリール基による電子伝導性材料の粒子のグラフト化
【0144】
電子伝導性材料の生成のための以下のプロセスを、カーボンブラックに適用した。
【0145】
5gのカーボンブラックを、200mlの0.5M硫酸(H2SO4)水溶液に分散させ、次いで親水性置換基(-SO3H、これはその後水素をリチウムで交換するためにリチウム化された)でp置換された0.01当量のアニリンを混合物に添加した(すなわち、カーボンブラックに対して0.01当量のアニリン)。次いで、混合物を、アミンが完全に溶解するまで、激しく撹拌した。
【0146】
カーボンブラックに対して0.03当量の亜硝酸ナトリウム(NaNO2)(例えば、アニリンに対して3当量のNaNO2)の添加後、対応するアリールジアゾニウムイオンを、その場で発生させ、カーボンブラックと反応させた。このようにして得られた混合物を、室温で終夜、そのまま反応させた。
【0147】
反応が終了したら、混合物を、真空濾過アセンブリー(ブフナー型)および0.22μmの細孔サイズを有するナイロンフィルターを使用して、真空下で濾過した。次いで、このようにして得られた改変カーボンブラック粉末を、中性pHに達するまで脱イオン水で、次いでアセトンで、連続的に洗浄した。最後に、改変カーボンブラック粉末を、次いで、使用前に少なくとも1日間、100℃で、真空下乾燥させた。
(実施例3)
被覆された粒子のキャラクタリゼーション
a)走査型電子顕微鏡法(SEM)
【0148】
実施例1において調製されたデカンおよびスクアレンの混合物(体積で75:25)で被覆されたLi6PS5Cl粒子を、SEM画像化によってキャラクタリゼーションした。
【0149】
図1は、(A)において、粉砕および被覆するステップの前のLi
6PS
5Cl粒子のSEMによって得られた画像、ならびに(B)において、実施例1において調製されたデカンおよびスクアレンの混合物(体積で75:25)で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子のSEMによって得られた画像を示す。スケールバーは、20μmを表す。
【0150】
図1(B)により、Li
6PS
5Cl粒子のサイズの低減、およびそれら上の被覆の存在が確認され、被覆後の前記粒子のいかなる凝集も示さない。
b)熱重量分析(TGA)
【0151】
実施例1において調製されたスクアレンで被覆されたLi6PS5Cl粒子を、TGA画像化によってキャラクタリゼーションした。
【0152】
スクアレン(菱形;曲線1)および実施例1において調製されたスクアレンで被覆されたLi
6PS
5Cl粒子(丸;曲線2)の熱重量曲線を
図2に提示する。熱重量分析を、10℃/分の温度加熱速度で行った。
図2は、熱分解の開始を観察することができる温度である約254℃まで、スクアレンが安定なままであることを示す。
図2は、同様の温度で、スクアレンで被覆されたLi
6PS
5Cl粒子を含む試料についての質量変動も示す。実際に、粒子の表面に吸着されたスクアレンの熱蒸発の兆候に対応する約233℃の温度で開始する質量の喪失を観察することが可能である。遊離の純粋なスクアレンとは異なって、粒子の被覆を構成するスクアレンは薄層に吸着されているという事実に起因して、温度のわずかな相違を観察することができる。
図2により、Li
6PS
5Cl粒子上のスクアレン被覆の存在が確認される。
c)核磁気共鳴(NMR)
【0153】
プロトンおよび炭素核磁気共鳴スペクトル(1Hおよび13C NMR)を、15kHzの最大マジック角回転速度で、4mmの三重共鳴プローブを備えたBruker Avance(商標)NEO 500MHz分光計を使用して、MAS(マジック角回転)技法を使用して得た。
【0154】
図3は、実施例1において調製され、約80℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた、デカンおよびスクアレンの混合物(体積で75:25)で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子について両方とも得られた、(A)において
1H NMRスペクトル、(B)において
13C NMRスペクトルを示す。
【0155】
図3(A)において提示された、
1H NMRシグナルならびに
1Hおよび
13C NMRスペクトルのこれらのシグナルの積分値(赤色)により、約80℃の温度での乾燥するステップ後でさえ、スクアレンの存在が確認される。
【0156】
図3(B)に示される
13C NMRシグナルの帰属を、Namら(Nam, A.M., et al. "Quantification of squalene in olive oil using
13C nuclear magnetic resonance spectroscopy", Magnetochemistry 3.4 (2017): 34)によって報告されたデータに基づいて行った。これらのシグナルは、その構造の改変なしで粒子の表面のスクアレンの存在を確認する。
【0157】
図4は、実施例1において調製され、約80℃の温度で約5時間、真空下で乾燥させた、デカンおよびファルネセンの混合物(体積で85:15)で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子について得られた、
1H NMRスペクトルを提示する。
図4は、純粋なファルネセンについて得られた
1H NMRスペクトルも提示する。
【0158】
デカンおよびファルネセンの混合物(体積で85:15)で被覆されたLi6PS5Cl粒子について得られたスペクトルを純粋なファルネセンについて得られたスペクトルと比較することによって、粒子の表面のファルネセンの存在を確認することが可能であり、これは、その構造の改変はされていない。
【0159】
図5は、実施例1において調製され、約80℃の温度で約5時間真空下で乾燥させた、デカン、スクアレンおよびファルネセンの混合物(体積で85:7.5:7.5)で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子について得られた、
1H NMRスペクトルを提示する。
図5は、純粋なファルネセンおよびスクアレンについて得られた
1H NMRスペクトルも提示する。
【0160】
デカン、スクアレンおよびファルネセンの混合物で被覆されたLi6PS5Cl粒子について得られたスペクトルを純粋なファルネセンおよびスクアレンについて得られたスペクトルと比較することによって、粒子の表面のスクアレンおよびファルネセンの存在を、それらの構造の改変なしで確認することが可能である。
【0161】
そのため、粒子の表面を異なる不飽和脂肪族炭化水素で被覆することが可能であり、これは、その構造の改変はされていない。
(実施例4)
正極フィルムの調製およびキャラクタリゼーション
a)正極フィルムの調製
【0162】
約4μmの平均直径を有する市販起源由来のLiNbO3型酸化物で被覆された1.55gのLiNi0.6Mn0.2Co0.2O2(NMC 622)粒子を、乾燥粉末の混合物を形成するために、約200nmの平均直径を有する実施例1において調製された0.40gのLi6PS5Cl粒子および0.5gのカーボンブラックまたは改変カーボンブラックと混合した。乾燥粉末を、ボルテックスミキサーを使用して約10分間混合した。ポリマー溶液を、0.04gのポリブタジエンおよび0.01gのポリノルボルネンを0.94gのテトラヒドロフランに溶解することによって、別途調製した。
【0163】
ポリマー溶液を、乾燥粉末混合物に添加した。このようにして得られた混合物を、自転公転ミキサー(Thinky Mixer)を使用して、約5分間混合した。追加の溶媒のメトキシベンゼンを、混合物に添加して、約10000cPの最適な被覆粘度を達成した。このようにして得られた懸濁液を、ドクターブレード被覆法を使用して、アルミニウム箔に被覆して、集電体上に適用された正極フィルムを得た。次いで、正極フィルムを約120℃の温度で約5時間、真空下で乾燥させた。
【0164】
添加剤として被覆されていないLi6PS5Cl粒子を有する正極フィルムも、本実施例のプロセスによって、比較のために得た。
【0165】
アルミニウム箔はまた、未改変炭素被覆アルミニウム箔、または本明細書に定義される被覆材料で被覆された炭素被覆アルミニウム箔であり得る。
【0166】
正極フィルムの組成を表2に提示する。
【表2】
*SQ:スクアレン;FN:ファルネセン。
**PB:ポリブタジエン;PNB:ポリノルボルネン。
b)実施例4(a)において調製された正極フィルムのキャラクタリゼーション
【0167】
異なる正極フィルムの形態学的研究を、エネルギー分散X線分光分析(EDS)検出器を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して行った。
【0168】
図6は、(A)および(B)において、実施例4(a)において調製されたフィルム1および2について、それぞれ、SEMによって得られた画像、ならびに得られたマッピングによる元素(NiおよびS)の分布の分析を可能にする、EDSによる元素微量分析によって得られた画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。
【0169】
図6(A)において、被覆されていないLi
6PS
5Cl粒子を含む参照正極フィルム(フィルム1)の断面における硫化物凝集体の存在を観察することが可能である。これと比較して、
図6(B)により、デカン:スクアレン混合物(体積で75:25)で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子を含むフィルム2の断面を分析した際の、これらの凝集体の非存在が確認される。
【0170】
そのため、少なくとも1個の二重または三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素によるLi6PS5Cl粒子の被覆は、それらの良好な分散、および凝集体の非存在を可能にする。
【0171】
図7は、(A)において、フィルム3についてSEMによって得られた画像およびこの画像の拡大図、ならびに(B)において、フィルム4についてSEMによって得られた画像およびこの画像の拡大図を示す。SEM画像およびそれらの拡大図のスケールバーは、それぞれ、300μmおよび100μmを表す。
【0172】
図7(A)において、デカンで被覆されたLi
6PS
5Cl粒子を含む参照正極フィルムから構成されたフィルム3の断面における炭素凝集体の存在を観察することが可能である。これらの炭素凝集体の存在は、特に電子浸透の観点から、電気化学的性能、したがって安定性およびサイクリング性能の低減を引き起こしかねない。これと比較して、
図7(B)により、デカン:スクアレンの混合物(体積で75:25)で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子を含むフィルム4の表面のこれらの凝集体の非存在が確認される。
【0173】
このように、極性基による電子伝導性材料の表面の改変と組み合わせた、少なくとも1個の二重または三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素によるイオン伝導性無機粒子の被覆は、これらの2種類の粒子の反発を可能にし、このようにして、フィルムの厚さおよび表面における組成物の良好な分散および均一性を確保する。
(実施例5)
電気化学的性質
【0174】
実施例4(a)において調製された正極フィルムの電気化学的性質を研究した。
a)電気化学セルの構成
【0175】
電気化学セルを、以下の手順に従って組み立てた。
【0176】
直径10mmのペレットを、実施例4(a)において調製された正極フィルムから取った。硫化物セラミック型無機固体電解質を、正極フィルムペレットの表面に80mgのLi
6PS
5Cl硫化物セラミックを置くことによって調製した。次いで、無機固体電解質層を備えた正極フィルムペレットを、プレスを使用して、2.8トンの圧力下で圧縮した。次いで、それらを、グローブボックス内で、アルミニウムおよび銅の集電体上に、直径10mmの金属リチウム電極が面するようにしてCR2032型ボタン電池ケースに組み立てた。電気化学セルを、表3に提示される構成に従って組み立てた。
【表3】
b)正極フィルムの挙動
【0177】
この実施例は、実施例5(a)に記載された電気化学セルの電気化学的挙動を示す。
【0178】
実施例5(a)において組み立てられた電気化学セルを、50℃の温度で、Li/Li+に対して4.3Vと2.5Vとの間でサイクルした。形成サイクルを、C/15の一定の充電および放電電流で行った。次いで、4サイクルを、C/10の一定の充電および放電電流で、それに続いて4サイクルを、C/5の一定の充電および放電電流で行った。最後に、エージング実験を、C/3の一定の充電および放電電流で行った。
【0179】
図8は、実施例3(a)に記載されたセル1(三角形)およびセル2(四角形)について、(A)において、サイクル数の関数としての放電容量(mAh/g)およびクーロン効率(%)のグラフ、ならびに(B)において、サイクル数の関数としての平均充電および放電電位(V)のグラフを示す。
【0180】
サイクリング性能が、電子伝導性材料を本明細書に定義される被覆材料で被覆することによって実質的に改善されることを観察することが可能である。実際に、観察され得るように、セル2は、セル1と比較して、長いサイクリング実験の間に、改善された容量維持率を示す。このように、極性基による電子伝導性材料の表面の改変と組み合わせた、少なくとも1個の二重または三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素によるイオン伝導性無機粒子の被覆は、これらの2種類の粒子の反発を可能にし、改善されたイオンおよび電子透過を確保し、これは、改善された容量維持率およびクーロン効率、ならびに電荷移動抵抗の低減による平均電位の低下をもたらす。
【0181】
図9は、実施例3(a)に記載されたセル2(四角形)、セル3(三角形)、セル4(逆三角形)およびセル5(丸)について、(A)において、サイクル数の関数としての放電容量(mAh/g)およびクーロン効率(%)のグラフ、ならびに(B)において、サイクル数の関数としての平均充電および放電電位(V)のグラフを示す。
【0182】
観察され得るように、すべての試験されたセルのうち、改善された容量維持率が、デカンおよびスクアレンの混合物で被覆されたLi6PS5Cl粒子を含むセル2および5について得られる。
【0183】
図10は、実施例3(a)に記載されたセル2(四角形)、セル6(五角形)、およびセル7(星)について、サイクル数の関数としての放電容量(mAh/g)およびクーロン効率(%)のグラフを示す。観察され得るように、デカン、スクアレンおよびファルネセンの混合物で被覆されたLi
6PS
5Cl粒子を含むセル7は、改善されたサイクリングエージングを示す。これは、いくつかの不飽和脂肪族炭化水素の混合物による粒子の表面の被覆の実現可能性および利益を実証する。混合物中のこれらの不飽和脂肪族炭化水素の比を変えることも可能である。
(実施例6)
被覆の性質のキャラクタリゼーション
a)サイクリング後の被覆の性質のプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)によるキャラクタリゼーション
【0184】
図11は、サイクリング前(青色)およびサイクリング後(赤色)のテトラヒドロフランによるフィルム4の抽出から得られた液体試料についてのプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)分析結果を示す。
【0185】
1H NMRスペクトルを、5mmの広帯域二重共鳴プローブを備えたBruker Avance(商標)NEO NanoBay 300MHz分光計を使用して得た。使用した溶媒は、重水素化テトラヒドロフラン(THF-d8)であった。
【0186】
図11に提示される2つの拡大図により、サイクリング前後のスクアレンの存在が、160サイクル後でさえスクアレンシグナルの改変なしで確認される。したがって、本明細書に定義される被覆材料で被覆された粒子は、エージングの間に分解されず、そのため、
図9において実証されるように、エージングの間の性能の安定性を可能にする。
b)硫化水素(H
2S)発生
【0187】
安全性試験を行って、硫化水素(H2S)発生に対するLi6PS5Cl粒子を被覆する影響を評価した。デカンで被覆(破線)、デカン:スクアレン混合物(体積で85:15)で被覆(二点鎖線)、およびデカン:スクアレン混合物(体積で75:25)で被覆(実線)された約80mgのLi6PS5Cl粒子粉末を、前もって乾燥させたセル中に別々に、それぞれ置いた。
【0188】
約20℃の制御された温度および制御された湿度の大量の周囲空気をセルに導入した。発生したH
2Sガスの量を、ポータブル検出器を使用して測定した。これらの分析の結果を
図12に提示する。
図12は、時間(時間)の関数としての粉末1グラムあたりに発生したH
2Sガスの体積(mL/g)のグラフを示す。したがって、硫化物被覆は、H
2Sの発生量を著しく低減することが可能であり、電気化学システムの安全性をこのようにして改善する。
【0189】
企図される本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの改変を上に記載した実施形態のいずれかに対して行うことができる。本出願で参照される参考文献、特許または科学文献は、すべての目的で、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】