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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ナノセルロース要素を含む製造物品
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/09 20060101AFI20240625BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20240625BHJP
   D06M 13/165 20060101ALI20240625BHJP
   D06M 13/332 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
D06M15/09
D06M13/148
D06M13/165
D06M13/332
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575589
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 US2022032512
(87)【国際公開番号】W WO2022261103
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/219,686
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/309,730
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/208,577
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.スタイロフォーム
2.ケブラー
(71)【出願人】
【識別番号】523266073
【氏名又は名称】ソーン マテリアルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,デービッド,エス.
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,アリソン,ホープ
(72)【発明者】
【氏名】コルメナレス,フアン,セバスチャン
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB01
4L033BA12
4L033BA48
4L033CA05
(57)【要約】
本発明は、ナノセルロース(NC)要素の懸濁物と、温度応答性ポリマー、揮発性系における小分子添加剤およびブロッキング剤からなる群より選択される乾燥/分散性添加剤とを含む製剤、ならびにかかる製剤を調製する方法を提供し、さらにNC含有材料、複合材料およびそれらから作製される有用な製造物品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体中のナノセルロース(NC)要素の懸濁物、および
乾燥/分散性添加剤を含む液体製剤であって、乾燥/分散性添加剤が、温度応答性ポリマー、揮発性系における小分子添加剤およびブロッキング剤からなる群より選択される、液体製剤。
【請求項2】
ナノセルロース要素がリグノセルロース性材料由来である、請求項1記載の液体製剤。
【請求項3】
リグノセルロース性材料が手を触れられていないバイオマスを含む、請求項2記載の液体製剤。
【請求項4】
手を触れられていないバイオマスが専門の目的の農作物を含む、請求項3記載の液体製剤。
【請求項5】
リグノセルロース性材料が廃棄物材料を含む、請求項2記載の液体製剤。
【請求項6】
NC要素が結晶性セルロースを含む、請求項1記載の液体製剤。
【請求項7】
NC要素が、セルロースナノ繊維またはセルロースマイクロ繊維を含む、請求項1記載の液体製剤。
【請求項8】
NC要素が本質的にセルロースナノ繊維からなる、請求項7記載の液体製剤。
【請求項9】
乾燥/分散性添加剤が生分解性である、請求項1記載の液体製剤。
【請求項10】
乾燥/分散性添加剤が温度応答性ポリマーである、請求項1記載の液体製剤。
【請求項11】
温度応答性ポリマーが、低臨界溶液温度(LCST)ポリマーまたはLCSTポリマー由来の短鎖オリゴマーである、請求項10記載の液体製剤。
【請求項12】
LCSTポリマーが、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N-ジエチルアクリルアミド)、ポリ(エチレンオキサイド)およびポリ(プロピレンオキサイド)のブロックコポリマー、ならびにエラスチンポリ(ペンタペプチド)からなる群より選択される、請求項11記載の液体製剤。
【請求項13】
乾燥/分散性添加剤が揮発性系における小分子添加剤である、請求項1記載の液体製剤。
【請求項14】
小分子添加剤が非イオン性である、請求項13記載の液体製剤。
【請求項15】
小分子添加剤が、トリ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)プロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、ベンジルアルコール、1-ヘプタノールおよび1-ヘキサノールからなる群より選択される、請求項14記載の液体製剤。
【請求項16】
小分子添加剤が脂肪酸である、請求項13記載の液体製剤。
【請求項17】
小分子添加剤がカチオン性である、請求項11記載の液体製剤。
【請求項18】
小分子添加剤が、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン(pentaamine)、1,3-ペンタンジアミン、ピペラジン、1,2-シクロヘキサンジアミン、アニリン、ピリジンおよびピペラジンからなる群より選択される、請求項17記載の液体製剤。
【請求項19】
乾燥/分散性添加剤がブロッキング剤である、請求項1記載の液体製剤。
【請求項20】
ブロッキング剤が不揮発性化学添加剤である、請求項19記載の液体製剤。
【請求項21】
不揮発性化学添加剤が、プリンまたはピリミジンである、請求項20記載の[MH1][SW-12]液体製剤。
【請求項22】
不揮発性化学添加剤がプリンであり、プリンがキサンチンまたはキサンチン誘導体である、請求項21記載の液体製剤。
【請求項23】
ブロッキング剤が湿潤剤である、請求項19記載の液体製剤。
【請求項24】
湿潤剤が、グリセリン、カプリリルグリコール、エチルヘキシルグリセリン、トリベヘニン、加水分解ダイズタンパク質、プロピレングリコール、メチルグルセス-20、フェニルトリメチコン、ヒアルロン酸、ソルビトールおよびゼラチンからなる群より選択される、請求項23記載の液体製剤。
【請求項25】
ブロッキング剤がナノスケール粒子を含む、請求項19記載の液体製剤。
【請求項26】
アジュバントをさらに含む、請求項1記載の液体製剤。
【請求項27】
セルロース性供給原料を機械的に脱繊維化して、それによりNC要素を含む初期ナノセルロース懸濁物を形成する工程;
セルロース性供給原料を機械的に脱繊維化する工程の前または後に、セルロース性供給原料を乾燥/分散性添加剤で処理して、NC要素を含む処理されたナノセルロース懸濁物を形成する工程;および
処理されたナノセルロース懸濁物を乾燥させて、NC要素を含む再分散性の乾燥NC材料を形成する工程
を含む、セルロース性供給原料を処理して、NC要素を含む再分散性の乾燥NC含有材料を形成する方法。
【請求項28】
セルロース性供給原料を機械的に脱繊維化する工程の前または後のいずれかに、セルロース性供給原料を化学的に前処理する工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
化学的に前処理する工程が、酵素、アルカリ性溶液、酸溶液、イオン性液体、短鎖アミンおよび正のオリゴマー種からなる群より選択される前処理剤を用いて実行される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前処理剤が、エチレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、1,3-ジアミノペンタン、エタノールアミン、トリエタノールアミン(triethynolamine)、メラミンおよびEDTAからなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
セルロース性供給原料を機械的に脱繊維化する工程の前または後に、セルロース性供給原料をキレート剤で処理する工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項32】
セルロース性供給原料を乾燥/分散性添加剤で処理する工程の前、後またはそれと同時に、第2の乾燥/分散性添加剤をセルロース性供給原料に添加する工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項33】
請求項27記載のプロセスにより作製される、乾燥NC含有材料。
【請求項34】
流体媒体を提供する工程;
請求項26記載の再分散性の乾燥NC材料を流体媒体に添加する工程;および
再分散性の乾燥NC材料を流体媒体中で混合し、それによりNC要素を流体媒体に懸濁する工程
を含む、流体媒体に懸濁されたNC要素を含む製剤を作製する方法。
【請求項35】
流体媒体が水性流体である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
請求項34記載のプロセスにより作製される流体媒体中に再分散されるNC要素を含む、製剤。
【請求項37】
請求項1記載の液体製剤を提供する工程、ここで該液体製剤はナノセルロース要素を含み、該液体製剤は乾燥/分散性添加剤を含む;および
液体製剤を乾燥させて、ナノセルロース要素が埋め込まれる再分散性の乾燥NC含有材料を形成する工程、ここで乾燥NC含有材料の再分散性は、液体媒体中のナノセルロース要素の対照懸濁物を乾燥することにより調製される乾燥対照材料のものよりも高く、該対照懸濁物は乾燥/分散性添加剤を欠く、
を含む、ナノセルロース要素がそこに埋め込まれる再分散性の乾燥NC含有材料を作製する方法。
【請求項38】
液体製剤を乾燥させる工程の前に、前処理剤を液体製剤に添加する工程をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前処理剤が、乾燥/分散性添加剤の添加の前またはそれと同時に添加される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前処理剤が化学前処理物質である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
化学前処理物質が、エチレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、1,3-ジアミノペンタン、エタノールアミン、トリエタノールアミン(triethynolamine)、メラミンおよびEDTAからなる群より選択される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
化学前処理物質がキレート剤である、請求項40記載の方法。
【請求項43】
請求項37記載の方法により作製される、ナノセルロース要素がそこに埋め込まれる再分散性乾燥NC含有材料。
【請求項44】
ナノセルロース要素がマトリックスとして形成される、請求項43記載のNC含有材料。
【請求項45】
マトリックスが、活性剤のための支持体または活性剤のための容器として(is)働く、請求項44記載のNC含有材料。
【請求項46】
マトリックスが容器として働く、請求項45記載のNC含有材料。
【請求項47】
容器が発泡される、請求項46記載のNC含有材料。
【請求項48】
マトリックスが形成物品として形作られる、請求項45記載のNC含有材料。
【請求項49】
マトリックスがフィルムとして形成され、フィルムが活性剤を包む、請求項48記載のNC含有材料。
【請求項50】
形成物品が、物理的、化学的または生物学的な機構による破壊に適合され、破壊が活性剤の放出を可能にする、請求項48記載のNC含有材料。
【請求項51】
形成物品が、活性剤のための支持体として働く第1のマトリックスを含み、第1のマトリックスがシートとして形成される、請求項48記載のNC含有材料。
【請求項52】
形成物品が、シートとして形成される第1のマトリックスおよびシートとして形成される第2のマトリックスを含み、活性剤が第1のマトリックスと第2のマトリックスの間に配置される、請求項48記載のNC含有材料。
【請求項53】
活性剤が、第1のマトリックスと第2のマトリックスの間に囲まれる、請求項52記載のNC含有材料。
【請求項54】
活性剤が、清掃または洗濯生成物、石鹸、洗剤、界面活性剤、漂白剤、酵素、毛髪保持生成物、顔料、着色剤、臭気関連剤、軟化剤、化粧品、医薬生成物、医療生成物および農業用有効成分からなる群より選択される、請求項45記載のNC含有材料。
【請求項55】
マトリックスが充填剤粒子をさらに含む、請求項44記載のNC含有材料。
【請求項56】
充填剤粒子が孔閉鎖材料として働く、請求項55記載のNC含有材料。
【請求項57】
マトリックスが研磨特性を有する、請求項44記載のNC含有材料。
【請求項58】
障壁作製材料をさらに含む、請求項44記載のNC含有材料。
【請求項59】
障壁作製材料が、マトリックスの上面または下面でコーティングとして展開される、請求項58記載のNC含有材料。
【請求項60】
障壁作製材料がマトリックスに混合される、請求項58記載のNC含有材料。
【請求項61】
障壁作製材料が、NC含有材料に油脂抵抗特性を付与する、請求項58記載のNC含有材料。
【請求項62】
障壁作製材料が、NC含有材料に水抵抗または水蒸気抵抗特性を付与する、請求項58記載のNC含有材料。
【請求項63】
障壁作製材料がバイオポリマーを含む、請求項58記載のNC含有材料。
【請求項64】
請求項42記載の再分散性乾燥NC含有材料を提供する工程、および
再分散流体を乾燥NC含有材料に添加して、それにより再分散性の乾燥NC含有材料に埋め込まれたNC要素を再分散する工程
を含む、ナノセルロース要素を再分散する方法。
【請求項65】
再分散流体が水性流体である、請求項64記載の製剤。
【請求項66】
再分散流体に懸濁されたNC要素を含む再分散NC含有製剤であって、再分散NC製剤が、請求項64記載の方法により作製される、再分散NC含有製剤。
【請求項67】
発泡される、請求項66記載の製剤。
【請求項68】
NC要素に取り付けられるか、またはNC要素で形成されるマトリックスに埋め込まれる活性剤をさらに含む、請求項66記載の製剤。
【請求項69】
活性剤が皮膚処理物質である、請求項68記載の製剤。
【請求項70】
活性剤が医薬または栄養機能食品生成物である、請求項68記載の製剤。
【請求項71】
活性剤が化粧用生成物である、請求項68記載の製剤。
【請求項72】
活性剤が臭気関連活性剤である、請求項68記載の製剤。
【請求項73】
活性剤が農業用有効成分である、請求項68記載の製剤。
【請求項74】
請求項65記載の製剤を選択される形状に乾燥させる工程を含む、形成物品を製造する方法であって、該選択される形状が、乾燥される場合に形成物品を作製する、方法。
【請求項75】
請求項66記載の製剤を表面に適用する工程および該製剤を乾燥させる工程を含む、表面を処理する方法。
【請求項76】
表面が毛幹表面または皮膚表面である、請求項75記載の方法。
【請求項77】
請求項69記載の製剤を、治療の必要がある皮膚の選択される領域に適用する工程を含む、皮膚障害または皮膚状態を治療する方法。
【請求項78】
請求項73記載の製剤を農業用生成物に適用する工程を含む、農業用生成物を処理する方法。
【請求項79】
既存のマトリックス組成物を提供する工程;および
追加のNC要素の集団を既存のマトリックスに組み込む工程
を含む、複合マトリックスを作製する方法。
【請求項80】
既存のマトリックス組成物が有機材料を含む、請求項79記載の方法。
【請求項81】
既存のマトリックス組成物が本質的に有機材料からなる、請求項80記載の方法。
【請求項82】
既存のマトリックスがパルプまたはパルプ系材料を含む、請求項80記載の方法。
【請求項83】
既存のマトリックスが本質的にパルプまたはパルプ系材料からなる、請求項82記載の方法。
【請求項84】
既存のマトリックス組成物が、追加のNC要素でコーティングされるかまたは追加のNC要素に浸漬される、請求項79記載の方法。
【請求項85】
請求項79記載の方法により調製される、複合材料。
【請求項86】
既存のマトリックスが疎水性マトリックスであり、追加のNC要素が、疎水性マトリックスにおける使用のために疎水化されている、請求項85記載の複合材料。
【請求項87】
既存のマトリックスが生分解性ポリマーを含む、請求項85記載の複合材料。
【請求項88】
生分解性ポリマーが天然のポリマー性材料である、請求項87記載の複合マトリックス。
【請求項89】
追加のNC要素の少なくとも一部が充填剤として働く、請求項85記載の複合材料。
【請求項90】
追加のNC要素の少なくとも一部が既存のマトリックスにおいて孔閉鎖剤として働く、請求項85記載の複合材料。
【請求項91】
二次的な添加剤をさらに含む、請求項85記載の複合材料。
【請求項92】
二次的な添加剤が可塑剤である、請求項91記載の複合材料。
【請求項93】
二次的な添加剤が疎水性セルロース添加剤である、請求項91記載の複合材料。
【請求項94】
複合材料が特殊な特性を示す、請求項85記載の複合材料。
【請求項95】
特殊な特性が、機械的特性、障壁特性および付加的な特性からなる群より選択される、請求項94記載の複合材料。
【請求項96】
特殊な特性が機械的特性である、請求項95記載の複合材料。
【請求項97】
機械的特性が、既存のマトリックスの機械的特徴の強化である、請求項96記載の複合材料。
【請求項98】
特殊な特性が障壁特性である、請求項95記載の複合材料。
【請求項99】
障壁特性が、疎油性障壁特性または疎水性障壁特性を含む、請求項98記載の複合材料。
【請求項100】
障壁特性が、疎水性特性および疎油性特性を含む、請求項98記載の複合物品。
【請求項101】
特殊な特性が付加的な特性である、請求項95記載の複合材料。
【請求項102】
付加的な特性が伝導性特性である、請求項101記載の複合材料。
【請求項103】
付加的なNC要素の集団が、伝導性特性を有するNC要素のサブ集団を含む、請求項102記載の複合材料。
【請求項104】
サブ集団の伝導性特性が、銀鏡反応を介してサブ集団中に生じる、請求項103記載の複合材料。
【請求項105】
マトリックスが発泡物品として調製される、請求項85記載の複合材料。
【請求項106】
付加的なNC要素の集団がセルロースマイクロ繊維を含む、請求項105記載の複合材料。
【請求項107】
発泡物品が障壁作製材料を含む、請求項105記載の複合材料。
【請求項108】
請求項85記載の複合材料を含む、製造物品。
【請求項109】
娯楽設備物品、競技用シューズ、建築塗料生成物、建築材料、耐久性インクおよび3D印刷材料からなる群より選択される、請求項108記載の製造物品。
【請求項110】
請求項94記載の複合材料を含む、製造物品。
【請求項111】
特殊な特性が障壁特性である、請求項110記載の製造物品。
【請求項112】
飲用ストローとして形成される、請求項111記載の製造物品。
【請求項113】
フィルムまたはシートとして形成される、請求項111記載の製造物品。
【請求項114】
繊維または不織ファブリックとして形成される、請求項110記載の製造物品。
【請求項115】
繊維または不織ファブリックが、最適化された特性を示す、請求項114記載の製造物品。
【請求項116】
繊維または不織ファブリックが人工皮革に形成される、請求項115記載の製造物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年6月9日に出願された米国仮出願第63/208,577号、2021年7月8日に出願された米国仮出願第63/219,686号および2022年2月14日に出願された米国仮出願第63/309,730号の利益を主張する。上述の出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本願は、ナノセルロース性材料に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
木材および植物繊維の主な構造ブロックであるセルロースは、紙、テキスタイルおよび化学的工業のための豊富な資源である。これは、隣接する単位に関してそれぞれの単位が180°回転する1,4-連結β-D-グルコピラノース単位の高分子量ホモポリマーである。単量体グルコピラノース単位はそれぞれ、ポリマー内のヒドロキシル基の線形配置の回転パターンのために、ポリマーの交互の反対の面上にヒドロキシル基自体を提示する3つのヒドロキシル基を含む。セルロース分子の長さに沿ったヒドロキシル基の交互の方向は、一本鎖のセルロースに、隣接するポリマーの鎖と容易に水素結合を形成させる。これらの水素結合は、安定で、強力で、密に結合する複数鎖の複合体の形成を可能にする。
【0004】
生物学的系において、個々のポリマー性セルロース分子は、同様の分子とより大きな単位を形成する。植物内の生合成は、約36個の個々の分子を一緒に緻密に結合させ得、それにより植物の細胞壁の最も基本的な構造ブロックを形成する。これらの構造ブロックは、基本小繊維と称される(ミクロフィブリルとも称される)。生物学的実体におけるセルロースの生合成の際に形成される基本小繊維は、約5nmの直径であり、数マイクロメートルの長さであり得る。それぞれの基本小繊維は、セルロースの乱れた不定形のドメインが散在されたセルロースの結晶領域で構成される、可撓性の伸長されたストランドである。結晶性領域は、水素結合の強力な交差する網状組織により固く安定化されたセルロース鎖のセグメントであり;該不定形領域は、水素結合により依然として結合されながら、より可撓性である。これらの基本小繊維(ミクロフィブリル)は、一緒になって生物系に充填されて、ミクロフィブリル化セルロースと称されるより大きな単位を形成し、これは約20~50nmの範囲の直径を有する。生物系において、ミクロフィブリル化セルロース単位は、凝集され、ヘミセルロース部分を介して連結され、ペクチンマトリックス内に埋め込まれて、植物細胞壁中に見られる可視的なセルロース繊維を形成する。
【0005】
基本的なセルロース小繊維およびミクロフィブリル化セルロースの構造は、2つの別個のセルロース形態を植物由来セルロース原料から抽出することを可能にする。結晶性セルロースは、粒状形態で抽出されて、粒子のサイズに応じてセルロースナノ結晶またはセルロース微小結晶と称される生成物を生じ得る。セルロースはまた、繊維として抽出されて、繊維のサイズに応じてセルロースナノ繊維またはセルロースマイクロ繊維と称される生成物を生じ得る。セルロース結晶およびセルロースマイクロ/ナノ繊維は異なる技術により抽出されて、異なる特性を有する異なる形態を生じる。セルロースナノ繊維およびセルロースマイクロ繊維の2つの繊維性材料は、互いに異なる技術により植物実体から抽出されるので、それらの形態および特性は異なる。セルロースナノ繊維およびセルロースマイクロ繊維は、それらのサイズおよび形状に基づいて互いに区別され得:セルロースナノ繊維(CNF、「ナノフィブリル化セルロース」または「NFC」としても公知)は、直径においてセルロースマイクロ繊維(CMF、「ミクロフィブリル化セルロース」または「MFC」としても公知)よりもかなり小さく、まっすぐな棒状であり、CMFは直径においてより大きく、外観においてより可撓性であり、形状において不規則的であり得る。文献にはCNFおよびCMFについての寸法の範囲が引用されるが、CNF繊維はナノスケールであり(例えば、4~20nmの直径を有する)、CMFはさらにかなり大きくあり得:CMF繊維は典型的に依然として、ナノ範囲、例えば20~100nmまたはそれ以上の直径を有する。
【0006】
より詳細に、CMF繊維は、化学的または酵素的前処理ありまたはなしで、セルロース性供給原料の機械的処理により作製される。CMF繊維は、高いアスペクト比を伴って伸長され、天然のセルロースと同様の結晶性および不定形の領域を含み、三次元網状組織を形成し得る。繊維集団中のCMF繊維のサイズ分布は広く、より小さなナノスケール繊維はCMF網状組織中でより大きな繊維に散在する。対照的に、CNF繊維について、集団内で狭いサイズ分布を有する個々の小繊維の集団を作製するための異なる処理方法が含まれる。CNF材料中の寸法は、CMF繊維集団と比較して、より一貫してナノスケールである。本明細書で使用する場合、全ての3つの種(結晶性セルロース、CNFおよびCMF)は、包括的な用語「ナノセルロース」または「ナノセルロース要素」(NCE)に含まれるはずである。
【0007】
ナノセルロース(NC)材料は、それらの生分解性の性質、低い密度、豊富な供給源材料および高い機械的性能のために、商業的適用について莫大な見込みを保持する。しかしながら、これらのセルロース性材料のナノサイズの幾何学構造および親水性の性質は好機を提供するが、これらの特性は困難さも提示する。NCの幾何学構造および親水性を活用するいくつかの用途が開発されている。例として、特定のナノセルロースは、漆喰およびセメントなどの無機粉末と乾燥混合されて、水和および硬化の際に、構造に機械的な防壁を送達し得る。しかしながらそれらは親水性であるので、NC材料は、それらが疎水性環境で使用され得るような改変を必要とする。親水性環境においても、または親水性構成成分としてNCを使用する複合物内でも、満足のいくNC分散は困難であり得、多くの用途におけるNC要素の有用性が制限される。さらに、NC乾燥および分散技術により課される制限は、商業的用途についてのこれらの材料の有用性を制限する。
【0008】
NCは通常、水性媒体中で実行される一連の機械的および/または化学的手順により作製され、水性懸濁物は、セルロースの繊維間の水素結合を緩めて層間剥離を容易にして、より有用な程度の重合および結晶性を有し、より高いアスペクト比を有するNC誘導体の形成を生じる。典型的に、NC材料は、それらの高い水吸収能力が、高アスペクト比NC要素のもつれのために、低い固体濃度であってもそれらに高度に粘性の懸濁物を形成させるので、低濃度(<5wt%)で水性媒体中に分散される。
【0009】
しかしながら、NCのこれらの水性懸濁物は、管理することが困難であり、輸送するために費用がかかる。そのため、NC懸濁物を乾燥粉末形態に変換するための乾燥技術が考案されている。しかしながら、従来技術(例えば高温で水を蒸発させること)を使用するNC懸濁物の乾燥は、セルロース分子の表面上のヒドロキシル基の相互作用のために凝集物の形成(「凝集」)および水素結合の形成を促進する。角質化(hornification)とも称される従来の乾燥により生じるこの凝集プロセスは、不可逆的または部分的にのみ可逆的な、NC粒子上のヒドロキシル基または繊維の間の結合を特徴とする。
【0010】
10年間の長さの一連の学術的および工業的な努力にかかわらず、低コストで有効な乾燥および再分散の成功は、NC製造者を避けている。(a)NCが懸濁される水性媒体からのNC乾燥および(b)乾燥したNCの再分散の対をなす困難さは、2つの要因:(1)隣接するセルロース性要素を不可逆的な凝集物へと付着させる、互いに水素結合を形成するセルロースポリマーの傾向(すなわち互いに永続的に取り付けられ、懸濁における再分散に抵抗する粒子の集合);および(2)水素結合のために付着を大きく悪化させるNCEのサイズおよび形態に関連する(単位重量当たりの)大きな表面積により引き起こされる。NCの水性スラリーが標準的なオーブンにおいて乾燥される場合、乾燥容器の底で、硬くて、密接にもつれたレンガ様の塊りが形成される。凝集したセルロース性要素のこの密な網状組織は、容器から容易には擦り取ることができず、激しい機械的撹拌を用いても水中に再分散されるだけである。そのかわり、再分散の試みは、撹拌の数時間後でも再分散媒体中に残るNC凝集物の大きな塊を生じる。再分散に対するこの抵抗性は、NC強化添加剤の乾燥混合が複合体全体に均一に分散されなければならない複合生成物(セメント、コンクリート、舗装材料、人工の石、セラミック、漆喰、モルタル、接合化合物等)における乾燥したNC材料の使用を妨げる。
【0011】
凝集および角質化に向かうこの傾向ならびに再分散に対するその後の抵抗性は費用効果的な解決を避けているので、広範囲の魅力的な適用においてNC材料を使用するための機会が排除される。種々の乾燥技術、例えば凍結乾燥、噴霧乾燥、超臨界流体乾燥および噴霧が研究者により調査されているが、その高いコスト、エネルギー必要性および特殊な設備の必要性によりそれらの広範囲の採用が排除されるプロセスを使用して、それらは、最良でも再分散NC要素の小さい試料を生じた。
【0012】
そのため、より後期の再分散についてNCの個体の塊が作製され得るように、凝集および角質化問題を回避するNC材料のための商業規模の乾燥技術のための必要性が当該技術分野にある。過度なエネルギー必要性を有することなく、特殊な設備の必要性がない、低コストで、商業的な器具に適するかかる技術のためのさらなる必要性が当該技術分野に残る。
【発明の概要】
【0013】
発明の概要
態様において、ナノセルロース(NC)要素の懸濁物および乾燥/分散性添加剤を含む液体製剤が本明細書に開示され、該乾燥/分散性添加剤は、温度応答性ポリマー、揮発性系における小分子添加剤およびブロッキング剤からなる群より選択される。態様において、ナノセルロース要素は、手を触れられていないバイオマスを含み得るリグノセルロース性材料に由来し、該手を触れられていないバイオマスは特別な目的の穀物を含み;他の態様において、リグノセルロース性材料は廃棄物材料を含む。態様において、NC要素は、結晶性セルロースまたはセルロースナノ繊維を含むかまたは本質的にそれからなる。態様において、乾燥/分散性添加剤は、低臨界溶液温度(lower critical solution temperature)(LCST)ポリマーまたはLCSTポリマー由来の短鎖オリゴマーであり得る温度応答性ポリマーである。LCSTポリマーは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N-ジエチルアクリルアミド)、ポリ(エチレンオキサイド)およびポリ(プロピレンオキサイド)のブロックコポリマーならびにエラスチンポリ(ペンタペプチド)からなる群より選択され得る。態様において、乾燥/分散性添加剤は、非イオン性またはカチオン性であり得、生分解性であり得る揮発性系における小分子添加剤である。小分子添加剤は、トリ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)プロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、ベンジルアルコール、1-ヘプタノールおよび1-ヘキサノールからなる群より選択され得る。小分子添加剤は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、1,3-ペンタンジアミン、ピペラジン、1,2-シクロヘキサンジアミン、アニリン、ピリジンおよびピペラジンからなる群より選択され得る。態様において、乾燥/分散性添加剤はブロッキング剤である。ブロッキング剤は、プリンまたはピリミジンであり得る不揮発性化学添加剤であり得る。態様において、不揮発性化学添加剤はプリンであり、プリンはキサンチンまたはキサンチン誘導体である。態様において、ブロッキング剤は湿潤剤であり、湿潤剤は、グリセリン、カプリリルグリコール、エチルヘキシルグリセリン、トリベヘニン、加水分解ダイズタンパク質、プロピレングリコール、メチルグルセス-20、フェニルトリメチコン、ヒアルロン酸、ソルビトールおよびゼラチンからなる群より選択され得る。態様において、ブロッキング剤は脂肪酸であり得る。態様において、ブロッキング剤はナノスケール粒子を含む。態様において、液体製剤はさらに、アジュバントを含み得る。
【0014】
態様において、セルロース性供給原料を機械的に脱繊維化し、それによりNC要素を含む初期ナノセルロース懸濁物を形成する工程;セルロース性供給原料を機械的に脱繊維化する工程の前または後に、セルロース性供給原料を乾燥/分散性添加剤で処理して、NC要素を含む処理されたナノセルロース懸濁物を形成する工程;および処理されたナノセルロース懸濁物を乾燥させて、NC要素を含む再分散性の乾燥NC材料を形成する工程を含む、セルロース性供給原料を処理して、NC要素を含む再分散性の乾燥NC含有材料を形成する方法も本明細書に開示される。該方法はさらに、セルロース性供給原料を機械的に脱繊維化する工程の前または後のいずれかに、セルロース性供給原料を化学的に前処理する工程を含み得、化学的前処理の工程は酵素、アルカリ性溶液、酸溶液、イオン性液体、短鎖アミンおよび正のオリゴマー種からなる群より選択される前処理剤を使用して実施され得る。態様において、前処理剤は、エチレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、1,3-ジアミノペンタン、エタノールアミン、トリエタノールアミン(triethynolamine)、メラミンおよびEDTAからなる群より選択される。態様において、該方法はさらに、セルロース性供給原料を機械的に脱繊維化する工程の前または後に、セルロース性供給原料をキレート剤で処理する工程を含む。態様において、該方法はさらに、セルロース性供給原料を乾燥/分散性添加剤で処理する工程の前、後またはそれと同時に、第2の乾燥/分散性添加剤をセルロース性供給原料に添加する工程を含む。
【0015】
また、上述される方法により作製される乾燥NC含有材料が本明細書に開示される。さらに、流体媒体を提供する工程、上述の再分散性の乾燥NC材料を流体媒体に添加する工程および再分散性の乾燥NC材料を流体媒体中で混合して、それによりNC要素を流体媒体に懸濁する工程を含む、流体媒体中に懸濁NC要素を含む製剤を作製する方法が本明細書に開示される。態様において、流体媒体は水性流体である。上述の方法により作製される流体媒体中に再分散されるNC要素を含む製剤も本明細書に開示される。
【0016】
態様において、本明細書に記載される液体製剤を提供する工程、ここで該液体製剤はナノセルロース要素を含み、該液体製剤は乾燥/分散性添加剤を含む;および液体製剤を乾燥させて、ナノセルロース要素が埋め込まれる乾燥NC含有材料を形成する工程、ここで乾燥NC含有材料の再分散性は、液体媒体中のナノセルロース要素の対照懸濁物を乾燥させることにより調製される乾燥対照材料のものよりも大きく、対照懸濁物は乾燥/分散性添加剤を欠く、を含む、ナノセルロース要素がそこに埋め込まれる再分散性の乾燥NC含有材料を作製する方法が本明細書に開示される。該方法はさらに、液体製剤を乾燥させる工程の前に、前処理剤を液体製剤に添加する工程を含み得;前処理剤は、乾燥/分散性添加剤の添加の前またはそれと同時に添加され得る。態様において、前処理剤は、化学前処理物質であり、これは、エチレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、1,3-ジアミノペンタン、エタノールアミン、トリエタノールアミン(triethynolamine)、メラミンおよびEDTAからなる群より選択され得る。化学前処理物質はキレート剤であり得る。上に開示される方法により作製されるナノセルロース要素がそこに埋め込まれる再分散性乾燥NC含有材料がさらに開示される。態様において、ナノセルロース要素は、活性剤の支持体または容器であり得るマトリックスとして形成される。有利なことに、該マトリックスは容器として働き得、該容器は発泡され得る。態様において、マトリックスは、形成物品として形作られ得る。他の態様において、マトリックスはフィルムとして形成され得、フィルムは活性剤を包み得る。態様において、形成物品は、物理的、化学的または生物学的な機構による破壊のために適合され、破壊は、活性剤の放出を可能にする。態様において、形成物品は、活性剤の支持体として働く第1のマトリックスを含み、第1のマトリックスはシートとして形成される。他の態様において、形成物品は、シートとして形成される第1のマトリックスおよびシートとして形成される第2のマトリックスを含み、活性剤は第1のマトリックスと第2のマトリックスの間に配置され、活性剤は、第1のマトリックスと第2のマトリックスの間に囲まれ得る。態様において、活性剤は、洗濯製品、石鹸、洗剤、界面活性剤、漂白剤、酵素、毛髪保持製品、顔料、着色剤、臭気関連剤、軟化剤、化粧品、医薬製品、医学的製品および農業有効成分からなる群より選択される。態様において、マトリックスは、孔閉鎖材料として働き得る充填剤粒子をさらに含む。態様において、マトリックスは研磨特性を有する。態様において、NC含有材料はさらに、マトリックスの上または下の面(例えば頂部または底部)でコーティングとして展開され得るかまたはマトリックスに混合され得る障壁作製材料を含む。態様において、障壁作製材料は、NC含有材料に油脂(oil and grease)抵抗特性を与えるかまたはNC含有材料に水抵抗もしくは水蒸気抵抗特性を与える。態様において、障壁作製材料はバイオポリマーを含む。
【0017】
態様において、上述の再分散性乾燥NC含有材料を提供する工程、および再分散流体を乾燥NC含有材料に添加して、それにより再分散性の乾燥NC含有材料に埋め込まれるNCEを再分散させる工程を含む、ナノセルロース要素を再分散する方法も本明細書に開示される。再分散流体は水性流体であり得る。さらに、再分散流体に懸濁されるNC要素を含む再分散NC含有製剤が本明細書に開示され、ここで再分散NC製剤は、上述の方法により作製されている。態様において、製剤は発泡され得る。態様において、製剤はさらに、NC要素に取り付けられるかまたはNC要素で形成されるマトリックスに埋め込まれる活性剤を含む。態様において、活性剤は、皮膚処理物質または医薬もしくは栄養機能食品製品または化粧製品または臭気関連活性剤または農業有効成分であり得る。上述の製剤を選択される形状に乾燥させる工程を含む、形成物品を製造する方法も本明細書に開示され、該選択される形状は、乾燥される場合に形成物品を作製する。また、上述の製剤を表面に適用する工程および製剤を乾燥させる工程を含む、表面を処理するための方法が本明細書に開示される。態様において、表面は毛幹または皮膚表面である。態様において、上述の製剤を、皮膚障害または皮膚の状態の治療を必要とする皮膚の選択された領域に適用する工程を含む、皮膚障害または皮膚の状態を治療するための方法が本明細書に開示される。上述の製剤を農業製品に適用する工程を含む、農業製品を処理するための方法も本明細書に開示される。
【0018】
さらに、態様において、既存のマトリックス組成物を提供する工程および追加のNCEの集団を既存のマトリックスに組み込む工程を含む、複合マトリックスを作製する方法が本明細書に開示される。既存のマトリックス組成物は、パルプまたはパルプ系材料であり得る有機材料を含み得るかまたは本質的にそれからなり得る。態様において、既存のマトリックス組成物は、追加のNCEでコーティングされるかまたはそれに含浸される。前述の方法により調製される複合材料をも本明細書に開示される。態様において、既存のマトリックスは疎水性マトリックスであり、追加のNCEは、疎水性マトリックスにおける使用のために疎水化(hydrophobized)されている。態様において、既存のマトリックスは、天然のポリマー性材料であり得る生分解性ポリマーを含む。態様において、追加のNCEの少なくとも一部は、既存のマトリックスにおいて充填剤として働くかまたは孔閉鎖剤(pore-closer)として働く。態様において、複合材料はさらに、可塑剤または疎水性セルロース添加剤であり得る二次的な添加剤を含む。態様において、複合材料は、特殊な特性を示し、該特性は機械的特性、障壁特性および付加的な特性からなる群より選択され得る。態様において、特殊な性質は、既存のマトリックスの機械的特徴の強化であり得る機械的特性である。態様において、特殊な性質は、疎油性(oleophobic)障壁特性、疎水性障壁特性またはその両方であり得る障壁特性である。態様において、特殊な性質は、伝導性特性であり得る付加的な特性である。かかる態様において、追加のNCEの集団は、伝導性特性を有するNCEのサブ集団を含み得、サブ集団の伝導性特性は、銀鏡反応を介してサブ集団内に作製され得る。態様において、複合材料は、追加のNCEの集団内にセルロースマイクロ繊維を含み得る発泡物品であり得;態様において、発泡物品は障壁作製材料を含み得る。さらに、上に開示される複合材料を含む製造物品が本明細書に開示される。態様において、製造物品は、娯楽施設物品、競技用シューズ、建築塗料製品、建築材料、耐久性インクおよび3D印刷材料からなる群より選択される。態様において、製造物品は上に開示される複合材料を含み得、該複合材料は特殊な性質を示す。かかる製造物品は、飲用ストロー、フィルム、シートまたは繊維もしくは不織ファブリックとして形成され得;かかる繊維もしくは不織ファブリックは最適化された性質を示し得、それらは人工皮革に形成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
1. 再分散性ナノセルラー材料のための構成要素
本明細書に開示される系および方法による処理に適したNC材料は、全ての種類のセルロース性原料、特にリグノセルロース性材料とも称され得る植物由来のセルロース原料に由来し得ることが理解される。リグノセルロース性材料は、種々の量のリグニンと結合した上述のようなセルロースポリマーで形成される。リグノセルロース性材料は、樹木、灌木および草などの天然に存在する植物中に見られる手を付けられていないバイオマスを含み得る。リグノセルロース性材料としては、消費からあるいは農業(例えばトウモロコシのわらおよびトウモロコシの穂軸、サトウキビバガス、わら、アブラヤシの空の果実の房、パイナップルの葉、リンゴの茎、コイア繊維、桑の木の樹皮、米穀、豆の穀皮、ダイズの穀皮(または「ダイズ穀皮(soyhull)」)、コットンリンター、ブルーアガベ廃棄物、ノースアフリカングラス(North African glass)、バナナの疑似茎の残留物、ラッカセイの殻、ピスタシオナッツの殻、ブドウの搾りかす、シアバターノキの実の殻、パッションフルーツの果皮、フィケ(fique)繊維廃棄物、サゴの実の殻、ケルプ廃棄物、ジュンクスプラントの茎等)、または林業(製材所および製紙工場の廃棄物)などの産業からの廃棄物材料が挙げられ得る。リグノセルロース性材料としては、複数の収穫が可能な、バイオ燃料などの用途のために栽培されるスイッチグラスおよびエレファントグラスなどの特別な目的の穀物が挙げられ得る。リグノセルロース性材料としての用途を有する植物は、木質(例えば固い茎を有し、多年の成長サイクルを有する樹木)または弱い茎および1年または限定された多年の成長サイクルを有する非木質であり得る。非木質植物は、典型的にそれらが含むセルロースの量に対して少ない量のリグニンを有するので特に有利である。当業者に理解されるように、種々のリグノセルロース性材料を処理してそこからNC材料を抽出するために異なる技術が利用可能である。
【0020】
態様において、高い固有の親水性を保持しながら、高温で(例えば乾燥の際に)NC材料の水素結合を阻害するまたは乱すために使用され得る添加剤が本明細書に開示されるので、水性媒体中の容易な再分散が可能である。本明細書に開示される製剤および方法は、いくつかの異なるカテゴリーの添加剤(「乾燥/分散性添加剤」と称される):(1)乾燥の際にNC粒子または繊維(まとめて「NC要素」)の間に空間を導入して、それらの塊形成を防ぎ得る特定の温度応答性ポリマー;(2)乾燥の際にNC要素の間に空間を生じ得る特定の揮発性小分子;および(3)乾燥の際にNC要素の間でまたはその中で水素結合を妨げる特定の不揮発性の小または大分子を含む。これらの材料の全ては、その後の再分散を可能にするさらなる乾燥によりNC要素の間またはその中に間隙を生じながら、高温でまたは他の状況下で水素結合を乱すように働く。
【0021】
本明細書で使用する場合、NC要素の初期懸濁物(「初期NC懸濁物」と称され、その後の記載において例示される場合に、脱繊維化プロセスの間に最初に作製されるNC要素を含む懸濁物であると理解される)のための用語「乾燥」は、初期NC懸濁物を初期NC懸濁物内に存在したNC要素を含む固体または半固体材料に変換するように、初期NC懸濁物の水分含量の低下を生じる、初期NC懸濁物への加熱および/または任意の他の脱水技術の適用をいう。この乾燥された固体または半固体材料は、「乾燥NC材料」と称され得る。本明細書で使用する場合、用語「再分散」は、乾燥NC材料(半固体または固体のいずれかで)のその構成要素NC要素への実質的に完全な溶解があるように、乾燥NC材料が流体媒体(水性または非水性のいずれかで)に懸濁されるプロセスをいう。態様において、水性再懸濁流体が使用され得;他の態様において、疎水性特性または両親媒性特性を有する流体などの非水性再懸濁流体が使用され得る。態様において、再分散は、NC要素が個々のNC要素または個々のNC要素の一体化したものとして形成されるように(いずれも本明細書において「再懸濁された粒子」と称される)、NC要素の懸濁を生じ、ここでかかる再懸濁された粒子は、10より大きいアスペクト比を有する。態様において、再懸濁された粒子は、約10~約300または約10~約200のアスペクト比を有する。態様において、再懸濁された粒子は、約50~約150のアスペクト比を有する。態様において、再懸濁された粒子は、約25~約75のアスペクト比を有する。他の態様において、再懸濁された粒子は、約75~約125のアスペクト比を有する。
【0022】
特定の添加剤(例えば以下に記載される特定のLCSTポリマー)は、乾燥および再分散を容易にするための単一の薬剤としての使用に適切であるが、他の添加剤は、いずれも主要な添加剤と同時に初期NC懸濁物に投与される主要な乾燥/分散性添加剤と組み合わせてアジュバントとして、または主要な添加剤の添加の前に初期NC懸濁物もしくはその任意の前駆体に対する前処理として、または主要な乾燥/分散性添加剤の添加後の初期NC懸濁物に対する後処理としての使用に役立つ。乾燥/分散性添加剤は、限定なく、温度応答性ポリマー、揮発性系における小分子添加剤およびブロッキング剤を含む。本発明の液体製剤および誘導体再分散性乾燥材料を生じるためにNC要素の供給源と組み合わせて使用される主要な乾燥/分散性添加剤およびアジュバント添加剤は、まとめて「主要な添加剤」と称される。
【0023】
a. 温度応答性ポリマー
態様において、特定の温度応答性ポリマーは、乾燥の際にNC要素の間に空間を生じ、それにより乾燥プロセスの間にNC要素が凝集することを防ぐために使用され得る。この目的に特に適切な温度応答性ポリマーは、LCST(低臨界溶液温度)相挙動として知られる現象を示すものである。特定のLCSTポリマーは、そのLCST遷移温度下で親水性であり、そのLCST遷移温度を超えて可逆的に疎水性になることが理解される。すなわち、LCST点未満で、ポリマーは、その固有の分子親水性と一致して、水に対して高い親和性を示す。しかしながら、LCST点を超えて、ポリマーは、水をはじき、水素結合を避ける。これは、この遷移温度を超えたポリマー溶液の観察される熱ゲル化(thermogelation)により明らかにされる。ポリマー性またはオリゴマー性のLCST添加剤がNC要素の表面上で(単層または数分子の層の形態で)自己集合する場合、NC要素の乾燥は、それらの最終的な再分散が容易になるように影響を受ける。
【0024】
より詳細に、LCSTポリマーは、LCSTポリマーの遷移温度未満の温度で初期NC懸濁物に添加され得る。乾燥の際に初期NC懸濁物から水が蒸発する場合、その温度は上昇し、水の沸点に達し、LCSTポリマーの遷移温度を超えて、その点でLCSTポリマーはその親水性特徴を失って疎水性になる。それが疎水性になる場合、LCSTポリマーは、NC要素の間で形成する水素結合を妨害する。ここで、LCSTポリマーの疎水性性質は、NC要素のセルロース性単位の相互作用により駆動されるこれらのプロセスの代わりに、NC要素の凝集または分解(disaggregation)を決定する。
【0025】
態様において、選択されるLCSTポリマーは、乾燥の際のNC要素の高密度の凝集を顕著にまたは完全に妨げ得る。態様において、選択されたLCSTポリマーがNC要素の凝集を乱す能力は、設備の選択および乾燥の様式とは独立する。例えば、LCSTポリマーおよびNC要素を含む懸濁物は、乾燥の際に静止したままであり得る。凝集なしの乾燥を達成するために、広範囲の乾燥温度および圧力が、選択されるLCSTポリマーの存在下で初期NC懸濁物に適用され得る。本明細書に記載される選択されるLCSTポリマーを使用して作製される乾燥NC材料は、最小の塊形成もしくは残存の凝集が再分散懸濁物中で同定されるかまたはそれらが同定されることなく、緩やかなかきまぜ(agitation)または撹拌により水中に容易に再分散され得る。これらの特徴は、処理パラメーターにおいて広い許容範囲を生じる。
【0026】
態様において、以下のリストは、NC要素の凝集を防ぎ、再分散を容易にするために使用され得るLCSTポリマーおよびそれらのアナログ短鎖オリゴマーの例を提供する。
・メチルセルロース
・ヒドロキシルエチルセルロース
・ヒドロキシプロピルセルロース
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース
・エチルヒドロキシエチルセルロース
・ポリビニルカプロラクタム
・ポリ(メチルビニルエーテル)
・ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)
・ポリ(N,N-ジエチルアクリルアミド)
・ポリ(エチレンオキサイド)とポリ(プロピレンオキサイド)のブロックコポリマー
・エラスチンのポリ(ペンタペプチド)
【0027】
上に列挙されるセルロース誘導体の熱ゲル化温度は、置換の種類および程度に依存し、構造的設計により調整可能であることに注意。有利なことに、乾燥/分散添加剤としての使用のための選択されるLCSTポリマーは、周囲温度よりも高い遷移温度(例えば>25℃)を有し得るので、ポリマーは、乾燥工程が開始されるまで溶液中に残る。
【0028】
b. 揮発性小分子添加剤系
態様において、乾燥の際にNC要素の間に空間を生じて、単独または他の添加剤との組合せのいずれかで、NC要素が乾燥プロセスの際に凝集することを防ぐために、小分子添加剤を含む揮発性の系が使用され得る。揮発性の系を用いた使用のための選択される小分子添加剤は、水と混和性であり、共存在する水の沸点よりも高い沸点を有する。揮発性の系において有用な小分子添加剤は、水と比較してかなり低いその水素結合傾向をさらに特徴とする。NCおよび選択される小分子を含む添加剤負荷揮発性系が乾燥を経験する場合、水分子は優先的に蒸発し、小分子添加剤はその高い沸点のために後に残り、それにより隣接するNC要素の間に残る溶液中の添加剤の濃度が増加する。態様において、揮発性小分子添加剤の分子区分は、極性および非極性の官能基の両方を含む。理論に拘束されることなく、極性区分はセルロースヒドロキシ基に引きつけられ、非極性区分は同時に、ヒドロキシ-ヒドロキシ相互作用に干渉するので、NC要素の間およびその中の接着が低減されることが構想される。次いで、系内の温度が上昇するにつれて、添加剤は蒸発し、空気に囲まれるNC要素が後に残る。空気により互いに分離されるNC要素を含む得られる乾燥材料は、観察される凝集塊/塊りの形成または濃度変化を有することなく容易に再分散され得る。再分散懸濁物は、懸濁物中の分布が均一である再懸濁NC粒子を含み、ここでNC要素は、それらのナノサイズの特徴を保持し、非常に緩やかなかきまぜ/撹拌のみにより再分散を達成し得る。
【0029】
態様において、以下のリストに、凝集を防ぎ、NC要素の再分散を容易にするために前述の揮発性系に使用され得る小分子添加剤の例が提供される。例示的な添加剤は2つのカテゴリー:非イオン性およびカチオン性化合物に分けられ得る。
【0030】
限定されることなく、非イオン性候補としては:
・トリ(プロピレングリコール)ブチルエーテル(TPnB)
・ジ(プロピレングリコール)プロピルエーテル(DPnP)
・プロピレングリコールブチルエーテル(PnB)
・プロピレングリコールプロピルエーテル(PnP)
・エチレングリコールモノブチルエーテル
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・プロピレングリコールジアセテート
・エチレングリコールジアセテート
・ベンジルアルコール
・1-ヘプタノール
・1-ヘキサノール
が挙げられ得る。
【0031】
限定されることなく、カチオン性候補としては:
・エチレンジアミン
・ジエチレントリアミン
・テトラエチレンペンタアミン
・1,3-ペンタンジアミン
・ピペラジン
・1,2-シクロヘキサンジアミン
・アニリン
・ピリジン
・ピペラジン
が挙げられ得る。
【0032】
態様において、小分子添加剤は、初期NC懸濁物から完全に蒸発し得、添加剤の残存なく、NC要素が後に残るだけである。しかしながら、他の態様において、痕跡量の小分子添加剤が残り得る。例えば、特定のカチオン性添加剤により、それらのカチオン性基はセルロース分子に接着し得るので、完全な乾燥の後、痕跡量の添加剤がセルロースに接着して残る。ほとんどの工業的適用について、これらの添加剤の痕跡の残存は、健康または環境の問題を提示しない。しかしながら、態様において、生分解性のカチオン性小分子、例えば1,3-ペンタンジアミンは有利である。
【0033】
c. ブロッキング剤
態様において、不揮発性の小または大分子添加剤は、水素結合を妨げるかおよび/または乾燥の際にNC要素の間に空間を生じるために、上述の揮発性の系とは別にそれら自体で使用され得、それによりNC要素の間の相互作用が妨げられ、そのため乾燥プロセスの間にNC要素が凝集することが防がれる。態様において、表面官能基化ナノスケール粒子は同じ様式で使用され得る。このブロッキング機能を実行するかかる不揮発性の小または大分子添加物およびナノスケール粒子は、本明細書においてブロッキング剤または遮断剤と称される。本明細書で使用する場合、用語「ブロッキング剤」または「遮断剤」としては、物質がNC要素の間またはその中に挿入されるかどうか、または物質がNC要素について一時的な競合的結合部位を提供するかどうかまたは別の方法で、それ自体が水素結合を妨げるかまたはNC要素中に空間を生じる任意の不揮発性化学添加剤またはナノスケール粒状材料が挙げられる。例として、カフェインおよび他のキサンチン誘導体は、NC要素の単離および再分散を容易にするために有利に使用され得る小分子遮断剤である。理論に拘束されることなく、特定のプリン(例えばカフェインおよび他のキサンチンまたはキサンチン誘導体)およびピリミジンにおける芳香族窒素原子は、セルロースのヒドロキシ基と水素結合して、平坦で、比較的非極性かつ分子的に滑らかで水スクリーン(water-screening)の外表面を提示し得るので、NC要素の間およびその中の接着を妨げることが構想される。有利なことに、カフェインおよび他のキサンチンおよびキサンチン誘導体は典型的に、NC分散を容易にするのに十分な用量で使用される場合であっても、健康または環境の問題を提示しない量で使用され得る。
【0034】
別の例として、特定の湿潤剤物質は、遮断剤分子として使用され得る。湿潤剤は、NC要素の表面と水素結合を形成し得る複数の親水性部位(ヒドロキシル、エステルおよびアンモニウム基)を有するので、水素結合を介したこれらの要素の互いとの相互作用が遮蔽され、それにより凝集が妨げられる。さらに、これらの吸湿性物質は、生体適合性で、医薬、化粧用および食品産業において既に広く使用される。例示的な短いおよび長い湿潤剤候補としては、限定されないが:グリセリン、カプリリルグリコール、エチルヘキシルグリセリン、トリベヘニン、加水分解ダイズタンパク質、プロピレングリコール、メチルグルセス-20、フェニルトリメチコン、ヒアルロン酸、ソルビトールおよびゼラチンが挙げられる。
【0035】
別の例として、脂肪酸は、遮断剤としても使用され得る。脂肪酸は、親水性部位および疎水性尾部を含む。親水性部位は、NC要素の表面と水素結合を形成し得るので、水素結合を介したこれらの要素の互いとの相互作用が遮蔽され、それにより凝集が妨げられる。有利なことに、それほど多くの親水性部位を含まず、多くの水素結合が繊維と遮断剤の間で生じる脂肪酸が選択され得る。非常に多くの水素部位が凝集を引き起こし得る態様において、脂肪酸遮断剤の疎水性尾部は、水素結合を防ぐかまたは障害することにより、NC要素の凝集を物理的に妨げるように働き得る。態様において、ブロッキング剤は、脂肪酸、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、カプロン酸等であり得る。分散目的で、水溶性脂肪酸が好ましくあり得る。
【0036】
2. さらなる処理選択肢
本明細書に開示される乾燥/分散性添加剤は、NC含有懸濁物に、個々にまたはNCのための乾燥プロセスを向上するためおよびその再分散を容易にするために組み合わせて導入され得ることが理解される。乾燥/分散性添加剤はまた、他の薬剤が、単独で使用される場合に乾燥/分散性添加剤として有効でなかったとしても、それらの効力を高めるために他の薬剤と組み合わせて使用され得;それらの効力を高めるために乾燥/分散性添加剤と組み合わせて使用されるかかる薬剤は、「アジュバント」と称される。乾燥/分散性添加剤またはアジュバントの1つ以上は、相乗的な様式で一緒に作用し得ることがさらに理解される。さらに、乾燥/分散性添加剤の組合せは、初期NC懸濁物の調製の間に、および/またはアジュバントの添加有りまたはなしで、セルロース性供給物の供給原料から初期NC懸濁物を作製するために使用されるプロセスの前、その後もしくはその間に、連続して導入され得る。例えば、非ポリマー性添加剤は、供給原料から初期NC懸濁物を作製するために使用されるプロセスの間に添加され得るが、望ましくは化学前処理の後に添加される。
【0037】
本明細書に開示される製剤および方法を使用する処理に適したNC含有懸濁物(すなわち初期NC懸濁物)を形成するためのプロセスは、当該技術分野で良く知られる。かかるNC含有懸濁物を形成するために、セルロース供給物は、機械的技術および任意の化学的処理を使用して、構成要素セルロースナノ材料を抽出し、それらを液体媒体中に懸濁させるために保持するように処理され得る。初期NC懸濁物からこのように抽出されるNC要素は、開示される製剤および方法を使用して処理され得る。
【0038】
より詳細に、高圧均質化、マイクロ流動化、超研削(super-grinding)、凍結破砕、蒸気爆発、精製および高密度超音波処理などの機械的処理が、セルロース供給材料を崩壊させて、それらの構成要素NC要素を生じるために当該技術分野において公知であり;他の機械的技術は、当業者に良く知られる。かかる機械的処理は、機械的脱繊維化の形態と称される。しかしながら、機械的処理は、かなりの量のエネルギーを必要とする。そのため、機械的脱繊維化プロセスの間のエネルギー消費を低減するために、種々の化学的および酵素的戦略を使用して、機械的処理の前にセルロース供給物が前処理されており、かかる戦略はまとめて、本明細書において「化学的前処理」と称される。また、NC要素の化学的改変は、それらの特性を変化させるために、機械的脱繊維化の後に実行され得る。
【0039】
本明細書に開示される乾燥/分散性添加剤は、セルロース供給物供給原料からのNC要素の抽出により生じる第1のNC懸濁物を処理するために使用される代わりにまたはそれに加えて、部分的に処置されたセルロース供給物の種々の懸濁において使用され得る。例示的な態様において、部分的に処理されたセルロース供給物の供給原料懸濁物、例えば化学的に前処理されているが機械的脱繊維化にはまだ供されていないセルロース供給物の懸濁物を処理するために、単一の乾燥/分散性添加剤が使用され得る。例えば、この方法では揮発性添加剤が使用され得る。揮発性添加剤は典型的に、例えばその化学的前処理の後および/またはそれが機械的脱繊維プロセス(均質化、マイクロ流動化、研削、高密度超音波処理等)を経験する直前に、パルプ供給原料懸濁物に直接注入され得る非粘性流体として製剤化され得る。この様式で、揮発性部分は、繊維が、より大きなパルプ(セルロース)鎖、機械的脱繊維化の間に保持される人工物から引き離される場合に個々の繊維の間でおよびその中で混ざり合わされる。
【0040】
別の態様において、不揮発性添加剤または温度応答性ポリマー、例えばLCSTポリマーは、乾燥/分散性添加剤を使用して初期NC懸濁物を処理する代わりに、またはそれに加えて、部分的に処理されたセルロース供給原料を処理するために使用され得る。不揮発性添加剤およびLCSTポリマーは一般的に、溶解された水溶液となるように粘性の流体または粉末化された固体として生じる。それらの高い粘性のために、これらの構成要素は、直接適用/溶解または添加剤の濃縮された溶液とNC懸濁物流出物を組み合わせることのいずれかにより、望ましくは機械的脱繊維化の後に添加される。
【0041】
他の態様において、種々の前処理剤を用いた前処理は、本明細書に開示される乾燥/分散性製剤を添加する前に有用であり得る。例えば、セルロース供給物は、上述されるように機械的脱繊維化の前に特定の化学前処理物質に供され得る。酵素、アルカリ-酸溶液および/またはイオン性液体などの化学的前処理物は、例えばセルロース部分を保存しながら、セルロース供給物中のリグニンおよびヘミセルロースを破壊し得る。これらの化学前処理物質は、以前に記載されるようなその後の機械的処理のエネルギー消費の低減を補助する。さらに、化学前処理物質は、抽出されたNC要素の表面化学を、本明細書に開示される乾燥/分散性添加剤を用いた処理に対してより受容的にし得る。NC要素の表面化学は、セルロース性材料の原料供給物(例えば軟材、硬材、ダイズの穀皮、小麦のわら、バガス、テンサイパルプ等)および実行される処理技術(例えばKraft vs Sunburst)に応じて変化することが知られる。さらに、カルボキシメチル化、酸化およびスルホン化などのさらなる化学的処理は、NC表面上に永続的なアニオン性の電荷を生じるために、工業的プロセスの間に実行され得る。本明細書に開示される乾燥/分散性添加剤による処理のためにNC要素の集団の表面化学を最適化するために、これらの要素は、短いアミンまたは正のオリゴマー種を用いて前処理されて、NC要素の間のイオン性力を軽減し得;かかる前処理は、乾燥/分散性添加剤の添加の前またはそれと共に実行され得る。かかる前処理剤の例としては:エチレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、1,3-ジアミノペンタン、エタノールアミン、トリエタノールアミン(triethynolamine)、メラミンおよびEDTAが挙げられ;他の前処理剤は当業者に良く知られる。
【0042】
ある態様において、EDTAなどのキレート剤またはMGDA(メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩)、GLDA(グルタミン酸四ナトリウムジアセテート)、GEDTA (EGTA)(エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸)などの同等のキレート剤等は、NC要素を懸濁するために硬水供給物が使用される場合に前処理物として有用である。態様において、LCSTポリマーは、硬水カチオンをキレート化するためにEDTAを使用する後またはそれと同時にNC懸濁物中で使用される乾燥/分散性添加剤として選択され得る。態様において、キレート剤、例えばEDTAは、初期NC懸濁物を処理して、それにより懸濁流体中の二価のカチオン残存物を錯体化するために使用され得る。
【0043】
他の有用な前処理物は、当業者により容易に構想され得る。
【0044】
3. 例示的製造物品
態様において、本明細書に開示される系および方法に従って調製されるナノセルロース要素(NCE)は、種々の製造物品に組み込まれ得る。NCEは、商業的製品を形成するための大きな利点を提供する。
【0045】
態様において、これらの材料は、製剤または組成物中の他の活性剤を支持するマトリックスを提供するために工学的に作り変えられ得;かかる材料は、それらの意図される用途に活性剤を都合よく運ぶおよび送達するために、光学的透明性および機械的強度などの特性を有するビヒクルを有利に提供する。本明細書で使用する場合、用語「活性剤」は、所望の化学的、物理的または生物学的な効果を生じる任意の物質をいい、ここで該物質は、本明細書に開示されるようなNCE生成物(マトリックス、コーティング、物質、充填剤等)とのその関連性とは独立して、化学的、物理的または生物学的な効果を生じ得る。かかる活性剤は、本明細書に開示されるNCE系生成物中に含まれ得る(例えばその中で輸送される、それにより包まれる、それから分配されるまたはそうでなければそれにより活性の示される部位に方向づけられる)。限定されない例として、活性剤としては、洗濯製品(例えば洗濯洗剤、漂白剤、酵素およびファブリック柔軟剤などの物質)、石鹸、化粧品、医薬製品、農業有効成分等(その特定のものは以下により詳細に記載される)が挙げられ得;かかる活性剤は、それに埋め込まれる、それに取り付けられるまたはそうでなければそれに結合されるNCEマトリックスにより支持され得、ここで該マトリックスは、活性剤のための活性の部位に活性剤が送達されること可能にする。ある態様において、NCE系マトリックスは、それら自体の特性を有するが、マトリックス自体の固有の特性を改変するように意図される活性剤、例えば色を加えるかまたは変えるための顔料、染料または他の着色剤、芳香剤、臭気吸収材、殺菌剤等の封入を支持し得;かかる活性剤は、それにより最終形成物品にそれらの特性を付与するためにマトリックスを含む製造物品に組み込まれ得る。
【0046】
他の態様において、NCEを含む材料は、とりわけ向上された強度および弾力などのかかる非NCEマトリックスの特性を向上するために、非NCEマトリックスに一体化され得る。上述されるように、安く、豊富で、持続可能で、生分解性であるNCEの特性にも関わらず、製造物品におけるそれらの広い採用は、これらの粒子の懸濁物に関連する欠点により制限されており:一旦懸濁されると、NCEは、かなりの体積の液体の輸送を必要とし;懸濁物が乾燥すると、それは非可逆的な角質化を経験し、そこに含まれるNCEを再懸濁することが妨げられる。本明細書に開示される方法および組成物は、NCEを再懸濁可能にし、そのためにその例が本開示に記載される種々の製品中に含まれるために利用可能である。
【0047】
a. マトリックスとしてのNCE:一般的な特徴
本明細書に開示されるように作製される分散されたNCEは、機能的または活性な剤をその間隙内に保持し得る高度に多孔性の三次元ナノスケール網状組織に形成され得、他の成分の添加ありまたはなしで、それら自体の固有の特性を最適化するように工学的に作り変えられ得る。かかるマトリックスは、固体、ゲル、液体等として製剤化され得、特定の製品の必要性を満たし得る。さらに、マトリックスは、一旦作製されると、チップ、ストリップ、ボール、立方体、シート等の製品のカテゴリーにより必要とされるような都合の良い任意の幾何学構造に形作られ得るかまたは成形され得、製造物品を作製する。一旦形成されると、NCEマトリックスは、そのまま使用されるかあるいは水または他の水性再分散流体中に再分散されて、最終製品を形成し得る。
【0048】
態様において、NCE系マトリックス製造物品は、活性剤を包む、含む、囲む、支持するまたはそうでなければ送達するように意図される。態様において、NCE系マトリックスは、他の活性剤のための担体として働き、該活性剤はマトリックス構造内に埋め込まれるか、それに取り付けられるかまたはそれにより支持され;かかる状況下で、マトリックスは、活性剤の支持体と称され得る。他の態様において、NCE系マトリックスは、活性剤を囲むかまたは包み、活性剤の容器として働く。いずれの場合においても、マトリックスは、活性剤をその活性の部位に運搬するように働き、マトリックスは、活性剤をその活性の部位に送達するように工学的に作り変えられる。支持体、容器またはその両方として働くNCE系マトリックスを含む製造物品が構築され得る。態様において、かかる製造物品は、物理的、化学的または生物学的機構による崩壊のために適合され得、それによりそれらが支持するかまたは含む活性剤を放出する。かかる製造物品は、例えば壊れやすいまたは溶解性または崩壊を可能にする他の特性(例えば微生物により消化され得るかまたは酵素により加水分解され得る)を生じるように工学的に作り変えられ得るので、それらは、例えば機械的な力(例えば引き裂く、圧搾する、刺す等)との遭遇の際または水性流体などの化学溶媒との遭遇の際または破壊的な生物学的実体との遭遇の際に、それらが含む活性剤の送達のために適合される。製造物品とかかる物理的、化学的または生物学的な機構との遭遇は、製造物品が、それが含むかまたは支持する活性剤を、活性剤の活性のために示される領域、表面、物質等に活性剤を送達するのに十分に、製造物品の完全性を損ない得る。
【0049】
他の態様において、NCEマトリックス自体の構造は、製造物品に所望の特性を提供する。NCEマトリックスは、特定の用途が必要とする構造的および人工的な特性を提供するように形作られ得る。これらの状況下で、NCEマトリックスは、その機械的または構造的特性により、生成物において所望の効果を生じる。態様において、NCEマトリックスは、活性剤のための担体としてのマトリックスの能力とは別に、マトリックス自体に他の有利な特性を与える二次的な添加剤を組み込み得る。
【0050】
活性剤のための担体としておよび構造単位または構成要素としてのNCEマトリックスの例は、本発明の原理を説明するように以下に記載される。
【0051】
担体としてのNCEマトリックス:生成物分配ビヒクル
NCEマトリックスは、種々の生成物分配適用における使用に適切であり、マトリックス内に埋め込まれる生成物を分配するための都合の良いビヒクルとして容易に働き得る。理論に拘束されることなく、活性剤はNCEマトリックスに導入され得るので、それらは間隙にしみ込みその中に存在するかもしくはマトリックス骨格をコーティングするかまたはその両方であることが理解される。種々の有利な特性は、所望の特性を運搬する二次的な添加剤をマトリックスに導入することにより、NCEマトリックスから製造される物品に与えられ得る。例えば、特殊な放出紙は、NCEマトリックス内のシリコーン接着剤を使用して調製され得るので、より接着性の低い裏打ちが必要になる。
【0052】
態様において、NCEマトリックスは、家庭製品および個人ケア産業において使用される活性剤のためのビヒクルとして働き得る。それらは脱水されて再分散され得るので、本明細書に開示される方法に従って調製されるNCE組成物は、洗剤、漂白剤、ファブリック柔軟剤、石鹸、香料剤、皮膚ケア品目、化粧品等の活性剤のためのビヒクルとして使用され得る。
【0053】
一旦その中に配置される活性剤および他の二次的添加剤を含む所望のNCEマトリックス懸濁物が形成されると、それは形成物品としての使用のために乾燥され得る。NCE間隙内に所望の活性剤を含む乾燥NCE懸濁物は、乾燥またはゼラチン化されたシート、チップ、ボール、立方体等として形成され得、次いでそれは活性剤の再懸濁および放出に伴って再水和され得る。これらの形態要素は、大きな流体体積を必要とすることなく、製剤のための都合のよい輸送および保存を可能にする。
【0054】
例えば、シートは、生成物または活性剤を所望の時間にわたり所望の環境内に分配するために、NCE系マトリックスを使用して形成され得る。シートは、マトリックス間隙内に配置される洗剤および/または他の洗濯剤(例えば酵素または漂白剤)を有するNCE系(mased)マトリックスから形成され得;このシートは、洗浄機械または食器洗い機に送達され得、水と接触するようになり、洗濯剤(1つまたは複数)を送達させ、NCE系マトリックスは最終的に、NCE構成要素の分散により溶解される。
【0055】
したがって別の例として、再分散性乾燥チップ、プラーク、ストリップ等は、都合のよい乾燥ビヒクル内の種々の活性剤を支持し得、簡単な再水和または再分散によりそれらを最終的な製剤として放出させる。例として、石鹸またはシャンプーチップは、懸濁物を脱水して固形組成物を生成することにより所望の石鹸生成物を含むNCE懸濁物から作製され得る。軽量の都合のよりサイズのチップは、消費者により水で再水和され得、必要とされる基準で再構成された最終的な液体製剤を形成する。商業的な態様において、製造業者は、公知の体積の専有の容器を用いた使用のための正確に測定されたチップを作製し得、消費者に、簡単にチップを挿入させ、指定の量の水を容器に充填させる。態様において、NCE系組成物を再構成するための容器は再利用可能であり得るので、製造業者に、家庭製品または化粧品を輸送、展示および保存するためのプラスチックまたはガラス容器の使用を回避させる。他の態様において、容器は必要でなく、NCE系組成物のチップは、水で洗浄しながら手に保持され得る。したがって、手を洗浄するプロセスの間に再構成が起こり、これは、旅行または水が容易には利用可能ではない地域で特に有用であり得る。
【0056】
平坦なチップの形状は例示態様として記載されているが、NCE系組成物は、限定されないが消費者の利用に魅力的な形態を提供するように選択される形状を有する規則的または不規則な球、長方形、立方体、円筒、厚いシート、ロール等の任意の所望の幾何学構造で形成され得ることが理解される。
【0057】
家庭使用のためのNCE系マトリックス内の有用な活性剤の例としては、漂白剤、洗濯洗剤およびそれらの組合せ、食器洗い機石鹸および食器洗い機処理剤、トイレボウルクリーナー、ならびに他の工業的なひどい汚れの清掃生成物、例えばオーブンクリーナー、床クリーナー等が挙げられる。これらの生成物は、持続放出などの他の有利な特性を組み込むように製剤化され得る。類似のNCE系生成物は、活性剤がNCE組成物のマトリックス内で運ばれ得る医療生成物などの、他の分野のために構想され得る。
【0058】
態様において、上に例示されるものなどの活性剤は、良く知られた乾燥機シートの代用品として、布乾燥機内で送達される、NCEマトリックスで形成されるシート内に埋め込まれ得る。従来の乾燥機シートは、通常圧縮されたポリエステルまたはセルロース繊維で作製される繊維性のシートであり、これは、ファブリック柔軟剤、香気、静電気低減剤等の洗濯生成物の薄いワックス状の層内でコーティングされる。高温乾燥器内で使用される場合、これらの洗濯物質は、乾燥機シート繊維から溶け出し、洗濯負荷全体に均一に分布し、列挙される材料の全ての利点を適用する。しかしながら、従来の乾燥機シートに使用される材料は石油由来であり得、生分解に抵抗性であり得、埋め立てごみ中のこれらの材料の集積がもたらされる。代替物として、NCEは、洗濯生成物のための担体マトリックスとして使用され得、従来の不織材料に置き換わり、従来の乾燥機シートに対する環境にやさしい生分解性の代替物を提供する。態様において、NFC、MFCまたはその混合物は、単独でまたはパルプもしくはパルプ系材料などの他のマトリックス材料と組み合わせて使用されて、本明細書に開示される乾燥機シートなどの物品を作製し得る。有利なことに、NCEマトリックスの使用は、乾燥器内に分布される活性剤のための担体として働き得る多孔質材料を形成しながら、高い強度および生分解性を提供する。
【0059】
この目的で、本明細書に開示されるNCE再分散のための製剤は、より高い濃度の疎水性セルロースポリマー(例えば約0%~約10%の範囲の疎水性セルロースポリマー(例えばメチルセルロース)など)を有し、繊維の強力な網状組織を生じるように改変され得る。態様において、可塑剤は、好ましくは水による飽和および弱まることからシートを保護するように疎水性であるべきである。特定の酸のジエステルおよびトリエステル、例えばクエン酸トリエチルまたはフタル酸ジエチルならびに特定のアルコールのジエステルおよびトリエステル、例えばトリアセチンおよび植物油などの可塑剤が有利である。より疎水性の可塑剤は、水系NCE懸濁物と混合することが困難であり得るが、機械的混合は、これらの限定された溶解性を克服して、このように形成される乾燥機シートに所望の疎水性特性を付与し得、そのため、それらは布乾燥機内の熱および移動により課されるストレスに耐える。特により疎水性の適用において、脂肪酸も可塑剤として使用され得る。
【0060】
NCEマトリックスが形成される後、典型的に乾燥機シートをコーティングする材料は、次いで、当該技術分野で良く知られる技術、例えばその中に懸濁されるファブリック柔軟剤、静電気防止化学物質および天然の香気などの物質を含むワックスの粒子を分散するエーロゾル化スプレーを使用して適用され得る。次いで、このワックス状材料は、シートの表面上で硬化されるので、それはシートから溶け出し、加熱された乾燥機内で布をコーティングし得る。態様において、活性剤は、NCEマトリックスが乾燥されてシートを形成する前に、それに予め混合され得る。他の態様において、NCEマトリックスは、最初に形成、押し出し成形および乾燥され得、活性剤(1つまたは複数)を含むワックスはその後に適用される。NCEマトリックスを使用することは、かなり小さな繊維に内在的な増加された表面積およびより多くの間隙のために、同様の寸法の従来の洗濯シートと比較して、それぞれのシートに対してより大きな利用可能表面積を提供する。より大きな表面積により、それぞれのシートは1シート当たりより大きな体積の活性剤を保有し得、洗濯の単回負荷に必要とされるシートの必要な数が低減される。
【0061】
態様において、洗濯シートは、以前に記載されるNCE分散剤技術を使用して、例えばかかる分散性を容易にするためのセルロースポリマーおよび可塑剤を使用して、単一のシートとして作製され得る。マトリックスが再分散されたNCEで形成される場合、それを単一のシートに形作る前に、適切な活性剤、例えば洗濯洗剤、清掃生成物、および/または界面活性剤、漂白剤および酵素などの洗濯活性剤ならびにキレート剤、泡立ち防止剤、乳化剤などの任意の成分等が添加され得る。次いで、再分散したNCE、活性剤および二次的な添加剤の混合物は、激しく混合され得;態様において、混合物が空気にさらされて泡になるように、十分な混合が適用され得る。次いで混合物は、従来技術を使用してシートに形成され得、乾燥され得る。一旦調製されて冷却されると、得られるシートは、その物質コア内に洗濯剤、例えば洗剤/界面活性剤または他の清掃生成物を含むが、熱処理に耐えられない酵素および漂白剤などの他のより活性な剤を支持するためのプラットフォームも提供する安定な基板層を提供し得る。
【0062】
他の態様において、シートとして構成されるNCEマトリックスは、層状の配置内に活性剤を囲むように使用され得る。例えば、NCE系シートで形成される2つの外側の層は、洗濯洗剤、清掃生成物または他の活性剤を、サンドイッチのようにそれらの間に包み得る。次いでかかる活性剤は、調製されたシートの表面上に分散され得、次いでこれは、別のシートにより覆われ、2つの層は、これらのより繊細な構成要素に損傷する熱または力を適用することなく、シート「サンドイッチ」内に活性剤をトラップするように、一緒になって緩やかに圧縮される。したがって、複合積層構造は、シート形成の間にマトリックス内に埋め込まれる活性剤(洗剤、界面活性剤、乳化剤、硬水処理のためのキレート剤等)およびマトリックスの表面上に分散され、熱または過剰な圧力に供されない任意の活性剤または二次的な添加剤の両方を分配するのに利用可能になる。積層担体構造が水に曝露されて分解する場合、全ての成分は、洗濯プロセスの間には利用可能になり、それが支持する活性剤および/または他の添加剤の全てを放出する。
【0063】
活性剤は、例えば圧縮された粉末として固形形態で存在し得るか、または粘性ゲル内に懸濁/乳化され得るか、またはそうではない。分散可能であるNCE層は、特定の適用により必要とされる場合に、例えば洗浄サイクルの間に水(またはお湯)と接触される場合に活性剤を放出し得る。他の態様において、複数のNCE層は、その間に異なる活性剤が積層されるように整列され得る。かかるNCE層は、同じ放出/再分散特性または異なるものを有し得、これは、選択される適用と矛盾しない、異なる活性剤の示差的な放出を可能にし得る。
【0064】
LCSTポリマーは、洗濯または石鹸または他の清掃シートと一緒になってまたは単独で使用され得、それらの割合は、それらの低臨界溶液温度またはそれらの親水性が移行する温度に基づいて選択され得る。可塑剤の量はまた、シートが溶解するタイミングを微調整するように調整され得る。さらに、LCSTポリマーの種類および量を変えることにより分散性を調整することは、異なる温度を必要とする適用のために有用であり得、可塑剤の量を調整することにより、より速いまたはより遅い溶解が可能になり得る。
【0065】
態様において、芳香剤、軟化剤等と共に石鹸生成物を含むNCE系マトリックスは、旅行中の都合の良い用途について製剤化され得るので、それは、水との接触の際に活性剤を送達し、それにより前もって再構成することなく、手洗い、食器洗い等を可能にする。以下により詳細に議論されるように、着色剤および芳香剤などの添加剤は、マトリックスの特性に影響するために、他の活性剤に付随するために、または主要な活性剤自体として働くために、油系または水系送達ビヒクルを使用して、NCE系マトリックス内に組み込まれ得る。本明細書で使用する場合、色生成添加剤は、任意の顔料、染料、芳香剤または可視スペクトラムに沿って異なる波長の光を吸収または散乱することにより、マトリックスまたは物品の知覚される色を変化させる他の着色剤であり得る。種々の産業的、家庭、化粧、ファブリックおよび他の製品のための種々の色生成添加剤は、本明細書に開示されるNCE系製剤およびマトリックスと適合性である。
【0066】
例えば、シートまたは形成物品(例えばボールまたは立方体)は、例えば閉鎖空間における臭気制御目的で使用され得る、マトリックス間隙中の芳香剤と共に、NCE系マトリックスを使用して形成され得る。より詳細に、NCE系マトリックスは、高レベルの臭気を放つ(odoriferant)材料を有する狭い部屋、例えばクローゼット、運動カバン、スーツケース等における放出に適合されるか、または臭いを放ちやすい個人の物品(例えば靴の中敷きまたは裏当て)における使用のために適合される臭気遮断化学物質または天然の香気を含むように使用され得る。これらの目的に適合されるNCEマトリックスは、臭い防止剤の放出を調整するためまたはそれらの放出を特定の環境条件(例えば体温の足と接触する場合に臭気制御物質を放出する靴の裏当て)に適合させるための可塑剤または他の添加剤を組み込み得る。類似に、NCE系マトリックスは、マトリックス間隙内の脱臭剤または発刊抑制物質と共に製剤化され得、該NCE系マトリックスは、かかる生成物の皮膚へのより耐久性の適用を可能にするように働く。
【0067】
臭気制御物品のためのベース製剤は、可塑剤、例えばグリセロールおよびメチルセルロースなどのセルロースポリマーで処理されたNCE供給物を含み得、乾燥NCEに対するこれら2つの活性物の比は1:1~12:1の範囲である。これは、他のより疎水性の化学物質、例えば芳香族および油系香気が懸濁され得るNCE系マトリックスを生成し、湿気または水溶液との接触による分解を防ぐなどのさらなる利点を提供し得るより疎水性の環境を生じる。
【0068】
臭気の制御、臭気の遮断または臭気の生成のいずれが意図されるにせよ、これらの臭気関連活性剤(例えば臭気防止、臭気遮断または臭気(芳香)生成剤)は、所望の濃度(例えば約1%~約30%または10%~約20%の範囲)でNCE系マトリックスに混合されて、必要な香気強度を達成し得る。仕上げられる場合、典型的に0.1mm~3mmの範囲であり得る厚さを有するシートを形成するために拡散可能である粘性の液体が形成されるか、または該粘性の液体は、物品を形成するための技術分野においてよく知られる技術を使用することにより、任意の他の所望の形状に形成され得る。上述のフィルムまたはシートについて、広げた後、それらは低温オーブンで乾燥されて、他の製造物品とは別々に使用され得るかまたはそれに一体化され得る乾燥した紙状の層を形成し得る。このように形成された物品は、平坦なシートであるかまたは三次元的な形状であるかのいずれにせよ、使用される可塑剤の量により決定される速度で所望の臭気を一定に放出し得る。シートが提供する可撓性の幾何学構造は、接近がより困難な領域、例えばスニーカーまたは家庭内の薄い裂け目において有用であり得る。異なる幾何学構造は、示差的に香気を分配することが理解される。態様において、香気はこれらのシートまたは形状、例えばポッドまたはケースの内部に懸濁され得る。
【0069】
態様において、本明細書に開示される系により、種々の香気が使用され得る。用語「香気」は、本明細書で使用する場合、記載されるマトリックス、形状およびビヒクルに故意に一体化され得、それらにより送達され得る種々の臭気をいう。例えば、気持ちのよい香気は、化粧もしくは美的な目的に、または気持ちの悪い臭気をごまかすために使用され得る。香気は、医学的、獣医学的または農業的な目的に使用されて、昆虫忌避剤、農薬、フェロモン、成長ホルモン等として作用し得る。香気は、揮発性の芳香族化合物、例えば精油、ヒドロゾル、芳香ミクロカプセル等から供給され得る。例示的な供給物は、容易な適用または混合のために、溶液中に懸濁される生物学的油および化学的供給物を一体化し得る。香気のための他の供給物は、ヒドロゾルなどの水系であり得る。NCE系ビヒクルの生分解性の性質は、環境中に自然に放出される香気または他の活性剤を送達するために、それらを特に有用にし:ビヒクル(例えばシート)の分解は、活性剤の放出を容易にし、:放出の速度は、活性剤およびビヒクル構成要素の注意深い選択により、それぞれの構成要素の比の改変により制御され得る。
【0070】
本明細書に開示される製剤に基づく香気系の技術の他の例としては、限定されずに、農業区分の殺虫剤、家庭内使用のための芳香剤および臭気中和剤、ならびに家庭の周囲の落ち着いた行動を促進するためのペットホルモンが挙げられる。ベース技術の注意深い操作を通じて放出の速度を制御することにより、適用は、種々の消費者の必要性のため、例えば植え付けの季節の間に迅速におよび植物が十分に成長する場合によりゆっくりと殺虫剤を放出する農業製品のために個人化され得る。
【0071】
態様において、農業用有効成分を含むNCEマトリックスは、農業用製品の処理において使用される農業用製品に適用され得、ここでかかる処理は、当業者に理解されるように、これらの添加剤、肥料、農薬、ホルモン、栄養素あるいは農業産物の寿命もしくは健康もしくは収穫後の条件を向上することまたは該産物に付属する有害な条件を改良することを意図する他の処理剤を含み得る。例として、農業用有効成分を含むNCEマトリックスは、植物または種子のためのスプレーによるコーティングとして使用され得る。生きた植物または植物材料について、NCEマトリックスは、昆虫、真菌等を追い払うもしくは殺傷することを意図する活性剤を含み得るか、または栄養素もしくは他の有益な薬剤または他の農業用有効成分を含み得る。種子について、NCEコーティングは、種子に印をつけるかもしくは明示して、色の等級づけもしくは他の区別を可能にするために使用され得るか、または湿度、埃もしくは他の物理的汚染物質を追い払い得る。NCEマトリックスは、成長の促進または害虫および真菌に対する保護を意図する活性剤、例えばかかる活性剤の持続放出製剤を支持し得、さらに機械的損傷に対して保護し得る。態様において、種子コーティングのためのNCEマトリックスは、正確に製剤化された薬剤(例えば肥料、微量栄養素、作物保護化学物質および生物製剤、温度感受性ポリマー、水保持材料、着色剤および有益な生物等)を含み得、それらは、適用後、適切な時間間隔にわたり分配され得る。NCEマトリックスはさらに、正確に位置づけられた間隔で、マトリックス内に埋め込まれ、任意に種子自体の周囲に水を保持し得る材料と組み合わせられる栄養素、肥料または除草薬などの保護物質を予め充填された種子を支持し得る構造に形成され得、それにより種子の植え付けを容易にし、種子の成長を最適化する。
【0072】
例えば、以前に記載されるように、芳香のある材料を含むマトリックスは、任意に臭気を放つ物質(odoriferant)の放出を制御するための可塑剤と組み合わせてNCEマトリックスから容易に形成され得る。この技術は、例えば農業用有効成分としてフェロモンを使用して、農業用目的に適合され得る。フェロモンは、同じ種のメンバーにおいて社会的応答を引き起こす、分泌または排出される化学物質であると理解される。それらは該用語が一般的に理解されるような「臭気」を有さないことがあるが、フェロモン受容体は典型的に、嗅覚上皮または鋤鼻器に配置され、それらが従来のように同様の経路で処理されることを示す。したがって、フェロモンは、本開示の目的のための臭気関連活性剤であると考えられる。
【0073】
特定のフェロモンは、農薬または人工成長ホルモンとしての農業における用途を有することが知られる。フェロモンは、NCEマトリックスに懸濁されてシートまたは形成物品に形成され得、フェロモンは、NCEマトリックスが分解する際に制御された速度で環境に放出される。放出の速度は、可塑剤の注意深い選択およびマトリックス基質中のその量の改変により制御され得る。疎水性は、マトリックス、例えばセルロース性ポリマー添加剤(例えばより高いかまたは低い疎水性のポリマー)に疎水性特性を付与する添加剤の選択により制御され得る。より疎水性の材料を含むNCEマトリックスは分解するのにより長くかかり、より遅い速度で環境にフェロモンを放出し、長期間の成長を促進する。この技術のさらなる利点は、土壌に空気を含ませるためおよびセルロースを二酸化炭素などの植物に有用な材料に分解させるための環境中の有用な昆虫の活性を促進する、土壌へのセルロースの寄与である。
【0074】
農業的な効果を有する他の活性剤は、成長している植物への適用のためにNCEマトリックスに同様に組み込まれ得ることが理解される。例えば、態様において、成長ホルモンは、マトリックスに含まれ得、上述のように制御された様式で放出され得る。他の態様において、殺虫剤、殺菌剤、農薬等は、NCEマトリックスに組み込まれ得る。これらの目的で、マトリックス自体は、適切な作用機構である場合に、活性剤の周囲空気への拡散を容易にするために可塑剤を含み得;かかる可塑剤は、活性剤が空気で運ばれる場合に活性剤の拡散を補助するように、有利に吸湿性であり得る。未成熟な放出なしにおよびマトリックス自体を損傷することなく、活性剤をNCEマトリックス内に保持するために、マトリックス材料は、セルロースポリマー、デンプン、ゼラチン等の濃化剤を使用して厚くされ得る。DEET、ペルメトリン、ピカリジン等の昆虫忌避剤について同様の技術が使用され得る。これらの材料は、NCEシートに組み込まれ得、皮膚または衣類の物品に直接適用され得る。シートが溶解する場合、残存の活性剤は局所的に堆積し、昆虫忌避剤活性を提供し続ける。可塑剤の適切な選択は、保護を延長するために昆虫忌避剤の放出を延長し得る。
【0075】
また、農業用目的に使用されるマトリックスは、農業用活性剤を保護し、適用後にそれらが洗い流されることを防ぐために、疎水性構成要素でコーティングされ得るかまたはそれと共に製剤化され得る。活性剤を保護し、制御放出を提供するこの能力は、延長されるかまたは予め決定される時間にわたり植物に肥料を分配するために有用であり得る。対照的に、現在の肥料製剤は水溶性であるので、それらは雨の日に容易に洗い流され得る。NCEビヒクルについての構成要素のより疎水性の選択(より疎水性のセルロース材料、例えばメチルセルロースの選択によりまたは油もしくはワックスの添加により促進される)は、地面または高い湿度を有する領域などの湿度のある環境で分解されるのにより長くかかり、農薬、ホルモン、肥料等をより遅い速度で環境に放出し、長期間の成長を促進することが理解される。この技術のさらなる利点は、土壌に空気を含ませるためおよびセルロースを二酸化炭素などの植物に有用な材料に分解するための環境中の有用な昆虫の活性を促進する、セルロースの土壌への寄与である。本明細書に開示されるNCE系技術は、より強く、より豊富な作物のための植物の健康な成長を促進するために、農業用活性剤と協同し得る。
【0076】
ii. 構造としてのNCEマトリックス:溶解性特性
NCEマトリックスは、それらのNCE自体の構造枠組みへの取り込みのために、機械的特性を有する。そのためマトリックスは、強度および安定性などの有利な機械的特性を有するが、消費者の用途について適切な時間で溶解可能であるように工学的に作り変えられもする形成物品のための構造を支持または覆うように使用され得る。
【0077】
この特性は、消費者の使用の間に容器の内容物を保持するのに十分な耐久性を有する容器を構築させるが、使用後の容器の容易な分解および生分解性をさらに可能にする。この特性は、容器を、農業用生成物を環境に放出するために、短い時間で溶解するように意図される肥料または農業用生成物のための容器など、より短命な目的のために構築させる。この特性はまた、容器を、水に遭遇した場合に迅速に溶解するため、例えば洗濯または他の家庭でのケア目的のために活性剤を送達するために構築させる。
【0078】
例として、NCEマトリックスで形成されるシート、ストリップ等は、内部の活性剤を覆うかまたはそうでなければ送達するための包装材(wrapper)または容器を提供するために使用され得、そのために有用な材料について容易に溶解する(分散可能な)容器を提供し、かかる材料を消費者により都合よく分散させる。例えば、清掃生成物、洗濯洗剤または食器洗い機石鹸などの活性剤は、分散可能なNCEマトリックスを含む生分解性のシートに囲まれ得る。NCE系包装材料を用いて1つ以上の区画が形成され得るので、種々の活性剤は必要な場合に単一の物品内に別々に維持され得る。態様において、NCEマトリックスで形成されるシートは、洗濯生成物などの活性剤を閉じたNCEの包み内にペイロード(payload)として覆うための容器を形成するために一緒に連結され得;かかるシートはそれ自体で、それらの間隙内に活性剤も含み得るので、それぞれの1つが他のもの(1つまたは複数)とは別々に維持される1種類より多くの洗濯生成物が送達される。示差的な溶解性プロフィールは、NCEマトリックスシート自体内の活性剤を最初に送達させ、次いでその完全性を損なうようにペイロードの周囲の封入シート構造の十分な溶解を続けることを可能にし得、ペイロードの送達を可能にし得る。
【0079】
態様において、NCE系包装材料は、例えば粉末化もしくはゲルもしくは液体の形態の洗濯洗剤または他の清掃生成物を含み、任意に漂白剤、シミ除去のための酵素、ファブリック柔軟剤等の他の活性剤を含むペーストまたはゲルを囲み得る。態様において、上に例示されるもの(例えば清掃または洗濯生成物)などの活性剤は、活性剤のためのポッド様容器を形成するために、NCE系包装材に包まれ得る。態様において、NCEマトリックスシートで形成される包装材は、生成物の完全に周囲を包み得るか、または包装材は、活性剤の上および下に配置されて、活性剤を囲むように密封され得る。2つのNCE包装材シートを密封することは、熱を使用して(焼くこと(searing))またはそれらを一緒に張り付けるような天然のポリマー性接着剤を適用することにより実行され得る。態様において、再分散性マトリックスで形成され、約1gmの重量である薄く軽量なシートは、その内部に約30gmまでの洗剤粉末を含むようなポッドまたは包み(envelope)として形作られ得る。他の態様において、NCE系マトリックスは、開放された細長いチューブとして円形の型から押し出し成形され得る。内部に活性剤を有するかまたは有さないチューブは所望の長さに切断され得、その末端は、つまむこと、焼くことまたは接着することにより密封され得る。代替的に、中空のチューブは所望の長さに切断され得、一端は密封され、その後所望の成分が中空内部に充填される。
【0080】
さらに他の態様において、NCE系マトリックスは、トイレボウルクリーナーなどの清掃生成物のための包装材または容器として使用され得、トイレボウル内に分配される再利用可能なブラシおよび清掃生成物を含むトイレボウル清掃のための従来の系に変わって使用される、使い捨てで、生分解性のトイレ清掃パッドまたは清掃ブラシの作製を可能にする。かかる態様において、清掃生成物は、単回使用で、流すことができる生分解性の清掃パッドまたはブラシを形成するために、1つ以上の外部NCEマトリックス内に包まれ得、それは、清掃パッドを使用してトイレの表面を擦る前に使用者により棒、伸長可能な部材または他のアプリケーターに取り付けられ得る。清掃プロセスの完了時に、清掃パッドは、アプリケーターから取り外されて、清掃生成物をすすぐために使用されたボウル内の水で流され得る。有利に、清掃パッドは、アプリケーターの近位端上の機構により使用者により取り外し可能であり得るので、使用者は、流すことができるパッドまたはブラシを除去するために、それらに直接接触する必要はない。さらなる利点として、清掃生成物を含むNCE系マトリックスは、研磨特性(以下により詳細に記載される)を有し得、これらの特性は、パッドの擦り表面がトイレボウルの表面を清掃するために適合されるように最適化され得る。アプリケーターおよび流すことができるパッドまたはブラシを含むこの系は、トイレの汚染された表面への曝露と曝露の間に保管されなければならない複数回使用トイレブラシがないので、従来のトイレボウル清掃系に対する衛生的な代替物である。その代り、アプリケーターは、汚染された材料の取り付けに抵抗する滑らかなプラスチック材料で作製され得;その代り汚染物質は、清掃パッドの外部のNCE系マトリックスに付着したままであり、パッド自体は洗い流される。NCE系マトリックスの生分解性は、清掃が達成された後にパッドを迅速に分解させ、水で流した後に配管が詰まるリスクを最小化する。
【0081】
分散性NCEマトリックス系容器内に囲まれるペーストまたはゲルは、活性剤を、水溶性、非水性、粘性の液体ポリマー、例えばポリ(プロピレン)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレン等およびそれらの誘導体で形成されるビヒクルに懸濁することにより形成され得る。水溶性、非水性、粘性液体ポリマー、例えばセルロースポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等に溶解性である濃化剤は、任意に分散性(すなわち水溶性)、吸湿性可塑剤、例えばグリセロールと組み合わされて、任意に添加され得る。態様において、ペーストまたはゲルは、洗剤およびセルロースポリマーまたはポリマーの組合せを、8:1~15:1の比、分散性粘性ポリマー対セルロースポリマーおよび吸湿性可塑剤の活性改変剤の2:1の比~8:1の比の範囲、ならびにセルロースポリマー対吸湿性可塑剤の50/50~95/5の比で組み合わせることにより形成され得る。これらの物質を含む組成物は、高度に粘性でゲル用の媒体を作製し得、その中に清掃または洗濯生成物、例えば洗剤、漂白剤、酵素、ファブリック柔軟剤等が懸濁され得る。態様において、活性剤(1つまたは複数)についての粉末化または他の濃縮された形態(例えば濃縮液体、ゲル、エマルジョン等)は、利点、例えばそれらが水性流体として一緒に混合される場合にそれらの相互作用のために通常は物理的に合わせることができないいくつかの異なる化学物質のゲル内での共存在を提供し;粉末化または他の濃縮された形態において、これらの化学物質は、それらを離して保存するための別々の区画を必要とすることなく、ゲル内で共存在し得る。さらに、活性剤(1つまたは複数)の粉末化または濃縮された形態のために、それぞれの単位についての体積は、輸送効率を向上するために減少され得る。次いで、ペーストまたはゲルマトリックス内に懸濁されるかまたは乳化される活性剤(1つまたは複数)を含むこの組成物は、本明細書に記載されるようにNCEで形成されたシートまたは包装材内にパッケージングされ得、密封された単回使用容器、例えば単一チャンバーまたは複数チャンバーポーチ、ポッド、またはそうでなければ水と接触した際に容易に溶解して内容物を放出する、安全で生分解性の材料を使用して、洗浄機または食器洗い機内に直接置くことができる適切に形作られたパケットを作製し得る。ポリマーゲル媒体中に分散される活性剤は、例えば層、例えば極端な強度の清掃のための洗剤ゲルに取り付けられる漂白剤含有ゲルの層内の特殊な清掃を容易にするために整列され得、それらはその間のシート材料の層により分離され得ることが理解される。
【0082】
活性剤(1つまたは複数)を包むNCE系包装材はさらに、活性剤の放出を調整するように工学的に作り変えられ得、例えば時間放出容器または溶解の前に特定の水温を必要とする容器を作製する。態様において、この時間を合わせる(timed)または調整される放出は、異なる時間で溶解し得るセルロース添加剤(分散剤材料)の量を調整することによりなされ得る。例えば、1つ以上のLCSTポリマーは、NCE系包装材を形成するために使用され得、それらの比は、それらの低臨界溶液温度またはそれらの親水性が移行する温度に基づいて選択され得る。包装材の溶解のタイミングを微調整するために、可塑剤の量も調整され得る。さらに、LCSTポリマーの種類および量を変えることにより分散性を調整することは、異なる温度を必要とする適用に有用であり得、可塑剤の量を調整することは、例えば異なる活性剤を含む異なる区画を分離するために異なる特性を有する包装材を使用する場合、より速いまたはより遅い溶解を可能にし得る。
【0083】
iii. 構造としてのNCEマトリックス:障壁特性
容器またはフィルムとしての使用のために調製されるNCEマトリックスは、油脂(oil and grease)抵抗(OGR)特性および/または水蒸気もしくは水抵抗(いずれもWVR)特性をNCE系構造に付与するために、これらの適用について最適化され得る。WVR特性はしばしば、gm/m2/日またはg/100in2/日の単位の材料の水蒸気透過性を測定する水蒸気透過速度(water vapor transmission rate)(WVTR)により測定される。まとめて、これらのコーティング、形成物品、ならびに油脂透過性に対する抵抗性を向上するおよび/または水蒸気透過性に対する抵抗性を向上するおよび/または他の流体(液体または気体)に対する抵抗性を向上する材料処理は、「障壁処理」または「障壁作製」材料と称される。OGRおよび/またはWVR特性など、それらが形成された物質または基質マトリックスに付与する選択された流体に対する抵抗性は、「障壁特性」と称される。障壁特性は、種々の流体の示差的な透過性または選択された程度の種々の流体の透過性を可能にするように調整され得る。例として、態様において、障壁作製製剤は、それが処理する物品にOGRおよびWVR特性の両方を付与し得、それぞれの特性の相対的な強度は、例えば疎水性もしくは疎油性を強調するために、製剤自体について選択される成分を調整することによりおよび/またはその成分の相対的な量を調整することにより調整可能である。
【0084】
態様において、障壁製剤は、OGR特性もしくはWVR特性または両方を強調するために調製され得;態様において、障壁製剤は、両方の種類の特性を含み得、製剤構成要素は、OGRもしくはWVR特性のいずれかを一段と強めるようにまたはそれらのバランスを取るように調整され得る。障壁製剤は、NCE、セルロースポリマー、充填剤粒子、可塑剤、フィルム形成バイオポリマー等の成分を含み得、異なる構成およびかかる構成の異なる量は、処理および形成される特定の物品に適用可能な場合に、障壁処理においてOGRまたはWVR特徴を強調するように選択される。例えば、種々のポリマーが異なる程度の疎水性または疎油性を有するある範囲のセルロースポリマーが存在するので、セルロースポリマーは、所望の程度のOGRおよび/またはWVRを生じるように選択され得る。OGR技術は、セルロース誘導体および具体的により疎水性であるものを含み得る。全体的に、以前に記載されたセルロース誘導体は、疎油性(親水性)であるので、より疎水性である他の材料をマトリックスに混合して、より高い水抵抗性または全体的なより高いOGR/VWRを提供することが有益である。例えば、メチルセルロースは、水抵抗性ほど高くはないが良好な抵抗性を提供する。メチルセルロースおよび酢酸セルロースの混合物は、OGRおよびWVR特性の両方を調整するために提供され得る。議論されるLCSTポリマーは、油抵抗性について十分に働くが、それらを用いて作製されるフィルム/コーティングは、室温で可溶性であり、水抵抗性特性を、より有効でなくする。酢酸セルロースおよび脂質は、OGRコーティングをより疎水性に調整するために使用され得る添加剤のいくつかの例であり、これとより疎油性の材料の組合せは、油および水抵抗性の両方を提供し得る。同様に、特定の充填剤は、より疎水性または疎油性の特性を有し:例えば、ワックスなどの充填剤は、疎水性を増加するために選択され得るかまたは例えば、多くの過剰なNCEが、疎油性を増加するために孔遮断剤として添加され得る。疎水性を増加するために脂肪酸も使用され得る。有利に、障壁製剤は、形成物品の表面または混合するための基質自体のいずれかへの容易な適用を可能にするように噴霧可能であり得る。
【0085】
より詳細に、成分のバランスおよび量に応じて、障壁処理剤は、3つの一般的なカテゴリーにおける使用のために製剤化され得:1)OGRおよびWVR特性のバランスが取れ、OGRおよびWVRの両方が有効な程度である障壁プロフィールを有する;2)いくらかのWVRであるがかなりのOGRを有する;ならびに3)いくらかのOGRであるがかなりのWVRを有する。カテゴリー1の障壁製剤で処理される物品は、油反発性(repellency)および撥水性の両方が有利である食品パッケージなどの適用に使用され得る。カテゴリー2の障壁製剤で処理される物品は、例えば油もしくは脂質性(greasy)材料のための容器における油抵抗性がより重要な性質であるこれらの適用のため、および予め測定された量のサラダドレッシングもしくは化粧用ローションなどの油系生成物についてのパッケージのため、またはこの目的での使用における金属製容器の代わりにモーターオイルおよび同様の流体を含み得るより耐久性のある容器としての使用のために使用され得る。カテゴリー3の障壁製剤で処理される物品は、例えばコーヒーカップおよび飲料缶の6パックホルダーにおけるまたは実質的に耐水性もしくは漏れプルーフであることが意図される食料雑貨バッグおよび他の容器もしくは包装材における撥水性(ウォータープルーフも)がより重要な性質であるこれらの適用のために使用され得る。
【0086】
態様において、フィルム形成バイオポリマーは、障壁製剤、例えば混合使用(mix-in use)のために意図されるこれらの製剤に添加され得る。本明細書で使用する場合、用語「バイオポリマー」は、生物の寿命の間に生きている生物により産生されるこれらのポリマーをいう。かかるバイオポリマーとしては、限定されることなく、細菌性セルロース、ケフィア、プルラン、レバン(levan)、ゲランなどの菌体外多糖(exopolysaccharide)ならびにアルギン酸塩、セルロース、カラギーナン、アラビアガム、デンプンおよび植物グリコマンナン(glycomannan)様ローカストビーンガム、マンナン、グアールガムなどの他の多糖等が挙げられ得る。バイオポリマーとしてはまた、ポリヒドロキシ-アルカノエートおよびポリ乳酸誘導体などのバイオポリエステルが挙げられ得る。有利に、プルラン、ケフィア、セルロース、レバン、ゲラン等の特定の菌体外多糖が、フィルムを形成するために使用され得、例えばパッケージング適用に使用される。フィルム形成体として有用または他の有用な機械的もしくは障壁特性を有するバイオポリマーの添加は、障壁製剤を、特定の目的に調整およびカスタマイズすることを可能にし得る。
【0087】
態様において、その中で製剤が支持されるNCEマトリックスの多孔性を処理するために、さらなる基準が有用であり得る。ベース製剤、例えば障壁の疎水性特性を促進するためのステアリン酸または他の長鎖脂肪酸または形成物品についてより疎水性のベース基質を作製するための孔充填剤としてのワックスビーズへの添加が提供され得る。
【0088】
特定の状況下で、マトリックス内の孔の閉鎖は、障壁処理が有効に働くかまたはその有効性を向上することを可能にするために有利である。孔の閉鎖が望ましい場合、障壁処理製剤(例えば疎水性が変動するセルロース性ポリマー、可塑剤およびNCEを含む)は、NCEマトリックス内の孔を塞いで、マトリックスが油、油脂および/または水を遮る能力を向上するためのさらなる孔閉鎖材料、例えば充填剤粒子と組み合わせて使用され得る。かかる充填剤粒子としては、限定されることなく、有機もしくは無機構成要素などの天然もしくは人工の材料で作製される任意の形状の大きいもしくは小さい粒子または異なるサイズおよび形状の混合物が挙げられ得;例示として、この目的に有用な粒子は、限定されることなく、砂材料、陶器材料、樹脂材料、ガラス材料、ポリマー材料、ゴム材料、有機材料、例えば適切なサイズに割られた、粉にされた、粉砕されたまたは破砕された堅果の殻(例えばクルミ、ペカン、ココナッツ、アーモンド、ゾウゲヤシ、ブラジルナッツ等)、適切なサイズに割られた、粉にされた、粉砕されたまたは破砕された種子の殻または果実の種(例えばスモモ、オリーブ、モモ、サクランボ、アンズ等)、割られた、粉にされた、粉砕されたまたは破砕されたトウモロコシの穂軸などの他の植物由来の材料、固形のガラス、ガラス微小球、フライアッシュ、シリカ、アルミナ、いぶされた炭素、カーボンブラック、グラファイト、マイカ、ホウ素、ジルコニア、タルク、カオリン、二酸化チタン、炭酸カルシウム(例えば沈殿した炭酸カルシウム(PCC))、ケイ酸カルシウム等の特定の粒子、ならびにこれらまたは同様の他の材料の組合せまたは複合物を含み得る。有利に、ある態様において、天然において疎水性であり得るかまたは例えばそれらをステアリン酸もしくはオレイン酸などの疎水性の材料と連結するかもしくはそれでコーティングすることにより疎水性にされ得る(例えば官能基化されたPCC)充填剤粒子が選択され得る。態様において、充填剤粒子は、粒子自体のための物質としてまたは他の粒子のためのコーティングとしてのいずれかでワックスを含み得、これらのワックスは、ワックス形態またはエマルジョン形態(水中油ワックスエマルジョン)であり得る。例えば、ミツロウ、ダイズワックス、カルナウバワックス等のロウ状物質が、ベース粒子としてまたは他の充填剤粒子のためのコーティングとしてのいずれかで使用され得る。本明細書で使用する場合、用語「ワックス」は、雰囲気温度の付近で脂肪親和性で展性の固体であり、典型的に約40℃を超える融点を有する任意の炭化水素をいう。例として、ワックスとしては、典型的に1分子当たり20~40個の炭素原子を有する長鎖脂肪族炭化水素、または典型的に1分子当たり12~32個の炭素原子を含む脂肪酸/アルコールエステル、例えばミツロウおよびカルナウバワックス中に見られるセロチン酸ミリシルが挙げられ得る。充填剤粒子は、孔を詰まらせる機能を付与するために、障壁製剤に混合され得る。
【0089】
孔封鎖充填剤粒子の存在ありまたはなしで、ある態様において、粘性懸濁物として障壁製剤を調製することが望ましく;例えば粘性が、製剤の孔を詰まらせる特性を高め、その油脂抵抗特性を向上することが決定されている。しかしながら、他の態様において、例えば混入製剤(mix-in formulation)として使用される場合、より希釈された懸濁物を調製することが有利であり:態様において、より粘性が低い障壁製剤を使用することにより、障壁作製成分と、形成物品を形作るために使用されるパルプまたはパルプ系マトリックス物質の混合が向上され得る。本明細書で使用する場合、用語「パルプ系」は、それらの物質内にパルプまたはパルプ誘導体を残しながらプロセッシング、形成または処理することによりパルプから誘導されたこれらの材料をいう。パルプおよびパルプ系材料は、シート、繊維、固体物品、成形物品等の任意の有用な形状の製造物品の構成要素またはそのための基質として形成されるかまたは形づくられるように、本明細書に開示される製剤、組成物および方法により使用され得る。
【0090】
態様において、本明細書に開示されるNCE系OGRおよびWVR材料は、(i)それに障壁特性を付与するための、マトリックスの頂部もしくはそれから作製される物品の頂部のコーティング、(ii)それに障壁特性を付与するための、物品を形成するために使用されるそれ自体である他の組成物もしくは物質に組み込まれる混入添加剤、(iii)他の物質もしくは材料を含むための、障壁特性を有するフィルムまたはパッケージ、または(iv)前述のものの任意の組合せなどの障壁処理として使用され得る。より詳細に、OGRおよび/またはWVR製剤は、コーティングとして使用され得るか、またはNCE系スラリーに混合されて生成物に形作られ得る(例えば熱成形される)。例えば、態様において、OGR特性および/またはWVR特性を有するNCEマトリックスで形成される容器が調製されて、容器が、液体またはゲルを確実に閉じ込めて、他の目的で消費者に送達することを可能にし得る。
【0091】
態様において、障壁作製成分は、任意の濃度で(上述されるように)NCE系マトリックス製剤に混合され得;次いで、成形/熱成形を行う前に、混合物は、障壁製剤のLCSTポリマーの低臨界溶液温度よりもわずかに高くに加熱され得る。この手順は、LCSTポリマーを混合物内に分散させて、繊維性のNCE系マトリックスの表面上に沈殿(または「クラッシュアウト(crash out)」)させる。他の態様において、障壁作製製剤は、塗装またはブレード塗装、カーテンコーティング等、または製剤が選択される噴霧装置と適合性である粘性のものである場合は噴霧などの従来の適用手順を使用して、製造物品のより表面上に適用され得る。
【0092】
障壁特性を有するフィルム、シートまたは形成物品は、商業製品において使用される場合に重要な利点を提供する。例えば、本明細書に開示されるようにNCEで形成されるOGRまたはWVRポーチ、ポッドまたは他のパッケージ物品は、香辛料、ドレッシングまたは他の液体もしくはゲル状の食品物質のための容器として働き得、消費者が、パッケージを開け、所望のように食品物質を分配することを可能にする。かかるパッケージは、醤油、ケチャップ、マスタード、マヨネーズ、サラダドレッシング、乳製品等の水性または油系食品物質を都合よく含んで分配し得、それによりかかる食品物質のための従来のパッケージに関連するプラスチック消費を低減する。
【0093】
NCE包装材材料は、パッケージの他の保護要素を最大化するため、油もしくは油懸濁物のための油抵抗性を最適化するためまたは水溶液もしくは懸濁液のための水抵抗性を最適化するため、強度を付加するため、または気体透過性を低減してより密封されたパッケージ特性を提供するために調整され得る。例えば、OGRおよび/またはWVR特性を有するNCEで形成される包装材およびシートは、紫外線滅菌および当業者に良く知られた他の方法などの技術により滅菌可能である、牛乳などの液体のための構成要素または全容器(例えば常温保存可能(shelf-stable)な牛乳カートン)として使用され得る。態様において、これらのOGRおよび/またはWVRパッケージ材料は、裂け抵抗性または剛性などの優れた機械的特性を有して透明または半透明であり得、従来のパッケージおよびポリオレフィンで作製される密封性のフィルムの現実味のある代替物を提供する。態様において、本明細書に開示されるようにNCEを組み込むOGRおよび/またはWVR材料は、それらの密封特性を向上するために、マトリックス材料(例えばPVA、PVOH、ヒドロキシエチルブチレート、剥離粘土等)にさらなるポリマーまたは粒子を添加することにより改変され得る。
【0094】
iv. 構造としてのNCE材料:固有の特性
NCEマトリックスは、硬さ、頑強さ、脆性、剛性、密着、耐久性、衝撃抵抗性、光学的透明性等を含む特定の固有の機械的特性を有し、これはまた、本明細書に開示されるように調製されるNCEを、任意に適切な二次的添加剤と一緒に組み込むことにより、特定の適用のために向上または調整され得る。かかる固有の機械的特性は、有用な物品において活用され得る。これらの固有の機械的特性は、単独で、あるいは担体として働く、溶解性容器として働く、または油、油脂および/または水抵抗性障壁として働くそれらの能力などのNCEマトリックスの他の特徴と組み合わせて有利であり得る。態様において、埋め込まれた活性剤のための懸濁枠組みも提供しながら、特定の適用のために有利な固有の機械的特性を有するNCEマトリックスが調製され得る。
【0095】
例えば、所望の程度の硬さ、強度および頑強さを達成するようにNCEマトリックスの固有の機械的特性を工学的に作り変えることにより、ナノスケール研磨組成物が形成され得る。研磨の間に、研磨材料の表面は、研磨された表面上の粒子を引き裂くかまたは擦り減らす研磨された表面と、不規則な中間面を形成することが理解される。NCEマトリックスはナノスケールの桁でその表面不規則さを有して形成されるので、これらのマトリックスは、最小の緩やかな研磨を必要とする適用のために工学的に作り変えられ得る。例として、NCEマトリックスは、顔の化粧のための除去パッドまたは皮膚の剥離のためのパッドとしての最小の研磨のために使用され得る。他の態様において、NCEマトリックスは、剥離剤(exfoliant)として石鹸生成物または体/顔のクリーナーを組み合され得る。さらに他の態様において、NCEマトリックスは、口腔衛生のための歯磨き剤中で歯垢を除去するため、または専門家用途の歯科生成物として、最小の研磨のために使用され得る。NCEマトリックス製剤は、研磨される歯垢をマトリックス自体の過剰な表面積に接着させてプラーク粒子の除去を容易にすることにより、練り歯磨きまたは歯磨き粉などの歯科生成物に特に有利であり得る。さらに他の態様において、NCEマトリックスは、骨または血管内に見られ得るような不均一または損傷を受けた生物学的表面を研磨するために使用され得る。態様において、研磨目的に使用されるNCEマトリックスは、治癒期間のその後の血小板の付着を防ぐために研磨された動脈プラークに適用される抗凝固剤などの埋め込まれた活性剤を支持し得る。
【0096】
適切に作り変えられたNCEマトリックスは、家庭のスクラバー、クリーナーおよび拭くものとしての使用に適切である。例えばNCEマトリックス材料は、任意に清掃化学物質が予め充填されるスクラブまたはスポンジとして形作られ得る。かかる製造物品において、NCE構造は、マトリックス内の過剰な表面積を提供し得、磨くことを容易にする摩耗性も提供しながら、油、油脂、汚れまたは他のこぼれた材料の極端に高い捕捉を可能にする。さらなる利点として、NCEマトリックスは、それ自体植物由来生成物で作製され、使い捨て可能および堆肥化可能(compostable)である。
【0097】
適切に作り変えられたNCEマトリックスは、乾燥されて、紙パッケージまたはスタイロフォームなどの従来の物品の代理物を形成し得るシートまたは液体フォームに容易に変換され得る。発泡されないシートは、紙の包み、ブッチャーペーパー、サンドイッチラップ等の代理物として使用され得、ここで泡の特性は必要でなく;泡はパッキングピーナッツ(packing peanut)のような断熱などの特性が有利であるまたは1単位の体積当たりの軽い重量が有利である特殊な状況で使用され得る。態様において、障壁特性は、上述のように製剤をより疎水性または疎油性にするための技術を使用して、泡に導入され得る。態様において、油脂抵抗特性は、NCE粒子のいくつかもしくは全てをより疎油性にすることにより、および/または疎油性コーティング材料を支持するためのマトリックスを使用することにより、および/または他の疎油性添加剤を導入することにより泡に付与され得;同様に水蒸気抵抗特性は、NCE粒子のいくつかもしくは全てをより疎水性にすることにより、および/または疎水性コーティング材料を支持するためのマトリックスを使用することにより、および/または他の疎水性添加剤を導入することにより、泡に付与され得る。本明細書に記載されるように、発泡されるまたは発泡されない製剤は、疎油性または疎水性のいずれかの特性を強調するようにカスタマイズされ得、かかる製剤は、より大きいまたはより小さい程度まで両方の種類の特性を示し得る。
【0098】
より詳細に、NCEマトリックスを含む材料は、合成スタイロフォーム梱包材料に見られるものなどの従来の泡生成物の交換物を提供し得る。従来の梱包材料および容器は、軽量、衝撃吸収および撥水性であるのでそれらの最終的な用途に十分に適合されるが;これらの材料は、リサイクルできず、そのために埋め立てごみに追いやられるポリスチレンなどの石油系プラスチックで作製され、それらは分解されるのに数世紀かかる。発泡されたNCEマトリックスは、良好な固有の機械的特性を有して生分解性の代替物を提供し得るか、またはNCEは、以下に詳細に記載されるように、梱包材料などの用途のためのそれらの特性を向上するために、他の生分解性材料と共に使用され得る。シートまたは液体フォームを形成するために、マトリックスを形成するためのNCEは、上述のように再分散性を可能にするように処理され得る。態様において、次いで2~3%再分散されるNCEのスラリーは、セルロース性ポリマーおよび任意の可塑剤と混合され得、および/または所望の障壁特性を付与するために疎水性もしくは疎油性材料と合わされ得;他の態様において、疎水性または疎油性材料は、セルロース性ポリマーを置き換え得、さらに他の態様において、セルロース性ポリマー自体が所望の疎水性または疎油性を提供し得る。障壁作製添加剤、例えば疎水性デンプン、疎水性セルロース性ポリマー、脂肪酸、界面活性剤または油中水ワックスエマルジョンは、1:1の障壁添加剤対NCE~15:1の障壁添加剤対NCEの範囲および好ましくは3:1~9:1の比で添加され得る。態様において、発泡は、これらの材料の高い粘性および激しい撹拌または泡立てに対するそれらの応答のためにNCE懸濁物を用いて容易に作製され得、障壁特性は泡に容易に導入され得る。NCE懸濁物に界面活性剤を添加することにより発泡が容易になり得る。一旦NCE懸濁物が発泡されると、瞬間乾燥により、シートまたは形成物品における固定された泡状の手触りがもたらされ得る。例として、発泡されないかまたは発泡されるNCEマトリックスのシートを巻き上げるかまたは真空成形することにより、NCE系生成物として、生分解性の追加された利点を有する断熱で軽量なカップ、プレート、ボウル、食品の包装材、テイクアウト容器またはゴミ袋が作製され得る。例として、乾燥されたNCEの泡から、任意に利用可能である障壁特性(OGRおよび/またはWVR特性)、カスタマイズ可能な特徴を有する高い有効で軽量な断熱材が作製され得る。
【0099】
皮膚上で乾燥させた場合のNCEマトリックスの耐久性は、限定されることなく消毒または凝固補助を有するNCEマトリックスに基づく絆創膏および創傷用包帯、昆虫忌避剤、かゆみ止め医薬、鎮痛薬、局所麻酔、CBD油等の健康状態または健康剤の持続送達のためのビヒクル、またはグルコースモニタリング、イオン伝導性、pH等のための診断生成物もしくはモニターを含む種々の他の化粧用および医学用生成物を支持し得る。他の態様において、NCEマトリックスは、例えばプロバイオティックまたは医薬と一緒の使用のために摂取可能であり得、制御された遅い放出を提供する。
【0100】
NCEマトリックスの使用は、NCE懸濁物の光学的透明性のために、特定の個人ケア適用における活性剤、例えば毛髪保持製剤および化粧品と共に特に有利である。態様において、シャンプー、毛髪コンディショナー、毛髪保持および毛髪着色調製物は、NCEマトリックス内の活性剤をマトリックスと共に含み、次いで下にある毛幹表面上で透明な層として乾燥させることにより製剤化され得る。一時的なヘアスタイリングのための毛髪生成物は、毛髪を特定の形状またはスタイルに保持するために、NCEマトリックスも使用し得る。より詳細に、ヘアスプレー、ムース、ジェル等は、多くの異なるヘアスタイルを一度に数時間、一定の位置に保持するために設計されて、使用されることが理解される。これらの従来の生成物は、所望の「保持」を提供するために刺激の強い化学物質を使用する傾向があり、この部類の化学物質を欠く生成物は、満足のいく毛髪保持を生じない傾向があり:十分に保持しないことがあるか、またはそれらは毛髪に「パリパリした」感覚をもたらすことがあるか、またはそれらは堅いかもしくは不自然な見た目を生じることがある。代替物として、NCEマトリックス製剤は、NCEマトリックスを毛髪の房にしっかりと接着させて形状保持の利益を付与するキトサンなどの活性剤を含み得る。該生成物は、水および通常のシャンプーにより毛髪から洗い流され得る。キトサンまたは同様の強化二次的添加剤が添加されたNCE系製剤は、刺激の強い化学物質を使用することなく、柔らかい自然な感じを有する、耐久性のある毛髪保持を生じ得る。
【0101】
NCEマトリックスは単一の活性剤と共に使用され得るが、これは、単一製剤中のヘアケア生成物、例えば全て単一生成物として一度に適用されるシャンプー、コンディショナーおよび形状保持剤の組合せも支持し得る。NCEはまた、刺激の強い化学物質の使用なしで、容易に緩やかな様式で毛髪に色を付与するために使用され得る。他の態様において、NCEは、懸濁される前に予め着色され得るか、および/またはそれらのマトリックス内にリグニンなどの色を有する粒子を組み込み得、従来の生成物に使用される刺激の強い化学的処理を必要とすることなく、毛髪、例えば暗い灰色の毛髪への都合の良い適用を可能にする。
【0102】
他の態様において、NCEマトリックス製剤は、化粧用または皮膚ケア(すなわち皮膚障害または皮膚状態、例えばしわまたは色素過剰を治療する)生成物を適用するために使用され得る。例として、皮膚クリームは、皮膚処理物質(例えばビタミン、リポ酸、コラーゲン、皮膚軟化薬、日焼け止め等)をNCEマトリックス中に懸濁して、NCEマトリックスの光学的な透明性のために適用後に皮膚上で眼に見えない生成物を形成することにより製剤化され得る。別の例として、NCE系クリームまたはローションは、皮膚表面を滑らかにしてしわを伸ばすために皮膚表面に広げられ得る。より高濃度のNCEを用いると、製剤は乾燥した場合に収縮し、皮膚を教えられたように引っ張り;適用される製剤の適切な位置決定および方向づけにより、それは、皮膚のしわを打ち消すかまたは皮膚表面に滑らかさを提供する力を発揮し得る。さらに別の例として、日焼け止めまたは日光遮断物(sunblock)のためのNCEマトリックスは、適用後のその固有の強度のために特に有利であるので、それは皮膚上に日焼け止め保護の耐久性の層を形成する。態様において、酸化亜鉛または二酸化チタンなどの日光遮断剤の白亜質の見た目を覆うために顔料も添加され得る。別の例として、皮膚クリームまたはフェイスマスクは、乾燥した際のNCEマトリックスの強度特性のために、適用および乾燥後にしわを一時的に平坦にする形状保持材料として製剤化され得;態様において、マトリックスは、乾燥の際に収縮するように工学的に作り変えられ得、そのため緩んだまたはしわになった皮膚上で有利な方向に力が発揮される。
【0103】
ビヒクルは、NCEマトリックスを使用して、医学的皮膚治療または経皮医薬送達のために調製され得る。医薬生成物、栄養機能食品生成物、加湿剤、酸化防止剤等は、NCEマトリックスに組み込まれて皮膚に適用され得るので、活性剤はマトリックスを通って皮膚へと進み得る。例として、加湿剤、酸化防止剤および局所レチノールを含むNCEマトリックスの適用は、一晩のマスクとして使用され得、これは、ベッドの布に接触するために乾燥した外表面を提供しながら、活性剤を一定の場所に維持する。同様に、NCEマトリックスは、医薬品または他の有益な生成物を皮膚の局所的な領域に適用するために使用され得る。NCEマトリックスに埋め込まれるざ瘡またはしゅさのための局所生成物(例えばサリチル酸、アゼライン酸、局所レチノイド、過酸化ベンゾイル(ざ瘡のため)、メトロニダゾール、イベルメクチン(しゅさのため)、局所抗生物質(両方のため)は、局所治療のために罹患した領域に適用され得る。NCEマトリックスは典型的に半透明または透明であるが、生成物を不透明にして処理の下にある病変を隠すために、顔料が含まれ得る。
【0104】
NCEマトリックスは、医薬生成物、特に持続放出剤として使用されるものの経皮送達のために工学的に作り変えられ得る。例として、ニコチン、オピオイド、ホルモン、ニトログリセリン、メチルフェニデート、MAO阻害剤抗鬱剤、クロニジン、スコポラミン、ビタミンB12およびシアノコバラミン等の活性剤は、NCEマトリックスで形成され得る経皮パッチとしての送達と適合性である。特定の適用のために、NCEマトリックスで形成されるパッチは、マイクロニードルのアレイを支持し得るので、他の医薬生成物の制御放出のために使用され得るマイクロニードル経皮パッチが形成される。これらのパッチ生成物内のNCEの存在は、パッチの強度および耐久性を向上し得る。
【0105】
種々の生体医学的および化粧用製造物品は、医学的または化粧用活性物質の送達のためのマトリックスとしてNCEを組み込み得、強度の強化のために充填剤としてNCEをさらに組み込み得る。マトリックスとして使用する場合、NCEは、ロールオン、スプレッドオンまたはスプレーオンのパッチまたは液体絆創膏のための枠組みを形成し得る。かかるデバイスは、医薬、栄養機能食品または化粧用の生成物を、コラーゲン、ビタミン、レチノイド、ヒアルロン酸等の活性剤として送達するために使用され得る。かかる生成物は、液体形態因子として、例えばさらに希釈され得る濃縮物としてまたは使用が容易な液体として、または消費者により水に溶解もしくは懸濁される固体形態因子として送達され得、次いで消費者は、再構成された製剤を罹患した領域に適用する。態様において、NCEは、フィルム、すなわち罹患した領域にわたる一連の層として適用されて、皮膚の傷を覆って保護し、治癒を促進し得る。液体NCE系製剤は乾燥して、任意に透明または半透明である、薄い固体の可撓性保護障壁を形成し得るので、治癒がモニタリングされ得る。障壁に覆われた領域中の感染を防ぐかまたはそれに対抗するために、防腐剤または抗生物質または他の特殊な活性剤が製剤に含まれ得る。
【0106】
油、油脂および/または水抵抗特性を有するNCE製剤は、NCEマトリックスと合わされ得るので、皮膚に適用されるフィルムは、一定の位置にとどまり、擦り切れおよび裂けに、より抵抗しやすい。活性剤のための送達ビヒクル(例えばクリーム、パッチ、絆創膏等)としてNCEを組み込む適用のために、製剤のOGR/WVR構成要素は、皮膚上の生成物の有用な寿命を延長し得る。例えば、OGR/WVR製剤を、活性剤を有するNCEマトリックスに添加することは、永続的な期間の皮膚接触が望ましいこれらの局所適用(医学的または化粧用の目的のいずれにせよ)に有用である。OGR/WGR製剤は、そうでなければパッチを緩めてそれらの活性剤の送達を障害し得る水、発汗、皮膚の油等からパッチを保護するために、経皮パッチに使用されるこれらの組成物にも添加され得る。
【0107】
皮膚に適用されるNCEビヒクルは、半永久的な入れ墨またはセンサーとインターフェースで連結して、情報を伝達するための皮膚への伝導性の線もしくは形状の適用(例えば無線支払い、携帯医療記録、生体測定、健康モニタリング等のためのRFIDトークンなど)などの他の適用に使用され得る。他のNCE系製剤は、専門のインク、塗料、接着剤または伝導性コーティングまたは伝導性要素のために使用され得、ここでNCEマトリックスは、活性剤または活性粒状物質のための支持を提供する。
【0108】
有利な態様において、リグニンまたは他の専門の物質、例えばメラニンまたは他の染料もしくは顔料は、懸濁されたNCEで形成されるマトリックスに組み込まれて、毛髪、爪、ファブリック等における使用のための色が付けられた製剤を生じ得る。NCEと皮膚の天然の親和性は、NCEマトリックス内に顔料または他の美的な要素を有する爪製剤の開発を支持して、ワニスまたは刺激の強い有機溶媒を必要とすることなく、化粧用途のための強力で欠け抵抗性の爪の艶出しを提供し得るか、または脆いかもしくは損傷した爪を処理し得る。他の態様において、NCEは、従来の爪の艶出しのための強化剤として使用されて、それらの強度および欠け抵抗性を向上し得るか、または脆いかもしくは損傷した爪を処理し得る。
【0109】
態様において、NCEマトリックスは、特定の製造物品についての構造上(strucural)および構造的(architectural)特徴を提供するように形作られ得る。例として、任意にヒドロキシアパタイトなどの材料と合わされる、発泡されたNCEマトリックスは、骨組織を生じるように存在するための骨芽細胞のための骨格として働き得る強力な骨移植片を提供し得る。代替的に、NCEマトリックスは、発泡しないがマトリックス内に他の強化および/または骨形成物質を含む、固体の骨移植片として形作られ得る。態様において、NCEはまた、体内のNCEの耐久性のために、外科的メッシュ、半永続的縫合または生体工学的インプラントのための骨格などの迅速に分解することが意図されない生体材料のための骨格として使用され得る。態様において、NCE物質は、構想される適用に応じて、より高いまたはより低い生物学的耐久性を有するように工学的に作り変えられ得る。態様において、NCEマトリックスはまた、専門の適用のために、糸、引き伸ばされた繊維等として形成され得る。例として、NCEマトリックスで形成された引き伸ばされた糸は、単独で、または特定の用途のための材料に工学的に作り変えられるカスタマイズ可能な分解の速度およびカスタマイズ可能な強度を有する縫合材料もしくは生体適合性メッシュを溶解する場合にコラーゲンなどの組み込まれたタンパク質材料と共に使用され得る。
【0110】
b. 複合材料中の添加剤としてのNCE:一般的な特徴
態様において、NCEの集団は、既存のマトリックス組成物(「既存のマトリックス」と称される)、例えば紙マトリックス、プラスチックマトリックス、液体樹脂マトリックス、TREXなどの木材系複合体などの有機マトリックスならびにセメントおよび漆喰などの無機マトリックスに組み込まれ得る。既存のマトリックスに組み込まれる再分散されるかまたは再分散性のNCEの集団で形成されるかかるマトリックスは、「複合マトリックス」と称される。より詳細に、複合マトリックスを形成するように既存のマトリックスに組み込まれるNCEは、本明細書に記載されるようにその中にNC要素が埋め込まれた再分散性の乾燥NC含有材料として提供され得るか、またはそれらは、本明細書に記載されるように再分散製剤内に再分散および懸濁されたNC要素として提供され得る。いずれの場合においても、そのように調製および提供されるNCEは、複合マトリックス中のそれらの包含を参照して、「追加のNCE」と称される。そのため、複合マトリックスは、追加のNCEと既存のマトリックス組成物の組み合わせであると理解される。
【0111】
態様において、マトリックス形成物質は、複合材料を形成するように追加のNCEでコーティングされ、および/またはそれに浸漬される。結果的に、複合材料は、元のマトリックス形成物質に見られるものを超えるかまたは元のマトリックス形成物質には見られない特殊な性質を備え得る。例えば、複合材料は、強度、硬さ、頑強さ、脆性、剛性、密着、耐久性、衝撃抵抗性、光学的透明性等の特殊な固有の機械的特性を示し得、ここでかかる特性は、元のマトリックス形成物質に存在するが、複合物品におけるNCEの存在は、かかる特殊な特性を向上する。別の例として、複合材料は、元のマトリックス形成物質に存在し得るが複合材料において向上される、または元のマトリックス形成物質に存在しないが複合材料において提供される疎水性、疎油性または水抵抗特性などの障壁特性を示し得る。さらに別の例として、複合材料は、付加的な特性、すなわち元のマトリックス形成材料には存在しないがそれらの通常または改変された状態におけるNCEの使用により生じる特性を示し得る。かかる付加的な特殊な特性、すなわち典型的に元のマトリックス形成材料には存在しないが複合材料中のNCE製剤の組み込みを介して付与される特性は、以下により詳細に議論されるように、NCEの使用および銀鏡効果等により複合材料に導入され得る導電性である。
【0112】
NCEを使用する複合材料の特殊な特性はすでに産業において企図されているが、それらの用途は、前述される再分散問題により障害されている。本明細書に開示される再分散技術は、NCE組成物の輸送を容易にし、これは次いで、他のマトリックス形成材料と合わされるように再懸濁され得、複合材料を生じる。態様において、これらの再分散技術は、主要なマトリックス形成材料内で高いアスペクト比のNCEの均一な混合物を生じ得、上でより詳細に記載されるように、強度、硬さ、頑強さ、脆性、剛性、密着、耐久性、衝撃抵抗性、光学的透明性等の固有の機械的特性などの最終複合物における所望の特殊な特性の増強を可能にする。他の態様において、本明細書に開示される再分散技術を使用して作製されるNCE製剤の使用は、複合物が所望の程度の油脂抵抗性および/または水蒸気抵抗性を有することを可能にする障壁特性などの特殊な特性を導入または増強し得る。さらに他の態様において、本明細書に開示される再分散技術を使用して作製されるNCE製剤の使用は、複合材料に、元のマトリックス形成材料には存在しない導電性などの新規の特殊な特性を提供し得る。
【0113】
i. 充填剤としてのNCE:例示的物品
充填剤は、有機および無機(in organic)物質の機械的特性を向上するか、または生成物を、より安価、より軽量等にすると理解される。充填剤は、強度、硬さ、頑強さ、脆性、剛性、密着、耐久性、衝撃抵抗性、光学的透明性等の複合特性を向上し得る。NCEはすでに消費者生成物において充填剤として使用されているが、それらの使用は、本明細書に記載される再分散性問題のために限定されている。本明細書に開示されるNCE再分散のための方法は、紙、樹脂、セメントおよびプラスチックのための強化剤としてのこれらの添加剤のより広い採用を可能にし得、新規の用途の劇的な拡大をさらに可能にし得る。本明細書で使用する場合、用語「強化する」は、既存のマトリックスに見られる強度、硬さ、頑強さ、脆性、剛性、密着、耐久性、衝撃抵抗性、光学的透明性等に属する機械的特徴の向上をいい;構成的な既存のマトリックスと比較して向上された機械的特性を有する複合マトリックスは、NCEの存在のための複合材料の強化により「強化される」と称され得る。
【0114】
NCEは、固有には親水性であるが、疎水性環境内でも充填剤として使用され得る。疎水性環境における使用のために、NCEは、それらが組み込まれる疎水性マトリックスの特性に適合するように表面改変され得るので、それらは、マトリックスと適合性であり、その中に均一に分散され得る。態様において、本明細書に開示される方法に従って調製された追加のNCEの表面改変は、例えばNCE上で疎水性単層を使用して実行され得る。疎水性マトリックスにおける使用のために疎水化されたかかるNCEは、(親水性環境における改変されていないNCEと同様に)乾燥の際に再分散可能であるだけでなく、それらの疎水性コーティングにより、熱可塑性および熱硬化性マトリックス(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ(アクリレート/メタクリレート)、ゴム、シリコーン、ウレタン、エポキシ等の種々のポリマー性「プラスチック」材料と適合性であり、成形および押し出し成形のために強くかつ軽量な非多孔性固体ならびに、他の適用のために開放セルまたは閉鎖セルの泡を生じる。態様において、疎水性改変NCEは、ビニル板張り(vinyl siding)、デッキ床材、複合屋根ふき材、射出成形されたプラスチック部品、自動車のバンパー、フェンダーおよびダッシュボード、断熱ブロックおよび天井タイルなどの強化されたスタイロフォーム生成物等の用途のために、進歩した複合疎水性材料のための再生可能で軽量な高性能充填剤を提供し得る。他の態様において、NCEは、オリエンテッドストランドボードまたは他の木材系建築材料などのマトリックス材料に一般的に添加される接着剤内に分散され得、それにより接着剤自体の強度およびマトリックス材料の強度を向上する。
【0115】
NCE強化充填剤の軽量で環境に配慮した性質は、NCEを使用して、一時的な使用に意図され得るものなどの医学的物品に強度を付加し得る医学的用途に特に適切である。例えば、NCEは、重量を付加することなく、それを強化するために鋳型材料に添加され得る。別の例として、NCEは、それらを強化するために絆創膏材料に添加され得る。従来の絆創膏またはヒドロゲル絆創膏に組み込まれる場合、NCEは、治癒している創傷に対するいくつかの構造的な保護を付加しながら、絆創膏をより耐久性にする。同様に、NCEは、化粧用生成物に使用される場合、強化を提供し得る。医薬、栄養機能食品または化粧用活性剤を有するパッチは、生成物中に分散される低用量のNCEにより有意な強度の増加を獲得し得る。NCE充填剤は、ヒドロゲル、ポリエチレン、PVCおよび他の包帯材料などの従来のポリマー性マトリックスと一緒に使用され得、より軽量で薄い絆創膏を可能にしながら、強度および耐久性の向上を可能にする。NCE充填剤はまた、以前に議論されるように、NCEマトリックスと共に使用されて、強度および耐久性を向上し得る。同様に、フェイスマスク、ノーズストリップおよびアクリル製の(偽の)爪などの化粧用生成物は、接着剤およびNCE充填剤の強度付与特性により利益を受け得る。
【0116】
別の例として、充填剤として他のポリマー性マトリックスに組み込まれるNCEは、娯楽施設物品を強化するために、環境的に魅力的な選択肢を提供し得る。態様において、NCE強化ポリマーは、より少ない重量を有して強度を保持し、環境的により意識的な様式で、サーフボードおよび船の外殻に使用される合成材料(例えばガラス繊維樹脂、ポリウレタンまたはポリスチレンフォームコア(サーフボード)、炭素繊維、ガラス繊維、ポリエチレン(スカル))の代用品として働き得る。NCE添加剤はまた、リサイクルされたプラスチックの強度および弾性を向上するために使用され得る。それらはまた、プラスチック材料の石油供給物から、しばしば石油系材料の性能特徴を欠くプラスチックのより持続可能な供給物への移行を容易にし得る。例えば、Legoは、サトウキビ由来のバイオポリエチレンを使用して実験を行ったが、この材料を、そのブリックを形成するために使用される石油系アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマーの代用品として使用できないことがあり;NCE添加剤は、バイオポリエチレンと同様の材料の頑強さおよび強度を向上し得、強化された生物由来複合物を、ABSなどの材料の潜在的な代用として使用することを可能にする。
【0117】
さらに他の例として、競技用シューズについて、ソールは、シューズに使用される酢酸エチルビニルおよびポリウレタンおよびシリコーンゲルなどの材料の量を低減するために、NCEマトリックスを使用してNCE強化ポリマーでまたは複合物として作製され得るので、より環境と調和した製品が提供される。これらの適用においてNCEマトリックスフォームまたはNCE強化充填剤を含むフォームが使用され得、着用者に支持および快適を提供する。このNCEを含むことは、シューズのソールを軽量で形状保持に維持しながらも、繊維の強化効果により曲り-ねじれ-裂け抵抗性を増加し得る。追加の利益として、粘弾性減衰が、ソール全体に繊維のマトリックスにより付与され得、物理的な力の一部を吸収するための小さくて硬い繊維により、ソールを通る物理的衝撃波の着用者の体への伝達が遮断される。
【0118】
さらなる例として、再懸濁されたNCEを含む建築塗料製品は、固有に注入されるように製剤化され得、ドライ壁、木材、コンクリート、レンガ等にすぐに使用することを可能にする。塗料生成物中のNCEの存在は、向上された基板接着および滴り抑制、亀裂抵抗性および腐食に対する抵抗性を提供し得る。NCEを組み込むことにより建築材料を向上して、例えば垂れのないスタッコ、軽量で強いシートロック(ドライ壁)、オリエンテッドストランドボードおよび同様の複合物、加工が容易でびひび割れ抵抗性の偽木材コンクリート調理台、合成床板および浴場のタイル、漆喰成形、連結化合物、人工の軽量の彫刻がなされた石、リサイクルされたガラスセメント-NFC/MFC複合物等の高性能材料を作製するための他の機会がある。NCE充填樹脂の使用により、肥料にすることが可能な生成物に対して使用され得る耐久性インクを作製する機会も存在する。自動車、トラック、エアクラフト、ATV、オートバイ、スクーター、自転車、車いす等の車輪のついた乗り物も、着用抵抗性、強度および耐久性を向上するためのNCE充填タイヤにより利益を受け得る。軽量で発泡されたバージョンのNCE含有材料が、特定の適用のために形成され得る。
【0119】
NCEは、前述の例で示されるように、種々の環境において充填剤として使用され得る。一旦再分散されると、NCEには、それが選択されたポリマー性マトリックスと相互作用することを可能にするための適切なコーティングが施され得る。そのためそれらは、それらを組み込む複合材料を重くすることなく、強度および弾性を付加し得る。それらはまた、従来の石油由来または無機充填剤に対する植物由来代替物を提供するために、既存の充填剤を代用し得る。例えば、3D印刷材料は典型的に、炭素繊維、ケブラー、ガラス繊維等の充填剤により強化され得るABS、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ナイロンおよび種々の樹脂などのプラスチックである。NCEは、全体的な3D印刷基質のより持続可能な構成要素として、無機繊維の代用になり得る。
【0120】
ii. マトリックス孔閉鎖剤としてのNCE:例示的な物品
ナノ寸法のNCEは、それらを既存のマトリックスの孔内に組み込むことを可能にし、得られる複合物品について有利な特性を生じ、ここでそれらの有利な特性は、天然のマトリックスの多孔性を低下するための、孔内のそれらの存在に基づく。したがって、態様において、NCEは、紙マトリックス内の孔を充填して、価値の高い専門の紙生成物を作製するために、紙生成物などの既存のマトリックスについてのコーティング生成物として使用され得る。例として、その孔にNCEが埋め込まれた紙生成物は、油脂抵抗性を提供し得る。別の例として、その孔にNCEが埋め込まれた紙生成物は、放出可能な標識裏打ちまたは選択的な接着剤を形成するように工学的に作り変えられ得る。態様において、セルロース、疎水性エマルジョン、脂肪酸、任意のフィルム形成材料等の全ての形態は、これらの種類の適用のために使用され得、ここでNCE系製剤は、複合物品において有利な特性を提供するために使用される。全てのかかる添加剤は、単一添加剤として単独で使用され得るか、一緒に添加され得るかまたは連続的に添加され得る。
【0121】
iii. 基質構成要素としてのNCE:例示的な物品
フィルム、シート、形成物品等は実質的に全体的にNCEマトリックスで形成され得るが、上述のように追加のNCEは、有利および/または特殊な特性を有する複合物を作製するために、他のポリマー性材料で作製される既存のマトリックスに組み込まれ得る。本明細書に開示される方法により調製された追加のNCEの添加を受け入れるかかる既存のポリマー性マトリックスは、追加のNCEの組み込みに適した製剤として提供され得、任意に有利な特性を有する他の添加剤を含む。複合材料を形成するようにNCEが組み込まれる既存のマトリックスのための適切なポリマーおよび添加剤の選択により、構造的強度、弾力、弾性、水抵抗性、油脂抵抗性等の特性は、生分解性と組み合わせて、それから形成される有用な物品に付与され得る。複合マトリックスを作製するために追加のNCEが添加されるこれらのポリマー性マトリックスおよび製剤は、「構成的ポリマー基質(CPS)」と称される。
【0122】
態様において、CPSへのNFC/MFCの添加は、低濃度の懸濁物(約2wt%)から直接なされ得るか、または水、費用を切り詰めるため、および再分散を高めるために、再分散添加剤を有する乾燥形態で添加され得る。最終NCE含有ポリマー製剤は、工業規模での押し出し成形プロセスのために高濃度で調製され得る。次いで押し出し成形されたフィルムは、乾燥され得、および/またはそれらの最終幾何学構造(バッグ、フタ、容器、フィルム等)に成形され得る。実例となる例を以下に提供する。
【0123】
(a) 例:フィルムおよびシート
例として、食品生成物のための包装材として使用されるフィルムは、従来の生分解性で天然に由来する材料、例えばセルロースエーテル、セルロースエステル、デンプンエーテル、デンプンエステル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルブチレートまたはそれらの任意の組合せと、フィルムに固有の機械的特性、例えば限定されることなく、裂け抵抗性および堅さのための向上された機械的強度を付与するために組み込まれる上述のNCEおよび分散性添加剤との組合せを使用して作製され得る。態様において、NCE添加剤は、油脂抵抗性および/または水抵抗性を提供するためのフィルムでコーティングされた繊維であり得る。酢酸セルロースまたは他の疎水性の伸びる材料は、コーティングされた繊維に弾性を付与するために添加され得るかまたは生成物に可撓性および伸長性を提供するためにポリマーマトリックスに組み込まれ得る。気体障壁特性を必要とする生成物について、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセテート/ポリビニルアルコールのコポリマーが有利である。
【0124】
NCEを組み込む複合フィルムまたはシートは、所望の場合透明または半透明であり、生分解性と共に裂け抵抗性などの優れた機械的特性を有し得る。対照的に、Ziplockバッグ、生ごみ袋、食品雑貨バッグ等に使用されるものなどのプラスチックフィルムおよびシートは典型的に、石油由来であり分解するのが遅いポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンで形成される。態様において、本明細書に記載されるNCEを組み込むことにより形成されるフィルムおよびシートは、従来のポリオレフィン系パッケージ材料の生分解性代替物を提供するために、強度が望ましい場合の多くの他のパッケージング適用に使用され得る。かかるフィルムおよびシートはまた、本明細書に開示される技術を使用して、障壁特性(例えばOGRまたはWVRまたは両方)を有して形成され得る。本明細書に開示される方法に従って調製されるNCEを含み、障壁特性を有するかかる複合材は、障壁材料と称される。障壁材料は有利に、フィルム、シート、容器または示される障壁特性が望ましい他の製造物品として形成され得る。
【0125】
より詳細に、態様において、障壁材料は、特定の必要性を満たすために特定の特性を付与するための添加剤と共に、生分解性材料、例えばセルロースエーテル、セルロースエステル、デンプンエーテル、デンプンエステル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルブチレート、ポリビニルアセテートまたはそれらの任意の組合せのベース製剤から調製され得る。例えば、気体障壁特性を必要とする障壁材料は、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、それらのコポリマーおよびそれらの混合物を含み得る。水および油反発性について、メチルセルロースが望ましい添加剤である。機械的強度を向上するために、NCEは、1wt%~10wt%の範囲の濃度で添加され得る。態様において、ベース製剤は、数万g/mol~数百万g/molの範囲の分子量を有するポリマーで、最適な物理的完全性について選択される特定のポリマー(1つまたは複数)で調製され得;有利に、高分子量バージョン(例えば十万g/mol~数百万g/molの範囲の分子量)が選択され得る。可撓性を付与するために、可塑剤の添加は、例えば約1wt%~約50wt%または約1wt%~約10wt%または約5%~約15%の濃度範囲で組み込まれ得る。可塑剤としては限定されないが、1,2-プロパンジオール(propanediaol)、キシリトール、エリスリトール、マルチトールおよびマンニトール、またはカプリル酸、カプロン酸等の脂肪酸が挙げられ得る。可塑剤として使用される脂肪酸は、その疎水性性質のために障壁適用に有益であり得る。NCEの添加は、低濃度懸濁物(約2wt%)から直接なされ得るか、または乾燥形態で添加されて、本明細書に記載される再分散剤を使用して再分散され得る。大規模処理について、十分な製剤(再分散ポリマー(1つまたは複数)、NFC/MFC、可塑剤および所望の添加剤を含む)は、大きなタンク中で混合され得、スリット型を有する押出し成形機にポンピングされる。次いで、押し出し成形されたシートは、ローラーで圧縮され得および/または穴をあけられ得る。乾燥後(加熱ローラーまたはオーブン)、圧縮されたシートはロールにまとめられ得るかまたはバッグもしくはサシェにさらに形作られ得る。
【0126】
酸素非感受性物質(例えば塩/胡椒)のための包装材または容器またはサシェを作製するための例示的な製剤は、以下の成分(100gの総製剤重量に対する重量):
・メチルセルロース(MC):85.5g
・キシリトール:4.5g
・NCE:10g
を含み得る。
【0127】
酸素感受性材料(例えば金属トレイのためのシースルーフィルム)のための包装材または容器を作製するための例示的な製剤は、以下の成分(100gの総製剤重量に対する重量):
・ポリビニルアルコール(PVA):23.75g
・ポリビニルアセテート(PVAc):23.75g
・メチルセルロース(MC):42.75g
・マルチトール:4.75
・NCE:5g
を含み得る。
【0128】
(b) 例:繊維および不織ファブリック
態様において、NCEで強化されるフィルムおよびシートを作製するために使用される製剤は、糸および繊維などの他の有用な形状または形態を作製するために使用され得る。以前に記載される製剤は、多くの用途、例えば(限定されることなく)ヘルスケア専門生成物(縫合糸、メッシュ、植込み可能薬物分配ビヒクル等)、不織材料(拭くもの、コーヒーフィルター、ティーバッグ、布、乾燥機シート等)ならびに強度、衝撃吸収性および反発性を付加する材料を構築またはパッケージングするための繊維性強化材に使用され得る強い生分解性繊維に形成され得る複合基質材料として、NCEと組み合わせて使用され得る。
【0129】
以前に記載されるように、これらの目的に有用なNCEマトリックスは、NCE材料単独として形成され得る。しかしながら、このセクションには、他の非NCE物質で作製されるポリマー性マトリックス内にNCEを組み込む複合材料を作製することが例示される。例えば、複合材料は、強度、頑強さ、脆性、剛性、密着、耐久性、衝撃抵抗性等を向上するためにNCEが添加され得るCPSを形成するために、本明細書に開示される天然の生分解性ポリマーを使用して、以前に記載されるように形成され得る。CPSはまた、全体的な組成物に、機械的特性、障壁特性(例えば疎水性/親水性、油脂抵抗性等)および付加的な特性(例えば導電性、弾性、展性等)などの有利な特殊な特性を付与するための他の二次的な添加剤を組み込み得る。次いで、全ての所望の添加剤を有し、NCEを含む最終のCPSは、種々の有用な物品に形成され得る。
【0130】
態様において、上述の複合物は、繊維または不織材料に形成され得る。第1の工程として、CPS、例えば1つ以上の生分解性ポリマーを含む粘性ポリマー製剤が調製される。この目的のCPSに使用され得る生分解性ポリマーとしては、十分または部分的に加水分解されるポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロース誘導体(セルロースエーテルおよびエステル、例えばメチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等)、ポリ乳酸、ポリガラクチン酸(polygalactic acid)、ポリヒドロキシブチレート、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物などのポリマーが挙げられる。その酸素不透過性のために、特定の用途についてポリビニルアルコールが有利である。CPSに使用され得る他の天然のポリマーとしては、キトサン、ゼイン、ペクチンおよび天然タンパク質(ダイズ、ホエー、エンドウ等)が挙げられる。
【0131】
固有の機械的特性、障壁特性および付加的な特性などの特殊な特性を付与するために、NCEはCPSに添加され得る。所望の特殊な特性は、過度な強度、硬さ、頑強さ、脆性、剛性、密着、耐久性、衝撃抵抗性などの固有の機械的特性、または透明性、半透明性などの選択される光学的特性等である。一旦CPSに含まれると、NCEは、繊維として展開されたままであり得、まっすぐにまたは無作為的に方向づけられた方法でそれ自体と整列されて、CPS内で網状組織または他の内部人工物を形成し得る。態様において、最終基質中のNCEの量は、約1wt%~約30wt%の範囲であり得る。
【0132】
NCEのCPSへの添加の前または後に、特定の製剤の特殊な特性は最適化され得る。態様において、最適化された特殊な特性は機械的特性である。態様において、最適化された特殊な特性は障壁特性である。態様において、最適化された特殊な特性は付加的な特性である。CPSの最適化は、最適化された特殊な特性を有する繊維または不織ファブリックなどの形成物品または製造物品を生じ得る。
【0133】
例として、CPSの疎水性/親水性は、増加した強度または調整された疎水性/親水性などのこれらの所望の特性を付与するように選択される物質の添加により、最終の適用に応じて調整され得る。より親水性の繊維について、生分解性ガムまたは他の親水コロイドは、上述の生分解性ポリマーと共にまたはそれに代わって使用され得、例えばキサンタンガムをCPSに添加するかまたはCPS中の特定の構成的ポリマーをキサンタンガムと置き換える。より疎水性の繊維について、メチルセルロースなどのより疎水性である生分解性ポリマーが使用され得;付加的にまたは代替的に、さらなる疎水性を付与するために、少量の非常に疎水性である材料、例えばワックス、油またはそのエマルジョンが添加され得る。ワックスが添加される場合、CPSは、懸濁物の代わりにエマルジョンを形成する傾向が高くあり得、その場合、全体的なCPSへのワックスの組み込みを高めるために脂肪酸などの界面活性剤または他のものが使用される。
【0134】
NCEおよび任意の所望の二次的添加剤を組み込むようにCPSが製剤化された後、それは、さらなる形作り、例えば繊維を形成するために粘性の基質を提供する。任意に、グリセロールまたは構成的ポリマー鎖と相互作用するかもしくはそれらの間にそれ自体を挿入する他の小分子は、可塑剤として働くために基質に添加され得、これは一旦形作られると、脆さが低く、より展性の高い繊維の形成を生じ得る。使用され得る可塑剤としては、限定されることなく、グリセロール、プロパンジオール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、ソルビトール等の前述される物質およびステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、カプロン酸等の脂肪酸が挙げられる。
【0135】
複合マトリックス(すなわち適切な二次的添加剤を有する、構成的ポリマー製剤中のNCEの懸濁物)が製剤化された後、それは、粘性または溶解した基質を処理して繊維を形成するための技術分野においてよく知られる技術を使用して形作られ得る。より詳細に、基質は、適切な粘度で調製され得るので、それは、押出し成形機または紡糸口金システムにより方向づけられ得る。基質の粘性は、それにより多いまたはより少ない水を添加することにより、薄化(thinning)剤または濃化剤などの二次的添加剤を組み込むことにより、その温度を変えることによりまたは当該技術分野で良く知られた他の機構により調整され得る。
【0136】
一旦複合マトリックスが適切な粘性を達成すると、それは、押出し成形機または紡糸口金、すなわちいくつかの穴またはチャンネルを含む型を通って押し付けられ得る不定形基質として働く。押出し成形機または紡糸口金の穴を通る不定形基質の通過は、基質の伸長を生じて、1つ以上の繊維を形成する。当業者に理解されるように、紡糸口金内の穴の数は、その後の工程において互いに絡み合ってより糸または糸を形成する規定された数の繊維を生じ得る。これも当業者に理解されるように、連続の単一の繊維または糸を形成するための単一の穴の押出し成形機が使用され得、これはその後、例えば単一の繊維を長手方向にまたは横方向に切断することにより、より小さい小繊維に機械的に分割され得る。態様において、NCE小繊維は、横または長手方向の応力へのそれらの抵抗性を高めるために、単一または複数の押出し成形されたポリマー性繊維内で方向性を持って整列し得る。
【0137】
押し出し成形プロセス後、繊維は、繊維の意図される用途のためにそれらを固める領域を通過し得る。例えば、繊維が加熱された基質由来であり、それらが押し出し成形後に依然として熱を保持する場合、それらは、それらの意図される用途の温度に冷却され得るかまたは必要に応じて、例えば余分な水を追い出すために再加熱され得る。または、例えば押し出し成形された繊維が依然として過剰に柔軟であるかまたは引き伸ばし可能である場合、それらは、構成要素ポリマーのいくつかを架橋するための凝固槽、または基質の揮発性の構成要素を追い出し、その後の凝固を可能にする空気のギャップへの曝露により固められ得る。押し出し成形された繊維の最適化の後、それらは合わされてより糸または糸を形成し得、次いでこれは、当業者に良く知られた技術と一致し、必要な場合はスピンフィニッシュによりさらに処理され得る。より糸または糸は、ポリマー性材料を互いとおよび繊維内のNCEと整列させるため、および繊維内の空隙を排除するために、適切な速度および温度で走る1つ以上のゴデットロールを使用してさらに処理され得、それにより材料をより強くする。態様において、本明細書に開示される生分解性のNCE含有CPS基質で作製される繊維またはフィラメントは、いくつかの適用に使用され得る。
【0138】
態様において、これらのNCE含有生成物は、生分解性の不織材料を形成するために使用され得、有利に、ポリプロピレンまたはポリエステルなどの非生分解性材料で作製される従来の不織物の代替物を提供する。不織ファブリックは、繊維またはフィラメントをより糸または編まれた糸に変換する必要なく、ランダムなパターンで一緒に取り付けられる繊維またはフィラメントで形成されて、マットを形成し得ることが理解される。したがって、不織ファブリックの形成は、繊維またはフィラメントをファブリックに形成するための伝統的な織り、編みまたは組みの技術とは異なる。不織ファブリックの形成には2つの主要なプロセス:織物形成および織物強化が含まれる。NCE含有CPS基質で作製された繊維またはフィラメントと共にこれらの技術を使用することにより、有利な特性を有する生分解性の不織材料が生じ得る。かかる生分解性材料を作製するための織物形成プロセスは、上記のように作製された繊維およびフィラメントを、当業者に理解されるように、カーディング、エアレイング(air laying)、ウェットレイング(wet laying)、スパンボンディング(spun-bonding)、メルトブローイング(melt-blowing)およびより最近のエレクトロスピニングなどの技術に供する。かかる生分解性材料を作製するための織物強化プロセスは、ニードルパンチング(needle-punching)、スパンレーシング(spunlacing)、化学接着(chemical bonding)および熱接着(thermal bonding)などの技術を含み得る。
【0139】
NCE含有CPS基質で形成される繊維または不織材料は、ファブリック取扱いおよびドレープ性、伸長特性、摩耗抵抗性、毛玉(pilling)および洗い安定性、染色および印刷適合性ならびにこれらの生分解性材料を種々の適用に使用することを可能にする他の特徴などの最適化された特性を示す繊維またはファブリックを作製し得る。態様において、これらの生分解性材料で形成される生成物は、廃棄した後に生分解性を受けやすくありながら、それが、その所望の目的について十分な完全性および強度を保持するようにカスタマイズされる。例としては、限定されることなく、前述の乾燥機シートおよび同様の生成物に加えて、清掃タオル(マイクロ繊維清掃布に類似)、拭くもの、吸収性材料、ティーバッグ、コーヒーフィルターおよび同様の食品関連フィルター、HEPAフィルターなどの工業的および消費者の使用のためのフィルター、真空バッグ、および医療ガウン、掛け布、カバー、マスク、絆創膏および他の創傷包帯、ならびにパッケージング系などの生成物が挙げられる。
【0140】
別の例として、NCE由来である人工ファブリックおよび繊維は、人工皮革を作製するように形成され得る。従来の人工皮革は、ポリエステルなどの人工ファブリックを採用すること、およびそれをポリウレタン、ポリ塩化ビニルまたはワックスに浸漬/コーティングすることにより作製される。これらの生成物は天然の皮革に対して乏しい性能を有し、それらは合成の非生分解性プラスチック材料で作製される。代替物として、NCEで作製される繊維またはファブリックを使用して天然由来の人工皮革が作製され得る。上述のように、人工皮革のための基本的基質を形成するNCE系ファブリックが作製され得、強化は、NCEから紡がれた繊維から付加され得るかまたは充填剤粒子として働くNCE自体から付加され得る(または両方)。上述の技術を使用して、繊維にOGR/WVRコーティングが付加され得る。酢酸セルロースまたは他の疎水性の伸長する材料は、コーティングされた繊維およびそのために最終の皮革生成物に弾性を付与するために添加され得る。NFC/MFCからの強度の付加および酢酸セルロースからの弾性の付加により、耐久性のある天然由来の皮革代替物が作製され得る。弾性を付与するために、トリアセチンまたはクエン酸エステル、脂肪酸等の疎水性可塑剤も使用され得る。
【0141】
(c) 例:飲用ストロー
生分解性、強度および障壁特性の特徴を組み合わせる適用は、生分解性の飲用ストローとして形成される製造物品を形成するためのNCE材料の使用である。ストローは、アルコール、脂肪、酸味のあるもの等の種々の液体により種々の温度で使用されるように意図され、ストローは通常の使用の間の変形に抵抗するのに十分な強度を必要とするので、生分解性でないより耐久性のあるプラスチックが使用される傾向があり;生分解性材料単独では、ストローが通常遭遇する応力に耐えるための液体許容性および強度を欠く。単独または他の生分解性材料と組み合わせたNCE材料の使用は、該生成物を生分解性にしながら、必要な液体許容性および強度を提供し得る。以前に記載されるように、NCEマトリックス単独は、シートとして形成され得、ストローとして働くために中空の円筒に丸められ得る。他の態様において、複合材料は、例えばNCEと合わされた誘導体化セルロース、例えばメチルセルロースを使用して形成され得、ここでメチルセルロースまたは類似の生分解性LCSTポリマーまたは酢酸セルロースなどの他の材料、脂質、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセテート/ポリビニルアルコールのコポリマー、ワックス、ワックスエマルジョン疎水性デンプン、脂肪酸、または他の疎水性セルロース性ポリマー、または任意の他の同様の疎水性ポリマーは、材料の疎水性を増加し得る。
【0142】
態様において、乾燥形態のメチルセルロース(MC)、酢酸セルロース、脂質、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセテート/ポリビニルアルコールのコポリマー、ワックス、ワックスエマルジョン疎水性デンプン、脂肪酸、または他の疎水性セルロース性ポリマー、または任意の他の同様の疎水性ポリマーは、再分散添加剤、例えば上述の小分子可塑剤とセルロース性ポリマーなどの生分解性ポリマーの組合せで予め処理される乾燥した再分散性のNCEと合わされ得、ここでMCおよびNCE混合物は、粉末形態まで粉にされる。次いで該粉末化混合物は水に撹拌されて、粘性混合物を作製し得、次いでこれは、シートとして形成され得るかまたは中空の円筒として押し出し成形され得る。態様において、再分散添加剤(例えば小分子および生分解性ポリマー)対NCE要素の比は、約1:1~約15:1の範囲または約3:1~約12;1の範囲または約6:1の比であり得、生分解性セルロース性ポリマーと小分子可塑剤の間の種々のバランスが利用可能であり、例えばポリマーと小分子の70/30のバランスまたはポリマーと小分子の間の50/50のバランスまたはポリマーと小分子の間の0/100のバランスまたは例示的な比の間の2つの構成要素の任意のバランスが提供される。障壁特性を有するように工学的に作り変えられる態様について、OGRまたはWVR成分対NCEの比は、約1:1~約12:1または約3:1~約9:1であり得る。別の態様において、NCEの2~3%の懸濁物は、MCまたは他のセルロース含有懸濁物と混合され得る。態様において、NCE製剤は、CMFおよびCNFを含み得るか、またはCNFよりも多くのCMFを含み得るか、または本質的にCMFからなり得、CMF対CNFの比は、最終製剤の強度を最適化するように調整される。態様において、標準のパルプは、混合物中の誘導体化セルロースに加えてまたはそれに代わって使用され得る。製剤中に使用されるグリセロールまたは他の可塑剤の量を排除または減少することにより、ストロー生成物の剛性が向上され得る。紡がれたヒドロゲル繊維は、強度および柔軟性を向上するために複合物に添加され得る。
【0143】
(d) 例:従来の生成物の生分解性代替物
以前に記載されるように、本明細書に開示される複合マトリックスは、従来の生成物の生分解性代替物を提供する。
【0144】
NCE/デンプン複合物について、セルロースマイクロ繊維は、デンプン系CPSに対する添加剤として、単独またはセルロースナノ繊維と組み合わせてのいずれかで有利である。発泡は、機械的手段によりまたは界面活性剤などの泡形成要素を混合物に組み込むことにより作製され得る。重炭酸塩結晶も、泡形成要素として混合物に組み込まれ得、発泡を活性化するために酸がより後期に添加される。アマニ油などの二次的添加剤またはより疎水性のセルロース添加剤、例えばメチルセルロース、酢酸セルロース、脂質、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセテート/ポリビニルアルコールのコポリマー、ワックス、ワックスエマルジョン疎水性デンプン、脂肪酸、他の疎水性セルロース性ポリマー、または任意の他の同様の疎水性ポリマーが、疎水性を向上するために添加され得;代替的にまたは付加的に、OGR特性を有するNCE添加剤が調製され得る。
【0145】
態様において、既存のマトリックスとして生分解性材料を使用して作製される複合マトリックスは、泡および発泡物品を作製するために使用され得る。生分解性材料で作製される従来の発泡生成物、例えばデンプンで形成される泡は典型的に、石油由来の泡に対して不十分な性能を有し、しばしば石油由来生成物の強度および疎水性を欠く。主にNCEマトリックスに由来するNCE系の泡は、上述のように梱包材料などの用途のために、従来の泡の代用物として働き得る。NCEおよびデンプンまたは誘導体化セルロース(例えばセルロースエーテルまたは酢酸セルロース)などの生分解性材料の混合物を含む複合材料はまた、発泡物品として調製され得、従来の泡の代用物として同様に使用され得、生分解性の利点と、梱包材料および容器が必要とする所望の強度、衝撃吸収性、軽量および水抵抗性を合わせる。
【0146】
態様において、本明細書に開示される技術に従って調製される再分散されるかまたは再分散性のNCE添加剤は、パルプまたはパルプ系材料で形成されるものなどの生分解性の既存のマトリックスに障壁特性を付与するための担体として使用され得る。これを行うために、NCEは、以前に記載されるものと同じ方法で最初に処理されて、再分散性を可能にし得る。可塑剤と混合されるセルロース性ポリマーは、受容される場合に2~3% NCEスラリーに添加され得、それは、シートまたは任意の他の形態もしくは形状に乾燥され得る。一旦乾燥されると、次いで生成物は、粉末に似た小粒子まで粉にされ得る。この新規の粉末に、障壁特性を付与するために、1つ以上の疎水性または疎油性の材料を添加し得る。この障壁作製材料は有利に、例えば疎水性デンプン、より疎水性であるセルロース性ポリマー、例えばメチルセルロース性、または脂肪酸の取り扱いを容易にするために、水に溶解性または可溶化可能な何かであり得る。障壁作製材料は、1:1の障壁添加剤対NCE~15:1の障壁添加剤対NCE、および好ましくは3:1~9:1の範囲の比で添加され得る。障壁作製材料はまた、水中油エマルジョンまたはワックスエマルジョンであり得る。可塑剤などの二次的添加剤は、この工程にも添加され得る。作製される組成物は、粉末またはペースト材料のいずれかであり、これは、その濃縮された形態で輸送され得、その後水に溶解され得、選択された生分解性の既存のマトリックスに添加されて、障壁特性を有する複合マトリックスを作製する。例えば、成分のスラリーは、以前に記載されるパルプ成形もしくはパルプ系生成物のための混合される障壁添加剤として使用され得るか、またはそれは、以前に記載されるように既に作成されたパルプもしくはパルプ系生成物のためのコーティングとして使用され得る。それはまた、繊維に障壁特性を付与するために使用され得:障壁処理を含む複合マトリックスは、生成物に成形され得るか、繊維を形成するように押し出し成形され得るか、繊維に紡がれ得るか、またはそうでなければ障壁特性を有する組成物もしくは形成物品を生じるように処理され得る。次いで、組成物または形成物品は乾燥されて、それが乾燥形態で障壁特性を示すことを可能にする。
【0147】
態様において、複合マトリックスは、有利な機械的特性および障壁特性などの特殊な特性の組合せを有する生分解性の既存のマトリックスから作製され得る。例として、梱包材料は、デンプンまたは誘導体化セルロース(セルロースエーテルまたは酢酸セルロース)などの以前に記載される天然のポリマー性材料で形成され得、任意に障壁ポリマーを添加されるかまたは任意に障壁処理NCE泡を添加され、ここで天然のポリマー性材料は、NCE強化繊維により強化される。態様において、天然のポリマー性材料は、糸または繊維に紡がれ得、NCEの房は、紡がれた繊維内に整列されて、強い強化された繊維を作製する。以前に記載される天然の材料で作製されたパッキングピーナッツなどの発砲された生成物は、これらのNCE強化ポリマー繊維で強化されて、衝撃吸収特性を有する軽量な網状組織である梱包材料が形成され得る。小さな繊維またはより長い強化された繊維の束になったボールは、増加された衝撃吸収性のための全体的な梱包材料マトリックスにおいて強化として使用され得る。この目的のNCEの房は、固有の疎水性を有し得、任意にそれらの油脂抵抗性を向上するための材料で処理され得る。全体的に、これらの天然の材料およびNCE強化(NCE繊維および/またはNCE強化ポリマー繊維)は、パッキングピーナッツ、袋、ボール紙ボックス等の多くの梱包適用に使用され得る。
【0148】
(e) 例:伝導性材料
態様において、追加のNCE集団は、伝導性適用におけるそれらの使用を可能にするために、銀鏡反応を介して改変されるNCEのサブ集団を含み得る。
【0149】
銀鏡反応は、銀のアンモニア錯体とアルデヒドの相互作用による酸化還元反応の結果として、表面上に金属製の銀の層を作製する。トーレン試薬(酸化銀のアンモニア溶液)を使用する銀鏡反応の第1の段階を以下の式EQ.1:
【数1】
に記載し、ここで[Ag(NH3)2]は、アンモニア溶液に溶解する金属酸化物により生じる銀ジアミン水酸化物である。
【0150】
銀ジアミン水酸化物とアルデヒドR-CH=Oの反応を示す銀鏡反応の第2の段階を以下の式EQ.2:
EQ.2: R-CH=O + 2[Ag(NH3)2]OH → 2Ag↓ + R-COONH4 + 3NH3 + H2O
に示し、ここで[Ag(NH3)2]は、アンモニア溶液に溶解する金属酸化物により生じる銀ジアミン水酸化物であり、ここで生成物は、炭酸アミン、アンモニア溶液、および「銀鏡」を形成する銀沈殿物を含む。
【0151】
NFC、MFCまたはそれらの混合物のいずれにせよ、NCEのサブ集団がアルデヒドに浸漬されて、アルデヒド基がNCEの表面上に存在する場合、これらのNCEの表面上で酸化還元反応が起こる。この反応に有用なアルデヒドとしては、グルタルアルデヒド、桂皮アルデヒド、バニリン等が挙げられ得る。次いでこれらのアルデヒド保有NCEは、銀のアンモニア錯体に曝露されて、NCEの表面上の銀沈殿の堆積を生じ得る。結果的に、伝導性および反射性のコーティングがNCEサブ集団上に堆積され得る。このサブ集団が、本明細書に開示されるように調製された複合マトリックスに含まれる場合、複合マトリックスは、伝導性特性を有し、それを、伝導性および/または反射性適用に使用することを可能にする。例として、伝導性で高度に反射性のNCEは、例えばフィットネル、ヘルスケアおよび医療産業に、ならびにケーブルクラッディング、EMIシールディング、回路基板製造および全体的な電極建造において強度および伝導性の組合せが有利である適用に使用され得る。伸長された構造、高い表面積ならびに分散およびコーティングされる能力が利点を提供する他の適用は、関連のある技術分野の当業者に明らかである。
【実施例
【0152】
実施例
実施例1~4に使用される材料としては:
・水中のNFC懸濁物(Performance Biofilaments、SAPPI、University of MaineおよびAuburn Universityなどの種々の供給源から入手される)
・化学物質(そうではないと示されない限り、全てSigma Aldrichから入手される)
○トリ(プロピレングリコール)ブチルエーテル(TPnB)
○ジ(プロピレングリコール)プロピルエーテル(DPnP)
○プロピレングリコールブチルエーテル(PnB)
○プロピレングリコールプロピルエーテル(PnP)
○ブチレングリコールエチルエーテル
○エチレングリコールモノブチルエーテル(2-ブトキシエタノール)
○プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
○プロピレングリコールジアセテート
○エチレングリコールジアセテート
○ベンジルアルコール
○1-ヘプタノール
○1-ヘキサノール
○カフェイン
○グリセロール
○ピペラジン
○ピリジン
○メチルセルロース(MC)
○ヒドロキシエチルセルロース(HEC)
○ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
○ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)
○ポリ(メチルビニルエーテル)
○メラミン
○トリエタノールアミン
○Dytek EP(1,3ジアミノペンタン)
○エチレンジアミン
○ジエチレントリアミン
○テトラエチレンペンタミン
○1,2-ジアミノシクロヘキサン
○ポリエチレンイミン(PEI)
○エチレンジアミン四酢酸(EDTA)
○Luviskol Plus (ポリビニルカプロラクタム)(BASF)
・Corning撹拌プレート
・BINDER強制対流式オーブン
が挙げられる。
【0153】
実施例1:NFC懸濁物への直接添加剤適用
この実験により、再分散添加剤のNFC懸濁物への直接適用を試験し得る。この実験において、2.1wt% NFCスラリーを、水道水により0.1wt%まで希釈し得、少なくとも5時間ゆっくり撹拌し得、NFC繊維を十分に分散させる。50mLアリコートの希釈NFC懸濁物を測定し得、例示的再分散添加剤の直接添加により個々に処理し得る。それぞれの添加剤は、撹拌プレート上で5分間、50mLの0.1wt% NFC懸濁物に直接混合し得る。得られる混合物を、BINDER強制対流式オーブン中、110℃で乾燥し得る。乾燥後、得られた乾燥繊維のマットを80mLの水道水に浸漬し得、撹拌プレート上で5分間再懸濁し得る。懸濁した材料を、再分散の程度を評価するための以下の基準を使用して、定性的に評価し得る:
a) 高い再分散有効性:ビーカーからの十分な繊維マットの完全な分離および別個の繊維へのクラスター/凝集物の総分解、塊りが見られない不透明/半透明の懸濁物を生じる。
b) 中位の再分散有効性:小さい/中位のNFC塊り(1~5mmの直径)が水性媒体中に懸濁される中程度から完全なビーカーからの十分な繊維マットの分離。
c) 低い再分散有効性:ビーカーからの十分な繊維マットの分離がほとんどまたは全くなく、および水性媒体中に懸濁される中位の/大きいNFC塊り(>5mm直径)が存在する。
【0154】
選択された再分散添加剤についての再分散有効性についての予想される結果を以下のように列挙する:
・懸濁物中のNFCの重量の100%~300%の量で添加されるHPC、HPMC、グリセロールは、高い再分散有効性を生じると予想される。
・懸濁物中のNFCの重量の2倍~5倍の量で添加されるカフェイン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、Dytek EP、MC、Luvskol Plus、DPnPおよびTPnBは、中位の再分散有効性を生じると予想される。
・他の添加剤は、低い再分散有効性を生じるか、および/または中程度の再分散を生じるためにより大きな相対体積の添加剤を必要とすると予想される。
【0155】
実施例2: NFC懸濁物への二成分/三成分(tertiary)の直接添加剤適用
実施例1に記載されるものと同様のNFC懸濁物を、処理のために50mLのアリコートに希釈、撹拌および測定し得る。2つまたは3つの添加剤(二成分または三成分)を合わせ得、実施例1に記載の方法の後にそれぞれのNFC試料を処理し得る。全ての処理された試料を乾燥させ得、実施例1と同じプロトコルの後に再分散について試験し得る。二成分および三成分についての再分散有効性は、再分散に対する添加剤のそれぞれの組合せの効果を評価するための実施例1に記載の再分散有効性基準を使用して、添加剤の種々の組合せについて予測され得る。
【0156】
添加剤組合せは、種々の比でNFC試料に導入し得る。HPCとHPMCの1:1の比の添加剤組合せは、混合物中のNFCの量よりも3倍多い量で添加され得、高い再分散有効性が予想される。HPMCとMCの1:1の比の添加剤組合せは、混合物中のNFCの量よりも3倍多い量で添加され得、高い再分散有効性が予想される。他の可能な組合せは、中位または低い再分散有効性を生じ、および/または処理されるNFCの量に比例してかなり多くの量の添加剤を必要とすると予想される。添加剤の可能な組合せを、それらの予想される再分散有効性と共に以下の表1に列挙する。
【表1】
【0157】
実施例3:濾過後のNFCの単一要素処理
この実施例において、希釈されたNFC(0.3~1.0wt%)の1L懸濁物を、実施例1に従って調製し得、希釈パルプ懸濁物(0.3~0.75wt%)と合わせ得る。合わされたストック懸濁物を撹拌プレート上で15分間激しく混合し得、次いでそれを、ブフナー漏斗中70メッシュスクリーンを通して濾過し得、250mLメスシリンダーに排出して、余分な水を除去し、それによりメッシュスクリーン上にNFC/パルプマットを形成する。真空を使用して、NFC/パルプマットの最終固体含有量を増加し得る(約10wt%)。それぞれの選択された添加剤を、別々のビーカー中の濾過された固体にスパチュラで混合して、試験のためにNFC/パルプ繊維の得られるマットと再分散添加剤を完全に混合し得る。
【0158】
再懸濁能力を試験するための添加剤は、LCSTポリマーおよび不揮発性添加剤を含み得る。LCSTポリマーまたは不揮発性添加剤候補を、最初に濃縮水溶液(5wt%~40wt%の範囲)に溶解し得、その後それらをNFC/パルプ固体に添加する。次いで、それぞれ単一の添加剤を含むこれらの溶液を、NFC/パルプ溶液材料に添加し得、実施例1に記載のものと同様の方法を使用してそれらを処理する。次いで、処理されたNFC/パルプ混合物の全ての得られた試料を、球形の半球(1.5cm直径)のシリコーンの型に堆積し得、110℃で乾燥させ得、比較目的で一定の試料形状、サイズおよび密度を生じる。
【0159】
試料の再分散は、上述の実施例に記載のように行い得る。上述の再分散有効性基準を使用して、再分散試験の結果を定性的に評価し得る。NFCの量の1.5~2倍の量で使用するHPMCは、低いまたは中位の再分散有効性を生じると予想され、NFCの量の3~4倍の量のグリセロールは、高い再分散有効性を生じると予想される。
【0160】
実施例4:濾過後のNFCの二成分処理
この実験において、NFCおよびパルプ懸濁物は、実施例3に従って調製および濾過され得る。濾過固体繊維を投与するために使用される処理溶液は、2つの活性添加剤、例えばHPMCおよびグリセロールまたはHPMCおよび2-ブトキシエタノールを含むように調製され得る。種々の比の添加剤およびNFCの量に対する添加剤の量を試験し得る。約0.4:1~2:1のHPMC対グリセロールの比は、上で提供された定性結果のための基準を使用して、中位または高い再分散有効性を生じ、HPMC対2-ブトキシエタノールの0.6:1の比は、中位の再分散有効性を生じると予想される。HPMC:グリセロール添加剤混合物について、より大きな添加剤-対-NFCの比、例えば3:1、4:1またはそれ以上は、添加剤対NFCのより低い相対量よりも高い再分散有効性を生じると予想される。
【0161】
実施例5~6に使用される材料としては:
・Corning撹拌プレート
・BINDER強制対流式オーブン
・NFC(水中2.1wt%):Auburn University
・Sigma Aldrich Chemicals
○トリ(プロピレングリコール)ブチルエーテル(TPnB)
○ジ(プロピレングリコール)プロピルエーテル(DPnP)
○プロピレングリコールブチルエーテル(PnB)
○プロピレングリコールプロピルエーテル(PnP)
○ブチレングリコールエチルエーテル
○エチレングリコールモノブチルエーテル(2-ブトキシエタノール)
○プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
○プロピレングリコールジアセテート
○エチレングリコールジアセテート
○ベンジルアルコール
○1-ヘプタノール
○1-ヘキサノール
○カフェイン
○グリセロール
○ピペラジン
○ピリジン
○メチルセルロース(MC)
○ヒドロキシエチルセルロース(HEC)
○ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
○ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)
○ポリ(メチルビニルエーテル)
○メラミン
○トリエタノールアミン
○Dytek EP (1,3ジアミノペンタン)
○エチレンジアミン
○ジエチレントリアミン
○テトラエチレンペンタミン
○1,2-ジアミノシクロヘキサン
○ポリエチレンイミン(PEI)
○エチレンジアミン四酢酸(EDTA)
○ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
・他の化学物質
○Luviskol Plus (ポリビニルカプロラクタム):BASF
○カプリルグルコシド:Amazon
○デシルグルコシド:Amazon
○ココグリコシド:Amazon
が挙げられる。
【0162】
実施例5:荷電したNCE繊維の処理
この実験では、NFC懸濁物への再分散添加剤の直接適用を試験した。ダイズ穀皮は、NCE繊維(NFC)についての生物供給物であり、それをAuburn Universityで機械的および化学的に処理して、2.1wt%固体でNFC懸濁物を作製した。以下の表2に記載される種々の比のHPMCおよびグリセロールを合わせて、2.1wt% NFC懸濁物を直接処理するための溶液を形成した。高度に粘性の処理された懸濁物は、その後1mm~3mmの厚さでシリコーンシート上に広げ、BINDER強制対流式オーブン中75℃で乾燥させ、NFCシートを得た。
【0163】
得られた処理および対照NFCシートを、3分間手で激しく振盪して、DI水を有するガラスバイアル中に5wt%固体で再懸濁した。次いで、再分散有効性についてバイアルを定性的に観察し、結果を以下の表2に示した。再分散有効性の以下の記載を使用して、これらの再分散試験から観察された定性的な結果を示した。
【0164】
再分散有効性:
a) 高い再分散有効性:塊りが見えない不透明/半透明な懸濁物を生じる繊維シートの別個の繊維への完全な分解。
b) 中位の再分散有効性:小さい/中位のNFCの塊り(1~5mmの直径)が水性媒体中に懸濁された繊維シートの中程度の分解。
c) 低い再分散有効性:繊維シートの分解がほとんど~全くなく、水性媒体中に懸濁された中位/大きいNFCの塊り(>5mmの直径)の存在。
【表2】
【0165】
実施例6:界面活性剤負荷ナノセルラー要素の再分散
この実験では、Auburn Universityからの2.1wt%のダイズ穀皮由来ナノセルラー要素(NFC)懸濁物を使用して、水に再分散した場合に目的の化学物質(この場合、界面活性剤)の担体として働かせた。この実験について、全てのNFC試料に、NFC繊維と6:1の比で再分散添加剤を投与した。再分散添加剤は、それぞれ19:1の比でHPMCおよびグリセロールからなった。二成分再分散添加剤溶液を2.1wt% NFC懸濁物に直接適用して処理懸濁物を形成した後、種々の界面活性剤を個々に処理懸濁液に混合して、得られた混合物を乾燥させ、実施例5に概略を示される手順に従って再分散性について試験した。実施例5に記載される再分散有効性基準に従って、再分散性を定性的に観察した。以下の表3に、試験した界面活性剤およびそれらのNFC再分散に対する効果を列挙する。
【表3】
【0166】
高い再分散有効性を有して乾燥および再分散され得たこれらの試料は、石鹸として有用であり得た濃い界面活性剤含有液を生じた。結果により、特定の界面活性剤は、再分散性NFCシートに組み込まれて、石鹸、シャンプー等の用途にための液体界面活性剤含有材料としての再構成を可能にし得ることが示唆される。他の活性剤(特に、漂白剤、ファブリック柔軟剤のためのカチオン性界面活性剤、芳香剤、軟化剤等)も同様に、単独でまたは他の成分と組み合わせて、再分散性NFCシートに組み込まれ得ると仮定される。
【0167】
実施例7に使用される材料としては:
・Corning撹拌プレート
・ダイズ穀皮NFC(水中2.1wt%)(Auburn University)
・ブッチャーペーパー-コーティングされない(Amazon)
・DI水
・Carrington Farms有機ココナッツ調理油
・オーブン
・ベーキングパン
・Sigma Aldrich Chemicals
○グリセロール
○メチルセルロース(MC)
が挙げられる。
【0168】
実施例7:油脂抵抗性
この実験では、処理されたNFCが食品に接触する紙に油脂抵抗性を付与する能力を試験した。この実験においてはダイズ穀皮NFC懸濁物(2.1%濃度)を使用した。DI水中のMCおよびグリセロールの4.5%のストック溶液を撹拌プレートで作製し、活性なものの95%はHPMCであり、5%はグリセロールであった。2.1%ダイズ穀皮NFC懸濁物の5グラムの試料を3つの小さなビーカーに添加して、対応する量のMC/グリセロール溶液をNFC懸濁物と共に添加し、活性分散剤対乾燥NFCの3:1、6:1および9:1の処理を生じた。3:1の試料は7グラムの4.5% MC/グリセロール溶液を含み、6:1の試料は14グラムのMC/グリセロール溶液を含み、9:1の試料は21グラムのMC/グリセロール溶液を含んだ。HPMC/グリセロール処理なしで5グラムの2.1% NFC懸濁物を有する試料もあったが、より低い粘性コーティングを確実にして、他の試料の粘性をより良く適合させるために、7グラムのさらなるDI水を添加した。これは対照試料として処理された。懸濁物を手で混合して、かたわらに置いた。
【0169】
別に、コーティングされない茶色のブッチャーペーパーを、小さな1.5インチ×1.5インチの正方形に切断した。以前の工程で作製した4つの懸濁物をそれぞれ、それ自体の秤量ボート(weigh boat)に注ぎ、3つの異なるブッチャーペーパー正方形をそれぞれの懸濁物に浸漬した(一度に1つずつ)。一旦それぞれの正方形を十分に浸漬して、十分にコーティングすると、それをピンセットで取り除き、秤量ボートの上に1分間保持して、余分な懸濁物を紙から流した。次いでブッチャーペーパーのそれぞれの断片をオーブンに入れて、75℃で30~60分間乾燥させた。正方形が十分に乾燥した後、それぞれ3滴のDI水および液体ココナッツ油をそれぞれの正方形に滴下した。正方形を、2つの間隔:水および油の液滴の適用の直後(時間1)および液滴の適用の15分後(時間2)の間隔で観察した。時間1(液滴の適用の直後)で観察した場合、全ての4つの試料は水をはじくように見えた。水滴はそれらの形状を保持し、接触角(定性的に観察された)は、比較的高く、濡れていない特徴を有した。水滴の下の茶色のブッチャーペーパー上で色の変化は起こらず、水滴がブッチャーペーパーの孔に浸透していないことが示された。時間1で観察した場合、液滴が紙の上に存在し続けないように、対照試料上の油滴は0に近い接触角(定性的に観察された)を有した。液滴は広い面積(液滴のおよそ3xのサイズ)に広がり、紙は湿り、色はより暗い茶色になり、油が紙の孔に浸透したことが示された。3:1の処理試料は、液滴が目に見えるままであったように、対照試料よりもわずかに高い接触角を有し、液滴の下の暗い茶色のスポットは、対照よりも小さく、元の液滴のおよそ2倍のサイズであった。6:1の試料上の油滴の接触角は、3:1の試料上のものよりもわずかに高かったが、他の点はほぼ同じに見えた。9:1の試料上の油滴は全ての試料の内で最も高い接触角を有し、液滴の下に暗い茶色のスポットは見られず、油がブッチャーペーパーの孔に浸透しなかったことが示された。時間2(液滴の適用の15分後)で観察した場合、水滴は、全ての試料について以前に記載されたものと同じままであった。時間2で観察した場合、油滴の外見は変化した。対照試料および3:1の試料からの油滴由来の茶色のスポットは、正方形の面積の約1/3を覆うように成長し、濡れが経時的に増加することが示された。6:1の試料上の油滴の接触角は経時的に低下し、液滴由来の茶色のスポットは、正方形の面積の約1/5を覆うように成長した。しかしながら、9:1の試料について、油滴のサイズおよび接触角および暗い茶色のスポットの欠けは、時間2で変化しないままであり、経時的に濡れがないことが持続することが示された。
【0170】
実施例8において使用される材料としては:
・Corning撹拌プレート
・NFC懸濁物(水中2.1wt%)(Auburn University)
・DI水
・Revlonブロードライヤー
・ヘアタイ
・テープ
・撹拌バー受容器
・Full Shine Remyヒトの毛髪:Amazon
・Sigma Aldrich Chemicals
○グリセロール
○低分子量キトサン
○ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)
○酢酸
・他の化学物質
○Xiameter OFX-0193 PEG-12ジメチコン:Dow Chemical
が挙げられる。
【0171】
実施例8:NFCの毛髪保持
この実験では、処理されたNFCが毛髪保持を補助し、ヘアスプレーおよび刺激の強い化学物質の使用に取って代わる能力を試験した。この実験ではNFC懸濁物(2.1%濃度)を使用した。90.57% DI水を含むHPMCおよびグリセロールの9.43%溶液を作製し;9.43グラムのHPMC/グリセロール(8.96グラムのHPMCおよび0.47グラムのグリセロール)および90.57gのDI水を含む100gmのストック溶液を作製し;活性のあるものの95%がHPMCであり、5%がグリセロールであるこの溶液は、以下のように使用されるHPMC/グリセロール溶液であり:5.95グラムの2.1% NFC懸濁物を小さいビーカーに添加し、3.98グラムのHPMC/グリセロール溶液をNFC懸濁物と共に添加して、活性分散剤対乾燥NFCの3:1の比を生じた。懸濁物を手で混合して、かたわらに置いた。
【0172】
別に、1%酢酸中NFCを含む1%低分子量キトサン溶液を作製した。これを行うために、さらなる希釈のために40.06グラムのDI水を、NFC懸濁物(以前に調製されたHPMC/グリセロール溶液を用いて以前に処理された)と共にビーカーに添加した。次いで、0.5グラムの酢酸をビーカーに滴下して、撹拌プレートで撹拌した。懸濁物を激しく撹拌しながら0.5グラムのキトサン粉末をビーカーにゆっくり添加した。懸濁物が均一に見えるまで、懸濁物を約1時間撹拌したままにした。一旦キトサンが十分に溶解したように見えると、2.5グラムのDow ChemicalのXiameter OFX-0193 PEG-12 ジメチコンをビーカーに添加して、数秒間撹拌した。ヘアトリートメントとして試験するために、この製剤をかたわらに置いた。
【0173】
次いで製剤を対照試料に対して試験して、ヘアトリートメントとしての有効性を検証した。0.5グラムの毛髪の2つの試料をFull Shine Remyヒト毛髪ウィッグから切り取った。それぞれの試料を12インチの長さに切断した。それぞれの試料を、小さなヘアタイを使用して一端で縛り、テープを用いてテーブルに固定した。乾燥した毛髪が残らなくなるまで、それぞれの試料の毛髪をDI水で完全に濡らした。対照毛髪試料は水のみで濡らしたままにし、次いで実験毛髪試料は、0.2グラムの以前に記載されたヘアトリートメントで濡らした。ヘアトリートメントをシリンジで適用し、次いで毛髪試料の長さ全体にわたり完全にこすり付けた。次いで両方の試料を撹拌バー受容器の周りにぴったりとカールさせ、3分間ブロー乾燥した。3分後、毛髪から撹拌受容器を取り外し、カールを観察した。毛髪の長さに沿ってカールをつまんで、それを3~4回伸ばした後にもカールを観察した。
【0174】
対照および実験試料をブロー乾燥した直後の結果は、同様のカールを示した。正確に撹拌バー受容器の直径のサイズの巻き毛を有してカールは非常に密であった。対照試料は、実験試料のものよりもわずかに密でない毛髪の房を示し、それぞれの毛髪の房の間の間隔はわずかに大きかった。毛髪をつまんで伸ばした後、対照試料の巻き毛はさらに遠くに離れて、「跳ね返り」を提供しなかった。巻き毛の直径は、撹拌バー受容器の直径のほぼ2倍に成長し、毛髪は縮れ毛になり、ここでそれぞれの房は互いからさらに遠く離れた。実験試料はその元の形状に跳ね返り、巻き毛の直径、巻き毛の間の間隔または毛髪の房の間の間隔に変化はなかった。対照および実験試料の両方由来の全てのカールは、「パリパリさ」はなく、手触りは柔らかかった。
【0175】
本発明はその好ましい態様に関して特に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明中になされ得ることが当業者に理解される。
【国際調査報告】