(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】OX40及び/又はPD-L1に結合する抗体及び二重特異性結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240625BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240625BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240625BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240625BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240625BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240625BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240625BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240625BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240625BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240625BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240625BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240625BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240625BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240625BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240625BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240625BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240625BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12N15/63 Z
A61K47/68
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/12
A61K39/395 T
A61K35/76
A61P35/00
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575788
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2022097889
(87)【国際公開番号】W WO2022258015
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/099228
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520428270
【氏名又は名称】シャンハイ エピムアブ バイオセラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,シーヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー,バオクン
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チェンビン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ルイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA10
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4B064CC24
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4B065BD14
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4C076AA95
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4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA74
4H045GA15
4H045GA26
(57)【要約】
TNF受容体スーパーファミリーのメンバーであるOX40を認識する新規な抗体、プログラムされたDeath-Ligand 1(PD-L1)を認識する新規な抗体、及びこれらの抗体を用いて作製された二重特異性OX40/PD-L1結合タンパク質、例えばFIT-Ig結合タンパク質が提供される。かかる抗体及び二重特異性結合タンパク質は、疾患、例えばがんの処置に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、
CDR-H1が、SSWMN(配列番号1)の配列を含み、
CDR-H2が、RIYPGDEITNYNGKFKD(配列番号2)又はRIYPGDEITNYNAKFKD(配列番号4)の配列を含み、
CDR-H3が、DLLMPY(配列番号3)の配列を含み、
CDR-L1が、RSSKSLLYSNGITYLY(配列番号5)又はRSSKSLLYSNAITYLY(配列番号8)の配列を含み、
CDR-L2が、QMSNLAP(配列番号6)の配列を含み、
CDR-L3が、AQNLELPFT(配列番号7)の配列を含み、
場合により、CDRが、Kabatの番号付けに従い規定される、
OX40に特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
抗体が、重鎖可変ドメインであるVH、及び軽鎖可変ドメインであるVLを含み、
VHドメインが、配列番号9若しくは10の配列、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む、及び/あるいはVLドメインが、配列番号17若しくは18の配列、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含むか、
あるいは
VHドメインが、配列番号11~16のうちのいずれか1つから選択される配列、若しくはこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む、及び/又はVLドメインが、配列番号19~21のうちのいずれか1つから選択される配列、若しくはこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む、
請求項1に記載の単離抗体又は抗原結合性断片。
【請求項3】
抗体が、キメラ抗体又はヒト化抗体であり、場合により、ヒト化抗体であり、
さらに場合により、抗体のVHドメインが、Kabatの番号付けに従うアミノ酸残基1Eと、5Q、27H、28A、38K、40R、43K、48I、67K、68A、70Lから選択される1~10の残基、例えば10の残基を含み、VLドメインが、Kabatの番号付けに従うアミノ酸残基69G又は69S、例えば69Sを含む、
請求項1に記載の単離抗体又は抗原結合性断片。
【請求項4】
抗体が、
からなる群から選択されるVH配列とVL配列との組合せを含み、
場合により、配列番号16の配列を含むVHドメイン、及び配列番号21の配列を含むVLドメインを含む、
請求項1に記載の単離抗体又は抗原結合性断片。
【請求項5】
抗体が、以下の特徴:
(i)OX40発現細胞(例えば、OX40発現T細胞)の細胞表面に結合すると、OX40+細胞への強力な結合力を示し、前記細胞への結合力が、細胞ベースのアッセイにおいて、フローサイトメトリーにより測定される、約5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、又は1nM以下のEC50により反映される特徴;
(ii)OX40の細胞外ドメインのCRD3において、ヒトOX40に結合する特徴;
(iii)抗体の、OX40への結合が、T細胞の抗腫瘍免疫、例えば、腫瘍量/腫瘍増殖/腫瘍細胞拡大の低減を誘導し、場合により、前記抗腫瘍免疫が、抗腫瘍細胞傷害作用、及び抗腫瘍サイトカインの分泌を含む特徴
のうちの1つ以上を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗原結合性断片。
【請求項6】
抗体が、配列番号44のアミノ酸配列を有するFc領域を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗原結合性断片。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗原結合性断片を含む融合体又はコンジュゲート。
【請求項8】
6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、
CDR-H1が、TYGIN(配列番号22)の配列を含み、
CDR-H2が、YIYIGNAYTEYNEKFKG(配列番号23)又はYIYIGNGYTEYNEKFKG(配列番号25)の配列を含み;
CDR-H3が、DLMVIAPKTMDY(配列番号24)の配列を含み、
CDR-L1が、KASQDVGTAVA(配列番号26)の配列を含み、
CDR-L2が、WASTRHT(配列番号27)の配列を含み、
CDR-L3が、QQYSSYPYT(配列番号28)の配列を含み、
場合により、CDRが、Kabatの番号付けに従い規定される、
PD-L1に特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項9】
抗体が、重鎖可変ドメインであるVH、及び軽鎖可変ドメインであるVLを含み、
VHドメインが、配列番号29の配列、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む、及び/あるいはVLドメインが、配列番号32の配列、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含むか、
あるいは
VHドメインが、配列番号30若しくは31のうちのいずれか1つから選択される配列、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む、及び/又はVLドメインが、配列番号33若しくは34のうちのいずれか1つから選択される配列、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む、
請求項8に記載の単離抗体又は抗原結合性断片。
【請求項10】
抗体が、キメラ抗体又はヒト化抗体であり、場合により、ヒト化抗体である、請求項8に記載の単離抗体又は抗原結合性断片。
【請求項11】
抗体が、配列番号44のアミノ酸配列を有するFc領域を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗原結合性断片。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗原結合性断片を含む融合体又はコンジュゲート。
【請求項13】
請求項1から6及び8から11のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗原結合性断片をコードする核酸分子。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項15】
請求項1から6及び8から11のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗原結合性断片をコードする核酸分子を発現する宿主細胞。
【請求項16】
請求項1から6及び8から11のいずれか一項に記載の単離抗体若しくは抗原結合性断片、請求項7及び12に記載の融合体若しくはコンジュゲート、請求項13に記載の核酸分子、請求項14に記載のベクター、又は請求項15に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項17】
生物学的試料中のOX40を検出する方法であって、生物学的試料を、請求項1から6のいずれか一項に記載の単離抗体若しくは抗原結合性断片、又は請求項7に記載の融合体又はコンジュゲートに接触させるステップを含む方法。
【請求項18】
生物学的試料中のPD-L1を検出する方法であって、生物学的試料を、請求項8から11のいずれか一項に記載の単離抗体若しくは抗原結合性断片、又は請求項12に記載の融合体又はコンジュゲートに接触させるステップを含む方法。
【請求項19】
OX40及びPD-L1に特異的に結合する二重特異性結合タンパク質であって、OX40に特異的に結合する第1の抗原結合部位、及びPD-L1に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含み、
第1の抗原結合部位が、6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、
CDR-H1が、SSWMN(配列番号1)の配列を含み、
CDR-H2が、RIYPGDEITNYNGKFKD(配列番号2)又はRIYPGDEITNYNAKFKD(配列番号4)の配列を含み、
CDR-H3が、DLLMPY(配列番号3)の配列を含み、
CDR-L1が、RSSKSLLYSNGITYLY(配列番号5)又はRSSKSLLYSNAITYLY(配列番号8)の配列を含み、
CDR-L2が、QMSNLAP(配列番号6)の配列を含み、
CDR-L3が、AQNLELPFT(配列番号7)の配列を含み、
場合により、第1の抗原結合部位が、請求項2から4のいずれか一項に記載のVHドメイン及びVLドメインを含む;
並びに/あるいは第2の抗原結合部位が、6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、
CDR-H1が、TYGIN(配列番号22)の配列を含み、
CDR-H2が、YIYIGNAYTEYNEKFKG(配列番号23)又はYIYIGNGYTEYNEKFKG(配列番号25)の配列を含み、
CDR-H3が、DLMVIAPKTMDY(配列番号24)の配列を含み、
CDR-L1が、KASQDVGTAVA(配列番号26)の配列を含み、
CDR-L2が、WASTRHT(配列番号27)の配列を含み、
CDR-L3が、QQYSSYPYT(配列番号28)の配列を含み、
場合により、第2の抗原結合部位が、配列番号31の配列を含むVHドメイン、若しくはこれとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列、及び/又は配列番号34の配列を含むVLドメイン、若しくはこれとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含み、
CDRが、Kabatの番号付けに従い規定される、二重特異性結合タンパク質。
【請求項20】
第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、及び第3のポリペプチド鎖を含み、
(i)第1のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、CLがVH
Bへと直接融合されたVL
A-CL-VH
B-CH1-Fc、又はCH1がVL
Aへと直接融合されたVH
B-CH1-VL
A-CL-Fcを含み;第2のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VH
A-CH1を含み;第3のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VL
B-CLを含むか;又は
(ii)第1のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、CH1がVL
Bへと直接融合されたVH
A-CH1-VL
B-CL-Fc、又はCLがVH
Aへと直接融合されたVL
B-CL-VH
A-CH1-Fcを含み;第2のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VH
B-CH1を含み;第3のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VL
A-CLを含み;
VLが軽鎖可変ドメインであり、CLが軽鎖定常ドメインであり、VHが重鎖可変ドメインであり、CH1が重鎖定常ドメインであり、Fcが免疫グロブリンFc領域、例えば、IgG1のFc(場合により、アミノ末端からカルボキシル末端へと、ヒンジ-CH2-CH3を含む)であり、
VL
A-CLが、VH
A-CH1と対合して、第1の抗原Aに特異的に結合する第1のFabを形成し、VL
B-CLが、VH
B-CH1と対合して、第2の抗原Bに特異的に結合する第2のFabを形成し、
第1の抗原AがOX40であり、第2の抗原BがPD-L1であり、
第1のポリペプチド鎖のうちの2つと、第2のポリペプチド鎖のうちの2つと、第3のポリペプチド鎖のうちの2つとが会合して、FIT-Igタンパク質を形成する、
請求項19に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項21】
第1のポリペプチド鎖が、配列番号35のアミノ酸配列、又はこれとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含み、
第2のポリペプチド鎖が、配列番号36のアミノ酸配列、又はこれとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含み、
第3のポリペプチド鎖が、配列番号37のアミノ酸配列、又はこれとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む、
請求項19に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項22】
二重特異性結合タンパク質が、以下の特徴:
(i)OX40発現細胞(例えば、OX40発現T細胞)の細胞表面に結合すると、OX40+細胞への強力な結合力を示し、前記細胞への結合力が、細胞ベースのアッセイにおいて、フローサイトメトリーにより測定される、約5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、又は1nM以下のEC50により反映される特徴;
(ii)OX40の細胞外ドメインのCRD3において、ヒトOX40に結合する特徴;
(iii)結合タンパク質の、OX40への結合が、T細胞の抗腫瘍免疫の促進、例えば、腫瘍量/腫瘍増殖/腫瘍細胞拡大の低減を誘導し、場合により、前記抗腫瘍免疫が、抗腫瘍細胞傷害作用、及び/又は抗腫瘍サイトカインの分泌を含む特徴
のうちの1つ以上を有する、
請求項19から21のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質。
【請求項23】
請求項19から22のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項25】
請求項23に記載の核酸分子、又は請求項24に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項26】
請求項1から6及び8から11のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗原結合性断片、又は請求項19から22のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質を調製する方法であって、
請求項15又は請求項25に記載の宿主細胞を、抗体、抗原結合性断片、又は二重特異性結合タンパク質の産生を可能とする条件下で培養するステップ;及び
抗体、抗原結合性断片、又は二重特異性結合タンパク質を、培養物から回収するステップ
を含む方法。
【請求項27】
請求項19から22のいずれか一項に記載の二重特異性結合タンパク質、請求項23に記載の核酸、請求項24に記載のベクター、又は請求項25に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項28】
PD-L1と関連する活性が有害である障害、及び/又はOX40に媒介される活性が有益である障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項16又は請求項27に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項29】
対象がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
障害ががんである、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腫瘍壊死因子受容体であるOX40(CD134)を認識することが可能である抗体、並びに少なくとも1つのOX40結合ドメイン、及び少なくとも1つのPD-L1結合ドメインを含む類縁の二重特異性結合タンパク質、例えば、二重特異性OX40/PD-L1結合タンパク質(例えば、FIT-Ig結合タンパク質(Fab-in-tandem immunoglobulin))に関する。本開示はまた、PD-L1を認識することが可能である抗体、並びに少なくとも1つのPD-L1結合ドメイン及び少なくとも1つのOX40結合ドメインを含む類縁の二重特異性結合タンパク質、例えば、二重特異性OX40/PD-L1結合タンパク質(例えば、FIT-Ig結合タンパク質)にも関する。本明細書で開示される抗体及び二重特異性結合タンパク質は、例えば、がん免疫療法における疾患の処置に有用でありうる。本開示は、さらに、前記抗体又は二重特異性結合タンパク質をコードする核酸、及び前記抗体又は二重特異性結合タンパク質を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー(TNFR)は、ある範囲にわたる免疫細胞機能を媒介することが可能である、機能的に多様な受容体の大きなクラスである(Mayes PA、2018)。TNFRスーパーファミリーの多くのメンバーは、T細胞、B細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞、並びに抗原提示細胞(APC)を含む、多数の免疫細胞型上において発現されうる共刺激性受容体であり、免疫細胞の機能、増殖、及び生存を誘導することが示されている(Watts T.H.、2005)。
【0003】
4つのシステインリッチドメイン(CRD)により特徴付けられるI型膜貫通糖タンパク質を伴う、TNFRスーパーファミリーのメンバーであるOX40(CD134)は、主に、活性化CD4 T細胞及び活性化CD8 T細胞上、及びFoxp3+CD4+調節性T細胞(Treg)上で発現されるのに対し、そのリガンドであるOX40L(CD252)は、活性化APC、例えば、樹状細胞(DC)上、B細胞上、及びマクロファージ上で発現される(Weinberg AD、2011)。TCR-MHC/ペプチド相互作用による活性化時に、OX40Lホモ三量体が形成され、3つのOX40受容体に結合して、受容体の架橋を結果としてもたらす(Watts、2005;Jane Willoughby、2017)。OX40の高次高度クラスター化は、下流シグナル伝達を媒介するために必要であることが示唆された。クラスター化したOX40受容体は、OX40の細胞内ドメインへと、TNF受容体関連因子(TRAF)を動員する。TRAF2及びTRAF3は、T細胞の分裂、生存、及びサイトカイン産生の原因となるPI3K/PKB経路、核因子κB1(NF-κB1)経路、及びNFAT経路を活性化させる(Croft、2010;Kawamata、1998;Song、2008)。したがって、OX40の下流におけるシグナル伝達は、増殖を強化し、アポトーシスを抑制し、T細胞からのサイトカイン応答の増大を誘導する潜在的可能性を有し、それらは全て、免疫療法において使用される場合に誘発する能力がOX40アゴニスト性抗体に付与されている機能転帰である。
【0004】
抗腫瘍効能の媒介における、アゴニスト性抗OX40抗体の機構については、多様なマウス腫瘍モデルにおいて、広範に探索されている。大半のアゴニスト性抗OX40 mAbは、強力なFcγRへの結合のために、ヒトIgG1アイソタイプを採用して、エフェクターT細胞上の共刺激シグナル伝達経路を誘発し、これにより、活性化T細胞サブセットの生存及び拡大、並びにOX40によるCD8 T細胞応答についてのT細胞メモリーの確立を支援する(Brendan D Curti、2013;Glisson、2020)。さらなるデータは、OX40による共刺激が、下流シグナル伝達を介して、FoxP3の発現及びTregの誘導を阻害することを示唆する(Zhang X、2018)。OX40は、浸潤Treg上で高度に発現されるので、OX40抗体による抗腫瘍応答の誘導は、Fc媒介性エフェクター機能を介する、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)及び抗体依存性細胞性食作用(ADCP)による、腫瘍内Treg細胞の枯渇に依存する(Aspeslagh、2016;Smyth、2014)。しかし、腫瘍内Tregの枯渇は、いくつかのマウスモデルにおける、抗腫瘍免疫応答の増強、及び生存の改善により裏付けられる通り、腫瘍微小環境(TME)内における、CD8+エフェクターT細胞の浸潤と、Tregの浸潤との比を改善しうる(Jacquemin、2015;Bulliard、2014)。それらの好適な抗腫瘍効能のために、臨床開発下にある、大半のアゴニスト性OX40抗体は、それらの所望される抗腫瘍効能のため、IgG1アイソタイプ抗体である(Choi、2020;Brendan D Curti、2013;Glisson、2020)。OX40ターゲティング薬を使用する臨床試験は、単剤療法として、又は免疫チェックポイント遮断剤(ICB)との組合せとして使用された場合における、その安全性を例示している。OX40ターゲティング治療は、前臨床マウスモデルでは、印象的な結果を裏付けられているが、予備的臨床データに従うと、ヒトにおける単剤療法としてのその効能は、控え目である(Glisson、2020;Carolina、2020;Martin Gutierrez、2020)。しかしながら、近年公表されたフェーズ1/2a研究に従うと、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4と組み合わされた、OX40による共刺激は、明確な効能の改善をもたらさなかった(Martin Gutierrez、2020)。患者における、アゴニスト性抗OX40抗体に対する低度の応答は、2つの原因に帰せられうる。第1に、一部の腫瘍内では、TME内の利用可能な浸潤FcγRにより制限される場合(Willoughby、2017)、又はFcγRへの結合について競合する高濃度の内因性IgGの存在下(Christian Gieffers、2013)において、FcγR依存性クラスター化の効率は低下するであろう。第2に、近年の臨床研究により見出される通り、抗OX40IgG1抗体処置の後、OX40+CD4+メモリーT細胞の百分率は、おそらく、OX40+細胞の抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)、及び抗体依存性細胞性食作用(ADCP)のために低減された(Glisson、2020)。したがって、低度のエフェクター機能を維持しながら、FcγRの限定的利用可能性にもかかわらず、効果的な高度クラスター化を媒介しうる新たな抗OX40アゴニストの作出が必要とされている。
【0005】
PD-L1(CD274)は、40kDaのI型膜貫通タンパク質であり、PD-1/PD-L1シグナル伝達経路は、免疫寛容及び腫瘍による免疫逃避において、重要な役割を果たす。PD-L1は、多くのヒト腫瘍組織(例えば、肺がん、胃がん、乳がん、及び腸がん)において発現される。PD-1/PD-L1による阻害性シグナル伝達経路の遮断は、がん細胞を攻撃するように、抑制されたT細胞を活性化させる。大半の抗PD-L1 mAbは、腫瘍抗原特異性T細胞の増殖を推進することにより、in vivo及び患者のいずれにおいても、腫瘍増殖を阻害する(Julie、2012;Brahmer、2012)。
【0006】
二重特異性抗体は、2つの異なる抗原/エピトープに対する二重アフィニティーを有する操作抗体のクラスである。WO2015/103072において開示されたFIT-Ig(Fab-in-tandem immunoglobulin)を含む、多様な形態の二重特異性抗体が報告され、探索されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、PD-L1に高アフィニティーで結合する新たな抗体、及びOX40に高アフィニティーで結合する新たな抗体を提供する。本開示はまた、PD-L1及びOX40のいずれにも同時に結合するPD-L1/OX40二重特異性FIT-Ig(Fab-in-tandem immunoglobulin)も提供する。抗体及び本開示の二重特異性結合タンパク質は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)上における、PD-L1による阻害性シグナル伝達を遮断して、腫瘍浸潤細胞傷害性T細胞を、腫瘍細胞に対して再活性化させうる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の二重特異性抗体は、二重の機構を有する、2つ抗原結合領域を含む。第1に、二重特異性抗体剤は、そのPD-L1結合領域を介して、PD-L1を発現する腫瘍細胞又はAPCに結合する一方、そのOX40結合領域を介して、OX40に結合し、高度クラスター化を媒介し、これにより、PD-L1依存的条件下で、T細胞を活性化させうる。第2に、本開示の二重特異性抗体は、ヒトPD-L1の、ヒトPD-1への結合を遮断して、PD-1を介するPD-L1媒介免疫逃避を防止する。こうして、本開示の二重特異性抗体は、OX40への結合を介して、T細胞を活性化させる一方、PD-1/PD-L1相互作用を介するT細胞枯渇を防止し、この結果として、抗腫瘍効能を後押しするように、T細胞の活性化の強化、エフェクターT細胞及びメモリーT細胞の増殖をもたらす。さらに、本開示の二重特異性抗体は、Fc領域内に、LALA変異を導入して、OX40陽性T細胞に対するADCC及びADCPを緩和する。
【0009】
開示されるPD-L1/OX40二重特異性抗体は、高次のOX40クラスター化を誘導し、PD-L1架橋を介して、十分なOX40シグナル伝達を誘発することにより、抗OX40単剤療法の限界を克服する。腫瘍細胞上のPD-L1、及びT細胞上のOX40への同時的結合は、T細胞上におけるOX40の、PD-L1依存的活性化、及びPD-1/PD-L1による阻害性シグナル伝達の阻害の両方を結果としてもたらし、これは、抗腫瘍免疫の効率的な誘導をもたらしうる。したがって、OX40/PD-L1二重特異性抗体は、がんの処置において、有用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1a】抗OX40抗体のエピトープの同定を示す図である。
図1aは、HuEM1007-044-16(上)、OX40-Tab1(中)、OX40-Tab2(下)の、細胞外OX40の全長型(CRD1~4、丸)、及び切断型OX40変異体である、ΔCRD1(CRD1を欠く、四角)、ΔCRD1~2(CRD1及びCRD2を欠く、三角)、ΔCRD1~3(CRD1を欠く、CRD2及びCRD3、ダイアモンド)への結合を示す。
【
図1b】
図1bは、OX40-Tab2の、細胞外OX40の全長型(CRD1~4、丸)、mCRD1(その中のCRD1ドメインが、マウスCRD1により置きかえられたCRD1~4、四角)、mCRD2(その中のCRD2ドメインが、マウスCRD2により置きかえられたCRD1~4、三角)、mCRD3(その中のCRD3ドメインが、マウスCRD3により置きかえられたCRD1~4、逆三角)、及びmCRD4(その中のCRD4ドメインが、マウスCRD4により置きかえられたCRD1~4、ダイアモンド)への結合を示す。
【
図2】抗OX40抗体であるHuEM1007-044-16(黒)が、エフェクターT細胞の、Treg細胞を上回る、選択的増殖を誘導したことを示す図である。無関連のヒトIgG(グレー)を、陰性対照のために使用した。
【
図3】FACSにより測定された、系列希釈抗体である、FIT1014-20a(ダイアモンド)、及びHuEM0005-86-64(四角)の、CHO-PD-L1への結合を、陰性対照としての無関連のヒトIgG(三角)の同結合と併せて例示する図である。
【
図4】系列希釈抗体であるFIT1014-20a(ダイアモンド)、及びその親OX40抗体であるHuEM1007-44-16(四角)を伴う、ヒトOX40トランスフェクトCHO細胞への結合についてのFACSアフィニティーの結果を示す図である。無関連のヒトIgG(三角)は、陰性対照のために使用される。
【
図5】細胞ベースの受容体遮断アッセイにおける、二重特異性FIT1014-20a(四角)及び親PD-L1抗体(三角)、並びに陰性対照としての無関連のヒトIgG(逆三角)による、PD-1/PD-L1結合の遮断を例示する図である。
【
図6】二重特異性FIT1014-20a(四角)及び親PD-L1抗体(三角)、並びに陰性対照としての無関連のヒトIgG(逆三角)による、PD-L1媒介阻害性シグナル伝達の遮断を例示する図である。
【
図7】(上)二重特異性FIT1014-20a(四角)、及び、それぞれが同一なPD-L1結合ドメイン及びOX40結合ドメインを含む2つの親抗体の組合せ(逆三角)、並びに陰性対照としての無関連のヒトIgG(ダイアモンド)による、OX40下流シグナル伝達の活性化を提示する図である。対照アッセイ(下)では、PD-L1を発現しないCHO細胞は、FIT1014-20a、又は2つの親抗体の組合せによる、活性化の欠如を示す。
【
図8】FIT1014-20a(四角)、親抗体の組合せ(逆三角)、又は無関連のヒトIgG(ダイアモンド)との共インキュベーション時における、CHO-PD-L1-OS8細胞と、初代ヒトT細胞との共培養系からのIL2(上、インキュベーションの72時間後)及びIFN-γ(下、インキュベーションの48時間後)の産生を示す図である。
【
図9】FIT1014-20a(暗色)、及び親抗体の組合せ(グレー)を伴う、3日間にわたるインキュベーション後に、混合リンパ球反応(MLR)アッセイから観察されたIL2レベルにより評価されるT細胞の活性化を提示する図である。
【
図10】FIT1014-20a(四角)、親抗体の組合せ(逆三角)、又は陰性対照としての無関連のヒトIgG(ダイアモンド)を伴う、96時間にわたるインキュベーション後に、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)内毒素B(SEB)アッセイから観察されたIL2レベルにより評価されるT細胞の活性化を示す図である。
【
図11】陽性対照としての抗HLA-1(三角)、及び陰性対照としての無関連のヒトIgG(四角)を伴う、FIT1014-20a(丸)についての補体依存性細胞傷害作用アッセイを示す図である。
【
図12】FIT1014-20a(黒塗りつぶし)、HuEM1007-044-16-hIgG1(グレー塗りつぶし)、HuEM1007-044-16(斜め縞)、OX40-Tab2(横縞)、及び無関連のhIgG(市松)による、CHO-OX40に対する食作用効果を示す図である。
【
図13】FIT1014-20a(三角)、親PD-L1 mAbであるHuEM0005-86-64(四角)、アテゾリズマブ(四角)、及び陰性対照としての媒体(丸)で処置された、MC38-hPD-L1腫瘍細胞を保有するヒト化OX40/PD-L1B6マウスにおける抗腫瘍効能についての評価を示す図である。
【
図14】媒体対照(丸)、参照PD-L1抗体であるアテゾリズマブ(四角)、及びFIT1014-20a(三角)で処置されたヒトPD-1/PD-L1/OX40ノックインマウスにおいて確立されたCT26-hPD-L1同系腫瘍についての、腫瘍体積プロファイルを示す図である。矢印は、割り当てられた薬剤の投与を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、抗OX40抗体、抗PD-L1抗体、その抗原結合性部分、及び多価二重特異性結合タンパク質、例えば、OX40及びPD-L1のいずれにも結合するFIT-Igに関する。本開示の多様な態様は、抗OX40抗体及びその抗原結合性断片、抗PD-L1抗体及びその抗原結合性断片、ヒトOX40及びヒトPD-L1に結合するFIT-Ig結合タンパク質、及びこれらの医薬組成物のほか、このような抗体、抗原結合性断片、及び結合タンパク質を作製するための核酸、組換え発現ベクター、及び宿主細胞に関する。本開示の抗体、抗原結合性断片、及び二重特異性結合タンパク質を使用して、ヒトOX40、ヒトPD-L1、又はこれらの両方を検出し、in vitro又はin vivoにおいて、ヒトOX40活性及び/又はヒトPD-L1活性をモジュレートし、外来抗原、例えば、腫瘍に対する適応免疫応答を誘導及び/又は増強し、疾患、とりわけ、がんを処置する方法もまた、本開示により包含される。
【0012】
定義
本明細書で別途規定されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。何らかの潜在性の曖昧さがある場合は、本明細書で提供される定義はいかなる辞書又は外部の定義に優先する。さらに、文脈によって要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本出願では、「又は」の使用は別途指示されない限り「及び/又は」を意味する。さらに、用語「含んでいる(including)」並びに他の形、例えば「含む(includes)」及び「含まれる(included)」の使用は、限定するものでない。同様に、「要素(エレメント)」又は「成分」などの用語は、別途特記されない限り、1つの単位を含む要素及び成分、並びに複数のサブユニットを含む要素及び成分を包含する。
【0013】
本明細書中で使用される場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載されるKabat番号付けシステムに従って番号付けされ、本明細書中では「Kabatに従う番号付け」と称される。具体的には、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)(647~660頁参照)に記載されるKabat番号付けシステムが、κ及びλアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLについて使用され、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661~723頁参照)が、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3、本明細書中では、この場合、「Kabat EUインデックスに従う番号付け」と称することによってさらに明確化される)について使用される。
【0014】
用語「単離されたタンパク質」又は「単離されたポリペプチド」は、その導出の起源又は供与源のために、その天然の状態でそれに付随する天然に会合している成分に会合していないか、同じ種に由来する他のタンパク質を実質的に含有しないか、異なる種に由来する細胞によって発現されるか、又は天然に存在しないタンパク質又はポリペプチドである。化学合成されるか、又はそれが天然に由来する細胞と異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、その天然に会合している成分から「単離されている」。タンパク質は、当技術分野で周知であるタンパク質精製技術を使用して、単離によって天然に会合している成分を実質的に含有しないようにすることもできる。
【0015】
抗体、結合タンパク質又はペプチドの第2の化学種との相互作用に関する用語「特異的結合」又は「特異的に結合する」は、その相互作用が第2の化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は、タンパク質一般というより特異的なタンパク質構造を認識して結合する。一般的に、抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」及び抗体を含有する反応において、エピトープAを含有する分子(又は、遊離の非標識のA)の存在は、抗体に結合する標識されたAの量を低減する。本開示に従って、特異的結合タンパク質は、10nM以下、例えば1nM以下のKDで対応する抗原に結合する。用語「KD」は、平衡解離定数(平衡結合定数の逆数)を意味し、本明細書では当該技術分野で提供される定義に従って使用される。抗体又は結合タンパク質が対応する抗原に結合するKD値は、蛍光滴定、競合ELISA、等温滴定カロリメトリー(ITC)などの熱量測定法、フローサイトメトリー滴定分析(FACS滴定)、バイオレイヤー干渉法(BLI)、表面プラズモン共鳴法(BIAcore)などを含むがこれらに限定されない周知の方法によって決定することができる。
【0016】
用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖で構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子、又は、Ig分子の必須のエピトープ結合特性を保持するその任意の抗原結合性断片、突然変異体、変異体若しくは誘導体を広く指す。そのような突然変異体、変異体又は誘導体の抗体フォーマットは、当技術分野で公知であり、非限定的な実施形態は以下で議論される。
【0017】
完全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略す)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略す)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が間に散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置される、3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。VHドメインの第1、第2及び第3のCDRは、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3として一般的に数え上げられる。同様に、VLドメインの第1、第2及び第3のCDRは、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3として一般的に数え上げられる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであってよい。
【0018】
用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用され、それはインタクトな抗体のパパイン消化によって生成することができる。Fc領域は、天然配列Fc領域又は変異型Fc領域であってよい。免疫グロブリンのFc領域は、一般的に2つの定常ドメイン、すなわちCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択で、例えばIgM及びIgE抗体のFc領域の場合には、CH4ドメインを含む。IgG、IgA及びIgD抗体のFc領域は、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。対照的に、IgM及びIgE抗体のFc領域は、ヒンジ領域を欠くが、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインを含む。抗体エフェクター機能を変化させるためにFc部分にアミノ酸残基の代替物を有する変異型Fc領域は、当技術分野で公知である(例えば、Winterら、米国特許第5,648,260号及び第5,624,821号を参照)。抗体のFc部分は、1以上のエフェクター機能、例えば、サイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞傷害(CDC)並びに/又は抗体及び抗原抗体複合体の半減期/クリアランス速度を媒介する。一部の場合には、これらのエフェクター機能は治療抗体にとって望ましいが、他の場合には、治療目的によっては、不必要であるか、有害でさえあるかもしれない。ある特定のヒトIgGアイソタイプ、特にIgG1及びIgG3は、それぞれFcγR及び補体C1qへの結合を通してADCC及びCDCを媒介する。さらに別の実施形態では、抗体のエフェクター機能が変化するように、抗体の定常領域、例えば、抗体のFc領域で少なくとも1つのアミノ酸残基が置き換えられる。免疫グロブリンの2つの同一の重鎖の二量体化は、CH3ドメインの二量体化によって媒介され、CH1定常ドメインをFc定常ドメイン(例えば、CH2及びCH3)に連結するヒンジ領域の中のジスルフィド結合によって安定化される。IgGの抗炎症活性は、IgG Fc断片のN連結グリカンのシアリル化に依存する。適当なIgG1 Fc断片を作製することができ、それによって、大いに増強された効力を有する、完全に組換えのシアリル化IgG1 Fcを生成するように、抗炎症活性の正確なグリカン必要性が決定された(Anthonyら、Science、320:373-376(2008)を参照)。
【0019】
抗体の「抗原結合部分」及び「抗原結合性断片」又は「機能的断片」という用語は互換的に使用され、抗原、すなわち、その部分又は断片が由来する完全長抗体と同じ抗原(例えば、OX40、PD-L1)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片が発揮することができることがわかっている。そのような抗体の実施形態は、2つ以上の異なる抗原(例えば、OX40と、異なる抗原、例えばPD-L1)に特異的に結合する、二重特異性(bispecific)、二重特異性(dual specific)、又は多重特異的フォーマットであってもよい。抗体の「抗原結合部分」という用語の中に包含される結合性断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片);(ii)F(ab')2断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価の断片);(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v) 単一の可変ドメインを含むdAb断片(Wardら、Nature、341: 544-546(1989);PCT公開番号WO90/05144);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え方法を使用して、VL及びVH領域が対になって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらが作製されることを可能にする、合成リンカーによって連結することができる(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら、Science、242: 423-426(1988);及び、Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85: 5879-5883(1988)を参照)。そのような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語及び上に与えられる同等の用語の中に包含されるものである。単鎖抗体の他の形、例えばダイアボディも包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現される、二価、二重特異性抗体であるが、同じ鎖の上の2つのドメインの間で対形成を可能にするには短か過ぎるリンカーを使用し、それによってドメインを別の鎖の相補的なドメインと対にさせ、2つの抗原結合部位を形成する(例えば、Holligerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90: 6444-6448 (1993)を参照)。そのような抗体結合部分は、当技術分野で公知である(Kontermann及びDubel編、Antibody Engineering (Springer-Verlag、New York、2001)、790ページ(ISBN 3-540-41354-5))。さらに、単鎖抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデム型Fvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む「線状抗体」も含む。(Zapataら、Protein Eng.、8(10): 1057-1062(1995);及び米国特許第5,641,870号)。
【0020】
免疫グロブリン定常(C)ドメインは、重(CH)又は軽(CL)鎖定常ドメインを指す。ネズミ及びヒトIgG重鎖及び軽鎖定常ドメインアミノ酸配列は、当技術分野で公知である。
【0021】
用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在するかもしれない可能な天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原決定因子(エピトープ)に向けられている。さらに、異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を一般的に含む、ポリクローナル抗体調製物と対照的に、各mAbは、抗原上の単一の決定基に向けられている。修飾語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈するべきでない。
【0022】
用語「ヒト配列」は、本出願に係る抗体又は結合タンパク質の軽鎖定常ドメインCL、重鎖定常ドメインCH、及びFc領域に関連して、ヒト免疫グロブリン配列の配列であるか、又はヒト免疫グロブリン配列由来の配列であることを意味する。本開示のヒト配列は、ネイティブなヒト配列、又は1若しくは複数(例えば、最大20、15、10)のアミノ酸残基変化を含むその変異体であり得る。
【0023】
用語「キメラ抗体」とは、ある生物種由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列並びに別の生物種由来の定常領域配列を含む抗体、例えば、ヒト定常領域に連結されたネズミ重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。
【0024】
用語「CDR移植抗体」とは、ある生物種由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗体であるが、その中でVH及び/又はVLのCDR領域のうちの1種以上の配列が別の生物種のCDR配列と置き換えられている抗体、例えば、ヒトCDRのうちの1種以上がネズミCDR配列と置き換えられている、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。
【0025】
用語「ヒト化抗体」とは、非ヒト生物種(例えば、マウス)由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗体であるが、その中でVH及び/又はVL配列のうちの少なくとも一部分がより「ヒト様」に、すなわち、ヒト生殖系列可変配列に、より類似するように変化させられている抗体を指す。ヒト化抗体の1つのタイプは、非ヒト生物種(例えば、マウス)由来のCDR配列がヒトVH及びVLフレームワーク配列へと導入されている、CDR移植抗体である。ヒト化抗体は、目的の抗原に免疫特異的に結合し、かつヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク領域及び定常領域を含むが、非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその変異体、誘導体、アナログ又は断片である。本明細書で使用される場合、CDRの文脈での用語「実質的に」とは、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、CDR領域のうちの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものに対応し、かつフレームワーク領域のうちの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1種、典型的には2種の可変ドメインの実質的に全てを含む(Fab、Fab'、F(ab')2、Fv)。一実施形態では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの、少なくとも一部分も含む。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖並びに重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含む。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCH4領域も含むことができる。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含む。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含む。具体的な実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/又はヒト化重鎖のみを含む。
【0026】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEをはじめとする免疫グロブリンのいずれかのクラス、並びに、限定するものではないが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4をはじめとするいずれかのアイソタイプから選択することができる。ヒト化抗体は、2種以上のクラス又はアイソタイプ由来の配列を含むことができ、かつ、具体的な定常ドメインは、当技術分野で周知の技術を用いて、所望のエフェクター機能を最適化するために選択することができる。
【0027】
ヒト化抗体のフレームワーク及びCDR領域が、親配列(例えば、ドナー抗体CDR)に正確に対応する必要がないか、又はアクセプターフレームワークが、その部位のCDR又はフレームワーク残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークのいずれにも対応しないように、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失により突然変異誘発されることができる。しかしながら、例示的な実施形態では、そのような突然変異は、広範囲ではないであろう。通常は、ヒト化抗体残基のうちの少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、親FR及びCDR配列のものに対応するであろう。ドナー抗体中のその位置に出現する同じアミノ酸を回復させる特定のフレームワーク位置での復帰突然変異(back mutation)が、特定のループ構造を保存するため、又は標的抗原との接触のためにCDR配列を正しい方向に向かせるために、多くの場合に用いられる。
【0028】
用語「CDR」とは、抗体可変ドメイン配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域のそれぞれの中に3個のCDRがあり、これらはCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3と称される。用語「CDRセット」とは、本明細書で使用される場合、抗原に結合することが可能な単一の可変領域中に存在する3個のCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、種々のシステムに応じて異なって定義されてきた。Kabatにより記載されるシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Maryland (1991))は、抗体のいずれの可変領域にも適用可能である明白な残基番号付けシステムを提供するだけでなく、3個のCDRを定義する正確な残基境界も提供する。
【0029】
過去20年間にわたる可変重鎖及び軽鎖領域のアミノ酸配列の広範な公開データベースの成長と解析により、可変領域配列内のフレームワーク領域(FR)とCDR配列との間の典型的な境界が理解され、当業者はKabat番号付け、Chothia番号付け、又は他のシステムに従ってCDRを正確に決定することができるようになった。例えば、Martin, "Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains," Kontermann and Dubel, eds., Antibody Engineering (Springer-Verlag, Berlin, 2001)、チャプター31、432-433頁を参照のこと。
【0030】
用語「多価結合タンパク質」は、2つ以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質を表す。多価結合タンパク質は、特定の場合には、3個以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般に天然に存在する抗体でない。
【0031】
用語「二重特異性結合タンパク質」(別段の記載がない限り、用語「二重特異性抗体」と互換的に使用できる)は、異なる特異性の2つの標的に結合可能な結合タンパク質を指す。本開示のFIT-Ig結合タンパク質は、4つの抗原結合部位を含み、典型的には4価結合タンパク質である。本開示によるFIT-Igは、OX40とPD-L1の両方に結合し、二重特異性である。
【0032】
2つの長い(重)V-C-V-C-Fc鎖ポリペプチドと4つの短い(軽)V-C鎖ポリペプチドを含むFIT-Ig結合タンパク質は、4つのFab抗原結合部位(VH-CH1とVL-CLとの対、VH-CH1::VL-CLと表記されることもある)を示す6量体を形成する。FIT-Igの各半分は、重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチドを含み、3つの鎖のVH-CH1及びVL-CLエレメントの相補的免疫グロブリン対合は、タンデムに配置された2つのFab構造抗原結合部位をもたらす。本開示において、Fabエレメントを含む免疫グロブリンドメインは、ドメイン間リンカーを使用することなく、重鎖ポリペプチド中で直接融合されることが好ましい。すなわち、長い(重鎖)ポリペプチドのN末端V-Cエレメントは、そのC末端で別のV-CエレメントのN末端に直接融合され、このV-Cエレメントは、今度はC末端Fc領域に連結される。二重特異性FIT-Ig結合タンパク質では、タンデムFabエレメントは異なる抗原と反応する可能性がある。各Fab抗原結合部位は重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインを含み、抗原結合部位あたり合計6個のCDRを有する。
【0033】
FIT-Ig分子の設計、発現及び特性決定に関する記述は、PCT公開WO 2015/103072に記載されており、その全体が本明細書に組み込まれる。このようなFIT-Ig分子の一例は、重鎖と2つの異なる軽鎖を含む。重鎖は、CLがVHBに直接融合している構造式VLA-CL-VHB-CH1-Fc(即ち「フォーマットLH」)又はCH1がVLAに直接融合している構造式VHB-CH1-VLA-CL-Fc(即ち「フォーマットHL」)を含み、FIT-Igの2つの軽鎖ポリペプチドは、それぞれ対応してフォーマットVHA-CH1及びVLB-CLを有する。あるいは、重鎖は、CLがVHAに直接融合している構造式VLB-CL-VHA-CH1-Fc(「フォーマットLH」の場合)、又はCH1がVLBに直接融合している構造式VHA-CH1-VLB-CL-Fc(「フォーマットHL」の場合)を含み、FIT-Igの2つの軽鎖ポリペプチドは、それぞれ対応する式VLA-CL及びVHB-CH1を有する;ここで、VLAは抗原Aと結合する親抗体由来の可変軽ドメインであり、VLBは抗原Bと結合する親抗体由来の可変軽ドメインであり、VHAは抗原Aと結合する親抗体由来の可変重ドメインであり、VHBは抗原Bと結合する親抗体由来の可変重ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインであり、Fcは免疫グロブリンFc領域(例えば、IgG1抗体の重鎖のC末端ヒンジ-CH2-CH3部分)である。二重特異性FIT-Igの実施形態において、抗原A及び抗原Bは、異なる抗原、又は同じ抗原の異なるエピトープである。本開示では、A及びBの一方はOX40であり、他方はPD-L1であり、例えば、AはOX40であり、BはPD-L1である。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「kon」(同様に「Kon」、「kon」)は、当技術分野で公知であるように、会合複合体、例えば抗体/抗原複合体を形成する、結合タンパク質(例えば、抗体)の抗原への会合のためのon速度定数を指すものである。本明細書で互換的に使用されるように、「kon」は、用語「会合速度定数」又は「ka」によっても知られる。この値は、下の式によって示されるような、抗体のその標的抗原への結合速度又は抗体と抗原の間の複合体形成の速度を示す:
抗体(「Ab」)+抗原(「Ag」)→Ab-Ag。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「koff」(同様に「Koff」、「koff」)は、当技術分野で公知であるように、会合複合体(例えば抗体/抗原複合体)からの結合タンパク質(例えば、抗体)の解離のためのoff速度定数又は「解離速度定数」を指すものである。この値は、下の式によって示されるような、その標的抗原からの抗体の解離速度又は遊離の抗体及び抗原へのAb-Ag複合体の経時的分離を示す:
Ab+Ag←Ab-Ag。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「KD」(同様に「Kd」)は「平衡解離定数」を指すものであり、平衡時の滴定測定で、又は会合速度定数(kon)によって解離速度定数(koff)を割ることによって得られる値を指す。会合速度定数(kon)、解離速度定数(koff)及び平衡解離定数(KD)は、抗原への抗体の結合親和性を表すために使用される。会合及び解離速度定数の決定方法は、当技術分野で周知である。蛍光ベースの技術を使用することは、高感度、及び平衡時の生理的バッファー中でサンプルを検査する能力を提供する。他の実験手法及び機器、例えばBIAcore(登録商標)(生体分子相互作用分析)アッセイを使用することができる(例えば、BIAcore International AB、GE Healthcare社、Uppsala、Sweden、から入手可能な機器)。例えば、Octet(登録商標) RED96システム(Pall ForteBio LLC)を使用するバイオレイヤー干渉法(BLI)は、別の親和性アッセイ技術である。さらに、KinExA(登録商標)(動態排除アッセイ)アッセイ(Sapidyne Instruments社、Boise、Idaho、から入手可能)を、使用することもできる。
【0037】
用語「単離された核酸」は、ヒト介入によって、それが天然に一緒に見出されるポリヌクレオチドの全てと又は一部と会合していないか、天然に連結されていないポリヌクレオチドに作動可能に連結されるか、又はより大きな配列の一部として天然に存在しないポリヌクレオチド(例えば、ゲノム、cDNA又は合成起源、又はその一部の組合せのもの)を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すものである。1タイプのベクターは「プラスミド」であり、それは、追加のDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞の中で自己複製が可能である(例えば、細菌の複製起点及びエピソーム哺乳動物ベクターを有する細菌ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の後に宿主細胞のゲノムに組み入れることができ、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を導くことが可能である。そのようなベクターは、「組換え発現ベクター」(又は、単に「発現ベクター」)と本明細書で呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用である発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。プラスミドは最も一般的に使用される形態のベクターであるので、本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に使用することができる。しかし、本開示は、ウイルスベクター(例えば、複製欠陥のあるレトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクターを含むものである。
【0039】
用語「作動可能に連結される」は、記載される成分が、それらがそれらの意図された方法で機能することを許す関係にある、並置を指す。コード配列に「作動可能に連結される」制御配列は、コード配列の発現が制御配列に適合する条件の下で達成されるような方法で連結される。「作動可能に連結される」配列には、目的の遺伝子に連続している発現制御配列、及び目的の遺伝子を制御するためにトランスで又は離れて作用する発現制御配列のいずれも含まれる。本明細書で使用される場合、用語「発現制御配列」は、それらが連結されるコード配列の発現及びプロセシングを実行するのに必要であるポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列には、適当な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;効率的なRNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシング及びポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定させる配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;並びに、必要に応じて、タンパク質分泌を増強する配列が含まれる。そのような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。原核生物では、そのような制御配列は、プロモーター、リボゾーム結合部位及び転写終結配列を一般的に含む。真核生物では、一般的に、そのような制御配列は、プロモーター及び転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、その存在が発現及びプロセシングのために必須である成分を含むものとし、その存在が有利である追加の成分、例えば、リーダー配列及び融合パートナー配列を含むこともできる。
【0040】
「形質転換」とは、本明細書で参照される場合、それにより外因性DNAが宿主細胞に侵入するいずれかのプロセスを指す。形質転換は、当技術分野で周知の様々な方法を用いて、天然条件又は人工的条件下で起こり得る。形質転換は、外来性核酸配列を原核生物又は真核生物宿主細胞へと挿入するためのいずれかの公知の方法に依存し得る。方法は、形質転換される宿主細胞に基づいて選択され、かつ、限定するものではないが、トランスフェクション、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポフェクション、及び粒子ボンバードメントが挙げられる。そのようにして「形質転換された」細胞は、挿入されたDNAが、自律的に複製するプラスミドとして又は宿主染色体の一部分としてのいずれかで複製可能である、安定的に形質転換された細胞を含む。そのような細胞は、限定された期間にわたって、挿入されたDNA又はRNAを一時的に発現する細胞も含む。
【0041】
用語「組換え宿主細胞」(又は、単に「宿主細胞」)は、外来性DNAが導入された細胞を指すものである。一実施形態では、宿主細胞(例えば、米国特許第7,262,028号に記載される宿主細胞など)は、抗体をコードする2つ以上(例えば、複数)の核酸を含む。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代も指すものである。ある特定の改変は、突然変異又は環境の影響のために後の世代において起こることがあるので、実際、そのような後代は親細胞と同一でないかもしれないが、本明細書で用いる用語「宿主細胞」の範囲になお含まれる。一実施形態では、宿主細胞には、生物界のいずれかから選択される原核生物及び真核生物の細胞が含まれる。別の実施形態では、真核細胞には、原生生物、真菌、植物及び動物の細胞が含まれる。別の実施形態では、宿主細胞には、限定されるものではないが、原核生物の細胞株大腸菌(Escherichia coli);哺乳動物細胞株CHO、HEK293、Jurkat、COS、NS0、SP2及びPER.C6;昆虫細胞株Sf9;並びに、真菌細胞酵母(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、障害又は1つ以上のその症状の重症度及び/又は持続期間を低減又は改善するのに;障害の進行を予防するのに;障害の退行を引き起こすのに;障害に伴う1つ以上の症状の再発、発生又は進行を予防するのに;障害を検出するのに;あるいは、別の療法(例えば、予防的又は治療的薬剤)の予防的又は治療的効果を増強又は向上させるのに十分である療法の量を指す。
【0043】
本明細書において、「T細胞の活性化」又は「T細胞活性化」とは、特定の外来抗原が、それに応答するように同族ナイーブT細胞を誘導する、細胞媒介免疫の中核的プロセスを指す。T細胞活性化は、T細胞の増殖及び/又は分化、並びに大量のエフェクターT細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球など)の産生に反映され、その結果、例えば外来抗原の減少又は排除がもたらされる。このプロセスは複雑で、例えば免疫抑制性の腫瘍微小環境など、多くの因子によって制御されている。プロセスを測定することができるT細胞活性化の徴候は、T細胞からのIL-2又はIFN-γの有意な分泌の増加、及び/又は抗原応答の増加(例えば、腫瘍クリアランス)を含むが、これらに限定されない。測定方法は当業者に知られている。
【0044】
本開示に係る抗体、その抗原結合性断片、及び結合タンパク質は、抗体及び結合タンパク質を精製するために当技術分野で利用可能な様々な方法及び材料のうちの1つ以上を使用することによって(意図される用途のために)精製され得る。このような方法及び材料としては、限定されるものではないが、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインL、又は抗体、抗原結合性断片若しくは結合タンパク質の特異的リガンドに結合した樹脂、粒子、又は膜を用いる)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、イオン交換粒子又は膜を用いる)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」;例えば、疎水性粒子又は膜を用いる)、限外濾過、ナノ濾過、透析濾過、サイズ排除クロマトグラフィー(「SEC」)、低pH処理(汚染ウイルスを不活性化するため)、及びこれらの組み合わせにより、意図する用途に許容される純度を得る。汚染ウイルスを不活性化するための低pH処理の非限定的な例は、本開示の抗体、抗原結合性断片又は結合タンパク質を含む溶液又は懸濁液のpHを、18℃~25℃で60~70分間、0.5Mリン酸を用いてpH3.5に低下させることを含む。
【0045】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために、標準の技術を使用することができる。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、又は当技術分野で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載されるように実行することができる。前述した技術及び手順は、当技術分野で周知である従来の方法によって、及び本明細書全体で引用及び議論される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されている通りに一般的に実行することができる。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989)を参照。
【0046】
抗OX40及び抗PD-L1単特異的抗体
本開示の抗OX40及び抗PD-L1抗体は、当技術分野で公知の多数の技術のうちのいずれかにより生成することができる。例えば、WO2021/1034434を参照のこと(この内容を参照により本明細書に組み入れる)。例えば、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターが標準的技術により宿主細胞へとトランスフェクションされている、宿主細胞からの発現である。用語「トランスフェクション」の様々な形態は、原核生物又は真核生物宿主細胞への外因性DNAの導入のために通常使用される広範囲の技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。原核生物又は真核生物宿主細胞のいずれかで本開示の抗体を発現させることができるが、真核細胞での抗体の発現、例えば哺乳動物宿主細胞での発現が特に想定される。なぜなら、そのような真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)は、原核細胞よりも、正確にフォールディングされ、かつ免疫学的に活性な抗体をアセンブリ及び分泌しやすいからである。
【0047】
一部の実施形態において、本開示の組換え抗体を発現させるための哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(DHFR選択マーカーと共に用いられる、dhfr- CHO細胞を含む(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4216-4220 (1980)に記載される)、例えば、Kaufman and Sharp, J. Mol. Biol., 159: 601-621 (1982)に記載される通り)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞へと導入される場合、抗体は、宿主細胞中での抗体の発現、又はさらに、宿主細胞が成長する培養培地への抗体の分泌を可能にするために十分な期間にわたって、宿主細胞を培養することにより生成される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を用いて培養培地から回収することができる。
【0048】
宿主細胞はまた、Fab断片又はscFv分子などの抗原結合性断片を生成するためにも用いることができる。上記手順の変法が、本開示の範囲内に入ることが理解されるであろう。例えば、本開示の抗体の軽鎖及び/又は重鎖のいずれかの抗原結合性断片をコードするDNAを用いて宿主細胞をトランスフェクションすることが望ましい場合がある。組換えDNA技術もまた、目的の抗原に対する結合に必要でない軽鎖及び重鎖のいずれか又は両方をコードするDNAの一部、又は全部を除去するために用いることができる。そのような切断型DNA分子から発現される分子もまた、本開示の抗体により包含される。加えて、標準的な化学的架橋法により第2の抗体又は別の機能性部分に本開示の抗体を架橋することにより、二機能性抗体を生成することができる。
【0049】
本開示の抗体、又はその抗原結合部分の組換え発現に関する例示的システムでは、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによりdhfr- CHO細胞へと導入される。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子が、該遺伝子の高レベルの転写を駆動するための、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントにそれぞれ作動可能に連結される。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を用いて、該ベクターでトランスフェクションされているCHO細胞の選択を可能にする、DHFR遺伝子も担持する。抗体重鎖及び軽鎖の発現を可能にするために、選択されたトランスフェクトされた宿主細胞が培養されて、完全な抗体が培養培地から回収される。標準的な分子生物学の技術が、組換え発現ベクターを準備し、宿主細胞をトランスフェクションし、トランスフェクタントについて選択し、宿主細胞を培養して、かつ培養培地から抗体を回収するために用いられる。本開示はまた、本開示の組換え抗体が生成されるまで、好適な培養培地中で本開示のトランスフェクションされた宿主細胞を培養することにより、本開示の組換え抗OX40又は抗PD-L1抗体を製造する方法を提供する。場合により、方法は、培養培地から組換え抗体を単離するステップをさらに含むことができる。
【0050】
抗OX40抗体
一部の実施形態では、本開示は、OX40 Ig様ドメインの膜近位CRDにおいて、OX40に結合する抗体を提供する。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、例えば、細胞ベースのアッセイにより測定される通り、高度な細胞への結合力を有する、及び/又は低度の内部化率により特徴付けられる。
【0051】
一部の実施形態では、本開示は、OX40に特異的に結合する単離抗OX40抗体又はその抗原結合性断片を開示する。さらなる実施形態では、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、この場合、
・CDR-H1は、SSWMN(配列番号1)の配列を含み、
・CDR-H2は、RIYPGDEITNYNGKFKD(配列番号2)又はRIYPGDEITNYNAKFKD(配列番号4)の配列を含み、
・CDR-H3は、DLLMPY(配列番号3)の配列を含み、
・CDR-L1は、RSSKSLLYSNGITYLY(配列番号5)又はRSSKSLLYSNAITYLY(配列番号8)の配列を含み、
・CDR-L2は、QMSNLAP(配列番号6)の配列を含み、
・CDR-L3は、AQNLELPFT(配列番号7)の配列を含み、
CDRは、Kabatの番号付けに従い規定される。
【0052】
一部の実施形態では、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、Kabatの番号付けに従う、H31~H35、H50~H66、及びH99~H104位において、(i)配列番号1、2、3;又は(ii)配列番号1、4、3からなる群から選択される、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3のアミノ酸配列を含む。
【0053】
一実施形態では、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、Kabatの番号付けに従う、L24~39、L55~61、及びL94~102位において、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のそれぞれについて、配列番号5、6、及び7、又は配列番号8、6、及び7のアミノ酸配列を含む。
【0054】
ある特定の実施形態では、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、Kabatの番号付けに従い、VHドメイン内において、G62A変異を含む。ある特定の実施形態では、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、Kabatの番号付けに従い、VLドメイン内において、G34A変異を含む。一部の実施形態では、変異は、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片における、アスパラギンの脱アミド化傾向を低減する。一部の実施形態では、変異を伴う抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、変異を伴わない親抗体と比べて、安定性が増大している。
【0055】
一部の実施形態では、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号1~3及び5~7のCDR配列内に、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つであるが、5つ以下の残基修飾を含む。一部の実施形態では、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号1、4、3、及び5~7のCDR配列内に、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つであるが、5つ以下の残基修飾を含む。一部の実施形態では、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号1~3、及び8、6、7のCDR配列内に、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つであるが、5つ以下の残基修飾を含む。一部の実施形態では、抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号1、4、3、及び8、6、7のCDR配列内に、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つであるが、5つ以下の残基修飾を含む。アミノ酸修飾は、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加、例えば、保存的置換でありうる。
【0056】
一実施形態では、本開示に従う抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、以下のVH/VL配列対:配列番号11/19、12/19、13/19、14/19、11/20、12/20、13/20、14/20、10/17、9/18、10/18、9/19、11/17、15/21、15/18、16/21、及び16/18からなる群から選択される、重鎖可変ドメインであるVH、及び軽鎖可変ドメインであるVLのCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む。CDRは、最も広く使用されるCDR定義スキーム、例えば、Kabatによる定義、Chothiaによる又はIMGTによる定義を使用して、当業者により決定されうる。
【0057】
一実施形態では、本開示に従う抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインであるVH、及び軽鎖可変ドメインであるVLを含み、この場合、
・VHドメインは、配列番号9若しくは10の配列、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む、及び/あるいは
・VLドメインは、配列番号17若しくは18の配列、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む。
【0058】
別の実施形態では、本開示に従う抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインであるVH、及び軽鎖可変ドメインであるVLを含み、この場合、
・VHドメインは、配列番号11~16、若しくはこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列から選択される配列を含む、及び/又は
・VLドメインは、配列番号19~21、若しくはこれらとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列から選択される配列を含む。
【0059】
一部の実施形態では、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列を含む抗OX40抗体は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有する一方で、同じであるか、又は改善された結合特性、例えば、オフ速度及び/又はオン速度で、OX40に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号9、10、又は配列番号11~16のうちのいずれか1つにおいて、合計1つ~11のアミノ酸が、置換されている、挿入されている、及び/又は欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、CDR以外の領域内で(すなわち、FR内で)生じる。場合により、抗OX40抗体は、この配列の翻訳後修飾を含む、配列番号9、10、又は配列番号11~16のうちのいずれか1つのVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2又は4のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される、1つ、2つ、又は3つのCDRを含む。一部の実施形態では、VH配列は、ヒト化VH配列である。
【0060】
一部の実施形態では、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列を含む抗OX40抗体は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有する一方で、同じであるか、又は改善された結合特性、例えば、オフ速度及び/又はオン速度で、OX40に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号17、18、又は配列番号19~21のうちのいずれか1つにおいて、合計1つ~5つのアミノ酸が、置換されている、挿入されている、及び/又は欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、CDR以外の領域内で(すなわち、FR内で)生じる。場合により、抗OX40抗体は、この配列の翻訳後修飾を含む、配列番号17、18、又は配列番号19~21のうちのいずれか1つのVL配列を含む。特定の実施形態では、VL配列は、(a)配列番号5又は配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される、1つ、2つ、又は3つのCDRを含む。一部の実施形態では、VL配列は、ヒト化VL配列である。
【0061】
一実施形態では、本開示に従う抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号16を含むか、又はこれからなる重鎖可変ドメインであるVH、及び配列番号21を含むか、又はこれからなる軽鎖可変ドメインであるVLを含む。
【0062】
一実施形態では、本開示に従う単離抗OX40抗体又は抗原結合性断片は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗OX40抗体又は抗原結合性断片は、ヒト化抗体である。
【0063】
一部の実施形態では、本開示に従うヒト化単離抗OX40抗体又は抗原結合性断片は、結合特性を改善するように、フレームワーク領域内の位置において、1つ以上の復帰変異を含む。一部の実施形態では、本開示に従うヒト化抗OX40抗体又は抗原結合性断片のVHドメインは、ヒト残基から、Kabatの番号付けに従う残基:1位におけるGlu(1E)であり、場合により、5位におけるGln(5Q)、27位におけるHis(27H)、28位におけるAla(28A)、38位におけるLys(38K)、40位におけるArg(40R)、43位におけるLys(43K)、48位におけるIle(48I)、67位におけるLys(67K)、68位におけるAla(68A)、及び70位におけるLeu(70L)のうちの1つ以上への復帰変異を含む。一実施形態では、本開示に従うヒト化抗OX40抗体又は抗原結合性断片のVLドメインは、場合により、ヒト残基から、Kabatの番号付けに従う残基:69位におけるSer(69S)への復帰変異を含む。
【0064】
一実施形態では、本開示に従う単離抗OX40抗体又は抗原結合性断片は、全てがKabatの番号付けに従う、(i)1E、(ii)1E及び27H、(iii)1E、27H、48I、及び70L、(iv)1E、27H、38K、43K、48I、67K、及び70L、(v)1E、40R、及び43K、(vi)1E、5Q、27H、28A、38K、40R、43K、48I、67K、68A、及び70Lからなる群から選択されるVHドメイン内の復帰変異アミノ酸残基;並びに/又はKabatの番号付けに従う、VLドメイン内における69Sの復帰変異アミノ酸残基を含むヒト化抗体である。
【0065】
一実施形態では、本開示に従う単離抗OX40抗体又は抗原結合性断片は、Kabatの番号付けに従う、VHドメイン内のアミノ酸残基である1E、5Q、27H、28A、38K、40R、43K、48I、67K、68A、及び70L、並びにVLドメイン内のアミノ酸残基である69Sを含むヒト化抗体である。さらなる実施形態では、本開示に従う単離抗OX40抗体又は抗原結合性断片は、Kabatの番号付けに従い、VHドメイン内において、G62A変異、及びKabatの番号付けに従い、VLドメイン内において、G34A変異をさらに含む。
【0066】
一部の実施形態では、本開示に従う単離抗OX40抗体又は抗原結合性断片は、以下からなる群から選択される、VH配列とVL配列との組合せを含む。
【0067】
【0068】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号16の配列を含むか、又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号21の配列を含むか、又はこれからなるVLドメインを含む。
【0069】
本開示に従う抗OX40抗体又は抗原結合性断片についての一部の実施形態では、抗体又は抗原結合性断片は、天然Fc領域の場合もあり、変異体Fc領域の場合もあるFc領域を含む。特定の実施形態では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、又はIgDに由来するヒトFc領域である。抗体の有用性に応じて、変異体Fc領域を使用して、少なくとも1つのエフェクター機能、例えばADCC及び/又はCDCを変化させる(例えば、これを低減するか、又はこれを消失させる)ことが所望でありうる。一部の実施形態では、本開示は、少なくとも1つのエフェクター機能を変化させる1つ以上の変異、例えば、L234A及びL235Aを伴うFc領域を含む抗OX40抗体又は抗原結合性断片を提供する。
【0070】
一部の実施形態では、本開示に従う抗OX40抗体の抗原結合性断片は、例えば、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディー;直鎖状抗体;又は単鎖抗体分子(例えば、scFv)でありうる。
【0071】
一実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、OX40細胞外ドメイン又はその部分に結合する。一部の実施形態では、OX40細胞外ドメインは、UniProt識別番号P43489下にあるヒトOX40タンパク質のアミノ酸配列L29~A214、又は配列番号44:
のアミノ酸配列、若しくはこれとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む。
【0072】
一実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、OX40細胞外ドメインのCRD3領域において、OX40に結合する。
【0073】
一実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、バイオレイヤーインターフェロメトリー又は表面プラズモン共鳴により測定される、ヒトOX40に対する、少なくとも1×104M-1秒-1、少なくとも3×104M-1秒-1、少なくとも5×104M-1秒-1、少なくとも7×104M-1秒-1、少なくとも9×104M-1秒-1、少なくとも1×105M-1秒-1のオン速度定数(kon)を有する。
【0074】
別の実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤーインターフェロメトリーにより測定される、ヒトOX40に対する、5×10-3秒-1未満、3×10-3秒-1未満、2×10-3秒-1未満、1×10-3秒-1未満、9×10-4秒-1未満、6×10-4秒-1未満、3×10-4秒-1未満、2.5×10-4秒-1未満、2×10-4秒-1未満、1×10-4秒-1未満、8×10-5秒-1未満、5×10-5秒-1未満のオフ速度定数(koff)を有する。さらなる実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、ヒト化抗体であり、同じ抗体フォーマット内に、配列番号9/10及び17/18のVH/VL配列対を伴う抗体の、ヒトOX40に対するkoff値の約50~500%、例えば、約80~150%である、ヒトOX40に対するkoffを有する。一般に、小さなオフ速度が、形成された複合体の緩徐な解離と相関するのに対し、大きなオフ速度は、急速な解離と相関する。一実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体、又はその抗原結合性断片は、小さなオフ速度により示される通り、WO2015153513に記載された1A7.gr.1のアフィニティーより大きな、標的であるOX40に対するアフィニティーを有する。
【0075】
一実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、OX40に対する、ナノモル~ピコモル(10-8~10-10)範囲、例えば、8×10-8M未満、5×10-8M未満、3×10-8M未満、1×10-8M未満、8×10-9M未満、5×10-9M未満、3×10-9M未満、2×10-9M未満、1×10-9M未満、8×10-10M未満、6×10-10M未満、4×10-10M未満、2×10-10M未満、又は1×10-10M未満の解離定数(KD)を有する。
【0076】
一実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体又はその抗原結合性断片は、OX40+標的細胞上、例えば、OX40を発現するCHO細胞系又はT細胞系(例えば、初代T細胞及びJurkat細胞)上に提示されるOX40に特異的に結合する。細胞ベースのアッセイにおいて、フローサイトメトリーにより測定される通り、抗OX40抗体は、OX40+細胞への強力な結合力を示し、この場合、前記細胞への結合力は、約5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、又は1nM以下のEC50により反映される。さらなる実施形態では、EC50は、0.5nM以下である。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体又は抗原結合性断片は、標的細胞上に提示されたOX40に対する、配列番号9/10及び17/18のVH/VL配列対を伴う抗体と比較して同等以上の結合力を示す。一実施形態では、抗体の、OX40発現細胞に対する結合力は、実施例1.2に記載される細胞ベースのアッセイにおいて測定される。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗OX40抗体又はその抗原結合性断片の、OX40への、上述の結合力による結合は、in vivo又はin vitroにおける細胞内効果を誘導するのに十分である。さらなる実施形態では、効果は、T細胞の活性化及び/又は増殖である。
【0077】
一実施形態では、抗体は、そのリガンドであるOX40Lが、OX40発現細胞の細胞表面上において、OX40に結合するのと同様に、OX40に結合しうる。別の実施形態では、抗体は、OX40/OX40Lシグナル伝達を増強するために使用されうる。さらなる実施形態では、抗体は、OX40/OX40L経路と関連するT細胞の活性化及び増殖の誘導及び/又は増強のために使用されうる。
【0078】
抗PD-L1抗体
本開示はまた、ヒトPD-L1に結合することが可能である抗体も提供する。
【0079】
一部の実施形態では、本開示に従う抗PD-L1抗体は、6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、この場合、
CDR-H1は、TYGIN(配列番号22)の配列を含み、
CDR-H2は、YIYIGNAYTEYNEKFKG(配列番号23)又はYIYIGNGYTEYNEKFKG(配列番号25)の配列を含み、
CDR-H3は、DLMVIAPKTMDY(配列番号24)の配列を含み、
CDR-L1は、KASQDVGTAVA(配列番号26)の配列を含み、
CDR-L2は、WASTRHT(配列番号27)の配列を含み、
CDR-L3は、QQYSSYPYT(配列番号28)の配列を含み、
CDRは、Kabatの番号付けに従い規定される。
【0080】
一部の実施形態では、本出願に従う抗PD-L1抗体又はその抗原結合性断片は、
・配列番号29、30、若しくは31の配列を含むVHドメイン、又はこれらとの少なくとも80%~90%、若しくは95%~99%の同一性を有する配列、及び/あるいは
・配列番号32、33、若しくは34の配列を含むVLドメイン、又はこれらとの少なくとも80%~90%、若しくは95%~99%の同一性を有する配列を含む。
【0081】
一部の実施形態では、抗PD-L1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号31の配列を含むVHドメイン、及び配列番号34の配列を含むVLドメインを含む。
【0082】
一部の実施形態では、本開示に従う抗OX40抗体、又は本開示に従う抗PD-L1抗体は、当技術分野において十分に確立された技法により、同じ標的抗原を認識する結合タンパク質誘導体を作製するのに使用されうる。このような誘導体は、例えば、単鎖抗体(scFv)、Fab断片(Fab)、Fab'断片、F(ab')2、Fv、及びジスルフィド結合型Fvでありうる。このような誘導体は、例えば、本開示に従う抗OX40抗体、又は本開示に従う抗PD-L1抗体を含む融合タンパク質又はコンジュゲートでありうる。融合タンパク質は、多特異性抗体又はCAR分子でありうる。コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、又は検出剤、例えば、放射性同位元素にコンジュゲートされた抗体でありうる。
【0083】
一実施形態では、本明細書で記載される抗PD-L1抗体又はその抗原結合性断片は、PD-L1、例えば、ヒトPD-L1に対する、ナノモル未満のレベル、例えば、1×10-9M未満、8×10-10M未満、6×10-10M未満、4×10-10M未満、3×10-10M未満の解離定数(KD)を有する。一実施形態では、本明細書で記載される抗PD-L1抗体又はその抗原結合性断片は、PD-L1+標的細胞上に提示されたPD-L1に特異的に結合する。フローサイトメトリー、バイオレイヤーインターフェロメトリー、及び/又は表面プラズモン共鳴により測定される通り、抗PD-L1抗体は、PD-L1+細胞に対する、強力な結合力を示す。FACS結合法によるEC50、及び/又はBLI又はBIAcoreによるKDに従い、ヒトPD-L1に対する前記結合力は、カニクイザルPD-L1に対する結合力と同等である、例えば、<5倍差又は<3倍差である。
【0084】
OX40×PD-L1二重特異性結合タンパク質
別の態様では、本開示は、OX40/PD-L1二重特異性結合タンパク質、とりわけ、OX40及びPD-L1のいずれにも結合することが可能であるFIT-Ig(Fab-in-tandem immunoglobulin)を提供する。FIT-Ig内の各可変ドメイン(VH又はVL)は、標的抗原、すなわち、OX40又はPD-L1のうちの1つに結合する、1つ以上の「親」モノクローナル抗体から得られうる。FIT-Ig結合タンパク質は、本明細書で開示される抗OX40モノクローナル抗体、及び抗PD-L1モノクローナル抗体、例えばヒト化抗OX40親抗体、及びヒト化抗PD-L1親抗体の可変ドメイン配列を使用して作製されうる。
【0085】
本開示の一態様は、FIT-Ig分子内で所望される少なくとも1つ以上の特性を有する親抗体の選択に関する。一実施形態では、抗体の特性は、抗原特異性、抗原に対するアフィニティー、解離速度、細胞への結合力、生物学的機能、エピトープ認識、安定性、可溶性、作製効率、免疫原性、薬物動態、バイオアベイラビリティー、組織交差反応性、オーソログ抗原への結合などからなる群から選択される。
【0086】
一部の実施形態では、本開示に従う二重特異性FIT-Igタンパク質は、ドメイン間ペプチドリンカーを伴わずに構成される。当技術分野では一般に、タンデム結合部位を有する多価操作免疫グロブリンフォーマット内では、可撓性リンカーが、結合部位を、空間的に隔てるのに使用されない限り、隣接する結合部位が、互いに干渉することが理解される。しかし、本開示のOX40/PD-L1 FIT-Igについては、本明細書で開示される鎖の式に従う免疫グロブリンドメインの配置は、トランスフェクト哺乳動物細胞内の発現が十分であり、適切にアセンブルされ、標的抗原であるOX40及びPD-L1に結合する、無傷で二重特異性の多価免疫グロブリン様結合タンパク質として分泌されるポリペプチド鎖を結果としてもたらすことが発見されている。下記の実施例を参照されたい。さらに、合成リンカー配列の、結合タンパク質からの除外は、哺乳動物免疫系により認識可能な抗原性部位の創出を回避することが可能であり、このようにして、リンカーの消失は、FIT-Igの免疫原性の可能性を低下させ、天然抗体と同様の循環中半減期をもたらす。
【0087】
一部の実施形態では、本出願に従うOX40×PD-L1二重特異性結合タンパク質は、
a)OX40に特異的に結合する第1の抗原結合部位、及び
b)PD-L1に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む。
【0088】
一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性結合タンパク質は、二重特異性結合タンパク質のOX40結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗OX40抗体又はその抗原結合性断片に由来する6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含む。一部のさらなる実施形態では、本明細書で記載される二重特異性結合タンパク質は、二重特異性結合タンパク質のOX40結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗OX40抗体又はその抗原結合性断片に由来するVH/VL対を含む。
【0089】
一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性結合タンパク質は、二重特異性結合タンパク質のPD-L1結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗PD-L1抗体又はその抗原結合性断片に由来する6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットをさらに含む。一部のさらなる実施形態では、本明細書で記載される二重特異性結合タンパク質は、二重特異性結合タンパク質のPD-L1結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗PD-L1抗体又はその抗原結合性断片に由来するVH/VL対を含む。
【0090】
一実施形態では、本出願に従う二重特異性OX40/PD-L1結合タンパク質内のOX40結合部位、及びPD-L1結合部位は、ヒト化されており、それぞれ、ヒト化VH/VL配列を含む。
【0091】
二重特異性FIT-Ig結合タンパク質
一実施形態では、本出願に従うOX40×PD-L1二重特異性結合タンパク質は、OX40及びPD-L1に結合することが可能である二重特異性FIT-Ig結合タンパク質である。FIT-Ig結合タンパク質(Fab-in-tandem immunoglobulin)は、6つのポリペプチド鎖を含み、2つの外部結合領域であるFab、及び2つの内部結合領域であるFabを伴う4つの機能的結合領域であるFabを有する二重特異性の四価結合タンパク質である。結合タンパク質は、(外部Fab-内部Fab-Fc)×2のフォーマットを採用し、抗原A及び抗原Bの両方に結合する。一態様では、本出願に従うOX40×PD-L1二重特異性結合タンパク質は、二重特異性FIT-Ig結合タンパク質であり、この場合、FIT-Igタンパク質の2つのFabドメインは、OX40に特異的に結合する第1の抗原結合部位をもたらし、FIT-Igタンパク質の他の2つのFabドメインは、PD-L1に特異的に結合する第2の抗原結合部位をもたらす。一部の実施形態では、本開示に従うFIT-Ig結合タンパク質は、免疫グロブリンドメインの間のリンカーを利用しない。
【0092】
一実施形態では、結合タンパク質は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VLA-CL-VHB-CH1-Fc、又はVHB-CH1-VLA-CL-Fcを含む第1のポリペプチド、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VHA-CH1を含む第2のポリペプチド、及びアミノ末端からカルボキシル末端へと、VLB-CLを含む第3のポリペプチドを含むか、代替的に、結合タンパク質は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VLB-CL-VHA-CH1-Fc、又はVHA-CH1-VLB-CL-Fcを含む第1のポリペプチド、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VHB-CH1を含む第2のポリペプチド、及びアミノ末端からカルボキシル末端へと、VLA-CLを含む第3のポリペプチドを含み;この場合、VLは、軽鎖可変ドメインを表し、CLは、軽鎖定常ドメインを表し、VHは、重鎖可変ドメインを表し、CH1は、重鎖の第1の定常ドメインを表し、Aは、OX40を表し、Bは、PD-L1を表す。各二重特異性結合タンパク質は、2つの前記第1のポリペプチド、2つの前記第2のポリペプチド、及び2つの前記第3のポリペプチドを含み、2つがOX40への結合のためのFabであり(VLA-CLと対合させられたVHA-CH1であり、VHA-CH1::VLA-CLと言及される)、2つがPD-L1への結合のためのFabである(VLB-CLと対合させられたVHB-CH1であり、VHB-CH1::VLB-CLと言及される)4つのFab抗原結合部位を示すヘキサマーである。
【0093】
一部の実施形態では、FIT-Ig結合タンパク質内の、VL-CLの、VH-CH1との対合により形成される、OX40に結合するFab(例えば、AがOX40である場合、VLA-CL及びVHA-CH1により形成されるFab;又はBがOX40である場合、VLB-CL及びVHB-CH1により形成されるFab)は、二重特異性結合タンパク質のOX40結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗OX40抗体又はその抗原結合性断片に由来する6つのCDRのセット、すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む。一部のさらなる実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3は、それぞれ、配列番号1、2、3、及び5、6、7の配列;配列番号1、4、3、及び5、6、7の配列;配列番号1、2、3、及び8、6、7の配列;又は配列番号1、4、3、及び8、6、7の配列を含む。
【0094】
一部の実施形態では、FIT-Ig結合タンパク質内の、OX40に結合するFabは、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗OX40抗体又はその抗原結合性断片に由来するVH/VL対を含む。一部のさらなる実施形態では、VH/VL対は、以下のVH/VL配列対:配列番号11/19、12/19、13/19、14/19、11/20、12/20、13/20、14/20、10/17、9/18、10/18、9/19、11/17、15/21、15/18、16/21、及び16/18、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、95%、若しくは99%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。一部の実施形態では、FIT-Ig結合タンパク質内の、OX40に結合するFabは、配列番号16のVH配列、及び配列番号21のVL配列を含む。
【0095】
一部の実施形態では、FIT-Ig結合タンパク質内の、VL-CLの、VH-CH1との対合により形成される、PD-L1に結合するFab(例えば、AがPD-L1である場合、VLA-CL及びVHA-CH1により形成されるFab;又はBがPD-L1である場合、VLB-CL及びVHB-CH1により形成されるFab)は、二重特異性結合タンパク質のPD-L1結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗PD-L1抗体又はその抗原結合性断片に由来する6つのCDRのセット、すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む。一部の実施形態では、FIT-Ig結合タンパク質内の、VL-CLの、VH-CH1との対合により形成される、PD-L1に結合するFabは、6つのCDRのセットを含み、この場合、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3は、それぞれ、配列番号22、23、24、及び26、27、28の配列;又は配列番号22、25、24、及び26、27、28の配列を含む。一部のさらなる実施形態では、PD-L1に結合するFabは、配列番号31及び34の配列、又はこれらとの少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%の同一性を有する配列を含むVH/VL対を含む。
【0096】
本開示では、OX40/PD-L1FIT-Ig結合タンパク質は、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、及び第3のポリペプチド鎖を含み、この場合、第1のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、CLがVHPD-L1へと直接融合されたVLOX40-CL-VHPD-L1-CH1-Fc、又はCH1がVLOX40へと直接融合されたVHPD-L1-CH1-VLOX40-CL-Fcを含み;第2のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VHOX40-CH1含み;第3のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VLPD-L1-CLを含む。代替的実施形態では、OX40/PD-L1FIT-Ig結合タンパク質は、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、及び第3のポリペプチド鎖を含み、この場合、第1のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、CH1がVLPD-L1へと直接融合されたVHOX40-CH1-VLPD-L1-CL-Fc、又はCLがVHOX40へと直接融合されたVLPD-L1-CL-VHOX40-CH1-Fcを含み;第2のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VHPD-L1-CH1含み;第3のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VLOX40-CLを含む。一部の実施形態では、VLOX40は、抗OX40抗体の軽鎖可変ドメインであり、CLは、軽鎖定常ドメインであり、VHOX40は、抗OX40抗体の重鎖可変ドメインであり、CH1は、重鎖定常ドメインであり、VLPD-L1は、抗PD-L1抗体の軽鎖可変ドメインであり、VHPD-L1は、抗PD-L1抗体の重鎖可変ドメインであり;場合により、ドメインVLPD-L1-CLは、抗PD-L1親抗体の軽鎖と同じであり、ドメインVHPD-L1-CH1は、抗PD-L1親抗体の重鎖可変ドメイン及び重鎖定常ドメインと同じであり、ドメインVLOX40-CLは、抗OX40親抗体の軽鎖と同じであり、ドメインVHOX40-CH1は、抗OX40親抗体の重鎖可変ドメイン及び重鎖定常ドメインと同じである。
【0097】
一実施形態では、VHOX40-CH1は、配列番号38に対する少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0098】
【0099】
一実施形態では、VLOX40-CLは、配列番号37に対する少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
【0101】
一実施形態では、VHPD-L1-CH1は、配列番号36に対する少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0102】
【0103】
一実施形態では、VLPD-L1-CLは、配列番号39に対する少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0104】
【0105】
FIT-Ig結合タンパク質についての前出の式中では、Fc領域は、例えば、LALA変異(Leu234からAla234へ、Leu235からAla235へ、EU番号付けシステムに従う)の導入により、少なくとも1つのFcエフェクター機能(例えば、Fcの、FcγRへの結合、ADCC、及び/又はCDC)が低減されるか、又は消失させられた、IgG1に由来するヒトFc領域である。さらなる実施形態では、Fc領域のアミノ酸配列は、配列番号40と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%同一である。一実施形態では、Fc領域のアミノ酸配列は、三重変異であるM252Y/S254T/T256E(YTE、EU番号付けシステムに従う番号付け)をさらに含む。さらなる実施形態では、Fc領域のアミノ酸配列は、配列番号41と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%同一である。
【0106】
【0107】
【0108】
一実施形態では、本開示のFIT-Ig結合タンパク質は、親抗体の1つ以上の特性を保持する。一部の実施形態では、FIT-Igが、親抗体の結合アフィニティーと同等である、標的抗原(すなわち、PD-L1及びOX40)に対する結合アフィニティーを保持することは、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤーインターフェロメトリーにより測定される通り、FIT-Ig結合タンパク質の、抗原標的であるOX40及びPD-L1に対する結合アフィニティーが、それらのそれぞれの標的抗原に対する、親抗体の結合アフィニティーと比較して、10倍を超えて変動しないことを意味する。
【0109】
一実施形態では、本開示のFIT-Ig結合タンパク質は、OX40及びPD-L1に結合し、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、及び第3のポリペプチド鎖から構成され、
・第1のポリペプチド鎖は、配列番号35のアミノ酸配列、又はこれとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含み、
・第2のポリペプチド鎖は、配列番号36のアミノ酸配列、又はこれとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含み、
・第3のポリペプチド鎖は、配列番号37のアミノ酸配列、又はこれとの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む。
【0110】
一実施形態では、本開示のFIT-Ig結合タンパク質は、OX40及びPD-L1に結合し、配列番号35の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる第1のポリペプチド鎖;配列番号36の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる第2のポリペプチド鎖;及び配列番号37の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる第3のポリペプチド鎖から構成される。
【0111】
二重特異性結合タンパク質の特性
一実施形態では、本明細書で記載される、PD-L1及びOX40のいずれにも結合することが可能な二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、ヒト化OX40結合部位、又はキメラOX40結合部位、例えば、ヒト化OX40結合部位を含む。一実施形態では、FIT-Igタンパク質フォーマット内の、ヒト化OX40結合部位は、OX40への結合について、配列番号10及び18のVH/VL対からなる、同じFIT-Igフォーマット内のキメラOX40結合部位と比べて、緩徐なオフ速度を有する。さらなる実施形態では、ヒト化OX40結合部位の、キメラOX40結合部位と比べたオフ速度比は、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤーインターフェロメトリーにより測定される通り、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%未満である。一実施形態では、本明細書で記載されるFIT-Ig結合タンパク質の、OX40に対するオフ速度は、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤーインターフェロメトリーにより測定される通り、5×10-3秒-1未満、3×10-3秒-1未満、2×10-3秒-1未満、1×10-3秒-1未満、9×10-4秒-1未満、6×10-4秒-1未満、3×10-4秒-1未満、2.5×10-4秒-1未満、2×10-4秒-1未満、1×10-4秒-1未満、8×10-5秒-1未満、5×10-5秒-1未満である。一実施形態では、本明細書で記載されるFIT-Ig結合タンパク質抗体又はその抗原結合性断片は、OX40に対する、10-8~10-10の範囲、例えば、8×10-8M未満、5×10-8M未満、3×10-8M未満、2×10-8M未満、1×10-8M未満、8×10-9M未満、5×10-9M未満、3×10-9M未満、2×10-9M未満、又は1×10-9M未満、8×10-10M未満、6×10-10M未満、4×10-10M未満、2×10-10M未満、又は1×10-10M未満の解離定数(KD)を有する。一実施形態では、本明細書で記載されるFIT-Ig結合タンパク質抗体又はその抗原結合性断片は、OX40への結合について、1×10-3秒-1~1×10-4秒-1、例えば、5×10-4秒-1未満の範囲のオフ速度、及び1×10-8秒-1~1×10-9秒-1の範囲、例えば、7×10-9秒-1未満のKDを有する。
【0112】
一実施形態では、本明細書で記載されるPD-L1及びOX40に結合することが可能な二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用する細胞培養培地からのワンステップ精製の後で、SEC-HPLCにより検出される通り、90%以上の純度を有する。一実施形態では、ワンステップ精製された結合タンパク質は、SEC-HPLCにより検出される通り、91%、92%、93%、95%、97%、99%以上の純度を有する。
【0113】
一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、PD-L1発現細胞及びOX40発現細胞のいずれにも結合することが可能である。一実施形態では、PD-L1発現細胞は、ヒトPD-L1トランスフェクトCHO細胞系、又は腫瘍細胞である。一実施形態では、OX40発現細胞は、OX40発現T細胞/細胞系、例えば、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、Treg細胞、又はJurkat細胞である。
【0114】
一実施形態では、細胞ベースのアッセイにおいて、フローサイトメトリーにより測定される通り、二重特異性FIT-Ig結合タンパク質の、OX40発現細胞への結合力は、OX40への結合について、二重特異性FIT-Igタンパク質と同じVH/VL配列対を含む、対応する親抗OX40 IgGモノクローナル抗体と等しいか、又は同等である。一実施形態では、二重特異性FIT-Ig結合タンパク質の、PD-L1発現細胞への結合力は、フローサイトメトリー、例えば、実施例3及び4で記載されるアッセイにおけるフローサイトメトリーにより測定される通り、PD-L1への結合について、二重特異性結合タンパク質と同じVH/VL配列対を含む、対応する親抗PD-L1 IgGモノクローナル抗体と等しいか、又は同等である。
【0115】
一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性結合タンパク質は、OX40、PD-L1、又はこれらの両方の生物学的機能をモジュレートすることが可能である。一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、PD-L1依存性との関連で、OX40シグナル伝達を活性化させることが可能である。一実施形態では、本開示の二重特異性結合タンパク質は、OX40シグナル経路によるT細胞の活性化を示す。一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、OX40活性化T細胞による、腫瘍細胞に対する細胞傷害作用を、PD-L1依存的に示す。一実施形態では、本開示の二重特異性結合タンパク質は、T細胞の、腫瘍細胞に対するサイトカイン分泌活性を、PD-L1依存的に増強するために使用される。
【0116】
一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、PD-L1依存的OX40活性化を示す。一実施形態では、PD-L1発現細胞と、OX40発現T細胞との比は、約1:1である。さらなる実施形態では、二重特異性OX40/PD-L1結合タンパク質は、PD-L1発現細胞の非存在下における、はるかに低度のT細胞内のOX40の活性化と比較して、PD-L1発現細胞の存在下における、T細胞内のOX40の活性化を示し、PD-L1への結合について、二重特異性結合タンパク質と同じVH/VL配列対を含む、対応する親抗PD-L1 IgGモノクローナル抗体と、OX40への結合について、二重特異性FIT-Igタンパク質と同じVH/VL配列対を含む、対応する親抗OX40 IgGモノクローナル抗体との組合せにより誘導されるPD-L1発現細胞の存在下における、はるかに低度のT細胞内のOX40の活性化と比較してPD-L1発現細胞の存在下における、T細胞内のOX40の活性化を示す。
【0117】
一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、T細胞による、腫瘍細胞に対する細胞傷害作用、又はサイトカイン分泌活性を結果としてもたらす。さらなる実施形態では、本明細書で記載される二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、抗腫瘍免疫を増強する、及び/又は腫瘍免疫逃避を妨げる。別の実施形態では、本明細書で記載される二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、抗腫瘍活性、例えば、腫瘍量の低減、腫瘍増殖の阻害、又は新生物性細胞拡大の抑制を示す。一部の実施形態では、二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、高度のクラスター化を媒介することが可能である。一部の実施形態では、二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、高次のOX40クラスター化を誘導することが可能である。一部の実施形態では、二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、PD-L1依存的条件下で、T細胞を活性化させることが可能である。一部の実施形態では、二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、PD-L1の架橋を介して、十分なOX40シグナル伝達を誘発し、例えば、これにより、抗OX40単剤療法の限界を克服することが可能である。一部の実施形態では、二重特異性OX40/PD-L1 FIT-Ig結合タンパク質は、例えば、当技術分野で公知の方法により測定される通り、T細胞活性、例えば、IL-2産生を、適切な対照、例えば、親抗体の両方の組合せによる相加効果と比較して、相乗作用的に刺激する。
【0118】
核酸、ベクター、及び宿主細胞
さらなる態様では、本開示は、本開示の抗OX40抗体又はその抗原結合性断片の1つ以上のアミノ酸配列をコードする単離核酸;本開示の抗PD-L1抗体又はその抗原結合性断片の1つ以上のアミノ酸配列をコードする単離核酸;並びにOX40及びPD-L1の両方に結合することが可能なFIT-Ig(Fab-in-tandem immunoglobulin)結合タンパク質を含む二重特異性結合タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列をコードする単離核酸を提供する。このような核酸は、多様な遺伝子解析を実行するか、又は本明細書で記載される抗体又は結合タンパク質を発現させるか、これらの1つ以上の特性を特徴付けるか、若しくは改善するために、ベクターへと挿入されうる。ベクターは、本明細書で記載される抗体又は結合タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列をコードする、1つ以上の核酸分子であって、ベクターを保有する特定の宿主細胞内の抗体又は結合タンパク質の発現を可能とする適切な転写配列及び/又は翻訳配列に作動可能に連結された、1つ以上の核酸分子を含みうる。本明細書で記載される結合タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸をクローニングするか、又は発現させるためのベクターの例は、pcDNA、pTT、pTT3、pEFBOS、pBV、pJV、及びpBJ、並びにこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない。
【0119】
本開示はまた、本明細書で記載される抗体又は結合タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクターを発現するか、又はこれを発現することが可能な宿主細胞も提供する。本開示で有用な宿主細胞は、原核細胞の場合もあり、真核細胞の場合もある。例示的な原核宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)である。本開示における宿主細胞として有用な真核細胞は、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞、及び真菌細胞を含む。例示的真菌細胞は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を含む酵母細胞である。本開示に従う宿主細胞として有用な例示的動物細胞は、哺乳動物細胞、鳥類細胞、及び昆虫細胞を含むがこれらに限定されない。例示的哺乳動物細胞は、CHO細胞、HEK細胞、Jurkat細胞、及びCOS細胞を含むがこれらに限定されない。
【0120】
作製のための方法
別の態様では、本開示は、抗OX40抗体、又はその抗原結合性断片を作製する方法であって、抗体又は抗原結合性断片をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を、宿主細胞に、OX40に結合することが可能である抗体又は断片を発現させるのに十分な条件下にある培養培地中で培養するステップを含む方法を提供する。
【0121】
別の態様では、本開示は、抗PD-L1抗体、又はその抗原結合性断片を作製する方法であって、抗体又は抗原結合性断片をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を、宿主細胞に、PD-L1に結合することが可能である抗体又は断片を発現させるのに十分な条件下にある培養培地中で培養するステップを含む方法を提供する。
【0122】
別の態様では、本開示は、OX40及びPD-L1に結合することが可能である二重特異性多価結合タンパク質、とりわけ、OX40及びPD-L1に結合するFIT-Ig結合タンパク質を作製する方法であって、FIT-Ig結合タンパク質をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を、宿主細胞に、OX40及びPD-L1に結合することが可能である結合タンパク質を発現させるのに十分な条件下にある培養培地中で培養するステップを含む方法を提供する。本明細書で開示される方法により作製されるタンパク質は、本明細書で記載される多様な組成物及び方法により単離され、これらにおいて使用されうる。
【0123】
抗体及び結合タンパク質の使用
ヒトOX40及び/又はPD-L1に結合するそれらの能力を踏まえると、本明細書で記載される抗体、その抗原結合性断片、及び本明細書で記載される二重特異性多価結合タンパク質は、例えば、これらの標的抗原の一方又は両方を発現する細胞を含有する生物学的試料中において、OX40若しくはPD-L1、又はこれらの両方を検出するのに使用されうる。本開示の抗体、抗原結合性断片、及び結合タンパク質は、常套的イムノアッセイ、例えば、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は免疫組織化学において使用されうる。本開示は、生物学的試料中の、OX40又はPD-L1を検出する方法であって、生物学的試料を、本開示の抗体、その抗原結合性部分、又は結合タンパク質と接触させるステップ、及び標的抗原への結合が生じるのかどうかを検出し、これにより、生物学的試料中の、標的の存在又は非存在を検出するステップを含む方法を提供する。抗体、抗原結合性断片、又は結合タンパク質は、結合した抗体/断片/結合タンパク質、又は結合していない抗体/断片/結合タンパク質の検出を容易とするように、検出可能な物質で直接的に標識される場合もあり、間接的に標識される場合もある。適切な検出用物質は、多様な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、及び放射性材料を含む。適切な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含む。適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含み;適切な蛍光材料の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、又はフィコエリトリンを含み;発光材料の例は、ルミノールを含み;適切な放射性材料の例は、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、又は153Smを含む。
【0124】
一部の実施形態では、本開示の抗体、その抗原結合性断片は、in vitro及びin vivoのいずれにおいても、ヒトPD-L1活性を中和することが可能である。したがって、本開示の抗体、その抗原結合性断片は、ヒトPD-L1活性を阻害する、例えば、本開示の抗体、その抗原結合性断片、又は結合タンパク質が交差反応するPD-L1を有するヒト対象、又は他の哺乳動物対象におけるPD-L1発現細胞を含有する細胞培養物中における、PD-L1と関連する細胞シグナル伝達を阻害するのに使用されうる。
【0125】
別の実施形態では、本開示は、PD-L1活性が有害である疾患又は障害を患う対象の処置における使用のための、本開示の抗体又は二重特異性結合タンパク質を提供するが、この場合、抗体又は結合タンパク質は、対象におけるPD-L1により媒介される活性が低減されるように、対象へと投与される。本明細書で使用される場合、「PD-L1活性が有害である障害」という用語は、障害を患う対象における、PD-L1の、その受容体(例えば、PD-1)との相互作用が、障害の病態生理の一因をなすか、又は障害の増悪に寄与する因子である疾患及び他の障害を含むことが意図される。このような疾患又は障害の例は、免疫逃避と関連する腫瘍、又は腫瘍免疫逃避を示す腫瘍である。したがって、PD-L1活性が有害である障害は、PD-L1活性の阻害が、障害の症状及び/又は進行を緩和することが予測される障害である。一実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体、その抗原結合性断片、又は二重特異性結合タンパク質は、悪性細胞の増殖又は生存を阻害するか、又は腫瘍量を低減する方法において使用される。
【0126】
一部の実施形態では、本開示の二重特異性結合タンパク質(FIT-Ig)は、in vitro及びin vivoのいずれにおいても、PD-L1発現腫瘍細胞に対する、T細胞による細胞傷害作用、又はサイトカイン分泌活性を増強することが可能である。したがって、本開示の二重特異性結合タンパク質は、本開示の抗体、その抗原結合性断片、又は二重特異性結合タンパク質が交差反応するPD-L1を有するヒト対象、又は他の哺乳動物対象におけるPD-L1発現悪性細胞の増殖又は拡大を阻害するのに使用されうる。
【0127】
別の実施形態では、本開示は、OX40に媒介されるシグナル伝達活性が有益である疾患又は障害(例えば、OX40+T細胞浸潤腫瘍)を患う対象の処置における使用のための、本開示の抗体又は二重特異性結合タンパク質を提供する。本明細書では、「OX40に媒介されるシグナル伝達活性が有益である障害」という用語は、障害を患う対象におけるOX40の高度クラスター化及び/又は活性化が、これにより、T細胞を活性化させ、疾患又は障害、例えば、腫瘍の影響を反転させる/症状を緩和する/進行を緩徐化させる疾患及び他の障害を含むことが意図される。一実施形態では、本開示の抗OX40抗体、その抗原結合性断片、又は二重特異性結合タンパク質は、悪性細胞の増殖又は生存を阻害するか、又は腫瘍量を低減する方法において使用される。
【0128】
別の実施形態では、本開示は、T細胞によるOX40の活性化を介する、対象におけるPD-L1発現悪性腫瘍の処置における使用のための、PD-L1/OX40二重特異性(FIT-Ig)結合タンパク質を提供するが、この場合、結合タンパク質は、対象へと投与される。一部の実施形態では、悪性腫瘍は、腫瘍、例えば、充実性腫瘍、例えば、結腸がんである。
【0129】
一部のさらなる実施形態では、本開示の抗体(その抗原結合性断片を含む)、及び結合タンパク質は、対象への投与に適する医薬組成物(前出に記載された)への組込み、又はこの製造において使用される。典型的に、医薬組成物は、本開示の抗体又は結合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性である、任意/全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌薬剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体の例は、水、生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ以上、並びにこれらの組合せを含む。多くの場合に、組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール)、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。薬学的に許容される担体は、組成物中に存在する抗体又は結合タンパク質の保管寿命又は効果を増強する、少量の補助物質、例えば、保湿剤又は乳化剤、保存剤、又は緩衝剤をさらに含みうる。本開示の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化される。
【0130】
本開示の方法は、注射による(例えば、ボーラス注射又は連続注入による)非経口投与のために製剤化された組成物の投与を含みうる。注射のための製剤は、保存剤を添加された単位剤形で(例えば、アンプル中又は複数回投与用容器内で)提示されうる。組成物は、このような形態、例えば、油性媒体中又は水性媒体中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンの形態を取る場合があり、製剤化剤、例えば、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤を含有しうる。代替的に、主要有効成分は、使用の前における、適切な媒体(例えば、滅菌発熱物質非含有水)による構成のための粉末形態の場合もある。
【0131】
本開示の使用は、デポ調製物として製剤化された組成物の投与を含みうる。このような長時間作用型製剤は、植込み(例えば、皮下植込み又は筋内植込み)により投与される場合もあり、筋内注射により投与される場合もある。例えば、組成物は、適切なポリマー材料又は疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとしての)により製剤化される場合もあり、イオン交換樹脂により製剤化される場合もあり、難溶性誘導体(例えば、難溶性塩としての)として製剤化される場合もある。
【0132】
本開示の抗体、その抗原結合性断片、又は結合タンパク質はまた、多様な疾患の処置において有用である1つ以上のさらなる治療剤と共に投与される場合もある。本明細書で記載される抗体、その抗原結合性断片、及び結合タンパク質は、単独で使用される場合もあり、さらなる薬剤、例えば、さらなる治療剤、その意図された目的のために、当業者により選択されるさらなる薬剤と組み合わせて使用される場合もある。例えば、さらなる薬剤は、当技術分野において、本開示の抗体又は結合タンパク質により処置される疾患又は状態を処置するのに有用であることが認知されている治療剤でありうる。さらなる薬剤はまた、治療用組成物に有益な属性を付与する薬剤、例えば、組成物の粘性に影響を及ぼす薬剤でもありうる。
【0133】
医薬組成物
本開示はまた、本開示の抗体、若しくはその抗原結合性部分、又は二重特異性多価結合タンパク質(すなわち、主要有効成分)と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、本開示の2つ以上の抗体、例えば、抗OX40抗体及び抗PD-L1抗体を含みうる。さらなる実施形態では、本開示の医薬組成物は、本開示に従う少なくとも1つの抗体、及び少なくとも1つの二重特異性結合タンパク質を含みうる。具体的な実施形態では、組成物は、本開示の1つ以上の抗体又は結合タンパク質を含む。本開示はまた、本明細書で記載される抗体(例えば、抗OX40抗体及び抗PD-L1抗体など)、又はその抗原結合性断片(複数可)の組合せと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。特に、本開示は、OX40及びPD-L1に結合することが可能な少なくとも1つのFIT-Ig結合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。本開示の医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる有効成分をさらに含みうる。一部の実施形態では、このようなさらなる成分は、予防剤及び/又は治療剤、検出剤、例えば、抗腫瘍薬、細胞傷害剤、異なる特異性の抗体、又はその抗原結合性断片、検出用標識又は検出用レポーターを含むがこれらに限定されない。一実施形態では、医薬組成物は、PD-L1活性が有害である障害、及び/又はOX40活性が有益である障害を処置するための、1つ以上のさらなる予防的又は治療剤、すなわち、本開示の抗体又は結合タンパク質以外の薬剤を含む。一実施形態では、さらなる予防剤又は治療剤は、障害又は1つ以上のその症状の防止、処置、管理、又は改善において有用であるか、使用されているか、又は現在使用されつつあることが公知である。
【0134】
本開示のタンパク質を含む医薬組成物は、障害の診断、検出、若しくはモニタリング;障害若しくはその1つ以上の症状の処置、管理、若しくは改善;及び/又は調査研究における使用のためであるがこれらに限定されない医薬組成物である。一部の実施形態では、組成物は、担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含みうる。賦形剤は、一般に、主要有効成分の組成以外の組成(すなわち、本開示の抗体、その抗原結合性部分、又は結合タンパク質以外の組成)へと、所望の特色ももたらす任意の化合物又は化合物の組合せである。
【0135】
処置のための方法及び医学的使用
一実施形態では、本開示は、対象における免疫応答をモジュレートする方法であって、対象へと、本開示に従う少なくとも1つの抗体、及び/又は少なくとも1つの二重特異性結合タンパク質を投与するステップを含む方法を提供する。
【0136】
一部の実施形態では、本開示は、T細胞を活性化させるための方法を提供する。一部のさらなる実施形態では、T細胞の活性化は、T細胞媒介抗腫瘍活性の誘導及び/又は増強を結果としてもたらしうる。一部のさらなる実施形態では、抗腫瘍活性は、腫瘍細胞に対する細胞傷害作用及び/又はサイトカイン産生であり、この場合、前記サイトカインは、例えば、IL-2又はIFN-γである。一部のさらなる実施形態では、T細胞は、CD8+ T細胞である。他の一部の実施形態では、T細胞は、CD4+ T細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、エフェクターT細胞である。
【0137】
一部の実施形態では、本開示は、対象におけるがんを処置する方法であって、対象へと、本開示に従う少なくとも1つの抗体、及び/又は少なくとも1つの二重特異性結合タンパク質を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、がんは、腫瘍免疫逃避、又は腫瘍免疫逃避を示す腫瘍である。一部のさらなる実施形態では、がんは、T細胞活性化に応答するがん、例えば、T細胞の機能不全を伴うがんである。一部のさらなる実施形態では、がんは、例えば、正常対象又は正常細胞におけるレベルと比較して、PD-L1タンパク質発現レベルを上昇させているがん、又はPD-L1をコードする核酸のレベルを上昇させているがんである。一実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における、OX40に媒介されるシグナル伝達活性が有益である障害(例えば、OX40+T細胞浸潤腫瘍)を処置する方法であって、対象へと、本明細書で記載される抗OX40抗体、又はそのOX40結合性断片を投与するステップを含み、抗体又は結合性断片が、OX40に結合し、OX40を発現する細胞内における、OX40に媒介されるシグナル伝達を活性化させることが可能である方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、このような障害の処置における、有効量の本明細書で記載される抗OX40抗体、又はその抗原結合性断片の使用を提供する。別の実施形態では、本開示は、このような障害の処置のための組成物の製造における、本明細書で記載される抗OX40抗体、又はその抗原結合性断片の使用を提供する。別の実施形態では、本開示は、このような障害の処置における使用のための、本明細書で記載される抗OX40抗体、又はその抗原結合性断片を提供する。
【0138】
本明細書で記載される方法又は使用についてのさらなる実施形態では、本開示の抗OX40抗体、又は抗原結合性断片は、OX40に結合し、配列番号16の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号21の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなるVLドメインを含む。
【0139】
一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における、PD-L1活性が有害である障害を処置する方法であって、対象へと、本明細書で記載される抗PD-L1抗体、又はそのPD-L1結合性断片を投与するステップを含み、抗体又は結合性断片が、PD-L1に結合し、PD-L1の、例えば、PD-L1の受容体、例えば、PD-1との相互作用を遮断することが可能であり、これにより、PD-L1の受容体を発現する細胞内における、PD-L1関連シグナル伝達を阻害することが可能である方法を提供する。
【0140】
本明細書で記載される方法又は使用についてのさらなる実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体、又は抗原結合性断片は、PD-L1に結合し、配列番号31の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号34の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなるVLドメインを含む。
【0141】
別の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における、OX40に媒介されるシグナル伝達活性が有益である障害(例えば、OX40+T細胞浸潤腫瘍)、及び/又はPD-L1活性が有害である障害を処置する方法であって、対象へと、本明細書で記載されるPD-L1及びOX40に結合することが可能な二重特異性FIT-Ig結合タンパク質を投与するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、このような障害の処置における、有効量の本明細書で記載される二重特異性FIT-Ig結合タンパク質の使用を提供する。別の実施形態では、本開示は、このような障害の処置のための組成物の製造における、本明細書で記載される二重特異性FIT-Ig結合タンパク質の使用を提供する。別の実施形態では、本開示は、このような障害の処置における使用のための、本明細書で記載される二重特異性FIT-Ig結合タンパク質を提供する。
【0142】
本明細書で記載される方法又は使用についてのさらなる実施形態では、本開示のFIT-Ig結合タンパク質は、OX40及びPD-L1に結合し、配列番号35の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる第1のポリペプチド鎖;配列番号36の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる第2のポリペプチド鎖;及び配列番号37の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる第3のポリペプチド鎖から構成される。
【0143】
一部の実施形態では、本開示に従う抗体又は結合タンパク質で処置されうる障害は、悪性細胞の細胞表面上においてPD-L1を発現する、多様な悪性腫瘍を含む。一部のさらなる実施形態では、本開示に従う抗体又は結合タンパク質で処置されうる障害は、例えば、PD-L1/PD-1相互作用を介して、腫瘍免疫逃避を示す腫瘍を含む。別の実施形態では、抗体又は結合タンパク質は、悪性細胞の増殖又は生存を阻害する。別の実施形態では、抗体又は結合タンパク質は、腫瘍量を低減する。別の実施形態では、がんは、結腸がんである。
【0144】
本明細書で記載される処置法は、それを必要とする対象へと、意図される処置目的のために本発明の抗体又は結合タンパク質、例えば、抗腫瘍活性を有する別の薬物と組み合わされて適切に存在する、さらなる有効成分を投与するステップをさらに含みうる。本開示の処置法では、さらなる有効成分は、本開示の抗体又は結合タンパク質を含む組成物、及び処置を必要とする対象へと投与される組成物へと組み込まれうる。別の実施形態では、本開示の処置法は、処置を必要とする対象へと、本明細書で記載される抗体又は結合タンパク質を投与するステップ、及び対象へと、本開示の抗体又は結合タンパク質を投与するステップの前に、これと共時的に、又はこの後で、対象へと、さらなる有効成分を投与する別個のステップを含みうる。
【0145】
以上で、本開示について詳細に記載したので、本開示は、例示だけを目的として組み入れられるものであり、本開示の限定であることが意図されるものではない、以下の実施例を参照して、より明確に理解されるであろう。
【0146】
[実施例]
[実施例1]
抗OX40抗体の作出
[実施例1.1]
抗OX40モノクローナル抗体8G9D5C5についてのスクリーニング、クローニング、及び配列解析
抗OX40モノクローナル抗体は、標準的なハイブリドーマスクリーニングプロトコールにより作出した。免疫化のために、細胞の免疫化及び遺伝子銃(DNA免疫化)を利用したが、ここで、免疫原は、それぞれ、ヒトOX40を過剰発現するHEK293細胞、及びヒトOX40遺伝子を含有する発現プラスミドであった。ヒトOX40を発現するCHO-K1細胞を使用して、ハイブリドーマクローンを、結合活性及び生物学的活性についてスクリーニングした。クローン8G9D5C5を、さらなる特徴付けのために選択した。
【0147】
抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を増幅するために、TRIzol試薬(型番:15596、Invitrogen)により、細胞>5×106個から、クローン8G9D5C5の全RNAを単離し、SuperScript(商標)III First-Strand Synthesis SuperMix(18080、Invitrogen)を使用して、Mouse Ig-Primer Set(型番:69831-3、Novagen)を使用するPCRにおける鋳型として適用されるcDNAを作製する逆転写にかけた。SYBR Safe DNAゲル染料を伴う1.2%のアガロースゲル上の電気泳動により、PCR産物を解析した。サイズが適正であるDNA断片を、NucleoSpin(登録商標)Gel and PCR Clean-up(型番:740609、MACHEREY-NAGEL)により精製し、pMD18-Tベクターへと、個別にサブクローニングし、次いで、これらにより、コンピテント大腸菌(E.coli)細胞を形質転換した。各回の形質転換から、15のコロニーを選択し、DNAシーケンシングにより、挿入された断片の配列を解析した。シーケンシングされたコロニーのうちの過半数(15のコロニー中、少なくとも8つのコロニー)が、同じ配列をもたらした場合に、配列を確認した。クローン8G9D5C5の可変領域のアミノ酸配列を、表1に列挙した。Kabatの番号付けシステムに従い、相補性決定領域(CDR)に下線を付した。
【0148】
【0149】
[実施例1.2]
キメラ抗体の作出及び特徴付け
表1に提示された8G9D5C5のVH遺伝子及びVK遺伝子を、合成し、それぞれ、ヒトIgG1ドメイン及びヒトカッパ定常ドメインを含有するベクターへとクローニングした。重鎖ベクター及び軽鎖ベクターの両方と共に共トランスフェクトされた293E細胞を、7日間にわたり培養し、次いで、上清を採取し、プロテインAクロマトグラフィーにより精製した。
【0150】
精製キメラ抗体は、EM1007-44cと命名した。細胞表面上のヒトOX40又はカニクイザルOX40への結合活性は、FACSにより評価した。略述すると、細胞5×105個を、96ウェルプレート(Corning、型番:3799)の各ウェルへと播種した。細胞を、400gで、5分間にわたり遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、各ウェルについて、100nMから始まる抗体の3倍系列希釈液100μlを添加し、細胞と混合した。4℃、60分間にわたるインキュベーションの後、プレートを、洗浄して、過剰量の抗体を除去した。次いで、Secondary Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲートされたヤギ抗ヒトIgG抗体(1:500の新たな希釈、Jackson ImmunoResearch、型番:109-606-098)を添加し、室温で、20分間にわたり、細胞と共にインキュベートした。別の遠心分離/洗浄ラウンドの後、CytoFLEX Flow Cytometer(Beckman Coulter)上の読取りのために、細胞を、FACS緩衝液中に再懸濁させた。蛍光強度中央値(MFI)のリードアウトを、抗体濃度に対してプロットし、GraphPad Prism 8.0により解析した。
【0151】
OX40が、下流シグナル伝達を活性化させる能力は、Jurkat-OX40-NF-κBルシフェラーゼアッセイにおいて検出した。略述すると、高結合プレート(Corning、型番:3361)を、100nMから始まる、EM1007-44cの3倍系列希釈液により、4℃で、一晩にわたりコーティングし、洗浄し、次いで、OX40-NF-KBレポーターのウェル1つ当たり1×105個の細胞を播種し、37℃で6時間にわたりインキュベートした。インキュベーションの終了時に、製造元の指示書に従い、ONE-Glo(商標)ルミネセンスアッセイキット(Promega、型番:E6130)試薬を調製し、添加した。Varioskan(商標)LUXマイクロプレートリーダー(ThermoFisher Scientific)上の発光シグナルについて、プレートを読み取った。
【0152】
EM1007-44cを、初代T細胞を活性化させ、T細胞増殖を促進するその能力について、さらに評価した。略述すると、初代T細胞刺激を、4℃で一晩にわたるインキュベーションにより、100nMから始まる、EM1007-44cの3倍系列希釈液及び1μg/mlのOKT3(Biolegend、型番:317326)と共に共コーティングされた高結合プレート(Corning、型番:3361)内で測定した。市販のヒトT細胞分離キット(Stemcell Technologies、型番:17951)により、PD-L1+ T細胞を、ヒトPBMCから精製し、ウェル1つ当たり1×105個の細胞で、新規にコーティングされ、PBSにより洗浄されたプレートへと添加した。プレートを、37℃及び5%CO2で、96時間にわたりインキュベートした。各ウェルについて、IFN-γの定量のために、100ulの上清を回収し、次いで、ウェル1つ当たり50ulのCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega、型番:G7570)ミックスを添加し、製造元の指示書に従い、細胞生存率の検出のために、室温で、10分間にわたりインキュベートした。
【0153】
表2にまとめられたデータは、EM1007-44cが、細胞表面上のヒトOX40及びカニクイザルOX40に対して、同様の結合活性を有し、OX40シグナル伝達及び初代T細胞を活性化させることが可能であることを裏付ける。
【0154】
【0155】
[実施例1.3]
EM1007-44cのヒト化
表1に提示されたEM1007-mAb044cの可変領域遺伝子を利用して、ヒト化抗体を創出した。まず、全体的なマッチングが最良であるヒト生殖細胞系列IgのV遺伝子配列を見出すために、EM1007-mAb044cのVHドメイン及びVK(VLカッパ)ドメインのアミノ酸配列を、V BASEデータベース(https://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/alignments2.php)から入手可能なヒトIgのV遺伝子配列に対して比較した。VH及びVKのフレームワークセグメントもまた、V BASEにおいて入手可能なJ領域配列内のFR配列に対して比較して、マウスVH領域及びマウスVK領域のそれぞれに対して、最高度の相同性を有するヒトフレームワークを見出した。軽鎖について、最も近縁なヒトV遺伝子とのマッチは、O1遺伝子であり、重鎖について、最も近縁なヒトV遺伝子とのマッチは、VH1-69遺伝子であった。次いで、EM1007-044c軽鎖のCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3が、O1遺伝子のフレームワーク配列、及びJK2フレームワーク4配列へとグラフトされる一方、EM1007-044c重鎖のCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3が、VH1-69のフレームワーク配列、及びJH1フレームワーク4配列へとグラフトされるように、ヒト化可変ドメイン配列をデザインした。
【0156】
一方で、ループ構造又はVH/VK界面を支持するのに、マウスアミノ酸が極めて重要となる、任意のフレームワーク位置を同定するように、EM1007-mAb044cの三次元Fvモデルを作出した。ヒトフレームワーク配列内の対応する残基は、アフィニティー/活性を保持するように、同定されたこのような位置において、マウス残基へと復帰変異すべきである。下記の表3において示される通りに、EM1007-mAb044cのVH及びVKに所望されるいくつかの復帰変異を示し、VH及びVKの代替的デザインを構築した。EM1007-mAb044cのCDR-H2内及びCDR-L1内に見出される、「NG」(Asn-Gly)パターンは、脱アミノ化反応を受けやすく、製造時における異質性を結果としてもたらしうるので、NG(Asn-Gly)からNA(Asn-Ala)への変異(太字の斜字体で強調された)を含有し、例えば、「EM1007-mAb044VH(G-A)」、及び「EM1007-mAb044VK(G-A)」と命名されたVH及びVLドメインもまたデザインし、評価した。
【0157】
【0158】
ヒト化VH遺伝子及びヒト化VK(VLカッパ)遺伝子を、合成し、次いでそれぞれ、LALA変異を伴うヒトIgG1重鎖定常ドメイン、及びヒトカッパ軽鎖定常ドメインを含有するベクター(下記に示された配列)へとクローニングした。
【0159】
LALA変異を伴うヒトIgG1重鎖定常ドメインのアミノ酸配列(配列番号42):
【0160】
ヒトカッパ軽鎖定常ドメインのアミノ酸配列(配列番号43):
【0161】
ヒト化VH鎖と、ヒト化VK鎖との対合は、CDR-H2及びCDR-L1におけるG-A変異に起因する、評価への潜在的影響のために、「EM1007-mAb044c-9」~「EM1007-mAb044c-13」、「EM1007-mAb044c-15」、及び「EM1007-mAb044c-17」と命名されたキメラ抗体と共に、下記の表4において示される通り、「HuEM1007-044-1」~「HuEM1007-044-8」、「HuEM1007-044-14」、及び「HuEM1007-044-16」と命名された10のヒト化抗体を創出した。
【0162】
【0163】
表4中の17の抗体全てを、HEK293細胞の一過性トランスフェクションにより発現させ、プロテインAクロマトグラフィーにより精製し、解離速度定数(koff)についてアッセイし、これによりランク付けした。略述すると、抗体の結合アフィニティー及び反応速度を、Octet(登録商標)RED96バイオレイヤーインターフェロメトリー(Pall ForteBio LLC)により特徴付けた。抗体を、Anti-hIgG Fc Capture(AHC)Biosensors(Pall)により、100nMの濃度で、120秒間にわたり捕捉した。この後、センサーを、ランニングバッファー(1倍濃度のpH7.2 PBS、0.05%のTween20、0.1%のBSA)へと、60秒間にわたり浸漬して、ベースラインをチェックし、次いで、割り当てられた濃度の組換えヒトOX40/His融合タンパク質(Novoprotein、CB17)へと、200秒間にわたり浸漬して、結合を測定するのに続き、解離のために、ランニングバッファーへと600秒間にわたり浸漬した。アッセイは、全てが、EM1007-044cキメラ抗体を、正規化のための基盤として含有する、4つの試験群(表5に列挙されている)において行った。ForteBio Data Analysis software(Pall)を使用して、下記の表5に示されるオフ速度定数を求めるために、会合曲線及び解離曲線を、1:1ラングミュア結合モデルへと当てはめた。各抗体のオフ速度を、並行して得られた、同じ試験群内のEM1007-mAb044cキメラ抗体のオフ速度と比較して、対応するオフ速度比を求め、正規化指数として用いた。抗体の正規化指数は、ヒトOX40に対する高アフィニティーを示す。
【0164】
【0165】
EM1007-mAb044c-11のオフ速度が、EM1007-mAb044cのオフ速度と同様であることは、前者のVH内及びVL内における、NG(Asn-Gly)からNA(Asn-Ala)への共時的変異が、結合アフィニティーを損なわないことを示唆する。したがって、ヒト化されたデザインである、HuEM1007-044-16は、アフィニティーを、最もよく保持する一方、また、NGからNAへの変異のいずれも含有するので、二重特異性分子構築物のために使用される。
【0166】
[実施例1.4]
抗OX40抗体の特徴付け
[実施例1.4.1]
エピトープの同定
OX40細胞外ドメインに由来する4つのシステインリッチドメイン(CRD)は、UniProt(識別番号:P43489)から同定され、細胞外OX40の全長型(CRD1~4)、及び切断型OX40変異体である、ΔCRD1(CRD1を欠く)、ΔCRD1~2(CRD1及びCRD2を欠く)、ΔCRD1~3(CRD1、CRD2及びCRD3を欠く)、mCRD1(その中のCRD1ドメインが、マウスCRD1により置きかえられたCRD1~4)、mCRD2(その中のCRD2ドメインが、マウスCRD2により置きかえられたCRD1~4)、mCRD3(その中のCRD3ドメインが、マウスCRD3により置きかえられたCRD1~4)、及びmCRD4(その中のCRD4ドメインが、マウスCRD4により置きかえられたCRD1~4)は、Biointronにより合成された。HuEM1007-044-16、OX40-Tab1(WO2015153513)、OX40-Tab2(WO2020151761)の、OX40又はOX40切断型タンパク質への結合は、関連する結合性エピトープを同定するELISAを使用して解析した。略述すると、96ウェルプレート(Corning、型番:3361)を、OX40変異体の各々により、1ug/mlでコーティングし、これを、4℃で、一晩にわたりインキュベートし、0.05%のTween20を含有するPBSで洗浄し、ブロッキング緩衝液(0.05%のTween20及び2%のBSAを含有するPBS)により、37℃で、2時間にわたりブロッキングした。プレートをコーティングし、ブロッキングしたら、系列希釈抗体を添加し、37℃で、1時間にわたりインキュベートし、3回にわたり洗浄し、次いで、HRP標識化二次抗体を添加した。発色のために、テトラメチルベンジジン(TMB)の発色団溶液を、5分間にわたり添加し、次いで、1MのHClにより、反応をクエンチングした。マイクロプレートリーダー上で、450nmにおける吸光度(OD450)を測定した。
図1aは、上記で記載されたELISAアッセイの結果を示し、OX40-mAbが、CRD3ドメインをターゲティングする一方、OX40-Tab1及びOX40-Tab2は、それぞれ、コンフォメーションエピトープ、及びCRD1ドメイン又はCRD1ドメインを含有するコンフォメーションエピトープをターゲティングすることを示唆する。指定されたCRDドメインが、対応するマウスの対応物で置きかえられたOX40変異体を使用することを除き、別のELISAアッセイも同様に実施したが、
図1bに示された結果は、ヒトCRD1ドメイン、ヒトCRD2ドメイン、及びヒトCRD4ドメインが、Tab2への結合に極めて重要であることをさらに示唆する。
【0167】
[実施例1.4.2]
エフェクターT細胞の選択的増殖
抗OX40抗体のアゴニスト効果を、CD4ナイーブ細胞からの、Tregの分化により測定した。略述すると、市販のキット(Stemcells、型番:17555)を使用して分離されたCD4ナイーブT細胞を、ウェル1つ当たり5×10
6個の細胞で、2μg/mlのOKT3、及び30nMのHuEM1007-044-16でプレコーティングされた6ウェルプレートへと播種した。2μg/mlのCD28(Biolegend、型番:302934)、及び5ng/mlのTGF-ベータを補充した、5日間にわたるインキュベーションの後、FACS解析を利用して、CD25+ Foxp3+ T細胞集団により規定されるTreg細胞集団、及びTreg細胞以外のT細胞集団を評価した。
図2は、HuEM1007-044-16による処置が、エフェクターT細胞の、Treg細胞を上回る選択的増殖を誘導し、30nMの濃度においてもなお、Tregへの極性化を低減したことを示す。
【0168】
[実施例1.4.3]
OX40アゴニストmAb内部化アッセイ
略述すると、ヒトOX40を過剰発現するCHO細胞(CHO-hOX40)5×105個を、96ウェルプレート(Corning、型番:3799)の各ウェルへと播種し、内部化阻害剤を伴うか、又はこれを伴わない多様な濃度のHuEM1007-044-16処置に供した。37℃、60分間にわたるインキュベーションの後、プレートを、複数回にわたり洗浄して、過剰量の抗体を除去し、次いで、secondary Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲートされたヤギ抗ヒトIgG抗体(1:500の新たな希釈、Jackson ImmunoResearch、型番:109-606-098)と共に添加し、室温で、20分間にわたりインキュベートした。別の遠心分離/洗浄ラウンドの後、CytoFLEX Flow Cytometer(Beckman Coulter)上の読取りのために、細胞を、FACS緩衝液中に再懸濁させた。蛍光強度中央値(MFI)のリードアウトを、抗体濃度に対してプロットし、GraphPad Prism 8.0により解析することができる。
【0169】
[実施例2]
抗PD-L1抗体の作出及び特徴付け
抗PD-L1抗体EM0005-mAb86は、WO2021/104434に記載された通りに得た。HEK293細胞による発現、及びプロテインAクロマトグラフィーによる精製の後に、EM0005-mAb86が、10%を超える凝集百分率を示したことは、抗体自体又は結合ドメインとしての抗体を利用する二重特異性分子のCMC開発における難題を示唆する。開発可能性が良好な抗体のために、EM0005-mAb86のVH配列及びVL配列(表6に列挙されている)を利用し、その生物学的活性に対する最小限の影響を伴わずに、又はこれを伴い、全長抗体の物理化学的特性の変更のためのフレームワーク配列の変化、例えば、総電荷を変化させる、疎水性パッチを破壊する、及び/又は親水性を増大させるためのフレームワーク配列の変化を導入した。
【0170】
【0171】
略述すると、そのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3(EM0005-mAb86のVLについては、表6に提示されている)が、V BASEに由来し、CDR-L3の後に、JK4フレームワーク4配列を伴う、多様な生殖細胞系列遺伝子のフレームワーク配列へとグラフトされ、そのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3(EM0005-mAb86のVHについては、表6に提示されている)が、V BASEに由来し、CDR-H3の後に、JH6フレームワーク4配列を伴う、多様なVHフレームワーク配列へとグラフトされるように、EM0005-mAb86のヒト化可変ドメイン配列をデザインした。
【0172】
デザインされたVH遺伝子及びVK(VLカッパ)遺伝子を、合成し、次いでそれぞれ、ヒトIgG1重鎖定常ドメインと、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインとを含有するベクター(実施例1.3に提示された配列)へとクローニングした。ヒト化VH鎖と、ヒト化VK鎖との対合は、1位におけるQ(Gln)からE(Glu)への変異、及び82a位におけるC(Cys)からS(Ser)への変異(Kabatの番号付け)を有することを除き、HuEM0005-86-21と同じ配列を有するようにデザインされた、HuEM0005-86-64と共に、それらのうちの49が、「HuEM0005-86-15」~「HuEM0005-86-63」と命名された、50のヒト化抗体を創出した。「EM0005-86c」のCDR-H2内において、G55A変異を有し、脱アミノ化反応を受けやすく、製造時における異質性を結果としてもたらしうるパターンである、EM0005-mAb86のCDR-H2内の「NG」(Asn-Gly)を回避するために所望されると仮定される、NG(Asn-Gly)からNA(Asn-Ala)への変異による、抗体の結合特性に対する影響を評価するように、さらなるキメラ変異体であるEM0005-86c-1をデザインした。
【0173】
全ての抗体は、HEK293内で、一過性に発現させ、ワンステッププロテインA精製により精製し、SEC-HPLCにより、発現力価及び純度について評価した。精製抗体の不純物は、主に、凝集画分であるので、高純度は、対応する抗体の低凝集傾向を示す。
【0174】
表7に示される通り、力価及び純度に基づき、50のヒト化抗体のうち10を選択し、2つの群において、解離速度定数(koff)について、さらにアッセイした。EM0005-mAb86と同一なVH/VL配列(表6に提示されている)を有するキメラ抗体である、EM0005-86cを、各群における陽性対照として使用し、正規化のための基盤として用いた。略述すると、抗体を、Octet(登録商標)RED96バイオレイヤーインターフェロメトリー(Pall ForteBio LLC)により、アフィニティー及び結合反応速度について特徴付けた。抗体を、100nMの濃度で、120秒間にわたり捕捉した、Anti-hIgG Fc Capture(AHC)Biosensors(Pall)を、ランニングバッファー(1倍濃度のpH7.2 PBS、0.05%のTween20、0.1%のBSA)へと、60秒間にわたり浸漬して、ベースラインを確認し、次いで、単一濃度の組換えヒトPD-L1/His融合タンパク質(Novoprotein、型番:C315)へと浸漬して、200秒間にわたり、結合を測定するのに続き、ランニングバッファーへと浸漬して、600秒間にわたり、解離を測定した。ForteBio Data Analysis software(Pall)を使用して、会合曲線及び解離曲線を、1:1ラングミュア結合モデルへと当てはめた。表7に示されたオフ速度比は、同じ試験群内のEM0005-86cのオフ速度に対する、ヒト化抗体のオフ速度により計算した。オフ速度比は、ヒト化抗体が、試験群を越えて、互いと比較されうるように、正規化指数として用いられる。低度のオフ速度比は、抗体の、ヒトPD-L1に対する高アフィニティーを示す。HuEM0005-86-21を、純度及びオフ速度データに基づく、さらなる探索のために選択した。
【0175】
【0176】
HuEM0005-86-21に基づき、C82aS変異を含むように、HuEM0005-86-64をさらにデザインし、FIT-Ig構築物のために使用した。HuEM0005-86-64の配列を、表8に示す。
【0177】
【0178】
[実施例3]
PDL1/OX40 FIT-Igの作出及び特徴付け
[実施例3.1]
PDL1/OX40 FIT-IgであるFIT1014-20aの構築
親抗体である、HuEM0005-86-64(ヒト化抗PD-L1、表8を参照されたい)、及びHuEM1007-44-16(ヒト化抗OX40、表3及び表4を参照されたい)の免疫グロブリンドメインのコード配列を利用して、FIT1014-20aと命名されたPD-L1/OX40 FIT-Igを構築した。FIT-IgであるFIT1014-20aは、3つのポリペプチド鎖構成要素から構成されるヘキサマーである。
ポリペプチド鎖1は、ドメイン式:変異体のヒトIgG1定常ドメインのFcへと直接融合された、HuEM1007-44-16のVH-CH1へと直接融合された、HuEM0005-86-64のVL-CL;それらの、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)への結合の、約10倍の増大を引き起こす、CH2ドメインの三重変異M252Y/S254T/T256E(「YTE」、EU番号付け)を有する。これは、FIT1014-20aの血清半減期を延長しうる。
ポリペプチド鎖2は、ドメイン式:HuEM0005-86-64のVH-CH1を有し;
ポリペプチド鎖3は、ドメイン式:HuEM1007-44-16の軽鎖(VL-CL)を有する。発現されたFIT1014-20aの3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列を、下記の表9に示す。
【0179】
【0180】
3つのポリペプチド鎖構成要素の各々のアミノ酸配列をコードするDNA分子を合成し、哺乳動物用発現ベクターであるpcDNA3.1へとクローニングした。HEK293E細胞に、3つのポリペプチド鎖構成要素の各々を発現させるための、3つの組換えpcDNA3.1発現ベクターを共トランスフェクトした。トランスフェクションのおよそ6日後、細胞培養物上清を採取し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにかけて、精製PD-L1/OX40 FIT-Ig二重特異性結合タンパク質を得た。
【0181】
[実施例3.2]
PDL1/OX40 FIT-Igの結合活性
FACS結合法
PD-L1/OX40抗体の、ヒトPD-L1を過剰発現するCHO(ATCC、#CCL-61)(CHO-PD-L1)、及びOX40を過剰発現するCHO(CHO-OX40)のそれぞれに対する、細胞への結合アフィニティーを測定した。略述すると、細胞5×105個を、96ウェルプレート(Corning、型番:3799)の各ウェルへと播種した。細胞を、400gで、5分間にわたり遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、各ウェルについて、100nMから始まる抗体の3倍系列希釈液100μlを添加し、細胞と混合した。4℃、60分間にわたるインキュベーションの後、プレートを、複数回にわたり洗浄して、過剰量の抗体を除去した。次いで、Secondary Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲートされたヤギ抗ヒトIgG抗体(1:500の新たな希釈、Jackson ImmunoResearch、型番:109-606-098)を添加し、室温で、20分間にわたり、細胞と共にインキュベートした。別の遠心分離/洗浄ラウンドの後、CytoFLEX Flow Cytometer(Beckman Coulter)上の読取りのために、細胞を、FACS緩衝液中に再懸濁させた。蛍光強度中央値(MFI)のリードアウトを、抗体濃度に対してプロットし、GraphPad Prism 8.0により解析した。
【0182】
図3において示される通り、FIT-1014-20aの、CHO-PD-L1への結合アフィニティーは、どちらかと言えば、その親抗PD-L1モノクローナル抗体(HuEM0005-86-64)の結合アフィニティーに近く、陰性対照である無関連のヒトIgGは、結合を示さなかった。
【0183】
図4に示された、ヒトOX40トランスフェクトCHO細胞への結合についての、FACSによるアフィニティーの結果は、FIT1014-20aが、その親OX40抗体HuEM1007-44-16の結合アフィニティーより、比較的低度の結合アフィニティー(4.3nM対1.8nMのEC50)を有することを示す。
【0184】
PD-L1及びOX40に対するアフィニティー
FIT1014-20aのPD-L1への結合活性は、Octet(登録商標)Red sensing device(ForteBio、Red96)を使用するバイオレイヤーインターフェロメトリーにより検出した。FIT1014-20a(YTE)を、100nMの濃度で、30秒間にわたり捕捉した、Anti-hIgG Fc Capture(AHC)Biosensors(Pall)を、ランニングバッファー(1倍濃度のpH7.2 PBS、0.05%のTween20、0.1%のBSA)へと、60秒間にわたり浸漬して、ベースラインを確認し、次いで、組換えヒトPD-L1-hisタンパク質又は組換えカニクイザルPD-L1-hisタンパク質の系列希釈液(100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM)へと浸漬して、200秒間にわたり、結合を測定するのに続き、ランニングバッファーへと浸漬して、1200秒間にわたり、解離を測定した。ForteBio Data Analysis software(Pall)を使用して、反応速度定数であるKon及びKoffを求めるために、会合曲線及び解離曲線を、1:1ラングミュア結合モデルへと当てはめた。次いで、抗体と、関連する標的タンパク質との間の反応についての平衡解離定数であるKD(M)を、KD=koff/konにより計算した。OX40に対するアフィニティーも、PD-L1-hisタンパク質の代わりに、ヒトOX40又はカニクイザルOX40(300nM、100nM、33.3nM、11.1nM)の使用を除き、同様に検出した。結果を、下記の表10に示す。
【0185】
【0186】
[実施例4]
PD-L1の遮断
[実施例4.1]
PD-1/PD-L1結合の遮断
PD-1/PD-L1結合の遮断は、細胞ベースの受容体遮断アッセイ(RBA)で評価し、ウェル1つ当たり2×10
5個の細胞のCHO-PD-L1細胞100μlを、96ウェル丸底プレート(Corning、型番:3799)へと添加し、0.016nM~50nMで系列希釈された抗体50μl、及び50μg/mlのPD-1-mFc(Novoprotein、型番:C754)50μlを、各ウェルへと添加し、静かに混合し、次いで、4℃で、1時間にわたりインキュベートした。細胞を洗浄し、Alexa Fluor(登録商標)647 anti-maouse IgG(1:500、Jackson ImmunoResearch、型番:115-606-008)により染色した。シグナルは、FACSにより読み取り、曲線は、GraphPad Prism 8.0により当てはめた。
図5において示される通り、FIT1014-20aは、PD-1タンパク質の、PD-L1過剰発現細胞への結合を遮断する効力が、その親抗PD-L1抗体であるHuEM0005-86-64の効力と同様であることを裏付けた。
【0187】
[実施例4.2]
PD-L1媒介阻害性シグナル伝達の遮断
PD-L1による阻害性シグナル伝達の遮断を、CHO-PD-L1-OS8(US8735553に開示されており、OS8をT細胞活性化分子として使用して、PD-L1を安定的に形質導入した)と、ヒトPD-1及びNFAT応答エレメントにより駆動されるルシフェラーゼレポーターの両方を発現するJurkat-PD-1-NFAT-ルシフェラーゼレポーター細胞系との共培養により検討した。略述すると、対数増殖期のCHO-PD-L1-OS8を、採取し、洗浄し、アッセイ培地(10%のFBSを伴うRPMI1640)中に再懸濁させ、ウェル1つ当たり1×10
5個の細胞50μlを、96ウェルプレート(Corning、型番:3799)へと播種し、次いで、ウェル1つ当たり1×10
5個のJurkat-PD-1-NFAT-ルシフェラーゼレポーター細胞50μlを添加した。系列希釈試料抗体50ulを添加し、細胞混合物と共に、37℃で、6時間にわたりインキュベートした。インキュベーションの後、製造元の指示書に従い、ONE-Glo(商標)ルミネセンスアッセイキット(Promega、型番:E6130)試薬を調製し、添加した。Varioskan(商標)LUXマイクロプレートリーダー(ThermoFisher Scientific)上の発光シグナルについて、プレートを読み取った。
図6において示される通り、FIT1014-20aは、PD-L1媒介PD-1下流シグナル伝達の遮断において、その親抗PD-L1抗体である、HuEM0005-86-64と同様の効能を裏付けた。
【0188】
[実施例5]
OX40下流シグナル伝達のPD-L1依存的活性化
OX40下流シグナル伝達のPD-L1依存的活性化を誘導する能力は、CHO-PD-L1を、Jurkat-OX40-NFκB-ルシフェラーゼレポーター細胞系と共に共培養することに続き、PD-L1の架橋を介する、OX40の活性化を検討することにより評価した。ウェル1つ当たり4×10
4個の個の、PD-L1を発現するCHO細胞100μl、及びウェル1つ当たり1×10
5個の、OX40を発現するNFκB-ルシフェラーゼレポーター細胞系100μlを、96ウェルプレート(Corning、型番:3799)へと共播種し、系列希釈抗体50μlと共に、37℃で、6時間にわたりインキュベートした。インキュベーションの終了時に、製造元の指示書に従い、ONE-Glo(商標)ルミネセンスアッセイキット(Promega、型番:E6130)試薬を調製し、添加した。Varioskan(商標)LUXマイクロプレートリーダー(ThermoFisher Scientific)上の発光シグナルについて、プレートを読み取った。図に示される通り、FIT1014-20aが、PD-L1陽性細胞の存在下において、OX40下流NF-Kシグナル伝達経路の活性化を、用量依存的に誘導した(
図7、上)のに対し、親mAbの組合せは、これを誘導しなかった。同じ抗体及びレポーター細胞系を使用するが、PD-L1陰性CHO細胞を伴う並行アッセイを、対照として実施したところ、
図7(下)において示される通り、活性化の欠如は、FIT1014-20aにより誘導された活性化が、PD-L1依存的であることを示す。
【0189】
[実施例6]
T細胞の活性化
[実施例6.1]
初代T細胞によるIFN-γ及びIL2の産生
T細胞の活性化を、CHO-PD-L1-OS8細胞と、初代ヒトT細胞との共培養系における、IFN-γ及びIL2の産生により測定した。略述すると、CHO-PD-L1-OS8を、採取し、洗浄し、アッセイ培地(10%のFBSを伴うRPMI1640)中に、1ml当たり4×10
5個の細胞まで再懸濁させ、細胞100μlを、96ウェルプレート(Corning、型番:3799)へと添加した。市販のヒトT細胞分離キット(Stemcell Technologies、型番:17951)により、T細胞を、ヒトPBMCから精製し、1ml当たり4×10
5個の細胞100μlを、細胞プレートへと添加した。被験抗体と、陰性対照である無関連のヒトIgGとを添加し、細胞混合物と共に、37℃で48時間にわたりインキュベートし、IFN-γ産生の測定のために、PerkinElmer IFN-γ検出キット(PerkinElmer、型番:TRF1217M)を使用して、上清を採取した。インキュベーションの72時間後に、IL-2産生の測定のために、PerkinElmer IL-2検出キット(PerkinElmer、型番:TRF1221M)を使用して、さらなる上清を採取した。
図8に示された、IFN-γ及びIL2の産生に従い、FIT1014-20aは、単一特異性親抗体の組合せと比較して、T細胞を活性化させて、IFN-γ及びIL2の両方を、用量依存的に産生することができた。
【0190】
[実施例6.2]
混合リンパ球反応(MLR)アッセイ
本明細書で記載される二重特異性抗体(BsAb)が、OX40と、PD-L1/PD-1遮断との同時的活性化により、T細胞を相乗作用的に刺激しうるのかどうかを決定するために、報告されている(Tourkvaら、2001)通りに、混合リンパ球反応(MLR)アッセイを設定して、T細胞の活性化に対する効果について評価した。略述すると、単球エンリッチメントキット(Stemcell、19058)により、PBMCから分離された単球を、50ng/mlのGM-CSF(R&D、型番:215-GM-050/CF)、35ng/mlのIL-4(R&D、型番:204-IL-050/CF)を補充された培地(RPMI1640+10%のFBS)中で、6日間にわたり維持した。成熟DCは、20ng/mlのTNF-a (R&D、#210-TA-005/CF)、50μg/mlのPoly I:C (Sigma、#I3036)を補充された培地中のインキュベーションにより誘導し、37℃及び5%CO2で、さらに2日間にわたりインキュベートした。EasySep(商標)ヒトCD4+ Tエンリッチメントキット(Stemcell、型番:17952)により、同種ヒトCD4+ T細胞を、PBMCから分離した。ウェル1つ当たり1×10
5個のCD4+ T細胞100μlを、96ウェル丸底プレート(Corning、型番:3799)へと播種し、ウェル1つ当たり1×10
5個の成熟DC 100μlを、プレートへと添加し、系列希釈抗体と共にインキュベートした。3日後に、上清を回収して、IL-2の産生を、MLR応答のリードアウトとして検出した。
図9に示される、MLRアッセイに由来するIL2レベルは、FIT1014-20aが、IL-2産生の推進において、親抗体の両方の組合せより強力であることを示唆する。
【0191】
[実施例6.3]
ブドウ球菌内毒素B(SEB)アッセイ
T細胞の活性化に対する効果についてのさらなる評価のために、スーパー抗原である黄色ブドウ球菌内毒素B(SEB)を使用する細菌毒素刺激アッセイを行った。略述すると、健常ヒトドナーに由来するPBMC 100μlを、96ウェルアッセイプレートへと、ウェル1つ当たり2×10
5個の細胞で播種し、次いで、被験抗体の系列希釈液50μlを添加し、PBMCと共に、37℃で、30分間にわたりインキュベートした。最終濃度10ng/mlのSEB溶液50μlを添加し、プレートを、96時間にわたり、さらにインキュベートした。PerkinElmer IL-2検出キット(PerkinElmer、型番:TRF1221M)を使用するIL-2の測定のために、細胞培養物上清100μlを回収した。
図10に示された、IL-2レベルにより示される通り、FIT1014-20aは、T細胞の活性化の増強において、その親抗OX40/PD-L1抗体の組合せより強力である。
【0192】
[実施例7]
エフェクター機能を媒介するFcの探索
[実施例7.1]
活性化CD4+細胞に対する補体依存性細胞傷害作用
EasySep(商標)ヒトCD4+ Tエンリッチメントキット(Stemcell、型番:17952)により、ヒトCD4+ T細胞を、PBMCから分離し、T細胞活性化因子(Stemcell、型番:10971)により、3日間にわたり活性化させ、活性化CD4+ T細胞を採取し、1ml当たり1×10
6個の細胞まで希釈し、活性化CD4+ T細胞溶液50μLを、96ウェル細胞プレート(Corning、型番:3799)へと添加し、正常ヒト血清補体50μL(Quidel、型番:A113)を、細胞プレートへと添加し、次いで、系列希釈抗体50μLと共に、無関連のヒトIgG(陰性対照としての)、又は抗HLA(陽性対照として、AntibodyGenie、AGEL1612)を添加した。37℃、5%CO2で、6時間にわたるインキュベーションの後、alamarBlue(商標)Cell Viability Reagent(Thermofisher、型番:DAL1100)を使用して、細胞細胞傷害作用アッセイを実施した。
図11において示される通り、FIT1014-20aが、活性化ヒトCD4+ T細胞に対するいかなる細胞傷害作用ももたらさなかったのに対し、陽性対照である抗HLAは、活性化ヒトCD4+ T細胞に対して、用量依存的細胞傷害作用を示した。
【0193】
[実施例7.2]
CHO-OX40に対する食作用効果
略述すると、CD14+単球を、新鮮なPBMCから分離し、100ng/mlのM-CSF(R&D、216-MC-010/CF)を伴う、6日間にわたるインキュベーションにより、マクロファージへと分化させ、次いで、CellTrace(商標)Far Red(Thermo Fisher Scientific、C34564)で標識化した。96ウェルプレート(Corning、7007)へと、ウェル1つ当たり2×10
5個の、CellTrace(商標)CFSE(Thermo Fisher Scientific、C34554)標識化CHO-OX40細胞100μL、密度4×10
5個のFar red標識化ヒトマクロファージ50μL、及び割り当てられた濃度の抗体50μLを添加し、次いで、37℃で、3時間にわたりインキュベートした。食作用は、フローサイトメトリーを介して、Far red
+細胞中の、CFSE
+細胞の百分率により評価した。
図12において示される通り、FIT1014-20a、及びHuEM1007-044-16(親OX40 mAb)が、食作用効果をほとんどもたらさなかったのに対し、その親である、hIgG1を伴うHuEM1007-044-16のHuEM1007-044-16、及び参照抗体であるOX40-Tab2は、ある程度の食作用効果を示した。
【0194】
[実施例8]
MC38結腸腫瘍保有ヒト化PD-L1/OX40マウスモデルにおける抗腫瘍効能
FIT1014-20aの抗腫瘍効能を、ヒトPD-L1を発現するMC38腫瘍細胞(Shanghai Model Organisms Center Inc.、Shanghai、China)を保有するhPD-L1/hOX40トランス遺伝子同系マウスモデル(Biocytogen、Beijing、China)において検討した。0.1mlのPBS中に懸濁させたPD-L1発現MC38細胞(細胞5×10
6個)を、hPD-L1/hOX40tg雌マウスの右脇腹背側へと、皮下注入した。5日後(0日目)に、マウスを、腫瘍体積(平均を70mm
3とする)に基づく群(n=6)へと無作為に割り当てた。0、3、6、9日目における、被験抗体による腹腔内注射を施した。毎週2回、腫瘍寸法及び体重を測定した。
図13における結果は、FIT1014-20a処置群のマウスが、アテゾリズマブ又は親PD-L1 mAb(HuEM0005-86-64)による単剤療法より優れた腫瘍増殖阻害を示したことを裏付ける。
【0195】
[実施例9]
CT26結腸腫瘍保有ヒト化PD-L1/PD-1/OX40マウスモデルにおける抗腫瘍効能
腹腔内投与後における、FIT1014-20aの、in vivoにおける抗腫瘍活性を、ヒトPD-1/PD-L1/OX40ノックインマウス(GemPharmatech、China)において確立されたCT26-hPD-L1同系腫瘍に対して、さらに探索した。0.1mlのPBS中に懸濁させたPD-L1発現CT26細胞(細胞2.5×10
6個)を、hPD-L1/hPD-1/hOX40トランス遺伝子雌マウスの右脇腹背側へと、皮下注入した。5日後(0日目)に、マウスに、腫瘍体積(平均を80mm
3とする)に基づき、無作為に群分け(n=8)し、0、3、6日目における、被験抗体の腹腔内注射を行った。毎週2回、腫瘍寸法及び体重を測定した。
図14における結果は、FIT1014-20a処置群のマウスが、mAbであるアテゾリズマブによる単剤療法より優れた腫瘍増殖阻害を示したことを裏付ける。
【0196】
【0197】
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