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特表2024-523842黒鉛負極材料、その調製方法及びその使用
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  • 特表-黒鉛負極材料、その調製方法及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】黒鉛負極材料、その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/20 20170101AFI20240625BHJP
   C01B 32/205 20170101ALI20240625BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240625BHJP
【FI】
C01B32/20
C01B32/205
H01M4/587
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575929
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 CN2021133965
(87)【国際公開番号】W WO2022257372
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110646868.9
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520380978
【氏名又は名称】北京低▲タン▼清▲潔▼能源研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲広▼宏
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ 志江
(72)【発明者】
【氏名】梁 文斌
(72)【発明者】
【氏名】▲衛▼ 昶
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 全彬
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AC12A
4G146AC12B
4G146AC14A
4G146AC14B
4G146AC17A
4G146AC17B
4G146AC19B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD01
4G146AD23
4G146AD25
4G146BA25
4G146BB03
4G146BB05
4G146BB08
4G146BC23
4G146BC31A
4G146BC31B
4G146BC33B
4G146CB09
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA16
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、炭素材料の分野に関する。黒鉛負極材料、その調製方法及び使用について開示する。XRDを用いて得られる、黒鉛負極材料のc軸方向の結晶子径L及びa軸方向の結晶子径Lが、以下の条件、30nm≦L≦70nm 式(I)と、50nm≦L≦120nm 式(II)とを満足し、黒鉛負極材料の黒鉛化度が、以下の条件、85≦黒鉛化度≦93 式(III)を満足する。黒鉛負極材料が、高い充放電容量と、高い初期クーロン効率と、優良なレート能力とを有し、その調製方法が、簡易な方法で低コストである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
XRDにより得られる、黒鉛負極材料のc軸方向の結晶子径L及びa軸方向の結晶子径Lが、以下の条件、
30nm≦L≦70nm 式(I)と、
50nm≦L≦120nm 式(II)と、
を満足し、
前記黒鉛負極材料の黒鉛化度が、以下の条件、85≦黒鉛化度≦93 式(III)を満足する、黒鉛負極材料。
【請求項2】
30nm≦L≦50nmである、請求項1に記載の黒鉛負極材料。
【請求項3】
55nm≦L≦100nmである、請求項1又は2に記載の黒鉛負極材料。
【請求項4】
86≦黒鉛化度≦92である、請求項1から3のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料。
【請求項5】
XRDにより得られる、前記黒鉛負極材料の(002)結晶面の面間隔d002が、以下の条件、
0.3350nm≦d002≦0.3380nm 式(IV)、
好ましくは、0.3360nm≦d002≦0.3370nm
を満たす、請求項1から4のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料。
【請求項6】
XRDにより得られる、前記黒鉛負極材料の(110)結晶面のピーク強度I110及び(004)結晶面のピーク強度I004が、以下の条件、
I110/I004が0.30以上 式(V)、
好ましくは、0.35≦I110/I004≦0.85
を満たす、請求項1から5のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料。
【請求項7】
前記黒鉛負極材料の灰分含量が、1000ppm以下であり、好ましくは、500ppm以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料。
【請求項8】
以下の工程、
(1)石炭を粉砕して、石炭粒子を得る工程と、
(2)前記石炭粒子を黒鉛化して、黒鉛負極材料を得る工程と、
を含み、
前記石炭が以下の条件、2以上のビトリナイト反射率、10wt%以下の揮発含量、及び10wt%以下の灰分含量を満たし、黒鉛化条件が、黒鉛化装置における変圧器の実最大供給電力を3,000kW以上に制御することを含み、実最大送電電力の連続送電時間が1時間~100時間である、黒鉛負極材料の調製方法。
【請求項9】
前記石炭が以下の条件、2.35以上のビトリナイト反射率、10wt%以下の揮発含量、及び6wt%以下の灰分含量を満たす、請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
工程(1)中、前記石炭粒子の粒径D50が、1μm~100μm、好ましくは、5μm~30μmであり、
好ましくは、前記方法が更に、前記石炭粒子を成形する工程及び/又は選別する工程を含む、請求項8又は9に記載の調製方法。
【請求項11】
工程(2)が、以下の工程、
(2-1)前記石炭粒子を炭化して、中間体を得る工程と、
(2-2)前記中間体を黒鉛化して、前記黒鉛負極材料を得る工程と
を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項12】
工程(2-1)中、炭化条件が、400℃~1800℃の炭化温度と、1時間~10時間の炭化時間とを含む、請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
工程(2)中、前記黒鉛化条件が、黒鉛化装置における変圧器の実最大供給電力を5,000kW~50,000kWに制御することを含み、実最大送電電力の連続送電時間が5時間~50時間であり、
好ましくは、前記黒鉛化条件が、前記黒鉛化装置における前記変圧器の前記実最大供給電力を10,000kW~30,000kWに制御することを含み、前記実最大送電電力の前記連続送電時間が8時間~40時間である、請求項8から12のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか一項に記載の調製方法によって調製される、黒鉛負極材料。
【請求項15】
リチウムイオン電池、エネルギー貯蔵材料、機械構成要素及び黒鉛電極のうちの少なくとも1つにおける、請求項1から7及び14のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料の適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2021年6月10日に出願した中国特許出願第202110646868.9号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、炭素材料の分野に関し、特に、黒鉛負極材料並びにその調製方法及び適用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池の負極は主として、炭素材料であり、非晶質炭素と、天然黒鉛と、人造黒鉛とを含む。黒鉛は、規則的な層状構造及び優良な電気伝導率を有し、372mAh/gの理論比容量を有し、効率が高く、現在では主流の負極材料である。現在では、人造黒鉛の開発のための原材料は、主として3つの型、等方性コークス、ビチューメン接着剤、及びニードルコークスを含む。等方性コーク系人造黒鉛は、結晶性が低く、等方性が高く、容量が低く、且つ出力が高い。ニードルコークス系人造黒鉛は、容量は高いが、レート能力に比較的乏しく、ビチューメン接着剤は、一般にその2つの中間である。
【0004】
CN104681786Aは、石炭系負極材料について開示する。石炭系負極材料は、石炭系材料が黒鉛化された内層、中間層及び表面に配置された外層で構成される。材料の調製方法は、石炭系材料を粉砕すること、結合剤、又は結合剤と改質剤との混合物を添加すること、並びに、次いで、圧縮及び高温黒鉛化を実施して最終生成物を得ることを含む。
【0005】
CN109319757Aは、中空開口部を有するオニオンカーボンリチウムイオン電池の負極材料の調製方法について開示する。石炭材料は、原材料として使用され、触媒としてのニッケル塩又はニッケル単体物質と混合され、加熱され、それにより、ニッケル塩又はニッケル単体物質が石炭系材料粒子の表面に一様に配置され、冷却後、開口部の黒鉛オニオンカーボン層を、球表面に形成し、最終的に、中空開口部球構造を有する黒鉛オニオンカーボンが、酸塩基処理及び精製の後に得られる。
【0006】
CN107528053Aは、リチウムイオン二次電池のための負極材料、リチウムイオン二次電池のための負極、及びリチウムイオン二次電池について開示する。リチウムイオン二次電池のための負極材料は、炭素材料を含有し、炭素材料は、X線回折によって決定した、0.335nm~0.340nmの平均面間隔d002、1μm~40μmの体積平均粒径(50%D)、74μm未満の最大粒径Dmax、及び300℃~1,000℃未満の温度範囲内に少なくとも2つの発熱ピークを有する一方、空気流において、示差熱分析を実施する。
【0007】
上記の先行技術によって提供される負極材料は、構造と方法が複雑であり、高コストであり、なお、酸、塩基等を処理方法の精製処理のために採用するが、それは、環境に優しくない。より重要なことに、先行技術における負極材料の単一相黒鉛のレート能力は、不十分であり、実需を満たすことができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】CN104681786A
【特許文献2】CN109319757A
【特許文献3】CN107528053A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術における黒鉛負極材料の、複雑な構造、単一相黒鉛の不十分なレート能力、複雑な調製方法及び高コストの課題を克服するために、本発明は、石炭系黒鉛負極材料、その調製方法及び適用を提供する。石炭系黒鉛負極材料は、高い充放電容量と、高い初期クーロン効率と、優良なレート能力とを有し、調製方法が、方法において簡易且つ低コストである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、XRDにより得られる、黒鉛負極材料のc軸方向の結晶子径L及びa軸方向の結晶子径Lが、以下の条件、
30nm≦L≦70nm 式(I)と、
50nm≦L≦120nm 式(II)と、
を満足し、
黒鉛負極材料の黒鉛化度が、以下の条件、
85≦黒鉛化度≦93 式(III)
を満足する黒鉛負極材料を提供する。
【0011】
本発明の第2の態様は、以下の工程、
(1)石炭を粉砕して石炭粒子を得る工程と、
(2)石炭粒子を黒鉛化して黒鉛負極材料を得る工程と、
を含み、
石炭が以下の条件、2以上のビトリナイト反射率、10wt%以下の揮発成分、及び10wt%以下の灰分含量を満たし、黒鉛化条件が、黒鉛化炉変圧器の実最大供給電力を3,000kW以上に制御することを含み、実最大送電電力の連続送電時間が1時間~100時間である、黒鉛負極材料の調製方法を提供する。
【0012】
本発明の第3の態様は、上記の調製方法により調製される、黒鉛負極材料を提供する。
【0013】
本発明の第4の態様は、リチウムイオン電池、エネルギー貯蔵材料、機械構成要素及び黒鉛電極のうちの少なくとも1つにおける、上記の黒鉛負極材料の適用を提供する。
【0014】
上記の技術的解決法に従って、本発明により提供される黒鉛負極材料並びにその調製方法及び適用は、以下の有益な効果を有する。
(1)本発明により提供される黒鉛負極材料は、優良な電気化学的性能を有し、とりわけ、黒鉛負極材料を含む電池の、レート能力を有意に改善することが可能であるが、それは、比較的高い充放電容量と、高い初期クーロン効率とを維持すること、それによってその三者の最良のバランスが達成されることが前提であり、具体的には、黒鉛負極材料の充放電容量が330mAh/g以上であり、初期クーロン効率が90%以上であり、2C/0.2Cで容量保持率が35%以上である。
(2)本発明により提供される黒鉛負極材料は、0.30以上のI110/I004を有し、黒鉛負極材料が、高い等方性を有することを示し、更に、黒鉛負極材料は、小さな結晶子粒径を有し、それによって更に黒鉛負極材料のレート能力が改善される。
(3)本発明の黒鉛負極材料を調製するコストは低く、方法は簡易であり且つ実装し易く、原材料が豊富で、得易い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1に提供される、黒鉛負極材料のTEMの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に開示される範囲の終点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、それらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲について、1つ又は複数の新しい数値範囲は、種々の範囲の終点値、種々の範囲の終点値及び個々の点の値、並びに個々の点の値を組み合わせることによって得ることが可能であり、これらの数値範囲は、本明細書に具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0017】
本発明の第1の態様は、XRDにより得られる、黒鉛負極材料のc軸方向の結晶子径L及びa軸方向の結晶子径Lが、以下の条件、
30nm≦L≦70nm 式(I)と、
50nm≦L≦120nm 式(II)と、
を満足し、
黒鉛負極材料の黒鉛化度が、以下の条件、85≦黒鉛化度≦93 式(III)を満足する黒鉛負極材料を提供する。
【0018】
本発明において、上記の条件を満たす黒鉛負極材料は、高い等方性及び小さな結晶子粒径の特徴を有し、それにより、短い経路を有する多くのチャネルにおいて、リチウムイオンを挿入し脱離することが可能であり、黒鉛負極材料を含む電池のレート能力を有意に改善することが可能であるが、それは、比較的高い充放電容量と、高い初期クーロン効率とを維持すること、それによってその三者の最良のバランスが達成されることが前提である。
【0019】
本発明において、黒鉛負極材料は、石炭系黒鉛負極材料である。
【0020】
本発明において、黒鉛負極材料の黒鉛化度Gは、以下の式、
G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)
に従って計算し、式中、d002値は、ブラッグの式によって計算する。
【0021】
本発明において、図1に示す通り、黒鉛負極材料は、均質である。
【0022】
更に、30nm≦L≦50nmであるとき、黒鉛負極材料のレート能力と、充放電容量と、初期クーロン効率とが更に改善される。
【0023】
更に、55nm≦L≦100nmであるとき、黒鉛負極材料のレート能力と、充放電容量と、初期クーロン効率とが更に改善される。
【0024】
更に、86≦黒鉛化度≦92であるとき、黒鉛負極材料のレート能力と、充放電容量と、初期クーロン効率とが更に改善される。
【0025】
本発明によると、XRDにより得られる、黒鉛負極材料の(002)結晶面の面間隔d002が、以下の条件、
0.3350nm≦d002≦0.3380nm 式(IV)
を満たす。
【0026】
本発明によると、(002)結晶面の面間隔d002が、0.3360nm≦d002≦0.3370nmを満たすとき、黒鉛負極材料は、より優良な総合的な性能を有する。
【0027】
本発明によると、XRDにより得られる、黒鉛負極材料の(110)結晶面のピーク強度I110及び(004)結晶面のピーク強度I004は、以下の条件、
I110/I004が0.30以上 式(V)
を満たす。
【0028】
本発明において、上記の条件を満たす黒鉛負極材料の等方性が更に増加し、その結果、黒鉛負極材料のレート能力が、更に改善される。
【0029】
更に、0.35≦I110/I004≦0.85であるとき、黒鉛負極材料は、より優良なレート能力を有する。
【0030】
本発明によると、黒鉛負極材料の灰分含量は、1000ppm以下である。
【0031】
本発明において、黒鉛負極材料の灰分含量は、GB/T3521における方法によって測定する。本発明により提供される黒鉛負極材料は、低い灰分含量を有し、それにより、黒鉛負極材料の全体的な均質性を有意に改善することが可能である。
【0032】
更に、黒鉛負極材料の灰分含量が、500ppm以下である。
【0033】
本発明の第2の態様は、以下の工程、
(1)石炭を粉砕して石炭粒子を得る工程と、
(2)石炭粒子を黒鉛化して黒鉛負極材料を得る工程と、
を含み、
石炭が以下の条件、2以上のビトリナイト反射率、10wt%以下の揮発成分、及び10wt%以下の灰分含量を満たし、黒鉛化条件が、黒鉛化炉変圧器の実最大供給電力を3000kW以上に制御することを含み、実最大送電電力の連続送電時間が1時間~100時間である、黒鉛負極材料の調製方法を提供する。
【0034】
本発明において、黒鉛化装置は、当該産業分野において一般に使用される黒鉛化装置であってよく、具体的には、黒鉛化装置を、アチソン炉、箱型炉、内部シリーズ炉(inner-series furnace)、縦型黒鉛化炉及び横型黒鉛化炉のうちの少なくとも1つから選択してよい。
【0035】
本発明によると、石炭を原材料として使用して、低コスト且つ固有のマイクロナノ構造を有する黒鉛負極材料を開発し、本発明により提供される方法に従って黒鉛負極材料を調製するとき、石炭の、高付加価値利用並びにクリーンで効率的な転用を達成することが可能である。
【0036】
本発明において、上記の条件を満たす石炭が黒鉛負極材料を調製するための原材料として選択されるとき、調製される黒鉛負極材料は、中程度の黒鉛化度を有し、小さな結晶子粒径及び高い等方性の特徴を有し、それによって、黒鉛負極材料の、レート能力と、充放電容量と、初期クーロン効率とが有意に改善される。
【0037】
本発明において、石炭のビトリナイト反射率を、国家標準の方法GB/T 6948によって測定し、石炭の揮発成分含量及び灰分含量を両方、国家標準の方法GB/T 30732によって測定する。
【0038】
本発明によると、石炭が以下の条件、2.35以上のビトリナイト反射率、10wt%以下の揮発成分、及び6wt%以下の灰分含量を満たす。
【0039】
本発明において、当該分野における従来の装置、例えば、ジェットミルを使用して石炭を粉砕してよい。
【0040】
本発明によると、工程(1)中、石炭粒子の粒径D50は、1μm~100μm、好ましくは、5μm~30μmである。
【0041】
本発明によると、方法が更に、石炭粒子を、成形する工程及び/又は選別する工程を含む。
【0042】
本発明によると、工程(2)は、以下の工程、
(2-1)石炭粒子を炭化して中間体を得る工程と、
(2-2)中間体を黒鉛化して黒鉛負極材料を得る工程と、
を含む。
【0043】
本発明において、黒鉛化処理の前に、石炭粒子の炭化により、石炭粒子における揮発成分又は灰分を除去して、黒鉛化方法における揮発成分又は灰分の流出により生じる凝集を回避することが可能な一方、生成物の黒鉛化度を改善することが可能であり、その結果、黒鉛負極材料を含む電池の、充放電容量と、初期クーロン効率とは高くなるため、容量と、効率と、レート能力との最良のバランスを達成する。
【0044】
本発明によると、工程(2-1)中、炭化条件は、400℃~1,800℃の炭化温度と、1時間~10時間の炭化時間とを含む。
【0045】
本発明において、炭化は、不活性雰囲気の存在下で実施する。
【0046】
本発明によると、工程(2)中、黒鉛化条件は、黒鉛化装置における変圧器の実最大供給電力を5,000kW~50,000kWに制御することを含み、実最大送電電力の連続送電時間は5時間~50時間である。
【0047】
更に、黒鉛化条件は、黒鉛化装置における変圧器の実最大供給電力を10,000kW~30,000kWに制御することを含み、実最大送電電力の連続送電時間は8時間~40時間である。
【0048】
本発明の第3の態様は、上記の調製方法により調製される、黒鉛負極材料を提供する。
【0049】
本発明の第4の態様は、リチウムイオン電池、エネルギー貯蔵材料、機械構成要素及び黒鉛電極のうちの少なくとも1つにおける、上記の黒鉛負極材料の適用を提供する。
【0050】
本発明において、上記の黒鉛負極材料を含むリチウムイオン電池は、優良な電気化学的性能を有し、具体的には、上記の黒鉛負極材料を含むリチウムイオン電池は、330mAh/g以上の充放電容量と、90%以上の初期クーロン効率と、2C/0.2Cで35%以上の容量保持率とを有する。
【0051】
本発明を、実施形態を用いて、以下に詳細に説明する。
(1)XRD分析
黒鉛負極材料のXRD分析
面間隔d002、L、L及びI110/I004は全て、Bruker AXS社のD8 Advance型X線回折計によって試験し、分析する。XRDは、シリコン内部標準法を用いて、キャリブレーションし、d002値を、ブラッグの式2dsinΘ002=nλによって計算し、LとLとを、シェラーの式によって計算した。
(2)粒径(D10、D50、D90
50を、Malvern Instruments社のMalvern Mastersizer 2000レーザー粒径計測器によって得た。
(3)黒鉛負極材料の形態を、透過型電子顕微鏡(TEM)によって特徴付けた。
TEMの写真を、JEOL社のARM200F透過型電子顕微鏡を介して試験することによって得た。
(4)電池性能
電池の充放電容量及び初期クーロン効率を、Wuhan Land Electronics社の電池試験系のCT2001A電池試験装置に通し、0.1C(1C=350mAh/g)の電流と0V~3Vの電圧で充放電試験に供した。
(5)石炭のビトリナイト反射率を、国家標準の方法GB/T 6948によって測定し、石炭の揮発成分含量及び灰分含量を両方、国家標準の方法GB/T 30732によって測定した。
【実施例1】
【0052】
(1)石炭(2.445のビトリナイト反射率、7.7wt%の揮発含量、及び2.6wt%の灰分含量)を粉砕機によって粉砕し、10μmのD50を有する粉末を得、次いで、その粉末を選別して石炭粒子を得た。
(2-1)石炭粒子を、1000℃で不活性ガス中2時間炭化し、中間体を得た。
(2-2)中間体を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は22,000kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は20時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物A1を得た。
【0053】
黒鉛負極材料のTEMの写真は、図1に示す通りであった。図1から、生成物A1は、高い等方性及び小さな結晶子粒径を有することが分かる。
【実施例2】
【0054】
(1)石炭(2.445のビトリナイト反射率、7.7wt%の揮発含量、及び2.6wt%の灰分含量)を粉砕機によって粉砕し、10μmのD50を有する石炭粉末を得た。
(2-1)石炭粒子を、1000℃で不活性ガス中2時間炭化し、中間体を得た。
(2-2)中間体を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は22,000kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は35時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物A2を得た。
【実施例3】
【0055】
(1)石炭(2.445のビトリナイト反射率、7.7wt%の揮発含量、及び2.6wt%の灰分含量)を粉砕機によって粉砕し、10μmのD50を有する石炭粉末を得た。
(2-1)石炭粒子を、1,000℃で不活性ガス中2時間炭化し、中間体を得た。
(2-2)中間体を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は22,000kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は10時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物A3を得た。
【実施例4】
【0056】
(1)石炭(2.445のビトリナイト反射率、7.7wt%の揮発含量、及び2.6wt%の灰分含量)を粉砕機によって粉砕し、10μmのD50を有する石炭粉末を得た。
(2-1)石炭粒子を、1000℃で不活性ガス中2時間炭化し、中間体を得た。
(2-2)中間体を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は10,000kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は20時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物A4を得た。
【実施例5】
【0057】
(1)石炭(2.269のビトリナイト反射率、6.83wt%の揮発含量、及び9.3wt%の灰分含量)を粉砕機によって粉砕し、10μmのD50を有する粉末を得、次いで、その粉末を選別して石炭粒子を得た。
(2-1)石炭粒子を、1000℃で不活性ガス中2時間炭化し、中間体を得た。
(2-2)中間体を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は22,000kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は20時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物A5を得た。
【実施例6】
【0058】
(1)石炭(2.269のビトリナイト反射率、6.83wt%の揮発含量、及び9.3wt%の灰分含量)を粉砕機によって粉砕し、10μmのD50を有する粉末を得、次いで、その粉末を選別して石炭粒子を得た。
(2-1)石炭粒子を、1000℃で不活性ガス中2時間炭化し、中間体を得た。
(2-2)中間体を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は5,000kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は20時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物A6を得た。
【実施例7】
【0059】
(1)石炭(2.269のビトリナイト反射率、6.83wt%の揮発含量、及び9.3wt%の灰分含量)を粉砕機によって粉砕し、10μmのD50を有する粉末を得、次いで、その粉末を選別して石炭粒子を得た。
(2-1)石炭粒子を、1000℃で不活性ガス中2時間炭化し、中間体を得た。
(2-2)中間体を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は22,000kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は5時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物A7を得た。
【実施例8】
【0060】
実施例1の方法に従って黒鉛負極材料を調製したが、ただし、工程(2-1)における炭化条件が、実施例1のものとは異なっていたことを除く。具体的には、炭化温度が400℃であり、時間が、0.5時間であった。
【実施例9】
【0061】
実施例1の方法に従って黒鉛負極材料を調製したが、ただし、工程(2-1)における炭化条件が、実施例1のものとは異なっていたことを除く。具体的には、炭化温度が2200℃であり、時間が、15時間であった。
【実施例10】
【0062】
(1)石炭(2.445のビトリナイト反射率、7.7wt%の揮発含量、及び2.6wt%の灰分含量)を粉砕機によって粉砕し、10μmのD50を有する石炭粉末を得た。
(2)石炭粒子を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は22,000kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は20時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物A10を得た。
【0063】
比較例1
(1)石炭(1.947のビトリナイト反射率、12.5wt%の揮発含量、及び9.4wt%の灰分含量)をジェットミルによって粉砕し、10μmのD50を有する石炭粉末を得た。
(2-1)石炭粒子を、1000℃で不活性ガス中2時間炭化し、中間体を得た。
(2-2)中間体を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は22,000kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は20時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物D1を得た。
【0064】
比較例2
(1)石炭(2.445のビトリナイト反射率、7.7wt%の揮発含量、及び2.6wt%の灰分含量)をジェットミルによって粉砕し、10μmのD50を有する石炭粉末を得た。
(2-1)石炭粒子を、1000℃で不活性ガス中2時間炭化し、中間体を得た。
(2-2)中間体を黒鉛化炉で黒鉛化し、黒鉛化炉において、変圧器の実最大供給電力は600kWであり、実最大伝送電力の連続送電時間は20時間であり、黒鉛負極材料を得、ふるいにかけて生成物D2を得た。
【0065】
比較例3
実施例1の方法に従って負極材料を調製したが、ただし、石炭をピッチコークスに置き換えたことを除く。負極材料D3を調製した。
【0066】
実施例及び比較例において調製した黒鉛負極材料を特徴付けし、結果は、下の表1において見ることができる。
【0067】
【表1】
【0068】
試験例
実施例及び比較例において調製した負極材料を、導電性カーボンブラックSuper P及び結合剤ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)と、92:3:5の質量比で一様に混合し、次いで、溶媒N-メチルピロリドン(NMP)を添加し、撹拌して均一な負極スラリーにし、アルミホイルの上にスクレーパで一様にコーティングし、乾燥させて負極板を得、その板を小さく切り分け、次いで、MBraun 2000グローブボックス(Ar雰囲気、HOとOとの濃度が0.1×10-6vol%未満である)に移し、次いで、参照電極として、金属リチウム板を使用して、ボタン電池に組み込んだ。ボタン電池の電気化学的性能を試験し、試験結果は、表2において見ることができる。
【0069】
【表2】
【0070】
表1及び表2の結果から、本発明の実施例1~10で調製した石炭系負極材料で製造された電池の充放電容量と、初期クーロン効率とは、より良好であり、電池の、充放電容量と、初期クーロン効率と、レート能力との最良のバランスを達成することが可能であることが分かる。
【0071】
上記のようなものが本発明の好ましい実施形態であるが、本発明は、これらの実施形態に限定されない。本発明の技術概念の範囲内で、本発明の技術的解決策に対して、任意の他の適切な仕方での種々の技術的特性の組合せを含む、多くの簡易な修正を行うことが可能である。これらの簡易な修正及び組合せもまた、本発明によって開示される内容と見なされ、本発明の保護範囲に属するものとする。
図1
【国際調査報告】