(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】遷移金属酸化物還元のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
B22F 9/20 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B22F9/20 E
B22F9/20 Z
B22F9/20 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576012
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 IL2022050754
(87)【国際公開番号】W WO2023286061
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523461542
【氏名又は名称】ヘリオス プロジェクト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハウスナー,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ジーフマン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】エリアド,リノアム
(72)【発明者】
【氏名】ゴフェー,ヨッシ
(72)【発明者】
【氏名】ハーシュ,バルーク
(72)【発明者】
【氏名】ロリ,オーラン
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017BA01
4K017BA03
4K017BA04
4K017BA05
4K017BA06
4K017BA07
4K017BA10
4K017EH18
4K017FB03
4K017FB04
4K017FB11
(57)【要約】
本開示は、一般に、還元遷移金属を生産するためにアルカリ金属を使用する遷移金属の還元のためのプロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属酸化物の還元のためのプロセスであって:
(a)式M
T
nO
m(式中、nおよびmの各1つは、1、2、3、4、5、6または7であり、M
Tは:Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnから選択される第一列遷移金属である)を有する少なくとも1つの遷移金属酸化物を提供するステップ;
(b)反応器内で前記遷移金属酸化物をアルカリ金属(M
A)と接触させ、前記反応器内の温度を温度Tに調節して、反応スキームIおよびII:
【化1】
の2つの反応順序を誘導し、そのため、前記2つの反応順序から得られる正味の反応であるIII
【化2】
が、前記アルカリ金属を消費せず、得られる反応混合物が、還元遷移金属であるM
T、またはその合金、前記アルカリ金属、および場合によっては酸素を含むステップ
(式中、M
Aは、NaまたはKである;および温度Tは、前記アルカリ金属の融点より高く、M
A
2Oの分解温度以上である);ならびに
(c)前記還元遷移金属またはその合金を、前記反応混合物から単離するステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
ステップ(a)が、前記少なくとも1つの遷移金属酸化物を前記反応器に連続的に提供するステップを含み、そのため、ステップ(a)で提供される総遷移金属酸化物が、ステップ(b)の前記アルカリ金属よりもモル過剰であり、前記モル過剰が、少なくとも400%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
温度Tが、前記アルカリ金属の沸点以上であり、ステップ(c)の前記単離が、前記反応器から前記アルカリ金属を蒸発させる必要があり、さらに、前記単離された遷移金属またはその合金を回収するステップ(d)を含む、請求項1または2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
さらに、前記蒸発させたアルカリ金属を凝縮するステップ(e);および前記凝縮したアルカリ金属を前記反応器に移し、それによって前記アルカリ金属をリサイクルするステップ(f)を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
(a)前記少なくとも1つの遷移金属酸化物を提供するステップ
(b)温度Tで前記遷移金属酸化物をアルカリ金属と組み合わせ、前記2つの反応順序を誘導するステップ;
(c)前記反応器から前記アルカリ金属を蒸発させて、単離された遷移金属またはその合金を生産するステップ;
(d)前記単離された遷移金属またはその合金を回収するステップ;
(e)前記蒸発させたアルカリ金属を凝縮するステップ;および
(f)前記凝縮した遷移金属を前記反応器に移すステップ
を含み、
ステップ(e)が、ステップ(d)の前に行われる場合があり、さらに、少なくとも1つの追加の順序のために、ステップ(a)~(d)を繰り返すステップを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
M
Tが:Fe、Ni、Cr、Cu、ZnおよびMnからなる群より選択される第一列遷移金属である、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
M
Tが、Feである;
M
T
nO
mが、Fe
2O
3、FeO、Fe
3O
4またはそれらの組み合わせである;ならびに反応スキームIおよびIIIが:
【化3】
または
【化4】
または
【化5】
である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
M
TがNiである;
M
T
nO
mがNiOであり、反応スキームIおよびIIIが:
【化6】
である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
M
Tが、Crである;
M
T
nO
mが、Cr
2O
3、CrO、CrO
3またはそれらの組み合わせである;ならびに反応スキームIおよびIIIが:
【化7】
または
【化8】
または
【化9】
である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
M
Tが、Cuである;
M
T
nO
mが、Cu
2O、CuO、CuO
2、またはそれらの組み合わせである;ならびに反応スキームIおよびIIIが:
【化10】
または
【化11】
または
【化12】
である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項11】
M
Tが、Znである;
M
T
nO
m ZnO;ならびに反応スキームIおよびIIIが:
【化13】
である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項12】
M
Tが、Mnである;
M
T
nO
mが、MnO、Mn
3O
4、Mn
2O
3、MnO
2、Mn
2O
7またはそれらの組み合わせである;ならびに反応スキームIおよびIIIが:
【化14】
または
【化15】
または
【化16】
または
【化17】
または
【化18】
である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項13】
金属合金の調製のためのものであり、
ステップ(a)が、式M
Ta
nO
m、および式M
Tb
iO
j(式中、iおよびjの各1つは、1、2、3、4、5、6または7であり、M
Ta、M
Tbの各1つは:Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる群より選択される遷移金属である)を有する少なくとも2つの遷移金属酸化物を提供するステップを含む;ならびに
ステップ(b)が、前記遷移金属酸化物を前記アルカリ金属と組み合わせるステップを含み、反応スキームIおよびIIIが:
【化19】
である;ならびにステップ(b)がさらに、合金を形成する反応IV:
【化20】
を誘導した、
請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記アルカリ金属がナトリウムであり、スキームIIが:
【化21】
である、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
Tが、少なくとも540℃である、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップ(c)が、前記反応器から前記アルカリ金属および酸素を蒸発させて、単離された遷移金属またはその合金を、少なくとも90%w/wの純度で生産するステップを含む、請求項5から15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記遷移金属が、Fe、Co、NiまたはCuであり、その純度が、少なくとも99%w/wである、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
ステップ(b)の前記反応混合物が、追加の溶媒および担体を実質的に含まず、本質的に、前記遷移金属酸化物、前記アルカリ金属および前記生成物である還元遷移金属またはその合金からなる、請求項1から17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップ(b)の前記2つの反応順序が、空気および水から保護された環境で実行される、請求項1から18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
さらに:
反応チャンバを定義する筐体、および
遷移金属酸化物入口、アルカリ金属入口、アルカリ金属出口および単離された遷移金属もしくは合金の出口を含み、前記入口および出口のそれぞれが、前記反応チャンバと流体連絡している、
反応器;
アルカリ金属入口およびアルカリ金属出口を含むアルカリ金属容器;
遷移金属入口を含む単離された遷移金属もしくは合金の容器;
前記蒸発させたアルカリ金属を凝縮するように構成され、前記反応器の前記アルカリ金属出口と接続した近位端、および前記アルカリ金属容器の前記アルカリ金属入口と接続した遠位端を含む、コンデンサ;
前記反応器の前記アルカリ金属入口と接続した近位端、および前記アルカリ金属容器の前記アルカリ金属出口と接続した遠位端を含むアルカリ金属移送管;
前記反応器の前記遷移金属出口と接続した近位端、前記単離された遷移金属または合金の容器の前記遷移金属入口と接続した遠位端を含む遷移金属移送管
を含むシステムを提供するステップを含む、請求項5から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記反応器がさらに、不活性ガス入口およびガス出口を含み、それぞれ前記反応チャンバと流体連絡しており、前記不活性ガス入口が、不活性ガス源と流体連絡している、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
(a)前記遷移金属酸化物入口を通って前記少なくとも1つの遷移金属酸化物を前記反応チャンバに提供するステップ;
(b)前記反応チャンバ内で前記遷移金属酸化物をアルカリ金属と組み合わせて、前記2つの反応順序を誘導するステップ;
(c)前記反応器の前記アルカリ金属出口を通って前記アルカリ金属を蒸発させて、単離された遷移金属またはその合金を生産するステップ;
(d)前記遷移金属移送管を通って前記単離された遷移金属またはその合金を前記単離された遷移金属または合金の容器に移すステップ;
(e)前記コンデンサを使用して前記蒸発させたアルカリ金属を前記アルカリ金属容器に凝縮するステップ;
(f)前記アルカリ金属移送管を通って前記アルカリ金属容器から前記凝縮したアルカリ金属を前記反応器に移すステップ
を含み、
ステップ(e)が、ステップ(d)の前に行われる場合がある、
請求項20から21いのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
ステップ(b)がさらに、前記不活性ガス入口を通って不活性ガスを前記反応チャンバに挿入し、それによって、空気から保護された反応環境を維持するステップを含む、請求項21から22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
ステップ(b)、ステップ(c)またはその両方がさらに、前記反応器の前記ガス出口を通って形成された酸素ガスを排気させるステップを含む、請求項21から23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記コンデンサがさらに、その近位端と遠位端との間に配置された一方向弁を含み、前記弁が、前記レクターから前記アルカリ金属容器への蒸発させたアルカリ金属の前記流れを調節するように構成されている;
前記アルカリ金属移送管がさらに、その近位端と遠位端との間に配置された一方向弁を含み、前記弁が、前記アルカリ金属容器から前記レクターへの凝縮したアルカリ金属の前記流れを調節するように構成されている;
前記遷移金属移送管がさらに、その近位端と遠位端との間に配置された一方向弁を含み、前記弁が、前記レクターから前記単離された遷移金属または合金の容器への単離された遷移金属または金属合金の前記流れを調節するように構成されている、
請求項21から24のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、還元遷移金属を生産するためにアルカリ金属を使用する遷移金属の還元のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
金属(亜鉛、鉄、ニッケル、鉛、クロム、パラジウム、銅および銀など)の生産は、通常、電気化学的に、または/および炭素熱還元により、大規模で実行される。結果として、通常は非常に汚染性が高く、再利用不可能な触媒および試薬を使用する。さらに、電気化学的還元プロセスには多くの困難があるため、多くの場合、高価でエネルギーを消費する。従来の金属生産プラントは大きく、構造および操作のための巨額の設備投資を必要とする。多くの場合いくつかのステップで実行される、一般に使用される製錬プロセスおよび他の金属抽出プロセスは、エネルギーを大量に消費し、二酸化炭素(CO2)および他の汚染物質を大量に発生する。
【0003】
一般に使用されるニッケル生産方法には、反射炉と、その後に続く電解精錬が含まれる。
【0004】
環境フットプリントが実質的に低下し、エネルギー需要が低い、高品質の鉄(例えば)の生産について、数多くの代替物が提案されていた。最も求められ研究されている概念は、電気化学精製および電解採取に基づく技術である。
【0005】
米国特許出願公開第2020/0263313号明細書は、溶融酸化物電解のためのシステムおよび方法を開示する。米国特許出願公開第2020/0263313号明細書による冶金アセンブリおよびシステムは、側部と基部を含む耐火性容器を含む場合がある。基部は、基部内の中央に配置された複数の開口を規定する場合がある。側部および基部は、耐火性容器の内部容積を少なくとも部分的に規定する場合がある。アセンブリは、耐火性容器と取り外し可能に連結され、耐火性容器とシールを形成するように構成された蓋を含む場合がある。蓋は、蓋を通る複数の開口を規定する場合がある。アセンブリはまた、耐火性容器の基部の近傍に集電体を含む場合がある。集電体は、基部内の中央に配置された複数の開口の中に位置する導電性エクステンションを含む場合がある。
【0006】
国際公開第2011/092516号は、鉄鉱石からの鉄または鉄合金の調製のための方法を開示し、その方法は、少なくとも1つの溶融塩を含み、場合によっては溶解した金属を含む電解浴中で溶解した鉄鉱石を電解するステップ、ならびに得られる鉄金属または鉄鋼を分離するステップを含む。少なくとも1つの溶融塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の塩から選択される。国際公開第2011/092516号の方法は、電解採取プロセスまたは液体/液体金属抽出プロセスのいずれかを含む。
【0007】
米国特許第8,764,962号明細書は、標的元素の酸化物供給原料から標的元素を抽出する方法であり、その方法は:少なくとも75重量%の1つまたは複数の酸化物化合物を含む液体酸化物電解質を提供するステップであって、その中で、酸化物供給原料が溶解し、イオン性酸素種およびイオン性標的元素種を形成するステップ;1つの元素が、金属陽極基板の少なくとも50重量%を構成し、1つの元素が標的元素よりも酸素に対してより高い反応性があり、標的元素、金属陽極基板および電解質からなる群より選択される1つもしくは複数の酸化物を含む固形の酸化物層を有する金属陽極基板を含む陽極であって、電解質と接触している陽極を提供するステップ;電解質と接触している陰極を提供するステップ;気体酸素を形成するように金属基板の上の固形の酸化物層を横切って金属基板に電解質中のイオン性酸素種からの電子を運ぶステップ;ならびに電解質中のイオン性標的元素種を還元して、陰極で、溶融温度が1200℃を超える標的元素の液体を形成するステップを含む。
【0008】
多数の中規模の電解ベースのプラント/反応器は、構築されていた。しかし、構築材料、電極および溶融物の電気伝導性の問題があり、従来の製錬所を超える追加の価値を保持するものを示したことはなかった。具体的には、電解ベースの還元は、これまで成功しておらず、2030年までに鉄鋼生産を脱炭素化するというEUの要求に合致することができない。
【0009】
同様に、鉄鉱および他の関連金属および合金のための水素ベースの還元プロセスは、依然として、そのような脱炭素化の要求に合致させるために、主要な技術的障壁を克服する必要がある。
【0010】
電解および水素還元を回避し、エネルギー効率がよく、費用効果が高い、金属生産のための環境に配慮したプロセスについての長年の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
以下の実施形態およびその態様は、組成物および方法と組み合わせて説明および例証され、例示および例証することを意味し、範囲を限定しない。種々の実施形態において、1つまたは複数の上述した問題は、縮小または排除されているが、他の実施形態は、他の利点または改善に向けられている。
【0012】
本発明は、対応する遷移金属酸化物から遷移金属およびその合金の生産のためのプロセスを提供する。本プロセスは、遷移金属を調製するための対応するプロセス(例えば電解)と比較して単純で費用効果が高く、結果として、通常高純度の金属となる。
【0013】
本開示全体にわたり、用語「金属」は、金属酸化物または金属酸化物の構成要素(すなわち金属カチオン)と指定されない限り、金属元素のゼロ酸化状態を指すことが理解されるべきである。
【0014】
本発明は、個々の反応の2つの反応順序を使用し、驚いたことに、いくらかの実施形態によれば、反応順序(例えば、共有した反応または反応系内)に親和性があり、結果として単純なプロセス、ならびに高収率および純度となる相乗効果を生じることが認められた。第1の反応(反応I)は、アルカリ金属を使用する遷移金属酸化物の還元の還元であり、場合によっては、反応はニートである(すなわち、反応混合物は、本質的に、遷移金属酸化物およびアルカリ金属からなる)。具体的には、アルカリ金属は、遷移金属よりも酸化還元電位が低い(より負である)ことが既知であり、スキームI:
【0015】
【0016】
(式中、MTは、遷移金属原子である;nおよびmは、整数(例えば1~7)であり、MAは、アルカリ金属である)の酸化還元反応を促進する。
【0017】
したがって、第1の反応では、いくらかの実施形態によれば、所望の生成物である遷移金属およびアルカリ金属酸化物が生じる。好都合には、アルカリ金属の融点を超える温度Tでの反応を実行すると、反応混合物が得られ、そこで、アルカリ金属は流体の状態であり、そのため、遷移金属酸化物に対して反応性が非常に高い。また、アルカリ金属の融点が比較的低く(Naは97.8℃;Kは63.5℃)、スキームIの酸化還元反応が、発熱性であり、外部エネルギーの最小限の投入で、2つの反応順序を促進することは好都合である。
【0018】
最後に、ナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属は、自然界に存在しないが、電解を通じたそれらの調製は便利であり、それらは通常、鉱石として提供され、溶液中での電解が困難であるといった遷移金属酸化物の直接電解還元のハードルに困ることはない。さらに、ナトリウムおよびカリウム金属は、自然界に豊富に存在するそれらの塩、それぞれNaClおよびKCl)から電気化学的に生産される。これらの金属は通常、塩素ガス工業の工業副産物であると考えられている。そのため、それらの使用は、正味のエネルギーを消費せず、むしろ、廃棄努力および関連する環境破壊を回避する。
【0019】
第2の反応(反応II)は、上述した前の反応で形成されたアルカリ金属酸化物の熱分解である。具体的には、これはスキームII:
【0020】
【0021】
に描かれている。
【0022】
有利には、アルカリ金属酸化物の分解温度は、それほど高くはなく(Naは約540℃;Kは約300℃)、その低い融解温度と共同させて、反応Iの発熱性は、有意な相乗効果となり、遷移金属生産のための既知のプロセスよりも本プロセスに大きく寄与する。
【0023】
本プロセスのさらに別の利点は、2つの反応順序の組み合わせから生じる正味の反応にある。具体的には、反応Iおよび反応IIの正味の反応スキームは、反応スキームIII(スキームIIにmを掛けて方程式を釣り合わせると):
【0024】
【0025】
として以下に示される;
【0026】
当業者であればすぐに理解することができるように、正味の反応スキームIIIでは、アルカリ金属は消費される反応物質として含まれるのではなく、触媒として使用される。これは、非常に好都合である。第1に、化学的および商業的に大規模の合成において材料をリサイクルすることは、材料の消費を回避することで環境保全につながることが認識されているように、今日、非常に重要である。第2に、アルカリ金属が正味反応しないので、反応の唯一の副産物は、無害な気体である酸素であり、生産された遷移金属から分離するのも容易である。
【0027】
本プロセスのさらに別の利点は、遷移金属に対するアルカリ金属の相対的不活性度に関し、それによって、アルカリ金属・遷移金属合金は、高温であっても形成されない。アルカリ金属の比較的低沸騰温度(Naは882.8℃;Kは758.8℃、減圧下でより低い)および第一列遷移金属の高沸点(例えばFeは2,862℃;Niは2,730℃;Cuは2,562℃)を組み合わせると、生成物である遷移金属は、反応完了時に酸素およびアルカリ金属を蒸発させることを通じて容易に単離される。
【0028】
最後に、本プロセスは、遷移金属合金の形成に容易にアクセスできるようになるように、既知の遷移金属調製よりも際立った利点を有している。具体的には、調製のために高温または他の極限状態を必要とする、多くの非常に望ましい遷移金属含有合金(例えば、真鍮、コンスタンタン、ニチノールなど)がある。本プロセスは、それらの形成に明確なルートを提供する。特に、上で詳述するように、スキームIの反応は発熱性であり、いくらかの実施形態によれば、反応混合物の加熱とともに、高温になる。そのため、プロセスは、本明細書で詳述するように、第2の金属酸化物の存在下で実行され、両方の金属は、高温で還元することができ(スキームI)、いくらかの実施形態によれば、2つの金属間の合金形成反応を誘導することもできる。
【0029】
したがって、いくらかの実施形態によれば、遷移金属酸化物の還元のためのプロセスが提供され、そのプロセスは:
(a)式MT
nOm(式中、nおよびmの各1つは、1、2、3、4、5、6または7であり、MTは:Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnから選択される第一列遷移金属である)を有する少なくとも1つの遷移金属酸化物を提供するステップ;
(b)反応器内で遷移金属酸化物をアルカリ金属(MA)と接触させ、反応器内の温度を温度Tに調節して、反応スキームIおよびII:
【0030】
【0031】
の2つの反応順序を誘導し、そのため、前記2つの反応順序から得られる正味の反応であるIII
【0032】
【0033】
が、アルカリ金属を消費せず、得られる反応混合物が、還元遷移金属であるMT、またはその合金、アルカリ金属、および場合によっては酸素を含むステップ
(式中、MAは、NaまたはKである;および温度Tは、アルカリ金属の融点より高く、MA
2Oの分解温度以上である);ならびに
(c)還元遷移金属またはその合金を、反応混合物から単離するステップ
を含む。
【0034】
いくらかの実施形態によれば、遷移金属酸化物の還元のためのプロセスが提供され、そのプロセスは:
(a)式MT
nOm(式中、nおよびmの各1つは、1、2、3、4、5、6または7であり、MTは:Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnから選択される第一列遷移金属である)を有する少なくとも1つの遷移金属酸化物を提供するステップ;
(b)反応器内で遷移金属酸化物をアルカリ金属(MA)と接触させ、反応器内の温度を温度Tに調節して、還元遷移金属であるMT、またはその合金、アルカリ金属、および場合によっては酸素を含む得られる反応混合物を提供するステップ
(式中、MAは、NaまたはKである;および温度Tは、アルカリ金属の融点より高く、MA
2Oの分解温度以上である);ならびに
(c)還元遷移金属またはその合金を、反応混合物から単離するステップ
を含む。
【0035】
いくらかの実施形態によれば、遷移金属酸化物の還元のためのプロセスが提供され、そのプロセスは:
(a)反応器内で遷移金属(MT)酸化物およびアルカリ金属(MA)を接触させるステップ;
(b)反応器内で遷移金属酸化物およびアルカリ金属を温度(T)まで加熱し、還元遷移金属(MT)およびアルカリ金属(MA)を含む反応混合物を生成するステップ
(式中、温度(T)は、アルカリ金属(MA)の融点より高く、アルカリ金属の酸化物(MA
2O)の分解温度以上である);ならびに
(c)還元遷移金属(MT)を反応混合物から単離するステップ
を含む。
【0036】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(a)は、少なくとも1つの遷移金属酸化物を反応器に連続的に提供するステップを含み、そのため、ステップ(a)で提供される総遷移金属酸化物は、ステップ(b)のアルカリ金属よりもモル過剰であり、モル過剰は、少なくとも400%である。
【0037】
いくらかの実施形態によれば、温度Tは、アルカリ金属の沸点以上である。
【0038】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)の単離は、反応器からアルカリ金属を蒸発させる必要がある;そして、そのプロセスはさらに、単離された遷移金属またはその合金を回収するステップ(d)を含む。
【0039】
いくらかの実施形態によれば、温度Tは、アルカリ金属の沸点以上であり、ステップ(c)の単離は、反応器からアルカリ金属を蒸発させる必要がある;そして、そのプロセスはさらに、単離された遷移金属またはその合金を回収するステップ(d)を含む。
【0040】
いくらかの実施形態によれば、そのプロセスはさらに、蒸発させたアルカリ金属を凝縮するステップ(e);および凝縮したアルカリ金属を反応器に移し、それによってアルカリ金属をリサイクルするステップ(f)を含む。
【0041】
いくらかの実施形態によれば、プロセスは:
(a)少なくとも1つの遷移金属酸化物を提供するステップ
(b)温度Tで遷移金属酸化物をアルカリ金属と組み合わせ、2つの反応順序を誘導するステップ;
(c)反応器からアルカリ金属を蒸発させて、単離された遷移金属またはその合金を生産するステップ;
(d)単離された遷移金属またはその合金を回収するステップ;
(e)蒸発させたアルカリ金属を凝縮するステップ;および
(f)凝縮した遷移金属を反応器に移すステップ
を含み;
ステップ(e)は、ステップ(d)の前に行われる場合があり、そのプロセスはさらに、少なくとも1つの追加の順序のために、ステップ(a)~(d)を繰り返すステップを含む。
【0042】
いくらかの実施形態によれば、MTは:Fe、Ni、Cr、Cu、ZnおよびMnからなる群より選択される第一列遷移金属である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0043】
いくらかの実施形態によれば、MTは、Feである;
MT
nOmは、Fe2O3、FeO、Fe3O4またはそれらの組み合わせである;ならびに反応スキームIおよびIIIは:
【0044】
【0045】
または
【0046】
【0047】
または
【0048】
【0049】
である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0050】
いくらかの実施形態によれば、MTは、Niである;
MT
nOmは、NiOである;ならびに反応スキームIおよびIIIは:
【0051】
【0052】
である。
【0053】
いくらかの実施形態によれば、MTは、Crである;
MT
nOmは、Cr2O3、CrO、CrO3またはそれらの組み合わせである;ならびに反応スキームIおよびIIIは:
【0054】
【0055】
または
【0056】
【0057】
または
【0058】
【0059】
である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0060】
いくらかの実施形態によれば、MTは、Cuである;
MT
nOmは、Cu2O、CuO、CuO2、またはそれらの組み合わせである;ならびに反応スキームIおよびIIIは:
【0061】
【0062】
または
【0063】
【0064】
または
【0065】
【0066】
である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0067】
いくらかの実施形態によれば、MTは、Znである;
MT
nOm ZnO;ならびに反応スキームIおよびIIIは:
【0068】
【0069】
である。
【0070】
いくらかの実施形態によれば、MTは、Mnである;
MT
nOmは、MnO、Mn3O4、Mn2O3、MnO2、Mn2O7またはそれらの組み合わせである;ならびに反応スキームIおよびIIIは:
【0071】
【0072】
または
【0073】
【0074】
または
【0075】
【0076】
または
【0077】
【0078】
または
【0079】
【0080】
である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0081】
いくらかの実施形態によれば、プロセスは、金属合金の調製のためのものであり、
ステップ(a)は、式MTa
nOm、および式MTb
iOj(式中、iおよびjの各1つは、1、2、3、4、5、6または7であり、MTa、MTbの各1つは:Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる群より選択される遷移金属である)を有する少なくとも2つの遷移金属酸化物を提供するステップを含む;ならびに
ステップ(b)は、遷移金属酸化物をアルカリ金属と組み合わせるステップを含み、反応スキームIおよびIIIは:
【0082】
【0083】
である;ならびにステップ(b)はさらに、合金を形成する反応IV:
【0084】
【0085】
を誘導した。
【0086】
いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はNaであり、スキームIIは:
【0087】
【0088】
である。
【0089】
いくらかの実施形態によれば、Tは、少なくとも540℃である。
【0090】
いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はKであり、スキームIIは:
【0091】
【0092】
である。
【0093】
いくらかの実施形態によれば、Tは、少なくとも300℃である。
【0094】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)は、反応器からアルカリ金属および酸素を蒸発させて、単離された遷移金属またはその合金を、少なくとも90%w/wの純度で生産するステップを含む。
【0095】
いくらかの実施形態によれば、遷移金属は、Fe、Co、NiまたはCuであり、その純度は、少なくとも99%w/wである。
【0096】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の反応混合物は、追加の溶媒および担体を実質的に含まず、本質的に、遷移金属酸化物、アルカリ金属および生成物である還元遷移金属またはその合金からなる。
【0097】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の2つの反応順序は、空気および水から保護された環境で実行される。
【0098】
いくらかの実施形態によれば、プロセスはさらに:
反応チャンバを定義する筐体、および
遷移金属酸化物入口、アルカリ金属入口、アルカリ金属出口および単離された遷移金属もしくは合金の出口を含み、前記入口および出口のそれぞれは、反応チャンバと流体連絡している、
反応器;
アルカリ金属入口およびアルカリ金属出口を含むアルカリ金属容器;
遷移金属入口を含む単離された遷移金属もしくは合金の容器;
蒸発させたアルカリ金属を凝縮するように構成され、反応器のアルカリ金属出口と接続した近位端、およびアルカリ金属容器のアルカリ金属入口と接続した遠位端を含む、コンデンサ;
反応器のアルカリ金属入口と接続した近位端、およびアルカリ金属容器のアルカリ金属出口と接続した遠位端を含むアルカリ金属移送管;
反応器の遷移金属出口と接続した近位端、単離された遷移金属または合金の容器の遷移金属入口と接続した遠位端を含む遷移金属移送管
を含むシステムを提供するステップを含む。
【0099】
いくらかの実施形態によれば、反応器はさらに、不活性ガス入口およびガス出口を含み、それぞれ反応チャンバと流体連絡しており、不活性ガス入口は、不活性ガス源と流体連絡している。
【0100】
いくらかの実施形態によれば、本プロセスは:
(a)遷移金属酸化物入口を通って少なくとも1つの遷移金属酸化物を反応チャンバに提供するステップ;
(b)反応チャンバ内で遷移金属酸化物をアルカリ金属と組み合わせて、2つの反応順序を誘導するステップ;
(c)反応器のアルカリ金属出口を通ってアルカリ金属を蒸発させて、単離された遷移金属またはその合金を生産するステップ;
(d)遷移金属移送管を通って単離された遷移金属またはその合金を単離された遷移金属または合金の容器に移すステップ;
(e)コンデンサを使用して蒸発させたアルカリ金属をアルカリ金属容器に凝縮するステップ;ならびに
(f)アルカリ金属移送管を通ってアルカリ金属容器から凝縮したアルカリ金属を反応器に移すステップ
を含み;
ステップ(e)は、ステップ(d)の前に行われる場合がある。
【0101】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)はさらに、不活性ガス入口を通って不活性ガスを反応チャンバに挿入し、それによって、空気から保護された反応環境を維持するステップを含む。
【0102】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)、ステップ(c)またはその両方はさらに、反応器のガス出口を通って形成された酸素ガスを排気させるステップを含む。
【0103】
いくらかの実施形態によれば、
コンデンサはさらに、その近位端と遠位端との間に配置された一方向弁を含み、その弁は、レクターからアルカリ金属容器への蒸発させたアルカリ金属の流れを調節するように構成されている;
アルカリ金属移送管はさらに、その近位端と遠位端との間に配置された一方向弁を含み、その弁は、アルカリ金属容器からレクターへの凝縮したアルカリ金属の流れを調節するように構成されている;
遷移金属移送管はさらに、その近位端と遠位端との間に配置された一方向弁を含み、その弁は、レクターから単離された遷移金属または合金の容器への単離された遷移金属または金属合金の流れを調節するように構成されている。
【0104】
さらなる実施形態および本発明の完全な適用範囲は、この後に与えられた詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の精神および範囲内での種々の変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および具体例が、本発明の好ましい実施形態を示しながら、例示のためのみに与えられていることを理解するべきである。
【0105】
上述した代表的な態様および実施形態に加えて、さらなる態様および実施形態は、図面を参照し、以下の詳細な説明の研究により明らかになるであろう。
【0106】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書の一部に組み込まれ、それを構成しており、本発明の実施形態を例証し、説明と一緒に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【
図1】
図1は、いくらかの実施形態による、少なくとも1つの遷移金属酸化物の対応する遷移金属またはその合金への還元のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図2】
図2は、いくらかの実施形態による、少なくとも1つの遷移金属酸化物の対応する遷移金属またはその合金への還元のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図3】
図3は、いくらかの実施形態による、Fe
2O
3の鉄金属への還元のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図4】
図4は、いくらかの実施形態による、FeOの鉄金属への還元のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図5】
図5は、いくらかの実施形態による、NiOのニッケル金属への還元のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図6】
図6は、いくらかの実施形態による、Cr
2O
3のクロム金属への還元のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図7】
図7は、いくらかの実施形態による、Cu
2Oの銅金属への還元のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図8】
図8は、いくらかの実施形態による、ZnOの亜鉛金属への還元のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図9】
図9は、いくらかの実施形態による、TiO
2のチタン金属への還元のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図10】
図10は、いくらかの実施形態による、ZnOから亜鉛金属へ、およびCuO
2から銅金属への同時還元、ならびにそれからのCu・Zn合金の形成のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図11】
図11は、いくらかの実施形態による、NiOからニッケル金属へ、およびFe
2O
3から鉄金属への同時還元、ならびにそれからのFe・Ni合金の形成のためのプロセスを表すブロック図である。
【
図12】
図12Aおよび
図12Bは、本プロセスのいくらかの実施形態による、Fe
2O
3とNaとの間の2つの個々の反応から生産された鉄のX線回折(XRD)パターンである。
【
図13A】
図13Aは、本プロセスのいくらかの実施形態による、反応器内で測定された温度(℃)対、銅金属を形成するためのCu
2OとNaとの間の反応中の時間(分)を表すグラフである。
【
図13B】
図13Bは、本プロセスのいくらかの実施形態による、Cu
2OとNaとの間の反応で生産された銅のXRDパターンである。
【
図14A】
図14Aは、本プロセスのいくらかの実施形態による、反応器内で測定された温度(℃)対、ニッケル金属を形成するためのNiOとNaとの間の反応中の時間(分)を表すグラフである。
【
図14B】
図14Bは、本プロセスのいくらかの実施形態による、NiOとNaとの間の反応で生産されたニッケルのXRDパターンである。
【
図15A】
図15Aは、本プロセスのいくらかの実施形態による、反応器内で測定された温度(℃)対、クロム金属を形成するためのCr
2O
3とNaとの間の反応中の時間(分)を表すグラフである。
【
図15B】
図15Bは、本プロセスのいくらかの実施形態による、Cr
2O
3とNaとの間の反応で生産されたクロムのXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0108】
以下の説明において、本開示の種々の態様が説明されるであろう。説明の目的のため、本開示の異なる態様の十分な理解を与えるために、具体的な構成および詳細を示す。しかし、本開示が具体的な詳細を本明細書に提示することなく実施される場合があることは当業者に明らかになるであろう。さらに、周知の特徴は、本開示を不明瞭にしないために省略または単純化される場合がある。
【0109】
本開示をより詳細に説明する前に、本開示が記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、もちろん変更可能であることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定を意図するものではないことが理解されるべきである。
【0110】
いくらかの実施形態によれば、1つまたは複数の遷移金属酸化物の対応する遷移金属またはそれを含む合金への還元のためのプロセスが提供される。本プロセスは:
【0111】
【0112】
(式中、MT、MA、nおよびmは、本明細書に記載されるものである)の2つの反応順序に基づいており、正味の反応スキームIII:
【0113】
【0114】
となる;
【0115】
当技術分野にわたる本プロセスのいくつかの利点を本明細書で詳細に述べる。要するに:
【0116】
(i)反応IおよびIIは、互いに互換性があることが認められたため、連続して(例えば1つの反応系内で)実行することができ、いくらかの実施形態によれば、単純な手順であることが証明されている。
【0117】
(ii)反応IおよびIIは、いくらかの実施形態によれば、高収率となる相乗効果を有することが認められた。
【0118】
(iii)上記相乗作用はさらに、いくらかの実施形態によれば、高純度の金属および合金となる。
【0119】
(iv)反応は、いくらかの実施形態によれば、環境的に有益であるニート(すなわち、溶媒なし)で実行することができる。
【0120】
(v)アルカリ金属の融点より高い温度で反応を実行すると、反応混合物が得られ、アルカリ金属は、いくらかの実施形態によれば、反応性流体の状態である。
【0121】
(iv)アルカリ金属の使用は、それらの融点が比較的に低いために好都合であり、そのため、いくらかの実施形態によれば、中程度のエネルギーしか投入しないか、あるいは正味のエネルギーを投入する必要がない。例えば、ナトリウムおよびカリウム金属は、廃棄される代わりに、使用することができる副産物とみなされ、これは経済的および環境的利点である。
【0122】
(vii)酸化還元反応Iは発熱性であり、外部エネルギーの最小限の投入で2つの反応順序を促進する-いくらかの実施形態によれば、これは別の経済的および環境的利点である。
【0123】
(viii)いくらかの実施形態によれば、反応の触媒であるアルカリ金属の電気合成が便利である。
【0124】
(ix)アルカリ金属酸化物の分解温度はそれほど高くはなく、外部エネルギーの最小限の投入で、2つの反応順序をさらに促進する-いくらかの実施形態によれば、これはさらに別の経済的および環境的利点である。
【0125】
(x)反応IおよびIIの組み合わせを描く正味の反応IIIは、アルカリ金属を消費しない、すなわち、触媒として使用される。それらが触媒として使用されるので、それらは本質的にリサイクルされ、そのため、本プロセスを通じて大量の遷移金属または合金を生産するために少量のアルカリ金属のみを必要とし、これは経済的および環境的利点でもある。
【0126】
(xi)本発明の反応順序の唯一の副産物は酸素であり、これは無害な気体であり、いくらかの実施形態によれば、生産された遷移金属から分離するのも容易である。
【0127】
(xii)アルカリ金属は、遷移金属と容易に反応しない(すなわち、それによって、アルカリ金属・遷移金属合金は、本プロセスの条件では形成されず、反応後の混合物は、いくらかの実施形態によれば、副産物の汚染物質から実質的に清浄なままである。
【0128】
(xiii)アルカリ金属は低沸騰温度を有するが、第一列遷移金属は、高沸点を有し、いくらかの実施形態によれば、反応の完了後に酸素およびアルカリ金属を蒸発させることを通じて、生成物である遷移金属または合金を容易に単離できるようになる。
【0129】
(xiv)プロセスが第2の金属または金属酸化物の存在下で実行される場合、いくらかの実施形態によれば、反応Iの発熱性と反応混合物の加熱との組み合わせにより、第1の金属(すなわち、最初に酸化物として提供された遷移金属)および第2の金属からの合金の形成がもたらされる場合がある。
【0130】
いくらかの実施形態によれば、遷移金属酸化物の還元のためのプロセスが提供され、そのプロセスは、本明細書に詳述するように、ステップ(a)~(c)および場合によっては追加のステップを実行することを含む。
【0131】
ここで、いくらかの実施形態にしたがって、少なくとも1つの遷移金属酸化物を提供するステップを含む、本プロセスのステップ(a)に具体的に言及する。
【0132】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(a)は、式MT
nOmを有する少なくとも1つの遷移金属酸化物を提供するステップを含む。いくらかの実施形態によれば、ステップ(a)は、式MT
nOmを有する遷移金属酸化物を提供するステップを含む。いくらかの実施形態によれば、ステップ(a)は、式MT
nOmを有する単一の遷移金属酸化物を提供するステップを含む。
【0133】
具体的には、当業者が理解することができるように、ステップ(a)における式MT
nOmの1つ以上の遷移金属酸化物の提供は、いくらかの実施形態によれば、本明細書で詳述するように、本プロセスの完了で、遷移金属合金の形成をもたらすことができる。代わりに、いくらかの実施形態によれば、ステップ(a)における式MT
nOmの1つの遷移金属酸化物の提供は、本プロセスの完了で、還元遷移金属の形成をもたらすことができる。特に、ステップ(b)の反応混合物が、ステップ(a)において提供される遷移金属と合金化可能な金属も金属酸化物も含まない場合、ステップ(b)の2つの反応順序の結果は、いくらかの実施形態によれば、遷移金属であろう。しかし、ステップ(a)において提供される遷移金属と合金化可能な別の金属またはそのような合金化可能な金属の酸化物がステップ(b)の反応混合物に存在する場合、合金は、2つの金属から形成される場合がある。
【0134】
いくらかの実施形態によれば、nは、1、2、3、4、5、6または7である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくらかの実施形態によれば、nは、1、2または3である。
【0135】
いくらかの実施形態によれば、mは、1、2、3、4、5、6または7である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0136】
いくらかの実施形態によれば、MTは、金属である。いくらかの実施形態によれば、MTは、遷移金属である。いくらかの実施形態によれば、MTは、第一列遷移金属である。
【0137】
一般に、用語「第一列遷移金属元素」は、元素21~29、つまり、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、および銅(Cu)のいずれか1つを指す。
【0138】
いくらかの実施形態によれば、MTは:Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はScである。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はTiである。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はVである。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はCrである。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はMnである。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はFeである。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はCoである。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はNiである。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はCuである。いくらかの実施形態によれば、遷移金属はZnである。
【0139】
いくらかの実施形態によれば、遷移金属酸化物は、ステップ(a)において固体として提供される。
【0140】
本明細書で詳述するように、ステップ(b)の間、遷移金属酸化物は、遷移金属および酸素を提供するために消費されるが、いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属は、保全されるかリサイクルされる。これにより、追加の遷移金属酸化物を反応混合物に連続的に提供することができ、追加の遷移金属を連続的に得ることができる。
【0141】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(a)は、少なくとも1つの遷移金属酸化物を反応器に連続して提供するステップを含み、そのためステップ(a)で提供された総遷移金属酸化物がステップ(b)のアルカリ金属よりもモル過剰である。いくらかの実施形態によれば、ステップ(a)は、少なくとも1つの遷移金属酸化物を反応器に徐々に提供するステップを含む。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の間いつでも、反応器内でアルカリ金属がその中の遷移金属酸化物よりもモル過剰である場合があるが、本実施形態によれば、遷移金属酸化物が連続して添加されて消費され、そのため、経時的に提供される総遷移金属酸化物がアルカリ金属触媒よりもモル過剰であることが理解されるべきである。
【0142】
本明細書の目的のため、用語「連続的に」は、遷移金属酸化物が経時的に反応器に添加されることを意味する。その用語は、遷移金属酸化物の連続したまたは中断された(例えばバッチ)添加に限定されない。
【0143】
いくらかの実施形態によれば、モル過剰は、少なくとも50%mol/mol、少なくとも100%mol/mol、少なくとも200%mol/mol、少なくとも300%mol/mol、少なくとも400%mol/mol、少なくとも500%mol/mol、少なくとも750%mol/mol、少なくとも1,000%mol/mol、少なくとも2,000%mol/mol、少なくとも5,000%mol/molまたは少なくとも10,000%mol/molである。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくらかの実施形態によれば、モル過剰は、100%~1,000,000%mol/mol、500%~1,000,000%mol/mol、1,000%~1,000,000%mol/molまたは10,000%~1,000,000%mol/molの範囲内である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表し、指定の範囲内の各値および部分範囲を含む。
【0144】
本明細書で使用されるような「X%のモル過剰」が、ステップ(a)で最終的に添加される遷移金属酸化物の総モル量が使用されるアルカリ金属のモル量をX%超えることを意味することが理解されるべきである。例えば、ステップ(b)の反応が、反応器内の10モルのナトリウム金属で始まり、反応が停止するまで100モルのFe2O3が5時間かけて反応器に添加される場合、遷移金属酸化物であるFe2O3が、アルカリ金属よりも900%モル過剰で添加されたと言われている。
【0145】
いくらかの実施形態によれば、少なくとも1つの遷移金属は:Sc2O3、TiO2、Ti2O3、VO、V2O3、VO2、V2O5、Cr2O3、CrO、CrO3、MnO、Mn3O4、Mn2O3、MnO2、Mn2O7、Fe2O3、FeO、Fe3O4、CoO、Co2O3、Co3O4、NiO、Cu2O、CuO、CuO2、ZnOおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0146】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Sc2O3を含む。
【0147】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、TiO2、Ti2O3またはそれらの組み合わせを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、TiO2を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Ti2O3を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、酸化チタンの混合物を含む。
【0148】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、VO、V2O3、VO2、V2O5またはそれらの組み合わせを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、VOを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、V2O3を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、VO2を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、V2O5を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、酸化バナジウムの混合物を含む。
【0149】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Cr2O3、CrO、CrO3またはそれらの組み合わせを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Cr2O3を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、CrOを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、CrO3を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、酸化クロムの混合物を含む。
【0150】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、MnO、Mn3O4、Mn2O3、MnO2、Mn2O7またはそれらの組み合わせを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、MnOを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Mn3O4を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Mn2O3を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、MnO2を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Mn2O7を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、酸化マンガンの混合物を含む。
【0151】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Fe2O3、FeO、Fe3O4またはそれらの組み合わせを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Fe2O3を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、FeOを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Fe3O4を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、酸化鉄の混合物を含む。
【0152】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Co2O3、CoO、Co3O4またはそれらの組み合わせを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Co2O3を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、CoOを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Co3O4を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、酸化コバルトの混合物を含む。
【0153】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、NiOを含む。
【0154】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Cu2O、CuO、CuO2またはそれらの組み合わせを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、Cu2Oを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、CuOを含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、CuO2を含む。いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、酸化銅の混合物を含む。
【0155】
いくらかの実施形態によれば、MT
nOmは、ZnOを含む。
【0156】
ここで、いくらかの実施形態にしたがって、反応器内で遷移金属酸化物をアルカリ金属(MA)と組む合わせるステップ、および反応器内の温度を温度Tまたはそれ以上まで調節して、スキームIおよびIIの2つの反応順序を誘導するステップを含む、本プロセスのステップ(b)に具体的に言及する。
【0157】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)は、温度Tで遷移金属酸化物をアルカリ金属と反応させるステップを含む。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)は、温度Tまたはそれ以上で遷移金属酸化物をアルカリ金属と反応させるステップを含む。
【0158】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)は、遷移金属酸化物をアルカリ金属(MA)と組み合わせるステップを含む。いくらかの実施形態によれば、遷移金属酸化物をアルカリ金属と組み合わせる作用は、温度Tで実行される。具体的には、反応がまだ始まっていない場合、いくらかの実施形態によれば、温度Tに到達するために外部加熱を必要とする。代わりに、反応が始まった後、その発熱性は、内部温度を少なくとも部分的に維持するか上昇させることができ、そのため、いくらかの実施形態によれば、必要とされる外部加熱が小さいか、さらには、外部加熱が少なくとも一時的に停止する場合さえある。
【0159】
いくらかの実施形態によれば、反応器内の温度Tでの遷移金属酸化物およびアルカリ金属の組み合わせは、反応スキームIおよびII:
【0160】
【0161】
の2つの反応順序を誘導する。
【0162】
いくらかの実施形態によれば、反応器内の温度Tでの遷移金属酸化物およびアルカリ金属の組み合わせは、スキームIおよびIIの2つの反応順序を引き起こす。
【0163】
いくらかの実施形態によれば、反応スキームIおよびII(mを掛けた)の組み合わせは、反応スキームIIIにより表される正味の反応となる。
【0164】
【0165】
スキームIおよびIIの等式を釣り合わせ、引き算するために、スキームIIの等式は、m(遷移金属酸化物化合物中の酸素原子の数)を掛ける必要があることが理解されるべきである。
【0166】
いくらかの実施形態によれば、温度Tの値は、スキームIおよびIIの反応が実行されるように選択される。換言すると、温度Tは、両反応の活性化エネルギーを上回り、適切な反応条件を提供するのに十分なエネルギーを反応系にもたらす。
【0167】
スキームIの反応について、主要パラメータは、いくらかの実施形態によれば、反応物質の物理的状態である。具体的には、いくらかの実施形態によれば、本方法の反応が、ニート(すなわち、いずれの溶媒もない)で実行されることは好都合である。また、室温で、アルカリ金属および遷移金属酸化物の反応物質は両方とも固体状態であり、化学反応を遅延させたり、防止したりする傾向がある。このため、いくらかの実施形態によれば、温度Tは、アルカリ金属の融点より高い。いくらかの実施形態によれば、温度Tで、アルカリ金属は流体状態である。いくらかの実施形態によれば、温度Tで、アルカリ金属は液体状態である。いくらかの実施形態によれば、温度Tで、アルカリ金属は気体状態である。
【0168】
スキームIIの反応について、主要パラメータは、いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属酸化物を分解するのに必要な活性化エネルギーである。そのため、いくらかの実施形態によれば、温度Tは、MA
2Oの分解温度以上である。いくらかの実施形態によれば、温度Tは、MA
2Oの分解温度より高い。
【0169】
本明細書で使用されるような用語「アルカリ金属」は、その0(ゼロ)酸化状態でアルカリ金属を含む任意の化合物をカバーする。したがって、この用語には、ナトリウム金属であるNa(0)、およびカリウム金属であるK(0)、ならびにそれらの合金が含まれ、酸化状態がゼロの少なくとも1つのアルカリ金属、例えばNaKである。
【0170】
いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属(MA)は、NaまたはKである。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はNaである。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はKである。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はNaKである。
【0171】
口語的にNaKと呼ばれるナトリウム-カリウム合金は、室温で通常液体であるアルカリ金属のナトリウムカリウムの合金である。
【0172】
いくらかの実施形態によれば、温度Tは、少なくとも300℃、少なくとも350℃、少なくとも400℃、少なくとも450℃、少なくとも500℃、少なくとも540℃、少なくとも600℃、少なくとも700℃、少なくとも800℃または少なくとも900℃である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくらかの実施形態によれば、温度Tは、300℃~3,000℃、540℃~3,000℃または900℃~3,000℃の範囲内である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表し、指定の範囲内の各値および部分範囲を含む。
【0173】
いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムであり、温度Tは、ナトリウムの融点より高い。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムであり、温度Tで、ナトリウムは流体状態である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムであり、温度Tで、ナトリウムは液体状態である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムであり、温度Tで、ナトリウムは気体状態である。標準条件で、ナトリウムの沸点および融点は、それぞれ97.8℃および883℃であり、Na2Oの分解温度は540℃である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムであり、Tは少なくとも100℃である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムであり、Tは少なくとも540℃である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムであり、Tは少なくとも883℃である。
【0174】
いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はカリウムであり、温度Tは、カリウムの融点より高い。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はカリウムであり、温度Tで、カリウムは流体状態である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はカリウムであり、温度Tで、カリウムは液体状態である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はカリウムであり、温度Tで、カリウムは気体状態である。標準条件で、カリウムの沸点および融点は、それぞれ63.5℃および758.8℃であり、K2Oの分解温度は300℃である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はカリウムであり、Tは少なくとも63℃である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はカリウムであり、Tは少なくとも758.8℃である。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はカリウムであり、Tは少なくとも300℃である。
【0175】
いくらかの実施形態によれば、スキームIの反応は、ニートで実行される。いくらかの実施形態によれば、スキームIIの反応は、ニートで実行される。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の2つの反応順序は、ニートで実行される。
【0176】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の反応混合物は、追加の溶媒を実質的に含まない。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の反応混合物は、追加の溶媒および担体を実質的に含まない。
【0177】
用語「溶媒」は、組成物の粘度を低下させる組成物の非反応性成分を指す。典型的に、溶媒は揮発性を有しており、そのため化学反応の終了後、ワークアップ条件下(高温および/または減圧など)で除去される。用語「溶媒を実質的に含まない」または「溶媒がない」は、溶媒を含まないか、上で定義したように溶媒を実質的に含まない組成物を指す。溶媒を実質的に含まない組成物は、いくらかの実施形態によれば、微量、例えば≦5%w/w、≦3%w/w、≦2%w/w、≦1%または≦0.5%w/wの溶媒を含むことができる。
【0178】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の反応混合物は、本質的に遷移金属酸化物、アルカリ金属および生成物である還元遷移金属またはその合金からなる。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の間の反応器内の凝縮相は、本質的に遷移金属酸化物、アルカリ金属および生成物である還元遷移金属またはその合金からなる。
【0179】
用語「本質的にからなる」は、ステップ(b)の反応混合物が、主に遷移金属酸化物、アルカリ金属および生成物である還元遷移金属またはその合金を含むことを意味する。具体的には、いくらかの実施形態によれば、相当量の、反応スキームIおよびIIに関与しない溶媒または担体または任意の構成要素を含まない。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の反応混合物は、5%w/w以下、3%w/w以下、2%w/w以下または1%w/w以下の他の化合物を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。他の化合物は、遷移金属酸化物の生産または採掘から生じる不純物を含む場合がある。
【0180】
いくらかの実施形態によれば、前記2つの反応順序から得られる正味の反応IIIは、アルカリ金属を消費しない。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属は、ステップ(b)の2つの反応順序における触媒として使用される。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属は、ステップ(b)の2つの反応順序でリサイクルされる。
【0181】
正味の反応IIIがアルカリ金属を消費しないが、アルカリ金属の中には、ステップ(b)の間に徐々に消費される場合があるものもあることが理解されるべきである。具体的には、遷移金属酸化物が純粋でないまたは低品質である場合に生じる可能性がある副反応は、アルカリ金属の少なくとも一部を徐々に消費される場合がある。しかし、特定の正味の反応IIIは、アルカリ金属を消費しない。
【0182】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)において遷移金属酸化物およびアルカリ金属を接触させることで形成される、得られる反応混合物は、流体状態である。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)において遷移金属酸化物およびアルカリ金属を接触させることで形成される、得られる反応混合物は、液体状態である。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)において遷移金属酸化物およびアルカリ金属を接触させることで形成される、得られる反応混合物は、不均質混合物である。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)において遷移金属酸化物およびアルカリ金属を接触させることで形成される、得られる反応混合物は、液体-固体、液体-液体、気体-固体または気体-液体の不均質混合物である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0183】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の2つの反応順序を実行することで形成される反応混合物は、還元遷移金属であるMT、またはその合金を含む。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の2つの反応順序を実行することで形成される反応混合物はさらに、酸素を含む。いくらかの実施形態によれば、酸素ガスは、反応混合物から分離される。
【0184】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の反応混合物は、ステップ(a)において提供される遷移金属と合金化可能な金属も金属酸化物も含まない。
【0185】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の反応混合物は、ステップ(a)において提供される遷移金属と合金化可能である、合金化可能な金属または金属酸化物を含む。これは、任意選択の合金形成に関連する場合、以下に詳述される。
【0186】
本明細書で詳述されるように、ステップ(a)は、ステップ(b)の反応混合物への遷移金属酸化物の連続的な添加を含む場合があり、そのため、ステップ(b)の全過程で、遷移金属酸化物は、添加されたアルカリ金属よりもモル過剰で提供される。具体的には、いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の全過程で反応器に添加される遷移金属酸化物は、それに添加されたアルカリ金属よりもモル過剰である。具体的な過剰量は、上で指定されている。
【0187】
しかし、反応器に添加される遷移金属酸化物は、スキームIの反応を通じて消費されるが、アルカリ金属は、スキームIの反応を通じてリサイクルされる。そのため、いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の間の任意の指定の時間で、反応器内のアルカリ金属は、遷移金属酸化物よりもモル過剰である。いくらかの実施形態によれば、遷移金属酸化物は、一定の添加速度で反応器に連続的に提供され、反応器内のアルカリ金属がステップ(b)の間の任意の指定の時間で、遷移金属酸化物よりもモル過剰であることを確実にする。いくらかの実施形態によれば、モル過剰は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%または少なくとも200%である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0188】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の2つの反応順序は、空気から保護された環境で実行される。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の2つの反応順序は、水から保護された環境で実行される。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の2つの反応順序は、空気および水から保護された環境で実行される。
【0189】
具体的には、アルカリ金属は反応性が非常に高く、不活性ガス下での性能など、特定の反応条件を必要とすることが理解されるべきである。
【0190】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)はさらに、不活性ガスを反応器に流すステップを含む。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の2つの反応順序は、不活性ガス下で実行される。いくらかの実施形態によれば、不活性ガスは、窒素またはアルゴンである。
【0191】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の間、反応器は閉鎖される。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の間、反応器は不活性雰囲気下で閉鎖される。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の間、反応器は、不活性ガス雰囲気下で閉鎖される。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)の間、反応器は閉鎖され、2つの反応順序は高圧で実行される。
【0192】
用語「高圧」は、大気圧より高い任意の圧力を指す。
【0193】
好都合には、反応期間は短く、経済的であり、エネルギーを消費する。
【0194】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)は、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、または30分以内で実行される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)は、1時間以内で実行される。いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)は、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間または少なくとも25分間実行される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0195】
ステップ(b)の持続期間への言及が、ステップ(b)の個々の実行を指すことが理解されるべきである。具体的には、本明細書で詳述するように、いくらかの実施形態によれば、本プロセスは、周期的に実行され、反応の完了後にリサイクルされたアルカリ金属は、ステップ(b)の後に続く実行で再利用されるように戻される。したがって、ステップ(b)の繰り返しが、ステップ(b)の個々の実行に向けられている上記条項と矛盾することなく、上で設定された下限閾値を累積的に超えることを可能にすることが理解されるべきである。
【0196】
ここで、いくらかの実施形態によれば、還元遷移金属またはその合金を単離するステップを含む、本プロセスのステップ(c)に具体的に言及する。
【0197】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)は、反応混合物から還元遷移金属またはその合金を単離するステップを含む。いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)は、反応混合物から還元遷移金属を単離するステップを含む。いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)は、反応混合物から還元遷移金属合金を単離するステップを含む。
【0198】
いくらかの実施形態によれば、単離された還元遷移金属またはその合金は、凝縮相である。いくらかの実施形態によれば、単離された還元遷移金属またはその合金は、固体として単離される。いくらかの実施形態によれば、単離された還元遷移金属またはその合金は、液体として単離される。
【0199】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)の単離は、反応スキームIIで生産されたアルカリ金属を蒸発させるステップおよび反応器からアルカリ金属を移動させ、反応器に還元遷移金属またはその合金が残るようにするステップを必要とする。いくらかの実施形態によれば、蒸発は、アルカリ金属を加熱するステップを含む。いくらかの実施形態によれば、蒸発は、反応器内の圧力を下げるステップを含む。いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)の単離は、反応器からアルカリ金属を蒸発させるステップを必要とする。いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)の単離は、反応器からのアルカリ金属を沸騰させるステップを必要とする。
【0200】
いくらかの実施形態によれば、反応器から気体としてアルカリ金属を移すステップは、単離された遷移金属またはその合金を生産する。
【0201】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)は、遷移金属またはその合金を、少なくとも70%w/w、少なくとも80%w/w、少なくとも90%w/w、少なくとも95%w/w、または少なくとも99%w/wの純度で単離するステップを含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0202】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)は、反応器からアルカリ金属および酸素を蒸発させて、単離された遷移金属またはその合金を、少なくとも70%w/w、少なくとも80%w/w、少なくとも90%w/w、少なくとも95%w/w、または少なくとも99%w/wの純度で生産するステップを含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0203】
純度は、本明細書で例示したように、X線回折(XRD)により好都合に決定することが可能である。
【0204】
具体的には、純遷移金属酸化物で開始した場合、未精製として単離された場合であっても、本発明のプロセスにより生産された生成物が実質的に純粋であることが認められた。しかし、遷移金属の中には空気に対して反応性のものもあり、そのため単離時、それらは空気からの保護を必要とする。
【0205】
いくらかの実施形態によれば、遷移金属は、Fe、Co、NiまたはCuであり、その純度は、少なくとも99%w/wである。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0206】
また、産業プロセスにおいて、遷移金属酸化物は、二酸化ケイ素などの汚染物質を含む鉱石から提供される場合がある。本プロセスのステップ(a)においてそのような遷移金属酸化物組成物を提供する場合、それらは反応することができず、汚染物質は、遷移金属生成物を溶融し、汚染物質を濾過する/すくい取る追加のステップを使用して分離される場合がある。
【0207】
ここで、任意選択であり、単離された遷移金属またはその合金を回収するステップを含む、本プロセスのステップ(d)に具体的に言及する。
【0208】
具体的には、いくらかの実施形態によれば、プロセスはさらに、ステップ(c)で生産された、単離された遷移金属またはその合金を回収するステップを含む。
【0209】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)の単離は、反応器からアルカリ金属を蒸発させるステップを必要とする;そしてプロセスはさらに、単離された遷移金属またはその合金を回収するステップ(d)を含む。
【0210】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(d)はさらに、単離された還元遷移金属またはその合金を専用の容器に配置するステップを含む。いくらかの実施形態によれば、容器は、空気および/または水から保護された条件で維持される。いくらかの実施形態によれば、容器は密閉可能な容器である。遷移金属容器は、システムに関連して後で検討する。
【0211】
ここで、任意選択であり、ステップ(c)の間に蒸発させたアルカリ金属を凝縮するステップを含む、本プロセスのステップ(e)に具体的に言及する。
【0212】
いくらかの実施形態によれば、プロセスはさらに、蒸発させたアルカリ金属を凝縮するステップ(e)を含む。いくらかの実施形態によれば、蒸発させたアルカリ金属は、専用の容器内で凝縮される。いくらかの実施形態によれば、容器は、空気および/または水から保護された条件で維持される。いくらかの実施形態によれば、容器は密閉可能な容器である。アルカリ金属容器は、システムに関連して後で検討する。
【0213】
一般に、アルカリ金属は、室温および大気圧で固体の物質である。ステップ(c)において、アルカリ金属は加熱され、場合によっては減圧下に入れられるため、いくらかの実施形態によれば、それらは蒸気に変化する。ステップ(e)は、ステップ(c)の単離がそのような気化を含む場合に関連しており、いくらかの実施形態によれば、別個の容器でのアルカリ金属蒸気の凝縮を含む。用語「凝縮する」は、典型的に、気体から液体への変化を指すが、凝縮したアルカリ金属が、例えばアルカリ金属容器内の温度に応じて、徐々にまたは瞬時に固体に変化する場合があることが理解されるべきである。したがって、ステップ(e)の状況における用語「凝縮する」はさらに、固体への気体の堆積を含む。
【0214】
また、ステップ(d)が遷移金属または合金の処置を含み、ステップ(e)がアルカリ金属の処置を含むので、ステップ(d)がステップ(e)の前に行われる場合があるように、ステップ(e)がステップ(d)の前に行われる場合があるように、またはそれらが同時に実行され得るように、これらのステップが別個であることが当業者により評価されるべきである。
【0215】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(d)は、ステップ(e)の前に行われるか、ステップ(e)は、ステップ(d)の前に行われるか、ステップ(d)および(e)が同時に実行される。いくらかの実施形態によれば、ステップ(d)は、ステップ(e)の前に行われる。いくらかの実施形態によれば、ステップ(e)は、ステップ(d)の前に行われる。
【0216】
ここで、任意選択であり、ステップ(e)が実行される場合、ステップ(e)において凝縮したアルカリ金属を反応器に戻すステップを含む、本プロセスのステップ(f)に具体的に言及する。
【0217】
具体的には、ステップ(c)において、アルカリ金属は、場合によっては反応器から除去され、そのため、いくらかの実施形態によれば、形成された遷移金属または合金を単離および回収する(任意選択のステップ(d)において)。その後、アルカリ金属のリサイクルを完了するため、除去されたアルカリ金属は、いくらかの実施形態によれば、本反応順序にしたがってさらなる反応のために反応器に戻される場合がある。これは、アルカリ金属を反応器に戻すステップ(f)において実行される。
【0218】
いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属は、凝縮した物質としてステップ(f)において反応器に移される。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属は、ステップ(f)において液体として反応器に移される。いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属は、ステップ(f)において固体として反応器に移される。
【0219】
したがって、いくらかの実施形態によれば、プロセスはさらに、アルカリ金属容器内で蒸発させたアルカリ金属を凝縮するステップ(e);および凝縮したアルカリ金属を反応器に移し、それによってアルカリ金属をリサイクルするステップ(f)を含む。
【0220】
ステップ(f)を実行することにより、本プロセスの1回のサイクルが完了することが理解されるべきである。アルカリ金属の再構成および遷移金属の追加の提供で、プロセスは、いくらかの実施形態によれば、追加のサイクルに継続する場合がある。
【0221】
いくらかの実施形態によれば、プロセスはさらに、ステップ(f)の後の少なくとも1つの追加の順序のためにステップ(a)~(d)を繰り返すステップを含む。いくらかの実施形態によれば、プロセスはさらに、ステップ(f)の後の少なくとも1つの追加の順序のためにステップ(a)~(c)を繰り返すステップを含む。いくらかの実施形態によれば、プロセスはさらに、少なくとも1つの追加の順序のためにステップ(a)~(d)を繰り返すステップを含む。
【0222】
いくらかの実施形態によれば、プロセスは:少なくとも1回のサイクルのためにステップ(a)~(f)を実行し、ステップ(a)~(c)を実行するステップを含む。いくらかの実施形態によれば、プロセスは:複数のサイクルのためにステップ(a)~(f)を実行し、ステップ(a)~(c)を実行するステップを含む。
【0223】
用語「複数の」は、1よりも多い任意の整数を指す。
【0224】
ここで、少なくとも1つの遷移金属酸化物の対応する遷移金属またはその合金への還元のためのプロセスを表すブロック図である
図1~
図2に言及する。
【0225】
具体的には、
図1は、いくらかの実施形態によれば、本明細書で詳述するように、ステップ(a)、(b)および(c)を含む、少なくとも1つの遷移金属酸化物の対応する遷移金属またはその合金への還元のためのプロセスを表すブロック図である。ステップ(a)は、ブロック1000により表され、ステップ(b)は、ブロック1010により表され、ステップ(c)は、ブロック1020により表される。
【0226】
同様に、
図2は、いくらかの実施形態によれば、本明細書で詳述するように、ステップ(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)を含む、少なくとも1つの遷移金属酸化物の対応する遷移金属またはその合金への還元のためのプロセスを表すブロック図である。ステップ(a)は、ブロック1000により表され、ステップ(b)は、ブロック1010により表され、ステップ(c)は、ブロック1020により表され、ステップ(d)は、ブロック1030により表され、ステップ(e)は、ブロック1040により表され、ステップ(f)は、ブロック1050により表される。
【0227】
以下に、本発明のプロセスにより実行することができる、特定の反応順序の非限定の特定の実施形態を提供する。さらに、少なくとも1つの遷移金属酸化物の対応する遷移金属またはその合金への還元のためのそれぞれ選択されたプロセス(すなわち特定の2つの反応順序)を表すブロック図である
図3~
図9に言及する。
図3~
図5の各1つは、いくらかの実施形態によれば、本明細書で詳述されるようにステップ(a)、(b)および(c)を含むプロセスを表し、ステップ(a)は、ブロック1000により表され、ステップ(b)は、ブロック1010により表され、ステップ(c)は、ブロック1020により表される。
図6~
図9の各1つは、いくらかの実施形態によれば、本明細書で詳述されるようにステップ(a)、(b)、(c),(d)、(e)および(f)を含むプロセスを表し、ステップ(a)は、ブロック1000により表され、ステップ(b)は、ブロック1010により表され、ステップ(c)は、ブロック1020により表され、ステップ(d)は、ブロック1030により表され、ステップ(e)は、ブロック1040により表され、ステップ(f)は、ブロック1050により表される。
【0228】
いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はNaであり、スキームIIは:
【0229】
【0230】
である。
【0231】
図3、
図5、
図6および
図7は、アルカリ金属としてナトリウムを使用する反応順序を指す。
【0232】
いくらかの実施形態によれば、アルカリ金属はKであり、スキームIIは:
【0233】
【0234】
である。
【0235】
図4、
図8および
図9は、アルカリ金属としてカリウムを使用する反応順序を指す。
【0236】
いくらかの実施形態によれば、MTはFeである;MT
nOmはFe2O3であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0237】
【0238】
である。
【0239】
【0240】
また、MA=Naの反応スキームIIは上に与えられ、以下の反応順序のそれぞれにおいて当業者であれば理解することができる。
【0241】
いくらかの実施形態によれば、MTはFeである;MT
nOmはFe2O3であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0242】
【0243】
である。
【0244】
また、MA=Kの反応スキームIIは上に与えられ、以下の反応順序のそれぞれにおいて当業者であれば理解することができる。
【0245】
いくらかの実施形態によれば、MTはFeである;MT
nOmはFeOであり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0246】
【0247】
である。
【0248】
いくらかの実施形態によれば、MTはFeである;MT
nOmはFeOであり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0249】
【0250】
である。
【0251】
【0252】
いくらかの実施形態によれば、MTはFeである;MT
nOmはFe3O4であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0253】
【0254】
である。
【0255】
いくらかの実施形態によれば、MTはFeである;MT
nOmはFe3O4であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0256】
【0257】
である。
【0258】
いくらかの実施形態によれば、MTはNiである;MT
nOmはNiOであり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0259】
【0260】
である。
【0261】
【0262】
いくらかの実施形態によれば、MTはNiである;MT
nOmはNiOであり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0263】
【0264】
である。
【0265】
いくらかの実施形態によれば、MTはCrである;MT
nOmはCr2O3であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0266】
【0267】
である。
【0268】
【0269】
いくらかの実施形態によれば、MTはCrである;MT
nOmはCr2O3であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0270】
【0271】
である。
【0272】
いくらかの実施形態によれば、MTはCrである;MT
nOmはCrOであり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0273】
【0274】
である。
【0275】
いくらかの実施形態によれば、MTはCrである;MT
nOmはCrOであり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0276】
【0277】
である。
【0278】
いくらかの実施形態によれば、MTはCrである;MT
nOmはCrO3であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0279】
【0280】
である。
【0281】
いくらかの実施形態によれば、MTはCrである;MT
nOmはCrO3であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0282】
【0283】
である。
【0284】
いくらかの実施形態によれば、MTはCrである;MT
nOmはCu2Oであり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0285】
【0286】
である;
【0287】
いくらかの実施形態によれば、MTはCrである;MT
nOmはCu2Oであり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0288】
【0289】
である;
【0290】
【0291】
いくらかの実施形態によれば、MTはCuである;MT
nOmはCuOであり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0292】
【0293】
である。
【0294】
いくらかの実施形態によれば、MTはCuである;MT
nOmはCuOであり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0295】
【0296】
である。
【0297】
いくらかの実施形態によれば、MTはCuである;MT
nOmはCuO2であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0298】
【0299】
である。
【0300】
いくらかの実施形態によれば、MTはCuである;MT
nOmはCuO2であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0301】
【0302】
である。
【0303】
いくらかの実施形態によれば、MTはZnである;MT
nOmはZnOであり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0304】
【0305】
である。
【0306】
【0307】
いくらかの実施形態によれば、MTはZnである;MT
nOmはZnOであり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0308】
【0309】
である。
【0310】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMnOであり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0311】
【0312】
である。
【0313】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMnOであり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0314】
【0315】
である。
【0316】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMn3O4であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0317】
【0318】
である。
【0319】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMn3O4であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0320】
【0321】
である。
【0322】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMn2O3であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0323】
【0324】
である。
【0325】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMn2O3であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0326】
【0327】
である。
【0328】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMnO2であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0329】
【0330】
である。
【0331】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMnO2であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0332】
【0333】
である。
【0334】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMn2O7であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0335】
【0336】
である。
【0337】
いくらかの実施形態によれば、MTはMnである;MT
nOmはMn2O7であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0338】
【0339】
である。
【0340】
いくらかの実施形態によれば、MTはScである;MT
nOmはSc2O3であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0341】
【0342】
である。
【0343】
いくらかの実施形態によれば、MTはScである;MT
nOmはSc2O3であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0344】
【0345】
である。
【0346】
いくらかの実施形態によれば、MTはTiである;MT
nOmはTiO2であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0347】
【0348】
である。
【0349】
いくらかの実施形態によれば、MTはTiである;MT
nOmはTiO2であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0350】
【0351】
である。
【0352】
【0353】
いくらかの実施形態によれば、MTはTiである;MT
nOmはTi2O3であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0354】
【0355】
である。
【0356】
いくらかの実施形態によれば、MTはTiである;MT
nOmはTi2O3であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0357】
【0358】
である。
【0359】
いくらかの実施形態によれば、MTはVである;MT
nOmはVOであり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0360】
【0361】
である。
【0362】
いくらかの実施形態によれば、MTはVである;MT
nOmはVOであり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0363】
【0364】
である。
【0365】
いくらかの実施形態によれば、MTはVである;MT
nOmはV2O3であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0366】
【0367】
である。
【0368】
いくらかの実施形態によれば、MTはVである;MT
nOmはV2O3であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0369】
【0370】
である。
【0371】
いくらかの実施形態によれば、MTはVである;MT
nOmはVO2であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0372】
【0373】
である。
【0374】
いくらかの実施形態によれば、MTはVである;MT
nOmはVO2であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0375】
【0376】
である。
【0377】
いくらかの実施形態によれば、MTはVである;MT
nOmはV2O5であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0378】
【0379】
である。
【0380】
いくらかの実施形態によれば、MTはVである;MT
nOmはV2O5であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0381】
【0382】
である。
【0383】
いくらかの実施形態によれば、MTはCoである;MT
nOmはCo2O3であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0384】
【0385】
である。
【0386】
いくらかの実施形態によれば、MTはCoである;MT
nOmはCo2O3であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0387】
【0388】
である。
【0389】
いくらかの実施形態によれば、MTはCoである;MT
nOmはCoOであり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0390】
【0391】
である。
【0392】
いくらかの実施形態によれば、MTはCoである;MT
nOmはCoOであり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0393】
【0394】
である。
【0395】
いくらかの実施形態によれば、MTはCoである;MT
nOmはCo3O4であり、MAはNaであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0396】
【0397】
である。
【0398】
いくらかの実施形態によれば、MTはCoである;MT
nOmはCo3O4であり、MAはKであり、反応スキームIおよびIIIは:
【0399】
【0400】
である。
【0401】
ここで、遷移金属合金の形成に向けられている本プロセスの実施形態に具体的に言及する。
【0402】
いくらかの実施形態によれば、プロセスは、金属合金の調製のためのものであり、ステップ(a)またはステップ(b)はさらに、第2の金属であるMbを反応器に提供するステップを含み、第2の金属は、MTと合金化可能である;ステップ(b)は、第2の金属をアルカリ金属および遷移金属酸化物と組み合わせて、反応スキームIおよびIIの2つの反応順序を誘導し、さらにスキームIV:
【0403】
【0404】
の反応を誘導する。
【0405】
いくらかの実施形態によれば、第2の金属であるMbは、アルカリ金属ではない。いくらかの実施形態によれば、第2の金属であるMbは、遷移金属であるMTbである。
【0406】
用語「合金化可能な」は、合金を形成する2つの金属元素の能力を指す。したがって、用語「合金化可能な金属」は、本明細書で使用されるように、本発明のプロセスで形成された遷移金属と合金を形成することができる任意の金属を指す。いくらかの実施形態によれば、合金化可能な金属は、本発明のプロセスの条件(すなわち、ステップ(b)の条件で形成された遷移金属と合金を形成する。
【0407】
また、合金化可能な金属は、金属酸化物として提供される場合があり、いくらかの実施形態によれば、本プロセスの反応条件下で還元される(すなわち、アルカリ金属により還元される)場合がある。
【0408】
いくらかの実施形態によれば、プロセスは、金属合金の調製のためのものであり、ステップ(a)は、式Mb
iOj(式中、iおよびjの各1つは、1、2、3、4、5、6または7である)を有する第2の金属酸化物をさらに提供するステップを含む;ならびにステップ(b)は、2つの金属酸化物をアルカリ金属と組み合わせるステップを含み、反応スキームIおよびIIIは:
【0409】
【0410】
である;ならびにステップ(b)はさらに、合金を形成する反応IV:
【0411】
【0412】
を誘導した。
【0413】
反応スキームIがIaおよびIbに分割されるが、反応スキームIIIがIIIaおよびIIIbに分割されることが理解されるべきである。
【0414】
いくらかの実施形態によれば、第2の金属であるMbは、遷移金属であるMTbである。
【0415】
したがって、いくらかの実施形態によれば、ステップ(a)は、式MTa
nOmおよびMTb
iOj(式中、iおよびjの各1つは、1、2、3、4、5、6または7であり、MTa、MTbの各1つは:Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる群より選択される遷移金属である)を有する少なくとも2つの遷移金属酸化物を提供するステップを含む;ならびに、ステップ(b)は、遷移金属酸化物をアルカリ金属と組み合わせるステップを含み、反応スキームIおよびIIIは:
【0416】
【0417】
である;ならびにステップ(b)はさらに、合金を形成する反応IV:
【0418】
【0419】
を誘導した。
【0420】
いくらかの実施形態によれば、本発明のプロセスのいずれか1つにより形成された遷移金属合金は:真鍮(CuZn)、コンスタンタン(CuNi)、クニフェ(CuNiFeまたはCuNiFeCo)、白銅(CuNiFeまたはCuNiMn)、マンガニン(CuMnNi)、洋白(CuNiまたはCuNiZn)、エリンバー(NiFeCr)、フェルニコ(FeNiCo)、フェロマンガン(FeMn)、フェロニッケル(FeNi)、フェロチタン(FeTi)、フェロバナジウム(FeV)、インバー(FeNi)、コバール(FeNiCo)、クロメル(NiCr)およびニチノール(NiTi)からなる群より選択される。
【0421】
図10~
図11は、それぞれ2つの遷移金属酸化物の対応するその遷移金属合金(
図10ではCuZn合金であり、
図11ではFeNi合金である)への還元ためのプロセスを表すブロック図である。
【0422】
ここで、いくらかの実施形態によれば、本発明のプロセスを実行するように構成された、反応系に言及する。
【0423】
いくらかの実施形態によれば、本プロセスはさらに:
反応チャンバを定義する筐体、および
遷移金属酸化物入口、アルカリ金属入口、アルカリ金属出口および単離された遷移金属もしくは合金の出口を含み、前記入口および出口のそれぞれは、反応チャンバと流体連絡している、
反応器;
アルカリ金属入口およびアルカリ金属出口を含むアルカリ金属容器;
遷移金属入口を含む単離された遷移金属もしくは合金の容器;
蒸発させたアルカリ金属を凝縮するように構成され、反応器のアルカリ金属出口と接続した近位端、およびアルカリ金属容器のアルカリ金属入口と接続した遠位端を含む、コンデンサ;
反応器のアルカリ金属入口と接続した近位端、およびアルカリ金属容器のアルカリ金属出口と接続した遠位端を含むアルカリ金属移送管;
反応器の遷移金属出口と接続した近位端、単離された遷移金属または合金の容器の遷移金属入口と接続した遠位端を含む遷移金属移送管
を含む遷移金属酸化物還元システムを提供するステップを含む。
【0424】
いくらかの実施形態によれば、反応器はさらに、不活性ガス入口およびガス出口を含み、それぞれ反応チャンバと流体連絡しており、不活性ガス入口は、不活性ガス源と流体連絡している。いくらかの実施形態によれば、不活性ガス入口は、ガス管を通って不活性ガス源に接続される。いくらかの実施形態によれば、ガス管は、不活性ガス源から反応チャンバへの不活性ガスの流れを調節するように構成された弁を有する。
【0425】
いくらかの実施形態によれば、本プロセスは:
(a)遷移金属酸化物入口を通って少なくとも1つの遷移金属酸化物を反応チャンバに提供するステップ;
(b)反応チャンバ内で遷移金属酸化物をアルカリ金属と組み合わせて、2つの反応順序を誘導するステップ;
(c)反応器のアルカリ金属出口を通ってアルカリ金属を蒸発させて、反応チャンバ内で遷移金属またはその合金を単離するステップ;
(d)遷移金属移送管を通って単離された遷移金属またはその合金を単離された遷移金属または合金の容器に移すステップ;
(e)コンデンサを使用して蒸発させたアルカリ金属をアルカリ金属容器に凝縮するステップ;ならびに
(f)アルカリ金属移送管を通ってアルカリ金属容器から凝縮したアルカリ金属を反応器に移すステップ
を含み、
ステップ(e)は、ステップ(d)の前に行われる場合がある。
【0426】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)はさらに、不活性ガス入口を通って不活性ガスを反応チャンバに挿入し、それによって、空気から保護された反応環境を維持するステップを含む。
【0427】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)、ステップ(c)またはその両方はさらに、反応器のガス出口を通って形成された酸素ガスを排気させるステップを含む。
【0428】
いくらかの実施形態によれば、コンデンサはさらに、その近位端と遠位端との間に配置された一方向弁を含み、その弁は、レクターからアルカリ金属容器への蒸発させたアルカリ金属の流れを調節するように構成されている。いくらかの実施形態によれば、ステップ(f)はさらに、弁を使用するアルカリ金属容器からレクターへの凝縮したアルカリ金属の流れを調節するステップを含む。
【0429】
いくらかの実施形態によれば、遷移金属移送管はさらに、その近位端と遠位端との間に配置された一方向弁を含み、その弁は、レクターから単離された遷移金属または合金の容器への単離された遷移金属または金属合金の流れを調節するように構成されている。いくらかの実施形態によれば、ステップ(c)またはステップ(d)はさらに、弁を使用するレクターから単離された遷移金属または合金の容器への単離された遷移金属または金属合金の流れを調節するステップを含む。
【0430】
実施例
一般手順-系
金属酸化物を純金属に還元するために、いくつかの金属酸化物を純ナトリウムと900℃で反応させる。以下の金属酸化物:Cu2O、NiO、Cr2O3およびFe2O3を試験した。
【0431】
系の構成要素:
【0432】
1.反応器-SS304 265mLのオーダーメイド。
【0433】
2.SiCるつぼ 37mL。
【0434】
3.第1の誘導加熱システム(中国製6kw])、誘導コイル(5ターン)。
【0435】
4.第2の誘導システム(中国製3kw)、誘導コイル(3ターン)。
【0436】
5.系を1つの水冷器で冷却した。
【0437】
6.SS304チューブ 430mL(ナトリウム廃棄反応器)およびフランジ(NW50)。
【0438】
7.アルゴン挿入用のパーカーコネクタ。
【0439】
8.熱電対タイプK(3個-1個は外側1/2インチの接続、1個は反応器内、1個はるつぼ内)。
【0440】
9.アルゴン流量調整器 会社「AALBORG」。
【0441】
10.3個のオン/オフ弁1/4インチおよび1個の真空弁。
【0442】
11.真空ポンプを保護するためのssウールを用いたベロートラップ。
【0443】
12.真空ポンプ。
【0444】
13.スタンド。
【0445】
14.断熱ウール。
【0446】
反応器の材料構造はSS304であり、容積が265mLであり、1/2インチのSS316チューブを通って、430mLの容積を有するSS304の材料構造を有するナトリウム廃棄反応器に接続され、反応器内にはSiCで製造されたるつぼが配置された。
【0447】
KFフランジ内の誘導システムおよびバイトンoリングを保護するため、アルミナブロックの保護を重要な場所で使用した。
【0448】
一般的な実験手順
金属酸化物3grおよび純ナトリウム3grを有するるつぼを配置した反応器内で、第1の誘導システムを制御するために反応器内に配置された1つの熱電対、反応を測定するためにるつぼ内に配置された第2の熱電対をデータロガーに接続した。
【0449】
第1の誘導システムは、実験中、るつぼが配置された反応器の下部分を、15℃/分の加熱速度および40mL/分のアルゴン流で900℃まで加熱する。
【0450】
反応の開始時、真空弁および第2のアルゴン排出弁を閉じ、アルゴン流出口は、第1のアルゴン排出弁を通っている。温度が700℃に到達すると、第1のアルゴン排出弁を閉じ、第2の弁を開いた。さらに、第1の誘導システムが700℃に到達すると、200℃に達するように第2の誘導システムを停止した。反応の開始から70分後、真空に到達するまで900℃で30分間ポンプを使用して徐々に真空を開始した。30分後、アルゴンを40mL/分の流速で挿入した。システム内の圧力が14.6psiに到達すると、第1のアルゴン出口を開き、誘導システムを閉じた。
【0451】
実施例1:Fe
2
O
3
のFeへの還元
一般的な実験手順において上で詳述したように、還元剤としてナトリウムを使用するFe2O3の鉄金属への還元を実行した。反応ピークを480℃~720℃で測定した。他の反応パラメータを表1に要約する:
【0452】
【0453】
図12Aは、実施例1の反応の間の反応器内で測定された温度(℃)対、時間(分)を表すグラフである。
図12Bは、実施例1の反応の反応生成物のXRDパターンである。具体的には、実施例1において、主位相は金属鉄である。
【0454】
実施例2:Cu
2
OのCuへの還元
一般的な実験手順において上で詳述したように、還元剤としてナトリウムを使用するCu2Oの銅金属への還元を実行した。反応開始から31.33分で、反応ピークを417℃~505℃で測定した。他の反応パラメータを表2に要約する:
【0455】
【0456】
図13Aは、実施例2の反応の間の反応器内で測定された温度(℃)対、時間(分)を表すグラフである。
図13Bは、実施例2の反応の反応生成物のXRDパターンである。具体的には、実施例2において、主位相は、微量のCu
2Oを有する金属銅である。
【0457】
実施例3:NiOのNiへの還元
一般的な実験手順において上で詳述したように、還元剤としてナトリウムを使用するNiOのニッケル金属への還元を実行した。反応開始から32分で、反応ピークを407℃~595℃で測定した。他の反応パラメータを表3に要約する:
【0458】
【0459】
図14Aは、実施例3の反応の間の反応器内で測定された温度(℃)対、時間(分)を表すグラフである。
図14Bは、実施例3の反応の反応生成物のXRDパターンである。具体的には、試料の測定値を
図14Bに示し、金属ニッケルのみが含まれていた。
【0460】
実施例4:Cr
2
O
3
のCrへの還元
一般的な実験手順において上で詳述したように、還元剤としてナトリウムを使用するCr2O3のクロム金属への還元を実行した。反応開始から38分で、反応ピークを509℃~730℃で測定した。他の反応パラメータを表4に要約する:
【0461】
【0462】
図15Aは、実施例4の反応の間の反応器内で測定された温度(℃)対、時間(分)を表すグラフである。
図15Bは、実施例4の反応の反応生成物のXRDパターンである。具体的には、この試料において、NaCrO
2(87%)および窒化クロムカーバイド(13%)がある。
【0463】
結論
ニッケルおよび酸化銅のナトリウムとの反応からの生成物は、XRD結果によれば高品質の金属である。銅試料では、主位相は、微量のCu2Oを有する金属銅であり、ニッケル試料では、金属ニッケルのみがある。
【0464】
900℃で30分間、40mL/分のアルゴン流を用いる45torrの真空の適用時、ナトリウムのほとんどは、反応混合物から廃棄される。より揮発性であるカリウムは、改善された結果ではないにしても、同様の結果を与える場合がある。
【0465】
本発明は、その特定の実施形態と組み合わせて説明されているが、当業者には明らかな数多くの代替物、修正および変形が存在する場合があることは明らかである。本発明が、その適用において、本明細書に記載の構成要素および/または方法の構造の詳細および配置に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。他の実施形態は、実施される場合があり、一実施形態は、種々の方法で実行される場合がある。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内に属する、そのような代替物、修正および変形すべてを包含する。
【国際調査報告】