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特表2024-523862人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する
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  • 特表-人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する 図1
  • 特表-人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する 図2
  • 特表-人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する 図3
  • 特表-人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する 図4
  • 特表-人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する 図5
  • 特表-人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する 図6
  • 特表-人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する 図7
  • 特表-人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する 図8
  • 特表-人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】人工ニューロンマイクロ組織は、非即時的神経融合および迅速神経筋回復のための外因性軸索を提供する
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20240625BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20240625BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61F2/08
A61L27/36 130
A61L27/38
A61L27/24
A61L27/22
A61L27/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576432
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 US2022032978
(87)【国際公開番号】W WO2022261416
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/209,639
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.テフロン
3.TWEEN
4.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(71)【出願人】
【識別番号】511291429
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ ガバメント アズ リプリゼンテッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
【住所又は居所原語表記】810 Vermont Avenue, NW Washington, District of Columbia 20420 U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】523465034
【氏名又は名称】メアリー ヒッチコック メモリアル ホスピタル フォー イットセルフ アンド オン ビハーフ オブ ダートマス-ヒッチコック クリニック
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】カレン ダニエル ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】バレル ジャスティン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン ジョゼフ エム.
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB18
4C081CD08
4C081CD09
4C081CD12
4C081CD15
4C081CD34
4C097AA20
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097CC12
4C097DD01
4C097DD11
4C097DD13
(57)【要約】
さまざまな局面および態様において、本発明は、組織工学によって作製された神経筋インターフェースであって、以下:細胞外マトリックスコアであって、該細胞外マトリックスコアが、該細胞外マトリックスコアの第1の末端にあるニューロンの集団を含み、該ニューロンの集団が、該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、該ニューロンの集団が、1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される、該細胞外マトリックスコアを含む、組織工学によって作製された神経筋インターフェースを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織工学によって作製された神経筋インターフェースであって、以下:
細胞外マトリックスコアであって、
該細胞外マトリックスコアが、該細胞外マトリックスコアの第1の末端にあるニューロンの集団を含み、該ニューロンの集団が、該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
該ニューロンの集団が、1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される、
該細胞外マトリックスコア
を含む、該組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項2】
前記細胞外マトリックスコアの第2の末端にあるニューロンの第2の集団であって、
該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される
該ニューロンの第2の集団
をさらに含む、請求項1記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項3】
細胞外マトリックスコアが、約10μm~約25μm、約25μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約150μm、約150μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約400μm、約400μm~約500μm、約500μm~約700μm、および約700μm~約1000μm、約1000μm~約1500μm、および約1500μm~約2000μm、および約2000μm~約2500μm、および約2500μm~約3000μmからなる群より選択される最大断面寸法を有する、請求項1または請求項2記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項4】
ヒドロゲルシースが、約20μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約350μm、約350μm~約400μm、約400μm~約450μm、約450μm~約500μm、約500μm~約600μm、約600μm~約800μm、約800μm~約1200μm、約1200μm~約1700μm、および約1700μm~約2200μm、および約2200μm~約2700μm、および約2700μm~約3200μmからなる群より選択される最大断面寸法を有する、請求項1~3のいずれか一項記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項5】
ヒドロゲルシースが約701μmの最大断面寸法を有し、細胞外マトリックスコアが約300μmの最大断面寸法を有する、請求項1~4のいずれか一項記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項6】
約100μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約350μm、約350μm~約400μm、約400μm~約450μm、約450μm~約500μm、約500μm~約600μm、約600μm~約800μm、約800μm~約1200μm、約1200μm~約1500μm、および約1500μm~約2000μmの長さを有する、請求項1~5のいずれか一項記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項7】
内皮細胞、筋細胞、筋芽細胞、星状膠細胞、嗅神経鞘細胞、乏突起膠細胞またはシュワン細胞からなる群より選択される1つまたは複数の非ニューロン細胞
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項8】
ニューロンが、幹細胞に由来する、または後根神経節から単離される、請求項1~7のいずれか一項記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項9】
ニューロンが、異種ニューロン、自家/患者特異的ニューロン、同種ニューロン、全後根神経節または感覚外植片である、請求項1~8のいずれか一項記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項10】
ニューロンが、野生型またはトランスジェニックブタに由来する異種ニューロンである、請求項1~9のいずれか一項記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項11】
細胞外マトリックスコアが、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、フィブリン、フィブロネクチンおよび/またはヒアルロン酸を含む、請求項1~10のいずれか一項記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項12】
ヒドロゲルシースが、アガロース、コラーゲン、ゼラチン、シルク、キトサン、フィブリンおよび/またはヒアルロン酸を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の組織工学によって作製された神経筋インターフェース。
【請求項13】
その必要のある対象において末梢神経損傷後の遠位神経分節の再生能力を保存する方法であって、以下の段階:
1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェース(TE-NMI)を、遠位神経分節の遠位部位に移植する段階であって、
該TE-NMIが、以下:
細胞外マトリックスコアであって、
該細胞外マトリックスコアが、該細胞外マトリックスコアの第1の末端にあるニューロンの集団を含み、該ニューロンの集団が、該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
該ニューロンの集団が、1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される、
該細胞外マトリックスコア
を含む、該移植する段階
を含む、該方法。
【請求項14】
TE-NMIが、以下:
前記細胞外マトリックスコアの第2の末端にあるニューロンの第2の集団であって、
該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される
該ニューロンの第2の集団
をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
移植が、損傷の直後に実施される、請求項13または請求項14記載の方法。
【請求項16】
損傷が、手術に起因する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
移植が、損傷後24時間未満で実施される、請求項13または請求項14記載の方法。
【請求項18】
移植が、損傷後7日未満で実施される、請求項13または請求項14記載の方法。
【請求項19】
移植が、損傷後2週間未満で実施される、請求項13または請求項14記載の方法。
【請求項20】
移植が、損傷後1ヶ月未満で実施される、請求項13または請求項14記載の方法。
【請求項21】
移植が、損傷後1ヶ月またはそれ以上で実施される、請求項13または請求項14記載の方法。
【請求項22】
1つまたは複数のTE-NMIが、遠位神経分節に端側移植される、神経束内に移植される、連続的に移植される、または、除神経された筋肉に移植される、請求項13~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
1つまたは複数のTE-NMIの移植が、超音波誘導またはMRI誘導される、請求項13~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
少なくとも2個の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースが、遠位神経分節に移植される、請求項13~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
少なくとも5個の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースが、遠位神経分節に移植される、請求項13~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
少なくとも10個の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースが、遠位神経分節に移植される、請求項13~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
末梢神経損傷を処置するために一次神経修復処置を実施する段階をさらに含む、請求項13~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
一次神経修復処置が、直接吻合、自家移植、同種移植、神経導管、神経移行、または組織工学によって作製された神経の移植を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
その必要のある対象において末梢神経損傷を処置する方法であって、以下の段階:
1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェース(TE-NMI)を、遠位神経分節の遠位部位に移植する段階であって、
該TE-NMIが、以下:
細胞外マトリックスコアであって、
該細胞外マトリックスコアが、該細胞外マトリックスコアの第1の末端にあるニューロンの集団を含み、該ニューロンの集団が、該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
該ニューロンの集団が、1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される、
該細胞外マトリックスコア
を含む、該移植する段階;
筋肉および/または感覚末端器官の神経支配について、そのままであれば除神経されている遠位分節全体にわたって、外因性軸索成長をモニタリングする段階;
遠位神経分節における、1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースを、除去する段階; ならびに
一次神経修復処置を実施する段階であって、それによって末梢神経損傷を処置する、該実施する段階
を含む、該方法。
【請求項30】
TE-NMIが、以下:
前記細胞外マトリックスコアの第2の末端にあるニューロンの第2の集団であって、
該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される
該ニューロンの第2の集団
をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
一次神経処置が、直接吻合、自家移植、同種移植、神経導管、神経移行、または組織工学によって作製された神経移植片の移植を含む、請求項29または請求項30記載の方法。
【請求項32】
TE-NMIが、移植後1週間未満で除去される、請求項29~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
TE-NMIが、移植後1ヶ月未満で除去される、請求項29~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
TE-NMIが、移植後1年未満で除去される、請求項29~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
TE-NMIが、移植後1年またはそれ以上で除去される、請求項29~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
その必要のある対象において末梢神経損傷を処置する方法であって、以下の段階:
1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェース(TE-NMI)を、遠位神経分節の遠位部位に移植する段階であって、
該TE-NMIが、以下:
細胞外マトリックスコアであって、
該細胞外マトリックスコアが、該細胞外マトリックスコアの第1の末端にあるニューロンの集団を含み、該ニューロンの集団が、該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
該ニューロンの集団が、1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される、
該細胞外マトリックスコア
を含む、該移植する段階;
筋肉および/または感覚末端器官の神経支配について、そのままであれば除神経されている遠位分節全体にわたって、外因性軸索成長をモニタリングする段階;
遠位神経分節における、1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースを、除去する段階; ならびに
遠位神経分節におけるTE-NMI軸索を、少なくとも1つの近位軸索と融合させる段階
を含む、該方法。
【請求項37】
TE-NMIが、以下:
前記細胞外マトリックスコアの第2の末端にあるニューロンの第2の集団であって、
該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される
該ニューロンの第2の集団
をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
TE-NMIを除去する前に試薬を適用して、軸索変性を抑止する、請求項36または請求項37記載の方法。
【請求項39】
試薬が、低張生理食塩水またはカルシウムキレート剤を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
試薬が、カルシウムキレート剤を含む低張生理食塩水である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
一次神経修復が実施される、請求項36~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
一次神経処置が、直接吻合、自家移植、同種移植、神経導管、神経移行、または組織工学によって作製された神経移植片の移植を含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
一次神経修復の前に、フリーラジカル消去剤が適用される、請求項41または請求項42記載の方法。
【請求項44】
フリーラジカル消去剤が、メチレンブルーである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
一次神経修復中に融合剤を適用して膜封止を促進する、請求項41~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
融合剤が、ポリエチレングリコールまたはキトサンである、請求項43記載の方法。
【請求項47】
融合剤の適用が、神経再生および機能回復を促進する、請求項45または請求項46記載の方法。
【請求項48】
TE-NMIが、細胞外マトリックスコアを同軸に取り囲むヒドロゲルシースをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項49】
TE-NMIが、細胞外マトリックスコアを同軸に取り囲むヒドロゲルシースをさらに含む、請求項13~47のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月11日付で出願された米国仮特許出願第63/209,639号に対する米国特許法第119条(e)の下での優先権を得る権利があり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府支援の研究開発に関する声明
本発明は、陸軍から授与されたW81XWH-16-1-0796および退役軍人省に代表される米国政府から提供された功労賞I01-BX003748に基づく政府支援により行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
末梢神経損傷(PNI)は、外傷症例の3%に存在し、神経叢損傷および神経根引き抜き損傷を含めると最大5%に存在すると推定されている。米国では毎年550,000件を超えるPNI手術が実施されている。神経外科の最近の進歩にもかかわらず、患者の50%しか満足のいく機能回復を達成していないものと推定されている。再生の成功にはいくつかの要因が影響するが、外科的修復の遅れが機能回復不良の最も重要な要因と考えられている。損傷後、遠位神経の軸索はワーラー変性を起こす。脱分化したシュワン細胞は、軸索の再生と標的筋の再神経支配を促進するビュングネル帯と呼ばれる円柱状の再生促進構造を一時的に形成する。時間の経過とともに、外科的修復の遅れに続発する軸索接触の喪失による長期にわたる除神経は、ビュングネル帯の劣化をもたらし、筋再神経支配および最終的には機能回復の可能性を減弱させる。残念なことに、外科医は自然回復の可能性を確認するために「様子見」の手法を利用しているため、外科的修復の遅れが一般的である。かくして、最適な外科的処置期間(surgical window)を引き延ばしかつ有意義な回復の可能性を改善しうる新規の戦略に対する、臨床上の満たされていない要求が存在している。したがって、当技術分野には、神経修復の改善された方法に対する必要性が存在している。本開示はその必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【0004】
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の好ましい態様に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとより良く理解されるであろう。本発明を例証する目的で、図面には例示的な態様が示されている。しかしながら、本発明は、図面に示された態様の正確な構成および手段に限定されないことが理解されるべきである。
【0006】
図1図1A~1Fは、組織工学によって作製された神経筋インターフェース(TE-NMI)の製造および特性評価。図1A: TE-NMIは、解剖学的に着想を得た生体工学的経路であり、保護用バイオマテリアル収容体内に、感覚、運動、または運動と感覚の両方の軸索路に亘る、個別のニューロン集団を有する。モジュール式TE-NMI製造プロセスにより、さまざまな直径を有するマイクロカラムヒドロゲル、ニューロン細胞源、またはバイオマテリアル外側収容体の構築が可能になる。図1B: ニューロン/軸索マーカーであるTuj1(緑)で標識され、核を同定するためにヘキスト(青)で対比染色された、外径2mmおよび内径1mmを有する感覚TE-NMIの代表的な位相画像および(B')共焦点画像を示す。図1C: 緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するようにウイルス形質導入された、7インビトロ日数(DIV)の時点で外径350μmおよび内径180μmを有する運動TE-NMIの、代表的な共焦点画像。図1D: 14インビトロ日数の時点で、位相撮像により、軸索に亘る2つの別個の運動ニューロン(MN)集団が明らかになった。(D') 高解像度共焦点撮像により、Tuj1、運動ニューロン特異的マーカーであるChAT、およびヘキストについて標識された運動ニューロン/軸索の別個の領域が明らかになった。図1E: アガロースまたはアガロース-ゼラチン複合材(AGX)の外側収容体を有する構築物の、7 DIVでの代表的な共焦点画像。図1F: 各バイオマテリアル収容体内の神経突起の長さを、1および3 DIVの時点で比較した。二元配置ANOVAを用いて平均値を比較した。エラーバーは標準誤差を表す。p<0.05; **p<0.01; ****p<0.0001。スケールバー: 図1C~1D 500μm, ズームイン: 100μm。図1E 500μm。
図2図2A~2Gは、TE-NMIの生存性、成長、およびそのままであれば除神経されている神経との統合。図2A: 無細胞カラム、1つのTE-NMI、または2つのTE-NMIの移植を含めて、慢性の宿主軸索切断手術モデルおよび実験群を例証する概略図。陰性対照として無細胞対照も移植した。本発明者らは、TE-NMIが、そのままであれば除神経されている遠位神経におけるシュワン細胞と相互作用する軸索を伸長させるであろうという仮説を立てた。図2B: TE-NMIを神経に微量注入できることを示す術中の写真。図2C: 光学クリアリングおよび多光子顕微鏡法にしたがって可視化された、移植後2週時の微量注入されたTE-NMIの代表的な画像。移植片領域に侵入する宿主細胞から保護された内腔内で、堅牢なTE-NMIニューロンおよび軸索(GFP)が見られた。図2D: TE-NMI軸索が、そのままであれば除神経されている神経内で伸長し、シュワン細胞と相互作用したかどうかを評価するために、移植部位から5mm遠位で採取した神経断面を、シュワン細胞(S100)およびTE-NMI軸索(GFP)について標識した。図2E: ビュングネル帯に似た整列シュワン細胞を通って伸びるGFP+ TE-NMI軸索の例を示す、高解像度画像。図2F: 1つのTE-NMIよりも2つのTE-NMIの遠位に、GFPでより大きな成長が見られた。図2G: 2つのTE-NMI群では、移植部位の遠位に、S100で被覆率の増加が見られた。これらの所見は、宿主神経軸索切断モデルにおいて移植後6週の時点で、TE-NMIが、除神経された遠位神経内の、宿主S100+ シュワン細胞と相互作用し、潜在的に影響を与えうることを示唆している。エラーバーは標準誤差を表す。一元配置ANOVAとそれに続くTukeyの事後検定を用いて平均値を比較した。p<0.05。スケールバー: 図2C: 100μm、図2D: 100μm、図2E: 5μm。
図3図3A~3Dは、慢性の宿主神経軸索切断モデルにおける、TE-NMI移植後16週時の誘発筋応答。図3A: 手術モデル、移植パラダイム、および結果尺度を例証する概略図。宿主の慢性神経軸索切断モデルにおいて、混合型運動-感覚TE-NMIを総腓骨神経に固定した。移植後16週の時点で、遠位標的前脛骨筋を神経支配する総腓骨神経に対する経皮刺激後に、誘発筋応答を記録した。図3B: TD-tomato (運動性、赤)またはGFP (感覚性、緑)を発現するように形質導入されたニューロン集団を含む混合型運動-感覚TE-NMIの代表的な共焦点画像。図3C: インプラントなしまたはマイクロカラムのみの対照群では記録可能な波形が不規則であった/欠如していたのに比べ、TE-NMI群では再現可能な強固な波形が誘発された。図3D: TE-NMI群では対照と比較して大きな平均振幅の誘発筋応答が見られた。これらの所見は、TE-NMIが、除神経された筋肉と機能的に統合し、慢性の神経軸索切断後16週の時点で、電気生理学的筋応答を保存していることを示唆している。エラーバーは標準誤差を表す。一元配置ANOVAとそれに続くTukeyの事後検定を用いて平均値を比較した。**p<0.01。
図4図4A~4Iは、そのままであれば除神経されている遠位神経での、新しく切断されたTE-NMI軸索を介した非即時的軸索融合。図4A: 手術モデル、非即時的神経融合パラダイム、および結果尺度を例証する概略図。移植および宿主の慢性神経軸索切断後20週の時点で、遠位神経に新たに離断された軸索を残してTE-NMIを除去した。軸索融合を可能にするために、以前のプロトコルと同様に、カルシウムキレート剤を含有する低張生理食塩水中で移植片を切除した。図4B: 近位総腓骨神経が近くの筋肉に固定され、TE-NMIが遠位神経に固定され、その上を無傷の脛骨神経が走っていることを示す移植後20週時の術中の画像。図4C: TE-NMI切除後の総腓骨神経の遠位部分に縫合された、以前は損傷されていなかった脛骨神経を示す非即時的神経修復直後の術中の画像。青色の染色は、融合プロトコル中のメチレンブルーの適用によるものである。図4D: 非即時的神経融合の直後に記録された複合神経活動電位は、TE-NMIを受けていた全ての動物において得られた。無細胞対照と比較してTE-NMI群ではさらに高い神経伝導性が見られた。図4E: 複合筋活動電位は、修復部位の近位を刺激することによって誘発筋応答を誘発した後に記録された。無細胞対照と比較してTE-NMI群ではさらに大きな誘発筋応答が観察された。図4F: 修復後20週の時点で、手術部位を再度露出させ、組織学的分析のためにTE-NMI移植片を採取した。ニューロンおよび樹状突起をMAP2 (遠赤)で標識し、感覚および運動TE-NMIニューロンならびに軸索を、それぞれ、GFPおよびtdTomatoの内因性発現で標識した代表的な縦方向画像を示す。内腔に広がる軸索を伴う堅牢なTE-NMIニューロンの生存が、移植後20週の時点で見られた。図4G: 高倍率では、MAP2で共標識してマイクロカラム内に健常なニューロンが容易に可視化された。図4H: 代表的な縦方向の神経切片および図4I: 切除された移植片のすぐ遠位側の軸神経断面を、シュワン細胞(S100)について標識して示す。堅牢なTE-NMI感覚成長(GFP, 緑色)が可視化された。TE-NMIの成長が見られた(TD-Tomato, 赤)が、発現は弱かった。エラーバーは標準誤差を表す。対応のない両側スチューデントt検定を用いて平均値を比較した。p<0.05; **p<0.01。スケールバー: 図4F 25μm。
図5図5A~5Cは、非即時的神経修復後1ヶ月の電気生理学的機能回復。図5A: 非即時的神経修復後1ヵ月(最初の神経離断後24週)の時点で得られた電気生理学的結果尺度を例証する概略図。図5B: 複合神経活動電位(CNAP)は両群において誘発されたが、TE-NMI移植片を以前に受けていた動物ではさらに大きな応答およびさらに速い伝導速度が観察された。図5C: TE-NMI群において誘発応答が上昇した全ての動物で、複合筋活動電位(CMAP)が記録された。対応のない両側スチューデントt検定を用いて平均値を比較した。エラーバーは標準誤差を表す。p<0.05; **p<0.01。
図6図6A~6Iは、非即時的神経修復後1ヵ月の神経形態計測および筋再神経支配。図6A: 修復部位から5mm遠位の神経断面の代表的な共焦点画像を、シュワン細胞(S100)、宿主/融合軸索(SMI35)、およびミエリン(ミエリン塩基性タンパク質;mBP)について標識した。図6B: 修復部位の遠位側では軸索の総数において数の差は見られなかった。図6C: TE-NMI移植を以前に受けていた動物では、宿主軸索サイズの増加が観察された。図6D: 軸索直径の頻度分布をプロットすることにより、TE-NMI群においてわずかに右方へのシフトを認めることができた。図6Eおよび6F: 神経筋接合部(NMJ)を同定するためのアセチルコリン受容体(ブンガロトキシン)およびシナプス前マーカーであるシナプトフィジンについて染色した前脛骨筋(TA)の筋断面の代表的な共焦点画像。図6G: 群間でAchRカウントの総数には有意差なし。図6H: AchRおよびシナプトフィジンについて共標識された成熟NMJのパーセントによって示されるように、TE-NMI移植を以前に受けていた動物ではさらに大きな筋再神経支配が見られた。図6I: TE-NMI群では筋重量の増加が見られた。まとめると、これらの所見は、両群とも進行中の再生を示している一方で、TE-NMIが非即時的神経修復後にさらに早い軸索成熟および筋再神経支配を可能にしうることを示唆している。対応のない両側スチューデントt検定を用いて平均値を比較した。エラーバーは標準誤差を表す。p<0.05; **p<0.01。
図7図7A~7Cは、混合モダリティTE-NMI神経突起成長比較。図7A: 両端にプレーティングされた運動ニューロンおよび感覚ニューロンの集団から構成される、混合型運動-感覚TE-NMIの、3 DIVでの代表的な共焦点再構成。運動ニューロンおよび感覚ニューロン(DRG外植片)を、それぞれGFP (緑)またはtdTomato (赤)を内因的に発現するように形質導入した。図7B: DRG外植片に伸長する運動軸索(MN-DRG)および運動ニューロンに伸長する感覚軸索(DRG-MN)の神経突起成長速度を算出した。図7C: 運動ニューロン/軸索(ChAT, 遠赤)を可視化するための免疫細胞化学後の14 DIVでの代表的な共焦点画像を示す。エラーバーは標準誤差を表す。p<0.05。スケールバー: 500μm。
図8図8A~8Jは、TE-NMIの生存性、成長、およびそのままであれば除神経されている神経との統合。図8A: 無細胞カラム、1つのTE-NMI、または2つのTE-NMIの移植を含めて、慢性の宿主軸索切断手術モデルおよび実験群を例証する概略図。陰性対照として無細胞対照を移植した。本発明者らは、そのままであれば除神経されている遠位神経において、シュワン細胞と相互作用する軸索を、TE-NMIが伸長させるであろうという仮説を立てた。図8B: 光学クリアリングおよび多光子顕微鏡法にしたがって可視化された、移植後2週時の微量注入されたTE-NMIの代表的な画像。移植片領域に侵入する宿主細胞から保護された内腔内で、堅牢なTE-NMIニューロンおよび軸索(GFP)が見られた。図8C~8J: TE-NMI軸索が、そのままであれば除神経されている神経内で伸長し、シュワン細胞と相互作用したかどうかを評価するために、移植部位から5mm遠位で採取した神経断面を、TE-NMI軸索(GFP)、シュワン細胞(S100β)、核(Hoechst; HST)、およびC-Jun (除神経されたシュワン細胞において一過性に見られる再生促進転写因子をコードする遺伝子)について標識した。図8C: ビュングネル帯に似た整列シュワン細胞を通って伸びるGFP+ TE-NMI軸索の例を示す高解像度画像。図8D~8E: 1つのTE-NMIよりも2つのTE-NMIの遠位に、神経ごとに、GFPでより大きな成長が見られた。図8F: より高倍率で、C-Junを発現する亜集団とともにシュワン細胞が容易に観察された。図8G: 無細胞群と比較して2×TE-NMIコホートではさらに多数の細胞が見られた。図8H: 2つのTE-NMIの遠位でC-Jun発現の上昇も観察された。図8I: 2×TE-NMI群ではさらに多数のシュワン細胞(HST+ S100βの共局在によって同定)も見られた。図8J: かなりの数のシュワン細胞も、2つのTE-NMIの遠位でC-Junと共局在した。これらの所見は、TE-NMIが、宿主神経軸索切断モデルにおいて移植後6週時の除神経遠位神経内の宿主S100+ シュワン細胞と相互作用し、潜在的に影響を与えうること、またC-Junの局在によって証明されるように、再生促進性の表現型を潜在的に保存しうることを示唆している。エラーバーは標準誤差を表す。一元配置ANOVAとそれに続くTukeyの事後検定を用いて平均値を比較した。p < 0.05。スケールバー: 図8C: 100μm、図8D: 100μm、図8E: 5μm。
図9図9A~9Hは、非即時的神経修復後1ヶ月の神経形態計測および筋再神経支配。図9A: 修復部位から5mm遠位の神経断面の代表的な共焦点画像を、シュワン細胞(S100)、宿主軸索(SMI35)、およびミエリン(ミエリン塩基性タンパク質;mBP)について標識した。図9B: 修復部位の遠位でSMI35発現の差異は検出されず、同等の数の宿主軸索が遠位鞘内で再生されたことを示唆している。図9C: 修復の遠位で見られたSMI35+ 領域の平均面積は、TE-NMIコホートにおいてより大きく、遠位神経における宿主軸索が対照群よりも大きかったことを示している。図9D: TE-NMIコホートにおいて修復の遠位でさらに多数の有髄軸索が見られた。図9E: シュワン細胞の共通マーカーであるS100β発現の増加がTE-NMI群において観察された。図9F: 神経筋接合部(NMJ)を同定するためのアセチルコリン受容体(ブンガロトキシン)およびシナプス前マーカーであるシナプトフィジンについて染色した前脛骨筋(TA)の筋断面の代表的な共焦点画像(グレースケール)。切片をファロイジンで対比染色して筋線維を可視化した。図9G: 群間でAchRカウントの総数には有意差なし。図9H: AchRおよびシナプトフィジンについて共標識された成熟NMJのパーセントによって示されるように、TE-NMI移植を以前に受けていた動物ではさらに大きな筋再神経支配が見られた。まとめると、これらの所見は、両群とも進行中の再生を示している一方で、TE-NMIが非即時的神経修復後にさらに早い軸索成熟および筋再神経支配を可能にしうることを示唆している。部分面積は、3つのROIにわたって平均したROIあたりの陽性蛍光発現の面積パーセントを測定することによって算出された。対応のない両側スチューデントt検定を用いて平均値を比較した。エラーバーは標準誤差を表す。p < 0.05; **p < 0.01。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
定義
特に定義されないかぎり、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が関連する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記述されるものと類似または等価の任意の方法および材料を、本発明の試験の実践において使用することができるが、好ましい材料および方法を本明細書において記述する。本発明を記述および主張する際には、以下の専門用語が用いられる。
【0008】
本明細書において用いられる専門用語は、特定の態様を記述するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかにそうでないことが指されない限り、複数の参照を含む。
【0009】
本明細書において用いられる「約」は、例えば、量、持続時間などの、測定可能な値をいう場合、指定の値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を、開示される方法を実施するのにそのような変動が適切である場合、包含することが意図される。文脈から明らかでない限り、本明細書において提供される全ての数値は、約という用語によって修飾される。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」などの用語は、米国特許法においてそれらに属するものと見なされる意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することができる。
【0011】
「単離する」とは、1種または複数種の細胞を得ること、他の細胞種を除去または実質的に除去するために精製すること、かつ初代培養で増殖させることを意味する。
【0012】
本明細書において用いられる「対象」または「患者」は、ヒトまたはヒト以外の哺乳類でありうる。ヒト以外の哺乳類は、例えば、家畜およびペット、例えばヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびネズミといった哺乳類を含む。好ましくは、対象はヒトである。
【0013】
「凝集体」および「ニューロン凝集体」は、遠心分離によって形成された、ニューロンおよび/またはグリア細胞の凝集体または球体をいうように互換的に用いられる。
【0014】
範囲: 本開示の全体を通して、本発明のさまざまな局面を範囲形式で示すことができる。範囲形式での記述は単に便宜および簡潔のためであることが理解されるべきで、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されるべきではない。したがって、範囲の記述は全ての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示していると考えられるべきである。これは範囲の広さに関係なく適用される。
【0015】
説明
組織工学によって作製された神経筋インターフェース
1つの局面において、本発明は、組織工学によって作製された神経筋インターフェースであって、以下:
細胞外マトリックスコアであって、
該細胞外マトリックスコアが、該細胞外マトリックスコアの第1の末端にあるニューロンの集団を含み、該ニューロンの集団が、該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
該ニューロンの集団が、1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される、
該細胞外マトリックスコア
を含む、該組織工学によって作製された神経筋インターフェースを、提供する。さまざまな態様において、当該TE-NMIは、細胞外マトリックスコアを同軸に取り囲むヒドロゲルシースをさらに含む。
【0016】
さまざまな態様において、組織工学によって作製された神経筋インターフェースは、以下:
前記細胞外マトリックスコアの第2の末端にあるニューロンの第2の集団であって、
該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される
該ニューロンの第2の集団
をさらに含む。
【0017】
さまざまな態様において、ニューロンの集団は、1つまたは複数のニューロンでありうる。さまざまな態様において、ニューロンの集団は、ニューロン凝集体でありうる。ニューロン凝集体は米国特許出願公開第2019/0126043号に記述されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。ニューロン凝集体を産生するためのさまざまな方法が当技術分野において公知である。非限定的な例として、ニューロン凝集体は、逆ピラミッド型ウェル中のニューロンを遠心分離することによって形成されうる。さまざまな態様において、ニューロン凝集体は、2種類以上のニューロンを含む共凝集体でありうる。共凝集体は、混合されたニューロン集団から凝集体を形成する前に、共凝集体に含まれる各種のニューロンを解離させ、解離したニューロンを結合させることによって形成されうる。
【0018】
さまざまな態様において、共凝集体は、約50μm~約100μm、約100μm~約150μm、約150μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約350μm、約350μm~約400μm、約400μm~約450μm、約450μm~約500μm、約500μm~約700μm、約700μm~約1000μm、約1000μm~約1500μm、約1500μm~約2000μm、および約2500μm~約3000μmの断面寸法を有する。
【0019】
さまざまな態様において、細胞外マトリックスコアは、約10μm~約25μm、約25μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約150μm、約150μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約400μm、約400μm~約500μm、約500μm~約700μm、および約700μm~約1000μm、約1000μm~約1500μm、および約1500μm~約2000μm、および約2000μm~約2500μm、および約2500μm~約3000μmからなる群より選択される最大断面寸法を有する。
【0020】
さまざまな態様において、ヒドロゲルシースは、約20μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約350μm、約350μm~約400μm、約400μm~約450μm、約450μm~約500μm、約500μm~約600μm、約600μm~約800μm、約800μm~約1200μm、約1200μm~約1700μm、および約1700μm~約2200μm、および約2200μm~約2700μm、および約2700μm~約3200μmからなる群より選択される最大断面寸法を有する。さまざまな態様において、ヒドロゲルシースは約701μmの最大断面寸法を有し、細胞外マトリックスコアは約300μmの最大断面寸法を有する。
【0021】
さまざまな態様において、組織工学によって作製された神経筋インターフェースは、約100μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約350μm、約350μm~約400μm、約400μm~約450μm、約450μm~約500μm、約500μm~約600μm、約600μm~約800μm、約800μm~約1200μm、約1200μm~約1500μm、および約1500μm~約2000μmの長さを有する。
【0022】
さまざまな態様において、組織工学によって作製された神経筋インターフェースは、内皮細胞、筋細胞、筋芽細胞、星状膠細胞、嗅神経鞘細胞、乏突起膠細胞またはシュワン細胞からなる群より選択される1つまたは複数の非ニューロン細胞をさらに含む。
【0023】
さまざまな態様において、ニューロンは、幹細胞に由来する、または後根神経節から単離される。さまざまな態様において、ニューロンは、異種ニューロン、自家/患者特異的ニューロン、同種ニューロン、全後根神経節または感覚外植片である。さまざまな態様において、ニューロンは、野生型またはトランスジェニックブタに由来する異種ニューロンである。
【0024】
さまざまな態様において、細胞外マトリックスコアは、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、フィブリン、フィブロネクチンおよび/またはヒアルロン酸を含む。さまざまな態様において、ヒドロゲルシースは、アガロース、コラーゲン、ゼラチン、シルク、キトサン、フィブリンおよび/またはヒアルロン酸を含む。
【0025】
組織工学によって作製された神経筋インターフェースを移植することにより遠位神経分節の再生能力を保存する方法
別の局面において、本発明は、その必要のある対象において末梢神経損傷後の遠位神経分節の再生能力を保存する方法であって、以下の段階:
1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェース(TE-NMI)を、遠位神経分節の遠位部位に移植する段階であって、
該TE-NMIが、以下:
細胞外マトリックスコアであって、
該細胞外マトリックスコアが、該細胞外マトリックスコアの第1の末端にあるニューロンの集団を含み、該ニューロンの集団が、該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
該ニューロンの集団が、1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される、
該細胞外マトリックスコア
を含む、該移植する段階
を含む、該方法を提供する。さまざまな態様において、当該TE-NMIは、細胞外マトリックスコアを同軸に取り囲むヒドロゲルシースをさらに含む。
【0026】
さまざまな態様において、TE-NMIは、以下:
前記細胞外マトリックスコアの第2の末端にあるニューロンの第2の集団であって、
該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される
該ニューロンの第2の集団
をさらに含む。
【0027】
理論によって限定されることを意味するわけではないが、さまざまな局面および態様において、また本明細書の実施例においてさらに論じられるように、損傷した末梢神経の遠位分節への1つまたは複数のTE-NMIの移植により、TE-NMI内のニューロンが遠位神経分節に軸索を成長させることが可能になる。これらの軸索は、そのままであれば失われうる遠位神経分節の、再生能力を保存する。
【0028】
さまざまな態様において、移植は損傷の直後に実施される。さまざまな態様において、損傷は手術に起因する。さまざまな態様において、移植は損傷後24時間未満で実施される。さまざまな態様において、移植は損傷後7日未満で実施される。さまざまな態様において、移植は損傷後2週間未満で実施される。さまざまな態様において、移植は損傷後1ヶ月未満で実施される。さまざまな態様において、移植は損傷後1ヶ月またはそれ以上で実施される。
【0029】
さまざまな態様において、1つまたは複数のTE-NMIは、遠位神経分節に端側移植される、神経束内に移植される、または、連続的に移植される。さまざまな態様において、1つまたは複数のTE-NMIの移植は、超音波誘導またはMRI誘導される。さまざまな態様において、少なくとも2個の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースが遠位神経分節に移植される。さまざまな態様において、少なくとも5個の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースが遠位神経分節に移植される。さまざまな態様において、少なくとも10個の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースが遠位神経分節に移植される。
【0030】
さまざまな態様において、本方法は、末梢神経損傷を処置するために一次神経修復処置を実施する段階をさらに含む。さまざまな態様において、一次神経修復処置は、直接吻合、自家移植、同種移植、神経導管、神経移行、または組織工学によって作製された神経の移植を含む。
【0031】
組織工学によって作製された神経筋インターフェースを移植することにより末梢神経損傷を処置する方法
別の局面において、本発明は、その必要のある対象において末梢神経損傷を処置する方法であって、以下の段階:
1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェース(TE-NMI)を、遠位神経分節の遠位部位に移植する段階であって、
該TE-NMIが、以下:
細胞外マトリックスコアであって、
該細胞外マトリックスコアが、該細胞外マトリックスコアの第1の末端にあるニューロンの集団を含み、該ニューロンの集団が、該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
該ニューロンの集団が、1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される、
該細胞外マトリックスコア
を含む、該移植する段階;
筋肉および/または感覚末端器官の神経支配について、そのままであれば除神経されている遠位分節全体にわたって、外因性軸索成長をモニタリングする段階;
遠位神経分節における、1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースを、除去する段階; ならびに
一次神経修復処置を実施する段階であって、それによって末梢神経損傷を処置する、該実施する段階
を含む、該方法を提供する。さまざまな態様において、当該TE-NMIは、細胞外マトリックスコアを同軸に取り囲むヒドロゲルシースをさらに含む。
【0032】
さまざまな態様において、TE-NMIは、以下:
前記細胞外マトリックスコアの第2の末端にあるニューロンの第2の集団であって、
該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される
該ニューロンの第2の集団
をさらに含む。
【0033】
理論によって限定されることを意味するわけではないが、TE-NMIの移植は、遠位神経分節の再生促進能力を保存することによって、一次神経修復処置の有効性の向上に寄与する。外因性軸索は、遠位神経におけるシュワン細胞の発現を促進し、そのままであれば変性している筋肉および/または感覚末端標的と統合し、非即時的神経修復後の機能回復の上限を増加させる。
【0034】
さまざまな態様において、一次神経処置は、直接吻合、自家移植、同種移植、神経導管、神経移行、または組織工学によって作製された神経移植片の移植を含む。さまざまな態様において、TE-NMIは移植後1週間未満で除去される。さまざまな態様において、TE-NMIは移植後1ヶ月未満で除去される。さまざまな態様において、TE-NMIは移植後1年未満で除去される。さまざまな態様において、TE-NMIは移植後1年またはそれ以上で除去される。
【0035】
組織工学によって作製された神経筋インターフェースを移植し、近位神経と融合することにより末梢神経損傷を処置する方法
別の局面において、本発明は、その必要のある対象において末梢神経損傷を処置する方法であって、以下の段階:
1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェース(TE-NMI)を、遠位神経分節の遠位部位に移植する段階であって、
該TE-NMIが、以下:
細胞外マトリックスコアであって、
該細胞外マトリックスコアが、該細胞外マトリックスコアの第1の末端にあるニューロンの集団を含み、該ニューロンの集団が、該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
該ニューロンの集団が、1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される、
該細胞外マトリックスコア
を含む、該移植する段階;
筋肉および/または感覚末端器官の神経支配について、そのままであれば除神経されている遠位分節全体にわたって、外因性軸索成長をモニタリングする段階;
遠位神経分節における、1つまたは複数の、組織工学によって作製された神経筋インターフェースを、除去する段階; ならびに
遠位神経分節におけるTE-NMI軸索を、少なくとも1つの近位軸索と融合させる段階
を含む、該方法を提供する。さまざまな態様において、当該TE-NMIは、細胞外マトリックスコアを同軸に取り囲むヒドロゲルシースをさらに含む。
【0036】
さまざまな態様において、TE-NMIは、以下:
前記細胞外マトリックスコアの第2の末端にあるニューロンの第2の集団であって、
該細胞外マトリックスコアに沿って少なくとも一部分を伸長している軸索を有し、
1つまたは複数の運動ニューロン、1つまたは複数の感覚ニューロンと共培養された1つまたは複数の運動ニューロン、ならびに1つまたは複数の運動ニューロンおよび1つまたは複数の感覚ニューロンを含む共凝集体からなる群より選択される
該ニューロンの第2の集団
をさらに含む。
【0037】
さまざまな態様において、一次神経修復が実施される。さまざまな態様において、一次神経処置は、直接吻合、自家移植、同種移植、神経導管、神経移行、または組織工学によって作製された神経移植片の移植を含む。さまざまな態様において、一次神経修復の前にフリーラジカル消去剤が適用される。さまざまな態様において、フリーラジカル消去剤はメチレンブルーである。
【0038】
さまざまな態様において、TE-NMIから伸びる軸索は、TE-NMIが除去され、近位神経分節と融合される際に離断される。伸張成長させた、組織工学によって作製された神経移植片を用いた神経融合は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2020/0230293号に記述されている。ニューロンを融合するためのさまざまな方法が当技術分野において公知であり、当業者は適切な方法を選択するであろう。さまざまな態様において、TE-NMIを除去する前に試薬を適用して、軸索変性を抑止する。さまざまな態様において、試薬は低張生理食塩水またはカルシウムキレート剤を含む。さまざまな態様において、試薬は、カルシウムキレート剤を含む低張生理食塩水である。さまざまな態様において、外因性ニューロンは、ワーラー変性を抑止するように、SARM1ノックダウンなどの遺伝子改変がなされる。
【0039】
さまざまな態様において、一次神経修復中に融合剤を適用して膜封止を促進する。さまざまな態様において、融合剤はポリエチレングリコールまたはキトサンである。さまざまな態様において、融合剤の適用は神経再生および機能回復を促進する。
【実施例
【0040】
実験例
以下の実験例を参照することによって本発明をさらに詳細に記述する。これらの実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、特別の定めのない限り限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されるものと決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書において提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形を包含するものと解釈されるべきである。
【0041】
さらなる記述がなくても、当業者であれば、先の記述および以下の実例を用いて、本発明の化合物を作りかつ利用し、主張される方法を実践することができるものと考えられる。それゆえ、以下の実施例は、本発明の好ましい態様を具体的に指摘するものであり、本開示の残りの部分をいかなる意味でも限定するものと解釈されるべきではない。
【0042】
実施例1:
材料および方法
以下の実施例を実施するために用いられる材料および方法を、ここで記述する。
【0043】
胚性ニューロンの単離および脊髄運動の凝集
脊髄および後根神経節(DRG)を、既述のように胚16日目のSprague-Dawleyラット(Charles River, Wilmington,mA)から単離した。DRG外植片をHibernate-E中で終夜保管し、AAV2/1.hSynapsin.EGFP.WPRE.bGH (UPenn Vector Core)で形質導入した。運動ニューロン凝集体は既述のように、Optiprep密度勾配を用いて、解離した脊髄から単離された脊髄運動ニューロンの、力による凝集後に形成された。運動ニューロン凝集体を培地中で終夜インキュベートし、AAV.hSynapsin.tdTomatoベクターで形質導入した。37ng/mLヒドロコルチゾン、2.2μg/mLイソブチルメチルキサンチン、10ng/mL BDNF、10ng/mL CNTF、10ng/mL CT-1、10ng/mL GDNF、2% B-27、20ng/mL NGF、20μM有糸分裂阻害剤、2mM L-グルタミン、417ng/mLフォルスコリン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM β-メルカプトエタノール、2.5g/Lグルコース.30を補充した脊髄星状細胞馴化神経基礎培地 + 10% FBS中に、ニューロンをプレーティングした。
【0044】
マイクロカラムの作製
既述の方法と同様の三相プロセスを用いて、アガロースまたはアガロース-ゼラチンヒドロゲルマイクロカラムを構築した。簡単に説明すると、ガラス毛細管(345~701μm)を用いてアガロースマイクロカラムを形成し、内腔を通した、鍼針(180~350μm)の挿入を可能にした。ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中の溶融アガロース(3%重量/体積)を、鍼針を含んでいる毛細管に加え、冷却させた。鍼針を素早く取り外してヒドロゲルシェルを作り、マイクロカラムを4℃のDPBS中に保管した。アガロース-ゼラチンマイクロカラム(1.5%アガロース+1.5%ゼラチン)は、マイクロカラムをDPBS 7mL中に100μLで室温にて終夜保管し、その後、さらなる実験の前にDPBS中で3回洗浄したことを除いて、上記のように作製した。全てのマイクロカラムを適切な長さに切断し、30分間UV滅菌し、DPBS中4℃で保管した。
【0045】
マイクロカラムを新しいペトリ皿に移し、マイクロピペットを介してマイクロカラムの内腔から過剰なDPBSを除去し、1.0mg/mlラット尾コラーゲン + 1.0mg/mlマウスラミニンから構成される細胞外マトリックス(ECM) (Reagent Proteins, San Diego, CA)に置き換えた。DRG外植片または運動ニューロン凝集体を、微細鉗子を用い立体拡大下で、ECMを含有するマイクロカラムの端に注意深く配置し、37℃, 5% CO2で45分間接着させた。マイクロカラムの両端にDRG外植片を播種することによって感覚TE-NMIを作った。マイクロカラムの両端に運動ニューロン凝集体を播種することによって運動TE-NMIを作成した。運動ニューロン凝集体およびDRG外植片をマイクロカラムの反対側の端に播種することによって混合型運動感覚TE-NMIを作製した。次いで、TE-NMIを培養に戻し、1日おきに新鮮な培地に交換して増殖させた。
【0046】
混合TE-NMIの特徴付けの場合、プレーティングの前に、運動ニューロンに終夜形質導入してGFPを内因的に発現させ、感覚ニューロンに終夜形質導入してtdTomatoを内因的に発現させた。残りのインビトロでの特徴付けおよびインビボでの実施の場合、運動ニューロンにtdTomatoを終夜形質導入し、感覚ニューロンにGFPを終夜形質導入した。全てのTE-NMIは、作製後に培地を1日おきに半分交換して培養に戻した。
【0047】
免疫細胞化学
TE-NMIを4%パラホルムアルデヒド中で35分間固定し、1×PBS中ですすぎ、PBS中0.3%のTriton X100 + 4%ウマ血清で60分間透過処理し、次いで一次抗体とともに4℃で終夜インキュベートした。一次抗体は、軸索を標識するためのTuj-1/beta-IIIチューブリン(T8578, 1:500, Sigma-Aldrich)、およびシナプス前特殊化を標識するためのシナプシン-1 (A6442, 1:500, Invitrogen)であった。一次抗体インキュベーション後、TE-NMIをPBS中ですすぎ、蛍光タグ付き二次抗体(1:500; Invitrogen)とともに18℃~24℃で2時間インキュベートした。最後に、Hoechst (33342, 1:10,000, ThermoFisher)を18℃~24℃で10分間加えてから、PBS中ですすいだ。TE-NMIを、NIS Elements AR 4.50.00と組み合わせたNikon A1RSIレーザー走査型共焦点顕微鏡で撮像した。各蛍光チャンネルについて、z平面で10~20μmの連続スライスを取得した。表示されている全ての共焦点画像は、共焦点zスライスの最大強度投影である。
【0048】
インビトロでのTE-NMI撮像
TE-NMIの位相差顕微鏡画像を数日かけてインビトロで(DIV)撮影し、神経突起の長さを測定し、成長速度を算出した。QIClick カメラおよびNIS Elements BR 4.13.00と組み合わせたNikon Eclipse Ti-S顕微鏡を用い10 倍の倍率でTE-NMI生存性および所望のニューロン表現型の存在を定量化した。
【0049】
TE-NMIの共焦点撮像を、NIS Elements AR 4.50.00と組み合わせたNikon A1RSIレーザー走査型共焦点顕微鏡で行った。各蛍光チャンネルについて、z平面で10~20μmの連続スライスを取得した。表示されている全ての共焦点画像は、共焦点zスライスの最大強度投影である。
【0050】
慢性のげっ歯類坐骨神経軸索切断および急性のTE-NMI移植
除神経された遠位神経と統合するTE-NMIの能力を、げっ歯類の慢性の坐骨神経軸索切断モデルにおいて評価した。Sprague-Dawleyラットをイソフルランで麻酔し、後肢をベタジンで洗浄した。メロキシカム(2mg/kg)を首筋に皮下投与し、ブピバカイン(2mg/kg)を切開部に沿って皮下投与した。臀筋を切り離して、坐骨切痕から出ている坐骨神経を露出させた。
【0051】
3つの異なる手術パラダイムを用いて、TE-NMI (長さ3mm)を遠位神経に移植した。概念実証実験では、マイクロインジェクション後のTE-NMIの生存を実証するために、一部の動物において神経内TE-NMI移植を実施した。簡単に説明すると、上記のように坐骨神経を露出させた。TE-NMIをハミルトン注射器に充填し、神経内に沈着させた。坐骨神経の神経上膜を注意深く切開し、露出した繊維束にTE-NMIを含有する注射針を刺入し、神経内に7mm前進させ、TE-NMIを神経内に沈着させ、神経上膜を8-0プロレンにより閉鎖した。神経を鋭く離断し、近位断端を近くの筋肉に挿入した。TE-NMIの生存性は、組織クリアリングおよび多光子顕微鏡法を用いて、移植2週間後に評価した。
【0052】
除神経された遠位神経内の感覚TE-NMIの伸長およびシュワン細胞の被覆を評価するために、坐骨神経の5mm分節を三分岐部の5mm近位で切除し、近位神経をテフロンテープで覆うか、近くの筋肉に固定した。感覚TE-NMIを、神経に固定された5mmの神経用ラップ(Stryker Orthopedics, Kalamazoo MI)内に配し、神経およびTE-NMIに保護環境を提供した。遠位神経のTE-NMI軸索の伸長を促進するため、ラップ内に2mg/mlのコラーゲンECMおよそ100μlを適用した。動物を以下の群に無作為に割り付けた: (A) 感覚TE-NMI 1例(n=5); (B) 感覚TE-NMI 2例(n=5)、(C) ECMのみを含有する無細胞対照マイクロカラム(n=5)。
【0053】
除神経された筋肉との慢性の統合を評価するために、混合型運動-感覚TE-NMIを上記のように神経ラップ内に移植した。この実験では、総腓骨神経をその近位起点まで切除し、神経を二分岐部の5mm遠位で離断した。近位の総腓骨神経断端を近くの筋肉に挿入した。混合型運動-感覚TE-NMIを、神経に固定した5mmの神経用ラップ(Stryker Orthopedics, Kalamazoo MI)に配して神経およびTE-NMIの保護環境を提供した。遠位神経におけるTE-NMI軸索の伸長を促進するために、およそ100μlの2mg/mlコラーゲンECMをラップ内に適用した。動物を以下の群に無作為に割り付けた: (A) TE-NMI (n=5); (B) マイクロカラム対照(n=5)、(C) 移植なし対照(n=5)。
【0054】
全ての手順において、手術部位は4-0吸収性バイクリル縫合糸および皮膚ステープルで閉鎖した。動物を回収し、研究期間中は動物施設に戻した。
【0055】
非即時的軸索融合
移植および慢性の軸索切断後20週の時点で、動物を麻酔し、手術部位を再度露出させた。手術部位をカルシウムキレート剤入りの無カルシウムPlasmaLyte-Aで灌流し、移植片を分離し、遠位の総腓骨神経を鋭く離断した。離断した神経を追加のPlasmaLyte-Aで浸しながら脛骨神経を鋭く離断し、8-0プロレン縫合糸2本を用いて、近位脛骨神経と遠位総腓骨神経を固定して、標準的な端端縫合による神経修復を完了した。縫合糸を締める直前に、低張性の1%メチレンブルー溶液を神経末端に適用し、続いて高分子量ポリエチレングリコール(3350MW)の投与を行った。余分なPEGを洗い流すため、カルシウム含有乳酸リンゲル液を傷口に塗布した。以下に記述するように、急性の機能回復を評価するために、修復の直前と直後に電気生理学的記録を実施した。深層と皮膚を閉鎖し、その領域を上記のように被覆した。
【0056】
免疫組織化学
最終時点で、Euthasolの心臓内注射により動物を安楽死させた。神経を摘出したのちに、ホルマリン中4℃で24時間固定し、その後PBS中でさらに24時間すすいだ。筋肉を摘出してパラホルムアルデヒド中4℃で24時間置き、その後20%スクロース中で凍結保護した。
【0057】
移植後の組織学的評価のために、組織を終夜30%スクロース中に置き、最適な切断媒体中に包埋し、その後ドライアイス/イソペンタン中で凍結させた。移植部位を縦方向に薄片に切り分け、移植片から5mm遠位の領域を20μmの厚さで軸方向に薄片に切り分け、染色用にスライドガラスにマウントした。凍結切片をPBS中で3回洗浄し、ブロッキングし、0.3% Triton X-100を有する4%正常ウマ血清中で1時間透過処理した。その後の全ての段階は、抗体希釈用のブロッキング溶液を用いて実施した。ニューロンをニワトリ抗MAP2 (1:500, Abcam, ab532)で標識し、シュワン細胞を抗S100 (1:500, Invitrogen, PA1-38585)で標識した。一次抗体を4℃で終夜適用し、続いて適切な蛍光色素結合二次抗体(1:1000; AlexaFluor, Invitrogen)を室温で2時間適用した。Fluoromount Gでマウントし、カバースリップをかける前に、ヘキスト(Hoechst)を適用した(1:10,000)。感覚ニューロン/軸索を内因性GFP発現により、運動ニューロンを内因性tdTomato発現により、可視化した。
【0058】
非即時的神経修復後の遠位神経の断面組織学的評価のために、修復域の遠位にある1cmの神経分節をパラフィン中に包埋した。このブロックを次に、ミクロトームに載せ、8μmの厚さで軸方向に薄片に切り分け、スライドガラスに載せ、以下のように染色の準備をした。軸方向断面をキシレン中で脱パラフィンし、エタノールの下降勾配で再水和した。再水和後、改良型加圧クッカー/マイクロウェーブ法を用いて、8分間 TRIS/EDTA緩衝液中で抗原賦活化を実施した。次に、Optimax (Biogenex)中の正常ウマ血清を切片に適用した(VectaStain Universal kit、製造元の指示に従って)。切片をマウス抗SMI35 (1:1000, Covance, SMI-35R)、ウサギ抗S100 (1:500, Invitrogen, PA1-38585)、およびニワトリ抗ミエリン塩基性タンパク質(Encor, CPCA-MBP; 1:1500)とともにOptimax + 正常ウマ血清中4℃で終夜インキュベートした(VectaStain Universal kit、製造元の指示に従って)。切片をPBS/TWEENで5分間3回洗浄した後、適切な蛍光色素結合二次抗体(1:1000; AlexaFluor, Invitrogen)を室温で1時間適用した。PBS/TWEENで5分間3回すすいだ後、20分間適用した。最後に、切片を上記のように洗浄し、カバースリップをかけた。
【0059】
筋肉の断面組織学的分析のために、前脛骨筋を採取し、2%パラホルムアルデヒド中で終夜保管した。筋肉を20%スクロース中で終夜凍結保護し、ブロッキングし、凍結し、20μmの厚さで軸方向に薄片に切り分け、上述のプロトコルにしたがって染色した。筋アクチンを同定するために、切片をAlexaFluor488結合ファロイジン(1:400, Invitrogen, A12379)とともに室温で2時間インキュベートした。隣接する切片をウサギ抗シナプトフィジン(1:500, abcam, ab32127)とともに4℃で終夜インキュベートしてシナプス前小胞を同定した後に、AlexaFluor-568抗体(1:500, ThermoFisher, A10042)およびAlexaFluor-647結合ブンガロトキシンの室温での2時間の同時適用を行ってシナプス後受容体を同定した(1:1000, Invitrogen, B35450)。
【0060】
組織クリアリング
Visikolプロトコルを用いた組織クリアリングのために一部の神経を摘出した。簡単に説明すると、ホルマリン中4℃で24時間の固定後、神経をPBSにより4℃で終夜すすぎ、各2時間の一連のエタノール洗浄(30%、50%、70%および90%)ならびに24時間100%エタノールで脱水した。次に、神経をVisikol 1中で24時間、続いてVisikol 2中で少なくとも24時間インキュベートして、クリアリングプロセスを完了した。多光子顕微鏡法(Nikon)を用いて、移植片領域内のTE-NMI生存性を可視化した。
【0061】
機能評価
軸索切断後16週の時点で、誘発筋応答を評価するために複合筋活動電位(CMAP)を評価した。動物を再度麻酔し、双極皮下刺激電極を総腓骨神経の表面に配置した。単極皮下記録電極を前脛骨筋に配置し、参照電極をその腱に配置した。ハンドヘルド双極フック電極(Rochester Electro-Medical, Lutz, FL; #400900)を用いて、神経を刺激した(二相性;振幅:0~10mA; 持続時間: 0.2ms; 周波数: 1Hz)。最大上CMAP記録を取得し、一連の5パルス(100倍ゲイン; 10~10,000Hzのバンドパスおよび60Hzのノッチフィルタ; Natus Viking EDX)にわたって平均化した。軸索切断後20週の時点で、動物を再麻酔し、手術部位を露出させた。非即時的神経修復前の遠位神経を刺激することによりCMAPを記録した。非即時的神経修復後、近位および遠位CMAPを、それぞれ修復部位の近位または遠位5mmを刺激することにより記録した。平均ピーク対ベースライン振幅を記録した。
【0062】
修復部位前後の即時の電気伝導を評価するために、双極フック電極で近位断端を刺激し、双極フック電極で記録することによって複合神経活動電位(CNAP)を記録した(1000倍ゲイン; 10~10,000Hzのバンドパスおよび60Hzのノッチフィルタ; Natus Viking EDX)。平均頂点間振幅を記録し、電極間の距離を潜時で割ることによって伝導速度を算出した。
【0063】
非即時的神経修復後1ヵ月(慢性の宿主軸索切断後、合計24週間)の時点で、上記のようにCNAPおよびCMAPの記録を得た。
【0064】
データ取得および統計分析
Nikon Elements Basic Researchソフトウェア(4.10.01)と連動したQiClickカメラを使うデジタル画像取得を備えたNikon Eclipse Ti-Sでの位相差顕微鏡法または落射蛍光顕微鏡法を用いニューロン構築物を撮像した。Nikon NIS-Elements AR 3.1.0 (Nikon Instruments, Tokyo, Japan)を使い10倍の空気対物レンズおよび60倍の油対物レンズを備えたNikon A1R共焦点顕微鏡(1024×1024ピクセル)で蛍光画像を取得した。複数の共焦点zスタックをデジタル的にキャプチャおよび分析し、全切片と全zスタック厚にわたり全てタイル状に再構成した。
【0065】
全てのTE-NMI神経突起伸長アッセイの場合、最長神経突起を、凝集体の端から測定した(条件ごと時点ごとにn≧4~6 TE-NMI)。TE-NMI作製の特性評価の場合、1および3 DIVで2つの独立変数として細胞型およびバイオマテリアルヒドロゲル収容体を用い反復二元配置分散分析(ANOVA)によって平均神経突起伸長を比較した。
【0066】
全ての組織学的評価は、移植部位(縦方向凍結)、移植部位から5mm遠位(軸方向凍結)、または非即時的神経修復部から5mm遠位(軸方向パラフィン)で実施した。凍結組織の場合、TE-NMIニューロン/軸索は、感覚ニューロン/軸索ではSMI35陰性およびGFP陽性、または運動ニューロン/軸索ではtdTomato陽性として同定した。パラフィン組織の場合、SMI35は宿主の再生/融合軸索のみを標識した。
【0067】
全ての軸神経形態計測の定量化の場合、測定値は共焦点 zスタック最大投影から計算し、FIJIソフトウェアを用いて分析した。46自動画像処理マクロを用いて、潜在的なバイアスを最小限に抑えた。MaxEntropy閾値処理を用いて個々のチャネルを分離し、その後、ノイズの多い信号を最小限に抑えるために、面積が1μm2を超える特徴について「Analyze Particles」機能を用いて定量化した。セグメント化された粒子の総数、セグメント化された粒子のサイズ、および覆われた面積パーセントは、動物あたり2~3切片から算出された。平均値は、さらなる統計分析のために群全体の動物あたりの値を平均することによって得られた。
【0068】
移植/宿主軸索切断後6週時のTE-NMI伸長および宿主シュワン細胞(S100)反応性の場合、平均値を一元配置分散分析(ANOVA)により以下の群間で比較した: (a) 1つのTE-NMI、(b) 2つのTE-NMI、(c) マイクロカラムのみ。移植/宿主軸索切断後16週時の誘発筋応答の場合、平均CMAP振幅を一元配置ANOVAにより以下の群間で比較した: (a) TE-NMI、(b) マイクロカラムのみ、および(c) 損傷のみ/移植なし。
【0069】
アセチルコリン受容体(AchR)の総数および成熟神経筋接合部の割合を定量化するために、まず実験群を盲検化した研究者が各筋切片を低倍率で撮像し、AchRのブンガロトキシン(BGX)陽性クラスタ領域を同定した(10倍の空気対物レンズ、1024×1024)。次に、3つの関心領域(ROI)を無作為に選択し、研究者が取得前にシナプトフィジンチャネルを可視化することなく、自動的に取得した(2×2領域、2倍デジタルズーム付き60倍油対物レンズ、2048×2048)。各動物の低倍率画像からBGX陽性細胞またはAchR受容体の総数を定量した。成熟神経筋接合部(NMJ)を、シナプトフィジンで共標識されたBGX陽性細胞として同定した。成熟NMJの平均パーセントを、成熟NMJの数をブンガロトキシン陽性受容体の総数で割ることによって算出し、反復全体でおよび群ごとに平均化した。
【0070】
非即時的神経修復後の全ての統計分析の場合、陰性対照群(マイクロカラムのみおよび損傷のみ/移植なし)間で差が検出されなかったため、これらのサンプルを単一群(無細胞)として分析した。対応のない両側スチューデントt検定を用いて平均CMAP振幅、CNAP振幅およびCNAP速度を比較することにより、非即時的修復直後(最初の宿主軸索切断後20週)および非即時的神経修復後1ヶ月(最初の宿主軸索切断後24週)の電気伝導および誘発筋応答を実施した。対応のない両側スチューデントt検定を用いて、非即時的神経修復後1ヶ月(最初の宿主軸索切断後24週)の時点で、平均宿主軸索数およびサイズ、AchR数、ならびに成熟NMJパーセントを比較した。
【0071】
一元配置ANOVAを受けて群間に差異が存在していた場合、事後Tukeyのペアワイズ比較を実施した。全ての統計検定の場合、有意のためにはp < 0.05が必要とされ、Windows 64ビット用のGraphPad Prism 9 (La Jolla California USA)において実施された。平均値は特に断りのない限り、平均±SEMとして提示した。
【0072】
結果
組織工学によって作製された神経筋インターフェース(TE-NMI)は、保護バイオマテリアル内に予め形成された、軸索が豊富なマイクロ組織である
TE-NMIは、神経系のニューロン-軸索組織に類似した長い軸索路に亘るニューロンの個別の集団から構成される、解剖学的に着想を得た神経構築物である(図1)。本発明者らは、感覚ニューロン-軸索のみ(感覚TE-NMI)、運動ニューロン-軸索のみ(運動TE-NMI)、または運動ニューロン-軸索および感覚ニューロン-軸索の混合集団(混合TE-NMI)から構成されるマイクロ組織を工学的に作製した(図1A)。最初の実験では、コラーゲン細胞外マトリックス(ECM)を含有した外径2mmおよび内径1mmを有する大型マクロスケールアガロースカラム内で5mm間隔で配置された後根神経節(DRG)に亘る堅牢な感覚軸索成長が観察された(図1B)。次に、マイクロ組織工学の作製技法は、パーキンソン病、脊髄損傷、および脳-機械インターフェーシングに向け本発明者らの研究室において以前に開発された方法論から適応された。最小のTE-NMIは長さ3mmで、外径350μmおよび内径180μmを有した(図1C); しかしながら、本発明者らの目標は神経内の神経束構造と一致させることであったため、特に断りのない限り、以下の研究におけるTE-NMIは長さ3~5mmで、外径701μmおよび内径300μmを有した。
【0073】
運動TE-NMIおよび混合TE-NMIの場合、前述のように、凝集された胚性脊髄運動集団を形成し、その後にマイクロカラムの端にプレーティングした。健常なニューロンおよび神経突起の成長は、位相差顕微鏡法によって観察された。TE-NMI免疫細胞化学から、神経/軸索マーカーであるTuj1およびChATの共標識により、運動ニューロンの表現型が確認された(図1D)。アガロースは比較的不活性なバイオマテリアルであるが、非吸収性の副産物への分解時間が長く、置き換え(translation)の妨げになる可能性がある。それゆえ、アガロース-ゼラチン複合ヒドロゲルからなる代替の生体収容体を評価した(図1E)。1インビトロ日数(DIV)の時点で、アガロース-ゼラチンマイクロカラムにおける感覚性成長は、アガロースまたはアガロース-ゼラチンマイクロカラムのいずれかにおける運動性成長よりも速かった。しかしながら、3 DIVまでに、アガロース-ゼラチンマイクロカラムにおける感覚性成長は他の群よりも大きかったが、運動性成長については、アガロース-ゼラチンマイクロカラムと比較して、アガロースマイクロカラムにおいて、増大が見られた(図1F)。これらの所見は、DRG外植片から伸びる感覚軸索が運動ニューロンよりも速いことが多いことを示す以前の研究を裏付けるものである。興味深いことに、これらのデータは、アガロース-ゼラチンマイクロカラムにおける活性部分の存在にもかかわらず、運動ニューロンがアガロースマイクロカラムにおいて優先的に成長することを示唆している。運動ニューロンまたは感覚ニューロンからの優先的な成長を評価するために、混合TE-NMI内で神経突起成長を測定した。感覚ニューロンに向かって伸びるより速い運動軸索の成長が、3 DIVで見られた(図7A~7C)。これらの所見に基づき、運動性成長の成功確率を改善するために、および緩徐な分解速度が理由の、移植後の宿主免疫応答からのより一層の保護を提供するために、アガロースマイクロカラムをインビボ実験用に選択した。
【0074】
TE-NMIは、移植後6週間で、そのままであれば除神経されている神経内の、シュワン細胞を保存する
TE-NMIが遠位神経の再生能力を保存できるかどうかを評価するために、坐骨神経を切断し、TE-NMIを遠位神経に付着させ、宿主の再生を防ぐために近位断端にキャップをかぶせた(図2A)。概念実証実験では、構築物を「レイアウト」することによって、TE-NMIを、除神経された遠位神経に微量注入した(図2B)。2週間の時点で、光学クリアリングおよび2光子顕微鏡法により、外側収容体で保護された内腔内に、堅牢な、移植されたTE-NMIニューロンおよび軸索が見出された(図2C)。
【0075】
TE-NMIがシュワン細胞発現を保存するかどうかを試験するために、慢性の神経軸索切断のモデルを用いた(図2A)。この研究では、1つまたは2つのTE-NMIを、遠位坐骨断端を固定した導管に移植した。本発明者らは、TE-NMI軸索を用いて、そのままであれば除神経されているシュワン細胞を、早期再神経支配することで、長期の宿主軸索切断後にシュワン細胞の発現が保持されるのではないかという仮説を立てた。実際、移植後6週間の時点で、堅牢な感覚TE-NMI軸索成長が見られ、宿主組織内で少なくとも5mm伸長していた(図2D)。注目すべきは、宿主S100+ シュワン細胞が、GFP+ 軸索と密接に整列し、場合によっては、GFP+ 軸索が、ビュングネル帯に似たシュワン細胞を貫通して伸びているのが可視化されたことである(図2E)。2つのTE-NMIの移植後、そのままであれば除神経されている神経において、さらに大きなGFP+ 軸索の成長(図2F)およびシュワン細胞の被覆(図2G)が観察されたが、他の群ではシュワン細胞の発現低下が観察された。これらの所見は、TE-NMIから伸長する外因性軸索が、修復後に遠位端標的を再神経支配するために宿主軸索を再生するのに必要な再生促進環境を維持しうることを示唆している。
【0076】
S100β+シュワン細胞およびC-Jun発現は、核(Hoechst+)染色に基づく総細胞数と関連して、自動セグメンテーションを用い移植後6週目にも定量化された(図8F)。Hoechst+ 細胞の総数は、2×TE-NMIコホート(303.3 ± 49.35個の細胞/40,000μm2)において、無細胞群(202.2 ± 41.36個の細胞/40,000μm2; F(2, 9) = 4.44; p = 0.0376; 図8G)よりも高かった。さらに、Hoechst+ 細胞のうち、2×TE-NMI群(249.1 ± 30.29個の細胞/40,000μm2)において、1×TE-NMI (155.2 ± 17.91個の細胞/40,000μm2; p = 0.0038)または無細胞コホート(141.2 ± 10.22個の細胞; F(2, 9) = 15.78; p = 0.0015; 図8I)よりも高いS100βの共発現が見られた。同様に、Hoechst-かつS100β+ 細胞のうち、2×TE-NMIコホート(249.1 ± 15.14個の細胞/40,000μm2)において、1×TE-NMI (155.2 ± 35.82個の細胞/40,000μm2; p = 0.0095)または無細胞群(141.2 ± 20.44個の細胞/40,000μm2; F(2, 9) = 9.883; p = 0.0102; 図2J)よりも高いC-Junとの共局在化が観察された。興味深いことに、本発明者らは、2×TE-NMIコホート(517.5 ± 71.06個の細胞/40,000μm2)において、1×TE-NMI (225.1 ± 23.09個の細胞/40,000μm2; p = 0.0003)および無細胞群(239.1 ± 83.77個の細胞/40,000μm2; F(2, 9) = 25.91; p = 0.0005; 図8H)と比較してC-Jun発現の増加も見出した。これらの所見は、TE-NMIから伸長する外因性軸索が、修復後に遠位端標的を再神経支配するために宿主軸索を再生するのに必要な再生促進環境を維持しうることを示唆している。
【0077】
TE-NMIは移植後16週の時点で、遠位筋標的の電気生理学的活動を維持する
次に、本発明者らは、混合 感覚-運動TE-NMIが、そのままであれば除神経されている筋肉を、保存できるかどうかを調べた(図3A~3F)。遠位総腓骨神経は、その単束神経構造がTE-NMIサイズにより近いサイズで一致し、複数の構築物の必要性を回避するので、外科的パラダイムに選択された。TE-NMIを、そのままであれば除神経されている遠位総腓骨神経に固定した後、切断された近位神経断端を隣接する筋肉に付着させて、宿主の再生を防いだ(図3A)。感覚軸索がシュワン細胞の保存に有効であるため、混合型運動-感覚TE-NMI (図3B)を選択し、本発明者らは、慢性の宿主軸索切断後の筋電気生理学的応答を保存するのに運動軸索の追加が有益であると仮定した。しかしながら、本発明者らの以前のデータに基づくと、感覚ニューロンと共培養された運動ニューロンは、神経再生を向上させ、筋再神経支配を増加させ、さらに高い機能回復を可能にさせながら、インビトロにおいてより良好に成長するようである(図7A~7C)。
【0078】
混合TE-NMIが、そのままであれば除神経されている遠位筋標的と、統合したかどうかを試験するために、移植後16週の時点で、経皮刺激を実施した。移植なしまたはマイクロカラムのみの対照と比較して混合TE-NMI群では、より大きな誘発筋応答が観察された(図3C、3D)。これらの所見は、近位神経キャップが宿主の再生を妨げているために宿主の軸索が欠如しているにもかかわらず、運動ニューロンおよび感覚ニューロンを含むTE-NMIが軸索を突出させ、そのままであれば除神経されている筋肉と、機能的に統合し、より大きな電気生理学的筋応答を可能にすることを示している。
【0079】
TE-NMIは、そのままであれば除神経されている遠位神経鞘において外因性軸索を提供し、非即時的軸索融合を可能にする
これらの所見に基づき、本発明者らは、そのままであれば除神経されている神経内で伸長し、その後に筋肉と統合されるTE-NMI軸索が、標準的なPEG融合プロトコルに従う軸索融合に適合するという仮説を立てた。TE-NMI移植後20週の時点で、TE-NMIを切除することにより、神経融合のために遠位神経を新たに軸索切断した(図4B)。TE-NMI移植が融合の遅延を可能にし、機能回復を促進したかどうかを試験するために、収縮した近位断端と遠位断端の間の移植の必要性を回避し、長期にわたる近位ニューロン損傷に関連する混乱を最小限に抑えるために、交差縫合修復モデルを利用した。非即時的交差縫合修復は、以前に損傷を受けていない脛骨神経の近位断端を、TE-NMI軸索を含む新たに軸索切断した総腓骨神経の遠位端に固定することによって完了した(図4A、4C)。
【0080】
全てのTE-NMI動物において、対照群のいずれでも得られなかったのと比較して、非即時的神経融合後に即時電気伝導が得られた(図4D)。同様に、近位刺激後のTE-NMIコホートでは、より大きな誘発筋応答が記録された(図4E)。採取された移植部位内では、修復後20週の時点で、マイクロカラム内に堅牢なTE-NMIニューロン生存が可視化された(図4F、4G)。切除された移植片のすぐ遠位側には、宿主軸索が可視化されなかったが、移植前に形質導入された感覚軸索および運動軸索が、TE-NMIから宿主遠位神経に伸びていることが観察された(図4H、4I)。
【0081】
TE-NMIは非即時的神経修復後に、より大きな電気生理学的回復、軸索成熟、および筋再神経支配を可能にする
非即時的神経融合後1ヶ月(すなわち、最初の神経切断後24週)の時点で、TE-NMI群においてさらに高い神経および筋肉・電気生理学的機能回復が見られた(図5B、5C)。また、非即時的神経修復の前にTE-NMIを予め受けていた動物では、無細胞対照と比較して、より速い伝導速度が見られた。さらに、TE-NMI群では無細胞群と比較して、誘発筋応答が上昇した。これらの電気生理学的データは、非即時的神経修復後1ヶ月の時点で、TE-NMI群が無細胞対照と比較して、神経伝導性および筋再神経支配を含む機能回復が大きかったことを示している。
【0082】
修復後4週時の再生を評価するために、断面神経形態計測分析を完了して、シュワン細胞、宿主軸索/融合軸索、およびミエリンを同定した(図6A、6B)。修復部位から遠位側の宿主軸索の数には差がなかったが(図6C)、TE-NMI群ではより大きな宿主軸索が見られた(図6D)。より大きなシュワン細胞の発現もTE-NMI群において見られた(図6E)。非即時的神経融合後1ヶ月の時点で、神経筋接合部(NMJ)を同定するためのアセチルコリン受容体(ブンガロトキシン)、およびシナプス前マーカーであるシナプトフィジンについて、筋断面を染色した(図6F、6G)。標的筋肉ではアセチルコリン受容体(AchR)の総数に有意差は見られなかったが(図6H)、TE-NMI移植後にはAcHRとシナプトフィジンを共標識した、より高い割合の成熟NMJが観察された(図6I)。さらに、対照と比較して、TE-NMI群では筋肉重量の上昇が見られた(データは示さず)。まとめると、これらの所見は組織学的データを裏付けており、TE-NMIが非即時的神経修復に続いて進行中の再生、成熟、および再神経支配を加速することを示唆している。
【0083】
本研究において、TE-NMIは、束になった軸索路に亘る運動ニューロンと感覚ニューロンの個別の集団から構成される、予め形成された神経ネットワークを特徴とする新規の移植可能なマイクロ組織として開発された。離断されたラット神経への移植後、TE-NMIニューロンは、宿主組織内の奥深くまで多数の軸索を伸ばし、内因性のビュングネル帯と密接に相互作用し、対照と比較してより大きなシュワン細胞応答を引き起こすことを本発明者らは見出した。さらに、本発明者らは、TE-NMI移植片が遠位神経の再生促進環境を保存することにより、非即時的神経修復後の機能回復を促進することを示す。まとめると、本発明者らは、TE-NMIを、そのままであれば除神経されている筋肉を、神経支配する局所的な軸索の供給源を提供することによって、長期にわたる除神経の有害な影響を防ぐようにデザインされた最初の人工マイクロ組織として報告する。
【0084】
緩徐な軸索再生(1~2mm/日)は、神経損傷後の機能回復を成功させることに対して主な難題であるといわれることが多いが、さらに重要かつ過小評価されていることが多い2つの要因は、(1) 損傷した近位ニューロンを支持し、軸索の再成長を促進するシュワン細胞の能力、および(2) 再神経支配に対する遠位筋の受容性である。遠位神経と筋肉において軸索が接触していない期間が長引くことは、臨床的によく起こることであり、神経修復の遅延、近位神経損傷の修復、および/または長隙神経損傷の修復の場合に起こることが多い。これらの症例では、除神経が長期化することで、再生と再神経支配の成功に必要な再生促進環境と標的筋の受容性が失われる。
【0085】
現在までのところ、遠位神経の再生能力を「保護管理する(babysit)」または保存するようにデザインされた商業的に利用可能な戦略はない。軸索を、最終標的まで近いまたは一次修復まで遠い除神経された遠位神経に再経路指定する、端側縫合(supercharged end-to-side; SETS)神経移行術などの、革新的な外科技法が提案されている。実際、SETSは、一次修復部位から遠く離れた(より遠位側の)軸索による早期の再神経支配を可能にすることで、困難な神経修復における機能回復を改善する可能性がある。しかし、神経移行は特定の場面にのみ適応され、そのままであれば健常である神経を、離断すること必要とし、痛みを伴う神経腫形成のリスクを高める。それゆえ、TE-NMIは、損傷していない神経を故意に離断することなしに、標的筋だけでなく遠位神経のシュワン細胞の再生能力を保存する「保護管理(babysitting)」に対するさらに広く適用可能な組織工学に基づく手法としてさらに望ましい可能性がある。
【0086】
TE-NMIは、神経修復後の機能回復を改善するようにデザインされた最初の予備形成マイクロ組織である。これらの取り組みは、遠位神経に移植された異所性ニューロンがシュワン細胞および筋肉の再生能力を保存し、非即時的神経修復後の機能回復を促進しうることを示した以前の研究に基づいている。さらに、本発明者らのグループによる以前の研究では、ニューロンと長い軸索路から構成される伸張成長した生きた足場である組織工学神経移植片(TENG)が、神経突起プロセスを、そのままであれば除神経されている神経内に、拡張することも示している。TENGは、遠位神経内の再生能力を保存しながら、困難な欠損を越えて軸索再生を同時に促進する。この二重機構は橋渡し修復には依然として有望であるが、移植には神経離断が必要であり、遠位神経の保護管理のためには、そのままであれば無傷である遠位神経構造を、破壊する必要がある。それゆえ、TE-NMIは、低侵襲的な送達に適した次世代の保護管理戦略として開発された。
【0087】
神経融合は、修復後に軸索膜の連続性と接合部位前後の電気伝導を即座に回復させる新たな手法としてBittnerらによってよく説明されている。これらの研究は、神経融合がワーラー変性を防ぎ、筋萎縮を最小限に抑え、再神経支配を促進し、これらが一体となって、迅速な行動回復をもたらすことも報告している。神経融合の可能性は依然として興味深いものの、現時点では、不可避のワーラー変性により、融合を妨げる遠位軸索変性を引き起こす、急性神経損傷に限定されている。本研究において、本発明者らは、そのままであれば除神経されている遠位鞘における、外因性TE-NMI軸索を用いた非即時的神経融合の最初の例を示す。低張生理食塩水に浸漬したTE-NMIを犠牲にすることによって融合が成功し、新たに軸索切断された遠位外因性軸索と近位断端との間の即時の再接続が可能になった。即時の電気伝導が得られたが、融合後の長期にわたって軸索が融合したままであるかどうかは不明である。実際、融合後1ヶ月の時点で、TE-NMI群は無細胞対照と比較して高い機能回復を有したが、初期の回復と比較して明確な低下が認められた。融合した軸索が成熟過程で壊れたりまたは除かれたりした可能性がある。本研究は実現可能性を実証することを目的としたが、今後の研究には、非即時的神経修復後の機能回復を評価するために、さらに長い時点を含めるべきである。今回、本発明者らは、そのままであれば除神経されている遠位断端における、外因性TE-NMI軸索との融合により、非即時的神経修復後のいっそう高い機能回復、神経成熟、および筋肉の再神経支配が可能とされることを示した; しかしながら、これらの影響が単に神経融合の遅れによるものなのか、または神経修復の遅れによるものなのかを解明するには追加の研究が必要である。今後の研究では、大型動物モデルにおいてヒト適合性細胞源を用いた追加の有効性試験により技術移転に目を向ける予定である。
【0088】
取り組むべきもう1つの重要な概念は、この研究から組織工学によって作製された神経構築物が、除神経された筋肉と統合できることが実証されることである。神経支配は発生において重要な役割を果たし、組織工学によって作製された末端器官または筋肉の足場のバイオファブリケーションプロセス中に極めて重要であることが示されている。さらに、今後の研究には、組織バイオファブリケーションを増強するための補助戦略として、または体積筋損失などの、外因性軸索を必要とする他の再生戦略に向けてTE-NMIを用いることが含まれうる。追加の最適化でさらに高い機能回復が得られる可能性があり、例えば、TE-NMIに予め形成された整列シュワン細胞を補充すると、運動ニューロンの生存性が増強される可能性がある。
【0089】
これらの所見に基づけば、TE-NMIは、非即時的神経修復後の回復を成功させる可能性を増強するために、外来性軸索が早期の筋再神経支配をもたらすことを可能にする末梢神経の回復手術のための斬新な手法となりうる。さらに、外来性軸索は宿主神経とスプライシングされ、かくして非即時的神経融合を可能にしうる。まとめると、TE-NMIは、外科医に機能回復を改善する機会を供与し、現在では神経移行術に適さない損傷を有する患者に、希望を取り戻させうる可能性がある。
【0090】
本明細書において引用されるありとあらゆる特許、特許出願および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。特定の態様を参照して本発明を開示してきたが、本発明の他の態様および変形が、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案されうることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような全ての態様および等価な変形を含むように解釈されることが意図される。
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【国際調査報告】