(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】睡眠時無呼吸を治療するためのノルエピネフリン再取り込み阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240625BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240625BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/5375 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240625BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240625BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240625BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240625BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/221 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P11/00
A61P11/04
A61K31/5375
A61K31/5377
A61K31/496
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/70
A61K31/221
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577376
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 US2022033987
(87)【国際公開番号】W WO2022266440
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520282649
【氏名又は名称】アプニメッド,インコーポレイテッド(デラウェア)
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】タラント-モンテムッロ,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】ファーカス,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,デービッド,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ローレンス,ジー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA36
4C076AA49
4C076AA53
4C076AA72
4C076BB01
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4C086MA23
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4C086MA35
4C086MA37
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4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA02
4C206KA01
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4C206MA57
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
(57)【要約】
任意に抗ムスカリン剤の非存在下で、任意に単一療法として、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤を投与する工程を含む睡眠時無呼吸およびいびきを治療する方法が本明細書に記載される。ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、例えばエディボキセチンおよびビロキサジンを含む医薬組成物も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療する方法であって、治療を必要とする被験体に、抗ムスカリン療法の非存在下でノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
NRIが単一療法として投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
NRIがレボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩が約1mg~約8mgの用量で投与される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩が約2mg~約6mgの用量で投与される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
NRIがエディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩が約6mg~約36mgの用量で投与される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
NRIがビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩が約50mg~約800mgの用量で投与される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
NRIがエディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、該方法が、被験体にトラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩を投与する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
NRIがビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、該方法が、被験体にトラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩を投与する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
NRIが毎日投与される、請求項1~11いずれか記載の方法。
【請求項13】
NRIが経口投与形態で投与される、請求項1~12いずれか記載の方法。
【請求項14】
経口投与形態が、シロップ剤、丸薬、錠剤、トローチ剤、カプセル剤またはパッチである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
NRIが(S,S)-レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1~5いずれか記載の方法。
【請求項16】
咽頭気道虚脱に関連する状態が睡眠時無呼吸である、請求項1~15いずれか記載の方法。
【請求項17】
咽頭気道虚脱に関連する状態が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
咽頭気道虚脱に関連する状態がいびきである、請求項1~15いずれか記載の方法。
【請求項19】
咽頭気道虚脱に関連する状態が単純いびきである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
被験体が不完全に意識的な状態にある、請求項1~19いずれか記載の方法。
【請求項21】
不完全に意識的な状態が睡眠である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
抗ムスカリン療法の非存在下での、任意に単一療法としての咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体の治療における使用のためのノルエピネフリン再取り込み阻害剤。
【請求項23】
抗ムスカリン療法の非存在下での、任意に単一療法としての睡眠時無呼吸の治療における使用のためのノルエピネフリン再取り込み阻害剤。
【請求項24】
抗ムスカリン療法の非存在下での、任意に単一療法としてのいびきの治療における使用のためのノルエピネフリン再取り込み阻害剤。
【請求項25】
咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療する方法であって、治療を必要とする被験体に、(i)エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩および(ii)オキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項26】
咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療する方法であって、治療を必要とする被験体に、(i)ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩および(ii)オキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
オキシブチニンが、ラセミ形態オキシブチニンまたはR-オキシブチニンである、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
(i)エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩、(ii)オキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩および(ii)薬学的に許容され得る賦形剤または担体を含む、医薬組成物。
【請求項29】
(i)エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩、(ii)トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩および(ii)薬学的に許容され得る賦形剤または担体を含む、医薬組成物。
【請求項30】
(i)ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩、(ii)オキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩および(ii)薬学的に許容され得る賦形剤または担体を含む、医薬組成物。
【請求項31】
(i)ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩、(ii)トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩および(ii)薬学的に許容され得る賦形剤または担体を含む、医薬組成物。
【請求項32】
オキシブチニンが、ラセミ形態オキシブチニンまたはR-オキシブチニンである、請求項28または30記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての他所参照
本願は、それらのそれぞれの全内容が参照により本明細書に援用される、2021年6月17日に出願された米国仮出願第63/211,673号および2022年3月11日に出願された米国仮出願第63/319,035号の35 U.S.C. § 119 (a)および(e)下の利益およびそれらに対する優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、任意に抗ムスカリン療法の非存在下でノルエピネフリン再取り込み阻害剤を投与する工程を含む、睡眠時無呼吸およびいびきを治療する方法を提供し、該治療方法は、単一療法である。
【背景技術】
【0003】
背景
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠時の咽頭気道の虚脱により引き起こされる一般的な障害である。OSAは、深刻な健康上の結果を有し得る。
【発明の概要】
【0004】
概要
本発明の一局面は、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療する方法を提供し、該方法は、治療を必要とする被験体に、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)の有効量を投与する工程を含む。
【0005】
本発明のこの局面の態様は、以下の任意の特徴の1つ以上を含み得る。いくつかの態様において、該方法は、抗ムスカリン療法の非存在下で実行される。いくつかの態様において、該方法は、抗ムスカリン療法を排除する。いくつかの態様において、被験体は、抗ムスカリン療法を同時に受けず、すなわち抗ムスカリン剤を同時に投与されない。いくつかの態様において、NRIは、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIは、エディボキセチン(edivoxetine)またはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIは、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、該方法は、唯一の医薬有効成分としてレボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩を用いる単一療法である。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、約1mg~約8mgの用量で投与される。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、約2mg~約6mgの用量で投与される。いくつかの態様において、レボキセチンは毎日投与される。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、(S,S)-レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、該方法は、唯一の医薬有効成分としてエディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩を用いる単一療法である。いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、約5mg~約50mgの用量で投与される。いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、約6mg~約36mgの用量で投与される。いくつかの態様において、エディボキセチンは毎日投与される。いくつかの態様において、エディボキセチンは、オキシブチニンと組み合わせて、例えば約1~約20mgのオキシブチニンの用量で投与される。オキシブチニンは、ラセミ形態のオキシブチニンまたは実質的にエナンチオマー的に純粋なR-オキシブチニンであり得る。いくつかの態様において、エディボキセチンは、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩と組み合わせて、例えば約12.5~約200mgの用量で投与される。いくつかの態様において、該方法は、唯一の医薬有効成分としてビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩を用いる単一療法である。いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は、約50mg~約800mgの用量で投与される。いくつかの態様において、ビロキサジンは毎日投与される。いくつかの態様において、ビロキサジンは、オキシブチニンと組み合わせて、例えば約1~約20mgのオキシブチニンの用量で投与される。オキシブチニンは、ラセミ形態のオキシブチニンまたは実質的にエナンチオマー的に純粋なR-オキシブチニンであり得る。いくつかの態様において、ビロキサジンは、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩と組み合わせて、例えば約12.5~約200mgの用量で投与される。いくつかの態様において、咽頭気道虚脱に関連する状態は、睡眠時無呼吸、例えば閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である。いくつかの態様において、咽頭気道虚脱に関連する状態は、いびき、例えば単純いびきである。いくつかの態様において、被験体は、不完全に(non-fully)意識的な状態にある。いくつかの態様において、不完全に意識的な状態は睡眠である。いくつかの態様において、NRIまたはその薬学的に許容され得る塩は、経口投与形態で投与される。いくつかの態様において、経口投与形態はシロップ剤、丸薬、錠剤、トローチ剤、カプセル剤またはパッチである。
【0006】
本発明の別の局面は、咽頭気道虚脱に関連する状態の治療における使用のためのノルエピネフリン再取り込み阻害剤を提供する。
【0007】
本発明の別の局面は、咽頭気道虚脱に関連する状態の治療におけるノルエピネフリン再取り込み阻害剤の使用を提供する。
【0008】
本発明の別の局面は、咽頭気道虚脱に関連する状態を治療するための医薬の製造のためのノルエピネフリン再取り込み阻害剤の使用を提供する。
【0009】
そうではないと定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。方法および材料は本発明における使用のために本明細書において記載され、当該技術分野で公知の他の適切な方法および材料も使用され得る。材料、方法および実施例は例示のみのものであり、限定されることを意図しない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリーおよび他の参照文献は、それらの全体において参照により援用される。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が支配的である。
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面からならびに特許請求の範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
以下の図面は例示として提供され、特許請求される発明の範囲を限定することを意図しない。
【
図1】
図1は、閉塞性無呼吸のグラフによる表示である。最上部のチャンネルは、睡眠の脳波(EEG)パターンを示す。次のチャンネルは気流を示す。次の3つのチャンネルは、胸郭および腹部の動きならびに食道圧力の変化による換気努力(ventilator effort)を示し、これらの全ては、閉塞された上気道に対する呼吸努力を反映する。最後のチャンネルは、オキシヘモグロビン飽和を示す。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、OSAの以前の診断を有する16名の個体におけるAHIに対するプラセボおよびレボキセチンの効果(減呼吸について4%の定義)を示す個々および群のデータである。群のデータは、メジアンおよび四分位数間領域を示す。プラセボおよびレボキセチンは、二重盲検交差試験の間に一晩の間、ランダムな順序で約1週間離して投与された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
ヒトにおいて、咽頭気道領域は、骨または軟骨の支持を有さず、筋肉により開放されたままに保持される。睡眠時にこれらの筋肉が弛緩する際、咽頭は、虚脱して、気流の停止を生じ得る。
図1に示されるように、換気努力(ventilatory effort)は継続して、食道圧力変化の増加により示される閉塞を克服するための試みを増加する。胸郭および腹部の動きは反対方向にあり、塞がれた気道に対する横隔膜の収縮の結果として、腹部壁が外側に広げられ、胸部壁は内側にへこむ。
【0013】
呼吸するための努力を増加することにより、EEG上で視覚化され得る睡眠からの覚醒がもたらされ(
図1)、気道の開放および正常な呼吸の再開が生じる。無呼吸の間の気流の欠如はまた、オキシヘモグロビン飽和の低下(
図1)により示される低酸素を引き起こす。重症度は一般的に、睡眠の1時間あたりに起こる無呼吸(少なくとも10秒間の呼吸の停止)および減呼吸(気流および酸素飽和の低下)の組み合わせた平均数である無呼吸-減呼吸指数(AHI)を使用して測定される(Ruehland et al., The new AASM criteria for scoring hypopneas: Impact on the apnea hypopnea index. SLEEP 2009;32(2):150-157)。
【0014】
図1は、閉塞性無呼吸のグラフによる表示である。最上部のチャンネルは、睡眠の脳波(EEG)パターンを示す。次のチャンネルは気流を示す。次の3つのチャンネルは、胸郭および腹部の動きならびに食道圧力の変化による換気努力を示し、これらの全ては、閉塞された上気道に対する呼吸努力を反映する。最後のチャンネルは、オキシヘモグロビン飽和を示す。
【0015】
OSAの厳しい定義が使用される場合(1時間当たり>15事象のAHIまたは日中の眠気を伴う1時間当たり>5事象のAHI)、推定の有病率は男性において約15%および女性において5%である。米国において推定で3000万人の個体がOSAを有し、このうち約600万人が診断されている。米国におけるOSAの有病率は、加齢および肥満の割合の増加のために増加しているように思われる。OSAは、主要な共存症(comorbidity)および経済的費用、例えば:高血圧、糖尿病、心臓血管疾患、自動車事故、仕事場での事故および疲労/生産力の消失と関連する。(Young et al., WMJ 2009; 108:246; Peppard et al., Am J Epidemiol 2013; 177:1006.)
【0016】
現在の主要な治療は、持続陽圧気道圧(CPAP)である。CPAPは、事実上全ての患者に有効であり、診断された患者の約85%はCPAPを指示されるが、コンプライアンスは低い。患者は、CPAPが不快であり時々我慢できないものであることに気づき、患者の少なくとも30%(80%まで)が定期的に順守しておらず(non-adherent)、そのため治療されない(Weaver, Proc Am Thorac Soc. 2008 Feb 15; 5(2): 173-178)。変動性の成功率を有する他の治療様式としては、経口器具(10%)および手術(5%)が挙げられるが、いずれも一般的な集団の全てにおいて効果的でないことがある。
【0017】
睡眠中のヒトにおいて咽頭筋肉を活性化するための医薬のための研究はがっかりするものであり、セロトニン再取込み阻害剤、三環系抗鬱薬および鎮静薬などの薬剤は全て、ヒトにおいて試験され、OSA重症度の低減に有効でないことが示されている。例えばProia and Hudgel, Chest. 1991 Aug;100(2):416-21;Brownell et al., N Engl J Med 1982, 307:1037-1042;Sangal et al., Sleep Med. 2008 Jul;9(5):506-10. Epub 2007 Sep 27;Marshall et al. p. 2008 Jun;31(6):824-31;Eckert et al., Clin Sci (Lond). 2011 Jun;120(12);505-14;Taranto-Montemurro et al., Sleep. 2017 Feb 1;40(2)参照。
【0018】
最近の試験において、「ato-oxy」と称され、就寝時間前に投与されるアトモキセチンとオキシブチニンの組合せは、広範囲の重症度を有する患者においてOSAを低減すると示されている。一晩の間に投与されたato-oxy組合せは、OSAを有する選択されない患者の群において、閉塞性事象の数を低減し、一晩の酸素脱飽和を向上し、おとがい舌筋活性を高めた。概念の証明(proof-of-concept)試験において収集されたデータは、全身投与される特定の神経伝達物質プロフィールを有する薬物を使用して、OSAを向上または廃止することが可能であることを示した。Taranto-Montemurro, L. et al., The Combination of Atomoxetine and Oxybutynin Greatly Reduces Obstructive Sleep Apnea Severity. A Randomized, Placebo-controlled, Double-Blind Crossover Trial. Am J Respir Crit Care Med 2019 May 15;199(10):1267-1276参照。
【0019】
咽頭気道虚脱に関連する状態、例えば睡眠時無呼吸を治療するためのさらなる療法のための必要性が残る。
【0020】
治療方法
本明細書の記載される方法は、睡眠時の咽頭気道筋肉の虚脱に関連する障害の治療のための方法を含む。いくつかの態様において、該障害は、睡眠時無呼吸(例えば閉塞性睡眠時無呼吸(OSA))またはいびき(例えば単純いびき)である。一般的に、該方法は、かかる治療の必要があるかまたはかかる治療の必要があると決定された被験体に、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤の治療有効量を投与する工程を含む。いくつかの態様において、NRIは、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIは、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIは、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0021】
この文脈で使用される場合、「治療(treat)」することは、咽頭気道虚脱に関連する障害の少なくとも1つの症状を改善することを意味する。しばしば、睡眠時の咽頭気道虚脱は、いびきおよび/または呼吸の中断(無呼吸または減呼吸)、睡眠からの覚醒ならびに酸素富化の低下(低酸素血症)をもたらすので、治療は、いびき、無呼吸/減呼吸、睡眠分断(sleep fragmentation)および低酸素血症の低下をもたらし得る。OSAを有する被験体の治療のための本明細書に記載される化合物の治療有効量の投与は、AHIの低下をもたらし得る。OSA疾患および症状の測定は、例えば睡眠ポリグラフ計(PSG)によるものであり得る。
【0022】
一般的に、化合物の「有効量」は、例えば咽頭気道虚脱に関連する状態を治療するため、例えば睡眠時無呼吸またはいびきを治療するための、所望の生物学的応答を示すのに十分な量をいう。当業者に理解されるように、本発明の化合物の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態学、治療される疾患、投与形態ならびに被験体の年齢、体重、健康状態および状態などの要因に応じて変化し得る。有効量は、治療的および予防的処置を包含する。
【0023】
1以上の投与、適用または用量において有効量が投与され得る。該組成物は、1日に1回以上から1週間に1回以上;例えば1日おきに1回投与され得る。いくつかの態様において、組成物は毎日投与される。いくつかの態様において、組成物は、睡眠時間の前、例えば睡眠時間の直前または睡眠時間の15~60分前に毎日投与される。当業者は、限定されないが、疾患もしくは障害の重症度、以前の治療、被験体の一般的な健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含む特定の要因が、被験体を効果的に治療するために必要な用量およびタイミングに影響し得ることを理解する。さらに、本明細書に記載される治療化合物の治療有効量を用いた被験体の治療は、単一の治療または一連の治療を含み得る。
【0024】
本明細書で使用する場合、そうではないと特定されない限り、化合物の「治療有効量」は、疾患、障害もしくは状態の治療における治療的利益を提供するため、または該疾患、障害もしくは状態に関連する1つ以上の症状を遅延もしくは最小化するために十分な量である。化合物の治療有効量は、疾患、障害または状態の治療における治療的利益を提供する治療剤の量を意味する。用語「治療有効量」は、全体的な治療を向上する、疾患もしくは状態の症状もしくは原因を低減もしくは回避する、または別の治療剤の治療的効力を高める量を包含し得る。
【0025】
本明細書で使用する場合、「単一療法」は、個々の(本明細書において単独とも称される)、例えば同じ適応症、例えば睡眠時無呼吸またはいびきを治療するための別の有効成分を有さない薬剤の使用をいう。例えばこの文脈において、用語単一療法は、睡眠時無呼吸またはいびきを治療するための、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の個々または単独での使用を含む。
【0026】
本明細書で使用する場合、「抗ムスカリン療法」は、抗ムスカリン剤の投与をいう。抗ムスカリン剤としては、限定されないが、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン(darifenacin)、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、オキシブチニン、アニソトロピン(anisotropine)、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン(cycrimine)、ジサイクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロラート、ヘキソサイクリウム、イソプロパミド、メペンゾラート、メチキセン(methixene)、メトスコポラミン、オキシフェンサイクリミン、オキシフェノニウム、プロサイクリジン(procyclidine)、スコポラミン、トリジヘクセチルおよびトリヘキシフェニジルが挙げられる。抗ムスカリン療法の非存在下で本開示による治療を受ける被験体は、抗ムスカリン剤の投与を受けない。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「被験体」および「患者」は交換可能に使用される。用語「被験体」および「患者」は、動物(例えばニワトリ、ウズラもしくはシチメンチョウなどの鳥または哺乳動物)、具体的に非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ラット、ネコ、イヌおよびマウス)および霊長類(例えばサル、チンパンジーおよびヒト)などの「哺乳動物」、ならびにより具体的にヒトをいう。一態様において、被験体は、農場動物(例えばウマ、ウシ、ブタまたはヒツジ)またはペット(例えばイヌ、ネコ、モルモットまたはウサギ)などの非ヒト動物である。好ましい態様において、被験体はヒトである。
【0028】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容され得る」は、連邦政府もしくは州政府の規制機関または米国以外の国の対応する機関により承認されるかまたは承認可能であること、あるいは米国薬局方または動物およびより具体的にはヒトにおける使用のための他の一般的に認識される薬局方に列挙されることを意味する。
【0029】
「薬学的に許容され得る塩」としては、「薬学的に許容され得る酸付加塩」および「薬学的に許容され得る塩基付加塩」が挙げられる。「薬学的に許容され得る酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性を保持し、非生物学的に望ましくないかまたはそうではない(not biologically or otherwise undesirable)、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等および有機酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等により形成されるこれらの塩をいう。
【0030】
「薬学的に許容され得る塩基付加塩」としては、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩等に由来するものが挙げられる。例示的な塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩である。薬学的に許容され得る無毒性有機塩基由来の塩としては、限定されないが、第1級、第2級および第3級アミン、置換されるアミン、例えば天然に存在する置換されるアミン、環式アミン、ならびに塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミンの樹脂等の塩が挙げられる。例示的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。(例えば、参照により本明細書に援用されるBerge, SM. et al., 「Pharmaceutical Salts」、J. Pharm. Sci., 1977;66:1-19参照。)
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「単位剤型」は、化合物が被験体に投与される形態をいうように定義される。具体的に、単位剤型は、例えば丸薬、カプセル剤または錠剤であり得る。いくつかの態様において、単位剤型はカプセル剤である。
【0032】
本明細書で使用する場合、「固形剤型」は、固形の医薬用量(1つまたは複数)、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、サシェ、再構成性散剤、乾燥粉末吸入器および咀嚼可能物を意味する。
【0033】
本明細書に開示される化合物について、単一立体化学異性体、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、シス/トランス立体配座異性体、および回転異性体、ならびにそれらのラセミおよび非ラセミ混合物は、本発明の範囲内にある。そうではないと示されない限り、本明細書に開示される化合物の全ての互変異性形態は、本発明の範囲内にある。
【0034】
いくつかの態様において、NRIは、ノルエピネフリン選択的再取り込み阻害剤(NSRI)である。いくつかの態様において、NSRIは、アメダリン、アトモキセチン、4-ヒドロキシアトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エディボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミンおよびビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される。いくつかの態様において、NRIは、ノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害剤(NNRI)である。いくつかの態様において、NNRIは、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジンおよびベンラファキシンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される。いくつかの態様において、NRIは、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIは、4-ヒドロキシアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIは、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIは、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIは、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0035】
レボキセチンは、2-((2-エトキシフェノキシ)(フェニル)メチル)モルホリンまたは2-[α-(2-エトキシフェノキシ)ベンジル]-モルホリンの化学名を有する医薬物質およびその薬学的に許容され得る塩の一般名である。種々の態様において、レボキセチンは、R,R-およびS,S-エナンチオマーのラセミ混合物または単離されたエナンチオマー、例えばS,S-エナンチオマーであり得る。いくつかの態様において、レボキセチンは、レボキセチン塩酸塩であり得る。いくつかの態様において、レボキセチンは、レボキセチンメシレートであり得る。
【0036】
エディボキセチンは、(1R)-2-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-1-[(2S)-モルホリン-2-イル]-1-(オキサン-4-イル)エタノールの化学名を有する医薬物質およびその薬学的に許容され得る塩の一般名である。
【0037】
ビロキサジンは、2-[(2-エトキシフェノキシ)メチル]モルホリンの化学名を有する医薬物質およびその薬学的に許容され得る塩の一般名である。
【0038】
オキシブチニンは、化学名4-ジエチルアミノ-2-ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレートまたは4-(ジエチルアミノ)ブタ-2-イニル2-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセテートを有する医薬物質およびその薬学的に許容され得る塩についての一般名である。種々の態様において、オキシブチニンは、R-およびS-エナンチオマーのラセミ混合物または単離されたエナンチオマー、例えばR-エナンチオマーであり得る。種々の態様において、オキシブチニンは、オキシブチニンクロライドまたは(R)-オキシブチニンクロライドであり得る。
【0039】
いくつかの態様において、該方法は、約0.2mg~約12mgの用量のレボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩を投与する工程を含む。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約1mg~約8mgである。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約0.5mg~約6mgである。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約2mg~約6mgである。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約4mgである。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約6mgである。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約2mgである。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約3mgである。
【0040】
いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、(S,S)-レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。本明細書で使用する場合、(S,S)-レボキセチンは、レボキセチンの他の立体異性体を実質的に含まない(S,S)-レボキセチン立体異性体をいう。
【0041】
いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は毎日投与される。いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、睡眠時間前、例えば睡眠時間の直前または睡眠時間の15~60前に毎日投与される。
【0042】
いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、抗ムスカリン療法の非存在下で投与される。
【0043】
いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、単一療法として投与される。
【0044】
いくつかの態様において、レボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、1つ以上のさらなる、すなわち抗ムスカリン剤ではない活性剤を用いた併用療法として投与される。
【0045】
いくつかの態様において、該方法は、約5~約50mgの用量のエディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩を投与する工程を含む。いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約6mg~約36mgである。いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約6mg~約20mgである。いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約20mg~約36mgである。いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約10mg~約25mgである。
【0046】
いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、毎日投与される。いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、睡眠時間の前、例えば睡眠時間の直前または睡眠時間の15~60分前に毎日投与される。
【0047】
いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、抗ムスカリン療法の非存在下で投与される。
【0048】
いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は単一療法として投与される。
【0049】
いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、1つ以上のさらなる活性剤との併用療法として投与される。
【0050】
いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、オキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩(例えばラセミ形態オキシブチニンまたはR-オキシブチニン)との併用療法として投与される。
【0051】
いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、トラゾドン、ゾルピデム、エスゾピクロン、ベンゾジアゼピン、ガバペンチン、チアガビン(tiagabine)およびオキシベートナトリウムまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される催眠薬との併用療法として投与される。
【0052】
いくつかの態様において、エディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩との併用療法として投与される。いくつかの態様において、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩は約12.5~約200mgの用量で投与される。いくつかの態様において、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩は約12.5~約50mgの用量で投与される。いくつかの態様において、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩は約50~約200mgの用量で投与される。いくつかの態様において、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩は約25~約100mgの用量で投与される。
【0053】
いくつかの態様において、該方法は、約50~約800mgの用量のビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩を投与する工程を含む。いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約50mg~約300mgである。いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約300mg~約800mgである。いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約100mg~約500mgである。
【0054】
いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は毎日投与される。いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は、睡眠時間の前、例えば睡眠時間の直前または睡眠時間の15~60分前に毎日投与される。
【0055】
いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は、抗ムスカリン療法の非存在下で投与される。
【0056】
いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は、単一療法として投与される。
【0057】
いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は、1つ以上のさらなる活性剤との併用療法として投与される。
【0058】
いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は、オキシブチニン(例えばラセミ形態オキシブチニンまたはR-オキシブチニン)との併用療法として投与される。
【0059】
いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は、トラゾドン、ゾルピデム、エスゾピクロン、ベンゾジアゼピン、ガバペンチン、チアガビンおよびオキシベートナトリウムまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される催眠薬との併用療法として投与される。
【0060】
いくつかの態様において、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩との併用療法として投与される。いくつかの態様において、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩は約12.5~約200mgの用量で投与される。いくつかの態様において、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩は約12.5~約50mgの用量で投与される。いくつかの態様において、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩は約50~約200mgの用量で投与される。いくつかの態様において、トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩は約25~約100mgの用量で投与される。
【0061】
医薬組成物
有効成分としてレボキセチン、エディボキセチンもしくはビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩を含む医薬組成物も本明細書に提供される。
【0062】
医薬組成物は典型的に、薬学的に許容され得る担体を含む。本明細書で使用する場合、語「薬学的に許容され得る担体」としては、薬学的投与と適合性である食塩水、溶媒、分散媒体、希釈剤、充填剤、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤等が挙げられる。
【0063】
本発明における使用のための医薬有効成分(API)は、薬学的に許容され得る塩として提供され得る。いくつかの態様において、レボキセチンはレボキセチン塩酸塩である。いくつかの態様において、レボキセチンはレボキセチンメシレートである。
【0064】
本発明における使用のためのAPIは、即時放出または調節放出、例えば遅延放出または延長放出のために製剤化され得る。例えば、ビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩は、即時放出(すなわち即時放出医薬組成物中)のためまたは延長放出(すなわち延長放出医薬組成物中)のために製剤化され得る。ビロキサジンは、延長放出カプセル剤として米国において入手可能である。
【0065】
本明細書に記載される併用療法について、APIは、別々または一緒に製剤化され得る。いくつかの態様において、APIは、例えば固定用量組合せとして一緒に製剤化される。いくつかの態様において、APIは、例えば同時投与のために別々に製剤化される。
【0066】
薬学的に許容され得る担体または賦形剤およびエディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩を含み、任意にオキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩をさらに含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0067】
薬学的に許容され得る担体または賦形剤およびエディボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩を含み、任意にトラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩をさらに含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0068】
薬学的に許容され得る担体または賦形剤およびビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩を含み、任意にオキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩をさらに含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0069】
薬学的に許容され得る担体または賦形剤およびビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩を含み、任意にトラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩をさらに含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0070】
いくつかの態様において、医薬組成物中のエディボキセチン、ビロキサジン、オキシブチニン(例えばラセミ形態オキシブチニンまたはR-オキシブチニン)もしくはトラゾドンまたはそれらの薬学的に許容され得る塩の用量は、例えば睡眠時無呼吸またはいびきの治療のために本明細書に記載されるような用量であり得る。
【0071】
医薬組成物は典型的に、その意図される投与経路に適合性であるように製剤化される。投与経路の例としては、全身経口または経皮投与が挙げられる。
【0072】
適切な医薬組成物を製剤化する方法は、当該技術分野で公知であり、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., 2005;およびシリーズの書籍Drugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs (Dekker, NY)参照。例えば、経口組成物は一般的に、不活性希釈剤または可食性担体を含む。経口治療的投与の目的で、活性化合物(1つまたは複数)は、賦形剤と一体化され得、丸薬、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセルの形態で使用され得る。経口組成物はまた、流体担体を使用して調製され得る。いくつかの態様において、本発明の組成物は単位剤型であり得る。いくつかの態様において、本発明の組成物は、固形剤型、例えば錠剤またはカプセル剤であり得る。
【0073】
薬学的に適合性の結合剤および/またはアジュバント材料が、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分または同様の性質を有する化合物:微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲルもしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterotes)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ調味料などの矯味矯臭剤のいずれかを含み得る。
【0074】
本明細書に記載される化合物の全身投与は、例えば皮膚に適用されるパッチ、ゲルまたはローションを使用して、経皮手段によってもなされ得る。経皮投与について、上皮障壁の浸透に適した浸透剤が製剤中に使用され得る。かかる浸透剤は一般的に当該技術分野で公知である。例えば、経皮投与について、活性化合物は、当該技術分野で一般的に公知なように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリームに製剤化され得る。ゲルおよび/またはローションは、個々のサシェ中でまたは毎日適用される定量ポンプを介して提供され得;例えばCohn et al., Ther Adv Urol. 2016, Apr; 8(2): 83-90参照。
【0075】
一態様において、治療化合物は、身体からの迅速な排除に対して治療化合物を保護する担体、例えば埋没物および微小封入送達系などの制御放出製剤を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性で生体適合性のポリマーが使用され得る。かかる製剤は、標準的な技術を使用して調製され得るか、または例えばAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手し得る。薬学的に許容され得る担体としてリポソーム懸濁物も使用され得る。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されるような当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0076】
該医薬組成物は、本明細書に記載される方法における投与または使用のための指示書と共に、容器、パックまたはディスペンサー中に含まれ得る。
【実施例】
【0077】
実施例
本発明は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに記載される。
【0078】
実施例1. レボキセチン交差試験。
レボキセチンを用いたOSAの治療のための交差試験を実施した。該試験は、二重盲検無作為化プラセボ対照交差の多施設試験であった。レボキセチンの夜に、参加者は、4mgのレボキセチンメシレートを受けた。プラセボの夜に、参加者は、適合プラセボを受けた。レボキセチンおよびプラセボの夜は、ランダムな順序で少なくとも1週間離した。参加者は、急性の一夜の実験室睡眠試験のための訪問の間に、レボキセチンまたはプラセボを受けた。参加者は、2晩の睡眠ポリグラフ(polysomonogram)(PSG)を有した。治療の経口投与は、就寝時間の直前に行った。
【0079】
試験についての主要なエンドポイントは、1時間の睡眠当たりの上気道の閉塞の回数を示す無呼吸/減呼吸指数(AHI)により測定されたOSA重症度であった。第2のエンドポイントは、PSGからの睡眠パラメーターおよび表現型測定、睡眠効率、翌日の眠気(Karolinksa眠気スケール質問票)ならびに翌日の警戒(alertness)(運転シミュレーター試験)であった。
【0080】
図2Aおよび2Bは、OSAの以前の診断を有する交差試験からの16名の参加者におけるAHI(減呼吸について4%の定義)に対するプラセボおよびレボキセチンの効果を示す個々のおよび群のデータである。群のデータは、メジアンおよび四分位数間領域を示す。
【0081】
実施例2. エディボキセチン交差試験。
エディボキセチンを用いたOSAの治療についての交差試験を実施する。試験は、二重盲検無作為化プラセボ対照交差の多施設試験である。エディボキセチンの夜に、参加者はエディボキセチンを受ける。プラセボの夜に、参加者は適合プラセボを受ける。エディボキセチンおよびプラセボの夜は、ランダムな順序で少なくとも1週間離す。参加者は、急性の一晩の実験室睡眠試験についての訪問の間にエディボキセチンまたはプラセボを受ける。参加者は、2晩の睡眠ポリグラフ(PSG)を有する。治療の経口投与は就寝時間の直前に行う。
【0082】
試験についての主要なエンドポイントは、1時間の睡眠当たりの上気道の閉塞の回数を示す無呼吸/減呼吸指数(AHI)により測定されるOSA重症度である。第2のエンドポイントは、PSGからの睡眠パラメーターおよび表現型測定、睡眠効率、翌日の眠気(Karolinksa眠気スケール質問票)ならびに翌日の警戒(運転シミュレーター試験)である。
【0083】
実施例3. ビロキサジン交差試験。
ビロキサジンを用いたOSAの治療についての交差試験を実施する。試験は、二重盲検無作為化プラセボ対照交差の多施設試験である。ビロキサジンの夜に、参加者はビロキサジンを受ける。プラセボの夜に、参加者は適合プラセボを受ける。ビロキサジンおよびプラセボの夜は、ランダムな順序で少なくとも1週間離す。参加者は、急性の一晩の実験室睡眠試験についての訪問の間にビロキサジンまたはプラセボを受ける。参加者は、2晩の睡眠ポリグラフ(PSG)を有する。治療の経口投与は就寝時間の直前に行う。
【0084】
試験についての主要なエンドポイントは、1時間の睡眠当たりの上気道の閉塞の回数を示す無呼吸/減呼吸指数(AHI)により測定されるOSA重症度である。第2のエンドポイントは、PSGからの睡眠パラメーターおよび表現型測定、睡眠効率、翌日の眠気(Karolinksa眠気スケール質問票)ならびに翌日の警戒(運転シミュレーター試験)である。
【0085】
他の態様
本発明は、その詳細な説明と共に記載されるが、前述の記載は例示を意図し、添付の特許請求の範囲の範囲により定義される本発明の範囲を限定しないことが理解される。他の局面、利点および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【国際調査報告】