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特表2024-523885抗HER3抗体、それを含有する抗体薬物複合体及びそれらの用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】抗HER3抗体、それを含有する抗体薬物複合体及びそれらの用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240625BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240625BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K47/68
A61K38/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577514
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 CN2022098929
(87)【国際公開番号】W WO2022262772
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/099998
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522354115
【氏名又は名称】ベイジン・シノタウ・バイオ-ファーマシューティカルズ・テクノロジー・カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,シャオヤン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ジエ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA14
4C084BA23
4C084BA32
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA16
4C085AA26
4C085AA27
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC03
4C085CC05
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA71
4H045BA72
4H045DA76
4H045DA83
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
抗HER3抗体、又は抗HER3抗体を含有する抗体薬物複合体(ADC)が提供される。また、HER3発現癌の治療における抗体又はADCの用途も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)を含む抗HER3抗体又はその抗原結合断片であって、前記VHが、
配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H3とを含む、抗HER3抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記VHが、配列番号15のCDR-H1と、配列番号17のCDR-H2と、配列番号19のCDR-H3とを含む、請求項1に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
軽鎖可変領域(VL)を更に含み、前記VLが、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3とを含む、請求項1又は2に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
前記VLが、配列番号5のCDR-L1と、配列番号7のCDR-L2と、配列番号9のCDR-L3とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
前記VHが、配列番号13のリーダー配列を含む若しくは含まない配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
前記VLが、配列番号3のリーダー配列を含む若しくは含まない配列番号2のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体の前記重鎖がIgG1型である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体がヒト化抗体であり、前記重鎖が、配列番号21、25若しくは27のアミノ酸配列、又はそれらと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体がヒト化抗体であり、前記軽鎖が、配列番号23のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項11】
前記HER3がヒト又はサルのHER3である、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗HER3抗体が、NRG1によって誘導される前記HER3のリン酸化を阻害する、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗HER3抗体が、1nM未満のEC50でヒト又はサルのHER3に結合する、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗HER3抗体が、前記HER3に結合すると内在化活性を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗HER3抗体若しくは抗原結合断片のVH、及び/又は請求項1~14のいずれか一項に記載の抗HER3抗体若しくは抗原結合断片のVLをコードするポリヌクレオチド酸配列を含む、単離された核酸。
【請求項16】
前記単離された核酸が、配列番号1、11、22、24、26及び28から選択される、請求項15に記載の単離された核酸。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項18】
請求項15若しくは16に記載の単離された核酸、又は請求項17に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片を発現する宿主細胞。
【請求項20】
化学部分に結合した請求項1~14のいずれか一項に記載の抗HER3抗体又は抗原結合断片を含む、抗体複合体。
【請求項21】
前記抗HER3抗体又は抗原結合断片が、リンカーを介して前記化学部分に結合する、請求項20に記載の抗体複合体。
【請求項22】
前記リンカーが酵素切断可能である、請求項20又は21に記載の抗体複合体。
【請求項23】
前記リンカーがVal-Cit部分を含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の抗体複合体。
【請求項24】
前記抗体複合体が抗体薬物複合体(ADC)である、請求項20~23のいずれか一項に記載の抗体複合体。
【請求項25】
前記化学部分が放射性同位体、化学療法剤、又は細胞毒性薬である、請求項20~24のいずれか一項に記載の抗体複合体。
【請求項26】
前記細胞毒性薬が毒素である、請求項20~25のいずれか一項に記載の抗体複合体。
【請求項27】
前記毒素が、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAE及びMMAFから選択される、請求項20~26のいずれか一項に記載の抗体複合体。
【請求項28】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗HER3抗体若しくは抗原結合断片又は請求項20~27のいずれか一項に記載の抗体複合体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項29】
前記抗体複合体が1種以上の他の抗癌剤を更に含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
癌治療用の薬剤の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗HER3抗体若しくは抗原結合断片又は請求項20~27のいずれか一項に記載の抗体複合体の用途。
【請求項31】
前記癌が前記HER3を発現する、請求項30に記載の用途。
【請求項32】
前記癌が胃癌又は大腸癌である、請求項30又は31に記載の用途。
【請求項33】
癌の治療に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗HER3抗体若しくは抗原結合断片又は請求項20~27のいずれか一項に記載の抗体複合体。
【請求項34】
前記癌が前記HER3を発現する、請求項33に記載の癌の治療に使用するための抗HER3抗体若しくは抗原結合断片又は抗体複合体。
【請求項35】
前記癌が胃癌又は大腸癌である、請求項33又は34に記載の癌の治療に使用するための抗HER3抗体若しくは抗原結合断片又は抗体複合体。
【請求項36】
被験者の癌を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の抗HER3抗体若しくは抗原結合断片、請求項20~27のいずれか一項に記載の抗体複合体、又は請求項28若しくは29に記載の医薬組成物を前記被験者に投与することを含む、方法。
【請求項37】
前記癌が前記HER3を発現する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記癌が胃癌又は大腸癌である、請求項36又は37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月15日に出願されたPCT国際出願PCT/CN2021/099998の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗HER3抗体に関する。本開示はまた、抗HER3抗体を含有する抗体薬物複合体、及びHER3発現癌の治療におけるそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0003】
HER3はERBBファミリーのメンバーであり、細胞増殖、腫瘍転移、及び薬物耐性において重要な役割を果たす。EGFR及びHER2を標的とする薬物は、多くの癌を軽減する上で大きな臨床効果を示しているが、癌治療用の抗HER3抗体を開発するこれまでの努力は何度も失敗に終わり、このことは、HER3とそれが関連する経路に単独で取り組むだけでは、腫瘍増殖を阻害するのに十分ではない可能性があることを示唆している。この仮説と一致して、HER3を標的とするADCであるU3-1402は、乳房及びNSCLCを対象とした初期段階の臨床試験で有望な結果を示している。更に、HER3とHER2の両方を操作する二重特異性抗体は、一部の富化集団集団において疾患バイオマーカーを有意に減少させる。最新の臨床進歩は、追加のメカニズムがあれば、HER3が依然として有望な腫瘍標的であることを示唆している。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明は、重鎖可変領域(heavy chain variable region、VH)を含む抗HER3抗体又はその抗原結合断片を提供し、VHは、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-H3とを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号15のCDR-H1と、配列番号17のCDR-H2と、配列番号19のCDR-H3とを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、抗HER3抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖可変領域(light chain variable region、VL)を更に含み、VLは、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、VLは、配列番号5のCDR-L1と、配列番号7のCDR-L2と、配列番号9のCDR-L3とを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号13のリーダー配列を含む若しくは含まない配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、VLは、配列番号3のリーダー配列を含む若しくは含まない配列番号2のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗HER3抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗HER3抗体の重鎖はIgG1型である。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗HER3抗体はヒト化抗体であり、重鎖は、配列番号21、25若しくは27のアミノ酸配列、又はそれらと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗HER3抗体はヒト化抗体であり、軽鎖は、配列番号23のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、HER3はヒト又はサルのHER3である。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗HER3抗体は、NRG1によって誘導されるHER3のリン酸化を阻害する。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗HER3抗体は、1nM未満のEC50でヒト又はサルのHER3に結合する。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗HER3抗体は、HER3に結合すると内在化活性を有する。
【0018】
別の態様では、本開示は、上記のVH及び/又は上記のVLをコードするポリヌクレオチド酸配列を含む単離された核酸を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、単離された核酸は、配列番号1、11、22、24、26及び28から選択される。
【0020】
別の態様では、本開示は、単離された核酸を含むベクターを提供する。
【0021】
別の態様では、本開示は、単離された核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0022】
別の態様では、本開示は、抗HER3抗体又はその抗原結合断片を発現する宿主細胞を提供する。
【0023】
別の態様では、本開示は、化学部分に結合した抗HER3抗体又はその抗原結合断片を含む抗体複合体を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗HER3抗体又はその抗原結合断片は、リンカーを介して化学部分に結合している。
【0025】
いくつかの実施形態では、リンカーは酵素切断可能である。
【0026】
いくつかの実施形態では、リンカーはVal-Cit部分を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗体複合体は抗体薬物複合体(antibody drug conjugate、ADC)である。
【0028】
いくつかの実施形態では、化学部分は、放射性同位体、化学療法剤、又は細胞毒性薬である。
【0029】
いくつかの実施形態では、細胞毒性薬は毒素である。
【0030】
いくつかの実施形態では、毒素は、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAE及びMMAFから選択される。
【0031】
別の態様では、本開示は、抗HER3抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体複合体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1種以上の他の抗癌剤を更に含む。
【0033】
別の態様では、本開示は、癌治療用の薬剤の製造における、抗HER3抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体複合体の用途を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、癌はHER3を発現する。
【0035】
いくつかの実施形態では、癌は胃癌又は大腸癌である。
【0036】
別の態様では、本開示は、被験者の癌を治療する方法を提供し、この方法は、治療有効量の抗HER3抗体若しくはその抗原結合断片、抗体複合体、又は医薬組成物を被験者に投与することを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、癌はHER3を発現する。
【0038】
いくつかの実施形態では、癌は胃癌又は大腸癌である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】マウス3F8がSP2/0-HER3細胞に特異的に結合することを示す図である。
図2】ELISAで測定した、マウス3F8とヒトHER3、HER2、及びEGFRとの結合親和性を示す図である。
図3】マウス3F8が、ELISAで測定した同様の効力でヒトとサルの両方のHER3を認識することを示す図である。
図4】マウス3F8がNRG1誘導性リン酸化HER3を阻害することを示す図である。
図5】マウス3F8が様々な表面レベルのHER3の細胞に急速に取り込まれることを示す図である。
図6】抗HER3抗体が、BT474皮下異種移植モデルにおける腫瘍増殖を効率的に阻害することを示す図である。
図7】胃PDXモデルGAS078の[89Zr]Zr-ch3F8イメージングを示す図である。
図8】6つのPDXモデルにおける代表的な[89Zr]Zr-ch3F8イメージングを示す図である。
図9】ch3F8-MMAEがch3F8と同様の結合親和性を維持することを示す図である。
図10】複数の細胞株におけるch3F8-MMAEの細胞毒性を示す図である。
図11】ch3F8-MMAEが胃モデルGAS078における腫瘍増殖を阻害することを示す図である。
図12A】hu3F8が熱、酸及び繰り返し凍結融解のストレス試験後に結合親和性を維持することを示す図である。hu3F8の3つのクローンをpH3.5で0、2、4及び6時間インキュベートし、次にELISAアッセイに進んで結合親和性を測定した図である。
図12B】hu3F8が熱、酸及び繰り返し凍結融解のストレス試験後に結合親和性を維持することを示す図である。hu3F8の3つのクローンを40℃で様々な日数にわたってインキュベートし、次にELISAアッセイに進んで結合親和性を測定した図である。
図12C】hu3F8が熱、酸及び繰り返し凍結融解のストレス試験後に結合親和性を維持することを示す図である。hu3F8の3つのクローンを3又は5サイクル凍結融解し、次にELISAアッセイに進んで結合親和性を測定した図である。
図13A】hu3F8-MMAEが用量依存的に腫瘍増殖を阻害したことを示す図である。
図13B】hu3F8-MMAEが体重にほとんど影響を及ぼさないことを示す図である。
図14】hu3F8-MMAEが、胃PDXモデルGAS078における腫瘍増殖を10mg/kgで単回の注射で阻害することを示す図である。
図15】hu3F8-MMAEが6mg/kgで胃PDXモデルGAS078における腫瘍増殖を阻害することを示す図である。
図16】hu3F8-MMAEが大腸PDXモデルCS226における腫瘍増殖を阻害することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の任意の方法、装置及び材料を本発明の実施に使用することができる。以下の定義は、本明細書で使用される特定の用語の理解を容易にするために提供されるものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0041】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つ又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0042】
本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、他方の有無に関わらず、2つの指定された特徴又は構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。したがって、「A及び/又はB」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。
【0043】
「ヒト上皮成長因子受容体3(Human epidermal growth factor receptor3、HER3)」は、受容体チロシンプロテインキナーゼerbB-3(ERBB3)とも呼ばれ、EGFR/ERBBファミリーのメンバーである。他のERBBファミリーのメンバーであるHER2やEGFRとは異なり、HER3自体はキナーゼ活性を有していない。したがって、HER3は、下流の活性を誘発するために、そのキナーゼ活性メンバーであるEGFR又はHER2のいずれかとヘテロ二量体として会合する必要がある。HER3は、その天然リガンドNRG1に結合すると、立体構造変化、ヘテロ二量体化、及びリン酸化を経て、MAPK、PI3K/Akt、及びPLCγを活性化するシグナル伝達を行う。同時に、HER3はまた、高レベルのHER2の存在下でリガンド非依存性方法でその生物学的活性を発揮する。HER3は、細胞の成長と増殖、胚発生、及び腫瘍形成において重要な役割を果たす。HER3ノックアウトマウスは発育が著しく低下しており、胎生13.5日目には致死的になる。HER3はまた、様々なタンパク質及び適応症を標的とする薬物の薬物耐性にも寄与する。
【0044】
「抗体」という用語は、一般に、4つのポリペプチド鎖、すなわち2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖で構成される任意の免疫グロブリン(immunoglobulin、Ig)分子、又はIg分子の必須のエピトープ結合特徴を保持するその任意の機能的断片(抗原結合断片)を指す。全長抗体では、各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略す)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は一般に、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインで構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略す)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLで構成される。VH及びVL領域は更に、フレームワーク領域(framework region、FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置されている3つのCDRと4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。したがって、重鎖のCDRは、重鎖のアミノ末端側からそれぞれCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と呼ばれ、一方、軽鎖のCDRは、軽鎖のアミノ末端側からそれぞれCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3と呼ばれる。免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであり得る。広い意味では、「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖を有する免疫グロブリン分子に由来しないscFv又はsdAbを更に指す。「抗体」という用語は更に、抗HER3抗体又はその抗原結合断片を含む任意の多重特異性抗体(特に二重特異性抗体)を指す。
【0045】
抗体又は抗体の機能的断片は、1つ以上の修飾アミノ酸残基を有し得る。例えば、抗体の重鎖又は軽鎖は、N結合型グリコシル化、O結合型グリコシル化、N末端プロセシング、C末端プロセシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末端へのメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化、N末端グルタミン又はN末端グルタミン酸のピログルタミン酸への変換、及びカルボキシル基からの1つ又は2つのアミノ酸の欠失からなる群から選択される1つ又は2つ以上の修飾を受けている。
【0046】
「抗原結合断片」は、例えばF(ab’)、Fab、Fv、scFv、sdAbなどの抗体の一部である。全長抗体の抗原結合断片は、全長抗体の標的特異性を保持する。したがって、scFv(single chain variable chain fragments、一本鎖可変鎖断片)などの組換え機能的抗体断片は、mAbに基づく治療薬の代替として治療薬を開発するために使用されてきた。scFv断片(約25kDa)は、2つの可変ドメイン、すなわちVH及びVLからなる。自然に、VHドメインとVLドメインは疎水性相互作用を介して非共有結合的に会合し、解離する傾向がある。しかしながら、ドメインを親水性の柔軟なリンカーで連結してscFvを作製することにより、安定した断片を操作することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「単一ドメイン抗体」(single domain antibody、sdAb)という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、そして、ラクダ科哺乳動物で見られ、天然に軽鎖を欠いているタイプの抗体の単一重鎖可変ドメインを指す。このような単一ドメイン抗体は、VH又は「ナノボディ」とも呼ばれる。単一ドメイン抗体のアミノ酸配列及び構造は、4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)と3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)で構成されると考えることができる。したがって、単一ドメイン抗体は、一般構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有するアミノ酸配列として定義することができ、これは、可変ドメインVH又はVLに類似している。従来の抗体又は他の抗体断片(例えば、scFv)を使用することに比べて、単一の抗原結合タンパク質として、又はより大きなタンパク質若しくはポリペプチドにおける抗原結合ドメインとしてsdAbを使用すると、多くの重要な利点が得られる。sdAbの利点には、高い親和性及び高い選択性で抗原に結合するのに単一のドメインのみが必要であること、sdAbは変性剤又は熱、pH、及びプロテアーゼを含む条件に対して安定性が高いこと、及び、sdAbは従来の抗体ではアクセスできない標的及びエピトープにアクセスすることができることが含まれる。通常、sdAbはラマのようなラクダ科動物で産生されるが、当技術分野で周知の技術を使用して合成的に生成することもできる。
【0048】
「キメラ抗体」という用語は、マウス由来の可変領域、すなわち結合領域と、異なる源又は種(例えば、ヒト)に由来する定常領域の少なくとも一部とを含む抗体を指し、通常は組換えDNA技術によって調製される。マウス可変領域及びヒト定常領域を含むキメラ抗体が特に好ましい。このようなマウス/ヒトキメラ抗体は通常、マウス免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメント及びヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む発現された免疫グロブリン遺伝子の産物である。キメラ抗体を産生する方法には、現在当技術分野で周知の従来の組換えDNA及び遺伝子トランスフェクション技術が含まれる。
【0049】
「ヒト化抗体」という用語は、フレームワーク又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンの特異性と比較して異なる特異性を有する免疫グロブリンのCDRを含むように修飾された抗体を指す。好ましい実施形態では、VH及びVLのCDRをヒト抗体のフレームワーク領域に移植して「ヒト化抗体」を調製する。重鎖及び軽鎖可変フレームワーク領域は、同じ又は異なるヒト抗体配列に由来することができる。ヒト抗体配列は、天然に存在するヒト抗体の配列であり得る。必要に応じて、フレームワーク領域を更なる突然変異によって修飾することができる。特に好ましいCDRは、キメラ抗体について上記で述べた抗原を認識する配列を表すCDRに対応する。好ましくは、そのようなヒト化バージョンは、ヒト定常領域とキメラ化される。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語はまた、例えば、「クラススイッチ」、すなわち、Fc部分の変化又は突然変異(例えば、IgG1からIgG4へ、及び/又はIgG1/IgG4突然変異)によって、特にC1q結合及び/又はFcR結合に関して、本発明による特性を生じるように定常領域において修飾されたような抗体を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。ヒト抗体はまた、免疫化により、内因性免疫グロブリンの産生がない状態でヒト抗体の完全なレパートリー又は選択されたヒト抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)において産生することもできる。このような生殖系列変異マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイを導入すると、抗原チャレンジ時にヒト抗体が産生される。ヒト抗体はファージディスプレイライブラリー中で産生することもできる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「抗HER3抗体」という用語は、ヒトHER3抗原に特異的に結合する抗体を指す。目的の抗原、すなわちHER3に「特異的に結合する」抗体は、抗体が抗原を発現する細胞を標的とするのに有用であるように、十分な親和性でその抗原に結合することができる抗体である。結合親和性は、表面プラズモン共鳴技術(BIAcore(登録商標)、GE-Healthcare Uppsala、Sweden)などの標準的な結合アッセイを用いて測定することができる。
【0052】
ペプチド又は抗体配列に関する「配列同一性」という用語は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して最大配列同一性パーセントを達成した後、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮せずに、参照ペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当技術分野の技術の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含めて、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0053】
「内在化(internalization)」という用語は、癌細胞の表面におけるHER3抗原への本発明の抗体の結合に関連して使用される場合、受容体媒介エンドサイトーシス、ミクロピノサイトーシス、食作用又は他の類似の細胞取り込み及び/又は輸送経路による、外部環境からの抗体抗原複合体の急速な取り込みを指す。したがって、一実施形態では、本発明の抗体の「内在化」は、原形質膜の折り込み及び小胞形成を含むメカニズムによる外部環境からの抗体の取り込みに関する。本発明の抗体が放射性同位体、蛍光団又は細胞毒素などの化学部分に結合される場合、化学部分は本発明の抗体とともにHER3発現細胞に内在化することができる。抗体が内在化活性を有するか否かは、当業者に一般的に知られている方法により確認することができ、例えば、標識物質結合抗HER3抗体とHER3発現細胞とを接触させ、標識物質(例えば、放射性同位体、蛍光団、又は蛍光タンパク質)が細胞内に取り込まれているか否かを確認する方法、又は細胞毒性物質結合抗HER3抗体とHER3発現細胞とを接触させ、HER3発現細胞の死滅が誘導されているか否かを確認する方法により確認することができる。より具体的には、抗HER抗体の内在化活性は、例えば実施例に記載の方法により測定することができる。内在化活性を有する抗HER3抗体を、例えば、細胞毒性物質と結合させて、後述する抗癌剤などの医薬組成物として使用することができる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、目的のタンパク質、タンパク質断片、又はペプチドを生成するように操作することができる細胞系を指す。宿主細胞としては、限定されないが、培養細胞、例えば、CHO、BHK、NSO、SP2/0、YB2/0などのげっ歯類(ラット、マウス、モルモット、若しくはハムスター)由来の哺乳動物培養細胞、又はヒト組織若しくはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、及び昆虫細胞、並びにトランスジェニック動物若しくは培養組織内に含まれる細胞が挙げられる。この用語は、特定の対象の細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も包含する。突然変異又は環境の影響により、後続の世代で特定の修飾が発生する可能性があるため、そのような子孫は親細胞と同一ではない可能性があるが、それでも「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、ホスホジエステル結合を介して結合したヌクレオチド単位(リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、関連する天然に存在する構造変異体、及びそれらの合成非天然類似体)で構成されるポリマー、関連する天然に存在する構造変異体、及びそれらの合成非天然類似体を指す。したがって、この用語には、ヌクレオチド及びそれらの間の結合が、例えば、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(peptide-nucleic acid、PNA)などの非天然合成類似体を含むヌクレオチドポリマーが含まれる。このようなポリヌクレオチドは、例えば自動DNA合成装置を使用して合成することができる。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、G、C)で表される場合、これには「U」が「T」を置換するRNA配列(すなわち、A、U、G、C)も含まれることが理解されるであろう。
【0056】
本明細書で使用される場合、「単離された核酸」という用語は、精製状態を指し、そのような文脈では、核酸が、タンパク質、脂質、炭水化物のような他の生物学的分子、又は細胞残屑及び増殖培地のような他の物質を実質的に含まないことを意味する。
【0057】
「EC50」という用語は、半数効果濃度としても知られ、例えばFACS又はELISAによる試験において半最大応答(half-maximal response)を与える抗体又はその抗原結合部分の濃度を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「抗体複合体」という用語は、抗体又はその抗原結合断片が、放射性同位体、化学療法剤及び毒素などの他の化学部分に結合していることを指す。いくつかの実施形態では、化学部分は同位体又は蛍光団であり、したがって、結合抗体を使用して、HER3を発現する細胞、組織又は器官(腫瘍を含む)をin vivoイメージングを通じて示すことができる。いくつかの実施形態では、抗体複合体は抗体薬物複合体(ADC)である。
【0059】
本明細書において同義的に使用される「抗HER3抗体薬物複合体」及び「抗HER3 ADC」という用語は、HER3に特異的に結合し、リンカーを介して細胞毒性薬(例えば、オーリスタチン)に結合している抗体を含む抗体薬物複合体を指す。一般に、抗体(例えば、抗HER3抗体)は、ADC分子となるように修飾された後、その標的抗原に対する結合親和性などの生物学的活性を保持することができる。「細胞毒性薬」という用語は、細胞の発現活性、細胞の機能を阻害若しくは防止し、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位体、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の小分子毒素又は酵素活性毒素などの毒素(その断片及び/又は変異体を含む)を含むことが意図される。化学療法剤は当技術分野で周知であり、限定されてないが、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、及びバルルビシン)、ミトキサントロン、及びピキサントロンなどのアントラセンジオン(アントラキノン);白金系薬剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、及びリポプラチン);タモキシフェン及びその代謝産物、例えば4-ヒドロキシタモキシフェン(アフィモキシフェン)及びN-デスメチル-4-ヒドロキシタモキシフェン(エンドキシフェン);パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル、カバジタキセル、10-デアセチルバッカチンなどのタキサン;アルキル化剤(例えば、メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、及びクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード);エチレンイミン及びメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファンなどのアルキルスルホネート、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNLJ)、セムスチン(メチル-CCN-U)、及びストレプトゾエイン(ストレプトゾトシン)などのニトロソウレア、並びにデカルバジン(DTIC、ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド)などのトリアゼン);代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート(アメトプテリン)などの葉酸類似体、フルオロウラシル(5-フルオロウラシル、5-FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン、FUdR)、及びシタラビン(シトシンアラビノシド)などのピリミジン類似体、並びに、メルカプトプリン(6-メルカプトプリン、6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン、6-TG)、及びペントスタチン(2’-デオキシコホニシン)などのプリン類似体及び関連阻害剤);天然物(例えば、ビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチンなどのビンカアルカロイド、エトポシド及びテニポシドなどのエピポドフィロトキシン、並びにダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、及びマイトマイシン(マイトマイシンQ)などの抗生物質);L-アスパラギナーゼなどの酵素;インターフェロンαなどの生物学的反応修飾物質;ヒドロキシ尿素などの置換尿素;プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;ミトタン及びアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;それらの類似体、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。細胞毒性薬の例としては、オーリスタチン(例えば、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAE及びMMAF)、オーレオマイシン、メイタンシノイド、リシン、リシンA鎖、コンブレスタチン、デュオカルマイシン、ドラスタチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、シスプラチン、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(Pseudomonas exotoxin、PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリケアマイシン、サパオナリアオフィシナリス阻害剤、グルココルチコイド及び他の化学療法剤、並びに放射性同位体が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「オーリスタチン」という用語は、抗有糸分裂剤のファミリーを指す。オーリスタチン誘導体もまた、「オーリスタチン」という用語の定義内に含まれる。オーリスタチンの例としては、オーリスタチンE(AE)、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、及びドラスタチンの合成類似体が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、抗HER3抗体薬物複合体は抗HER3抗体-MMAE(例えば、ch3F8-MMAE又はhu3F8-MMAE)である。いくつかの実施形態では、リンカーは、抗体のヒンジ領域におけるCys残基に結合される。
【0060】
「医薬組成物」という用語は、活性成分の生物学的活性を有効にするような形態にある製剤を指し、したがって治療用途のために被験者に投与することができる。
【0061】
「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明の抗体又はADCなどの活性成分を送達するための製剤中での使用に適した任意の不活性物質を指す。担体は、結合剤、コーティング、崩壊剤、充填剤又は希釈剤、防腐剤(抗酸化剤、抗菌剤、又は抗真菌剤など)、甘味料、吸収遅延剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などであり得る。適切な薬学的に許容される担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、デキストロース、植物油(オリーブ油など)、生理食塩水、緩衝液、緩衝生理食塩水、及び等張剤(糖、多価アルコール、ソルビトール、及び塩化ナトリウムなど)が挙げられる。
【0062】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、有益な結果又は所望の結果をもたらすのに十分な活性薬剤の量を指す。治療有効量は、治療される被験者及び疾患状態、被験者の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与方法などのうちの1つ以上に応じて変化し得るが、これは、当業者であれば容易に決定することができる。具体的な用量は、従うべき投与計画、他の治療薬と組み合わせて投与するか否か、投与のタイミング、画像化すべき組織、及びそれを運ぶ物理的送達システムのうちの1つ以上に応じて変化し得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「他の抗癌剤」という語句は、本明細書に開示される抗HER3抗体又は抗HER3 ADCとは異なる抗癌剤を指す。他の抗癌剤の非限定的な例としては、5-フルオロウラシル、ヒドロキシ尿素、ゲムシタビン、メトトレキサート、ドキソルビシン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、ダカルバジン、タキソール、カンプトテシン、FOLFIRI、FOLFOX、ドセタキセル、ダウノルビシン、パクリタキセル、オキサリプラチン、及びそれらの組み合わせなどの化学療法剤;PD-L1、PD-1、CTLA-4、CCR4、OX40に対する抗体などの生物治療薬;電離放射線;キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)修飾T細胞又はNK細胞などの細胞治療薬が挙げられる。
【0064】
本明細書において同義的に使用される「癌」及び「腫瘍」という用語は、例えば、肺癌、非小細胞肺(non small cell lung、NSCL)癌、細気管支肺胞細胞肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰部癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌又は尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞癌、胆道癌、中枢神経系(central nervous system、CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、多形神経膠芽腫、星細胞腫、神経鞘腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ性白血病を指し、上記癌のいずれかの難治性バージョン、又は上記癌の1つ以上の組み合わせを含む。好ましくは、そのような癌は、乳癌、肺癌、頭頸部の癌、又は膵臓癌であり、好ましくは肺癌、頭頸部の癌、又は膵臓癌である。好ましくは、そのような癌は、HER3発現又は過剰発現、より好ましくはHER3過剰発現によって更に特徴付けられる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療」という用語は、哺乳動物(特にヒト)などの被験者における疾患又は病状の治療又は処置を意味し、以下のことが含まれる:(a)被験者の予防的治療など、疾患又は病状の発生を予防すること、(b)被験者の疾患又は病状を消失又は消退させるなど、疾患又は病状を改善すること、(c)例えば、被験者における疾患又は病状の進行を遅らせるか又は停止させることによって、疾患又は病状を抑制すること、又は(d)被験者における疾患又は病状の症状を軽減すること。
【0066】
「被験者」という用語には、ヒト及び非ヒト動物が含まれる。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば哺乳類、及び非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類などの非哺乳類が含まれる。特に断りのない限り、「患者」又は「被験者」という用語は、本明細書では同じ意味で使用される。
【0067】
本発明を更に説明する前に、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されず、当然、変更することができることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0068】
値の範囲が提供される場合、文脈で明確に別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は中間値が本開示の範囲に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さな範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内で特に除外される制限に従って、本発明の範囲内に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限界の一方又は両方を除く範囲も本発明に含まれる。
【0069】
材料及び方法:
材料:以下の試薬をSouthern Biotechから購入し、示された希釈で使用した:ヤギ抗マウスIgG-HRP(1030-05、1:5000希釈)、ヤギ抗ヒトIgG-PE(2040-09、1:1000希釈)、ヤギ抗ヒトカッパIgG-HRP(2061-05、1:20000希釈)、ヤギ抗ウサギIgG-HRP(4030-05、1:5000希釈)、ストレプトアビジン-FITC(7100-02、1:500希釈)、マウス抗ヒトカッパ-APC(9230-11、1:500希釈)、マウスIgG-APC(0107-11、0.1mg/ml)。NRG1はOrigene(TP723155)から入手した。細胞培養培地Roswell Park Memorial Institute(RPMI)1640、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified eagle’s medium、DMEM)、及びウシ胎児血清はHycloneから得た。組換えパトリツマブを自社で調製した。HER3抗体3F8を、ハイブリドーマ又は組換えから自社で生成した。m3F8はマウス3F8を示し、ch3F8及びhu3F8はそれぞれキメラ3F8及びヒト化3F8を示す。
【0070】
細胞培養:研究で使用したSP2/0、SP2/0-HER3、SP2/0-HER2、SP2/0-EGFR、NCI-N87、MDA-MB-468、MDA-MB-453、7901、HT29、MCF-7、SK-BR-3を、ATCCから購入し、ATCCが推奨する適切な培地で維持した。ヒトEGFR、HER2、及びHER3をそれぞれ安定して発現するSP2/0-EGFR、SP2/0-HER2、SP2/0-HER3を自社で生成した。
【0071】
抗HER3ハイブリドーマの生成:1日目に、BALB/cマウス(メス、8~10週齢)に、ヒトHER3を発現するSP2/0-HER3細胞1~2x10個をフロイント完全アジュバントとともに腹腔内注射した。8日目に、フロイント不完全アジュバントを含む同量の細胞を用いて強化免疫を実施した。14日目から、3日ごとにマウスを上記の量の細胞で免疫化し、これを3回繰り返した。最後の免疫化の3日後に、脾臓からBリンパ球を単離し、不死化骨髄腫細胞NS-1細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を生成した。
【0072】
ハイブリドーマ細胞を96ウェルプレート中で段階希釈して培養した。上清を収集して、フローサイトメトリーによってSP2/0細胞の表面に発現したHER3を認識する抗体、又はELISAによって組換えHER3を認識する抗体をスクリーニングした。
【0073】
抗体可変領域のDNAクローニング及び配列決定:簡単に説明すると、Trizol(ThermoFisher)を使用してハイブリドーマから抽出した全RNAを第1のcDNA鎖に逆転写した。次に、5’RACEキット(Invitrogen、18374-058)の説明書に記載されているように、5’相補性DNA(5’RACE)の高速増幅、続いてネステッドPCRを適用して、可変領域をコードするDNA配列を増幅した。PCR産物をpGM-Tベクターにクローニングした。陽性クローンのDNA配列決定に進み、そこから対応するタンパク質配列を推定した。可変領域のアミノ酸を、Kabat番号付けスキームで分析した。
【0074】
抗体発現:要するに、抗体の重鎖及び軽鎖をコードするDNAを発現ベクターpCDNA3.1(+)(Invitrogen)にクローニングし、293T細胞中で発現させた。抗体をプロテインA又はGカラム(GE)で精製した。
【0075】
ヒト化:ヒト化をGenScriptで実施した。まず、マウス抗体の重鎖の定常領域をヒトIgG1定常領域の配列で置換し、マウス抗体の軽鎖の定常領域をヒトIgκ定常領域の配列で置換することにより、マウス-ヒトキメラ抗体(ch3F8)を生成した。次に、参考文献(Kuramochi et al)の手順に従って、キメラ抗体の上でヒト化処理を行った。親和性と特異性を維持するために不可欠なマウスフレームワーク中の残基を、マウスフレームワークをヒト生殖系列フレームワークで置換してヒト化抗体を生成する際に保存した。
【0076】
ヒト化抗体をコードする最適化されたコドンのDNA配列をGenScriptで合成した。
【0077】
抗体の発現及び精製:示された抗体のコードDNA配列を有するプラスミドでトランスフェクトしたExpiCHO-S細胞(カタログ番号A29133、Gibco)を、ExpiCHO培地(カタログ番号A2910001、Gibco)中で32℃、5%COで12日間増殖させ、維持した。4000gで30分間回転させた後、上清を収集し、0.22μmの膜を通して濾過した。メーカーのマニュアルに詳述されているように、プロテインAと結合した抗体(カタログ番号17508001、GE)を20mMリン酸ナトリウム(pH7.0)で洗浄し、0.1Mグリシン(pH3.0)で溶出した。溶出画分を0.1M Tris緩衝液(pH9.0)で中和し、次に限外濾過遠心分離によりPBS緩衝液に切り替えた。タンパク質濃度をBCAで測定した。
【0078】
表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance、SPR):反応速度及び親和性をBiacore T200で測定した。簡単に説明すると、組換えヒトHER3抗体をプロテインAチップ(GE、カタログ番号29-1275-55)上に固定した。2倍段階希釈によって生成した50nMから最終的な0.78125nMまでの濃度の抗原をチップに通して、親和性及び反応速度を測定した。
【0079】
FACS:培養細胞を0.25%トリプシン-EDTAで消化し、次に1500rpmで5分間回転させた。細胞ペレットを、5%FBS及び0.2%ProClin300を含有するPBSのFACS溶液を用いて5×10細胞/mLに再生した。50μLの細胞懸濁液を、1μg/mlの濃度の一次抗体100μLとともに氷上で1時間インキュベートした。FACS溶液で2回洗浄した。ペレットをヤギ抗マウスIgG-PEを含有するFACS溶液100μL(1:1000希釈)で再生し、暗所で氷上で1時間インキュベートした。次に、細胞を2回洗浄し、200μLのFACS溶液に再懸濁した。
【0080】
ウエスタンブロット法:ウェスタンブロット法のために、SDS-PAGEで分離したタンパク質を、ニトロセルロース膜に移した。一次抗体は以下のとおりであった:抗HER2(Cell Signaling、カタログ番号:2165S)、抗HER3(Cell Signaling、カタログ番号:12708)、抗p-HER3(Cell Signaling、カタログ番号:4791)、抗β-アクチン(Cell Signaling、カタログ番号:4967)。
【0081】
ELISA:ヒトHER2-ex-huFc、ヒトHER3-huFc、及びヒトEGFR-hisを96ウェルプレート中で2μg/mL、50μL/ウェルに希釈し、4℃で一晩インキュベートした。0.5×PBSTで洗浄し、100μLのブロッキング緩衝液(PBS+3%BSA)とともに37℃で2時間インキュベートし、0.5×PBSTで洗浄した。ブロッキング緩衝液で1:3に段階希釈した3F8を50μL/ウェルで添加し、37℃で40~50分間インキュベートし、その後0.5×PBSTで洗浄した。ヤギ抗マウスIgG-HRP(SouthernBiotech、1030-05)をブロッキング緩衝液、50μL/ウェルで1:20000に希釈し、暗所で30分間インキュベートし、その後0.5×PBSTで洗浄した。1:1で混合した50μLのルミノール緩衝液A+Bを、検出前に各ウェルに添加した。
【0082】
NRG1誘導性HER3リン酸化:細胞を6ウェルプレートで培養し、80%コンフルエントに達したときに実験に使用した。実験当日、細胞をPBSで2回洗浄し、無血清培地中で6時間インキュベートし、続いて10μg/mLの抗体で一晩処理した。HER3リン酸化を誘導するために、NRG1を作業濃度100ng/mLまで添加し、30分後にウエスタンブロット用に細胞を収集した。
【0083】
細胞毒性:実験の前日に、細胞を96ウェルプレートに5000/ウェルで播種した。3F8-MMAEを、1:3希釈で100nMから1pMまでの作業濃度まで細胞に添加し、単一濃度ごとに3つのサンプルを得た。72時間後、メーカーの説明書に記載されているように、ATPLiteキットを使用して細胞毒性を測定した。
【0084】
抗体ストレス試験:5mg/mLの精製抗体を通常どおり4℃で保存し、熱安定性評価のために40℃で7日間及び14日間インキュベートし、酸安定性評価のためにpH3.5のグリシン溶液中で2、4及び6時間再生及び維持し、又は凍結融解安定性評価のために4サイクル又は6サイクルの凍結融解処理を繰り返した。凝集をSEC-HPLCで測定し、結合親和性をELISAで測定した。
【0085】
89Zr]Zr-抗体標識:DFO-NCSを、参考文献(Zeglis及びLewis、2015)に示されているように、抗体及び標識に結合させた。簡単に説明すると、DFOと抗体を5:1のモル比で混合し、37℃で1時間インキュベートした。DFO結合抗体をSEC-HPLCで精製した。
【0086】
89Zr-シュウ酸塩溶液0.8mCiを、HEPES/NaCO緩衝液(pH7.0~7.5)中でDFO結合抗体(0.2mg/ml)と混合し、室温で30分間インキュベートした。放射化学的純度をTLCで評価した。Rfは[89Zr]Zr-抗体0~0.3であり、遊離89ZrのRfは0.6~1.0である。
【0087】
PETイメージング:約100uCiの[89Zr]Zr-抗体を各動物に静脈内投与した。注射後の指定された時間に小動物用PETイメージング装置を使用して画像を収集して分析した。
【0088】
3F8-vc-MMAE及びU3-1402の調製:ADC調製をCROによって行った。簡単に説明すると、抗体中のジスルフィド結合を、TCEP(トリス-2-カルボキシエチル-ホスフィン)及びDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)の試薬を使用して25℃で1~3時間還元した。MC-VC-MMAE又はMC-GGFG-Dxdを還元した抗体溶液に滴下し、穏やかに撹拌しながら25℃で1~4時間インキュベートした。3F8-vc-MMAEのDAR(薬物抗体比)は約3.8であったが、U3-1402(パトリツマブ-GGFG-Dxd)のDARは約8.0であった。両方の薬物は抗体中のシステイン残基に結合した。
【0089】
最終生成物を限外濾過により精製した。純度及びDARを、それぞれSEC-HPLC及びHIC-HPLCで評価した。
【0090】
In vivo有効性研究:IACUCのガイドラインに従って動物を維持し、使用した。Charles River及びSPF Biotechから別々に購入したBALC/bヌードマウス及びNPGマウスを、12時間の暗/明サイクルで自由に飲食できる状態で25℃で飼育した。凍結保存された組織断片を皮下に移植することによって患者由来異種移植(Patient derived xenograft、PDX)モデルを作製した。腫瘍サイズが100~200mmに達した時点で動物に薬物治療を開始し、1000mmのサイズで動物を安楽死させた。肉眼的健康状態を毎日観察した。腫瘍サイズと体重を監視し、3日ごとに記録した。
【0091】
ソフトウェア:データをOlinda、GraphPad Prism6.0又はEXCELで分析した。
実施例1
【0092】
マウス3F8をSP2/0野生型細胞、又はHER3、HER2、若しくはEGFRを過剰発現する細胞とともにインキュベートした。結合強度を、FACS装置でPE抗マウス二次抗体を使用して検出した。
【0093】
結果を図1に示した。3F8はSP2/0-HER3細胞に特異的に結合するが、他の細胞には結合しない。
実施例2
【0094】
マウス3F8とヒトHER3、HER2、及びEGFRとの結合親和性をELISAで測定した。
【0095】
結果を図2に示した。マウス3F8はHER3のみを認識するが、HER2又はEGFRを認識しない。
実施例3
【0096】
ヒトHER3、HER2、及びEGFRに結合するマウス3F8のEC50をGraphPad Prism6.0で分析した。結果を表1に示した。3F8は、ナノモル以下の範囲で強力な結合親和性を示した。
【表1】

実施例4
【0097】
ヒト、サル、ラット及びマウスHER3に対するマウス3F8の種選択性をELISAで測定した。
【0098】
結果を図3に示した。3F8は、ヒトとサルの両方のHER3を同様の効力で認識したが、マウスHER3を認識しなかった。
実施例5
【0099】
ヒト、サル、ラット及びマウスHER3に結合するマウス3F8のEC50をGraphPad Prism6.0で分析した。結果を表2に示した。3F8は、ナノモル以下の範囲でヒト及びサルHER3に対して同等の結合親和性を示した。
【表2】

実施例6
【0100】
マウス3F8は、NRG1誘導性リン酸化HER3を阻害した。NCI-N87、MDA-MB-468、及びMDA-MB-453をHER3リガンドであるNRG1で処理して、HER3の下流のリン酸化を誘導した。NRG1誘導性p-HER3の阻害におけるマウス3F8の効果をウエスタンブロット法によって測定した。NRG1とHER3の結合を競合することが以前に証明された抗HER3抗体である3D4を陽性対照として適用した。
【0101】
結果を図4に示した。データは、3F8がリン酸化HER3タンパク質レベルを低下させるが、総HER3のタンパク質レベルには影響を及ぼさないことを示した。HER2のウェスタンブロットでも、3F8がHER2タンパク質レベルに影響を及ぼさないことが示された。
実施例7
【0102】
マウス3F8は、様々な表面レベルのHER3の細胞に急速に取り込まれる。様々な表面レベルのHER3の細胞をマウス3F8とともに対照として氷上で、又は37℃で1時間又は4時間インキュベートした。氷インキュベーションの対照から37℃インキュベーションの細胞表面シグナルを差し引くことによって内在化率を決定した。
【0103】
結果を図5に示した。データは、3F8が急速に細胞内に取り込まれることを示した。大部分は、1時間のインキュベーション以内に取り込まれ、インキュベーション時間を4時間に延長すると細胞内画分の量がわずかに増加し、これは、3F8エンドサイトーシスが迅速かつ連続的なプロセスであることを示唆している。
実施例8
【0104】
抗HER3抗体は、BT474皮下異種移植モデルにおける腫瘍増殖を効率的に阻害した。抗HER3抗体m3F8、m3D4、又はm3F8+m3D4の組み合わせを25mg/kgで隔週、3週間静脈内投与した。腫瘍サイズを3~4日ごとに監視した。
【0105】
結果を図6に示した。m3F8とm3D4は両方とも腫瘍増殖を有意に阻害するが(一元配置分散分析、p<0.05)、3F8はより優れた効力を示す。m3F8とm3D4の組み合わせは、m3F8単独の場合と同等に効率的である。3F8と3D4は両方とも抗HER3抗体である。m3F8はマウス抗体を示す。
実施例9
【0106】
89Zr]Zr-ch3F8を使用して胃PDXモデルGAS078をイメージングした。[89Zr]Zr-ch3F8を胃モデルGAS078に静脈内投与した。注射後4、24、48、72、96、及び168時間で画像を収集した。すべての臓器における放射線取り込みをOlindaで分析し、%ID/g(組織グラムあたりの注射量の割合)で示した。
【0107】
図7は、GAS078モデルにおける[89Zr]Zr-ch3F8の代表的なイメージングであった。Ch3F8は、キメラ3F8抗体を示す。データは、時間の経過とともに腫瘍における[89Zr]Zr-ch3F8の取り込みが徐々に増加することを示した。腫瘍取り込みは注射後96時間まで横ばいのままであり、その後注射後168時間でわずかに減少した。
【0108】
データも表3に示した。腫瘍、並びに心臓、肝臓、腎臓及び脾臓の主要臓器における[89Zr]Zr-ch3F8の取り込みを%ID/g(%注射量/グラム組織)で評価した。
【表3】

実施例10
【0109】
89Zr]Zr-ch3F8を使用して複数のPDXモデルをイメージングした。[89Zr]Zr-ch3F8を静脈内注射した。注射後72時間で画像を収集した。6つの動物モデルにおける[89Zr]Zr-ch3F8イメージングの代表的な画像を図8に示した。ELISAで測定した腫瘍組織におけるHER3発現レベルと、注射から72時間後の主要臓器及び腫瘍組織における放射線取り込みとを表4に示した。試験した6つのPDXモデルすべてにおいて、かなりの量の腫瘍取り込みが見られた。
【0110】
表4 腫瘍組織におけるHER3発現レベル(ng/mg)並びに主要臓器及び腫瘍組織における放射線取り込み(%ID/g)
【表4】

実施例11
【0111】
ch3F8-MMAEは、ch3F8に対して同様の結合親和性を維持する。HER3とのch3F8-MMAE結合親和性を、SP2/0-HER3を用いてFACSにより測定した。結果(図9)は、ch3F8-MMAEがSP2/0-HER3に対してch3F8と同じ結合親和性を有し、HER3陰性SP2/0とはほとんど結合しないことを示した。
実施例12
【0112】
ch3F8-MMAEの細胞毒性。ch3F8-MMAEの細胞毒性を、ATPliteを使用して複数の細胞株において測定した。細胞を様々な濃度のch3F8-MMAEで5日間処理した。ch3F8-MMAEの細胞毒性をATPliteで測定した。データ(図10)は、ch3F8-MMAEが、7901、HT-29、MCF-7、N87、MDA-MB-453、SK-BR-3、及びSP2/0-HER3のHER3(+)細胞を死滅させる際に強い細胞毒性を有するが、HER3(-)細胞SP2/0-WTにはほとんど影響を及ぼさないことを示した。図10に示す各腫瘍細胞を死滅させる際の細胞毒性IC50を表5に示した。データをGraphPad Prism6.0で分析した。
【表5】

実施例13
【0113】
ch3F8-MMAEは、胃モデルGAS078における腫瘍増殖を阻害する。Ch3F8-MMAEを3mg/kgで週1回、3週間静脈内投与し、腫瘍抑制効果を3~4日ごとに測定し、最終投与後10日間継続した。抗体3F8を並行して投与し、生理食塩水をビヒクル対照として使用した。結果を図11に示した。
実施例14
【0114】
ヒト化3F8(hu3F8)及びキメラ3F8の結合親和性。ヒト化3F8及びキメラ3F8の3つのクローンの結合動態をBiacoreで測定した。3つのヒト化3F8クローン(クローン1、クローン2、及びクローン3)は、同じ重鎖CDRと1つの軽鎖を共有しながら、異なる重鎖を有する。3つのヒト化3F8クローンの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列、並びにそれらのコードDNA配列を以下に列挙する。特に明記しない限り、以下の実施例では、クローン3をhu3F8として使用した。
【0115】
表6に列挙したすべてのデータを、Biacore T200 Evaluationソフトウェアバージョン3.1を使用して処理した。
【表6】

実施例15
【0116】
hu3F8の3つのクローンをpH3.5で0、2、4及び6時間インキュベートし、次にELISAアッセイに進んで結合親和性を測定した。結果(図12A)は、酸処理が結合親和性にほとんど影響を及ぼさないことを示した。
【0117】
pH3.5で0、2、4及び6時間インキュベートした後のhu3F8の3つのクローンのEC50。EC50をELISAで測定した。結果(表7)は、酸処理が結合親和性にほとんど影響を及ぼさないことを示した。
【表7】
【0118】
hu3F8の3つのクローンを40℃で様々な日数にわたってインキュベートし、次にELISAアッセイに進んで結合親和性を測定した。キメラ抗体を並行して測定した。結果を図12Bに示した。
【0119】
40℃で様々な日数にわたってインキュベートしたhu3F8の3つのクローンのEC50。ヒト化3F8抗体の3つのクローンを生理食塩水中で40℃で7日間又は14日間インキュベートし、この熱ストレス試験後の結合親和性をELISAで測定した。キメラ3F8を並行して測定した。結果(表8)は、熱ストレスが結合親和性にほとんど影響を及ぼさないことを示した。
【表8】
【0120】
hu3F8の3つのクローンを3又は5サイクル凍結融解し、次にELISAアッセイに進んで結合親和性を測定した。キメラ抗体を並行して測定した。結果(図12C)は、繰り返しの凍結融解が結合親和性にほとんど影響を及ぼさないことを示した。
【0121】
複数サイクルの凍結融解ストレス試験を経たhu3F8の3つのクローンのEC50も表9に示した。
【表9】
【0122】
これらのデータを総合すると、hu3F8は熱、酸、及び繰り返し凍結融解のストレス試験後でも結合親和性を維持しており、このことは、hu3F8が良好な開発可能性プロファイルを有することを示す。
実施例16
【0123】
ストレス試験後のhu3F8の3つのクローン及び4℃で保存したそれらの対応物の凝集評価。酸処理、繰り返し凍結融解、及び40℃でのインキュベーション後の3つのhu3F8抗体の凝集をSEC-HPLCで測定し、4℃で保存した各抗体と比較した。結果を図10に示した。ストレス試験後、すべてのクローンは、95%を超えるモノマーを維持しており、これは凝集の傾向がほとんどないことを示唆している。
【表10】

実施例17
【0124】
hu3F8のPTM(post-translational modification、翻訳後修飾)解析。P1:hu3F8ストレスなし。P2:hu3F8、40℃で2週間ストレスを与えた。ストレスなし、又は40℃で2週間ストレスを与えたHu3F8をトリプシンで消化し、続いて翻訳後修飾を質量分析法で解析した。データ(表11)は、HC:372-393で脱アミド化がわずかに増加することを示した。一般に、ストレスの前後でPTMに大きな差はなく、これは、良好な開発可能性プロファイルを示唆している。
【表11】

実施例18
【0125】
hu3F8-MMAEは、胃PDXモデルGAS078における腫瘍増殖を用量依存的に阻害する。Hu3F8-MMAEを1、3mg/kgで週に1回、4週間静脈内投与した。U3-1402を10mg/kgで並行して投与した。腫瘍サイズと体重を3~4日ごとに監視した。データは、hu3F8-MMAEが用量依存的に腫瘍増殖を阻害し(図13A)、体重にほとんど影響を及ぼさない(図13B)ことを示す。3mg/kgのHu3F8-MMAEは、腫瘍阻害に関して10mg/kgのU3-1402に匹敵する。
実施例19
【0126】
hu3F8-MMAEは、胃PDXモデルGAS078における腫瘍増殖を10mg/kgで単回の注射で阻害する。抗HER3抗体パトリツマブを介してHER3を標的とするADCであるU3-1402を並行して投与した。hu3F8-MMAE及びU3-1402の両方を10mg/kgで1回投与し、腫瘍阻害を3~4日ごとに監視した。データ(図14)は、GAS078モデルにおける腫瘍増殖の阻害において、10mg/kgのhu3F8-MMAEが10mg/kgのU3-1402よりも強力であることを示した。
実施例20
【0127】
hu3F8-MMAEは、6mg/kgで胃PDXモデルGAS078における腫瘍増殖を阻害する。U3-1402は、抗HER3抗体パトリツマブを介してHER3を標的とするADCである。Hu3F8-MMAEを6mg/kgで週に1回、3週間静脈内投与した。パトリツマブ、U3-1402の抗HER3抗体部分、及びU3-1402を10mg/kgで週に1回、3週間並行して投与した。最終投与16日後の37日目まで観察を継続した。腫瘍サイズと体重を3~4日ごとに監視した。データ(図15)は、hu3F8-MMAEが薬物投与中にU3-1402と同等の効力で腫瘍増殖を阻害するが、より持続的な効力を有することを示す。
実施例21
【0128】
hu3F8-MMAEは、大腸PDXモデルCS226における腫瘍増殖を阻害する。3群の動物を溶媒、10mg/kgのU3-1402及び3mg/kgのhu3F8-MMAEでそれぞれ3週間処理した。腫瘍阻害を3日ごとに測定した。U3-1402とhu3F8-MMAEは両方とも、溶媒処理群と比較して、腫瘍増殖を有意に阻害する。更に、3mg/kgのhu3F8は、10mg/kgのU3-1402に劣らない(図16)。
【0129】
ここで、in vitro及びin vivoで腫瘍細胞の増殖を合理的な安全マージンで効率的に阻害する新しい抗HER3抗体又はADC分子を報告する。HER3抗体、3F8を、ヒトHER3を過剰発現するSP2/0細胞で免疫化したマウスハイブリドーマから同定した。3F8は、ナノモル以下の結合親和性と他のERBBファミリーメンバーに対する高い選択性でヒト及びサルHER3を認識する。更に、これは、様々なレベルのHER3を有する細胞によって迅速かつ効率的に取り込まれ、この特性は、望ましいADC薬物に不可欠であると考えられる。PETイメージング研究では、[89Zr]Zr-3F8がPDXモデルの腫瘍に有意に蓄積することが示され、このことは、3F8が腫瘍細胞に細胞毒性を運ぶ非常に効率的なビヒクルである可能性があることを示した。したがって、MMAE結合3F8を生成し、腫瘍阻害効果について試験した。in vitro評価では、3F8-MMAEは、MMAEに対する感受性の影響を受けやすいHER3発現腫瘍細胞を約1nMのIC50で選択的に死滅させるが、HER3陰性細胞はそのまま残す。有効性研究では、3F8-MMAEが用量依存的に腫瘍増殖を阻害し、体重への大きな影響や観察可能な血液毒性がないことが示された。3F8、hu3F8、及びhu3F8-MMAEのヒト化バージョンは、PDXモデルにおいて、U3-1402と同等の上記の結合親和性、選択性、及び腫瘍阻害の特徴を維持する。Hu3F8は、繰り返し凍結融解処理、酸インキュベーション及び40℃での保存のストレス試験において、結合親和性、凝集及び翻訳後修飾の変化がほとんどなく、良好な開発可能性プロファイルを有する。まとめると、3F8又はそのADC hu3F8-MMAEは有望な腫瘍治療アプローチであり、薬物耐性の課題が増大している中で、満たされていない医療ニーズに対する代替手段を提供する可能性がある。
【0130】
以下にいくつかのアミノ酸配列と核酸配列を示す。抗体配列の番号付けはKabatに基づいている。
マウス3F8軽鎖の可変領域:
ヌクレオチド酸配列:
ATGATGTCCTCTGCTCAGTTCCTTGGTCTCCTGTTGCTCTGTTTTCAAGGTACCAGATGTGATATCCAGATGACACAGACTACATCCTCCCTGTCTGCCTCTCTGGGAGACAGAGTCACCATCAGTTGCAGGGCAAGTCAGGACATTAGCAATTATTTAAACTGGTATCAGCAGAAACCAGATGGCACTTTTAAACTCCTGATCTACTACACATCAATATTACACTCAGGAGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGAACAGATTATTCTCTCACCATTAGCAACCTGGAGCAAGAGGATATTGCCACTTACTTTTGCCAACAGGGTGATACGCTTCCTCCCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAGCTGAAA(配列番号1)
アミノ酸配列:
MMSSAQFLGLLLLCFQGTRCDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISNYLNWYQQKPDGTFKLLIYYTSILHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGDTLPPTFGAGTKLELK(配列番号2)
【表12】

マウス3F8重鎖の可変領域:
ヌクレオチド配列:
ATGAAAGTGTTGAGTCTGTTGTACCTGTTGACAGCCATTCCTGGTATCCTGTCTGATGTACAACTTCAGGAGTCAGGACCTGGCCTCGTGAAACCTTCTCAGTCTCTGTCTCTCACCTGCTCTGTCACTGGCTACTCCATCACCAGTGCTTATTACTGGAACTGGATCCGGCAGTTTCCAGGAGACAAACTGGAATGGATGGGCTACATAAGCTACGACGGTCGCAATAATTTCAACCCATCTCTCAAAAATCGAATCTCCATCACTCGTGACACATCTAAGAACCAGTTTTTCCTGAAGTTGAATTCTGTGACTTCTGGGGACACAGCTACATATTACTGTGCAAGAGATGGGGATTACGACTACTTTGACTACTGGGGCCAAGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCA(配列番号11)
アミノ酸配列:
MKVLSLLYLLTAIPGILSDVQLQESGPGLVKPSQSLSLTCSVTGYSITSAYYWNWIRQFPGDKLEWMGYISYDGRNNFNPSLKNRISITRDTSKNQFFLKLNSVTSGDTATYYCARDGDYDYFDYWGQGTTLTVSS(配列番号12)
【表13】

ヒト化3F8重鎖のアミノ酸配列:(クローン3)
MGWSCIILFLVATATGVHSQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGYSITSAYYWNWIRQPFGKGLEWMGYISYDGRNNFNPSLKNRVSISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTATYYCARDGDYDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号21)
ヒト化3F8重鎖のヌクレオチド酸配列:(クローン3)
ATGGGCTGGTCATGCATTATTCTGTTTCTGGTCGCAACTGCTACAGGCGTGCATAGTCAAGTGCAGCTGCAGGAGAGCGGACCTGGCCTCGTGAAGCCAAGCGAGACACTGTCTCTGACATGTACCGTGTCCGGCTACAGCATCACCTCCGCCTACTACTGGAACTGGATCCGGCAGCCTTTTGGCAAGGGCCTGGAATGGATGGGCTACATCAGCTACGACGGCAGAAACAACTTCAACCCCAGCCTGAAAAATAGAGTGTCCATCTCTCGGGACACCAGCAAGAACCAGTTCAGCCTGAAGCTGAGCAGCGTGACAGCCGCTGATACCGCCACATACTACTGCGCCAGAGACGGAGATTATGACTACTTCGACTACTGGGGCCAGGGCACCACCGTCACCGTGTCTAGCGCCAGCACCAAGGGCCCTTCCGTGTTTCCACTGGCCCCCTCCTCTAAATCCACATCTGGCGGCACCGCCGCCCTGGGCTGTCTGGTGAAGGACTACTTCCCAGAGCCTGTGACAGTGTCCTGGAACTCTGGCGCCCTGACATCCGGCGTGCACACATTTCCAGCCGTGCTGCAGAGCTCCGGCCTGTACAGCCTGTCTAGCGTGGTGACAGTGCCCTCCTCTAGCCTGGGCACACAGACCTATATCTGCAACGTGAATCACAAGCCAAGCAATACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAGCCCAAGTCCTGTGATAAGACACACACCTGCCCCCCTTGTCCTGCTCCCGAGCTGCTGGGCGGCCCTAGCGTGTTCCTGTTTCCACCCAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCTCCCGGACACCCGAGGTGACCTGCGTGGTGGTGGACGTGTCTCACGAGGATCCTGAGGTGAAGTTCAACTGGTATGTGGATGGCGTGGAGGTGCACAATGCCAAGACCAAGCCCAGAGAGGAGCAGTACAACTCTACATATAGGGTGGTGAGCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTATAAGTGCAAGGTGTCCAATAAGGCCCTGCCCGCCCCCATCGAGAAGACAATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCTCGGGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCTCCATCCAGAGACGAGCTGACAAAGAACCAGGTGTCTCTGACATGTCTGGTGAAGGGCTTCTATCCTAGCGATATCGCCGTGGAGTGGGAGTCCAATGGCCAGCCAGAGAACAATTACAAGACCACACCCCCTGTGCTGGACTCCGATGGCTCCTTCTTTCTGTATTCCAAGCTGACCGTGGATAAGTCTCGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCTGTTCCGTGATGCACGAAGCCCTGCATAATCACTATACTCAGAAATCCCTGTCCCTGTCACCTGGAAAGTGATAA(配列番号22)
ヒト化3F8軽鎖のアミノ酸配列:(クローン1~3)
MGWSCIILFLVATATGVHSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSILHSGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYFCQQGDTLPPTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号23)
ヒト化3F8軽鎖のヌクレオチド酸配列:(クローン1~3)
ATGGGCTGGTCATGTATTATTCTGTTTCTGGTCGCAACTGCTACAGGGGTCCATAGTGATATTCAGATGACCCAGAGCCCCAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGCGATAGAGTGACCATCACATGTCGGGCCTCTCAGGACATCAGCAACTACCTGAACTGGTATCAGCAAAAGCCCGGCAAAGCCCCTAAGCTGCTGATCTACTACACCAGCATCCTGCACAGCGGAGTGCCATCTAGATTCAGCGGCTCTGGCAGCGGCACCGACTACACATTTACCATCTCCTCCCTCCAGCCTGAGGACATCGCTACATACTTCTGCCAGCAGGGCGACACCCTGCCTCCTACCTTCGGCGGCGGAACAAAGCTGGAAATCAAGAGGACAGTGGCCGCCCCAAGCGTGTTCATCTTTCCCCCTTCCGACGAGCAGCTGAAGTCTGGCACCGCCAGCGTGGTGTGCCTGCTGAACAACTTCTACCCTCGGGAGGCCAAGGTCCAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTGCAGTCTGGCAATAGCCAGGAGTCCGTGACCGAGCAGGACTCTAAGGATAGCACATATTCCCTGTCTAGCACCCTGACACTGAGCAAGGCCGATTACGAGAAGCACAAGGTGTATGCCTGTGAAGTCACCCATCAGGGGCTGTCATCACCCGTCACTAAGTCATTCAATCGCGGAGAATGCTGATAA(配列番号24)
ヒト化3F8重鎖のアミノ酸配列:(クローン1)
MGWSCIILFLVATATGVHSQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGYSITSAYYWNWIRQPPGKGLEWIGYISYDGRNNFNPSLKNRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDGDYDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号25)
ヒト化3F8重鎖のヌクレオチド酸配列:(クローン1)
ATGGGCTGGTCATGCATTATTCTGTTTCTGGTCGCAACTGCTACAGGCGTGCATAGTCAAGTGCAGCTGCAGGAGAGCGGCCCTGGACTGGTGAAGCCTAGCGAGACACTGTCTCTCACCTGTACCGTGTCTGGCTACAGCATCACCTCCGCCTACTACTGGAACTGGATCCGGCAGCCTCCAGGCAAGGGCCTGGAATGGATCGGCTACATCAGCTACGACGGCAGAAACAACTTCAACCCCAGCCTGAAAAATAGAGTGACCATCTCTGTGGACACCAGCAAGAACCAGTTTAGCCTGAAGCTGAGCAGCGTGACAGCCGCTGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGAGACGGAGATTATGACTACTTCGACTACTGGGGCCAGGGCACCACAGTCACAGTGTCCAGCGCCAGCACCAAGGGCCCTTCCGTGTTTCCACTGGCCCCCTCCTCTAAATCCACATCTGGCGGCACCGCCGCCCTGGGCTGTCTGGTGAAGGACTACTTCCCAGAGCCTGTGACAGTGTCCTGGAACTCTGGCGCCCTGACATCCGGCGTGCACACATTTCCAGCCGTGCTGCAGAGCTCCGGCCTGTACAGCCTGTCTAGCGTGGTGACAGTGCCCTCCTCTAGCCTGGGCACACAGACCTATATCTGCAACGTGAATCACAAGCCAAGCAATACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAGCCCAAGTCCTGTGATAAGACACACACCTGCCCCCCTTGTCCTGCTCCCGAGCTGCTGGGCGGCCCTAGCGTGTTCCTGTTTCCACCCAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCTCCCGGACACCCGAGGTGACCTGCGTGGTGGTGGACGTGTCTCACGAGGATCCTGAGGTGAAGTTCAACTGGTATGTGGATGGCGTGGAGGTGCACAATGCCAAGACCAAGCCCAGAGAGGAGCAGTACAACTCTACATATAGGGTGGTGAGCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTATAAGTGCAAGGTGTCCAATAAGGCCCTGCCCGCCCCCATCGAGAAGACAATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCTCGGGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCTCCATCCAGAGACGAGCTGACAAAGAACCAGGTGTCTCTGACATGTCTGGTGAAGGGCTTCTATCCTAGCGATATCGCCGTGGAGTGGGAGTCCAATGGCCAGCCAGAGAACAATTACAAGACCACACCCCCTGTGCTGGACTCCGATGGCTCCTTCTTTCTGTATTCCAAGCTGACCGTGGATAAGTCTCGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCTGTTCCGTGATGCACGAAGCCCTGCATAATCACTATACTCAGAAATCCCTGTCCCTGTCACCTGGAAAGTGATAA(配列番号26)
ヒト化3F8重鎖のアミノ酸配列:(クローン2)
MGWSCIILFLVATATGVHSQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGYSITSAYYWNWIRQPFGKGLEWMGYISYDGRNNFNPSLKNRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDGDYDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号27)
ヒト化3F8重鎖のヌクレオチド酸配列:(クローン2)
ATGGGCTGGTCATGCATTATTCTGTTTCTGGTCGCAACTGCTACAGGCGTGCATAGTCAAGTGCAGCTGCAGGAGAGCGGCCCCGGCCTGGTGAAGCCTAGCGAGACACTGAGCCTCACCTGTACCGTGTCCGGCTACAGCATCACCAGCGCCTACTACTGGAACTGGATCCGGCAGCCTTTTGGCAAGGGCCTGGAATGGATGGGCTACATCTCCTACGACGGCAGAAACAACTTCAACCCATCTCTGAAAAATAGAGTGACCATCAGCCGGGACACAAGCAAGAACCAGTTCAGCCTGAAGCTGTCTAGCGTGACAGCCGCTGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGAGACGGAGATTATGACTACTTCGACTACTGGGGACAGGGCACCACCGTGACAGTCAGCTCTGCCAGCACCAAGGGCCCTTCCGTGTTTCCACTGGCCCCCTCCTCTAAATCCACATCTGGCGGCACCGCCGCCCTGGGCTGTCTGGTGAAGGACTACTTCCCAGAGCCTGTGACAGTGTCCTGGAACTCTGGCGCCCTGACATCCGGCGTGCACACATTTCCAGCCGTGCTGCAGAGCTCCGGCCTGTACAGCCTGTCTAGCGTGGTGACAGTGCCCTCCTCTAGCCTGGGCACACAGACCTATATCTGCAACGTGAATCACAAGCCAAGCAATACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAGCCCAAGTCCTGTGATAAGACACACACCTGCCCCCCTTGTCCTGCTCCCGAGCTGCTGGGCGGCCCTAGCGTGTTCCTGTTTCCACCCAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCTCCCGGACACCCGAGGTGACCTGCGTGGTGGTGGACGTGTCTCACGAGGATCCTGAGGTGAAGTTCAACTGGTATGTGGATGGCGTGGAGGTGCACAATGCCAAGACCAAGCCCAGAGAGGAGCAGTACAACTCTACATATAGGGTGGTGAGCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTATAAGTGCAAGGTGTCCAATAAGGCCCTGCCCGCCCCCATCGAGAAGACAATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCTCGGGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCTCCATCCAGAGACGAGCTGACAAAGAACCAGGTGTCTCTGACATGTCTGGTGAAGGGCTTCTATCCTAGCGATATCGCCGTGGAGTGGGAGTCCAATGGCCAGCCAGAGAACAATTACAAGACCACACCCCCTGTGCTGGACTCCGATGGCTCCTTCTTTCTGTATTCCAAGCTGACCGTGGATAAGTCTCGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCTGTTCCGTGATGCACGAAGCCCTGCATAATCACTATACTCAGAAATCCCTGTCCCTGTCACCTGGAAAGTGATAA(配列番号28)
参考文献:
Brian M.Zeglis and Jason S.Lewis.The bioconjugation and radiosynthesis of 89Zr-DFO-labeled antibodies.J.Vis.Exp.2015;(96):52521.
Kuramochi T et al.Humanization and simultaneous optimization of monoclonal antibody.Methods Mol Biol.2014;1060:123-37.
図1
図2
図3
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図5
図6
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図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14
図15
図16
【配列表】
2024523885000001.app
【国際調査報告】