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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】粒子生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 3/06 20060101AFI20240625BHJP
   H05H 15/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H05H3/06
H05H15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577889
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 GB2022051516
(87)【国際公開番号】W WO2022263827
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2108736.6
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523472076
【氏名又は名称】アストラル ニュートロニクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ASTRAL NEUTRONICS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス‐スミス, トム
(72)【発明者】
【氏名】ファイアーストーン, タルモン カッサンダー
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085AA20
2G085BA02
2G085BA06
2G085BE02
2G085DA03
(57)【要約】
粒子生成装置及びそれを備えるシステムが提供される。慣性静電閉じ込め型の粒子生成装置は、容器と、アノード構造と、カソード構造とを備え、アノード構造及びカソード構造は容器内に配置される。粒子生成装置は、融合可能同位体種で濃縮された第1の濃縮表面をさらに備え、第1の濃縮表面は、アノード構造の表面又はカソード構造の表面の少なくとも一部である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性静電閉じ込め型の粒子生成装置であって、
容器と、
アノード構造と、
カソード構造であって、前記アノード構造及び前記カソード構造が前記容器内に配置される、カソード構造と、
第1の濃縮表面であって、前記第1の濃縮表面が、融合可能同位体種で濃縮され、前記第1の濃縮表面が、前記アノード構造の表面又は前記カソード構造の表面の少なくとも一部である、第1の濃縮表面と、
を備える、粒子生成装置。
【請求項2】
前記装置が、イオンと中性ガスの混合物を含み、動作中に、前記イオンと前記中性ガスの混合物にプラズマを形成させるように構成される、請求項1に記載の粒子生成装置。
【請求項3】
前記容器が中心軸線を含み、前記アノード構造及び前記カソード構造が前記容器と略同軸であるように前記アノード構造及び前記カソード構造が配置され、前記アノード構造が、前記カソード構造の中心軸線からの平均半径よりも大きい前記中心軸線からの平均距離を有し、前記アノード構造及び前記カソード構造が、前記アノード構造及び前記カソード構造の長さの少なくとも一部に沿って略同心であり、動作中に、電界が前記アノード構造と前記カソード構造との間に設けられ、前記第1の濃縮表面が電子遮蔽されるように構成される、請求項1又は2に記載の粒子生成装置。
【請求項4】
前記容器が、前記カソード構造の長さに沿って同軸に略一定の断面を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子生成装置。
【請求項5】
前記アノード構造が、複数のアノードユニットから形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子生成装置。
【請求項6】
前記第1の濃縮表面が、塩基性金属又は遷移金属から形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子生成装置。
【請求項7】
前記金属が、40以上の原子番号を有する元素である、請求項6に記載の粒子生成装置。
【請求項8】
前記元素が、チタン、ジルコニウム、パラジウム、又はエルビウムのうちの1つである、請求項7に記載の粒子生成装置。
【請求項9】
前記第1の濃縮表面が半導体材料で形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子生成装置。
【請求項10】
前記半導体材料が、CVDダイヤモンドである、請求項9に記載の粒子生成装置。
【請求項11】
前記第1の濃縮表面が、前記アノード構造又は前記カソード構造上にコーティングとして設けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子生成装置。
【請求項12】
前記第1の濃縮表面が、前記表面の少なくとも一部を形成する電極と一体的に形成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子生成装置。
【請求項13】
動作中に、前記装置が核子を生成するように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の粒子生成装置。
【請求項14】
前記核子が中性子である、請求項13に記載の粒子生成装置。
【請求項15】
前記核子が陽子である、請求項13に記載の粒子生成装置。
【請求項16】
前記装置が、前記アノード構造に近接した流体伝導構造をさらに備える、請求項15に記載の粒子生成装置。
【請求項17】
前記流体伝導構造が金属合金からなる、請求項16に記載の粒子生成装置。
【請求項18】
前記流体伝導構造が、前記流体伝導構造の長さに沿って波形を含む、請求項16又は17に記載の粒子生成装置。
【請求項19】
前記第1の濃縮表面が、動作中、前記生成された粒子が所定の幾何学的形状を有する局所的な流速を有するように、前記アノード構造又は前記カソード構造の表面積の一部分を覆う、請求項1~18のいずれか一項に記載の粒子生成装置。
【請求項20】
前記第1の濃縮表面が、前記アノード構造の前記表面の少なくとも一部であり、第2の濃縮表面が、前記カソード構造の前記表面の少なくとも一部であり、前記第2の濃縮表面が、融合可能同位体種で濃縮される、請求項1~19のいずれか一項に記載の粒子生成装置。
【請求項21】
複数の粒子生成装置を備えるシステムであって、少なくとも1つの粒子生成装置が、請求項1~20のいずれか一項に記載の粒子生成装置であり、単一の電源がいくつかの粒子生成装置に電力を供給することができるように構成される、システム。
【請求項22】
請求項1~13及び15~21のいずれか一項に記載の粒子生成装置を備える、陽電子放出断層撮影法(PET)スキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、慣性静電閉じ込め型の粒子生成装置、特に、アノード構造、カソード構造、及び第1の濃縮表面を有する粒子生成装置に関し、第1の濃縮表面は、融合可能同位体種で濃縮されており、第1の濃縮表面は、アノード構造の表面又はカソード構造の表面の少なくとも一部である。
【背景技術】
【0002】
人工融合では、融合可能同位体種(FIS)に適切な運動エネルギーを付与するために力が利用される。FISは、水素(水素、重水素及びトリチウム)の同位体、ならびにそれぞれ中性子及び陽子発生の目的のためのヘリウム3からなる。前述の同位体と組み合わせてホウ素及びリチウムなどの代替FISが可能である。磁気プラズマ閉じ込め、粒子ビーム加速器、パルスレーザ加熱、及び電磁閉じ込め場の任意の組み合わせの形態をとる力が、イオンを衝突ゾーンに集束させるために使用される。実用化に成功した最初の核融合技術は、慣性静電閉じ込め(IEC)中性子発生器であった。IECでは、原子炉容器は中心にメッシュ状カソードを含み、その内壁はアノードとして作用する。チャンバはFISガスで充填され、高電圧がカソードに印加され、チャンバ内にイオンを加速する強い電界を生成し、融合が発生するカソードの中心でプラズマを点火する。IEC中性子発生器は、重水素-トリチウム融合のため毎秒最大5×10中性子の中性子束を、ほとんど又は全くメンテナンスすることなく数万時間連続して生成する信頼できる能力を実証した。
【0003】
イオンを生成し、損失のみを引き起こす衝突を緩和するいくつかの手段が知られている。低エネルギーイオンを生成する方法は、1つ又は2つの外部グリッドの周りを振動することができる電子を提供する電子エミッタ又はディスペンサカソードを含む。アノード壁に近い外部領域のイオン化は、スポーク又はビームに導くための「合格区域」にイオンを寄与させることができる。導入され得るデフォーカスなどの損失に関しては多少疑問がある。しかしながら、製造の複雑さ及び結果として生じるコストは、性能を高めるには高すぎる。追加の絶縁体スタンドオフ、繊細な大型グリッド、密閉システム内の貫通部を通る追加の真空電気供給の信頼性及び長寿命、ならびに電子エミッタの短い動作寿命、及びディスペンサカソードに対する攻撃的な水素ガスプラズマ雰囲気の有害な影響はすべて、より費用対効果の高い技術に対する推進力である。加えて、電子エミッタは、動作IEC環境の雰囲気内でかなりの電力を必要とする。
【0004】
既存のIEC配置は、二次電子放出特性、耐熱性、低コスト及び製造の容易さのために、アノードの材料としてアルミニウム又はステンレス鋼を使用し、カソードに対してモリブデン又はタングステンを使用する。しかしながら、高い粒子生成速度を必要とする用途では、これらの特性を改善し、したがって粒子生成速度を増加させるために、より適切な材料を使用することができる。特に、光イオンを高濃度に収容し、実質的な二次電子放出を示すことができる材料が必要とされている。
【0005】
多くの異なる多粒子相互作用を使用して、核子を生成することができる。そのような核融合反応及び生成された粒子運動エネルギーのいくつかの例は、以下の通りである。
【0006】
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】
【0007】
上記の式1~4の反応は、FISの混合に応じて様々な利用可能な粒子及びエネルギーを示す。融合が粒子発生器又は核融合炉などの制御された環境で生成され得る場合、より高いエネルギー及びより低い質量の反応は、多くの異なる方法で利用されるようにコリメート及び減衰され得る。特に、式3及び式4においてより高いエネルギーの中性子及び陽子は、そうでなければ核融合以外の手段によって生成することが困難又は不可能であるという点で独特である。式1及び式2の粒子は、2.45MeVの中性子が豊富である核分裂反応によって、又は陽子を電磁場によって3.02MeVまで加速することができる粒子加速器によって生成することができる。
【0008】
中性子は非常に有用であるが、安価で信頼性があり、安全で需要に応じた製造には困難がある。歴史的に、カリフォルニウム252中性子源が標準であったが、中性子の絶え間ない制御不能な放出は複雑な動作安全要件を課す。さらに、材料の半減期が2.5年であることは、源の寿命が短いこと、ならびに固有の処分の複雑さ及びコストを意味する。
【0009】
現在利用可能な代替技術は、先進管中性子発生器又は小型線形加速器である。典型的には、これは、核融合反応及び中性子生成を誘発するために、固体又は気体トリチウム標的に電界によって集中ビームに直線的に加速される重水素イオン源の形態をとる。このようなシステムは商業化されているが、それらの使用は、初期費用及びランニングコストが大きいために制限される。これは主に、加速器を運転するために必要なインフラストラクチャ、漂遊エネルギー重水素フルエンスからの材料の意図しない活性化、ならびに定期的な交換を必要とするトリチウム標的の浸食又は燃焼によるものである。これはまた、システムが長期間にわたって継続的に動作可能でないことを意味する。
【先行技術の説明】
【0010】
粒子発生器デバイスは、国際公開第03019996号に記載されている。国際公開第03019996号の発生器は、線形幾何学形状の長寿命プラズマガス標的ラインソーストポロジー粒子発生デバイスとの違いに焦点を当てて説明される。
【0011】
国際公開第03019996号は、中性子生成率が低く、信頼性及び単純性が高い円筒形IECデバイスを開示する。本文献はまた、上述のイオン化プロセスを促進する強力な紫外線照射に曝されると電子を放出するため、アノード壁にアルミニウムを使用することを提案する。
【発明の概要】
【0012】
本開示のいくつかの実施形態によれば、慣性静電閉じ込め型の粒子生成装置であって、容器と、アノード構造と、カソード構造であって、アノード構造及びカソード構造が容器内に配置される、カソード構造と、第1の濃縮表面であって、第1の濃縮表面が、融合可能同位体種で濃縮される、第1の濃縮表面と、を備える粒子生成装置が提供される。第1の濃縮表面は、アノード構造の表面又はカソード構造の表面の少なくとも一部である。濃縮表面は、格子閉じ込め融合を促すことができる。
【0013】
本装置は、イオンと中性ガスの混合物を含み、動作中に、イオンと中性ガスの混合物にプラズマを形成させるように構成することができる。
【0014】
該装置の容器は、中心軸線を含むことができる。アノード及びカソード構造は、アノード構造及びカソード構造が容器と実質的に同軸であるように配置されてもよく、アノード構造は、カソード構造の中心軸線からの平均半径よりも大きい中心軸線からの平均距離を有する。アノード構造及びカソード構造は、それらの長さの少なくとも一部に沿って略同心であってもよく、動作中にアノード構造とカソード構造との間に電界が提供され、第1の濃縮表面が電子遮蔽されるように構成されてもよい。この電子遮蔽は、格子閉じ込め融合を促進することができる。容器はまた、カソード構造の長さに沿って同軸に実質的に一定の断面を有することができる。アノードは、複数のアノードユニットから形成されてもよい。
【0015】
第1の濃縮表面は、塩基性金属又は遷移金属から形成されてもよい。この金属は、原子番号が40より大きい元素であってもよく、より具体的には、チタン、ジルコニウム、パラジウム、又はエルビウムのうちの1つであってもよい。好ましくは、金属はジルコニウムであってもよい。或いは、第1の濃縮表面は、半導体材料で形成されてもよい。この半導体材料は、CVDダイヤモンドであってもよい。
【0016】
第1の濃縮表面は、アノード構造又はカソード構造上のコーティングとして提供されてもよい。或いは、第1の濃縮表面は、表面の少なくとも一部を形成する電極と一体的に形成されてもよい。
【0017】
装置は、動作中に装置が核子を生成するように構成されてもよい。これらの核子は、中性子又は陽子であってもよい。
【0018】
動作中に装置が陽子を生成するように構成された装置の場合、装置は、アノード構造に近接した流体伝導構造をさらに備えることができる。これらの流体伝導構造は、金属合金から構成されてもよい。さらに、これらの流体伝導構造は、流体伝導構造の長さに沿った波形を含むことができる。
【0019】
第1の濃縮表面は、動作中、生成された粒子が所定の幾何学的形状を有する局所的な束を有するように、アノード構造又はカソード構造の表面積の一部分を覆うように構成されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の濃縮表面は、アノード構造の表面の少なくとも一部を形成することができ、第2の濃縮表面は、カソード構造の表面の少なくとも一部を形成することができ、第2の濃縮表面は、融合可能同位体種で濃縮されている。
【0021】
本開示によれば、複数の粒子生成装置を含むシステムが提供され、各粒子生成装置は、単一の電源がいくつかのシステムに電力を供給することができるように構成された上述の粒子生成装置である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示をよりよく理解し、それをどのように実施することができるかを示すために、ここで添付の図面を例として参照する。
図1】いくつかの実施形態による、慣性静電格子閉じ込め(IELC)デバイスのカットスルーを示す。
図2】いくつかの実施形態による、IELCの陽子発生器構成のためのアノード及びカソードの幾何学的レイアウトの断面図を示す。
図3】いくつかの実施形態による、PET放射性同位体の発生のためのさらなる陽子発生器IELCの断面図を示す。
図4】いくつかの実施形態による、医療用同位体生成構成のための陽子発生器システム機能概略図を示す。
図5】いくつかの実施形態による、局所的なアノード富化を含む、並列に配置された複数のユニット構成を示す。
図6】いくつかの実施形態による、局所的なアノード濃縮を含む、直列に配置されたさらなる複数のユニット構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
格子閉じ込め融合(LCF)の理論及び測定は、電子遮蔽された条件下で固体金属中で起こる核融合反応を実証した。ここで、導電性金属中に存在する負に帯電した電子雲は、金属格子中に位置する融合可能イオンの正電荷を中和する。入射加速イオンは、2つの正に帯電した粒子の間に通常見られる静電気力によって反発されず、以下に見られる核融合反応が、必要なエネルギーが少なく、速度が向上して起こることを可能にする。Prados-Estevez,F.,Subashiev,A.及びNee,H.による「Strong Screening by Lattice Confinement and Resultant Fusion Reaction Rates」では、所与の金属中の上位10個の価電子がどのようにして融合可能同位体種間のクーロン電位を無効にすることができ、それによって核融合反応断面積を増加させ、固体金属中で高速での融合を可能にするかが論じられた。飽和効果も予想され、発生することが分かる。
【0024】
LCF効果は、FIS又はそれらの関連する反応の間でほとんど変化しないが、それらの生得的な遮蔽の可能性のために異なるホスト金属に対して変化する。IELCシステムでは、高温及び放射線の存在下での注入された水素種の安定性が最も重要である。これは、好適な候補材料を、とりわけパラジウム、エルビウム及びジルコニウムのようなものに限定する。Zrの水素化物特性に対する広範な研究は、高温及び高線量の放射線の存在下でのその安定性を強調している、核分裂炉における燃料被覆合金としてのその使用に関連して行われてきた。
【0025】
電解は、イオンビーム又は複雑な冶金を使用せずに、重水素又はトリチウムの任意の混合物を原子百分率レベルでジルコニウム格子に負荷する迅速かつ効率的な方法を表す。これは、本開示に記載のFIS濃縮カソード又はFIS濃縮アノードのための利用可能な製造経路を表す。
【0026】
さらに、カソードグリッドの電子放出は、融合速度に大きく影響する可能性がある。異なる金属で作られた同一の幾何学的形状のグリッドの使用は、同じ他のすべてのパラメータとの融合速度の有意な差を与える。アノード又はカソードに対して有利な材料候補は、高出力入力、高い熱伝導率、高い熱及び放射硬度で優れた性能を示し、ならびに強い熱電子放出特性を示す単結晶又は多結晶CVDダイヤモンドである。さらに、例えば、FISの原子百分率濃度まで材料を富化する重水素及び/又はトリチウムプラズマ混合物を使用して、タングステン上でCVDダイヤモンドを成長させることが可能である。
【0027】
本開示の実施形態では、電位はアノードで正であり、カソードで負であるため、中性ガスがイオン化されると、それらはアノード表面から反発されてカソード表面に引き付けられる正イオンになり、したがってプラズマに向かって加速される。熱電子効果と光電気効果との組み合わせにより、電子放出がカソード表面で発生し得る。カソードから放出された電子は、カソードから反発され、負電荷のためにアノードに向かって加速される。これらの高エネルギー電子は、二次電子がアノード壁で中性ガスをイオン化させ、次いで、その正電荷のためにカソードに向かって加速し、プラズマに寄与する。
【0028】
アノード表面に担持されたイオンは、カソード内部のポテンシャル井戸への電界によってより大きな距離で加速されるため、融合により大きく寄与し得る。アノード又はカソードにFISで濃縮された材料を使用することにより、従来のIECと比較して材料中の格子閉じ込め融合が増加する可能性があるだけでなく、適切な温度でFISが原子炉チャンバに拡散し、イオン化し、システムの粒子生成速度に大きく寄与する可能性がある。正確な冷却によるアノードの温度の慎重な制御は、粒子生成速度の増加を維持するためにチャンバ内へのFISの制御された放出を可能にし得る。これは、電力、粒子生成速度及び温度を管理して安定した出力を提供する自動化システムによって管理することができる。
【0029】
十分に確立されているように、すべてのシステムは、粒子生成が一定である安定状態で飽和し得る。本開示では、飽和が、所与の温度で、水素化物表面層の劣化及び水素同位体の格子バルクへの同化によるイオンの定常放出の間に平衡が存在するさらなる理由のためを除いて起こる。このプロセスは、アノード及びカソードに使用される材料に応じて、粒子生成速度に有益又は有害であり得る。それにもかかわらず、カソード及びアノード温度の慎重な制御は、システムの粒子生成速度を最大化するための鍵である。1MWの核分裂炉の中性子束密度に近い非常に高い粒子生成速度のためには、極低温システムを使用することが有利であり得る。
【0030】
本開示の実施形態の特定の利点は、中性子出力を上述のように固定電力入力で実行されたときに定常状態に達するときに極めて一貫したものにすることができることであり、これは、適切なノイズ減算プロセスによって本開示の実際の用途において外来ノイズ効果を除去することが比較的容易であることを意味する。したがって、本開示の実施形態は、特定の電圧、電流及び温度の条件で測定可能な中性子束によって定義されるような高い安定性を有する核融合反応速度を生成するための装置を提供することができる。
【0031】
本開示によれば、Zr又はCVDダイヤモンドなどの高レベルの融合可能イオン種を含むことができる材料は、LCFならびに二次電子放出を促進する。これは、UV領域に間接バンドギャップを有するが、はるかに優れた熱特性を有し、工具製造に使用される複雑な幾何学的表面に適用するための比較的容易な技術を有する半導体であるCVDダイヤモンドに特に当てはまる。したがって、アノード材料表面及びカソード材料表面の強化によって、二次電子放出の増加及び格子閉じ込め融合の粒子生成技術を組み合わせることが可能である。軸方向円筒形IELCシステムはまた、向上した融合速度を有することができる。そのような手段は、本開示の実施形態に組み込まれてもよい。
【0032】
電極は、これらの材料で作られてもよく、或いは代わりに適切な材料のコーティングを有してもよい。そのような材料としては、CVDダイヤモンド、モリブデン、タングステン、ジルコニウム及び他の塩基性又は遷移金属元素、潜在的に希土類元素が挙げられる。
【0033】
したがって、本開示の実施形態は、プラズマガス混合物中の反応ガスのグロー放電分解、ならびにイオン衝撃及び電子衝撃プロセスによって最初に生成されたイオンを有する慣性静電格子閉じ込め(IELC)デバイスの特性を利用して核融合反応を生成するための装置、ならびにアノード壁で又はその近くに位置する構造への高エネルギー電子及びイオンの衝撃後のさらなるイオン生成ならびにアノード壁からのFISの生成によく適する低エネルギーの二次電子の好ましい生成を提供することができる。2つの相補的な現象が、粒子生成速度を増加させるように作用する。
【0034】
1.材料の選択によって増加したカソード表面からの二次電子の発生。これらの電子は、電界から大きなエネルギーを得て、アノード壁内に加速される。カソード材料はまた、格子閉じ込め融合事象を促進し、プラズマ密度を増加させるために融合可能種で濃縮されてもよい。
【0035】
2.格子に閉じ込め融合事象を誘発し、アノードに担持されたイオンがイオン化し、中央カソード領域内の粒子生成速度に寄与することを可能にする二次電子を生成して、材料を電子遮蔽する、チタン、ジルコニウム、パラジウム、エルビウム、又は、例えば、CVDダイヤモンドなど半導体材料などの適切な金属内の融合可能種によるアノードの内面の濃縮。
【0036】
アノード及びカソードの動作温度は、典型的には、粒子生成速度を増加させるそれらの能力に関連する。
【0037】
図1は、IELC粒子発生装置のための中性子発生構成のカットスルーモデルの図を示す。図1は、1外側チャンバ壁、15高電圧スタンドオフ構成要素、17カソードアセンブリ、及び34局所的な融合可能同位体種濃縮内側アノード表面といった構成要素を示す。
【0038】
具体的には、図1は、アノード表面を包含するフランジ付き円筒形カソードと、電圧フィードスルーを含む両端に付加されたセラミック絶縁体とを示すIELCカットスルーを示す。本開示で言及されるIELCデバイスは、融合可能イオン種濃縮アノード34及び/又はカソード17の材料を含むことができる。これらの材料は、二次電子放出特性、ならびにジルコニウム、チタン、アルミニウム、他の希土類金属、高エントロピー合金とそれらの関連する酸化物及び水素化物を含むがこれらに限定されない、安定を維持しながら高温に高レベルの融合可能イオン種を保持する能力のために選択され得る。図1は、重水素又はトリチウムガス種が放出され、密閉容器内のゲッタ材料に貯蔵される単純化された中性子発生器構成を表す。
【0039】
本開示の実施形態は、いわゆるスター動作モードの特性を利用して核融合反応を生成するための装置を提供することができる。スター動作モードは、プラズマが装置の内部で生成される動作モードを指す。結果として、装置が、イオンと中性ガスの混合物を含み、動作中に、イオンと中性ガスの混合物にプラズマを形成させるように構成される実施形態が想定される。
【0040】
さらに、本開示の実施形態は、「合格区域」と呼ばれるイオン捕捉現象を利用して核融合反応を生成するための装置を提供することができ、それによって、各スタービームを中心とし、アノード壁にその最も広い端部を有する湾曲した漏斗状の形状を有する空間領域は、比較的低い運動エネルギーで担持されたイオンがガスプラズマ、アノード及び/又はカソード表面から局所スタービームに引き込まれ得る領域を画定する。
【0041】
カソードグリッド17の形状は、スターモードビーム及び合格区域の形成及び形状特性が、融合衝突のためのイオンの上記の生成及び利用を最大化又は少なくとも改善するように制御されるように適合され得る。グリッド17は、パネルから構築されてもよく、パネルが長手方向に延びて中空円筒又は円筒形骨格フレームを形成するように成形されてもよい。カソードグリッド17はフランジを備えてもよく、フランジは前述のパネルから作られてもよい。これらのフランジは、電界がフランジの近くに集中してビーム又はチャネルを生成するように、カソードグリッドとアノードとの間に電界を分布させることができる。例えば、これらのチャネルは、近傍の、隣接又は近接するフランジの間に形成されてもよい。これらのビーム又はチャネルは、プラズマに向かって発生したイオンの加速を改善することができ、プラズマは電界の中心及び/又はビーム又はチャネルが交差する場所に位置することができる。これらの電界チャネルは、合格区域であると考えることができる。したがって、生成された核子が、長尺であり、放射性中性子放出同位体の多くの個別のペレットで作製された線源、例えば、カリフォルニウム252又は点源中性子発生器装置のような個別の点源を置き換えることができる、原点ゾーンから全方向に密閉装置から脱出することができる、本開示の実施形態が提供される。
【0042】
したがって、本開示の実施形態は、中心線からアノードまで延在し、内部カソード及びカソード17の半径の約半分の半径方向距離の内部カソードの、ならびに融合可能同位体種で適切に濃縮されているアノード34の内面壁の外側の空間を含む、上記で定義した容積又はゾーン内で核融合反応を生成するための装置を提供することができる。さらに、本開示の実施形態は、原子炉容器内の曲線幾何学形状の場合に細長いゾーン又は複数のゾーンセグメントで核融合反応を生成するための装置を提供することができる。言い換えれば、本開示の実施形態は、原子炉容器の中心線軸又は円筒形対称線を中心とする容積で核融合反応を生成するための装置を提供することができる。
【0043】
典型的な線形加速器とは異なり、本開示の実施形態によって生成される核子は多方向性であり得る。本開示の実施形態は、比較的急速な損傷を引き起こす標的に衝突する粒子加速器装置によって作られた加速エネルギー陽子の数ミリメートルの直径の強力な単方向ビームを置き換えることを目指す。線形加速器と比較して、本開示は、使用のために純粋な同位体を容易に抽出するために容易に処理することができるより大きな前駆体材料容積にわたって陽子生成を広げることができる。したがって、本開示の実施形態は、FIS濃縮アノード及び/又はカソードを包含する原子炉チャンバに対する保守をほとんど又は全く伴わずに、数千時間から数年の期間の間核融合反応を生成するための装置を提供することができる。同様に、本開示の実施形態は、中心電極17又は関連する高電圧電力入力構造に対する保守がほとんど又は全くない、内部に取り付けられた原子炉チャンバのガス貯蔵及び圧力調整装置に対する保守がほとんど又は全くない、及び/又はほぼ薄い箔厚の実質的な真空容器壁1と内側に面する壁との間の水性流体のための内部に取り付けられた導管構造に対する保守がほとんど又は全くない、核融合反応を生成するための装置を提供することができる。カソード及びアノードのために選択される材料は、二次電子放出、熱損傷に対する耐性及び格子閉じ込め融合を促進するように選択されてもよい。
【0044】
さらに、上述したように、装置は、アノード壁とカソードグリッド17の周囲との間の合格区域内に担持された又は発生したイオンが、その周りに合格区域を実質的に中心付けることができ、合格区域のサイズを増加させるために静電場内の等電位の平面の形状に適合され得るカソード孔窓側セグメント曲率を有するスターモードビーム内に引き込まれてもよく、それによってアノード壁34付近の二次電子と中性粒子の相互作用によって生成されたほとんど又は実質的にすべてのイオンを捕捉することができるように適合され得る。
【0045】
図2は、一体型容器を示す。具体的には、図2は、IELCの陽子発生器構成のためのアノード及びカソードの幾何学的レイアウトの断面図を示す。図2は、2波形チャンバ壁、3波形の薄いFIS濃縮アノード面、4外側チャンバ面、5アノード壁構成要素、6アノード支持構造及び17カソードアセンブリという構成要素を示す。壁及び熱伝達部品1は、低減された製造コストという利点を提供することができる。したがって、本開示の実施形態は、低保守及び低コストのシステムと互換性のあるいくつかの反応ガスイオン化増強を用いて、増加した核融合反応速度を生成するための装置を提供することができる。構成要素は、適切な孔を通して押し出されたアルミニウムなどの周知の手段によるアルミニウム合金の押出として製造することができる。複合化された機能の流体又はガス導管及びアノード壁は、製造可能性及び機能を達成するために、ステンレス鋼又は同様の特性の材料から製造することができる。有利な容器のトポロジは、8辺の多角形形態、言い換えれば8角形の断面を有する。このトポロジは、より多くの頂点を有するトポロジよりも改善された堅牢性を有し得る。例えば、より多数の頂点を有する断面は、より高い対称度を可能にし、したがって流体伝導構造の数を増加させることができる。これらの流体伝導構造は、装置の冷却チャネルとして機能することができる。しかしながら、より多くの頂点を有する断面は、構築するのにより費用がかかり、堅牢性が低くなり得る。より少ない頂点を有する断面は、流体伝導構造の数の減少及び材料不純物の影響の増加に起因して、温度変動に対して脆弱であり得る。八角形の断面は、これら2つの両極端の間の望ましい妥協点であり得る。したがって、本開示の実施形態は、移動車両における動作に対して構造的に堅牢な核融合反応を生成するための装置を提供することができる。同様に、本開示の実施形態は、静的又は可動システムにおける病院の場所での動作に対して構造的に堅牢である、中性子又は陽子生成核融合反応のための装置を提供することができる。
【0046】
中央カソード17、アノード構造3/6及び外側チャンバ又は容器4は、同軸であってもよい。具体的には、容器4は中心軸線を含むことができ、アノード構造3/6及びカソード構造17が容器と略同軸になるようにアノード構造及びカソード構造を配置することができる。アノード構造3/6は、カソード構造17の中心軸線からの平均半径よりも大きい中心軸線からの平均距離を有することができ、アノード構造及びカソード構造は、それらの長さの少なくとも一部に沿って略同心であり、動作中、アノード構造とカソード構造との間に電界が提供され、第1の濃縮表面が電子遮蔽されるように構成される。容器4は、カソード構造の長さに沿って同軸に略一定の断面を有することができる。したがって、本開示の実施形態は、照射されるべき特定の物体の湾曲した線形形態に共形であり得る曲線源構成で核融合反応を生成するための装置を提供することができる。
【0047】
外部は、円筒形ハウジング4内に嵌合するようにサイズ設定される一体型冷却フィン2を有することができる。ハウジング4は、フィン2から通過する流体への熱伝達を促進することができるように冷却材流体(空気など)のためのカウリング又はダクトとして機能することができる。より大きな熱流束を伝達するために液体冷却材を使用することが実現可能である。容器壁1にろう付けされる配管システム内を循環する水などの液体冷却材を使用することも実現可能である。
【0048】
本実施形態では、陽子発生モードにおいて、アノード壁は、前駆体流体用の導管を提供するように構築されてもよい。したがって、原子炉の電気アノードとして機能する内壁により特徴付けられる。カソードに直接露出していない導管の側面は、構造的機能を有し得る。内壁は、本改善の意図する機能の中心となる機能を有してもよい。
【0049】
図2の詳細な挿入図A(2:1)は、例示目的のために、容器1の内壁の表面に位置することができる挿入された流体導管及び濃縮されたアノード壁構成要素5の一例の断面を示す。上述したように、低エネルギー電子の生成を増加させるために利用することができる周知の現象がある。反応ガス種(図示せず)のイオン化は、容器壁1を満たし得るUV光子の高強度束を提供し得る。本開示の強い静電界によって加速された高エネルギー電子の入射は、低エネルギーの二次電子の放出を引き起こす可能性がある。これらの低エネルギー電子は、水素及びヘリウムのイオン化によく適し得る。濃縮されたアノード1の近くのイオンの集合は、大幅に増加され得る。局所半径方向にアノードに向かって流れる高エネルギー電子の低入射角の増加を確実にするために、表面は波形3で示すように成形されてもよい。山の高さは、最大のイオン化効率を達成することができる静電界電位ゾーン内に維持するために低くてもよい。リッジ3の幅はまた、可能な限り多くを利用可能な領域に適合させるために小さくてもよい。設計上の考慮事項は、製造コストによって影響され得る。容器壁1及びアノード構造6が円筒形管セクションに基づく場合、イオン化増強リッジ3を内壁面上のねじ山又は螺旋管として作製することも許容される。これらは、押出材の場合のように長手方向ではなく周方向に延びてもよい。
【0050】
図2に示すように、アノード構造6は、複数のアノード壁構成要素6及び増強リッジ3から形成されてもよい。言い換えれば、アノード構造6は、複数のアノードユニットから形成され、1つ又は複数の孔及び/又は窓を備えると考えることができる。アノード壁と組み合わせたカソードグリッドの孔又は窓は、等しい静電ポテンシャルの面を決定するのに役立ち得る。装置がスターモードで動作しているとき、イオンと電子の電荷空間の重ね合わせによってレンズ効果を生成することができる。静電レンズの形状は、例えば以下を組み込むことによって、アノード及びカソードの幾何学的形状を変更することにより変更することができる。
a)カソード及びアノードについて略同心円
b)アノード内壁のための多角形の規則的な偶数の辺及びカソード上の対応する数の窓であって、窓の周囲の辺は一般に、
1.凸状
2.平坦
3.凹面
4.上記3つの化合物の組み合わせ、であり、
形成されたスタービームがアノードでの二次電子生成及びカソードグリッド電極とのイオン衝突の緩和のために最適化又は適合され得るように、カソードグリッドセルのスタック全体にわたって繰り返し使用するために画定された曲率半径及び円弧セグメントの長さをそれぞれ有する、多角形の規則的な偶数の辺及びカソード上の対応する数の窓。
【0051】
カソードの3D印刷などの技術は、透明性を改善し、イオン及び電子を導く電界を促進してアノード表面に衝突させることができる。また、高温及び高い二次電子収率を処理するための望ましい冶金特性は、アノード及びカソードの表面上のCVDダイヤモンドによる処理も意味し、融合可能イオン種の富化と併せて有利である。
【0052】
さらに、アノード壁は、アノード壁の表面が、スターモードのグロー放電イオン化動作中に存在する印加された静電界によって加速された比較的高いエネルギーの電子に衝突されるときに、反応ガス種同位体を最も容易にイオン化し得る比較的低いエネルギーの電子の多重放出の生成を促進するために受動的手段によって処理されてもよい。そのような受動的手段は、有益な特性を有する希土類元素又はCVDダイヤモンドで基板金属をコーティングすること、及び/又は二次電子の生成を促進するためにテクスチャ又は微細幾何学形状を有する表面仕上げを施すことを含むことができる。これを達成するために、アノード及び/又はカソードはまた、チャンバを十分に重い水(重水素化された及び/又はトリチウム化された)で充填し、電極を挿入し、加水分解を促進するために十分な電流密度を内面に印加することによって、電気分解による融合可能同位体種による濃縮中に電極として作用することができる。これにより、アノード内壁に水素化物の濃縮層が形成される。その後、これを、重水素及び/又はトリチウムガス混合物を使用してCVDプラズマによって処理して、材料表面上に数ミクロンのダイヤモンドを成長させることができる。
【0053】
上記の方法の代わりに、FIS濃縮アノード及び/又はカソード材料の製造は、加水分解によって実施することができ、この場合、原子炉容器は、電気分解のための導電性塩を含有する重水素化又はトリチウム化重水溶液で充填され得る。ガーゼメッシュ内の白金などの材料で作られた別のカソードは、電圧が印加されたときの内部電界が等しく分布するように容器に挿入することができ、水素化物の均一な形成を可能にする。加水分解の前に、表面酸化物を除去するための化学エッチングを実施することができる。このプロセスは、液体冷却が、電解液のコンダクタンスに対する加熱の悪影響を制限するために原子炉容器にとって液体冷却が有益であり得る場合、数kWの能力を必要とし得る同じ電源を使用していくつかの原子炉ユニットで並行して行うことができる。遷移金属水素化物もカソード材料に可能であり、その場合、同じ目的のために周囲の白金ガーゼを有する適切な反応容器で同じプロセスが行われる。また、本開示の実施形態は、表面積の増加によるLCF効果を最大にするためにワイヤメッシュを必要とする場合があり、この場合、ワイヤは、U字形の白金ガーゼメッシュを適切な速度及び印加電圧で通されながら連続的に電気分解を受けることができることが予想される。貫通速度及び印加電圧を制御することによって、水素化物層をその長さ全体にわたって均一にすることができる。
【0054】
絶縁表面の任意の金属コーティングの故障モードは、故障モードを防止又は少なくとも低減することができるように、非導電性電極支持構造体が配置されている電極スタックのいずれかの端部に向かって金属原子が移動するように、ガス原子、分子及び金属粒子のイオン化粒子と中性粒子の両方の略半径方向の軌道を提供することによって緩和することができる。
【0055】
波形の濃縮されたアノード壁は、濃縮されたアノードの表面積を増加させるという二次的な効果を有することができ、これにより、デバイス内への融合可能イオン種のより高い負荷を可能にすることができる。これは、アノード担持イオンの数を増加させ、したがって粒子生成速度をさらに増加させるという追加の効果を有し得る。本開示は、より高い表面積をもたらすことができる代替設計が可能であるとして示されている構造に限定されず、表面積を追加して追加された複雑さとコストとをトレードオフすることができる。
【0056】
波形の濃縮されたアノード壁3は、導管5内に含まれる流体の分子又は溶質分子に組み込まれる指定された標的核との陽子の相互作用に残留エネルギーが最適であることを確実にするために許容されるエネルギー陽子のエネルギー損失によって決定される厚さを有することができる。この壁厚は、0.01~0.5mmの範囲であってもよい。
【0057】
アノード、二次電子生成手段、容器壁及び外部熱伝達フィンなどは、装置の低コスト部品を製造するために、押出又は3D印刷プロセスによる製造に適した断面形態に一体化されてもよい。したがって、本開示の実施形態は、低保守及び低コストのシステムと互換性のあるいくつかの反応ガスイオン化増強を用いて、増加した核融合反応速度を生成するための装置を提供することができる。
【0058】
図2に示す実施形態を含む実施形態では、導管濃縮アノード壁5は、ステンレス鋼バックプレート及びステンレス鋼又はそうでなければ金属FIS濃縮波形前壁の製作によって製造することができる。バックプレートは、少なくとも2mmの典型的な壁厚を生成する機械加工又はフライス加工されてもよい。濃縮アノード壁3は、許容範囲内の所望の壁厚の所望の波形を圧延又はプレスするために、周知の技術によって処理することができる。そのようなプロセスは、作動圧力差による変形を打ち消すために選択的な補強ストリップによる設計オプションを提供することができる。アノード壁流体導管サブアセンブリ6を形成するために、材料が電子ビーム、レーザ、又は他の集中集束エネルギー溶接技術に適合する場合、2つの構成要素は一緒に溶接されてもよい。図2に示す実施形態では、そのようなサブアセンブリは、容器壁1内の所定の位置にスライドさせることができる。
【0059】
実施形態では、流体導管構造は、実質的な容器壁の内側の押し出されたスロットと適合する断面プロファイルを有する圧延鋼板バックプレートと、波状プロファイルのアノード壁にプレス又は他の方法で形成された薄いシートとから製作することができ、2つの構成要素は、超高真空適合シールを達成するために互いに溶接される。
【0060】
本開示の一実施形態では、流体導管アノード壁構造は、0.05mm~0.5mmの範囲であり得る特性厚さを有する比較的薄いアノード壁を有することができる。この厚さは、残留エネルギー範囲が流体内に集中する特定の同位体との核相互作用に十分であるために許容される14.7MeV陽子の運動エネルギーの減少によって規定されてもよく、90度の入射角以外でアノード壁を通過する陽子の横断経路の長さにも適用され得る。これは、内面湾曲からの放出を示し得る格子閉じ込め融合によってアノード壁に発生した陽子を含み得る。
【0061】
本開示の一実施形態では、導管構造の薄いアノード壁は、スターモードビームの衝突によって課される熱応力により良好に耐えるために、FISが濃縮されていてもされていなくてもよい補強材特徴がカソードグリッドセルと位置合わせされる複雑な化学エッチング表面を有することができる。
【0062】
導管構造の薄いアノード壁は、化学エッチング及び保護マスキングなどの周知の技術によって達成することができ、それにより、構造的補強材特徴及び比較的薄い窓を、必要であると考えられる場合に導管構造のアノード壁上に画定及び生成することができる。薄いアノード壁を達成するために化学エッチングを使用することができるが、これは、アノード表面純度を促進し、融合可能同位体種の濃縮を最大化するために加水分解プロセスを支援するという追加の利点を有する。
【0063】
図3は、本開示の一実施形態の反応チャンバ及び一体型流体導管サブシステムアセンブリを示す。具体的には、図3は、PET放射性同位体を発生するための陽子発生器IELCの断面図を示す。以下のラベル付き構成要素は、1外側チャンバ壁、6アノード支持構造体、7流体導管終端ブロック、8接続スタブ管、9マニホールドアセンブリ、10パイプ継手取付具、11前駆体流体入口/出口、12エンドキャップアセンブリ、13ガス供給エンドキャップアセンブリ、14シールガスケット、15高電圧スタンドオフ構成要素、16FISガス取付具フランジ、及び17カソードアセンブリである。長さは、反応チャンバの端部が1つのページに現れることができるように図式的に切断されている。全長は、1~2メートルの範囲であってもよい。容器壁1は、8個の濃縮されたアノード壁流体導管アセンブリ6を保持することができ、そのうちの2つが断面図で示されている。中央カソードアセンブリ17は、記号で示されている。各端部の内部特徴は、流体導管アセンブリのより良好なアクセス及び収容を提供するためにフライス加工されてもよい。各流体導管は、終端ブロック7と、漏れのない又は超高真空標準シールを達成するようにろう付け又は他の方法で取り付けることができるスタブ管8とからなる終端アセンブリを有することができる。スタブ管8は、チャンバ1の各端部でマニホールドアセンブリ9に挿入することができる。各スタブ管の高真空シール接続は、ステンレス鋼マニホールド9に溶接することができる溶接取付タイプの適切な管取付具10によって達成することができる。
【0064】
入口及び出口11は、溶接管継手取付具10によって同様に実装することができる。
【0065】
マニホールド9は、エンドキャップアセンブリ13によって閉じられてもよい。エンドキャップアセンブリ12を通る高電圧供給は、高真空シールを提供することができ、ガス供給エンドキャップアセンブリ13もまた、高真空シールを提供することができる。シールガスケット14は、「金属Oリング」デバイスであってもよい。特定の変形及び高真空シールを達成するために、フランジ面を「金属Oリング」シールに対してクランプするために、図示されていないフランジに対して機能するクランプねじのアレイを設けることができる。
【0066】
ガス供給エンドキャップアセンブリ13は、反応ガスの種類ごとに別個のガス圧力調整器として、又はヘリウム3用のガス圧力調整器と重水素用のゲッタポンプとの組み合わせとして実装することができるガス管理サブシステムに接続することができる。ガス供給エンドキャップアセンブリ13は、主チャンバとガスポート16との間のガスの自由な移動を許容する高電圧スタンドオフ構成要素15を封入することができる。
【0067】
本開示の実施形態は、流体、アノード壁、及び関連する原子炉容器構造の必要な冷却を実装することができるように、融合燃料装荷アノード壁構成要素の導管構造を通して標的流体を循環させる、ならびに新たに形成された生成物同位体含有化合物を、抽出及び濃縮の化学的手段を閉じた再循環回路内に配置することができる外部位置に送達する手段を組み込むことができる。したがって、前述の標的流体は、陽子捕捉領域を含むと考えられ得る。
【0068】
円形又は多角形の反応チャンバはまた、流体導管6が2つの平行な平面に配置される広いチャンバを生成するように変更されてもよく、任意の実用的な幅は、図3の平面から突出して並んで収容される流体導管6の数によって決定され得る。しかしながら、これは、流体導管6の陽子捕捉領域の減少をもたらし得る。
【0069】
パルス電力モードで動作することによる粒子生成速度の利点もある。これは、格子閉じ込め融合、付随する電子遮蔽効果及び二次電子放出の組み合わせに起因する可能性が高い。電圧の周期的な緩和は、より高い濃度の価電子が、二次電子収率及びより強い電子遮蔽効果を増加させて格子閉じ込め融合を増加させる表面に短時間戻ることを可能にし得る。したがって、パルスモードでの動作からの利得を最大化するために、パルスの周波数は、電子が広範なイオン化後に濃縮表面に再配置するのにかかる緩和時間と一致しなければならない。したがって、本開示の実施形態は、パルス電力入力を利用することができる装置を提供することができ、それによって電流はパルス中に数アンペア~数十アンペア程度であり、それによって印加電流との超線形比例の観察された融合速度向上特性を利用する。
【0070】
図4は、システム機能概略図である。具体的には、図4は、医療用同位体生成構成のための陽子発生器システム機能概略図を示す。以下のラベル付けされた構成要素は、18高電圧電源、19低電圧パルスドライバ、20ガス管理マニホールドサブシステム、21ヘリウム3リザーバ、22ターボ分子真空ポンプ、23残留リザーバ、24一次真空ポンプ、25ゲッタポンプ、26密閉容器、27カソードアセンブリ、28マニホールドアセンブリ、29熱交換器、30同位体抽出システム、31流体流回路ポンプ、32ヘリウム3投入弁、及び33制御コンピュータシステムである。
【0071】
本開示の実施形態は、効果的な動作のためにインターフェース接続された周辺機能を有することができる。重要な周辺機器は、典型的には高電圧変圧器セクション18及び低電圧パルスドライバセクション19からなる超高電圧パルス電流電源であってもよい。従来技術に記載されているIEC装置の場合、生成される粒子の数は、電力入力に比例して増減する。対照的に、本開示の実施形態は、より低い電源要件を有しながら、従来技術のIECシステムなどの同等のIECシステムを超える粒子生成速度の増加をもたらすことができる。したがって、より小さい電力入力で多数の粒子を製造することができるので、高ワット数電源を支持するために必要な周辺支持機器はもはや必要ではない。本開示の実施形態は、最小限の又は低減された量の周辺支持機器機能で、核融合反応速度を増加させるための装置を提供することができる。
【0072】
ゲッタポンプアセンブリ25は、図4の反応チャンバアセンブリの外部に配置されてもよく、境界線20内に象徴的に示されているマニホールドアセンブリ内にあってもよい。非蒸発ゲッタポンプは、電源、加熱要素、及び温度測定回路(図示せず)によって支持されてもよい。電源は、ゲッタポンプゲッタ材料内に埋め込まれ得るヒータ要素に電力を供給するのに十分な電圧及び電流を供給することができる。ヒータは、ゲッタ材料を400℃~600℃の範囲の温度に上昇させることができる。ヒータは、ゲッタ材料が定常温度に留まるように制御されてもよい。容器26は、水などの残留揮発性物質を除去するために、正しく焼付けられた後に密閉及び排気され得る。適切な材料の調整されたゲッタは、分圧が上述の温度範囲にあるときに5×10-3mbar~5×10-1mbarのレベルに上昇するように、水素又はその同位体を放出することができる。特定の定常温度では、分圧も定常であり得る。一定温度のゲッタポンプは、高精度の圧力源及び圧力調整器として機能することができる。非常に小さな圧力変動は、スターモードグロー放電電圧の著しい逸脱を引き起こす可能性がある。圧力の調整は、オープンブリードバルブ及びターボ分子真空ポンプ構成で十分に細かくすることができるが、ゲッタポンプは、密閉構成のIELCデバイスの優れた加圧手段を提供することができる。
【0073】
反応ガス(重水素)を貯蔵するゲッタポンプ25の容量は、密閉型原子炉チャンバの最大運転時間数を決定する要因となり得る。実用的な構成は、毎秒最大1×1014回の融合速度で10年間の重水素の連続消費を可能にすることができる。そのような期間中、反応物の混合比が変化すると、密閉型原子炉の出力は非常にゆっくりと変化すると予想することができる。D-He3の実施形態では、いくつかのDD核融合反応が起こり得る。トリチウム及びヘリウム3は、陽子(水素)と同様に生成され得る。ヘリウム3及びトリチウムは、適用可能な核融合反応において蓄積又は消費され得る。これらの副反応の寄与は、実際には最小限であり得る。本実施形態における融合速度は、融合可能種濃縮レベルにもよるが、毎秒1×1010~1×1014である可能性が高い。充填及び通気ポート(図示せず)を開き、ゲッタポンプを加熱することによってガスを抽出し、チャンバを焼成して図2図3の内壁面3及び1に埋め込まれた揮発性種のガス放出を誘発することによって、密閉されたチャンバの保守を実行することが可能である。トリチウムの取り扱いは、安全規制の対象となり得る。しかしながら、本開示を具体化するよく使用されるD-He3原子炉に蓄積する可能性のあるトリチウムの量は、ほとんどの国で取り扱い及び輸送のための最低安全閾値を下回ると予想される。ガス管理マニホールドサブシステム20はまた、圧力容器21内にヘリウム3のリザーバを含むことができる。サービス作業が実施される場合、反応チャンバは実用的な最小圧力レベルまで排気される。高コストのヘリウム3は、ターボ分子真空ポンプ22が、1~5×10-2mbarの初期分圧であり得る残留ヘリウム3を再使用のためにリザーバ23内に導く掃気システムを必要とする場合がある。
【0074】
ヘリウム3を利用するように構成された実施形態は、重水素ガス用のゲッタポンプに加えて、ヘリウム3を貯蔵及び調整し、最終的にヘリウム4を取り扱い及び分離する外部手段を有することができる。
【0075】
ガスマニホールドサブシステム全体は、初期排気及び後続の動作手順のサポートのための一次真空ポンプ24を含むことができる。自動構成制御の実装をサポートするために、多数の投与弁及び遮断弁(一般的に示されている)を含めることができる。
【0076】
濃縮されたアノード及び容器壁は、組み合わされた機能要素を備えることができ、フィン又は他の構造もしくは表面の上に、熱伝達流体、一般に冷却流体の流れによる熱伝達のための外部フィン又は他の熱伝達構造もしくは表面を組み込むことができる。
【0077】
より具体的には、同位体生成のための実施形態は、容器壁又はアノード壁が、一実施形態ではそのうちの8つが存在する、流体導管アセンブリ27と並ぶことができるチャンバアセンブリ26を有することができる。これらは、収容された水性流体が反応チャンバの真空状環境から確実に密閉されるように、各端部でマニホールドアセンブリ28に接続されてもよい。マニホールドアセンブリは、流体流回路を構成することを可能にするポートを備えてもよい。流体流回路は、高電圧電源によってチャンバに送達される熱のかなりの部分を除去するための熱交換器29の主な機能的特徴を含むことができる。流体回路のさらなる機能的特徴は、P.E.T.同位体30及び微粒子濾過システムを抽出する手段であり得る。流体流回路は、ポンプ31によって完成されてもよい。すべての構成要素は、医療機器標準でなければならない場合がある。
【0078】
本実施形態の目的のために、高電圧電源18、19が送達することができるグロー放電電圧、パルス電流及びパルスデューティサイクルを制御するソフトウェアが存在してもよい。電圧は、チャンバ26内のガス圧によって決定されてもよい。ガス圧は、温度測定回路によって測定され、ソフトウェアに送信され得る、ゲッタポンプ温度によって決定されてもよい。ゲッタポンプ温度は重水素分圧を決定することができる。ソフトウェアは、ゲッタポンプ温度を維持するために、ゲッタポンプヒータ電源により多くの又はより少ない電力を送達するように命令することができる。ソフトウェアはまた、圧力を維持するように投与サーボ弁制御ユニットに命令することができる。このソフトウェア機能は、2つのガス状元素の混合比が原子数に関して等しくなり得るように、ゲッタポンプ25及びヘリウム3投与弁32によって決定される重水素分圧を制御することができる。コマンド又は制御信号は、原子炉が同位体の最適な生成に必要なパラメータで又はパラメータの非常に近くで動作するように、必要なサブシステムに発行することができる。制御アルゴリズムは、いくつかの非線形特性により自明ではない。しかしながら、応答時間は、必要な入力及び出力ポートを有する典型的なコンピュータ又は専用マイクロプロセッサ制御コンピュータ33が周期的な監視及び制御タスクに容易に対処することができるほど十分に長くてもよい。正味の結果は、定常陽子生成速度が達成されることであり得る。
【0079】
本開示のさらなる特徴は、すべてのプロセスを自動化し、高い信頼性、冗長性、及び安全基準を保証する能力である。図4に示す補助機器は、中央制御ユニット33コンピュータシステムによって監視及び制御することができる。そのようなシステムは、例えば、資格のあるオペレータがPET同位体生成システムを監督し、高レベルの命令を与えることができるように、ユーザインターフェースを有することができる。中央制御ユニット33は、安全インターロック、始動及びシャットダウンシーケンス、通常の定常状態動作パラメータ、ならびに軽微な異常及び重大な異常の管理を監督するソフトウェアプログラムによって最終的に自動的に駆動することができる。オペレータはまた、特定の制御パラメータを入力し、暖機モードを開始し、陽子発生モードを開始し、陽子発生モードを停止するか又は陽子発生モードから待機状態に移行し、陽子発生モードを再開し、最後にシステムの全シャットダウンを開始するように陽子発生器システムに命令することができる。流体循環サブシステムの制御は制御可能であってもよいが、好適には、反応チャンバ冷却機能を支持するために自動化されてもよい。同位体フィルタ30の動作に関連する機能のサブセットが存在してもよい。
【0080】
IELCの固有の能力は、低コストのスケーラビリティである。通常、2点源を使用すると、中性子源のコストが2倍になる。これは、Cf-252が唯一の実用的な供給源であったいくつかの市販の中性子分析システムでは許容される。しかしながら、2つの中性子発生器デバイスを使用する中性子照射システムについてはより問題がある。個々の中性子発生器システムは、原子炉デバイス、高電圧電力サブシステム、電子コントローラサブシステム、及び補助冷却サブシステムから構成されるため、機器の複数のコピーが必要とされる。適切に指定された補助サブシステムの1つのセットに並列に接続された2つ以上の密閉管デバイスの動作は、2つの別個の密閉管中性子発生器セットと比較してわずかなコスト削減にすぎないように思われる。IELCシステムは、電気的に並列に接続することができると同様に、連続管を介して物理的に直列に接続することができる。これにより、システムのより高価な部品、電源、及びセラミック絶縁体の大幅なコスト削減が可能になる。これは、代替的な加速器ベースの発生器とは対照的に、そのようなシステムをスケールアップするときのコスト削減を意味する。さらに、そのような幾何学的構成は、同様のフルエンスが加速器ベースのシステムで複製するには法外に費用がかかる大容積容器での核融合材料試験又は同位体発生のために、大きな試料領域にわたってより均一な中性子フルエンスを提供する。
【0081】
好ましくは、装置は、「マクロ」線形又は曲線形状の中性子を生成するように適合されてもよく、「マクロ」という表現は、放射性同位体の単一ペレットなどの比較的小さい「マイクロ」サイズの中性子源形状と、核分裂炉炉心又は星形などの「メガ」サイズの中性子源とを区別するために使用される。言い換えれば、「マクロ」は、産業用途に有用なサイズ又はスケールを意味する。これは、想定される医療用中性子ビーム源用途のための約1cmの線源長から、鉱山探索、土壌分析又は他の同様の用途のための数メートルまで及び得る。マクロ特性はまた、マクロスケールデバイスが、ミクロサイズのユニットの順序付けられた集合から構築され得ることを意味する。アノード壁の制御された濃縮がマクロシステムの特定の領域に対する粒子生成速度の重み付けを可能にする場合、平行又は垂直に整列することによってより高い束密度を可能にする。これは、マイクロスタービームセルを、2つ以上のセル、典型的には数十個のセルからなり得る線形配置に効率的にスタックする本開示の特定の実施形態の場合である。
【0082】
図5は、照射領域に面する内側アノード表面34は局所的にFISが濃縮され、LCF及び高束照射領域に近接した粒子生成を促進する、小型で大量の放射性同位体生成又は材料照射のための実施形態を提示するシステム35の並列構成を表す。以下のラベル付けされた構成要素は、34局所的な融合可能同位体種濃縮内側アノード表面、35外側容器壁及び36カソードアセンブリである。この幾何学的構成は、より広い容積領域にわたってより均一な束を可能にし、ブリーダーブランケット、超伝導磁石及び熱抽出システムなどの重要なサブシステムのための核融合材料試験用に理想的にすることができる。したがって、本開示の実施形態は、大量生産された実施形態において高速かつ再現性のある核融合反応速度を生成するための装置を提供することができる。
【0083】
好適には、カソード構造又はカソードアセンブリ36は、その周囲に開放面を有することができ、アノード及び容器壁構造によって取り囲まれている。カソード構造は、スターモード動作において、ほぼ半径方向に振動するイオンのスターモードビーム内に安定したプラズマガス動的構造を確立することができる細長いアレイを確立するために、略同一の電極構造を有するプリズム端からプリズム端まで積み重ねられた複数のカソードを含むことができ、そこでは、放出中性子が、アノード電極の内部容積空間及び容器の内面又は壁によって画定されるゾーンから発生するように適切な中性子検出器具を有する外部観察者に見える可能性が高い核融合反応が発生する可能性がある。電極のプリズム端部は、電極がプリズム形状、例えば円筒状に形成されている場合、電極の端部の平坦面を指す。本開示では、陽子は同様に挙動し得るが、原子炉容器から脱出しない。したがって、本開示の実施形態は、原子炉容器壁内に含まれる陽子及び他の反応生成物と、細長い起点領域から全方向に密閉装置から脱出することができる比較的小さい中性子束とを生成するための核融合反応を包含する装置を提供することができる。図6は、コンベヤベルト又は列車で急速に移動する荷物又は輸送容器内のものなどの大きな移動物体を走査するための実施形態を提示するシステムの一連の構成を表す。言い換えれば、図6は、局所的なアノード濃縮を含む、直列に配置された複数のユニット構成を示す。以下のラベル付けされた構成要素は、37局所的な融合可能同位体種濃縮内側アノード表面、38外側容器壁、39カソードアセンブリ、40中央高束照射領域である。好ましくは、FIS濃縮された内側アノード壁表面39は、六角形の軸平面を横切る集中した均一な束を可能にすることができる。直列に接続されたカソード構造38は、短絡アーク放電を回避するために、別個のセラミック絶縁体40と重なり合う高電圧フィードスルーを含むことができる。
【0084】
直列に接続された複数のカソード構造38は、個々にカソードケージセルと呼ばれてもよい。したがって、本開示の実施形態は、その長さを単一のカソードケージセル長の倍数として指定することができるゾーンにおいて核融合反応を生成するための装置を提供することができる。
可能な実施形態の特性寸法の例は、
I.アノード及び容器壁の内径8cm
II.カソードグリッド電極の直径3cm
III.カソードグリッド電極の長さ80cm
IV.陽子線源の長さ80cm
V.原子炉チャンバVIの全長及び電源アセンブリ180cm、である。
【0085】
発生器として機能する本開示の実施形態は、ベリリウム、ニッケル又は鉛をスロットインアノード壁構造体内に形成されるように配置するのによく適しており、それにより、生成された中性子又は陽子は、これらの元素又はさらなる核粒子を発生するように原子炉チャンバ壁内に同様に組み込まれる他の元素と核相互作用を有することができる。
【0086】
陽子発生器として機能する本開示の実施形態は、陽電子放出断層撮影法で使用される放射性同位体の生成によく適している。これは、重水素とヘリウム3との核融合反応により、14.7MeVのエネルギーを有する陽子が放出されるためである。酸素18と反応させてP.E.T.同位体であるフッ素18を生成するためには、8~18MeVの範囲の陽子エネルギーが必要であることが分かっている。陽子が金属製の膜又は箔を通過すると、陽子の運動エネルギーが低下する。例えば、所与のエネルギーの陽子は、鋼よりもアルミニウムに約1.5倍深く侵入し得る。実際には、14.7MeVの陽子では、8MeVの出口陽子エネルギーを有するために、アノードの壁厚は約0.3mm未満である必要があり得る。さらに薄いアノード壁厚は、標的同位体核との意図された相互作用に利用可能な残留陽子エネルギーを上昇させ得る。製造のためのより好ましい特性のために、工学的評価がステンレス鋼の選択をもたらす場合、典型的な壁厚は0.05~0.5mmの範囲内であってもよく、好ましい値は0.1mmである。
【0087】
P.E.T.走査設備は、エネルギー陽子を生成する陽子加速器などのデバイスに非常に近接して配置されなければならなかった。本改善により、患者のP.E.T.走査プロトコルをサポートすることができる性能を有し、著しく低い製造コスト及び動作コストを有する可能性を有するエネルギー陽子源及び標的照射デバイスを提供することができる。必須のサブシステムは、核融合炉容器、小型高電圧パルス電源、反応ガス圧力調整及び貯蔵のためのシステム、標的流体循環及び/又は冷却のためのシステム、同位体回収、分離及び精製のためのシステムを含むことができる。
【0088】
前駆体核融合燃料ガスは、一般に、誘発されるグロー放電に適した低圧の融合可能同位体からなることができる。低分圧(5×10-3mbar~5×10-1mbar)は、ゲッタ材料の一定温度に対して一定の水素同位体分圧を生成する特性を有し得る化学的非蒸発ゲッタポンプに適合し得る。ゲッタポンプは、気密封止チャンバ内のガス貯蔵及び圧力調整器として機能することができ、本開示の実際の工業的実施形態において有用であり得る。ゲッタ温度は、ガスプラズマ圧力によって決定される電極両端間の目標電圧を維持するために自動化された手段によって制御されてもよい。ヘリウム3の分圧は、重水素ゲッタポンプと組み合わせた微量投入弁の閉ループコントローラによって制御することができる。燃料消費率及び製品ガス生成に応じて、時折パージサイクルを考案することができる。高電圧電源は、好ましくは、IELCデバイスへのほぼ一定の平均電力入力を確立するために使用され得るパルス電流能力を有する。これにより、対応する安定した核融合速度及び同位体生成速度が得られ得る。5~100マイクロ秒のパルス持続時間を有するパルス動作は、アーク及び結果として生じる厳しい局所加熱の発生源として作用し得るカソード上の局所ホットスポットの緩和に最適であると考えられる。原子炉チャンバアセンブリの寿命は、内部絶縁体表面上への金属の堆積によって制限され得る。これを回避することは、マイクロチャネルビーム分配を利用して、セラミックフィードスルー及びスタンドオフ絶縁体表面への金属蒸気移動を緩和することに依存する。カソードの寸法は、放射熱がアノードチャンバ壁に効果的に伝達され、次いで導管内の循環流体を介して外部冷却システムにさらに伝達されるようなものであってもよい。これは、カソードグリッドの動作温度が十分に低いままであり、著しい金属蒸気圧ならびに水素化物を含有する重水素及び/又はトリチウムの分解を確実に効果的に緩和することができる。カソード及びアノードにCVDダイヤモンドコーティングを使用することにより、熱応力及び金属蒸発を最小限に抑えることができ、同時に二次電子放出を促進し、プラズマによる表面のスパッタリングが炭素イオンを放出する可能性があり、これは自由電子を吸い上げるより重い金属イオンと比較してプラズマのエネルギーにあまり悪影響を及ぼさないことを意味する。
【0089】
中性子に対する電荷がないため、本開示は高速中性子イメージング及び診断技術に適しており、調査後、粒子の大部分が通過し、測定された摂動が、材料を比較的損傷させないままにする傾向がある動的弾性相互作用に由来するので、プローブされた材料はほとんど又は全く測定可能な損傷を受けない。これらの弾性相互作用は、同じ元素の同位体間で異なり、この技術を、疑わしいパッケージ、貴重な考古学的アーチファクト又は未確認の技術の原子組成を調査するために独特に有用にする。総用量が適切なレベル未満に維持される場合、生物学的標的についても同じことが当てはまる。
【0090】
材料を通過する間、中性子は、十分なエネルギーで核が残留核種に分割される閾値反応、又は異なる同位体もしくはガンマ線などの二次粒子を放出する元素に核種を変換する熱中性子捕捉事象のいずれかによって標的核種と核反応を引き起こすことができる。中性子捕捉反応からの二次ガンマ放出スペクトルは十分に文書化されており、中性子活性化分析、熱中性子分析及び迅速ガンマ中性子活性化分析などの用途を実証する。1×10ns-1という低い中性子生成率(NPR)を有する粒子発生器であっても、所与の十分な照射時間及びガンマ検出機器で、窒素14又はウラニウム235などの大きな中性子捕捉断面積を有する同位体を容易に検出することができる。より高いNPR及び高感度ガンマ検出機器では、材料を広範囲に探査し、それらの原子組成を高精度に評価することができる。これまで、本開示は、核分裂炉又は高価な加速器の使用によってのみ可能であった。
【0091】
いくつかの用途では、承認された医療療法の一部として一般に受け入れられるために、中性子束を正確に定義する必要がある。加速器源又は密閉管中性子発生器からの中性子束の品質は理想的ではないと考えられる。加速器破砕中性子源は、一連の中性子エネルギーを発生させる可能性があり、単一エネルギー源よりも緩和及び熱化が困難になる。密閉管デバイスは、単一エネルギー中性子を提供するが、加速器破砕中性子源と同様に、中性子出力の信頼性の低さを被る。これらのデバイスが使用する固体標的は、使用により受ける損傷のために特性の変化を被る。中性ガス及びイオン混合プラズマからの融合可能イオンの組み合わされた静電格子閉じ込め融合は、損傷がアノード表面及びカソード表面にわたって分布し、拡散及び注入プロセスが動作中に平衡に達するため、標的劣化を被らない。また、FISは、プラズマ中で安定した状態で連続的に更新される。中性子出力品質が制御可能な動作パラメータの所与のセットに対して一定であり得るように、反応ガス汚染を緩和することができる。
【0092】
組み合わされた慣性静電格子閉じ込め(IELC)核融合デバイスは、非常に用途の広い粒子発生器を表し、選択された同位体融合可能種は、式1~4を通して見られるエネルギーの単エネルギー粒子スペクトルを生成する。次いで、これらのモードは、直流又はパルス構成における電圧及び電流の電力入力、ならびにアノードの動作温度などの動作条件を変更することによってさらに調整することができ、これは、各設定の総粒子生成速度を、発生器が構築される特定の用途に合わせて調整することができることを意味する。IELCの様々な用途の例としては、PET医療用放射性同位体を製造するための陽子発生器、診断及び撮像又は中性子活性化用途のための中性子発生器、ならびに爆発物及び核分裂性物質の検出のためのパルスモード中性子が挙げられる。
【0093】
連続中性子出力の能力と連携して、任意の電気中性子発生器が提供すべき利点は、パルス動作モードを作成するためにオン及びオフを繰り返し切り替える能力である。パルスモードデューティサイクルは、数分又は数秒のオン時間及び同様のオフ時間間隔からミリ秒、マイクロ秒、さらにはナノ秒まで及び得る。すべての中性子発生器においてパルス化デューティサイクル範囲全体を提供することは、必要でなく、費用効果的でなく、又は実用的でなくてもよい。パルスモードの主な利点は、より高いエネルギーの中性子相互作用によって引き起こされるノイズを遮断し、次いで、迅速なガンマ光子が瞬間的に放出されない熱中性子又は他の遅延相互作用を検出することである。Cf-252又は核分裂ベースのビームホール源を擬似パルス中性子源にするための機械的シャッタの実装は、実用的又は費用効果的ではない。さらに、安全性の観点から、キルスイッチを内蔵した粒子発生器の概念は非常に魅力的である。
【0094】
非点源幾何学形状は、中性子コリメーションシステムの設計に有利であり得る。そのような周辺システムは、コリメートされた中性子束の平均エネルギーを低減するための中性子減速を含むことができる。中性子コリメーションの目的は、特定の束密度及び中性子エネルギー特性を有する中性子ビームを確立することである。中性子は荷電粒子ではないため、静電又は磁場に反応しない。コリメーションデバイスは、中性子と特定の材料との相互作用に依存して、反射及び屈折様の速度変化を得る。本開示の実施形態は、特定の用途のための中性子源及びコリメーションシステムの新しい概念的構成を提供し得ることが想定され得る。ベリリウム、鉛及びニッケルは、中性子コリメーションのためのそのような乗算器、モデレータ及びリフレクタとして作用することができる。中性子のフルエンスは、ある程度強制され、マスクされ、異なる目的のための特定の束パターを作成するように向けられ得る。核融合産業では、これは、原子炉内のその点で予想されるフルエンスをマスキング、原則及びコリメーションの組み合わせによって再現することができる成分照射試験に特に有用である。
【0095】
密閉管中性子発生器技術は、固体標的の不可避の侵食によって本質的に年齢制限される。この成分は、トリチウム又は重水素ガスが含浸されたチタンなどの金属である。入射高エネルギー重水素は、標的のスパッタエロージョンを引き起こす効果を有する。スパッタ生成物は、密閉管デバイスの内面に金属膜として凝縮する。100キロボルト付近の電圧を使用すると、金属膜が蓄積するにつれて短絡状態になる。この最終的な故障モードの前でさえ、高度に局在化されたビームは、標的内のホットスポット及び関連するガス枯渇を引き起こす。様々な中性子収率劣化緩和スキームが使用されてきたが、密閉管中性子発生器の最良の保証寿命はわずか4000時間であるという事実が残っている。本開示は、動作中の熱及び放射損傷をアノード及びカソードのより広い表面積にわたって広げ、加速器ベースの競合品と比較して耐久性に固有の利点をもたらす。
【0096】
ステンレス鋼ワイヤ電極が20~60キロボルトに及ぶ電圧及び約5~30ミリアンペアの印加電流でおそらく10~20時間の動作後に構造的故障を被る実験ユニットの観察に基づく、球形及び円筒形IELC装置の両方の寿命に関する共通の問題。故障のモードは、金属の気化又は腐食及び絶縁体構成要素の表面上の堆積であり、これは必然的に短絡状態につながる。本開示によるシステムの寿命は、市販の密閉管ビーム固体標的中性子発生器の特許請求された寿命を50%超える可能性があり、無期限に稼働できると予想される。本開示のいくつかの実施形態では、2万時間以上の平均故障間隔が予想され得る。
【0097】
商業的な成功のために、本開示の実施形態は、組立体内の部品数の削減、低い部品製造コスト、迅速な組立及び安価な品質保証チェックの結果として、製造、運転及び保守コストを、競合する加速器ベースの粒子発生器に関連付けられたライフサイクルコストよりも低くすることを可能にするのに十分に単純である。個々の構成要素又はサブアセンブリは、本開示の実施形態内の意図された機能において高い耐久性を有する。サブシステムとそれらの機能との組み合わせは、好ましくは、自動化の度合いを高めることによって訓練の少ない人員によるシステムの操作を可能にするように、可変パラメータの操作制御を低減する。
【0098】
本開示は、陽電子放出断層撮影法(P.E.T.)走査などの医療又は非生物学的断層撮影走査プロセスによって使用される特定の同位体の生成のための小型システムの中核として構成することができる。この陽電子放出断層撮影法は、特定の放射性又は不安定な同位体の陽電子(正電荷電子又は反物質電子)崩壊から生じる511keVの一対のガンマ光子を利用し、陽電子及び電子の消滅は、静止質量(すなわち、2MeC)を一般に、正確に反対の速度ベクトルで放出される2つのガンマ線光子に変換する。ガンマ検出センサは、典型的には、走査される患者又は物体が通過するリング内に配置される。十分な量及び時間があれば、検出された511keV発光をマッピングして、走査された対象物又は患者の体内構造の視覚的スライス又は三次元モデルとして提示され得る断層撮影又は三次元データフィールドを構築することができる。技術の他のプロセスは、同じ目的のために同様のエネルギーのX線又はベータ粒子エミッタを使用するが、より忠実度の低い画像を生成するか、又は放射線療法を身体の特定の領域に送達する。より最近になって、ベータ放射性同位体及びX線放射性同位体の両方を偶然有するジルコニウムなどの元素を使用して、癌を有する身体の領域を診断することができ、ならびにセラグノスティックスとして知られている効果的で正確な治療において放射線治療線量を送達することができる。
【0099】
P.E.T.スキャンに使用され得る同位体の選択は、ここでの有用な議論には複雑すぎる生物医学的考察によって決定される。一般に列挙されているP.E.T.同位体、それらの半減期及びそれらの発生反応は以下の通りである。
【0100】
【数6】

【数7】

【数8】

歴史的に、そのような医療用放射性同位体は、Mo-99などの従来の同位体のより長い半減期が3つの半減期内での化学処理及び病院への送達を可能にする集中化された設定で市販の原子炉又は加速器で製造される。これは、撮像技術が、病院に到着するために数日間移動した低比放射能放射性同位体に限定されることを意味する。はるかに高い比放射能を有し、身体又は標的器官によって受け入れられる分子により容易に組み込まれる炭素11及び窒素13などのより新しい同位体は、原子炉又は加速器に近接した施設によってのみ使用することができる。これは、十分に確立された高度な技術及び処理の採用及び使用を妨げ、それらを大きな加速器又は核分裂炉を得ることができる世界の地域に限定している。サプライチェーンの特有の課題のために、これらの治療から利益を得る患者には提供されない可能性がある。本開示は、それらを使用する病院内での同位体の生成を可能にし、わずかな費用で代替粒子生成能力を構築することを可能にする。
【0101】
これらの同位体を生成する従来の方法は、水性溶液などの標的媒体に濃縮された供給源同位体を有することである。標的溶液は、障壁の浸透を可能にし、所望の同位体の形成をもたらす必要な核相互作用のための十分な残留エネルギーを依然として有するのに十分なエネルギーを有するエネルギー陽子の流れによって衝撃を受ける。壁厚は、典型的には金属箔(0.1~5mm)である。
【0102】
陽子源は、通常、サイクロトロン又は線形加速器タイプの粒子加速器であり、付与された陽子エネルギーは通常5MeVより大きい。いくつかの線形加速器には、12MeVの陽子エネルギーが与えられる。陽子ビーム強度は、直径数ミリメートルの焦点特性寸法を有する数ミリアンペアの電流である。これは、放射及び発熱の強化されたスポットを構成する。この種のPET同位体生成システムの設計者が直面する工学的問題は、標的媒体で生成される極めて局所的で強力な熱エネルギーである。これは、最も効率的な陽子核衝突のために水を液体形態に保つために加圧を必要とする水の過熱を含むことができる。本開示は、イオンが14MeV程度の核融合粒子を生成するために数100keVのエネルギーまでの加速しか必要としないので、ランニングコストが著しく低いシステムを提供する。さらに、デバイスならびに前駆体同位体を含む容器にかかる熱応力は、より大きな面積にわたって広がるので、複雑さが少なく、定期的に部品を交換する必要があることを意味する。加速器ベースの粒子発生器では、直接加速によるか破砕核融合反応によるかにかかわらず、陽子ビームを広い領域に広げることが困難である。このため、このようなシステムは、スパッタエロージョン及び陽子損傷のために照射された材料が定期的な交換を必要とするため、メンテナンスコストが高く、連続的に運転するのが困難である。
【0103】
したがって、本開示は、組み合わされた粒子発生器と標的サブシステムとの保守の間隔を長くして、本質的に低い製造コストを提供する。標的の単位面積又は単位容積当たりに課される熱流束は、陽子ビームが利用されず、陽子流束が原子炉チャンバ壁の内部表面積全体にわたって均一に分布されるため、はるかに低い。これにより、冷却サブシステムに関連する複雑さ及びコストがさらに低減される。
【0104】
本開示は、収容領域内の病院のクラスタの放射性同位体のニーズに応える能力を有する。多くの病院ハブは、世界中の都市センターに存在し、各々が物流目的のために互いに短い距離にある。重水素-重水素又は重水素-トリチウム中性子モードのシステムは、遮蔽領域内の1つの病院の地下室に設置されて、例えば収容領域内の他の病院用のMo-99及びLu-177を生成することができる。或いは、重水素-ヘリウム3モードの陽子発生システムは、安全な車両からの移動式PETスキャナと対にすることができる。そのようなシステムは、例えば、別々のチャネルが酸素18又は酸素16水を含有してそれぞれフッ素18又は窒素13を生成する複数の同位体を同時に発生させるのに適している。各同位体は、循環流体からオンデマンドで化学的に抽出することができる。
【0105】
本開示の例示的な実施形態の様々な態様は、ブロック図、フローチャートとして、又はいくつかの他の図式表現を使用して図示及び説明することができるが、本明細書に記載のこれらのブロック、装置、システム、技法又は方法は、非限定的な例として、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、専用回路又は論理、汎用ハードウェア又はコントローラ又は他のコンピューティングデバイス、或いはそれらの何らかの組み合わせで実装することができることが十分に理解される。
【0106】
本開示における「一実施形態」、「実施形態」などへの言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含み得ることを示すが、すべての実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含む必要はない。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、又は特性を実装することは当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0107】
本明細書では、「第1」、「第2」などの用語を使用して様々な要素を説明することができるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された用語のうちの1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0108】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(includes)」及び/又は「含む(including)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、要素、構成要素、及び/又はそれらの組み合わせの存在又は追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。本明細書で使用される「接続する(connect)」、「接続する(connects)」、「接続する(connecting)」、及び/又は「接続された(connected)」という用語は、2つの要素間の直接的及び/又は間接的な接続を網羅する。
【0109】
本開示は、本明細書に開示された任意の新規な特徴又は特徴の組み合わせを明示的に又はその任意の一般化のいずれかで含む。本開示の前述の例示的な実施形態に対する様々な修正及び適合は、添付の図面と併せて読めば、前述の説明を考慮して当業者には明らかになり得る。しかしながら、いかなる及びすべての修正も、本開示の非限定的及び例示的な実施形態の範囲内に入る。誤解を避けるために、本開示の範囲は特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】