(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】突入電流制限回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H02M7/06 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579001
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2021066943
(87)【国際公開番号】W WO2022268294
(87)【国際公開日】2022-12-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンク、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】フュグリスター、マルクス
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC08
5H006DC05
(57)【要約】
本発明は、整流器(100)のための突入電流リミッタ回路(102、104、105)に関し、ここで、突入電流リミッタ回路は、整流器(100)の整流部(101)とフィルタ容量(109)との間に電流の流れを提供し、電力段(105)を備え、ここで、電力段(105)は、電力段抵抗器(108)と、電力段抵抗器(108)に並列な電力段トランジスタ(107)とを備え、ここで、電力段抵抗器(108)は、電力段トランジスタ(107)の状態に応じて電流の量を伝導するように構成され、ここで、電力段トランジスタ(107)は、電力段トランジスタ(107)のゲート容量の充電に応じて電流の量を伝導するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流器(100)のための突入電流リミッタ回路(102、104、105)であって、
ここで、前記突入電流リミッタ回路は、前記整流器(100)の整流部(101)とフィルタ容量(109)との間に電流の流れを提供し、
電力段(105)を備え、ここで、
前記電力段(105)は、電力段抵抗器(108)と、前記電力段抵抗器(108)に並列な電力段トランジスタ(107)とを備え、
ここで、前記電力段抵抗器(108)は、前記電力段トランジスタ(107)の状態に応じて、前記電流の量を伝導するように構成され、
ここで、前記電力段トランジスタ(107)は、前記電力段トランジスタ(107)のゲート容量の充電に応じて前記電流の量を伝導するように構成される、突入電流リミッタ回路(102、104、105)。
【請求項2】
定電流源(102)をさらに備え、ここで、前記定電流源(102)は、前記電力段トランジスタ(107)の前記ゲート容量を充電するように構成される、請求項1に記載の突入電流リミッタ回路(102、104、105)。
【請求項3】
定電流源(102)は、設定された時定数に従って前記ゲート容量電力段トランジスタ(107)を充電するように構成される、請求項1に記載の突入電流リミッタ回路(102、104、105)。
【請求項4】
再トリガ回路(104)をさらに備え、ここで、前記再トリガ回路(104)は、DCバス電圧ジャンプを検出し、DCバス電圧ジャンプがあったことを検出した場合に前記トランジスタをオフにするように構成される、請求項1または2に記載の突入電流リミッタ回路(102、104、105)。
【請求項5】
前記再トリガ回路(104)は、比較器(110)を備え、前記比較器(110)は、DCバス電圧に基づく遅延電圧を前記DCバス電圧に基づく非遅延電圧と比較し、前記比較の結果、差電圧が閾値よりも高い場合に、DCバス電圧ジャンプが発生したと決定するように構成される、請求項4に記載の突入電流リミッタ回路(102、104、105)。
【請求項6】
前記再トリガ回路(104)は、前記トランジスタ(107)をオフにする制御信号を生成する論理デバイスを備える、請求項4または5に記載の突入電流リミッタ回路(102、104、105)。
【請求項7】
前記再トリガ回路(104)は、DCバス電圧ジャンプの検出のために構成されたシュミットトリガを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の突入電流リミッタ回路(102、104、105)。
【請求項8】
前記抵抗器(108)は、NTC、PTC、または温度非依存性電力抵抗器である、請求項1から7のいずれか一項に記載の突入電流リミッタ回路(102、104、105)。
【請求項9】
前記電力段(105)の前記トランジスタ(107)は、MOSFETトランジスタである、請求項1から8のいずれか一項に記載の突入電流リミッタ回路(102、104、105)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電力段(105)を有する突入電流リミッタ回路(102、104、105)を備える、整流器(100)。
【請求項11】
前記突入電流リミッタ回路(102、104、105)の前記電力段(105)は、前記整流器(100)の負または正のDC経路に配置される、請求項10に記載の整流器(100)。
【請求項12】
前記整流器は、前記整流器(100)の正のDCバス電圧を介して定電流源(102)を供給するように構成される、請求項10または11に記載の整流器(100)。
【請求項13】
前記整流器(100)は、コンデンサフィルタ付きブリッジ整流器である、請求項10から12のいずれか一項に記載の整流器(100)。
【請求項14】
整流器の整流部(101)とフィルタ容量(109)との間を流れる前記整流器の突入電流を制限するための方法(300)であって、突入電流リミッタ回路は、電力段抵抗器(108)と、前記抵抗器(108)に並列な電力段トランジスタ(107)とを有する電力段(105)を備え、ここで、前記方法は、
前記電力段トランジスタ(107)の状態に応じて、前記電力段抵抗器(108)によって、前記電流の量を伝導すること(302)と、
前記電力段トランジスタ(107)のゲート容量の充電に応じて、前記電力段トランジスタによって、前記電流の量を伝導すること(304)とを備える、方法(300)。
【請求項15】
貯蔵されるエネルギーの量は、貯蔵装置にかかる電圧の関数である、整流器(100)またはエネルギー貯蔵装置における請求項1から9のいずれか一項に記載の突入電流リミッタ回路(102、104、105)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流器の整流部とフィルタ容量との間に流れる整流器の突入電流を制限するための整流器用突入電流リミッタ回路、整流器、方法、および突入電流制限回路の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
整流器は、例えば、整流器がオンに切り替えられたとき、または短い停止時に発生するかもしれない電圧ステップにさらされるかもしれない。容量性フィルタ回路の入力における電圧ステップの場合、電解コンデンサのESR(等価直列抵抗)は、コンデンサ値および供給元とともに、数オームから数十ミリオームの範囲で大きく変動するため、放電されたDCバスコンデンサは、入力にわたって低インピーダンスを呈する。DCバッテリのような低インピーダンス電圧源からの大きな入力電圧ステップは、高い電流スパイクを引き起こし、コンデンサの不必要なエージングから始まって、入力ヒューズのトリップまたは構成要素の永久的な損傷までの一連の問題を招く。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、効果的な突入電流制限回路を有する改善された整流器を提供することであってもよい。
【0004】
問題は、独立請求項の主題によって解決される。実施形態は、従属請求項、以下の説明、および添付の図面によって提供される。
【0005】
記載された実施形態は、同様に、整流器のための突入電流リミッタ回路、整流器、整流器の整流部とフィルタ容量との間を流れる整流器の突入電流を制限するための方法、および突入電流リミッタ回路の使用に関する。相乗効果は、詳細について記載しないが、実施形態の異なる組み合わせから生じてもよい。
【0006】
さらに、方法に関する本発明の全ての実施形態は、説明したステップの順序で実施されてもよいが、これは、方法のステップの唯一の必須の順序である必要はないことに留意されたい。本明細書で提示した方法は、以下で反対のことが明示的に述べられない限り、それぞれの方法の実施形態から逸脱することなく、開示したステップの別の順序で実行することができる。
【0007】
技術用語は、それらの常識によって使用される。特定の意味が特定の用語に伝えられる場合、用語の定義は、その用語が使用される文脈において以下に与えられる。
【0008】
第1の態様によれば、整流器のための突入電流リミッタ回路が提供され、突入電流リミッタ回路は、整流器の整流部とフィルタ容量との間に電流の流れを提供する。突入電流リミッタ回路は、電力段を備え、電力段は、電力段抵抗器(108)と、電力段抵抗器に並列な電力段トランジスタとを備える。電力段抵抗器は、電力段トランジスタの状態に応じて、電流の量を伝導するように構成される。電力段トランジスタは、電力段トランジスタのゲート容量の充電に応じて、電流の量を伝導するように構成される。
【0009】
「突入電流」という用語は、整流器がオンに切り替えられたときに発生し、無負荷のDCフィルタコンデンサ(または一般に容量性負荷)を充電する電流を示す。同じ効果が、DCラインの電圧ジャンプで生じる。電圧ジャンプは、例えば、15Vであってもよい。
【0010】
電力段は、整流段とフィルタコンデンサとの間の電流の流れに最終的に関与する構成要素を備えるので、突入電流リミッタ回路の主要ブロックである。構成要素は、抵抗器と、MOSFETまたは他のパワートランジスタなどのトランジスタである。抵抗器は、電流を2つ以上の単一抵抗器に分配するために並列に接続された複数のトランジスタの配列であってもよい。抵抗器は直列に接続されているので、トランジスタがオフに切り換えられた場合には、抵抗器の特性に従って制限された全突入電流を伝導する。トランジスタがスイッチオフ状態とスイッチオン状態との間の状態にある場合、抵抗器は突入電流の一部を伝導し、トランジスタがスイッチオンされる場合、抵抗器は電流を伝導しないか、またはほとんど伝導しない。すなわち、抵抗器とトランジスタを流れる電流量は、トランジスタのゲート容量の充電に依存する。もちろん、抵抗器およびトランジスタの電圧および特性などのさらなる依存性が存在してもよい。
【0011】
この回路は、電流が抵抗器またはトランジスタのいずれかを通って流れ、短い遷移時間で両方を通って流れるように、トランジスタを切り替えることを可能にする。このようにして、突入電流は抵抗器によって制限され、電流制限は除去され、それによって抵抗器は解放される。
【0012】
一実施形態によれば、突入電流リミッタ回路は、定電流源を更に備える。定電流源は、電力段トランジスタのゲート容量を充電するように構成される。
【0013】
電力段トランジスタのゲート容量の充電は、定電流源によって行われる。充電は、第1のフェーズでは、トランジスタがオフに切り替えられて突入電流を制限し、第2のフェーズでは、トランジスタが短い過渡状態にあり、完全には伝導せず、第3の状態では、トランジスタがオンに切り替えられて電流制限を除去することができ、それによって抵抗器が解放されるように、ある程度の時間を要することがある。短い遷移フェーズのために、抵抗器からトランジスタへの突入電流の比較的滑らかな再分配が達成される。従って、抵抗器はその電流制限範囲を満たし、公称動作中にトランジスタによって解放される。
【0014】
一実施形態によれば、定電流源は、設定された時定数に従ってゲート容量電力段トランジスタを充電するように構成される。
【0015】
定電流源は、電力段トランジスタのゲートに供給される電流の量に影響を及ぼす抵抗器および/または他のデバイスに配線されたMOSFETなどのトランジスタを備えてもよい。時定数は、これらのデバイスの値を調整することによって変更されてもよい。
【0016】
一実施形態によれば、突入電流リミッタ回路は、再トリガ回路を更に備える。再トリガ回路は、DCバス電圧ジャンプを検出し、DCバス電圧ジャンプがあったことを検出した場合にトランジスタをオフにするように構成される。
【0017】
これは、電力段トランジスタのゲート電圧をその閾値電圧より下にプルダウンすることによって達成されてもよい。このとき、ゲートコンデンサは放電されるので、ゲートコンデンサは定電流源によって再び充電されなければならない。整流器をオンに切り替えるときの上述の場合と同様に、抵抗器は突入電流を伝導し、それによってトランジスタが伝導性になるまで電流を制限する。
【0018】
一実施形態によれば、再トリガ回路は、DCバス電圧に基づく遅延電圧をDCバス電圧に基づく非遅延電圧と比較し、比較の結果、差電圧が閾値よりも高い場合にDCバス電圧ジャンプが発生したと決定するように構成された比較器を備える。
【0019】
一実施形態によれば、再トリガ回路は、DCバス電圧ジャンプを検出するように構成されたシュミットトリガを備える。
【0020】
比較器は、例えば、シュミットトリガであってもよい。遅延は、コンデンサによってもたらされてもよい。例えば、比較器の第1および第2の入力電圧は、ジャンプが発生しないときには同じである。しかしながら、ジャンプの場合、第1の入力電圧は、直ちに新しい値に変化し、第2の入力は、最初に、ジャンプ前とほぼ同じレベルに留まり、次いで、入力値が再び等しくなるように、新しい値に収束する。ジャンプ直後の時点から始まる電圧差が比較器の閾値よりも高い限り、トランジスタのゲートを引き下げる信号が生成される。
【0021】
一実施形態によれば、再トリガ回路は、トランジスタをオフにする制御信号を生成する論理デバイスを備える。
【0022】
上述のようなコンデンサを使用するなどのアナログソリューションの代わりに、またはそれによってサポートされるデジタルソリューションが、例えば、DSP、CPLD、FPGA、または他の論理構成要素などの論理デバイスを使用して適用されてもよい。一般に、任意の論理デバイスまたは論理デバイスの配置が使用されてもよい。
【0023】
一実施形態によれば、抵抗器、すなわちトランジスタに並列な突入電流制限抵抗器は、NTC、PTC、または温度非依存性電力抵抗器である。
【0024】
例えばNTCを使用するときの効果は、整流器をオンに切り替えるときにNTCが冷たいために抵抗が高く、公称動作に移行するときまたは公称動作中にNTCが熱くなるにつれて抵抗が低くなることである。したがって、突入電流は、最初は厳しく制限され、制限は時間とともに減少する。したがって、制限は効果的な方法で実行される。しかし、例えば、PTCまたは温度に依存しない電力抵抗器を使用することもできる。
【0025】
一実施形態によれば、トランジスタはMOSFETトランジスタである。
【0026】
理想的には、4...7Vの閾値電圧U_GS(ゲート-ソース)および例えば10VのU_GSの飽和を有する構成要素が使用されてもよい。MOSFETは、SiCまたはSiMOSFETであってもよい。
【0027】
さらなる態様によれば、電力段を有する、本明細書に記載される突入電流リミッタ回路を備える整流器が提供される。
【0028】
一実施形態によれば、突入電流リミッタ回路の電力段は、整流器の負のDC経路または正のDC経路に配置される。
【0029】
正の経路と負の経路との間の選択は、市場での適切なMOSFETタイプの利用可能性、または他の設計態様に基づいてもよい。好ましくは、電力段は、負の経路に配置される。
【0030】
電力段が負の経路に配置されるとき、電圧ジャンプの検出および上述の回路の供給は、正のDCバス電圧によって得られてもよく、またはそこから導出される電圧によって得られてもよい。
【0031】
一実施形態によれば、整流器は、整流器の正のDCバス電圧を介して定電流源を供給するように構成される。
【0032】
このため、定電流源回路のMOSFETのドレインは、ソースが抵抗器を介して正の直流電圧に接続され、ドレインが電力段MOSFETのゲートに接続されたPチャネルMOSFETであってもよい。
【0033】
さらなる態様によれば、整流器は、コンデンサフィルタ付きブリッジ整流器である。
【0034】
さらなる態様によれば、整流器の整流部とフィルタ容量との間を流れる整流器の突入電流を制限するための方法が提供され、突入電流リミッタ回路は、電力段抵抗器と、抵抗器に並列な電力段トランジスタとを有する電力段を備える。方法は、電力段トランジスタの状態に応じて、電力段抵抗器によって、電流の量を伝導させるステップと、電力段トランジスタのゲート容量の充電に応じて、電力段トランジスタによって、電流の量を伝導させるステップとを含む。
【0035】
方法は、整流器をオンに切り替えた後、トランジスタがオフになり、電力段の抵抗器が突入電流を伝導することをさらに備えてもよい。ゲート容量を充電した後、電力段のトランジスタは電流を伝導するためにスイッチオンされる。
【0036】
方法は、電圧ジャンプの場合にゲート容量を放電することをさらに備え、本開示に記載されるようなさらなるステップを備えてもよい。
【0037】
さらなる態様によれば、整流器における、本明細書に記載される突入電流リミッタ回路の使用が提供される。突入電流リミッタ回路は、貯蔵されたエネルギーの量が貯蔵装置にかかる電圧の関数である任意のエネルギー貯蔵装置においてさらに使用されてもよい。突入電流マネージャは、両方の入力電圧のいずれかの急速な増加を監視する。
【0038】
本発明の上記の特徴および他の特徴、態様および利点は、添付の図面および以下の説明を参照することによってよりよく理解されるであろう。同一または同等の要素には原則として同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、一実施形態による突入電流リミッタ回路を備える整流器の図を示す。
【
図2】
図2は、突入電流リミッタ回路のシミュレーションのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、一実施形態による突入電流リミッタ回路102、104、105を備える整流器100の簡略化された概略図を示す。整流器は、ダイオードブリッジ111を有する整流段101と、トランジスタ106を有する電流リミッタ回路ブロック102、104、105のうちの1つとしての定電流源102と、フィルタリングコンデンサ109を有するDC出力段103と、電力段と呼ばれる突入電流ブロック105と、本開示では再トリガ回路104と呼ばれるさらなる突入電流ブロック104とを備える。
図1の整流段101は、2つのブリッジ配列112、113を示す。第1のブリッジ配列112はACメインに接続され、第2のブリッジ構成113はACメイン(UMain)またはAC補助(UAux)に接続されてもよい。出力段103のコンデンサ109は、整流段101の出力電圧をフィルタリングする。UDCは正のDCバスを示し、GNDZは電気的接地を示す。
【0041】
整流器をオンに切り替えるとき、コンデンサ109は負荷をかけられ、高い突入電流をもたらす。同じことが、任意の正の電圧ジャンプにも当てはまる。突入電流を制限するために、突入電流ブロック105が挿入され、これは、
図1の例では、並列NTC抵抗器108のバンクとトランジスタ107とを備える。整流器をオンに切り替えるとき、トランジスタ107はまだ伝導しておらず、NTC抵抗器108は高い抵抗を有し、したがって突入電流を制限する。一方、トランジスタ107のゲート電圧は、トランジスタ106を用いて制御される定電流源102によって供給される電流によってゆっくりと増加し、その結果、トランジスタ107が完全にオンに切り換えられるまでトランジスタ107を通る電流が増加する。したがって、抵抗器108は、トランジスタ107がオフにされるときに完全な電流を伝導し、トランジスタが部分的に伝導しているときに電流の一部を伝導し、トランジスタ107がオンにされる場合に電流をほとんど伝導せず、したがって、突入期間後のほぼ完全な公称電流がトランジスタ107によって伝導される。適切な時定数の設定は、パワーMOSFETと並列の抵抗器との間の突入電流の平衡を可能にする。
【0042】
すなわち、整流器100がオンに切り替えられるシナリオでは、高い突入電流は、最初に、コールドNTC抵抗器の高い抵抗によって制限される。同時に、定電流源102は、トランジスタ107のゲートにゆっくりと負荷をかけ、その結果、定電流源102は、電流を伝導しないことと完全に伝導することとの間のトランジスタの遷移フェーズを可能にする。このようにして、NTC抵抗器108は、温度が上昇して抵抗が減少し、したがって熱くなりすぎるとき、高電流を伝導することから解放される。他方では、トランジスタ107が電圧ジャンプ後の第1のフェーズにおいて高い突入電流を伝導することが回避される。
【0043】
動作中、例えば、グリッド側での短い停止のために、さらなる電圧ジャンプが発生することがある。この場合、再トリガ回路104は、トランジスタ107をリセットするために使用される。トリガ回路104は、
図1に示されるUGSラインにおいて電力段105に接続される。再トリガ回路104は、分圧器の電圧と、
図1の例では、正の電圧ジャンプが検出されるように抵抗器およびコンデンサによって決定される電圧とを比較する比較器110を備える。電圧ジャンプを検出するとき、再トリガ回路102は、トランジスタ107がオフに切り替えられるように、ゲート電圧をトランジスタ閾値電圧未満に低下させる。その後、定電流源102によってトランジスタ107のゲートをゆっくりと充電することによって、手順が再び開始される。
【0044】
図2は、
図1に示す回路に適用されるいくつかのシナリオを有するシミュレーションの特性波形を示す。
【0045】
プロット202は、いくつかの電圧ステップを有する入力電圧を描く:
1)t=0.1秒、211:0Vから100Vdcへジャンプ、
2)t=1.0秒、212:100Vdcから230Vacへのジャンプ、
3)t=2.0秒、213:入力電圧の1秒中断、
4)t=3.0秒、214:0Vから230Vacへのジャンプ、
5)t=3.85秒、215:入力電圧の100ms中断。
【0046】
プロット204は、対応するDC出力電圧を示し、プロット206は、入力電流、すなわち、電圧ジャンプにおける突入電流を含み、プロット208は、
図1に示される電流制限電力MOSFET107のゲート電圧を示す。
【0047】
スタートアップ211において、トランジスタ107のゲート電圧208は、定電流源102のPチャネルMOSFET106によって調整される、一定の、電圧に依存しない電流によってゆっくりと増加される。後続の電圧ジャンプは、現在の最新技術のトポロジによって制限されない。プロット202に示されるように、入力電圧は212で増加し、トランジスタ107のゲート電圧208の低下を引き起こす。この電圧の降下は、ゲート電圧をトランジスタしきい値電圧よりも低くする比較器110によってもたらされる。これは、入力ラインのいずれか(UMAINまたはUAUX)が15Vよりも大きい正のデルタを有する(すべてフィルタリングされた)場合、突入電流リミッタがオンになり(またはゲート-ソース電圧U_GSがゲート-ソース閾値電圧U_GS_thresholdと同じくらい低く放電されることになり)、電流が次の瞬間にNTCを通って流れるだけであることを意味する。これにより、電流制限処理が再開される。213において、DC電圧はゼロであり、ゲート電圧はほぼゼロまで降下し、214におけるAC電圧は、スタートアップフェーズ211に対して示されたものと同様のゲート電圧の上昇をもたらす。
【0048】
図3は、整流器の整流部101とフィルタ容量109との間を流れる整流器の突入電流を制限するための方法300のフロー図を示し、突入電流リミッタ回路は、電力段抵抗器108と、抵抗器108に並列な電力段トランジスタ107とを有する電力段105を備える。方法は、以下のステップを備える:
電力段トランジスタ107の状態に応じて、電力段抵抗器108によって、電流の量を伝導すること302。
【0049】
電力段トランジスタ107のゲート容量の充電に応じて、電力段トランジスタによって、電流の量を伝導すること304。
【0050】
開示した実施形態に対する他の変形形態は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求の範囲に記載された発明を実施する際に当業者が理解および達成することができる。特許請求の範囲では、「備える(comprising)」という単語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、特許請求の範囲に記載されたいくつかの項目またはステップの機能を果たすことができる。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用されることができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0051】
参照符号のリスト
100 整流器
101 整流器の整流部
102 定電流源
103 DC出力段
104 再トリガ回路
105 電力段
106 再トリガ回路のトランジスタ
107 電力段トランジスタ
108 電力段抵抗器
109 フィルタ容量
110 比較器/シュミットトリガ
111 ダイオードブリッジ
112 整流部の第1のブリッジ配列
113 整流部の第2のブリッジ配列
202 入力電圧のプロット
204 DC出力電圧のプロット
206 入力電流のプロット
208 トランジスタ107のゲート電圧
211 シミュレートされた第1のフェーズ;初期フェーズ/整流器のオンへの切り替え
212 シミュレートされた第2のフェーズ;100Vdcから230Vacへの電圧ジャンプ
213 シミュレートされた第3のフェーズ;入力電圧の遮断
214 シミュレートされた第4のフェーズ;0Vから230Vacへのジャンプ
215 シミュレートされた第5のフェーズ;入力電圧の遮断
300 方法
302 方法の第1のステップ
304 方法の第2のステップ
【国際調査報告】