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特表2024-523921特異的バインダーの選択手段及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】特異的バインダーの選択手段及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20240625BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20240625BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C07K16/00
C07K1/22 ZNA
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579240
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022067256
(87)【国際公開番号】W WO2022268993
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181272.2
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21181405.8
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509333933
【氏名又は名称】フエー・イー・ベー・フエー・ゼツト・ウエー
(71)【出願人】
【識別番号】509333922
【氏名又は名称】フリエ・ウニベルシテイト・ブリユツセル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステヤエルト,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】パルドン,エルス
(72)【発明者】
【氏名】ボールケーニヒ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ツェグ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】カリチュク,バレンティーナ
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR66
4B063QR83
4B063QR84
4B063QS17
4B063QS28
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA20
(57)【要約】
本開示は、着目標的に特異的なポリペプチド結合剤の新規選択・同定方法に関する。より具体的には、前記選択方法は、第1の結合剤を使用して前記着目標的を表面に捕捉し、固定化抗原複合体を形成する工程と、試料中に好ましくはディスプレイライブラリーとして存在する特定の抗原結合ポリペプチドを選択する工程と、前記第1の結合剤の標的結合部位について競合する第2の結合剤を使用して前記標的タンパク質と前記選択的ポリペプチドバインダーを溶出させる工程とを含む。より具体的には、本願に記載する選択方法は、免疫ライブラリーと偏りのない又はプロテオームワイドなディスプレイライブラリーを含む組換え抗体ライブラリーに適用可能な効率的で高度に選択的な中~高スループットテクノロジーを提供し、精製済みの標的タンパク質を必要とせずに生理的条件下で選択を実施できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドバインダーの選択方法であって、
a)表面に固定化されており、標的タンパク質と特異的に結合する第1のタンパク質結合剤を、前記標的タンパク質を含む試料と混合し、前記表面に複合体を得る工程と、
b)工程a)の前記複合体に、複数のポリペプチドバインダーを含む試料を加える工程と、
c)前記標的タンパク質との結合について前記第1の結合剤と競合し、前記標的タンパク質と特異的に結合することにより、前記標的タンパク質から前記第1の結合剤を置換する第2のタンパク質結合剤を含む試料を、工程b)の混合物に加える工程と、
d)前記標的タンパク質と結合した前記第2のタンパク質結合剤を溶出させ、前記標的タンパク質と結合したポリペプチドバインダーを単離する工程と
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第2のタンパク質結合剤の解離速度定数(koff値)が、前記第1の結合剤のkoff値に比較して同等以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2及び/又は第1のタンパク質結合剤が、抗原結合ドメインを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原結合ドメインが、免疫グロブリンシングル可変ドメイン(ISVD)、VHH、ナノボディ、又は少なくとも2部位を介して足場タンパク質と融合したISVDとして定義される抗原結合性キメラタンパク質を含み、好ましくは、前記足場タンパク質ドメインが、HopQ、YgjK、又はその誘導体を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程b)における複数のポリペプチドバインダーを含む前記試料が、結合剤のディスプレイライブラリーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ディスプレイライブラリーが、結合剤の組換えライブラリー、及び/又は免疫ライブラリー、又は(半)合成、非免疫、若しくはナイーブライブラリーであり、前記結合剤が、抗体、シングルドメイン抗体、ISVD、VHH又はナノボディを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、ファージディスプレイ法、酵母ディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、細菌ディスプレイ法、若しくは哺乳動物ディスプレイ法を使用して実施され、及び/又は、工程dで溶出するポリペプチドバインダー数を増大させるように、工程d)の後に、前記方法の工程a)~d)を少なくとも1回、好ましくは2回以上繰り返す、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記表面が、(磁気)ビーズ、樹脂、カラム、プレート、又はチップを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
a)における前記標的タンパク質を含む前記試料が、生体試料、細胞溶解物、又はプロテオーム試料等の複合体混合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のポリペプチドバインダー又は特に請求項6に記載のディスプレイライブラリーを取得するための免疫原として前記複合体混合物を適用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び/又は第2のタンパク質結合剤が、前記標的タンパク質上に存在する異種タグと特異的に結合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記タグが、GFP若しくはYFPであり、及び/又は前記第1のタンパク質結合剤が、配列番号71のCDRを含み、前記第2のタンパク質結合剤が、配列番号70のCDRを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記表面に捕捉された前記標的タンパク質が、少なくとも1種以上の別のタンパク質を含むタンパク質複合体であり、及び/又は前記ポリペプチドバインダーが、前記タンパク質複合体に含まれる前記タンパク質の少なくとも1種以上と結合することにより、前記複合体と結合している、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)及びb)を以下の工程、
a.複数のポリペプチドバインダー、好ましくはディスプレイライブラリーを含む試料と標的タンパク質試料を混合する工程と、
b.好ましくは表面に固定化されているか又は後で固定化される第1のタンパク質結合剤をa)の混合物に加えることにより、表面に固定化複合体を得る工程
に置き換える、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
組換え抗体ライブラリーからバインダーを選択するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項16】
標的タンパク質エピトープビニング用、又は前記標的タンパク質上の新規エピトープの同定用としての、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項17】
特異的バインダーの高スループット選択用としての、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、着目標的に特異的なポリペプチド結合剤の新規選択・同定方法に関する。より具体的には、前記選択方法は、第1の結合剤を使用して前記着目標的を表面に捕捉し、固定化抗原複合体を形成する工程と、試料中に好ましくはディスプレイライブラリーとして存在する特定の抗原結合ポリペプチドを選択する工程と、前記第1の結合剤の標的結合部位について競合する第2の結合剤を使用して前記標的タンパク質と前記選択的ポリペプチドバインダーを溶出させる工程とを含む。より具体的には、本願に記載する選択方法は、免疫ライブラリーと偏りのない又はプロテオームワイドなディスプレイライブラリーを含む組換え抗体ライブラリーに適用可能な効率的で高度に選択的な中~高スループットテクノロジーを提供し、精製済みの標的タンパク質を必要とせずに生理的条件下で選択を実施できる。
【背景技術】
【0002】
緒言
近年、多数の提示・選択方法が報告され、抗体創出技術として広く適用されており、大型のコレクションから出発して新規ポリペプチドバインダー、主にモノクローナル抗体(mAb)、抗体断片等を同定・単離するための手段及び方法となっている。モノクローナル抗体の産生には、ハイブリドーマ細胞株、即ち、抗体産生リンパ球と腫瘍細胞の融合により作製されるハイブリッド細胞株が必要である。1970年代にKoehlerとMilsteinにより創始されたハイブリドーマテクノロジーは、抗体ヒット創出において今もなお最先端である。しかし、シングルドメインとして又はコンビナトリアルライブラリーにおける断片として抗体遺伝子をクローニングした結果、より多くのよりスループットの高い抗体創出アプローチに辿り着いた。この「バーコーディング」は、数十億種に及ぶ異なるタンパク質変異体のバインダーを反復プロセスで高スループット同定により選択することができる鍵であったため、この開発により遺伝子型と表現型の相関の原理が生み出された。数種のディスプレイ技術は、より迅速で効率的な選択方法であることが明らかになっており、クローン同定と組み合わせて抗体スクリーニングプラットフォームの基盤となっているが、特に繊維状ファージの表面に機能的抗体断片を発現させる方法は、ファージディスプレイ法と呼ばれ、CambridgeのMcCaffertyとChiswell、La JollaのBarbas、及びHeidelbergのBreitlingとDuebelにより抗体断片のインビトロ選択に使用されている。ファージ以外に、非ファージディスプレイシステムを使用する選択方法も確立されており、精製抗原に好適なリボソームディスプレイ法とmRNAディスプレイ法、セルソーティングによる選択方法で適用されることが多い酵母ディスプレイライブラリー、更には類似宿主を適用する目的で治療開発に有利な哺乳動物ディスプレイ法が挙げられるが、増殖速度の遅さに検討の余地がある。各種アプローチに関する最近の報告については、例えば、Valdorf et al.(2021)を参照されたい。
【0003】
標的特異的バインダーの高スループット選択には、組換え抗体ライブラリー、汎用ライブラリー、ナイーブ(非免疫)ライブラリー又は免疫ライブラリーが適用される。免疫ライブラリーは、特異的標的選択を目的とするが、所謂「汎用ライブラリー」は、ナイーブアプローチ、合成アプローチ、及び半合成アプローチに細分することができ、新規バインダーを偏りなく選択することができる(Almagro et al.2019も参照)。反復選択ラウンドから個々のクローンを取得した後に、ELISAから免疫沈降法に至るまでの典型的な抗体結合アッセイを使用してポリペプチドバインダーの標的結合性と生物物理学的性質をスクリーニングする。組換えディスプレイライブラリーの選択の「ゴールデンスタンダード」から進化した代替選択方法は、Lakzaei et al.,(2018)により報告されている方法のように、ニーズに合わせてカスタマイズされたものが多く、同文献は、可溶性抗体捕捉を使用したジフテリア毒素バインダーのバイオパニング法を開示しており、天然エピトープを特異的に認識するバインダーを捕捉することができるが、依然として酸性溶出条件が必要であり、特定の着目コンフォメーションを選択するように制御できない。別の例は、陰陽バイオパニング法であり、粗抽出液に対してアフィニティ選択を行うことにより、抗原精製の必要性の問題を解決し、陽性ファージ選択の前に陰性選択(ブロッキング剤)を使用して特異性を得ている(Lim et al.2019)。
【0004】
治療に関連するAbの選択を可能にするディスプレイ技術の適用は、米国、ヨーロッパ又は中国の健康管理当局による膨大な数の市場承認治療薬の基盤となっている。この事実は、これらのプラットフォーム技術が創薬に有益な影響を及ぼすことを裏付けている。更に、抗体創出においてディスプレイ技術をマイクロフルイデックシステム及び/又は次世代シーケンシングと組み合わせることにより、例えば、機能的スクリーニングを実施することが可能になっており、治療分野における高スループット選択方法のツールボックス及びパイプラインを更に充実させることができる。ファージディスプレイ法又は代替方法、及び更に進化したプラットフォームを適用する従来の方法は、今日では、特に組換え抗体ライブラリーからポリペプチドバインダーを選択するために広く適用されるハイテクディスプレイ技術を提供しており、創薬に大きな可能性がある。しかし、標的抗原のコンフォメーションエピトープに対するバインダーを選択し、高スループット方式で適用した場合にバックグラウンドに対して効率及び特異性を高めるために、精製しにくい抗原に対して天然条件下で使用する等の所定の技術的ボトルネックに対処するには、まだ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Valdorf et al.(2021)
【非特許文献2】Almagro et al.2019
【非特許文献3】Lakzaei et al.,(2018)
【非特許文献4】Lim et al.2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、(以下に詳述するような)NANEXテクノロジー法が、精製抗原を必要とせずに生理的条件下で組換え抗体ライブラリーの選択とスクリーニングに適用可能であるという知見に基づく。
【0007】
ナノボディによる交換クロマトグラフィー(Nanobody-based exchange chromatography:別称NANEX)は、ナノボディ(Nb)による免疫置換精製方法であって、(PCT/EP2020/087291に従来記載されているように)標的上の同一エピトープ又は高度にオーバーラップするエピトープとの結合について競合する1対のNb(捕捉剤としてのトラッパー及び溶出剤としてのストリッパー)を使用してこの標的タンパク質を分析的に精製し、高親和性Nb(ストリッパー)と結合した少量の高純度タンパク質を得る方法を提供する。このような高度に選択的な1段階精製方法は、濃縮工程、透析又はタンパク分解を必要とせず、タンパク質捕捉及び溶出中に生理的条件を維持できるという利点がある。更に、特異的Nbを1種類しか入手できない場合に、NANEX精製方法でNbを抗原結合部分として使用すると、単一のバインダーから出発し、親和性がより低いか又は解離速度がより速い変異体(例えば、突然変異体)をデザインすることにより、1対を得ることもできる。
【0008】
本願は、NANEX精製方法をディスプレイライブラリー選択に統合すると、タンパク質標的が扱いにくい場合でも、温和な条件下でバインダーをスクリーニングするように選択手順を改善した強力なアプローチとなることを実証する概念証明に関する。偏りのないNbライブラリーを選択に使用した場合でも、特異的な高親和性標的バインダーが非常に効率的に同定された。標的タンパク質をNANEXによりトラップすると、標的に天然生理的条件を維持することができ、標的を複合体試料(例えば、生体試料)として提供することができるので、精製標的又は抗原が不要になり、標的の完全なプロテオームに対して産生されたポリペプチドバインダーから強力なバインダーを選別することができる新規な革新的抗体選択方法が得られた。従来の選択手順を使用してこのように効率的にこれを実現することはできないため、NANEXによるパニング又は選択方法は、厄介な標的の創薬又はツール作製における打開策として位置付けられる。より具体的には、この選択アプローチを使用すると、僅か2~3ラウンドの選択後に、種々の抗原の顕著で確実な濃縮が実証され、更に、この成功は、プロテオームワイドな免疫ライブラリーから選択した場合にそれらの細胞存在量から独立していた。また、(従来の選択では3ラウンド後に消失することが多い)少数のNbファミリーメンバーでも、天然タンパク質バインダーの数種のファミリーを同定することができた。可溶性タンパク質標的のバインダーの選択に加え、本発明者らは更に、膜タンパク質バインダースクリーニングの概念証明も実証すると共に、従来の選択方法では見落とされる場合もあるNbファミリーについて具体的に本願で示す新規バインダーの確実な単離も実証した。
【0009】
複数のタンパク質(例えば、Li et al.,2020ではトリパノソーマ・エバンシ(T.evansi)セクレトーム)に対する免疫ライブラリーが過去にラマで産生されているが、本発明者らは、プロテオームワイドなNbライブラリーを使用してNANEX精製ファージディスプレイ法により選択すると、試験した標的の大多数に対する標的特異的バインダーが得られることを意外にも見出し、この新規選択方法の選択能と信頼性を実証した。更に、例えば、内在的にGFPでタグ付けした酵母クローンをGFP特異的NANEXと併用する場合、又は内在性タンパク質エピトープに対するトラッパー/ストリッパー対を使用する場合には、全工程を通して精製抗原が不要になるという利点もあり、精製しにくい抗原が問題となる選択で実施するのに非常に魅力的である。
【0010】
したがって、この選択方法は、高度に特異的で従って選択的な標的タンパク質-ポリペプチドバインダー相互作用、及び/又はコンフォメーション特異的標的タンパク質バインダーを得られながら、生理的天然条件下で標的精製及びその後の特異的標的バインダーの選択が可能であり、いずれも高スループット条件下で可能であるという利点がある。更に、本願に示すGFP特異的トラッパー/ストリッパーのように、タグ付けした標的タンパク質で適用すると、単一のトラッパー/ストリッパー(又は捕捉剤/置換剤)対を使用した汎用選択プラットフォームが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本開示の第1の態様は、標的タンパク質と特異的に結合する複数のバインダー(例えば、ディスプレイライブラリー)からタンパク質バインダーを選択する方法に関し、NANEXを使用して捕捉剤(又は第1のタンパク質結合剤、別称トラッパー)と標的の固定化複合体を形成し、前記標的を前記複数の潜在的バインダーに提示し、前記捕捉剤とは異なる結合部位で前記標的と会合したタンパク質バインダーを選択することができる。その後、前記標的との結合について前記トラッパーとの競合に打ち勝ち、選択されたバインダーと関係付けて前記標的を緊密な標的-ストリッパー複合体として溶出させる溶出剤(又は第2のタンパク質結合剤、別称ストリッパー)を使用し、前記複合体を溶出させる。このようなNANEXによる選択手順の利点は、精製済みの標的タンパク質を必要とせずに、特定/天然コンフォメーションを維持しながら複合体天然環境から標的を捕捉できるという点と、従来の選択手順に比較して又はそれを補完して、より多くの/別のバインダーを選択により同定できるという点にある。
【0012】
前記選択方法は、 a)固定化されており、標的タンパク質と特異的に結合する第1のタンパク質結合剤と、標的タンパク質を含む試料を準備し、前記標的を前記第1のタンパク質結合剤と結合させた固定化複合体を得る工程と、 b)工程a)の前記固定化複合体に、複数のポリペプチドバインダーを含む溶液を加え、前記ポリペプチドバインダーを前記固定化標的タンパク質と特異的に結合させる工程と、
c)前記標的タンパク質と結合し、前記第1の結合剤との前記結合について競合する第2のタンパク質結合剤を含む溶液を工程b)の前記溶液に加え、前記標的タンパク質を置換し、前記標的タンパク質を前記溶液中に放出させる工程と、
d)前記標的タンパク質と結合した前記第2のタンパク質結合剤の溶出液を採取し、前記標的タンパク質と結合したポリペプチドバインダーを単離する工程とを含む。
【0013】
別の実施形態は、前記方法において、前記第2のタンパク質結合剤が、前記第1の結合剤よりも高い親和性及び/又は前記第1の結合剤の解離速度定数(koff値)に比較して同等以下のkoff値を有する方法に関する。別の実施形態は、前記方法において、前記第2及び/又は第1のタンパク質結合剤が、前記標的タンパク質と特異的に結合する抗原結合ドメインを含む方法に関する。より具体的には、前記第1及び/又は第2のタンパク質結合剤の抗原結合ドメインは、免疫グロブリンフォールドを含み、抗体若しくは活性抗体断片、シングルドメイン抗体、免疫グロブリンシングル可変ドメイン(ISVD)、VHH、ナノボディ、又は少なくとも2部位を介して足場タンパク質と融合したISVDとして定義される抗原結合性キメラタンパク質(別称メガボディ:MegaBody)であり、前記足場タンパク質ドメインは、HopQ、YgjK、又はその誘導体を含むことが好ましい。
【0014】
本願に記載する前記方法のいずれかの別の実施形態は、工程b)の複数のポリペプチドバインダーが、結合剤のディスプレイライブラリーとして提供される応用に関し、前記ライブラリーは、より具体的には、(モノクローナル)抗体、シングルドメイン抗体、Fab、ISVD、VHH若しくはナノボディ、又は任意のその活性断片である結合剤を発現・提示する組換え抗体ライブラリーを含むことができ、免疫ライブラリー、又は(半)合成ライブラリーを含むナイーブライブラリー等の非免疫ライブラリーが挙げられる。
【0015】
別の特定の実施形態において、本願に記載する前記方法は、当業者に既知のファージディスプレイ法を使用して実施される。あるいは、特定の構成又はライブラリーを適用し、酵母ディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、細菌ディスプレイ法、又は哺乳動物ディスプレイ法を使用して前記方法を実施する。
【0016】
標的タンパク質に特異的なポリペプチドバインダーの数を増大させることを目的とする他の特定の実施形態は、当技術分野でパニング法について知られていると同様に、ポリペプチドバインダーを選択する反復プロセスを適用する方法に関し、工程a)~d)を少なくとも1回、好ましくは2回以上繰り返し、前記反復プロセスを「xラウンド」の選択として表す。特に、ファージディスプレイライブラリーを使用する場合には、工程d)で採取されるファージを含む溶出液を再使用して大腸菌に感染させ、工程a)に戻す。
【0017】
別の実施形態において、本願に記載する方法は、特に、前記第1のタンパク質結合剤と共に前記標的タンパク質を固定化するための表面を含み、前記表面は、磁気ビーズ等の本願に例示するようなビーズを含むマトリックスを含み、あるいは、前記表面は、樹脂、クロマトグラフィー若しくはポリマーカラム、プレート構成、又はマイクロチップにより提供される。
【0018】
別の特定の実施形態は、前記方法において、前記標的タンパク質が、工程a)で複合体試料である試料中に存在する方法に関し、前記複合体試料は、生体物質、細胞溶解物、抽出物、可溶性プロテオーム、所定の細胞若しくは組織種のプロテオーム、又はタンパク質混合物の一部としての組換え標的タンパク質等の成分の混合物を含む。別の特定の実施形態は、前記複数のポリペプチドバインダーを得るために免疫原を適用する前記選択方法に関し、前記免疫原は、工程a)の前記標的タンパク質を含む前記試料と同一の種類及び組成を含む。例えば、前記免疫原は、組換え抗体ライブラリー等のディスプレイライブラリーを作製するために免疫で適用される細胞溶解物を含み、このような細胞溶解物は、工程a)で前記標的タンパク質を含む試料としても適用される。
【0019】
本願に記載する別の方法は、前記第1のタンパク質結合剤及び第2のタンパク質結合剤がタグと特異的に結合し、前記タグが前記標的タンパク質上に好ましくはN又はC末端異種タグとして存在する汎用方法に関する。好ましい1実施形態において、前記異種タグは、GFP特異的バインダーにより特異的に認識され、前記実施形態は、本願に記載する選択方法において、前記トラッパーが、少なくともCDR又は配列番号71のVHHの配列を含み、前記ストリッパーが、少なくともCDR又は配列番号70のVHHの配列を含む方法に関する。
【0020】
本願に記載する前記方法の別の実施形態は、工程d)で溶出させた前記タンパク質複合体と特異的に結合し、前記標的タンパク質と直接的又は間接的に結合するポリペプチドバインダーの選択を可能にする。より具体的には、トラッパー/ストリッパー結合部位とは異なる結合部位で前記標的タンパク質自体を認識するポリペプチドバインダーでは、前記標的との直接結合が得られ、前記標的タンパク質と融合したタグと結合するポリペプチドバインダー、又は工程a)で共捕捉され、(前記標的タンパク質を介して)前記固定化表面と結合している別のタンパク質若しくは成分と結合するポリペプチドバインダーでは、間接結合を得ることができる。したがって、前記間接ポリペプチドバインダーは、前記標的タンパク質の相互作用物質であるか又は前記標的タンパク質の異種融合パートナー/タグであるタンパク質又は成分と特異的に結合してこれを認識するバインダーを含むことができる。
【0021】
したがって、別の態様において、本発明は、前記第2のタンパク質結合剤を前記標的タンパク質と結合させたタンパク質複合体であり、工程d)で溶出されるタンパク質複合体にも関し、前記標的タンパク質は、更に少なくとも1種の別のタンパク質とも結合しており、本願に記載する方法により、前記複合体には、前記別のタンパク質と結合したポリペプチドバインダーも存在している。
【0022】
別の実施形態は、本願に記載する選択方法において、少なくとも2種類の異なる標的タンパク質を別々に又は融合若しくは架橋分子として含む試料を工程a)で準備し、これらの異なる標的タンパク質の各々の第1及び第2のタンパク質結合剤を夫々工程a)及びc)で加えることにより、前記少なくとも2種類の異なる標的タンパク質の並行選択を目的とする方法を提供する。
【0023】
標的又は抗原タンパク質に特異的なポリペプチドバインダーの別の選択方法は、上記方法の工程c)で前記混合物を準備する代替アプローチに関し、
a)複数のポリペプチドバインダー、好ましくはディスプレイライブラリーを含む試料と標的タンパク質試料を混合する工程と、
b)好ましくは表面に固定化されているか又は後で固定化される第1のタンパク質結合剤をa)の混合物に加えることにより、表面に固定化複合体を得る工程と、
c)前記標的タンパク質と結合し、前記第1の結合剤との前記結合について競合する第2のタンパク質結合剤を含む溶液を工程b)の前記溶液に加え、前記標的タンパク質を置換し、前記標的タンパク質を前記溶液中に放出させる工程と、
d)前記標的タンパク質と結合した前記第2のタンパク質結合剤の溶出液を採取し、前記標的タンパク質と結合したポリペプチドバインダーを単離する工程とを含む。
【0024】
特に、前記代替方法は、精製済みの標的タンパク質試料を使用できることが好ましい。前記方法の好ましい1実施形態において、前記第1及び/又は第2のタンパク質結合剤は、ナノボディを含む。
【0025】
本発明の最後の態様は、免疫ライブラリーからバインダーを選択するための、本願に提供する実施形態のいずれかに記載する方法の使用に関する。あるいは、標的タンパク質上のエピトープビニング用、又は新規エピトープ結合剤単離用としての、本願に提供する実施形態のいずれかに記載する方法の使用に関する。更に、本願に記載する方法の使用は、タンパク質バインダーの選択、特に抗体創出及び創薬における高スループット用途を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下の図面は単に概念図であり、発明を限定するものではない。図面中、構成要素によっては分かり易くするために寸法を誇張し、比率通りでないものもある。
図1】抗体ディスプレイライブラリーから標的特異的抗体を選択するためのナノボディ交換クロマトグラフィー(Nanobody exchange chromatography:NANEX)の使用の概念図。例えば、抗体等の標的特異的結合剤をディスプレイライブラリーから選択するために、ナノボディ交換クロマトグラフィーの原理を適用することができる。固相担体(本図では、ビーズ)と共有結合させた第1のナノボディ(トラッパー)を使用し、標的を固定化する。次に、表現型(結合挙動)とそれをコードする遺伝子型の物理的相関を提供するように発現・提示される種々の結合剤(例えば、抗体)の多様なレパートリー(本図では、ファージディスプレイライブラリー)とともに、固定化した標的をインキュベートする。無関係の結合剤又は抗体を除去するために、任意に洗浄工程を使用することができる。NANEXと同様に、特に本発明では、次にトラッパーと競合する第2のナノボディ(可溶性ストリッパー)を使用し、前記ストリッパー及び標的特異的結合ドメイン又は抗体とそれらをコードする遺伝子型と関係付けて、固定化した標的を選択的に溶出させる。
図2】NANEXを使用してGFPで第1ラウンド及び第2ラウンドの選択後の濃縮。実施例1に従ってナノボディディスプレイライブラリーからGFP特異的抗体を選択するために、ナノボディ交換クロマトグラフィー(NANEX)を使用した。GFPトラッパー(CA15816;配列番号2)を磁気ビーズとカップリングさせ、種々の濃度のGFPとともにインキュベートして抗原をトラップすることにより、種々のNANEXビーズを作製した。トラッパーを被覆したビーズのうち、GFPとともにインキュベートしなかったものを陰性対照として使用した。ライブラリーとともにインキュベーション後、GFP特異的ストリッパー(CA12760;配列番号1)又はトリプシンでファージを溶出させた。2ラウンドの選択を実施した。大腸菌に感染させることにより、各溶出からのアウトプットファージを回収し、Pardon et al.,(2014)に従ってこれらの細胞の段階希釈液を比較することにより、濃縮を評価した。
図3】バイオレイヤー干渉法によるGFP特異的ナノボディの競合結合解析。新規に創出されたGFP特異的ナノボディの結合特性をOctetRed(分子間相互作用解析装置)でバイオレイヤー干渉法(BLI)により解析した。ストレプトアビジンを被覆したOctet(R)バイオセンサーを使用し、ビオチン化GFP(100nM)を捕捉した。次に、プラトーに達するまで、ピコモルレベルのGFPストリッパー(CA12760;配列番号1)をGFPと結合させた。次に、(図面の凡例に指定するような)新規に創出された各NbにCA12760Nbを添加した溶液中で、CA12760で飽和させたこれらのバイオセンサーを個々にインキュベートした。0.1%のBSAと0.005%のTween20を添加した25mM HEPES(pH7.5),150mM NaClを使用し、室温にてアッセイを実施した。ストリッパー(AにおけるCA12760)又は無関係のNb(AにおけるCA8780)を除く全ナノボディ(AにおけるCA17517、CA17676、CA17518;BにおけるCA17674、CA17673、CA17519、CA17520、CA17675)は、センサーに明白な質量増加を生じ、ストリッパーのエピトープにオーバーラップしないエピトープと結合すると判断される。
図4】GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりプロテオームワイドな抗体ライブラリーから選択されたFBA1特異的ナノボディの特性決定。4種類のFBA1特異的ナノボディ(40=配列番号3に対応するNbクローンCA17440、以下同様に、41=CA17441-配列番号4、42=CA17442-配列番号5、43=CA17443-配列番号6)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各FBA1特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。EBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質としてFBA1を発現する人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション識別名:GFP(+)22,G1)の溶解物の存在下に、これらのFBA1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらの個々のビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、煮沸し、SDS-PAGEで分析した(A)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロット(B)をGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたFBA1の存在を確認した。
図5】GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりプロテオームワイドな抗体ライブラリーから選択されたPDC1特異的ナノボディの特性決定。2種類のPDC1特異的ナノボディ(51=配列番号7に対応するNbクローンCA17451、以下同様に、52=CA17452-配列番号8)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各PDC1特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。EBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質としてPDC1を発現する人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション識別名:GFP(+)12,F8)の溶解物の存在下に、これらのPDC1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEで分析した(A)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロット(B)をGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたPDC1の存在を確認した。
図6】GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりプロテオームワイドな抗体ライブラリーから選択されたSSA1特異的ナノボディの特性決定。6種類のSSA1特異的ナノボディ(60=配列番号19に対応するNbクローンCA17560、以下同様に、61=CA17561-配列番号20、62=CA17562-配列番号21、63=CA17563-配列番号22、64=CA17564-配列番号23、65=CA17565-配列番号24)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各SSA1特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。EBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質としてSSA1を発現する人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション識別名:GFP(+)10,E4)の溶解物の存在下に、これらのSSA1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEで分析した(A)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロット(B)をGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたSSA1の存在を確認した。
図7】GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりプロテオームワイドな抗体ライブラリーから選択されたPGI1特異的ナノボディの特性決定。3種類のPGI1特異的ナノボディ(55=配列番号15に対応するNbクローンCA17455、以下同様に、56=CA17456-配列番号16、57=CA17457-配列番号17)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各PGI1特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。EBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質としてPGI1を発現する人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション識別名:GFP(+)12,H11)の溶解物の存在下に、これらのPGI1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEで分析した(A)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロット(B)をGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたPGI1の存在を確認した。
図8】GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりプロテオームワイドな抗体ライブラリーから選択されたSIS1特異的ナノボディ、ALD6特異的ナノボディ、BMH1特異的ナノボディの特性決定。1種類のSIS1特異的ナノボディ(44=配列番号9に対応するNbクローンCA17444)と、3種類のALD6特異的ナノボディ(53=CA17453-配列番号10、54=CA17454-配列番号11、60=CA17460-配列番号12)と、2種類のBMH1特異的ナノボディ(58=CA17458-配列番号13、59=CA17459-配列番号14)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各標的特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。EBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質として標的を発現する人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション識別名SIS1:GFP(+)22,E5、ALD6:GFP(+)15,F1、BMH1:GFP(+)27,D5)の溶解物の存在下に、これらの標的特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEで分析した(A)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロット(B)をGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けした標的の存在を確認した。
図9】GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりプロテオームワイドな抗体ライブラリーから選択されたSXM1特異的ナノボディの特性決定。1種類のSXM1特異的ナノボディ(30=配列番号18に対応するNbクローンCA17530)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。SXM1特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。EBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質としてSXM1を発現する人工酵母株(GFP(+)04,H9)の溶解物の存在下に、このSXM1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEで分析した(A)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロット(B)をGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたSXM1の存在を確認した。
図10】酵母溶解物の可溶性画分に由来するPGI1バインダーを捕捉・固定化するためのNANEX。ビーズをPGI1特異的ナノボディCA17455クローン(配列番号15)で官能基化し、トラッパーとして使用した。CA17455で官能基化したビーズを次にEBY100溶解物の存在下に回転装置で4℃にて1時間インキュベートし、洗浄した。次に、これらのビーズを同一のPGI1特異的ナノボディの存在下に1時間インキュベートし、質量分析法により示されるように、数種の相互作用するタンパク質(LYS20 UniProt P48570、TDH3 UniProt P00359、PNC1 UniProt P53184)と関係付けて標的(PGI1)を溶出させた。
図11】GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりGR-LBD抗体ライブラリーから選択されたGR-LBD特異的ナノボディの特性決定。5種類のGR-LBD特異的ナノボディ(97=配列番号35に対応するNbクローンCA17797、以下同様に、98=CA17798-配列番号36、99=CA17799-配列番号37、00=CA17800-配列番号38、01=CA17801-配列番号39)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各GR-LBD特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。GFPでタグ付けしたタンパク質として全長GRを発現するGFP-GR(全長)遺伝子を組み込んだPCDNA3.1プラスミドをトランスフェクトした(DEXの添加下又は非添加下の)HEK293T溶解物の存在下に、これらのGR-LBD特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらの個々のビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、煮沸し、SDS-PAGEで分析した(図示せず)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをGR特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたGRの存在を確認した。NCは、陰性対照Nbを表す。GFP=27kDa;GFP-GR融合体=117kDa;GR(切断)=90kDa。
図12-1】NANEXを使用して94種類の異なるGFP-POIで第1ラウンド及び第2ラウンドの選択後の濃縮。実施例3に従ってプロテオームワイドな抗体ディスプレイライブラリーからPOI特異的抗体を選択するために、NANEXを使用した。GFPトラッパー(配列番号2に対応するCA15816)を磁気ビーズとカップリングさせ、96個の異なるウェルに分注した。GFP-POIを発現する人工酵母の種々の溶解物(表3)とともにNANEXビーズをインキュベートした。数回の洗浄工程後、ファージをウェルに加えた。ライブラリーとともにインキュベーション後、GFP特異的ストリッパー(配列番号1に対応するCA12760)でファージを溶出させた。2ラウンドの選択(AのR1及ぶBのR2)を実施した。大腸菌に感染させることにより、各溶出からのアウトプットファージを回収し、Pardon et al.(2014)に従ってこれらの細胞の段階希釈液を比較することにより、濃縮を評価した。本図は、表3に時系列で列挙する各ウェルのデータを示す(X軸の左から右に向かってA1~F12は94種類のGFP-標的の各々を表し、X軸の最後の試料であるG12とH12は対照を表す)。
図12-2】NANEXを使用して94種類の異なるGFP-POIで第1ラウンド及び第2ラウンドの選択後の濃縮。実施例3に従ってプロテオームワイドな抗体ディスプレイライブラリーからPOI特異的抗体を選択するために、NANEXを使用した。GFPトラッパー(配列番号2に対応するCA15816)を磁気ビーズとカップリングさせ、96個の異なるウェルに分注した。GFP-POIを発現する人工酵母の種々の溶解物(表3)の存在下でNANEXビーズをインキュベートした。数回の洗浄工程後、ファージをウェルに加えた。ライブラリーとともにインキュベーション後、GFP特異的ストリッパー(配列番号1に対応するCA12760)でファージを溶出させた。2ラウンドの選択(AのR1及ぶBのR2)を実施した。大腸菌に感染させることにより、各溶出からのアウトプットファージを回収し、Pardon et al.(2014)に従ってこれらの細胞の段階希釈液を比較することにより、濃縮を評価した。本図は、表3に時系列で列挙する各ウェルのデータを示す(X軸の左から右に向かってA1~F12は94種類のGFP-標的の各々を表し、X軸の最後の試料であるG12とH12は対照を表す)。
図13】GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりプロテオームワイドな抗体ライブラリーから選択されたPOI特異的ナノボディの特性決定。1種類のHSP104特異的ナノボディ(04=CA18504-配列番号40)と、1種類のMET6特異的ナノボディ(05=CA18505-配列番号41)と、2種類のSBA1特異的ナノボディ(08=配列番号42に対応するNbクローンCA18508、同様に、09=CA18509-配列番号43)と、1種類のSOD1特異的ナノボディ(10=CA18510-配列番号44)と、1種類のENO1特異的ナノボディ(38=CA17938-配列番号45)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各POI特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。GFPでタグ付けしたタンパク質としてPOIを発現する人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション識別名:GFP(+)05,A2(HSP104);GFP(+)07,D4(MET6);GFP(+)30,A6(SBA1);GFP(+)33,F8(SOD1)及びGFP(+)17,D12(ENO1))の溶解物の存在下に、これらのPOI特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEで分析し(図示せず)、ウェスタンブロットをGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたPOIの存在を確認した。
図14】PGI1特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりプロテオームワイドな抗体ライブラリーから選択されたPGI1特異的ナノボディの特性決定。6種類のPGI1特異的ナノボディ(91=配列番号46に対応するNbクローンCA17791、以下同様に、92=CA17792-配列番号47、93=CA17793-配列番号48、94=CA17794-配列番号49、95=CA17795-配列番号50、96=CA17796-配列番号51)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各PGI1特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。EBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質としてPGI1を発現する人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション識別名:GFP(+)12,H11)の溶解物の存在下に、これらのPGI1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEで分析した(A)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたPGI1の存在を確認した(B)。55=配列番号15に対応するNbクローンCA17455であり、PGI1のトラッパー/ストリッパーとして使用し、陽性対照とする。
図15】rVGLUT1特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりrVGLUT1抗体ライブラリーから選択されたrVGLUT1特異的ナノボディの特性決定。rVLGUT1特異的ナノボディ(25=配列番号53に対応するNbクローンCA18425)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。このrVGLUT1特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。cMyc-YFPでタグ付けしたタンパク質として全長rVGLUT1を発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T溶解物の存在下に、このrVGLUT1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、ビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、煮沸せずに、SDS-PAGEで分析した(図示せず)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをc-Myc特異的抗体で展開し、c-Mycでタグ付けしたrVGLUT1の存在を確認した。NCは、陰性対照Nbを表す。
図16】GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりシナプスプロテオーム抗体ライブラリーから選択されたrVGLUT1特異的ナノボディの特性決定。6種類のrVLGUT1-YFP特異的ナノボディ(24=配列番号54に対応するNbクローンCA18024、以下同様に、37=CA18437-配列番号55、38=CA18438-配列番号56、39=CA18439-配列番号57、40=CA18440-配列番号58、41=CA18441-配列番号59)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各rVGLUT1-YFP特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。c-Myc-YFPでタグ付けしたタンパク質として全長rVGLUT1を発現する遺伝子を組み込んだプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T溶解物の存在下に、これらのrVGLUT1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、ビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、煮沸せずに、SDS-PAGEで分析した(図示せず)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをc-Myc特異的抗体で展開し、c-Mycでタグ付けしたrVGLUT1の存在を確認した。NCは、陰性対照Nbを表す。
図17】mCherry特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりGFP-GR抗体ライブラリーから選択されたGR特異的ナノボディの特性決定。7種類のGR特異的ナノボディ(98=配列番号62に対応するNbクローンCA18498、以下同様に、99=CA18499-配列番号63、01=CA18501-配列番号64、02=CA18502-配列番号65、03=CA18503-配列番号66、85=CA18585-配列番号67、86=CA18586-配列番号68)を共免疫沈降アッセイにより特性決定した。各GR特異的ナノボディをNHS-アガロースビーズと共有結合させた。mCherryでタグ付けしたタンパク質として全長GRを発現するmCherry-GR(全長)遺伝子を組み込んだpcDNA3.1プラスミドをトランスフェクトしたHEK293T溶解物の存在下に、これらのGR特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらの個々のビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、煮沸し、SDS-PAGEで分析した(図示せず)。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをGR特異的抗体で展開し、GRの存在を確認した。NCは、陰性対照Nbを表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、所定の図面を参照しながら特定の実施形態について本発明を説明するが、本発明は以下の説明に制限されず、特許請求の範囲のみに制限される。特許請求の範囲に参照符号を記載する場合には、発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。当然のことながら、必ずしも全ての態様又は利点を本発明の特定の実施形態に従って達成できるわけではないと理解すべきである。したがって、例えば、本願に教示する一つの利点又は1群の利点を達成又は最適化するように、本発明を具体化又は実施することができ、必ずしも本願に教示又は示唆されている可能性のある他の態様又は利点を達成しなくてもよいことを当業者は認識する。本発明は、その特徴と利点を含め、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、最良に理解することができる。本発明の態様及び利点は、以下に記載する実施形態に関連して明瞭に理解されよう。本明細書の随所で「一つの実施形態」又は「1実施形態」と言う場合には、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の随所で種々の状況で「一つの実施形態において」又は「1実施形態において」なる文言が出現する場合には、必ずしも全てが同一の実施形態を指すものではないが、同一の実施形態を指す場合もある。同様に、本発明の代表的な実施形態の説明では、開示を簡素化すると共に発明の種々の態様の1種以上を理解し易くする目的で、本発明の種々の特徴をその単一の実施形態、図面又は説明にまとめている場合があることが理解されるべきである。しかし、この開示方法は、特許請求の範囲に記載する発明が各請求項に明記している以上の特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈すべきではない。
【0028】
定義
単数名詞に言及する際に例えば「a」又は「an」、「the」といった不定冠詞又は定冠詞を使用する場合には、特に指定しない限り、その名詞の複数形を含む。本明細書及び特許請求の範囲において、「含む」なる用語を使用する場合には、他の構成要素又は工程を排除するものではない。更に、本明細書及び特許請求の範囲において、第1、第2、第3等の用語は、同様の構成要素を区別するために使用するものであり、必ずしも逐次的又は時系列的順序を表すために使用するものではない。このように使用される用語は、妥当な状況下で交換可能であり、本願に記載する発明の実施形態は、本願に記載又は例証する以外の順序で実施することが可能であることが理解されるべきである。以下の用語又は定義は、単に本発明を理解し易くすることを目的とする。本願中で特に定義しない限り、本願で使用する全ての用語は、本発明の技術分野の当業者に使用されている意味と同一の意味である。当技術分野の定義と用語について、実施者は特に、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainsview,New York(2012);及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 114),John Wiley & Sons,New York(2016)を参照されたい。特に定義しない限り、本願で使用する全科学技術用語は、当技術分野(例えば、分子生物学、生化学、構造生物学、及び/又は計算生物学)における通常の知識を有する者に広く理解されていると同一の意味である。
【0029】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、「ペプチド」なる用語は、更に本願では交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーとその変異体及び合成アナログを意味する。例えば、トリプシン消化後にその元のタンパク質から誘導される部分アミノ酸配列を「ペプチド」と言う場合もある。つまり、これらの用語は、1個以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の化学的アナログ等の合成非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーと、天然アミノ酸ポリマーに適用される。この用語は、グリコシル化、リン酸化及びアセチル化等のポリペプチドの翻訳後修飾も含む。アミノ酸配列と修飾に基づき、ポリペプチドの原子質量若しくは原子量又は分子質量若しくは分子量は、(キロ)ダルトン(kDa)で表される。「タンパク質ドメイン」とは、タンパク質中の別個の機能的及び/又は構造的単位である。通常では、タンパク質ドメインは特定の機能又は相互作用を担い、タンパク質の全体的な役割に寄与する。ドメインは、多様な生物学的コンテキストで存在することができ、異なる機能をもつタンパク質に同様のドメインが存在する場合もある。
【0030】
「単離」又は「精製」とは、その天然状態において通常では付随している成分を実質的又は本質的に含んでいない材料を意味する。例えば、「単離ポリペプチド」又は「精製ポリペプチド」とは、天然状態でその両側に存在する分子から精製されたポリペプチドを意味し、例えば、産生宿主等の試料又は混合物中に存在し、前記ポリペプチドに隣接する分子から取り出されたポリペプチドバインダー、又は本願中に指定・開示する標的タンパク質を意味する。単離タンパク質又はペプチドは、アミノ酸化学合成により作製することもできるし、組換え生産又は複合体試料からの精製により作製することもできる。
【0031】
本願で使用する「~に融合」なる用語は、本願では「~に連結」、「~にコンジュゲーション」、「~にライゲーション」と交換可能に使用され、特に、例えば組換えDNA技術による「遺伝子融合」と、標的タンパク質と共有結合させた異種タグ等の安定した共有結合的連結を生じる「化学的及び/又は酵素的結合」を意味する。
【0032】
タンパク質の「ホモログ」、「ホモログ類」とは、未修飾の当該タンパク質に対してアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入があり、それらの元の未修飾タンパク質と同様の生物学的及び機能的活性を有するペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び酵素を包含する。本願で使用する「アミノ酸一致度」なる用語は、複数の配列が比較枠においてアミノ酸ベースで同一である程度を意味する。したがって、「配列一致度百分率」は、2つの最適に整列された配列を比較枠において比較し、同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys及びMetであり、本願では1文字コードで表す場合もある)が両方の配列に存在する位置数を調べてマッチした位置数を求め、このマッチした位置数を比較枠内の総位置数(即ち枠サイズ)で割り、得られた数値に100を掛けて配列一致度百分率を求めることにより計算される。本願で使用する「置換」、又は「突然変異」、又は「変異体」は、1個以上のアミノ酸又はヌクレオチドが親タンパク質又はその断片のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列と比較して夫々別のアミノ酸又はヌクレオチドで置き換えられる結果として生じる。タンパク質又はその断片は、タンパク質の活性に実質的に全く影響を与えない保存的アミノ酸置換を有する場合もあることが理解される。
【0033】
「野生型」なる用語は、天然源から単離された遺伝子又は遺伝子産物を意味する。野生型遺伝子は、集団中に最も高頻度で認められる遺伝子であり、したがって、任意にこの遺伝子の「正常」又は「野生型」形態と呼ばれる。他方、「改変」、「突然変異体」、「人工」又は「変異体」なる用語は、野生型遺伝子又は遺伝子産物と比較した場合に配列の修飾、翻訳後修飾及び/又は機能的性質(即ち特性改変)を示す遺伝子又は遺伝子産物を意味する。なお、天然突然変異体を単離することもでき、これらは、野生型遺伝子又は遺伝子産物と比較した場合に特性が改変されているという事実により同定される。
【0034】
「結合部位」なる用語は、その形状及び電荷の結果として、別の化学物質、化合物、タンパク質、ペプチド、抗体又はNbと優先的に会合する分子又は分子複合体の領域を意味する。抗体関連分子に関して、「エピトープ」又は「コンフォメーションエピトープ」なる用語も、本願では交換可能に使用される。「ポケット」なる用語は、限定されないが、裂け目、チャネル又は部位を含む。「結合ポケット/部位の部分」又は「部分的にオーバーラップするエピトープ」なる用語は、結合ポケット、結合部位又はエピトープを規定するアミノ酸残基の全部よりも少ないことを意味する。例えば、結合ポケットを構成する残基の原子座標は、結合ポケットの化学的環境を定義するのに明確な場合もあるし、これらの残基と相互作用し得る阻害剤の断片を設計するのに有用な場合もある。例えば、残基の部分は、標的タンパク質結合に役割を果たす主要な残基でもよいし、空間的に関連し、結合ポケットの三次元区画を規定するか、又はコンフォメーション機能を付与する残基でもよい。本願で使用する「隣接する」又は「最小限にオーバーラップする」結合部位とは、夫々「オーバーラップしない(が、付近の部位と結合する)アミノ酸」、又は結合するアミノ酸残基におけるオーバーラップが最大で約30%であることを意味する。本願で使用する「エピトープ」とは、標的分子上の結合部位又は結合ポケットを構成するポリペプチドの抗原決定基を意味する。標的タンパク質上の前記エピトープは、結合剤の結合に必須の少なくとも1個のアミノ酸を含んでいればよいが、エピトープに固有の空間コンフォメーションで少なくとも3個のアミノ酸を含むことが好ましい。一般に、エピトープは少なくとも4個、5個、6個、7個のこのようなアミノ酸からなり、より一般には、少なくとも8個、9個、10個のこのようなアミノ酸からなる。アミノ酸の空間コンフォメーションを決定する方法は、当技術分野で既知であり、例えば、X線結晶構造解析法、多次元核磁気共鳴法、クライオEM法、水素重水素交換(HDX)-MS、架橋質量分析法(XL-MS)、エピトープビニングが挙げられ、あるいは、使用頻度は低いが、中性子散乱法、X線自由電子レーザー(XFEL)又は小角中性子散乱法(SANS)及び小角X線散乱(SAXS)技術も挙げられる。本願で使用する「コンフォメーションエピトープ」とは、ポリペプチドの折り畳まれた三次元コンフォメーションに固有の空間コンフォメーションでアミノ酸を含むエピトープを意味する。一般に、コンフォメーションエピトープは、直線状配列では不連続であるが、タンパク質の折り畳み構造では集合するアミノ酸からなる。一方、コンフォメーションエピトープは、(変性状態では存在しない)ポリペプチドの折り畳まれた三次元コンフォメーションに固有のコンフォメーションをとる直線状配列のアミノ酸からなる場合もある。タンパク質複合体において、コンフォメーションエピトープは、1個以上のポリペプチドの直線状配列では不連続なアミノ酸からなるが、個々の折り畳まれたポリペプチドがユニークな四次構造で会合すると、これらのポリペプチドは集合する。同様に、コンフォメーションエピトープは、本願では1個以上のポリペプチドの直線状配列のアミノ酸からなり、ポリペプチドが集合して四次構造に固有のコンフォメーションをとる場合もある。タンパク質の「コンフォメーション」又は「コンフォメーション状態」なる用語は、一般にタンパク質が任意の時点でとり得る構造の範囲を意味する。コンフォメーション又はコンフォメーション状態の決定要因としては、(修飾アミノ酸を含む)タンパク質のアミノ酸配列で反映されるタンパク質の一次構造、及びそのタンパク質の周囲の環境が挙げられることを当業者は認識する。タンパク質のコンフォメーション又はコンフォメーション状態は、タンパク質二次構造(例えば、特にαヘリックス、βシート)、三次構造(例えば、ポリペプチド鎖の三次元フォールディング)、及び四次構造(例えば、ポリペプチド鎖と他のタンパク質サブユニットの相互作用)等の構造的特徴も意味する。特にリガンド結合、リン酸化、硫酸化、グリコシル化、又は疎水性基の結合等のポリペプチド鎖の翻訳後及び他の修飾は、タンパク質のコンフォメーションに影響を与える可能性がある。更に、周囲溶液のpH、塩濃度、イオン強度及びオスモル濃度等の環境因子と、他のタンパク質及び補因子等との相互作用も、タンパク質コンフォメーションに影響を与える可能性がある。タンパク質のコンフォメーション状態は、活性又は別の分子との結合の機能的アッセイにより決定することもできるし、特にX線結晶構造解析法、NMR又はスピンラベル法等の物理学的方法により決定することもできる。タンパク質コンフォメーション及びコンフォメーション状態に関する一般的論考については、Cantor and Schimmel,Biophysical Chemistry,Part I:The Conformation of Biological.Macromolecules,.W.H.Freeman and Company,1980、及びCreighton,Proteins:Structures and Molecular Properties,W.H.Freeman and Company,1993を参照されたい。
【0035】
「結合」とは、直接又は間接を問わずにあらゆる相互作用を意味する。直接相互作用は、結合パートナー間の接触を伴う。間接相互作用とは、3分子以上の複合体において相互作用パートナー同士が相互作用するようなあらゆる相互作用を意味する。相互作用は、1個以上の架橋分子を介する完全な間接相互作用とすることもできるし、パートナー間に直接接触があるが、1分子以上の別の相互作用により安定化される部分的な間接相互作用とすることもできる。本願で使用する「特異的に結合する」なる用語は、特定の標的を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識しないか又はこれと結合しない結合ドメインを意味する。特異的結合は、排他的結合を意味しない。一方、特異的結合は、タンパク質がそのバインダーの1種又は少数種に対してある程度高い親和性又は優先性を有することを意味する。本願で使用する「親和性」なる用語は一般に、それらの結合により形成される複合体の存在に向けて単一タンパク質単量体の平衡をシフトさせるように、リガンド、化学物質、タンパク質又はペプチドが別の(標的)タンパク質又はペプチドと結合する程度を意味する。親和性は一般的に、生体分子相互作用の強度を評価・序列するために使用される平衡解離定数(K)により測定・報告される。抗体とその抗原との結合は、可逆的プロセスであり、結合反応の速度は、反応体の濃度に比例する。平衡状態において、[抗体][抗原]複合体形成の速度は、その成分である[抗体]+[抗原]への解離速度に等しい。平衡又は親和性定数(1/K)を定義するためには、反応速度定数の測定値を使用することができる。簡単に言うと、K値が小さいほど、その標的に対する抗体の親和性は大きい。反応の両方向の速度定数は、以下の通りである。会合反応速度定数(kon)は、抗体がその標的と如何に迅速に結合するかを特徴付けるために使用される定数である「結合速度」(kon)を計算するために使用される反応の部分である。逆に、解離反応速度定数(koff)は、抗体がその標的から如何に迅速に解離するかを特徴付けるために使用される定数である「解離速度」(koff)を計算するために使用される反応の部分である。本願に示す測定値において、傾きが緩いほど、解離速度は遅く、抗体結合は強い。逆に、下降が急になるほど、解離速度は速く、抗体結合は弱くなる。実験により測定した解離速度と結合速度の比(koff/on)を使用し、K値を計算する。したがって、Kは、標準誤差を考慮し、使用するアッセイから独立した数値とみなされるが、結合速度及び解離速度を測定し、そのKを計算する方法としては、数種の決定方法が当業者に知られている。
【0036】
「結合剤」、又は「結合因子」は、本願では交換可能に使用され、別の分子と結合することが可能な分子を意味し、前記結合は、特異的であることが好ましく、特定の結合部位、ポケット又はエピトープを認識する。結合剤は、任意の種類又は型とすることができ、その起源に依存しない。結合剤は、化学的に合成してもよいし、自然に存在するものでもよいし、組換え生産(及び精製)してもよいし、デザイン・合成生産してもよい。したがって、前記結合剤は、特に、低分子、化学薬品、ペプチド、ポリペプチド、抗体、又はペプチドミメティック、抗体ミメティック、活性断片、化学的誘導体等のその任意誘導体とすることができる。結合は、共有結合的又は非共有結合的連結により得ることができる。
【0037】
「抗体」なる用語は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン(Ig)分子又は免疫グロブリン(Ig)ドメインを含む分子を意味する。抗体は、更に、天然源又は組換え源に由来する無傷の免疫グロブリンとすることができ、また、無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分とすることができる。「活性抗体断片」なる用語は、それ自体で抗原決定基又はエピトープに対する親和性が高く、このような特異性の原因となる1個以上のCDRを含む任意の抗体又は抗体様構造の一部を意味する。非限定的な例としては、免疫グロブリンドメイン、Fab、F(ab)’2、scFv、重鎖-軽鎖二量体、免疫グロブリンシングル可変ドメイン(ISVD)、ナノボディ(又はVHH抗体)、ドメイン抗体、及び完全軽鎖や完全重鎖等の1本鎖構造が挙げられる。
【0038】
本願で使用する「抗体断片」及び「活性抗体断片」又は「機能的変異体」なる用語は、標的タンパク質と特異的に結合するために必要なCDR及び/又は構造特徴を含む免疫グロブリンドメイン又は抗原結合ドメインを含むタンパク質を意味する。抗体は、一般的に免疫グロブリン分子の四量体である。「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」、又はより具体的には「免疫グロブリン可変ドメイン」(略称「IVD」)なる用語は、当技術分野及び以下の文中で夫々「フレームワーク領域1」又は「FR1」、「フレームワーク領域2」又は「FR2」、「フレームワーク領域3」又は「FR3」、及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」と称する4個の「フレームワーク領域」と、これらのフレームワーク領域の間に配置され、当技術分野及び以下の文中で夫々「相補性決定領域1」又は「CDR1」、「相補性決定領域2」又は「CDR2」、及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」と称する3個の「相補性決定領域」又は「CDR」とから本質的になる免疫グロブリンドメインを意味する。したがって、免疫グロブリン可変ドメインの一般構造又は配列は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4として表すことができる。免疫グロブリン可変ドメイン(IVD)は、抗原結合部位を有することにより、抗原に対する特異性を抗体に付与する。一般的に、従来の免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)が相互作用して抗原結合部位を形成する。この場合には、VHとVLの両方の相補性決定領域(CDR)が抗原結合部位に寄与し、即ち、合計6個のCDRが抗原結合部位形成に関与する。上記定義に鑑みると、従来の4本鎖抗体(例えば当技術分野で既知のIgG、IgM、IgA、IgD又はIgE分子)、又はこのような従来の4本鎖抗体に由来する(いずれも当技術分野で既知の)Fab断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合で連結されたFv断片若しくはscFv断片等のFv断片、若しくはダイアボディの抗原結合ドメインは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメイン等の1対の(会合した)免疫グロブリンドメイン、即ち、免疫グロブリンドメインのVH-VL対により抗原の夫々のエピトープと結合し、これらの免疫グロブリンドメインが一緒になって夫々の抗原のエピトープと結合する。本願で使用する免疫グロブリンシングル可変ドメイン(ISVD)とは、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のフォーマットに従って4個のフレームワーク領域(FR)及び3個の相補性決定領域(CDR)を含むアミノ酸配列を有するタンパク質を意味する。本発明の「免疫グロブリンドメイン」とは、「シングル可変ドメイン」なる用語と同義である「免疫グロブリンシングル可変ドメイン」(略称「ISVD」)を意味し、抗原結合部位が単一の免疫グロブリンドメインに存在し、このドメインにより形成されている分子を定義する。これは、2個の免疫グロブリンドメイン、特に2個の可変ドメインが相互作用して抗原結合部位を形成する「従来の」免疫グロブリン又はその断片とは異なる免疫グロブリンシングル可変ドメインを意味する。免疫グロブリンシングル可変ドメインの結合部位は、単一のVH/VHH又はVLドメインにより形成される。そのため、免疫グロブリンシングル可変ドメインの抗原結合部位は3個以下のCDRにより形成される。したがって、単一の抗原結合単位(即ち、単一の抗原結合ドメインが機能的抗原結合単位を形成するために別の可変ドメインと相互作用する必要がないように、本質的にシングル可変ドメインからなる機能的抗原結合単位)を形成することができる限り、シングル可変ドメインは、軽鎖可変ドメイン配列(例えばVL配列)又は適切なその断片でもよいし、重鎖可変ドメイン配列(例えばVH配列又はVHH配列)又は適切なその断片でもよい。本発明の1実施形態において、免疫グロブリンシングル可変ドメインは、重鎖可変ドメイン配列(例えばVH配列)であり、より具体的には、免疫グロブリンシングル可変ドメインは、従来の4本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列又は重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列とすることができる。例えば、免疫グロブリンシングル可変ドメインは、(シングル)ドメイン抗体(又は(シングル)ドメイン抗体として使用するのに適したアミノ酸配列)でもよいし、「dAb」又はdAb(又はdAbとして使用するのに適したアミノ酸配列)でもよいし、ナノボディ(本願で定義する通りであり、限定されないが、VHHが挙げられる)でもよいし、他のシングル可変ドメインでもよいし、そのいずれか1種の任意の適切な断片でもよい。特に、免疫グロブリンシングル可変ドメインは、(本願で定義する)ナノボディ又は適切なその断片とすることができる。なお、ナノボディ(Nanobody(R)、Nanobodies(R))及びナノクローン(Nanoclone)(R)は、Ablynx N.V.(Sanofi Company)の登録商標である。ナノボディの一般説明については、以下の詳細な説明と、そこに引用する従来技術に言及されており、例えばWO2008/020079に記載されている。「VHHドメイン」は、VHH、VHHドメイン、VHH抗体断片、及びVHH抗体とも称され、当初は「重鎖抗体」(即ち、「軽鎖のない抗体」;Hamers-Casterman et al(1993)Nature 363:446-448)の抗原結合免疫グロブリン(Ig)(可変)ドメインと記載されていた。「VHHドメイン」なる用語は、従来の4本鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(本願では「VHドメイン」と言う。)と、従来の4本鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメイン(本願では「VLドメイン」と言う。)からこれらの可変ドメインを区別するために選択された。VHH及びナノボディの詳細な説明については、Muyldermansによる総説論文(Reviews in Molecular Biotechnology 74:277-302,2001)と、一般的な背景技術として引用する以下の特許出願、即ちVrije Universiteit Brussel名義のWO94/04678、WO95/04079及びWO96/34103;Unilever名義のWO94/25591、WO99/37681、WO00/40968、WO00/43507、WO00/65057、WO01/40310、WO01/44301、EP1134231及びWO02/48193;Vlaams Instituut voor Biotechnologie(VIB)名義のWO97/49805、WO01/21817、WO03/035694、WO03/054016及びWO03/055527;Algonomics N.V.及びAblynx N.V.名義のWO03/050531;National Research Council of Canada名義のWO01/90190;Institute of Antibodies名義のWO03/025020(=EP1433793);並びにAblynx N.V.名義のWO04/041867、WO04/041862、WO04/041865、WO04/041863、WO04/062551、WO05/044858、WO06/40153、WO06/079372、WO06/122786、WO06/122787及びWO06/122825に言及されており、更にAblynx N.V.名義の他の公開特許出願にも言及されている。これらの文献に記載されているように、ナノボディ(特に、VHH配列と部分的にヒト化されたナノボディ)は、特にフレームワーク配列の1個以上における1個以上の「ホールマーク残基」の存在により特徴付けることができる。IVDのアミノ酸残基のナンバリングには、種々のナンバリングスキームを適用することができる。例えば、ラクダ類に由来するVHHドメインに適用されているように、Honegger,A.and Plueckthun,A.(J.Mol.Biol.309,2001)により提案されている全重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)のAHoナンバリングスキームに従ってナンバリングを実施することができる。VHドメインのアミノ酸残基のナンバリング方法として、同様にVHHドメインに適用することができる代替方法も当技術分野で知られている。例えば、Riechmann,L.and Muyldermans,S.,231(1-2),J Immunol Methods.1999の論文でラクダ類に由来するVHHドメインに適用されているようなKabatナンバリングシステムを使用することにより、FR配列及びCDR配列の区画化を行うことができる。なお、Vドメイン及びVHHドメインについて当技術分野で周知の通り、CDRの各々におけるアミノ酸残基の総数は種々の数値をとることができ、Kabatナンバリングにより指定されるアミノ酸残基の総数に一致しなくてもよい(即ち、Kabatナンバリングによる1箇所以上の位置が、実際の配列に占められていなくてもよいし、実際の配列が、Kabatナンバリングにより見込まれる数よりも多数のアミノ酸残基を含んでいてもよい)。つまり、一般に、Kabatによるナンバリングは、実際の配列におけるアミノ酸残基の実際のナンバリングに対応していてもよいし、対応していなくてもよい。VHドメイン及びVHHドメインにおけるアミノ酸残基の総数は、通常では110~120、多くの場合には112~115の範囲となるものである。なお、この範囲よりも短い配列及び長い配列も本願に記載する目的に適切な場合もある。MacCallum et al.(J.Mol.Biol.(1996)262,732-745)に記載されているような接触解析と結合部位トポグラフィーに基づく指定等の種々の方法に従い、CDR領域の決定を行ってもよい。あるいは、AbM(AbMは、http://www.bioinf.org.uk/abs/index.htmlに記載されているようなOxford Molecular Ltd.の抗体モデル化パッケージである)、Chothia(Chothia and Lesk,1987;Mol Biol.196:901-17)、Kabat(Kabat et al.,1991;5th edition,NIH publication 91-3242)、IMGT(LeFranc,2014;Frontiers in Immunology.5(22):1-22)、並びに/又はaHo、Gelfand、及びHoneggerを含む代替アノテーション(例えば、参考のために、Dondelinger et al.2018,Front Immunol 9:2278参照)に従い、CDRのアノテーションを行ってもよい。前記アノテーションは、更に免疫グロブリンドメインを含むタンパク質におけるCDR領域及びフレームワーク領域(FR)の区画化を含み、当業者に既知の方法及びシステムであるため、当業者は、過度の負担を伴わずにこれらのアノテーションを任意の免疫グロブリンタンパク質配列に適用することができる。これらのアノテーションは、相互に若干異なるが、各々標的との結合に関与するループの領域を含むように意図している。本願中でCDRに言及する場合には、上記アノテーションの少なくとも1種を適用可能であり、IMGTアノテーションが好ましい。
【0039】
VHH又はNbは、B細胞成熟中に同一祖先に由来するクローンの近縁配列をクラスタリングできるように、種々の配列ファミリー又はスーパーファミリーにグループ分けされることが多い(Deschaght et al.2017.Front Immunol.10;8:420)。このグループ分けは、NbのCDR配列に基づいて行われることが多く、例えば、各Nbファミリーは、CDR3領域の配列一致度閾値を有する(クローンの)近縁配列のクラスターとして定義される。したがって、本願に定義する単一のVHHファミリー内で、CDR3配列は、アミノ酸組成が同一であるか又は非常によく似ており、CDR3配列の長さが等しく、一致度が少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%であることが好ましく、その結果、同一の結合部位と結合して同一の効果又は機能的影響を有する同一ファミリーのNbが得られる。
【0040】
本願で使用する「判定する」、「測定する」、「評価する」、「同定する」、「スクリーニングする」、及び「アッセイする」なる用語は、交換可能に使用され、定量的測定と定性的測定の両方を含む。
【0041】
詳細な説明
本発明は、複数のバインダー、特にタンパク質バインダーのライブラリーから着目タンパク質に特異的なポリペプチドバインダーを同定するための新規選択アプローチに関し、第一に、表面にカップリングさせた第1のタンパク質結合剤と結合させることにより、標的タンパク質を単離・固定化するために、NANEXによるアフィニティ置換法を統合し、第二に、標的タンパク質との複合体にポリペプチドバインダーを溶出させるために、NANEXのアフィニティ置換原理概念を利用する。この統合選択方法は、組換え抗体ライブラリースクリーニングにおける中~高スループットアプローチを提供すると共に、ディスプレイ技術の能力を補完する高い選択性を提供する。当初に確立されたナノボディ交換クロマトグラフィー(NANEX)に関する以下の説明から明らかな通り、この新規方法は、組換え抗体ライブラリー選択及びパニングの分野におけるアプローチとして最初であり、NANEXシステムに固有のいくつかの利点がある。更に、ファージディスプレイ法を使用する(従来の)インビトロ選択方法では、バイオパニング中に固定化抗原に曝露して抗原特異的ファージ抗体をそれらの標的と結合させた後、抗原と結合したファージを回収し、その後、細菌に感染させることにより、選択を行うが、この新規アプローチは、このようなインビトロ選択方法に勝るいくつかの利点及び改善点を提供する。大半のインビトロ選択方法は、精製抗原に依存しており、固定化した標的からファージを溶出させるために過酷な条件(高塩濃度、極度のpH、タンパク質分解)を必要とする。これに対して、NANEXによる選択では、天然試料から複合体抗原をトラップして固定化し、次にファージライブラリーを適用した後、抗原と結合したファージを標的特異的に取り出すことができ、この全ての操作を完全に天然条件下で実施できる。NANEXによると、トラッパー-ストリッパー対にオーバーラップしないエピトープと結合するNbを弁別的に選択することもできる。
【0042】
NANEXアフィニティ置換
(本願で「NANEX」と呼び、PCT/EP2020/087291に従来記載されている方法に基づく)ナノボディ交換クロマトグラフィー法とは、アフィニティ置換クロマトグラフィーによるタンパク質の精製であり、微小な抗原結合部分を利用することにより、好ましい動的コンテキストを確立する方法を意味する。特に、相互に競合するように標的上のエピトープと特異的に結合する1対の標的特異的タンパク質結合剤を相補的な動的コンテキストで使用する。同一標的に対する1対のバインダーは、競合するか又はオーバーラップしない結合部位を含むことができ、あるいは、オーバーラップしないか又は異なるエピトープに異なる結合部位を含むことができる。一般的に、アフィニティ置換は、所定の用量関係及び動的関係内でバインダー対を介する一過的サンドイッチ複合体により行われる。しかし、同一のエピトープ又はオーバーラップするエピトープを有する1対を使用する場合には、結合剤の結合動態及び種類がクロスブロック又は置換間のバランスに影響を与える。NANEXでは、免疫グロブリンシングル可変ドメイン(ISVD)、又はより具体的にはNbに基づく抗原結合ドメインを置換剤として使用するときに、第2のタンパク質結合剤の解離速度定数(koff)が第1のタンパク質結合剤よりも低いならば、標的タンパク質上のトラッパーと同一のエピトープ又は大きくオーバーラップし、したがって競合するエピトープの標的化が最も効率的に得られることが分かった。更に、純粋にそれらの競合性に基づき、ナノボディ等の同一の結合剤を結合(又はトラッピング)及び溶出(又はストリッピング)に使用して標的を精製し、溶出画分中に(準最適の)満足な収率の精製タンパク質を得ることができる。本願に記載する選択方法等の高スループット用途では、標的と結合するトラッパーとの競合に完全に打ち勝つことが可能な結合剤が所望されるが、このような結合剤を探し求める場合には、同一のエピトープに対する(モノクローナル抗体等の)従来の抗体バインダーを使用すると、如何なる置換反応もほぼブロックされることが分かり、競合によるエピトープのこのようなブロックを避けるために、トラッパーに比較して隣接するエピトープ又は最小限にオーバーラップするエピトープと結合する抗体等のタンパク質結合剤を使用せざるを得ないであろう。しかし、NANEXを使用すると、第1のタンパク質結合剤と同一のエピトープ又は実質的に同一のエピトープ又は大きくオーバーラップするエピトープと結合するストリッパーとしてISVDを含む第2のタンパク質結合剤が少なくとも提供され、前記ISVDを含む第2のタンパク質結合剤のほうが、解離速度定数(koff)が低いため、第1のタンパク質結合剤の非常に効率的な置換が得られ、標的タンパク質を高い収率及び高い特異性で溶出させることができる。このように、ISVD型の抗原バインダーは、コンパクトであるが、高度に特異的であるため、別の抗原結合タンパク質を効率的に置換するために競合結合モードの動的関係を提供し、(ISVDではCDRが3個であるが、6個のCDRからの残基から構成される)大型の抗原結合部位/パラトープを有する大型の従来の抗体よりも有利である。また、標的タンパク質と結合した複数のバインダーに由来するポリペプチドバインダーが、標的タンパク質との複合体に留まることができ、ストリッパー-標的複合体と共溶出させることができるので、この反応は、温和な生理的条件下で実施できるにも拘わらず、効率的に溶出できるため、本願に記載する選択方法に統合するのに完全に適している。このように、NANEXをこの新規選択アプローチに統合することにより、本願で設定されるNANEXによる精製条件と選択条件を組み合わせた結果、特に抗体創薬において、ポリペプチドバインダーの次世代の改良型選択に繋がった。実際に、本願に例示する結果によると、統合NANEX選択方法は、提示されたポリペプチドバインダーを従来のパニングによる選択方法に比較してより効率的で綿密な方式で確実且つ着実に選択できることが明白に判明した。
【0043】
「ISVDによる置換」、又はより具体的には、「ナノボディ交換」若しくは「ナノボディ交換クロマトグラフィー」若しくは「NANEX」とは、本願では交換可能に使用され、従来では、簡易な高純度タンパク質複合体溶出用の分析的精製に主に利用されていたが、本願では、抗体創薬及び標的-バインダー同定アプローチで利用される。このように、Nbによるトラッパー/ストリッパーは、同一のエピトープ又は高度にオーバーラップするエピトープについて競合し、異なるエピトープで他のバインダーを妨害しない高親和性バインダーを提供するので、この新規選択方法の強みは、標的を提示するためにNANEXを使用することにある。このため、新規又は別のエピトープのバインダーを見出すことができるのみならず、(特定のコンフォメーションで標的をロックするトラッパー/ストリッパーを使用する場合には)標的の所定のコンフォメーションのバインダーを見出すこともできる。
【0044】
このように、NANEX精製を使用する場合には、溶出複合体は、ストリッパー又は置換剤を含むので、ISVDを含む第2のタンパク質結合剤(ストリッパーと呼び、ナノボディの場合には、ナノストリッパーと呼ぶ)を適用でき、更に前記第2のタンパク質結合剤を官能基化し、即ち、溶出させるタンパク質複合体に特定の機能を付与できるという利点がある。このような官能基化は、(蛍光又は結合剤の標識による)タンパク質複合体の可視化を意味する場合もあるし、例えば、官能基化した複合体中の標的を溶出させるために、シャペロン又はアダプタータンパク質(限定されないが、例えば、メガボディ)としての機能を意味する場合もある(下記も参照)。更に、溶出工程と再生操作後に、(磁気)ビーズ、カラム、プレートのウェル又は樹脂等の任意種類の表面とすることができるアフィニティマトリックスを、次のアフィニティ精製及び/又は選択サイクルに準備し、スクリーニングプラットフォーム、チップ、又はマイクロフルイディクス構成若しくは装置等の高スループットプラットフォームで使用することができる。
【0045】
本願に記載するNANEX又はナノボディ交換クロマトグラフィーを統合した選択方法を使用することにより、扱いにくいタンパク質又は精製しにくいタンパク質等の数種の標的類のバインダーの高スループット選択において飛躍的な前進を予見することができる。更に、トラッパーにより安定化コンフォメーション、活性/不活性コンフォメーション、より具体的には、アゴニスト、部分アゴニスト又はバイアス型アゴニストコンフォメーション等の所定のコンフォメーション状態に固定された抗原又は標的をコンフォメーション選択的に認識するタンパク質結合剤を選択することができる。あるいは、本願に記載するこの選択方法で、GFP等の異種タグのNANEXトラッパー/ストリッパーを使用する場合には、汎用高スループット選択プラットフォームを開発することができ、自動化された効率の高い抗体スクリーニングテクノロジーに更に利点が加わる。バイオテクノロジーにおけるこの種のテクノロジーの急速な進歩に伴い、本発明は、新規治療薬スクリーニングの効率及び可能性に強い影響を与え、プロテオミクス、MS分析、構造分析及び他の分析のスループット及び可能性を増大すると予見できる。
【0046】
ポリペプチドバインダーのNANEXによる選択
したがって、標的タンパク質に特異的なポリペプチドバインダーの選択方法は、第1の態様において、
a)表面に固定化されており、標的タンパク質と特異的に結合する第1のタンパク質結合剤を、前記標的タンパク質を含む試料と混合し、前記表面に複合体を得る工程と、
b)工程a)の前記複合体に、複数のポリペプチドバインダーを含む試料を加える工程と、
c)前記標的タンパク質との結合について前記第1の結合剤と競合し、前記標的タンパク質と特異的に結合することにより、前記標的タンパク質から前記第1の結合剤を置換する第2のタンパク質結合剤を含む試料を、工程b)の混合物に加える工程と、
d)前記標的タンパク質と結合した前記第2のタンパク質結合剤を溶出させ、前記標的タンパク質と結合したポリペプチドバインダーを単離する工程とを含む方法に関する。
【0047】
ポリペプチドバインダーと関係付けて標的-ストリッパー複合体を効率的に溶出させるために必要な「標的タンパク質との結合について競合する」という特徴は、同一エピトープについて競合するストリッパーと解釈することもできるし、特にNbの分野では、標的とのアロステリックな相互作用が結合モードの代表であることが知られているので、動的又はアロステリック等の別の様式での競合を意味することもできる。したがって、1実施形態において、ストリッパーは、最小限にオーバーラップするエピトープ又は隣接するエピトープと結合することにより、標的との結合について競合することもできるし、あるいは、ストリッパーは、標的のコンフォメーション変化を誘導することにより、標的上のアロステリックな部位と結合することにより、トラッパーと標的の相互作用を妨害することもできる。相互に競合する結合剤は、当技術分野で既知の数種の方法を使用して確立することができ、限定されないが、例えば、特に、競合ELISA、alphalisa、Octet測定又はバイオレイヤー干渉法(BLI)、SPR Biacore、マイクロスケール熱泳動法(MST)が挙げられる。
【0048】
このように、標的をその固定化表面から溶出させるために競合溶出モードを使用するので、(溶出段階で標的とも結合していることが理想的である)選択されたポリペプチドバインダーについて競合させる必要がない。もっとも、ISVD又はNbを使用すると、例えば、従来の大型の抗体を置換剤として使用するよりも好ましい動態が得られるので、NANEXで使用されるようなこの競合溶出では、抗原と結合する第2のタンパク質結合剤又はストリッパーとして少なくともISVDを使用することが望ましい。
【0049】
本発明の方法は、溶液中に存在しており、溶出条件下で可溶性である第2のタンパク質結合剤を含む。前記溶出条件とは、当業者に既知の生理的条件であることが好ましい。本願で使用する「可溶性」なる用語は、タンパク質結合剤が機能的形態であるという事実を意味し、即ち、エピトープに対するその親和性の予想範囲内でその標的と特異的に結合できることを意味する。前記第1のタンパク質結合剤は、本発明の方法では工程a)で固定化されており、共有結合又は他のカップリング手段により表面に固定化することができる。前記結合剤は、アガロース又は磁気ビーズとすることができるビーズにカップリングしてもよいし、表面又はマトリックス上に存在していてもよく、より具体的には、分取及び分析規模に適切であり得るアフィニティカラムとして充填してもよく、より特定的には、カラム体積約1mL未満、又はマイクロモル未満の体積のマイクロカラムとすることができ、あるいは、マイクロフルイディクステクノロジーを使用してチッブ上に配置してもよい。前記第1のタンパク質結合剤は、固相担体又は樹脂に固定化することが最も好ましい。「樹脂」又は「アフィニティ樹脂」とは、本願では交換可能に使用され、ISVD又は他のタンパク質結合剤等の生体分子を固定化するための活性化されたアフィニティクロマトグラフィー担体である。特定の実施形態において、前記第1のタンパク質結合剤は、ISVDを含み、当技術分野で既知のカップリング方法を使用して樹脂とカップリングされる(実施例参照)。本願に記載する方法は、工程d)の溶出に生理的条件を使用するという利点がある。任意に、a)で使用する試料の種類及び選択の持続時間に応じて、固定化表面を温和な再生工程に供し、前記固定化複合体を第2ラウンドで再使用することができるが、第3ラウンド以降の選択では、標的タンパク質の完全性及び安定性を確保するように、前記方法の工程a)~d)を繰り返すことが好ましい。
【0050】
試料の種類に応じて、本発明の方法の工程a)又は工程b)の後に、中性条件下、又は非常に温和な条件下、又は過酷な条件下で固定化表面を任意に洗浄することが必要な場合もあるし、標的タンパク質を含む試料中に存在していた未結合の多量の成分を除去するため又は複数のポリペプチドバインダーのうちの残りの未結合のバインダーを除去するために、洗浄工程を繰り返すことが必要な場合もある。
【0051】
別の実施形態において、本願に記載する前記方法は、koffが第1のタンパク質結合剤のkoffよりも低い第2のタンパク質結合剤を含む。更に、前記方法では、第1の結合剤又はトラッパーが第2の結合剤に比較して高い解離速度又は同等以下の親和性を有するときに、最適の結果が得られ、換言するならば、第2の結合剤が第1の結合剤に比較して低い解離速度及び/又はエピトープに対して同等以上の親和性を有するときに、最適の結果が得られる。現在の最先端の認識によると、解離速度定数(又は解離速度若しくはkoff)と会合速度定数(又は結合速度若しくはkon)は、K=koff/konの相互関係があり、式中、Kは、解離定数として定義され、先述した定義でも詳述したように、その標的に対する結合剤の親和性と逆に相関する。つまり、(konが同一であるならば)解離定数K値が低いほど、親和性は高い。あるいは、(koffが同一であるならば)konが高いほど、Kは低く、親和性は高い。したがって、本発明の選択方法では、本願に記載するタンパク質結合剤は、同一のエピトープ、又は実質的に同一のエピトープ、又は大きくオーバーラップするエピトープに対するkoff及び/又は親和性(又はK)が比較的異なる。本願に記載する方法では、より具体的には、標的タンパク質の同一のエピトープ、又は実質的に同一のエピトープ、又は大きくオーバーラップするエピトープに対する第2の結合剤のkoffが、第1の結合剤のkoffよりも低いが、ここで「より低い」とは、2分の1以下、5分の1以下、若しくは10分の1以下、又は30分の1以下、又は100分の1以下、又は200分の1以下、300分の1以下、400分の1以下、又は500分の1以下の数値を意味する。第2の結合剤の前記koff値は、第1のタンパク質結合剤のkoff値に比較して2分の1以下~10分の1以下、又は5分の1以下~20分の1以下、又は10分の1以下~30分の1以下の範囲、又は100分の1以下であることがより好ましい。
【0052】
同様に、標的タンパク質のエピトープに対する第2の結合剤の親和性は、第1の結合剤の親和性と同等又はそれよりも高くすることができ、「より高い親和性」とは、第2のタンパク質結合剤の「K値」が、第1のタンパク質結合剤のK値に比較して2分の1以下、又は5分の1以下、10分の1以下、20分の1以下若しくは100分の1以下、又は2分の1以下~2000分の1以下の範囲のK値であることを意味する。好ましい1実施形態において、本願に記載する精製方法は、標的タンパク質のエピトープに対するK値が1mM~約1ナノモルである第1の結合剤を開示すると共に、前記標的の任意に実質的に同一のエピトープ又は大きくオーバーラップするエピトープに対するK値が1ナノモル以下、任意に1ピコモルまでである第2のタンパク質結合剤を開示する。前記第1の結合剤は、Kがナノモル~ミリモルの範囲(即ち、10E-9~10E-3)であり、前記第2の結合剤は、K値がフェムトモル~マイクロモルの範囲(即ち、10E-12~10E-6)であることがより好ましく、第1の結合剤と第2の結合剤の相対差が少なくとも2倍であることが最も好ましい。1実施形態において、第1のタンパク質結合剤の前記K値は、置換剤のKの少なくとも2倍であり、特に置換剤が同一のエピトープ又は大きくオーバーラップするエピトープと結合する場合には、koff値の差により差が生じる。
【0053】
複数のポリペプチドバインダー
本願に記載する方法は、「複数のポリペプチド又はタンパク性バインダー」を含む試料から選択するものであり、前記バインダーは、実際に任意の種類のタンパク質又はペプチド又はポリペプチドとすることができ、最も広義には、標的タンパク質と特異的に結合する候補として利用されるタンパク質のコレクションが挙げられ、したがって、最も広義の前記「複数のポリペプチドバインダー」は、例えば、細胞抽出物、特定組織若しくはシグナル伝達カスケード、又は偏りのないプロテオーム試料に由来することができる。より具体的な態様において、「複数のタンパク質バインダー」は、ライブラリーから発現及び/又は提示される断片としてバインダーのレパートリーを含む試料として提供される。より具体的には、抗体型の分子では、ディスプレイライブラリーが広く知られている。例えば、組換え抗体ライブラリーは、標的タンパク質と特異的に結合するように選択されたタンパク質バインダーを提供することが多いので、複数のタンパク質バインダーを含むこのような試料の範囲に含まれる。
【0054】
したがって、「複数のポリペプチドバインダー」は、(潜在的に標的タンパク質と結合する)結合ドメインを含む結合剤により構造的に提供することができ、タンパク質、ペプチド、又はペプチドミメティックにより提供することができ、より具体的には、本願に記載するような多数の異なる抗体及び抗体様分子に存在する「抗原結合」ドメインにより提供することができ、限定されないが、例えば、特に、Fab、Fab’及びF(ab’)2、Fd、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(dsFv)及びVL又はVHドメインを含む断片、重鎖抗体(hcAb)、シングルドメイン抗体(sdAb)、ミニボディ、ラクダ類重鎖抗体に由来する可変ドメイン(VHH又はナノボディ)、サメ抗体に由来する新規抗原受容体の可変ドメイン(VNAR)、アルファボディを含むタンパク質足場、デザインドアルキリンリピートドメイン(DARPin)、フィブロネクチンIII型リピート、アンチカリン、ノッティン、人工CH2ドメイン(ナノ抗体)等の抗体又は活性抗体断片が挙げられる。
【0055】
したがって、好ましい1実施形態において、前記「複数のポリペプチドバインダー」は、ディスプレイライブラリーを含む試料により提供され、本願に記載するような表現型と遺伝子型の相関について選択することが可能になり、このような相関は、抗原特異的抗体又はバインダー(抗原結合ドメインを含むポリペプチド)の選択を容易にするための鍵であり、治療薬ヒットの同定に使用される抗体ディスプレイ技術の重要な特徴である。したがって、本願で使用する「ディスプレイライブラリー」なる用語は、ポリペプチドバインダーのレパートリーの表現型(抗原結合挙動)と遺伝子型を物理的に関係付けることができる組換えライブラリーを意味する。
【0056】
更に、本願で意図する型の組換え抗体ライブラリーは、(免疫動物又は自然免疫若しくは感染したヒトに存在する所定の特異性に偏っている)免疫断片又は(免疫系に存在する特異性に偏っていない)ナイーブ断片をベースとするmAbライブラリーを含む。後者の型の断片は、非免疫天然又は半合成源に由来することができる。非免疫(又はナイーブ)ライブラリーは、抗原によりレパートリーに誘導される偏りを減らすために、(例えば、IgM B細胞プールに由来する)天然の免疫されていない再配置V遺伝子に由来し、他の方法では免疫により取得しにくい抗自己抗体を単離するために使用された最初のライブラリーであった。合成抗体ライブラリーは、1個以上のV遺伝子のCDRに完全又は適応縮重領域を導入するオリゴヌクレオチドを使用して完全にインビトロで構築される。
【0057】
当技術分野で知られている通り、数種のディスプレイ技術は、組換え抗体ライブラリーの選択において種々のアプローチを可能にし、ファージディスプレイ法が主要な技術であるが、酵母ディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、細菌ディスプレイ法、及び哺乳動物ディスプレイ法を含む他のディスプレイ法も本願に記載する方法で想定される。
【0058】
特定の実施形態において、本願に記載する選択方法は、本願に示す方法で使用されるファージディスプレイライブラリー等のライブラリーに存在するポリペプチドバインダーを濃縮させるために、反復プロセスで複数ラウンドの選択に使用される。特に採取した溶出液が、標的とストリッパーの複合体と結合した標的特異的Nbを提示するファージを含む場合には、大腸菌に再感染させるためのファージ溶液は、採取した溶出液により提供され、次のラウンドのファージを提供する。
【0059】
NANEXによる選択における標的タンパク質試料及びトラッパー/ストリッパー対
上述したように、本願に記載する方法の標的タンパク質は、前記方法の工程a)及びd)で添加される第1及び第2のタンパク質結合剤(トラッパー及びストリッパー)のエピトープを提供し、前記エピトープは、前記標的タンパク質上の天然エピトープ、自然に存在するエピトープ、及び/又は内在的に得られるエピトープとすることができる。トラッパー及びストリッパーが、工程a)の試料中に存在するような天然又は内在タンパク質を認識すると、標的を試料から捕捉することができ、固定化された抗原とトラッパーの複合体が得られる。別の方法は、精製試料又は部分精製試料として提供される組換え生産した標的タンパク質上にエピトープを提示させる方法であり、タグ自体を必要としない。タグ付けしていない標的タンパク質と特異的に結合するタンパク質結合剤対(トラッパー/ストリッパー)では、同一標的について競合させるために、1対の相互に競合する結合剤を提供するようにスクリーニング・選択してもよいし、より高い親和性とより低い親和性の1対のタンパク質結合剤となるようにデザインしてもよい。実際に、標的と結合したストリッパー又は第2のタンパク質結合剤の三次元構造を使用すると、親和性を低下させるか又はkoffを上昇させるような突然変異を第2のタンパク質結合剤の結合部位にデザインすることが可能になり、その結果、適合可能なトラッパー又は第1のタンパク質結合剤が得られる。更に、より簡易で構造情報を必要としない方法であるため、一旦配列が分かると、一方の結合剤に基づいて対を決定することも可能になる。実施例では、非限定的な例としてGFPを「標的タンパク質」として使用した場合について示すように、種々のバインダーのスクリーニングに基づき、BLIを使用してエピトープマッピングによりそれらの競合性を解析したが、別法として、ナノモルレベルのバインダー又はストリッパーの配列に基づき、結合動態を定義するのに最も重要であることが分かっているCDR3領域のアラニン突然変異スキャニングを実施してもよく、NANEX法でトラッパーとして機能するように、より解離速度定数の低い新たな対を同定することができる。このように、単一又は複数の突然変異を導入することにより、異なるkoff又は親和性で同一のエピトープと結合するタンパク質結合剤の対が得られる。
【0060】
多価フォーマットは、一価フォーマットに比較してアビディティが高く、koffが高いため、最適な溶出収率及び標的タンパク質純度も得られるので、トラッパー及びストリッパーがISVDを含む方法に関する代替実施形態では、「一価」フォーマットをトラッパーとして使用し、「多価」フォーマットをストリッパーとして使用してもよい。本願において「一価フォーマット」なる用語は、本願で使用するISVDのうちで1個の抗原決定基しか認識することができないものを意味し、「多価」フォーマットなる用語は、本願で使用するISVDのうちで2個以上の抗原決定基を認識できるものを意味し、限定されないが、二価、三価又は四価フォーマットが挙げられる。更に、多価ストリッパーの代わりに、マルチパラトピック又は多重特異的ストリッパーも想定することができ、前記ストリッパーは、同一の抗原決定基と結合する同一の構成単位と、相互に異なっていてもよく、標的タンパク質上の同一又は別のエピトープ、あるいは、第1の標的タンパク質との複合体における別の標的タンパク質上のエピトープと結合することができる少なくとも1個以上の構成単位を含むことができる。
【0061】
別の実施形態において、本願に記載する方法は、第1及び第2のタンパク質結合剤(トラッパー及びストリッパー)を利用するものであり、これらの結合剤の少なくとも一方は、本願中に定義するような抗原結合ドメインを含み、あるいは、より具体的には、少なくとも1種の抗体、ISVD、VHH、ナノボディ、又は少なくとも2部位を介して足場タンパク質と融合したISVDとして本願に定義される抗原結合性キメラタンパク質を含み、前記足場タンパク質ドメインは、HopQ、YgjK又はその誘導体若しくは変異体を含むことが好ましい。最後に述べた前記抗原結合性キメラタンパク質の定義は、実際にメガボディとも呼ばれ、こうして、本発明の方法で第1及び/又は第2のタンパク質結合剤として適用することができる。本願で使用するメガボディなる用語は、Steyaertら(WO2019/086548A1)に開示されている新規融合タンパク質のことであり、抗原結合ドメインを足場タンパク質に連結した融合タンパク質を意味し、前記足場タンパク質は、前記ドメインの表面に接近可能であるか又は曝露される1以上のアミノ酸部位で前記抗原結合ドメインとカップリングされているため、前記抗原結合ドメインのトポロジーが妨害される。前記抗原結合性キメラタンパク質は更に、前記足場タンパク質と融合していない抗原結合ドメインに比較してその抗原結合機能を維持することを特徴とする。本願に記載するメガボディは、その抗原結合ドメインに免疫グロブリンシングル可変ドメイン(ISVD)又はナノボディを含む特定のメガボディ又は抗原結合性キメラタンパク質であり、前記ISVDドメインの接近可能な表面(CDRを除くβターン又はループ)で足場タンパク質に融合又は連結されているため、前記抗原結合ドメインのトポロジーが妨害され、その抗原結合機能、即ち、特異的エピトープ認識を維持する。特定の実施形態において、前記第2のタンパク質結合剤は、(IMGT命名法に従って定義され、WO2019/086548A1に定義されているように)ISVDのβ鎖A及びBを繋ぐ第1のβターンに足場タンパク質を挿入することによりISVDを足場タンパク質に連結したメガボディ又は抗原結合性キメラタンパク質を意味する。更により特定の実施形態において、本願で使用する足場タンパク質は、HopQ又はYgjK足場タンパク質であり、足場の融合は、ISVDのトポロジーを妨害するが、その全体的な三次元構造も、そのエピトープ結合特異性も妨害しない。本願で使用する「HopQ」又は「HopQに由来する」足場とは、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)株G27のタイプ1HopQのアドヘシンドメイン(タンパク質データベース:PDB5LP2)のタンパク質足場、又はその循環置換タンパク質(別称cHopQ又はc7HopQ)を意味する(WO2019/086548A1も参照)。本願で使用する「YgjkK」又は「YgjKに由来する」足場とは、大腸菌(Escherichia coli)K12 YgjK(PDB3W7S)のタンパク質足場、又は前記タンパク質をコードするその循環置換遺伝子(別称cYgjK)を意味する(WO2019/086548A1も参照)。
【0062】
別の実施形態は、前記選択方法において、本願に記載する工程a)の標的タンパク質を含む試料が、メガボディにおける足場タンパク質(標的タンパク質)上に存在する第1及び第2のタンパク質結合剤により認識されるエピトープを有する標的タンパク質を提供する方法に関する。前記メガボディは、HopQ又はYgjKタンパク質に由来する足場タンパク質を使用して作製することが好ましいと思われるので、前記HopQ又はYgjKタンパク質足場は、本方法のタンパク質結合剤と特異的に結合するエピトープを含む。本願に開示されるか、又はSteyaertら(WO2019/086548A1)により開示されているか、又は他の文献に記載されているかもしれないメガボディに存在する足場タンパク質エピトープと特異的に結合する前記1対のタンパク質結合剤は、メガボディと結合した標的タンパク質を複合体混合物から捕捉又は除去するために、本方法を適用することができるという利点もあり、あるいは、他のタグ付けした標的タンパク質と同様に、汎用選択ツールとして適用できるという利点もある。
【0063】
別の実施形態は、本願に記載する方法において、前記標的タンパク質がタグ又は異種タグ又はラベル又は検出可能なラベルを含む方法に関する。「検出可能なラベル」又は「標識」又は「タグ付け」なる用語は、本願に記載する着目標的タンパク質、あるいは、ストリッパー上に存在する場合には、溶出複合体、又は単離若しくは精製(ポリ)ペプチド若しくは複合体の検出、可視化、及び/又は単離、追加精製及び/又は固定化を可能にする検出可能なラベル又はタグを意味し、当技術分野でこれらの目的に既知の任意のラベル/タグを含むことを意図している。別の実施形態において、タンパク質結合剤は、標的タンパク質を含む融合タンパク質上に存在するタグ上のエピトープと特異的に結合する。蛍光タンパク質(例えば、GFP、YFP、RFP等)及び蛍光色素(例えば、FITC、TRITC、クマリン及びシアニン)等の蛍光ラベル又はタグ(即ち、フルオロクロム/フルオロフォア);ルシフェラーゼ等の発光ラベル又はタグ;及び(他の)酵素ラベル(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ又はグルコースオキシダーゼ)が特に好ましい。キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ポリ(His)(例えば、6xHis又はHis6)、Strep-tag(R)、Strep-tag II(R)及びTwin-Strep-tag(R)等のアフィニティタグ;チオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)及びユビキチン、又は低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)若しくはSMT3等の可溶化タグ;FLAGタグ等のクロマトグラフィータグ;V5タグ、mycタグ及びHAタグ等のエピトープタグ、又はEPEA(CaptureSelect Cタグ;US9518084B2)、又は更にインテイン-キチン結合ドメイン(インテイン-CBD)、ストレプトアビジン/ビオチンをベースとするタグ、(チオレドキシンをベースとする)His-Patch ThioFusion、又はHaloTag、更にはHRP又はアルカリホスファターゼ等のレポータータグも挙げられる。多数の非限定的な例が、例えばKimple et al.(2015 Table 9.9.1)に挙げられている。上記ラベル又はタグのいずれかの組み合わせも挙げられる。
【0064】
他の実施形態において、本願に記載する方法は、工程a)で適用するために、標的タンパク質を含有する試料として、タンパク質、及び/又は他の成分の「複合体試料」又は複合体混合物である試料を含むことができる。前記試料は、成分のインビトロ混合物、又は生体試料とすることができ、「生体試料」なる用語は、体液のうちで特に血清、尿、細胞及び組織を意味する。溶解物若しくは細胞抽出物、又は標的タンパク質を含有する成分の任意混合物として「複合体混合物」を提供することもでき、前記標的タンパク質は、組換え生産された標的タンパク質でもよく、任意に(種々の条件下又は特定の環境で所定のコンフォメーションを捕捉するために)複合体混合物にスパイクされる。完全なプロテオームとして「複合体試料」を提供してもよいし、任意に所定のシグナル伝達カスケード、疾患ステージ又は病態等のプロテオームに対応する生物、細胞コンテキスト又は組織の完全なタンパク質レパートリーを含む可溶性プロテオーム溶液として提供してもよい。
【0065】
特定の実施形態において、前記方法の工程a)で準備される標的タンパク質を含む「複合体試料」は、前記方法の工程b)で使用される「複数のポリペプチドバインダー」を得るために動物に免疫する免疫原又は抗原としても適用される。このような方法では、特異的(単一)抗原のみに対して作製されることが多い偏ったライブラリーではなく、偏りが少ないか若しくは部分的であるか又は偏りのない複数のポリペプチドバインダーを含むディスプレイライブラリーが選択に適用される(実施例参照)。
【0066】
上記のように、本願に記載する方法は、選択されたポリペプチドバインダーと結合した標的タンパク質及びストリッパーを含む複合体を溶出させることができるだけでなく、特に工程a)で複合体試料から出発する場合には、前記複合体は、標的と結合した他のタンパク質も含むことができ、標的タンパク質が第1のタンパク質結合剤を介して表面と結合する結果、標的と相互作用物質が前記表面と結合することになった。したがって、このような実施形態では、複数のタンパク質バインダーの添加時にタンパク質バインダーを選択すると、標的タンパク質と直接的又は間接的に結合するタンパク質バインダーを同定することができる。直接結合とは、標的タンパク質に対して直接相互作用及び特異性があることを意味し、本願において間接結合とは、前記ポリペプチドバインダーが、溶出させたタンパク質複合体の別の成分と結合することを意味し、このような別の成分としては、標的タンパク質と結合する複合体とそれ自体が結合しており、前記複合体中に存在している(工程a)で使用した複合体試料に由来する)タンパク質が挙げられる。したがって、特定の実施形態において、前記方法は、標的タンパク質のポリペプチドバインダーを同定できるだけでなく、前記方法の工程a)で共固定化されたその相互作用物質のポリペプチドバインダーも同定できる。
【0067】
最後に、以上のポリペプチドバインダーの選択方法については、多大な効用を確認できるので、どのようなときにどのように有用であるかは当業者に明白であり、非限定的な例を挙げると、創薬において組換え抗体ライブラリーから特異的バインダーを選択するために使用する場合、及び標的上の新規エピトープ、即ち、(トラッパー及びストリッパー等の)既知バインダーとは異なるエピトープのエピトープビニング又は同定に使用する場合が挙げられる。本願で想定されるように、前記選択方法は、中スループット用途に適しており、更に高スループット用途にも適している。
【0068】
以上、本開示に係る方法、試料及び産物の特定の実施形態、特定の構成並びに材料及び/又は分子について述べたが、本発明の範囲から逸脱しない限り、形態及び細目に種々の変更又は修正を加えることができることが理解されるべきである。以下の実施例は、特定の実施形態をより具体的に説明することを目的とするものであり、本願を制限するものとみなすべきではない。本願は、特許請求の範囲のみにより制限される。
【実施例
【0069】
緒言
本発明は、(本願で「NANEX」と呼び、PCT/EP2020/087291に従来記載されている方法に基づく)ナノボディ交換クロマトグラフィー法の原理に基づき、本願では、ディスプレイライブラリーから例えば抗体等の標的特異的結合剤を選択するために適用される。特に、固相担体に(好ましくは共有結合的に)結合させた第1の結合剤(本願では「トラッパー」と言う)、特にナノボディを使用し、着目抗原又は標的又はタンパク質(本願では交換可能に使用する)を固定化する。次に、例えば、ファージディスプレイ法、酵母ディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、又は任意の他の方法により、各結合ドメインの表現型(結合挙動)及びそれをコードする遺伝子型の物理的関係付けを提供するように発現・提示される種々の結合剤(例えば、抗体)の多様なレパートリーとともに、固定化した抗原をインキュベートする。無関係の結合剤又は抗体を除去するために、任意に洗浄工程を使用することができる。NANEX精製方法と同様に、特に本方法では、次に抗原との結合についてトラッパーと競合する第2の結合剤(本願では「ストリッパー」又は「置換剤」と言う)、特に、ナノボディを使用し、ストリッパー及び抗原特異的結合ドメイン又は抗体及びそれらをコードする遺伝子型と関係付けて、固定化した抗原を選択的に溶出させる。その後、抗原に特異的な結合剤又は抗体を濃縮させた新規レパートリーを作製するためにバインダーを増幅することができ、バインダーが集団で優位を占めるようになり、モノクローナル結合ドメイン又は抗体として特徴付けることができるようになるまで、このサイクルを繰り返すことができる(図1)。こうして、本願では、特異的標的タンパク質バインダーの新規選択方法として、選択プロセスの効率及び選択性を増すためにNANEXによる免疫置換精製の原理を初めて統合する方法が提供される。
【0070】
[実施例1]GFP特異的トラッパー/ストリッパー対及び標的としてGFPタンパク質を使用して抗体ライブラリーから新規GFP特異的ナノボディを選択するためのNANEX。
【0071】
GFP抗体ライブラリーの作製。ラマに週1回ずつ6回合計850μgのGFP(配列番号25)を免疫し、後述するようにファージディスプレイライブラリーを作製した(材料及び方法)。
【0072】
新規GFP特異的ナノボディの創出。トラッパー/ストリッパー対のエピトープにオーバーラップしないエピトープと結合する新規GFP特異的ナノボディを創出するために、2.7nMのGFPに対して親和性を有する識別名CA15816のGFP特異的トラッパー(配列番号2)を製造業者の指示に従って磁気ビーズに固定化した。トラッパーを被覆したこれらのビーズをブロックし、使用前にPBSで5回洗浄した。トラッパーを被覆したこれらのビーズと0.1nM~100nMの種々の濃度のGFP(配列番号25)を混合し、GFPをNANEXビーズ上にトラップした。トラッパーを被覆したビーズのうちでGFPとともにインキュベートしなかったものを陰性対照として使用した。GFP(抗原)とともにインキュベーション後、全磁気ビーズを常法通りに3回洗浄し、ファージ表面に提示させたGFP抗体ライブラリーの存在下に96ウェルプレートでインキュベートした。4℃で2時間インキュベーション後、ビーズを常法通りにPBS-Tweenで12回洗浄した。トラッパー/ストリッパー対のエピトープにオーバーラップしないエピトープと結合する新規GFP特異的抗体を選択するために、トラッパーエピトープにオーバーラップするエピトープと競合的に結合する高親和性ストリッパーCA12760(配列番号1)を加えることにより、トラッパーとGFPの非共有結合的相互作用を選択的に妨害した。このために、GFP上の同一のエピトープと結合する高親和性CA12760(GFP特異的ストリッパー)とともに、ビーズを30分間インキュベートした。ファージを結合したGFPをこのGFP特異的ストリッパーで選択的に溶出させた。次にファージを増幅し、抗体を濃縮させた新規レパートリーを作製した。比較のために、従来記載されているように、100nMのGFPを用いて作製したトラッパーを被覆したビーズから、結合したファージをトリプシンで溶出させた(Pardon et al.,2014)。
【0073】
NANEXを使用した第2ラウンドの選択では、100nMのGFPを用いて作製したトラッパーを被覆したビーズから得られたアウトプットファージを全ビーズで使用し、同一ストラテジーに従った。1ラウンド又は2ラウンドの選択後に認められた濃縮を図2に示す。トリプシンで溶出を実施する場合には、2ラウンドの選択後にNANEXに比較して有意に高いバックグラウンドが認められる。それらのCDR3配列に基づいて8種類の異なるGFP特異的ナノボディファミリーを選択した(配列番号26に対応するNbクローンCA17517、以下同様に、CA17518-配列番号27、CA17519-配列番号28、CA17520-配列番号29、CA17673-配列番号30、CA17674-配列番号31、CA17675-配列番号32、CA17676-配列番号33)。
【0074】
エピトープ解析。新規に選択されたナノボディファミリーがトラッパー/ストリッパーエピトープとは異なるエピトープと標的上で結合することを実証するために、バイオレイヤー干渉法(BLI)結合実験を行った。このために、ストレプトアビジンバイオセンサーにビオチン化GFPをロードし、次に、ピコモルレベルの親和性を有するGFPストリッパーであるCA12760(配列番号1)をGFPと結合させた。洗浄後、GFP-CA12760複合体をロードしたこのバイオセンサーを新規に創出されたNbとともにインキュベートした。いずれの場合も、質量が更に増加することが認められ、これらの全ナノボディは、別のエピトープと結合し、CA12760に置換しないと判断した(図3)。
【0075】
[実施例2]GFP特異的トラッパー/ストリッパー対及びGFPでタグ付けした標的タンパク質を使用して抗体ライブラリーから新規標的特異的ナノボディを選択するためのNANEX。
【0076】
先ずGFPでタグ付けした着目タンパク質を複合体混合物(例えば、細胞溶解物)から捕捉し、GFPでタグ付けした着目タンパク質をマトリックス(ビーズ、プレート等)から選択的に溶出させるためにも、例えば、実施例1で導入したGFP特異的対等のトラッパー/ストリッパー対を使用することができる。本実施例では、ヒトグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメイン(GR-LBD)をラマに免疫しることにより作製した免疫ライブラリーのナノボディレパートリーをファージに提示させた。固相担体に共有結合させたGFP特異的トラッパーを使用し、GFPでタグ付けしたGRを固定化した。次に、KingFisher(TM)Flex精製システム(ThermoScientific)を使用し、免疫動物に由来するナノボディディスプレイライブラリーとともに、この固定化抗原GFP-GRをインキュベートした。NANEXと同様に、特に本発明では、次にトラッパーと競合するGFP特異的ストリッパーを使用し、ファージ表面に提示させたLBD特異的ナノボディと関係付けて、固定化GFP-GRを選択的に溶出させた。このGFP特異的ストリッパーにより選択的に回収したファージを次に増幅し、抗体を濃縮させた新規レパートリーを作製した。次に特異的ストリッパーを増幅し、LBDに特異的な抗体(具体的には、本願のNb)を濃縮させた新規レパートリーを作製し、LBDに特異的なナノボディが集団で優位を占めるようになり、モノクローナルLBDバインダーとして特徴付けられるようになるまで、このサイクルを繰り返した。
【0077】
GR-LBD抗体ライブラリーの作製。ヒトグルココルチコイド受容体(GR)のリガンド結合ドメイン(LBD,369-777)をコードするコンストラクトを使用し、大腸菌の細胞質でデキサメタゾン(Dex)の存在下に組換えLBDを発現させた。可溶性タンパク質として均質になるまでGR-LBDドメインをアフィニティ精製(Ni-NTA)により精製した後、緩衝液(20mM NaHPO pH8.0,150mM NaCl,10%グリセロール,1mM DTT,及び10μM Dex)で透析した。ラマに週1回ずつ6週間かけて合計110μgのGR-LBDを免疫し、記載するようにファージディスプレイライブラリーを作製した(材料及び方法)。
【0078】
新規GR-LBD特異的ナノボディの創出。ヒトグルココルチコイド受容体をコードする全長遺伝子(NR3C1)をpCDNA3発現ベクターに導入し、GFPでタグ付けした標的の融合体を作製した。ポリエチレンイミン(PEI)をトランスフェクション剤として使用してこのベクターをHEK293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、細胞50,000,000個を回収し、氷冷PBSバッファーで洗浄し、50μg/mlのDNAse Iとプロテアーゼインヒビターを添加した溶解バッファー(10mM Hepes pH7.4,10μM Dex,10%グリセロール,10μM ZnCl,2.5mM MgCl,2.5mM DTT,0.5%NP40代替品)5mL中でダウンス型ホモジナイザーを使用して溶解させた。20,000gで遠心分離することにより溶解物を清澄化した。GFPでタグ付けしたGR(標的)を含有する上清を採取し、GFP特異的トラッパーで共有結合的に官能基化した磁気ビーズ20μLの存在下に、96ウェル深型ウェルブロックで4℃にて1時間インキュベートし、GFPでタグ付けしたGRをこれらのビーズに固定化した。KingFisher flex装置を使用し、これらのビーズを捕集し、洗浄バッファー(10mM Hepes pH7.4,10μM Dex,10%グリセロール,10μM ZnCl,2.5mM MgCl,2.5mM DTT)0.5mLで洗浄した後、GR-LBDナノボディライブラリーを提示するファージ(ファージ数1.4×1014)の存在下に、4℃で1時間インキュベートした。次に、これらのビーズを洗浄バッファー0.5mLで9回洗浄した。次に、GFP特異的ストリッパーナノボディを使用し、ファージ表面に提示させたGR特異的ナノボディと関係付けて、固定化GRを選択的に溶出させた。溶出させたファージを使用し、指数増殖期の大腸菌TG1細胞に感染させ、非振盪下に37℃で30分間インキュベートした。次に、(100μg/mLのアンピシリン及び2%wt/volのグルコースを添加した)LB培地を加え、培養液を37℃で終夜増殖させた。翌日、培養液を3000gで遠心分離し、(100μg/mLのアンピシリン及び20%(vol/vol)のグリセロールを添加した)LBに細胞ペレットを再懸濁し、後期使用に備えてグリセロールストックとして-80℃で保存した。トランスフェクトしていない(GFPでタグ付けしたタンパク質を含んでいない)HEK293T溶解物に野生型GFP20μgをスパイクし、(陰性)対照として使用した。
【0079】
NANEXテクノロジーを使用してパニングによる3ラウンドの選択後、ファージを感染させて終夜増殖させたTG1細胞の10倍段階希釈液をLB中で平板培養することにより、濃縮サブライブラリーから個々のクローンを単離した。96個の個々のクローンを拾い、100μg/mLのアンピシリンを添加したLBを分注した96ウェルプレートで増殖させた。ナノボディをコードする遺伝子を含むプラスミドを精製し、配列決定し、配列ファミリーにグループ分けした(材料及び方法)。各配列ファミリーの代表的メンバーを選択し、それをコードするプラスミドを大腸菌WK6発現株に形質転換し、各着目ナノボディ(配列番号35に対応するNbクローンCA17797、以下同様に、CA17798-配列番号36、CA17799-配列番号37、CA17800-配列番号38、CA17801-配列番号39)を発現させ、精製した。個々のナノボディを共免疫沈降アッセイ用NHS-アガロースビーズに結合させることにより、GR特異的ナノボディの特異性を検証した。GFP-GRベクターをトランスフェクトしたHEK293T細胞の溶解物の存在下に、これらのGR特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEで分析した。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをGR特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたGRの存在を確認した(図11)。
【0080】
本実施例から、NANEXによる選択方法は、GFP特異的トラッパー/ストリッパー対及びGFPでタグ付けした標的タンパク質を使用して抗体ライブラリーから標的特異的抗体を容易に選択できると結論づける。
【0081】
[実施例3]GFP特異的トラッパー/ストリッパー対及びGFPでタグ付けした標的を使用してプロテオームワイドな抗体ライブラリーから新規標的特異的バインダーを選択するためのNANEX。
【0082】
先ずGFPでタグ付けした着目タンパク質を複合体混合物(例えば、細胞溶解物)からマトリックス(ビーズ、プレート等)上に捕捉するためにも、例えば、実施例1で導入したGFP特異的対等のトラッパー/ストリッパー対を使用することができる。NANEXと同様に、特に本方法では、次に、トラッパーと競合する第2のナノボディ(ストリッパー)を使用し、抗原特異的結合ドメイン又は抗体及びそれらをコードする遺伝子型と関係付けて、固定化抗原を選択的に溶出させる。
【0083】
実施例3では、全可溶性酵母タンパク質(可溶性酵母プロテオーム)をラマに免疫し、全可溶性酵母タンパク質に対する免疫応答を誘発した。この免疫動物のナノボディレパートリーをファージ表面に提示させ、プロテオームワイドな抗体ライブラリーを作製した。並行して、固相担体に共有結合させたGFP特異的トラッパーを使用し、GFPでタグ付けしたFBA1を固定化した(Huh et al.,2003)。次に、KingFisher Flex装置を使用し、免疫動物に由来するナノボディディスプレイライブラリーとともに、この固定化抗原(GFP-FBA1)をインキュベートした。NANEXと同様に、特に本発明では、次に、トラッパーと競合するGFP特異的ストリッパーを使用し、ファージ表面に提示させたFBA1特異的ナノボディと関係付けて、固定化GFP-FBA1を選択的に溶出させた。このGFP特異的ストリッパーにより選択的に回収したファージを次に増幅し、FBA1に特異的な抗体を濃縮させた新規レパートリーを作製し、FBA1に特異的なナノボディが集団で優位を占めるようになり、モノクローナルFBA1バインダーとして特徴付けられるようになるまで、このサイクルを繰り返した。
【0084】
プロテオームワイドな抗体ライブラリーの作製。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株EBY100(ATCC(R)MYA-4941(TM))の全可溶性酵母タンパク質(可溶性プロテオーム)合計3mgをラマに週1回ずつ6週間かけて免疫し、プロテオームワイドな抗体ライブラリーを作製した。可溶性抗原のこのプロテオームワイドな混合物を調製するために、EBY100の1リットル培養液をYPD培地で増殖させ、対数増殖中期(OD600=0.6)に回収した。遠心分離により細胞を捕集し、50μg/mlのDNAse I及びEDTA不含プロテアーゼインヒビター(cOmplete(TM)Roche)を添加したPBSに再懸濁した。次に、フレンチプレスを使用して細胞を溶解させ、20,000gで30分間遠心分離した。全可溶性タンパク質を含有する上清を採取し、0.22μmフィルターを使用してシリンジ濾過し、分取し、-80℃で保存した。溶解物中の総タンパク質濃度をBCAタンパク質定量法(Pierce(TM)BCAタンパク質アッセイキット,23225,ThermoFisher)により測定した処、1.5mg/mLであった。免疫後、記載するようにファージディスプレイライブラリーを作製した(材料及び方法)。
【0085】
新規FBA1特異的ナノボディの創出。NANEXを使用し、GFPでタグ付けしたタンパク質(Huh et al.,2003)としてFBA1(系統名YKL060C)を発現する人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション識別名:GFP(+)22,G1)の溶解物から、トラッパーを被覆した磁気ビーズ(実施例1参照)に、GFP-FBA1を選択的に捕捉した。これらの磁気ビーズを洗浄し、プロテオームワイドなナノボディライブラリーを提示するファージ(ファージ数1.4×1014)とともにインキュベートし、再び洗浄した。次に、GFP特異的ストリッパーナノボディを使用し、KingFisher Flex装置を利用することにより、ファージ表面に提示させたFBA1特異的ナノボディと関係付けて、固定化GFP-FBA1を選択的に溶出させた。溶出させたファージを使用し、指数増殖期の大腸菌TG1細胞に感染させ、非振盪下に37℃で30分間インキュベートした。次に、(100μg/mLのアンピシリン及び2%wt/volのグルコースを添加した)LB培地を加え、培養液を37℃で終夜増殖させた。翌日、培養液を3000gで遠心分離し、(100μg/mLのアンピシリン及び20%(vol/vol)のグリセロールを添加した)LBに細胞ペレットを再懸濁し、後期使用に備えてグリセロールストックとして-80℃で保存した。(GFPでタグ付けしたタンパク質を含んでいない)参照株EBY100に由来する酵母溶解物に野生型GFP20μgをスパイクし、(陰性)対照として使用した。
【0086】
FBA1特異的ナノボディの特性決定。NANEXテクノロジーを使用してパニングにより3ラウンドの選択後に、ファージを感染させて終夜増殖させた大腸菌TG1細胞の10倍段階希釈液をLB中で平板培養することにより、濃縮サブライブラリーから個々のクローンを単離した。96個の個々のクローンを拾い、100μg/mLのアンピシリンを添加したLBを分注した96ウェルプレートで増殖させた。ナノボディをコードする遺伝子を含むプラスミドを精製し、配列決定し、配列ファミリーにグループ分けした(材料及び方法)。各配列ファミリーの代表的メンバーを選択した。それらのCDR3配列に基づいて、4種類の異なる配列ファミリーに由来する4種類の異なるFBA1特異的ナノボディ(配列番号3に対応するNbクローンCA17440、以下同様に、CA17441-配列番号4、CA17442-配列番号5、及びCA17443-配列番号6)を選択した。それらをコードするプラスミドを大腸菌WK6発現株に形質転換し、各着目ナノボディを発現させ、精製した。個々のナノボディを共免疫沈降アッセイ用NHS-アガロースビーズに結合させることにより、FBA1特異的ナノボディの特異性を確認した。天然FBA1を発現するEBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質としてFBA1を発現する人工酵母株(GFP(+)22,G1)の溶解物の存在下に、これらのFBA1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEで分析した(図4)。分離したタンパク質を更にPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたFBA1の存在を確認した(図4)。このように分析した各FBA1特異的ナノボディについて、EBY100溶解物と共免疫沈降させると、FBA1の予想分子量に対応する39kDaで主要バンドが認められる。更に、GFPでタグ付けしたタンパク質としてFBA1を発現する酵母株の溶解物とともにインキュベートすると、GFP-FBA1の分子量(27kDa+39kDa=66kDa)に一致する66kDaで主要バンドが認められる。抗GFP抗体によるウェスタンブロット分析の結果、66kDaバンドはGFPタグを含むことを確認した。該当するバンド(39kDaと66kDa)を質量分析法により分析することにより、FBA1であることを更に確認した。
【0087】
本実施例から、NANEXによる選択方法は、プロテオームワイドな抗体ライブラリーから標的特異的抗体を容易に選択できると結論する。
【0088】
[実施例4]GFP特異的トラッパー/ストリッパー対及びGFPでタグ付けした個々の標的を使用してプロテオームワイドな抗体ライブラリーから標的特異的バインダーを並行して選択するためのNANEX。
【0089】
本願に記載するNANEXによる選択方法が多様な標的に対する抗体の創出に広く適用可能であることを証明するために、並行アプローチに従い、プロテオームワイドな抗体ライブラリーから12種類の異なる可溶性酵母タンパク質(表1)の特異的バインダーを選択した。このために、各々GFPでタグ付けした別の着目タンパク質を発現する12種類の人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション,ThermoFisher)を選択した。これらのタンパク質は、酵母中に最も多量に存在するタンパク質の1種であるFBA1(YKL060C)から、テロメア長を制御するタンパク質であり、11細胞当たりの分子数が1000未満であるRIF2(YLR453C)に至るまで、出芽酵母におけるそれらの存在量に従って選択した(SGD Project.http://www.yeastgenome.org)。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例1で導入したGFP特異的トラッパーを使用し、対応する人工酵母株の細胞溶解物から、GFPでタグ付けした各標的をビーズに個々に捕捉した。これらの個々のビーズを次に、プロテオームワイドな抗体ライブラリーとともに個々にインキュベートし、GFP特異的ストリッパーを使用し、抗原特異的結合ドメイン又は抗体とそれらをコードする遺伝子型と関係付けて、GFPでタグ付けした種々の着目タンパク質を選択的に溶出させた。このGFP特異的ストリッパーにより回収したファージを次に増幅し、各標的タンパク質又は着目タンパク質(POI)に特異的な抗体を濃縮させた新規レパートリーを作製し、POIに特異的なナノボディが集団で優位を占めるようになり、モノクローナルバインダーとして特徴付けられるようになるまで、このサイクルを繰り返した。
【0092】
プロテオームワイドな抗体ライブラリーの作製。実施例4に記載する実験を実施するためにも、実施例3に記載した同一ライブラリーを使用した。
【0093】
新規POI特異的ナノボディの創出。実施例1、2及び3と同様に、NANEXを使用し、GFPでタグ付けしたタンパク質(Huh et al.,2003)として種々のPOI(表1)を発現する人工酵母株の溶解物から、トラッパーを被覆した12個の個々の磁気ビーズに、12種類の異なるGFP-POIを選択的に捕捉した。洗浄後、プロテオームワイドなナノボディライブラリーを提示するファージ(ファージ数1.4×1014)とともに、これらの個々の磁気ビーズをインキュベートし、再び洗浄した。特に本実施例では、次に、GFP特異的ストリッパーナノボディを使用し、ファージ表面に提示させたPOI特異的ナノボディと関係付けて、固定化GFP-POIを選択的に溶出させた。選択的に回収したファージを使用し、指数増殖期の大腸菌TG1細胞に感染させ、非振盪下に37℃で30分間インキュベートした。次に、(100μg/mLのアンピシリン及び2%wt/volのグルコースを添加した)LB培地を加え、培養液を37℃で終夜増殖させた。翌日、培養液を3000gで遠心分離し、(100μg/mLのアンピシリン及び20%(vol/vol)のグリセロールを添加した)LBに細胞ペレットを再懸濁し、後期使用に備えてグリセロールストックとして-80℃で保存した。(GFPでタグ付けしたタンパク質を含んでいない)参照株EBY100に由来する酵母溶解物に野生型GFP20μgをスパイクし、(陰性)対照として使用した。
【0094】
表2に詳述するような本実施例におけるバインダーの各標的選択では、NANEXテクノロジーを使用してパニングによる3ラウンドの選択後に、ファージを感染させて終夜増殖させた大腸菌TG1細胞の10倍段階希釈液をLB中で平板培養することにより、濃縮サブライブラリーから個々のクローンを単離した。96個の個々のクローンを拾い、100μg/mLのアンピシリンを添加したLBを分注した96ウェルプレートで増殖させた。ナノボディをコードする遺伝子を含むプラスミドを精製し、配列決定し、配列ファミリーにグループ分けした(材料及び方法)。各配列ファミリーの代表的メンバーを選択した。それらをコードするプラスミドを大腸菌WK6発現株に形質転換し、各着目ナノボディを発現させ、精製した。個々のナノボディを共免疫沈降アッセイ用NHS-アガロースビーズに結合させることにより、標的特異的ナノボディの特異性を確認した。天然標的タンパク質を発現するEBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質として標的タンパク質を発現する人工酵母株(表2に指定するような酵母GFP融合体コレクション識別名)の溶解物の存在下に、これらの標的特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、(各標的について表2に指定する図面に示すように)SDS-PAGEで分析した。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けした標的の存在を確認した。このように分析した各標的特異的ナノボディについて、EBY100溶解物と共免疫沈降させると、標的タンパク質の予想分子量に対応する主要バンドが得られる。更に、GFPでタグ付けしたタンパク質として標的を発現する酵母株の溶解物とともにインキュベートすると、GFP-標的の分子量に一致するMWで主要バンドが認められる。抗GFPによるウェスタンブロットの結果、後者バンドはGFPタグを含むことを確認した。
【0095】
【表2】
【0096】
実施例4から、NANEXは、プロテオームワイドな抗体ライブラリーから数種類の異なる標的に対する標的特異的抗体を容易に選択できると結論する。
【0097】
[実施例5]GFP特異的トラッパー/ストリッパー対及びGFPでタグ付けした個々の標的を使用してプロテオームワイドな抗体ライブラリーから標的特異的バインダーを並行して選択するための高スループットNANEX。
【0098】
実施例4は、GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用してNANEXによりプロテオームワイドな抗体ライブラリーから種々の標的の抗原特異的抗体を並行して選択することについて記載している。実施例5では、並行(高スループット)アプローチに従い、プロテオームワイドな抗体ライブラリーからGFPでタグ付けした94種類の異なる抗原の抗原特異的バインダーを創出するためにこのプロセスを規模拡大した。KingFisher装置(ThermoFisher Scientific)を使用して96種類の異なる選択を並行して実施し、工程の大半を自動化した。
【0099】
このために、各々GFPでタグ付けした別の着目タンパク質を発現する94種類の代表的な酵母株(酵母GFP融合体コレクション,ThermoFisher)をタンパク質のMWと存在量に従って選択した(表3)。2種類の陰性対照(GFP融合タンパク質を含んでいない酵母と、酵母溶解物を含んでいない溶解バッファー)を96ウェルプレートに追加した。
【0100】
実施例3及び4に記載したように、全可溶性酵母タンパク質(可溶性酵母プロテオーム)をラマに免疫し、全可溶性酵母タンパク質に対する免疫応答を誘発した。この免疫動物のナノボディレパートリーをファージ表面に提示させ、プロテオームワイドな抗体ライブラリーを作製した。
【0101】
実施例1で導入したGFP特異的トラッパーCA15816(配列番号2)を固相担体(磁気ビーズ)に共有結合させ、96個の異なるウェルに分注した。各条件を使用し、対応する人工酵母株の細胞溶解物から、GFPでタグ付けした各標的をビーズに個々に捕捉した。GFPでタグ付けした標的を捕捉後に、実施例3及び4からのプロテオームワイドな抗体ライブラリーとともに個々にインキュベートし、GFP特異的ストリッパーCA12760(配列番号1)を使用し、抗原特異的結合ドメイン又は抗体とそれらをコードする遺伝子型と関係付けて、GFPでタグ付けした種々の着目タンパク質を選択的に溶出させた。このGFP特異的ストリッパーにより選択的に回収したファージを次に増幅し、各POIに特異的な抗体を濃縮させた新規レパートリーを作製し、POIに特異的なナノボディが集団で優位を占めるようになり、モノクローナルバインダーとして特徴付けられるようになるまで、このサイクルを繰り返した。
【0102】
【表3】
【0103】
プロテオームワイドな抗体ライブラリーの作製。実施例5に記載する実験を実施するためにも、実施例3に記載した同一ライブラリーを使用した。
【0104】
新規POI特異的ナノボディの創出。実施例2~4と同様に、NANEXを使用し、GFPでタグ付けしたタンパク質(Huh et al.,2003)として種々のPOI(表3)を発現する人工酵母株の溶解物から、トラッパーを被覆した94個の個々の磁気ビーズに、94種類の異なるGFP-POIを選択的に捕捉した。洗浄後、プロテオームワイドなナノボディライブラリーを提示するファージ(ファージ数1.4×1014)とともに、これらの個々の磁気ビーズをインキュベートし、再び洗浄した。特に本発明では、次に、GFP特異的ストリッパーナノボディを使用し、ファージ表面に提示させたPOI特異的ナノボディと関係付けて、固定化GFP-POIを選択的に溶出させた。溶出させたファージを使用し、指数増殖期の大腸菌TG1細胞に感染させ、非振盪下に37℃で30分間インキュベートした。次に、(100μg/mLのアンピシリン及び2%wt/volのグルコースを添加した)LB培地を加え、培養液を37℃で終夜増殖させた。翌日、培養液を3000gで遠心分離し、(100μg/mLのアンピシリン及び20%(vol/vol)のグリセロールを添加した)LBに細胞ペレットを再懸濁し、後期使用に備えてグリセロールストックとして-80℃で保存した。(GFPでタグ付けしたタンパク質を含んでいない)参照株EBY100に由来する酵母溶解物又は(酵母を含んでいない)溶解バッファーに野生型GFP20μgをスパイクし、(陰性)対照として使用した。94種類の異なるPOI特異的ファージのほぼ全部で有意濃縮を認めるためには2ラウンドのパニングで十分であった(図12)。
【0105】
表3に詳述するような本実施例におけるバインダーの各標的選択では、NANEXテクノロジーを使用してパニングによる2ラウンドの選択後に、ファージを感染させて終夜増殖させた大腸菌TG1細胞の10倍段階希釈液をLB中で平板培養することにより、濃縮サブライブラリーから個々のクローンを単離した。R2で異なる濃縮を示した10種類の異なるPOIを選択し、各POIについて12個の個々のクローンを拾い、100μg/mLのアンピシリンを添加したLBを分注した96ウェルプレートで増殖させた。ナノボディをコードする遺伝子を含むプラスミドを精製し、配列決定し、配列ファミリーにグループ分けした(材料及び方法)。各配列ファミリーの代表的メンバーを選択した。それらをコードするプラスミドを大腸菌WK6発現株に形質転換し、各着目ナノボディを発現させ、精製した。個々のナノボディを共免疫沈降アッセイ用NHS-アガロースビーズに結合させることにより、標的特異的ナノボディの特異性を確認した。GFPでタグ付けしたタンパク質として標的タンパク質を発現する人工酵母株(表3に指定するような酵母GFP融合体コレクション識別名)の溶解物の存在下に、これらの標的特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEで分析した。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをGFP特異的抗体(GFPマウスmAb(GF28R),MA5-15256,ThermoFisher Scientific)で展開し、GFPでタグ付けした標的の存在を確認した(図13)。
【0106】
実施例5から、NANEXは、プロテオームワイドな抗体ライブラリーから数種類の異なる標的に対する標的特異的抗体を並行して高スループット規模で容易に選択できると結論する。
【0107】
【表4】
【0108】
[実施例6]PGI1特異的トラッパー/ストリッパー対及び粗酵母細胞溶解物に由来する内在PGI1を使用してプロテオームワイドな抗体ライブラリーから新規酵母PGI1特異的バインダーを選択するためのNANEX。
【0109】
実施例1~5は、トラッパー/ストリッパー対を使用し、標的としてのGFP又はGFPでタグ付けした特定の標的をマトリックスに固定化した後に、抗原特異的結合ドメイン又は抗体とそれらをコードする遺伝子型と関係付けて、この標的を溶出させている。実施例6では、マトリックスに固定化した後に溶出させるために、トラッパー/ストリッパー対が、GFP以外のタグ付けしていない標的タンパク質と直接結合できることを示す。
【0110】
プロテオームワイドな抗体ライブラリーの作製。実施例6に記載する実験を実施するためにも、実施例3に記載した同一ライブラリーを使用した。
【0111】
新規PGI1特異的ナノボディの創出。実施例3、4及び5と同様に、NANEXを使用し、酵母溶解物からPOIを選択的に捕捉した。特に、PGI1特異的ナノボディCA17455(配列番号15)を上述したような磁気ビーズに固定化し、トラッパーとして使用した。内在性PGI1標的タンパク質を含むEBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質(Huh et al.,2003)としてPGI1(系統名YBR196C,表1)を発現する人工酵母株(酵母GFP融合体コレクション識別名GFP(+)12,H11)の溶解物の存在下に、CA17455を被覆したこれらのビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、プロテオームワイドなナノボディライブラリーを提示するファージ(ファージ数1.4×1014)とともに、これらの磁気ビーズをインキュベートし、再び洗浄した。次に、(この場合には、ストリッパーの役割の)同一のPGI1特異的ナノボディを使用し、ファージ表面に提示させたPGI1特異的ナノボディと関係付けて、固定化PGI1を選択的に溶出させた。選択的に回収したファージを使用し、指数増殖期の大腸菌TG1細胞に感染させ、非振盪下に37℃で30分間インキュベートした。次に、(100μg/mLのアンピシリン及び2%wt/volのグルコースを添加した)LB培地を加え、培養液を37℃で終夜増殖させた。翌日、培養液を3000gで遠心分離し、(100μg/mLのアンピシリン及び20%(vol/vol)のグリセロールを添加した)LBに細胞ペレットを再懸濁し、後期使用に備えてグリセロールストックとして-80℃で保存した。(酵母タンパク質を含んでいない)酵母溶解バッファーを(陰性)対照として使用した。PGI1特異的ファージの有意濃縮を認めるには2ラウンドのパニングで十分であった。
【0112】
ファージを感染させて終夜増殖させた大腸菌TG1細胞の10倍段階希釈液をLB中で平板培養することにより、濃縮サブライブラリーから個々のクローンを単離した。96個の個々のクローンを拾い、100μg/mLのアンピシリンを添加したLBを分注した96ウェルプレートで増殖させた。ナノボディをコードする遺伝子を含むプラスミドを精製し、配列決定し、配列ファミリーにグループ分けした(材料及び方法)。各配列ファミリーの代表的メンバーを選択した。それらのCDR3配列に基づいて、4種類の異なる配列ファミリーに由来する6種類の異なるPGI1特異的ナノボディ(配列番号46に対応するNbクローンCA17791、以下同様に、CA17792-配列番号47、CA17793-配列番号48、CA17794-配列番号49、CA17795-配列番号50、及びCA17796-配列番号51)を選択した。それらをコードするプラスミドを大腸菌WK6発現株に形質転換し、各着目ナノボディを発現させ、精製した。個々のナノボディを共免疫沈降アッセイ用NHS-アガロースビーズに結合させることにより、PGI1特異的ナノボディの特異性を確認した。(タグ付けしていない)天然PGI1を発現するEBY100溶解物又はGFPでタグ付けしたタンパク質としてPGI1を発現する人工酵母株(GFP(+)12,H11)の溶解物の存在下に、これらのPGI1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEで分析した(図14A)。分離したタンパク質を更にPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをGFP特異的抗体で展開し、GFPでタグ付けしたPGI1の存在を確認した(図14B)。このように分析した各PGI1特異的ナノボディについて、EBY100溶解物と共免疫沈降させると、PGI1の予想分子量に対応する61kDaで主要バンドが認められる。更に、GFPでタグ付けしたタンパク質としてPGI1を発現する酵母株の溶解物とともにインキュベートすると、GFP-PGI1の分子量(27kDa+61kDa=88kDa)に一致する88kDaで主要バンドが認められる。抗GFP抗体によるウェスタンブロット分析の結果、88kDaバンドはGFPタグを含むことを確認した。
【0113】
本実施例から、NANEXによる選択方法は、標的特異的トラッパー/ストリッパー対、及び内在的に発現され、粗細胞溶解物から直接捕捉される(タグ付けしていない)天然標的を使用し、追加精製工程を実施しなくても、プロテオームワイドな抗体ライブラリーから標的特異的抗体を容易に選択できると結論する。
【0114】
これに加え、酵母溶解物からPGI1を捕捉した後にストリッパーで溶出させると、単に酵母溶解物からPGI1が捕捉されただけでなく、多数の相互作用性タンパク質が共溶出され、その細胞コンテキストから本実施例で捕捉されるようなPGI1のバインダーとして同定できることも確認した。特に、PGI1特異的ナノボディCA17455(配列番号15)を上述したような磁気ビーズにトラッパーとして固定化した。内在性PGI1標的タンパク質を含むEBY100溶解物の存在下に、CA17455を被覆したこれらのビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートし、洗浄した。次に、(この場合には、ストリッパーとして使用した)同一のPGI1特異的ナノボディとともにこれらの被覆ビーズを1時間インキュベートし、標的タンパク質(PGI1)を溶出させた処、SDS-PAGE上に数個のバンドが現れ(図10)、質量分析法によると、数種のPGI1相互作用性タンパク質(LYS20 UniProt P48570、TDH3 UniProt P00359、PNC1 UniProt P53184)を含むことを確認した(図10)。この結果は、本方法がライブラリーから新規バインダーを選択するために潜在的な相互作用パートナーを含む生理的コンテキストで標的タンパク質を提供できることを裏付けている。
【0115】
[実施例7]rVGLUT1特異的トラッパー/ストリッパー対及び細胞溶解物に由来するrVGLUT1を使用して抗体ライブラリーから標的としての膜タンパク質に特異的な新規ナノボディを選択するためのNANEX。
【0116】
実施例1~6は、トラッパー/ストリッパー対を使用し、可溶性の着目タンパク質に対するバインダーを選択した。本実施例では、本願の方法を使用し、膜タンパク質、特にラット小胞型グルタミン酸トランスポーター1(rVGLUT1,UniProtエントリー名Q62634)に対して作製された免疫ライブラリーのファージ提示型ナノボディレパートリーから選択した。本実施例では、rVGLUT1特異的ナノボディCA17875(配列番号52)を上述したような磁気ビーズに固定化し、膜タンパク質rVGLUT1のトラッパーとして使用した。次に、免疫動物に由来するナノボディディスプレイライブラリーとともに、この固定化抗原をインキュベートした。特に本発明では、同一ナノボディをトラッパーとして使用した後、ストリッパーとして使用し、ファージ表面に提示させた標的特異的ナノボディと関係付けて、固定化rVGLUT1を選択的に溶出させた。このrVGLUT1特異的ストリッパーにより選択的に回収したファージを次に増幅し、rVGLUT1に特異的なナノボディを濃縮させた新規レパートリーを作製した。
【0117】
rVGLUT1抗体ライブラリーの作製。Schenck et al.,2017に記載されているように、ラットVGLUT1を精製し、ラマ免疫を実施した。免疫後、記載するようにファージディスプレイライブラリーを作製した(材料及び方法)。
【0118】
新規rVGLUT1特異的ナノボディの創出。従来発表されているように(Schenck et al.,2017)、全長ラットVGLUT1をHEK293T細胞で産生させ、回転装置で4℃にて1時間インキュベーションすることにより、プロテアーゼインヒビターを添加した氷冷溶解バッファー(250mM NaCl,25mM HEPES pH7.5,10%グリセロール,2%DDM)5mL中で細胞を溶解させた。20,000gで20分間遠心分離することにより溶解物を清澄化した。標的を含有する上清を採取し、rVGLUT1特異的ナノボディCA17875(配列番号52)で共有結合的に官能基化した磁気ビーズ5μLの存在下に、回転装置で4℃にて1時間インキュベートし、rVGLUT1をこれらのビーズに固定化した。磁石を使用してビーズを捕集し、洗浄バッファー(150mM NaCl,20mM Hepes pH7.5,10%グリセロール及び0.03%DDM)で洗浄後、rVGLUT1ナノボディライブラリーを提示するファージ(ファージ数1.4×1014)の存在下に、4℃で1時間インキュベートした。次に、これらのビーズを洗浄バッファー0.5mLで9回洗浄した。特に本発明では、次に、(この場合には、ストリッパーの役割の)同一のrVGLUT1特異的ナノボディを使用し、ファージ表面に提示させたrVGLUT1特異的ナノボディと関係付けて、固定化rVGLUT1を選択的に溶出させた。溶出させたファージを使用し、指数増殖期の大腸菌TG1細胞に感染させ、非振盪下に37℃で30分間インキュベートした。次に、(100μg/mLのアンピシリン及び2%wt/volのグルコースを添加した)LB培地を加え、培養液を37℃で終夜増殖させた。翌日、培養液を3000gで遠心分離し、(100μg/mLのアンピシリン及び20%(vol/vol)のグリセロールを添加した)LBに細胞ペレットを再懸濁し、後期使用に備えてグリセロールストックとして-80℃で保存した。(標的タンパク質を含んでいない)溶解バッファーを(陰性)対照として使用した。
【0119】
NANEXテクノロジーを使用してパニングによる2ラウンドの選択後、ファージを感染させて終夜増殖させたTG1細胞の10倍段階希釈液をLB中で平板培養することにより、濃縮サブライブラリーから個々のクローンを単離した。96個の個々のクローンを拾い、100μg/mLのアンピシリンを添加したLBを分注した96ウェルプレートで増殖させた。ナノボディをコードする遺伝子を含むプラスミドを精製し、配列決定し、配列ファミリーにグループ分けした(材料及び方法)。1種類の着目配列ファミリーの代表的メンバーを選択し、それをコードするプラスミドを大腸菌WK6発現株に形質転換し、このメンバー(配列番号53に対応するNbクローンCA18425)を発現させ、精製した。共免疫沈降アッセイ用NHS-アガロースビーズに結合させることにより、rVGLUT1特異的ナノボディの特異性を検証した。C末端にVenus-YFPをタグ付けし、c-Mycタグを付加したrVGLUT1をトランスフェクトしたHEK293T細胞の溶解物の存在下に、このVGLUT1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした(Schenck et al.,2017)。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEにロードした。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをc-Myc特異的抗体で展開し、c-Mycでタグ付けしたrVGLUT1の存在を確認した(rVGLUT1-c-Myc-YFPコンストラクトの88kDa,図15)。
【0120】
本実施例から、NANEXによる選択方法は、特異的トラッパー/ストリッパー対及び膜標的タンパク質を使用して抗体ライブラリーから標的特異的抗体を選択できると結論する。
【0121】
[実施例8]GFP特異的トラッパー/ストリッパー対及びYFPでタグ付けした標的タンパク質を使用してシナプスプロテオーム抗体ライブラリーから新規rVGLUT1特異的ナノボディを選択するためのNANEX。
【0122】
黄色蛍光タンパク質(YFP)でタグ付けした標的を捕捉するためにも、実施例1で導入したGFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用することができる。YFPタンパク質を作製するためにGFPに導入される突然変異は、トラッパー/ストリッパー結合に重要なエピトープを変化させないので、このGFP特異的トラッパー/ストリッパー対を用いて複合体混合物(例えば、細胞溶解物)からYFPでタグ付けしたタンパク質を効率的に精製することができ、YFPでタグ付けした着目タンパク質をマトリックス(ビーズ、プレート等)から選択的に溶出させることができる。本実施例では、膜タンパク質のうちで特に小胞型グルタミン酸トランスポーター1(VGLUT1)を含むシナプス小胞を濃縮させたマウス脳抽出液をラマに免疫することによりシナプスプロテオームに対して作製した免疫ライブラリーのナノボディレパートリーをファージ提示させた。並行して、固相担体に共有結合させたGFP特異的トラッパーCA15816(配列番号2)を使用し、C末端にVenus-YFPをタグ付けしたラットVGLUT1を固定化した。次に、免疫動物に由来するナノボディディスプレイライブラリーとともに、この固定化抗原(rVGLUT1-YFP)をインキュベートした。NANEXと同様に、特に本発明では、次に、トラッパーと競合するGFP特異的ストリッパーCA12760(配列番号1)を使用し、ファージ表面に提示させた標的特異的ナノボディと関係付けて、固定化rVGLUT1-YFPを選択的に溶出させた。
【0123】
シナプスプロテオーム抗体ライブラリーの作製。従来記載されているように(Takamori et al.,2006)、シナプス小胞を濃縮させたマウス脳抽出液を調製した。ラマに週1回ずつ6週間かけて免疫し、記載するようにファージディスプレイライブラリーを作製した(材料及び方法)。
【0124】
新規VGLUT1特異的ナノボディの創出。従来発表されているように(Schenck et al.,2017)、C末端にVenus-YFPをタグ付けしたタンパク質として全長ラットVGLUT1をHEK293T細胞で産生させた。回転装置で4℃にて1時間インキュベーションすることにより、プロテアーゼインヒビターを添加した氷冷溶解バッファー(250mM NaCl,25mM HEPES pH7.5,10%グリセロール,2%DDM)5mL中で細胞を溶解させた。20,000gで20分間遠心分離することにより溶解物を清澄化した。標的を含有する上清を採取し、GFP特異的ナノボディトラッパーCA15816(配列番号2)で共有結合的に官能基化した磁気ビーズ5μLの存在下に、回転装置で4℃にて1時間インキュベートし、YFPでタグ付けしたrVGLUT1をこれらのビーズに固定化した。磁石を使用してビーズを捕集し、洗浄バッファー(150mM NaCl,20mM Hepes pH7.5,10%グリセロール及び0.03%DDM)で洗浄後、シナプスプロテオームナノボディライブラリーを提示するファージ(ファージ数1.4×1014)の存在下に、4℃で1時間インキュベートした。次に、これらのビーズを洗浄バッファー0.5mLで9回洗浄した。特に本実施例では、次に、GFP特異的ストリッパーナノボディCA12760(配列番号1)を使用し、ファージ表面に提示させたrVGLUT1特異的ナノボディと関係付けて、固定化rVGLUT1-YFPを選択的に溶出させた。マウス脳抽出液を使用したとしても、マウスとラットに由来するVGLUT1は、それらの配列が1アミノ酸しか相違しないので、マウス由来ライブラリーには交差反応性バインダーが存在すると予想される。溶出させたファージを使用し、指数増殖期の大腸菌TG1細胞に感染させ、非振盪下に37℃で30分間インキュベートした。次に、(100μg/mLのアンピシリン及び2%wt/volのグルコースを添加した)LB培地を加え、培養液を37℃で終夜増殖させた。翌日、培養液を3000gで遠心分離し、(100μg/mLのアンピシリン及び20%(vol/vol)のグリセロールを添加した)LBに細胞ペレットを再懸濁し、後期使用に備えてグリセロールストックとして-80℃で保存した。(標的タンパク質を含んでいない)溶解バッファーに野生型GFP6μgをスパイクし、(陰性)対照として使用した。
【0125】
NANEXテクノロジーを使用してパニングによる2ラウンドの選択後に、ファージを感染させて終夜増殖させたTG1細胞の10倍段階希釈液をLB中で平板培養することにより、濃縮サブライブラリーから個々のクローンを単離した。96個の個々のクローンを拾い、100μg/mLのアンピシリンを添加したLBを分注した96ウェルプレートで増殖させた。ナノボディをコードする遺伝子を含むプラスミドを精製し、配列決定し、配列ファミリーにグループ分けした(材料及び方法)。各配列ファミリーの代表的メンバーを選択し、それをコードするプラスミドを大腸菌WK6発現株に形質転換し、5種類の着目ナノボディ(配列番号54に対応するNbクローンCA18024、以下同様に、CA18437-配列番号55、CA18438-配列番号56、CA18439-配列番号57、CA18440-配列番号58、及びCA18441-配列番号59)を発現させ、精製した。個々のナノボディを共免疫沈降アッセイ用NHS-アガロースビーズに結合させることにより、rVGLUT1特異的ナノボディの特異性を検証した。c-Mycタグも付加したrVGLUT1-YFPをトランスフェクトしたHEK293T細胞の溶解物の存在下に、これらのrVGLUT1特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEにロードした。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをc-Myc特異的抗体で展開し、c-Mycでタグ付けしたrVGLUT1-YFP(88kDa,図16)の存在を確認した。
【0126】
本実施例から、NANEXによる選択方法は、特異的GFP-トラッパー/ストリッパー対及び標的としてYFPでタグ付けした膜タンパク質を使用してプロテオームワイドな抗体ライブラリーから膜タンパク質標的に特異的な一群の新規抗体を選択できると結論する。
【0127】
[実施例9]mCherry特異的トラッパー/ストリッパー対及びmCherryでタグ付けした標的タンパク質を使用して抗体ライブラリーから新規標的特異的ナノボディを選択するためのNANEX。
【0128】
実施例1~5及び8は、NANEXによる選択のために、GFP特異的トラッパー/ストリッパー対を使用し、GFP、GFPでタグ付けした着目タンパク質又はYFP等のGFP変異体を捕捉した。実施例9では、mCherryタグ(Shaner et al.,2004)に特異的なトラッパー/ストリッパー対を使用し、複合体混合物から可溶性の着目タンパク質を捕捉し、マトリックス(ビーズ、プレート等)から前記着目タンパク質を選択的に溶出させた。本実施例では、GFPでタグ付けして架橋した全長ヒトグルココルチコイド受容体(GR)をNANEX精製し、ラマに免疫することにより作製した免疫ライブラリーのナノボディレパートリーをファージ提示させた。並行して、固相担体に共有結合させたmCherry特異的トラッパーNbクローンCA16964(配列番号60)を使用し、mCherryでタグ付けした全長GRを固定化した。次に、免疫動物に由来するナノボディディスプレイライブラリーとともに、この固定化抗原(mCherry-GR)をインキュベートした。NANEXと同様に、トラッパーNbと競合するmCherry特異的ストリッパーNbクローンCA17302(配列番号61)を使用し、ファージ表面に提示させたGR特異的ナノボディと関係付けて、固定化mCherry-GRを選択的に溶出させた。このmCherry特異的ストリッパーで選択的に溶出させたファージを次に増幅し、GRに特異的なナノボディを濃縮させた新規レパートリーを作製し、GRに特異的なナノボディが集団で優位を占めるようになり、モノクローナルGRバインダーとして特徴付けられるようになるまで、このサイクルを繰り返した。
【0129】
全長GR抗体ライブラリーの作製。GFPでタグ付けしたヒトグルココルチコイド受容体(NR3C1)をコードするコンストラクトを使用し、一過性トランスフェクション後にHEK293T細胞で組換えGFP-GRを発現させた。トランスフェクションから48時間後に、細胞を採取し、Complete EDTA不含プロテアーゼインヒビタータブレット1個を添加した10mM Hepes pH7.4,10%グリセロール,20mMモリブデン酸Na,50μg/mL DNase I,10μM ZnCl,2.5mM MgCl,2.5mM DTT,0.5%NP40代替品を加え、ダウンス型ホモジナイザーを使用して溶解させた。GFP特異的なトラッパーCA15816(配列番号2)及びストリッパーCA12760(配列番号1)の対を利用するNANEX精製を使用することにより、GFP-GRを可溶性タンパク質として均質になるまで精製した。GFP-GR溶出液を使用し、ラマに週1回ずつ6週間かけて免疫した。免疫後、記載するようにファージディスプレイライブラリーを作製した(材料及び方法)。
【0130】
新規GR特異的ナノボディの創出。ヒトグルココルチコイド受容体をコードする全長遺伝子(NR3C1)をpcDNA3.1発現ベクターに導入し、mCherryでタグ付けした標的の融合体を作製した。ポリエチレンイミン(PEI)をトランスフェクション剤として使用してこのベクターをHEK293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、細胞50,000,000個を回収し、氷冷PBSバッファーで洗浄し、50μg/mLのDNAse I及びプロテアーゼインヒビターを添加した溶解バッファー(10mM Hepes pH7.4,10%グリセロール,20mMモリブデン酸Na,10μM ZnCl,2.5mM MgCl,2.5mM DTT,0.5%NP40代替品)5mL中でダウンス型ホモジナイザーを使用して溶解させた。20,000gで遠心分離することにより溶解物を清澄化した。mCherryでタグ付けしたGRを含有する上清を採取し、識別名CA16964(配列番号60)のmCherry特異的トラッパーで共有結合的に官能基化した磁気ビーズ5μLの存在下に、回転装置で4℃にて1時間インキュベートし、mCherryでタグ付けしたGRをこれらのビーズに固定化した。KingFisher(TM)Flex精製システム(ThermoScientific)を使用し、これらのビーズを捕集し、洗浄バッファー(10mM Hepes pH7.4,10%グリセロール,20mMモリブデン酸Na,10μM ZnCl,2.5mM DTT,0.05%Tween20)0.5mLで洗浄後、GFPでタグ付けした全長GRナノボディライブラリーを提示するファージ(ファージ数1.4×1014)の存在下に、4℃で1時間インキュベートした。次に、これらのビーズを洗浄バッファー0.5mLで9回洗浄した。特に本発明では、次に、mCherry特異的ストリッパーナノボディCA17302(配列番号61)を使用し、ファージ表面に提示させたGR特異的ナノボディと関係付けて、固定化mCherry-GRを選択的に溶出させた。会合したファージを含むmCherry-GR標的タンパク質溶出液を使用し、指数増殖期の大腸菌TG1細胞に感染させ、非振盪下に37℃で30分間インキュベートした。次に、(100μg/mLのアンピシリン及び2%wt/volのグルコースを添加した)LB培地を加え、培養液を37℃で終夜増殖させた。翌日、培養液を3000gで遠心分離し、(100μg/mLのアンピシリン及び20%(vol/vol)のグリセロールを添加した)LBに細胞ペレットを再懸濁し、後期使用に備えてグリセロールストックとして-80℃で保存した。トランスフェクトしていない(mCherryでタグ付けしたタンパク質を含んでいない)HEK293T溶解物に野生型mCherry(mCherry,大腸菌組換えタンパク質TP790040,OriGene)10μgをスパイクし、(陰性)対照として使用した。
【0131】
NANEXテクノロジーを使用してパニングによる3ラウンドの選択後、ファージを感染させて終夜増殖させたTG1細胞の10倍段階希釈液をLB中で平板培養することにより、濃縮サブライブラリーから個々のクローンを単離した。96個の個々のクローンを拾い、100μg/mLのアンピシリンを添加したLBを分注した96ウェルプレートで増殖させた。ナノボディをコードする遺伝子を含むプラスミドを精製し、配列決定し、配列ファミリーにグループ分けした(材料及び方法)。各配列ファミリーの代表的メンバーを選択し、それをコードするプラスミドを大腸菌WK6発現株に形質転換し、7種類の着目ナノボディ(配列番号62に対応するNbクローンCA18498、以下同様に、CA18499-配列番号63、CA18501-配列番号64、CA18502-配列番号65、CA18503-配列番号66、CA18585-配列番号67、CA18586-配列番号68)を発現させ、精製した。個々のナノボディを共免疫沈降アッセイ用NHS-アガロースビーズに結合させることにより、GR特異的ナノボディの特異性を検証した。mCherry-GR発現ベクターをトランスフェクトしたHEK293T細胞の溶解物の存在下に、これらのGR特異的ナノボディで官能基化したビーズを回転装置で4℃にて1時間インキュベートした。洗浄後、これらのビーズをSDS-PAGEローディング色素に再懸濁し、SDS-PAGEにロードした。分離したタンパク質をPVDF膜に転写し、ウェスタンブロットをGR特異的抗体(GR(G-5)マウスIgG2b mAb,sc-393232,Santa Cruz Biotechnology)で展開し、mCherryでタグ付けしたGRの存在を確認した(図17)。
【0132】
本実施例から、NANEXによる選択方法は、mCherry特異的トラッパー/ストリッパー対及びmCherryでタグ付けした標的タンパク質を使用して抗体ライブラリーから標的特異的抗体を容易に選択できると結論する。
【0133】
[実施例10]プレートフォーマットでGFP特異的トラッパー/ストリッパー対及び標的としてGFPタンパク質を使用して抗体ライブラリーから新規GFP特異的ナノボディを選択するためのNANEX。
【0134】
実施例1~9では、トラッパーナノボディを共有結合的に被覆した磁気ビーズ(Dynabeads(R)MyOne(TM)トシル基活性化,ThermoFisher)を使用してNANEXによる選択を実施している。本願に記載するNANEXによる選択方法が種々の型のマトリックスに広く応用可能であることを証明するために、本実施例では、特定の標的を非共有結合的相互作用によりプラスチックプレートの表面に固定化し、抗体の抗原特異的結合ドメインとそれらをコードする遺伝子型と関係付けて、この標的を溶出させるためにも、トラッパー/ストリッパー対を使用できることを示す。
【0135】
GFP抗体ライブラリーの作製。実施例10に記載する実験を実施するためにも、実施例1に記載した同一ライブラリーを使用した。
【0136】
新規GFP特異的ナノボディの創出。磁気ビーズと比較してプレートフォーマットで新規GFP特異的ナノボディを創出するために、ニュートラアビジンを被覆した平底96ウェルプレート(NuncイムノプレートF96MaxiSorp,439454,ThermoFisher)に識別名CA15816(配列番号2)のビオチン化GFP特異的トラッパーを固定化した。トラッパーを被覆したこれらのウェルを4%ミルク含有PBSでブロックし、PBSで5回洗浄した後、100nMのGFP(配列番号25)100μLを加えた。トラッパーを被覆したウェルのうちでGFPの存在下にインキュベートしなかったウェルを陰性対照として使用した。GFP(抗原)の存在下でインキュベーション時に、全ウェルを常法通りにPBSで5回洗浄し、ファージ表面に提示させたGFP抗体ライブラリーとともにインキュベートした。室温で1時間30分間のインキュベーション時間後に、プレートを常法通りに0.05%Tween20含有PBSで15回洗浄した。新規GFP特異的抗体を選択するために、トラッパーエピトープにオーバーラップするエピトープと競合的に結合する高親和性ストリッパーCA12760(配列番号1)を加えることにより、トラッパーとGFPの非共有結合的相互作用を選択的に妨害した。このために、GFP上でトラッパーと同一のエピトープと結合する高親和性CA12760(GFP特異的ストリッパー)とともにウェルを30分間インキュベートした。
【0137】
NANEXを使用する第2ラウンドの選択では、第1ラウンドから得られたアウトプットファージを使用して同一ストラテジーに従った。それらのCDR3配列に基づいて4種類の異なるナノボディファミリーを同定した。そのうち、3種類の最大ファミリーは、実施例1で創出され、バイオレイヤー干渉法(BLI)によりGFPと結合することが確認されたファミリーの3種類(CA17518-配列番号27、CA17520-配列番号29、CA17674-配列番号31)と同一であった。
【0138】
本実施例から、NANEXによる選択方法は、標的特異的トラッパーナノボディを被覆した種々の型のマトリックスを使用して抗体ライブラリーから標的特異的抗体を容易に選択できると結論する。
【0139】
材料及び方法
細胞。
EBY100(ATCC(R)MYA-4941(TM))。
遺伝子型:MATa AGA1::GAL1AGA1::URA3 ura352 trp1 leu2delta200 his3delta200 pep4::HIS3 prbd1.6R can1 GAL。
酵母GFP融合体コレクション,ThermoFisher,カタログ番号:95702(Huh et al.,2003)。
クローニング及びファージライブラリー作製用大腸菌TG1(エレクトロコンピテントセル;Lucigen,カタログ番号60502-1)。
ナノボディ発現用大腸菌WK6ノンサプレッサー株(su-)(Zell et al.,1987)。
HEK293T(ATCC(R)293T CRL-3216(TM))。
【0140】
ウェスタンブロッティング用モノクローナル抗体。
抗GFP:マウスmAb(GF28R),MA5-15256,ThermoFisher Scientific。
抗GR:(G-5)マウスIgG2b mAb,sc-393232,Santa Cruz Biotechnology。
抗c-Myc:マウスmAb(クローン9E10),11667203001,Roche。
【0141】
パニング用のナノボディを被覆した磁気ビーズ。GFPに特異的なトラッパーナノボディ(CA15816)を被覆した磁気ビーズ(Dynabeads(R)MyOne(TM)トシル基活性化,ThermoFisher)を使用してNANEXによる選択を実施した。製造業者のプロトコルに従い、磁気ビーズ50mgに2mgの精製CA15816(ビーズ1mg当たり抗体約40μg)を被覆した後、ビーズをPBS1mLに再懸濁した。
【0142】
NANEXによる選択用酵母溶解物。選択した各酵母クローンをYPB培地200mL中で(175rpmで振盪下に)30℃で72時間増殖させた。4000rpmで5分間遠心分離することにより細胞を捕集した。細胞ペレットに重みを付けて全ての個々の溶解物を正規化した。酵母溶解試薬Yper(Y-PER(TM)Plus,酵母タンパク質抽出試薬,ThermoFisher)を使用して細胞溶解物を調製し、(1mMのDTT及びEDTA不含プロテアーゼインヒビターを添加した)Yper2.5mLに細胞ペレット1gを再懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。細胞溶解物を20,000gで10分間遠心分離し、可溶性画分を分取し、-80℃で保存した。
【0143】
陰性対照。酵母EBY100をYPB培地200mL中で(175rpmで振盪下に)30℃で72時間増殖させた。4000rpmで5分間遠心分離することにより細胞を捕集した。酵母溶解試薬Yper(Y-PER(TM)Plus,酵母タンパク質抽出試薬,ThermoFisher)を使用して細胞溶解物を調製し、(1mMのDTT及びEDTA不含プロテアーゼインヒビターを添加した)Yper2.5mLに細胞ペレット1gを再懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。細胞溶解物を20,000gで10分間遠心分離し、可溶性画分を分取し、-80℃で保存した。
【0144】
抗体ライブラリーの作製。着目抗原、着目タンパク質、又は着目プロテオームを使用し、ラマに免疫した。免疫後、血液試料を採取し、標的又は着目タンパク質に対して特異性を有する親和性成熟ナノボディの多様なセットをクローニングした。トータルRNAの精製及びcDNAの合成のために、凝固していない血液から末梢血リンパ球(PBL)を単離した。このcDNAを鋳型とし、重鎖抗体の可変ドメイン(Nb)をコードするオープンリーディングフレームを増幅し、Nb断片を適切なファージディスプレイベクターにクローニングし、Pardon et al.,2014に従ってファージ粒子を作製した。
【0145】
GFP-ナノボディ選択手順。捕捉工程及び溶出工程を改変した以外は、主に記載されている通りに(Pardon et al.,2014)新規GFPナノボディのパニング又は選択を実施した。要約すると、GFPトラッパーを被覆したビーズを使用し、100μLの総体積となるように0.1nM~100nMの種々の濃度のGFPとともにインキュベートし、GFPをこれらのNANEXビーズ上にトラップした後、全磁気ビーズを常法通りに3回洗浄した。次に、ファージ表面に提示させたGFP抗体ライブラリーの存在下に、これらのビーズを96ウェルプレートでインキュベートした。4℃で2時間インキュベーション後に、ビーズを常法通りにPBS-Tweenで12回洗浄した。GFPに特異的なファージを溶出させるために、GFP上でトラッパーと同一のエピトープと結合する高親和性CA12760(GFP-ストリッパー)20μMとともに、100μLの総体積となるようにビーズを30分間インキュベートし、あるいは、トリプシン(250μg/mL)を用いてビーズからファージを30分間無菌(aspecific)下で溶出させた。
【0146】
KingFisher(TM)Flex精製システム(ThermoScientific)を使用した並行選択手順。パニング実験のために、CA15816を被覆した磁気ビーズ300μLをPBS/4%スキムミルク2200μLに再懸濁し、回転装置で4℃にて終夜ブロックした。パニングの前に、磁石を使用してビーズをPBSで2回洗浄した。その後、ビーズをPBS480μLに再懸濁した。
【0147】
12種類の異なる酵母溶解物を解凍し、各溶解物400μLを96ウェル深型プレートのウェルに加えた。各パニングの陰性対照として、EBY100株の溶解物400μLに精製GFP20μgを添加した。CA15816を被覆したプレブロック済み磁気ビーズ20μLを各ウェルに加えた。ビーズ及び溶解物を振盪プラットフォームで4℃にて1時間30分間インキュベートした。
【0148】
96ウェルプレートを使用してKingFisher(TM)Flex精製システムで選択の次工程を実施した。各ウェルから磁気ビーズを回収し、PBS-Tween500μLで30秒間洗浄した。次に、ファージ表面に提示させたプロテオームワイドな抗体ライブラリーとともに、これらのビーズを1時間30分間インキュベートした後、PBS-Tween500μLで30秒間ずつ9回洗浄した。GFPでタグ付けした抗原に特異的なファージを溶出させるために、GFP上でトラッパーと同一のエピトープと結合する高親和性CA12760(GFP-ストリッパー)20μMとともに、100μLの総体積となるようにビーズを30分間インキュベートした。
【0149】
選択されたナノボディバインダーの同定。ナノボディをコードする遺伝子を含むプラスミドを精製した後、MP57をシーケンシングプライマーとして使用して配列決定した。類似のCDR3配列(同一長で配列一致度が>80%)を有するナノボディを配列ファミリーにグループ分けした(Pardon et al.,2014)。同一の配列ファミリーに由来するナノボディが同一のB細胞系列に由来し、標的上の同一エピトープと結合することはよく知られている。
【0150】
ナノボディを被覆した抗原共免疫沈降法用アガロースビーズ。NHS-Activated Sepharose 4 Fast Flow(Cytiva)及び精製したナノボディを使用し、抗原特異的ナノボディビーズを作製した。製造業者のプロトコルに従い、ビーズとのカップリングを実施した。精製したナノボディ0.5mgをビーズ150μLとカップリングした後、PBS0.5mLに再懸濁した。
【0151】
ビオチン化。Thermo Scientific EZ-Linkスルホ-NHS-LC-ビオチン化キットを製造業者の指示に従って使用することにより、GFP(配列番号25)とGFP特異的NbCA15816(配列番号2)を夫々BLI又はNANEX選択用にビオチン化した。
【0152】
バイオレイヤー干渉法(BLI)によるGFPナノボディのエピトープマッピング。ストレプトアビジンを被覆したOctet(R)バイオセンサーを使用し、ビオチン化GFP(100nM)を捕捉した。未結合のビオチン化GFPを2回の洗浄工程(バッファーで60秒間)によりバイオセンサーから洗い流した。次に、ストレプトアビジンを被覆したOctet(R)バイオセンサーにGFPが結合しているものを、先ずGFPストリッパーである20nMのCA12760とともに400秒間インキュベートし、短時間洗浄した後、20nMのCA12760と種々の被験Nbのプレミックス中で400秒間インキュベートした。OctetRed(分子間相互作用解析装置)でデータを解析した。全アッセイは、0.1%のBSA及び0.005%のTween20を添加した25mM HEPES pH7.5,150mM NaCl中で室温にて実施した。
【0153】
配列表
配列番号1~68(配列番号25を除く)に示すアミノ酸配列は、本願中に指定するバインダーを表し、付記するようにC末端に6xHisタグ(本願ではHisタグとも言う)及びEPEAタグを付加した例で使用した。他の実施形態としては、タグを付加していない前記アミノ酸結合分子(例えば、夫々配列番号1及び配列番号2のVHH配列に相当する配列番号70及び配列番号71)、又はN末端又はC末端のアミノ酸配列の残りの部分に前記6xHis及びEPEAタグの代わりに又はそれに追加して代替タグを付加した前記アミノ酸結合分子の使用も挙げられる。
>配列番号1:CA12760 GFP-ストリッパーアミノ酸配列(C末端6xHis+EPEAタグを付加)
>配列番号2:CA15816 T54A/V55A突然変異体GFP-トラッパーアミノ酸配列(突然変異残基を太字下線で示す;C末端6xHis+EPEA)
【0154】
【化1】
>配列番号3:CA17440 FBA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号4:CA17441 FBA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号5:CA17442 FBA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号6:CA17443 FBA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号7:CA17451 PDC1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号8:CA17452 PDC1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号9:CA17444 SIS1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号10:CA17453 ALD6バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号11:CA17454 ALD6バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号12:CA17460 ALD6バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号13:CA17458 BMH1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号14:CA17459 BMH1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号15:CA17455 PGI1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号16:CA17456 PGI1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号17:CA17457 PGI1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号18:CA17530 SXM1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号19:CA17560 SSA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号20:CA17561 SSA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号21:CA17562 SSA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号22:CA17563 SSA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号23:CA17564 SSA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号24:CA17565 SSA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号25:GFPタンパク質
>配列番号26:CA17517 GFPバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号27:CA17518 GFPバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号28:CA17519 GFPバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号29:CA17520 GFPバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号30:CA17673 GFPバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号31:CA17674 GFPバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号32:CA17675 GFPバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号33:CA17676 GFPバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号34:CA8780 無関係のバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号35:CA17797 GR-LBDバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号36:CA17798 GR-LBDバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号37:CA17799 GR-LBDバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号38:CA17800 GR-LBDバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号39:CA17801 GR-LBDバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号40:CA18504 HSP104バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加
>配列番号41:CA18505 MET6バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号42:CA18508 SBA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号43:CA18509 SBA1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号44:CA18510 SOD1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号45:CA17938 ENO1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号46:CA17791 PGI1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号47:CA17792 PGI1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号48:CA17793 PGI1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号49:CA17794 PGI1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号50:CA17795 PGI1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号51:CA17796 PGI1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号52:CA17875 VGLUT1 バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号53:CA18425 VGLUT1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号54:CA18024 VGLUT1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号55:CA18437 rVGLUT1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号56:CA18438 rVGLUT1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号57:CA18439 rVGLUT1 バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号58:CA18440 rVGLUT1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号59:CA18441 rVGLUT1バインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号60:CA16964 mCherry-トラッパーバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号61:CA17302 mCherry-ストリッパーバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号62:CA18498 GRバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号63:CA18499 GRバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号64:CA18501 GRバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号65:CA18502 GRバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号66:CA18503 GRバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号67:CA18585 GRバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号68:CA18586 GRバインダーアミノ酸配列(Hisタグ及びEPEAタグを付加)
>配列番号69:6xHis-EPEAタグ
>配列番号70:CA12760 GFP-ストリッパーVHHアミノ酸配列
>配列番号71:CA15816 GFP-トラッパーVHHアミノ酸配列
【0155】
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
2024523921000001.app
【国際調査報告】