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特表2024-523934透明な化粧料及びパーソナルケア組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】透明な化粧料及びパーソナルケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240625BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240625BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023579708
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022066058
(87)【国際公開番号】W WO2023274707
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182747.2
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アシガウ,スアド
(72)【発明者】
【氏名】ディキンソン,ケルヴィン・ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ケルソー,ヘイリー
(72)【発明者】
【氏名】シモン,アメリ・ローラ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC022
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC782
4C083AC902
4C083AD042
4C083AD131
4C083AD132
4C083AD282
4C083BB05
4C083BB06
4C083BB60
4C083CC33
4C083DD01
4C083DD27
4C083EE03
(57)【要約】
i)0.1~2のカチオン性コンディショニングポリマー、ii)3~15のエトキシル化度でEO基を含む0.1~5のアニオン性界面活性剤を含む水性コンディショニング組成物であって、前記組成物は、濁度が、UV/vis分光光度計を使用し、濁度=(2.3×A/L)の式(式中、Aは、750nmで計測された試料の吸光度であり、Lは経路長で、通常1.0cmである)を適用して計測した場合に1cm-1未満である透明性を有し、前記組成物は、最大泡高さが10mlであり、前記最大泡高さは、9gの水で1gの組成物を希釈し、それを内径29mmの100mlメスシリンダに添加して開始体積(V1)を記録し、次いでシリンダに栓をして10秒間垂直に激しく振盪し、続いて60秒間静置した後、泡の高さを最も近い5ml目盛りまで目視で計測し、この値から溶液の開始体積(V1)を差し引くことによって計測される最大泡高さであり、前記組成物は、透明性、低起泡性を提供し、毛髪にコンディショニングの有益性を提供する、水性コンディショニング組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)0.1~2重量%のカチオン性コンディショニングポリマー、
ii)3~15のエトキシル化度でEO基を含む0.1~5重量%のアニオン性界面活性剤
を含む水性コンディショニング組成物であって、
前記組成物は、濁度が、UV/vis分光光度計を使用し、濁度=(2.3×A/L)の式(式中、Aは、750nmで計測された試料の吸光度であり、Lは経路長である)を適用して計測した場合に1cm-1未満である透明性を有し、
前記組成物は、最大泡高さが10mlであり、前記最大泡高さは、25℃及び大気圧で、内径29mmの100mlメスシリンダにおいて、9gの水で1gの組成物を希釈して開始体積(V1)を記録し、次いで前記シリンダに栓をして10秒間垂直に激しく振盪し、続いて60秒間静置した後、泡の高さを最も近い5ml目盛りまで計測し、この値から前記開始体積(V1)を差し引くことによって計測した場合の最大泡高さである、水性コンディショニング組成物。
【請求項2】
カチオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カチオン性界面活性剤の濃度が、前記組成物の全体の0.05~5重量%、好ましくは0.1~2重量%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性界面活性剤が、第四級アンモニウム界面活性剤及び第三級アンモニウム界面活性剤から選択される、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記カチオン性コンディショニングポリマーが0.1~1重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン性コンディショニングポリマーが多糖骨格を有し、前記多糖がカチオン性修飾を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記カチオン性修飾がアミノ基を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記エトキシル化アニオン性界面活性剤が、5~15のエトキシル化度nでエチレンオキシド基を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
前記エトキシル化アニオン性界面活性剤が、0.1~2重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
レオロジー調整剤を0.2~2重量%の量でさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
可溶化剤をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項12】
前記可溶化剤が、0.1~5重量%、より好ましくは0.2~2重量%、最も好ましくは0.25~1.5重量%の量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ニュートン粘度が、コーンプレート形状を有する標準レオメータ(例えば、ティー・エイ・インスツルメント社のDHR)を使用して25℃で計測した場合、0.001~5000Pa.s、好ましくは0.1~1000Pa.s、より好ましくは1~500Pa.s、最も好ましくは1~100Pa.sである、請求項1または2かに記載の組成物。
【請求項14】
請求項1または2に記載の組成物を毛髪に適用する工程を含む、濡れた毛髪を処理する方法。
【請求項15】
毛髪、好ましくは濡れた毛髪をコンディショニングするための、請求項1または2に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なコンディショニング組成物、及び前記組成物で毛髪を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料及びパーソナルケア組成物は、多くの場合、視覚的及び機能的な複数の属性を有することが要求される。例えば、シャンプー組成物及びヘアコンディショナー組成物は、一般に、消費者にアピールするために、毛髪を洗浄及び/又はコンディショニングする能力に加えて、特性を有することが要求される。
【0003】
クリアで透明な組成物は、視覚的に望ましい場合が多いが、配合が困難である。シリコーンなどの追加的な有益剤によって、濁りや変色などの望ましくない結果が生じる。
【0004】
湿式コンディショニングと乾式コンディショニングには異なる有益性がある。ヘアコンディショナーは、濡れた毛髪に高レベルのコンディショニング感(滑りやすさ、つや感、滑らかさ、もつれのほぐし易さ)を付与することが要求される。使用中の起泡は、消費者に強く嫌悪されている。
【0005】
製品のレオロジーは、消費者にとって重要な属性である。粘稠性及び降伏応力などのレオロジーが優れたコンディショナーは、向上したコンディショニングの有益性を提供することができ、消費者に好まれる。希薄なコンディショナー製品は強くいやがられている。
【0006】
ほとんどのコンディショナーは、もつれをほぐすのに非常に効率的な分散ラメラゲル相を含有しているため、有効である。しかし、これらは、その分散相のため不透明である。分散したラメラゲル相断片を、組成物が透明になる程十分に小さくする試みが過去になされてきたが、加工及び安定性の問題が生じている。他の既知の透明なコンディショナーは主にポリマー系であり、コンディショニングの有益性を付与するにはあまり有効ではない。
【0007】
米国特許出願公開第2014/186284号明細書(ロレアル社)には、ケラチン基質のためのコンディショニング組成物が開示されている。カチオン性界面活性剤と共に第四級材料であるPQ10を含有する透明なコンディショナー配合物が例示されている。
【0008】
米国特許出願公開第2004/131576号明細書(ロレアル社)には、第四級シリコーン及び液体脂肪アルコールを含む組成物、及び処理方法が開示されている。透明な組成物が想定され、例示されている。
【0009】
国際公開第00/06102号には、ヒドロキシエチルセルロースのカチオン性ポリマー、塩化セトリモニウム、及びラウリル硫酸アンモニウムを含むヘアケア用クリーム組成物が開示されている。この組成物は透明ではない。
【0010】
米国特許出願公開第2009/053161号明細書には、(a)リン脂質、ポリアミン、脂肪モノアミン、及び脂肪第四級アミンから選ばれる化合物、(b)非イオン性界面活性剤、(c)6~40個の炭素原子を有するアルキル(エーテル)カルボキシレート、及び6~40個の炭素原子を有するアルキル(エーテル)ホスフェートから選ばれる化合物、(d)非水溶性材料、及び(e)フィルム形成剤を含む水性組成物を適用することを含む、毛髪の管理方法が開示されている。
【0011】
米国特許出願公開第2011/318294号明細書には、(a)100個以上の第四級窒素基を有し、30,000~1,000,000の重量平均MWtを有するポリクオタニウム化合物、(b)脂肪アルコールの非アルコキシル化リン酸エステルであって、前記リン酸エステルが、前記リン酸エステルと前記ポリクオタニウム化合物との比が少なくとも2:1で、C12及びC18の鎖長を有する脂肪アルコール系の基を有し、前記リン酸エステル及び前記ポリクオタニウム化合物の総量が、当該パーソナルケア製品の重量の0.5%及び5%の範囲である、脂肪アルコールの非アルコキシル化リン酸エステル、及び(c)追加的な成分であって、前記パーソナルケア製品が、その製品で処理された毛髪サンプルの湿潤くし通り力を水に対して少なくとも約10ジュール低下させることができる、追加的な成分を含む組成物を適用することを含む、優れたコンディショニングを毛髪に付与する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/186284号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/131576号明細書
【特許文献3】国際公開第00/06102号
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/053161号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2011/318294号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
使用中の泡の生成を最小限にしながらも、優れた視覚特性と共に高レベルのコンディショニングの有益性を付与することができる改善された透明な化粧料及びパーソナルケア組成物が依然として必要とされている。
【0014】
驚くべきことに、本発明者らは、多数のエチレンオキシド基を含み、コンディショニング性能を損なうことなく優れた視覚的属性を与え、最小限の泡しか呈さないエトキシル化アニオン性界面活性剤と組み合わせて、カチオン性ポリマーを使用することにより、透明なコンディショナーを提供できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、第1の態様では、
i)0.1~2重量%のカチオン性コンディショニングポリマー、
ii)3~15のエトキシル化度でEO基を含む0.1~5重量%のアニオン性界面活性剤
を含む水性コンディショニング組成物であって、
前記組成物は、濁度が、UV/vis分光光度計を使用し、濁度=(2.3×A/L)の式(式中、Aは、750nmで計測された試料の吸光度であり、Lは経路長である)を適用して計測した場合に1cm-1未満である透明性を有し、
前記組成物は最大泡高さが10mlであり、前記最大泡高さは、25℃及び大気圧で、内径29mmの100mlメスシリンダにおいて、9gの水で1gの組成物を希釈して開始体積(V1)を記録し、次いでシリンダに栓をして10秒間垂直に激しく振盪し、続いて60秒間静置した後、泡の高さを最も近い5ml目盛りまで計測し、この値から開始体積(V1)を差し引くことによって計測した場合の最大泡高さである
【0016】
水性コンディショニング組成物が提供される。
【0017】
第2の態様では、本発明は、毛髪、好ましくは濡れた毛髪を処理する方法であって、本発明の第1の態様による組成物を毛髪に適用することを含む方法が提供される。
【0018】
また、好ましくは毛髪の摩擦係数を低下させることによって、濡れた毛髪をコンディショニングする方法であって、本発明の第1の態様の組成物を毛髪に適用することを含む方法も提供される。
【0019】
毛髪、好ましくは濡れた毛髪をコンディショニングするための、好ましくは毛髪の摩擦係数を低下させるための、本発明の第1の態様の組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の組成物は、透明で低起泡性である。
【0021】
本発明の組成物によって生成される起泡性のレベルは、任意の適切な方法を用いて計測することができる。好ましい方法は、以下のようなシリンダ振盪試験である。
【0022】
シリンダ振盪試験は、周囲条件下(25℃及び大気圧)で実施することが好ましい。
【0023】
試験製品(1g)を水(9g)で希釈し、100mlメスシリンダに添加する。開始体積(V1)を記録する。シリンダに栓をし、次いで10秒間激しく垂直に振盪する。さらに60秒間静置した後、泡の高さを最も近い5ml目盛りまで目視で計測する。この値から溶液の開始体積(V1)を差し引き、その計算結果が、泡に同伴された空気の量、すなわち「泡の高さ」を示す。
【0024】
適切な100mlガラスメスシリンダは、VWR社から供給されたデュラン製のものであり、内径が29mmである。
【0025】
この方法によると、本発明の組成物によって生成される泡の最大高さは、10ml、好ましくは7ml、より好ましくは5mlである。
【0026】
透明性を評価する適切な方法は、濁度を計測することである。UV-vis分光法を用いて、配合物の濁度を決定してもよい。適切な分光光度計の例としては、日本分光社V-650分光光度計がある。
【0027】
液体製品における半透明性(又は濁度)は、光を直線状に試料を透過させるのではなく散乱させる懸濁粒子又はコロイド粒子に起因する。
【0028】
濁度は、次式を用いて計算されてもよく、2.3に吸光度を掛け、試料の経路長で割ったもの、すなわち濁度=(2.3×A/L)であり、式中、Aは750nmで計測された試料の吸光度であり、Lは経路長である。好ましくは、1.0cmの経路長が使用される。
【0029】
UV/可視分光光度計を使用し、濁度=(2.3*A/L)の式(式中、Aは750nmで計測された試料の吸光度であり、Lは経路長である)を適用して計測した場合の濁度が、1cm-1未満、好ましくは0.5cm-1未満、より好ましくは0.4cm-1未満、さらに好ましくは0.25cm-1未満、最も好ましくは0.1cm-1未満である場合、組成物は透明であると言われる。
【0030】
カチオン性コンディショニングポリマー
本発明の組成物は、少なくとも1つのカチオン性コンディショニングポリマーを含む。
【0031】
カチオン性コンディショニングポリマーは、組成物の全重量に対して0.1~2重量%、好ましくは0.1~1重量%の量で存在する。
【0032】
好ましくは、当該ポリマーは多糖骨格を有し、多糖はカチオン性修飾を含む。好ましくは、カチオン性修飾はアミノ基、例えば第四級アンモニウム基を含む。
【0033】
好ましくは、多糖骨格はセルロース系である。最も好ましくは、セルロース系骨格はヒドロキシエチルセルロースである。
【0034】
好ましいポリマーは、ポリクオタニウム-10(Polyquaternium-10:PQ10)、例えばダウ社のユーケア(UCare、商標)ポリマーJR-30Mとして市販されている。
【0035】
エトキシル化アニオン性界面活性剤
本発明の組成物は、エトキシル化アニオン性界面活性剤を含む。可溶性のエトキシル化アニオン性界面活性剤は、3~15、好ましくは5~15のエトキシル化度(n)でエチレンオキシド(ethylene oxide:EO)基を含む。
【0036】
エトキシル化アニオン性界面活性剤は、好ましくは、全組成物の重量に対して0.1~5重量%、好ましくは0.1~2重量%の量で存在する。
【0037】
好ましくは、エトキシル化アニオン性界面活性剤は、直鎖状である。
【0038】
当該アニオンは、好ましくはリン酸基又は硫酸基である。
【0039】
好ましいエトキシル化アニオン性界面活性剤の例としては、オレス-10-リン酸及びPPG-5-セテス-10リン酸がある。
【0040】
これらはそれぞれ、クロダホス(Crodafos、商標)O10A及びクロダホス(Crodafos、商標)SGとしてクローダ社から入手可能である。
【0041】
カチオン性界面活性剤
当該組成物は、好ましくはカチオン性界面活性剤を含む。カチオン性界面活性剤の存在は、透明性の助けとなる。これは、他の構成物、例えば香料が添加される場合に特に有用である。
【0042】
好ましいカチオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム界面活性剤及び第三級アンモニウム界面活性剤から選択されてもよい。
【0043】
好ましいカチオン性界面活性剤としては、ココアミンエトキシレート、例えば、ヌーリオン社から入手可能なエトミーン(Ethomeen、商標)C/25又はC/15が挙げられる。また、PEG-15コカミン及びPEG-2コカミン、並びに塩化セチルトリメチルアンモニウム塩化セチルトリメチルアンモニウム(cetyltrimethylammonium chloride:CTAC)。
【0044】
本発明の組成物は、水性組成物に溶解したときに正に帯電するアミノ部分又は第四級アンモニウムの親水性部分を好ましくは含むカチオン性界面活性剤を含む。
【0045】
適切なカチオン性界面活性剤の例は、以下の一般式に対応する。
[N(R1)(R2)(R3)(R4)]+(X)-
式中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、
(a)1~22個の炭素原子の脂肪族基、又は
(b)水素、若しくは、22個までの炭素原子を有するポリオキシアルキレン基、ヒドロキシアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アルキルアミド基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、アルキルアリール基
から選択され、
Xは塩形成アニオンであり、例としては、ハロゲン化物、(例えば、塩化物、臭化物)、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、硝酸リン酸塩、硫酸塩、及びアルキル硫酸塩の遊離基から選択されるものが挙げられる。
【0046】
脂肪族基は、炭素原子及び水素原子に加えて、エーテル結合、及びアミノ基などの他の基を含有することができる。より長鎖の脂肪族基、例えば約12個以上の炭素の脂肪族基は、飽和又は不飽和であり得る。
【0047】
上記一般式のこのような第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤の具体例としては、PEG-15コカミン及びPEG-2コカミン、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)及びこれらの塩があり、その塩化物は、他のハロゲン化物(例えば臭化物)、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、硝酸リン酸塩、硫酸塩、又はアルキル硫酸塩で置き換えられる。
【0048】
上記一般式のカチオン性界面活性剤の好ましい種類では、R1は、C~C22の飽和又は不飽和、好ましくは飽和のアルキル鎖であり、R、R、及びRは、それぞれ独立して、CH及び(CHCHO)nHから選択され、好ましくは(CHCHO)nHである。
【0049】
カチオン性界面活性剤の濃度は、全組成物の、好ましくは0.05~5重量%、好ましくは0.1~2重量%である。
【0050】
さらなる酸を使用してアミンをプロトン化してもよい。適切な酸としては、塩酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、酸は、酢酸、酒石酸、塩酸、乳酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
上記のカチオン性界面活性剤のいずれかの混合物も、適切であり得る。
【0052】
レオロジー調整剤
本発明の組成物は、好ましくは、組成物の毛髪への展着性を向上させるためのレオロジー調整剤を含む。これにより、組成物を増粘させる。
【0053】
レオロジー調整剤は、存在する場合、好ましくは、0.2~2重量%、最も好ましくは0.5~1.5重量%の量で存在する。
【0054】
好ましくは、当該構造化剤は、好ましくはセルロースに由来する多糖である。
【0055】
好ましくは、構造化剤は非イオン性である。
【0056】
好ましくは、構造化剤は、500kDa~2MDaの範囲の分子量を有する。
【0057】
適切な構造化剤の例としては、例えば、アシュランド社から入手可能な範囲で、ナトロゾールの商品名で入手可能なヒドロキシエチルセルロース(Hydroxy Ethyl Cellulose:HEC)が挙げられる。別の適切な例としては、ヌーリオン社から入手可能なアメイズ(Amaze)XTがある。
【0058】
好ましいレオロジー調整剤としては、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。最も好ましい構造化剤はヒドロキシエチルセルロースである。
【0059】
本発明の組成物は、ニュートン粘度が、コーンプレート形状を有する標準レオメータ(例えば、ティー・エイ・インスツルメント社のDHR)を使用して25℃で計測した場合、好ましくは0.001~5000Pa.s、好ましくは0.1~1000Pa.s、より好ましくは1~500Pa.s、最も好ましくは1~100Pa.sである。
【0060】
可溶化剤
当該組成物は、透明性を向上させるために可溶化剤を含んでもよい。
【0061】
可溶化剤は、香料などの構成物の可溶化を助けるために特に有用である。
【0062】
好ましい可溶化剤は、性質が非イオン性である。それは、非イオン性界面活性剤及び非イオン性乳化剤から選択されてもよい。
【0063】
好ましい可溶化剤は、クローダ社から入手可能なポリソルベート20、例えばツイーン(Tween、商標)、及びラウレス-7、例えばサソール社のマルリパル(Marlipal)24/70である。
【0064】
可溶化剤は、存在する場合、全組成物の重量に対して、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.2~2重量%、最も好ましくは0.25~1.5重量%の量で存在する。
【0065】
本発明の組成物は水を含む。当該組成物は、適切には、全組成物の重量に対して60~98重量%、好ましくは80~97重量%、最も好ましくは90~97重量%の量の水を含む。
【0066】
本発明の組成物は、好ましくは、透明性に影響を及ぼす(すなわち溶解しない)分散相、例えばシリコーンエマルジョンを含まない。
【0067】
当該組成物のpHは、好ましくは3~7、より好ましくは3.5~6である。
【0068】
さらなる成分
本発明による組成物は、毛髪組成物に共通する複数の成分のいずれかを含んでもよい。
【0069】
他の成分としては、沈着ポリマー、防腐剤、着色剤、グリセリン及びポリプロピレングリコールなどのポリオール、EDTAなどのキレート剤、ビタミンEアセテートなどの酸化防止剤、芳香剤、抗菌剤、及び、pH調整剤、例えば酸、好ましくは有機酸が挙げられ得る。これらの成分のそれぞれは、その目的を達成するのに有効な量で存在する。
【0070】
好ましくは、さらなる成分としては、香料、防腐剤、及び抗菌剤が挙げられる。
【0071】
上記活性成分のいずれかの混合物もまた、使用されてもよい。
【0072】
一般に、そのような成分は、個々に、全組成物の重量に対して5重量%まで、好ましくは2%、最も好ましくは1%までの濃度で含まれる。
【0073】
好ましくは、本発明の組成物は鉱油を含まない。本発明の文脈において、含まないとは、全組成物の重量に対して0.4重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満、いっそう好ましくは0.001重量%未満、よりいっそう好ましくは0.0001重量%未満、最も好ましくは0重量%の鉱油を有することを意味する。
【0074】
本発明の実施形態を以下の実施例で提供するが、特に明記しない限り、全てのパーセンテージは、全重量に基づく重量によって示されている。
【0075】
[実施例]
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。実施例において、かつ本明細書全体を通して、特に指示しない限り、全てのパーセンテージは全組成物に基づく重量によるものである。
【0076】
[実施例1]
本発明による組成物1~5並びに比較組成物A及びBの調製
以下の組成物を調製した。ここで、1~5は本発明によるものであり、Aは比較例である。従来技術を代表する組成物として、比較例Bも調製した(米国特許出願公開第20090053161号明細書の実施例1の実施例「I」)。
【0077】
組成物1は、カチオン性コンディショニングポリマー(ポリクオタニウム-10)と、10個のEO基を含むエトキシル化アニオン性界面活性剤(オレス-10-リン酸)とを含む。
【0078】
組成物2~5は、さらなる任意選択の成分を含む。
【0079】
組成物Aは、オレス-10の代わりに、ラウリルエーテルリン酸ナトリウム(SLES)1EOを含む。
【0080】
組成物Bは、ベヘントリモニウムクロリド(BTAC)(1重量%)、プロセチルAWS(PPG-5-セテス-20)(25重量%)、クロダホスNIO酸(オレス-10リン酸)(1重量%)、鉱油(2重量%)、及び、(3重量%の)AMPで中和されたレシン(Resyn)2829-30を含む。
【0081】
香料が存在する場合、香料を可溶化し、透明性を維持するために、カチオン性界面活性剤及びポリソルベート-20が存在する。
【0082】
・組成物1-カチオン性界面活性剤、ポリソルベート、芳香剤、又はHECなし
・組成物2-1と同じであるがHECあり
・組成物3-2と同じ、カチオン性界面活性剤あり
・組成物4-香料、可溶化剤、及びカチオン性界面活性剤を含有
・組成物5-香料、可溶化剤、カチオン性界面活性剤、及びHECを含有
・比較組成物A、5と同じであるが、オレス-10(10EO)をラウリルエーテルリン酸ナトリウム(SLES)1EOに置き換え
・比較組成物B、先行技術のもの
【0083】
市販のシャンプー「Dove Intensive Repair Shampoo」を、泡発生試験の比較として使用した。この製品は、通常、約12重量%のSLESを含有する。
【0084】
組成物1~5及び組成物Aの組成を下記の表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1の各組成物を以下のように調製した。
1.水(300ml)を25℃で第1の容器に入れた。
2.ヒドロキシエチルセルロースが存在する場合は、撹拌しながら2分間かけてヒドロキシエチルセルロースを水に添加した。
3.カチオン性コンディショニングポリマー(ポリクオタニウム-10)を添加し、その混合物をさらに2分間撹拌した。
4.カチオン性界面活性剤(PEG-15コカミン又はPEG-2コカミン)が存在する組成物では、カチオン性界面活性剤を添加し、その混合物をさらに2分間撹拌した。
5.第2の容器で、アニオン性界面活性剤を任意の微量成分と共に70℃の水(35ml)に添加し、溶解するまで穏やかに撹拌した。
6.次いで、得られた高温溶液を第1の容器内の混合物に添加し、これを100rpmで30分間撹拌しながら40℃に加熱した後、室温まで冷却した。最後に、100rpmで撹拌を続けながら、残りの任意成分(芳香剤、ポリソルベート20、クエン酸)を添加した。
【0087】
比較例Bの組成物の組成を下記の表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
表1の各組成物を以下のように調製した。
1.カチオン性界面活性剤を適切な容器に添加し、熱水(70℃)で水和させた。
2.次いで、アニオン性界面活性剤を、混合しながら添加した。
3.次いで、鉱油を、混合しながら添加した
4.次いで、中和したレシン28290-30ポリマーを添加し、混合した。
5.第2の容器で、クロダホスNIO酸を70℃の水(35ml)に添加し、溶解するまで穏やかに撹拌した。
【0090】
全ての処理は、(オーバーヘッドスターラで)低剪断を用いて実施した。
【0091】
アニオン性界面活性剤、鉱油、スタイリングポリマー溶液、及び非イオン性界面活性剤の添加は、当該溶液を冷却している間に行った。
【0092】
[実施例2]
本発明による組成物1、2、4及び5並びに比較組成物Aの透明性
コンディショナー組成物1、2、4及び5並びにAの透明性を、濁度を計測することによって評価した。コンディショナー配合物は、濁度が1.0cm-1未満である場合、透明であると言われる。
【0093】
各配合物の透明性を、日本分光社V-650分光光度計を使用して計測した。750nmでの吸光度を、式:濁度=(2.3×吸光度(Absorbance))/経路長(式中、Aは、750nm、経路長1.0cmで計測した試料の吸光度である)に従って、濁度値に変換した。
【0094】
組成物1、2、4及び5並びにAの濁度を、下記の表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
透明な試料は、1.0cm-1未満の濁度を有する。
【0097】
Aは透明性を呈しているが、高起泡性組成物である(下記の表3)。
【0098】
[実施例3]
本発明による組成物1、2、4及び5並びに比較組成物Aの起泡特性
消費者は、使用中のヘアコンディショナーの起泡を許容しない。泡は、洗浄性に強く関係するものであり、ケアには関係しない。
【0099】
コンディショナー組成物1、2、4及び5並びにAの起泡レベルを評価した。
【0100】
市販のシャンプー「Dove Intensive Repair Shampoo」を、比較としてここでも使用した。
【0101】
シリンダ振盪泡試験
本発明の組成物によって生成される起泡のレベルを、周囲温度(25℃)及び大気圧で、以下の方法を用いて計測した。
【0102】
試験製品1gを水9gで希釈し、VWR社から供給された内径29mmのデュラン製の100mlガラスメスシリンダに添加した。開始体積(V1)を記録した。シリンダに栓をし、次いで10秒間激しく垂直に振盪した。さらに60秒間静置した後、泡の高さを最も近い5ml目盛りまで目視で計測した。この値から溶液の開始体積(V1=10ml)を差し引いて、泡に同伴された空気の量を計算した。
【0103】
結果を表4に示す。
【0104】
【表4】
【0105】
本発明の組成物は、泡のレベルが非常に低いことが分かる。比較例Aでは、わずか1重量%のSLES-1EOであっても、高度にエトキシル化されたリン酸エステルを使用した場合よりも著しく多くの泡が生成されている。
【0106】
[実施例4]
組成物2、4及び5並びにAのコンディショニング特性
毛髪の摩擦のレベルは、コンディショニング処理によって付与される滑らかさのレベルの指標として用いられてもよい。
【0107】
摩擦係数は、摩擦力と垂直力との比として定義される無次元数である。
【0108】
毛髪(5gのヘアピース)を最初に水で濡らし、1gの組成物(2、4及び5並びにA)で処理した後、さらに7mlの水で希釈した。
【0109】
次いで、6つの力変換器を使用して三次元で力及びトルクを計測する特注の計装フォースプレート上で、実際の指でヘアピースをなでることによって、摩擦係数(Coefficent of friction:CoF)を決定した。
【0110】
市販の透明なコンディショナー「L’Oreal Fibrology Transparent Conditioner」も、比較として使用した。
【0111】
結果を表5に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
本発明による組成物によって、毛髪に低摩擦性が提供されていることが分かる。
【0114】
[実施例5]
組成物5に対する比較組成物Bのコンディショニング特性
先行技術を代表する比較組成物Bで処理した毛髪の摩擦レベルを、上記と同じ方法で計測した。結果を下記の表に示す。
【0115】
【表6】
【0116】
本発明による組成物5により、従来技術の組成物よりもかなり低い摩擦性が、濡れた毛髪に提供されていることが分かる。
【0117】
また、再処理した実施例では、粘稠性が非常に高く、本発明の好ましい粘度限界をはるかに超えていることが観察された。さらに、その組成物は、外観が不透明であった。
【国際調査報告】