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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】三次元体内インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/22 20060101AFI20240625BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61L27/22
A61L27/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579749
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 FR2022051265
(87)【国際公開番号】W WO2022269215
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】2106827
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】521141372
【氏名又は名称】ウニベルシテ クラウデ バーナード リオン 1
(71)【出願人】
【識別番号】518369442
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(シーエヌアールエス)
(71)【出願人】
【識別番号】523484909
【氏名又は名称】エコール サントラル ド ナント
(71)【出願人】
【識別番号】523482318
【氏名又は名称】エコール スプ シミ フィス エレクトロニーク リヨン
(71)【出願人】
【識別番号】523484910
【氏名又は名称】ヒールシェイプ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マルケット,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シェルブラン,オードリー
(72)【発明者】
【氏名】ドス サントス,モーガン
(72)【発明者】
【氏名】ビダル,ルチアーノ
(72)【発明者】
【氏名】プチオ,エマ
(72)【発明者】
【氏名】シャスタニエ,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】テポット,アメリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴデ,バティスト
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081CC05
4C081CD04
4C081CD15
4C081CD18
4C081DA12
4C081DB03
(57)【要約】
本発明は、架橋されたアルギン酸塩とゼラチンとを含むヒドロゲルを含む三次元体内インプラント、特に乳房インプラントに関する。本発明によるインプラントのヒドロゲルは、フィブリノーゲンをさらに含んでもよい。本発明によるインプラントは、無細胞であり、即ち、製造の際に細胞を含まない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋されたゼラチンと、架橋されたアルギン酸塩とを含むヒドロゲルを含む三次元体内インプラントであって、前記ヒドロゲルが、1kPa~1000kPaの機械的強度を有すること、および前記インプラントが、少なくとも1つの多孔区分を有し、前記多孔区分が、孔のそれぞれが1つの孔径を有する複数の孔を含み、前記多孔区分が、100μm~10,000μmの間の全孔隙率を有し、前記全孔隙率が、前記多孔区分内で測定された前記孔径の平均値に対応することを特徴とする、三次元体内インプラント。
【請求項2】
前記多孔区分の前記孔が、均一な孔径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記多孔区分の前記孔が、均一に分布する、請求項1および2のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項4】
前記多孔区分の前記孔が、それぞれ均一な配向を有する中心軸に沿って延在する、請求項1~3のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項5】
前記多孔区分の前記孔の前記中心軸が、均一な間隔で配置される、請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
前記多孔区分の前記孔が、それぞれ均一な幾何学的構造を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項7】
前記多孔区分の前記孔が、それぞれが均一な厚さを有する材料の束により互いに隔てられる、請求項1~6のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項8】
前記ゼラチンが、酵素、好ましくはトランスグルタミナーゼにより架橋される、請求項1~7のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項9】
複数の多孔区分を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項10】
前記複数の多孔区分が、前記孔が異なる孔径および/または形状を有する少なくとも2つの多孔区分を含む、請求項9に記載のインプラント。
【請求項11】
前記多孔区分が、前記インプラント全体にわたって分布した孔径の勾配を形成するように配置され、前記多孔区分が、孔径の昇順および降順から選択される順序で勾配方向に沿って互いに連なる、請求項10に記載のインプラント。
【請求項12】
- 前記インプラントの全体積の5%~40%、好ましくは20%~40%を表し、500マイクロメートル~5000マイクロメートルの間、特に250マイクロメートル~800マイクロメートルの孔径を有する、基部を形成する第一の多孔区分と、
- 前記インプラントの前記全体積の20%~70%、好ましくは30%~50%を表し、500マイクロメートル~2500マイクロメートルの間、特に100マイクロメートル~250マイクロメートルの孔径を有する、コアを形成する第二の多孔区分と、
- 前記インプラントの前記全体積の5%~40%、好ましくは10%~40%表し、1000マイクロメートル~10000マイクロメートルの間、特に1000マイクロメートル~2500マイクロメートルの孔径を有する、外殻を形成する第三の多孔区分と、
を含む、請求項10に記載のインプラント。
【請求項13】
少なくとも1つの非多孔区分を有し、前記非多孔区分が99%より大きい充填率を有する、前記請求項のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項14】
前記少なくとも1つの非多孔領域が、前記多孔区分を取り囲む外周部を含む、請求項13に記載のインプラント。
【請求項15】
前記少なくとも1つの多孔区分が、前記インプラントの実質的部分に及ぶ、請求項1~14のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項16】
それぞれが複数のメッシュで構成された1つのメッシュを有する複数の層からなり、前記メッシュが前記孔を形成するように前記層が互いの最上部に積み重ねられる、前記請求項のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項17】
各層の前記メッシュが、均一なメッシュサイズを有する、請求項16に記載のインプラント。
【請求項18】
各層の前記メッシュが、均一に分布する、請求項16および17のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項19】
各層の前記メッシュが、それぞれ均一な配向を有する中心メッシュ軸の周りに延在する、請求項16~18のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項20】
各層の前記メッシュの前記中心メッシュ軸が、均一な間隔で配置される、請求項19に記載のインプラント。
【請求項21】
各層の前記メッシュが、それぞれ均一な幾何学的構造を有する、請求項16~20のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項22】
各層の前記メッシュが、それぞれが均一な厚さを有する材料の束により互いに隔てられる、請求項16~21のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項23】
0.05mL~3L、好ましくは100mL~600mLの範囲内の体積を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項24】
乳房インプラントであることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項25】
- ゼラチンとアルギン酸塩とを含むヒドロゲルを調製するステップと、
- 少なくとも1つの多孔区分を形成するように前記ヒドロゲルを三次元で成形するステップであって、前記多孔区分が、前記孔のそれぞれが1つの孔径を有する複数の孔を有し、前記多孔区分が100μm~10000μmの間の全孔隙率を有し、前記全孔隙率が前記多孔区分内で測定された前記孔径の平均値に対応するステップと、
- 前記ヒドロゲルを、少なくとも1種の二価カチオン、好ましくはカルシウムおよびトランスグルタミナーゼと架橋するステップであって、前記ヒドロゲルが1kPa~1000kPaの機械的強度を有するステップと
を連続して含む製造工程により得ることが可能な三次元体内インプラント。
【請求項26】
前記架橋ステップの際、前記二価カチオンおよび前記トランスグルタミナーゼが、同時に添加される、前記製造工程により得ることが可能な、請求項25に記載の三次元体内インプラント。
【請求項27】
前記ヒドロゲルが、0.5%~3%のアルギン酸塩、および1%~17.5%のゼラチンを含む、前記製造工程により得ることが可能な、請求項25および26のいずれか1項に記載の三次元体内インプラント。
【請求項28】
前記ヒドロゲルが、架橋されたフィブリノーゲン、好ましくは2%までの架橋されたフィブリノーゲンをさらに含む、前記製造工程により得ることが可能な、請求項25~27のいずれか1項に記載の三次元体内インプラント。
【請求項29】
前記架橋ステップの際にトロンビンを用いることをさらに提供する、前記製造工程により得ることが可能な、請求項25~28のいずれか1項に記載の三次元体内インプラント。
【請求項30】
前記三次元成形ステップの際に、積層造形工程、特に3Dプリンティングが実施される、前記製造工程により得ることが可能な、請求項25~29のいずれか1項に記載の三次元体内インプラント。
【請求項31】
滅菌ステップをさらに含む、前記製造工程により得ることが可能な、請求項25~30のいずれか1項に記載の三次元体内インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生体材料の全般的分野、特にほとんどの軟部組織を交換および/もしくは増量するため、ならびに/または骨格と皮膚の間の空間を充填するため、または皮膚に縫合するための、ヒトの身体/生存生物内に導入されることが意図されるインプラントに関する。
【0002】
本発明は、架橋されたアルギン酸塩とゼラチンとを含むヒドロゲルを含む三次元体内インプラント、詳細には一過性または永続的インプラントに関する。本発明のインプラントは、既定の特に有利な孔隙率および機械的強度を有する。これらのインプラントはまた、無細胞であり、即ち細胞を含まず、特に生存細胞が、製造の際にインプラントに取り込まれない。本発明の全ての態様において、ヒドロゲルは、フィブリノーゲンをさらに含んでもよい。
【背景技術】
【0003】
最先端技術
アルギン酸塩とゼラチンとを含むヒドロゲルベースの構造は、最先端技術から公知であるが、これらの構成要素が通常、限定的な弾性(特に、低いヤング率)を有するため、それらは十分な機械的強度を欠き、得られた構造の取扱いが困難になる。
【0004】
Armin Vedadghavami et al., 2017, Acta Biomaterialia 62, 42-63、Marta Calvo Catoira et al., 2019, Journal of Materials Science: Materials in Medicine, 30:115、およびGils Jose et al., 2020, Current Medicinal Chemistry, 27, 2734-2776による近年の科学的レビューでは、天然ヒドロゲル、特にアルギン酸塩およびゼラチンベースのヒドロゲルの生体適合特性を強調しているが、機械的性質に関するそれらの限界も強調している。実際にはこれらの天然ポリマーは、操作可能および/または埋込み可能なデバイスの製造にとって、ならびに複雑な構造および5cmより大きな寸法を有する製品の実施にとっては過度に低い機械抵抗を有し、こうしてこの技術の臨床適用が限定される。先行技術で得られた構造の機械的性質は、操作に適したものにするには依然として不十分である。その上、ヒトまたは動物の身体に埋め込まれ、必要に応じて縫合されることが意図される構造の場合、適当な機械的性質を有し、生存する細胞または組織との接触した場合のその分解性があまり急速でない構造を得ることが、必要である。
【0005】
再生式の再吸収可能なインプラントを実現するためには、巨視的孔径(例えば、100μmより大きい)を有する構造が、非常に好都合である。さらにこの型の医療適用は多くの場合、体積の大きなインプラントを必要とする。
【0006】
今日まで、文献には、ヒドロゲルで構成された任意のマクロ多孔性インプラント、特に体積の大きなものが記載されていないが、それは、ヒドロゲルからの大きな多孔性物体の製作が、ヒドロゲルの弱い機械的性質により限定されるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
概要
本発明の目的の1つは、先行技術のインプラントの欠点を克服すること、および主な構成要素が天然起源のものである生体適合性インプラントを提供することを可能にすることである。
【0008】
実際には、本発明のインプラントは、特に(i)導入された場合に天然組織と類似する構成要素の機械的強度、(ii)経時的安定性、(iii)可撓性、(iv)顕著な引裂き抵抗および衝撃抵抗、ならびに(v)宿主生物の細胞による生着に関して、特に有利で革新的な特徴を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様によれば、本発明は、架橋されたゼラチンと架橋されたアルギン酸塩とを含むヒドロゲルを含む三次元体内インプラントであって、前記ヒドロゲルが、1kPa~1000kPaの機械的強度を有し、前記インプラントが、少なくとも1つの多孔区分を有し、多孔区分が、孔のそれぞれが1つの孔径を有する複数の孔を含み、多孔区分が、100μm~10,000μmの間の全孔隙率を有し、全孔隙率が、多孔区分内で測定された孔径の平均値に対応する、三次元体内インプラントを提供する。
【0010】
多孔区分の孔は、均一な孔径を有してもよく、即ち、互いに15%以下だけ異なってもよい。
【0011】
多孔区分の孔は、均一に、即ち均等に分布してもよい。
【0012】
多孔区分の孔は、それぞれ均一な配向、即ち互いに20°以下だけ異なる配向を有する中心軸に沿って延在してもよい。
【0013】
多孔区分の孔の中心軸は、均一な間隔、即ち、互いに15%より大きく異ならない間隔で配置されてもよい。
【0014】
多孔区分の孔は、それぞれ均一な幾何学的構造を有してもよく、即ちその輪郭が、重複する部分または並行である部分と50%より大きく重畳されてもよい。
【0015】
多孔区分の孔は、それぞれが均一な厚さ、即ち互いに15%より大きく異ならない厚さを有する材料の束により互いに隔てられてもよい。
【0016】
ゼラチンは、酵素、好ましくはトランスグルタミナーゼにより架橋されてもよい。
【0017】
インプラントは、複数の多孔区分を含んでもよい。
【0018】
前記複数の多孔区分は、孔が異なる孔径および/または形状を有する少なくとも2つの多孔区分を含んでもよい。
【0019】
多孔区分は、インプラント全体に分布された孔径の勾配を形成して、孔径の昇順および降順から選択される順序で多孔区分が勾配方向に沿って互いに連なるように、配置されてもよい。
【0020】
インプラントは、
- インプラントの全体積の5%~40%、好ましくは20%~40%を表し、500マイクロメートル~5000マイクロメートルの間、特に250マイクロメートル~800マイクロメートルの孔径を有する、基部を形成する第一の多孔区分と、
- インプラントの全体積の20%~70%、好ましくは30%~50%を表し、500マイクロメートル~2500マイクロメートルの間、特に100マイクロメートル~250マイクロメートルの孔径を有する、コアを形成する第二の多孔区分と、
- インプラントの全体積の5%~40%、好ましくは10%~40%を表し、1000マイクロメートル~10000マイクロメートルの間、特に1000マイクロメートル~2500マイクロメートルの孔径を有する、外殻を形成する第三の多孔区分と、
を含んでもよい。
【0021】
インプラントは、少なくとも1つの非多孔区分を含んでもよく、該非多孔区分は、99%より高い充填率を有する。
【0022】
少なくとも1つの非多孔領域は、多孔領域を取り囲む外周部を含んでもよい。
【0023】
前記少なくとも1つの多孔区分は、インプラントの実質的部分、即ち、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、特に少なくとも90%、例えば少なくとも95%に及んでもよい。
【0024】
インプラントは、複数の層からなり、層のそれぞれが複数のメッシュからなる1つのメッシュを有して、メッシュが孔を形成するように層が互いの最上部に積み重ねられてもよい。
【0025】
各層のメッシュは、均一なメッシュサイズ、即ち、互いに15%以下異なるメッシュサイズを有してもよい。
【0026】
各層のメッシュは、均一に、即ち均等に分布してもよい。
【0027】
各層のメッシュは、それぞれ均一な配向、即ち互いに20°より大きく異ならない配向を有する中心メッシュ軸の周りに延在してもよい。
【0028】
各層のメッシュの中心メッシュ軸は、均一な間隔、即ち互いに対して15%より大きく異ならない間隔で配置されてもよい。
【0029】
各層のメッシュは、均一な幾何学的構造を有してもよく、即ちその輪郭が、重複する部分または並行である部分と50%より大きく重なってもよい。
【0030】
各層のメッシュは、それぞれが均一な厚さ、即ち互いに15%より大きく異ならない厚さを有する材料の束により互いに隔てられてもよい。
【0031】
インプラントは、0.05mL~3L、好ましくは100mL~600mLの範囲内の体積を有してもよい。
【0032】
インプラントは、乳房インプラントであってもよい。
【0033】
別の態様によれば、本発明は、
- ゼラチンとアルギン酸塩とを含むヒドロゲルを調製するステップと、
- 少なくとも1つの多孔区分を形成するようにヒドロゲルを三次元で成形するステップであって、多孔区分が、孔のそれぞれが1つのが孔径を有する複数の孔を有し、多孔区分が、100μm~10,000μmの間の全孔隙率を有し、全孔隙率が、多孔区分内で測定された孔径の平均値に対応するステップと、
- ヒドロゲルを、少なくとも1種の二価カチオン、好ましくはカルシウムおよびトランスグルタミナーゼと架橋するステップであって、前記ヒドロゲルが、1kPa~1000kPaの機械的強度を有するステップと
を連続して含む製造工程により得ることが可能な、特に先に定義された、三次元体内インプラントを提案する。
【0034】
架橋ステップの際、二価カチオンおよびトランスグルタミナーゼは、同時に添加されてもよい。
【0035】
ヒドロゲルは、0.5%~3%のアルギン酸塩、および1%~17.5%のゼラチンを含んでもよい。
【0036】
ヒドロゲルは、架橋されたフィブリノーゲン、好ましくは2%までの架橋されたフィブリノーゲンをさらに含んでもよい。
【0037】
製造工程は、架橋ステップの際にトロンビンを用いることをさらに提供してもよい。
【0038】
三次元成形ステップの際に、製造工程は、積層造形工程、特に3Dプリンティングを実施することを提供してもよい。
【0039】
製造工程は、滅菌ステップをさらに含んでもよい。
【0040】
別の態様によれば、本発明は、再建術または美容外科の文脈で先に定義されたインプラントを実施する方法であって、対象の体内、特に対象の乳房内にインプラント、特に乳房インプラントを埋め込むステップを含む方法に関する。
【0041】
定義
本発明において、以下の用語は、以下のとおり定義される:
- 本発明の文脈における「架橋剤」は、ヒドロゲル成分、特にアルギン酸塩とゼラチンとフィブリノーゲンとを架橋することが可能な薬剤を意味する。
- 「生分解性」は、生存生物が破断することができることを意味する。特に、インプラントが、宿主に埋め込まれる場合、前記インプラントは、前記宿主が破断することが可能ならば、生分解性である。
- 本発明の文脈における「繊維」は、一般には束として存在する、糸状の外観の任意の要素を指す。
- 本発明の文脈における「勾配」は、1つの孔径から別の孔径への漸増または漸減する漸進的移行を意味する。
- 本発明の文脈における「宿主」および「レシピエント」は、等価の用語であり、本発明によるインプラントが導入され得る生物を指すために互換的に用いられる。
- 本発明の文脈における「成形すること」は、ヒドロゲルに、特に硬化されたヒドロゲルの最終目標に適合される、特別な形状および構造または構成を与えることにある。
- 本発明の文脈における「全孔隙率」または「全孔径」は、インプラントの多孔区分(複数可)で測定される孔径値の平均値を指す。それは、ヒドロゲル自体の孔隙率を指さない。
- 本発明の文脈における「孔径」は、材料の2つの対立するビーズの間の最大距離を指す。
【0042】
詳細な説明
本発明は、天然組織と類似する、特に構成要素の機械的強度に関する、特に有利な機械的特徴、経時的安定性、顕著な引裂き抵抗および衝撃抵抗を有する三次元体内インプラントを提供することを可能にする。
【0043】
本発明によるインプラントは、動物の身体、より特にはヒトの身体の様々な臓器もしくは組織の代わりに(全てまたは一部の交換)またはそれに加えて(増量)、永続的または一過性のどちらかで用いられ得る。定義により、本発明によるインプラントは、生存体液または生存組織との接触に適する。特にそれらは、特に皮膚再生および/または治癒のために、皮下またはさらには皮膚上に埋め込まれることが意図される。
【0044】
それゆえ本発明のインプラントは、軟部組織または可撓性組織、および時に弾性組織を交換および/または増加および/または補強する代替物または付加物である。それらは、好ましくは全体または部分に交換して結合組織、皮膚および脂肪組織を増加または補強するために用いられる。
【0045】
それゆえ本発明によるインプラントは、形成外科手術、再建手術または再生手術のために意図される。
【0046】
以下に記載された本発明のインプラントの全ての構成要素は、特に純度に関して、埋め込まれることが意図されるデバイスに特異的な規制要件を満たさなければならない。
【0047】
それゆえ本発明によるインプラントは、例えば乳房インプラント、胸部インプラント、臀部インプラント、顔面インプラント、または組織体積の欠損を補う任意の他のインプラントなどの体内インプラントである。
【0048】
特に好ましい実施形態によれば、本発明のインプラントは、乳房インプラントである。
【0049】
本発明のインプラントは、特に0.05mL~3Lの体積、好ましくは100mL~600mLの体積に達し得るため、体積の点で、同様に0.5×0.5×0.2~20×15×15の範囲内であり得るサイズの点で、即ち以下の長さ×幅×厚さ:長さ0.5cm~20cm×幅0.5cm~15cm×厚さ0.2cm~15cmの範囲内であるサイズの両方の点で大型であり得る。例えば組織充填のためのインプラントのサイズは、一般に20×15×15を超えない。乳房インプラントでは、サイズは、好ましくは12×12×3または12×12×4程度である。
【0050】
したがって一実施形態によれば、本発明のインプラントは、0.05mLより大きな体積、好ましくは0.05mL~3Lの体積を有する。
【0051】
インプラントは、本明細書で言及された体積に関連する任意の形状のインプラントであってもよい。例えばインプラントは、半球、半滴の形態、または発明の対象に合わせてカスタマイズされ得る任意の他の形状であってもよい。
【0052】
一実施形態において、本発明によるインプラントは、それらの組成により再吸収可能であるため一過性であり、体内への埋込み後に経時的に消失して、その場所に細胞および宿主生存生物により自然に血管形成された新生組織を残す。それゆえこれらの一過性インプラントは、特に既定の孔隙率(最大値を用いて)の存在、および/または細胞生存率を保持して細胞増殖を促すインプラントの構成材料の使用により、宿主生物の細胞が生着することができるより精密なインプラントである。それゆえこれらのインプラントは、一種の骨格/フレームワーク/バックボーン/マトリックス(または英語では「足場」)である内部空間を画定して、細胞、特にレシピエント生物の細胞による生着を可能にする。
【0053】
一実施形態において、本発明によるインプラントは、それらの組成により生分解可能であり、それゆえ動物の体内、特にヒトの体内への埋込みに適する。
【0054】
一実施形態において、本発明によるインプラントは、少なくとも1つの多孔区分を含む。
【0055】
一実施形態において、前記少なくとも1つの多孔区分、即ち、1つのみ存在する場合の多孔区分、または複数存在する場合の多孔区分の全ては、体積で、インプラントの約5%~100%、好ましくはインプラントの約50%~100%、より好ましくはインプラントの約90%~100%を表す。一実施形態によれば、多孔区分または全ての多孔区分は、インプラントの90%より多くを構成する。一実施形態によれば、多孔区分または全ての多孔区分は、インプラントの約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を構成する。
【0056】
一実施形態において、多孔区分または全ての多孔区分は、インプラント全体を構成する。
【0057】
インプラントの多孔区分の孔隙率は、特に交換されるおよび/または増加させる関連の組織または臓器に応じて調整される重大なパラメータである。実際には孔隙率は、インプラントの多孔区分内に存在する空洞と解釈され、ほとんどの材料を持って来て、こうして埋込み区分の天然組織のものと可能な限り近似した特定の機械抵抗を付与するために、適合され得る。
【0058】
全孔隙率は、各多孔区分で測定される孔径の平均値に対応する。
【0059】
本発明の文脈において、インプラントは、多孔区分の孔隙率によりそれらの構造のレベルで特徴づけられ、本明細書では2つの異なるが相関し、それゆえ等価または代替である方法、すなわちマイクロメートルで表される孔サイズ、および/またはパーセンテージとして表されるヒドロゲルの孔隙率(ヒドロゲルの体積/インプラントの総体積)で表される。
【0060】
一実施形態によれば、多孔区分は、孔のそれぞれが1つの孔径を有する複数の孔を含む。
【0061】
一実施形態において、軟部組織では、1000μm~10000μm、特に1000μm~5000μmの範囲内のインプラントの多孔ゾーン内の大きな全孔径、および/または5%~50%のインプラントの多孔ゾーンの充填率が好ましく、得られたインプラントはより少ない材料を含有し、より可撓性になる。好ましくはインプラントの多孔区分は、5%~50%、さらにより好ましくは15%~50%の充填率を有するであろう。
【0062】
一実施形態において、硬組織では、特に1000μm未満の、インプラントの多孔区分内の低い全孔径、および/または50%~99%、特に50%~95%のインプラントの多孔区分の充填率が好ましく、前記インプラントに硬組織のための高い機械的強度を提供する。好ましくはインプラントの多孔区分は、50%~99%、さらにより好ましくは50%~90%の充填率を有する。
【0063】
加えて孔径を、組織中に存在する異なる細胞型に合わせて調整することができる。この場合も、特に1000μmより小さいインプラントの孔径、および/または50%~99%、特に50%~95%のインプラントの高い充填率を有する高密度の低孔隙率の環境は、非常に剛性のマトリックス中で発達する骨芽細胞型細胞にとって好ましいが、特に1000μm~5000μmの間で存在するインプラントの孔径、および/または5%~50%のインプラントの充填率を有する可撓性でより多孔性の環境は、可撓性マトリックス中で発達する線維芽細胞および脂肪細胞型の生存、増殖および代謝に好都合である。
【0064】
最後に、孔径の選択により、体内のインプラントの分解時間を調整することが可能となる。特に1000μm未満の小さな孔径、および/または50%~99%、特に50%~95%の充填率を有するインプラントは、より多くの材料で構成され、これにより全分解は、インプラントサイズに応じて程度の差はあれ長くなるであろう。他方では、インプラントの分解はより急速であること、例えば12か月未満が望ましい場合、インプラントにおいて大きなサイズ、特に1000μm~5000μmの間のサイズ、および/または5%~50%のインプラントの充填率の孔が多いことが好ましい。
【0065】
本発明によるインプラントを、3Dプリンティング技術を用いて調製する場合、先に開示された孔径は、積層されたヒドロゲルフィラメントの間の長さ、特にこれらのフィラメントの間の空隙長に対応する。
【0066】
したがって本開示は、架橋されたアルギン酸塩と架橋されたゼラチンとを含むヒドロゲルを含む三次元体内インプラントであって、前記ヒドロゲルが、1kPa~1000kPaの機械的強度を有すること、および前記インプラントが、少なくとも1つの多孔区分を有し、多孔区分が、孔のそれぞれが1つの孔径を有する複数の孔を含み、多孔区分が、最大で5000μmの全孔隙率を有することを特徴とする、三次元体内インプラントに関する。
【0067】
本発明はまた、架橋されたアルギン酸塩と架橋されたゼラチンとを含むヒドロゲルを含む三次元体内インプラントであって、前記ヒドロゲルが、1kPa~1000kPaの機械的強度を有すること、および前記インプラントが、少なくとも1つの多孔区分を有し、多孔区分が、孔のそれぞれが1つの孔径を有する複数の孔を含み、多孔区分が、100μm~10000μmの間の、特に最大で5000μmの全孔隙率を有し、全孔隙率が、多孔区分で測定された孔径の平均値に対応することを特徴とする、三次元体内インプラントに関する。
【0068】
ヒドロゲルは、1kPa~1000kPaの機械的強度を有する。
【0069】
構成要素および構造の観点からの本発明によるインプラントは、好ましくは10kPa~800kPa、より好ましくは10kPa~300kPa、またはより好ましくは50~300kPaの見かけ機械的強度を有する。
【0070】
それゆえ本発明のインプラントは、交換されるまたは増加させることが求められる天然組織の性質と類似の機械的性質を有する。
【0071】
例として、異なる天然組織の平均機械的強度を、以下の表1に挙げる(Guimaraes C. et al., Nature Reviews Materials volume 5, pages 351-370(2020)に記載):
【表1】
【0072】
本明細書で議論される機械的強度は、弾性またはヤング率とも称され得る。弾性またはヤング率とは、本発明者らは、等方性弾性材料の引張り(または圧縮)応力および変形の開始に関連する定数である長手方向の弾性率または引張り係数を意味する。
【0073】
ヤング率は、材料の初期の長さの100%の伸長、つまり長さの倍加を引き起こす機械応力である。
【0074】
このヤング率は、フックの法則:σ=Eε(式中、
σ=機械応力(圧力の単位での);
E=ヤング率(圧力の単位での);
ε=相対的伸長またはひずみ(無次元);(ε=l-l/l;lは、初期の長さであり、lは、変形後の長さである))
により支配される。
【0075】
それらの構成要素により付与される個別の機械的強度に加えて、本発明のインプラントは、孔のそれぞれが1つの孔径を有する複数の孔を含む少なくとも1つの多孔区分を有する。
【0076】
一実施形態において、多孔区分は、最大で10000μmの全孔隙率を有する。一実施形態によれば、多孔区分は、最大で5000μmの全孔隙率を有する。
【0077】
多孔区分は、少なくとも10マイクロメートル、例えば少なくとも50マイクロメートルの全孔隙率を有する。一実施形態によれば、多孔区分は、少なくとも100マイクロメートル、より好ましくは少なくとも500マイクロメートルの全孔隙率を有する。
【0078】
したがって一実施形態によれば、本発明によるインプラントの多孔区分の全孔隙率は、10マイクロメートル~1000マイクロメートル、または20マイクロメートル~1000マイクロメートル、または1000マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲内であり得る。
【0079】
したがって一実施形態によれば、本発明によるインプラントの多孔区分の全孔隙率は、100マイクロメートル~10000マイクロメートル、好ましくは500マイクロメートル~2500マイクロメートル、より好ましくは500マイクロメートル~1000マイクロメートル、または1000マイクロメートル~2500マイクロメートル、または2500マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲内でもよい。
【0080】
この点において、本発明によるインプラントは、複数の多孔区分を有してもよく、前記多孔区分は、例えばインプラント全体に分布する孔隙率の勾配の形態で、三次元構造内に異なる孔径を有してもよい。多孔区分はそのため、孔径の昇順および降順から選択される順序で勾配方向に沿って互いに連続する。孔径の勾配は、例えばインプラントに生着する細胞型の選択を可能にする。
【0081】
一実施形態において、本発明によるインプラントは、複数の多孔区分を含む。一実施形態において、本発明によるインプラントは、それぞれの多孔区分が、定義された全孔径を有する、異なる孔径の少なくとも2つの多孔区分、好ましくは3つの多孔区分を、例えば孔隙率勾配の形態で含む。これにより、例えば再生される、または宿主生物内でインプラントと接触する組織の型に応じて、ほとんどの剛性区分を画定することができる。多孔区分はまた、異なる孔形状を含み得る。
【0082】
一実施形態において、前記多孔区分の孔径は、好ましくは100マイクロメートル~7000マイクロメートル、特に100マイクロメートル~3000マイクロメートルの範囲内である。
【0083】
異なる孔径の区分を、例えば孔隙率勾配の形態で有するインプラントを生成する場合、多孔区分の全てで得られる孔径が、100マイクロメートル~10000マイクロメートル、好ましくは100マイクロメートル~3000マイクロメートルの範囲内のままである限り、これらの区分は、それぞれが孔径の部分範囲を有すると定義され得る。
【0084】
一実施形態において、孔径の部分範囲は、好ましくは、インプラントが、3つの異なる孔径区分を含有する場合には、100マイクロメートル~250マイクロメートル、250マイクロメートル~800マイクロメートル、および1000マイクロメートル~2500マイクロメートルの範囲内であり、またはインプラントが2つのみの異なる孔径区分を含有する場合には、100マイクロメートル~250マイクロメートル、250マイクロメートル~3000マイクロメートルの範囲内である。一実施形態によれば、これらの部分範囲は、100マイクロメートルから3000マイクロメートルへの勾配を構成する。
【0085】
一実施形態において、孔径の部分範囲は、好ましくは、インプラントが、3つの異なる孔径区分を含有する場合には、500マイクロメートル~2500マイクロメートル、500マイクロメートル~5000マイクロメートル、および1000マイクロメートル~10000マイクロメートルの範囲内であり、またはインプラントが2つのみの異なる孔径区分を含有する場合には、500マイクロメートル~5000マイクロメートル、1000マイクロメートル~10000マイクロメートルの範囲内である。
【0086】
本発明によるインプラントの構成は、3つの別個の区分に分解され得る。
【0087】
インプラントの基部(インプラントの全体積の5%~40%、好ましくは20%~40%)は、好ましくは筋肉組織に直接接触して配置され、内皮細胞による生着およびそれを取り囲む血管構造に好都合である中間孔径(500マイクロメートル~5000マイクロメートル、特に250マイクロメートル~800マイクロメートル)を有する。内皮細胞は、この孔径を通して容易に遊走し、細胞を血管/微小血管構造へと組織化して、インプラントの血管新生およびそれによる隣接組織とのより良好な統合を可能にする。構造の容易な血管形成はまた、インプラントに生着している組織の壊死のリスクを制限する。
【0088】
インプラントのコア(インプラントの全体積の20%~70%、好ましくは30%~50%)は、埋込み区分の宿主組織と直接接触しない。この区分は、微細な孔径(500マイクロメートル~2500マイクロメートル、特に100マイクロメートル~250マイクロメートル)を有し、組織再生の支持において役割を有する。この領域は、他の領域より多くの材料で構成されるため、体内での生分解はより遅く、細胞に増殖するための支持マトリクスを提供する。
【0089】
インプラントの外殻(インプラントの全体積の5%~40%、好ましくは10%~40%)は、衝撃および/または圧縮応力の場合に最初に接触する部分であるように配置される。外殻は、大きな孔径(1000マイクロメートル~10000マイクロメートル、特に1000マイクロメートル~2500マイクロメートル)を有し、細胞がインプラントのコアに向かう容易な遊走を可能にする。この外殻は、インプラントコアの機械的保護として作用する。
【0090】
孔径の部分範囲は、100マイクロメートル~10000マイクロメートルの範囲内である、多孔区分全てでの1つの孔径で勾配を形成するように組み合わせられ得る。勾配は、好ましくは500μm~7000μmの範囲内である。
【0091】
本発明のインプラントを、積層造形技術、特に3Dプリンティングを用いて、特に粘弾性材料の押出しにより調製することができる場合、インプラント中の孔の存在は、XY平面内のサイズが孔径により与えられ、高さがプリンティングフィラメントの直径、特に200マイクロメートル~1500マイクロメートル、好ましくは200マイクロメートル~1000マイクロメートルにより与えられる、「格子」、好ましくはジャイロイド、立方体または六角形の形態の三次元構造に関連し得る。
【0092】
したがって一実施形態によれば、多孔区分(複数可)内の孔は、ジャイロイド、立方体または平面六角形の形状を有する。一実施形態によれば、多孔区分(複数可)の孔は、各多孔区分内に互いに同一形状を有する。
【0093】
多孔区分のそれぞれの中の孔は、均一な孔径、即ち、互いに15%以下のみ異なる孔径を有してもよい。
【0094】
一実施形態において、孔は、均一に、均等に分布し、即ち、多孔区分(複数可)の体積全体を通して互いに等距離に位置する。
【0095】
より特別には、多孔区分の孔は、それぞれ均一な配向、即ち互いに20°より大きく異ならない配向を有する中心軸に沿って延在してもよい。多孔区分の孔の中心軸は、均一な間隔、即ち互いに対して15%より大きく異ならない間隔で配置され得る。
【0096】
加えて、多孔区分の孔は、それぞれ均一な幾何学的構造を有してもよく、即ちその輪郭が、重複する部分または並行である部分と50%より大きく重なってもよい。
【0097】
多孔区分の孔は、それぞれが均一な厚さ、即ち互いに15%より大きく異ならない厚さを有する材料スの束により互いに隔てられ得る。
【0098】
定義された孔径および形状の多孔区分では、孔の組織は、同じパターンの繰返しを特徴とし、パターンは、空間の少なくとも一方向に沿ったこの同じパターンの平行移動を介して、1つまたは複数のメッシュで構成される。
【0099】
一実施形態において、本発明によるインプラントは、密な区分として知られる1つまたは複数の非多孔区分をさらに含む。
【0100】
一実施形態において、密な区分は、99%より大きな、特に100%の充填率(孔径0μm)を有する区分であり、特に、例えばモールディングなどの製造技術を使用することにより得ることができる。
【0101】
一実施形態において、非多孔区分は、体積で、インプラントの約0%~50%、好ましくはインプラントの約0%~25%、より好ましくはインプラントの約0%~10%を表す。一実施形態によれば、非多孔区分は、インプラントの10%未満を表す。一実施形態によれば、非多孔区分は、インプラントの0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%である。
【0102】
1つまたは複数の外周部(インプラントの周囲全体を取り囲む密な構造)が、構造内の1つまたは複数の厚さの層の中に存在してもよい。この付加は、インプラントの縁部を破砕する事象で起こり得る体内の刺激および炎症現象を制限する。
【0103】
インプラントの中を通る通路を形成する密な領域もまた、インプラントへの追加の機械的抵抗を付与するために構造内に存在してもよい。これらの通路は、構造の機械的補強として作用する。乳房再建の文脈において、これらの通路は、大部分がバイオミメティックス考え方におけるクーパー靭帯から主に着想を得ている。
【0104】
したがってインプラントの孔隙率および特有の構造は、新生物組織および/または移植組織の血管形成を可能にし、栄養素および代謝産物の拡散に好都合で、細胞に適合する支持体および機械的環境を提供し、こうして新生物組織および/または移植組織の虚血および壊死の現象を制限することにより、生着および組織再生にとって都合のよい好適な環境を生成する。
【0105】
インプラントは、空隙区分、即ち、0の充填率を有する体積も含み得る。一実施形態によれば、空隙区分は、体積で、インプラントの約0%~25%、好ましくはインプラントの約0%~10%を表す。
【0106】
一実施形態によれば、この空隙区分は、対象におけるインプラントの埋込みの際に対象からの細胞の注入を可能にする。これらの細胞は、こうしてインプラントに生着することができる。
【0107】
一実施形態において、本発明は、多孔区分を含むインプラント、特に乳房インプラントに関する。一実施形態によれば、前記多孔区分は、インプラント全体を表す。
【0108】
一実施形態において、本発明は、多孔区分と、例えば先に定義された外周部などの非多孔区分とを含むインプラント、特に乳房インプラントに関する。一実施形態によれば、前記多孔区分は、体積で、インプラントの90%より多くを表す。一実施形態によれば、前記非多孔区分は、体積で、インプラントの10%未満である。
【0109】
一実施形態において、本発明は、2つの多孔区分を含むインプラント、特に乳房インプラントに関する。一実施形態において、本発明は、3つの多孔区分を含むインプラント、特に乳房インプラントに関する。一実施形態によれば、前記インプラントは、例えば先に定義された外周部などの非多孔区分をさらに含む。
【0110】
一実施形態において、本発明は、以下の表2で言及され、図1に例示されたとおり、例例えば孔隙率勾配の形態で、3つの区分にわたって分布する異なる孔径を有するインプラント、特に乳房インプラントに関する。
【表2】
【0111】
本発明によるインプラントは、この型の応力を非常に定期的に受け易いこの解剖学的領域において高い圧縮応力に耐えるのに十分に抵抗性でなければならないため、乳房再建の文脈において特定の利点を有する。それらの機械的特徴、特に弾性および可撓性により、本発明のインプラントは、直接接触する宿主組織に対してより少ない機械的応力を生じ、こうして炎症現象を低減することを可能にする。
【0112】
当業者に周知の様々な方法を使用して、孔径を測定することができる。それらのうち、本発明者らは、光学顕微鏡検査および電子顕微鏡検査を挙げることができる。インプラントの空隙容積(充填率の逆数)は、計量すること(材料の比重を利用して)、排水容積(アルキメデスの方法)などにより測定され得る。
【0113】
好ましくは本発明の文脈において、本明細書に開示された範囲は、光学顕微鏡検査による孔径測定に対応する。したがって一実施形態によれば、孔隙率または孔径は、光学顕微鏡検査により測定される。一実施形態によれば、孔隙率または孔径は、電子顕微鏡検査により測定される。
【0114】
充填比の変動は、インプラントの孔隙率に影響を及ぼす可能性があり、その逆もあるため、本発明のインプラントの多孔区分の孔隙率の特徴はまた、ハイドロゲルインプラント構造の充填比により表すこともできる。この充填比は、例えばインプラントの体積を測定すること、および空隙容積を測定すること、により得ることができる。
【0115】
実施例に示されるとおり、選択された充填パラメータにより、所与の範囲の孔径を得ることができる。反対に所与の範囲の孔径は、特定の充填パラメータと相関する。
【0116】
本発明のインプラントは、インプラントの全体積の5%~99%の範囲内のヒドロゲル充填率を有し得る。インプラントがより小さく充填されるほど(50%未満の充填)、インプラントがより可撓性になり、体内の最終目標に応じて可撓性/硬度比を調整することができる。反対に、インプラントがより大きく充填されるほど(50%より大きな充填率)、インプラントはより剛性になる。
【0117】
本発明のインプラントの孔隙率は、細胞による生着に好都合である。したがって、可変の孔径または充填比と組み合わせた三次元構造によって、複数の空洞を含有するインプラントを得ることが可能となり、インプラントが留置されると、その空洞に宿主生物の細胞/組織が生着し、その後その場で増殖および分化することができる。
【0118】
本発明によるインプラントの三次元構造および特に有利な機械的性質は、滅菌後、特に放射線またはプラズマによる滅菌後も維持される。
【0119】
当業者に周知の様々な方法を使用して、動的機械分析(DMA)または圧縮、引張りおよび/もしくは抗折試験などのインプラントの機械的強度を測定することができる。インプラントの機械的強度を測定する方法の例を、実施例に記載する。
【0120】
一実施形態において、インプラントの機械的強度は、動的機械分析(DMA)により測定される。一実施形態によれば、インプラントの機械的強度は、圧縮試験、引張り試験および/または曲げ試験により測定される。
【0121】
言及されたとおり、本発明によるインプラントの主な構成要素は、天然起源の構成要素である。
【0122】
アルギン酸塩は、海藻類から、主に褐藻綱の種である褐藻から、抽出される直鎖状多糖類である。この生体適合性ポリマーは、1,4β-Dマンヌロン酸(M)とそのエピマー酸であるC-5α-Lグルロン酸(G)とのホモポリマーブロックで構成される。このバイオポリマーは、MGブロックの配列が挿入されたMブロック、Gブロックの配列からなる。G単位のみが、重合の際に分子間架橋に関与するように思われる。アルギン酸塩ナトリウムは、ヒドロゲルとして広く用いられる。
【0123】
アルギン酸塩に関し、そして上述の事柄によれば、M単位が豊富なアルギン酸塩は、鎖がより直鎖状の構成を有するため、より可撓性であるが、より多くのG単位を含有するゲルは、より重合されているためより剛性であろう。本発明の文脈では、用いられるアルギン酸塩は、例えば1~2の間、特に1~1.9の間、または1~1.5の間のM/G比を有する。本発明の文脈では、用いられるアルギン酸塩は、例えば1.9のM/G比を有する。
【0124】
好ましくはヒドロゲルに含有されるゼラチンは、A型である。
【0125】
ゼラチンは、細胞接着のためのRGD(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)モチーフなどの生物活性配列を含有するコラーゲン由来の高分子である。それは、酸処理(A型ゼラチン)またはアルカリ(B型ゼラチン)処理を介してコラーゲンの天然三重らせん構造を変性させることにより、得られる。ゼラチンのアミノ酸組成は、コラーゲンと類似しているが、変性後のコラーゲンのアミノ酸組成とは異なる(B型ゼラチン製造工程でのグルタミンからグルタミン酸への脱アミノ化)。ゼラチンの構造は、ゲル化の際に変化する。
【0126】
ヒドロゲルの調製(EM Ahmed; Journal of Advanced Research, 2015, 6, 105-121)、ならびにアルギン酸塩とゼラチンとの重合および架橋(Chen Q, Tian X, Fan J, Tong H, Ao Q, Wang X An Alginate/Gelatin Network for Three-Dimensional (3D) Cell Cultures and Organ Bioprinting. Molecules. 2020; 25(3): 756.)は、当該技術分野で周知である。
【0127】
好ましくはアルギン酸塩は、二価カチオン、特に非毒性カチオンから選択される架橋剤で架橋される。一実施形態によれば、二価カチオンは、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、銅、鉄およびニッケルを含む、またはそれらからなる群から選択される。一実施形態によれば、二価カチオンは、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムを含む、またはそれらからなる群から選択される。好ましくは二価カチオンは、カルシウムである。
【0128】
好ましくはゼラチンは、任意の酵素法、UV光などの物理的方法、または化学的方法により、特にリジン残基とグルタミン残基の間に共有結合を形成することが可能な薬剤で実施される酵素法により、最も好ましくはトランスグルタミナーゼにより架橋される。
【0129】
トランスグルタミナーゼ酵素(TAG)は、細胞外アミノアシルトランスフェラーゼである。それは、単一のシステイン触媒残基(活性部位)を含むモノマータンパク質である。 本発明の文脈では、ヒドロゲルのゼラチンは、好ましくは2型トランスグルタミナーゼで架橋される。特にこのTAGは、微生物ストレプトバーディシリウム・モバレンス(Streptoverticillium moboarense)の発酵により組換え微生物タンパク質として商業的に生成される。
【0130】
本発明によれば、インプラントに含まれるヒドロゲル中にあるアルギン酸塩およびゼラチンは、架橋され、即ち先に言及された架橋剤の作用を通して直鎖状ポリマーから三次元ポリマーに転換される。
【0131】
特に好ましい実施形態において、本発明によるインプラントは、0.5%~3%のアルギン酸塩および1%~17.5%のゼラチン、より好ましくは1%~2.5%のアルギン酸塩および2%~10%のゼラチンを含むヒドロゲルを含む。有利にはヒドロゲルは、2%のアルギン酸塩および5%のゼラチンを含む。
【0132】
他に示されない限り、本明細書で言及されたパーセンテージは、全組成物の質量/体積で表され、全組成物に相対的である。
【0133】
好ましくは、本発明のインプラントのヒドロゲルにおいて、架橋されたアルギン酸塩およびゼラチンは、それぞれ1:0.3~1:35の範囲内の重量比で、最も特には1:2.5の重量比で存在する。
【0134】
本発明のインプラントのヒドロゲルは、アルギン酸塩およびゼラチンに加えて、同じく架橋されるフィブリノーゲンも含んでよい。
【0135】
フィブリノーゲンモノマーは、中央のEドメインにより連結された3種のα、βおよびγ鎖と、α鎖をEドメインに連結する2つのフィブリノペプチドAおよびB(FpA、FpB)との2つの繰返しで構成される。それは、多数の細胞接着モチーフを有し、したがってヒドロゲル内の細胞発達を増加させることができる。
【0136】
この場合、ヒドロゲルは、好ましくは0.0001%~6%の架橋されたフィブリノーゲン、特に2%の架橋されたフィブリノーゲンを含むであろう。
【0137】
特に好ましい実施形態によれば、本発明のインプラントのヒドロゲルは、架橋されたアルギン酸塩とゼラチンとで、または架橋されたアルギン酸塩とゼラチンとフィブリノーゲンとで構成され、ゲルを形成することが可能な任意の他の構成要素を有さない。
【0138】
好ましくは本発明のインプラントのヒドロゲルは、架橋されたアルギン酸塩、ゼラチンおよびフィブリノーゲンを、それぞれ1:0.3:0.00003~1:35:12の範囲内の重量比、最も特には1:1:2.5の重量比で含有する。
【0139】
本発明のインプラントは、有利にはヒドロゲルの天然の構成要素として、アルギン酸塩と、ゼラチンと、場合によりフィブリノーゲンとを含有する。それでも、特にキチン、キトサン、セルロース、アガロース、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、グリコーゲン、デンプン、プルラン、カラギーナン、へパチン、コラーゲン、アルブミン、フィブリン、フィブロイン、デキストラン、キサンタン、ジェラン、ならびにコラーゲン、ラミニン、Matrigelなどのプロテオグリカン、GelMa型メタクリラートゼラチンなどの細胞外マトリックスから抽出される任意の成分などの他の天然成分もまた、本発明のインプラント中に存在してもよい。
【0140】
一実施形態において、前記天然成分は、0.001%~50%、好ましくは0.01%~25%、またはより好ましくは0.1%~10%の範囲内の濃度で存在する。
【0141】
天然起源の構成要素および特に先に列挙されたものに加えて、本発明のインプラントはまた、ポリオレフィン類(PE、PP、PTFE、PVC)、シリコーン(PDMS)、ポリアクリラート類(PMMA、pHEMA)、ポリエステル(PET、ダクロン、PGA、PLLA、PLA、PDLA、PDO、PCL)、ポリエーテル類(PEEK、PES)、ポリアミド類、ポリウレタン類、PEG、Pluronic F127などの合成成分も含有してもよい。
【0142】
一実施形態において、前記合成成分は、0.001%~50%、好ましくは0.01%~25%、またはより好ましくは0.1%~10%の範囲内の濃度で存在する。
【0143】
天然または合成起源の織物繊維もまた、インプラント組成物中に存在してもよい。
【0144】
天然起源の繊維の例としては、セルロース繊維が挙げられるが、これに限定されない。
【0145】
合成起源の繊維の例としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、およびアクリル繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
一実施形態において、前記繊維は、20%未満、好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の濃度で存在する。一実施形態によれば、本発明のインプラントは、天然起源または合成起源にかかわらず、繊維を含まない。
【0147】
本発明によるインプラントは、無細胞であり、即ちそれらは、製造の際に任意の細胞、特に任意の生存細胞を含まない。それでも、本発明のインプラントは、製造後に生存細胞が生着することができ、それにより細胞生存、増殖および/または分化の維持に関連する任意の製造上の制約を回避することが可能であり、ならびに取込みを最適化するために、製造されて宿主生物に埋め込まれる前にインプラントのインビトロでの生着を実行することが可能である。
【0148】
したがって、本発明によるインプラントの特定の実施形態の例は、
- アルギン酸塩およびゼラチンのみからなり、フィブリノーゲンを含まないヒドロゲル;
- アルギン酸塩、ゼラチンおよびフィブリノーゲンからなるヒドロゲル;
- アルギン酸塩、ゼラチンおよびコラーゲンからなるヒドロゲル;
- アルギン酸塩、ゼラチン、コラーゲンおよびフィブリノーゲンからなるヒドロゲル、
を含むインプラントである。
【0149】
本発明の範囲内の特に好ましい実施形態は、以下の表3に定義されたインプラントに関する。
【表3】
【0150】
一実施形態において、本発明のインプラントは、アルギン酸塩およびゼラチンが、少なくとも1種の二カチオン、好ましくはカルシウムおよびトランスグルタミナーゼと架橋することにより硬化される製造工程により得られる。
【0151】
一実施形態において、前記硬化は、連続で実行され、即ち、上述の架橋剤は、硬化の際に同時に添加されない。
【0152】
一実施形態において、調製されたヒドロゲルは、二価カチオン、好ましくはカルシウムを含む溶液と接触し、その後、トランスグルタミナーゼを含む溶液と接触する。別の実施形態によれば、調製されたヒドロゲルは、トランスグルタミナーゼを含む溶液と接触され、その後、二価カチオン、好ましくはカルシウムを含む溶液と接触する。
【0153】
一実施形態において、前記硬化は、同時に実行され、即ち上述の架橋剤は、硬化の際に同じ時間に添加される。
【0154】
特に有利な実施形態において、本発明のインプラントは、アルギン酸塩およびゼラチンが、少なくとも1種の二価カチオン、好ましくはカルシウムとトランスグルタミナーゼとを含む溶液と架橋することにより硬化される製造工程により得られる。
【0155】
本発明の範囲内では、前記溶液は、代替的であるが同等の工程により得られてもよい。硬化溶液は、異なる要素、即ち少なくとも1種の二価カチオン、好ましくはカルシウム、およびトランスグルタミナーゼを同じ溶液に添加することにより、または少なくとも2種の溶液、つまり少なくとも1種の二価カチオン、好ましくはカルシウムを含む溶液と、少なくともトランスグルタミナーゼを含む溶液とを混合することにより得ることができる。
【0156】
一実施形態において、硬化の際、ヒドロゲルと上述の溶液(複数可)との接触は、浸漬により実施され、その際、ヒドロゲルは、上述の溶液(複数可)に全体として浸漬される。それはまた、液浸、噴霧、滴下、細流、または類似のことにより実行され得る。
【0157】
例えば、調製されたヒドロゲルを、少なくとも1種の二価カチオン、好ましくはカルシウムと、トランスグルタミナーゼとを含む硬化溶液と接触させる。この硬化の際、ヒドロゲルと硬化溶液との接触は、浸漬により実施することができ、その際、ヒドロゲルは、その全体が硬化溶液に浸漬される。それはまた、液浸、噴霧、滴下、細流、または類似のことにより実行され得る。
【0158】
ヒドロゲルが、アルギン酸塩およびゼラチンに加えて、フィブリノーゲンを含有する場合、硬化は、フィブリノーゲンとトロンビンとの架橋をさらに含む。この架橋は、アルギン酸塩およびゼラチンの架橋と連続して(例えば、アルギン酸塩およびゼラチンの架橋の前または後)、または同時に実行され得る。
【0159】
一実施形態において、ヒドロゲルが、アルギン酸塩およびゼラチンに加えて、フィブリノーゲンを含有する場合、調製されたヒドロゲルを、二価カチオン、好ましくはカルシウムを含む溶液と接触させ、その後、トランスグルタミナーゼを含む溶液と接触させ、その後、トロンビンを含む溶液と接触させる。
【0160】
一実施形態において、ヒドロゲルが、アルギン酸塩およびゼラチンに加えて、フィブリノーゲンを含有する場合、調製されたヒドロゲルを、二価カチオン、好ましくはカルシウムを含む溶液と接触させ、その後、トロンビンを含む溶液と接触させ、その後、トランスグルタミナーゼを含む溶液と接触させる。
【0161】
一実施形態において、ヒドロゲルが、アルギン酸塩およびゼラチンに加えて、フィブリノーゲンを含有する場合、調製されたヒドロゲルを、トランスグルタミナーゼを含む溶液と接触させ、その後、二価カチオン、好ましくはカルシウムを含む溶液と接触させ、その後、トロンビンを含む溶液と接触させる。
【0162】
一実施形態において、ヒドロゲルが、アルギン酸塩およびゼラチンに加えて、フィブリノーゲンを含有する場合、調製されたヒドロゲルを、トランスグルタミナーゼを含む溶液と接触させ、その後、トロンビンを含む溶液と接触させ、その後二価カチオン、好ましくはカルシウムを含む溶液と接触させる。
【0163】
一実施形態において、ヒドロゲルが、アルギン酸塩およびゼラチンに加えて、フィブリノーゲンを含有する場合、調製されたヒドロゲルを、トロンビンを含む溶液と接触させ、その後、トランスグルタミナーゼを含む溶液と接触させ、その後二価カチオン、好ましくはカルシウムを含む溶液と接触させる。
【0164】
一実施形態において、ヒドロゲルが、アルギン酸塩およびゼラチンに加えて、フィブリノーゲンを含有する場合、調製されたヒドロゲルを、トロンビンを含む溶液と接触させ、その後二価カチオン、好ましくはカルシウムを含む溶液と接触させ、その後、トランスグルタミナーゼを含む溶液と接触させる。
【0165】
一実施形態において、ヒドロゲルが、アルギン酸塩およびゼラチンに加えて、フィブリノーゲンを含有する場合、硬化溶液は、少なくとも1種の二価カチオン、好ましくはカルシウム、トランスグルタミナーゼ、およびトロンビンを含む。
【0166】
好ましい実施形態において、本発明のインプラントは、ヒドロゲルを硬化溶液(複数可)と接触することからなる硬化ステップが、15℃~40℃、好ましくは20℃~40℃、より好ましくは21℃~37℃の範囲内の温度で実行される製造工程により得られる。好ましいが、温度条件に関する上記の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態によれば、本発明のインプラントは、ヒドロゲルを硬化溶液(複数可)と接触させることからなる硬化ステップが、10分~6時間、特に30分~6時間、理想的には1時間~3時間の範囲内の期間に実行される製造工程により得られる。したがって有利な実施形態によれば、本発明のインプラントは、硬化ステップが37℃で1時間30分実行される製造工程により得られる。
【0167】
一実施形態において、ヒドロゲルは、硬化の前に成形される。
【0168】
本発明のインプラントは、特に任意の体積を構成する工程(特に3D)により、および特に積層または連続堆積により材料を付加または凝集することにより、同時に製造および成形され得る。したがって一実施形態によれば、本発明のインプラントは、積層造形により得られる。
【0169】
これらの工程のうち、注入による、押出し、特にモールディング、3Dプリンティングによる方法が特に挙げられ得る。したがって一実施形態によれば、本発明のインプラントは、材料の押出し、好ましくは3Dプリンティングにより得られる。
【0170】
インプラントはその後、層のそれぞれが複数のメッシュで構成された1つのメッシュを有する複数の層で構成されてもよく、メッシュが孔を形成するように層が互いの最上部に積み重ねられてもよい。一実施形態によれば、前記インプラントは、2~3000の間の多数の層で形成される。
【0171】
前述の孔の特徴によれば、各層のメッシュは、均一なメッシュサイズ、即ち、互いに15%より大きく異ならないメッシュサイズを有し得る。
【0172】
加えて、各層のメッシュは、均一に、即ち、均等に分布されてもよい。
【0173】
より特別には、各層のメッシュは、それぞれ均一な配向、即ち互いに20°以下異なる配向を有する中心メッシュ軸を中心にして延在してもよい。各層のメッシュの中心メッシュ軸は、均一な間隔、即ち、互いに15%以下異なる間隔で配置されてもよい。
【0174】
各層のメッシュは、それぞれ均一な幾何学的構造を有してもよく、即ちその輪郭が、重複する部分または並行である部分と50%より大きく重なってもよい。
【0175】
各層のメッシュは、それぞれが均一な厚さ、即ち互いに15%より大きく異ならない厚さを有する材料の束により互いに隔てられ得る。
【0176】
特に、アルギン酸塩およびゼラチンのみからなるヒドロゲルは、5℃~45℃の温度で測定した場合、50Pa.s~6000Pa.sの範囲内の粘度を有し得るため、当業者は、高粘度の材料の成形を可能にする工程を選択するよう注意する。
【0177】
本発明の文脈において、インプラントは、好ましくは3Dプリンティング工程により得られる。この技術はまた、インプラントに適切な形状を与えることができる。実際には、以前に示されたとおり、本発明によるインプラントは、有利な機械的性質を有し、それらの目的に特に適する。
【0178】
この技術により、インプラントは、宿主の外観および/または希望に合うように「成形」され得る。したがって本発明のインプラントは、寸法および/または充填率/孔隙率が、体内インプラントを受容することが意図される宿主体内の要件、およびこのレシピエントの臓器において果たすべき役割/機能に関して定義される、「注文による作製」で構成された溶液を提供する。
【0179】
したがって本発明はまた、先に記載された製造工程により得ることが可能な三次元体内インプラントに関する。特に体内インプラントは、
- ゼラチンとアルギン酸塩とを含むヒドロゲルを調製するステップと、
- 少なくとも1つの多孔区分を形成するためのヒドロゲルの三次元成形ステップであって、多孔区分が、孔のそれぞれが1つの孔径を有する複数の孔を含み、多孔区分が、100μm~10,000μmの間の全孔隙率を有し、全孔隙率が、多孔区分内で測定された孔径の平均値に対応し、前記成形ステップが、例えば積層造形工程、特に3Dプリンティングの実施を含むことが可能であるステップと、
- 少なくとも1種の二価カチオン、好ましくはカルシウムと、トランスグルタミナーゼとを有するヒドロゲルを架橋するステップであって、前記ヒドロゲルが、1kPa~1000kPaの機械的強度を有するステップと
を連続して含む製造工程により得ることができる。
【0180】
工程は、滅菌ステップをさらに含んでもよい。
【0181】
特別な用例によれば、本開示はまた、以下の特色の1つまたは複数を有し得るインプラントに関する:
- 最大で5000μmの全孔隙率を有し得て、架橋されたアルギン酸塩と架橋されたゼラチンとを含むヒドロゲルを含む三次元体内インプラントであって、前記ヒドロゲルが、1kPa~1000kPaの弾性率またはヤング率と称される機械的強度を有する三次元体内インプラント、
- 特にインプラントの1つより多くの区分にわたって分布する勾配の形態で、三次元構造内に異なる孔隙率の区分を有し得る三次元体内インプラント、
- 三次元体内インプラントが、架橋されたフィブリノーゲンも含有し得る、
- 好ましくは、区分のそれぞれが異なる孔隙率を有する少なくとも2つ、特に3つの区分を有する乳房インプラントであり得る三次元体内インプラント、
- 架橋されたゼラチンと、架橋されたアルギン酸塩と、を含むヒドロゲルを含んでもよく、前記ヒドロゲルが、1kPa~1000kPaの機械的強度を有し、前記インプラントが、最大で5000μmの全孔隙率を有する三次元体内インプラントが、
- この場合、ゼラチンが、酵素、好ましくはトランスグルタミナーゼにより架橋され得る、
- インプラントの1つより多くの区分に分布される孔隙率勾配を有し得る三次元体内インプラント、
- 0.05mL~3L、好ましくは100mL~600mLの範囲内の体積を有し得る三次元体内インプラント、
- 三次元体内インプラントが、乳房インプラントであってもよい、
- この場合、インプラントのヒドロゲルが、0.5%~3%のアルギン酸塩および1%~17.5%のゼラチンを含んでもよい、
- この場合、インプラントのヒドロゲルが、架橋されたフィブリノーゲン、好ましくは0.0001%~6%のフィブリノーゲンをさらに含んでもよい、
- ヒドロゲルを、二価カチオン、好ましくはカルシウムと、酵素、例えばトランスグルタミナーゼなどの、リジン残基とグルタミン残基との間に共有結合を形成することが可能な薬剤とを含有する溶液で架橋するステップを含む工程により得ることが可能である三次元体内インプラント、
- ヒドロゲルが、フィブリノーゲンを含む場合、前記溶液が、トロンビンをさらに含んでもよい、
- 3Dプリンティングにより得ることができる三次元体内インプラント。
【0182】
本発明はまた、インプラントを対象の体内に埋め込むステップを含む、再建術または美容外科の文脈で先に記載されたインプラントを実施する方法に関する。
【0183】
好ましくは前記インプラントは、乳房インプラントである。したがって前記発明は、本発明によるインプラントを必要とする対象の体内に埋め込むことを含む、乳房再建の方法に関する。
【0184】
前記方法は、対象における埋込みの前に、細胞、好ましくは自家細胞を前記インプラントに注入するステップをさらに含んでもよい。
【0185】
一実施形態によれば、対象は、雌性である。一実施形態によれば、対象は、乳房切除術を受けた女性である。
【0186】
本発明のさらなる特色、目的および利点は、以下の説明から明白となるであろうが、以下の説明は、純粋に例示で、非限定的であり、添付の図面と併せて読まれなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0187】
図1】3つの区分に分布された孔径勾配を有する乳房型の本発明によるインプラントの略図である。
図2】本発明によるインプラントを構成するAGおよびFAGヒドロゲルのヤング率(A)および粘度(B)の比較を表す。
図3】ゼラチンを、トランスグルタミナーゼの存在下、および非存在下で架橋し、37℃で7日まで貯蔵した場合の、AGヒドロゲルのヤング率E0(Pa)の比較を示す。
図4】トランスグルタミナーゼと架橋された、または架橋されていない、AGヒドロゲルおよび市販のヒドロゲルのヤング率E0(Pa)の比較を表す。:37℃の液状化合物。+:DMA測定により37℃で重合が目に見えるがゲルの剛性が不十分である。
図5】本発明によるインプラントを構成し、製造後にインビトロで線維芽細胞が生着した、FAGおよびAGヒドロゲルにおいて速度論により測定した生存率および細胞成長を表す。
図6】本発明によるインプラントを構成し、製造後に脂肪組織の幹細胞によりインビトロで生着された、FAGおよびAGヒドロゲル上で速度論により測定された生存率および細胞成長を表す。
図7】製造後の精製脂肪組織分画のインビトロでの生着後の、異なる培養時点での本発明によるAGインプラントの代謝活性を表す。
図8】製造後の精製脂肪組織分画とのインビトロでのインキュベーションの2日後(左の4つの画像)または7日後(右の2つの画像)の本発明によるAGインプラントのヘマトキシリン・フロキシン・サフラン(HPS)染色による組織学的分析を表す(上:マトリックスの外縁部;下:マトリックスの内孔;白色光で撮影した画像;倍率100倍;スケール100μm)。
図9】製造後の精製脂肪組織分画とのインビトロでのインキュベーションの2日後(上の画像)または7日後(下の画像)の本発明によるAGインプラント上の細胞核のペリリピン1免疫染色およびDapi染色を表す(蛍光画像;倍率200倍;スケール50μm)。
図10】21℃(B)および37℃(A)での様々な期間の架橋に関するAGインプラントのヤング率の比較を表す。
図11図11は、異なる濃度のCaCl2(A、D)、TAG(B、E)およびトロンビン(C、F)による架橋後のAGおよびFAGインプラントのヤング率E0および粘度の比較を表す。
図12】CaCl2、TAGおよびトロンビンによる連続または同時架橋後のAGおよびFAGインプラントのヤング率E0(A~B)および粘度(C~D)の比較を表す。
図13】塩化カルシウムまたは塩化バリウムを含有する溶液による架橋後のAGおよびFAGインプラントのヤング率E0(A)および粘度(B)の比較を表す。
図14A】架橋前および後の本発明によるAGおよびFAGインプラントの寸法(A1~A2)および孔(A3~A4)の変動を例証する。
図14B】これらのインプラントの寸法(B1~B2)およびヤング率(B3~B4)に及ぼす滅菌の影響を示す。
図15】寸法(A)、体積(B)および孔径(C)に関する本発明によるAGインプラントの生成の再現性を示す。
図16】硬化後の本発明によるAGインプラントの収縮の再現性を示す。
図17】滅菌法の関数としての本発明によるAGインプラントの収縮の再現性を示す。
図18A】押出し径の再現性を示す。
図18B】本発明によるAGインプラントの孔の長さ(B1~B2)の再現性を示す。
図19】本発明によるAGインプラント中の様々な孔径の画像を表す。
図20】本発明によるAGおよびFAGインプラントのインビボ皮下埋込み(右側)の手術計画(左側)を表す。
図21】3週間のラット背部への皮下インビボ埋込み後の、本発明によるAGインプラントの切片をマッソントリクロームで染色した後の組織学的分析を示す(低倍率、中倍率および高倍率での画像)。
図22】異なる孔径で生成されたインプラントの平均孔長を表す。
図23】基部から最上部まで増加する孔径勾配で生成されたインプラントの平均孔長を表す。
図24】異なる孔径で生成されたインプラントの異なる下位部分の見かけヤング率値を表す。
図25】異なる構成、応力変位曲線での総入れ歯に対する圧縮テストを示す。
図26】外周部を付加された(左)または付加されていない(右)インプラント基部の顕微鏡観察を示す。
図27A】体積の大きなA/Gインプラント(9cm長、7cm幅、および2.7cm厚のインプラント)、架橋後に得られたインプラント、および構造内で得られた大きな孔の3Dプリンティングの画像を表す。
図27B】体積の大きなA/Gインプラント(12.6cm径インプラント、および5.3cm厚)、架橋後に得られたインプラント、および構造内で得られた大きな孔の3Dプリンティングの画像を表す。
図28】異なる充填率を有するインプラントの孔の巨視的観察を表す。
図29】異なる充填率を有するインプラントの孔の中心の間の平均距離を表す。
【発明を実施するための形態】
【0188】
実施例
本発明は、本発明を非限定的に示す以下の実施例を読むことでよりよく理解されよう。
【0189】
材料と方法
プロトコル#1 AGヒドロゲルの調製:AGヒドロゲルを調製するために、アルギン酸塩2g(超低粘度、Alpha Aesar、フランス)、ゼラチン5g(Sigma-Aldrich、フランス)を、0.1M NaCl溶液100mL(Labelians、フランス)中に37℃で12時間溶解する。
【0190】
プロトコル#2 FAGヒドロゲルの調製:FAGヒドロゲルを調製するために、アルギン酸塩2g(超低粘度、Alpha Aesar、フランス)、ゼラチン5g(Sigma-Aldrich、フランス)およびフィブリノーゲン2g(Sigma-Aldrich、フランス)を、0.1M NaCl溶液100mL(Labelians、フランス)中に37℃で12時間溶解する。
【0191】
プロトコル#3 AGおよびFAGヒドロゲルのモールディング:プロトコル#1および#2に従って調製されたヒドロゲル1.8mLを、6ウェル培養プレートのウェルに堆積し、21℃で30分間インキュベートする。
【0192】
プロトコル#4 AGヒドロゲルの架橋:トランスグルタミナーゼ4g(味の素、日本)、CaCl2 3g(Sigma Aldrich、フランス)を0.1M NaCl溶液100mL(Labelians、フランス)に溶解することにより、架橋溶液を調製する。その後、架橋溶液を、37℃で1時間30分(他に断りがなければ)、ヒドロゲルと接触させる。
【0193】
プロトコル#5 FAGヒドロゲルの架橋:トランスグルタミナーゼ4g(味の素、日本)、CaCl2 3g(Sigma Aldrich、フランス)およびトロンビン400単位(Sigma Aldrich、フランス)を0.1M NaCl溶液100mLに溶解することにより、架橋溶液を調製する。その後、架橋溶液を、37℃で1時間30分(他に断りがなければ)、ヒドロゲルと接触させる。
【0194】
プロトコル#6 圧縮時の動的機械分析(DMA):FAGおよびAGヒドロゲルの機械的性質を、回転レオメータ(DHR2、TA Instrument、フランス)、ペルティエ平面(Peltier plane)(TA Instrument、フランス)および8mm切欠き形状(TA Instrument、フランス)での三連で測定する。3つの8mm径ディスクを、プロトコル#3に従ってモールディングしたヒドロゲルから切り出す。ディスクを、低い方の切欠き形状の上に37℃で60秒間載せた後、10μm振動圧縮手順を、100μm/sでの0.1~10Hzおよび37℃で実施する。ヒドロゲルのヤング率E0(Pa)および粘度η0(Pa.s)の値を、この検査の際に得たE’およびE’’値を用いて粘性超弾性固体モデリングから得る。
【0195】
プロトコル#7 ヒドロゲルの3Dプリンティング:プロトコル#1、#2に従って調製されたヒドロゲルを、410μm径の押出しノズル(Nordson EFD)を具備した3mLカートリッジ(Nordson EFD)に移す。カートリッジ-ノズルアセンブリをその後、3Dプリンタ(BioassemblyBot、Advanced Solution Lifescience、米国)内に配置して、空間の三方向全てに移動しながら定圧をカートリッジに適用させる。プリントパラメータは、10mm/秒の速度、約172~約241kPa(25~35PSI)の圧力、および21℃の温度である。異なる充填率を、プリンタ制御ソフトウエア(Tsim、Advanced Solution Lifescience、米国)の内部スライサにより得られる。
【0196】
プロトコル#8 ラットにおけるインビボ埋込み:ラットにおけるインビボ埋込み試験を、BIOVIVO(Institut Claude Bourgelat(フランス、リヨン)前臨床試験の技術的プラットフォーム)で実施した。実験は、European Directives 2010/63/EUに従って実施された。動物16匹(スプラグー・ドゥーリーラット、250~300g)を、吸入により麻酔した(酸素および5%イソフルラン)。背側埋込み部位を剃毛し、ポビドンおよび滅菌ガーゼで消毒し、滅菌ドレープを載せて、手術領域の輪郭を描いた。全身麻酔を、イソフルラン(2%)および酸素吸入で維持した。術前の鎮痛を、それぞれ1mg/kgのメロキシカムおよびモルヒネで皮下に実施した。ラットの体温および脈拍数を、手術の際にモニタリングした。2~3cmの2つの皮膚切開を、背部領域に行った。バイオプロテーゼを、各動物の背側皮下領域に埋め込んだ。対照群は、切開および解剖のみを実施した。群あたりの動物1匹では、4つの手術部位、つまり3つのバイオプロテーゼおよび1つは対照切片を、実施した。手術部位を、吸収可能な縫合糸(PDS(登録商標)ポリジオキサノン、4/0およびナイロン3/0、Ethicon J&J)での皮下および皮膚縫合を利用して複数の層を閉合した。術後に、動物を、罹患の徴候についてモニタリングし、手術創を、皮膚の治癒および感染の非存在について連日、調査した。外移植を、埋込みの21日後に行った。
【0197】
プロトコル#9 組織学的分析:インプラントを、4%ホルマリン溶液(Alphapat、フランス)中で24時間固定し、その後、STP120脱水装置(Myr、スペイン)を用いて無水エタノール(vwr chemicals、フランス)およびメチルシクロヘキサン(vwr chemicals、フランス)の連続浴により脱水され、その後、ケロセン(サクラ、日本)に包埋した。5μm厚の切片を、HM340eミクロトーム(Microm、フランス)で作製した。ヘマトキシリン・フロキシン・サフラン(HPS)、マッソントリクロームおよびDAPI染色を、実施した。
【0198】
プロトコル#10 圧縮下での動的機械分析(DMA):FAGおよびAGヒドロゲルの機械的性質を、回転レオメータ(DHR2、TA Instrument、フランス)、ペルティエ平面(TA Instrument、フランス)および25mm幾何学的構造(TA Instrument、フランス)での三連で測定した。25mm径のパンチを、プロトコル#9に従って生成したインプラントの中で切り出す。パンチを、低い方の幾何学的構造の上に37℃で60秒間載せた後、10μm振動圧縮手順を、100μm/sでの0.1~10Hzおよび37℃で実施する。ヒドロゲルのヤング率E0(Pa)および粘度η0(Pa.s)の値を、この検査の際に得たE’およびE’’値を用いて粘性超弾性固体モデリングから得る。
【0199】
プロトコル#11 圧縮下でのインプラントの総合機械分析(Total mechanical analysis):1kNロードセルと圧縮プレートとを備えたロイド引張り/圧縮機上にインプラントを載せて、10mm/分のテスト速度を使用する。
【0200】
実施例1 - アルギン酸塩/ゼラチン(AG)およびフィブリノーゲン/アルギン酸塩/ゼラチン(FAG)ヒドロゲルの機械的性質
AGおよびFAGヒドロゲルを、プロトコル#1および#2から調製し、プロトコル#3に従ってモールディングし、その後、プロトコル#4および#5を用いて架橋し、プロトコル#6を用いてそれらのDMA機械的性質を試験した。
【0201】
結果を、図2(A~B)に示す。測定されたヤング率および粘度値は、本発明の工程によるそれらの架橋後のAGヒドロゲルとFAGヒドロゲルとで類似している。この試験の特異的条件下でのヤング率は、68000Pa前後である。
【0202】
実施例2 - アルギン酸塩/ゼラチンヒドロゲル(AG)の機械的性質に及ぼすトランスグルタミナーゼとの架橋の影響
AGのモールディング試料を、プロトコル#1および#3から調製し、プロトコル#4の変法から架橋した。この変法において、架橋溶液は、30mg/mL塩化カルシウム溶液のみ、または30mg/mL塩化カルシウムと40mg/mLトランスグルタミナーゼとの溶液で構成される。各条件の4つのゲルを、キャスティングし、生理学的条件を模倣するために、それぞれ37℃での同日、ならびに1、4および7日の貯蔵後に、DMAで検査した。
【0203】
その後、試料を、プロトコル#6を用いてDMAにより試験した。
【0204】
結果を、図3に示す。この試験は、ヒドロゲルの機械的性質に及ぼす架橋の際のトランスグルタミナーゼの使用の有利な効果を示す。この効果は、ゲルが37℃で変換された場合ではさらにより大きく、埋め込まれることが意図されるヒドロゲルに関する本発明による架橋の特別な関心の正しさを説明している。
【0205】
実施例3 - 市販のゼラチンおよび/またはコラーゲンヒドロゲルの機械的性質に及ぼすトランスグルタミナーゼとの架橋の影響
GAのモールディング試料を、プロトコル#1および#3から調製し、プロトコル#4から架橋した。以下の表4に列挙された市販のヒドロゲル試料を、供給元により提供されたプロトコルに従って調製し、プロトコル#3に従ってモールディングした。
【表4】
【0206】
ヒドロゲルを、TAGの影響を観察するために、30mg/mLのカルシウムのみを含む溶液(TAGなし)、または30mg/mLのカルシウムと40mg/mLのトランスグルタミナーゼとを含む溶液、のどちらかを用いてプロトコル#4の変法で架橋した。
【0207】
未架橋試料またはTAGとの架橋試料を次に、プロトコル#6を用いてDMAにより試験した。
【0208】
結果を、図4にまとめる。試験した7種の市販のヒドロゲルのうち6種を、トランスグルタミナーゼと架橋した。コラーゲンベースのヒドロゲル(Co4Cell、ラットコラーゲン)は、DMAにより分析するのに十分剛性でないが、ゼラチンベースのヒドロゲル(Gel4cell、Gel4cell-VEGFおよびGelMa)は、トランスグルタミナーゼ架橋の後に有意に高いヤング率を有する(それぞれ7.3、9.9および50kPa)。この試験は、市販のヒドロゲルの剛性に及ぼすトランスグルタミナーゼとの架橋の影響を示している。
【0209】
実施例4 - 機械的性質に及ぼすフィブリノーゲン/アルギン酸塩/ゼラチン(FAG)ヒドロゲル中のアルギン酸塩およびゼラチンの量の影響
FAGヒドロゲルを、プロトコル#2の変法から調製し、プロトコル#3によりモールディングし、その後、プロトコル#5を利用して架橋し、その後、機械的性質を、プロトコル#6を利用してDMAにより試験した。この変法において、本発明者らは、FAGヒドロゲルを、それぞれ1または3または2gのアルギン酸塩と、10または7.5または5gのゼラチンと、フィブリン2gとで調製することにより、これらの機械的性質を試験した。
【0210】
結果を、以下の表5にまとめる。この試験の特異的条件下でのヤング率は、200~800kPaの範囲内である。
【表5】
【0211】
実施例5 - 線維芽細胞によるフィブリノーゲン/アルギン酸塩/ゼラチン(FAG)およびアルギン酸塩/ゼラチン(AG)ヒドロゲル生着の評価
AGおよびFAGヒドロゲルを、プロトコル#1および#2から調製した。その後、一辺1.5cmおよび厚さ0.2cmの正方形インプラントを、プロトコル#7を用いてプリントし、プロトコル#4または#5を用いて架橋した。プリントされたインプラントを、50%充填率で、410μm内径の押出しノズルを用いて生成した。陰性対照(空のウェル)もまた、用いる。
【0212】
経路6の正常なヒト線維芽細胞を、175cm2培養フラスコ内の、10%ウシ血清と1%抗生物質とを補充されたDMEMを含有する培養培地中で解凍および増幅する。各インプラントを、4000000線維芽細胞/mlの濃度の正常ヒト線維芽細胞の細胞懸濁液と共に表面に播種した。この懸濁液250μl、即ち、1000000線維芽細胞/インプラントを、各インプラント上に滴加した。1時間の接着後に、インプラントを、培養培地で浸漬した。インプラントを、10%ウシ血清を含有してビタミンCおよびEGF(上皮成長因子)を補充されたDMEMで構成された培養培地中、37℃、5%CO2で培養した。インプラントを、同じ培地を3日ごとに交換して21日間培養した。
【0213】
インプラント中の線維芽細胞の代謝活性を、播種後3、5、8、10、14および21日後にAlamar Blueでの比色分析により試験した。溶液を、DMEM中のAlamar Blue(DAL1100、Invitrogen)の溶液を10倍希釈することにより、作製した。37℃で19時間のインキュベーションの後、上清100μlを、回収し、570nmおよび600nmでのそれらの吸光度を、分光光度計(NanoQuant(登録商標)infinite M200PRO、TECAN)により測定した。
【0214】
細胞生存率および成長を、3、5、8、10、14および21日目の6点速度論を利用して培養の21日にわたりモニタリングした。結果を、図5に示す。
【0215】
結果から、全てのインプラントが培養3日目という早期に線維芽細胞接着および生存を可能にすることが確認された。細胞成長は、両方のヒドロゲルタイプ(FAGおよびAG)と用いられたそれぞれの全孔隙率について、培養の21日にわたり各多孔性インプラントで観察可能である。
【0216】
実施例6:脂肪組織幹細胞(ASC)によるフィブリノーゲン/アルギン酸塩/ゼラチン(FAG)およびアルギン酸塩/ゼラチン(AG)ヒドロゲルの生着の評価
AGおよびFAGヒドロゲルを、プロトコル#1および#2から調製した。その後、一辺1.5cmおよび厚さ0.2cmの正方形インプラントを、プロトコル#7を用いてプリントし、プロトコル#4または#5を用いて架橋した。プリントされたインプラントを、50%および75%の充填率で、410μm内径の押出しノズルを用いて生成した。滅菌を、IONISOS社(フランス)により、インプラントにガンマ線30kGy線量を照射することにより実施した。
【0217】
経路2~5の正常なヒト脂肪細胞幹細胞を、175cm2培養フラスコ内で、10%血清と1%抗生物質とを補充したDMEMを含有する培養培地中で解凍し、増幅させた。各インプラントを、600万、1200万、または2400万 ASC/mlの濃度のASCの細胞懸濁液と共に表面に播種した。これらの懸濁液250μl、即ち、150万、300万、または600万 ASC/インプラントを、各インプラント上に滴加した。1時間の接着後に、インプラントを、培養培地で浸漬した。インプラントを、10%血清と1%抗生物質とを補充したDMEMを含有する培養培地で7日間培養し、その後、10%血清とインスリンとロシグリタゾンと1%抗生物質とを補充したDMEMを含有する培地で14日間培養した。培養培地を、3日ごとに交換した。
【0218】
インプラント中の線維芽細胞の代謝活性を、播種後3、5、7、14および21日目にAlamar Blueでの比色分析により試験した。溶液を、DMEMで中のAlamar Blue(DAL1100、Invitrogen)の溶液を10倍希釈することにより、作製した。37℃で5時間のインキュベーションの後、上清100μlを、回収し、570nmおよび600nmでのそれらの吸光度を、分光光度計(NanoQuant(登録商標)infinite M200PRO、TECAN)により測定した。
【0219】
細胞生存率および成長を、3、5、7、14および21日目の6時点での速度論を利用して培養の21日にわたりモニタリングした。結果を、図6に示す。
【0220】
結果から、全てのインプラントが、脂肪細胞幹細胞を培養3日目から接着および生存させることが確認された。細胞成長は、両方の型のヒドロゲル(FAGおよびAG)について、播種の各密度で、培養の21日にわたり各多孔性インプラントで観察可能である。
【0221】
実施例7:精製した脂肪組織断片と接触したアルギン酸塩/ゼラチン(GA)ヒドロゲルの生着の評価
GAヒドロゲルを、プロトコル#1から調製した。その後、一辺1.5および厚さ0.8cmの立方体インプラントを、プロトコル#7を用いてプリントし、プロトコル#4を用いて架橋した。プリントされたインプラントを、50%充填率で、410μm内径の押出しノズルを用いて生成した。
【0222】
脂肪吸引物を、1500rpmで2分間遠心分離し、その後、1×PBSですすぐ。脂肪吸引物を再度、1500rpmで30秒間遠心分離した後、1×PBSを除去した。脂質吸引物は、精製されていると見なされた。
【0223】
その後、各インプラントを、精製脂質吸引物6mLに浸漬し、全てのセットを、6ウェルプレート内のカルチャーインサートの中に配置し、10%血清および1%抗生物質を補充したDMEMを含有する培地中、37℃、5%CO2で2日または7日間インキュベートした。
【0224】
脂質吸引物での接触に続いて、インプラントを、6ウェルプレート内で、10%血清、インスリン、ロシグリタゾン、および1%抗生物質を補充したDMEMを含有する培養培地中、21日まで週に3回培地交換されながら培養した。
【0225】
インプラント中の細胞代謝活性を、播種後2、7および21日目の培養日にAlamar Blueでの比色分析により試験した。溶液を、DMEM中のAlamar Blue(DAL1100、Invitrogen)の溶液を10倍希釈することにより、作製した。37℃で5時間のインキュベーションの後、上清100μlを、回収し、570nmおよび600nmでのそれらの吸光度を、分光光度計(NanoQuant(登録商標)infinite M200PRO、TECAN)で測定した。
【0226】
細胞生存率および成長を、21日にわたりモニタリングした。結果を、図7に示す。陰性対照よりかなり高い代謝活性が、精製脂肪吸引物と接触させたインプラントで観察された。
【0227】
組織学的分析を実施して、この試験をプロトコル#9に従って完了した。結果を、図8に示す。画像から、凝集した多角形の均一な単胞性の嵩高な脂肪細胞の存在が、明らかである。これらの形態学的特徴は、脂肪組織中に見出され得る健常な脂肪細胞のものである。
【0228】
ペリリピン1による免疫染色も、実施した。試料を、OCT(Cellpath、KMA-0100-00A)に含め、その後、-80℃で貯蔵した。16μm厚の切片を、クリオスタット(Microm、HM520)により各試料から作製した。切片を次に、アセトン/メタノール(v/v)溶液で20分間固定し、1×PBSで3回すすいだ。4%PBS-BSA溶液中の室温での1時間インキュベーションを実施して、非特異的部位を飽和させた。切片を次に、ペリリピン1特異的一次抗体溶液と共に室温で一晩インキュベートした。翌日、切片を、1×PBSで3回すすぎ、その後、Alexa fluor568をカップリングした二次抗体溶液と共に室温で45分間インキュベートした。その後、切片を、1×PBSで3回すすぎ、スライドとカバースリップの間にDapi fuluoromount-G(登録商標)封入媒体(SouthernBiotech)と共に封入した。得られた画像を、図9にまとめる。
【0229】
画像から、細胞のクラスター化に応じて大きな球状または多角形の液胞を有する脂肪細胞が示される。脂肪細胞は、単胞性のように見え、サイズもまた、50~200μmの範囲内であることから生理的である。
【0230】
総括すると、これらの結果から、インプラントと接触したヒト脂肪組織の接着、生存および再生が確認される。したがって、インプラントの特有の構造および組成は、健常脂肪組織の再生に好都合な環境を形成する。
【0231】
実施例8 - アルギン酸塩/ゼラチンヒドロゲル(AG)の機械的性質に及ぼす温度および架橋時間の影響
AGのモールディング試料を、プロトコル#1およびプロトコル#3から調製し、プロトコル#4の変法から架橋した。この変法において、架橋時間および温度を、10分から14時間へ、そして37℃から21℃へ変更した。
【0232】
その後、試料を、プロトコル#6を用いてDMAにより試験した。
【0233】
結果を、図10(A~B)に示す。架橋時間および架橋温度は、ヒドロゲルの最終的な機械学的性質(ヤング率)に対して非常にわずかしか影響を有さない。しかし、最適性を、温度にかかわらず、1時間30分前後に見出され得ると思われる。
【0234】
これらのヤング率は、37℃での架橋後も7日にわたり非常に安定している。ゼラチンの架橋は、培地に溶解したゼラチンの損失がないため、効率的であった。
【0235】
実施例9 - 架橋した、アルギン酸塩/ゼラチン(AG)およびフィブリノーゲン/アルギン酸塩/ゼラチン(FAG)ヒドロゲルの機械的性質に及ぼす架橋溶液の成分濃度の影響
AGおよびFAGのモールディング試料を、プロトコル#1、#2および#3から調製され、プロトコル#4および#5の変法から架橋した。この変法では、架橋溶液の成分の濃度を、変更した(トランスグルタミナーゼ、塩化カルシウム、およびトロンビン)。
【0236】
その後、試料を、プロトコル#6を用いてDMAにより試験した。
【0237】
結果を、図11(A~F)にまとめる。この範囲の試薬濃度では、有意な変化は、観察されなかった(E0の全てが非常に類似していた)。
【0238】
実施例10 - アルギン酸塩/ゼラチン(AG)およびフィブリノーゲン/アルギン酸塩/ゼラチン(FAG)ヒドロゲルの連続または同時架橋の影響
AGおよびFAGのモールディング試料を、プロトコル#1、#2および#3から調製し、プロトコル#4および#5の変法から架橋した。この変法では、本発明者らは、ヒドロゲルを複数のステップで架橋することを含む、FAGおよびAGでの連続架橋を検査した。各ステップは1時間かかり、0.1M NaCl溶液での3回のすすぎを、各ステップ間に実施して、残留する架橋剤を除去した。
【0239】
試料を次に、プロトコル#6を用いてDMAにより試験した。
【0240】
結果を、図12(A~D)に示す。連続架橋セット(FAGおよびAG)では、単一ステップ架橋より低いヤング率を有するヒドロゲルが作製される。
【0241】
カルシウムを最初に添加しなければ非常に軟質かつ脆弱なゲルが得られることが、観察され得るが、実際にTAGおよびトロンビンは、カルシウム依存性であり、それゆえそれらの活性は、CaCl2を添加しなければ大きく低下する。それゆえゲルは、カルシウム架橋を行わずに操作することが困難である。トロンビンを、最初に添加した場合、ゲルは、非常にわずかの機械的強度しか有さず、穴が出現する。
【0242】
実施例11 - アルギン酸塩/ゼラチン(AG)およびフィブリノーゲン/アルギン酸塩/ゼラチン(FAG)ヒドロゲルの架橋のための二価カチオンの性質の影響
AGおよびFAGのモールディング試料を、プロトコル#1、#2および#3から調製し、プロトコル#4および#5の変法から架橋した。この変法では、本発明者らは、30mg/mL塩化バリウムの存在下での架橋を試験した。
【0243】
次に試料を、プロトコル#6を用いてDMAにより試験した。
【0244】
結果を、図13(A~B)に示す。バリウムの存在下での架橋は、CaCl2で得られたものと非常に類似したヤング率を有するゲルをもたらす。しかし、バリウムは、ゲルの粘度を上昇させるため、さらなる側鎖の形成が、推定され得る。
【0245】
実施例12 - 滅菌後のアルギン酸塩/ゼラチン(AG)およびフィブリノーゲン/アルギン酸塩/ゼラチン(FAG)ヒドロゲルインプラントの三次元構造および機械的性質の維持
AGおよびFAGヒドロゲルを、プロトコル#1、#2および#3から調製し、プロトコル#4および#5を用いて架橋し、光学的に観察し、その後、プロトコル#6を用いてDMAにより試験した。プリントされた形状は、2cm径の半球であり、可変の充填率(30、50および75%)で生成される。
【0246】
滅菌を、IONISOS社(フランス)により、多様な線量(30kGyおよび40kGy)のガンマ線をインプラントに照射することににより実施した。
【0247】
アルギン酸塩/ゼラチンおよびフィブリノーゲン/アルギン酸塩/ゼラチンヒドロゲルインプラントの寸法に及ぼす架橋ステップの影響を、試験した。これらの寸法は、巨視的画像から測定した。
【0248】
充填率の関数として得られた孔の寸法もまた、試験した。これらの寸法は、顕微鏡(Olympus、倍率×4)で作製した画像から測定した。
【0249】
結果を、図14(A~B)に示す。インプラントは、架橋ステップの後、平均で10%収縮する。しかし孔径は、有意に変動しない(図14A(A1~A4))。
【0250】
滅菌に関連して、40kGy線量は、30kGy線量よりも大きい構造物収縮をもたらすように思われる。E0に関しては、滅菌は、いずれの線量に関しても、材料の機械学的性質にいかなる変化ももたらさない(図14B(B1~B4))。
【0251】
実施例13:大きなアルギン酸塩/ゼラチン(AG)ヒドロゲルインプラントの生成品質:複数の方法によるインプラントの片穴寸法、つまり硬化および滅菌後の寸法の再現性
AGヒドロゲルを、プロトコル#1から調製した。その後、直径6cmおよび厚さ2cmの半球形のインプラントを、プロトコル#7に従ってプリントし、プロトコル#4を用いて架橋し、その後、光学的に観察し、測定した。プリントされた形状は、可変の充填率(25~65%)で、内径410または840μmの押出しノズルを用いて生成された。滅菌は、IONISOS社(フランス)により、インプラントに2線量(30kGyおよび40kGy)のベータ線、または30kGyの範囲線量(range dose)を照射することにより実施した。
【0252】
大きなアルギン酸塩/ゼラチンヒドロゲルインプラントの寸法に及ぼす架橋および滅菌ステップの影響を、試験した。これらの寸法は、巨視的画像から測定した。
【0253】
充填率の関数として得られた孔の寸法もまた、試験した。これらの寸法を、顕微鏡(Olympus、倍率×4)で作製した画像から測定した。
【0254】
プリント後の結果を、図15(A~C)に示す。これらの結果は、3Dプリントされた大きなインプラントの寸法の高い再現性を示し、高い生成品質を反映する。
【0255】
インプラントの硬化後の結果を、図16にまとめる。このグラフは、硬化段階後の大きなインプラントの収縮の高い再現性を示している。
【0256】
3種の方法(線量40および30kGyのβ線、ならびに30kGyのγ線)によるインプラントの滅菌後の結果を、図17にまとめる。これらの結果は、β線30および40kGyによる大きなインプラントの収縮が少ないことを示す。
【0257】
大きなインプラントを、充填率25~65%で、内径410および840μmの2種の押出しノズルを用いてプリントした。押出し径の再現性および得られた孔の長さを、測定した。結果を、図18(A~B)に示す。
【0258】
図18Aは、押出しビーズのサイズの高い再現性を示す。図18B(B1~B2)は、ヒドロゲルの充填率による孔の長さの変動を示す。
【0259】
様々な孔サイズの画像を、撮影し、図19にまとめる。
【0260】
これらのデータは、インプラントで得ることが可能な広範囲の孔、ならびにそれらの高い再現性および生成品質を示している。
【0261】
実施例14 - インビボでのインプラントの抵抗性試験
GAおよびFAGヒドロゲルを、プロトコル#1、#2および#7から調製し、プロトコル#4および#5を通して架橋した。プリントされた形状は、1cm径の半球であり、様々な充填率で生成された(30、50および75%)。
【0262】
多孔性の半球を、30kGyの線量で滅菌し、その後、プロトコル#8に従ってラットの皮下に埋め込んだ。
【0263】
埋込み群の詳細を、図20に記載した外科埋込み計画を参照する以下の表6に記載する。
【表6】
【0264】
組織学的分析を、プロトコル#9を用いて実施し、結果を、図21にまとめる。外移植を、皮膚の張力に対するインプラントの抵抗性を検証するために用いた。組織学的分析を、細胞生着、血管形成、細胞外マトリックス合成、および炎症領域の存在を評価するために用いた。
【0265】
実施例15 - 様々な孔径の大きなインプラントの生成品質および前記インプラントの機械的性質に及ぼすこれらの孔隙率の影響の試験
半解剖学的な人工乳房型インプラント(高さ:8.83cm;幅:6.37cm:高さ:2.86cm)を、プロトコル#1およびプロトコル#7の変法(内径840μmのノズルを使用)を用いて生成し、その後、プロトコル#4を用いて架橋する。これらのインプラントは、異なる内部孔隙率で生成される:
- その体積全体で1つの孔径を有するインプラント、
- インプラントの基部の第一の部分が1つの孔径を有し、インプラントの最上部の第二の部分が別の孔径を有する、という意実に従って分布する2つの孔径を有するインプラント、
- インプラントの基部(基部と称する)の第一部が1つの孔径を有し、インプラントの基部の中央および上側にある別の第二部(コアと称する)が別の孔径を有し、ならびにインプラントの表面および上側の別の第三部(外殻と称する)が別の孔径を有する、のいずれかに従って分布する3つの孔径を有するインプラント、
- 基部から孔径が増加する勾配を有するインプラントもまた、生成されている。
【0266】
得られた孔の寸法を、試験した。これらの寸法を、顕微鏡(Olympus、倍率×4)で撮影した画像から測定した。これらの測定の結果を、図22および23に示す。異なるサイズおよび非常に再現性のある孔を、インプラントの異なる部分で得ることができる。再現性があり基部から最上部に向かって孔径が増加する勾配もまた、得ることができる。
【0267】
これらのインプラントの下位部分の機械的性質を、プロトコル#11に従ってDMAにより試験し、インプラントの機械的性質を、プロトコル#12に従って総合機械分析により試験した。これらの測定の結果を、図24および25に示す。観察したヤング率は、孔径に反比例して変動する。したがって例えば、インプラントの中心部の孔の孔径が減少すると、より高いヤング率を得ることができ、より大きな機械抵抗を反映する。したがって、孔径および孔径区分の分布が変動すると、広範囲のヤング率が可能となり、それゆえより大きな、またはより小さな強度のインプラントを得ることができる。人工器具全体の圧縮テストに関して、本発明者らは、孔の各構成がインプラントに異なる機械的性質をもたらすことを観察している。実際には-35Nを利用すると、1つのみの孔隙率区分を有する人工器具は、3つの孔隙率区分を有するより変形した人工器具と異なり変形が小さかった。本発明者らは、その曲線によっても、異なる破断挙動を同定することが可能である。1つのみの孔隙率区分を有する人工器具は、破断前は漸進的に変形するを、2つの孔隙率区分を有する人工器具では、破断が漸進的であるが、その後、-217Nで大きくなり(brutal)、応力を回復する。したがって、孔径および孔径区分の分布を変動させることにより、異なる機械的性質を有するインプラントが、得られる。これにより、所望の適用に応じてインプラントの機械的性質を適合させることができる。
【0268】
実施例16 - インプラントの基部を中心とする外周部の付加
半解剖学的サイズの人工乳房インプラント(高さ:8.83cm;幅:6.37cm:高さ:2.86cm)を、プロトコル#1およびプロトコル#7の変法(内径840μmのノズルを使用して、外周部を幾つかのインプラントの基部に付加する)から生成し、その後、プロトコル#4から架橋する。これらのインプラントは全て、単一孔径を有し、外周部を、幾つかのインプラントに付加する。この外周部は、インプラント周辺の連続フィラメントを、接線方向にインプラントの周辺に位置するフィラメント全てに付加することを特徴とする。この外周部は、インプラントの最初の3層に付加される。
【0269】
得られた構成を、顕微鏡(Olympus、倍率×4)を用いて試験した。これらの観察の結果を、図26に示す。
【0270】
インプラントの基部への外周部の付加により、周辺に凹凸がほとんどない、より密着性のある基部を得ることが可能になり、こうしてインビボで炎症性摩擦を制限する。
【0271】
実施例17 - アルギン酸塩/ゼラチンヒドロゲルからの体積の大きな多孔性インプラントの生成
インプラント1:AGヒドロゲル200mLを、プロトコル#1から調製し、その後、12cm長、10cm幅および5cm厚の解剖学的乳房様のインプラントを、プロトコル#7の変法(840μm内径の押出しノズルおよび30mm/秒プリント速度)から単一の孔隙率領域でプリントした後、プロトコル#4で架橋した(大きなインプラントのために硬化溶液100mLの代わりに200mL)。得られたインプラントの平均孔径を、光学顕微鏡で測定し、インプラントの寸法を、キャリパーで測定した。架橋の後、9cm長、7cm幅および2.7cm厚のインプラントが、平均孔径1380±57μmで得られる。
【0272】
インプラント2:AGヒドロゲル500mLを、プロトコル#1から調製し、その後、7cm半径、6cm厚の半球形乳房様のインプラントを、プロトコル#7の変法(840μm内径の押出しノズルおよび30mm/秒プリント速度)から単一孔領域でプリントした後、プロトコル#4で架橋した(大きなインプラントのために硬化溶液100mLの代わりに700mL)。得られたインプラントの平均孔径を、光学顕微鏡で測定し、インプラントの寸法を、キャリパーで測定した。架橋の後、12.5cm直径および5.3cm厚のインプラントが、平均孔径3354±273μmで得られる。
【0273】
これらのインプラントの画像を、図27Aおよび27Bに示す。
【0274】
実施例18 - インプラントの同じ区分の孔の空間分布の測定
半解剖学的サイズの人工乳房型インプラント(高さ:8.83cm;幅:6.37cm:高さ:2.86cm)を、プロトコル#1およびプロトコル#7から生成し、その後、プロトコル#4から架橋する。これらのインプラントは、異なる充填率(45、50および55%)で生成される。
【0275】
得られた孔(正方形の)の中心を分離する距離を、試験した。これらの寸法を、顕微鏡(Olympus、倍率×4)で撮影した画像から測定した。これらの測定の結果を、図28および29に示す。孔の中心を分離する距離は、各充填率で再現性があることが分かり、異なる充填率の間で変動する。これらの観察は、定義した充填率を有するインプラントの区分内での均一な孔分布を反映している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図28
図29
【国際調査報告】