IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユノビア カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2024-523945血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療
<>
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図1
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図2
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図3
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図4A
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図4B
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図5A
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図5B
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図6
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図7
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図8
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図9
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図10
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図11
  • 特表-血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/443 20060101AFI20240625BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 31/64 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 31/426 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61K31/443
A61K31/155
A61K45/00
A61K31/64
A61K31/426
A61K31/195
A61K38/28
A61P3/10
A61P43/00 121
A61P3/08
A61P27/12
A61P27/02
A61P13/12
A61P25/00
A61P25/28
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P9/04
A61P1/18
A61P1/16
A61P3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521380
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 IB2022055664
(87)【国際公開番号】W WO2022269439
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/212,853
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523478676
【氏名又は名称】ユノビア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】リ ドン-ギル
(72)【発明者】
【氏名】ジェ イン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ユンスン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュング
(72)【発明者】
【氏名】チュン ソ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン イェアリン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ホン チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュン テ
(72)【発明者】
【氏名】アン キュン ミ
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヘン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ホン ダ ヘ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA44
4C084DB34
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA151
4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZA421
4C084ZA451
4C084ZA661
4C084ZA701
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZC202
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC412
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC82
4C086DA21
4C086GA02
4C086GA08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZC35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA07
4C206GA36
4C206HA31
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA14
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA15
4C206ZA33
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA45
4C206ZA66
4C206ZA70
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
尿病または前糖尿病を有する対象の治療に使用するための組成物は、有効量の式(I)のフェニルプロピオン酸、その異性体、またはその薬学的に許容される塩を含み、組成物は、組成物が投与される対象のHbA1c値、空腹時血漿血糖値、2時間経口糖負荷試験(OGTT)の結果の値、及び随時血漿血糖値のうちの1つ以上を低下させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病または前糖尿病を有する対象を治療するために使用される組成物であって、有効成分として、有効量の下式(I):
【化1】
[R1は、水素、または(C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキルであり、
2は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシ、またはOR8であり、
ただし、R8は、水素、N、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10ヘテロシクロアルキル、またはN、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10のヘテロシクロアルキルで置換されたアルキルであり、
5及びR6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ハロメチル、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
Yは、NHまたはOであり、
1、Z2、及びWは、それぞれ独立して、CR7またはNであり、
ただし、R7は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシである]のフェニルプロピオン酸、その異性体、またはその薬学的に許容される塩を含有し、
前記式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩は、HbA1c値、空腹時血漿血糖値、2時間経口糖負荷試験(OGTT)の結果の値、及び随時血漿血糖値のうちの1つ以上を低下させる、前記組成物。
【請求項2】
前記糖尿病が、2型糖尿病である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、
(1)(S)-3-(4-(((R)-4-(6-((1,1-ジオキシドテトラヒドロ-2H-チオピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(2)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(3)(S)-3-(4-(((R)-4-(6-(2-(1,1-ジオキシドチオモルホリノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(4)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(オキセタン-3-イルオキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(5)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(6)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(7)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((S)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(8)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(4-メチル-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(9)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(2-メチル-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(10)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-クロロ-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(11)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(12)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(4-メチル-6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(13)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(2-メチル-6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(14)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(15)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(16)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(17)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-クロロ-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(18)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-シアノ-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(19)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-シアノ-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(20)(S)-3-(4-(((R)-5-シアノ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(21)(S)-3-(4-(((R)-5-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(22)(S)-3-(4-(((R)-5-メトキシ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(23)(S)-3-(4-(((R)-5-シアノ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(24)(S)-3-(4-(((R)-5-フルオロ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(25)(S)-3-(4-(((R)-5-メトキシ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(26)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)アミノ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;または
(27)3-(6-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)ヘキサ-4-イン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記有効量が、約0.5mg~30mg/日である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
経口投与製剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
1つ以上の抗糖尿病薬と組み合わせて投与されるか、または
1つ以上の抗糖尿病薬をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記1つ以上の抗糖尿病薬が、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド、(α-グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、インスリン、及びインスリンアナログからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
代謝性疾患を有する対象を治療するために使用される組成物であって、有効成分として、有効量の下式(I):
【化2】
[R1は、水素、または(C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキルであり、
2は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシ、またはOR8であり、
ただし、R8は、水素、N、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10ヘテロシクロアルキル、またはN、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10のヘテロシクロアルキルで置換されたアルキルであり、
5及びR6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ハロメチル、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
Yは、NHまたはOであり、
1、Z2、及びWは、それぞれ独立して、CR7またはNであり、
ただし、R7は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシである]のフェニルプロピオン酸、その異性体、またはその薬学的に許容される塩を含有し、
前記組成物が投与される対象のHbA1c値、空腹時血漿血糖値、2時間経口糖負荷試験(OGTT)の結果の値、及び随時血漿血糖値のうちの1つ以上を低下させる、前記組成物。
【請求項10】
前記対象が、以下の状態:
(a)100mg/dL超または110mg/dL超、特に125mg/dL超の空腹時血糖値または血清血糖値;
(b)140mg/dL以上の食後血漿血糖値;
(c)5.7%以上、6.5%以上、7.0%以上、7.5%以上、または8.0%以上のHbA1c値、のうちの1つ、2つ、またはそれ以上を示す、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記式(I)の化合物が、
(1)(S)-3-(4-(((R)-4-(6-((1,1-ジオキシドテトラヒドロ-2H-チオピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(2)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(3)(S)-3-(4-(((R)-4-(6-(2-(1,1-ジオキシドチオモルホリノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(4)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(オキセタン-3-イルオキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(5)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(6)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(7)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((S)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(8)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(4-メチル-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(9)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(2-メチル-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(10)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-クロロ-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(11)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(12)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(4-メチル-6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(13)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(2-メチル-6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(14)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(15)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(16)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(17)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-クロロ-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(18)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-シアノ-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(19)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-シアノ-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(20)(S)-3-(4-(((R)-5-シアノ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(21)(S)-3-(4-(((R)-5-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(22)(S)-3-(4-(((R)-5-メトキシ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(23)(S)-3-(4-(((R)-5-シアノ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(24)(S)-3-(4-(((R)-5-フルオロ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(25)(S)-3-(4-(((R)-5-メトキシ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(26)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)アミノ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;または
(27)3-(6-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)ヘキサ-4-イン酸である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記式(I)の化合物が、(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記有効量が、約0.5mg~約30mg/日である、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
経口投与製剤である、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
1つ以上の抗糖尿病薬と組み合わせて投与されるか、または
1つ以上の抗糖尿病薬をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
前記1つ以上の抗糖尿病薬が、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド、(α-グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、インスリン、及びインスリンアナログからなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
(i)対象の血糖管理を改善し、かつ/または空腹時血漿血糖値及び/または食後血漿血糖値及び/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させること、
(ii)対象の1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満、及びメタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝性疾患を予防し、その進行を遅らせ、または治療すること、
(iii)対象の耐糖能異常、インスリン抵抗性及び/またはメタボリックシンドロームから2型糖尿病への進行を予防し、遅らせ、遅延し、または逆転させること、
(iv)対象の白内障、腎症、網膜症、神経障害、学習及び記憶障害、神経変性疾患または認知障害、心血管疾患または脳血管疾患、組織虚血、糖尿病性足潰瘍、動脈硬化症、高血圧、内皮機能障害、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害、及び血管再狭窄からなる群から選択される状態または障害を予防し、その進行を遅らせ、遅延し、または治療させること、
(v)対象の膵β細胞の変性及び/または膵β細胞の機能の低下を予防し、遅らせ、遅延し、または治療すること、及び/または膵β細胞の機能を改善し、及び/または回復または保護すること、及び/または膵インスリン分泌の機能を回復すること、
(vi)対象の肝臓または異所性脂肪の異常蓄積に起因する疾患または状態を予防し、遅らせ、遅延し、または治療すること、及び
(vii)対象のインスリン感受性を維持及び/または改善すること、及び/または高インスリン血症及び/またはインスリン抵抗性を治療または予防すること、からなる群から選択されるいずれか1つに使用するための組成物であって、
有効量の
(a)下式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩、
(b)場合により、ビグアニド、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1及び/またはGLP-1アナログ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される第2の血糖降下薬、及び
(c)場合により、ビグアニド、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1及び/またはGLP-1アナログ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、(b)とは異なる第3の血糖降下薬を含み、
前記対象が、以下の状態:
(A)100mg/dL超または110mg/dL超、特に125mg/dL超の空腹時血糖値または血清血糖値;
(B)140mg/dL以上の食後血漿血糖値;
(C)5.7%以上、6.5%以上、7.0%以上、7.5%以上、または8.0%以上のHbA1c値、のうちの1つ、2つ、またはそれ以上を示す、前記組成物:
【化3】
[R1は、水素、または(C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキルであり、
2は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシ、またはOR8であり、
ただし、R8は、水素、N、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10ヘテロシクロアルキル、またはN、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10のヘテロシクロアルキルで置換されたアルキルであり、
5及びR6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ハロメチル、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
Yは、NHまたはOであり、
1、Z2、及びWは、それぞれ独立して、CR7またはNであり、
ただし、R7は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシである]。
【請求項18】
前記(a)式(I)の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩の前記有効量が、約0.5mg~約30mg/日である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記有効量が、約1mg~約5mg/日、約5mg~約10mg/日、約10mg~約15mg/日、約15mg~約20mg/日、約20mg~約25mg/日、約25mg~約30mg/日、約1mg/日、約2mg/日、約3mg/日、約4mg/日、約5mg/日、約6mg/日、約7mg/日、約7.5mg/日、約8mg/日、約9mg/日、約10mg/日、約11mg/日、約12mg/日、約13mg/日、約14mg/日、約15mg/日、約16mg/日、約17mg/日、約18mg/日、約19mg/日、約20mg/日、約21mg/日、約22mg/日、約23mg/日、約24mg/日、約25mg/日、約26mg/日、約27mg/日、約28mg/日、約29mg/日、または約30mg/日である、請求項5に記載の組成物。
【請求項20】
前記式(I)の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩が、1日1回投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記有効量が、約1mg~約5mg/日、約5mg~約10mg/日、約10mg~約15mg/日、約15mg~約20mg/日、約20mg~約25mg/日、約25mg~約30mg/日、約1mg/日、約2mg/日、約3mg/日、約4mg/日、約5mg/日、約6mg/日、約7mg/日、約7.5mg/日、約8mg/日、約9mg/日、約10mg/日、約11mg/日、約12mg/日、約13mg/日、約14mg/日、約15mg/日、約16mg/日、約17mg/日、約18mg/日、約19mg/日、約20mg/日、約21mg/日、約22mg/日、約23mg/日、約24mg/日、約25mg/日、約26mg/日、約27mg/日、約28mg/日、約29mg/日、または約30mg/日である、請求項13に記載の組成物。
【請求項22】
前記式(I)の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩が、1日1回投与される、請求項9に記載の組成物。
【請求項23】
前記有効量が、約1mg~約5mg/日、約5mg~約10mg/日、約10mg~約15mg/日、約15mg~約20mg/日、約20mg~約25mg/日、約25mg~約30mg/日、約1mg/日、約2mg/日、約3mg/日、約4mg/日、約5mg/日、約6mg/日、約7mg/日、約7.5mg/日、約8mg/日、約9mg/日、約10mg/日、約11mg/日、約12mg/日、約13mg/日、約14mg/日、約15mg/日、約16mg/日、約17mg/日、約18mg/日、約19mg/日、約20mg/日、約21mg/日、約22mg/日、約23mg/日、約24mg/日、約25mg/日、約26mg/日、約27mg/日、約28mg/日、約29mg/日、または約30mg/日である、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
(a)下式(I):
【化4】
[R1は、水素、または(C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキルであり、
2は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシ、またはOR8であり、
ただし、R8は、水素、N、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10ヘテロシクロアルキル、またはN、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10のヘテロシクロアルキルで置換されたアルキルであり、
5及びR6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ハロメチル、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
Yは、NHまたはOであり、
1、Z2、及びWは、それぞれ独立して、CR7またはNであり、
ただし、R7は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシである]のフェニルプロピオン酸、その異性体、またはその薬学的に許容される塩の
HbA1c値、空腹時血漿血糖値、2時間経口糖負荷試験(OGTT)の結果の値、及び随時血漿血糖値のうちの1つ以上を低下させるために対象を治療するための薬剤の製造における使用であって、
前記対象が、以下の状態:
(A)100mg/dL超または110mg/dL超、特に125mg/dL超の空腹時血糖値または血清血糖値;
(B)140mg/dL以上の食後血漿血糖値;
(C)5.7%以上、詳細には6.5%以上、より詳細には7.0%以上、特に7.5%以上、さらにより詳細には8.0%以上のHbA1c値、のうちの1つ、2つ、またはそれ以上を示す、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全容を参照により本明細書に援用するところの2021年6月21日出願の米国特許仮出願第63/212,853号の利益及び当該出願に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
血糖値の管理方法ならびに糖尿病及び関連状態の治療を提供する。
【背景技術】
【0003】
世界保健機関(WHO)によると、糖尿病は慢性の代謝性疾患であり、血糖値(または血糖)の上昇を特徴とし、時間の経過とともに、心臓、血管、眼、腎臓及び神経に深刻な障害をもたらす。糖尿病は、膵臓が十分なインスリンを産生しない場合、または膵臓が産生するインスリンを身体が効果的に使用できない場合に生じる。インスリンは、血糖を調節するホルモンである。高血糖または血糖上昇は、管理されていない糖尿病の一般的な影響であり、時間の経過とともに、身体の多くのシステム、特に神経及び血管に深刻な障害を与える。
【0004】
インスリンは、血液から脂肪、肝臓及び骨格筋細胞へのグルコースの吸収を促進することにより、炭水化物、脂肪及びタンパク質の代謝を調節する。膵臓のベータ細胞(β細胞)は、血中のグルコース濃度に感受性を示す。非糖尿病患者では、血糖値が高い場合に膵β細胞が血中にインスリンを分泌し、血糖値が低い場合にはインスリンの分泌は阻害される。膵臓α細胞は、別のペプチドホルモンであるグルカゴンを血中に分泌し、逆に血糖値を上昇させる。すなわち、血糖値が低い場合には分泌を増加させ、血糖値が高い場合には分泌を減少させる。血糖値に応じたインスリン及びグルカゴンの血中への分泌は、細胞外液中の血糖値を狭い範囲内に保つ主要なメカニズムである。
【0005】
WHOは、糖尿病数と糖尿病による早期死亡率の増加の傾向を報告している。例えば、2000年から2016年の間に、糖尿病による早期死亡率は5%増加した。WHOによると、糖尿病患者の数は、1980年の1億800万人から2014年の4億2200万人に増加している。2014年には、18歳以上の成人の8.5%が糖尿病であった。2012年には、糖尿病は150万人の死亡例の直接的な原因であり、高血糖は別の220万人の死亡例の原因であった。糖尿病は、失明、腎不全、心臓発作、脳卒中、及び下肢切断の主な原因である。糖尿病の成人では、心臓発作及び脳卒中のリスクは2~3倍高い。足の神経障害(神経損傷)は、血流の減少と合わせて、足の潰瘍、感染、及び最終的には四肢切断の必要性の可能性を高める。糖尿病は、腎不全の主要な原因の1つである。
【0006】
糖尿病または真性糖尿病(DM)は、1型糖尿病と2型糖尿病に大きく分類される。2型糖尿病(以前はインスリン非依存性または成人型と呼ばれていた)(T2DM)は、身体がインスリンを効果的に使用しないことから生じる。大部分の糖尿病患者は2型糖尿病である。このような2型糖尿病の発症の増加の間接的な原因として、食習慣、運動不足、及び不規則な生活習慣が指摘されている。最近まで、このタイプの糖尿病は成人でしかみられなかったが、現在では子供でも頻繁に発生するようになってきている。1型糖尿病(以前はインスリン依存性、若年型または小児型として知られていたもの)(T1DM)は、インスリン産生の不足を特徴とし、インスリンの毎日の投与を必要とする。1型糖尿病はその原因もこれを予防する手段も知られていない。3つ目のグループの糖尿病は妊娠糖尿病であり、これは血糖値が正常値を超えるが糖尿病の診断値を下回るような高血糖である。妊娠糖尿病は妊娠中に発生する。
【0007】
糖尿病診断のための米国糖尿病学会の基準のガイドラインによれば、126mg/dl以上の空腹時血漿血糖濃度、200mg/dl以上の血漿血糖値を示す2時間経口糖負荷試験(OGTT)、6.5%以上のHbA1c値、または高血糖または高血糖の急性合併症の症状を有する個人における200mg/dl以上の随時血漿血糖値の4つの選択肢がある。前糖尿病とは、空腹時血糖値が100mg/dl~125mg/dl、2時間OGTT血漿血糖値が140mg/dl~199mg/dl、またはHbA1c値が5.7~6.4%として定義される。前糖尿病は、2型糖尿病、心血管疾患及び死亡率の発症の主要な危険因子とみなされる場合がある。
【0008】
糖尿病治療のモニタリングにおいては、ヘモグロビンB鎖の非酵素的糖化の産物であるHbA1c値が重要なパラメータであると考えられる。HbA1c値は、血糖値と血液中の赤血球の寿命に依存する。HbA1c値は通常、患者血液の採血及び検査の4~12週前の平均血糖値を反映している。長期の治療にわたってHbA1c値がよく管理された(すなわち、試料中の総ヘモグロビンが6.5%未満)糖尿病患者は、一般的には、糖尿病細小血管合併症からより良好に保護される。糖尿病の利用可能な治療によれば、糖尿病患者におけるHbA1cレベルの平均改善率は1.0~1.5%程度となり得る。しかしながら、HbA1c値のこのような低下は、すべての糖尿病患者をHbA1c7.0%未満、好ましくは6.5%未満、より好ましくは6%未満、さらにより好ましくはHbA1c6%未満の望ましい目標範囲とするほどには十分ではないと考えられる。
【0009】
HbA1c値の改善以外に、2型糖尿病患者の他の推奨される治療目標として、空腹時血漿血糖値(FPG)及び食後血漿血糖値(PPG)の正常値またはできるだけ正常値に近い値への改善がある。望ましい空腹時血漿血糖値の目標範囲は、例えば90~130mg/dLまたは110mg/dL未満とすることができ、食後2時間血漿血糖値の目標範囲は、例えば180mg/dL未満または140mg/dL未満とすることができる。
【0010】
食事療法及び運動療法は、しばしば糖尿病の治療に不可欠であると考えられている。これらの療法で患者の状態(特に血糖値)が十分に管理されない場合には、経口または非経口の抗糖尿病薬を糖尿病の治療に用いることができる。従来の抗糖尿病薬または血糖降下薬としては、これらに限定されるものではないが、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド(別名:グリニド)、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1及びGLP-1類似体、ならびにインスリン及びインスリンアナログが挙げられる。
【0011】
しかしながら、これらの従来の薬剤は、克服し得ない短所を有している。例えば、2型糖尿病の一次治療薬であるビグアニド型のメトホルミンは、患者に下痢、腹痛、消化不良、長期使用における耐久性の欠如などのリスクをもたらす。スルホニル尿素は、血糖値とは無関係に、膵β細胞を刺激することで患者に低血糖のリスクをもたらす。チアゾリジンジオン類では、肝臓の安全上の懸念、心血管リスク、体重増加、及び膀胱癌のリスクが報告されているため、薬剤は市場から回収されている。ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害薬は、患者の尿路及び生殖器感染症のリスクを高くし、α-グルコシダーゼ阻害薬は、消化不良及び下痢などの副作用を引き起こす可能性がある。さらに、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤は、腎機能障害のない患者に使用が限定される。GLP-1またはGLP-1類似体は、消化不良、腹部膨満または下痢、または悪心もしくは嘔吐などの胃腸の有害事象に関連している可能性がある。
【0012】
したがって、糖尿病及び/または糖尿病関連代謝性疾患の治療における改善された治療が求められている。
【発明の概要】
【0013】
本明細書に記載される代謝性疾患の治療方法は、式(I)のフェニルプロピオン酸、その異性体、またはその薬学的に許容される塩を、HbA1c値、空腹時血漿血糖値、2時間経口糖負荷試験(OGTT)の結果の値、及び随時血漿血糖値のうちの1つ以上を低下させる必要がある対象に投与することを含む:
【化1】
[R1は、水素、または(C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキルであり、
2は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシ、またはOR8であり、
ただし、R8は、水素、N、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10ヘテロシクロアルキル、またはN、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10のヘテロシクロアルキルで置換されたアルキルであり、
5及びR6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ハロメチル、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
Yは、NHまたはOであり、
1、Z2、及びWは、それぞれ独立して、CR7またはNであり、
ただし、R7は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシである]。
【0014】
実施形態において、有効量の式(I)のフェニルプロピオン酸、その異性体、またはその薬学的に許容される塩、または上記を含む医薬組成物が、代謝性疾患を治療するために代謝性疾患の治療を必要とする対象に投与される。実施形態において、代謝性障害は、糖尿病である。実施形態において、糖尿病は、2型糖尿病である。実施形態において、糖尿病は、1型糖尿病である。実施形態において、代謝性障害は、前糖尿病である。実施形態において、HbA1cレベルは、治療前と比較して0.25%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、0.5%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、0.75%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.0%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.5%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、2.0%超、低下する。実施形態において、0.25%~3%の範囲の低減を達成することができる。実施形態において、HbA1cレベルは、1.0%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.5%超、低下する。
【0015】
実施形態において、式(I)の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩は、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド(グリニド)、α-グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、インスリン、及びインスリンアナログなどの1つ以上の血糖降下薬と組み合わせて投与することができる。実施形態において、糖尿病を有する対象を治療する方法は、式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩を、対象に、HbA1c値、空腹時血漿血糖値、2時間経口糖負荷試験(OGTT)の結果の値、及び随時血漿血糖値のうちの1つ以上を低下させるように投与することを含む。実施形態において、糖尿病は、2型糖尿病である。実施形態において、糖尿病は、1型糖尿病である。実施形態において、HbA1cレベルは、治療前と比較して0.25%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、0.5%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、0.75%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.0%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.5%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、2.0%超、低下する。実施形態において、0.25%~3%の範囲の低減を達成することができる。実施形態において、HbA1cレベルは、1.0%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.5%超、低下する。実施形態において、式(I)の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩は、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド(グリニド)、α-グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、インスリン、及びインスリンアナログなどの1つ以上の血糖降下薬と組み合わせて投与することができる。
【0016】
別の実施形態では、HbA1c値、空腹時血漿血糖値、2時間経口糖負荷試験(OGTT)の結果の値、及び随時血漿血糖値のうちの1つ以上の低下を必要とする対象を治療するための薬剤の製造における式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩の使用が提供される。実施形態において、対象は、メタボリックシンドロームに罹患していてよい。実施形態では、代謝性疾患は、糖尿病または前糖尿病であってもよい。実施形態において、糖尿病は、2型糖尿病である。実施形態において、糖尿病は、1型糖尿病である。実施形態において、HbA1cレベルは、治療前と比較して0.25%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、0.5%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、0.75%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.0%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.5%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、2.0%超、低下する。実施形態において、0.25%~3%の範囲の低減を達成することができる。実施形態において、HbA1cレベルは、1.0%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.5%超、低下する。実施形態において、薬剤は、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド(グリニド)、α-グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、インスリン、及びインスリンアナログなどの1つ以上の血糖降下薬と組み合わせて投与することができる。
【0017】
実施形態において、代謝性疾患を有する対象を治療するための医薬組成物は、有効成分として、式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩を含み、式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩は、HbA1c値、空腹時血漿血糖値、2時間経口糖負荷試験(OGTT)の結果の値、及び随時血漿血糖値のうちの1つ以上を低下させる。実施形態では、代謝性疾患は、糖尿病または前糖尿病であってもよい。実施形態において、糖尿病は、2型糖尿病である。実施形態において、糖尿病は、1型糖尿病である。実施形態において、HbA1cレベルは、治療前と比較して0.25%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、0.5%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、0.75%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.0%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、1.5%超、低下する。実施形態において、HbA1cレベルは、2.0%超、低下する。実施形態において、0.25%~3%の範囲の低減を達成することができる。実施形態において、医薬組成物は、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド(グリニド)、α-グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、インスリン、及びインスリンアナログなどの1つ以上の血糖降下薬と組み合わせて投与することができる。実施形態において、医薬組成物は、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド(グリニド)、α-グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、インスリン、及びインスリンアナログなどの1つ以上の血糖降下薬を、式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩と同じ製剤中に、または異なる製剤中に含むことができる。式(I)の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩が、1つ以上の血糖降下剤を含む製剤とは異なる製剤に含まれる場合には、それらを同時にまたは別々に投与することができる。
【0018】
さらに別の実施形態では、方法は、
(i)1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満、及びメタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝性疾患を予防、その進行を遅延、または治療すること、
(ii)血糖管理を改善し、かつ/または空腹時血漿血糖値及び/または食後血漿血糖値及び/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させること、
(iii)耐糖能異常、インスリン抵抗性及び/またはメタボリックシンドロームから2型糖尿病への進行を予防し、遅らせ、遅延し、または逆転させること、
(iv)白内障、腎症、網膜症、神経障害、学習及び記憶障害、神経変性疾患または認知障害、心血管疾患または脳血管疾患、組織虚血、糖尿病性足潰瘍、動脈硬化症、高血圧、内皮機能障害、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害、及び血管再狭窄からなる群から選択される状態または障害を予防し、その進行を遅らせ、これを遅延し、または治療させること、
(v)体重及び/または体脂肪を減少させること、または体重及び/または体脂肪の増加を防止すること、または体重及び/または体脂肪の減少を促進すること、
(vi)膵β細胞の変性及び/または膵β細胞の機能の低下を予防し、遅らせ、遅延し、または治療すること、及び/または膵β細胞の機能を改善し、及び/または回復または保護すること、及び/または膵インスリン分泌の機能を回復すること、
(vii)肝臓または異所性脂肪の異常蓄積に起因する疾患または状態を予防し、遅らせ、遅延し、または治療すること、
(viii)インスリン感受性を維持及び/または改善すること、及び/または高インスリン血症及び/またはインスリン抵抗性を治療または予防すること、
(ix)移植後発症糖尿病(NODAT)及び/または移植後メタボリックシンドローム(PTMS)を予防し、その進行を遅らせ、これを遅延し、または治療すること、
(x)微小血管疾患及び大血管疾患ならびに事象、移植片拒絶反応、感染、及び死亡を含む、NODAT及び/またはPTMS関連合併症を予防し、遅延し、または低減すること、または
(xi)高尿酸血症及び高尿酸血症関連病態を、その治療を必要とする対象において治療すること、であり、
方法は、対象に有効量の、
(a)式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩、
(b)場合により、ビグアニド、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1及び/またはGLP-1アナログ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される第2の血糖降下薬、及び
(c)場合により、ビグアニド、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1及び/またはGLP-1アナログ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、(b)とは異なる第3の血糖降下薬を投与することを含む。
【0019】
上記の方法、使用及び医薬組成物において、式(I)の化合物は、以下であってよい:
(1)(S)-3-(4-(((R)-4-(6-((1,1-ジオキシドテトラヒドロ-2H-チオピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(2)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(3)(S)-3-(4-(((R)-4-(6-(2-(1,1-ジオキシドチオモルホリノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(4)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(オキセタン-3-イルオキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(5)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(6)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(7)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((S)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(8)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(4-メチル-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(9)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(2-メチル-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(10)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-クロロ-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(11)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(12)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(4-メチル-6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(13)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(2-メチル-6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(14)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(15)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(16)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(17)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-クロロ-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(18)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-シアノ-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(19)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-シアノ-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(20)(S)-3-(4-(((R)-5-シアノ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(21)(S)-3-(4-(((R)-5-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(22)(S)-3-(4-(((R)-5-メトキシ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(23)(S)-3-(4-(((R)-5-シアノ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(24)(S)-3-(4-(((R)-5-フルオロ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(25)(S)-3-(4-(((R)-5-メトキシ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(26)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)アミノ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;または
(27)3-(6-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)ヘキサ-4-イン酸。
【0020】
上記の方法、使用及び/または組成物において、対象は、以下の状態のうちの1つ、2つ、またはそれ以上を示す:
(a)100mg/dL超または110mg/dL超、特に125mg/dL超の空腹時血糖値または血清血糖値;
(b)140mg/dL以上の食後血漿血糖値;
(c)5.7%以上、詳細には6.5%以上、より詳細には7.0%以上、特に7.5%以上、さらにより詳細には8.0%以上のHbA1c値。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】薬物動態学的及び薬理学的データ(PK/PD)を得るために参照例1の化合物を投与する動物、用量、経路及び頻度を要約する。
図2】参照例1の化合物のシミュレートされたヒトPKのパラメータを示す。
図3】参照例1の化合物及びグルコース投与の後のヒトにおけるシミュレートされたグルコース濃度-時間プロファイルである。
図4A】0.5mg、1mg、2mg、5mg、及び10mgの単回投与後の参照例1の化合物の平均血漿濃度を線形表示で示す。
図4B】0.5mg、1mg、2mg、5mg、及び10mgの単回投与後の参照例1の化合物の平均血漿濃度を半対数表示で示す。
図5A】0.5mg(空腹)、1mg(空腹)、2mg(空腹)、5mg(空腹)、及び5mg(食事)の単回投与後の参照例1の化合物の平均血漿濃度を線形表示で示す。
図5B】0.5mg(空腹)、1mg(空腹)、2mg(空腹)、5mg(空腹)、及び5mg(食事)の単回投与後の参照例1の化合物の平均血漿濃度を半対数表示で示す。
図6】SDラットにおける参照例1の化合物(0.1mg/kg、0.3mg/kg、及び1mg/kg用量)の曝露量及び有効性、ならびにヒトにおけるMAD用量での予測される曝露量の結果を示す。
図7】異なる濃度のファシグリファム、トログリタゾン、ピオグリタゾン、及び参照例1の化合物によるグリココール酸(GCA)のさまざまな濃度での蓄積を示す。
図8】HepaRG細胞を用いて評価した、ミトコンドリアの機能に対するファシグリファム及び参照例1の化合物の阻害作用を示す。
図9】ファシグリファム及び参照例1の化合物について得られたHμRELTOX(商標)アッセイの結果を示す。
図10】異なる濃度の異なる肝転写因子に対するファシグリフォーム及び参照例1の化合物の効果を示す。
図11】異なる濃度の異なる肝転写因子に対するファシグリフォーム及び参照例1の化合物の効果を示す。
図12】参照例1の化合物とファシグリファムを比較したDILI評価を要約する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、1型糖尿病、2型糖尿病及び前糖尿病を含む、糖尿病などの代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物を提供する。実施形態において、式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩を、単独で、または場合により1つ以上の血糖降下薬(すなわち、場合により第2の有効成分、及び場合により第3の有効成分)、例えば、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド(グリニド)、α-グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、インスリンまたはインスリンアナログなどと組み合わせて投与することで、例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、前糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、高血糖、及び食後高血糖などの代謝性疾患の症状を軽減し、これを予防し、進行を遅くし、または遅延させることができる。
【0023】
本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、血糖管理を改善するために使用される。「血糖管理の改善」、「血糖管理を改善すること」または「血糖管理」とは、耐糖能の改善、食後血漿血糖値の改善、空腹時血漿血糖値の改善、HbA1c値の改善、または/及び空腹時血漿インスリン濃度の改善を指す。
【0024】
本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、代謝性疾患に関連する症状または状態を改善、低減または緩和する。代謝性疾患に関連する状態としては、例えば、睡眠時無呼吸、肥満、脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症、高血圧、アテローム性動脈硬化症、内皮機能障害、骨粗鬆症、慢性全身性炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、網膜症、神経障害、腎症及び/またはメタボリックシンドロームを挙げることができる。本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、血糖管理を改善することができ、例えば、空腹時血漿血糖値を低下させ、食後血漿血糖値を低下させ、かつ/またはHbA1cを低下させることができる。本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、メタボリックシンドロームからの耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性から、2型糖尿病への進行を、予防し、遅くし、遅延し、または逆転させることができる。
【0025】
本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、糖尿病、例えば、腎症、微量または多量アルブミン尿、タンパク尿、網膜症、白内障、神経障害、学習障害または記憶障害、神経変性疾患または認知障害、心血管または脳血管疾患、組織虚血、糖尿病性足潰瘍、アテローム硬化症、高血圧、内皮機能障害、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害、血管再狭窄、及び/または脳卒中を含む、微小または大血管疾患などの糖尿病の合併症を予防し、そのリスクを低減し、進行を遅らせ、遅延させ、または治療することができる。本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、従来の(経口)血糖降下薬による単剤療法または併用療法に対して一次無効または二次無効である2型糖尿病を予防し、その進行を遅くし、遅延し、または治療することができる。本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物によれば、適切な治療効果に必要とされる従来の血糖降下薬の用量を減少させることができ、それにより、従来の血糖降下薬に関連する副作用のリスクを低減することができる。本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、インスリン感受性を維持及び/または改善し、かつ/または高インスリン血症及び/またはインスリン抵抗性を治療または予防することができる。
【0026】
用語の定義
「約」という用語は、本明細書では、およそ、大体、おおよそ、またはその範囲内の意味で使用される。「約」という用語が数値範囲とともに使用される場合、記載される数値よりも上及び下の境界値を広げることによって、その範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、本明細書において、上または下に10パーセント(より高いまたはより低い)の変動で、明示される値の上及び下に数値を修正するために使用される。
【0027】
本明細書で使用する場合、「~を含む(comprising)」または「~を含む(comprises)」という用語は、方法または組成物に不可欠である組成物、方法、及びそのそれぞれの構成要素(複数可)に関して使用され、ただし、不可欠であるか否かによらず、指定されていない要素を含むことに対する制限はない。
【0028】
「~からなる」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法、及びこれらのそれぞれの構成要素を指し、実施形態の説明に記載されていない要素は除外される。
【0029】
本明細書で使用する場合、「~から本質的になる」という用語は、特定の態様に必要とされる要素を指す。この用語は、その実施形態の基本的かつ新規の、または機能的な特徴(複数可)に実質的に影響しない要素の存在は許容する。
【0030】
文脈によってそうでない旨が明らかに示されていない限り、単数形の用語「a」、「an」、及び「the」には複数の指示対象が含まれる。同様に、「または」という語は、文脈によってそうでない旨が明らかに示されていない限り、「及び」を含むことを意図している。本開示に記載されるものと同様または同等の方法及び材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、適当な方法及び材料について以下に記載する。略語「e.g.」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では、非限定的な例を示すために用いられる。したがって、略語「e.g.」は、「例えば」という用語と同義である。
【0031】
「有意な」または「有意に」という用語は、統計的有意性を指し、一般的に標準偏差2個分(2SD)、またはより大きい差を意味する。
【0032】
「ベースライン」という用語は、実施例に記載された試験における、血糖値、HbA1c値、空腹時血漿血糖値、2時間経口糖負荷試験(OGTT)の結果の値、及び1日目の随時血漿血糖値の値を意味する。
【0033】
実施形態による医薬組成物の「有効成分」という用語は、式(I)の化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の第2の血糖降下薬及び/または第3の血糖降下薬を意味する。
【0034】
「正常血糖」という用語は、被験者が、70mg/dL(3.89mmol/L)よりも高く、かつ110mg/dL(6.11mmol/L)または100mg/dL(5.6mmol/L)よりも低い正常範囲内の空腹時血糖値を有する状態として定義される。「空腹時」という用語は、医学用語としての通常の意味を有する。
【0035】
「高血糖」という用語は、被験者が、110mg/dL(6.11mmol/L)または100mg/dL(5.6mmol/L)よりも高い、正常範囲よりも高い空腹時血糖値を有する状態として定義される。「空腹時」という用語は、医学用語としての通常の意味を有する。
【0036】
「低血糖」という用語は、被験者が、60~115mg/dL(3.3~6.3mmol/L)よりも低い、特に70mg/dL(3.89mmol/L)よりも低い、正常範囲よりも低い血糖値を有する状態として定義される。
【0037】
「食後高血糖」という用語は、被験者が200mg/dL(11.11mmol/L)よりも高い食後2時間の血糖値または血清血糖値を有する状態として定義される。
【0038】
「空腹時血糖異常」または「IFG」という用語は、被験者が、100~125mg/dl(すなわち、5.6~6.9mmol/l)の範囲、特に110mg/dLよりも高く、かつ126mg/dl(7.00mmol/L)よりも低い空腹時血糖値または空腹時血清血糖値を有する条件として定義される。「正常空腹時血糖値」を有する被験者は、100mg/dl未満、すなわち5.6mmol/L未満の空腹時血糖値を有する。
【0039】
「耐糖能異常」または「IGT」という用語は、被験者が140mg/dL(7.78mmol/L)よりも高く、かつ200mg/dL(11.11mmol/L)よりも低い食後2時間の血糖値または血清血糖値を有する状態として定義される。異常な耐糖能、すなわち、食後2時間の血糖値または血清血糖値は、絶食後に75gのグルコースを摂取した2時間後の血漿1dL当たりのグルコースのmgで表される血糖値として測定することができる。「正常耐糖能」の被験者は、140mg/dl(7.78mmol/L)より低い食後2時間血糖値または血清血糖値を有する。
【0040】
「高インスリン血症」という用語は、インスリン抵抗性を有する被験者が、正常血糖の有無にかかわらず、ウエストヒップ比が1.0未満(男性の場合)または0.8未満(女性の場合)である、インスリン抵抗性を有さない、正常で低体脂肪の個人よりも高い値にまで上昇した空腹時または食後血清または血漿インスリン濃度を有する状態として定義される。
【0041】
ヒト患者の「ボディマス指数」または「BMI」という用語は、キログラムで表される体重をメートルで表される身長の2乗で割ったものとして定義され、したがって、BMIは、kg/m2の単位を有する。
【0042】
「過体重」という用語は、個人が25kg/m2超かつ30kg/m2未満のBMIを有する状態として定義される。「過体重」と「前肥満」という用語は、互換的に使用される。
【0043】
「肥満」という用語は、個人が30kg/m2以上のBMIを有する状態として定義される。WHO定義によれば、肥満という用語は、以下のように分類することができる:「クラスI肥満」という用語は、BMIが30kg/m2以上であるが35kg/m2未満である状態であり、「クラスII肥満」という用語は、BMIが35kg/m2以上であるが40kg/m2未満である状態であり、「クラスIII肥満」という用語は、BMIが40kg/m2以上である状態である。
【0044】
「内臓肥満」という用語は、測定されるウエストヒップ比が、男性では1.0以上、女性では0.8以上である状態として定義される。この用語は、インスリン抵抗性及び前糖尿病の発生のリスクを定義する。
【0045】
「腹部肥満」という用語は、通常、ウエスト周囲長が男性では40インチまたは102cm超、女性では35インチまたは94cm超である状態として定義される。日本人または日本人患者の場合には、腹部肥満は、ウエスト周囲長が男性で85cm、女性で90cmと定義される場合がある(例えば、日本メタボリックシンドローム診断基準検討委員会を参照)。
【0046】
「インスリンに感作させる」、「インスリン抵抗性を改善する」または「インスリン抵抗性を低下させる」という用語は、同義であり、互換的に使用される。
【0047】
「インスリン抵抗性」という用語は、正常血糖状態を維持するために糖負荷に対する正常応答よりも高い循環インスリン濃度が必要とされる状態として定義される(Ford E S,et al. JAMA.(2002)287:356-9)。インスリン抵抗性を決定する方法は、正常血糖-高インスリン血症クランプ試験である。インスリンとグルコースとの比率は、複合インスリングルコース注入法の範囲内で決定される。グルコース吸収が、調査されるバックグラウンド母集団の25パーセンタイルを下回る場合に、インスリン抵抗性があると判断される(WHO定義)。クランプ試験よりもいくぶん労力がかからない試験としていわゆる最小モデルがあり、このモデルでは、静脈内糖負荷試験において、一定の時間間隔で血中インスリン及びグルコース濃度が測定され、これらの値からインスリン抵抗性が計算される。この方法では、肝臓インスリン抵抗性と末梢インスリン抵抗性とを区別できない。
【0048】
インスリン抵抗性、インスリン抵抗性を有する患者の治療に対する反応、インスリン感受性及び高インスリン血症は、インスリン抵抗性の信頼できる指標である「HOMA-IR」(homeostasis model assessment to insulin resistance)(インスリン抵抗性に対する恒常性モデル評価)スコアの評価によって定量化することができる(Katsuki A, et al.Diabetes Care 2001;24:362-5)。インスリン感受性に関するHOMA指数の決定(Matthews et al.,Diabetologia1985, 28: 412-19)、インタクトなプロインスリンとインスリンとの比の決定(Forst et al.,Diabetes2003, 52 (Suppl.1): A459)及び血糖降下の試験をさらに参照されたい。さらに、インスリン感受性の潜在的代替指標として、血漿アディポネクチン濃度をモニタリングすることができる。恒常性評価モデル(HOMA)-IRスコアによるインスリン抵抗性の推定値は、下式を用いて計算される(Galvin P,et al.Diabet Med 1992;9:921-8):
HOMA-IR=[空腹時血清インスリン(μU/mL)]×[空腹時血漿血糖値(mmol/L)/22.5]。
【0049】
例えば患者のトリグリセリド濃度などの他のパラメータも、さらなる指標として使用することができる。例えば、トリグリセリドの上昇はインスリン抵抗性の存在と有意に相関する。
【0050】
IGTもしくはIFGまたは2型糖尿病の発症の素因を有する患者は、高インスリン血症を伴う正常血糖を有する患者であり、定義によればインスリン抵抗性である。インスリン抵抗性を検出することができれば、これは前糖尿病の存在の特に強力な指標となる。したがって、ある患者は、グルコースの恒常性を維持するうえで、何らの臨床症状も示すことなく健康な人の2~3倍のインスリンを必要とすることがあり得るということである。
【0051】
「前糖尿病」という用語は、個人が2型糖尿病を発症しやすい素因がある状態である。前糖尿病では、100mg/dLの高い正常範囲内の空腹時血糖(J. B. Meigs, et al. Diabetes 2003;52:1475-1484)及び空腹時高インスリン血症(血漿インスリン濃度の上昇)を有する個人を含むように耐糖能異常の定義が拡大される。前糖尿病を深刻な健康上の脅威として認識するための科学的及び医学的根拠は、米国糖尿病学会と国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所が共同で発行した「The Prevention or Delay of Type 2 Diabetes」(2型糖尿病の予防及び遅延)と題する報告書に記載されている(Diabetes Care 2002;25:742-749)。
【0052】
インスリン抵抗性とは、HOMA-IRスコアが4.0よりも高いか、またはHOMA-IRスコアが、グルコース分析及びインスリン分析を行う検査機関用に定義された正常値の上限を上回る臨床状態として定義される。
【0053】
「2型糖尿病」という用語は、被験者が125mg/dL(6.94mmol/L)よりも高い空腹時血糖値または血清血糖値を有する状態として定義される。血糖値の測定は、通常の医療分析における標準的な手順である。耐糖能試験が実施される場合、糖尿病患者の血糖値は、空腹状態でグルコース75gを摂取した2時間後に血漿1dL当たりグルコース200mg(11.1mmol/l)を超える。耐糖能試験では、10~12時間の絶食後にグルコース75gを被験患者に経口投与し、グルコース摂取直前と摂取後1~2時間後の血糖値を記録する。健常被験者では、グルコース摂取前の血糖値は血漿1dL当たり60~110mg、グルコース摂取の1時間後には200mg/dL未満、2時間後には140mg/dL未満となる。この値が2時間後に140~200mgの間である場合、これは耐糖能異常とみなされる。
【0054】
「後期2型糖尿病」という用語には、2型糖尿病を有し、かつ二次抗糖尿病薬が奏功しなかった患者、及びインスリン治療への適応を示し、かつ微小血管及び大血管合併症、例えば、糖尿病性腎症または冠状動脈性心疾患(CHD)への進行を示す患者が含まれる。
【0055】
「HbA1c」という用語は、ヘモグロビンB鎖の非酵素的糖化反応の生成物を指す。その測定法は当該技術分野では周知のものである。糖尿病の治療をモニタリングする際には、HbA1c値が極めて重要である。その生成は本質的に血糖値及び赤血球の寿命に依存するため、「血糖記憶」の意味でのHbA1cは、その前の4~6週間の平均血糖値を反映している。HbA1c値が集中的な糖尿病治療によって一貫してよく管理された(すなわち、試料中の総ヘモグロビンが6.0%未満)糖尿病患者は、一般的には、糖尿病性微小血管障害に対して有意に良好に保護される。例えば、メトホルミンは単独で、糖尿病患者のHbA1c値を平均で1.0~1.5%程度改善する。HbA1c値のこのような低下は、すべての糖尿病患者で、HbA1c値を6.5%未満、好ましくは6%未満、より好ましくは5.7%未満の望ましい目標範囲とするほどには十分ではない。
【0056】
本発明の範囲内での「不十分な血糖管理」または「不適切な血糖管理」という用語は、患者が5.7%を上回る、詳細には6.5%を上回る、より詳細には7.0%を上回る、さらにより好ましくは7.5%を上回る、特に8%を上回るHbA1c値を示す状態を意味する。
【0057】
「メタボリックシンドローム」とは、インスリン抵抗性を主要な特徴とする複合症候群である。ATP III/NCEPガイドライン(Executive Summary of the Third Report of the National Cholesterol Education Program(NCEP)Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults(Adult Treatment Panel III)JAMA: Journal of the American Medical Association(2001)285:2486-2497)によれば、メタボリックシンドロームは、以下のリスク因子のうちの3つ以上が存在する場合に診断される:
1.腹部肥満:ウエスト周囲長が男性で40インチまたは102cm以上、女性で35インチまたは94cm以上と定義され、または日本人または日本患者では、ウエスト周囲長が男性で85cm以上、女性で90cm以上として定義される。
2.トリグリセリド:150mg/dL以上
3.男性におけるHDL-コレステロール40mg/dL未満
4.血圧130/85mmHg以上(SBP130以上またはDBP85以上)
5.空腹時血糖値110mg/dL以上または100mg/dL以上。
【0058】
一般的に用いられる定義によれば、収縮期血圧(SBP)が140mm Hgの値を超え、かつ拡張期血圧(DBP)が90mm Hgの値を超えると、高血圧と診断される。患者が顕性糖尿病に罹患している場合、収縮期血圧を130mm Hg未満のレベルに下げ、拡張期血圧を80mm Hg未満のレベルに下げることが現在のところ推奨されている。
【0059】
「高尿酸血症」という用語は、血清総尿酸値が高い状態を意味する。ヒト血液中では、3.6mg/dL(約214μmol/L)~8.3mg/dL(約494μmol/L)の尿酸濃度が米国医療協会によって正常とされている。高い血清総尿酸値、すなわち高尿酸血症は、しばしばいくつかの疾患を伴う。例えば、血清総尿酸値が高いと、痛風として知られる関節の一種の関節炎を関節に引き起こす可能性がある。痛風は、血流中の総尿酸レベルの上昇した濃度によって、関節、腱及び周辺組織の関節軟骨に尿酸一ナトリウムまたは尿酸結晶が蓄積することによって生じる状態である。これらの組織に尿酸または尿酸が蓄積すると、これらの組織の炎症反応が誘発される。尿中の尿酸の飽和度は、尿酸または尿酸塩が腎臓で結晶化する場合に、腎結石の形成を引き起こす場合がある。さらに、高い血清総尿酸値は、しばしば、心血管疾患及び高血圧を含むいわゆるメタボリックシンドロームと関連している。
【0060】
本明細書に開示される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの「有効量」とは、具体的に記載される目的を実行するのに十分な量である。「有効量」は、記載した目的に関連して、経験的及び常法により決定することができる。
【0061】
例えば、用語「治療する」または「治療」または「治療すること」または「軽減する」または「軽減すること」とは、診断された病態または疾患を治癒し、遅延し、その症状を軽減し、または停止させる治療的措置を指す。したがって、治療を必要とする対象には、疾患をすでに診断されているかまたは疾患を有することが疑われる対象が含まれる。
【0062】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」及び「哺乳動物」とは、診断、予後、または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を指す。哺乳動物対象としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、家畜、農業家畜、動物園の動物、スポーツ動物、ペット動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雄牛;霊長類、例えば類人猿、サル、オランウータン、及びチンパンジー;イヌ科動物、例えばイヌ及びオオカミ;ネコ科動物、例えばネコ、ライオン、及びトラ;ウマ科動物、例えばウマ、ロバ、及びシマウマ;クマ、食用動物、例えばウシ、ブタ、及びヒツジ;有蹄動物、例えばシカ及びキリン;齧歯類、例えばマウス、ラット、ハムスター、及びモルモット;などが挙げられる。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0063】
「薬学的に許容される」とは、「概ね安全と考えられる」分子実体及び組成物を指し、例えば、これらは、動物またはヒトにおけるインビボでの使用に生物学的または薬理学的に適合性があり、生理学的に許容され、ヒトに投与される場合に通常はアレルギーまたは同様の有害な反応を引き起こさない。実施形態では、この用語は、FDAまたは類似のリスト、米国薬局方または他の一般的に認められている、動物、より具体的にはヒトでの使用のための薬局方による市販前通知及び承認の対象である、連邦食品医薬品化粧品法の第204条(s)及び第409条に基づくGRASリストとしての、連邦政府または州政府の規制機関によって承認された分子実体及び組成物を指す。
【0064】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、本明細書で定義される化合物の誘導体であって、親化合物がその酸または塩の生成によって改変されているものを指す。薬学的に許容される塩の例としては、これらに限定されるものではないが、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸性塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩などが挙げられる。薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性の塩または第4級アンモニウム塩が挙げられる。かかる従来の非毒性塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸及び硝酸などの無機酸から誘導されるもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、及びイセチオン酸塩などの有機酸から調製される塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。
【0065】
「~と同時投与される」、「~と組み合わせて」、「~と組み合わせて投与される」、「~の組み合わせ」、または「~と共に投与される」は、互換的に使用することができ、2つ以上の薬剤が治療過程で投与されることを意味する。これらの薬剤は、同時に、または間隔を空けて別々に投与することができる。薬剤は、単一剤形または別個の剤形で投与することができる。
【0066】
本明細書で使用する場合、「持続放出」または「長期放出」とは、治療活性薬剤の放出が、より低いピーク血漿濃度を与えるより長い期間にわたって生じることを意味し、かつ/または「従来の放出」または「即時放出」と比較してTmaxが長いことを示す。例えば、長期放出組成物は、約5時間以上の平均Tmaxを有し得る。
【0067】
式(I)の化合物
実施形態による方法及び組成物の有効成分は、式(I)の化合物、その異性体、またはそれらの薬学的に許容される塩である:
【化2】
[R1は、水素、または(C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキルであり、
2は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシ、またはOR8であり、
ただし、R8は、水素、N、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10ヘテロシクロアルキル、またはN、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含むC3~10のヘテロシクロアルキルで置換されたアルキルであり、
5及びR6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ハロメチル、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシであり、
Yは、NHまたはOであり、
1、Z2、及びWは、それぞれ独立して、CR7またはNであり、
ただし、R7は、水素、シアノ、ヒドロキシル、C1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル、またはC1~4の直鎖または分枝鎖状アルコキシである]。
【0068】
式(I)の化合物は、Gタンパク質共役型受容体40(GPR40)アゴニストである。
【0069】
GPR40は、ロドプシンファミリーのGタンパク質共役型受容体(GPCR)の一種である7回膜貫通タンパク質であり、主に膵島のβ細胞で発現する。その主要なリガンドは中長鎖脂肪酸であることから、この受容体は遊離脂肪酸受容体1(FFAR1)としても知られている。
【0070】
GPR40を介した膵β細胞のインスリン分泌の機序は、主にこの受容体に結合するリガンドまたはGPR40アゴニストのいずれかによって決定される。結合によって受容体が活性化されると、GPCRのサブユニットの一種であるGαq/11によりインスリン分泌の一次シグナル伝達経路が促進される。次いで、その経路がホスホリパーゼC(PLC)により細胞膜リン脂質を加水分解してジアシルグリセロール(DAG)及びイノシトール三リン酸(IP3)を生成し、これが続いてプロテインキナーゼDl(PKD1)を活性化してF-アクチンタンパク質修飾及びカルシウムイオン分泌を誘導し、最終的にインスリン分泌が誘導される。
【0071】
GPR40の活性化が血糖依存的にインスリン分泌を誘導する機序は、げっ歯類モデルを用いた実験で実証されている(Diabetes,2007,56,1087-1094;Diabetes,2009,58,1067-1076)。こうしたインスリン分泌の血糖依存型の機序には低体温症のリスクがなく、このことからGPR40は新薬開発の魅力的な対象となっている。さらに、GPR40は、PIX-1及びBCL2の調節を介して膵β細胞の生存の維持に関与しており、これにより長期の治療でも有効性が持続する(BMC Cell Biol., 2014, 15, 24)。さらに、GPR40発現の分布は比較的限られているため、他の臓器に副作用を及ぼすリスクが低く、GPR40活性化による血糖の恒常性の改善は、肥満及び高血圧を含む他の代謝性疾患に関与する可能性がある。
【0072】
このような利点に基づき、ここ数年、GPR40アゴニストの開発に業界努力による開発投資がなされてきたが、これまでに上市された薬剤はない。多くの発見の中で、臨床試験に進んだ最初のGPR40アゴニストである武田薬品工業のファシグリファムは、第II相試験でT2DM患者におけるその血糖降下効果を示している。しかしながら、その有効性にもかかわらず、この化合物は、肝臓の安全性に関する問題のため、第III相試験で中止された(Diabetes obes metab., 2015, 17, 675-681)。
【0073】
式(I)の化合物、その異性体、及びその薬学的に許容される塩は、同時係属中の米国特許出願第16/467,654号明細書に記載の方法により製造することができ、その内容は参照によって本明細書に援用する。式(I)の化合物、その異性体及び薬学的に受容可能な塩のGPR40アゴニスト活性は、当該明細書に記載の細胞を用いたエクオリンアッセイによって評価することができる。
【0074】
式(I)の例示的な化合物としては、以下が挙げられる:
(1)(S)-3-(4-(((R)-4-(6-((1,1-ジオキシドテトラヒドロ-2H-チオピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(2)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(3)(S)-3-(4-(((R)-4-(6-(2-(1,1-ジオキシドチオモルホリノ)エトキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(4)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(オキセタン-3-イルオキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(5)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(6)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(7)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((S)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(8)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(4-メチル-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(9)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(2-メチル-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(10)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-クロロ-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(11)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(12)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(4-メチル-6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(13)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(2-メチル-6-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(14)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-((3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(15)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(16)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(5-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(17)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-クロロ-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(18)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-シアノ-6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(19)(S)-3-(4-(((R)-4-(5-シアノ-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-7-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(20)(S)-3-(4-(((R)-5-シアノ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(21)(S)-3-(4-(((R)-5-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(22)(S)-3-(4-(((R)-5-メトキシ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(23)(S)-3-(4-(((R)-5-シアノ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(24)(S)-3-(4-(((R)-5-フルオロ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(25)(S)-3-(4-(((R)-5-メトキシ-4-(6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;
(26)(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)アミノ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸;または
(27)3-(6-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)ヘキサ-4-イン酸。
【0075】
一実施形態において、式(I)の化合物は、下式の(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸である:
【化3】
【0076】
上記の実施形態では、化合物には、異性体または薬学的に許容される塩が含まれる。
【0077】
式(I)の化合物に関して使用される異性体とは、ジアステレオマー、エナンチオマー、及びアトロプ異性体などの立体異性体を含む。化合物には、ラセミ混合物などの立体異性体の混合物も含まれる。
【0078】
組成物及び治療
医薬組成物は、経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所投与(頬粘膜及び舌下投与を含む)、経皮投与、膣投与または非経口投与(筋肉内投与、皮下投与及び静脈内投与を含む)用に、液体または固体で、または吸入もしくはガス注入による投与に適した形態で製剤化することができる。経口投与が好ましい。製剤は、必要に応じて、個別の単位剤形として便宜よく提供することができ、薬学分野では周知のいずれの方法によって調製することもできる。いずれの方法も、有効成分を1つ以上の薬学的に許容される担体、同様の液体担体もしくは微粉砕された固体担体、またはこれらの両方と接触させ、次いで、必要に応じて、製品を所望の製剤に成形する工程を含む。
【0079】
医薬組成物は、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、カプレット剤、ソフトカプセル剤、丸剤、経口液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、チュアブル錠、トローチ剤、発泡錠剤、滴剤、懸濁剤、速溶錠、経口速分散錠剤などの形態で製剤化することができる。
【0080】
医薬組成物及び剤形は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含むことが好ましい。好ましい担体は、製剤の他の成分と適合性を有し、そのレシピエントにとって有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体の例は、当業者には周知のものである。
【0081】
経口投与に適した医薬組成物は、例えば、それぞれが所定量の有効成分を含有するソフトゼラチンカプセル、カシェまたは錠剤を含むカプセルのような個別の単位として、粉末または顆粒として、溶液として、懸濁液として、またはエマルションとして、例えばシロップ、エリキシルまたは自己乳化送達システム(SEDDS)として便宜良く提供することができる。有効性成分は、ボーラス、舐剤、またはペーストとして提供することもできる。経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、または湿潤剤のような従来の賦形剤を含有してもよい。錠剤は、当該技術分野では周知の方法に従ってコーティングすることができる。経口液体製剤は、例えば、水性懸濁液もしくは油性懸濁液、溶液、エマルション、シロップもしくはエリキシルの形態としてもよく、または使用に先立って水もしくは他の適当な溶媒で戻すための乾燥製品として提供されてもよい。かかる液体製剤は、懸濁化剤、乳化剤、非水性溶媒(食用油を含み得る)、または防腐剤などの従来の添加剤を含むことができる。
【0082】
本発明による医薬組成物はまた、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または持続注入による)用に製剤化することもでき、また、アンプル、プレフィルドシリンジ、少容量注入中の単位用量形態で、または防腐剤が添加された複数回用量容器中で提供することもできる。組成物は、油性または水性溶媒中の懸濁液、溶液、またはエマルションの形態とすることができ、懸濁化剤、安定化剤、及び/または分散剤などの配合剤を含むことができる。あるいは、有効成分は、使用に先立って適当な溶媒、例えば、滅菌パイロジェンフリー水で戻すために、滅菌固体の無菌分離によって、または溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態とすることもできる。
【0083】
担体が固体である、直腸投与に適した医薬組成物は、単位用量坐剤として最も好ましく提供される。適当な担体としては、ココアバター及び当該技術分野で一般的に使用される他の材料が挙げられ、坐剤は、活性化合物(複数可)と軟化または溶融した担体(複数可)との混合の後、成形型内での冷却及び成形によって簡便に形成することができる。
【0084】
実施形態において、本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、代謝性疾患を有する患者における不適切または不十分な血糖管理を治療するために使用される。不適切または不十分な血糖管理とは、患者が5.7%超、例えば5.7%~6.4%以上、または6.0%超、詳細には6.5%超、7.0%超、7.5%超、8%超、8.5%超、9%超、9.5%超、10%超、10.5%超、11%超、または6.0%~11.0%の間の任意の値のHbA1c値を示す条件と考えることができる。例えば、血糖管理が不適切または不十分な患者としては、5.7~6.4%、6.5~7.0%、7.0~7.5%、7.5~10%、または7.5~11%のHbA1c値を有する患者が挙げられる。例えば、管理が不適切な患者とは、HbA1c値が9%以上である患者を含む(ただしこれに限定されない)、血糖管理が不良な患者を指す場合がある。
【0085】
実施形態において、本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、HbA1cレベルを0.25%超、低下させる。実施形態において、本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、HbA1cレベルを0.5%超、低下させる。実施形態において、本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、HbA1cレベルを、0.75%超、または1%超、または1.25%超、または1.5%超、または2%超、低下させる。実施形態において、本明細書に開示される代謝性疾患の治療に使用するための方法及び組成物は、約0.25%~約3%の範囲のHbA1cレベルの低下を達成することができる。
【0086】
医薬組成物は、治療効果を得るために、一定の用量として規則的な間隔で投与することができる。医薬組成物製品の作用持続時間は、通常、その血漿中半減期に反映される。有利な点として、本明細書では、式(I)の化合物、その異性体、またはそれらの薬学的に許容される塩(まとめて「式(I)の化合物」)の投与による糖尿病または前糖尿病などの代謝性疾患を治療する方法を開示する。例えば、実施形態では、代謝性疾患を治療する方法であって、代謝性疾患の治療を必要とする患者に、1日用量として、約0.05mg~約100mg、例えば、約0.5mg~約50mg、約0.5mg~約30mg、約0.6mg~約30mg、約0.7mg~約30mg、約0.8mg~約30mg、約0.9mg~約30mg、約1mg~約30mg、約0.5mg~約25mg、約0.6mg~約25mg、約0.7mg~約25mg、約0.8mg~約25mg、約0.9mg~約25mg、約1mg~約25mg、約0.5mg~約20mg、約0.6mg~約20mg、約0.7mg~約20mg、約0.8mg~約20mg、約0.9mg~約20mg、約1mg~約20mg、約0.5mg~約10mg、約0.6mg~約10mg、約0.7mg~約10mg、約0.8mg~約10mg、約0.9mg~約10mg、約1mg~約10mg、約1.5mg~約10mg、約2mg~約10mg、約2.5mg~約10mg、約3mg~約10mg、約4mg~約10mg、約5mg~約10mg、約1.5mg~約30mg、約2mg~約30mg、約2.5mg~約30mg、約3mg~約30mg、約4mg~約30mg、または約5mg~約30mgの式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、組成物は、患者への投与後、6時間以上にわたって血糖管理の改善を与える、方法が提供される。実施形態において、式(I)の化合物は、一水和物または二水和物のような溶媒和物として提供されてもよい。したがって、例えば、5.0、10.0または15.0mgの(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸は、約5.18、10.36及び15.54mgのその一水和物形態に相当する。
【0087】
実施形態において、1型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病などの代謝性疾患を治療する方法は、代謝性疾患の治療を必要とする患者に、約0.05mg~約50mgの式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与することを含む。実施形態において、1型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病などの代謝性疾患を治療する方法は、代謝性疾患の治療を必要とする患者に、約0.1mg~約30mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを含む。実施形態において、1型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病などの代謝性疾患を治療する方法は、代謝性疾患の治療を必要とする患者に、約0.5mg~約20mgの式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与することを含む。実施形態において、1型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病等の代謝性疾患を治療する方法は、代謝性疾患の治療を必要とする患者に、約0.5mg~約10mg/日、約1mg~約5mg/日、約5mg~約10mg/日、約10mg~約15mg/日、約15mg~約20mg/日、約20mg~約25mg/日、約25mg~約30mg/日、約1mg/日、約2mg/日、約3mg/日、約4mg/日、約5mg/日、約6mg/日、約7mg/日、約7.5mg/日、約8mg/日、約9mg/日、約10mg/日、約11mg/日、約12mg/日、約13mg/日、約14mg/日、約15mg/日、約16mg/日、約17mg/日、約18mg/日、約19mg/日、約20mg/日、約21mg/日、約22mg/日、約23mg/日、約24mg/日、約25mg/日、約26mg/日、約27mg/日、約28mg/日、約29mg/日、または約30mg/日の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、異性体、またはそれらの混合物を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0088】
実施形態において、医薬組成物は、1日用量として、0.1mg~30mg、0.1mg~25mg、0.1mg~20mg、0.1mg~15mg、0.1mg~10mg、0.5mg~25mg、0.5mg~20mg、0.5~15mg、0.5mg~10mg、1mg~25mg、1mg~20mg、1mg~15mg、1mg~10mg、1.5mg~25mg、1.5mg~20mg、1.5mg~15mg、1.5mg~10mg、2mg~25mg、2mg~20mg、2mg~15mg、2mg~10mg、2.5mg~25mg、2.5mg~20mg、2.5mg~15mg、2.5mg~10mg、3mg~25mg、3mg~20mg、3mg~15mg、3mg~10mg、4mg~25mg、4mg~20mg、4mg~15mg、4mg~10mg、5mg~25mg、5mg~20mg、5mg~15mg、または5mg~10mgの式(I)の化合物を含むことができる。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0089】
実施形態において、医薬組成物は、1日用量として、5mg~20mg、5mg~10mg、4mg~6mg、6mg~8mg、8mg~10mg、10mg~12mg、12mg~14mg、14mg~16mg、16mg~18mg、または18mg~20mgの式(I)の化合物を含むことができる。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0090】
実施形態において、医薬組成物は、0.1mg、0.25mg、0.5mg、1mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、7.5mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、12.5mg、13mg、14mg、15mg、16m、17mg、17.5mg、18mg、19mg、または20mgの式(I)の化合物、またはかかる用量の倍数である量を含むことができる。実施形態において、医薬組成物は、0.5mg、1mg、2mg、2.5mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、7.5mg、8mg、9mg、10mg、12mg、15mg、または20mgの式(I)の化合物を含む。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0091】
本明細書における医薬組成物には、従来の放出プロファイルまたは改変された放出プロファイルが与えられてもよい。錠剤またはカプセルなどの従来の(または未改変の)放出経口剤形は、一般的には、錠剤またはカプセルシェルが溶解する際に薬剤を胃または腸内に放出する。改変された放出剤形からの薬物放出パターンは、所望の治療目的及び/またはより良好な患者コンプライアンスを実現するために従来の剤形から意図的に変更される。改変された放出製剤の種類としては、即時放出を提供する口腔内崩壊型剤形、長期放出型剤形、遅延放出型剤形(例えば、腸溶性コーティング剤)、及びパルス放出型剤形が挙げられる。実施形態では、異なる薬物放出プロファイルを有する医薬組成物を組み合わせて、二相または三相の放出プロファイルを与えることができる。例えば、医薬組成物に、即時放出型及び長期放出型のプロファイルを与えることができる。実施形態では、医薬組成物に、長期放出型プロファイル及び遅延放出型のプロファイルを与えることができる。かかる組成物は、パルス型製剤、多層錠剤、または錠剤、ビーズ、顆粒などを含むカプセルとして提供されてもよい。組成物は、安全かつ有効と考えられる材料で構成された薬学的に許容される「担体」を使用して調製することができる。「担体」には、1乃至複数の有効成分以外の医薬組成物中に存在するすべての成分が含まれる。「担体」という用語には、これらに限定されるものではないが、希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、及びコーティング組成物が含まれる。
【0092】
口腔内崩壊型剤形は、唾液と接触すると速やかに崩壊する。これらは錠剤形態であってもよいし、口腔に投与された後に薬剤を放出する薄い口腔ストリップである速溶性フィルムであってもよい。
【0093】
実施形態において、改変された放出プロファイルを有する医薬組成物は、作用の迅速な発現と長い持続時間の両方をもたらす薬物動態学的特性を与える。かかる医薬組成物は、即時放出型の側面と長期放出型の側面を有する。即時放出型の側面は、口腔内崩壊型剤形に関連して上記に記載している。長期放出型剤形は、長期放出型の放出プロファイルを有し、従来の剤形、例えば溶液または未改変の放出剤形によって与えられるものと比較して投与頻度の減少を可能とするものである。長期放出型剤形は、薬剤の作用の長い持続期間を与える。実施形態において、本明細書における改変放出剤形は、口腔内崩壊剤形の側面を有さない長期放出型剤形である。実施形態において、改変放出剤形は、ローディング量の即時放出を与えた後、薬剤の単回投与によって得られる活性を上回る所望の治療範囲内の血中の薬剤レベルを望ましい期間にわたって維持するための長期の送達を与える長期放出型剤形の側面を与えることができる。実施形態において、口腔内崩壊型剤形の側面が薬剤を直ちに放出し、その後、長期放出型剤形の側面が、持続的作用のための薬剤の持続的放出を与える。
【0094】
実施形態において、改変放出医薬組成物には、パルス放出型剤形の製剤が含まれる。パルス型の薬剤放出では、最初の薬剤の放出後の所定の時間差の後に、規定の、または個別の量の薬剤(または複数の薬剤)が速やかに放出される。実施形態において、パルス放出型剤形は、単一のパルスを与えることができる。実施形態において、パルス放出型剤形は、時間の経過にともなって複数のパルスを与えることができる。さまざまなパルス放出型の剤形が当業者に知られている。
【0095】
実施形態において、改変放出医薬組成物は、1日用量として、0.1mg~75mg、0.1mg~70mg、0.1mg~65mg、0.1mg~55mg、0.1mg~50mg、0.1mg~45mg、0.1mg~40mg、0.1mg~35mg、0.1mg~30mg、0.1mg~25mg、0.1mg~20mg、0.1mg~15mg、0.1mg~10mg、0.5mg~75mg、0.5mg~70mg、0.5mg~65mg、0.5mg~55mg、0.5mg~50mg、0.5mg~45mg、0.5mg~40mg、0.5mg~35mg、0.5mg~30mg、0.5mg~25mg、0.5mg~20mg、0.5~15mg、0.5~10mg、1mg~75mg、1mg~70mg、1mg~65mg、1mg~55mg、1mg~50mg、1mg~45mg、1mg~40mg、1mg~35mg、1mg~30mg、1mg~25mg、1mg~20mg、1mg~15mg、1mg~10mg、1.5mg~75mg、1.5mg~70mg、1.5mg~65mg、1.5mg~55mg、1.5mg~50mg、1.5mg~45mg、1.5mg~40mg、1.5mg~35mg、1.5mg~30mg、1.5mg~25mg、1.5mg~20mg、1.5mg~15mg、1.5mg~10mg、2mg~75mg、2mg~70mg、2mg~65mg、2mg~55mg、2mg~50mg、2mg~45mg、2mg~40mg、2mg~35mg、2mg~30mg、2mg~25mg、2mg~20mg、2mg~15mg、2mg~10mg、2.5mg~75mg、2.5mg~70mg、2.5mg~65mg、2.5mg~55mg、2.5mg~50mg、2.5mg~45mg、2.5mg~40mg、2.5mg~35mg、2.5mg~30mg、2.5mg~25mg、2.5mg~20mg、2.5mg~15mg、2.5mg~10mg、3mg~75mg、3mg~70mg、3mg~65mg、3mg~55mg、3mg~50mg、3mg~45mg、3mg~40mg、3mg~35mg、3mg~30mg、3mg~25mg、3mg~20mg、3mg~15mg、3mg~10mg、3.5mg~75mg、3.5mg~70mg、3.5mg~65mg、3.5mg~55mg、3.5mg~50mg、3.5mg~45mg、3.5mg~40mg、3.5mg~35mg、3.5mg~30mg、3.5mg~25mg、3.5mg~20mg、3.5mg~15mg、3.5mg~10mg、4mg~75mg、4mg~70mg、4mg~65mg、4mg~55mg、4mg~50mg、4mg~45mg、4mg~40mg、4mg~35mg、4mg~30mg、4mg~25mg、4mg~20mg、4mg~15mg、4mg~10mg、4.5mg~75mg、4.5mg~70mg、4.5mg~65mg、4.5mg~55mg、4.5mg~50mg、4.5mg~45mg、4.5mg~40mg、4.5mg~35mg、4.5mg~30mg、4.5mg~25mg、4.5mg~20mg、4.5mg~15mg、4.5mg~10mg、5mg~75mg、5mg~70mg、5mg~65mg、5mg~55mg、5mg~50mg、5mg~45mg、5mg~40mg、5mg~35mg、5mg~30mg、5mg~25mg、5mg~20mg、5mg~15mg、または5mg~10mgの式(I)の化合物を含むことができる。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0096】
実施形態において、医薬組成物は、1日用量として、5mg~20mg、5mg~10mg、4mg~6mg、6mg~8mg、8mg~10mg、10mg~12mg、12mg~14mg、14mg~16mg、16mg~18mg、または18mg~20mgの式(I)の化合物を含むことができる。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0097】
実施形態において、医薬組成物は、0.1mg、0.25mg、0.5mg、1mg、2.5mg、3mg、4mg、5mg、7mg、7.5mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、12.5mg、13mg、14mg、15mg、16m、17mg、17.5mg、18mg、19mg、または20mgの式(I)の化合物、またはかかる用量の倍数である量を含むことができる。実施形態において、医薬組成物は、1日用量として、2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、または20mgの式(I)の化合物を含むことができる。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0098】
実施形態において、医薬組成物は、1日用量として、0.05mg、0.1mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、7mg、7.5mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、12.5mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、17.5mg、18mg、19mg、または20mgの式(I)の化合物、またはかかる用量の倍数である量を含むことができる。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0099】
実施形態において、長期放出型剤形は、約1mg~約100mgの式(I)の化合物を含むことができる。実施形態において、長期放出型剤形は5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mgの式(I)の化合物を含むことができる。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0100】
実施形態において、遅延放出型剤形は、約0.05mg~約100mgの式(I)の化合物を含むことができる。実施形態において、遅延放出型剤形は、1日用量として、0.05mg、0.1mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mgの式(I)の化合物を含む。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0101】
実施形態において、パルス放出型剤形は、約0.05mg~約100mgの式(I)の化合物を有する1つ以上のパルス提供ドメインを含むことができる。実施形態において、パルス放出型剤形は、1日用量として、0.05mg、0.1mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mgの式(I)の化合物を含むことができる。本明細書では、式(I)の化合物は、その異性体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含む。
【0102】
実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、1日1回、2回または3回、または1日置きに投与される。実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、夕方に患者に投与することができる。実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、朝方に患者に投与することができる。実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、夕方に1回及び朝方に1回、患者に投与することができる。実施形態において、24時間で対象に投与される式(I)の化合物の総量は、0.5mg~30mgである。実施形態において、24時間で対象に投与される式(I)の化合物の総量は、0.05mg~30mg、例えば、0.5mg~20mgまたは0.5mg~10mgである。実施形態において、24時間で対象に投与される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の総量は、0.1mg、0.25mg、0.5mg、1mg、2mg、5mg、6mg、7mg、7.5mg、8mg、9mg、10mg、12.5mg、15mg、17.5mg、または20mgである。実施形態において、24時間で対象に投与される式(I)の化合物の総量は、20mgとすることができる。実施形態において、対象を低用量で開始し、用量を漸増させることができる。これにより、薬剤が対象によく忍容されるか否かを判定することができる。実施形態では、式(I)の化合物の効果は、単独でまたは血糖降下剤と組み合わせて患者の反応に従って調整される。投与量は、成人よりも子供で少なくすることができる。
【0103】
実施形態において、1型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病などの代謝性疾患を治療する方法は、代謝性疾患の治療を必要とする患者に式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、組成物は代謝性疾患の少なくとも1つの症状の改善を与える。
【0104】
実施形態において、1型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病などの代謝性疾患を治療する方法は、代謝性疾患の治療を必要とする患者に式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、組成物は、患者への医薬組成物の投与後、4時間以上にわたって少なくとも1つの症状の改善を与える。実施形態において、本明細書では、患者への医薬組成物の投与後、6時間以上にわたって少なくとも1つの症状の改善がもたらされる。実施形態において、本明細書では、患者への医薬組成物の投与後、例えば、8時間、10時間、12時間、15時間、18時間、20時間、または24時間以上にわたって少なくとも1つの症状の改善がもたらされる。実施形態において、本明細書では、患者への医薬組成物の投与後、少なくとも、例えば、8時間、10時間、12時間、15時間、18時間、20時間、または24時間にわたって少なくとも1つの症状の改善がもたらされる。実施形態において、本明細書では、患者への医薬組成物の投与後、12時間にわたって少なくとも1つの症状の改善がもたらされる。
【0105】
実施形態において、1型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病などの代謝性疾患を治療する方法は、式(I)の化合物を1つ以上の他の活性剤と組み合わせて投与することを含む。併用療法では、各活性剤を同じ混合物中で一緒に、または別個の混合物中で投与することできる。実施形態では、医薬組成物は、2つ、3つ、またはそれ以上の活性剤を含む。実施形態において、併用により、疾患または障害の治療に対して相加的な効果よりも高い効果がもたらされる。例えば、式(I)の化合物と1つ以上の血糖降下剤との併用は、式(I)の化合物のそれぞれと血糖降下剤単独とを同じ用量で投与する場合の相加的な効果よりも高い治療効果をもたらす。したがって、有効性を高める相乗的な効果を与えることができる、薬剤の組み合わせによる代謝性疾患の治療が提供される。
【0106】
実施形態において、式(I)の化合物単独、または、場合により、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド(グリニド)、α-グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニスト、インスリン、またはインスリンアナログなどの1つ以上の血糖降下薬と組み合わせた、必要とする患者への投与が提供される。実施形態において、式(I)の化合物の医薬組成物単独、または、場合により、ビグアニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、メグリチニド(グリニド)、α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1受容体アゴニスト、インスリン、またはインスリンアナログなどの1つ以上の血糖降下薬との組み合わせが提供される。
【0107】
実施形態において、本明細書における1型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病などの代謝性疾患を治療する方法は、代謝性疾患の治療を必要とする患者に、式(I)の化合物を、約50mg~約3000mgのメトホルミンまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む。実施形態において、約50mg~約3000mgのメトホルミンまたはその薬学的に許容される塩は、24時間で投与することができる。実施形態において、メトホルミンまたはその薬学的に許容される塩は、24時間にわたって分割用量で投与することができる。実施形態では、メトホルミンは、1日1回、例えば、夕食とともに投与することができる。実施形態では、メトホルミンは、約100mg~500mgまたは200mg~850mg(1日1~3回)、または約300mg~1000mgを1日1回または2回の異なる投与レジメンを用いて、1日当たり約500mg~2000mg、最大2500mgまたは3000mgの異なる用量で、または、遅延放出型メトホルミンを約100mg~1000mgまたは500mg~1000mgを1日1回または2回または約500mg~2000mgを1日1回の用量で投与することができる。
【0108】
実施形態において、1型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病などの代謝性疾患を治療する方法は、代謝性疾患の治療を必要とする患者に、式(I)の化合物をインスリンまたはインスリンアナログと組み合わせて投与することを含む。インスリンは、市販の速効型インスリンアナログ、例えば、リスプロまたはグルリシン、速効型(通常の)インスリン、中間型(NPH)インスリン、持効型インスリン、例えば、グラルギンまたはデテミル、超持効型インスリン、例えば、デグルデク、または併用型インスリン製品であってよい。インスリンまたはインスリンアナログは、非経口投与、例えば、皮下投与することができる。速効型または通常型のヒトインスリンは、1mL当たりインスリン100単位(U-100)及び1mL当たりインスリン500単位(U-500)の2つの濃度で入手できる。インスリンは、一定用量または可変用量療法として投与することができる。インスリン用量に影響し得る因子としては、炭水化物摂取、運動、病気、体重、及びインスリン抵抗性が挙げられる。一般的には、インスリン用量は、代謝要求及び血糖値の頻繁なモニタリングに基づいて個別に設定される。一般に、1日の総インスリン必要量は0.5~1単位/kg/日であり得る。
【実施例
【0109】
本明細書に示される実施例は、あくまで本明細書の開示を補う目的で含まれるものであって、いかなる点でも限定するものとみなされるべきではない。
【0110】
参照例1:(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸
【化4】
2.0Mの水酸化リチウム水溶液(5.0当量)を、(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸メチルエステル(1.0当量)をテトラヒドロフラン(1.0M)及びメタノール(4.0M)に加えた溶液に4℃で加えた。混合物を室温で18時間撹拌した。混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、(S)-3-(4-(((R)-7-フルオロ-4-(6-(((R)-テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル)オキシ)フェニル)ヘキサ-4-イン酸を得た。
MS ESI (+) m/z: 502.24 (M+H).
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.15 (d, J=2.4 Hz, 1H), 7.64 (dd, J=8.6, 2.6 Hz, 1H), 7.38-7.26 (m, 3H), 7.03 (t, J=8.6 Hz, 1H), 6.98-6.93 (m, 2H), 6.81 (dd, J=8.4, 0.4 Hz, 1H), 5.95-5.91 (m, 1H), 5.61-5.58 (m, 1H), 4.11-3.89 (m, 5H), 3.29-3.19 (m, 1H), 2.91-2.71 (m, 3H), 2.42-2.15 (m, 4H), 1.84 (d, J=2.4 Hz, 3H).
【0111】
参照例2:
7.5mgの活性物質を含有するコーティング錠剤を製造する。
1個の錠剤コアは、以下を含有する:
活性物質 7.5mg
リン酸カルシウム 9.3mg
コーンスターチ 3.6mg
ポリビニルピロリドン 1.0mg
メチルセルロース 1.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.1mg
23mg
【0112】
活性物質は、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、及び指定された量の半分のステアリン酸マグネシウムと混合される。直径13mmのブランクを打錠機で製造し、次いでこれらを適切な機械を使用して1.5mmのメッシュサイズのスクリーンに擦り通し、残りのステアリン酸マグネシウムと混合する。この造粒物を打錠機で圧縮して所望の形状の錠剤を形成する。このようにして製造された錠剤コアを、実質的にメチルセルロースからなるフィルムでコーティングする。仕上がったフィルムコーティング錠剤を蜜蝋で研磨する。
【0113】
参照例3:
10mgの活性物質を含有する錠剤を製造する。
1個の錠剤は、以下を含有する:
活性物質 10.0mg
ラクトース 8.0mg
コーンスターチ 3.4mg
ポリビニルピロリドン 0.4mg
ステアリン酸マグネシウム 0.2mg
22.0mg
【0114】
活性物質、ラクトース、及びスターチを混合し、ポリビニルピロリドンの水溶液で均一に湿潤させる。湿潤した組成物を篩い分けし(メッシュサイズ2.0mm)、50℃でラック式乾燥機で乾燥させた後、これを再び篩い分けし(メッシュサイズ1.5mm)、潤滑剤を加える。完成した混合物を圧縮して錠剤を形成する。
【0115】
実施例1:薬物動態及び薬力学データ(PK/PD)試験
薬物動態及び薬力学データ(PK/PD)を、図1に示す動物種を使用して収集した。式(I)の試験化合物として、参照例1で調製した化合物を用いた。参照例1の化合物またはグルコースを、図1に示す頻度及び用量でIV経路またはPO経路により動物に与えた。単回投与及び反復投与の後にデータを収集した。
【0116】
マウス、ラット(SDラット及びOLETFラット)及びカニクイザルから得られたPK/PDデータを用いて、シミュレートしたヒトのPKパラメータ及びPDパラメータを体重70kgのヒト男性について計算した。参照例1の化合物について得られたシミュレートしたヒトのPKパラメータを、図2に示す。
【0117】
溶媒と比較した参照例1の化合物のグルコース低下効果を予測するため、図2に示されるように種間アロメトリースケーリングから得られたヒトPKパラメータを用いてPDシミュレーションを行った。本発明者らは、参照例1の化合物を0.5~10mgの用量範囲で2週間、反復投与した後、OGTT(経口糖負荷試験)のグルコース濃度-時間プロファイルをシミュレーションした。3gのグルコースを、薬剤(参照例1の化合物投与)の1時間後に投与した。疾患状態を仮定してグルコースベースラインを150mg/dLとして設定した。
【0118】
薬物及びグルコース投与後のシミュレートされたグルコース濃度-時間プロファイルを得た(図3)。このシミュレーションに基づいて、用量レベル別に溶媒と比較したグルコースAUCの減少率を表1に要約する。
【表1】
【0119】
実施例2:経口糖負荷試験
体重約200gの一晩絶食させた雄性Sprague Dawley(SD)ラット(Crl:CD(SD))で経口糖負荷試験を行う。尾からの採血によって投与前血液試料を得る。血糖計を用いて血糖値を測定し、血糖値について動物を無作為化する(n=5/群)。次いで、各群に、溶媒単独(蒸留水中の0.5%メチルセルロース)、または式(I)の化合物または第2もしくは第3の血糖降下薬、または式(I)の化合物+第2の抗糖尿病薬+場合により第3の抗糖尿病薬の組み合わせのいずれかを含む溶媒を単回経口投与する。式(I)の化合物として、参照例1の化合物を使用することができる。
【0120】
あるいは、各群に、溶媒単独、または式(I)の化合物または第2の血糖降下薬+第3の血糖降下薬、または式(I)の化合物+第2の血糖降下薬+第3の抗糖尿病薬の組み合わせのいずれかを含む溶媒を単回経口投与する。各動物に、化合物の投与の30分後に経口糖負荷(2g/kg)を投与する。糖負荷の15分、30分、60分、及び120分後の尾血中の血糖値を測定する。血糖変動を、反応性血糖AUCを計算することにより定量化する。データは平均±S.E.M.として示す。統計的な比較は、Graph Pad Prismプログラムの一元配置または二元配置分散分析検定によって行う。
【0121】
実施例3:前糖尿病の治療
病的空腹時血糖及び/または耐糖能障害を特徴とする前糖尿病の治療における本発明による医薬組成物または組合せの有効性は、臨床試験を用いて試験することができる。5つの患者群(それぞれ10人の患者を含む)に、それぞれ、0.5~20mgの式(I)の化合物(例えば、参照例1の化合物)を毎日投与する。短期間(例えば、2~4週間)の試験では、治療の奏功は、空腹時血糖値及び/または試験における治療期間の終了後に食後または負荷試験(経口糖負荷試験または規定食後の食事負荷試験)後の血糖値を測定し、これらの値を、試験開始前の値及び/またはプラセボ群の値と比較することによって検討される。さらに、フルクトサミン値を治療の前後に測定し、初期値及び/またはプラセボ値と比較することができる。空腹時または非空腹時の血糖値の有意な降下は、治療の有効性を示す。長期間(12週間以上)の試験では、治療の奏功は、HbA1c値を測定することにより、初期値及び/またはプラセボ群の値と比較することにより試験される。初期値及び/またはプラセボ値と比較したHbA1c値の有意な変化は、式(I)の化合物または前糖尿病治療のための実施形態に基づく組み合わせの有効性を示す。
【0122】
実施例4:顕性2型糖尿病の予防
治療の有効性は、前糖尿病患者を、本発明による医薬組成物もしくは組み合わせ、またはプラセボもしくは非薬物療法もしくは他の薬剤のいずれかにより長期間(例えば1~5年間)治療する比較臨床試験で検討することができる。治療中及び治療終了時に、空腹時血糖値及び/または負荷試験(例えばOGTT)を測定することにより、何人の患者が顕在性2型糖尿病、すなわち125mg/dl超の空腹時血糖値及び/または199mg/dl超のOGTTによる2時間値を示すかを判定する検査が行われる。他の治療形態の1つと比較して、本発明による式(I)の化合物または組み合わせで治療した場合の顕性2型糖尿病を示す患者数の有意な減少は、前糖尿病から顕在性糖尿病への移行を予防する効果を実証する。
【0123】
実施例5:2型糖尿病の治療
食事及び運動によって適切に管理されていない2型糖尿病の治療未経験の患者に対して、6ヶ月間にわたって0.5~20mgの用量で経口投与される1日1回の式(I)の化合物(例えば、参照例1の化合物)の単剤療法の、プラセボと比較した有効性及び安全性について検討する。これは、多施設、無作為化、4群、並列群、二重盲検、プラセボコントロール試験とすることができる。食事及び運動によって適切に管理されていない2型糖尿病を有する18~77歳の患者(スクリーニング来院時に7.0%以上のHbA1c)が適格となる。スクリーニング時のHbA1cが7.0%超かつ10.0%未満の患者は、主治療コホート(MTC)を包含し得る。10.0%超かつ12.0%未満のHbA1cを有し、その他のすべての選択基準及び除外基準を満たす患者は、オープンラベルコホート(OLC)への直接登録に適格である。適格性に関して、すべての患者は、治療未経験(最初の診断後6ヶ月以上にわたって糖尿病の医学的治療[インスリン及び/または経口血糖降下薬]を投与されておらず、スクリーニング前8週間の間に連続3日間または連続7日間を超える経口血糖降下薬を投与されていないものとして定義される)であり、空腹時Cペプチドが1ng/mL以上(0.33nmol/L以上)であり、ボディマス指数(BMI)が40kg/m2以下である必要がある。
【0124】
スクリーニングの後、MTCの患者は、一重盲検の2週間の食事及び運動のプラセボリードイン期間に入ることができる。参加基準を満たし、リードイン期間中に試験薬剤(プラセボ)に十分なコンプライアンス(処方薬剤の消費量80~120%)を示した患者は、登録の対象となる。患者を0.5~20mgの参照例1の化合物またはプラセボの経口投与に対して無作為化し、二重盲検の試験薬を投与しながら24週間フォローする。OLCに登録された患者は、24週間の治療期間に直接入り、1日1回20mgの用量でオープンラベルで参照例1の化合物を経口投与する。
【0125】
主要エンドポイントは、ベースラインから24週目までのHbA1cの変化とすることができる。副次エンドポイントには、ベースラインから24週目までの(1)空腹時血漿血糖値(FPG)、(2)HbA1が7.0%未満となった患者の割合、及び(3)75gの経口糖負荷試験(OGTT)に応じた食後血糖値(PPG)の0~180分の曲線下面積(AUC)のベースラインからの変化の変化が含まれうる。その他の予め指定された有効性の結果の尺度は、OGTTに応じた120分におけるベースラインからのPPG変化、ならびに空腹時及び食後のインスリン、Cペプチド、及びグルカゴンレベルのベースラインから24週目までの変化とすることができる。B細胞の機能は、ホメオスタシスモデル評価(HOMA)-2及びインスリン抵抗性によって測定される。
【0126】
少なくとも1回の試験薬剤の投与を行い、かつベースライン及び少なくとも1回のベースライン後測定を行った無作為化患者で構成することができる無作為化患者のデータセットで有効性分析を行う。各化合物(I)群を、治療群を効果とし、ベースライン値を共変量とした共分散分析(ANCOVA)モデルを使用して連続変数におけるベースラインから24週目までの変化についてプラシーボと比較する。24週目に目標HbA1cを達成する患者の割合を、両側Fisher正確確率検定を使用して各参照例1の化合物治療群とプラセボとの間で比較する。人口統計学的及び他のベースラインの特徴を記述統計を用いて要約する。推定平均血糖値(eAG)を以下の線形回帰:eAGmg/dL=28.7×HbA1c-46.7を用いてHbA1c値に基づいて事後的に計算する。ANCOVAモデルのフレームワーク内で、各治療群内の絶対平均変化率及び調整後平均変化率、ならびに各化合物(I)治療群(0.5~20mg)とプラセボ群との間の平均変化率の差について点推定値及び95%信頼区間(CI)を計算する。主要エンドポイントについては、参照例1の化合物治療群とプラセボ群との間の各比較を、Dunnettの調節からα=0.019の水準で行い、全体のタイプIのエラー率が0.05の有意水準で制御されるようにする。逐次的試験法を各副次的有効性エンドポイントに用いて多重度について調整し、各治療群内で全体のタイプIのエラー率を0.05の水準に保持する。
【0127】
実施例6:インスリン抵抗性の治療
異なる長さの期間(例えば、2週間~12ヶ月)にわたり実施される臨床試験において、治療の奏功を高インスリン正常血糖グルコースクランプ試験を用いて確認する。試験終了時のグルコース注入速度の、初期値と比較した、またはプラセボ群と比較した、または異なる治療を投与した群と比較した有意な上昇は、インスリン抵抗性の治療における、実施形態に基づく式(I)の化合物、医薬組成物または組み合わせの有効性を証明する。
【0128】
実施例7:高血糖の治療
異なる長さの期間(例えば1日~24ヶ月)にわたって実施される0.5~20mgの臨床試験において、高血糖患者における治療の奏功を、空腹時血糖値または非空腹時血糖値(例えば食後またはOGTTによる負荷試験もしくは規定食後)を測定することによって確認する。試験終了時におけるこれらの血糖値の、初期値と比較した、またはプラセボ群と比較した、または異なる治療を投与した群と比較した有意な上昇は、高血糖の治療における本発明に基づく式(I)の化合物、医薬組成物または組み合わせの有効性を証明する。
【0129】
実施例8:微小血管合併症または大血管合併症の予防
実施形態に基づく式(I)の化合物、医薬組成物または組み合わせを用いた2型糖尿病または前糖尿病患者の治療は、微小血管合併症(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性足病変、糖尿病性潰瘍)または大血管合併症(例えば、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害、血管再狭窄)の発生リスクを予防または低減する。2型糖尿病または前糖尿病患者を、長期、例えば1~6年間にわたって、実施形態の医薬組成物または組み合わせで治療し、他の抗糖尿病薬またはプラセボで治療した患者と比較する。
【0130】
他の抗糖尿病薬またはプラセボで治療した患者と比較した治療奏功のエビデンスは、単一または複数の合併症の数が少ないことにみることができる。大血管の事象、糖尿病性足病変及び/または糖尿病性潰瘍の場合では、その数は、既往歴及びさまざまな試験方法によってカウントされる。糖尿病性網膜症の場合では、治療の奏功は、コンピュータ制御された照明と眼に対する背景の評価または他の眼科的方法によって判定される。糖尿病性神経障害の場合では、既往歴及び臨床検査に加えて、例えば較正された音叉を用いて神経伝導速度を測定することができる。糖尿病性腎症に関しては、試験の開始前、その間、及び終了時に、以下のパラメータ:アルブミンの分泌量、クレアチニンクリアランス、血清クレアチニン値、血清クレアチニン値が2倍になるまでに要する時間、透析が必要になるまでの時間を検討することができる。
【0131】
実施例9:メタボリックシンドロームの治療
試験開始時の開始値と比較した、またはプラセボもしくは異なる治療で治療した患者群と比較した、収縮期血圧及び/または拡張期血圧の有意な低下、血漿トリグリセリドの低下、総コレステロールもしくはLDLコレステロールの低下、HDLコレステロールの増加、または体重減少は、メタボリックシンドロームの治療における式(I)の化合物または他の血糖降下薬との組み合わせの有効性を証明する。
【0132】
実施例10:臨床試験(健康なヒトにおける単回用量漸増(SAD)試験)
ヒト被験者における安全性及びpKデータを求めるために、単回用量漸増(SAD)試験を実施した。SAD試験には、無作為化され、参照例1の化合物またはプラセボ(3:1)を0.5mg、1mg、2mg、5mg、または10mgの用量で単回経口投与した8人の健常被験者の5つのコホートが含まれた。各コホートは、前のコホートの安全性及びPKデータの検討後に試験を開始した。5mgコホートは2つの群に分け、一方の群には空腹状態で参照例1の化合物を投与し、他方の群には食事と一緒に参照例1の化合物を投与した。
【0133】
0.5mg、1mg、2mg、5mg及び10mgの単回投与後の参照例1の化合物の平均血漿濃度を、図4A(線形表示)及び図4B(半対数表示)に示す。各コホートのCmax、AUClast、及びAUCinfを表2に示す。
【表2】
【0134】
ファーストインヒューマン試験では、空腹時に投与した場合、0.5mg~10mgの単回用量は十分に忍容された。前臨床PKモデリングから予想されるように、単回用量のいずれも、Cmax及びAUClastについてのPK中止基準を超えなかった。
【0135】
図5A及び図5Bは、0.5mg(空腹)、1mg(空腹)、2mg(空腹)、5mg(空腹)、及び5mg(食事)の単回投与後の参照例1の化合物の平均血漿濃度をそれぞれ線形表示及び半対数表示で示す。参照例1の化合物に対する食事の効果の分析は、化合物を食事と一緒に投与した後の曝露量の増加が小さいことを示した。Cmax及びAUClastの食事/空腹の割合の比は、それぞれ103.19及び106.28であり、化合物を食事と一緒に投与した場合、関連する作用がないことを示している。
【0136】
安全性に関しては、12種類の有害事象(AE)が報告されたが、特に注目すべき有害事象(AESI)または重篤な有害事象(SAE)は報告されなかった。12種類のAEのうち5つはIMP(治験薬)と関係している可能性があると考えられた。これら5つのAEには、頭痛(2)、下腹痛、下痢、右上腕の発疹が含まれたが、いずれも軽度であり、速やかに回復した。
【0137】
全体として、これらのAEのいずれも医学的な懸念を生じるものではなく、プロトコールに従った中止基準は満たさなかった。すべての被験者について、心電図、バイタルサイン、及び検査データに有意な変化は記録されなかった。この試験で得られた安全性評価によれば、10mg以下の単回用量の参照例1の化合物またはプラセボは、すべての被験者において安全かつ良好な忍容性を有すると結論付けることができる。
【0138】
実施例11:臨床試験(健康なヒトにおける反復用量漸増(MAD)試験)
ヒト被験者における安全性及びpKデータをさらに試験するために、反復用量漸増(MAD)試験が実施される。MAD試験には、1コホート当たり10人の健常被験者からなる3つのコホートが含まれ、これらのコホートを無作為化し、SAD試験の結果から求められた各コホートからの安全性の結果に従って、参照例1の化合物またはプラセボ(4:1)を1~5mgの範囲で14日間、経口投与する。
【0139】
実施例10に記載される空腹条件下での単回用量PKデータに基づいてPKモデルの集団を置いた。モデル構造は、線形消失とその後の2回の一次吸収を伴う2コンパートメントモデルとした。毎日経口投与後の14日目(定常状態)のモデル予測された曝露量を、表3に示す。
【表3】
【0140】
5mg用量(14日間)でのモデル予測された安全性マージン15は、安全性マージン基準である10よりも大きく、参照例1の化合物が安全であることを示している。
【0141】
さらに、SDラットにおける参照例1の化合物(0.1mg/kg、0.3mg/kg、及び1mg/kg用量)の曝露量及び有効性の結果を図6に示す。ヒトにおける最小MAD用量1mgは、SDラットで最小有効曝露量よりも高い曝露量を与えることができ、最大量である5mgは、OGTT(経口糖負荷試験)でグルコースAUCの約20.8%の低下を生じ得る、1mg/kgでのSDラットにおける曝露量をカバーすると考えられる。
【0142】
実施例12:薬剤性肝障害(DILI)評価
GPR40アゴニストであるファシグリファムのヒト臨床試験は、肝毒性の可能性があるために中止されている。参照例1の化合物は、薬剤性肝障害(DILI)試験において非常に優れた安全性プロファイルを示した。
【0143】
DILIリスクは、インビボでの薬物曝露(例えば、CmaxまたはCss(安定状態での血漿濃度))と組み合わせた、BSEP阻害の効力に起因する可能性がある。DILIリスクを有する薬剤の大部分は、IC50をCmaxまたはCssで割ることによって計算される安全性マージンが10以下である。表4に、ファシグリファムについて報告されている安全性マージンと参照例1の化合物について計算した安全性マージンを示す。
【表4】
【0144】
(a)ヒトトランスポーター阻害試験及び安全性マージン
ファシグリファム及び参照例1の化合物を、BSEP、MRP2、MRP3及びMRP4を含む様々な薬物トランスポーターに対するインビトロ阻害のIC50(μM)を測定するために試験し、これらの薬物トランスポーターについての安全性マージンを測定した。結果を表5に示す。表5の結果は、参照例1の化合物が、ファシグリファムと比較して、BSEP、MRP2、3及び4の阻害に対してより高い安全性マージンを有し、DILIのリスクが低いことを示している。
【表5】
【0145】
(b)胆汁酸(BA)分析-グリココール酸(GCA)蓄積
グリココール酸(GCA)及びグリコケノデオキシコール酸(GCDCA)は、ヒトの胆汁酸の主な成分であり、DILI患者でそれらの有意な増加が確認されている。異なる濃度のファシグリファム、トログリタゾン、ピオグリタゾン、及び参照例1の化合物を、GCAの蓄積について試験した。結果を図7に示す。
【0146】
ファシグリファムが10μΜのヒトCmaxよりも低い4μMでGCAの有意な蓄積を誘導するのに対して、参照例1の化合物は、0.3μMの予想されるヒトCmaxよりも高い1μΜで有意な蓄積を示さない。
【0147】
(c)ミトコンドリア機能抑制
ミトコンドリアの機能に対するファシグリファム及び参照例1の化合物の阻害作用を、HepaRG細胞を用いて評価した。結果を図8に示す。参照例1の化合物は、ミトコンドリアインビトロアッセイでファシグリアムよりも低いDILIリスクを示している。
【0148】
(d)ヒト肝細胞における共有結合によるタンパク質結合
ヒト肝細胞に対する放射性標識化合物の共有結合(CVB)負荷を測定し、CVBをもたらす1日用量及び代謝の割合の両方を考慮することによってCVB負荷を推定した。2mgの臨床用量(実施例1及び10に基づく)を使用した参照例1の化合物のCVB負荷は0.01mg/日であり、ファシグリファムの2mg/日よりも顕著に低かった。参照例1の化合物の1日260mg超の用量は、1mg/日のCVB負荷の閾値を上回ると予測された。結果を表6に示す。
【表6】
【0149】
(e)HμRELTox(商標)アッセイ
ファシグリファム及び参照例1の化合物について、HμRELTox(商標)アッセイを用いて試験し、結果を表7及び図9に示す。結果は、参照例1の化合物及びファシグリファムが同等のレベルの肝毒性反応(TC50)を示し、参照例1の化合物がファシグリファムよりも広い安全性範囲を有することを示している。
【表7】
【0150】
(f)転写因子(TF)プロファイリング
さまざまな肝転写因子に対するファシグリファム及び参照例1の化合物の影響を、2D HepG2細胞を使用し、細胞を3.3μM、10μM、及び30μΜのファシグリファムで24時間、または0.3μM、3.3μM、及び10μMの参照例1の化合物で24時間処理することによってアッセイした。結果を図10及び11に示す。
【0151】
異なる転写因子(TF)活性の定量的評価に対する参照例1の化合物の影響は、ファシグリファムと比較して大きくない。10μΜの参照例1の化合物で48時間処理した場合、BA代謝のマスター調節因子であるFXRの活性が1.58倍上昇した。10μΜのファシグリファムで24時間処理した場合、肝疾患の発症/進行と高い相関のあるPPAR、AP-1、及びNRF2の活性が有意に増加した。
【0152】
図12に、参照例1の化合物とファシグリファムを比較したDILI評価を要約する。図12の要約は、参照例1の化合物を含む式(I)の化合物が安全であり、かつファシグリファムと比較してDILIリスクが有意に低いことを明確に示している。
【0153】
記載した実験において観察される特定の薬理学的及び生化学的応答は、存在する医薬担体の有無、また使用される製剤の種類及び投与様式に従って、また、それらに応じて異なり得るものであり、かかる予想される結果の変動または差は本発明の実施形態の実施に基づいて想到される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】