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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-03
(54)【発明の名称】抗菌性創傷被覆材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20240101AFI20240626BHJP
【FI】
A61F13/00 301G
A61F13/00 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574421
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 GB2022051407
(87)【国際公開番号】W WO2022254223
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2107893.6
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520308396
【氏名又は名称】メッドトレード プロダクツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホガース,アンドルー
(57)【要約】
本発明は、創傷被覆材の層の対向する面の間の1つ以上の界面に抗菌剤を配置した抗菌性多層創傷被覆材に関する。これにより、抗菌剤の移動が改善され、被覆材全体の抗菌剤の全体濃度をより高くすることができる。その結果、医療者が創傷を処置する際に創傷床の微生物負荷を軽減でき、創傷感染のリスクが軽減される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の層および第2の層と抗菌剤とを備える多層創傷被覆材であって、
前記第1の層は前記第2の層に隣接して結合され、前記抗菌剤は前記第1の層と前記第2の層との対向する面の間の界面に位置することを特徴とする、
多層創傷被覆材。
【請求項2】
第3の層をさらに備え、
前記第3の層は前記第2の層に隣接することを特徴とする、
請求項1に記載の多層創傷被覆材。
【請求項3】
抗菌剤はさらに、前記第2の層と前記第3の層との対向する面の間の第2の界面にも位置することを特徴とする、
請求項2に記載の多層創傷被覆材。
【請求項4】
第4の層をさらに備え、
前記第4の層は前記第3の層に隣接することを特徴とする、
請求項2または3に記載の多層創傷被覆材。
【請求項5】
抗菌剤はさらに、前記第3の層と前記第4の層との対向する面の間の第3の界面にも位置することを特徴とする、
請求項4に記載の多層創傷被覆材。
【請求項6】
前記抗菌剤は、複数の界面に位置していることを特徴とする、
上記のいずれかの請求項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項7】
前記第1の層および第2の層は、前記第1の層と前記第2の層との対向する面の間の界面における接着剤によって結合されることを特徴とする、
上記のいずれかの請求項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項8】
前記抗菌剤は前記接着剤と混合されることを特徴とする、
上記のいずれかの請求項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項9】
前記抗菌剤は乾燥形態であることを特徴とする、
上記のいずれかの請求項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項10】
前記抗菌剤は、膜、粉末、フレーク、顆粒、結晶およびそれらの組み合わせから成る群から選択される形態であることを特徴とする、
請求項9に記載の多層創傷被覆材。
【請求項11】
前記抗菌剤は、銀、銀誘導体、乳酸、クエン酸、塩化ベンザルコニウム、ヨウ素、ヨウ素酸塩、ヨウ化物塩、銅、銅塩、亜鉛、亜鉛塩、トルイジンブルーO、キシリトール、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、硝酸ミコナゾール、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする、
上記のいずれかの請求項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項12】
前記抗菌剤は、銀および/または銀誘導体であることを特徴とする、
請求項11に記載の多層創傷被覆材。
【請求項13】
前記抗菌剤はヨウ素であることを特徴とする、
請求項11に記載の多層創傷被覆材。
【請求項14】
ヨウ素酸塩とヨウ化物塩とは反応してその場でヨウ素を形成することを特徴とする、
請求項13に記載の多層創傷被覆材。
【請求項15】
前記抗菌剤は、全組成の0.001~10重量%の量で存在することを特徴とする、
上記のいずれかの請求項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項16】
前記抗菌剤はさらに、前記多層創傷被覆材の層中にも位置することを特徴とする、
上記のいずれかの請求項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項17】
前記第1の層は創傷接触層であり、前記第2の層は吸収層であることを特徴とする、
上記のいずれかの請求項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項18】
第1の層および/または第2の層の表面に抗菌剤を塗布する工程と、
前記抗菌剤が前記第1の層と前記第2の層との対向する面の間の界面に配置されるように、前記第1の層と前記第2の層とを互いに隣接して結合する工程とを備える、
多層創傷被覆材の製造方法。
【請求項19】
医薬品として用いられることを特徴とする、
請求項1から17のいずれか1項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項20】
微生物を殺すあるいはその増殖を阻害するために用いられることを特徴とする、
請求項1から17のいずれか1項に記載の多層創傷被覆材。
【請求項21】
生理学的標的から放出される流体を吸収するのに用いられる、または生理学的標的部位から放出される流体の流れを止めるのに用いられることを特徴とする、
請求項1から17のいずれか1項に記載の多層創傷被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層創傷被覆材に関し、特に抗菌性多層創傷被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
局所多層創傷被覆材の使用は、創傷の治療において十分に確立されている。創傷被覆材は多くの場合、湿潤な創傷治癒環境を維持しながら創傷からの流体を吸収することによって創傷滲出液を処理するように設計されている。通常は、多層創傷被覆材は、創傷接触層と1つ以上の吸収層と支持層とを備えている。
【0003】
創傷被覆材を設計する際に考慮すべき点は、創傷感染の管理である。創傷床の感染は自然治癒プロセスを妨害し、創傷の慢性化を引き起こす可能性がある。創傷感染は、創傷治癒を遅らせるだけでなく、患者に痛みや不快感を与え、さらには全身感染症や敗血性ショックなどのさらなる合併症を引き起こす可能性がある。抗菌性創傷被覆材を使用することで創傷床の微生物負荷を軽減できるため、創傷感染のリスクが軽減される。抗菌性創傷被覆材には、その構造において、細菌などの微生物を殺すあるいはその増殖を阻害する抗菌剤が包含されている。
【0004】
効果的な抗菌性被覆材を設計することは、いくつかの理由から困難である。課題の1つは、製品の使用期間中に微生物を効果的に減少させるのに十分な高濃度の抗菌剤を被覆材内に包含させることが難しいことである。これは製造工程における制限が原因の場合がある。例えば、繊維製品上に抗菌剤をスプレーコーティングする場合、均一なスプレーを可能にするために、溶媒の粘度に応じて抗菌剤の濃度を制限する必要がある。同様に、抗菌剤をポリウレタンフォームなどの固体吸収材料に包含させる場合、抗菌剤の濃度は、材料の主な吸収機能に影響を与えないように制限される。また、活性剤の含有量は、吸収性などの被覆材の物理的性能特性に影響を与えるほど多くなってはならない。
【0005】
さらなる課題は、抗菌剤が創傷滲出液と接触することで放出され、層を適切に通過して望ましくない微生物に到達することを確実にすることである。多くの創傷被覆材は高い吸収性を備え、創傷滲出液が層を通して素早く引き込まれ、創傷滲出液と微生物とが吸収層に捕捉されるよう設計されている。これは被覆材の抗菌効果に悪影響を与え、被覆材内の抗菌剤から離れた場所に微生物が存在することになる場合がある。
【0006】
したがって、抗菌剤を創傷被覆材に包含させるための良好な方法を開発することが求められている。良好な抗菌効果を有する多層創傷被覆材を開発することも求められている。
【0007】
本発明は、前述の問題を考慮して開発され、これらまたは他の欠点を克服しようとするものである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも第1の層および第2の層と抗菌剤とを含む多層創傷被覆材が提供され、第1の層は第2の層に隣接して結合され、抗菌剤は第1の層と第2の層との対向する面の間の界面に位置する。
【0009】
隣接する第1の層と第2の層との対向する面の間の界面に抗菌剤を配置することにより、抗菌効果が改善された創傷被覆材が提供されることが分かった。
【0010】
さらに、隣接する第1の層と第2の層との対向する面の間の界面に抗菌剤を配置することにより、被覆材全体にわたる抗菌剤の全体濃度が向上することが観察された。
【0011】
理論に束縛されるものではないが、隣接する第1の層と第2の層との間の界面に抗菌剤を配置することにより、抗菌剤は層内で拘束されないため、被覆材全体にわたってより効果的に移動することができる。これは、当初より他の物質から溶出する抗菌剤に依ることがないため、吸収された液体への抗菌剤の溶解がより速いためであると考えられる。したがって、抗菌剤はあらゆる創傷滲出液により速く吸収されるため、被覆材全体にさらに速くより均一に移動することができ、このことはゲル化吸収性材料を含む被覆材において特に有利である。ゲル化材料の場合、吸収性材料がゲル化する前に抗菌剤が被覆材全体に移動し、流体が被覆材内をさらに移動するのを防ぐことができる。対照的に、抗菌剤が吸収性材料に包含されている従来技術の被覆材では、液体が被覆材内を移動する際に、吸収性材料が流体を閉じ込めてしまい、抗菌剤が被覆材全体に効果的に移動するのが妨げられる。
【0012】
さらに、隣接する第1の層と第2の層との間の界面に抗菌剤を配置することによって、より高い全体濃度の抗菌剤を被覆材に包含させることができる。製造工程上の制約または層の吸収特性の低下により、層に含めることができる抗菌剤の量が制限されることが多いため、このことは有益である。例えば、ほとんどの製造工程では、抗菌剤の濃度が吸収性、引張強度、吸上性などの材料の特性に影響を与えるレベルに達する前の、特定の濃度までしか抗菌剤を保持できない。したがって、隣接する第1の層と第2の層との間の界面に抗菌剤を包含させることによって、被覆材の性能特性を阻害または損なうことなく、抗菌剤をより高濃度で含めることができる。
【0013】
したがって、隣接する第1の層と第2の層との間の界面に抗菌剤を配置することによって、より少ない製造工程で抗菌剤を創傷被覆材中に包含させることができる。例えば、上述のようにいくつかの製造上の制約を受けることになりえる抗菌剤を包含させるための追加の処理工程を被覆材の層に適用する必要がなくなる。
【0014】
その結果、本発明によれば、抗菌剤を創傷被覆材に包含させるための良好な方法を提供し、コストの削減や製造工程の効率化を実現可能である。
【0015】
「多層」という用語は、本明細書では少なくとも2つの層を意味するために使用される。本発明の多層創傷被覆材は、2つより多くの層を含んでもよい。
【0016】
「隣接する」という用語は、本明細書では、互いに隣に位置する創傷被覆材の構成部分を指すために使用される。「隣接する」という用語は、所望あるいは必要に応じて、互いに隣に位置して結合材料および/または抗菌剤によってのみ分離されている創傷被覆材の構成部分を指す場合もある。「隣接する」という用語は、その間に別の構成要素が配置されずに互いに隣に位置している創傷被覆材の構成部分を指す場合もある。
【0017】
「近位」および「遠位」という用語は、創傷部位に関して使用される。「近位面」は、使用中に創傷部位に面する被覆材の構成要素の表面を指し、「遠位面」は、使用中に創傷部位とは反対側を向く被覆材の構成要素の表面を指す。例えば、第1の層と第2の層はそれぞれ近位面と遠位面とを有する。いくつかの実施形態では、第1の層の遠位面は、第2の層の近位面と対向する。
【0018】
同様に、「近位層」は、創傷部位から遠くに位置する「遠位層」と比較して、創傷部位により近くに位置する層を指すために用いられる。
【0019】
「創傷」という用語は、本明細書では、人間または動物の生理学的標的部位における皮膚または皮下組織の任意の損傷または開口を指すために用いられる。通常は、本発明の創傷被覆材は、人間の生理学的標的部位に適用可能である。生理学的標的部位という用語は、本明細書では創傷部位とも呼ばれる。当該被覆材はさまざまな創傷への適用に適している。これら損傷には、糖尿病性足潰瘍、火傷、褥瘡、静脈潰瘍および動脈潰瘍、外科的創傷、裂傷、切り傷、擦り傷などが含まれる。
【0020】
創傷被覆材が微生物を殺すあるいはその増殖を阻害できる場合、その創傷被覆材は抗菌性であるとみなしてもよい。
【0021】
より具体的には、米国繊維化学技術・染色技術協会(AATCC)試験法100によれば、創傷被覆材が抗菌性であるとみなされるためには、3つのグラム陽性菌、3つのグラム陰性菌、酵母菌、および黴に対して、24時間以内に4log減少させることを示す必要がある。
【0022】
したがって、「抗菌性創傷被覆材」という用語は、本明細書では、3つのグラム陽性菌、3つのグラム陰性菌、酵母菌、および黴に対して、24時間以内に4log減少させることを示すことができる創傷被覆材を指すために用いられる場合もある。
【0023】
好ましくは、抗菌剤は、多層創傷被覆材の層に直接付着しない。さらに好ましくは、抗菌剤は、多層創傷被覆材のどの層にも直接付着しない。
【0024】
これにより、抗菌剤が創傷被覆材の層に付着したり、層内で結合したりしないため、抗菌剤が被覆材全体にさらに効果的に移動することが可能になる。これは、ゲル化吸収性材料を含む被覆材に特に有利である。例えば、吸収性材料がゲル化して流体が被覆材内をさらに移動するのを妨げる前に、抗菌剤が被覆材全体に移動することができるためである。対照的に、抗菌剤が吸収性材料に包含されるかあるいは吸収性材料に付着されている従来技術の被覆材では、液体が被覆材内を移動するとき、吸収性材料が流体を閉じ込めることで、被覆材全体にわたる抗菌剤の効果的な移動が妨げられている。
【0025】
多層創傷被覆材は、2つより多くの層を含んでもよい。創傷被覆材は、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9および第10の層、またはそれ以上の追加の層を含んでもよい。このような実施形態では、創傷被覆材は、第1の層と第2の層との対向する面の間の第1の界面、第2の層と第3の層との対向する面の間の第2の界面、第3の層と第4の層との対向する面の間の第3の界面などの、隣接する層の各々の対の対向する面の間の界面を備えている。
【0026】
多層創傷被覆材は、第3の層を含んでもよい。第3の層は、第2の層に隣接して、第2の層と第3の層との対向する面の間に第2の界面を形成してもよい。
【0027】
多層創傷被覆材は、第4の層を含んでもよい。第4の層は、第3の層に隣接して、第3の層と第4の層との対向する面の間に第3の界面を形成してもよい。
【0028】
多層創傷被覆材は、第5の層を含んでもよい。第5の層は、第4の層に隣接して、第4の層と第5の層との対向する面の間に第4の界面を形成してもよい。
【0029】
多層創傷被覆材は、所望あるいは必要に応じて、第6、第7、第8、第9および第10の層、またはそれ以上の層を含んでもよい。各追加層は、自層とその隣接層との対向する面の間にさらなる界面、例えば、それぞれ第5、第6、第7、第8および第9の界面、またはそれ以上の界面を形成する。
【0030】
抗菌剤はさらに、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8および第9の界面のうちの任意の1つまたは複数に配置されてもよい。
【0031】
抗菌剤が複数の界面に配置されると、抗菌剤が創傷滲出液に吸収される場所が増えるので、抗菌剤は被覆材全体にさらによく移動することができるようになり有益である。
【0032】
1つ以上の追加の層が、その隣接する層に結合されてもよい。
【0033】
隣接する層の任意の対は、当該技術分野における任意の従来の手段によって互いに結合され得る。例えば、隣接する層の任意の対は、接着剤、熱、または圧力によって結合されてもよい。
【0034】
隣接する層の任意の対は、層の周囲において互いに結合されてもよい。
【0035】
あるいは、隣接する層の任意の対は、層の主面において結合されてもよい。
【0036】
通常、創傷被覆材には粉末結合、熱結合、物理結合、およびラテックス結合が使用される。これらのプロセスのいずれも、本明細書で言及される隣接する層の任意の対を結合するために適用することができる。
【0037】
粉末結合には、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、またはポリエチレン系の溶融性粉末を使用する。熱接着には、ポリプロピレン、ポリエステル、またはポリエチレン系の繊維などの溶融性繊維を使用する。ラテックス結合には、例えばアクリル系の液体ラテックス接着剤を使用する。物理結合は、材料が物理的に絡み合ったり、圧力などの力によって押し合わされたりすることで生じる。
【0038】
好ましくは、隣接する層の任意の1つ以上の対は、接着剤によって結合されてもよい。
【0039】
好ましくは、第1の層と第2の層とは接着剤によって結合される。
【0040】
接着剤は、ポリジメチルシロキサン接着剤などのシリコーン接着剤であり得る。
【0041】
あるいは、接着剤は、アクリル接着剤、ポリウレタン接着剤、ヒドロゲル接着剤、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0042】
接着剤は、粉末、液体、ウェブまたはネットの形態であってもよい。ウェブはアクリルウェブであってもよい。
【0043】
接着剤は、溶融性接着剤および/または感圧接着剤などを含んでもよい。溶融性接着剤は熱接着性接着剤であってもよい。感圧接着剤はアクリル系であってもよい。
【0044】
接着剤は熱接着剤であってもよい。接着剤は、当技術分野で知られている任意の適切な熱接着剤を含むことができる。例えば、熱接着剤は、ポリカプロラクトンなどの熱可塑性接着剤であってもよい。
【0045】
接着剤は粉末であってもよい。粉末は、第1の層および第2の層のいずれかまたは両方の上に散布され、その後、熱を加えることによって活性化され得る。例えば、創傷被覆材を熱トンネルに通して、第1の層を第2の層に付着させてもよい。
【0046】
好ましくは、抗菌剤は接着剤と混合される。
【0047】
抗菌剤を接着剤と混合する場合は、抗菌剤を吸収層に包含させる場合と同様の製造上の制約を受けないので、抗菌剤を接着剤と混合することにより、創傷被覆材に抗菌剤を包含させるためのより良い方法を提供できるため有益である。さらに、抗菌剤を接着剤と混合する場合、接着剤により製造中に被覆材内に抗菌剤を固定しておきやすくなる。これにより、例えば切断工程などの製造中に、被覆材からの抗菌剤の損失が減少するため有益である。これにより無駄とコストが削減されるため有利である。
【0048】
好ましくは、抗菌剤は乾燥形態であってもよい。この場合、抗菌剤は、当技術分野で知られている任意の固体塗布工程によって、隣接する層の任意の対の間の界面に塗布することができる。このような方法には、隣接する層の任意の対の間の界面に抗菌剤をドライフィルムとして塗布する方法、隣接する層の任意の対の間の界面に抗菌剤を粉末コーティングする方法、あるいは隣接する層の任意の対の間の界面に抗菌剤の粒子、フレーク、顆粒、または結晶を散布コーティングする方法が含まれ得る。
【0049】
抗菌剤が乾燥形態である場合、より多量の抗菌剤を被覆材に塗布することができ有益である。
【0050】
好ましくは、抗菌剤は、膜、粉末、フレーク、顆粒または結晶の形態であってもよい。
【0051】
あるいは、抗菌剤は溶液の形態であってもよい。この場合、溶液中の抗菌剤は、当技術分野で知られている任意の液体塗布工程によって創傷接触層に塗布され得る。
【0052】
抗菌剤は一般に、微生物を殺すあるいはその増殖を阻害する物質を指す。
【0053】
抗菌剤は、銀、銀誘導体、乳酸、クエン酸、塩化ベンザルコニウム、ヨウ素、ヨウ素酸塩、ヨウ化物塩、銅、銅塩、亜鉛、亜鉛塩、トルイジンブルーO、キシリトール、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、硝酸ミコナゾール、およびそれらの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択し得る。
【0054】
本発明の抗菌剤は、単独で24時間以内にLog4の細菌死滅率を示すことができるか、または別の材料と反応して24時間以内にLog4の細菌死滅率を示すことができる物質を形成することができる1つ以上の物質を含んでもよい。
【0055】
単独で24時間以内にLog4の細菌死滅率を示すことができる適切な物質は、銀、銀誘導体、乳酸、クエン酸、塩化ベンザルコニウム、ヨウ素、銅、銅塩、亜鉛、亜鉛塩、トルイジンブルーO、キシリトール、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、硝酸ミコナゾール、およびそれらの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択し得る。
【0056】
別の材料と反応して24時間以内にLog4の細菌死滅率を示すことができる物質を形成できる適切な物質は、ヨウ化物塩、ヨウ素酸塩からなる群から選択し得る。例えば、ヨウ化物塩はヨウ素酸塩と反応して、24時間以内にLog4の細菌死滅率を示すことができる物質であるヨウ素を生成することができる。
【0057】
ヨウ化物塩とヨウ素酸塩は反応してその場でヨウ素を形成してもよい。例えば、ヨウ素酸塩および/またはヨウ化物塩は、創傷滲出液に溶解してその場でヨウ素を形成し得る。
【0058】
このような実施形態では、ヨウ化物塩およびヨウ素酸塩が反応して、創傷被覆材の界面でヨウ素を形成してもよい。
【0059】
ヨウ化物塩とヨウ素酸塩は共に界面に位置していてもよい。
【0060】
あるいは、ヨウ化物塩を第1の界面に配置し、ヨウ素酸塩を創傷被覆材の別の部分に配置してもよい。例えば、ヨウ化物塩を第1の界面に配置し、ヨウ素酸塩を第1の層および/または第2の層および/またはさらなる界面に配置してもよい。
【0061】
あるいは、ヨウ素酸塩を第1の界面に配置し、ヨウ化物塩を創傷被覆材の別の部分に配置してもよい。例えば、ヨウ素酸塩を第1の界面に配置し、ヨウ化物塩を第1の層および/または第2の層および/またはさらなる界面に配置してもよい。
【0062】
好ましくは、ヨウ素酸塩は、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウムおよび/またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択し得る。
【0063】
好ましくは、ヨウ化物塩は、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムおよび/またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択し得る。
【0064】
銀誘導体とは、1つ以上の化学反応または修飾を経て銀から誘導される任意の化合物または錯体を意味する。1つ以上の化学反応または修飾には、銀塩の形成が含まれ得る。
【0065】
好ましくは、抗菌剤は銀または銀誘導体である。
【0066】
より好ましくは、抗菌剤は銀塩である。好ましくは、銀塩は、乳酸銀、塩化銀、炭酸銀、硫酸銀、スルファジアジン銀から選択される。
【0067】
銀塩は創傷滲出液中での高い溶解性を示すことが認められているため、銀塩の使用により被覆材全体にさらによく移動できる抗菌剤が提供でき有益であることが判明している。
【0068】
好ましくは、抗菌剤は、多層創傷被覆材の0.001~10重量%の量で存在する。
【0069】
好ましい実施形態では、抗菌剤は、創傷に適用されてから24時間以内に被覆材全体に移動することができる。より好ましくは、抗菌剤は、第1の層と第2の層との対向する面の間の界面において適用から12時間以内に、最も好ましくは、第1の層と第2の層との対向する面の間の界面において適用から2時間以内に被覆材全体に移動することができる。被覆材全体に移動するとは、抗菌剤が前述の期間内に多層被覆材の外側の近位層または遠位層で検出され得ることを意味する。
【0070】
多層創傷被覆材の層は、創傷被覆材に通常使用される任意の材料であってもよく、またはそれから形成されてもよい。
【0071】
界面に加えて、抗菌剤は多層創傷被覆材の任意の層にも存在し得る。例えば、抗菌剤は第1の層および/または第2の層に配置されてもよい。抗菌剤は、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9および/または第10の層のいずれか1つ以上に存在してもよい。
【0072】
抗菌剤は、多層創傷被覆材の任意の層全体に分散させることができる。
【0073】
抗菌剤が多層創傷被覆材の層にも配置されている場合、被覆材中の全体的な抗菌剤濃度が増加し、それによって被覆材の抗菌効果が増加するため有益である。
【0074】
多層創傷被覆材の層は、創傷被覆材に一般的に利用される任意の従来の層を含んでもよい。例えば、層は、創傷接触層、1つ以上の吸収層、および/または支持層を含んでもよい。
【0075】
多層創傷被覆材の層のうちの1つは、創傷接触層であってもよい。
【0076】
第1の層または第2の層は創傷接触層であってもよい。
【0077】
創傷接触層とは、創傷と直接接触することを目的とした層を意味する。
【0078】
創傷接触層は、本明細書に記載されるような吸収性材料であってもよい。
【0079】
創傷接触層は積層構造を有していてもよい。積層構造は2つ以上の層を含んでもよい。
【0080】
創傷接触層は、三層積層構造を含んでもよい。三層積層構造は、中央担体層、近位層、および遠位層を有していてもよい。近位層は、創傷接触層を創傷および/または患者の皮膚に接触させて固定するための接着剤を含んでもよい。遠位層は、創傷接触層を遠位隣接層に固定するための接着剤を含んでもよい。
【0081】
創傷接触層は、1つ以上の穿孔を含んでもよい。穿孔は、創傷接触層全体に貫通するよう延在していてもよい。
【0082】
創傷接触層は、概して長方形の形状を有してよいが、創傷接触層が特定の形状に限定されず、他の形状および全体寸法を含み得ることが当業者には理解されるであろう。
【0083】
多層創傷被覆材の1つ以上の層は吸収層であってもよい。
【0084】
第1の層および/または第2の層は吸収層であってもよい。
【0085】
吸収層とは、吸収性または超吸収性材料を含む層を意味する。
【0086】
「吸収性材料」という用語は、本明細書では、創傷滲出液などの液体を吸収することができ、吸収性材料の約500重量%より多くの液体を吸収することができ、約40%を超える液体保持率を有する、生理学的に許容される材料を指すために使用される。
【0087】
吸収性材料は、繊維、発泡体、不織および/または織布材料を含んでもよい。
【0088】
吸収性材料は繊維の形態であってもよい。通常は、吸収性材料は不織繊維の形態である。繊維の長さは最大約100mmであり、一般的には約20~75mm、より一般的には約32~51mmである。
【0089】
吸収性材料は、超吸収性材料ではないポリマー発泡材料などの発泡体を含んでもよく、または発泡体から構成されてもよい。ポリマー発泡体はポリウレタンフォームであってもよい。ポリマー発泡体は連続気泡であってもよい。ポリマー発泡体は親水性であってもよい。
【0090】
吸収性材料は、ゲル化材料または半ゲル化材料を含んでもよく、またはゲル化材料または半ゲル化材料から構成されてもよい。
【0091】
「ゲル化材料」という用語は、本明細書では、その中の実質的にすべての成分が水または体液と接触するとゲル化し得る材料を指すために使用される。例えば、それは、実質的にすべての繊維が水または体液と接触するとゲル化する繊維状材料を含み得る。
【0092】
「半ゲル化」という用語は、本明細書では、水または体液と接触するとゲル化する成分とゲル化しない成分との混合物を含む材料を指すために使用される。例えば、半ゲル化吸収性材料は、水または体液と接触するとゲル化する繊維とゲル化しない繊維との組み合わせを含んでもよい。
【0093】
ゲル化または半ゲル化材料は、例えば、繊維、顆粒、粉末、フレーク、シート、発泡体、凍結乾燥発泡体、圧縮発泡体、膜、有孔膜、ビーズ、および以上のうち2つ以上の組み合わせなどの任意の利用可能な形態であってよい。
【0094】
ゲル化または半ゲル化材料は、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キトサン塩またはキトサン塩誘導体から選択することができる。
【0095】
通常は、ゲル化または半ゲル化材料は繊維の形態である。繊維は、任意の所望の直径または長さを有することができ、織物またはパッドに形成して使用することができる。繊維は織布であっても不織布であってもよい。好ましくは、繊維は不織布である。
【0096】
「超吸収性材料」という用語は、本明細書では、水膨潤性であるが水溶性ではなく、超吸収性材料の約2000重量%、好ましくは約2500重量%を超える液体を吸収することができ、液体保持率は約85%、好ましくは約90%を超える、親水性材料を指すために使用される。
【0097】
超吸収性材料は、ポリ(ビニル)アルコール(PVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、およびポリ(アクリレート酸)などのポリマー材料から選択することができる。
【0098】
超吸収性材料は化学的に修飾されていてもよい。例えば、超吸収性材料は、カルボキシメチルセルロースの鎖上へのアクリル酸のグラフト重合によって得られるポリマー材料であってもよい。
【0099】
超吸収性材料は、デンプン、セルロース、およびポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、およびポリ(アクリル酸)などのポリマー材料から選択される化学修飾材料を含み得る。
【0100】
ポリ(アクリル酸)は、部分的に中和され、軽く架橋されたポリ(アクリル酸)であってもよい。
【0101】
超吸収性材料は繊維の形態であってもよい。通常は、超吸収性材料は不織繊維の形態である。繊維の長さは最大約100mmであり、一般的には約20~75mm、より一般的には約32~51mmである。
【0102】
超吸収性材料は、エアレイド不織繊維を含んでもよく、またはエアレイド不織繊維から構成され得る。エアレイド不織繊維とは、短繊維および/または100%パルプ繊維の混合物によって形成された連続ウェブを意味する。
【0103】
多層創傷被覆材の1つ以上の層は支持層であってもよい。
【0104】
第1の層または第2の層は支持層であってもよい。
【0105】
支持層は、バリアとして機能することができ、細菌などの微生物が衣類などの外部源から創傷被覆材に侵入するのを防ぐように機能することができる。さらに、支持層は、創傷被覆材内に創傷滲出液を保持し、創傷被覆材から滲出液が浸出するのを防ぐようにも機能する。
【0106】
支持層は気体透過性であってもよい。支持層は、細菌などの微生物に対して実質的に不透過性であってもよい。支持層は、液体に対して実質的に不透過性であってもよい。
【0107】
空気や水蒸気などの気体に対する透過性を支持層が有していることで、その構造を水蒸気が透過可能になっている。このため、創傷滲出液が被覆材から外部環境へ蒸散しやすくなる。これにより、被覆材の通気性が向上し、滲出液による被覆材の飽和が防止され、被覆材を交換する回数が減少するため有益である。
【0108】
支持層は、50g/100cm2/24時間~200g/100cm2/24時間の範囲の水蒸気透過率を有してもよい。支持層の水蒸気透過率が80g/100cm2/24時間~160g/100cm2/24時間の範囲である場合、良好な結果が観察される。好ましい実施形態では、支持層は、100g/100cm2/24時間~120g/100cm2/24時間の水蒸気透過率を有する。
【0109】
支持層は、気体透過性で液体不透過性の材料を含んでもよい。
【0110】
支持層は、微生物不透過性の材料も含んでもよい。
【0111】
支持層は、液体および/または微生物不透過性であるが気体透過性である任意の生物学的に許容されるポリマー材料を含んでもよく、またはそれから構成されてもよい。支持層に適した生物学的に許容されるポリマー材料は、ポリウレタンおよびポリエチレンからなる群から選択され得る。
【0112】
本発明の好ましい実施形態では、第1の層は創傷接触層であってもよく、第2の層は吸収層であってもよい。吸収層は、超吸収性材料を含んでもよく、または超吸収性材料から構成されてもよい。抗菌剤は、創傷接触層と吸収層との対向する面の間の第1の界面に位置していてもよい。
【0113】
抗菌剤が創傷接触層と吸収層との間の界面に位置する場合、使用中に抗菌剤の少なくとも一部が吸収層に移動することがある。これは、滲出液が創傷接触層を通過して吸収層に入る際に創傷滲出液中に抗菌剤が溶け、滲出液と共に抗菌剤が運ばれるためであると考えられる。この移動により抗菌剤が吸収層に吸収された多量の滲出液に作用できるようになるため有益である。これにより、被覆材の内部での微生物の増殖が防止される。
【0114】
本発明の別の好ましい実施形態では、第1の層は創傷接触層であり、第2の層は吸収層であり、第3の層は支持層であり得る。このような実施形態では、抗菌剤は、創傷接触層と吸収層との対向する面の間の第1の界面に配置されてもよい。さらに、抗菌剤は、吸収層と支持層との間の第2の界面にも配置されてもよい。あるいは、抗菌剤は、創傷接触層と吸収層との間の第1の界面、または吸収層と支持層との間の第2の界面にのみ配置されてもよい。
【0115】
本発明のさらに好ましい実施形態では、第1の層は創傷接触層であり、第2の層は吸収層であり、第3の層は超吸収性材料を含むさらなる吸収層であり、第4の層は支持層であってもよい。このような実施形態では、抗菌剤は、創傷接触層と吸収層との対向する面の間の第1の界面に配置されてもよい。さらに、抗菌剤は、吸収層とさらなる吸収層との間の第2の界面に配置されてもよい。抗菌剤はまた、さらなる吸収層と支持層との間の第3の界面にも配置されてもよい。あるいは、抗菌剤は、創傷接触層と吸収層との間の第1の界面、および/または吸収層とさらなる吸収層との間の第2の界面、および/またはさらなる吸収層と支持層との間の第3の界面に配置されてもよい。
【0116】
本発明の第2の態様によれば、多層創傷被覆材を製造する方法が提供され、この方法は、抗菌剤を第1の層および/または第2の層の表面に塗布する工程と、第1の層と第2の層とを、抗菌剤が第1の層と第2の層との対向する面の間の界面に配置されるように互いに隣接して結合する工程とを備える。
【0117】
好ましくは、抗菌剤を第1の層および/または第2層の表面に塗布する工程は、抗菌剤を接着剤と混合する工程を含む。
【0118】
本発明のさらなる態様によれば、医薬品として用いられる多層創傷被覆材が提供される。
【0119】
本発明のさらなる態様によれば、微生物を殺すあるいは微生物の増殖を阻害するのに用いられる多層創傷被覆材が提供される。
【0120】
本発明のさらなる態様によれば、生理学的標的から放出される流体を吸収するのに用いられる、または生理学的標的部位から放出される流体の流れを止めるのに用いられる多層創傷被覆材が提供される。
【0121】
本発明のさらなる態様は、所望あるいは必要に応じて、本明細書に記載される本発明の他の態様のあらゆる特徴を含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
本発明をより明確に理解するために、その1つ以上の実施形態を、例示のみを目的として、添付の図面を参照して説明する。
図1】多層創傷被覆材の第1の実施形態を示す分解図である。
図2】多層創傷被覆材の第2の実施形態を示す分解図である。
図3】多層創傷被覆材の第3の実施形態を示す分解図である。
図4】多層創傷被覆材の第4の実施形態を示す分解図である。
図5】多層創傷被覆材の第5の実施形態を示す分解図である。
図6】多層創傷被覆材の第6の実施形態を示す分解図である。
図7】多層創傷被覆材の第7の実施形態を示す分解図である。
図8】多層創傷被覆材の第8の実施形態を示す分解図である。
図9】多層創傷被覆材の第9の実施形態を示す分解図である。
図10】多層創傷被覆材の第10の実施形態を示す分解図である。
図11】多層創傷被覆材の第11の実施形態を示す分解図である。
図12】多層創傷被覆材の第12の実施形態を示す分解図である。
図13】多層創傷被覆材の第13の実施形態を示す分解図である。
図14】多層創傷被覆材の第14の実施形態を示す分解図である。
図15】多層創傷被覆材の第15の実施形態を示す分解図である。
図16】実施例12および参考例13における銀イオンの移動を示すグラフである。
図17】AATCC100適合試験法における実施例1の24時間の処理時間後の対数回収を示すグラフである。
図18】AATCC100適合試験法における実施例3と参考例14との24時間の処理時間後の対数回収を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0123】
図1を参照すると、創傷接触層(102)である吸収性発泡体の第1の層と、超吸収性材料を含む吸収層(103)である第2の層とを含む多層創傷被覆材(101)が示されている。創傷接触層と吸収層は接着剤(104)によって互いに結合される。抗菌剤(105)は接着剤と混合され、創傷接触層と吸収層との対向する面の間の第1の界面(106)に位置している。
【0124】
吸収性発泡体は、厚さ1.5mm~3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである。超吸収性材料は、ポリアクリレート超吸収性繊維不織布材料である。
【0125】
接着剤(104)は、創傷接触層(102)または吸収層(103)上に散布することによって塗布され、熱を使用して積層される粉末接着剤である。
抗菌剤(105)は銀塩である。
【0126】
図2を参照すると、超吸収性材料を含む吸収層(103)に結合された創傷接触層(102)を含む多層創傷被覆材(201)が示されている。創傷接触層と吸収層とは接着剤(104)によって互いに結合される。抗菌剤(105)は接着剤(104)と混合され、創傷接触層(102)と吸収層(203)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置している。
【0127】
第1の界面(106)に加えて、吸収層(103)も抗菌剤(205)を含んでいる。
【0128】
第1の界面(106)および吸収層(203)内に位置する抗菌剤(105、205)は銀塩である。
【0129】
創傷接触層(102)、吸収層(203)、および接着剤(104)の材料は、図1で説明したものと同じである。
【0130】
図3を参照すると、吸収層(103)に結合された創傷接触層(302)を含む多層創傷被覆材301が示されている。創傷接触層(302)および吸収層(103)は、接着剤(104)によって互いに結合される。抗菌剤(105)は接着剤(104)と混合され、創傷接触層(302)と吸収層(103)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置している。
【0131】
第1の界面(106)に加えて、創傷接触層(302)も抗菌剤(305)を含んでいる。
【0132】
創傷接触層(302)、吸収層(103)、接着剤(104)および抗菌剤(105、305)の材料は、図1で説明したものと同じである。
【0133】
図4を参照すると、超吸収性材料を含む吸収層(103)である第2の層に結合されている、創傷接触層(102)である吸収性発泡体の第1の層と、支持層(407)である第3の層とを含む多層創傷被覆材(401)が示されている。抗菌剤(105)は接着剤(104)と混合され、創傷接触層(102)と吸収層(103)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置している。
【0134】
創傷接触層(102)、接着剤(104)、吸収層(103)および抗菌剤(105)の材料は、図1で説明したものと同じである。
【0135】
支持層(407)はポリウレタンフィルムである。支持層(407)は、空気および水蒸気に対して透過性であるが、微生物および水滴に対しては不透過性である。
【0136】
図5を参照すると、創傷接触層(102)、吸収層(203)および支持層(407)を含む多層創傷被覆材(501)が示されている。抗菌剤(105)は接着剤(104)と混合され、創傷接触層(102)と吸収層(203)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置している。
【0137】
第1の界面(106)に加えて、超吸収層(203)も抗菌剤(205)を含んでいる。
【0138】
創傷接触層(102)、接着剤(104)、吸収層(203)および抗菌剤(105、205)の材料は、図2で説明したものと同じである。支持層(407)の材料は図4で説明したものと同じである。
【0139】
図6を参照すると、創傷接触層(302)、吸収層(103)および支持膜(407)を含む多層創傷被覆材(601)が示されている。抗菌剤は接着剤(104)と混合され、創傷接触層(302)と吸収層(103)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置している。
【0140】
第1の界面に加えて、吸収性発泡体創傷接触層(302)も抗菌剤(305)を含んでいる。
【0141】
創傷接触層(302)、接着剤(104)、吸収層(103)および抗菌剤(105、305)の材料は、図3で説明したものと同じである。支持層(407)の材料は図4で説明したものと同じである。
【0142】
図7を参照すると、創傷接触層(102)、吸収層(103)、創傷接触層(102)と吸収層(103)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置する接着剤(104)と混合された抗菌剤(105)、支持層(407)、および吸収層(103)と支持層(407)との対向する面の間の第2の界面(706)に位置する接着剤(704)と混合された抗菌剤(705)を含む多層創傷被覆材が示されている。
【0143】
創傷接触層(102)、接着剤(104、704)、吸収層(103)、支持層(407)および抗菌剤(105、705)の材料は、図4で説明したものと同じである。
【0144】
図8を参照すると、創傷接触層(102)、吸収層(203)、創傷接触層(102)と吸収層(203)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置する接着剤(104)と混合された抗菌剤(105)、支持層(407)、および吸収層(203)と支持層(407)との対向する面の間の第2の界面(706)に位置する接着剤(704)と混合された抗菌剤(705)を含む多層創傷被覆材(801)が示されている。
【0145】
第1および第2の界面(106、706)に加えて、吸収層(203)も抗菌剤(205)を含んでいる。
【0146】
創傷接触層(102)、接着剤(104、704)、吸収層(203)、支持層(407)および抗菌剤(105、205、705)の材料は、図4で説明したものと同じである。
【0147】
図9を参照すると、創傷接触層(302)、吸収層(103)、創傷接触層(302)と吸収層(103)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置する接着剤(104)と混合された抗菌剤(105)、支持層(407)、および吸収層(103)と支持層(407)との対向する面の間の第2の界面(706)に位置する接着剤(704)と混合された抗菌剤(705)を含む多層創傷被覆材(901)が示されている。
【0148】
第1および第2の界面(106、107)に加えて、創傷接触層(302)も抗菌剤(305)を含んでいる。
【0149】
創傷接触層(13)、接着剤(12、18)、吸収層(11)、支持層(17)および抗菌剤(14、16、19)の材料は、図4で説明したものと同じである。
【0150】
図10を参照すると、創傷接触層(102)である第1の層、吸収層(1003)である第2の層、創傷接触層(102)と吸収層(1003)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置する接着剤(104)と混合された抗菌剤(105)、および支持層(407)である第3の層を含む多層創傷被覆材(1001)が示されている。
【0151】
吸収層(1003)はアルギン酸塩繊維である。
【0152】
創傷接触層(102)、接着剤(104)、支持層(407)および抗菌剤(105)の材料は、図4で説明したものと同じである。
【0153】
図11を参照すると、創傷接触層(102)である第1の層、吸収層(1103)である第2の層、創傷接触層(102)と吸収層(1103)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置する接着剤(104)と混合された抗菌剤(105)、および支持層(407)である第3の層を含む多層創傷被覆材(1101)が示されている。
【0154】
第1の界面(106)に加えて、吸収層(1103)も抗菌剤(1105)を含んでいる。
【0155】
創傷接触層(102)、接着剤(104)、吸収層(1103)、支持層(407)および抗菌剤(105、1105)の材料は、図10で説明したものと同じである。
【0156】
図12を参照すると、創傷接触層(302)、吸収層(1103)、創傷接触層(302)と吸収層(1103)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置する接着剤(104)と混合された抗菌剤(105)、および支持層(407)を含む多層創傷被覆材(1201)が示されている。
【0157】
第1の界面に加えて、創傷接触層(302)も抗菌剤(305)を含んでいる。
【0158】
創傷接触層(302)、接着剤(104)、吸収層(1103)、支持層(407)および抗菌剤(105、305)の材料は、図10で説明したものと同じである。
【0159】
図13を参照すると、創傷接触層(102)である第1の層、吸収性発泡体を含む吸収層(1303)である第2の層、創傷接触層(102)と吸収層(1303)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置する接着剤(104)と混合された抗菌剤(105)、超吸収性材料を含む吸収層(103)である第3層、および第2の層(1303)と第3の層(103)との対向する面の間の第2の界面(706)に位置する接着剤(704)と混合された抗菌剤(705)を含む多層創傷被覆材(1301)が示されている。
【0160】
創傷接触層(102)、接着剤(104、704)、および抗菌剤(105、705)の材料は、図7で説明したものと同じである。第2の層(1303)は吸収性発泡体であり、第3の層(1303)は超吸収性材料である。
【0161】
図14を参照すると、創傷接触層(102)である第1の層、吸収層(1403)である第2の層、創傷接触層(102)と吸収層(1403)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置する接着剤(104)と混合された抗菌剤(105)、超吸収性材料を含む吸収層(1303)である第3層、および第2の層(1403)と第3の層(1303)との対向する面の間の第2の界面(706)に位置する接着剤(704)と混合された抗菌剤(705)を含む多層創傷被覆材(1401)が示されている。
【0162】
第1および第2の界面(106、706)に加えて、第2の層(1403)も抗菌剤(1405)を含んでいる。
【0163】
創傷接触層(102)、接着剤(104、704)、および抗菌剤(105、705)の材料は、図7で説明したものと同じである。第2の層(1403)の材料は吸収性発泡体である。第3の層(1303)の材料は図13で説明したものと同じである。
【0164】
図15を参照すると、創傷接触層(102)である第1の層、吸収性発泡体を含む吸収層(1403)である第2の層、創傷接触層(102)と吸収層(1403)との対向する面の間の第1の界面(106)に位置する接着剤(104)と混合された抗菌剤(105)、超吸収性材料を含む吸収層(1503)である第3の層、および第2の層(1403)と第3の層(1503)との対向する面の間の第2の界面(706)に位置する接着剤(704)と混合された抗菌剤(705)を含む多層創傷被覆材(1501)が示されている。
【0165】
第1および第2の界面に加えて、第2の層(1403)および第3の層(1503)も抗菌剤(1405、1505)を含んでいる。
【0166】
図1を参照すると、使用に際し、創傷接触層(102)が創傷上に配置されると、抗菌剤(105)は界面(106)に位置するため、被覆材全体にわたって自由に移動することができる。その結果、抗菌剤(105)は創傷接触層(102)および超吸収層(103)に自由に移動することができ、それによって被覆材全体の抗菌剤濃度が増加する。
【0167】
さらに、創傷接触層(102)が創傷上に配置されると、創傷滲出液が創傷接触層(102)を通過して吸収層(103)に入る。創傷滲出液が被覆材を通過する際、創傷接触層(102)と吸収層(103)との間の界面(106)における抗菌剤(105)が創傷滲出液中に溶け、それによって、抗菌剤(105)が創傷滲出液とともに吸収層(103)内に運ばれる。これは、抗菌剤(105)の最初の塗布位置から離れた被覆材の領域における微生物の増殖を防止するため有益である。
【0168】
本発明のさらなる実施形態を、以下の非限定的な実施例を参照してさらに説明する。
【0169】
創傷被覆材の実施例
実施例1
層の重量に対して0.52%の塩化銀塩を含む厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、乳酸銀塩抗菌剤および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が2重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることによって第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0170】
実施例2
層の重量に対して0.78%の塩化銀塩を含む厚さ1.5mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、乳酸銀塩抗菌剤および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が4重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることによって第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0171】
実施例3
層の重量に対して0.52%の塩化銀塩および2%のクエン酸を含む厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、乳酸銀塩および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が2重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることによって第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0172】
実施例4
層の重量に対して0.52%の塩化銀塩を含む厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、ヨウ化カリウム、ヨウ素酸カリウムおよび感熱性接着剤粉末を、混合物の全体のヨウ素分子含有量が2重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることによって第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0173】
実施例5
層の重量に対して0.52%の塩化銀塩を含む厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、クエン酸キトサンおよび乳酸キトサンの顆粒を接着剤と混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることによって第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0174】
実施例6
有孔シリコーン創傷接触層である第1の層と、層の重量に対して0.52%の塩化銀塩を含む厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームを含む第2の層と、超吸収性繊維を含む第3の層とを製造した。次いで、乳酸銀塩および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が4重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面と第2の層の表面の両方に塗布した。次いで、熱を加えることにより、第1の層を第2の層に隣接して結合し、第2の層を第3の層に隣接して結合させた。
【0175】
実施例7
厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、乳酸銀塩および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が層の2重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることによって第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0176】
実施例8
層の重量に対して0.13%の乳酸銀塩を含む厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層と、PU支持膜を含む第3の層とを製造した。次いで、乳酸銀塩および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が層の2重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面と第2の層の表面の両方に塗布した。熱を加えることにより、第1の層を第2の層に隣接して結合し、第2の層を第3の層に隣接して結合させた。
【0177】
実施例9
厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、アルギン酸銀繊維と超吸収性繊維とを50:50で混ぜ合わせた第2の層と、PU支持膜を含む第3の層とを製造した。次いで、乳酸銀塩および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が層の2重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面と第2の層の表面の両方に塗布した。熱を加えることにより、第1の層を第2の層に隣接して結合し、第2の層を第3の層に隣接して結合させた。
【0178】
実施例10
厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームを含む第2の層とを製造した。次いで、乳酸銀塩および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が層の2重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることによって第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0179】
実施例11
厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、乳酸銀塩および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が層の2重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることによって第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0180】
実施例12
厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、塩化銀塩抗菌剤および感熱性接着剤粉末を、混合物の全体の銀イオン含有量が2重量%となる量で混合した。次いで、この混合物を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることによって第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0181】
参考例13
層の重量に対して0.52%の塩化銀塩を含む厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、感熱性接着剤粉末を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることにより第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0182】
参考例14
層の重量に対して0.52%の塩化銀塩および2%のクエン酸を含む厚さ3.25mmの連続気泡ポリウレタンフォームである第1の層と、超吸収性繊維を含む第2の層とを製造した。次いで、感熱性接着剤粉末を第1の層の表面に塗布し、熱を加えることにより第1の層を第2の層に隣接して結合させた。
【0183】
試験データ
被覆材全体の塩化銀の移動:
参考例13を、温度および湿度を制御したオーブン内の逆パディントンカップ配置内で、創傷滲出液を模して設計された模擬創傷液(ウシ胎児血清およびペプトン水)または生理食塩水の溶液に3日間曝露した。3日後、被覆材の層を分離し、元素分析にかけた。銀イオンの7.62%が第2の層に移動したことが判明した。
【0184】
同様に、実施例12を、温度および湿度を制御したオーブン内の逆パディントンカップ配置内で、被覆材への創傷滲出液の取り込みを模して設計された模擬創傷液(ウシ胎児血清およびペプトン水)または生理食塩水の溶液に3日間曝露した。3日後、被覆材の層を分離し、元素分析にかけた。驚くべきことに、銀イオンの52.2%が第2の層に移動したことが判明した。
【0185】
これらの試験の結果を図16に示す。試験結果は、抗菌剤を被覆材に包含させる方法によって、抗菌剤が被覆材全体に移動する機能が大幅に向上することを示している。上述のように、これは抗菌剤の動きがより自由になるためであると考えられる。
【0186】
したがって、2つの隣接する層の対向する面の間の界面に抗菌剤が位置することにより、抗菌剤が被覆材全体に良好に移動し、それによって被覆材の抗菌効果が増大することは明らかである。
【0187】
AATCC100適合試験法:
本発明の有効性を実証するために、被覆材例について、AATCC100適合試験法を用いて一連の微生物に対する試験を行った。
【0188】
試験手順:
(a)被覆材例を無菌的に調製し、4.2x4.2cmのサイズに切断した。
(b)次いで、模擬創傷液(SWF)を、50%ウシ胎児血清(熱活性化)および50%ペプトン希釈剤として無菌的に調製する。
(c)次に、被覆材例をSWFで部分的または完全に飽和させ、37℃の加湿環境に3日間置く(前処理段階)。
(d)前処理の後、被覆材例をSWFから取り出し、清潔な滅菌ペトリ皿に置く。
(e)細菌懸濁液を、適切な増殖培地中で約1x106CFUml-1に調製する。
(f)接種原を、得られた懸濁液を適切な培地に培養する10倍希釈を実行することによって計数する。
(g)1ミリリットルの細菌懸濁液を使用して、3日間前処理した被覆材例に接種し、被覆材例を放置することで24時間培養する。
(h)24時間の培養期間の後、被覆材例を適切な中和剤中に置き、生存微生物を超音波処理によって回収する。
(i)増殖培地中で中和剤の10倍希釈を実行し、得られた懸濁液を適切な培地に培養することによって微生物を計数する。
(j)各被覆材例の24時間の処理時間後の細菌の回収を0時間の陰性対照と比較し、得られた対数減少を計算した。
【0189】
上述の創傷被覆材例1および3を、一連のグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して試験した。被覆材例1の対数回収を図17に示す。各生物に対する被覆材例1および被覆材例3の対数減少を表1に示す。
【0190】
創傷被覆材例4を、グラム陽性菌、グラム陰性菌および黴に対して試験した。結果を表2に示す。
【0191】
【表1】
【0192】
【表2】
【0193】
表1および表2から、本発明の被覆材が、AATCC100適合試験法における24時間の処理時間後に、一連の微生物の有意な対数減少をもたらすことは明らかである。
【0194】
さらに、複合層間に追加の抗菌剤を含めることの影響を実証するために、実施例3を参考例14と比較した。参考例14は、同じ構造であるが、追加の乳酸銀抗菌剤を第1層と第2層の間の接着剤に混合していないものである。両被覆材について、AATCC100適合試験法で緑膿菌および大腸菌に対する比較を行った。結果を図18に示す。
【0195】
図18から、第1の層と第2の層との対向する面の間の界面に抗菌剤を含めると、抗菌剤が多層創傷被覆材の層内にのみ含まれる場合よりもはるかに大きな対数減少が生じることは明らかである。
【0196】
当然のことながら、本発明は、例示としてのみ説明された前述の実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
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【国際調査報告】