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特表2024-523961アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な調製のためのプロセスおよび装置
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  • 特表-アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な調製のためのプロセスおよび装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な調製のためのプロセスおよび装置
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/46 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
C01F11/46 B
C01F11/46 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559783
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2022065296
(87)【国際公開番号】W WO2022263217
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21305825.8
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520141081
【氏名又は名称】サン-ゴバン プラコ
【氏名又は名称原語表記】Saint-Gobain Placo
【住所又は居所原語表記】Tour Saint-Gobain, 12 Place de l’Iris, 92400 Courbevoie, France
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】マゴード,ライオネル
(72)【発明者】
【氏名】ヒス,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フィグエイレド ドルネレス,マシウス
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA14
4G076AB08
4G076BA24
4G076BB05
4G076BB08
4G076BD01
4G076BD02
4G076BD04
4G076BE11
4G076CA02
4G076CA26
4G076DA30
4G076GA03
(57)【要約】
アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のためのプロセスが記載され、プロセスは、粒子状石膏、媒晶剤、および水を混合して石膏スラリーを形成するステップを含む。プロセスは、石膏スラリーをか焼してアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを提供することと、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを濾過してスラリーから少なくとも1つの流体ストリームを分離することと、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの第1の制御パラメータを測定することと、少なくとも1つの流体ストリームをさらなる石膏、さらなる水、およびさらなる媒晶剤と組み合わせてさらなる石膏スラリーを形成することをさらに含み、プロセスは、第1の制御パラメータの測定値に応じてさらなる媒晶剤の量を変更することをさらに含む。記載されるプロセスを行うための装置も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のためのプロセスであって、
石膏スラリーを形成するために粒子状石膏、媒晶剤および水を混合するステップと、
アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを提供するために前記石膏スラリーをか焼するステップと、
前記スラリーから少なくとも1つの流体ストリームを分離するために前記アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを濾過するステップと、
前記少なくとも1つの流体ストリームまたは前記アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの第1の制御パラメータを測定するステップと、
さらなる石膏スラリーを形成するために前記少なくとも1つの流体ストリームをさらなる石膏、さらなる水およびさらなる媒晶剤と組み合わせるステップ
を含み、
前記第1の制御パラメータの測定値に応じてさらなる媒晶剤の量を変更することをさらに含む、
プロセス。
【請求項2】
前記第1の制御パラメータを測定する前記ステップは、前記第1の制御パラメータを連続的に測定することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1の制御パラメータは、前記少なくとも1つの流体ストリームまたは前記アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーのpHである、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1の制御パラメータは、前記少なくとも1つの流体ストリームまたは前記アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの体積流量である、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プロセスは、前記少なくとも1つの流体ストリームまたは前記アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの第2の制御パラメータを測定するさらなるステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第2の制御パラメータを測定する前記ステップは、酵素の添加を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記プロセスは、前記第2の制御パラメータの測定値で前記第1の制御パラメータの測定値を較正することを含む、請求項5または請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスは、前記第2の制御パラメータの測定より頻繁に前記第1の制御パラメータを測定することを含む、請求項5、請求項6、または請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第2の制御パラメータを測定する前記ステップは、前記少なくとも1つの流体ストリームまたは前記アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの試料を採取することおよびオフラインで前記第2の制御パラメータを測定することを含む、請求項5~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第2の制御パラメータの測定は、前記第1の制御パラメータの測定より緩徐である、請求項5~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第2の制御パラメータの測定は、前記第1の制御パラメータの測定より正確である、請求項5~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記媒晶剤は、コハク酸を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、0.8:1~1.2:1(両端を含む)の長さ対幅比を有する粒子を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセスを行うための装置であって、 媒晶剤、水および石膏粒子を混合するための混合ゾーンと、
前記混合ゾーンを含むかまたはその下流に位置しかつ前記混合ゾーンと流体連通するか焼炉と、
前記か焼炉の下流に位置しかつ前記か焼炉と流体連通するフィルタと、
前記フィルタから少なくとも1つの流体ストリームを運びかつ前記混合ゾーン中に前記少なくとも1つの流体ストリームを導入するための流体経路と、
前記少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの第1の制御パラメータを測定するように構成された少なくとも1つの測定装置
を備え、前記第1の制御パラメータの測定値に応じて前記混合ゾーンに加えられる媒晶剤の量を変更するための制御手段をさらに備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な調製のためのプロセスに関する。本発明はさらに、このプロセスを提供するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏は、硫酸カルシウム二水和物(CaSO・2(HO))の形態で原料として天然に存在する。プラスターボードなどの石膏含有製品は、か焼されたまたは無水の石膏、すなわち硫酸カルシウム半水和物(CaSO・0.5(HO))と、水の混合物を形成して、固化可能なスラリーを形成し、それを次いで所定の形状に鋳造することによって作製される。硫酸カルシウム半水和物は、水と反応し、再水和されて二水和物結晶になり、これが次いで固体状態へと硬化されるまたは乾燥される。
【0003】
硫酸カルシウム半水和物は、2つの基本形態、アルファ硫酸カルシウム半水和物およびベータ硫酸カルシウム半水和物、に分類され得る。ベータ硫酸カルシウム半水和物は典型的には、周囲湿度または上昇された湿度かつ周囲(すなわち大気の)圧力にて空気中で石膏を加熱することによって形成される。その一方で、アルファ硫酸カルシウム半水和物は、高温および高圧の条件下で水蒸気または水中で石膏から生成される。アルファ硫酸カルシウム半水和物およびベータ硫酸カルシウム半水和物の両方は、石膏製品を作り出すために使用され得、アルファ半水和物で作られた石膏製品は、より硬い傾向があり、より高い強度および密度を有する。
【0004】
石膏製品が連続的に生産される商業的工業環境では、アルファ硫酸カルシウム半水和物を連続的に生成することが、しばしば望ましいかまたは必要である。アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成は、連続的にかつリアルタイムで生成プロセスのパラメータを制御する必要があるため、バッチ生産プロセスよりも困難であり得る。
【0005】
アルファ硫酸カルシウム半水和物の生成のための連続的な湿式か焼プロセスは典型的には、石膏の粒子が水と組み合わされることを含み、次いでこの石膏スラリーが、上昇された温度および圧力の条件でか焼されて、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを生成する。アルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子は次いで、濾過または分離プロセスにおいてスラリー中の水の大部分から分離されて、アルファ硫酸カルシウム半水和物のケークおよび別個の水ストリームを生成する。
【0006】
「湿式アルファ」プロセスを介して溶液中で製造されるアルファ硫酸カルシウム半水和物は、異なる結晶面を有する単結晶である。アルファ硫酸カルシウム半水和物の結晶のアスペクト比(長さ対幅)は、か焼プロセスの間の石膏スラリー中に存在する元素、化合物、および物質に影響される。媒晶剤として知られるこれらの元素、物質、ならびに化合物は、形成中に結晶の特定の面上に優先的に吸着し、結晶格子中にそれら自身を置換することにより、または溶液中のカルシウムおよび/もしくは硫酸イオンと反応してこれらのイオンの濃度を低下させることにより、アルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子のアスペクト比を変化させることができる。媒晶剤は、か焼プロセスで使用される石膏内の不純物のため存在し得る(例えば、ドロマイト由来のマグネシウム)か、または意図的に石膏スラリー中に組み込まれ得る(例えば、コハク酸)。
【0007】
商業的なプロセスでは、アルファ硫酸カルシウム半水和物の生成のために、媒晶剤が使用されて、生成される粒子が所望のアスペクト比を有することを確実にする。一般に、この所望のアスペクト比は、約1の、好ましくは0.8:1~1.2:1の範囲の幅対長さ比である。今日の商業的なプロセスでは、最も一般的に使用される媒晶剤は、コハク酸である。連続的なか焼中に生成されるアルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子のアスペクト比は、使用されるコハク酸の濃度に敏感であり、最適なコハク酸レベルはしばしば、1リットルのスラリー当たり0.86g、または1kgの石膏当たり1.2gと理解され、ここで水石膏比は1:1である。一般に、この量の約3分の1が、か焼プロセス中に消費されると考えられる。したがって、か焼プロセスに導入されるコハク酸のかなりの割合が、か焼プロセスの完了時にアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー中に残存する。
【0008】
コハク酸および他の媒晶剤はしばしば、アルファか焼プロセス内の比較的高価な消耗品であるので、これらの材料の浪費を削減する動機がある。粒子またはその他に結合され、アルファ硫酸カルシウム半水和物ケーク内に保持される媒晶剤を回収することは非常に困難であるが、媒晶剤は、濾過プロセス中にアルファ硫酸カルシウム半水和物から分離された水ストリーム内にも見出され得る。したがって、これらの媒晶剤は、か焼プロセスの開始時にこの水ストリームを新鮮な水および石膏粒子と組み合わせることにより回収され再利用され得る。
【0009】
しかしながら、媒晶剤を回収するそのような方法は、欠点を有する。先に記載されたように、か焼プロセスで生成されるアルファ硫酸カルシウム半水和物粒子のアスペクト比は、コハク酸または他の媒晶剤の濃度に敏感であり得る。したがって、石膏スラリー内の媒晶剤の濃度の小さな変動は、生成されるアルファ硫酸カルシウム半水和物粒子の品質に大きな影響を及ぼし得る。水ストリーム内で回収される媒晶剤の量の小さな差は、投入される石膏の品質における小さな変化のため、連側プロセスにおいてしばしば見られる。したがって、先行技術のシステムによって生成されるアルファ硫酸カルシウムの一貫性を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のためのプロセスが提供され、プロセスは、粒子状石膏、媒晶剤、および水を混合して石膏スラリーを形成するステップと、石膏スラリーをか焼してアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを提供するステップと、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを濾過してスラリーから少なくとも1つの流体ストリームを分離するステップと、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの第1の制御パラメータを測定するステップと、少なくとも1つの流体ストリームをさらなる石膏、さらなる水、およびさらなる媒晶剤と組み合わせてさらなる石膏スラリーを形成するステップを含み、プロセスは、第1の制御パラメータの測定値に応じてさらなる媒晶剤の量を変更することをさらに含む。
【0011】
このようにして、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーのパラメータが測定されて、プロセスの出力の品質および一貫性を経時的に監視することを可能にするプロセスが提供される。プロセスは、第1の制御パラメータの測定値に応じてさらなる媒晶剤の量を変更することを含む。このようにして、プロセスによって生成される将来のアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの品質および特性は、プロセスによって生成される現在のアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの特性に応じて多様であり得る。このようにして、アルファ硫酸カルシウム半水和物の特性および/または品質は、連続的な生成プロセス中に調整されおよび最適化され得る。
【0012】
好ましくは、プロセスは、少なくとも1つの流体ストリームおよびアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの両方の第1の制御パラメータを測定することを含む。このようにして、プロセスは、より入念に監視され得、より高いレベルの制御および/またはより正確な制御を潜在的に可能にする。
【0013】
好ましくは、プロセスは、第1の制御パラメータの測定値を設定値と比較することを含む。好ましくは、設定値は、予め決定される。より好ましくは、さらなる媒晶剤の量は、測定値が設定値より低い場合に増加される。あるいは、さらなる媒晶剤の量は、測定値が設定値より低い場合に減少される。
【0014】
好ましくは、第1の制御パラメータを測定するステップは、前述の第1の制御パラメータを連続的に測定することを含む。第1の制御パラメータが連続的に測定される場合、これは、プロセスの連続的な制御を可能にする利点を提供し得る。あるいは、第1の制御パラメータを測定するステップは、前述の第1の制御パラメータを定期的に測定することを含む。好ましくは、測定間の期間は、1時間以下、より好ましくは30分以下、さらにより好ましくは10分以下、最も好ましくは1分以下である。
【0015】
好ましくは、第1の制御パラメータは、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーのpHである。媒晶剤が酸を含む場合、pHを測定することは、か焼プロセス後に少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー中に残る媒晶剤の量の定量化を提供し得る。
【0016】
あるいは、第1の制御パラメータは、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの体積流量である。体積流量は、スラリー内のアルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子間に捕捉された水の量の定量化を提供し得る。粒子に結合した水の量は、粒子の形状に関係する。アルファ硫酸カルシウム半水和物粒子の形状はスラリー中の媒晶剤の濃度に依存するため、体積流量を、か焼プロセス中にスラリー中に存在する媒晶剤の量を推測するために使用できる。
【0017】
好ましくは、プロセスは、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの第2の制御パラメータを測定するさらなるステップを含む。より好ましくは、第2の制御パラメータを測定するステップは、前述の第2の制御パラメータを定期的に測定することを含む。好ましくは、第2の制御パラメータの測定間の期間は、第1の制御パラメータの測定間の期間より長く、例えば、第2の制御パラメータの測定間の期間は、1時間以上、より好ましくは6時間以上、さらにより好ましくは12時間以上、最も好ましくは1日以上である。
【0018】
好ましくは、第2の制御パラメータを測定するステップは、酵素の添加を含む。より好ましくは、酵素の添加は、サクシニルCoAシンテターゼを添加することを含む。好ましくは、酵素の添加は、ピルビン酸キナーゼを添加することを含む。好ましくは、酵素の添加は、L-乳酸デヒドロゲナーゼを添加することを含む。最も好ましくは、酵素の添加は、サクシニルCoAシンテターゼ、ピルビン酸キナーゼ、およびL-乳酸デヒドロゲナーゼを順に添加することを含む。
【0019】
好ましくは、プロセスは、紫外線により酵素の添加の生成物を分析することを含む。より好ましくは、紫外線は、340nmの波長を有する。好ましくは、プロセスは、酵素の添加の生成物中のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の存在およびまたは量を検出することを含む。
【0020】
好ましくは、第2の制御パラメータを測定するステップは、それによりコハク酸がニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に変換されるアッセイを含む。そのようなアッセイは、そのようなアッセイが1:1の比でNAD+へとコハク酸を変換するため、少なくとも1つの流体ストリームおよび/またはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー内のコハク酸の定量化を可能にし得る。好ましくは、第2の制御パラメータは、少なくとも1つの流体ストリーム中のコハク酸の濃度、またはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー中のコハク酸の濃度である。
【0021】
好ましくは、第2の制御パラメータを測定するステップは、イオンクロマトグラフィーを含む。より好ましくは、第2の制御パラメータを測定するステップは、誘導結合プラズマ検出器を使用するイオンクロマトグラフィーを含む。より好ましくは、第2の制御パラメータを測定するステップは、インラインイオンクロマトグラフィー装置を使用して行われる。
【0022】
好ましくは、第2の制御パラメータを測定するステップは、近赤外分光法を含む。好ましくは、方法は、近赤外透過スペクトルを測定することをさらに含む。あるいは、方法は、近赤外反射スペクトルを測定することをさらに含む。好ましくは、測定ステップは、フーリエ変換を含む。
【0023】
好ましくは、第2の制御パラメータを測定するステップは、銅および/または銅イオン源と少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを組み合わせることを含む。好ましくは、方法は、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー内の1つ以上の銅錯体の存在および/または量を測定することをさらに含む。より好ましくは、測定される銅錯体は、銅(II)およびコハク酸イオンを含む。より好ましくは、錯体は、各銅原子が四座コハク酸配位子からの2つのカルボン酸酸素原子および2つのキレート2,20-ビピリジル基からの4つの窒素原子を通して連結され、コハク酸配位子が2つのCu原子を架橋する、二量体からなる。
【0024】
好ましくは、プロセスは、第2の制御パラメータの測定値で第1の制御パラメータの測定値を較正することを含む。このようにして、経時的な第1の制御パラメータの測定値におけるドリフトまたは誤差を、検出でき、それに対し較正できる。
【0025】
好ましくは、プロセスは、第2の制御パラメータの測定より頻繁に第1の制御パラメータを測定することを含む。
【0026】
好ましくは、第2の制御パラメータを測定するステップは、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの試料を採取すること、およびオフラインで第2の制御パラメータを測定することを含む。このようにして、より幅広い種類の分析技術を、第2の制御パラメータを測定するために実施できる。さらに、オフラインン測定を用いて第2の制御パラメータをより正確に決定することが可能であり得る。ここで、オフラインは、第2の制御パラメータの測定が、試料が装置内の流体ストリームおよびスラリーから切り離されているときに生じるように、試料が装置から取り出されることを意味すると解釈されるべきである。
【0027】
好ましくは、第2の制御パラメータの測定は、第1の制御パラメータの測定より緩徐である。このように、第1の制御パラメータの測定は、規則的かつまたは一定であり得、一方で第2の制御パラメータの測定は、より断続的であり得る。
【0028】
好ましくは、第2の制御パラメータの測定は、第1の制御パラメータの測定より正確である。ここで、より正確とは、測定がより小さい範囲の実験誤差を有することを意味すると解釈されるべきである。
【0029】
好ましくは、媒晶剤は、コハク酸を含む。
【0030】
好ましくは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、0.8:1~1.2:1(両端を含む)の長さ対幅比を有する粒子を含む。より好ましくは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、約1:1の長さ対幅比を有する粒子を含む。そのような長さ対幅比は、プロセス全体を通して良好なスラリー流動性を確保するために好ましいであろう。
【0031】
本発明の第2の態様により、先に記載されたプロセスを提供するための装置が提供され、装置は、媒晶剤、水、および石膏粒子を混合するための混合ゾーンと、混合ゾーンを含むかまたはその下流に位置し、かつ混合ゾーンと流体連通するか焼炉と、か焼炉の下流に位置し、かつか焼炉と流体連通するフィルタと、少なくとも1つの流体ストリームをフィルタから運びかつ少なくとも1つの流体ストリームを混合ゾーンに導入するための流体経路と、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの第1の制御パラメータを測定するように構成された少なくとも1つの測定装置を備え、装置は、第1の制御パラメータの測定値に応じて混合ゾーンに加えられる媒晶剤の量を変更するための制御手段をさらに備える。
【0032】
このようにして、上に記載された有利なプロセスを提供できる装置が提供される。
【0033】
好ましくは、混合ゾーンは、混合容器中にある。
【0034】
好ましくは、装置は、少なくとも1つの流体ストリームまたはアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの第2の制御パラメータを測定するように構成された第2の測定装置を備える。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態をここで、ほんの一例として、図1~3を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のためのプロセスの図を示す。
図2図2は、図1のプロセスの第2の実施形態の図を示す。
図3図3は、図1のプロセスの第3の実施形態の図を示す。
図4図4は、対応するスラリーから得られた乾燥石膏粒子のアスペクト比に対し濾液のpHをプロットする、バッチか焼実験から得られたデータを含むグラフを示す。
【0037】
図1に示されるプロセス100は、粒子状石膏101、媒晶剤102(ここではコハク酸)、および水を混合して石膏スラリーを形成することを含む。石膏スラリーは、湿式か焼ステップ104でアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー103を提供するためにか焼される。低アスペクト比の結晶を達成ため、かつか焼104の間の低粘度を維持するために、石膏スラリーは、0.86g/lのコハク酸102を含む。か焼104後に、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー103は、約1:1の長さ対幅比を有する粒子を含み、プロセス100全体を通して良好なスラリー流動性を確保する。
【0038】
濾過ステップ105が続き、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー103は、濾過されて、スラリー103から一次流体ストリーム109を分離する。このようにして、過剰の流体が、スラリー103から除去され、それによりプラスターケーク106が形成され得る。この実施形態では、濾過ステップ105は、ブフナー濾過を含む。
【0039】
プロセス100の効率を改善するため、かつコスト、熱需要、および資源需要を削減するために、媒晶剤102を含む水は、リサイクルされ、石膏スラリーに再注入される。したがって、濾過ステップ105後に、一次流体ストリーム109は、プロセス100中への再注入用流体を含む二次流体ストリーム110と除去用の過剰の水108へと、分離ステップ107において、分離される。過剰の水108は、再利用または廃棄のために除去される。例えば、石膏スラリー中に再注入されない過剰の水108は、スラリーを温めるボードラインなどの、プロセス100内で再利用され得る。二次流体ストリーム110は、さらなる石膏101、さらなる水、およびさらなる媒晶剤102と組み合わされて、さらなる石膏スラリーを形成する。
【0040】
一次流体ストリーム109は、プロセス100の間、実質的に連続的に流れ、一次流体ストリーム109は、濾過105後に混合タンク中に圧送される。
【0041】
しかしながら、さらなる石膏スラリー中の媒晶剤102の濃度が一定に、かつ最適なレベルで保たれることを確実にするために、さらなる粒子状石膏101およびさらなる水と混合されるさらなる媒晶剤102の濃度は、監視されおよび調節されなければならない。したがって、プロセス100は、さらなる媒晶剤102において、二次流体ストリーム110内のコハク酸の濃度を考慮して石膏スラリー中の媒晶剤102の濃度を調節するための、調節ループ111を含む。この実施形態では、二次流体ストリーム110内のコハク酸の濃度は、約0.7g/lであり、媒晶剤102中のコハク酸の濃度は、約20g/lである。調節ループ111は、比例積分微分(PID)コントローラを含む。
【0042】
プロセス100は、二次流体ストリーム110の第1の制御パラメータCP1を測定することを含む。コハク酸は、か焼104の間および濾過105の間の両方で、ならびに希釈機構により消費される。例えば、コハク酸102の濃度は、か焼104後に低下する傾向があり、これは、結合水が遊離し、かつコハク酸イオンがαプラスター結晶の表面上にある程度吸着されて残るためである。したがって、濾液のpHは、媒晶剤102、すなわちコハク酸の濃度に大きく影響される。したがって、第1の制御パラメータCP1として二次流体ストリーム110のpH値を測定することは、二次流体ストリーム110内の媒晶剤102の濃度の指標を提供する。
【0043】
第1の制御パラメータCP1、すなわち二次流体ストリーム110のpHを測定するステップは、第1の制御パラメータCP1を毎分測定することを含む。このようにして、第1の制御パラメータCP1は、規則的に測定される。第1の制御パラメータCP1は、所定の設定値と比較される。設定値に対する比較に応答して、調節ループ111は、石膏スラリーに加えられるさらなる媒晶剤102の量を変更することにより、石膏スラリー中の媒晶剤102の濃度を調節する。さらなる媒晶剤102の量は、測定値が設定値より低い場合増加され、さらなる媒晶剤102の量は、測定値が設定値より高い場合減少される。
【0044】
プロセス100は、オフラインで二次流体ストリーム110の第2の制御パラメータCP2を定期的に測定する、かつ第2の制御パラメータCP2の測定値で第1の制御パラメータCP1の測定値を較正する、さらなるステップを含む。このようにして、経時的な第1の制御パラメータの測定値におけるドリフトまたは誤差を、較正によって検出および排除できる。この実施形態では、第2の制御パラメータCP2を測定するステップは、酵素の添加を含む。第2の制御パラメータCP2の測定間の期間は、1日である。したがって、酵素の添加を、プロセスのずれを検出するための定期的制御として使用できる。
【0045】
酵素の添加は、以下のように行われる。サクシニルCoAシンテターゼ(SCS)の存在下で、流体ストリーム中に存在するコハク酸アニオン(コハク酸の解離により)は、以下の反応経路にしたがい、アデノシン三リン酸(ATP)によりサクシニルCoAに変換され、アデノシン二リン酸(ADP)および無機リン酸塩の形成をもたらす:
コハク酸イオン+ATP(SCS)→サクシニルCoA+ADP+Pi
【0046】
次いで、ピルビン酸キナーゼ(PK)の存在下で、ADPは、ホスホエノールピルビン酸(PEP)と反応してピルビン酸およびATPを形成する:
ADP+PEP(PK)→ATP+ピルビン酸
【0047】
最後に、ピルビン酸は、L-乳酸およびNADへと、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(L-LDH)の存在下で、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)により還元される:
ピルビン酸+NADH(L-LDH)→L-乳酸+NAD
【0048】
最後の反応ステップの間に形成されるNADの量は、コハク酸イオン含有量に化学量論的に関係する(1:1で)。結果として、初期コハク酸イオン含有量を、340nmでのUV吸光度により測定されるNADH消費量から導き出すことができる。最後に、コハク酸濃度(g/lで)を、次のように表すことができる:
AS=0.5136ΔANADH
式中、ΔANADHは、酵素反応の間のNADHの吸光度(u.A)の変動である。上記の酵素添加計画を、本発明のいずれかの実施形態の一部として使用できる。
【0049】
第2の制御パラメータCP2の測定は、第1の制御パラメータCP1の測定より緩徐であり、第1の制御パラメータCP1の測定は、第2の制御パラメータCP2の測定より頻繁に生じる。このようにして、第1の制御パラメータCP1の測定は、定期的であり、一方で第2の制御パラメータCP2の測定は、より断続的であり、オフラインでかつより正確な測定を可能にする。
【0050】
以下の説明では、同様の符号が、図2で概説された本発明の第2の実施形態の同様の部分に対して使用される。アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のためのプロセス200が示され、媒晶剤202は、コハク酸を含む。図2のプロセス200は、以下の違いを有して図1のプロセス100と同様である。
【0051】
濾過ステップ205中に、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー203は、スラリー203から一次流体ストリーム209を分離するために濾過される。この実施形態では、分離ステップ207の前に、プロセス200は、流量計215を使用して一次流体ストリーム209の第1の制御パラメータCP1’を測定することを含む。
【0052】
第1の制御パラメータCP1’は、一次流体ストリームの体積流量である。体積流量は、石膏スラリー内のアルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子に結合した水の量の定量化を提供する。アルファ硫酸カルシウム半水和物粒子の形状は媒晶剤202の濃度に依存するため、体積流量を使用して、か焼プロセス204中にスラリー中に存在する媒晶剤202の量を推測できる。
【0053】
分離ステップ207が続き、ここで一次流体ストリーム209は、二次流体ストリーム210と除去用の過剰の水へと分離される。第2の制御パラメータCP2’の測定は、分離ステップ207の後に生じ、二次流体ストリーム210の第2の制御パラメータCP2’は定期的に測定される。第1の制御パラメータCP1’の測定値は、第2の制御パラメータCP2’の測定値で較正され、調節ループ211は、さらなる石膏スラリー中のさらなる媒晶剤202の濃度を調節する。第2の制御パラメータCP2’を測定するステップは、図1に関して記載されたような酵素の添加を含み、オフラインで生じる。
【0054】
プロセス200は、分離ステップ207を制御するためのPIDコントローラ212をさらに含む。
【0055】
図3を参照して、図1のプロセス100に類似の、本発明のプロセス300の第3の実施形態が示される。ここでは、これもまたコハク酸である媒晶剤302は、ポンプ314を介して石膏スラリー313中に圧送される。プロセス300は、少なくとも1つの流体ストリームの制御パラメータではなく、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー303の第1の制御パラメータCP1’’を測定することを含む。第1の制御パラメータCP1’’は、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー303の体積流量であり、第1の流量計315を使用して測定される。
【0056】
プロセス300はまた、濾過ステップ305を含み、ここでアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー303は、ベルト濾過を使用して濾過されて、スラリー103から一次流体ストリーム309を分離する。濾過ステップ305の効率は、プラスター結晶の形状、したがってコハク酸濃度によって決定され得る。信頼性のある濾過効率基準は、濾過ステップ305においてベルト濾過によって除去される水の相対量であり、これはプラスターの水需要の指標である。か焼プロセスがうまく制御されている場合、すなわち、好適な水対石膏比およびアルファ硫酸カルシウム半水和物への100%の変換が存在し、かつ濾過が安定である場合、濾過ステップ305中に抽出される水の量は、図3に示されるように、コハク酸302の濃度を調節するために使用され得る。コハク酸302の濃度の調節は、か焼プロセスの滞留時間を考慮に入れる。
【0057】
第2の制御パラメータCP2’’を測定するステップは、図1に関して記載されたような酵素の添加を含み、オフラインで生じる。プロセス300は、図1および図2に関して記載されたように、第2の制御パラメータCP2’’の測定値で第1の制御パラメータCP1’’の測定値を較正することをさらに含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、第2の流量計が、第2の制御パラメータCP2’’を測定するために配置される。そのような実施形態では、一次流体ストリーム309の体積流量が、第2の制御パラメータCP2’’である。このようにして、第1の制御パラメータCP1’’および第2の制御パラメータCP2’’の両方が、オンラインで測定される。第2の制御パラメータCP2’’の測定値で第1の制御パラメータCP1’’の測定値を較正することにより、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリー303からの測定値のあらゆる誤差が、一次流体ストリーム309からの測定値に対して検出され得る。
【0059】
実験
本発明の開発の一環として、発明者らは一連の試験を行った。アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを、媒晶剤としてコハク酸を使用して、反応器でのバッチ湿式か焼によって生成した。3つの実験では、4つの異なる石膏源を使用し、各事例において、石膏を、135±5℃の温度、300000±50000Paの圧力、水対石膏比1で40分間か焼した。
【0060】
各事例では、か焼後に、得られたアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを濾過して、反応器中に導入された水の69%~77%を濾液として回収した。濾紙および真空ポンプを備えたブフナー漏斗を使用する濾液の除去後に、アルファ硫酸カルシウム半水和物のケークを、イソプロパノールに浸漬し、ブフナー装置で2回濾過した。最後に、ケークを、40℃の乾燥オーブンに入れて、残留イソプロパノールを排除した。その後、アルファ硫酸カルシウム半水和物粒子の分析を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行って、アルファ硫酸カルシウム半水和物粒子のサイズおよび寸法を特徴づけた。
【0061】
実験に使用された4つの異なる石膏源の組成および粒子径分布を、以下の表1および表2で詳述する。
【表1】
【表2】
【0062】
ここで各石膏のD10、D50、およびD90測定値は、石膏内で測定された直径のそれぞれ10%、50%、および90%が指定された値より小さい、値を表す。
【0063】
第1の実験では、石膏A~Dの各々を、上に記載されたようにか焼および濾過した。その後、コハク酸の濃度(酵素キットを用いて測定)、濾液中に回収された、スラリーに加えられた総水分のパーセンテージ、および濾液のpHを、各事例において測定した。4つの試験を、石膏A、B、およびDを用いて行い、3つの試験を、石膏Cを用いて行った。各石膏での第1の試験では、コハク酸を、0.86g/lの濃度でスラリーに加えた。その後、第1の試験から得られた濾液を、第2の試験中にスラリーに加え、この濾過および再導入プロセスを、試験全体を通して繰り返し、各試験におけるコハク酸濃度の連続的な低下をもたらした。
【0064】
濾液中のコハク酸の異なる濃度を、か焼後に参照法を使用して測定した。これらの測定値を表3に示す。
【表3】
【0065】
表3から決定され得るように、測定されたpHは、予想どおり濾液内のコハク酸の濃度に依存した。したがって、濾液内のコハク酸の濃度は、濾液のpHを測定することによって決定できると決定され得る。
【0066】
表3からまた決定され得るように、濾液内のコハク酸の濃度はまた、濾液中で回収された総水分のパーセンテージと相関する。濾液中で回収された水分のパーセンテージが低下するにつれて、濾液内のコハク酸の濃度も低下した。濾液中で回収された総水分のパーセンテージが低下するにつれて、濾液の全体積も減少する。したがって、初期スラリー体積に対する濾液の相対体積、または濾液の体積流量を、濾液中のコハク酸の濃度を決定するために使用できる。
【0067】
上に概説された実験のさらなる段階では、生成されたスラリー内のアルファ硫酸カルシウム半水和物を、保持し、走査型電子顕微鏡を用いて分析した。ここで、アルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子のアスペクト比(長さ対幅)を測定し、このデータを以下の表4に示す。
【表4】
【0068】
上記のデータを、図4でさらに示す。表4および図4からわかるように、濾液のpHとアルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子のアスペクト比の間に明らかな相関が存在する。濾液のpHはか焼プロセス中のスラリーのpHに直接関係するため、アルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子のアスペクト比は、湿式か焼プロセス中のスラリーのpHと相関することが、したがって決定され得る。図3に示されるように、pHは、湿式か焼プロセス中に存在するコハク酸媒晶剤の濃度に依存する。
【0069】
上記を考慮して、湿式か焼プロセス中の媒晶剤の濃度は、生成されるアルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子のアスペクト比に大きな影響を及ぼす。したがって、可変量の媒晶剤を含有する濾液が本明細書に記載されるような湿式か焼プロセス中に再導入される場合、その濾液内の媒晶剤の濃度を監視することが必須である。さらに、さらなるスラリーに導入される追加の媒晶剤の量は、所望のアスペクト比のアルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子が得られることを確実にするように制御されなければならない。
【0070】
イオンクロマトグラフィー
先行する実験において、コハク酸の濃度の直接測定を、酵素キットを使用して行った。代替の手法では、イオンクロマトグラフィーを使用して、濾液中のコハク酸の濃度を直接測定できる。
【0071】
この手法の妥当性を説明するために、表5に記載されるようなイオンおよび予想される量のコハク酸を含む濾液を、発明者らは、既知の量のコハク酸を水および石膏と混合し、混合物から石膏を濾過し、濾液を集めることによって得た。
【表5】
【0072】
次いで、これらの濾液の各々中のコハク酸の濃度を、誘導結合プラズマ検出器を使用するイオンクロマトグラフィー(IC-ICP)によって測定した。ここで、溶離液ポンプを使用して、脱イオン水のストリームを作り出し、脱イオン水は、インジェクタから分離カラムへ試料を運んだ。分離カラムは、イオンに応じて異なって反応するポリマーイオン交換樹脂で充填された小さいチューブを含み、それにより試料中の各成分は、ある持続時間後にカラムを出る(溶出時間)。測定を、CI DIONEX ICS2100 A-03-71クロマトグラフィーシステムを使用して行った。この機器では、コハク酸の溶出時間は、32分である。
【0073】
イオンがカラムから出て来ると、それらの量を、検出器によって測定する。ICP検出器において、試料を、ミスト生成器により噴霧する。得られるエアロゾルは、アルゴントーチおよび高出力誘導ボビンを通過して、プラズマ発生条件を作り出す。電離した原子を、連続的な電位を有するチャンバ中で質量電荷比により分離し、イオン濃度に比例する信号を提供する。これらの実験の結果を、表6に示す。
【表6】
【0074】
上でわかるように、イオンクロマトグラフィーは、濾液の各々中のコハク酸の濃度を測定する正確な方法であり、測定値の各々は、予想される値の10%以内に入った。したがって、イオンクロマトグラフィーは、濾液中のコハク酸の濃度の直接測定のための酵素キットの代替となる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】