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特表2024-523962動力電池の容量を予測する方法、装置、及び機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】動力電池の容量を予測する方法、装置、及び機器
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240628BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20240628BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20240628BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240628BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240628BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/387
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560028
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2022099307
(87)【国際公開番号】W WO2022267979
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110711103.9
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲でん▼林旺
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼天宇
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲鵬▼青
(72)【発明者】
【氏名】李▲暁▼▲倩▼
【テーマコード(参考)】
2G216
【Fターム(参考)】
2G216BA22
2G216BA63
2G216CB11
(57)【要約】
動力電池の容量予測方法は、動力電池のサンプルデータを取得するステップと、クラスタリングアルゴリズムによってサンプルデータを、いくつかのクラスに分けるステップであって、各クラスが対応する劣化モデル及び特徴識別子を有するステップと、測定対象の動力電池の電池状態パラメータを取得するステップと、複数の劣化モデルから電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定するステップと、電池状態パラメータを、用いられた劣化モデルに入力して、対応する電池容量を得るステップと、を含み、劣化モデルは、劣化モデルにおけるフィッティング関係を決定し、劣化モデルに対応するタイプのサンプルデータによってフィッティング関係におけるパラメータを決定することによって得られる。さらに、動力電池の容量予測装置、機器及び対応する記憶媒体を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力電池の容量予測方法であって、
動力電池のサンプルデータを取得するステップと、
クラスタリングアルゴリズムによって前記サンプルデータをいくつかのクラスに分けるステップであって、各クラスが対応する劣化モデル及び特徴識別子を有し、前記劣化モデルが、劣化モデルにおけるフィッティング関係を決定し、前記劣化モデルに対応するタイプのサンプルデータによって前記フィッティング関係におけるパラメータを決定することによって得られ、前記特徴識別子が、対応するクラスのサンプルデータの特徴を識別するステップと、
測定対象の動力電池の電池状態パラメータを取得するステップと、
複数の劣化モデルから前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定するステップと、
前記電池状態パラメータを、用いられた劣化モデルに入力して、対応する電池容量を得るステップと、を含む、ことを特徴とする動力電池の容量予測方法。
【請求項2】
前記動力電池のサンプルデータは、同一型式の動力電池の実車走行状況での複数組の履歴データを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の予測方法。
【請求項3】
前記クラスタリングアルゴリズムによって前記サンプルデータをいくつかのクラスに分けるステップは、
クラスタリングアルゴリズムを予め設定し、かつ前記クラスタリングアルゴリズムにおけるクラスタリングパラメータを決定するステップと、
前記クラスタリングパラメータに基づいて、前記サンプルデータをコアポイント又は境界ポイントに分けるステップと、
前記コアポイントに基づいてクラスを構築し、サンプルデータを前記いくつかのクラスに分けるステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の予測方法。
【請求項4】
前記クラスタリングアルゴリズムは、DBSCANアルゴリズムであり、
前記クラスタリングパラメータは、近傍半径及び近傍ポイント閾値を含む、請求項3に記載の予測方法。
【請求項5】
前記特徴識別子は、クラスタリング中心であり、
前記複数の劣化モデルから前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定するステップは、
前記電池状態パラメータと各クラスに対応するクラスタリング中心との距離を計算するステップと、
最も近い劣化モデルを前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルとして選択するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の予測方法。
【請求項6】
前記フィッティング関係は、多項式フィッティング、ニューラルネットワークフィッティング又は回帰木フィッティングを含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の予測方法。
【請求項7】
前記電池状態パラメータは、電流、電圧、温度、充電状態、保存時間、放電深度、クーロン効率のうちの少なくとも2つを含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の予測方法。
【請求項8】
入力ユニットと、マッチングユニットと、計算ユニットと、を含む動力電池の容量予測装置であって、
前記入力ユニットは、電池状態パラメータを取得し、
前記マッチングユニットは、前記電池状態パラメータとのマッチングを行って、複数の劣化モデルから前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定し、前記複数の劣化モデルは、サンプルデータがクラスタリングアルゴリズムによって分けられるいくつかのクラスと一対一に対応し、各前記劣化モデルは、いずれも電池状態パラメータと電池容量とのマッピング関係を含み、
前記計算ユニットは、前記電池状態パラメータを、用いられた劣化モデルに入力して、対応する電池容量を得る、ことを特徴とする動力電池の容量予測装置。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサと、メモリと、を含み、前記メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサに接続され、
前記メモリには、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令が記憶されており、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記メモリに記憶された命令を実行することにより、請求項1~7のいずれか一項に記載の動力電池の容量予測方法を実現する、ことを特徴とする動力電池の容量予測機器。
【請求項10】
コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、
該プログラムがプロセッサによって実行されると、請求項1~7のいずれか一項に記載の動力電池の容量予測方法を実現する、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2021年6月25日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110711103.9で、出願名称が「動力電池の容量予測方法、装置及び機器」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照により本開示に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、電池管理の技術分野に関し、特に、動力電池の容量予測方法、動力電池の容量予測装置、動力電池の容量予測機器及び対応する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
動力電池は、電気自動車の重要な部品であり、耐用年数は、動力電池の主な性能指標であり、耐用年数を正確に予測することにより、電池の劣化状態を把握して、ユーザに正確な車両動作状態情報を提供し、自動車生産製造のコスト計算に根拠を提供するだけでなく、故障及び災害の発生を防止し、ユーザの生命財産の安全を保障することができる。
【0004】
動力電池の耐用年数の予測は、一般的には、試験法及びモデル法を用いて実現される。
【0005】
試験法では、動力電池が実際の車両で動作するとき、電流が定電流ではないため、予測結果が不正確になる。また、標準NEDCモードで実際の状況をシミュレーションして放電テストを行うことができるが、試験周期が長すぎる。
【0006】
モデル法は、主に、メカニズムモデルと統計モデルに分けられる。メカニズムモデルは、電気化学分析法、インピーダンス法などを含む。統計モデルは、主に、ニューラルネットワークに基づいて設計された耐用年数予測モデルであり、例えば、LSTMニューラルネットワーク及び転移学習に基づく耐用年数予測方法及びリチウム電池の耐用年数予測の深層学習方法である。実車走行状況が複雑であり、メカニズムモデルのパラメータの取得が困難であり、電池の耐用年数の正確な予測を実現することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに鑑みて、本開示は、従来技術における試験法のテスト周期が長く、モデル法のパラメータの取得が困難であり、モデルの複雑度が高いという課題を少なくとも部分的に解決する、動力電池の容量予測方法、装置及び機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示に係る動力電池の容量予測方法は、動力電池のサンプルデータを取得するステップと、クラスタリングアルゴリズムによって前記サンプルデータをいくつかのクラスに分けるステップであって、各クラスが対応する劣化モデル及び特徴識別子を有し、前記劣化モデルが、劣化モデルにおけるフィッティング関係を決定し、前記劣化モデルに対応するタイプのサンプルデータによって前記フィッティング関係におけるパラメータを決定することによって得られ、前記特徴識別子が、対応するクラスのサンプルデータの特徴を識別するステップと、測定対象の動力電池の電池状態パラメータを取得するステップと、複数の劣化モデルから前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定するステップと、前記電池状態パラメータを、用いられた劣化モデルに入力して、対応する電池容量を得るステップと、を含む。
【0009】
本開示の一実施例によれば、前記動力電池のサンプルデータは、同一型式の動力電池の実車走行状況での複数組の履歴データを含む。
【0010】
本開示の一実施例によれば、クラスタリングアルゴリズムによって前記サンプルデータをいくつかのクラスに分けるステップは、クラスタリングアルゴリズムを予め設定し、かつ前記クラスタリングアルゴリズムにおけるクラスタリングパラメータを決定するステップと、前記クラスタリングパラメータに基づいて、前記サンプルデータをコアポイント又は境界ポイントに分けるステップと、前記コアポイントに基づいてクラスを構築し、サンプルデータを前記いくつかのクラスに分けるステップと、を含む。
【0011】
本開示の一実施例によれば、前記クラスタリングアルゴリズムは、DBSCANアルゴリズムであり、前記クラスタリングパラメータは、近傍半径及び近傍ポイント閾値を含む。
【0012】
本開示の一実施例によれば、前記特徴識別子は、クラスタリング中心であり、前記特徴識別子は、クラスタリング中心であり、複数の劣化モデルから前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定するステップは、前記電池状態パラメータと各クラスに対応するクラスタリング中心との距離を計算するステップと、最も近い劣化モデルを前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルとして選択するステップと、を含む。
【0013】
本開示の一実施例によれば、前記フィッティング関係は、多項式フィッティング、ニューラルネットワークフィッティング又は回帰木フィッティングを含む。
【0014】
本開示の一実施例によれば、前記電池状態パラメータは、電流、電圧、温度、充電状態、保存時間、放電深度、クーロン効率のうちの少なくとも2つを含む。
【0015】
本開示の第2態様において、入力ユニットと、マッチングユニットと、計算ユニットと、を含み、前記入力ユニットは、電池状態パラメータを取得し、前記マッチングユニットは、電池状態パラメータとのマッチングを行って、複数の劣化モデルから前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定し、前記複数の劣化モデルは、サンプルデータがクラスタリングアルゴリズムによって分けられるいくつかのクラスと一対一に対応し、各前記劣化モデルは、いずれも電池状態パラメータと電池容量とのマッピング関係を含み、前記計算ユニットは、前記電池状態パラメータを、用いられた劣化モデルに入力して、対応する電池容量を得る動力電池の容量予測装置を提供する。
【0016】
本開示の第3態様において、少なくとも1つのプロセッサと、メモリと、を含み、前記メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサに接続され、前記メモリには、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令が記憶されており、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記メモリに記憶された命令を実行することにより、前述の動力電池の容量予測方法を実現する動力電池の容量予測機器を提供する。
【0017】
本開示の第4態様において、コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、該プログラムがプロセッサによって実行されると、前述の動力電池の容量予測方法を実現するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0018】
従来技術に対して、本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測方法、装置及び機器は、以下の有益な効果を有する。
【0019】
本開示に係る実施形態は、複数種類の劣化タイプを区別し、更に異なる劣化タイプに対して対応する劣化モデルを確立することにより、劣化モデルの精度を向上させ、動力電池容量に対するより正確な予測を実現することができる。サンプルデータが豊富であるほど、異なる劣化タイプのデータが多くなり、異なる劣化タイプのカバレッジが高くなり、クラスタリングアルゴリズムによって区別される種類がより全面的になり、区別効果がより直感的で信頼できる。
【0020】
本開示の他の特徴及び利点については、以下の具体的な実施形態において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本開示の一部を構成する添付図面は、本開示の更なる理解を提供するためのものであり、本開示の例示的な実施形態及びその説明は、本開示を解釈するためのものであり、本開示を不当に限定するものではない。
【0022】
図1】本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測方法のフローを示す概略図である。
図2】本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測方法におけるクラスタリングアルゴリズムのフローチャートである。
図3】本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測方法におけるクラスタリング中心距離の計算の概略図である。
図4】本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測方法の実施フローを示す概略図である。
図5】本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
なお、本開示の実施形態及び実施形態における特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、実施形態を組み合わせて本開示を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測方法のフローを示す概略図である。図1に示すように、動力電池の容量予測方法は、以下のステップS01~S05を含む。
【0026】
S01では、動力電池のサンプルデータを取得する。
【0027】
ここでのサンプルデータは、動力電池の実車走行状況におけるサンプルデータを含み、電流I、電圧V、温度T、充電状態SOC、保存時間t、放電深度DOD、クーロン効率μなどを含むか、又はそのうちのパラメータを選択して組み合わせる。
【0028】
S02では、クラスタリングアルゴリズムによって上記サンプルデータをいくつかのクラスに分け、各クラスが対応する劣化モデル及び特徴識別子を決定し、上記劣化モデルが、劣化モデルにおけるフィッティング関係を決定し、上記劣化モデルに対応するタイプのサンプルデータによって上記フィッティング関係におけるパラメータを決定することによって得られ、上記特徴識別子が、対応するクラスのサンプルデータの特徴を識別し、
サンプルデータを分類すると、各クラスのサンプルデータは、一定の類似性又は内部関連を有する。クラスタリングアルゴリズムによってサンプルデータを分類することにより、分類結果を迅速に得て、より優れた分類結果を実現することができる。ここでのクラスタリングアルゴリズムは、実際のニーズに応じて既存のクラスタリングアルゴリズムから選択することができる。各クラスに対しては、いずれも1つの劣化モデルを決定する必要がある。劣化モデルは、数学モデルであり、まず、該数学モデルにおけるフィッティング関係を決定し、即ち、適切なフィッティング関数を選択する必要がある。次に、該タイプに属するサンプルデータによって該フィッティング関係を訓練又は修正して、該フィッティング関係におけるパラメータを決定することにより、パラメータを入力して電池容量を計算する劣化モデルを得る。
【0029】
S03では、測定対象の動力電池の電池状態パラメータを取得する。
【0030】
ここで取得された電池状態パラメータは、容量を予測する入力パラメータとし、それに含まれるパラメータは、ステップS01におけるサンプルデータにおけるパラメータと同じであるか、又はそれと包含関係を有する。
【0031】
S04では、複数の劣化モデルから上記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定する。
【0032】
具体的な電池状態パラメータについて、まず、用いられる劣化モデルを決定する必要があり、同一電池状態パラメータは、異なる劣化モデルに基づいて異なる電池容量を得ることができる。本実施形態では、特徴識別子によって用いられる劣化モデルを決定し、適切な劣化モデルを決定することにより、より正確な電池容量を計算することができる。
【0033】
S05では、上記電池状態パラメータを、用いられた劣化モデルに入力して、対応する電池容量を得る。本ステップで用いられた劣化モデルは、ステップS04で決定された劣化モデルであり、電池状態パラメータに基づいて対応する電池容量を得て、即ち、電池状態パラメータを入力すれば、対応する電池容量を得ることができる。
【0034】
以上の実施形態によれば、複数種類の劣化タイプを区別し、更に異なる劣化タイプに対して対応する劣化モデルを確立することにより、劣化モデルの精度を向上させ、動力電池容量のより正確な予測を実現することができる。サンプルデータが豊富であるほど、異なる劣化タイプのデータが多くなり、異なる劣化タイプのカバレッジが高くなり、クラスタリングアルゴリズムによって区別される種類がより全面的になり、区別効果がより直感的で信頼できる。
【0035】
本開示に係る一実施形態では、上記動力電池のサンプルデータは、同一型式の動力電池の実車走行状況での複数組の履歴データを含む。実車走行状況での履歴データをサンプルとして用いることは、現実のシーンによりよく近づくことができ、大量のサンプルを取得することにも役立つ。いくつかの動力電池の実際状態を反映する大量のサンプルデータによって、実験法とモデル法の欠陥を解消し、クラスタリングをより正確にして、電池の容量予測をより正確にすることができる。
【0036】
図2は、本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測方法におけるクラスタリングアルゴリズムのフローチャートである。図2に示すように、本実施形態では、クラスタリングアルゴリズムによって上記サンプルデータをいくつかのクラスに分けるステップは、クラスタリングアルゴリズムを予め設定し、かつ上記クラスタリングアルゴリズムにおけるクラスタリングパラメータを決定するステップと、上記クラスタリングパラメータに基づいて、上記サンプルデータをコアポイント又は境界ポイントに分けるステップと、コアポイントに基づいてクラスを構築し、サンプルデータを上記いくつかのクラスに分けるステップと、を含む。更に、上記クラスタリングアルゴリズムは、DBSCANアルゴリズムであり、上記クラスタリングパラメータは、近傍半径Eps及び近傍ポイント閾値Minptsを含む。具体的な過程は、以下のとおりである。一実施例では、まず、データセットを走査し、アクセスされていないポイントpを選択し、近傍セットNpを生成し、Eps(p)内のポイントの数がMinptsよりも大きい場合、pがコアポイントであると判定し、かつ新しいクラスタCを生成し、その後、Np内の分類されていないポイントqを選択し、qがアクセスされていない場合、近傍セットNqを生成し、Eps(q)内のポイントの数がMinptsよりも大きい場合、qがコアポイントであると判定し、NpをNp=Np+Nqに更新し、ポイントqをクラスタCに追加し、qがコアポイントではなく、かつqがクラスに分類されていない場合、qが境界ポイントであると判定し、ポイントqをクラスタCに追加し、同様にしてNp中には分類されていないポイントが含まれなくなるまで行い、その後、データセットD中にはアクセスされていないポイントが含まれる場合、第2ステップに戻り、アクセスされていないポイントを選択する。以上の方法により、サンプルデータを前述のいくつかのクラスに分ける。
【0037】
図3は、本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測方法におけるクラスタリング中心距離の計算の概略図である。図3に示すように、本実施形態では、上記特徴識別子は、クラスタリング中心であり、複数の劣化モデルから上記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定するステップは、上記電池状態パラメータと各クラスに対応するクラスタリング中心との距離を計算するステップと、最も近い劣化モデルを上記電池状態パラメータが用いる劣化モデルとして選択するステップと、を含む。4つのクラスタリング中心C1~C4の場合のみが図示され、その数は、タイプの数を限定するものではない。一般的なクラスタリング分析におけるクラスタリング計算は、主に類似度の測定に用いられる、ユークリッド距離、マンハッタン距離、チェビシェフ距離などを含む。以上の方法の計算により、2つのプロジェクト間の類似度(距離)を得ることができ、実際の計算では、異なるプロジェクトの属性特性に基づいて効果的に選択すべきであり、プロジェクトの距離計算は、クラスタリングアルゴリズムのプロセスにとって非常に重要であり、アルゴリズムの有効性に直接影響を与えるため、実際に選択するときに注意深く選択すべきである。
【0038】
本開示に係る一実施形態では、上記フィッティング関係は、多項式フィッティング、ニューラルネットワークフィッティング又は回帰木フィッティングを含む。多項式フィッティングは、y=p_{0}x^n+p_{1}x^{n-1}+p_{2}x^{n-2}+p_{3}x^{n-3}+…+p_{n}を含み、該多項式の項数は、必要に応じて決定することができる。ニューラルネットワークフィッティングは、CNN、RNN及びGANなどを含み、適切なニューラルネットワーク構造を選択して、サンプルデータによってトレーニングした後、電池容量を予測可能な劣化モデルを得る。回帰木フィッティングは、一般的な二分木を含み、例えば、二分木を用いて予測空間をいくつかのサブセットに再帰的に分割し、これらの部サブセットにおけるYの分布は、連続的で均一である。木におけるリーフノードは、分割された異なる領域に対応し、分割は、各内部ノードに関する分岐ルール(Spitting Rules)によって決定される。木のルートからリーフノードへ移動することにより、1つの予測サンプルは、1つのユニークなリーフノードが与えられ、Yの該ノードにおける条件分布も決定される。異なる劣化モデルの具体的な確立ステップについて、ここでは説明を省略する。
【0039】
本開示に係る一実施形態では、上記電池状態パラメータは、電流、電圧、温度、充電状態、保存時間、放電深度、クーロン効率のうちの少なくとも2つを含む。入力されたパラメータが多いほど、得られた電池容量は、より正確である。具体的なシーンでは、当業者は、実際の状況及び測定条件に基づいて、上記電池状態パラメータから少なくとも2つを選択して組み合わせて、より正確な電池容量を得る。
【0040】
図4は、本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測方法の実施フローを示す概略図である。図4に示すように、本実施形態では、該動力電池の容量予測方法は、以下のステップ(1)~(6)を含む。
【0041】
ステップ(1)では、クラスタリングアルゴリズム、パラメータ及び関連閾値を予め設定する。
【0042】
ステップ(2)では、動力電池の実車走行状況におけるサンプルデータを入力する。
【0043】
ステップ(3)では、クラスタリングアルゴリズムによってサンプルデータをいくつかのクラスに分けて、クラスタリング中心C1、…、Ckを得る。
【0044】
ステップ(4)では、各クラスのサンプルデータを多項式フィッティング、ニューラルネットワーク、回帰木などの統計モデルに入力して劣化モデルに対応するモデルパラメータを取得する。
Cap=f(I,V,T,SOC,t,DOD,μ)
【0045】
ステップ(5)では、テスト対象のデータから各クラスタリング中心までの距離を比較して、テスト対象のデータがどの種類の劣化モデルに属するかを判定する。
【0046】
ステップ(6)では、テスト対象のデータを対応する劣化モデルに入力して動力電池容量を計算する。
【0047】
図5は、本開示の実施形態に係る動力電池の容量予測装置の概略構成図である。図5に示すように、本実施形態では、動力電池の容量予測装置は、入力ユニットと、マッチングユニットと、計算ユニットと、を含み、上記入力ユニットは、電池状態パラメータを取得し、上記マッチングユニットは、電池状態パラメータとのマッチングを行って、複数の劣化モデルから上記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定し、上記複数の劣化モデルは、サンプルデータがクラスタリングアルゴリズムによって分けられるいくつかのクラスと一対一に対応し、各上記劣化モデルは、いずれも電池状態パラメータと電池容量とのマッピング関係を含み、上記計算ユニットは、上記電池状態パラメータを、用いられた劣化モデルに入力して、対応する電池容量を得る。
【0048】
上記動力電池の容量予測装置における各モジュール(入力ユニット、マッチングユニット、計算ユニット)の具体的な限定は、上記動力電池の容量予測方法に対する限定を参照することができ、ここでは説明を省略する。上記装置における各モジュールは、全部又は一部がソフトウェア、ハードウェア及びその組み合わせにより実現されてもよい。上記各モジュールは、プロセッサが以上の各モジュールに対応する操作を実行することを容易にするために、ハードウェア形態でコンピュータ機器内のプロセッサに内蔵又は独立してもよく、ソフトウェア形態でコンピュータ機器内のメモリに記憶されてもよい。
【0049】
本開示に係る一実施形態では、少なくとも1つのプロセッサと、メモリと、を含み上記メモリは、上記少なくとも1つのプロセッサに接続され、上記メモリには、上記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令が記憶されており、上記少なくとも1つのプロセッサは、上記メモリに記憶された命令を実行することにより、前述の動力電池の容量予測方法を実現する動力電池の容量予測機器を提供する。ここでのコントローラ又はプロセッサは、数値計算及び論理演算の機能を有し、少なくともデータ処理能力を有する中央処理装置CPU、ランダムアクセスメモリRAM、リードオンリーメモリROM、複数種類のI/Oポート及び割り込みシステムなどを有する。プロセッサには、カーネルが含まれており、カーネルは、メモリから対応するプログラムユニットを呼び出す。カーネルは、1つ以上設けられてもよく、カーネルパラメータを調整することによって前述の方法を実現する。メモリは、コンピュータ可読媒体における揮発性メモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び/又は、リードオンリーメモリ(ROM)又はフラッシュメモリ(flash RAM)などの不揮発性メモリの形態を含んでもよく、メモリは、少なくとも1つのメモリチップを含む。
【0050】
本開示に係る一実施形態では、コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、該プログラムがプロセッサによって実行されると、前述の動力電池の容量予測方法を実現するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0051】
当業者であれば、本開示の実施例は、方法、システム又はコンピュータプログラム製品として提供できることを理解すべきである。したがって、本開示は、完全なハードウェアの実施例、完全なソフトウェアの実施例、又はソフトウェアとハードウェアを組み合わせた実施例の形態を用いてもよい。また、本開示は、コンピュータで使用可能なコンピュータプログラムコードを含む1つ以上のコンピュータで使用可能な記憶媒体(ディスクメモリ、CD-ROM、光学メモリなどを含むが、これらに限定されない)に実施されるコンピュータプログラム製品の形態を用いてもよい。
【0052】
本開示は、本開示の実施例に係る方法、機器(システム)及びコンピュータプログラム製品のフローチャート及び/又はブロック図を参照して説明される。コンピュータプログラム命令によってフローチャート及び/又はブロック図における各フロー及び/又はブロック、及びフローチャート及び/又はブロック図におけるフロー及び/又はブロックの組み合わせを実現できることを理解すべきである。これらのコンピュータプログラム命令は、マシンを生成するために汎用コンピュータ、専用コンピュータ、埋め込み処理ユニット又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサへ提供することができ、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサによって実行される命令は、フローチャートにおける1つ以上のフロー及び/又はブロック図における1つ以上のブロック内に規定される機能を実現する装置を生成することができる。
【0053】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置を特定の方式で機能するように誘導することができるコンピュータ可読メモリに記憶することができ、該コンピュータ可読メモリ内に記憶された命令は、フローチャートにおける1つ以上のフロー及び/又はブロック図における1つ以上のブロック内に規定される機能を実現する命令装置を含む製品を生成することができる。
【0054】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置にロードすることができ、コンピュータ又は他のプログラマブルデバイスに、コンピュータにより実現される処理を生成するために一連の操作ステップを実行すると、コンピュータ又は他のプログラマブルデバイスで実行される命令は、フローチャートにおける1つ以上のフロー及び/又はブロック図における1つ以上のブロックに規定される機能のステップを実現する。
【0055】
典型的な構成では、コンピューティングデバイスは、1つ以上のプロセッサ(CPU)と、入出力インタフェースと、ネットワークインタフェースと、メモリとを含む。
【0056】
メモリは、コンピュータ可読媒体における揮発性メモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び/又は、リードオンリーメモリ(ROM)又はフラッシュメモリ(flash RAM)などの不揮発性メモリなどの形態を含んでもよい。メモリは、コンピュータ可読媒体の例である。
【0057】
コンピュータ可読媒体は、情報を記憶するための任意の方法又は技術によって実現できる、揮発性及び不揮発性、リムーバブル及び非リムーバブルメディアを含む。情報は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムのモジュール、又は他のデータであってもよい。コンピュータの記憶媒体の例は、コンピューティングデバイスによってアクセス可能な情報を記憶するために用いられる、相変化メモリ(PRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、他のタイプのランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)又は他の光学記憶装置、カセット磁気テープ、磁気テープ磁気ディスク記憶又は他の磁気記憶装置又は任意の他の非伝送媒体を含むが、これらに限定されない。本明細書における定義によれば、コンピュータ可読媒体には、変調されたデータ信号及び搬送波などの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory media)が含まれていない。
【0058】
なお、用語「含む」、「含み」又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図することにより、一連の要素を含むプロセス、方法、商品又は装置は、それらの要素を含むだけでなく、明確に列挙されない他の要素を含むか、又はこのようなプロセス、方法、商品又は装置に固有の要素を含む。更なる限定がない場合、「…1つの…を含む」という語句で限定された要素は、要素を含むプロセス、方法、物品又は装置に他の同様な要素が更に存在することを排除しない。
【0059】
以上は、本開示の実施例に過ぎず、本開示を限定するものではない。当業者にとって、本開示は、様々な変更及び変化が可能である。本開示の趣旨及び原理内で行われたいかなる修正、同等置換、改良などは、いずれも本開示の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力電池の容量予測方法であって、
動力電池のサンプルデータを取得するステップと、
クラスタリングアルゴリズムによって前記サンプルデータをいくつかのクラスに分けるステップであって、各クラスが対応する劣化モデル及び特徴識別子を有し、前記劣化モデルが、劣化モデルにおけるフィッティング関係を決定し、前記劣化モデルに対応するタイプのサンプルデータによって前記フィッティング関係におけるパラメータを決定することによって得られ、前記特徴識別子が、対応するクラスのサンプルデータの特徴を識別するステップと、
測定対象の動力電池の電池状態パラメータを取得するステップと、
複数の劣化モデルから前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定するステップと、
前記電池状態パラメータを、用いられた劣化モデルに入力して、対応する電池容量を得るステップと、を含む、ことを特徴とする動力電池の容量予測方法。
【請求項2】
前記動力電池のサンプルデータは、同一型式の動力電池の実車走行状況での複数組の履歴データを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の予測方法。
【請求項3】
前記クラスタリングアルゴリズムによって前記サンプルデータをいくつかのクラスに分けるステップは、
クラスタリングアルゴリズムを予め設定し、かつ前記クラスタリングアルゴリズムにおけるクラスタリングパラメータを決定するステップと、
前記クラスタリングパラメータに基づいて、前記サンプルデータをコアポイント又は境界ポイントに分けるステップと、
前記コアポイントに基づいてクラスを構築し、サンプルデータを前記いくつかのクラスに分けるステップと、を含む、ことを特徴とする請求項に記載の予測方法。
【請求項4】
前記クラスタリングアルゴリズムは、DBSCANアルゴリズムであり、
前記クラスタリングパラメータは、近傍半径及び近傍ポイント閾値を含む、請求項3に記載の予測方法。
【請求項5】
前記特徴識別子は、クラスタリング中心であり、
前記複数の劣化モデルから前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定するステップは、
前記電池状態パラメータと各クラスに対応するクラスタリング中心との距離を計算するステップと、
最も近い劣化モデルを前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルとして選択するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項に記載の予測方法。
【請求項6】
前記フィッティング関係は、多項式フィッティング、ニューラルネットワークフィッティング又は回帰木フィッティングを含む、ことを特徴とする請求項に記載の予測方法。
【請求項7】
前記電池状態パラメータは、電流、電圧、温度、充電状態、保存時間、放電深度、クーロン効率のうちの少なくとも2つを含む、ことを特徴とする請求項に記載の予測方法。
【請求項8】
入力ユニットと、マッチングユニットと、計算ユニットと、を含む動力電池の容量予測装置であって、
前記入力ユニットは、電池状態パラメータを取得し、
前記マッチングユニットは、前記電池状態パラメータとのマッチングを行って、複数の劣化モデルから前記電池状態パラメータが用いる劣化モデルを決定し、前記複数の劣化モデルは、サンプルデータがクラスタリングアルゴリズムによって分けられるいくつかのクラスと一対一に対応し、各前記劣化モデルは、いずれも電池状態パラメータと電池容量とのマッピング関係を含み、
前記計算ユニットは、前記電池状態パラメータを、用いられた劣化モデルに入力して、対応する電池容量を得る、ことを特徴とする動力電池の容量予測装置。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサと、メモリと、を含み、前記メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサに接続され、
前記メモリには、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令が記憶されており、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記メモリに記憶された命令を実行することにより、請求項1~7のいずれか一項に記載の動力電池の容量予測方法を実現する、ことを特徴とする動力電池の容量予測機器。
【請求項10】
コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、
該プログラムがプロセッサによって実行されると、請求項1~7のいずれか一項に記載の動力電池の容量予測方法を実現する、コンピュータ可読記憶媒体。
【国際調査報告】