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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】放射線治療用MOF
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/06 20060101AFI20240628BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240628BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 103/00 20060101ALN20240628BHJP
   A61K 103/40 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
A61K51/06 100
A61K47/68
A61P35/02
A61P35/00
A61P29/00
A61P1/16
A61K103:00
A61K103:40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568594
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 NO2022050169
(87)【国際公開番号】W WO2023282769
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】20210895
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523419923
【氏名又は名称】ノード ファルマ アクシェセルスカープ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エーイエン-ウーデゴール、シグルド
(72)【発明者】
【氏名】ミョーランド、エリク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA12
4C084NA05
4C084ZA75
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB27
(57)【要約】
本発明は、放射線治療における使用のためのMOFに関する。より詳細には、本発明は、MOF、任意には少なくとも1つの標的部位、および少なくとも1つの放射性核種を含む粒子;前記粒子を含む組成物;医薬品としての使用のための前記粒子または組成物;増殖性疾患の処置のための方法における使用のための前記粒子または組成物;慢性炎症性疾患の処置のための方法における使用のための前記粒子または組成物;ならびにMOF、任意には標的部位、および放射性核種カチオンを含む粒子を含むキットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子であって、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、前記官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF;
任意には、前記粒子の外部表面上で前記粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;ならびに
少なくとも1つの放射性核種であって、前記少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種;
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの放射性核種は、前記ポアの少なくとも1つの中に位置する、粒子。
【請求項2】
前記MOFがUiO-66-COOHまたはUIO-66(COOH)2である請求項1記載の粒子。
【請求項3】
前記放射性核種が、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群から選択される放射性核種カチオンである請求項1または2記載の粒子。
【請求項4】
前記少なくとも1つの放射性核種が、ラジウム-223である請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項5】
前記粒子がナノ粒子である請求項1~4のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項6】
前記少なくとも1つの標的部位が存在している請求項1~5のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項7】
前記少なくとも1つの標的部位が存在し、および、抗体である請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項8】
第1のコンテナ内に、
粒子であって、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、前記官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF;
任意には、前記粒子の外表面上で前記粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;
を含む粒子を含み、ならびに
第2のコンテナ内に、
放射性核種であって、前記放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種、または、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161の任意の1つを娘核種として生成する放射性核種である放射性核種
を含むキット。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの粒子を、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤および/または賦形剤と共に含む組成物。
【請求項10】
医薬品としての使用のための、請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子または請求項9記載の組成物。
【請求項11】
増殖性疾患の処置の方法における使用のための、請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子または請求項9記載の組成物。
【請求項12】
前記増殖性疾患が癌である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子、または、請求項10もしくは11記載の使用のための請求項9記載の組成物。
【請求項13】
前記癌が癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫または混合型癌である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子、または、請求項12記載の使用のための請求項9記載の組成物。
【請求項14】
前記増殖性疾患が過形成性疾患または新形成性疾患である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子、または、請求項10もしくは11記載の使用のための請求項9記載の組成物。
【請求項15】
慢性炎症性疾患の処置のための方法における使用のための、請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子または請求項9記載の組成物。
【請求項16】
肝臓癌の処置のための方法における使用のための請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子または請求項9記載の組成物であって、前記粒子が標的部位を含まない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療における使用のためのMOFに関する。より詳細には、本発明は、MOFおよび少なくとも1つの放射性核種を含む粒子;MOF、少なくとも1つの標的部位および少なくとも1つの放射性核種を含む粒子;前記粒子を含む組成物;医薬品としての使用のための前記粒子または組成物;増殖性疾患の処置のための方法における使用のための前記粒子または組成物;慢性炎症性疾患の処置のための方法における使用のための前記粒子または組成物;ならびに、MOFおよび任意には標的部位を含む粒子、および放射性核種カチオンを含むキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
がんは、直接的または間接的に何百万人もの人々に影響を及ぼす、広範な疾患群である。WHOは、2020年に1,930万人が新たにがんに罹患し、5年有病者数は5,060万人と推定している。数十年にわたる治療法の改善にもかかわらず、アメリカ癌協会は、2040年までに癌の新規罹患者数は年間2,750万人に、および、癌による年間死亡者数は1,620万人に増加すると予想している。がん治療の一般的な方法には、手術、化学療法、および体外放射線照射が含まれる。しかし、新しいおよびより効果的ながん治療法オプションに対するアンメット・メディカル・ニーズは大きい。
【0003】
高い特異性と効率が期待できる治療法のオプションのひとつに、放射免疫療法(RIT)がある。RIT薬剤は、放射性同位元素と結合し保持することができるキャリアと結合した組織標的部位に基づいている。抗体であることが多いこの組織標的部位は、放射性同位元素をがん細胞などの望ましくない細胞タイプの近くに運ぶために使用され、その結果、高エネルギーかつ細胞毒性の高い放射線の局所的デリバリーがもたらされ、望ましくない細胞は死滅させ、および健康な周辺組織は死滅しない。このような特異的な細胞殺傷は、肉腫や癌腫などの癌性疾患だけでなく、過形成性疾患や腫瘍性疾患、慢性炎症性疾患の治療にも不可欠であり得る。さらに、RITを用いた全身治療は、そうでなければ有害な副作用を伴わずに達成することが困難な転移性腫瘍を持つ患者に対して極めて有効である。
【0004】
望ましくない細胞への放射線の運搬の成功性は、放射性同位元素の漏出による予期せぬ副作用を防ぐための放射性同位元素と担体の安定的な相互作用に依存する。しかし、現在使用されている担体(多くの場合、低分子リガンドまたはキレーター)は、効能のある広範な放射性同位元素、特にはラジウム-223やラジウム-224を含むアルファ線放出各種ラジウム同位元素に対するこれらの要件を満たしていない。その結果、最も効能のある放射性同位元素のいくつかは、RITで使用することができない。
【0005】
さらなる課題は、放射線の放出、特にアルファ線放出による反跳エネルギーが、多くの場合、担体からの娘核種の放出を引き起こす可能性があることである。このような放出は、担体が娘核種を錯体化できる場合でも起こりうる。その結果、放射性娘核種が担体から拡散し、全身毒性を引き起こす可能性がある。
【0006】
したがって、放射線治療のための改良された薬剤の必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、特定の遊離官能基を含む特定の有機金属骨格(MOF)構造が、臨床的に関連する環境において、選択された放射性核種を吸着し、および安定な担体として作用することを発見した。さらに、これらのMOFは粒子の形で、標的部位と連結され得、粒子ひいては放射性核種のin vivoでの標的送達を可能にする。放射性核種を含む、または標的部位および放射性核種の両方を含むこれらの粒子は、したがって有望な薬剤候補となる。
【0008】
一態様において、本発明は粒子に関し、前記粒子は、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に伸長する少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF;
少なくとも1つの放射性核種であって、前記少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種;
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの放射性核種は、ポアの少なくとも1つの中に位置する。
【0009】
本発明はまた、標的粒子に関し、前記粒子は、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF;
前記粒子の外部表面上で前記粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;ならびに
少なくとも1つの放射性核種であって、前記少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種;
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの放射性核種は、ポアの少なくとも1つの中に位置する。
【0010】
従って、本発明の粒子は、任意には、粒子の外部表面上で粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位を含む。
【0011】
第2の態様において、本発明はキットに関し、前記キットは第1のコンテナ内に、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF
を含む粒子を含み;
第2のコンテナ内に、
放射性核種であって、前記放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種、または、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161の任意の1つを娘核種として生成する放射性核種である放射性核種
を含む。
【0012】
一実施形態において、粒子は、粒子の外表面上で粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位をさらに含む。
【0013】
第3の態様において、本発明は、さらに開示される組成物に関し、前記組成物は、上記で定義される少なくとも1つの粒子を、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤、および/または賦形剤とともに含む。
【0014】
第4の態様において、本発明は、本明細書中にさらに開示されるように、医薬品としての使用のための前記粒子または前記組成物に関する。
【0015】
第5の態様において、本発明は、本明細書においてさらに開示されるように、慢性炎症性疾患の処置のための方法における使用のための前記粒子または前記組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、fcuトポロジーを持つネットワーク構造の概略図である。
図3図3は、fcuMOFのポアを示す図である。
図4図4は、四面体ケージのコーナーにおける配位部位の例を示す図である。
図5図5は、八面体のポアのコーナーにおける配位部位の例を示す図である。
図6図6は、八面体のポアのコーナーにおける配位部位の例を示す図である。
図7図7は、八面体ケージのコーナーにおける配位部位の例を示す図である。
図8図8は、複数の遊離官能基がポア内に伸びているポアの例を示す図である。
図9図9はMOF UiO-66を示す図である。
図10図10はMOF MIL-53を示す図である。
図11図11は、ゼオライト型イミダゾレート骨格およびいわゆるsodトポロジーを有するMOFを示す図である。
図12図12は、抗体(IgG)共役UIO-66(COOH)2のBCAアッセイを示す図である。
図13図13は、抗CD37共役MOF(NP1)がCD37陽性細胞(Duadi細胞)と結合することを示す図である。
図14図14は、抗EpCAMまたは抗HER標識UIO-66(COOH)2が、両抗原を発現する大腸がん細胞(HTC116およびHT29)に結合することを示す図である。
図15図15は、抗HER2結合UIO-66(COOH)2がHER2陽性癌細胞(JIMT1細胞)に結合することを示す図である。
図16A図16Aは、ヒト血清中におけるラジウム-223(Ra223)のUIO-66(COOH)2吸着および保持能力を示しており、グラフA)は、Ra223の担持(吸着)を示す図である。
図16B図16Bは、ヒト血清中におけるラジウム-223(Ra223)のUIO-66(COOH)2吸着および保持能力を示しており、グラフB)は保持を示す図である。
図17図17は、ラジウム-223(Ra223)を担持したUIO-66(COOH)2の健常マウスにおける生体内分布を示す図である。
図18A図18Aは、ラジウム-223(Ra223)担持UIO-66(COOH)2を注入され、1kg当たり937kBq以上の線量で副作用が生じたマウスの体重を示す図である。
図18B図18Bは、ラジウム-223(Ra223)担持UIO-66(COOH)2を注入され、1kg当たり937kBq以上の線量で副作用が生じたマウスの体重を示す図である。
図18C図18Cは、ラジウム-223(Ra223)担持UIO-66(COOH)2を注入され、1kg当たり937kBq以上の線量で副作用が生じたマウスの体重を示す図である。
図18D図18Dは、ラジウム-223(Ra223)担持UIO-66(COOH)2を注入され、1kg当たり937kBq以上の線量で副作用が生じたマウスの体重を示す図である。
図18E図18Eは、ラジウム-223(Ra223)担持UIO-66(COOH)2を注入され、1kg当たり937kBq以上の線量で副作用が生じたマウスの体重を示す図である。
図18F図18Fは、ラジウム-223(Ra223)担持UIO-66(COOH)2を注入され、1kg当たり937kBq以上の線量で副作用が生じたマウスの体重を示す図である。
図19図19Aは、UIO-66(COOH)2に24時間および48時間暴露された後のin vitro細胞生存率を示す図である。
図19図19Bは、UIO-66(COOH)2に24時間および48時間暴露された後のin vitro細胞生存率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての術語、表記、および他の科学用語または専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語は、明確化のため、および/または、すぐに参照できるように、本明細書において定義され、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも、当該技術分野において一般に理解されていることとの実質的な相違を表すと解釈されるべきではない。
【0018】
多ポア性配位高分子(PCP)とも称される有機金属骨格(MOF)は、配位高分子という物質分類に属する固体化合物で、通常は粉末形状である。化学的には、MOFは、金属イオンまたはクラスターの形状であるポリトピック型無機モノマー、および、架橋配位子またはリンカーとも称される有機モノマーの繰り返しネットワークを含む。無機モノマーおよび有機モノマーは、ルイス酸性金属カチオンおよびルイス塩基性有機官能基(例えばカルボキシレート、アミン、イミンなど)の間の配位共有結合またはイオン結合によって結合されている。MOFの構造は、有機および無機モノマーの選択によって良好に調整可能である。MOFの有機モノマーはすべて同一であってもよいし、または、MOFは、骨格配位官能基の形状がほぼ同一である2つまたはそれ以上の異なる有機モノマーから構成されていてもよい。後者は「混合リンカーMOF(mixed-linker MOF)」と称される。同様に、MOFの無機モノマーもまた、同一であってもよし、または、それらは異なっていてもよく、この場合「混合金属MOF(mixed-metal MOF)」と称される。
【0019】
MOFは結晶性であっても、非晶質であってもよく、または、変形可能な構造をもち得る。構造的に剛直なモノマーで作られたMOFは、永久的なポア性を特徴とする繰り返し三次元ネットワークを形成する傾向があり、すなわち結晶性である。このような結晶性MOFは、多数のポアを特徴とする。本明細書中で使用する場合、用語「ポア(pore)」は、MOFネットワーク内の任意のタイプの開口部、キャビティ、チャネル、穴を指す。MOFは、MOFの結晶構造に基づいて、種々の比率で種々の形のポアを含み得る。しかしながら、特定のMOFのポアは、一般に、サイズおよび化学的環境に関して互いに非常に類似している。
【0020】
MOFの有機モノマーは、MOFネットワークを形成するために無機モノマーと直接相互作用していない官能基を含んでいてもよい。本開示では、このような官能基を「遊離(free)」官能基と呼ぶ。このような官能基が結晶性MOFに存在する場合、これらはMOFのポア内に誘導され、ゲストイオンまたは分子の吸着、配位および/またはキレート化のための部位を形成し得る。このような部位の正確な性質は、MOFのネットワーク・トポロジー(配置)、ならびに、ポア内に誘導される官能基の種類および数に依存する。遊離官能基などの観点から適切なMOFを選択することにより、ポア内などの特定のキレート部位を、特定の化合物の強力で選択的な吸着、配位および/またはキレート化のために構築することができる。本明細書において使用される場合、「キレート化(chelating)」および「キレート化(chelation)」という用語は、少なくとも2つのリガンドによる、例えば放射性核種カチオンなどの金属への配位、錯体化および/または結合を指す。用語「配位子(ligand)」は、金属に配位、錯体化および/または結合することができる、例えば分子、分子の一部、官能基などの部位を指す。
【0021】
種々の官能基が、キレート部位の形状および電荷バランスを変更するために使用され得る。MOFは有機モノマーおよび無機モノマーの間の配位結合から構築されるため、配位基として働き得る官能基を追加は、MOFの調製において望ましくないおよび/または予期しない生成物を生成し得る。従って、MOFへの遊離官能基の導入は慎重な設計を必要とする。
【0022】
本発明において、特定の種類のMOFの粒子が特定の放射性核種のための担体として使用される。本発明で使用されるMOFは、金属配位性であり得る遊離官能基を含み、該遊離官能基が例えば放射性核種のカチオンなどの放射性核種のカチオンに配位および/または結合することができるような様式でMOFのポア内に延びている結晶性MOFである。したがって、これらのMOFの各ポアは、放射性核種のためのキレート化マクロリガンドとして機能する能力を有する。このMOF粒子は新しいクラスの担体であり、および漏出が殆どなくまたは全くなく効能のある放射性同位元素を含有する能力を有し得、その結果、RITの効率が向上し、および、例えばがんなどの増殖性疾患の治療に新たな選択肢を提供する。
【0023】
したがって、一態様において、本発明は、MOFを含む粒子に関し、ここで、MOFは、ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワークを含み、ポアは、放射性核種をキレート化するために設計され、および、粒子は、ポアの少なくとも1つの中に位置される放射性核種を含む。任意には、粒子は、少なくとも1つの標的部位を含む。それゆえ、一実施形態において、粒子は、粒子の外部表面上で粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明は粒子に関し、前記粒子は、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF;
任意には、前記粒子の外部表面上で前記粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;ならびに
少なくとも1つの放射性核種であって、前記少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種;
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの放射性核種は、ポアの少なくとも1つの中に位置する。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明は粒子に関し、前記粒子は、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF;
任意には、前記粒子の外部表面上で前記粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;ならびに
少なくとも1つの放射性核種のカチオンであって、前記少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、およびトリウム-22を含む群より選択される放射性核種のカチオン;
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの放射性核種のカチオンは、ポアの少なくとも1つの中に位置する。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明は粒子に関し、前記粒子は、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF;
任意には、前記粒子の外部表面上で前記粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;ならびに
少なくとも1つの放射性核種のカチオンであって、前記少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、およびトリウム-22を含む群より選択される放射性核種のカチオン;
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの放射性核種のカチオンは、ポアの少なくとも1つの中に位置する。
【0027】
これらの実施形態において、少なくとも1つの標的部位は、粒子の外部表面上で粒子に連結され得る。
【0028】
図1は、ポア3を形成するMOF2を含む、および、ポア3内に延びる官能基4を有する、本発明の粒子1の非限定的な実施形態を概略的に示しており、ここで粒子1は、ここでは抗体として示される標的部位5を含み、および、放射性核種6はポア3内に位置されている。
【0029】
本発明のMOFは、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元を含み、すなわちそれらは結晶性である。繰り返し三次元ネットワーク中の無機モノマーおよび有機モノマーの構成は、ポアの形成をもたらす。すなわち、無機モノマーおよび有機モノマーの剛性およびセットされた形状が、ポアが形成されるように特定のモノマー間のセットされた空間的分離をもたらす。遊離官能基を有するMOFは、遊離官能基の配向が自由であるため、やや動的なポアサイズを有すると理解され得る。ポアサイズは、例えば「包接球体(inclusion sphere)」、すなわちMOFのファンデルワールス表面に球体が接触することなくポア内に配置され得る最大の球体によって測定され得る。「ウィンドウサイズ(window size)」とも称されるポア開口部のサイズは、「拡散球体(diffusion sphere)」、すなわち構造内を移動できる最小の球体によって測定され得る。本発明で使用するためのMOFは、有利には0.3~3nmの包接球体、好ましくは0.5~1.5nmの包接球体のポアサイズを有する。さらに、本発明のMOFは、放射性核種の吸着を可能にする一定のサイズのポアウィンドウ、好ましくは少なくとも3Åの直径を有する拡散球体を有する。ポアサイズは、無機モノマーおよび有機モノマーの大きさ、構造および結合によって制御され得る。ポアは、任意の形状であってよく、例えば四面体、八面体、六面体を含むがこれらに限定される訳ではない。
【0030】
Zr(IV)、Hf(IV)、Fe(III)、Al(III)、Ti(IV)、Cr(III)のカルボン酸塩の有機モノマー、およびZn(II)イミダゾレートをベースとするMOFは、水性媒体中で安定であることが知られており、したがって本発明において特に有用であると考えられる。
【0031】
好ましいMOFの例は、テレフタレート(C64(COO)2 2-)有機モノマー、および、無機モノマーとしてのカチオン性六核酸化ジルコニウムクラスターZr64(OH)4 12+を含み、テレフタル酸塩の各カルボン酸基が無機モノマーの2つのカチオンに配位しているジルコニウムベースのUiO-66、および、Hf64(OH)4 12+酸化物クラスター無機モノマーおよびテレフタル酸塩有機モノマーを有するUiO-66の対応するハフニウム誘導体、Hf-UiO-66である。UiO-66、Hf-UiO-66、および、fcuネットワーク・トポロジーとして知られる同じトポロジー(ネットワーク形状)を有するMOFは、四面体および八面体ポアを含み、前者と後者の間の動的な比は2:1である。各四面体ポアは、3つの有機リンカーが「出会う(meet)」、すなわち同じ空間容積に向かって伸びる4つのコーナーを含み、各八面体ポアは、4つの有機リンカーが「出会う(meet)」6つのコーナーを含む。遊離官能基は、最も安定なコンフォメーションにおいて八面体ポアのコーナーに向いているが、リンカーの連結軸を中心とした動的な回転および隣接するカルボキシレート基間の立体反発により、遊離官能基はまたしばしば四面体ポアの中にも誘導され得る。
【0032】
図2はfcuトポロジーをもつネットワーク構造の模式図であり、ここで、無機モノマーは立方八面体の配位形状を持つ球体として、および、有機モノマーは橋渡し棒として示されている。図3は、fcuMOFの八面体(O)および四面体(T)のポアを示している。大きな透明球体は、それぞれのポアの大きさを示している。
【0033】
M=Zrおよび/またはHfであるM(IV)ベースのMOF、すなわち無機モノマーが+4(M(IV))酸化状態にある金属Zrおよび/またはHfをベースとしているMOFであって、例えばUiO-66、Hf-UiO-66、およびそれらの誘導体のなどのカルボキシレートベースの有機モノマーを有するMOFは、いくつかの理由から、in vivoでの応用に特に適していると考えられる:(1)モノマーはin vivoで有利に低い毒性を有し得る、(2)前記MOFは、実施例2および3に示されるように、加水分解に対するM(IV)-カルボキシレート結合の安定性に起因して、例えばヒト血清などの水溶液中で卓越した安定性を示し得る、(3)M(IV)オキソクラスター無機モノマーは、高い連結性を有し得る、すなわち、多くの数の有機モノマーが、いくつかの有機モノマーの遊離官能基が空間的に近接できるように(これはクラスターに隣接する高度に配位したキレート部位の形成を可能にし得る)連結し得る。その結果、本発明のMOF粒子は、放射性核種のための特に安定したおよび効率的な担体となり、これは非常に高い吸着能を有し得、無視できるほどの他の臓器への漏出しか伴わない特異的治療を可能にし得る。
【0034】
UiO-66の混合金属および/または混合リンカー誘導体もまた、UiO-66と同様に有利な特性を示すことが期待できる。関連する混合金属誘導体としては、無機モノマー中に、Zr(IV)およびHf(IV)を含むまたはそれらからなる群からの2つまたはそれ以上の金属を含む誘導体が挙げられる。関連する混合リンカー誘導体としては、例えばアミノテレフタレート、ヒドロキシテレフタレート、メリテート、ピロメリテート、スルホテレフタレート、ムコネート、およびそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群より選択されるモノマーなどのテレフタレートに類似した配位幾何学的構造を有することが当業者に知られているモノマーを有する誘導体が挙げられる。適切な混合リンカーMOFは、両方とも当業者に周知である、複数のリンカーが存在する合成によってまたはリンカー交換によって得られ得る。
【0035】
さらに、Fe(III)、Al(III)、Ti(IV)、および/またはCr(III)をベースとする無機モノマーを有するMOFもまた、本発明において特に有用であり得る。有機モノマーは、例えば、テレフタレート、アミノテレフタレート、ヒドロキシテレフタレート、メリテート、ピロメリテート、スルホテレフタレート、ムコネート、およびそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群より選択され得る。前記MOFはUiO-66と同じトポロジーを形成することはできないが、同じ様式で機能し得る他の興味深いトポロジーを形成し得る。
【0036】
本発明のMOFは、ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基を含む。好ましくは、MOFは、ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワークと、各ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基(すなわち各ポアはその中に延びる少なくとも1つの遊離官能基とを備える)とを含む。いくつかの実施形態において、ポアの50%、例えばポアの80%、例えば95%、例えばポアの100%など、ポアの一定量のみがその中に延びる少なくとも1つの遊離官能基を有する。
【0037】
本明細書で使用される「ポア内に延びる(extending into a pore)」という用語は、官能基が、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワークによって形成されるポアの1つに向けられる、向いている、および/または存在していることを意味する。したがって、遊離官能基は、ポア内で、化合物、イオンなどに配位、結合および/または反応するために利用可能である。特には、官能基は、例えば放射性核種カチオンなどの放射性核種に配位、錯体化、および/または結合するために利用可能である。
【0038】
少なくとも1つの遊離官能基は、無機モノマーおよび/または有機モノマーに結合されている。少なくとも1つの遊離官能基が有機モノマーに連結している場合、それは好ましくは有機モノマーに共有結合している。いくつかの実施形態において、MOFの各有機モノマーは、それに連結された少なくとも1つの遊離官能基を有する。他の実施形態において、所定量の有機モノマーはそれぞれ、それに結合した少なくとも1つの遊離官能基を有する。いくつかの実施形態において、MOFの各無機モノマーは、それに連結した少なくとも1つの遊離官能基を有する。他の実施形態において、所定量の無機モノマーはそれぞれ、それに接続された少なくとも1つの遊離官能基を有する。
【0039】
遊離官能基は、好ましくはルイス塩基性であり、および、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群より選択される。第二級アミンは、一般構造式-NHRであるアミンを含むまたはそれらからなる群より選択され、ここでRは、少なくとも1つのルイス塩基性官能基(例えばカルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルフヒドリル、スルホン酸、スルホネート、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせ)を有するC1~C8のアルキル、アルケニル、およびアルキニル、例えば少なくとも1つのルイス塩基性官能基(例えば、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせ)を有するC1~C4の直鎖および分枝のアルキル、アルケニル、およびアルキニルなどを含むまたはそれらからなる群より選択される。このような官能性は、例えば、N-保護された天然アミノ酸とMOFの有機モノマーの遊離一級アミノ基とのペプチド縮合を行うことによって得られ得る。
【0040】
遊離官能基は、放射性核種の選択に基づいて有利に選択され得る。例えば、放射性核種が好酸性、またはHSAB理論(ハード酸およびソフト(ルイス)酸ならびに塩基)において「ハード(hard)」であることが当業者に知られている場合、ポアは有利には少なくとも1つの酸素含有官能基、すなわちカルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルフヒドリル、スルホン酸および/またはスルホン酸塩を含み得る。これに対応して、放射性核種がHSAB理論において「ソフト(soft)」である場合、ポアは、有利には少なくとも1つのアミン基を含み得る。いくつかの実施形態において、官能基は、さらに、放射性核種の娘核に基づいて、例えば放射性核種がハードであり、娘核がソフトである場合、少なくとも1つの酸素含有官能基および少なくとも1つのアミン基の両方を使用し、またはその逆などによって、選択される。
【0041】
したがって、いくつかの実施形態において、MOFは、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群より選択される少なくとも1つの遊離官能基を含む。他の実施形態において、MOFは、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルフヒドリル、スルホネート、およびそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群より選択される少なくとも1つの遊離官能基を含む。さらに他の実施形態では、MOFは、第一級アミンおよび第二級アミンならびにそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群より選択される少なくとも1つの遊離官能基を含む。
【0042】
好ましくは、MOFは、1~4つの遊離官能基、例えば1~2つの官能基、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つの遊離官能基を含む。いくつかの実施形態において、MOFは、少なくとも2つの遊離官能基を含み、および遊離官能基は同一であるか、または遊離官能基の少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば全てが互いに異なる。いくつかの実施形態において、MOFは、少なくとも3つの遊離官能基を含み、遊離官能基は、同一であるか、または遊離官能基の少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば全てが互いに異なる。いくつかの実施形態において、MOFは、少なくとも4つの遊離官能基を含み、遊離官能基は同一であるか、または遊離官能基の少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば全てが互いに異なる。
【0043】
MOFは、MOFが上記で開示された少なくとも2つの遊離官能基を含む場合に、MOFの構造が、少なくとも2つの遊離官能基のいくつかまたは全部が、例えばポア内の共通の点または容積などの共通の空間容積の方を向いていることを可能にするように選択され得る。MOFは、MOFが上記で開示された少なくとも2つの遊離官能基を含む場合に、MOFの構造が、少なくとも2つの遊離官能基のいくつかまたは全部が、放射性核種カチオンの存在下で、例えば放射性核種カチオンの外側軌道と整列することなどによって、放射性核種カチオンとの好ましい相互作用を可能にする方法で配向することを可能にするように選択され得る。いくつかの実施形態において、各遊離官能基は、同じポア内に延びる他の遊離官能基のうちの少なくとも1つ、例えば全てから4~15Åの距離、例えば4~12Å、例えば5~10Åの距離を有する。
【0044】
さらに、少なくとも1つの遊離官能基の選択および配置は、ポア内の配位、例えば結合、例えばキレート化などの部位の幾何学的形状を変更するために使用され得る。そのような部位は、1またはそれ以上の遊離官能基の存在によって形成され得るが、ポアのサイズおよび/または形状から生じることもある。いくつかの実施形態において、このような部位は、同じポア内に延びる全ての遊離官能基を含んでいると定義される。いくつかの実施形態において、このような部位は、同じポア内に延び、および、同じポア内の少なくとも1つの他の遊離官能基からの最大距離が15Å、例えば10Åを超えない遊離官能基を含んでいると定義される。いくつかの実施形態において、このような部位はポアのコーナーに存在している。この配置は、その部位が一方向からのみアクセス可能であることを伴い得、したがって競合的な吸着を制限する。さらに、このような部位がポアのコーナーに存在する場合、またはポアの開口部と対向するポアの内部に別の方法で存在する場合、他の化合物、例えば他のカチオン、例えば競合するカチオンなどがポア内に存在し、および、放射性核種がポアから離れることを立体的にブロックし得る。コーナーに存在するこのような部位は、原則として、遊離官能基を含むことができる全てのMOFにおいて構築され得る。例えばMOFの例としては、Cr-MIL-100、Fe-MIL-100、およびAl-MIL-100、Cr-MIL-53、Fe-MIL-53、およびAl-MIL-53、Zr-MIL-140、Hf-MIL-140、Zr-MOF-711、Hf-MOF-711、ZIF-8、Ti-MIL-125などが挙げられる。
【0045】
配位、結合および/またはキレート化部位の例を図4~7に示す。図4は、3つの遊離カルボキシレート基が前記ポア内に向いている場合の四面体のケージのコーナーにおける配位、結合および/またはキレート化部位の例を示している。図5は、4つの遊離カルボキシレート基が前記ポア内に向いている場合の八面体のポアのコーナーにおけるそのような部位の例を示している。図6は、2つの遊離カルボキシレート基および2つの遊離アミド基が前記ポア内に向いている場合の八面体のポアのコーナーにおけるそのような部位を示す。後者は、例えば、遊離一級アミノ基上の合成後のペプチド縮合によって得られ得る。合成後修飾については後述される。図7は、2つの遊離カルボキシレート基と、1つのアミド基がDOTAキレーターを有している2つの遊離アミド基が前記ポア内に向いている場合の八面体のケージのコーナーのそのような部位を示す。図8は、複数の遊離官能基がポア内に伸びているポアを示す。
【0046】
さらに、ポア内に向けられた少なくとも1つの官能基は、ポアの電荷バランスおよび/またはポア内の配位、例えば結合、例えばキレート化などの部位の電荷バランスを変更するために使用され得る。有利には、本発明のMOFは、ポア内に正味の負電荷をもたらす遊離官能基、または官能基の組み合わせを含む。この正味の負電荷は、カチオンの強力、選択的な吸着を促進する可能性がある。
【0047】
UiO-66およびUiO-66タイプのMOFのテレフタル酸モノマーのフェニル環上への置換基の導入は、ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基を含む結晶性MOFへの容易なアクセスを与え、ここで少なくとも1つの遊離官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される。例えば、UiO-66-COOH、UIO-66(COOH)2、およびUiO-66-NH2はいずれも市販されている。UiO-66-COOH、UIO-66(COOH)2、Hf-UiO-66-COOH、およびHf-UIO-66(COOH)2は、そのポア内に延びる6~12個の遊離カルボン酸官能基を有し、そのうちの3個または4個の遊離官能基がポア内で配位部位を形成し、したがって効率的および/または安定な方法で放射性核種カチオンをキレートし得る好ましいMOFを表す。
【0048】
いわゆるポアエンジニアリング、すなわちポア内に延びる遊離官能基の導入には、主に2つのアプローチが存在する。骨格の構築と他の用途のために2つの異なる配位部位が共存する「プレインテグレート型有機モノマー(preintegrated organic monomers)」を用いたMOFの合成、および、あらかじめ構築されたMOFにさらなる官能基を順次結合させるような「合成後修飾(postsynthetic modification)」である。MOF中の遊離官能基は、俗に「合成後修飾」と称される化学反応によって修飾することができる。原則として、標準的な湿式化学的手法で実施できるすべての化学反応が、MOF中の同じ官能基に対して実施され得る。例えば、アミノ酸は、ペプチド縮合反応によって、MOF中の遊離一級アミン基と反応され得る。特定の性質を持つ分子は、この方法を用いて、MOFのポア内など、MOF上にグラフトされ得る。したがって、新しいMOFを設計および合成することによっても、および、既存のMOFを改変することによっても、特定の構造および特定の遊離官能基を持つMOFが入手可能である。したがって、UiO-66構造を有する様々なMOFの誘導体、ならびに、他の構造を有し、および様々な遊離官能基を含むMOFは、容易に入手可能である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの遊離官能基が公知のキレート剤であるように、当業者に公知の少なくとも1つの放射性核種キレート剤、例えばEDTA、例えばDOTAが、ポア内に延びる基上にグラフトされる。
【0049】
さらに、大部分のMOFは、ある割合のリンカー欠失欠陥、すなわち有機リンカーが構造から欠落し、隣接する無機モノマー上に配位的に不飽和な部位を残している部位を許容することができる。これらの不飽和部位は、例えば少なくとも1つの官能基で無機モノマーを配位させることができ、およびポア内に延びるための遊離官能基を有する分子、例えばアミノ酸など、MOFの機能特性に寄与することができる配位分子で修飾され得る。
【0050】
好ましくは、本発明のMOFは、ポアを形成する無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワークと、各ポア内に延びる少なくとも1つの遊離カルボン酸またはカルボン酸塩官能基とからなる。
【0051】
図9、10および11は、好ましいMOFの模式図を示している。
【0052】
図9および10は、M(IV)およびM(III)ベースのテレフタル酸MOFの部分結晶構造を示す。図9は、UiO-66を示す(有機モノマーは各C/O原子がコーナーに位置する棒として、無機モノマーは多面体として示されている)。図10は、MIL-53を示しており、ここでは線と多面体に加えて、利用可能なポア空間が大きな球体で示されている。
【0053】
図9および図10に示されている好ましいMOFは、M(IV)無機モノマーを有していてもよい。適切な有機モノマーが以下に示されている(構造I、II、III、IV、V、およびVI):
【0054】
構造Iはテレフタル酸/テレフタル酸塩有機モノマーを表し、これは金属-カルボキシレート結合を介してM(III)およびM(IV)ベースの無機モノマーとMOFを形成し得る。R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して、水素、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、および第二級アミンを含むまたはそれらかなる群より選択され得、すなわちR基のそれぞれは水素または遊離官能基であってよい。
【0055】
構造IIはビフェニル-4,4'-ジカルボン酸有機モノマーを表し、これは金属-カルボキシレート結合を介してM(III)およびM(IV)ベースの無機モノマーとMOFを形成し得る。R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27およびR28は、それぞれ独立して、水素、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、および第二級アミンを含むまたはそれらかなる群より選択され得、すなわち、R基のそれぞれは、水素または遊離官能基であってよい。
【0056】
構造IIIは、トリメシン酸(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸)有機モノマーを表し、金属-カルボキシレート結合を介してM(III)およびM(IV)ベースの無機モノマーとMOFを形成し得る。R31、R32およびR33は、それぞれ独立して、水素、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、および第二級アミンを含むまたはそれらかなる群より選択され得、すなわち、R基のそれぞれは、水素または遊離官能基であってよい。
【0057】
構造IVはアジピン酸有機モノマーを表し、金属-カルボキシレート結合を介してM(III)およびM(IV)ベースの無機モノマーとMOFを形成し得る。R41、R42、R43およびR44はそれぞれ独立して、水素、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、および第二級アミンを含むまたはそれらかなる群より選択され得、すなわちR基のそれぞれは水素または遊離官能基であってよい。
【0058】
構造Vは、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸有機モノマーを表し、金属-カルボキシレート結合を介してM(III)およびM(IV)ベースの無機モノマーとMOFを形成し得る。R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69およびR70は、それぞれ独立して、水素、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、および第二級アミンを含むまたはそれらかなる群より選択され得、すなわち、R基のそれぞれは、水素または遊離官能基であってよい。
【0059】
構造VIはナフチル有機モノマーを表し、金属-カルボキシレート結合を介してM(III)およびM(IV)ベースの無機モノマーとMOFを形成し得る。R71、R72、R73、R74、R75およびR76は、それぞれ独立して、水素、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、および第二級アミンを含むまたはそれらかなる群より選択されて得、すなわち、R基のそれぞれは、水素または遊離官能基であってよい。
【0060】
構造I~VIの各々において、二級アミンは、一般構造式-NHRのアミンを含むまたはそれらかなる群より選択され得、ここでRは、少なくとも1つのルイス塩基性官能基(例えばカルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルフヒドリル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせ)を有するC1~C8のアルキル、アルケニル、およびアルキニル、例えば少なくとも1つのルイス塩基性官能基(例えば、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルフヒドリル、スルホン酸、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせ)を有するC1~C4の直鎖および分枝のアルキル、アルケニル、およびアルキニルなどを含むまたはそれらからなる群より選択される。
【0061】
図11は、ゼオライト型イミダゾレート骨格およびいわゆるsodトポロジーを有するMOFを示している。有機モノマーは原子および結合を表すボールとスティックで、Zn原子は四面体で示されている。
【0062】
図11に示される好ましいMOFは、M(II)無機モノマーを有していてもよい。好適な有機モノマーが以下に示される(構造VII):
【0063】
構造VIIはイミダゾール有機モノマーを表し、金属-イミド結合を介してM(II)ベースの無機モノマーとMOFを形成し得る(ZIFとしても知られる)。R51、R52およびR53はそれぞれ独立して、水素、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、および第二級アミンを含むまたはそれらかなる群より選択され得、すなわちR基のそれぞれは水素または遊離官能基であってよい。二級アミンは、一般構造式-NHRのアミンを含むまたはそれらかなる群より選択されて得、ここでRは、少なくとも1つのルイス塩基性官能基(例えばカルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルフヒドリル、スルホン酸、スルホネート、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせ)を有するC1~C8のアルキル、アルケニル、およびアルキニル、例えば少なくとも1つのルイス塩基性官能基(例えば、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせ)を有するC1~C4の直鎖および分枝のアルキル、アルケニル、およびアルキニルなどを含むまたはそれらからなる群より選択される。
【0064】
本明細書に開示される発明において、MOFは、例えば微粒子またはナノ粒子などの粒子の形態で存在する。好ましくは、粒子はナノ粒子である。本明細書で使用される場合、用語「ナノ粒子(nanoparticle)」は、1000nm未満、例えば1~1000nmなどの直径を有する任意の粒子を指す。同様に、「ナノ粒子」という用語は、約1~1000nmの平均直径を有する複数の粒子を指す。ナノ粒子の「サイズ(size)」への言及は、ナノ粒子の最大の直線寸法の長さへの言及である。例えば、完全な球形のナノ粒子のサイズはその直径である。サイズは、例えば、動的光散乱によって特徴付けられる粒子の流体力学的半径を指し得る。いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子は1~200nmの粒子径を有する。これに対応して、「微粒子(microparticle)」という用語は、1000μm未満、例えば1~1000μmなどの直径を有する粒子を指す。
【0065】
マイクロ粒子およびナノ粒子は放射線治療にも利用されている。このような粒子が使用される場合の重要な要因は、システム毒性のリスクを低減するために粒子自体が完全に安定であるか、ゆっくりと分解されるべきであるという意味、および、放射性核種の漏出を避けるために放射性核種が粒子に強く結合すべきであるという意味の両方における、その安定性である。本発明のMOFは、本発明者らによって発見され、および実施例2および3に示されているように、非常に安定である。さらに、遊離官能基の存在は、ポア自体の閉じ込め効果とともに、実施例7に示されるように、放射性核種の粒子への強力なキレートを確実なものとする。遊離官能基の選択は、例えば、アニオンよりもカチオン、および/またはソフトイオンよりもハードイオンが好ましくキレート化されるなどの高レベルの選択性をもたらし得る。したがって、本発明は、放射性核種のための特に安定な担体を提供する。
【0066】
本発明のMOF粒子全体を通して、それらの一部分、すなわち粒子の外側からアクセス可能な部分に放射性核種カチオンを捕捉する可能性をもつ10^3から10^5のポアが存在する。あるポアから放射性核種カチオンが放出された場合、隣接するポアによって捕捉され得、粒子からの漏出が防止され得る。脱着された放射性核種カチオンのこの「再吸着(readsorbtion)」能力は、従来のキレーターと比較して、本発明のMOF粒子が放射性核種カチオンをより効率的に保持できることを示している。さらに、粒子当たりのカチオンの数が調整され得るため、粒子の放射活性のレベルを調整することができる。
【0067】
適切な拡散球体を有するポアの存在およびポア内に延びる遊離官能基により、本発明による粒子が放射性核種カチオンを含む溶液に曝された場合、これらのカチオンはポア内に容易に吸着およびキレート化される。本発明によるMOF粒子を使用するさらなる利点は、溶液中に存在する他のカチオンなどの任意の競合種が、放射性核種カチオンを追い出すのではなく、欠失ポアを占拠し得ることである。
【0068】
本発明のMOFおよびその粒子は、当業者に公知の任意の方法、例えば商業的に入手可能な様式で、例えば当業者に利用可能な任意の合成プロトコルを用いた合成などによって得ることができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の粒子は、粒子の外部表面上で粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位を含む。粒子に関して本明細書中で使用される「外部表面(external surface)」という用語は、粒子内のポアの表面と対応した、その外部の表面を指す。ポアが粒子を透過し、および粒子内で可視である場合、外部表面は、粒子の最外面のすべての表面を含むように定義されるが、ポアを規定する表面は含まない。
【0070】
本明細書で使用される場合、「標的部位(targeting moiety)」という用語は、「組織標的化(tissue targeting)」である、すなわち、それ自体-およびそれが連結される粒子などの任意の部位-を、その存在、例えば放射性崩壊を送達することが望まれる少なくとも1つの組織部位に優先的に局在させる役割を果たす、分子、例えば分子の一部などの部位を指す。用語「標的部位」はまた、粒子を特定の場所、細胞型、疾患組織、または会合に標的化または誘導する役割を果たす官能基を指すことができる。標的部位は、例えば、疾患に罹患した細胞またはそのような細胞の近傍の細胞上に存在する例えば細胞表面マーカー、例えばレセプター、輸送タンパク質、細胞接着分子などのバイオマーカーに結合または錯体化することが当業者に知られている部位であり得る。このような細胞表面マーカーとしては、これらに限定される訳ではないが、健康な細胞表面よりも病的な細胞表面でより多く発現するタンパク質、または、休止期よりも細胞の成長期や複製期に細胞表面でより多く発現するタンパク質などが挙げられる。標的細胞もしくは組織の近傍に存在する成分、またはそれに関連する成分もまた、本発明の任意の態様に従って、治療の標的で利用され得る。例えば、標的細胞または組織の周囲のマトリックス中に存在するまたは放出される成分は、その存在、形態または濃度がその領域を健康な組織から区別されることを可能にしている場合、標的化に使用され得る。
【0071】
標的部位の非限定的な例としては、以下
例えば葉酸;葉酸塩;炭水化物;例えばグルコース、マンノース、ガラクトースなどの単糖;尿素誘導体;脂質;ストレプトアビジン;アルブミン;ビオチン;ステロイドおよび非ステロイドホルモンなどの低分子標的部位、
アプタマーすなわち受容体の特異的結合ドメインを認識する一本鎖オリゴヌクレオチド、
例えば抗体などの生体高分子;例えばファージディスプレイペプチドなどの生体模倣ペプチドなどのペプチド;タンパク質;核酸などの高分子、ならびに
例えば天然細胞、例えば遺伝子操作された細胞などの細胞
が挙げられる。
【0072】
好ましい標的部位としては、抗体、抗体フラグメント、抗体構築物、抗体フラグメントの構築物、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ユニボディ、アフィボディ、およびダイアボディなどが挙げられる。本明細書において、「抗体(antibody)」という用語は、免疫グロブリン、特異的結合能を維持するその誘導体、および免疫グロブリン結合ドメインと相同的または大部分が相同的な結合ドメインを有するタンパク質を指す。これらのタンパク質は、天然由来のものであってもよく、または、一部もしくは全部が合成的に産生されたものであってもよい。「抗体」という用語は、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、及び/又はキメラ抗体を包含する。抗体は、任意のヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであってもよい。有用な抗体の例としては、従来の全長抗体(例えばIgG)およびラクダ科の重鎖抗体(VHH)などが挙げられる。
【0073】
本明細書で使用する場合、「抗体フラグメント(antibody fragment)」という用語は、全長未満の抗体の任意の誘導体を指す。例示的な実施形態において、抗体フラグメントは、全長抗体の特異的結合能力の少なくともかなりの部分を保持する。抗体フラグメントの例としては、これらに限定される訳ではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、およびFdフラグメントなどが挙げられる。
【0074】
細胞ベースのターゲティングは、開発の初期段階にあるが、高い特異性と汎用性などの利点を持つ可能性がある。治療薬は細胞表面に結合されることも、また、細胞内に封入されることもできる。赤血球、白血球、幹細胞、血小板、樹状細胞、およびさらには細菌を含む多くの細胞タイプが、低分子、高分子、さらにはナノ粒子の組織特異的デリバリーに活用されてきた。細胞が標的部位として使用される場合、本発明の治療は細胞治療とみなすことができる。細胞、例えばCAR/TCR T細胞、CAR/TCR NK細胞、NK-92を標的部位として含む本発明の粒子を同種または自家細胞療法に使用することで、強力な腫瘍殺傷効果および細胞療法の有害な副作用(サイトカイン放出症候群、移植片対宿主病など)を予防する免疫調節効果の両方を得ることができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、標的部位は、本発明の粒子を所望の組織に標的化する効果を集合的に有する2つまたはそれ以上の成分のうちの1つである。これは、例えば、1つの成分が特定の組織、腫瘍、または細胞型に結合し(組織結合剤)、そして、第2またはさらなる成分である標的部位が組織結合剤に結合する場合である。組織結合剤とおよび標的部位に相互親和性を与えるための適切な特異的結合対は、当技術分野で知られている(例えば、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジンなど)。
【0076】
標的部位は、例えば商業的に入手される、例えば当業者に利用可能な任意の合成プロトコルを用いて合成される、例えば酵素的、合成的および/または化学的に産生される、当業者に公知の任意の方法によって得ることができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、粒子は、1つの標的部位のみを含む。他の実施形態において、粒子は、2つまたはそれ以上の標的部位、例えば5つ、例えば10個の標的部位を含む。標的部位の数は、粒子のサイズに基づいて選択され得る。標的部位は、互いに同じであっても異なっていてもよい。標的部位と粒子の質量比は、標的部位の分子量および粒子の直径に依存し得る。
【0078】
2つまたはそれ以上の異なる標的部位の使用は、1つより多い抗原が標的化され得るため、ターゲットと関連する抗原のプロファイルを発現する組織または細胞(例えば、CD163およびCD206を発現するM2腫瘍関連マクロファージ)への向上された結合という利点を有する。さらに、腫瘍特異的抗原だけでなく、腫瘍部位に集積する血管(例えばVCAM1)を標的とできることも利点の一つであろう。
【0079】
少なくとも1つの標的部位は、例えば共有結合を介してなど、粒子に直接連結され得るか、または少なくとも1つの標的部位は、連結基を介して粒子に連結され得る。標的部位はまた、ビオチン/ビオチン誘導体と強く結合するストレプトアビジンと共有結合的に共役される粒子に連結され得る。ストレプトアビジンはリンカーとして機能するだけでなく、ビオチン化部位のための結合部位としても機能し得る。したがって、ストレプトアビジン共役粒子は、1つまたはそれ以上のビオチン化標的部位と結合させることができる。標的部位を表面に連結する方法は当技術分野で周知である;例えばカルボジイミドカップリングなどの標準的な有機および/または無機化学が使用され得る。適切な連結基は、当業者によって容易に決定され得る;例えば、連結基の範囲は、抗体-薬物-共役体の分野から知られている。連結基の非限定的な例としては、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、2-(マレイミドメチル)-1,3-ジオキサン(MD)、およびマレイミドカプロイルスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)(SMCC)が挙げられる。MOF粒子の外部表面は、ポアの内部と同じ有機官能基で構成されていてもよく、同じ反応を受ける可能性がある。しかし、MOFのポアに入ることが立体的に禁止されている試薬を使用することによって、ポア内ではなく外表面で反応を実行するためにサイズ識別が使用され得、その結果、粒子の外表面への標的部位の選択的な付着を可能にする。
【0080】
少なくとも1つの標的部位は、例えば腫瘍細胞、癌細胞、過形成性疾患に罹患した細胞、新形成性疾患に罹患した細胞などの増殖性疾患に罹患した細胞を標的化するための標的部位であってもよい。好ましい実施形態において、標的部位は、癌細胞を標的化するための標的部位である。本明細書で使用される場合、用語「癌細胞(cancer cell)」および「腫瘍細胞(tumour cell)」は、異常な増加速度で分裂する細胞を指す。癌細胞としては、これらに限定される訳ではないが、例えば扁平上皮癌、非小細胞癌(例えば、非小細胞肺癌)、小細胞癌(例えば、小細胞肺がん)、基底細胞がん、汗腺がん、皮脂腺がん、腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、膀胱腺がん、髄様がん、未分化がん、気管支がん、黒色腫、腎細胞がん、肝細胞がん、胆管がん、胆管細胞がん、乳頭がん、移行細胞がん、絨毛がん、精液がん、胚性がん、乳腺がん、消化管がん、結腸がん、膀胱がん、前立腺がん、および頸部および頭部領域の扁平上皮がんなどの癌腫;例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫および中皮肉腫などの肉腫;例えば、骨髄腫、白血病(例えば急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病、リンパ球性白血病など)、リンパ腫(例えば濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網肉腫、またはホジキン病など)などの血液がん、および神経膠腫、多形膠芽腫、髄膜腫、髄芽腫、神経鞘腫、および精巣上体腫を含む神経系の腫瘍が挙げられる。当業者は、増殖性疾患、特に癌細胞に冒された特定のタイプの細胞を標的とするために使用され得る標的部位に関し知識がある。
【0081】
別の実施形態において、本発明の粒子は標的部位を含まない。薬剤物質が経口、静脈内または非経口経路のいずれかで人体に投与されるかにかかわらず、それらは代謝酵素によって、大部分の代謝のための部位である肝門脈系(肝臓)で代謝され、送達された物質を体内から容易に除去できるように分解する。従って、標的部位を含まない本発明の粒子は、被験体に投与された後、肝臓に輸送され、および肝臓の治療に良好に適し得る。さらに、粒子の自然な生物学的分布は、所与の部位に放射性同位元素を得て、その場(in situ)で組織を放射線照射するために使用され得る。
【0082】
本発明のMOF粒子は、少なくとも1つの放射性核種を含む。本明細書で使用する「放射性核(radionuclide)」という用語は、放射性核種、放射性同位元素または放射線放出性同位元素とも称されることがあり、過剰な核エネルギーを有し不安定な原子である。この過剰なエネルギーは、原子核からガンマ線として放出される、電子のひとつに移動して転換電子として放出される、原子核から新たな粒子(アルファ粒子またはベータ粒子)を生成しおよび放出するために使用される、という3つの方法のいずれかで利用され得る。これらの過程のあいだ、放射性核種は放射性崩壊を起こすと言われている。その結果生じる核種は、娘核種または子孫核種と称される。
【0083】
少なくとも1つの放射性核種は、例えばポア内に存在する、例えばポアによって囲まれるなどによりポア内に位置し、好ましくは、前記ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基に配位および/またはそれによってキレート化される。好ましくは、放射性核種は放射性カチオンである。より好ましくは、放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、テルビウム-149、テルビウム-161およびトリウム-227を含むまたはそれらからなる群より選択される放射性核種である。いくつかの実施形態において、放射性核種は、放射性核種カチオンであり、ここで放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、およびトリウム-227を含むまたはそれらからなる群より選択される。好ましくは、放射性核種は、ラジウム-223またはラジウム-224であり、より好ましくは、放射性核種は、ラジウム-223である。
【0084】
上述された放射性核種は、腫瘍の殺傷および臨床投与に適合する1~20日の半減期を有し、およびこれゆえ、各同位体について以下に述べるように、大きな治療的可能性を有する。上述されたこれらの放射性核種カチオンは、MOFの負に帯電したキレート基と強く結合し得るため、そうでなければin vivoで塩および他の成分との競合によって生じる放射性同位体の漏出が制限され得る。これらの放射性同位体の娘同位体もまた、これらのMOF内に捕獲および保持され得る。
【0085】
ラジウム-223、224および225:
ラジウムは癌の治療において長い歴史をもっている。すべてのラジウム同位体は放射性であるが、治療用核種として使用できる半減期を持つのはRa-223(半減期(t1/2)=11.4日)、Ra-224(t1/2=3.6日)、Ra-225(t1/2=14.9日)のみである。これらの核種はすべて、それぞれのラジウム親核種よりも半減期の短い複数のα-およびβ-放出子孫核種を経由して崩壊し、17導入完全崩壊あたり平均4個のα粒子放出を伴う。各シリーズの完全崩壊は28-29MeVの高い全エネルギーを放出し、その90%より多くがα放出に関連している。上記の3つのラジウム同位体はすべて、長寿命の親核種から得ることができる:Ra-223はAc-227から(t1/2=21.8年)、Ra-224はTh-228から、およびRa-225はTh-229から。Th-228と同じように、Ac-227は天然のRa-226の中性子照射によって生成することができるが、ウラン鉱物中ではU-235の崩壊によっても得られる。
【0086】
ラジウムはただ1つの酸化状態(+II)のみを有し、水溶液中のRa2+カチオンの高いアルカリ性により、ラジウムは容易には錯体化しない。したがって、大部分のラジウム化合物は単純なイオン塩である。この固有の性質が、ラジウムと標的分子との結合を難しくしている。従って、Ra-223およびRa-224における主な障害は、他のいくつかのα-放射体の場合のような製造または入手可能性とは関係ない。
【0087】
トリウム-227
トリウム227の半減期は18.7日であり、安定な207Pbに崩壊する間に5個のα粒子を放出する。これはRa-223の直接の親核種であり、高度に精製されたTh-227はRa-223の製造に使用されたのと同じAc-227発生装置から得ることができる。Th-227-錯体は、それらの放出およびその後の再分布を導き得るα放出性娘核種からの反跳エネルギーを受けるであろう。錯体の代謝処理および崩壊のあいだの反跳エネルギーの両方が子孫核種の放出を導き得、毒性の懸念が生じ、および投与できる線量が制限される可能性がある。非標的組織で発生する崩壊もまた治療上の欠点であり、その理由はα粒子の全機能が腫瘍に送達される放射線量に寄与しないからである。本発明の粒子はTh-227にその娘同位体と共に結合し得る。
【0088】
ビスマス-212およびビスマス-213:
α線治療のための関心となるビスマス同位体であるBi-212およびBi-213は、それぞれ半減期が60.6分および45.6分と短い。これらは、Ra-224およびAc-225Acの崩壊連鎖における最終的なα放出性娘核種であり、これゆえこれらの対応する放射性核種に基づくジェネレーターから溶出され得る。
【0089】
鉛-212:
鉛-212の半減期は10.6時間であり、および治療上効力のあるα放出性娘各種であるBi-212へとβ放出を介して崩壊する。そのため、212Pbは、Bi-212からα粒子を生成するin vivoジェネレーターとして使用され得、その結果、Bi-212の半減期を事実上延長することができる。鉛-212は、Ra-224に基づくジェネレーターから入手可能であり、および、半減期は現場での製造を必要とする。
【0090】
アクチニウム-225:
放射性金属225Acの半減期は10.0日であり、および安定な209Biに完全崩壊するごとに平均4個のα粒子を生成する。229Thからの放射化学的抽出(t1/2=7340年)あるいは種々の加速器ベースの方法で得られ得る。標的分子の放射性標識のための225Acの使用は、十分な収量および安定性の両方を与える適切なキレーターがないために制限されてきた。
【0091】
テルビウム-149:
テルビウム-149(Tb149)の半減期は4.12日であり、およびガンマ線に加えてアルファ粒子およびベータ粒子を放出する。Tb149は、ガドリニウムGd152(p,4n)反応、または種々の加速器ベースの方法によって生成され得る。
【0092】
テルビウム-161:
テルビウム161(Tb161)の半減期は6.9日であり、および原子炉内で濃縮ガドリニウム161(Gd161)ターゲットに中性子を照射してGd161を生成し、その後Tg161に崩壊させるか、または種々の加速器を用いた方法で生成することができる。説明した他の放射性同位元素と同様に、Gd161は一般にカチオン(3+)として生じ、RITのための同位元素として非常に適切である。しかし、それは、より低いLETおよび組織中へのより長い透過長を結果としてもたらし、これはより大きな非新生血管腫瘍へとより深く浸透するために有利であり得るベータ線放出核種である。
【0093】
いくつかの実施形態において、粒子は1つの放射性核種を含む。他の実施形態において、粒子は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、およびトリウム-227を含む群から独立して選択される例えば2つ、3つ、例えば5つなどの1つより多い放射性核種、好ましくは、放射性核種がラジウム-223またはラジウム-224から選択される、より好ましくはラジウム-223である放射性核種カチオンを含む。粒子が1つより多くの放射性核種を含む場合、放射性核種は典型的には、別々のポア中に配置されるが、同じポア中での2つの放射性核種の存在もまた可能であり得る。すべての実施形態において、粒子あたりの放射性核種の数の完全な制御は期待できないことに留意すべきである。粒子が放射性核種を含む溶液と接触されるキレート化プロセスのあいだ、粒子あたりの放射性核種の統計的分布が生じるであろう。
【0094】
本明細書中に開示される粒子、すなわちMOFからなる粒子であって、
ここで、MOFは、ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、ならびに、ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される遊離官能基を含み、ここで、該粒子は、任意には、さらに、該粒子の外部表面上で該粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位、ならびに、少なくとも1つの放射性核種であって、少なくとも1つの放射性核種が、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種を含み、少なくとも1つの放射性核種はポアの少なくとも1つの中に位置する、少なくとも1つの放射性核種を含む粒子は、先行技術と比較して、少なくとも以下の利点を有し得る:
(a)既存の低分子キレーターとは対照的に、MOF粒子は多数のキレート部位を含み、これは粒子に所定数の放射性核種をロードすることによる線量制御を可能にし得る。
(b)MOFのネットワーク構造は、例えば以下のメカニズムなどによって、粒子が放射線を封じ込める能力に肯定的に影響し得る:
(1)最先端の分子キレーターとは対照的に、MOFは物理吸着によって、放射性核種の崩壊連鎖を通じて現れる娘同位体を含むことができ、したがって腫瘍細胞の近くに娘核種をもまた保持できる。
(2)最先端の分子キレーターとは対照的に、MOFに吸着された放射性核種は、他のイオンによる競合的吸着の影響を受けにくく、これはこれらが欠失ポアによって吸着され得るためである。
(3)脱離した放射性核種は、隣接する欠失ポアに再吸着され得る。
【0095】
要約すると、本発明はしたがって放射線治療の改善された方法を提供し得る。
【0096】
(b)(2)に関し、競合的吸着は、粒子の調製および保存のあいだ、ならびに放射性核種カチオンの吸着のあいだだけでなく、粒子が薬剤として使用される場合にも関連する可能性がある。例えば、Ra2+は、一般的に、Mg2+およびCa2+からの競合の影響を受けやすいが、低分子キレート剤を使用するよりもMOFを使用した方がその影響を受けにくい。本発明のMOFであるUIO-66-(COOH)2がRa223を非常によく吸収し、数日間にわたってこれを保持したことを示す実施例7を参照されたい。
【0097】
本発明の粒子は、粒子の外部表面を改変するための1つまたは複数の分子をさらに含んでもよい。そのような1つまたは複数の分子は、粒子の外部表面で、粒子に例えば配位される、例えば共有結合で結合されるなど連結され得る。この場合も、ポア内ではなく外部表面上で反応を行うために、サイズ識別が使用され得る。例えば、遊離カルボキシル基またはアミノ基を含むMOFの外部表面は、輸送を容易にし、凝集を防止し、および/またはMOFとその標的との間の標的化柔軟性および空間距離を増大させることによって凝集を防止し、および/または標的化機能性を提供するために、PEG誘導体、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、MDリンカー、Mal-PAB、アルブミンを含むまたはそれらからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物で官能化され得る。アルブミンは、凝集を防ぐため、および粒子の血中半減期を増加させるために使用され得る。
【0098】
本発明の粒子は、ポアの少なくとも1つに位置する1または複数のさらなる化合物、例えばイオンなどの分子などをさらに含んでいてもよい。非限定的な例としては、緩衝剤および/または特定のイオン、例えば立体的な障害による放射性核種の漏出を制限するためのイオンなどが挙げられる。
【0099】
MOF粒子は、典型的には、無機モノマーのための適切な無機前駆体の溶液および有機モノマーの溶液が混合される、20~100℃での水性合成によって製造される。いくつかの場合において、有機モノマーは、無機前駆体の溶液中に直接溶解されるか、またはその逆である。いくつかの場合において、粒子成長速度に影響を与えるための成長制御因子(成長モジュレーターとも称される)が添加される。MOF粒子は、構造が形成されるにつれて溶液から析出する。MOFの製造については、公表されている手順に従うことができる。
【0100】
標的部位は、MOF粒子に直接、またはリンカーを介して、付着、連結、結合-一般に共益と称される-され得る。例として:カルボキシルMOFは、カルボジイミド(EDC、NHS/スルホ-NHS)ベースの架橋によって、(標的ユニット上に存在する)アミン基に共役され得る。
【0101】
放射性標識は、放射性核種カチオンの溶液または懸濁液を粒子の懸濁液と1分より長いあいだ均一に混合し、次いで、例えば遠心分離またはカラム精製などにより、標識粒子から残留非結合放射性核種カチオンを分離することにより実施され得る。放射性標識が行われる前に標的部位が粒子上に存在する場合、放射性標識手順は、例えば使用される時間、生成物の精製などの点で、より便利であり得る。
【0102】
したがって、本発明の粒子は、MOFを含む例えばナノ粒子などの粒子を提供する工程であって、
ここで、MOFは
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含み、ここで、該粒子は、任意には
前記粒子の外部表面上で前記粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位
を含む工程、ならびに
前記粒子を放射性核種、例えば放射性核種カチオンと接触させる工程であって、ここで放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161からなる群から選択される工程、
によって調製され得る。
【0103】
放射性核種カチオンは、例えば、液体を含む組成物中に存在していてもよい。
【0104】
別の態様において、本発明はキットに関し、前記キットは
第1のコンテナ内に、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF;
任意には、粒子の外表面上で該粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;
を含む粒子を含み、ならびに
第2のコンテナ内に、
放射性核種であって、前記放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種、または、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161の任意の1つを娘核種として生成する放射性核種である放射性核種
を含む。
【0105】
当業者は、第1のコンテナおよび第2のコンテナが、任意の成分を溶解または懸濁するためなどの溶媒などの液体、ならびに、少なくとも1つの担体、希釈剤、および/または賦形剤などのさらなる成分をさらに含んでもよいことを理解するであろう。
【0106】
本明細書中に開示される粒子は、従来の薬学的に許容可能な担体を含む薬学的に許容可能な組成物などの所望の投与単位製剤中に有効成分として存在し得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」という用語は、化合物がレシピエントに生理学的に許容され、および、組成物の一部である場合、組成物の他の成分と適合性でなければならないことを意味する。「組成物(composition)」という用語は、本発明による1または複数の化合物と1または複数の追加の化学成分との、任意の製剤における混合物を意味する。
【0107】
したがって、別の態様において、本発明は、少なくとも1つの粒子を含む組成物に関し、ここで少なくとも1つの粒子は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤および/または賦形剤と共に、MOFを含み、
ここで、MOFは
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含み、
ここで、該粒子は
任意には、粒子の外表面上で該粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位、および
少なくとも1つの放射性核種であって、該少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161からなる群から選択される放射性核種
を含み、
ここで、少なくとも1つの放射性核種は、ポアの少なくとも1つの中に位置される。
【0108】
粒子は上記に開示したように定義される。それは微粒子でもナノ粒子であってもよい。好ましくは、粒子はナノ粒子である。
【0109】
組成物は、それが、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と組み合わされた活性剤すなわち粒子を含むため、医薬組成物であると考えられ得、本組成物を治療的使用に特に適したものとすることができる。
【0110】
組成物は、好ましくは本発明の複数の粒子を含む。粒子は、すなわち放射性核種および/または標的部位のタイプおよび数に関して、同じであってもよく異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、放射性核種カチオンで標識された単分散または多分散粒子を含む粒子懸濁液である。
【0111】
組成物は、任意の従来の、薬学的に許容可能な賦形剤および/または担体、例えば溶媒、充填剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、滑沢剤、粘度調整剤、界面活性剤、分散剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁化剤、増粘剤、緩衝剤、pH調整剤、吸収遅延剤、安定化剤、抗酸化剤、保存剤、抗菌剤、抗真菌剤、キレート剤、アジュバント、甘味剤、芳香剤、および着色剤などの1または複数を含み得る。当技術分野で公知の従来の製剤技術、例えば、従来の混合、溶解、懸濁、造粒、ドラジェメーキング、賦形、乳化、カプセル化、封入または圧縮プロセスなどが、組成物を製剤化するために使用され得る。
【0112】
いくつかの実施形態において、組成物は、被験体への特定の投与方法のために製剤化される。
【0113】
組成物中に存在する本発明による粒子の量は変化し得る。いくつかの実施形態において、組成物中に存在する本発明による粒子の量は、0.1~50重量%、例えば1~30重量%、例えば50~20重量%である。他の実施形態において、組成物中に存在する本発明による粒子の量は、30~70重量%、例えば40~60%である。さらに他の実施形態において、組成物中に存在する本発明による粒子の量は50~100重量%、例えば50~70重量%、例えば50~80重量%、例えば60~98重量%、例えば70~95重量%である。
【0114】
組成物はまた、放射性核種カチオンを含まないMOF粒子、例えばMOFを含む粒子などを含んでいてもよく、ここで、MOFは、ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、およびポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基を含み、ここで、官能基は、カルボン酸、カルボキシレート、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホネート、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択され、粒子は、粒子の外表面上で粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位を含む。このような粒子は、放射性核種カチオンの不在を除いて本発明の粒子と同じであってもよいし、異なっていてもよい。放射性核種カチオンを含む粒子と放射性核種カチオンを含まない粒子との間の比率は変化し得る。好ましい実施形態において、粒子の少なくとも90%が放射性核種カチオンを含む。mgの粒子あたりの活性は、典型的には10kBq~570,000MBq、例えば100kBq~570,000MBq、または100kBq~1000MBqの範囲である。これは、ラジウム-223を例として使用した場合、最大5%の質量比(MOFあたりの放射性同位元素の割合)に相当する。
【0115】
さらに、組成物は、汚染物質または不純物を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物中の残留溶媒以外の汚染物質または不純物のレベルは、本発明による粒子および意図される他の成分の合計重量に対して約5%未満である。特定の実施形態において、組成物中の残留溶媒以外の汚染物質または不純物のレベルは、本発明による粒子および意図される他の成分の合計重量に対して約2%または1%以下である。
【0116】
特定の実施形態において、本発明による粒子または組成物は滅菌状態である。滅菌は、熱、化学物質、照射、高圧、濾過、またはそれらの組み合わせを適用することを含むがこれらに限定されない、任意の適切な方法によって達成され得る。
【0117】
本発明の粒子は、組成物中に含まれ得、医薬品として使用され得る。従って、別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための粒子であって、
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク
を含むMOF;
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される遊離官能基;
任意には、粒子の外表面上で該粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;ならびに
少なくとも1つの放射性核種であって、該少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種;
を含み、
ここで、該少なくとも1つの放射性核種は、ポアの少なくとも1つの中に位置する、粒子、
または、前記粒子を少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤および/または賦形剤と共に含む組成物、に関する。
【0118】
本発明の粒子、および前記粒子を含む組成物は、特定の細胞、組織、臓器などのin vivoでの1つまたは複数の特定の部位への放射性崩壊の標的化送達などの治療的に使用することができる。標的部位は、例えばアルファ粒子、ベータ粒子および/またはガンマ粒子の放出などの放射性崩壊が所望される特定の部位に、粒子を標的化し、および、MOFは、上述した有利な特性を有するキレート化剤として機能する。粒子が標的部位を含まない場合、粒子は、ナノ粒子の生体分布特性に応じて、例えば肝臓などの他の臓器に輸送され、そこで放射能が崩壊する。したがって、一実施形態において、粒子は、ナノ粒子が自然に輸送される適応症、特には肝臓癌の治療のために治療的に使用され得る。
【0119】
医薬および/または疾患の治療、特に疾患組織の選択的標的化としての使用に関する、本明細書中に記載される本発明の様々な態様について、疾患組織は、全ての実施形態において、体内の単一の部位に存在し得るか(例えば、限局性の固形腫瘍の場合)、または複数の部位に存在し得る(例えば、分布または転移した癌性疾患の場合)。
【0120】
放射性崩壊の細胞毒性効果により、本発明の粒子および組成物は、増殖性疾患に対して特に有用であり得る。したがって、さらなる態様において、本発明は、増殖性疾患の治療のための方法における使用のための粒子であって
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、ならびに
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される遊離官能基
を含むMOF;
任意には、粒子の外表面上で該粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;ならびに
少なくとも1つの放射性核種であって、該少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種:
を含み、
ここで、該少なくとも1つの放射性核種は、ポアの少なくとも1つの中に位置する、粒子、
または、前記粒子を少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤および/または賦形剤と共に含む組成物、に関する。
【0121】
粒子は本明細書で開示したように定義され、ナノ粒子または微粒子であってもよく、好ましくはナノ粒子である。
【0122】
「治療(treating)」、「処置(treatment)」、および「療法(therapy)」(およびそれらの文法的変形)という用語は、本明細書において互換的に使用され、1)疾患を抑制すること;例えば、疾患の予防(すなわち、予防的治療、病態および/または症状のさらなる進展を阻止すること)を含む、疾患、病状または障害を病理学的または症状的に経験または発現している被験体における疾患、病状または障害を抑制すること、または2)疾患の症状を緩和すること、または3)疾患を改善すること;例えば、疾患、症状または障害を病理学的または症状的に経験または発現している被験体において疾患、症状または障害を改善すること(すなわち、病態および/または症状を逆転させること)。用語は、医薬品、活性医薬品成分(API)、および/または医薬品グレードのサプリメントの使用および/または投与に関連し得る。
【0123】
本明細書で使用される場合、「投与する(administer)」、「投与(administration)」、および「投与する(administering)」という用語は、(1)本開示による製剤、調製物または組成物を、医療従事者またはその認可された代理人のいずれかによって、もしくはその指示の下で、または自己投与によって、提供する、与える、投薬するおよび/または処方すること、ならびに(2)本開示による製剤、調製物または組成物を、被験者自身が投薬する、摂取するまたは消費することを指す。
【0124】
本明細書において、「被験者(subject)」とは、治療又は処置のために選択されたヒト又はヒト以外の動物を意味し、「患者(patient)」を包含し、これに限定される場合もある。いずれの用語も、医療専門家(例えば、医師、看護師、ナースプラクティショナー、医師助手、オーダリー、臨床研究アソシエイトなど)または科学研究者の監督(常時またはその他)を必要とすると解釈されるべきではない。
【0125】
被験者は好ましくはヒト被験体である。被験者は男性であっても女性であってもよい。いくつかの実施形態において、被験者は成人(すなわち、18歳以上)である。特定の実施形態において、被験者は老人である。特定の実施形態において、被験者は老人ではない。被験者は、好ましくは、癌などの増殖性疾患と診断された被験者である。
【0126】
標的とされる疾患組織は、軟組織部位、石灰化組織部位、または、すべてが軟組織である複数の部位、すべてが石灰化組織である複数の部位であり得、または、少なくとも1つの軟組織部位および/または少なくとも1つの石灰化組織部位を含んでいてもよい。一実施形態において、少なくとも1つの軟組織部位が標的化される。標的化される部位と疾患の起源の部位とは、同じであってもよいが、異なっていてもよい。複数の部位が関与している場合、これは、起源の部位を含んでいてもよいし、複数の二次的な部位であってもよい。
【0127】
本明細書において「軟組織(soft tissue)」という用語は、「硬い(hard)」ミネラル化マトリックスを含まない組織を示すために用いられる。特に、本明細書で使用される「軟組織」は、骨格組織ではない任意の組織であり得る。これに対応して、本明細書で使用される「軟組織疾患(soft tissue disease)」は、本明細書で使用される「軟組織」に生じる疾患を示す。本発明は、癌の治療に特に適しており、従って、「軟部組織疾患」は、任意の「軟部」(すなわち、非鉱物化)組織に生じる癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫および混合型癌、ならびにそのような組織の他の非癌性疾患を包含する。がん性の「軟部組織疾患」には、転移性腫瘍や微小転移性腫瘍と同様に、軟部組織に発生する固形腫瘍が含まれる。実際、軟部組織疾患は、同一患者における軟部組織の原発性固形腫瘍と少なくとも1つの軟部組織の転移性腫瘍とからなる場合がある。あるいは、「軟部組織疾患」は、原発腫瘍が骨格疾患である固形腫瘍のみ、または転移腫瘍のみからなる場合もある。
【0128】
本発明の粒子または組成物が、医薬品として、および/または本発明による治療方法において使用される場合、標的部位は、増殖性疾患に罹患した組織、細胞または器官によって発現される、またはその近傍に発現される、抗原のような特定のバイオマーカーに基づいて選択され得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、前記増殖性疾患は、癌、非癌性腫瘍、腫瘍性疾患または過形成性疾患である。
【0130】
いくつかの好ましい実施形態において、前記増殖性疾患は癌である。本明細書で使用される場合、「癌」および「腫瘍」という用語は、初期腫瘍および転移を含む、被験体におけるあらゆる腫瘍性増殖を指す。がんは液状腫瘍または固形腫瘍のタイプであり得る。液状腫瘍には、例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、ワルデンストーム症候群、慢性リンパ性白血病、その他の白血病)、およびリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)を含む血液学的起源の腫瘍が含まれる。固形腫瘍は臓器に発生し得、肺、脳、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓のがんなどがあるが、これらに限定されない。
【0131】
いくつかの実施形態において、癌は、肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌;肝臓癌、神経膠腫、腎臓癌、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、CNS転移、腹膜癌、濾胞性リンパ腫、結腸直腸癌、小細胞肺癌、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌または混合型癌を含むまたはそれらからなるリストから選択される。
【0132】
特定の実施形態において、癌は転移性癌である。転移性癌の治療は、従来の抗癌剤療法を使用することが困難であることはよく知られているが、本発明の標的化MOFビヒクルは、そのような癌に対する治療の有望なラインを示している。
【0133】
粒子の標的部位は、治療される特定の疾患に基づいて選択されるであろう。例えばCD37はB細胞およびB細胞リンパ腫の大部分において高発現され、正常な幹細胞には存在せず、および、形質細胞に分化すると再び消失する。Bリンパ腫の表面上での高い普及率に起因して、CD37は臨床開発でのいくつかの種々の薬剤の標的となっている。従って、このような癌に対しては、抗CD37は有用な標的部位となり得る。
【0134】
非ホジキンリンパ腫はリンパ系を中心に広がるため、従来の治療法(手術、放射線)では治療が困難である。さらに、非ホジキンリンパ腫は他の組織型に転移する可能性があり、これが本発明が非ホジキンリンパ腫に対して特に有効であり得るもう一つの理由である。
【0135】
さらに、本発明は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎および/またはクローン病などの炎症性腸疾患、および/または慢性閉塞性肺疾患などの慢性炎症性疾患に対しても有用であり得る。したがって、さらなる態様において、本発明は、慢性炎症性疾患の治療のための方法における使用のための粒子であって
ポアを形成する、無機モノマーおよび有機モノマーの繰り返し三次元ネットワーク、および
ポア内に延びる少なくとも1つの遊離官能基であって、該官能基は、カルボン酸、カルボン酸塩、ヒドロキシル、スルホン酸、スルホン酸塩、スルフヒドリル、第一級アミン、第二級アミン、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される遊離官能基
を含むMOF;
任意には、前記粒子の外部表面上で前記粒子に連結されている少なくとも1つの標的部位;ならびに
少なくとも1つの放射性核種であって、前記少なくとも1つの放射性核種は、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ビスマス-212、ビスマス-213、鉛-212、アクチニウム-225、トリウム-227、テルビウム-149およびテルビウム-161を含む群より選択される放射性核種;
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの放射性核種は、ポアの少なくとも1つの中に位置する、粒子、
または、前記粒子を少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤および/または賦形剤と共に含む組成物、に関する。
【0136】
これらの実施形態において、被験者は、好ましくは、関節リウマチ、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎および/またはクローン病などの炎症性腸疾患および/または慢性閉塞性肺疾患などの慢性炎症性疾患と診断された被験者である。体内の炎症過程は、傷害の制御および修復において重要な機能を果たしている。一般に称される炎症カスケード、または単に炎症と称される炎症カスケードは、急性および慢性の2つの基本的な形態をとることができる。免疫反応の一部である急性炎症は、身体的外傷、感染、ストレス、またはこれら3つの組み合わせによる傷害や攻撃に対する身体の即時反応である。急性炎症は、さらなる傷害を防ぎ、治癒と回復のプロセスを促進する。
【0137】
炎症が自己増殖的になると、慢性的あるいは長期的な炎症となる。これは慢性炎症と呼ばれ、実際の傷害を越えて、時には数ヶ月から数年間も続く。慢性炎症は、それ自体が問題となることもあり、炎症が介在するさらなる損傷を制御したり、食い止めたりするために、医学的介入が必要となる。免疫系の炎症性成分と抗炎症性成分のバランスが崩れると、慢性炎症性疾患を生じ得る。放射性同位体をロードしたMOFを用いて炎症細胞を死滅させることによる免疫系のバランスの再調整は、慢性炎症を防ぎ得、および患者を治療し得る。
【0138】
本発明による医薬品および/または治療の方法における使用のための粒子または組成物は、治療上有効な用量で被験者に投与される。本明細書で使用される用語「治療上有効な投与量(therapeutically effective dose)」とは、任意の治療に適用され得る妥当な利益/リスク比で、被験体において所望の治療効果をもたらすのに有効な、本発明による粒子の量を意味する。治療上有効な投与量は、投与経路および剤形によって異なり得る。さらに、投与量は、使用される粒子、放射性核種カチオンおよび/またはその娘核種の放射性崩壊のタイプ、症状の段階、被験者の年齢および体重などに依存し得、当技術分野で周知の原理に従って当業者によって日常的に決定され得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、患者投与量当たりに使用される放射性核種カチオンの量は、1kBq~10GBqの範囲内、好ましくは1kBq~100MBqの範囲内、より好ましくは10kBq~25MBqの範囲内、さらに好ましくは10kBq~10MBqの範囲内であり得る。投与量および最大投与量は、適切な投与量および最大投与量に関する一般的な知識に基づいて当業者が決定することができる。娘同位体の毒性副作用の現実的かつ保守的な推定値が採用されなければならないことは、当該技術分野において認められている。
【0140】
いくつかの実施形態において、粒子は、18~4000kBq/kg体重の投与量、例えば18~2000kBq/kg体重の投与量、例えば18~400kBq/kg体重の投与量、好ましくは36~200kBq/kg、例えば50~200kBq/kg、より好ましくは75~170kBq/kg、特には100~130kBq/kgの投与量で投与される。本出願人の研究では、1875kBq/kgまでの用量範囲が試験されている。これに対応して、単一の投与単位は、例えば30~150Kg、好ましくは40~100Kgなどの適切な体重を乗じたこれらの範囲のいずれかのあたり(例えば、1投与あたり540kBq~4000KBqの範囲など)を含み得る。投与量、粒子および投与経路は、in vivoで生成される子孫核種の投与量が300kBq/kg未満、例えば200kBq/kg未満、好ましくは150kBq/kg未満、例えば100kBq/kg未満などになるようなものであってもよい。
【0141】
本発明による粒子または組成物の治療有効量は、単回投与または分割投与で投与することができる。本発明による粒子または組成物は、1日に1回、2回もしくはそれ以上、2日に1回、3日に1回、週に2回もしくは週に1回、または医療専門家によって適切とみなされるように投与され得る。特定の実施形態において、本発明による粒子または組成物は、1日1回投与される。他の実施形態において、本発明による粒子または組成物は、1日2回投与される。いくつかの実施形態において、投与レジメンは予め決定され、患者群全体について同じである。他の実施形態において、本発明による粒子または組成物による治療の投与量および投与頻度は、疾患の段階、症状の重篤度、投与経路、被験体の年齢、体重、一般的健康状態、性別および/または食事、および/または治療に対する被験体の応答を含むがこれらに限定されない因子に基づいて、医療専門家によって決定される。
【0142】
いくつかの実施形態において、治療上有効な用量は、一定の間隔で投与される。他の実施形態において、用量は、必要なときにまたは散発的に投与される。本発明による粒子または組成物は、医療専門家によって投与され得る。本発明による粒子または組成物は、製剤および投与経路などの因子に応じて、食物とともに投与されてもよいし、食物なしで投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明による粒子または組成物は、1日の特定の時間に投与される。
【0143】
本発明による医薬品としてのおよび/または治療の方法における使用のための粒子または組成物は、局所的または全身的に投与することができる。本発明による粒子または組成物は、肺投与、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、舌下投与、皮下投与、肝内投与、頬側投与、直腸投与、膣内投与、後頭部投与、鼻腔内投与、経皮投与および皮内投与を含むがこれらに限定されない任意の投与経路によって投与され得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、粒子または組成物は経口投与される。いくつかの実施形態において、粒子または組成物は、食事と共にまたは食前に投与される。いくつかの実施形態において、本発明による粒子または組成物は静脈内投与される。これらの実施形態において、水は特に有用な賦形剤である。生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロールの水溶液もまた、特に注射液のための液体賦形剤として採用され得る。
【0145】
好ましい用量処方は、本発明による粒子の、本明細書で前述した治療上有効な用量またはその適切な画分を含むものである。本発明の組成物は、全ての活性成分および不活性成分が適切な系に組み合わされ、および投与前に混合される必要がない、単回投与として単位投与形態で提示され得る。代替的には、組成物は、上記に開示したようなキットとして提示されてもよく、および、組成物の保存、調製、投与および/または使用のための説明書を含んでもよい。
【0146】
いくつかの実施形態において、本発明による医薬品としてのおよび/または治療の方法における使用のための粒子または組成物の使用期間は、例えば標的抗原発現の減少および/または量など、観察された治療効果によって決定される。いくつかの実施形態において、治療は、さらなる改善が期待できなくなるまで持続される。特定の実施形態において、本発明による粒子または組成物による処置の持続期間は、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、例えば3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、3年、5年である。他の実施形態において、期間は、症状の性質および重症度、投与経路、被験者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および/または食事、および/または治療に対する被験者の応答を含むがこれらに限定されない因子に基づいて、医療専門家によって決定される。
【0147】
特定の実施形態において、本発明による粒子または組成物は単独で投与される。他の実施形態において、本発明による粒子または組成物は、1またはそれ以上の他の治療剤と組み合わせて投与される。前記1またはそれ以上の他の治療剤は、例えば癌などの増殖性疾患に対する効果を有することが知られていてもよく、および/または本発明の粒子または組成物とともに、例えば癌などの前記増殖性疾患の治療に対して相加的または相乗的な作用機序を有していてもよい。いくつかの実施形態において、本発明による粒子または組成物は、併用療法の一部として投与される。本発明による粒子または組成物を含む併用療法は、本発明による粒子または組成物を1またはそれ以上の治療剤と組み合わせて含む組成物、および/または、本発明による粒子または組成物と1またはそれ以上の治療剤との共投与であって、本発明による粒子または組成物と他の治療剤または薬剤とが同じ組成物中に処方されていない組成物を指すことがある。別個の製剤を使用する場合、本発明による粒子または組成物は、別の治療剤の投与と同時に、断続的に、時間をずらして、前に、後に、またはこれらの組み合わせで投与することができる。
【0148】
ある態様、例えば粒子または組成物に向けられた態様の文脈で記載された実施形態および特徴は、本発明の他の態様、例えば医薬品としてのまたは治療の方法におけるそれらの使用などにも適用される。
【0149】
さらなる態様において、本発明は治療の方法を提供し、該方法は、有効量の本発明の粒子または組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する。
【0150】
さらなる態様において、本発明は、増殖性疾患の治療の方法を提供し、該方法は、有効量の本発明の粒子または組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する。
【0151】
さらなる態様において、本発明は、慢性炎症性疾患の治療の方法を提供し、該方法は、本発明の粒子または組成物の有効量を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する。
【0152】
さらなる態様において、本発明は、医薬品としての本発明の粒子または組成物の使用を提供する。
【0153】
さらなる態様において、本発明は、増殖性疾患の治療のための本発明の粒子または組成物の使用を提供する。
【0154】
さらなる態様において、本発明は、慢性炎症性疾患の治療のための本発明の粒子または組成物の使用を提供する。
【0155】
本発明は、図示した実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の様々な実施形態が本明細書に記載されているが、そのような実施形態はt例示としてのみ提供されていることは当業者には明らかであろう。本明細書に記載された実施形態に対する多数の修正および変更、ならびに変形および置換は、本開示から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本明細書に記載される実施形態に対する様々な代替が、本開示を実施する際に採用され得ることを理解されたい。
【0156】
本開示のすべての実施形態は、本明細書に記載の他の実施形態のいずれか1つ以上と任意に組み合わせることができることを理解されたい。
【0157】
本明細書に開示される各成分、化合物、粒子、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示される他の各成分、化合物、またはパラメータの1つ以上と組み合わせて使用するために開示されていると解釈されることを理解されたい。さらに、本明細書に開示される各成分、化合物、またはパラメータの各量/値または量/値の範囲は、他の任意の成分について開示されている各量/値または量/値の範囲と組み合わせにおいて開示されていると解釈されることが理解され、および、本明細書に開示される2またはそれ以上の成分、化合物、またはパラメータに関する量/値または量/値の範囲の任意の組み合わせも、したがって、本明細書の目的上、互いに組み合わされて開示されているものと解釈される。本明細書に記載される任意のおよび全ての特徴、およびそのような特徴の組み合わせは、特徴が相互に矛盾しないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。
【0158】
本明細書に開示されている各範囲の各下限値は、同一の成分、化合物、またはパラメータについて、本明細書に開示されている各範囲の各上限値と組み合わされて開示されていると解釈されることを理解されたい。したがって、2つの範囲の開示は、各範囲の各下限値を各範囲の各上限値と組み合わせることによって導かれる4つの範囲の開示と解釈される。3つの範囲の開示は、各範囲の各下限値を各範囲の各上限値と組み合わすことによって導かれる9つの範囲の開示と解釈される。さらに、本明細書または実施例に開示されている成分、化合物、またはパラメータの特定の量/値は、範囲の下限値または上限値のいずれかの開示と解釈されるため、その成分、化合物、またはパラメータの範囲を形成するために、本願の他の箇所に開示されている同じ成分、化合物、またはパラメータの他の下限値もしくは上限値、または範囲または特定の量/値と組み合わせられ得る。
【実施例
【0159】
実施例1:抗CD37 IgGのUIO-66-(COOH)2への共役
UIO-66-(COOH)2MOFは、Zhiijie ChenらのCrystEngComm 2019, 14, 2409-2415の方法に基づく方法により調製したが、MOFの前駆体としてオキシ硝酸塩ではなくオキシ塩化物塩を使用した。UIO-66-(COOH)2抗体共役は、ビシンチョニン酸アッセイ(BCA)により、UIO-66-(COOH)2抗体共役化粒子を分析することにより評価された。BCAタンパク質アッセイは、アルカリ性媒体中のタンパク質によるCu2+のCu1+へのよく知られた還元を、ビシンチコニン酸(BCA)による銅カチオン(Cu1+)の高感度かつ選択的な比色検出と組み合わせたものである。第一段階は、薄い青色の錯体を形成する、アルカリ性環境下での銅のタンパク質とのキレート化反応である。ビウレット反応として知られるこの反応では、3つまたはそれ以上のアミノ酸残基を含むペプチドが、酒石酸ナトリウムカリウムを含むアルカリ性環境下で、銅イオンと着色されたキレート錯体を形成する。
【0160】
発色反応の第二段階において、BCAは第一段階で形成された還元型カチオン(第一銅イオン)と反応する。濃い紫色の反応生成物が、2分子のBCAの1つの第一銅イオンとのキレート化によってもたらされる。
【0161】
手順:
5mgのUIO-66-(COOH)2が0.05Mの2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)バッファー、pH6.3に溶解され、1.2mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および1.2mgのN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム(スルホ-NHS)で15分間処理され、その後、粒子は0.05MのMESバッファー(pH6.3)で2回洗浄された。その後、粒子は100μgの抗CD37 IgGを含む0.05M MESバッファー(pH6.3)に再懸濁された。反応混合物は3時間、連続的ロッキングしながらインキュベートされた。MOF-抗体粒子は、0.05MのMESバッファー(pH6.3)で洗浄され、そして100mM Trisバッファー中に再懸濁された後、0.05MのMESバッファー(pH6.3)で粒子を洗浄および保存した。
【0162】
抗体(IgG)共役化UIO-66-(COOH)2およびアルブミン標準物質を、図12に示されるBCAアッセイにより評価した。アルブミンのトレンドライン式が、1mL当たりのUIO-66-(COOH)2-IgG粒子のタンパク質濃度を算出するために使用された:吸光度-ブランク:0.096、77μg/mL(抗体インプット量の77%)に相当。
【0163】
実施例2:ヒト血清中におけるMOFの構造安定性およびバリウム保持能
この実験においては、バリウム(II)がラジウム(II)の模倣物質として用いられた。Ba(II)およびRa(II)は、類似のイオン半径をもち(Ra2+は162(8)pm、Ba2+は149pm)および軌道構造が似ており(どちらもアルカリ土類金属グループのメンバーであり、および、隣接する周期に希ガスの電子配置をもつ)、ならびに化学系および生物系で同様の挙動を示すと予想される。
【0164】
手順:
200mgのUIO-66-(COOH)2が0.05MのMESバッファー(pH6.3)で1回洗浄され、そして40mLの酢酸バリウム(II)水溶液(14.7μgBa/mL)中に懸濁された。懸濁液は室温で60分間撹拌された。MOFが回収され、5mLの0.05mol/L MESバッファー(pH6.3)を用いて1回洗浄した後、ヒト血清中に懸濁された。MOF/血清懸濁液は室温で11日間撹拌が続けられた。サンプルが、15分後、さらに1、2、4、7日後に採取された。元素分析が、HNO3(65%)aq.とH22(33%)aq.の1:1容積混合液を用いた70℃で1時間の血清試料の消化の後、MP-AES法を用いて行われた。
【0165】
元素分析は、MOFが溶液中のBa2+の97.2%を吸着したことを示しており、MOF中のBa2+濃度は2.87μg/mg(0.287%wt.)であった。15分後、さらに1日後、2日後、4日後、7日後に採取した血清サンプルの分析は、それぞれ6.6%、8.4%、9.4%、8.3%、5.5%の血清中へのBa2+の総漏出量を示していた。これは、最初の漏出後、MOFがすべてのBa2+を含んでいることを示している。
【0166】
MOFは11日後に血清から分離され、そして粉末X線回折およびエネルギー分散型X線分光法によって分析された。受容した際および11日間の安定性試験後のUIO-66-(COOH)2の粉末X線回折パターンは、MOFの結晶構造が依然として損なわれていないことを明確に示している。EDSは、MOF中のBa/Zrの質量比が1.10%であり、MOF中のZrの理論質量割合(Zr6O4(OH)4(COO)12(C8H4O4)6の式から25.1%)1.14%と比較して、実験の誤差の範囲内で、MP-AESによって測定された値(0.287%wt.)とほぼ一致していることを示している。
【0167】
【表1】
【0168】
したがって、この実験は、MOF粒子自体がヒト血清中で少なくとも11日間安定であり、および、MOF粒子中のバリウムカチオンのキレート化が少なくとも11日間安定であることを示している。なお、この実験はまた、MOFの、Ba2+を漏出させることなくかなりの量のCa2+、K+、Na+を吸着する能力も示している。
【0169】
実施例3:ヒト血清中におけるMOFの構造安定性およびバリウム保持能
この実施例は、異なるBa2+供給源および2つの異なる濃度を用いて、実施例2の結果を裏付けるものである。
【0170】
手順:
120mgのUIO-66-(COOH)2の2つの別個のポーションが、5mLの0.05mol/LのMESバッファー(pH6.3)で3回洗浄され、次に2つの別々の5mLの硝酸バリウム(II)水溶液(それぞれ1.165mg/mL Ba、0.109mg/mL Ba)中に懸濁された。懸濁液は室温で90分間撹拌された。MOFが回収され、5mLの0.05mol/L MESバッファー(pH6.3)を用いて1回洗浄した後、ヒト血清中に懸濁された。24時間後および48時間後にサンプルが採取された。MOF/血清懸濁液は室温で2日間撹拌が続けられた。サンプルが、24時間後および48時間後に採取された。元素分析が、HNO3(65%)aq.とH22(33%)aq.の1:1容積混合液を用いた70℃で1時間の血清試料の消化の後、MP-AES法を用いて行われた。
【0171】
1.165mg/mLのBa溶液から:元素分析は、MOFが溶液中のBa2+の98.8%を吸着したことを示しており、MOF中のBa2+濃度は48.0μg/mg(4.8%wt.)であった。24時間後および48時間後に採取された血清サンプルの分析は、それぞれ8.8%および9.2%の血清中へのBa2+の総漏出量を示していた。これは、24時間と48時間との間にはほとんど無視できるBa2+の漏出しかなかったことを示している。EDSは、MOF中のBa/Zrの質量比が19.4%であり、MOF中のZrの理論質量割合(Zr6O4(OH)4(COO)12(C8H4O4)6の式から25.1%)19.1%と比較して、実験の誤差の範囲内で、MP-AESによって測定された値(4.8%wt.)とほぼ一致していることを示している。
【0172】
0.109mg/mLのBa溶液から:元素分析は、MOFが溶液中のBa2+の92.0%を吸着したことを示しており、MOF中のBa2+濃度は4.19μg/mg(0.42%wt.)であった。24時間後および48時間後に採取された血清サンプルの分析は、それぞれ6.4%および6.0%の血清中へのBa2+の総漏出量を示していた。これは、24時間と48時間との間にはBa2+の漏出がなかったことを示している。EDSは、MOF中のBa/Zrの質量比が1.43%であり、MOF中のZrの理論質量割合(Zr6O4(OH)4(COO)12(C8H4O4)6の式から25.1%)1.67%と比較して、実験の誤差の範囲内で、MP-AESによって測定された値(0.42%wt.)とほぼ一致していることを示している
【0173】
【表2】
【0174】
実施例4:MOF-IgG細胞相互作用
この実施例は、抗CD37共役MOF(NP1)がCD37陽性細胞(Daudi細胞)と結合することを示している。Daudi細胞株は、バーキットリンパ腫患者の末梢血から単離されたBリンパ芽細胞からなり、抗CD37共役MOFが血液由来のがん細胞を同定できることを示している。
【0175】
手順:
66000個のDaudi細胞が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、アイソタイプコントロール、UIO-66-(COOH)2抗CD37安定性試験サンプル(20℃で6ヶ月間インキュベートされた)、またはUIO-66-(COOH)2抗CD37の新鮮な共役サンプルを含むフローチューブに移された。サンプルは、30分間継続的に混合しながらインキュベートされ、その後、PBS中に10%ウシ胎児血清(FBS)400μLが添加され、そして350gで8分間遠心分離された。上清は廃棄され、その後、PBSサンプルに100μLの抗CD37-PE(10μLの抗CD37-PEを90μLのPBSと混合)が添加され、または、アイソタイプコントロールおよびUIO-66-(COOH)2aCD37サンプルに100μLの抗マウス-PE(10μLの抗マウス-PEを90μLのPBSと混合)が添加された。サンプルは、30分間継続的に混合しながらインキュベートされ、その後、10%FBSのPBS400μLが添加され、そして350gで8分間遠心分離された。上清は廃棄され、その後、10%FBSのPBS400μLが添加され、そしてフローサイトメトリー分析が行われた。
【0176】
この実験で使用された安定性コントロール試料は、UIO-66-(COOH)2抗CD37を20度で6ヶ月間保存することにより調製された。
【0177】
図13は、抗CD37共役MOF(NP1)が、CD37陽性細胞と結合すること、および室温で少なくとも6ヵ月間安定であることを示している結果を提供している。
【0178】
実施例5:MOF-抗EpCAMおよびMOF-抗HER2の結腸直腸細胞株に対する細胞結合
この実施例は、抗EpCAMまたは抗HER共役UIO-66-(COOH)2が、両抗原を発現している大腸癌細胞(HTC116およびHT29)と結合することを示している。HTC116細胞は、成人男性の大腸癌患者の大腸に由来する。および、HT29細胞株は、大腸腺癌の女性患者の原発腫瘍由来である。したがって、抗EpCAMおよび抗HER抗体(IgG)の両方に共役されたUIO-66-(COOH)2が、大腸由来のがん細胞を同定できることを示している。
【0179】
手順:
細胞が96ウェルプレートに1ウェル当たり50000個で播種され、および、10%ウシ胎児血清(FBS)Roswell Park Memorial Institute(RPMI)細胞培養完全培地中で一晩培養された。翌日、各ウェルから培地が廃棄され、その後、2μgの抗EpCAM、2μgのアイソタイプコントロール、またはあらかじめ温めておいた細胞培養液で希釈された15μLのUIO-66-(COOH)2(NP1)を、1ウェル当たり総計で200μLとなるまで添加した。サンプルは37℃で30分間インキュベートされ、その後、培地は廃棄され、および200μLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)が静かに2回添加された。サンプル当たり100μLのPBSおよび100μLの抗ヒトIgG-HRP溶液(2.5μL抗ヒトIgG-HRP溶液/mL)が添加され、そして室温で30分間インキュベートされた。二次染色後、細胞はPBSで2回穏やかに洗浄され、その後、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)HRP(ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ)基質溶液100μLが各ウェルに添加され、15分間インキュベートされた。450nmでの各ウェルの吸光度の測定の前に、反応を停止させるために1ウェル当たり100μLの停止溶液が添加された。吸光度は「HRPシグナル」としてグラフに表示されている。
【0180】
図14は、抗EpCAMおよび抗HER2 UIO-66-(COOH)2が、大腸がん細胞(HTC116およびHT29)を結合することを示している。
【0181】
実施例6:MOF-抗HER2 乳がん細胞相互作用
この実験は、抗HER2共役UIO-66-(COOH)2がHER2陽性の癌細胞(JIMT1細胞)を結合することを示している。JIMT1細胞は、乳管腺癌の女性患者に由来する上皮細胞である。したがって、JIMT1細胞との相互作用は、抗HER2共役UIO-66-(COOH)2が乳房由来の癌細胞をどのように同定できるかを示している。
【0182】
手順:大腸がん細胞の相互作用と同じ手順が、JIMT1細胞の相互作用に用いられた、実施例5を参照のこと(図14)。
【0183】
図15は、抗HER2共役UIO-66-(COOH)2が、乳がん細胞JIMT1細胞に結合することを示している。
【0184】
実施例7:ヒト血清中におけるMOFのラジウム-223(Ra223)吸着および保持能力
この実施例では、適切な環境(血清)における吸着および保持を示すために、UIO-66-(COOH)2はRa223でロードされた。UIO-66-(COOH)2は、Ra223を吸着したが、Ra223源としてXofigoが使用されたため、Na+の存在がおそらく吸着効率に影響したと考えられた。UIO-66-(COOH)2濃度を増大させることは、吸着効率を向上させ(59%から97%へ)、および、純粋なRa223を用いることもまた低いUIO-66-(COOH)2濃度を用いる場合に吸着をおそらく向上させるであろう。Ra223がロードされたUIO-66-(COOH)2の血清チャレンジは、5日という期間のあいだ94%の保持能力を示した。
【0185】
手順:
0.0085mg(低)、0.085mg(中)、および0.85mg(高)の、抗HER2抗体およびポリエチレングリコール(PEG)と共役されたUIO-66-(COOH)2が、10kBqのRa223と混合され、そして室温で60分間撹拌された。MOFが回収され、蒸留水で2回洗浄され、その後、Hidex装置で全ガンマ線放出活性が測定された(A)。上清が廃棄された後、残りの0.85mg(高)のUIO-66-(COOH)2のペレットがウシ胎児血清(FBS)中に懸濁された。MOF/血清懸濁液が、室温で5日間保存され、1日目の遠心分離後の総計の上澄み液が分析され、FBS中にペレットを再び充填し、そして遠心分離後5日目に上澄み液をサンプリングした(B)。
【0186】
結果:Hidex分析は、UIO-66-(COOH)2が、溶液中のRa223の59~97%を吸着したことを示した、図16A)を参照のこと。そしてさらに、最高用量のUIO-66-(COOH)2は、5日間の血清チャレンジの後、Ra223の94%を保持ししていた、図16B)を参照のこと。
【0187】
実施例8:健常マウスにおける、ラジウム-223(Ra223)がロードされたUIO-66-(COOH)2の生体分布
この実施例は、Ra223がin vivoでMOFプロトタイプによってどのように封じ込められるのかを示すものであり、Ra223(Xofigo)と比較して異なる生体分布を示した。実施例7で述べたように、Xofigo中のNa+の存在は、ラジウムがロードされたUIO-66-(COOH)2(NP1)のin vivo保持におそらく劇的に影響し、その結果、ラジウムの骨への移動をもたらした。
【0188】
手順:
10kBqのRa223/0.085mgMOFが24時間インキュベートされ、その後、洗浄され(遠心分離および蒸留水を加える前に上清を廃棄する)、そして健常マウスへの注射のために生理学的な塩の水中に懸濁された(kgマウス当たり475kBq)。対照マウスには、kg当たり475kBqのXofigoを同時に注射した。マウスは注射18時間後に犠牲死され、その後、肝臓、腎臓、脾臓、頭蓋骨、大腿骨、皮膚、血液、小腸、大腸、胃、肺、心臓、脳およびリンパ節を採取した。
【0189】
大部分の主要臓器(図17に示されている)が、HIDEXを用いたガンマ線放出分析によって分析された、図17を参照のこと。Ra223がロードされたナノ粒子は、骨組織への蓄積からRa223を保護している。
【0190】
実施例9:Ra223でロードされたUIO-66-(COOH)2のin vivoでの安全耐性
最大耐容量(MTD)実験が、生体分布および治療実験に使用されたおよび使用されるであろう最大耐容量を決定するために行われた。体重減少および赤い斑点が、kg当たり937kBqまたは1875kBqで注射されたマウスの一部で観察され、そして犠牲死された。体重減少は、副作用の客観的な測定値であり、および、体重減少がないことはマウスが健康であることを意味する。したがって、これらの条件下では、MTDはkg当たり475kBqであった。
【0191】
手順:
我々は、MTDを、マウスが重篤すぎる副作用を起こすことなく依然として生存する最大耐容量として定義した。55kBq/kgから開始され、1870kBq/kgまで容量を2倍にした6つの容量レベルが、プロトタイプ(UIO-66-(COOH)2抗HER2、UIO-66-(COOH)2抗EpCAMまたはUIO-66-(COOH)2PEG)ごとにそれぞれの用量レベルにおいて2匹のマウスを用いて使用された。
【0192】
図18を参考すると、937kBqまたは1875kBqのラジウムがロードされたナノ粒子で注射されたマウスは、顕著な量の体重を失い、そして犠牲死された。従って、MTDは475kBqに設定されたが、これは他の研究において純粋なラジウムで観察されたものと比較してより低い。これは(生体分布実験で観察されたように)、より多くのラジウムが、より頻繁に分泌される純ラジウムに比べて、体内を循環していることを示唆している。空のUIO-66-(COOH)2PEG(10mg/kg)の高用量の注射は、症状または体重損失をもたらさなかった。
【0193】
実施例10:PEGと共役されたUIO-66-(COOH)2(NPs)の生存率試験は、in vitRoで毒性がないことを示した
細胞生存率を分析する前に、HT29およびHCT116を2日間にわたって増加されるNPの投与量に暴露させることは、NPがこれらの条件下では細胞死を誘導しないことを示している。
【0194】
手順:
HT29またはHCT116が、ウェル当たり0.001~500μgのUIO-66-(COOH)2(NPs)に曝露され、そして、加湿インキュベーター内で37℃、5%CO2で24時間および48時間培養され、その後、上清が廃棄され、そして100μLの新鮮な細胞培養培地(10%ウシ胎児血清(FBS)Roswell Park Memorial Institute(RPMI))および20μLの、テトラゾリウム化合物[3-(4、5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、分子内塩;MTS]を含むCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Reagent(Promega)、および電子カップリング試薬(フェナジンエトサルフェート;PES)が添加された。各プレートは、加湿インキュベーター内で37℃、5%CO2で1.5時間インキュベートされ、その後、プレートリーダーで490nmでの吸光度が測定された。
【0195】
図19AおよびB)を参照して、吸光度は全ての条件で変化しなかった、したがって、ウェル当たりの細胞含有量は48時間という期間にわたって変化しなかったことを示唆している。
【0196】
実施例11:計画された実験:抗体ありおよびなしでのNPsの腫瘍標的を調べるための、抗HER2抗体、抗EpCAM抗体およびポリエチレングリコール(PEG)に共役されたUIO-66-(COOH)2(NPs)の生体分布
【0197】
手順:
EpCAMまたはHER2を標的とするUIO-66-(COOH)2の生体分布が、HER2+乳癌およびEpCAM大腸癌を示している腫瘍モデルを用いて、それらの腫瘍への局在能力とともに調べられる。ナノ粒子(NPs)の特異性を調べるため、放射能に加えて、粒子に結合された抗体を有するおよび有さないNPが使用される。薬剤の経時的な生体内分布、および、腫瘍を考慮するとその生体分布がそのように特異的であるかを調べるために、処置後0日目~30日目までにマウスは犠牲死される。各薬剤を用いた各タイムポイントでマウスは犠牲死される。EpCAMを標的とする2つの薬剤のため、これは、2つまたはそれ以上のモデル(例えばHCT116およびHT29など)において、例えば肝臓および腹腔内で増殖している腫瘍を用いて調べられる。腹腔内で増殖している腫瘍については、物質は、どの注射形態が腹腔内で増殖する腫瘍に関して最良の生体分布を有するかを調べるために、静脈内注射(iv)または腹腔内注射(ip)のいずれかで注射される。2つのHER2標的薬剤が、乳癌、肝腫瘍および腹膜腫瘍をもたらす例えばSKBR3(細胞株)およびBBRC160(PDX)などの少なくとも2つのモデルで調べられる。
【0198】
実施例12:計画された実験:抗体ありおよびなしでのNPsの殺腫瘍性を調べるための、抗HER2抗体、抗EpCAM抗体およびポリエチレングリコール(PEG)に共役されたUIO-66-(COOH)2(NPs)の効能研究
【0199】
手順:
UIO-66-(COOH)2の腫瘍増殖を抑制するための能力が、HER2+乳がん(SKBR3およびBB6RC160)ならびに3つのEpCAM+大腸がん(HCT116、HT29およびSW620)を示している2つの腫瘍モデルで試験される。大腸癌は肝臓および腹膜腔に頻繁に転移するため、患者における腫瘍とより類似した微小環境を有するこれらのセッティングでUIO-66-(COOH)2の効率を調べることは適切である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図19A
図19B
【国際調査報告】