(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】液滴吐出ヘッドのためのノズルプレート、液滴吐出装置、及びそれを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240628BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20240628BHJP
B41J 2/155 20060101ALI20240628BHJP
B05B 1/02 20060101ALI20240628BHJP
B05B 1/14 20060101ALI20240628BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240628BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20240628BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240628BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240628BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/16 401
B41J2/155
B05B1/02 102
B05B1/14 Z
B05C5/00 101
B05C13/02
B05D1/26 Z
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569624
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 GB2022051598
(87)【国際公開番号】W WO2022269258
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521442590
【氏名又は名称】ザール テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】クバン ルーカス
【テーマコード(参考)】
2C057
4D075
4F033
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C057AF21
2C057AG03
2C057AG09
2C057AJ01
2C057AJ10
4D075AC06
4D075AC07
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC88
4D075AC93
4D075DA04
4D075DA06
4D075DB14
4D075DB18
4D075DB20
4D075EA33
4F033AA01
4F033BA03
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4F033DA05
4F033EA01
4F033LA13
4F033NA01
4F041AA01
4F041AA02
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA13
4F041BA34
4F042AA01
4F042AA02
4F042AA12
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA08
4F042CB04
4F042CB18
4F042DF19
4F042DF28
4F042DF32
(57)【要約】
液滴吐出デバイスのためのノズルプレートであって、第1の媒体に面する表面、及びそれに対向する第2の裏表面と、少なくとも1つのノズルと、を備え、当該少なくとも1つのノズルが、第2の表面から第1の表面までノズルプレートを通過し、当該少なくとも1つのノズルが、出口穴中心線を有する出口穴を備え、出口穴中心線が、第1の表面に対して斜めの傾斜角θで傾斜しており、かつ使用時に、1つ以上の液滴が、第1の表面に対して鋭い傾斜角θでノズルから吐出されるように適合されている、ノズルプレート。ノズルプレートを備える液滴吐出デバイス。少なくとも1つの液滴吐出デバイスと堆積媒体移動装置とを備える液滴吐出装置及び液滴吐出装置を動作させる方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出デバイスのためのノズルプレートであって、
第1の媒体に面する表面、及び前記第1の媒体に面する表面に対向する第2の裏表面と、
少なくとも1つのノズルと、を備え、
前記少なくとも1つのノズルが、前記第2の表面から前記第1の表面まで前記ノズルプレートを通過し、
前記少なくとも1つのノズルが、出口穴中心線を有する出口穴を備え、前記出口穴中心線が、前記第1の表面に対して斜めの傾斜角θで傾斜しており、かつ使用時に、1つ以上の液滴が前記第1の表面に対して鋭い傾斜角θで前記ノズルから吐出されるように適合されている、ノズルプレート。
【請求項2】
前記ノズルプレートが、前縁及び後縁を有し、前記出口穴中心線が、前記後縁に向かう方向に傾斜している、請求項1に記載のノズルプレート。
【請求項3】
前記傾斜角θが、74°~68°である、請求項1又は2に記載のノズルプレート。
【請求項4】
前記傾斜角θが、72°~70°である、請求項3に記載のノズルプレート。
【請求項5】
前記出口穴中心線に沿った前記出口穴の少なくとも一部分が、円形断面を有する、先行請求項のいずれか一項に記載のノズルプレート。
【請求項6】
前記ノズルプレートが、複数の前記ノズルを備える、先行請求項のいずれか一項に記載のノズルプレート。
【請求項7】
前記複数の前記ノズルの前記出口穴中心線が、互いに平行である、請求項6に記載のノズルプレート。
【請求項8】
前記複数の前記ノズルの出口穴が、互いに実質的に同一である、請求項6又は7に記載のノズルプレート。
【請求項9】
前記ノズルプレートが、1つ以上のノズルのアレイを備える、先行請求項のいずれか一項に記載のノズルプレート。
【請求項10】
先行請求項のいずれか一項に記載のノズルプレートを備える液滴吐出デバイス。
【請求項11】
後縁を備え、液滴吐出ヘッドの前記後縁が、前記ノズルプレートの前記後縁に平行である、請求項10に記載の液滴吐出デバイス。
【請求項12】
前記液滴吐出デバイスが、少なくとも1つのノズルに隣接して位置し、かつ流体接続されており、使用時に、前記少なくとも1つのノズルを通して吐出される流体を供給するように適合されている少なくとも1つの流体チャンバを備える、請求項10又は11に記載の液滴吐出デバイス。
【請求項13】
請求項6~9のいずれか一項に従属する場合、前記複数のノズルの各々が、それぞれの流体チャンバに流体接続されている、請求項10又は11に記載の液滴吐出デバイス。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの液滴吐出デバイスと堆積媒体移動装置とを備える液滴吐出装置。
【請求項15】
前記堆積媒体移動装置は、動作時に、前記堆積媒体の少なくとも一部分が、前記堆積媒体移動装置によって移動される間に第1の表面に平行に位置決めされるように配置されている、請求項14に記載の液滴吐出装置。
【請求項16】
前記液滴吐出装置が、シングルパスプリンタとして配置されている、請求項14又は15に記載の液滴吐出装置。
【請求項17】
第1の表面に対して鋭い傾斜角θで少なくとも1つのノズルから液滴を吐出することを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の液滴吐出装置を動作させる方法。
【請求項18】
前記傾斜角θが74°~68°である、請求項17に記載の液滴吐出装置を動作させる方法。
【請求項19】
前記装置が、y方向の幅を有し、液滴が、前記y方向に延在する複数のノズルから吐出され、前記y方向における前記堆積媒体上の吐出された前記液滴の着地位置の標準偏差が、8.3未満である、請求項17又は18に記載の液滴吐出装置を動作させる方法。
【請求項20】
前記液滴吐出装置が、シングルパスプリントモードで動作する、請求項17~19のいずれか一項に記載の液滴吐出装置を動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出デバイスのためのノズルプレート、液滴吐出デバイス、及び液滴吐出デバイスを備える液滴吐出装置に関し、液滴吐出装置を動作させる方法に更に関する。ノズルプレートは、高解像度の画像を、テクスチャ加工された表面又は柔軟な表面上に高速でプリントする必要がある用途で特に有利に使用され得る。ノズルプレートは、ドロップオンデマンド型インクジェットプリントヘッドに特に好適であり得る。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出ヘッドは、インクジェットプリントなどのより従来型の用途、若しくは3Dプリント、及び他の敏速なプロトタイピング技術であるかを問わず、現在広く使用されている。産業用途、例えば、セラミックタイル又はテキスタイルなどの基材上、又は瓶上又は他の3D物体などに直接プリントするために、使用可能である液滴吐出ヘッドが開発されてきた。液滴吐出ヘッドを使用する、このような産業プリント技術により、短い生産工程、製品のカスタマイズ生産、更には特注設計のプリントさえも可能である。
【0003】
したがって、液滴吐出ヘッドは、新しい、及び/又はますます困難な用途に適するように、進化及び特殊化し続けている。しかしながら、液滴吐出ヘッドの分野において数々の開発が行われてきたものの、改善の余地は依然存在する。
【0004】
近年、プリントヘッドと堆積媒体との間のより高い相対的動きを伴う高速プリントへの関心が高まっているが、そうすることで、「木目調」と称される一般的な問題につながる可能性がある。この問題を説明するために、最初に、
図1Aの試験装置などの公知の試験装置を参照すると、搬送機構5によって移動可能な堆積媒体3の上方に取り付けられた液滴吐出ヘッド2などの液滴吐出デバイスを備える液滴吐出装置1を通る概略断面図が示されている。液滴吐出ヘッド2は、コントローラ4によって送信される信号に応答して、液滴を堆積媒体3上に吐出するためのノズル11を有するノズルプレート6を備える。ノズルプレート6は、堆積媒体3に対向している媒体に面する表面18を有し、吐出された流体の液滴は、媒体に面する表面18におけるそれぞれのノズル出口を通してノズル11を出る。液滴吐出ヘッド2は、堆積媒体3と液滴吐出ヘッド2との間にギャップGがあるように取り付けられる。ノズルプレート6は、
図1Bの概略断面により詳細に示されており、ノズル11はノズル入口15とノズル出口14とを有し、ノズル11は媒体に面する表面18に対して垂直であることが分かる。
【0005】
いくつかの状況によっては、高いプリント速度で液滴吐出ヘッド2内のノズルプレート6を使用して試験装置1を動作させるときに、「木目調」現象が経験されることがある。本明細書で使用される場合、「木目調」現象は、液滴吐出ヘッド2と堆積媒体3との間の相対的な動きに起因して、液滴吐出ヘッド2のノズルプレート6とプリントされる堆積媒体3との間のギャップG内に、誘発されるか、又は強制空気流121の結果であると考えられる望ましくないプリントのアーティファクトである。液滴吐出ヘッドと堆積媒体との間の高速運動に起因する強制空気流121は、液滴がノズル11を離れる際の液滴の移動の初期方向ti(
図1A及び
図1Bの矢印で示す通り)が堆積媒体に向かって垂直下向きとなるように、吐出された液滴の軌道120(
図1Aの点線で概略的に示す)において著しくかつ制御不能な偏差を引き起こす可能性がある。強制空気流121は、液滴がギャップGを横断する際に、液滴によって取られる軌道120に影響を与え、x及び/又はy方向における液滴の着地位置を変更し、並びに噴霧及び付随体を堆積媒体上の予測不可能な場所に蓄積させる。噴霧及び付随体はまた、ノズル11を囲む液滴吐出ヘッド2の部分に着地し得る。1つの視覚的現象は、波打つ「木目調」模様の現象である場合があるが、その現象により、プリントされた画像に他の不規則な模様が目に見えて現れる場合がある。木目調は、例えば、堆積媒体3の表面が、テキスタイル、カートン、又はダンボールパッケージなどの粗いか、柔軟であるか、又はテクスチャ加工されている、より大きなギャップGを必要とする用途で特に経験される可能性がある。
【0006】
典型的な木目調模様のイラストを、
図1Cの試験プリントサンプルに示す。試験プリントサンプルは、
図1Aのヘッド配置を使用して、ノズル間隔84.7μm(300ノズル/インチ)及びギャップG距離3mmで、フルデューティ(全てのノズルプリンティング)で吐出した結果をシミュレートしたOpenFOAM(商標)計算流体力学(CFD)モデリングツールを使用して達成された。このサンプルの媒体速度は80m/分であり、ノズルプレートから1mmの距離で測定された落下速度は6.1ms-1であった。木目調現象の非存在下で予想される模様は、均一なカバレッジの模様であろう。例えば、ノズル11が、液滴吐出ヘッド2に沿ってy方向に列状に配置されている場合、堆積媒体3をまたぐように、全て同じx位置x1に位置決めされ、全てが同時t1に液滴を吐出するものであり、均一なカバレッジのために、それらの液滴は全て同じx位置x2で堆積媒体3上に着地し、及び液滴が由来するノズル11と同じy位置で、例えば、ノズル11をy位置y1で離れた液滴は、堆積媒体3上の同じy位置y1に着地する。x又はyでの、同じ位置によって、これは、肉眼では識別できないように、意図された標的に非常に近い位置を包含し得ることが理解されよう。
【0007】
シミュレートされた模様は、
図1Cに示すように、主液滴(ここで、「主液滴」は所望の目標体積の液滴又はその近くの液滴を示す)の偏差によって生じるものであり、y方向で、及び媒体搬送方向xに沿って画像にわたって不規則で、分岐し、及び波打つ模様を形成し、並びに木目調模様に似た、暗い「不規則な縞」となる。この主液滴の偏差は、ギャップGでの誘導された流れによる可能性があり、いくつかの液滴がx2の位置から外れ、いくつかの液滴がそれを克服し、その結果、
図1Aに示すように、液滴吐出ヘッドのy方向にまたぐノズル11の列が、同じx位置x1から液滴を同時に吐出するときでさえも、それらがx位置xRの範囲にわたって堆積媒体3上に着地する。同様に、y方向に液滴の偏差があり得る。木目調は、主液滴の偏差によるだけでない。様々な流れはまた、噴霧又は付随体をもたらし、それらに「木目調」と認識される密度の目に見える変化を形成させる。
【0008】
いくつかの用途では、液滴吐出ヘッド2が強固に取り付けられ、かつプリントされる堆積媒体3がその下を通過する、
図1Aに示すような液滴吐出装置1を使用することが望ましい。これは多くの場合、シングルパスプリンティングと呼ばれる。この装置のセットアップでは、移動堆積媒体3は、シングルパスプリンティング状況に特有な速度プロファイルで、ギャップG内に強制空気流(
図1Aでは水平矢印122)を生成する。より全般的には、液滴吐出ヘッド2が堆積媒体3に対して移動されるか、又は堆積媒体3が液滴吐出ヘッド2に対して移動されるかに関わらず、液滴吐出ヘッド2と堆積媒体3との間に速度差が存在し、それにより液滴吐出ヘッド2の周りに、及び/又はヘッド液滴吐出2と堆積媒体3との間のギャップGに強制空気流が生じ、木目調現象をもたらす。本発明は、木目調現象を低減又は除去することを目的とする。
【発明の概要】
【0009】
本発明の態様は添付の独立請求項に記載され、本発明の特定の実施形態の詳細は添付の従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明の第1の態様によると、液滴吐出デバイスのためのノズルプレートであって、第1の媒体に面する表面、及びそれに対向する第2の裏表面と、少なくとも1つのノズルと、を備え、当該少なくとも1つのノズルが、第2の表面から第1の表面までノズルプレートを通過し、当該少なくとも1つのノズルが、出口穴中心線を有する出口穴を備え、出口穴中心線が、第1の表面に対して斜めの傾斜角θで傾斜しており、かつ使用時に、1つ以上の液滴が、第1の表面に対して鋭い傾斜角θでノズルから吐出されるように適合されている、ノズルプレートが提供される。
【0011】
特定の実施形態によると、第1の態様によるノズルプレートであって、ノズルプレートが前縁及び後縁を有し、出口穴中心線が当該後縁に向かう方向に傾斜している、ノズルプレートが提供される。
【0012】
特定の実施形態によると、第1の態様によるノズルプレートであって、傾斜角θが74°~68°であることが好ましく、傾斜角θが72°~70°であることがより好ましい、ノズルプレートが提供される。
【0013】
特定の実施形態によると、第1の態様によるノズルプレートであって、出口穴の中心線に沿った出口穴の少なくとも一部分が、円形断面を有する、ノズルプレートが提供される。
【0014】
特定の実施形態によると、第1の態様によるノズルプレートであって、ノズルプレートが、複数の当該ノズルを備える、ノズルプレートが提供される。
【0015】
特定の実施形態によると、第1の態様によるノズルプレートであって、ノズルプレートが、複数の当該ノズルを備え、複数の当該ノズルの出口穴中心線が、相互に平行である、ノズルプレートが提供される。
【0016】
特定の実施形態によれば、第1の態様によるノズルプレートであって、ノズルプレートが、複数の当該ノズルを備え、複数の当該ノズルの出口穴が、互いに実質的に同一である、ノズルプレートが提供される。
【0017】
特定の実施形態によると、第1の態様によるノズルプレートであって、ノズルプレートが、1つ以上のノズルのアレイを備える、ノズルプレートが提供される。
【0018】
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様によるノズルプレートを備える液滴吐出デバイスが提供される。
【0019】
特定の実施形態によると、第2の態様による液滴吐出デバイスであって、後縁を備え、液滴吐出ヘッドの後縁が、ノズルプレートの後縁に平行である、液滴吐出デバイスが提供される。
【0020】
特定の実施形態によると、第2の態様による液滴吐出装置であって、少なくとも1つのノズルに隣接して位置し、かつ流体接続されており、使用時に、当該少なくとも1つのノズルを通して吐出される流体を供給するように適合されている少なくとも1つの流体チャンバを備える、液滴吐出装置が提供される。
【0021】
本発明の第3の態様によると、液滴吐出装置であって、本発明の第2の態様による少なくとも1つの液滴吐出デバイスと堆積媒体移動装置とを備える液滴吐出装置が提供される。
【0022】
特定の実施形態によると、第3の態様による液滴吐出装置であって、堆積媒体移動装置は、動作時に、堆積媒体の少なくとも一部分が、堆積媒体移動装置によって移動される間にノズルプレートの第1の表面に平行に位置決めされるように配置されている、液滴吐出装置が提供される。
【0023】
特定の実施形態によると、第3の態様による液滴吐出装置であって、当該液滴吐出装置が、シングルパスプリンタとして配置されている、液滴吐出装置が提供される。
【0024】
本発明の第4の態様によると、本発明の第3の態様による液滴吐出装置を動作させる方法であって、第1の表面に対して鋭い傾斜角θで少なくとも1つのノズルから液滴を吐出することを含む、方法が提供される。
【0025】
特定の実施形態によると、第4の態様による液滴吐出装置を動作させる方法であって、傾き角度θが74°~68°である、方法が提供される。
【0026】
特定の実施形態によると、第4の態様による液滴吐出装置を動作させる方法であって、装置が、y方向に幅を有し、液滴が、y方向に延在する複数のノズルから吐出され、y方向における堆積媒体上の吐出された液滴の着地位置の標準偏差が、8.3未満である、方法が提供される。
【0027】
特定の実施形態によると、第4の態様による液滴吐出装置を動作させる方法であって、液滴吐出装置が、シングルパスプリントモードで動作する、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1C】
図1Aの試験装置によってプリントされた画像のシミュレーションである。
【
図2】
図2Aは、本発明の一実施形態によるノズルプレートの概略断面図である。
図2Bは、
図2Aのノズルプレートの一部の概略断面図である。
【
図3A】本発明の別の実施形態によるノズルプレートの概略断面図である。
【
図3B】本発明の別の実施形態によるノズルプレートの概略断面図である。
【
図4A】
図2Aのノズルプレートを備える液滴吐出装置の概略図である。
【
図4B】
図4Aの液滴吐出装置などの液滴吐出装置での使用に好適な、本発明の実施形態による液滴吐出装置の一部分の概略図である。
【
図5A】従来の設計(試験ケース)の液滴吐出装置の計算流体力学(CFD)を使用して生成されたプリント画像のシミュレーションである。
【
図5B】本発明の実施形態による液滴吐出装置(実施形態ケース)の計算流体力学(CFD)を使用して生成されたプリント画像のシミュレーションである。
【
図6A】
図5Aと同じシミュレーション条件下での、試験ケースのギャップGのz-x平面における断面の流体流のシミュレーションである。
【
図6B】
図5Bと同じシミュレーション条件下での、実施形態ケースのギャップGにおけるz-x平面における断面の流体流のシミュレーションである。
【0029】
図面は原寸比に基づくものではなく、特定の特徴がより明瞭に可視化されるように、サイズを誇張して示す場合があることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ここで、実施形態及びそれらの様々な実施を、図面を参照して説明する。以下の説明全体を通して、同じ要素には同じ参照番号が、必要に応じて使用される。
【0031】
ノズルプレート
図2Aは、液滴吐出デバイスのためのノズルプレート106を描き、
図2Bは、
図2Aのノズルプレート106の拡大した詳細を描写する。ノズルプレート106は、第1の媒体に面する表面118と、それに対向する第2の裏表面119とを有する。ノズルプレート106は、ノズルプレート106が第2の裏表面119上にノズル入口115及び第1の媒体に面する表面118上にノズル出口114を有するように、第2の裏表面119から第1の媒体に面する表面118までノズルプレート106を通過するノズル111を更に備える。ノズル111は、第1の媒体に面する表面118に対して鋭い(90°未満)傾斜角θで傾斜し、使用時に液滴又は一連の液滴などの流体が、鋭い傾斜角θで第1の媒体に面する表面118に移動するノズル111から吐出されるように適合された出口穴中心線113を有する出口穴112を有する。別の言い方をすると、液滴(又は一連の液滴)がノズル出口114を離れる際の移動の初期方向ti2は、中心線113に平行であり、出口穴中心線113は、第1の媒体に面する表面118に対して斜めの傾斜角θで傾斜していると言える。
図2Bから分かるように、出口穴112は、ノズル出口114の前のノズル111の最終部分であるように、第1の媒体に面する表面118に隣接するノズル111の部分である。
【0032】
図2A及び
図2Bに示す実施形態では、ノズル111の穴は、ノズル111全体の穴が全体を通して同じ断面形状を有するように、その全長に沿って出口穴中心線113に垂直な一定の断面を有するが、これは必須ではないことが理解され得る。更に、
図2Bから、ノズル111は、出口穴中心線113の長さに沿って、半径Rの円形断面を有する円筒形状を有することが分かる。この場合も、これは決して必須ではないことが理解され得、他の配置では、他の断面が使用され得る。他の配置では、他の断面形状及び断面積が、穴の一部分に沿って、又は穴の全体に沿って使用されてもよく、又は断面形状は、連続的又は不連続的仕様に変化してもよいことが更に理解されよう。
【0033】
図2Aを更に考慮すると、この配置では、ノズルプレート106は、前縁116及び後縁117を有し、出口穴中心線113は後縁117に向かう方向に傾斜していることが分かる。言い換えれば、出口穴中心線113と第1の媒体に面する表面118との間の傾斜角θは、出口穴中心線113が後縁117に向かって角度付けられるように鋭角にある。ノズルプレートが液滴吐出デバイス内に設置されるとき、前縁は、堆積媒体移動方向に上流に配向されるノズルプレートの縁であり、後縁は、堆積媒体移動方向に下流にある。好ましくは、傾斜角θは、74°~68°であり得る。より好ましくは、傾斜角θは、72°~70°であり得る。いくつかの配置では、好ましい傾斜角θは70°であり得る。
【0034】
ここで
図3Aを参照すると、これは、
図2A及び
図2Bの実施形態と類似した本発明のノズルプレートの別の実施形態を図示するが、出口穴112に加えて、ノズル111aは入口部分110を有する。出口穴112は、
図2A及び2Bの出口穴と類似しており、半径Rの出口穴中心線113と直角を成す円形断面を有する。いくつかの配置では、出口穴112は、全体を通して同じ断面を有してもよく、他の配置では、出口穴の一部分のみが、同じ断面を有してもよい。いくつかの配置では、出口穴112、又はその少なくとも一部分は、出口穴中心線113に垂直な円形断面を含み得る。いくつかの配置では、この部分は、ノズル出口114に最も近い出口穴112の部分であってもよい。入口部分110は、任意の形状又は形態を有してもよく、流体がノズル入口115からノズル出口114にノズル111、111aを通って流れることができるような流体経路があることを条件として、製造することができる円形断面又は任意の他の適切な断面を備えてもよい。
【0035】
ここで
図3Bを考慮すると、これは、
図2A、2B及び3Aの実施形態と同様に、本発明のノズルプレートの別の実施形態を図示するが、ノズル111bは、円錐形状を備え、ノズル断面積がノズル入口115からノズル出口114まで減少する。様々な配置では、ノズル111bの一部又は全てが円錐形状を有してもよく、例えば、出口穴112は円錐形状を有してもよく、ノズル111bの残りの部分は、
図3Aの入口部分110とは異なる形状を有してもよいことが理解されよう。
【0036】
簡略化のために、
図2A~
図3Bのノズルプレート106は、断面がシングルのノズル111、111a、111bで示されているが、ノズルプレート106は、複数のこのようなノズル111、111a、111bを備えてもよいことが理解されよう。いくつかの配置では、複数のノズル111、111a、111bの出口穴中心線113は、互いに平行であってもよい。いくつかの配置では、複数のノズル111、111a、111bの出口穴は、互いに実質的に同一であってもよい。いくつかの配置では、ノズル111、111a、11bは、製造公差に応じて、互いに実質的に同一であってもよい。いくつかの配置では、ノズル111、111a、111bは、一列に、又はy方向に(
図2A~3Bのページ内に)延在する千鳥状の列に配置されてもよいし、又は任意の他の適切な配置、例えばノズルプレート106は、1つ以上のノズル111、111a、111bのアレイを備えてもよい。
【0037】
装置
ここで
図4Aを参照すると、これは実施形態による液滴吐出装置101を図示する。
図1Aの公知の試験装置と類似の配置を有するが、
図2A及び
図2Bの配置によるノズルプレート106を備える、液滴吐出ヘッドなどの液滴吐出デバイス102があることが分かる。異なるノズル111、111a、111b、又は本明細書に記載の任意の他のノズルを参照して本明細書に記載の他のノズルプレート106のいずれかはまた、液滴吐出デバイス102で好適に使用され得ることが理解され得る。
【0038】
液滴吐出デバイス102は、搬送機構105によって移動可能な堆積媒体103の上方に取り付けられる。液滴吐出デバイス102は、コントローラ104によって送信される信号に応答して、液滴を堆積媒体103上に吐出するためのノズル111を有するノズルプレート106を備える。ノズルプレート106は、堆積媒体103に対向している媒体に面する表面118を有し、流体の液滴は、媒体に面する表面118のノズル出口を通してノズル111から出る。液滴吐出デバイス102は、ギャップ方向142(これは負のz方向である)で、堆積媒体103と液滴吐出デバイス102との間にギャップGがあるように取り付けられる。
図4Aから、出口穴中心線113が液滴吐出デバイス102の後縁108に向かう方向に傾斜し、後縁が堆積媒体移動方向に下流にあるように、液滴吐出デバイス102がノズルプレート106の後縁117に平行な後縁108を有することが更に分かる。
【0039】
液滴吐出デバイス102は、ノズル111に流体接続された流体チャンバ131を更に備えており、ノズル111に流体を供給し、流体チャンバ131の1つ以上の壁が作動したときに液滴を吐出し得る。流体チャンバ131に流体を供給するために、液滴吐出デバイスは、流体チャンバ131と流体源又は流体供給部(図示せず)の両方に流体接続された入口マニホールド(図示せず)を更に備えてもよい。液滴吐出デバイス102は、各々が流体チャンバ131に流体接続されている、複数のノズル111を備えてもよい。この場合、入口マニホールドは、複数の流体チャンバ131に流体接続されてもよい。
【0040】
液滴吐出装置101は、本明細書に記載の通り、液滴吐出デバイス102内に配置された、本明細書に記載の配置のいずれかによる少なくとも1つのノズルプレート106と、堆積媒体103を移動させるための堆積媒体移動装置105とを備える。いくつかの配置では、液滴吐出装置101は、堆積媒体の全幅が一度に対処され得るように、y方向に堆積媒体103にまたがるように、1つ以上の液滴吐出デバイス102(インクジェットプリントヘッドなど)を備え得ることが理解されよう。
【0041】
図4Aの液滴吐出装置101では、堆積媒体103は、媒体に面する表面118に平行である。しかしながら、液滴吐出デバイス102は、大部分が平面であるが完全には平坦ではない媒体、例えば、準平坦な媒体、例えば、テクスチャ加工されたセラミックタイル、又は他のテクスチャ加工された表面の媒体上に堆積するために流体を吐出することができることが理解されよう。このような場合、媒体に面する表面118は、堆積媒体103が輸送される表面と平行であり、堆積媒体103と実質的に平行であることが理解され得る。概して、平坦又は準平坦な媒体に対しては、液滴堆積装置101は、ノズルプレート106の媒体に面する表面118に平行に位置決めされた堆積媒体103の部分が、ノズルプレート106の前縁116から後縁117までの距離の実質的に全てを含むように配置されてもよい。
図4Aの液滴吐出装置の配置では、媒体移動方向109は、媒体に面する表面118に平行であり、例えば、ノズルプレート106の前縁116から後縁117に引き出された線に平行である。
図4Aの実施例では、媒体移動方向109はまた、x方向に平行であり、媒体に面する表面118に対して下流に移動する(下流方向Dは、媒体に面する表面118に平行な線とみなされ、ノズルプレート106の前縁116から後縁117に引き出され得る)。
【0042】
更に、他の配置では、例えば、生地又は紙の丈にプリントする場合、堆積媒体103の一部分のみが、堆積媒体移動装置105の設計に起因して、媒体に面する表面118に平行であり得ることが理解され得る。更に、堆積媒体103は、媒体に面する表面118に平行な部分を有するように移動され得ることが理解され得る。例えば、瓶は、液滴堆積デバイス102に対して回転されてもよく、堆積媒体移動装置105は、吐出された液滴が選択された場所で瓶上に着地し、回転するにつれて瓶の周りにプリントされた画像を構築するように、瓶を移動させるように配置されてもよい。したがって、瓶又は他の物体などの曲面上にプリントするときに、又は複雑な3D形状に対処するときに、堆積媒体移動装置105は、動作時に、堆積媒体移動装置105によって移動される堆積媒体103の少なくとも一部分がノズルプレート106の媒体に面する表面118に平行に位置決めされるように配置されてもよい。配置は、堆積媒体103のこの部分が、液滴が着地することが望まれる少なくともx位置x2を含むような配置であることが理解されよう。
【0043】
したがって、このような堆積媒体103を使用するときに、液滴吐出装置101は、液滴吐出デバイス102によって吐出された液滴が堆積媒体103の所望の部分上に着地するように、かつこれは、軌道120が堆積媒体103と交差するx位置ではあり得ないように配置されてもよい。液滴着地点は、ギャップG内の液滴の下流への移動に起因して、ノズル出口114の下流にあり得ることが更に理解され得る。使用時に、したがって、流体の複数の液滴が、ノズル111から鋭い傾斜角θで媒体に面する表面118に吐出され、液滴が所望の位置で媒体上に着地するように下流方向Dに傾斜してもよく、このため媒体の幅を横切って媒体表面上に液滴が着地するときに、液滴の位置の均一性が改善されるようになる。言い換えれば、y方向(
図4Aのページ内)に配置された複数のノズル111がある場合、それらが吐出する液滴は、堆積媒体103上のより一貫したx位置に着地する。液滴は、x位置x2に、又はx位置x2の近くに着地することがより好ましく、その結果、x位置x2からのいかなる偏差も大幅に低減され、好ましくは肉眼では見えない。いくつかの配置では、流体の液滴は、74°~68°、より好ましくは72°~70°の傾斜角θでノズル111から吐出され得る。
【0044】
複数のノズル111から発する液滴間の許容可能な偏差の程度は、用途及びプリントされる画像で必要とされる解像度の程度に依存し得ることが理解されよう。例えば、より大きな視覚的忠実度が必要とされるいくつかの配置では、4.4未満のy方向の平均標準偏差が好ましい場合があり、一方で、精度がより低いことを必要とする他の用途では、5.2未満又は7.2未満の標準偏差が適切である場合がある。更に低い精度を必要とする更なる用途では、8.3未満の標準偏差が許容され得る。
【0045】
複数のノズル111がある場合、媒体上に必要な画像を生成するために、プリント命令に応じて、液滴が1つ以上のノズル111から吐出されてもよいことが更に理解されよう。例えば、異なる時点で、コントローラ104は、異なる信号を液滴吐出デバイス102に送信し得る。コントローラ104によって送信される異なる信号に応答して、液滴吐出デバイス102は、必要な画像を生成するために、複数のノズル111の全てから堆積媒体上に液滴、1つ以上の液滴、又は液滴を排出しない場合がある。
【0046】
図4Bは、アクチュエータ構成要素170及びノズルプレート106を備える液滴吐出デバイス102aの一部の詳細を描写する。
図4Bから分かるように、ノズルプレート106の列161に配置された番号付けされた111_i、111_iiなどの複数のノズル111がある。ノズルプレート106は、基材172、圧電材料の細片173、及び境界セクション171を備えるアクチュエータ構成要素170に固定的に取り付けられている。各ノズル111は、圧電材料の細片173内に形成された対応する流体チャンバ131_i、131_iiなどに流体接続される。流体チャンバ131は、境界セクション171及び基材172によって境界付けられるマニホールドチャンバ151、152に流体接続される。マニホールドチャンバ151、152の各々は、それぞれのポート153、154に流体接続される。この配置は、両側から流体チャンバ131に流体を供給するために、又はいわゆる貫通流配置で使用することができ、一方のポート及びマニホールドチャンバは入口ポート及び入口マニホールドチャンバとして機能し、他方のポート及びマニホールドチャンバは出口ポート及び出口マニホールドチャンバとして機能する。
【0047】
列161の複数のノズル111は、
図4Bの出口穴中心線113上の平行な線の対によって示されるように、それらのそれぞれの出口穴中心線113が互いに平行であってもよいように配置される。いくつかの配置では、複数のノズル111の出口穴は、互いに実質的に同一であってもよい。いくつかの配置では、ノズル111は、製造公差に応じて、互いに実質的に同一であってもよい。
【0048】
動作中、貫通流配置は、流体が入口マニホールドチャンバ(例えば、マニホールドチャンバ151)から出口マニホールドチャンバ(例えば、マニホールドチャンバ152)へと流体チャンバ131を通過するのを確かめる。流体チャンバ(例えば、131_i)の1つ以上の壁が作動するときに、流体チャンバ131_i内の流体のいくらかは、出口穴中心線113の傾斜角θでそれぞれのノズル111_iを通して吐出されて、液滴(例えば、D_i)を形成する。言い換えれば、液滴吐出デバイスは、使用時に、少なくとも1つのノズル111を通して吐出される流体を供給するように、当該少なくとも1つのノズル111に隣接して位置し、かつ流体接続された少なくとも1つの流体チャンバ131を備える。1つ以上のノズル111のノズル入口115は、流体チャンバ幅方向(流体チャンバ幅方向は、
図4Aのページ内であり、
図4Bの列方向143に平行である)で、流体チャンバ131の中心に位置し得、これによって、ノズルは、開口部が流体チャンバ幅方向の流体チャンバ131において中央に位置する、流体チャンバ131内に、開口部、又は流体入口115を備える。
【0049】
例示的なデータ
図5A及び
図5Bは、OpenFOAM(商標)を使用して行われた2つのCFDシミュレーションの結果を描写し、両方ともXaar(商標)1003プリントヘッドを使用したシングルパスプリンティングのシミュレーションである。
図5Aは、ノズル出口穴中心線113が媒体に面する表面118に対して垂直である従来の設計の試験液滴吐出デバイス(試験ケース)に基づくシミュレーションを描写し、
図5Bは、本発明の実施形態による液滴吐出デバイス(実施形態ケース)に基づくシミュレーションを描写しており、そこでは、出口穴中心線113は、下流方向Dにおいて媒体に面する表面118に対して傾斜角θ=70°で傾斜している(例えば、媒体に面する表面118に対して垂直な線に対して20°の角度で下流に傾斜しており、言い換えれば、試験ケースデバイスのノズル出口穴中心線に対して20°傾斜している)。両方の場合において、プリント周波数は6kHzであり、液滴吐出デバイスと堆積媒体との間のギャップGは5mmであり、初期液滴速度は8ms-1であり、解像度はプリント(x方向)及びクロスプリント(y方向)において360DPI(1インチ当たりのドット)であり、液滴体積は12ピコリットル(pL)である。シミュレーションパターンは、主液滴偏差によって引き起こされるプリント画像のシミュレーションを描写するという点で、
図1Cのものと類似している。
図5A及び
図5Bの陰影は、「0」がゼロ偏差である、正及び負のy方向(y変位)の液滴偏差を描写する。より明確にするために、負のy方向の最大レベルの液滴偏差は、白色のハッチングでオーバーレイされ、正のy方向の最大レベルの液滴偏差は、それぞれa及びbで示される黒色のハッチングでオーバーレイされている。
【0050】
図5Aでは、試験ケースのシミュレーションを描写し、画像内に目に見える木目調現象をもたらす、y方向に著しいレベルの液滴偏差があることが分かる。
図5Bでは、実施形態ケースのシミュレーションを描写すると、画像の大部分は、はるかに低いレベルの液滴偏差を有し、ハッチ付きのオーバーレイa及びbは、y方向で画像のエッジの狭い領域に制限される。
図5A(試験ケース)及び
図5B(実施形態ケース)を比較することによって、出口穴中心線113が傾斜角θ=70°で傾斜しているノズル111を使用して、下流方向Dの媒体に面する表面118に対して木目調現象を著しく低減したことが明確に分かる。
【0051】
図6Aは、
図5A(すなわち、試験ケース)を生成するために使用されるものと同じCFD計算からのz-x平面の断面を示し、
図6Bは、
図5Bを生成するために使用されるCFD計算からの実施形態ケースの
図6Aと同じ断面を描写する。陰影は、x方向における空気速度(U.air X(ms-1))を示し、黒色の矢印は、それらの長さが空気速度に比例する流れ方向を示す。
【0052】
任意の特定の理論に束縛されることを望むものではないが、発明者らは、
図5Aに示す通り、シングルパスプリンティングにおける木目調現象の可能な説明が、以下の文章に記載されるように、吐出された液滴の動きによって生成される衝突噴流とギャップG内の強制空気流との間の相互作用であると仮定する。液滴がノズルから吐出されると、液滴は堆積媒体3に移動し、空気をそれ自体の前に押し出す。これにより、液滴から周囲空気への運動エネルギーの伝達が生じる。結果として、衝突空気噴射が生成される。この噴射が堆積媒体に衝突すると、「スプラッシュ」し、運動エネルギーがあらゆる方向に伝達される。
図6Aに示すように、このような噴射を2次元で考慮する場合、左と右の2つの渦が作り出されることがわかる。この衝突空気噴射は、移動する堆積媒体3によって引き起こされるギャップG(
図1A(及び
図4A)の水平矢印122によって示される、Couetteフロー)内の強制空気流と相互作用する。媒体移動方向109及び下流方向Dを参照すると、左右の渦は、上流(u)及び下流(d)の渦として標識され得る。
【0053】
堆積媒体3で輸送される空気は、衝突噴射の下流側に何らかの方法で送達されなければならない(複数のノズル及びそれゆえに複数の液滴がある場合、これは「ドロップカーテン」としても知られる)。ドロップカーテンは障害物として作用するため、移動堆積媒体3で輸送される空気は、カーテンの上流に閉じ込められる。また、衝突噴射によって引き起こされる上流渦と相互作用する。これにより、渦に堆積媒体3が入ってくる空気が常に供給される。これは結果として上流渦の成長をもたらし、これは最終的にはドロップカーテンを貫通するほど大きくなり、吐出された液滴を偏向させ、従って木目調として知られる視覚的現象をもたらす。発明者らは、液滴がノズル111から第1の表面へと鋭い傾斜角θで吐出されたときに、
図4Aに示すように、下流方向Dでは、上流渦(u1)の強度が著しく低減され(
図6Bにて分かるように)、結果として木目調現象が低減され得ると仮定する。下流渦(d1)も強度が著しく低減される。
【0054】
ここで表1及び表2を参照すると、これらは、y方向における液滴着地変位の標準偏差を示す。標準偏差は、
図5A及び
図5Bを参照して上述した試験ケース及び実施形態ケースに対して一連のCFDシミュレーションを実行することによって決定された。様々な液滴速度(ms-1)及び液滴体積(pL)を、6kHzのプリント周波数、5mmのギャップGを有するプリント方向及びクロスプリント方向に360DPIで動作するXaar 1003プリントヘッドのモデルに使用した。各液滴速度及び体積について、y方向(クロスプリント方向)における液滴の標準偏差(μm)を計算し、
図5A、
図5B、
図6A、及び
図6Bに関して上述したように、表1は、試験ケースのデータを有し、表2は、実施形態ケースのデータを有する。液滴速度及び液滴体積の両方が標準偏差に影響を与えることが表1及び表2の両方から分かるが、全体として、実施形態ケースは、5ms-1及び6pLでの最小及び最も遅い液滴を除いて、試験ケースと比較して標準偏差を低減させた。
【0055】
当然のことながら、本明細書に記載のノズル配置のいずれかは、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の液滴吐出ヘッド及び/又は液滴吐出装置で使用されてもよい。
【国際調査報告】