(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】モジュール式脳波計(EEG)システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/31 20210101AFI20240628BHJP
A61B 5/308 20210101ALI20240628BHJP
A61B 5/313 20210101ALI20240628BHJP
【FI】
A61B5/31
A61B5/308
A61B5/313
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570109
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 US2021044620
(87)【国際公開番号】W WO2023014357
(87)【国際公開日】2023-02-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523427537
【氏名又は名称】スターキャット エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フュアー、ヘンリー、アダム
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA03
4C127AA04
4C127BB03
4C127FF01
4C127FF15
(57)【要約】
モジュール式脳波計(EEG)システムは、1つ以上の電極コネクタ、1つ以上の電源、及び1つ以上のアナログ-デジタル変換器(ADC)モジュールを含むキャリア基板を備える。ADCモジュールの各々は、複数の入力チャネルと、入力信号ルーティングと、少なくとも1つの計装電源と、少なくとも1つの計装電源及び入力信号ルーティング用の構成スイッチと、ADCと、プログラマブル利得増幅器と、ADC通信バスとを備える。1つ以上のADCモジュールの各々は、キャリア基板の1つ以上の電極コネクタの1つと1つ以上の電源の1つとに電気的に接続される。組み込みコンピュータはリアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を実行するように構成され、1つ以上のADCモジュールのADC通信バスの各々はシリアルインタフェースを介して組み込みコンピュータに電気的に接続される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール式脳波計(EEG)システムであって、
1つ以上の電極コネクタ、1つ以上の電源、及び1つ以上のアナログ-デジタル変換器(ADC)モジュールを含むキャリア基板と、を備え、
前記ADCモジュールの各々は、
複数の入力チャンネルと、
入力信号ルーティングと、
少なくとも1つの計装電源と、
前記少なくとも1つの計装電源及び前記入力信号ルーティング用の構成スイッチと、
ADCと、
プログラマブル利得増幅器と、
ADC通信バスと、
を備え、
前記1つ以上のADCモジュールの各々は、前記キャリア基板の前記1つ以上の電極コネクタの1つと前記キャリア基板の前記1つ以上の電源の1つとに電気的に接続され、
組み込みコンピュータは、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を実行するように構成されており、
前記1つ以上のADCモジュールのADC通信バスの各々は、シリアルインタフェースを介して前記組み込みコンピュータに電気的に接続されている、
モジュール式EEGシステム。
【請求項2】
前記シリアルインタフェースは、シリアルペリフェラルインタフェース(SPI)である、請求項1に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項3】
ネットワーク接続を介して前記組み込みコンピュータに電気的に接続された通信コンピュータをさらに備える、請求項1に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項4】
前記組み込みコンピュータと前記通信コンピュータとの間の前記ネットワーク接続は、ユニバーサルシリアルバス(USB)接続を介して行われる、請求項3に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項5】
各々がシリアルバスを介して前記通信コンピュータに電気的に接続された1つ以上の無線通信アダプタをさらに備える、請求項3に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項6】
ネットワーク接続を介して前記組み込みコンピュータに電気的に接続されたユーザデバイスをさらに備える、請求項1に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項7】
前記ユーザデバイスは、コンピュータ又はスマートフォンである、請求項6に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項8】
前記組み込みコンピュータと前記ユーザデバイスとの間の前記ネットワーク接続は、ユニバーサルシリアルバス(USB)接続を介して行われる、請求項6に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項9】
前記組み込みコンピュータに電気的に接続されたユニバーサルシリアルバス(USB)マルチプレクサ/デマルチプレクサと、
通信コンピュータと、
ユーザデバイスと、を備え、
前記通信コンピュータ及び前記ユーザデバイスはそれぞれ、有線USB接続を介して前記USBマルチプレクサ/デマルチプレクサに電気的に接続されており、
前記USBマルチプレクサ/デマルチプレクサは、前記通信コンピュータと前記ユーザデバイスとの間で、前記組み込みコンピュータへの電気的な接続を切り替えるように構成されている、
請求項1に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項10】
前記組み込みコンピュータと前記ユーザデバイスとの間の前記ネットワーク接続は、光ファイバ接続を介したイーサネット(登録商標)を介して行われる、請求項6に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項11】
前記通信コンピュータと前記ユーザデバイスとの間の前記ネットワーク接続は、光ファイバ接続を介したイーサネット(登録商標)を介して行われる、請求項6に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項12】
前記ユーザデバイスは、コンピュータ又はスマートフォンである、請求項9に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項13】
前記組み込みコンピュータに電気的に接続された1つ以上の無線通信アダプタをさらに備える、請求項9に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項14】
前記組み込みコンピュータの前記RTOSは、ダイレクトメモリアクセス(DMA)を用いて前記1つ以上のADCモジュールから前記組み込みコンピュータにデータを転送するように構成された専用ソフトウェアドライバを実行するように構成されている、請求項1に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項15】
前記キャリア基板は、1つ以上のバッテリコネクタをさらに備える、請求項1に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項16】
脳波計、心電計、又は筋電計として動作するように構成されている、請求項1に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項17】
キャリア基板を備えるモジュール式EEGシステムであって、
前記キャリア基板は、
1つ以上の電極コネクタと、
1つ以上の電源装置と、
1つ以上のアナログ-デジタル変換器(ADC)モジュールと、を備え、
前記ADCモジュールの各々は、
複数のインプットチャンネルと、
入力信号ルーティングと、
少なくとも1つの計装電源と、
前記少なくとも1つの計装電源及び前記入力信号ルーティング用の構成スイッチと、
ADCと、
プログラマブル利得増幅器と、
ADC通信バスと、を備え、
前記1つ以上のADCモジュールの各々は、前記1つ以上の電極コネクタの1つと前記キャリア基板の前記1つ以上の電源の1つとに電気的に接続されており、
フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)をさらに備え、前記1つ以上のADCモジュールの前記ADC通信バスの各々が、シリアルインタフェースを介して前記FPGAに電気的に接続されており、
組み込みコンピュータは、高速相互接続バスを介して前記FPGAに電気的に接続されている、
モジュール式EEGシステム。
【請求項18】
各々がシリアルバスを介して前記組み込みコンピュータに電気的に接続された1つ以上の無線通信アダプタをさらに備える、請求項17に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項19】
電気絶縁装置を介して前記組み込みコンピュータに電気的に接続された有線通信アダプタをさらに備える、請求項17に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項20】
前記高速相互接続バスは、アドバンスト拡張可能インタフェースである、請求項17に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項21】
前記FPGAは、前記1つ以上のADCモジュールの各々からのデータにタイムスタンプを付けるように構成された機能ユニットをさらに含む、請求項17に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項22】
脳波計、心電計、又は筋電計として動作するように構成されている、請求項17に記載のモジュール式EEGシステム。
【請求項23】
前記キャリア基板は、1つ以上のバッテリコネクタをさらに備えている、請求項17に記載のモジュール式EEGシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール式脳波計(EEG)システムに関する。より具体的には、本発明は、各々が直接シリアル接続を介して組み込みコンピュータに接続された複数の独立した同一のアナログデジタル変換器(ADC)モジュールを含むモジュール式EEGシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
可搬型の脳波計(EEG)は当該技術分野で知られている。しかしながら、既存のデバイスは、単一のバスを介して中央プロセッサ又はCPUと通信する電子モジュールを利用しており、各電子モジュールは、少なくともADC及びCPUを含む。単一のバスを介した複数のそのようなモジュールの通信は、複数の個々のモジュールからのデータ転送速度を制限する可能性がある。さらに、各電子モジュールにCPUを含めることは、製造コストを増加させる。
【0003】
したがって、個々のCPUを含まない複数のADCモジュールを含み、ADCモジュールがそれぞれ、直接シリアル接続を介して組み込み中央プロセッサ又はCPUと通信するモジュール式EEGシステムが必要とされている。組み込みCPUがリアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を実行し、EEGシステムがRTOS CPUと通信する通信コンピュータをさらに含むと有利であろう。通信コンピュータが外部デバイスと無線で通信することができればさらに有利である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様では、モジュール式脳波計(EEG)システムは、1つ以上の電極コネクタ、1つ以上の電源、及び1つ以上のアナログデジタル変換器(ADC)モジュールを含むキャリア基板を備えている。ADCモジュールの各々は、複数の入力チャネル、入力信号ルーティング、少なくとも1つの計装電源、少なくとも1つの計装電源及び入力信号ルーティング用の構成スイッチ、ADC、プログラマブル利得増幅器、及びADC通信バスを備えている。1つ以上のADCモジュールの各々は、キャリア基板の1つ以上の電極コネクタの1つ及び1つ以上の電源の1つに電気的に接続されている。
【0005】
組み込みコンピュータは、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を実行するように構成されており、1つ以上のADCモジュールの各ADC通信バスは、シリアルインタフェースを介して組み込みコンピュータに電気的に接続されている。
【0006】
本発明の別の態様では、モジュール式脳波計(EEG)システムは、1つ以上の電極コネクタ、1つ以上の電源、及び1つ以上のアナログデジタル変換器(ADC)モジュールを含むキャリア基板を備えている。ADCモジュールの各々は、複数の入力チャネル、入力信号ルーティング、少なくとも1つの計装電源、少なくとも1つの計装電源及び入力信号ルーティング用の構成スイッチ、ADC、プログラマブル利得増幅器、及びADC通信バスを備えている。1つ以上のADCモジュールの各々は、キャリア基板の1つ以上の電極コネクタの1つ及び1つ以上の電源の1つに電気的に接続されている。モジュール式脳波計(EEG)システムは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)をさらに備え、1つ以上のADCモジュールの各ADC通信バスは、シリアルインタフェースを介してFPGAに電気的に接続され、組み込みコンピュータは高速相互接続バスを介してFPGAに電気的に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、モジュール式EEGシステムの例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態によるキャリア基板のイメージを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態によるADCモジュールの上面のイメージを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態によるADCモジュールの底面のイメージを示す図である。
【
図5】
図5は、モジュール式EEGシステムの他の例示的な実施形態の一部を示す概略図である。
【
図6】
図6は、モジュール式EEGシステムのさらなる例示的な実施形態の一部を示す概略図である。
【
図7】
図7は、モジュール式EEGシステムのさらに別の例示的な実施形態の一部を示す概略図である。
【
図8】
図8は、モジュール式EEGシステムのさらに別の実施形態を示す概略図である。
【
図9】
図9は、モジュール式EEGシステムのさらに別の例示的な実施形態の一部を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態による、キャリア基板から例示的なADCモジュールへの電力の流れを示す概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態による、任意選択でダイレクトメモリアクセス(DMA)を使用して、1つ以上のADCモジュールからデータを転送するために、組み込みコンピュータのRTOS上で動作するように構成されたドライバソフトウェアによって実行される例示的なステップを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明を考慮すると明らかになるのであろう。ここで、同様の構造には、同様の参照番号が付与される。
【0009】
本明細書において提示される以下の詳細な実施形態は、例示を目的とするものである。すなわち、これらの詳細な実施形態は、本発明をどのようにして製造し、使用するかを当業者に容易に理解させることを提供し、支援する目的で、本発明の例示であることが意図されている。以下の説明において、開示された異なる実施形態の構成要素を説明するために使用される同一の参照番号は、開示された異なる実施形態の一部であり得る同一の構成要素を指す。
【0010】
以下に説明する
図1~
図11は、ヒト、動物、及び他の生物学的供給源からの電気信号を収集及びデジタル化するのに適した、インターネット接続可能なモジュール式EEGシステムの実施形態及び態様を示す。モジュール式EEGシステムの図示する実施形態は、心電計(EKG)及び筋電計(EMG)としても使用することができる。
【0011】
図1を参照すると、モジュール式EEGシステム100の一実施形態が、キャリア基板110の一部に配置されたモジュール式EEGシステム100のいくつかの構成要素の例示的な構成を示す概略ブロック図の形式で示されている。破線112によって示されるように、キャリア基板110は、以下でより詳細に説明されるように、他の構成要素を収容するために、図示されるよりも大きい範囲を有することができる。キャリア基板110は、例えば、その上に実装された電気部品のための接続を含むプリント回路基板又は他の基板であり、1つ以上の電極コネクタ120、1つ以上の電源130、及び1つ以上の独立した同一のADCモジュール140を支持する。1つ以上のADCモジュール140の各々は、キャリア基板110上に組み込まれたコンピュータ150に接続されている。組み込みコンピュータ150は、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を実行するように構成されている。
【0012】
例えば、一実施形態ではRTOSはNuttXであるが、別の実施形態ではRTOSはLinux(登録商標)である。他の実施形態では、RTOSは、当該技術分野で知られているような任意の適切なRTOSであり得る。
【0013】
各ADCモジュール140は、双方向矢印(double arrow)160で示すシリアルインタフェース(例えば、SPI(Serial Peripheral Interface)が挙げられるが、これに限定されない)を介して、組み込みコンピュータ150に電気的に接続される通信バス152(
図4参照)を有している。一実施形態では、キャリア基板110は、1つ以上のバッテリコネクタ155をさらに備え、及び/又は収容する。一実施形態におけるキャリア基板110は、キャリア基板110に搭載されたバッテリ(図示せず)を充電するための充電器用の入力ポート(図示せず)をさらに含む。入力ポート及び充電器は、キャリア基板110に電気的に接続された充電式バッテリを充電することができる、当該技術分野で知られている任意の種類の充電器(例えば、USB、USB-C、Lightningポート)、又は任意の種類の充電ポートとすることができる。
【0014】
一実施形態では、組み込みコンピュータ150のRTOSは、インターネットTCP/IPプロトコルを介して通信し、ネットワークに接続される。一実施形態では、組み込みコンピュータは、任意選択でダイレクトメモリアクセス(DMA)を使用して、1つ以上のADCモジュール140から組み込みコンピュータ150にデータを転送するように構成された専用ソフトウェアドライバを実行するように構成されている。
図11を参照すると、一実施形態では、ステップ610で、専用ソフトウェアドライバ600は、ADC148からのデータが準備できたときに、シリアルインタフェース160から割り込みを受信する。各割り込みについて、ドライバ600は、どのADC148からのデータであるかをチェックする。次にステップ620で、ドライバ600は、データを経路630に沿ってメモリに読み込むか、又は実装がDMAを使用している場合は経路640に従い、ドライバ600の動作なしに、CPUのDMAエンジンがデータをメモリに配置した場所を特定する。ダイレクトメモリアクセスとは、シリアルインタフェースのような周辺機器からデータを読み取り、CPUの演算能力を使用せずにメインメモリ内に素早く配置することができるCPUの構成要素を指す。ステップ650では、ソフトウェアドライバ600は、次に、特定の期間の間、他のADC148からの他のデータサンプルと共にデータサンプルを符号化する。ステップ660では、データサンプルを、ネットワークインタフェースを介してユーザデバイス250に送信するか、又は任意選択で通信コンピュータ230(
図5参照)に送信し、その後ユーザデバイス250に送信する。
【0015】
キャリア基板110によって収容可能なADCモジュール140の数は、
図1の3つの破線ドット170によって象徴的に示されるように、基板のサイズに応じて変化し得る。一実施形態では、キャリア基板110は、2つのADCモジュール140を収容することができる。他の実施形態では、キャリア基板110は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上のADCモジュールを収容することができる。一実施形態では、ADCモジュール140の各々は、複数の入力チャネル、例えば、これに限定されるものではないが、8つの入力チャネルを備えている。他の実施形態では、ADCモジュール140の各々は、8つのチャネル以外の複数の入力チャネル、例えば、1~256、又はそれ以上の任意の数のチャネルを備えている。
【0016】
さらに
図1を参照すると、1つ以上のADCモジュール140の各々は、1つ以上の電極コネクタ120の1つに電気的に接続され、また、例えば接続180を介して、キャリア基板の1つ以上の電源130の1つにも電気的に接続される。電極コネクタ120は、例えば被験者の皮膚を介して電気インパルスを測定するために被験者の身体に適用される電極に接続するための構造を備えている。一実施形態における電極コネクタ120は、電極に接続されたワイヤの端部上のループにスナップ嵌めされるポストである。他の実施形態では、電極コネクタ120は、電極に接続されたワイヤの端部上のポストを受け入れ、それと係合するループである。他の実施形態では、電極コネクタ120は、クリップ、スナップボタンなどを含む、当該技術分野で知られている他のコネクタである。
図2は、コンピュータ150と、その上に接続された2つのADCモジュール140とを有するキャリア基板110の画像を示しており、ADCモジュールの各々は、隣接して配置された電極コネクタ120と接続されている。
【0017】
例示的なADCモジュール140の上側及び下側をそれぞれ示す
図3及び
図4を参照すると、ADCモジュール140の各々は、複数の入力チャネル(例えばこれに限定されるものではないが、8つの入力チャネル)であって、各入力チャネルはシングルエンド又は差動である複数の入力チャネルと、入力信号ルーティングのために構成された切り替え可能な回路142とを、さらに備えている。各ADCモジュール140は、少なくとも1つ、好ましくは2つの計装電源144(以下でさらに説明する)と、少なくとも1つの計装電源144及び切り替え可能な信号ルーティング回路142を構成するための構成スイッチ146とを、さらに備えている。各ADCモジュール140は、ADC148、(ADC148に内蔵された)プログラマブル利得増幅器、及びADC通信バス152(例えば、シリアルインタフェース(シリアルペリフェラルインタフェース、すなわちSPIなど)であるが、これに限定されるものではない)をさらに含んでいる。ADCモジュール140の開示された構造により、各ADCモジュール140を個別に、高品質かつ経済的に製造することができ、異なる数のADCモジュール140を異なるキャリア基板110に取り付けることができる。その結果、モジュール式EEGシステム100全体として入力チャンネルの総数が変化する。例えば、これに限定されるものではないが、一実施形態では、ADCモジュール140毎に8つのチャンネルがあるので、ADCモジュール140の数が異なれば、8個、16個、24個、32個、64個、又は256個以上のチャネルになる。
【0018】
図10を簡単に参照すると、キャリア基板110から例示的なADCモジュール140への電力の流れが示されている。各ADCモジュール140は、キャリア基板110上に配置された1つ以上の電源130のうちの1つに電気的に接続されている。さらに、各ADCモジュール140は、好ましくは2つの計装電源144を含み、一方はAVDD又は正のアナログ計装電源であり、他方はAVSS又は負のアナログ計装電源である。ADC148がそのアナログ電源のために非常にクリーンな電力を有する必要があるので、計装電源144は、非常に低いノイズ及び高い精度及び安定性を有するように特別に設計されている。計装電源144は、ADCモジュール140上でADC 148の近くに配置されることが重要である。一実施形態では、キャリア基板110は、参照番号370としてラベル付けされた独自の電源をさらに含み、この電源はADCモジュール140以外のオンボード構成要素に電力を供給し、当該技術分野で知られているように、バッテリ又は外部電源のいずれかによって電力供給される。
【0019】
キャリア基板110のコンピュータ150の右側の部分を示す
図5を参照すると、一実施形態では、モジュール式EEGシステム200は、例えば、これに限定されるものではないが、USBネットワーク接続220を介して、組み込みコンピュータ150に電気的に接続されたオプションのユニバーサルシリアルバス(USB)マルチプレクサ/デマルチプレクサ210をさらに含む。一実施形態では、通信コンピュータ230もキャリア基板110上に配置され、別の接続240(例えば、これに限定されるものではないが、USB接続240)を介して、任意選択のUSBマルチプレクサ/デマルチプレクサ210に接続部されている。ユーザデバイス250(例えば、これらに限定されるものではないが、ラップトップ、スマートフォン、デスクトップ、又は他のコンピューティングデバイス)もまた、さらなる接続260(例えば、これに限定されるものではないが、USB接続又は光ファイバ介したイーサネット(登録商標)接続260)を介して、任意選択のUSBマルチプレクサ/デマルチプレクサ210と接続されている。他の実施形態では、通信コンピュータ230は(通信コンピュータ230を表す破線によって示すように)キャリア基板110上に配置されないが、それにも拘わらず、別の接続270(例えば、これに限定されるものではないが、USB接続)を介して、又は光ファイバ接続270を介したイーサネット(登録商標)を介して、任意選択のUSBマルチプレクサ/デマルチプレクサ210と接続されている。
【0020】
さらに
図5を参照すると、任意選択のUSBマルチプレクサ/デマルチプレクサ210は、通信コンピュータ230とユーザデバイス250との間で、組み込みコンピュータ150のRTOSへの電気的接続を切り替えるように構成されている。
【0021】
デバイス間の電気的接続を切り替える機能により、内蔵型の通信コンピュータ230又はユーザデバイス250とワイヤレスで使用することができる1つのプリント回路基板を作製することを可能にし、その結果、コスト及びリスクを低減することができる。任意選択のUSBマルチプレクサ/デマルチプレクサ210は、
図5に示すように、組み込みコンピュータ150上で実行されるソフトウェアによって、又は1つ以上の手動制御スイッチ215を介して、制御することができる。いくつかの実施形態では、任意選択のUSBマルチプレクサ/デマルチプレクサ210は省略され、通信コンピュータ230又はユーザデバイス250は、例えば、それぞれ接続240、270を介して、又は接続260を介して、組み込みコンピュータ150に直接接続される。
【0022】
図6は、以下の相違点を除いて、
図5に示すモジュール式EEGシステム200と同様のモジュール式EEGシステム300の実施形態を示す。この実施形態では、例えば参照番号280、290、及び300として示される1つ以上の無線通信アダプタが、それぞれシリアルバス310を介して通信コンピュータ230に電気的に接続されている。一実施形態では、無線通信アダプタ280はBluetooth(登録商標)アダプタであり、別の実施形態では無線通信アダプタ290はWiFiアダプタであり、別の実施形態では無線通信アダプタ300は当該技術分野で知られている別の種類の無線通信アダプタである。一実施形態ではシリアルバス310はUSBであり、別の実施形態ではシリアルバス310はSPIである。他の実施形態では、シリアルバス310が当該技術分野で知られている別の種類のシリアルバスである。
【0023】
組み込みコンピュータ150と、USB上で動作するインターネットプロトコルによって通信コンピュータ230に接続された多くのシリアルインタフェース160との組み合わせは、高帯域幅通信を可能にし、これによって高分解能データの高サンプリングレートを可能にする。例えば、通信コンピュータ230がWiFiアダプタ290を介して通信する実施形態では、モジュール式EEGシステム300は、USB2.0を介してネットワークを使用する場合、16,384サンプル/秒で24ビットADCデータの64チャネルをデジタル化して送信することができ、又はUSB3.0を介してネットワークを使用する場合、16,384サンプル/秒で24ビットADCデータの256チャネルをデジタル化して送信することができる。
【0024】
図7を参照すると、モジュール式EEGシステム400の一実施形態では、ユーザデバイス250(例えば、ラップトップ、スマートフォン、デスクトップ、又は他のコンピューティングデバイス)は、ネットワーク接続260を介して(例えば、これに限定されるものではないが、USB接続320を介して)、組み込みコンピュータ150に直接接続されている。別の実施形態では、1つ以上の無線通信アダプタ280、290、300は、シリアルバス310を介して組み込みコンピュータ150に電気的に接続されている。
【0025】
図8を参照すると、モジュール式EEGシステム500の一実施形態は、1つ以上の電極コネクタ120、1つ以上の電源130、及び1つ以上のADCモジュール140を支持するキャリア基板110を備えている。
【0026】
この実施形態では、1つ以上のADCモジュール140の各々は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)330に接続される通信バス152(
図4参照)を有し、1つ以上のADCモジュール140の各ADC通信バス152は、双方向矢印160として示すように、シリアルペリフェラルインタフェース(SPI)を介してFPGA330に電気的に接続されている。
【0027】
一実施形態では、FPGA330は、
図8に円形要素335として概略的に示される、任意選択の機能ユニット335を含み、この機能ユニットは、各ADCモジュール140から送信されるADCデータにタイムスタンプを付けることができる。一実施形態では、組み込みコンピュータ150は、高速相互接続バス340(例えば、これに限定されるものではないが、アドバンスド拡張インタフェース(AXI:Advanced extensible Interface)バス)を介してFPGA330に電気的に接続されている。例えば、一実施形態では、FPGA330は、シリアルインタフェース(例えば、SPI)160のアレイとして構成され、データにタイムスタンプを付けることができる任意選択の機能ユニット335を含み、シリアルインタフェース160は、1つ以上のADCモジュール140に接続されている。FPGA330に構成されたオプションの機能ユニット335は、シリアルインタフェース160を介して1つ以上のADCモジュール140から受信された各ADCサンプルの正確なタイムスタンプ付けを可能にする。
【0028】
シリアルインタフェース160は、任意選択で、組み込みコンピュータ150によって、直接サービスを受けることができ、高いデータ転送レートと低いCPU負荷とを可能にする。FPGA330が使用される理由は、現在、市販の高速、高密度のSPI通信アダプタチップが存在しないため、上述の機能を有するFPGA330を構成することは、実用的で、コスト効率がよく、プリント回路基板のスペースの点でコンパクトになるからである。
【0029】
モジュール式EEGシステム500の1つ以上のADCモジュール140及びそれとの相互接続は、例えば、
図1のモジュール式EEGシステム100に関して上述したものと同一である。一実施形態では、キャリア基板110は、
図8に示すように、1つ以上のバッテリコネクタ155をさらに備えている。
【0030】
図9を参照すると、一実施形態におけるモジュール式EEGシステム500は、各々がシリアルバス310を介して組み込みコンピュータ150に電気的に接続された1つ以上の無線通信アダプタ280、290、300をさらに備えている。一実施形態におけるモジュール式EEGシステム500は、任意選択で電気絶縁装置360を介して、組み込みコンピュータ150に電気的に接続された有線通信アダプタ350をさらに含む。一実施形態における有線通信アダプタ350は、イーサネット(登録商標)アダプタ350であるが、他の実施形態では、有線通信アダプタ350は、光ファイバを介したイーサネット(登録商標)アダプタ、又は当該技術分野で知られている任意の種類の有線通信とすることができる。
【0031】
本明細書に開示されるモジュール式EEGシステム100、200、300、400、500のいずれも、脳波計(EEG)、心電計(EKG)、又は筋電計(EMG)として動作するように構成することができる。スマートフォン又はラップトップを含む本明細書に開示されるモジュール式EEGシステム100、200、300、400、500のこれらの実施形態は、さらにスマートフォン又はラップトップ上で実行され、組み込みコンピュータ150と通信し、WiFi、Bluetooth(登録商標)、イーサネット(登録商標)、光ファイバを介したイーサネット(登録商標)、又は他の無線プロトコルもしくはネットワークプロトコルを介した通信を処理する専用アプリケーションをさらに含むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
モジュール式脳波計(EEG)システムは、それぞれが直接シリアル接続を介して組み込みコンピュータと接続された複数の独立した同一のアナログ-デジタル変換器(ADC)モジュールを備えている。複数のADCモジュールの各々はCPUを含まず、むしろADCモジュールの各々は直接シリアル接続を介して、組み込み中央プロセッサ又はCPUと通信する。モジュール式EEGシステムは、心電計(EKG)及び筋電計(EMG)としても使用することができる。モジュール式EEGは、医療専門家、初期対応者、及び他の消費者による使用のために、産業界で製造することができる。
【0033】
前述の説明を考慮すると、本発明に対する多数の変更が当業者には明らかであろう。本発明を、図示され、説明された正確な構成及び動作に限定することは望ましくなく、すべての適切な修正及び均等物は、本発明の範囲内に入るものとして使用され得る。したがって、この詳細な説明は、本発明の原理を例示するものとしてのみ解釈されるべきであり、当業者が本発明を実施及び使用することを可能にし、それを実施する最良の実施形態を教示することを目的として提示されるものである。添付の特許請求の範囲に含まれるすべての改変に対する排他的権利が留保される。本明細書に引用されるすべての特許、特許公報及び出願、ならびに他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】