(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】波エネルギー捕捉デバイス
(51)【国際特許分類】
F03B 13/18 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
F03B13/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574139
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2022067355
(87)【国際公開番号】W WO2022269039
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514114529
【氏名又は名称】マリン パワー システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】フォスター グラハム
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA12
3H074BB11
3H074CC04
(57)【要約】
波エネルギー捕捉デバイスが提供され、このデバイスは、動作モードに位置決めされたときに、波エネルギーを捕捉して有用なエネルギーに変換するように配置される。デバイスは、ピボット点と、ピボット点に固定された浮力波エネルギー吸収体とを備え、デバイスは更に、波エネルギーを捕捉するように配置される動作モードを含み、動作モードでは、ピボット点は、水域の面の上方に支持され、水域における波の動きに対して実質的に静止した状態に保持され、浮力吸収体は、ピボット点からダウンウェーブに位置する動作位置で水域の面と係合するように位置決めされ、吸収体は、波の動きからの運動力を受けてピボット点を中心に回転するように配置され、回転は、動作モードでは吸収体が往復動するように配置される吸収体の回転円弧を定める。本開示は、有用なエネルギーに変換するための波エネルギーの改善された捕捉を提供することを目的とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波エネルギーを捕捉して有用なエネルギーに変換するように配置された波エネルギー捕捉デバイスであって、
ピボット点と、
前記ピボット点に固定された浮力波エネルギー吸収体と、
を備え、
前記デバイスは、前記波エネルギーを捕捉するように配置された動作モードを更に含み、前記動作モードでは、
前記ピボット点は、水域の面の上方に支持され、前記水域での波の動きに対して実質的に静止した状態に保持され、
前記浮力吸収体は、前記ピボット点のダウンウェーブに位置決めされる動作位置で前記水域の前記面と係合するように位置決めされ、
前記吸収体は、前記波の動きからの運動力を受けて前記ピボット点を中心に回転するように配置され、前記回転は、前記吸収体が前記動作モードで往復動するように配置される前記吸収体の回転円弧を定める、
ことを特徴とする波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項2】
前記吸収体は、波係合面と、湾曲したダウンウェーブ面とを備え、前記湾曲したダウンウェーブ面は、前記動作モードでは前記波係合面のダウンウェーブに位置決めされ、
前記ダウンウェーブ面の少なくとも一部は、前記回転円弧の一部に実質的に沿って前記波係合面に隣接して延びる曲線を含む、
請求項1に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項3】
前記曲線は、前記回転円弧と同心であるか、又は実質的に同心である、
請求項2に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項4】
前記波係合面は、前記回転円弧と交差している、
請求項2又は3に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項5】
前記ピボット点は、ピボット点高さで支持されており、
前記ピボット点高さは、調整可能である、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項6】
前記ピボット点は、前記ピボット点に近接する第1の端部に回転可能に取り付けられた少なくとも2つの支持アームによって前記ピボット点高さで支持され、
前記第1の端部から遠位にある第2の端部を中心とする前記少なくとも2つの支持アームの回転が、前記ピボット点高さを調整するように配置されている、
請求項5に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも2つの支持アームは、互いに平行に取り付けられている、
請求項6に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項8】
前記吸収体の前記質量は、調整可能である、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項9】
前記吸収体は、少なくとも1つの内部区画を備える、
請求項8に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項10】
前記吸収体は、複数の内部区画を備える、
請求項9に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項11】
前記内部区画内の第1の流体を第2の流体で選択的に置換するように配置されたポンプを更に備え、
前記第1の流体及び前記第2の流体は、室温で異なる密度を含む、
請求項9又は10に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項12】
前記第1の流体は空気であり、前記第2の流体は水である、
請求項11に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項13】
前記置換は、予め定義された比のセットから選択された前記第1の流体と前記第2の流体の比を定めるように配置され、前記比の各々は、前記水域の対応する特性に関連付けられる、
請求項11又は12に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項14】
前記特性は、波の高さ、波の周波数、波の速度、波の力及び波の形状の群から選択される1又は2以上である、
請求項13に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項15】
前記ピボット点から延びるアーム部材であって、前記ピボット点を中心に回転するように配置されたアーム部材を更に備え、
前記浮力波エネルギー吸収体は、前記ピボット点から遠位にある前記アーム部材の端部に近接して取り付けられている、
請求項1乃至14の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項16】
前記アーム部材は、前記水域の前記面が実質的に平坦である場合、前記ピボット点の垂直面に対して静止角度に位置決めされ、前記静止角度は、15度から70度の間で選択される、
請求項15に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項17】
前記アーム部材は、前記動作モードでは、その間に移動角度を定める第1の位置及び第2の位置の間を移動するように配置され、前記移動角度は、前記静止角度の周りに最大90度で配置される、
請求項16に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項18】
前記ピボット点及び/又は前記吸収体を前記回転円弧の平面に垂直な平面上でヨーイングさせるように配置されたヨー機構を更に備える、
請求項1乃至17の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項19】
前記ヨーイングは、平均又は卓越波方向に対向する前記吸収体の前記波係合面を再位置決めするように配置されている、
請求項18に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項20】
前記ヨー機構は、前記再位置決めの後に前記ヨーイングを制限するように更に配置される、
請求項19に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項21】
前記吸収体は、前記吸収体の長さ又は高さよりも大きい幅を備え、
前記動作モードでの前記吸収体の前記幅は、平均又は卓越波方向に対して垂直に位置決めされる、
請求項1乃至20の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項22】
前記吸収体の回転を前記有用なエネルギーに変換するように配置されたエネルギー変換器を更に備える、
請求項1乃至21の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項23】
前記水域の底に係留されるように配置された浮力プラットフォームを更に備え、前記プラットフォームは、前記動作モードでは水面下に沈められ、前記水域の前記面の上方で前記ピボット点を支持するように配置される、
請求項1乃至22の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項24】
前記吸収体が前記水域の前記面の上方に位置決めされる暴風雨サバイバルモードを更に備え、
前記表面は、前記水域の最大波高によって定められる、
請求項1乃至23の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項25】
前記吸収体が前記水域の前記面の上方に位置決めされ且つ前記ピボット点によって占められる垂直面で前記ピボット点の下方に位置決めされる輸送モードを備える、
請求項1乃至24の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイス。
【請求項26】
請求項1乃至25の何れか1項に記載の波エネルギー捕捉デバイスを支持するように配置された浮力式オフショア再生可能エネルギーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、再生可能エネルギー捕捉デバイスに関し、詳細には、波エネルギーの捕捉及び有用なエネルギーへの変換に使用するための波エネルギー捕捉デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
波エネルギーの捕捉は、多くの場合、波の動きの結果として移動する物体の動きを、電気エネルギー等の有用な形態のエネルギーに変換するためのエネルギー変換器の動きに転換させることを含む。
【0003】
波エネルギーを捕捉する一般的な方法は、例えば、振動するフラップの動きを伴い、このフラップは、そこに作用する波の力の結果として角度方向に働くストロークを移動することが多い。このような設計では、フラップの片側に波力が衝突すると、フラップは、移動する際に必ずフラップの反対側に波を伝播(放射)するので、波の動きからのエネルギー吸収を最大化できないことが多い。このような双方向フラップは更に、波の動きから生じる様々な方向の力からのエネルギー捕捉を最大化することができない。
【0004】
同様の波伝播の問題は、例えば、全方向性浮動又は水面下ポイント吸収体のような多方向波エネルギー捕捉デバイスの形態で提示される。このような吸収体は、波力の運動力によって移動して、ある程度までは他の全ての方向に波を放射することなくエネルギーを捕捉することができないので、捕捉されたエネルギーの一部が過度に浪費される。
【0005】
従って、改善されたエネルギー捕捉能力を有する波エネルギー捕捉デバイス、具体的には、好ましくはデバイスによる結果として生じる波の伝播を伴わずに、波の動きから生じる利用可能な方向性の力の捕捉を最適化するように配置されたデバイスを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、波エネルギー捕捉デバイス、及び波エネルギー捕捉デバイスを支持するための浮力式オフショア再生可能エネルギー捕捉システムに向けられている。デバイスは、浮力波エネルギー吸収体を備え、浮力波エネルギー吸収体は、吸収体本体に直接又は近接してピボット点に結合され、或いは任意に、ピボット点と吸収体本体との間に延びるアーム部材を介して結合され、吸収体及び/又はアーム部材はピボット点を中心に回転可能である。デバイスは、エネルギー変換器によって有用なエネルギーに変換するために波エネルギーを捕捉するようにデバイスが配置された動作モードを備える。動作モード又は使用モードでは、吸収体は、上方でピボット点が支持される水域の面と係合して位置決めされる。吸収体が水域と係合する位置は、本明細書では「動作位置」と呼ばれ、ピボット点のダウンウェーブに位置する。「ダウンウェーブ」という用語は、本発明の文脈では、波の方向に従って「下流側」を意味すると当業者には理解されるであろう。具体的には、「ピボット点のダウンウェーブ」という用語は、波の伝播軌跡に沿って、ピボット点と垂直方向に整列した点よりも遠い点、又はピボット点の垂直方向に真下よりも更に遠い点を指す。このように、吸収体は、動作モードでは、ピボット点の中心の一方の側に位置する吸収体の少なくとも大部分を有する静止状態で位置決めされ、上記側は、卓越波伝播軌跡に沿って中心よりもより遠くに位置する。好ましい実施形態では、吸収体は、動作モードでの静止時に、ピボット点の中心の片側に全体的に配置することができる。本発明の文脈における「静止時」という用語は、当業者には、吸収体が回転円弧に沿って能動的に移動していない間の持続的な期間、例えば、波の動きが最小限又は全くない穏やかな海の状態の間、又は水域の面が実質的に平坦である時を意味すると理解されるであろう。このような構成でのアーム部材を備える実施形態では、アーム部材は、ピボット点によって占められる垂直面に対して非平行又は斜めに配置される。
【0007】
任意選択的にアーム部材によってピボット点に回転可能に結合されながら、吸収体をこのように位置決めすることにより、吸収体又はその上に位置する点は、水域内の波の動きによる運動力を受けて回転円弧に沿って移動するように拘束される。詳細には、卓越波方向の波移動により、吸収体は、最初に、波の移動により海水位が高くなるにつれて卓越波方向で上方に、その後、海水位が上記波の移動に続いて低くなるにつれて回転円弧に沿って戻るように回転円弧に沿って往復動する。従って、吸収体、ピボット点とピボット点から遠位の吸収体の外側縁部との間に延びる仮想直線、及び/又は吸収体とピボット点との間に取り付けられたアーム部材の往復角運動が、吸収体と波との間の相互作用によって引き起こされる。この回転円弧に沿った吸収体の往復動、及び、吸収体、ピボット点とピボット点から遠位の吸収体の外側縁部との間に延びる仮想線、及び/又は、アーム部材の任意選択の角度運動により、吸収体は、ヒーブ(垂直波成分)及びサージ(水平波成分)の両方で、水域の波から波エネルギーを吸収することができ、波エネルギーの捕捉効率を高めることができる。水域の波は通常、特定の時点での主波方向を有するので、この方向での波のこれらヒーブ成分及びサージ成分の捕捉は、本発明によって好ましくは最適化される。
【0008】
従って、本開示の第1の形態によれば、波エネルギーを捕捉して有用なエネルギーに変換するように配置された波エネルギー捕捉デバイスが提供され、デバイスは、ピボット点と、ピボット点に固定された浮力波エネルギー吸収体とを備え、デバイスは更に、デバイスが波エネルギーを捕捉するように配置された動作モードを含み、動作モードでは、ピボット点は、水域の面の上方に支持され、水域での波の動きに対して実質的に静止した状態に保持され、浮力吸収体は、ピボット点のダウンウェーブに位置決めされた動作位置で水域の面と係合するように位置決めされ、吸収体は、波の動きからの運動力を受けてピボット点を中心に回転するように配置され、回転は、動作モードでは吸収体が往復動するように配置される吸収体の回転円弧を定める。
【0009】
好ましい実施形態では、吸収体は、波係合面と、湾曲したダウンウェーブ面とを備え、湾曲したダウンウェーブ面は、動作モードでは波係合面のダウンウェーブ側に位置決めされ、ダウンウェーブ面の少なくとも一部は、回転円弧の一部に実質的に沿って波係合面に隣接して延びる曲線を含む。
【0010】
好ましくは、吸収体は、波からのエネルギーの捕捉を向上させるように特別な形状にされる。好ましい実施形態では、吸収体は、平均又は卓越波方向に面するように配置される。例えば、波係合面を有する実施形態では、デバイスは、好ましくは、平均又は卓越波方向に対向するように波係合面を配向するように配置される。従って、好ましい実施形態では、吸収体の(波方向と平行な面での)断面形状は、波エネルギーの捕捉を最大化するように最適化される。
【0011】
動作モードでの静止状態では、水域の面が実質的に平坦である場合には、吸収体は、水域の面と係合するように配置され、吸収体の一部が水面下に、及び吸収体の一部が水上にあり部分的に水没している。吸収体は、波の動きの結果、動作モードで移動する場合、波からの運動力を受けて移動するように配置され、水中及び水外に更なる移動を伴うことができる。吸収体が水中でどのように移動するかは、エネルギーの捕捉効率に関して有意な関連を有する可能性がある。従って、吸収体は、好ましくは、アーム部材によって任意選択的に定められる回転円弧に沿って移動する際に、(そのエネルギーを吸収するために)接近する波の動きに対する抗力を与えるように配置され、更に好ましくは、回転円弧を通って移動する際に、波を伝播させないように又は最小限に伝播させるように配置される(他の場合には、これによってエネルギーを浪費することになる)。
【0012】
エネルギー捕捉を最適化するために、吸収体は、好ましくは、動作モードでは、卓越波方向と反対方向に面し、当該方向でピボット点から離れる少なくとも1つの湾曲したダウンウェーブ面を備える。幾つかの好ましい実施形態では、湾曲したダウンウェーブ面の曲線は、回転円弧の一部に実質的に追従し、湾曲したダウンウェーブ面が、回転円弧と同心であるか又は実質的に同心であるようにし、その中心は、このような好ましい実施形態では、実質的にピボット点に位置する。回転円弧の一部に追従する、又は実質的に追従することにより、湾曲したダウンウェーブ面は、好ましくは、吸収体が波の動きからの運動力を受けて移動されるとき、水域を通過するように配置され、湾曲したダウンウェーブ面は、水域を妨害しないか又は他の方法で水域に対抗せず、従って、好ましくは、波を伝播しないか、又は最小限の伝播しか引き起こさないようになる。湾曲したダウンウェーブ面による何れかのこのような波の伝播は、他の場合には、吸収体によって捕捉された波エネルギーを浪費することになる。
【0013】
従って、湾曲したダウンウェーブ面は、好ましくは、波エネルギー捕捉デバイスのこのような実施形態に、高度に有利な特性を与え、デバイスは、卓越波方向からの波エネルギーを吸収することができる一方で、他の場合に吸収体によって捕捉されたエネルギーの有意な割合を浪費することになる他の方向での波の伝播(放射)を最小限に抑えることができる。
【0014】
他の波エネルギー捕捉デバイスは、この特性を共有していない。例えば、典型的な振動フラップ波エネルギー捕捉デバイスは、角度方向に働くストロークを移動する垂直フラップを備える。この設計では、何らかの方法でフラップの移動に伴ってフラップの反対側に波を伝播(放射)させることなく、フラップの一方の側から接近する波のエネルギーを吸収することはできない。同様に、典型的な無指向性ポイント吸収体は、他の全ての方向に波をある程度放射することなく、卓越波方向からの波エネルギーを吸収することができず、エネルギーを浪費する。
【0015】
波係合面は、水域内の波の動きに対抗するように配置され、かかる波の動きが、回転円弧に沿った吸収体の動きに運動力を与えるようになる。好ましい実施形態では、波係合面は、回転円弧と交差する。このような実施形態では、波係合面は、回転円弧と整列せず、好ましくは回転円弧に対して傾斜しており、これにより、好ましくは、卓越波方向での最適な波エネルギーの捕捉を提供する。波係合面は、好ましくは実質的に平坦である。好ましい実施形態では、波係合面は、回転円弧に対して実質的に垂直であり、吸収体が動作モードで静止状態にあるときに、波係合面は、ピボット点によって占められる垂直平面に対して垂直で実質的に平行に配向されるようになる。
【0016】
幾つかの実施形態では、回転円弧に沿った吸収体の往復動又は振動が、エネルギーが吸収されるべき波の周波数に関連する往復動又は振動の周波数で行われることが望ましいとすることができる。特定の実施形態では、往復動又は振動の周波数は、波の周波数とほぼ同じか又は同等であることが好ましいとすることができる。往復動又は振動の周波数を波の周波数と整合させること又は波の周波数により近づけることは、「同調」として知られており、本明細書では「同調」と呼ばれ、好ましくは、吸収体によって捕捉されるエネルギーの量を増加させる。このような同調は、幾つかの実施形態では、好ましくは、例えば、波の波周期に沿った吸収体の位置及び/又は回転円弧に沿った吸収体の位置、及び/又はピボット点によって占められる垂直面に対するアーム部材の角度、及び/又は特定の海状態及び/又は水域の特性などのデバイスの特性に応じて、吸収体の浮力及び/又は質量を調整することによって可能となる。従って、好ましい実施形態では、吸収体の質量は調整可能である。例示的なこのような実施形態では、吸収体は、好ましくは、少なくとも1つの内部区画を含み、任意選択的に複数の内部区画を含む。好ましい実施形態では、デバイスは更に、内部区画内の第1の流体を第2の流体で選択的に置換するように配置されたポンプを備え、第1の流体及び第2の流体は、室温で異なる密度を含む。第1の流体は、好ましくは空気であり、第2の流体は、好ましくは水であり、又はその逆であってもよい。吸収体の質量及び/又は浮力を調整するための任意の適切な手段が提供される実施形態が理解されるであろう。
【0017】
好ましい実施形態では、変位は、予め定義された比のセットから選択された第1の流体及び第2の流体の比を定めるように配置され、各比は、水域の対応する特性に関連付けられる。従って、デバイスは、好ましくは、例えば、任意選択的に海状態を定める、水域の特性に従って、回転円弧に沿って吸収体の往復動/振動の周波数を「同調」するように配置される。この特性は、好ましくは、波の高さ、波の周波数、波の速度、波の力、波の形状からなる群から選択される1又は2以上のものである。上記比は、例えば、複数のタイムポイントにわたって測定された複数の特性測定値に従って選択することができる。特性は、例えば、その平均又は分散など、複数の測定値から決定又は推定される値を構成することができる。比は、1又は2以上の特性を変数として含む何れかの適切な式に従って選択することができる。比が水域の何れかの適切な特性に従って選択され、好ましくは、回転円弧に沿った吸収体の往復動/振動の周波数を水域の波の周波数と実質的に整合させるように選択される実施形態が理解されるであろう。
【0018】
好ましくは、吸収体は、予め定義された比で第1流体及び/又は第2流体で選択的に充填されるように配置された複数の内部区画を含み、異なる海状態に対する複数の予め定義された同調状態を吸収体に与える。水のような第1又は第2の流体でより小さな内部区画を完全に充填することは、含まれる流体のスロッシングを防止し、スロッシングが予測不可能な吸収体の挙動及び/又は吸収体構造上の予測不可能な力につながる可能性がある単一の大きな内部区画内の流体の量を調整するよりも好ましい。幾つかの実施形態では、1又は2以上の内部区画に配置された1又は2以上のバッフルを設ける等の他の適切な機構を使用して、上記スロッシングを更に防止することができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、デバイスは、好ましくは、ピボット点から延びてピボット点を中心に回転するように配置されたアーム部材を更に備え、浮力波エネルギー吸収体は、アーム部材のピボット点から遠位にあるアーム部材の端部に近接して取り付けられる。最も好ましいこのような実施形態では、吸収体は、アーム部材に対して回転できないようにアーム部材に固定することができる。アーム部材を有する幾つかの好ましい実施形態では、水域の面が実質的に平坦である場合、アーム部材は、好ましくは、ピボット点の垂直面に対して静止角度に位置決めされ、静止角度は、15度~70度の間から選択される。より好ましくは、静止角度は25度~65度の間から選択される。静止角度は、好ましくは、波の動きからの運動力の結果として往復動による波エネルギーの捕捉を最適化するために、アーム部材及び吸収体の最適な向きを定める。
【0020】
動作モードでは、アーム部材は、好ましくは、その間の移動角度を定める第1の位置と第2の位置との間を移動するように配置され、移動角度は、静止角度の周りに最大90度で配置され、例えば、静止角度の何れかの側に最大45度のアーム部材の移動を提供するように配置することができる。移動角度は、好ましくは、静止角度の周りに最大60度で配置され、例えば、静止角度の何れかの側に最大30度のアーム部材の移動を提供するように配置することができる。任意の適切な静止角度及び移動角度を使用することができ、静止角度は、ピボット点によって占められる垂直面のダウンウェーブ0度より大きい角度であることが理解されるであろう。幾つかの実施形態では、このような何れかのアーム部材は、ピボット点の周りのトルクを最小にするために可能な限り短いことが好ましく、幾つかの実施形態では、トルクを最小にするために、吸収体本体がピボット点に直接固定されるようなアーム部材を有さないことが好ましいことが理解されるであろう。アーム部材がない実施形態では、アーム部材に関連して本明細書で記載される何れかの特徴は、ピボット点とピボット点から遠位にある吸収体の外側縁部との間に延びる仮想直線にも同様に適用できることが理解されるであろう。例えば、アーム部材の静止角度に関連する本明細書の議論は、上記アーム部材のない実施形態では仮想直線に等しく適用することができる。従って、静止角度は、代わりに、ピボット点の垂直面に対する仮想線の静止角度を指すことができる。
【0021】
デバイスは、好ましくは、ピボット点及び/又は吸収体を、回転円弧の平面に垂直な平面(本明細書ではヨー平面と呼ぶ)上でヨーイングするように配置されたヨー機構を更に備える。このようなヨーイングは、好ましくは、吸収体及び好ましくはその波係合面を吸収体の最大寸法が卓越波方向に対向するように再配向させるように配置される。水域の波が時間にわたって同じ卓越方向を有しない場合があり、従って、波エネルギーの捕捉を最大化するために、デバイス又はそのオペレータは、デバイスによる波エネルギーの捕捉を促進するために、波方向が適切に対向するように吸収体の向きを調整することが必要とされる場合があるので、この特徴は好ましいとすることができる。このような実施形態では、デバイスは更に、ヨーイングを知らせるように配置された波方向センサを備えることができる。卓越波方向を決定する何れかの適切な手段が使用される実施形態は理解されるであろう。本明細書で使用される「卓越波方向」という用語は、本発明の文脈内では、水域内で最大の波伝播力が提供又は検出される方向を意味すると理解され、平均的な波方向又は2以上の波方向を構成することができる。
【0022】
幾つかの好ましい実施形態では、ヨーイングは、平均又は卓越波方向に対向する吸収体の波係合面を再位置決めするように配置される。ヨー機構は、好ましくは、再位置決めの後にヨーイングを制限するように更に配置される。従って、ヨー機構を用いたデバイスの回転は、好ましくは、波の動きに対して堅牢であり、吸収体の向きが変えられると、波の作用が平面に沿ったデバイスの更なる回転を引き起こさないようになる。何れかの更なる回転は、エネルギーの浪費となる。好ましい実施形態は、ヨーイングを行うために電源を必要とするアクティブヨー機構を備える。他の好適な実施形態は、吸収体、及び好ましくはその波係合面が、例えばフィン又はラダー機構を使用して、自動的に卓越波方向と反対の向きにできるように配置された受動的ヨー機構を備えることができる。
【0023】
幾つかの好ましい実施形態では、ヨー機構は、平面上でのデバイスの自由回転、例えば360度の完全な回転を可能にするように配置することができる。理論に束縛されることを望まないが、風向きとは異なり、波の向きは、海又は海洋のオフショア位置のような本発明の意図する水域では、多くの場合は時間の経過に伴う可能性のある方向転換に直面することが少なく、従って、他の好ましい実施形態では、ヨーイングは、360度より小さいヨーイング角度、例えば最大で90度、及びより好ましくは最大45度の範囲内で実行されるように制限することができる。
【0024】
好ましい実施形態では、吸収体は、吸収体の長さ又は高さよりも大きい幅を備え、動作モードでの吸収体の幅は、平均又は卓越波方向に対して垂直に位置決めされる。吸収体の最大寸法である幅は、卓越波の動き/方向に対向するように配置された吸収体の表面積、及び好ましくはその波係合面を最大化し、従って波から捕捉されるエネルギーを最大化するために好ましいとすることができる。このような実施形態では、エネルギー捕捉を最大化するために、波の方向に対する吸収体の正しい整列が望ましい。従って、このような実施形態は、好ましくは、本明細書に記載されるようなヨー機構を備え、吸収体の波係合面を卓越波方向に対向して向けるように配置される。
【0025】
好ましい実施形態では、デバイスは更に、吸収体の回転を有用なエネルギーに変換するように配置され、任意選択的に吸収体によるアーム部材の回転を有用なエネルギーに変換するように配置されたエネルギー変換器を備える。エネルギー変換器は、好ましくは、回転発電機(これは、例えば、電気又は液圧とすることができる)である。波エネルギーを電気エネルギーなどの有用なエネルギーに変換することができる他の何れかの適切な形態のエネルギー変換器、例えば、リニア電気発電機、液圧シリンダ、回転運動を直線運動に変換するように配置された機構(クランクアーム又はラック及びピニオンなど)と組み合わされた任意の種類のリニア発電機が理解されるであろう。回転発電機は更に、使用される特定のエネルギー変換器のタイプにより良好に適合するように、ピボット点を中心とする吸収体及び/又はアーム部材の回転速度を変換するように配置されたギアボックス等のギア装置に結合することができる。幾つかの好ましい実施形態では、エネルギー変換器は、吸収体及び/又はアーム部材の移動アクチュエータ又はリミッタの付加的な機能を提供するように配置することができ、この機能を実行するための電源を受けることができることが理解されるであろう。このような移動の作動又は制限の目的は、好ましくは、例えば暴風雨サバイバルモードでは、吸収体を水域の面上に移動及び保持することである。幾つかの実施形態では、エネルギー変換器は、吸収体を、吸収体が水域の面の上方に位置決めされる懸下位置に移動させるために、吸収体及び/又はアーム部材をピボットの周りに回転させることができる。エネルギー変換器は、吸収体及び/又はアーム部材の更なる移動を制限することによって吸収体を固定位置に維持することができ、又は吸収体を懸下位置に維持するために、固定手段等の更なる移動制限機構を使用することができる。移動制限機構は、好ましくは、エネルギー変換器上にかかる負荷を軽減し、他の場合には吸収体を懸下位置に維持するために電源を必要とする可能性がある。このような何れかの適切な移動制限部材が理解されるであろう。また、エネルギー変換及び移動作動/制限の機能を提供するために、何れかの適切な別個の構成要素又はシステムを使用できることも理解されるであろう。
【0026】
好ましい実施形態では、デバイスは更に、水域の底に係留されるように配置された浮力プラットフォームを備え、プラットフォームは、動作モードでは水面下に沈められ、水域の面の上方でピボット点を支持するように配置される。プラットフォームは、好ましくは、何れかの適切な浮力を有するプラットフォームであり、好ましくは、動作モードでは波の動きに対して静止ピボット点を提供するように配置される。プラットフォームの浮力は、好ましくは、浮力プラットフォームを水域の底に係留するように配置された係留手段の張力を相殺するように配置され、張力は、動作モードではプラットフォームに安定性を提供し、ピボット点を波の動きに対して実質的に静止させる。係留手段は、好ましくは、設置に先立って、ピボット点を水域の面の上方に支持しながら、プラットフォームが所望の場所に輸送できるように、所望の場所に設置されるように配置される。浮力プラットフォームは、好ましくは、テンションレッグプラットフォーム(TLP)であるが、何れかの適切なプラットフォームが理解されるであろう。
【0027】
デバイスは、好ましくは、吸収体が水域の面の上方に位置決めされる暴風雨サバイバルモードを更に備え、上記面は、水域の最大波高によって定められる。暴風雨サバイバルモードは、吸収体が波エネルギーを捕捉しないように水域の面の上方に位置決めされる点で、オペレータモードとは異なる。暴風雨サバイバルモードの目的は、吸収体に対する過剰な波力(暴風雨の間に経験されるような)の影響を制限することであり、波力は、デバイス又はそれに結合されたエネルギー変換システムの構成要素に損傷又は過剰な摩耗を引き起こす可能性がある。具体的には、暴風雨サバイバルモードでは、暴風雨(又は大きな)海状態の間、水域の波が穏やかな海状態よりも変動しより顕著になると予想されるので、吸収体に対する水域の面の位置が変化すると予想される。従って、暴風雨サバイバルモードの文脈での上述の面は、水域の最大波高に応じて決定される。実施形態では、吸収体は、例えば、アーム部材(又は仮想線)がピボット点によって占められる垂直面に対して角度をなして位置決めされた状態で、水域の面上に懸下することができる。吸収体は、このような位置では、ピボット点にトルクが加えられるように、アーム部材及び/又はピボット点に下向きの力を加えることができ、その移動制限機構は、吸収体及び/又はアーム部材を懸下位置に懸下するように機能する。従って、デバイスは更に、ピボット点(及び何れかの移動制限機構)が吸収体、及び任意選択的にアーム部材の重量によって加えられるトルクから解放されるように、吸収体及び/又はアーム部材を懸下位置に固定するように配置された固定手段を備えることができる。暴風雨サバイバル構成では、アーム部材(又は仮想線)がピボット点によって占められる垂直平面と実質的に平行であり、最小の回転トルクが吸収体、及び任意選択的にアーム部材によってピボット点(及び何れかの移動制限部材)に加えられるような実施形態が理解されるであろう。
【0028】
デバイスは、好ましくは、吸収体が水域の面の上方に位置決めされ、更にピボット点によって占められる垂直面でピボット点の実質的に下方に位置決めされる輸送モードを更に備える。輸送モードは、好ましくは、デバイスを固定のための所望の位置への輸送を可能にするように配置される。輸送モードでは、ピボット点は、好ましくは、アーム部材(又は仮想線)がピボット点によって占められる垂直面と整列するように配置される一方で、吸収体が水域の面の上方に留まるような高さに配置される。この構成は、好ましくは、吸収体を水域の面の上方に懸下するのに必要なエネルギーを最小にする。アーム部材のない実施形態では、「ピボット点の実質的に下方」とは、吸収体の大部分がピボット点の下方に位置決めされことを意味することが理解されるであろう。
【0029】
幾つかの好ましい実施形態では、ピボット点は、ピボット点高さで支持され、ピボット点高さは調整可能である。従って、ピボット点を支持する何れかの適切なピボット点支持構造又はナセルは、その高さを調整させることができる。ピボット点高さの調整は、好ましくは、経験される潮汐及び波の範囲全体を通して最適である、ピボット点によって占められる垂直面に対するアーム部材(又は仮想線)の角度を提供する。このようなピボット点高さの調整は、例えば、検出された平均海水位及び/又は平均波高に対応することができる。このような高さ調整は、好ましくは、本発明が最小限の長さのアーム部材を有することも可能にし、従って、アーム部材に固定され、ピボット点を中心とするその回転によって駆動されるように配置された動力取出装置又はエネルギー変換器によって生じるトルクの低減を可能にする。ピボット点高さ調整は更に、動作モードではピボット点を水域の面に近づけるが、例えば暴風雨サバイバルモードのような大きな海状態でピボット点を水域の面から離す移動を可能にすることができる。
【0030】
好ましくは、ピボット点は、ピボット点に近接するその第1の端部で回転可能に固定された少なくとも1つの支持アームによってピボット点高さで支持され、第1の端部から遠位にあるその第2の端部を中心とする少なくとも1つの支持アームの回転は、ピボット点高さを調整するように配置される。ピボット点は、最も好ましくは、少なくとも2つの支持アームによってピボット点高さで支持される。少なくとも2つの支持アームは、好ましくは、互いに平行に固定される。このような実施形態では、2つの支持アームは、好ましくは、ピボット点高さでのピボット点に最適な安定性を提供する一方で、高さ調整の間ピボット点の周りの何れかのピボット点支持構造又はナセルの回転も許容しない、平行四辺形の平行な辺を形成する。従って、上記支持構造又はナセルは、ピボット点高さ調整にわたって実質的に一定の向きに維持される。ピボット点高さを調整するための第2の端部を中心とした支持アームの回転は、例えばモータ又は油圧ラムのような何れかの適切なアクチュエータによって行うことができる。第2の端部を中心とする1又は2以上及び好ましくは2以上の支持アームの回転を引き起こすアクチュエータは、例えば液圧シリンダのような高い力の臨時の使用に適したものを選択することができる。動力取出装置又はエネルギー変換器アクチュエータは、例えばモータ及びギアボックスのように、下側トルク及び連続使用に適したものを選択することができる。
【0031】
本発明の更なる形態によれば、第1の形態によるデバイスを備えた浮力式オフショア再生可能エネルギーシステムが提供される。
【0032】
本開示の1又は2以上の形態又は実施形態に組み込むのに好適であるとして本明細書に記載される何れかの特徴は、本開示の何れか及び全ての形態にわたって一般化可能であることが意図されることが理解されるであろう。
【0033】
次に、本開示の実施形態について、添付図面を参照しながら例示として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第2の形態による浮力式オフショア再生可能エネルギーシステム上に支持された動作モードでの第1の形態による波エネルギー捕捉デバイスの斜視図を示す。
【
図2】第1の卓越波方向における
図1の実施形態の側面図を示す。
【
図4】波エネルギー捕捉デバイスが、第2の卓越波方向と整列されるようにそのヨー機構上で回転される、
図1の実施形態の平面図を示す。
【
図5】内部区画を有する吸収体を備える第1の形態の更なる実施形態の切り欠き側面図を示す。
【
図6】
図1の実施形態のピボット点のクローズアップ斜視図である。
【
図7】暴風雨サバイバルモードで示された
図1の実施形態の側面図を示す。
【
図8】輸送モードで示された
図1の実施形態の側面図を示す。
【
図9】第2の形態による、浮力式オフショア再生可能エネルギーシステムの代替実施形態の斜視図である。
【
図10A】第2の形態による、浮力式オフショア再生可能エネルギーシステム上に支持された動作モードでの第1のピボット点高さにて支持されたピボット点を有する、第1の形態による波エネルギー捕捉デバイスの更なる実施形態の側面図を示す。
【
図10B】ピボット点が第2のピボット点高さで支持される、
図10Aの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1を参照すると、本開示の第1の形態による、波エネルギー捕捉デバイス100の例示的な実施形態の斜視図が示されている。デバイス100は、水域(トランスペアレンシー)から波エネルギーを捕捉し有用なエネルギー(図示の例示的な実施形態では、電気エネルギーである)に変換するように配置され、ピボット点104と、ピボット点104に近接して延びる細長いアーム部材106とを備え、アーム部材106は、ピボット点104を中心に回転するように配置される。デバイス100は更に、ピボット点104の遠位端部に近接して取り付けられた浮力波エネルギー吸収体108を備える。
【0036】
デバイス100の側面図が、デバイス100が波エネルギーを捕捉するように配置される動作モードで
図2に示され、図示の動作モードでは、ピボット点104は、水域102の面110の上方に支持され、水域102内の卓越波方向112の波の動きに対して実質的に静止状態に保持される。更に、図示の動作モードでは、浮力吸収体108は、ピボット点104によって占められる垂直面118のダウンウェーブ116に位置する平面114に位置する動作位置で、水域102の表面110と係合するように位置決めされる。図示の動作モードでは、吸収体108は、静止位置120から、第1の位置122と第2の位置124(
図2では点線を用いてそれぞれ描かれている)との間で、波の動きからの運動力を受けてピボット点104を中心に回転するように配置され、回転は、吸収体108が動作モードでは往復動するように配置される吸収体108の回転円弧を定める。
【0037】
図示の示的な実施形態100では、吸収体108は、静止位置120でピボット点104によって占められる垂直面118に平行に位置決めされるように配置された実質的に平坦な波係合面126を備える。吸収体108は、湾曲したダウンウェーブ面128を更に備え、湾曲したダウンウェーブ面128は、図示の動作モードでは、波係合面126のダウンウェーブ116に位置決めさている。図示の実施形態100では、波係合面128は、ピボット点104に径方向に対向する吸収体108の末端部にある。図示のように、ダウンウェーブ面128の少なくとも一部は、吸収体108のダウンウェーブ面128によって追跡される回転円弧の一部に実質的に沿って隣接する波係合面126から延びる曲線を含む。
【0038】
図2の実施形態100では、波エネルギー捕捉デバイスのピボット点104は、浮力プラットフォーム130上に支持されて示されており、プラットフォーム130は、ベース部と、ベース部から延びるマストと、ベース部から遠位端部132上に支持された上側部分とを含み、ベース部は、その上に配設された複数の浮力タンク138を有する中空フレームワーク136から形成されている。図示の操作モードでは、ベース部分から延びるのは、ベース部分が水域102の水面110の下方に沈下され、ピボット点104が水域102の水面110の上の上側部分134上に支持されるように、浮力プラットフォーム130を水域102の床(図示せず)に係留する係留手段(図示せず)である。
【0039】
浮力タンク138によって提供される浮力は、ピボット点104が波の動きに対して実質的に静止した状態に保持されるように、動作モードでは、プラットフォーム130に安定性を提供するように、係留手段に張力を生じさせるように配置される。
【0040】
使用中、吸収体108が静止位置120から回転円弧に沿って回転し、波の動きからの運動力を受けて第1の位置122と第2の位置128との間で回転すると、その湾曲したダウンウェーブ面128は、実質的に回転円弧に従い、これと実質的に同心である。このように、回転の間、最小の対向する力がダウンウェーブ面128によって水域102に加えられる。このように、吸収体108は、卓越波方向112でのその波係合面126に作用する波力に最小限に対抗するように作用し、従って、波が伝播するとしても最小限しか引き起こさず、従って、波係合面126が波の動きから最大量の波エネルギーを捕捉することを可能にする。
【0041】
図2のデバイスの平面図が
図3に示される。
図3でより明確に分かるように、吸収体108は、他のどの寸法よりも大きい幅Wを備える。この幅Wは、吸収体108の波係合面126が、最大量の波エネルギーが捕捉されるように、対向する波の動きに対抗することを可能にする。
【0042】
図2及び
図3の実施例100では、デバイスは、プラットフォーム130の上側部分134とピボット点104との間に位置決めされたヨー機構140を更に含んで示される。ヨー機構140は、モータ142によって駆動され、ピボット点104及び固定された吸収体108を回転円弧の平面に対して垂直な平面上でヨーイングするように配置されており、これにより、吸収体108は、その波係合面126が図示の卓越波方向112とは異なる卓越波方向又は平均波方向に対向して再位置決めできるようになっている。ヨー機構140のこのヨー作用は、
図3の平面図と、その波係合面126が
図2及び
図3に描かれた卓越波方向112とは異なる卓越波方向144に対向するように、ヨー機構140によってヨー平面上に再位置決めされた吸収体108を描いた
図4に示す平面図とを比較すると、より明確に見ることができる。
図4に示す再位置決めに続いて、ヨー機構140は、移動によるエネルギー損失を最小にするために、ヨー平面に沿った吸収体108の更なる移動を制限するように配置され、移動に対する剛性を提供し、吸収体108による卓越波方向112、144での最大量の波エネルギーの捕捉を可能にする。
【0043】
全体として
図1~
図4の実施形態の特徴は、第2の形態による、浮体式オフショア再生可能エネルギーシステムの例示的な実施形態を形成する。
【0044】
波エネルギー捕捉デバイス200の更なる実施形態の簡略化された切り欠き側面図が
図5に示される。実施形態200は、
図1の実施形態とほぼ同等であり、可能な限り同じ参照符号が使用される。
図5の実施形態200は、複数の内部区画202を有する吸収体108からなり、隣接する区画202は区画壁204によって互いに分離されている。デバイス200は、その中の空気量を置換するために、水域102から区画202の各々に水を送り込み及びそこから水を送り出すように配置されたポンプ(図示せず)を更に備える。このポンプによって、各区画内の空気:水の比が再定義され、これによって吸収体108の質量が調整される。図示の実施形態では、ポンプは、水域102の特性に基づいて吸収体108の質量を選択的に調整、又は「同調」するように配置されている。デバイス200は、水域の特性を検出及び測定するように配置された複数のセンサ(図示せず)を更に備え、プロセッサは、測定から、水域の特性が複数の予め定義された範囲のうちの1つの範囲内にあることを決定するように配置される。図示の実施形態例200では、予め定義された特性範囲の各々は、それぞれの空気:水の比に対応し、水域の特性が予め定義された範囲の1つ内にあると決定すると、プロセッサは、範囲に関連付けられた対応する空気:水の比を達成するようにポンプを制御するように配置される。図示の実施形態例では、特性は、一連の波高測定から決定された平均波高である。実施形態は、本明細書に記載されるように、特性が、水域、又はデバイスの何れかの適切な特性であることを理解されるであろう。
【0045】
図1から
図3の実施形態のピボット点104のクローズアップ斜視図が
図6に示される。
図6でより明確に示されるように、デバイスは、ピボット点104の周りに配置され、及びピボット点104の周りのアーム部材106及び吸収体108の回転によって駆動されるように配置された、波エネルギー変換器(WEC)146を更に備える。図示の実施形態では、WEC146は、アーム部材106及び吸収体108の回転運動を電気エネルギーに変換し、電気エネルギー貯蔵器(図示せず)に出力するように配置された回転発電機の形態をとる。実施形態は、WECが本明細書に記載されるような何れかの適切なエネルギー変換デバイスであることを理解されるであろう。デバイスは、電気エネルギーを遠隔の蓄電デバイスに伝送するため、又は直ちに使用するために配置された電力線を備えることができ、或いは、デバイスは、遅延伝送又は使用のために、バッテリーのようなオンボード蓄電デバイスを備えることができる。
【0046】
暴風雨サバイバルモードで示された
図1の実施形態100の側面図が、
図7に示される。図示の暴風雨サバイバルモードでは、WEC146は、吸収体108が、水域102の表面110の最大高さによって定められる最大波高150の上方に位置する懸下位置148まで持ち上げられるように、アーム部材106の移動アクチュエータ及び移動リミッタとして使用される。図示の実施形態では、WEC146の回転軸は、アーム部材106及び吸収体108の荷重下でトルクを生じる。吸収体108が懸下位置148に達すると、固定手段を用いてアーム部材106を所定の位置に固定し、吸収体108を懸下位置148に維持するためにWECに継続的な電力を必要としないようにする実施形態が理解されるであろう。図示の暴風雨サバイバルモードでは、アーム部材106は、アーム部材106が
図2に示す静止位置120にあるときよりも、ピボット点104によって占められる垂直面118に対して大きな角度で位置決めされる。
【0047】
図7に示す暴風雨サバイバルモードは、暴風雨中に経験されるような過大な波力が検出又は予測される場合に使用される。過剰な波力は、当業者には、デバイスに損傷が生じる可能性があるような、所定の安全閾値よりも大きい波力として理解されるであろう。
【0048】
図8を参照すると、
図1の実施形態100の側面図が、輸送モード又は表面モードで図示されており、プラットフォーム130は、水域102の表面110に浮いて位置決めされる。図示の例では、アーム部材106は、輸送モードでは、ピボット点104によって占められる垂直平面と整列している。この位置では、吸収体108は水域102の水面110の上にある。従って、水域102の表面110の上方に吸収体108を維持するために、図示の輸送モードではWEC146から最小限の負荷が必要とされる。波の力が吸収体108に作用しないように、吸収体108が水域102の表面110の上方に維持されることが好ましい場合があり、これにより、水域102に浮遊し、係留されていないデバイスが不安定になり、デバイスの輸送の容易性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0049】
図示の輸送モードでは、デバイスは、水域102の表面110に沿って、展開ベッセル152によって所望の展開位置まで牽引されるように配置される。所望の配備場所では、図示の実施例での配備船152は、その間に取り付けられた一時的な電力線154によってモータ142に電力を供給するように配置され、デバイスのウィンチ(図示せず)を駆動するように配置され、ウィンチは、
図2に示される動作モードを達成するためにデバイスを沈めるために、水域102の底(図示せず)に固定されたロープ又はチェーン等の係留手段(図示せず)をその上にスプールする。
【0050】
浮力式オフショア再生可能エネルギーシステム300の更なる実施形態が、
図9の斜視図に示されている。実施形態300は、実質的に
図1~
図8に関連して本明細書で説明した通りであるが、2つの波エネルギー捕捉デバイス302を備える。実施形態300のプラットフォーム304は、ベッド306に固定された対応するアンカーポイント310に固定されたペアチェーン308からなる係留手段によって、水域(トランスペアレンシー)のベッド306に係留されている。チェーン308は、プラットフォーム304から、対応するペアの浮力タンク312によって定められる浮力の中心に近接して延び、タンクによって提供される浮力を最大に打ち消し、それによってプラットフォーム304を水域内で最大に安定させる。図示された実施形態300のプラットフォーム304のフレームワーク314は、プラットフォームが図示の動作モードで最大に安定化され、及びデバイス302のピボット点316が水域内の波の動きに対して実質的に静止状態に保持されるように、水域によってそこに及ぼされる波の力を最小にするように、開口フレームワークである。プラットフォーム304のセントラルマスト318は、幾つかの実施形態では、風力タービン(図示せず)を支持することができ、図示の実施形態では、システム300の展開及び保守中にオペレータが占有する制御、保守及び保管施設を支持する。
【0051】
第1の形態による波エネルギー捕捉デバイスの更なる実施形態400を
図10Aに示す。実施形態400は、第2の形態による、浮力式オフショア再生可能エネルギーシステムに支持された動作モードで示されている。このシステムは、ピボット点402、細長いアーム部材404及び浮力波エネルギー吸収体406を、
図1の実施形態100について説明したように実質的に備える。
図1の実施形態100と同様に、アーム部材404は、吸収体406の波係合面がピボット点402によって占められる垂直面のダウンウェーブ方の平面に位置決めされるように、ピボット点によって占められる垂直面に対して角度をなして位置決めされる。ピボット点402は、浮力吸収体406の水面410上の波との係合時にピボット点402を中心とする細長いアーム部材404の回転によって駆動されるように配置された動力テイクオフ(図示せず)をハウジングするナセル408上に配置される。ナセル408は、その第1の端部にナセル408に回転可能に取り付けられたそれぞれの平行支持アーム414のペアによってその両側で支持されている。平行支持アーム414はまた、浮力プラットフォーム420上に立設された中央マスト418の上側セクション416に回転可能に固定されている。図示の実施形態400は、油圧ラムの形態をとる高さ調整機構422を備え、図示の例では、中央マスト418と一対の平行支持アーム414の一方との間に回転自在に取り付けられている。プラットフォーム420は、一連の係留ライン425によって水域412の床424に固定され、プラットフォーム420の浮力は、マスト418及びその上に支持された波エネルギー捕捉デバイスの構成要素に対する重力の影響を打ち消す。
【0052】
図示の図では、実施形態400は、ピボット点402が、高さ調整機構422によって、水域412の表面410の平均高さ428に対する第1のピボット点高さ426に位置決めされた状態で示されている。図示の動作モードでは、ピボット点402は、細長いアーム部材404の角度が維持されるように、高さ調整機構422によって、常に水域412の表面410の平均高さより上に維持される。このような角度で、吸収体406の波と係合する表面は、本明細書に記載されるように、波エネルギーを最適に捕捉するように配置される。
図10Bは、
図10Aに示すのと同じ実施形態400を描いており、ここでは、水域412の表面410の異なる、より高い平均高さ430が示されている。
図10Bの構成では、高さ調整機構422は、最適なアーム部材角度が維持されるように、水域412の表面410のより高い平均高さ430に対して、異なる、より高いピボット点高さ432にピボット点402を位置決めしている。
【0053】
図示の実施形態400での平行支持アーム414は、高さ調整機構422による高さ調整の間中、ナセル408を実質的に一定の向きに最適に維持する実質的に平行四辺形の支持構造を提供する。これにより、好ましくは、最適なアーム部材角度をより容易に維持することができる。一貫性を持たせるために、本明細書では、ピボット点によって占められる垂直面に対する最適なアーム部材角度に言及する。ピボット点によって占められる垂直面に対する吸収体の波係合面の最適な角度を維持することは、本発明によって最適な波エネルギーの捕捉を継続的に提供することに同様に関連し得ることが理解されるであろう。
【0054】
本開示の範囲内の更なる実施形態は、上記で説明されていないものが想定でき、例えば、本明細書で説明されるようなプラットフォーム上の再生可能エネルギー変換器の任意の組み合わせが存在することができる。本明細書で説明するように、デバイスがアーム部材を含んでいない実施形態が理解され、及びこのような実施形態では、アーム部材に関する本明細書のあらゆる議論は、ピボット点とピボット点から遠位の吸収体の外側縁部との間に延びる仮想直線にも等しく適用することができる。回転円弧に沿ったアーム部材及び吸収体の仮想直線、並びにヨー平面に沿ったデバイスの回転は、本明細書に記載されるように、何れかの適切な角度で起こり得る。
【国際調査報告】