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特表2024-524007好ましい眼内レンズの選択用のシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】好ましい眼内レンズの選択用のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20240628BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20240628BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20240628BHJP
   A61B 3/107 20060101ALI20240628BHJP
   A61B 3/11 20060101ALI20240628BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20240628BHJP
   A61B 3/08 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61F2/16
A61B34/10
A61B3/10
A61B3/107
A61B3/11
A61B3/113
A61B3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574460
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 IB2022056127
(87)【国際公開番号】W WO2023281366
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/218,638
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アルフレッド キャンピン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン グリューンディヒ
(72)【発明者】
【氏名】ビクター マヌエル ヘルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ハンター ペティット
(72)【発明者】
【氏名】マーク アンドリュー ジールク
(72)【発明者】
【氏名】ダニール ネクラッソフ
【テーマコード(参考)】
4C097
4C316
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC20
4C316AA01
4C316AA02
4C316AA03
4C316AA08
4C316AA13
4C316AA14
4C316AA16
4C316AA21
4C316AA22
4C316AA24
4C316AA25
4C316AA26
4C316AA28
4C316AB16
4C316FC12
4C316FC21
(57)【要約】
眼に埋め込むために好ましい眼内レンズを選択するシステムは、プロセッサと、有形の持続性メモリとを有する制御器を含む。制御器は、眼の診断データを取得し、患者データの履歴セットから構成されている履歴データを取得するように構成されている。制御器は、診断データに基づいて個々の危険因子を分析し、個々の危険因子の重み付け結合を取得するように構成されている。履歴データに基づいて複数の眼内レンズに対する各満足度指標を生成する。各満足度指標及び重み付け結合に部分的に基づいて好ましい眼内レンズを選択してもよい。診断データに部分的に基づいて複数の眼内レンズの各々に対する視覚シミュレーションを実行してもよい。視覚シミュレーションは、涙液層データの影響を取り入れてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼に埋め込むために、複数の眼内レンズから好ましい眼内レンズを選択するシステムであって、
プロセッサと、命令を記録する有形の持続性メモリとを有する制御器であって、前記命令の実行は、前記制御器が、
前記眼の診断データを取得し、
患者データの各履歴セットから構成されている履歴データを取得し、
前記診断データに基づいて個々の危険因子を分析し、前記履歴データに部分的に基づいて前記個々の危険因子の重み付け結合を取得し、
前記履歴データに部分的に基づいて前記複数の眼内レンズに対する各満足度指標を生成する、
ようにする制御器、
を含むシステム。
【請求項2】
前記制御器は、前記各満足度指標及び前記個々の危険因子の前記重み付け結合に基づいて前記好ましい眼内レンズを選択するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御器は、前記診断データに部分的に基づいて前記複数の眼内レンズの各々に対する視覚シミュレーションを実行するように構成されており、前記各満足度指標は、前記視覚シミュレーションに部分的に基づいている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記診断データは、涙液層データを含み、前記視覚シミュレーションは、
信号対雑音比の変化及び周囲位置の信号対雑音比よりも比較的低い信号対雑音比のうち少なくとも1つを前記涙液層データが示す各位置を検出すること、及び
前記眼における涙液層の各異常として前記各位置を識別すること、
を含む、前記涙液層データの影響を取り入れる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記診断データは、涙液層データを含み、前記視覚シミュレーションは、
不明情報及び可変点分布のうち少なくとも1つを前記涙液層データが示す各位置を識別すること、及び
涙液層の各異常として前記各位置を識別すること
を含む、前記涙液層データの影響を取り入れる、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記診断データは、2値結果のうち少なくとも1つとして又は異常な角膜収差の数値尺度として表される角膜データを含み、前記眼は、前記診断データを生成するように走査され、
前記2値結果は、角膜収差の閾値レベルの有り又は角膜収差の前記閾値レベルの無しである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記診断データは、2値結果のうち少なくとも1つとして又は黄斑変性の数値尺度として表される黄斑データを含み、前記眼は、前記診断データを生成するように走査され、
前記2値結果は、変性の閾値レベルの有り又は変性の前記閾値レベルの無しである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記診断データは、
三次元座標系における前記眼の明順応状態での瞳孔の各位置、向き、及びサイズ、及び
前記眼の角膜前部表面及び角膜後部表面の前記各位置及び各プロファイル、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記診断データは、1つ又は複数の揺れパラメータによって表される水晶体嚢安定性データを含み、前記水晶体嚢安定性データを取得することは、
異なる調節要求を前記眼に提示しながら、前記眼の複数の画像を収集すること、及び
前記複数の画像を用いて前記眼の水晶体嚢の運動跡を生成すること、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記水晶体嚢安定性データを取得することは、
前記運動跡に基づいて正規化水晶体振動跡を抽出すること、
前記正規化水晶体振動跡に曲線をモデル適合させること、及び
最大振幅及び/又は前記曲線の時定数として前記1つ又は複数の揺れパラメータを取得すること、
を更に含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記診断データは、1つ又は複数の揺れパラメータによって表される水晶体嚢安定性データを含み、前記水晶体嚢安定性データを取得することは、
エネルギー源を介して、誘導眼サッカードと同時に、前記眼に所定のスペクトルの電磁エネルギーを向けること、
カメラを介して、前記誘導眼サッカードを示す前記眼の複数の画像を収集すること、
前記複数の画像を用いて水晶体嚢の運動跡を生成し、前記運動跡に基づいて正規化水晶体振動跡を抽出すること、
前記正規化水晶体振動跡に曲線をモデル適合させること、及び
前記曲線に基づいて前記1つ又は複数の揺れパラメータを取得すること、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記診断データは、カッパ角因子を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記診断データは、少なくとも1つの性格特性を有する前記患者に対するアンケートデータを含み、前記少なくとも1つの性格特性は、同意性の数値尺度のうち少なくとも1つとして又は2値結果として表され、前記2値結果は、主に同意できるか、又は主に同意できないかのいずれかである、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記各満足度指標を判定することは、前記各履歴セットで訓練されている少なくとも1つの機械学習モデルを選択的に実行することを含み、
前記各履歴セットは、術前客観的データ、術前性格データ、術中データ、術後客観的データ、及び主観的予後データを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記各履歴セットにおける前記主観的予後データは、数値満足度尺度を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御器は、前記各履歴セットで前記術後客観的データと主観的予後スコアとの相関関係を定量化し、前記主観的予後スコアと最も強い相関関係がある前記術後客観的データを識別するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
プロセッサと、命令を記録する有形の持続性メモリとを有する制御器を有するシステムを用いて、眼に埋め込むために、好ましい眼内レンズを選択する方法であって、
前記制御器を介して、前記眼用の診断データを取得するステップと、
前記制御器を介して、前記診断データに基づいて個々の危険因子を分析するステップと、
患者データの各履歴セットから構成される履歴データを取得するステップと、
前記制御器を介して、前記履歴データに部分的に基づいて前記個々の危険因子の重み付け結合を取得するステップと、
前記制御器を介して、前記履歴データに基づいて前記複数の眼内レンズに対する各満足度指標を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記制御器を介して、前記診断データに部分的に基づいて複数の眼内レンズの各々に対する視覚シミュレーションを実行するステップであって、前記視覚シミュレーションは、涙液層データの影響を含むステップと、
前記制御器を介して、前記各満足度指標及び前記個々の危険因子の前記重み付け結合に部分的に基づいて前記好ましい眼内レンズを選択するステップと、
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記診断データに水晶体嚢安定性データを含むステップであって、前記水晶体嚢安定性データを、1つ又は複数の揺れパラメータによって表すステップと、
異なる調節要求を前記眼に提示しながら、前記眼の複数の画像を収集し、前記複数の画像を用いて前記眼の水晶体嚢の運動跡を生成することによって、前記水晶体嚢安定性データを取得するステップと、
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
眼に埋め込むために、好ましい眼内レンズを選択するシステムであって、
プロセッサと、命令を記録する有形の持続性メモリとを有する制御器であって、前記命令の実行は、前記制御器が、
涙液層データを含む、前記眼の診断データを取得し、前記眼を、前記診断データを生成するように走査し、
前記診断データに部分的に基づいて複数の眼内レンズの各々に対する視覚シミュレーションを実行し、前記視覚シミュレーションは、前記涙液層データの影響を取り入れ、
患者データの各履歴セットから構成される履歴データを取得し、
前記視覚シミュレーション及び前記履歴データに部分的に基づいて前記複数の眼内レンズに対する各満足度指標を生成する
ようにする制御器、を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
導入
本開示は一般的に、眼に埋め込むために好ましい眼内レンズを選択するシステムに関する。人の水晶体は一般的に、光が容易にステップ水晶体を進むことができるように透明である。しかし、多くの要因により、水晶体内の領域は、濁って濃くなることがあり、従って、視力の質に悪影響を与えることがある。白内障治療を介して、状況を改善することができ、これによって、患者の眼に埋め込むために、人工レンズを選択する。実際に、白内障の手術は、世界中で一般的に行われている。従来、手術を受けた白内障患者は、遠視力だけを向上させるように設計された人工レンズを収容した。多くの患者は、読書用眼鏡又は遠近両用眼鏡の使用を必要とする様々なレベルの手術後の老眼に苦しんだ。現在、異なるタイプの先進技術の眼内レンズ(例えば、多焦点眼内レンズ)は、多くの視力の不一致を矯正するために利用できる。先進技術の眼内レンズ用の現在のスクリーニング方法は、外科医の深い専門知識を必要とし、実行するのに多大な時間を要する。その結果、外科医は、先進技術の眼内レンズを処方することをためらうことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本明細書では、眼に埋め込むために、好ましい眼内レンズを選択するシステムを開示する。システムは、プロセッサと、命令を記録する有形の持続性メモリとを有する制御器を含む。制御器は、眼の診断データを取得するように構成されている。制御器は、患者データの履歴セットから構成されている履歴データを取得するように構成されている。制御器は、診断データに基づいて個々の危険因子を分析し、個々の危険因子の重み付け結合を取得するように構成されている。履歴データに基づいて複数の眼内レンズに対する各満足度指標を生成する。
【0003】
制御器は、各満足度指標及び重み付け結合に部分的に基づいて好ましい眼内レンズを選択するように構成されている。診断データに部分的に基づいて複数の眼内レンズの各々に対する視覚シミュレーションを実行してもよい。各満足度指標は、視覚シミュレーションに部分的に基づいていてもよい。診断データは、涙液層データを含んでもよい。視覚シミュレーションは、信号対雑音比の変化及び周囲位置の信号対雑音比よりも比較的低い信号対雑音比のうち少なくとも1つを涙液層データが示す各位置を検出すること、及び眼における涙液層の各異常として各位置を識別することを含む、涙液層データの影響を取り入れてもよい。涙液層データの影響を取り入れることは、不明情報及び可変点分布のうち少なくとも1つを涙液層データが示す各位置を識別すること、及び涙液層の各異常として各位置を識別することを含んでもよい。
【0004】
診断データは、2値結果のうち少なくとも1つとして又は異常な角膜収差の数値尺度として表される角膜データを含んでもよく、眼は、診断データを生成するように走査されてもよい。2値結果は、角膜収差の閾値レベルの有り又は角膜収差の閾値レベルの無しであってもよい。診断データは、2値結果のうち少なくとも1つとして又は黄斑変性の数値尺度として表される黄斑データを含んでもよく、眼は、診断データを生成するように走査されてもよい。2値結果は、変性の閾値レベルの有り又は変性の閾値レベルの無しであってもよい。診断データは、三次元座標系における眼の明順応状態での瞳孔の各位置、向き、及びサイズ、及び眼の角膜前部表面及び角膜後部表面の各位置及び各プロファイルを含んでもよい。
【0005】
診断データは、1つ又は複数の揺れパラメータによって表される水晶体嚢安定性データを含んでもよい。水晶体嚢安定性データを取得することは、異なる調節要求を眼に提示しながら、眼の複数の画像を収集すること、及び複数の画像を用いて眼の水晶体嚢の運動跡を生成することを含んでもよい。水晶体嚢安定性データを取得することは、運動跡に基づいて正規化水晶体振動跡を抽出すること、正規化水晶体振動跡に曲線をモデル適合させること、及び最大振幅及び/又は曲線の時定数として1つ又は複数の揺れパラメータを取得することを更に含んでもよい。
【0006】
水晶体嚢安定性データを取得することは、エネルギー源を介して、誘導眼サッカードと同時に、眼に所定のスペクトルの電磁エネルギーを向けること、及びカメラを介して誘導眼サッカードを示す眼の複数の画像を収集することを含んでもよい。水晶体嚢安定性データを取得することは、複数の画像を用いて水晶体嚢の運動跡を生成し、運動跡に基づいて正規化水晶体振動跡を抽出すること、正規化水晶体振動跡に曲線をモデル適合させること、及び曲線に基づいて1つ又は複数の揺れパラメータを取得することを更に含んでもよい。
【0007】
診断データは、カッパ角因子を含んでもよい。診断データは、少なくとも1つの性格特性を有する患者に対するアンケートデータを含んでもよく、少なくとも1つの性格特性は、同意性の数値尺度のうち少なくとも1つとして又は2値結果として表され、2値結果は、主に同意できるか、又は主に同意できないかのいずれかである。
【0008】
各満足度指標を判定することは、各履歴セットで訓練されている少なくとも1つの機械学習モデルを選択的に実行することを含んでもよい。各履歴セットは、術前客観的データ、術前性格データ、術中データ、術後客観的データ、及び主観的予後データを含む。各履歴セットにおける主観的予後データは、数値満足度尺度を含んでもよい。制御器は、各履歴セットで術後客観的データと主観的予後スコアとの相関関係を定量化し、主観的予後スコアと最も強い相関関係がある術後客観的データを識別するように構成されている。
【0009】
本明細書では、プロセッサと、命令を記録する有形の持続性メモリとを有する制御器を有するシステムを用いて、眼に埋め込むために、好ましい眼内レンズを選択する方法を開示する。方法は、眼用の診断データを取得するステップと、制御器を介して、診断データに基づいて個々の危険因子を分析するステップとを含む。患者データの各履歴セットから構成される履歴データを取得する。本方法は、制御器を介して、履歴データに部分的に基づいて個々の危険因子の重み付け結合を取得するステップを含む。制御器を介して、履歴データに基づいて複数の眼内レンズに対する各満足度指標を生成する。
【0010】
上述の特徴及び利点、及び本開示の他の特徴及び利点は、添付図面と併用されると、開示を実施するための最良の形態の下記の詳細な説明から容易に明白である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、眼に埋め込むために好ましい眼内レンズを選択するシステムの略図である。
図2図2は、好ましい眼内レンズを選択する方法のフローチャートの略図である。
図3図3は、図1の眼の涙液層の1つ又は複数の異常を例示する略図である。
図4図4は、図1のシステム用の水晶体嚢安定性データを取得するセットアップの略図である。
図5図5は、図4のセットアップによって得られる水晶体嚢安定性データのグラフの例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この開示の典型的な実施形態を、限定されない例として図面に示し、更に詳細に後述する。しかし、この開示の新規な態様は、上述の図面に例示の特定の形態に限定されないものとする。むしろ、本開示は、例えば、添付の特許請求の範囲によって含まれるように、この開示の範囲内に入る修正、均等物、結合、小結合、置換、グループ化、及び代替物を含むべきである。
【0013】
同じ参照番号が同じ構成要素を意味する図面について説明する。図1は、患者の眼14に埋め込むために好ましい眼内レンズLを選択するシステム10を概略的に例示する。好ましい眼内レンズLを、先進技術のレンズであることができる複数の眼内レンズ12から選択する。複数の眼内レンズ12は、様々な倍率の単焦点又は多焦点レンズである第1のIOL12A及び第2のIOL12Bを含んでもよい。幾つかの実施形態において、第1のIOL12Aは、第1の距離範囲でより良い視力を与えるように構成されており、第2のIOL12Bは、第2の距離範囲でより良い視力を与えるように構成されている。代わりに、第1のIOL12Aは、流体充填内部空洞を有する調節レンズであってもよく、第1のIOL12Aの厚さ(及び倍率)を変更するために、流体は、移動可能である。複数の眼内レンズ12は、多くの異なる形をとり、多数及び/又は代替の構成要素を含むことができるものとする。
【0014】
図1について説明する。システム10は、少なくとも1つのプロセッサP、及び好ましい眼内レンズLを選択する方法100を実行するために命令を記録する少なくとも1つのメモリM(又は持続性の有形コンピュータ可読記憶媒体)を有する制御器Cを含む。方法100を、図2を参照して、示して後述する。
【0015】
図1について説明する。制御器Cは、1つ又は複数の撮像デバイス16を介して眼14の診断データを取得するように構成されている。後述のように、システム10は、患者満足度の予測に関連する様々な診断データを受信する。診断データは、単独で又は互いに組み合わせて、指標としての機能を果たしてもよい。これらの入力を、単一診断ツール、幾つかの診断ツールで生成してもよく、又は手動で入力してもよい。診断データの例は、瞳孔のサイズ、形状及び位置、カッパ角、異常な角膜収差、涙液層動力学、黄斑病理学、患者のアンケート及び水晶体安定性データ(水晶体の揺れ又は水晶体振戦)を含む。制御器Cは、診断データに基づいて、眼14のシミュレーション視機能を取得するように構成されている。
【0016】
システム10は、患者満足度に影響を与える可能性に対して、診断入力及びシミュレーション指標の各々を個々に分析する。多くの患者は、先進技術の眼内レンズで生じる広範囲の視野から利益を得るが、多大な時間を要する選択処理のために、この技術にアクセスしない。システム10は、患者満足度の指標を臨床医に与え、主な危険要因を強調し、伴う時間及び負担を減らす。システム10は、時間と共に学習して改善してもよく、データを、現場で共有してもよい。
【0017】
制御器Cは、診断モジュール22、シミュレーションモジュール24、及び予測モジュール26を含む、制御器Cによって選択的に実行可能な複数のモジュール20を含んでもよい。複数のモジュール20を、制御器Cに組み込んでもよい。複数のモジュール20は、ネットワーク28を介して制御器Cにアクセス可能な遠隔サーバー又はクラウドユニット(図示せず)の一部であってもよい。診断モジュール22は、眼モデルの形であることができる診断データを記憶するのに適している。シミュレーションモジュール24は、診断データに基づいて視覚シミュレーションを実行するのに適している。予測モジュール26は、視覚シミュレーション及び履歴データに基づいて複数の眼内レンズ12に対する各満足度指標を生成するのに適している。図1について説明する。システム10は、検査用の眼内レンズのセット、即ち、複数の眼内レンズ12に対する予測モジュール26の出力を受信するレンズ選択モジュール30を含んでもよい。
【0018】
システム10の様々な構成要素は、図1に示すネットワーク28を介して通信するように構成されていてもよい。ネットワーク28は、様々な方法で実装される双方向バス(例えば、ローカルエリアネットワークの形でのシリアル通信バス)であってもよい。ローカルエリアネットワークは、コントローラーエリアネットワーク(CAN)、フレキシブルデータ転送速度を有するコントローラーエリアネットワーク(CAN-FD)、イーサネット、ワイファイ、ブルートゥース(登録商標)、及び他の形のデータ接続(但し、これらに限定されない)を含んでもよい。他のタイプの接続を使用してもよい。システム10は、タッチスクリーン又は他の入力デバイスを含む、ユーザによって動作可能なユーザインターフェース(図示せず)を含んでもよい。制御器Cは、ユーザインターフェース及びディスプレイ(図示せず)へ及びからの信号を処理するように構成されていてもよい。
【0019】
さて、図2について説明する。方法100のフローチャートを示す。方法100を、図1の制御器Cに記憶され、制御器Cによって部分的に実行可能なコンピュータ可読コード又は命令として具体化してもよい。方法100を、本明細書に記載の特定の順序で適用する必要がなく、動的に実行してもよい。更に、幾つかのステップを削除することができるものとする。本明細書で使用されるように、用語「動的な」及び「動的に」は、リアルタイムで実行され、パラメータの状態を監視又は別の方法で判定し、ルーチンの実行中に又はルーチンの実行の反復間にパラメータの状態を規則的に又は周期的に更新するという特徴があるステップ又は処理を記述する。
【0020】
図2のブロック102によって、制御器Cは、撮像デバイス16を介して眼14の診断データを取得するように構成されている。撮像デバイス16は、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)デバイス32、誤差測定器34、反射トポグラフィー機器36、及び光検出デバイス(例えば、カメラ38)を含んでもよい。撮像デバイス16は、超音波又は磁気共鳴撮像機械(図示せず)、又は当業者が利用できる他の撮像デバイスを含んでもよい。診断データを、単一画像又は多数の画像から得てもよい。測定データが眼14における同じ位置に対応するように、異なる撮像デバイス16からの測定を整列させる。撮像デバイス16からの光を眼14に向けるために、光学ユニット40を、眼14と撮像デバイス16との間に位置決めしてもよい。光学ユニット40は、当業者が利用できる光学素子(例えば、レンズ、プリズム、ミラー、回折光学素子、ホログラフィック光学素子、及び空間光変調器)を含んでもよい。
【0021】
図1について説明する。診断データは、水晶体42及び虹彩44の位置、向き(例えば、傾き)及びサイズをそれぞれ含む。診断データは、明順応状態での瞳孔46の位置、向き及びサイズを含む。明順応状態は、眼における錐体細胞のために主に機能する明るい状態での視力を意味する。幾つかの実施形態において、明順応状態を、3カンデラ毎平方メートル(cd/m)以上の順応レベルを含むように定義してもよい。
【0022】
図1について説明する。診断データは、水晶体42の厚さ、眼14の異なる部分の前房深度及び屈折率を含んでもよい。診断データは、視軸52(中心窩と瞳孔46の中心を結ぶ)と瞳孔軸54(入射瞳と角膜の曲率中心とを垂直に通る)との間の角度として定義されるカッパ角50を含んでもよい。カッパ角50の比較的大きい値は、埋め込み眼内レンズの不注意の偏心及び他の潜在的な問題の一因となることがある。
【0023】
図1について説明する。診断データは、角膜データ(例えば、角膜の厚さ、及び角膜前部表面60及び角膜後部表面62の形状及び位置)を含んでもよい。撮像デバイス16は、眼14から(例えば、照明源から)反射された光を分析することによって、眼14の様々な表面を測定してもよい。例えば、OCTデバイス32は、角膜前部表面60の点からの反射を検出し、光路長を距離に変換し、角膜前部表面60の点分布を生じる。OCTデバイス32は、OCT測定データを、例えば、距離、点分布、トポロジー、眼モデル、及び/又はマップとして、任意の適切な方法で出力してもよい。OCTデバイス32は、時間領域、周波数領域、又は他の適切なスペクトル符号化を使用してもよく、一点、並列、又は他のタイプの走査パターンを使用してもよい。
【0024】
別の例において、誤差測定器34は、波面技術を使用し、眼14の収差を判定する。光の波面が、眼14を通って進み、眼14を通って後方反射される時に、眼14の収差は、波面の形状を理想的な形状から歪曲する。誤差測定器34は、測定波面の理想的な波面からの偏差を記述する測定データを生成する。例えば、反射トポグラフィー機器36は、角膜前部表面60が投影照明パターン(例えば、同心リング又はドットのグリッド)をどの程度反射するかを検出することによって、眼14の角膜前部表面60の形状を測定する。角膜前部表面60が理想的な球である場合、反射パターンは、投影パターンと一致する。角膜前部表面60が収差を有する場合、パターンの反射部分がより近い領域は、より急な傾斜の角膜曲率を示してもよく、反射部分がより遠い部分である領域は、より平坦な領域を示してもよい。特許出願第63/126441号明細書(2020年12月16日に出願)には、眼の涙液層のマルチ検出器分析が記載されており、その内容全体を参照により引用したものとする。
【0025】
角膜データを、2値結果のうち少なくとも1つとして又は異常な角膜収差の数値尺度として表してもよい。2値結果は、角膜収差の閾値レベル(例えば、角膜表面の割合)の有り又は角膜収差の閾値レベルの無しであってもよい。制御器Cは、当業者が利用できる診断データ及びアルゴリズムに基づいて、眼14における表面を近似又はパラメータ化するように選択的に実行可能であってもよい。
【0026】
図1について説明する。診断データは、(眼球の略球形と仮定して)眼14の軸長からの網膜64の表面の近似を含んでもよい。幾つかの実施形態において、診断データは、2値結果のうち少なくとも1つとして又は黄斑変性の数値尺度として表される黄斑データを含む。黄斑66は、高濃度の光受容体細胞を有する網膜64の一部である。黄斑は、中心視、色覚及び細部の役割を部分的に果たす。黄斑の疾患(例えば、加齢黄斑変性症)は、活動(例えば、読書)に必要な鮮鋭な中心視を妨げる。2値結果は、黄斑変性の閾値レベルの有り又は黄斑変性の閾値レベルの無しであってもよい。
【0027】
幾つかの実施形態において、診断データは、涙液層70の異常を示すことができる涙液層データを含む。図1について説明する。角膜前部表面60上の涙液層70は、眼14を保護して潤す。涙液層70は、異物を洗い流し、眼感染の危険性を減らす。異常は、正常な涙液層からのずれ、例えば、涙液層70が、無い、異常に薄い、又は異なる化学組成を有する領域であってもよい。異常は、涙液層70の不安定性、例えば、涙液層70が急激に変化する領域であってもよい。
【0028】
図3は、涙液層の1つ又は複数の異常を有する眼14(虹彩44及び瞳孔46を有する)の略図である。図3は、第1のデバイス(例えば、OCTデバイス32)によって検出される第1の異常202、第2のデバイス(例えば、トポグラフィー機器36)によって検出される第2の異常204、及び第3のデバイス(例えば、誤差測定器34)によって検出される第3の異常206を例示する。幾つかの実施形態において、制御器Cは、2つの異なるデバイスによって検出される2つの異常の間の重複に基づいて複合異常208を生成するように構成されている。例えば、第1の異常202と第3の異常206との間の重複部位に基づいて、複合異常208を生成する。
【0029】
制御器Cは、多くの方法で涙液層データの影響を評価するように適合されていてもよく、例えば、涙液層データが信号対雑音比の変化を示す各位置210、涙液層データが周囲位置の信号対雑音比よりも比較的低い信号対雑音比を示す各位置210を検出し、涙液層の異常として各位置210を識別する。位置からのデータの信号対雑音比は、位置における全測定雑音に対する測定信号の比である。より低い又は減少した信号対雑音比を有する各位置210は、涙液層70に関する問題を示してもよい。幾つかの実施形態において、制御器Cは、位置における異常を示す無しデータを有するデータの有無、及び/又は涙液層データの各点分布が変化しているかどうかに従って、涙液層データの影響を評価する。
【0030】
幾つかの実施形態において、診断データは、水晶体嚢安定性データを含む。水晶体嚢の外周は、チン膜又は小帯と一般的に呼ばれる弾性線維の輪に付着される。眼14内の毛様体筋72(図1参照)は、収縮又は弛緩し、水晶体嚢の形状を変更する効果を有する調節中に小帯にまとめて作用する。小帯が過度に弾力的である場合、水晶体及び嚢は、毛様体筋72にあまりしっかりと付着しないことがあり、患者15は、埋め込み中に特定の合併症の危険性が増加することがある。外科医は、水晶体嚢を安定させる水晶体嚢支援デバイスを使用することによって、レーザーベースの水晶体嚢破裂処置を実行することによって、又は他の予防策を講じることによって、手術の危険性を軽減しようと試みてもよい。
【0031】
図4は、患者15の眼14における水晶体嚢安定性データを取得するセットアップ300の略図である。図4について説明する。エネルギー源302は、眼14の瞳孔に電磁エネルギー(例えば、赤外線又は可視光、超音波エネルギー)を向けるのに適している。眼14の瞳孔における特性プルキンエ反射又は他の眼反射を誘導するのに十分な所定の強度レベルで、電磁エネルギーを向けてもよい。
【0032】
水晶体嚢安定性データを、眼14の毛様体筋活動の数値尺度として、及び/又は1つ又は複数の揺れパラメータとして表してもよい。毛様体筋活動を取得することは、カメラ304(例えば、高速カメラ)を介して、複数の画像を収集しながら、異なる調節要求を眼14に提示することを含む。特許出願第63/129386号明細書(2020年12月22日に出願)には、人間の水晶体嚢安定性データの評価が記載されており、その内容全体を参照により引用したものとする。図4について説明する。幾つかの実施形態において、例えば、制御器Cによって伝送される動的注視案内合図を介して、眼14を、患者の視線に沿って配置された視対象306に向ける。注視案内合図は、本明細書で眼サッカードと呼ばれる所定の制御眼球運動を誘導する。サッカードは、注視の中心を視野の1つの部分から別の部分に移動させる高速眼球運動である。サッカードは一般的に、関心のある物体に注視を方向付けるために使用され、水平、垂直又は斜めであってもよい。
【0033】
図4について説明する。ホットミラー308を、カメラ304に対して所定の角度θで配置してもよく、眼14からの反射光をカメラ304に向けるように構成してもよい。眼14の複数の画像は、眼サッカードを示す。セットアップ300は、光を向ける1つ又は複数の光学デバイス310を含んでもよい。第1のプルキンエ像(角膜前部表面60からの反射)に対する第4のプルキンエ像(水晶体42の後部表面からの反射)の運動を適合させることによって、水晶体嚢の安定性を評価してもよい。例えば、相対運動を、下記の減衰調和モデルに適合させてもよい。
【数1】
ここで、φは、第1のプルキンエ像に対する第4のプルキンエ像の相対位置であり、tは、時間を表し、βは、減衰比であり、ωは、運動の非減衰角周波数である。
【0034】
制御器Cは、カメラ304からの複数の画像を用いて、眼14の水晶体嚢の運動曲線を計算するように構成されている。制御器Cは、運動曲線に基づいて正規化水晶体振動跡を抽出し、正規化水晶体振動跡に曲線をモデル適合させるのに適している。図5について説明する。水晶体嚢安定性データ(正規化水晶体振動跡351を有する)のセットの例から得られる適合曲線350の例を示す。図5における縦軸352は、第1のプルキンエ像に対する第4のプルキンエ像の相対位置を示し、線356は、位置のゼロ差を示す。図5における横軸354は、時間を示す。一実施形態において、集中質量モデルを使用して、水晶体振動跡のモデル適合を実行する。揺れパラメータを取得するために、適合曲線350を使用してもよい。例えば、揺れパラメータを、最大振幅358(揺れが最大である場合)、減衰比、及び適合曲線350の時定数360(振幅がゼロまで減って安定している場合)によって表してもよい。
【0035】
診断データは、患者15に対するアンケートデータを含んでもよく、アンケートデータは、(自己報告可能な)少なくとも1つの性格特性を評価する、又は少なくとも1つの性格特性を検討する。性格特性を、同意性の数値尺度(即ち、患者15がどの程度同意できるか)のうち少なくとも1つとして表してもよい。性格特性を、2値結果(例えば、主に同意できるか、又は主に同意できないかのいずれか)として表してもよい。
【0036】
図2のブロック104によって、制御器Cは、眼に埋め込むために検査されるように複数の眼内レンズ12(図1参照)を選択し、複数の眼内レンズ12の各々に対する各IOLモデルを取得するように構成されている。幾つかの実施形態において、IOLモデルは、回折モデルであり、即ち、モデリング回折面に基づいている。
【0037】
方法100は、ブロック102及び104からブロック106に進む。ブロック106によって、制御器Cは、ブロック102からの診断データ及びブロック104からの各IOLモデルに基づいて複数の眼内レンズ12の各々に対する視覚シミュレーションを実行するようにプログラムされている。これは、制御器Cに組み込まれ、又は別の方法で制御器Cと通信しているシミュレーションモジュール24を介して実行されてもよい。
【0038】
視覚シミュレーションの出力は、焦点曲線、シミュレーション視力、及びコントラスト感度を含んでもよい。視覚シミュレーションの出力は、波面分布、変調伝達関数(MTF)及び点広がり関数(PSF)を含んでもよい。変調伝達関数は、異なる空間周波数を光学系によって処理する方法を指定する複雑な光学的伝達関数の大きさ(絶対値)として形式的に定義される。
【0039】
光線追跡を使用して複数の眼内レンズ12の集束特性を評価するように、シミュレーションモジュール24を構成してもよい。換言すれば、異なる屈折率を有する2つの媒質を隔てる面で光線の屈折を記述するスネルの法則を用いて反射及び屈折を介して、眼14を通る光の伝搬を追跡してもよい。網膜64上のスポットに追跡又は伝搬される光線の束の空間分布を使用して、特定の距離における各視力スコアを得てもよい。多数の波長に適用できる屈折率を使用してもよい。これは、例えば、診断測定波長及び人間の視力に対して重要な異なる波長の間、又は網膜像の質及び他の因子に対する色収差の影響を評価する多数の可視波長の間の色分散効果を説明するのに役立つ。視覚シミュレーションは、涙液層動力学の影響を取り入れる。換言すれば、眼14を通る光の伝搬は、ブロック102で取得される異常(例えば、図3に示す複合異常208)の影響を受ける。
【0040】
シミュレーションモジュール24は、眼14の術後解剖学的パラメータ(例えば、予測レンズ傾斜及び予測レンズ偏心)を推定するのに適している。術後に、瞳孔46を、視軸52に対して偏心又は傾斜させてもよい。術後に、水晶体42の比較的分厚い形状のために、虹彩44を前方に膨出して移動させる間、虹彩44は、比較的平面的な形状を想定してもよい。シミュレーションモジュール24は、当業者が利用できる眼内レンズ倍率計算式を使用してもよい。このような式の例は、SRK/T式、Holladay式、Hoffer Q式、Olsen式、及びHaigis式を含む。
【0041】
方法100は、ブロック106からブロック108に進む。図2のブロック108によって、制御器Cは、患者データの履歴セットから構成されている履歴データを取得するように構成されている。履歴データは、術前客観的データ、術前性格データ、術中データ、術後客観的データ、及び同じ人の主観的予後データを含む。術前客観的データ及び術後客観的データは、解剖学的眼測定値(例えば、眼の長さ、角膜トポグラフィー及び厚さ、水晶体位置及び厚さなど)、屈折眼測定値(例えば、古典的屈折、波面誤差測定学)、視覚機能測定値(例えば、明順応/中間順応視力、コントラスト感度、近方視力など)、及び生理学的眼測定値(例えば、眼圧、涙液層健康状態など)を含んでもよい。術前性格データは、視覚的ニーズ評価又はライフスタイル要求(主要な活動、例えば、針編み対魚釣り)、及び性格特性を含んでもよい。1つの例において、McCrae及びCostaとしても知られている性格型の主要5因子モデルを使用してもよい。主要5因子モデルは、開放性、協調性、誠実性、外向性及び神経症的傾向(又は情緒的安定性)の特性が人の性格の基盤を形成すると仮定する(McCrae,R., Costa,P., Personality in Adulthood: A Five-Factor Theory Perspective, Guilford Press, New York City(2003)を参照)。
【0042】
術中データの例は、実行される屈折矯正外科手術のタイプ、埋め込み眼内レンズのモデル及び眼内レンズの処方(但し、これらに限定されない)を含む。術中データは、術中誤差測定学測定値を含んでもよい。術中データは、外科手術機械設定値及び治療のパラメータ(例えば、治療時間、手術室の温度、元の水晶体を乳化するのに消費される総合超音波水晶体乳化吸引電力、超音波水晶体乳化吸引エネルギーを加えた持続時間、及び有効な超音波水晶体乳化吸引時間(超音波水晶体乳化吸引時間に平均超音波水晶体乳化吸引電力を掛けた積として))を更に含んでもよい。術中データは、眼内レンズを埋め込むために使用される送出デバイスのタイプ、任意の閉鎖破損の有無、閉鎖破損の量及び程度、及び支援デバイス(例えば、水晶体嚢フック)を使用したか否かを更に含んでもよい。術中データは、水晶体混濁分類に従って等級付けされることができる、元の水晶体の核硬度の術中等級を更に含んでもよい。
【0043】
各履歴セットの主観的予後データは、術後視覚結果への満足度を反映する1つ又は複数の数値満足度尺度を含んでもよい。手術結果への患者の満足度を、1つ又は複数の特定の期間(例えば、術後1ヶ月及び3ヶ月)で収集してもよい。1つの例において、次の質問(1~5(5が最高)の尺度で、現在、あなたの視力にどの程度満足しているか)に基づいて、単一の総合満足度を使用する。別の例において、近方視力、遠方視力、暗黒/薄暗い光の視力、「屋外スポーツ視力」(例えば、ゴルフ競技)、及び総合満足度のために、別々の満足度尺度を使用してもよい。履歴データの他の例は、最良矯正近方視力、最良矯正遠方視力、及び水晶体嚢安定性評価を含む。
【0044】
更に、ブロック108によって、方法100は、履歴データに基づいて1つ又は複数の機械学習モデルを訓練することを含む。ブロック112に関して後述されるように、(ブロック110で取得される)個々の危険因子の重み付け結合を取得するために、訓練機械学習モデルを使用する。機械学習モデルは、ニューラルネットワークアルゴリズム、多層パーセプトロンネットワーク、サポートベクター回帰モデル、又は当業者が利用できる任意の他のモデルを含んでもよい。例えば、ニューラルネットワークは、数値形式に翻訳又は変換され、ベクトル又は行列に組み込まれる現実世界データ(例えば、画像、音、テキスト、時系列など)からパターンを認識する。ニューラルネットワークは、入力ベクトルxを出力ベクトルyに一致させるために深層学習マップを使用してもよい。訓練処理により、ニューラルネットワークは、入力ベクトルxを出力ベクトルyに変換する適切な活性化関数f(x)を相関させる。一旦機械学習モデルを履歴データで訓練すると、出力ベクトルyの推定値を、入力ベクトルxの所与の新しい値で計算してもよい。他のタイプの機械学習モデルを使用することができるものとする。
【0045】
方法100は、ブロック108からブロック110に進む。図2のブロック110によって、制御器Cは、診断データ(ブロック102)、履歴データ(ブロック108)及び視覚シミュレーション(ブロック106)に基づいて、眼14に対する個々の危険因子を分析するように構成されている。個々の危険因子は、異常な角膜収差の存在、涙液層動力学、黄斑度の存在、カッパ角50の大きさ、及び(水晶体嚢安定性データからの)眼14の揺れパラメータの大きさから生じる潜在的な問題を含む。制御器Cは、履歴セットで各術後客観的データと各主観的予後スコアとの相関関係を定量化し、各主観的予後スコアと最も強い相関関係がある各術後客観的データを識別するように構成されていてもよい。
【0046】
次に、図2のブロック112によって、制御器Cは、履歴データで訓練された1つ又は複数の機械学習モデルを介して、履歴データ(ブロック108)に基づいて個々の危険因子の重み付け結合を取得するように構成されている。人口統計データ、眼の同様のサイズ寸法を有する患者、又は他の健康状態因子に基づいて、履歴データを階層化してもよい。履歴データを、周期的に更新してもよい。システム10は、更新データに基づいて周期的に再訓練される機械学習モデルで適応できるように構成されていてもよい。
【0047】
方法100は、ブロック112からブロック114に進み、制御器Cは、サブブロック116及び118に示す多くの出力を生成するように構成されている。この情報により、臨床医は、視機能を最適化し、危険性を最小化するように、最良のモデル及び/又は倍率を選択することができる。システム10は、(診断データからの)診断入力、及び患者満足度に影響を与える可能性に対するシミュレーション指標の各々を個々に分析する。アプリケーションは、1つ又は複数の指標を臨床医に更に提供し、診断データに基づいて患者満足度を表す。この例は、先進技術の眼内レンズに満足している同様の指標を有する患者の百分率である。
【0048】
図2のサブブロック116によって、制御器Cは、診断データ(ブロック102)、視覚シミュレーション(ブロック106)及び履歴データ(ブロック108)に基づいて、複数の眼内レンズ12に対する各満足度指標を生成するようにプログラムされている。これを、予測モジュール26を介して実行してもよい。履歴データと組み合わせて、異なる動的モデルを適用してもよい。幾つかの実施形態において、予測モジュール26は、履歴データから少なくとも部分的に構成される訓練データセットを用いて訓練される機械学習モジュール(例えば、ニューラルネットワーク)を組み込む。
【0049】
図2のサブブロック118によって、制御器Cは、(ブロック112で取得された)個々の危険因子の重み付け結合に基づいて患者15に対する危険性評価を提示し、好ましい眼内レンズLを推薦するようにプログラムされていてもよい。一実施形態において、個々の危険因子の事前定義許容レベルの範囲内で(又は各満足度指標の事前定義最低レベルを満たす)複数の眼内レンズ12を強調又はグループ化するレンズ選択モジュール30を介して、選択を自動化する。
【0050】
要約すれば、制御器Cは、眼14の診断データを取得し、複数の眼内レンズ12の各々に対する視覚シミュレーションを実行するように構成されている。視覚シミュレーションは、涙液層動力学及び他の診断データの影響を取り入れる。制御器Cは、診断データ及び視機能に基づいて個々の危険因子を分析し、各満足度指標を生成するように構成されている。システム10は、眼内レンズ(例えば、先進技術の眼内レンズ)の選択のために適切な患者を選択する客観的なデータ駆動型手法を臨床医に提供する。
【0051】
図1の制御器Cは、コンピュータ(例えば、コンピュータのプロセッサ)によって読み取り可能なデータ(例えば、命令)の提供に関与する持続性(例えば、有形)の媒体を含むコンピュータ可読媒体(プロセッサ可読媒体とも呼ばれる)を含む。このような媒体は、不揮発性媒体及び揮発性媒体(但し、これらに限定されない)を含む多くの形をとってもよい。不揮発性媒体は、例えば、光ディスク又は磁気ディスク及び他の持続性メモリを含んでもよい。揮発性媒体は、例えば、メインメモリを構成することができるダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)を含んでもよい。このような命令を、コンピュータのプロセッサに結合されたシステムバスを含む線を含む、同軸ケーブル、銅線及び光ファイバーを含む1つ又は複数の伝送媒体によって伝送してもよい。幾つかの形のコンピュータ可読媒体は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、他の光媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを有する他の物理的媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EEPROM、他のメモリチップ又はカートリッジ、又はコンピュータが読み取ることができる他の媒体を含む。
【0052】
本明細書に記載のルックアップテーブル、データベース、データ保存装置又は他のデータ記憶装置は、階層データベース、ファイルシステムにおける複数のファイル、所有権を主張できるフォーマットにおけるアプリケーションデータベース、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)などを含む、様々な種類のデータを記憶し、アクセスし、検索する様々な種類の機構を含んでもよい。このような各データ記憶装置は、上述のデータ記憶装置のうち1つなど、コンピュータオペレーティングシステムを使用した計算デバイス内に含まれてもよく、様々な方法のうち1つ又は複数の方法でネットワークを介して、データ記憶装置にアクセスしてもよい。ファイルシステムは、コンピュータオペレーティングシステムからアクセス可能であってもよく、様々なフォーマットに記憶されるファイルを含んでもよい。RDBMSは、ストアードプロシージャを生成し、記憶し、編集し、実行する言語に加えて、構造化照会言語(SQL)(例えば、上述のPL/SQL言語)を使用してもよい。
【0053】
本明細書に提示のフローチャートは、本開示の様々な実施形態によるシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品の可能な実装形態のアーキテクチャ、機能、及び動作を例示する。この点で、フローチャートにおける各ブロック又はブロック図は、指定の論理機能を実施する1つ又は複数の実行可能命令を含む、モジュール、セグメント、又はコードの一部を表してもよい。ブロック図及び/又はフローチャート図の各ブロック、及びブロック図及び/又はフローチャート図におけるブロックの組み合わせは、指定の機能又は動作、又は専用ハードウェア及びコンピュータ命令の組み合わせを実行する専用のハードウェアベースのデバイスによって実施可能であることにも留意しよう。これらのコンピュータプログラム命令を、特定の方法で機能するように制御器又は他のプログラミングデータ処理装置に命令することができるコンピュータ可読媒体に記憶してもよく、その結果、コンピュータ可読媒体に記憶された命令は、フローチャート及び/又はブロック図のブロックに指定された機能/動作を実施する命令を含む製造の項目を生成する。
【0054】
添付の特許請求の範囲を含む、この明細書におけるパラメータ(例えば、量又は状態)の数値は、「約」が数値の前に実際に現れても現れなくても、用語「約」によってどの場合にも修正されると理解されるべきである。「約」は、記載の数値が、(値における正確さへの近似で、約又はかなり値に近い、殆ど)僅かな不正確さを許容することを意味する。「約」によって与えられる不正確さが、この通常の意味で当技術分野において他の点で理解されない場合、本明細書で使用されるような「約」は、このようなパラメータを測定及び使用する通常の方法から生じることがある変動を少なくとも意味する。更に、範囲の開示は、全範囲内の各値及び更なる分割範囲の開示を含む。範囲内の各値及び範囲の終点を、個々の実施形態としてここに開示する。
【0055】
詳細な説明及び図面又はFIGは、本開示の支援及び説明であるが、本開示の範囲は、特許請求の範囲だけによって規定される。特許請求された開示を実施するための最良の形態及び他の実施形態の一部が詳細に説明されているが、様々な代替の設計及び実施形態が、添付の特許請求の範囲に記載の開示を実施するために存在する。更に、図面に示す実施形態、又は本開示に記載の様々な実施形態の特徴は、互いに無関係である実施形態と必ずしも理解されるべきであるとは限らない。むしろ、実施形態の例のうち1つに記載の各特徴を、言葉で又は図面を参照することによって記載されていない他の実施形態をもたらす、他の実施形態からの他の所望の特徴の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができる。従って、このような他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の枠内に入る。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】