(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】少なくとも1つのニトリル官能基を含む生物由来化合物の生物変換によりエチレン性不飽和を含むモノマーを得るための生物学的方法
(51)【国際特許分類】
C12P 13/02 20060101AFI20240628BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240628BHJP
C12P 13/00 20060101ALI20240628BHJP
C12P 7/40 20060101ALI20240628BHJP
C12N 9/88 20060101ALI20240628BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20240628BHJP
C12N 9/14 20060101ALI20240628BHJP
C09K 8/06 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C12P13/02
A61K8/81
A61K47/32
C12P13/00
C12P7/40
C12N9/88
C12P1/00 A
C12N9/14
C09K8/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574535
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022069156
(87)【国際公開番号】W WO2023281088
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510338248
【氏名又は名称】エスエヌエフ・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ファヴェロ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・キーファー
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4B064AD13
4B064AE02
4B064CA21
4B064CB01
4B064CB30
4B064CC30
4B064CD16
4B064CD18
4B064DA01
4B064DA16
4B064DA20
4C076EE09G
4C076EE11G
4C076FF70
4C083AD091
4C083AD092
4C083CC01
4C083EE09
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換により、エチレン性不飽和を含むMOモノマーを得るための生物学的方法であって、前記CN化合物が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であり、前記生物学的方法が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下でCN化合物を酵素的に生物変換する少なくとも1つの工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換により、エチレン性不飽和を含むMOモノマーを得るための生物学的方法であって、前記CN化合物が、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であり、前記生物学的方法が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下でCN化合物を酵素的に生物変換する少なくとも1つの工程を含む、方法。
【請求項2】
CN化合物が、CN化合物中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量が規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CN化合物が(メタ)アクリロニトリル又は3-ヒドロキシプロピオニトリルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
MOモノマーが、前記MOモノマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量が、規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
MOモノマーが、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アンモニウム又は(メタ)アクリル酸から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
CN化合物及び/又はMOモノマーが完全に再生可能かつ非化石であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
MOモノマーが(メタ)アクリルアミドであり、CN化合物が(メタ)アクリロニトリルであり、生体触媒が少なくともニトリルヒドラターゼ酵素を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
MOモノマーが(メタ)アクリル酸塩であり、CN化合物が(メタ)アクリロニトリルであり、生体触媒が少なくともニトリラーゼ酵素を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
MOモノマーが(メタ)アクリル酸塩であり、CN化合物が(メタ)アクリルアミドであり、生体触媒が少なくとも1種のアミダーゼ酵素を含み、前記CN(メタ)アクリルアミドモノマーが、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で、前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む生物学的方法に従い、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルを生物変換することによって以前に得られていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アクリル酸塩又はメタクリル酸塩をそれぞれアクリル酸又はメタクリル酸に変換する工程を含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
CN化合物がリサイクルプロセスから誘導されることを特徴とする、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項12】
CN化合物が部分的又は全体的に隔離されていることを特徴とする、請求項1又は11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換によって得られる、少なくともエチレン性不飽和を含むMOモノマーであって、前記CN化合物が、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であり、前記生物変換が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下でCN化合物を酵素的に生物変換する少なくとも1つの工程を含む、MOモノマー。
【請求項14】
少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルの生物変換によって得られるバイオ(メタ)アクリルアミドであって、前記生物変換が、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む、バイオ(メタ)アクリルアミド。
【請求項15】
(メタ)アクリロニトリルが、前記(メタ)アクリロニトリル中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、及び/又はバイオ(メタ)アクリルアミドが、前記バイオ(メタ)アクリルアミド中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素質量が、規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項14に記載のバイオ(メタ)アクリルアミド。
【請求項16】
少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルの生物変換によって得られるバイオ(メタ)アクリル酸塩であって、前記生物変換が、少なくとも1種のニトリラーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む、バイオ(メタ)アクリル酸塩。
【請求項17】
少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリルアミドの生物変換によって得られるバイオ(メタ)アクリル酸塩であって、前記生物変換が、少なくとも1種のアミダーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリルアミドを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含み、前記(メタ)アクリルアミドが、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルの生物変換によって以前に得られており、前記生物変換が、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む、バイオ(メタ)アクリル酸塩。
【請求項18】
(メタ)アクリロニトリルが、前記(メタ)アクリロニトリル中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、及び/又はバイオ(メタ)アクリル酸塩が、前記バイオ(メタ)アクリル酸塩中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素質量が、規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項16又は17に記載のバイオ(メタ)アクリル酸塩。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られる少なくとも1種のMOモノマー、又は請求項13に記載の少なくとも1種のMOモノマー、又は請求項14若しくは15に記載の少なくとも1種のバイオ(メタ)アクリルアミド、又は請求項16から18のいずれか一項に記載の少なくとも1種のバイオ(メタ)アクリル酸塩の重合によって得られるポリマー。
【請求項20】
- 請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られる少なくとも1種の第1のMOモノマー、及び/又は請求項13に記載の少なくとも1種のMOモノマー、又は請求項14若しくは15に記載の少なくとも1種のバイオ(メタ)アクリルアミド、又は請求項16から18のいずれか一項に記載の少なくとも1種のバイオ(メタ)アクリル酸塩、並びに
- 第1のモノマーとは異なる少なくとも第2のモノマーであって、前記第2のモノマーが、非イオン性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、双性イオン性モノマー、疎水性部分を含むモノマー、及びそれらの混合物から選択されている第2のモノマー
のコポリマーであることを特徴とする、請求項19に記載のポリマー。
【請求項21】
- 少なくとも5mol%、好ましくは少なくとも10mol%、優先的には20mol%~90mol%、より優先的には30mol%~99mol%の第1のモノマーであって、前記モノマーが、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られるMOモノマー、及び/又は請求項13に記載のMOモノマー、及び/又は請求項14若しくは15に記載のバイオ(メタ)アクリルアミド、及び/又は請求項16から18のいずれか一項に記載のバイオ(メタ)アクリル酸塩である、第1のモノマー、並びに
- 少なくとも1mol%、優先的には5mol%~90mol%、より優先的には10mol%~80mol%のエチレン性不飽和を含む少なくとも1種の第2のモノマーであって、前記第2のモノマーが第1のモノマーとは異なり、前記第2のモノマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%、好ましくは10wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を含み、前記生物由来炭素含有量が、規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定される、第2のモノマー
を含むコポリマーであることを特徴とする、請求項19又は20に記載のポリマー。
【請求項22】
前記少なくとも第2のモノマーが、アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)及び/又はその塩、N-ビニルホルムアミド(NVF)、N-ビニルピロリドン(NVP)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(ADAME)、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)、式CH
2=CHCO-NR
1R
2を有する置換アクリルアミドであって、R
1及びR
2が互いに独立して直鎖状又は分岐状炭素鎖C
nH
2n+1であり、nが1~10である置換アクリルアミドのオリゴマーから選択されることを特徴とする、請求項21に記載のポリマー。
【請求項23】
ポリマーを合成するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られる少なくとも1種のMOモノマー、又は請求項13に記載の少なくとも1種のMOモノマー、又は請求項14若しくは15に記載の少なくとも1種のバイオ(メタ)アクリルアミド、又は請求項16から18のいずれか一項に記載の少なくとも1種のバイオ(メタ)アクリル酸塩の使用。
【請求項24】
炭化水素の回収、井戸の掘削及びセメンチング、炭化水素井戸の刺激、水の処理、発酵スラリーの処理、スラッジの処理、製紙、建設、木材加工、水硬性組成物処理、鉱業、化粧品の調合、洗剤の調合、繊維製造、電池構成要素製造、地熱エネルギー、生理用ナプキン製造、又は農業から選択される分野における請求項19から22のいずれか一項に記載のポリマーの使用。
【請求項25】
凝集剤、凝固剤、結合剤、固定剤、粘度低減剤、増粘剤、吸収剤、摩擦低減剤、除水剤、排水剤、電荷保持剤、脱水剤、コンディショニング剤、安定化剤、膜形成剤、サイズ調整剤、超可塑化剤、クレイ抑制剤又は分散剤としての、請求項19から22のいずれか一項に記載のポリマーの使用。
【請求項26】
以下の工程:
a.請求項19から22のいずれか一項に記載のポリマーから、水又はブラインを用いて注入流体を調製する工程、
b.注入流体を地下層に注入する工程、
c.注入流体で地下層を掃攻する工程、
d.油及び/又はガスの水性混合物を回収する工程
を含む、地下層を掃攻することによって油及び/又はガスの回収を強化するための方法。
【請求項27】
以下の工程:
a.請求項19から22のいずれか一項に記載のポリマーから、水又はブラインを用いて、かつ少なくとも1種のプロパントを用いて注入流体を調製する工程、
b.前記流体を地下貯留層に注入し、その少なくとも一部を破砕して油及び/又はガスを回収する工程
を含む、地下油及び/又はガス貯留層の水圧破砕のための方法。
【請求項28】
以下の工程:
a.請求項19から22のいずれか一項に記載のポリマーから、水又はブラインを用いて流体を調製する工程、
b.井戸を掘削又はセメンチングする少なくとも1つの工程において、前記掘削及び/又はセメンチング流体をドリルヘッドを介して地下層に注入する工程
を含む、地下層中の井戸を掘削及び/又はセメンチングするための方法。
【請求項29】
紙、厚紙等のシートを作製するための方法であって、前記シートを形成する前に、請求項19から22のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマーが1つ又は複数の注入点で繊維懸濁液に添加される、方法。
【請求項30】
都市用水及び工業用水を処理するための方法であって、請求項19から22のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマーを、前記都市用水又は工業用水に添加する工程を含む、方法。
【請求項31】
請求項19から22のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマーを含む、化粧用、皮膚科学、医薬又は洗剤組成物のための増粘剤。
【請求項32】
請求項19から22のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマーを含む、捺染に使用される顔料組成物のための増粘剤。
【請求項33】
採鉱又はオイルサンド作業から生じる水中の固体粒子の懸濁液を処理するための方法であって、前記懸濁液を、請求項19から22のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマーと接触させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのニトリル官能基を含む生物由来化合物、好ましくは(メタ)アクリロニトリル又はバイオ-3-ヒドロキシプロピオニトリルの生物変換によりエチレン性不飽和を含むモノマーを得るための生物学的方法であって、前記方法が少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む、方法に関する。特に、方法は、生物由来(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アンモニウム及び(メタ)アクリル酸を得るために使用することができる。本発明はまた、生物由来であり、本発明に従い生物学的に得られるモノマーの少なくとも1種から得られる生物由来ポリマーに関する。最後に、本発明は、様々な技術分野における本発明の生物由来ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルアミド及びアクリル酸等のエチレン性不飽和モノマー又はその塩は、水溶性ポリマーの製造に広く使用されている。アクリルアミド及びアクリル酸、特にアクリル酸アンモニウム(その後、アクリル酸に容易に変換できる)は、酵素を含む微生物等の生体触媒を用いて酵素的に合成することができる。
【0003】
ニトリルヒドラターゼ酵素は、ニトリルの対応するアミドへの直接的な水和を触媒することが公知である。ニトリラーゼ酵素は、ニトリルの対応するアクリル酸塩への水和を触媒することが公知である。アミダーゼ酵素は、アミドの対応するカルボン酸塩への水和を触媒することが公知である。いずれの場合も、水は酵素反応の溶媒及び試薬として機能する。以下の図は、これらの様々な可能性を要約したものである(ACN:アクリロニトリル、AM:アクリルアミド、AA塩:アクリル酸塩)。
【0004】
【0005】
アクリロニトリルは現在、特許US2,904,580に記載されるように、プロピレン(プロペン)とアンモニアとの間の反応による、一般にSOHIO法として公知のアンモ酸化法によって生成されている。
【0006】
プロピレンは化石系オレフィンであり、現在はそれ自体が原油精製から誘導されるナフサの水蒸気分解によって生成される。より最近では、シェールガス生成の出現に伴い、プロピレンを生成するために様々なプロパン脱水素法が導入されている。
【0007】
化石系プロピレンは様々な不純物を含み、それらは残存するか、又はアンモ酸化法によって転換される。
【0008】
アクリロニトリル中の不純物は、(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリル酸アンモニウムへの様々な生物変換法に影響を及ぼすことが公知である。例えば、文献JP11-123098には、アクリロニトリル中に青酸が存在することによって酵素活性が強く影響を受けることが記載されている。その結果、この活性低下に対抗するために、酵素の用量を増加させる必要がある。アクロレインが存在すると、これらは架橋剤として作用するため、高分子量ポリマーの重合に適さないモノマーが生成される。
【0009】
既存の文献には、架橋又は微分岐状ポリマー粒子として別段公知である、一般に高分子量で着色又は「フィッシュアイ」のない高性能ポリマーを得るために、高純度のアクリルアミドを有することの重要性が記載されている。
【0010】
このような様々な欠点に対抗するために、複数の研究者がアクリロニトリルの精製を試みている。例えば、US4,208,329及びUS5,969,175には、オキサゾール及びアクロレインの濃度を制限するために、イオン交換樹脂で処理することによってアクリロニトリルを精製するための方法が記載されている。
【0011】
アクリルアミドの精製等、より高純度のアクリルアミドを得る目的で他の戦略も採用されている。文献EP 3 736 262 A1には、活性炭を用いてアクリルアミドを精製するための方法が記載されている。
【0012】
アクリル酸アンモニウムは通常、アクリル酸を水性アンモニアで中和することによって得られる。アクリル酸の精製は、例えばUS 6,541,665に広く記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US2,904,580
【特許文献2】JP11-123098
【特許文献3】US4,208,329
【特許文献4】US5,969,175
【特許文献5】EP 3 736 262 A1
【特許文献6】US 6,541,665
【特許文献7】WO2014/086780
【特許文献8】WO2014/111598
【特許文献9】WO03/066800
【特許文献10】EP2716754
【特許文献11】EP2719760
【特許文献12】FR2979821
【特許文献13】WO2016020622
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Roessler, N.、Valenta, R. J.及びvan Cauter, S.、「Time-resolved Liquid Scintillation Counting」、Liquid Scintillation Counting and Organic Scintillators、Ross, H.、Noakes, J. E.及びSpaulding, J. D.編、Lewis Publishers、Chelsea、MI、1991、501~511頁
【非特許文献2】Allison, C. E.、Francy, R. J.及びMeijer, H. A. J.、「Reference and Intercomparison Materials for Stable Isotopes of Light Elements」、International Atomic Energy Agency、Vienna、Austria、IAEATECHDOC- 825、1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決を提案する課題は、アクリルアミド及びアクリル酸アンモニウム等のエチレン性不飽和モノマーを生成するための新規かつ改善された方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
全く驚くべきことに、本出願人は、エチレン性不飽和を含むMOモノマーを得るための方法であって、少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む生物学的方法である方法において、少なくとも部分的に再生可能かつ化石系である、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物を使用して、生体触媒の消費を実質的に低減させ、前記生体触媒のリサイクル率を増大させることができることを観察した。
【0017】
本発明全体において、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、好ましくは(メタ)アクリロニトリル又は3-ヒドロキシプロピオニトリルである。好ましくは、CN化合物は、単一のニトリル官能基を含む。特定の理論によって束縛されることを求めることなく、本出願人は、少なくとも1つの化石系ニトリル官能基を含む化合物と、少なくとも1つの再生可能な非化石ニトリル官能基を含む化合物との間の不純物の異なる性質が、これらの予想外の技術的効果の原因である可能性を提起する。
【0018】
本発明の第1の目的は、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換により、エチレン性不飽和を含むMOモノマーを得るための生物学的方法であって、前記CN化合物が、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であり、前記生物学的方法が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下での少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む、生物学的方法である。
【0019】
本発明全体において、エチレン性不飽和を含むMOモノマーは、好ましくは(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アンモニウム又は(メタ)アクリル酸である。
【0020】
本発明全体において、とりわけ、本発明によるモノマーを得る様々な方法を全体的な図で詳述する
図1を参照することができる。
【0021】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む生物学的方法による、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換によって得られるバイオ(メタ)アクリルアミドであって、前記CN化合物が、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1つのニトリル官能基を含む、バイオ(メタ)アクリルアミドである。「バイオ(メタ)アクリルアミド」は、生物由来(メタ)アクリルアミドを意味する。
【0022】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む生物学的方法による、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換によって得られるバイオ(メタ)アクリル酸塩であって、前記CN化合物が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1つのニトリル官能基を含む、バイオ(メタ)アクリル酸塩である。「バイオ(メタ)アクリル酸」は、生物由来(メタ)アクリル酸を意味する。
【0023】
本発明の別の目的は、本発明による方法によって得られる少なくとも1種のモノマーの重合によって得られる、又は本発明による少なくとも1種のバイオ(メタ)アクリルアミド若しくは少なくとも1種のバイオ(メタ)アクリル酸塩若しくはバイオ(メタ)アクリル酸の重合によって得られるポリマーである。本発明のさらなる目的は、本発明によるポリマーを様々な技術分野で使用することである。「バイオ(メタ)アクリル酸」は、生物由来(メタ)アクリル酸を意味する。
【0024】
本発明により、新たな技術革新に固有の環境目標を達成することが可能である。この場合、バイオ法と再生可能な非化石原料の使用を組み合わせることで、生物変換プロセスを実質的に最適化することができる。また、予想外に改善された性能を発揮する重合可能な生物由来モノマーを得ることができる。
【0025】
本発明の方法の別の利点は、CN化合物(少なくとも1つのニトリル官能基を含む化合物)の残留量を低減できることである。
【0026】
更に、MOモノマーの重合によって得られるポリマーは、化石起源を有するモノマーを用いたポリマーよりも容易に生分解可能である。これらはまた、化石モノマーに比べ、排水及び保持に関する改善された性能、改善された溶解性を示す。これらはまた、化学的分解により耐性があり、このようなポリマーを用いて調製された注入流体の摩擦低減が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の文脈では、「再生可能かつ非化石」という用語は、バイオマス又は合成ガス(シンガス)から誘導された、すなわち、1又は複数の天然及び非化石原料に対して行われる1又は複数の化学転換から生じる化学化合物の起源を指定するために使用される。「生物由来」又は「生物資源」という用語は、化学化合物の再生可能かつ非化石起源を特徴付けるために使用することもできる。化合物の再生可能かつ非化石起源は、ポリマー解重合又は熱分解油処理からの材料等の、バイオマス材料リサイクルプロセスで過去に1回又は複数回リサイクルされた、循環経済から生じる再生可能かつ非化石原料を含む。
【0028】
本発明によれば、化合物の「少なくとも部分的に再生可能かつ非化石」の品質は、前記化合物の全炭素質量に対して、好ましくは5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を意味する。
【0029】
本発明の文脈では、ASTM D6866-21規格の方法Bは、化学化合物の生物由来の性質を特徴付け、前記化合物の生物由来炭素含有量を決定するために使用される。値は、前記化合物中の全炭素質量に対する生物由来炭素の質量パーセンテージ(wt%)として表される。
【0030】
ASTM D6866-21規格は、放射性炭素分析による固体、液体及び気体試料の生物由来炭素含有量を実験的に測定する方法を教示する試験方法である。
【0031】
この規格は、主に加速器質量分析(AMS)技術を使用する。この技術は、試料中に存在する放射性核種を自然に測定するために使用され、ここで原子がイオン化され、高エネルギーまで加速された後、分離されファラデーカップ内で個々に計数される。この高エネルギー分離は、同重体干渉を除去するのに非常に効果的であるため、AMSは炭素12に対する炭素14の存在量(14C/12C)を1.10-15の精度まで正確に測定することができる。
【0032】
ASTM D6866-21規格の方法Bは、AMS及びIRMS(同位体比質量分析法)を使用する。この試験方法により、近代炭素系炭素原子を化石系炭素原子と直接区別することができる。製品の炭素14対炭素12又は炭素14対炭素13の含有量の測定は、NISTの標準参照物質(SRM)4990C(シュウ酸)等の、放射性炭素年代測定コミュニティによって受け入れられている現代炭素系参照物質に対して決定される。
【0033】
試料調製法は規格に記載されており、一般的に使用される手順であるため、特別な解説は必要ない。
【0034】
結果の分析、解釈及び報告は以下に記載される。炭素12に対する炭素14の含有量、又は炭素13に対する炭素14の含有量の同位体比は、AMSを使用して測定される。炭素12に対する炭素14の含有量、又は炭素13に対する炭素14の含有量の同位体比は、NIST SRM 4990C現代参照標準物質によって追跡可能な標準物質に対して決定される。「現代炭素比(fraction of modern)」(fM)は、現代標準物質に対する試験製品中の炭素14の量を表す。これは、最も多くの場合、fMに相当するパーセンテージである現代炭素パーセント(pMC)と称される(例えば、fM1=100pMC)。
【0035】
放射性炭素分析から得られたすべてのpMC値は、所与の安定同位体を使用して同位体分別の補正を行わなければならない。補正は、可能な場合、AMSを使用して直接決定された炭素13に対する炭素14の値を使用して行われるべきである。これが不可能な場合は、IRMS、CRDS(キャビティリングダウン分光法)、又は1000分のプラスマイナス0.3以内までの精度を提供できる他の同等の技術によって測定されたデルタ13C(δ13C)を使用して補正を行うべきである。
【0036】
「ゼロpMC」は、材料中にバックグラウンドシグナルを超える測定可能な14Cが全く存在しないことを表し、したがって化石(例えば石油系)炭素源を示す。値100pMCは、完全に「現代の」炭素源であることを示す。0~100のpMC値は、「現代」源に対する化石源から誘導される炭素の割合を示す。
【0037】
pMCは、大気圏核実験計画によって生じる大気中への14C注入の影響が、持続的ではあるが減少しているため、100%より高くなる可能性がある。pMC値を大気補正係数(REF)によって調整し、試料の実際の生物由来含有量を得る必要がある。
【0038】
補正係数は、試験時の大気中の過剰14C放射能に基づいている。オランダの農村地域(Lutjewad、Groningen)における空気中のCO2測定に基づき、2015年のREF値は102pMCと決定された。2004年のこの規格の最初のバージョン(ASTM D6866-04)は、値107.5pMCを参照していたが、その後のバージョンASTM D6866-10(2010)は、値105pMCを参照していた。これらのデータ点は、1年当たり0.5pMCの低下を表す。その結果、毎年1月2日に、以下のTable 1(表1)の値が2019年までREF値として使用され、毎年0.5pMCという同様の減少を反映している。2020年及び2021年のREF値(pMC)は、2019年までのオランダ(Lutjewad、Groningen)での継続的な測定に基づき、100.0と決定された。炭素同位体比データの報告に関する参考文献を、14C及び13Cについてそれぞれ以下に示す Roessler, N.、Valenta, R. J.及びvan Cauter, S.、「Time-resolved Liquid Scintillation Counting」、Liquid Scintillation Counting and Organic Scintillators、Ross, H.、Noakes, J. E.及びSpaulding, J. D.編、Lewis Publishers、Chelsea、MI、1991、501~511頁. Allison, C. E.、Francy, R. J.及びMeijer, H. A. J.、「Reference and Intercomparison Materials for Stable Isotopes of Light Elements」、International Atomic Energy Agency、Vienna、Austria、IAEATECHDOC- 825、1995。
【0039】
生物由来炭素含有量のパーセンテージは、pMCをREFで除し、結果に100を乗じることによって算出される。例えば、[102(pMC)/102(REF)]×100=100%生物由来炭素である。結果は、前記化合物中の全炭素質量に対する生物由来炭素の質量パーセンテージ(wt%)で示される。
【0040】
【0041】
本発明の文脈では、「隔離された」という用語は、バリューチェーン(例えば、製品製造方法)において特徴的かつ他の材料の流れから区別可能な材料の流れを意味し、したがって材料の同じ起源、又は同じ規格若しくは規範によるその製造が、このバリューチェーンを通して追跡され保証され得るような、同等の性質を有する材料の集合に属するとみなされる。
【0042】
例えば、これは、化学者が、納入されたアクリロニトリルの100%生物由来起源を保証する単一の供給業者から100%生物由来アクリロニトリルを独占的に購入し、前記化学者がこの100%生物由来アクリロニトリルを他の潜在的なアクリロニトリル源とは別に処理して化学化合物を生成する場合であってもよい。生成された化学化合物が、前記100%生物由来アクリロニトリルのみから作製される場合、その化学化合物は100%生物由来である。
【0043】
本発明の文脈では、「隔離されていない」という用語は、「隔離された」という用語とは対照的に、バリューチェーンにおける他の材料の流れと区別できない材料の流れを意味すると理解される。
【0044】
この隔離という概念をより良く理解するために、循環経済及び方法におけるその実用的な応用、特に化学転換についてのいくつかの基本を思い起こすことが有用である。
【0045】
フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)によれば、循環経済は、製品(商品及びサービス)のライフサイクルのすべての段階において、資源の利用効率を高め、環境への影響を低減しながら、個人のウェルビーイングを発展させようとする貿易及び生産の経済システムと定義できる。言い換えれば、資源によって生み出される価値を最適化することにより、廃棄物を最小限に抑える効率及び持続可能性に特化した経済システムである。循環経済は、現在のより直線的な「取って、作って、捨てる」アプローチから脱却するために、様々な保全及びリサイクルの実施に大きく依存している。
【0046】
ある物質を別の物質に転換する科学である化学の分野では、これは、製品を作製するために既に使用された材料を再利用することにつながる。理論的には、すべての化学物質は他の化学物質から単離し、したがって別々にリサイクルすることができる。現実は、特に工業においてはより複雑であり、単離された場合であっても、化合物を別の供給源から発生した同じ化合物と区別できないことが多く、したがってリサイクル材料のトレーサビリティを複雑にしている。
【0047】
このため、このような工業の現実を考慮した様々なトレーサビリティモデルが開発され、これにより化学工業の使用者は、事実を完全に把握した上で材料の流れを管理することができ、最終顧客は、対象物又は商品の生産に使用された材料の起源を簡単な方法で理解し、把握することができる。
【0048】
これらのモデルは、バリューチェーン全体の透明性及び信頼を構築するために開発された。最終的に、これによりエンドユーザー又は顧客は、対象物又は商品中の所望の成分(例えば、生物由来の性質)の割合を把握することにより、自ら方法のあらゆる側面を制御する能力を持つことなく、より持続可能な解決策を選択することができる。
【0049】
そのようなモデルの1つが、先に定義した「隔離」である。このモデルが適用される公知の例としては、材料の流れを別々に追跡することが可能なガラス及び一部の金属がある。
【0050】
しかし、化学物質は複雑な組合せで使用されることが多く、特に法外なコスト及び非常に複雑な流れの管理のために、別個のサイクルを実施することは困難であることが非常に多く、したがって「隔離」モデルは常に適用可能ではない。
【0051】
その結果、材料の流れを区別することが不可能な場合、他のモデルが適用され、これらのモデルは、「隔離されていない」という用語の下でまとめてグループ化され、例えば、流れを物理的に分離することなく、他の流れに対する特定の流れの割合を考慮することを伴う。一例は、物質収支方式である。
【0052】
物質収支方式は、監査可能な会計帳簿に基づき、最終製品におけるそのカテゴリーの含有量の比例的かつ適切な配分を保証するために、生産システムにおける全体に対するカテゴリー(例えば「リサイクルされた」)の割合を正確に追跡することを含む。
【0053】
例えば、これは、化学者が、納入されたアクリロニトリルにおいて、アクリロニトリルの50%が生物由来起源を有し、事実上50%が生物由来起源のものではないことを物質収支方式又は質量収支方式に従って保証している供給業者から50%の生物由来アクリロニトリルを購入し、前記化学者が、この50%生物由来アクリロニトリルと0%生物由来アクリロニトリルの別の流れを使用し、2つの流れが生産プロセス中のある時点で、例えば混合によって識別できなくなる場合であってもよい。生成された化学化合物が50%生物由来の50wt%の保証されたアクリロニトリル、及び0%生物由来の50wt%アクリロニトリルから作製される場合、化学化合物は25%生物由来である。
【0054】
例えば、記載された「生物由来」の数値を保証し、新製品を生産する際にリサイクルされた原料の使用を奨励するために、材料の流れを確実に管理するための一連の世界的に共有され標準化された規則(ISCC+、ISO 14020)が開発された。
【0055】
本発明の文脈では、「リサイクルされた」という用語は、廃棄物とみなされる材料をリサイクルするための方法から誘導される、すなわち、一般的に廃棄物とみなされる少なくとも1つの材料に対して、少なくとも1つのリサイクル方法を使用して行われる1又は複数の転換から得られる化学化合物の起源を意味すると理解される。
【0056】
「水溶性ポリマー」という用語は、25℃で水中20g.L-1の濃度で撹拌することによって溶解させたときに透明な水溶液をもたらすポリマーを意味すると理解される。
【0057】
本発明による方法
本発明は、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換により、エチレン性不飽和を含むMOモノマーを得るための生物学的方法であって、前記CN化合物が、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であり、前記生物学的方法が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下での少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む、生物学的方法に関する。
【0058】
本発明全体において、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、好ましくは(メタ)アクリロニトリル又は3-ヒドロキシプロピオニトリルである。好ましくは、CN化合物は単一のニトリル官能基を含む。
【0059】
本発明全体において、エチレン性不飽和を含むMOモノマーは、好ましくは(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アンモニウム又は(メタ)アクリル酸である。
【0060】
本明細書において、「XとYとの間」及び「X~Y」という表現は、終端X及びYを含む。
【0061】
本発明全体において、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であることが規定されている、又は生物由来炭素含有量が規定されている化合物の生物由来炭素含有量は、前記化合物中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%、好ましくは10wt%~100wt%、好ましくは15wt%~100wt%、好ましくは20wt%~100wt%、好ましくは25wt%~100wt%、好ましくは30wt%~100wt%、好ましくは35wt%~100wt%、好ましくは40wt%~100wt%、好ましくは45wt%~100wt%、好ましくは50wt%~100wt%、好ましくは55wt%~100wt%、好ましくは60wt%~100wt%、好ましくは65wt%~100wt%、好ましくは70wt%~100wt%、好ましくは75wt%~100wt%、好ましくは80wt%~100wt%、好ましくは85wt%~100wt%、好ましくは90wt%~100wt%、好ましくは95wt%~100wt%、好ましくは97wt%~100wt%、好ましくは99wt%~100wt%の範囲であり、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0062】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、好ましくは前記(メタ)アクリロニトリル中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0063】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、(メタ)アクリロニトリルは、好ましくは前記(メタ)アクリロニトリル中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0064】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、3-ヒドロキシプロピオニトリルは、好ましくは前記3-ヒドロキシプロピオニトリル中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0065】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、本発明の方法に従って得られるエチレン性不飽和を含むMOモノマーは、前記モノマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0066】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物、好ましくは(メタ)アクリロニトリル又は3-ヒドロキシプロピオニトリルは、好ましくは全体的に再生可能かつ非化石である。同様に、本発明によるエチレン性不飽和を含むモノマーは、好ましくは全体的に再生可能かつ非化石である。
【0067】
少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、隔離されていなくてもよく、部分的に隔離されていてもよく、又は全体的に隔離されていてもよい。
【0068】
少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物が全体的に再生可能かつ非化石である場合、以下のいずれかであり得る:
a)全体的にリサイクル起源のものであり、
a)1)若しくは全体的に隔離されているか、
a)2)若しくは部分的に隔離されているか、
a)3)若しくは隔離されていないか、
b)又は部分的にリサイクル起源のものであり、
b)1)若しくは全体的に隔離されているか、
b)2)若しくは部分的に隔離されているか、
b)3)若しくは隔離されていないか、
c)又は全体的に非リサイクル起源のものであり、
c)1)若しくは全体的に隔離されているか、
c)2)若しくは部分的に隔離されているか、
c)3)若しくは隔離されていない。
【0069】
これらの様々な実施形態では、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物が部分的に隔離されている場合、「隔離された」部分と「隔離されていない」部分との間の質量比は、好ましくは99:1~10:90、好ましくは99:1~30:70、より好ましくは99:1~50:50である。
【0070】
これらの様々な実施形態の中で、3つのa)実施形態、3つのb)実施形態、及び実施形態c)1)が好ましい。これらの実施形態の中で、実施形態a)1)、a)2)、b)1)、b)2)及びc)1)が更により好ましい。最も好ましい2つの実施形態は、a)1)及びb)1)である。
【0071】
工業的な現実は、生物由来の、全体的にリサイクル及び/若しくは隔離された、又は高度にリサイクル及び隔離された、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の工業的な量を得ることが常に可能ではないようなものである。したがって、上記の選好は、現時点では実施がより困難である場合がある。実用的な観点からは、実施形態a)3)、b)3)及びc)が、現在より容易かつより大規模に実施されている。循環経済に向けて技術が急速に進化しており、既に適用可能な好ましい態様が、すぐに極めて大規模に適用可能になることは確実である。少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物が部分的に再生可能かつ非化石である場合、再生可能な部分(生物由来)と非生物由来部分が区別される。明らかに、これらの部分のそれぞれは、本明細書で上述したのと同じ実施形態a)、b)及びc)に従ってもよい。
【0072】
部分的に生物由来の化合物の生物由来部分に関しては、化合物が完全に生物由来である場合と同じ選好が適用される。
【0073】
しかし、部分的に生物由来の化合物の非生物由来部分に関しては、循環経済アプローチのために、可能な限り大きなリサイクル成分を有することが更により好ましい。したがって、この場合、実施形態a)1)、a)2)、b)1)、b)2)、特にa)1)及びb)1)が好ましい。
【0074】
本発明及び以下に記載する様々な実施形態では、バイオアクリロニトリルは、酸触媒の存在下で気相中でグリセロール、アンモニア及び酸素を混合し、混合物全体を高温に加熱してアンモ酸化反応を誘発することによって得ることができる。或いは、バイオアクリロニトリルは、バイオプロピレンをアンモニアでアンモ酸化することによって得ることができる。バイオプロピレンは、WO2014/086780の実施例8に記載されているように、グルコースの細菌発酵反応から誘導されてもよい。最後に、好ましい実施形態では、バイオプロピレンは、バイオナフサの水蒸気分解によって得られ、後者は、WO2014/111598に記載されているように、植物油から誘導される。代替的な実施形態では、バイオプロピレンは、リサイクル法を使用して誘導される。
【0075】
代替的な実施形態では、バイオプロピレンは、熱分解油処理法を使用して誘導される。この熱分解油は、使用済みプラスチック(例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート)及び/又は林業残渣(トール油)及び/又は農業材料等のバイオマスのリサイクルから誘導されてもよい。バイオプロピレンは、ポリプロピレンの直接解重合によっても得ることができる。
【0076】
バイオ-3-ヒドロキシプロピオニトリルは、再生可能資源から直接、又はそれ自体再生可能資源から得られる3-ヒドロキシプロピオン酸から間接的に得ることができる。
【0077】
特定の実施形態では、(メタ)アクリロニトリルはリサイクル法を使用して得られる。
【0078】
この特定の実施形態では、アクリロニトリル及び3-ヒドロキシプロピオニトリルは、リサイクル法を使用して、例えばポリマーの解重合から、又は熱分解油から製造することによって得られ、後者は使用済みプラスチック廃棄物の高温嫌気性燃焼から生じる。したがって、廃棄物とみなされる材料は、リサイクルされたアクリロニトリルを生成するための供給源として使用することができ、このアクリロニトリルは、ひいては本発明のモノマーを製造するための原料として使用することができる。本発明によるモノマーはリサイクル法を使用して誘導されるため、以下に記載される本発明によるポリマーは、循環経済の好循環に応じることができる。
【0079】
方法の様々な実施形態を以下に記載する。
【0080】
本発明による第1の好ましい実施形態では、エチレン性不飽和を含むMOモノマーは、アクリルアミド又はメタクリルアミドである。
【0081】
したがって、第1の実施形態による第1の変形例では、本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルの生物変換によって(メタ)アクリルアミドを得るための生物学的方法であって、前記生物学的方法が、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む、生物学的方法に関する。
【0082】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、バイオ(メタ)アクリロニトリルは、バイオプロピレン又はバイオ-3-ヒドロキシプロピオニトリルのいずれかから得ることができる。「バイオ(メタ)アクリロニトリル」は、生物由来(メタ)アクリロニトリルを意味する。
【0083】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、生物学的方法は、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下での少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む方法、好ましくは少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下での少なくとも2つの酵素的生物変換工程を含む方法を意味すると理解される。
【0084】
第1の実施形態による第2の変形例では、本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である3-ヒドロキシプロピオニトリルからアクリルアミドを得るための生物学的方法であって、前記方法が少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む、方法に関する。
【0085】
この第1の実施形態の第1のサブ変形例では、3-ヒドロキシプロピオニトリルは、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下での酵素的生物変換によって3-ヒドロキシプロピオンアミドに変換され、前記3-ヒドロキシプロピオンアミドは、次いでアクリルアミドに変換される。
【0086】
第1の実施形態による第2のサブ変形例では、3-ヒドロキシプロピオニトリルはアクリロニトリルに変換され、次いで前記アクリロニトリルは、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で、前記アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む生物学的方法によってアクリルアミドに変換される。
【0087】
本発明全体において、ニトリルヒドラターゼ酵素は、好ましくはバチルス(Bacillus)、バクテリジウム(Bacteridium)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)、アシネトバクター(Acinetobacter)、キサントバクター(Xanthobacter)、ストレプトミセス(Streptomyces)、リゾビウム(Rhizobium)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、エロモナス(Aeromonas)、シトロバクター(Citrobacter)、アクロモバクター(Achromobacter)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、シュードノカルディア(Pseudonocardia)、ロドコッカス(Rhodococcus)、コマモナス(Comamonas)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ディエジア(Dietzia)、クロストリジウム(Clostridium)、ラクトバシルス(Lactobacillus)、エスケリキア(Escherichia)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、メチロフィルス(Methylophilus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、メガスフェラ(Megasphaera)、アスペルギルス(Aspergillus)、カンジダ(Candida)、又はフザリウム(Fusarium)、好ましくはロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)、より好ましくはロドコッカス・ロドクラウスJ1(Rhodococcus rhodochrous J1)によって合成される。
【0088】
本発明による第2の好ましい実施形態において、エチレン性不飽和を含むMOモノマーは、アクリル酸塩又はメタクリル酸塩である。
【0089】
第2の実施形態の第1の変形例では、(メタ)アクリル酸塩は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルから直接得られる。
【0090】
したがって、本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルの生物変換によって(メタ)アクリル酸塩を得るための生物学的方法であって、前記生物学的方法が、少なくとも1種のニトリラーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む、生物学的方法に関する。
【0091】
本発明全体において、ニトリラーゼ酵素は、好ましくはバチルス、バクテリジウム、ミクロコッカス、ブレビバクテリウム、コリネバクテリウム、シュードモナス、アシネトバクター、キサントバクター、ストレプトミセス、リゾビウム、クレブシエラ、エンテロバクター、エルウィニア、エロモナス、シトロバクター、アクロモバクター、アグロバクテリウム、シュードノカルディア、ロドコッカス、コマモナス、サッカロミセス、ディエジア、クロストリジウム、ラクトバチルス、エスケリキア、アグロバクテリウム、マイコバクテリウム、メチロフィルス、プロピオニバクテリウム、アクチノバチルス、メガスフェラ、アスペルギルス、カンジダ、又はフザリウム、好ましくはロドコッカス・ロドクラウスによって合成される。
【0092】
第2の実施形態の第2の変形例では、(メタ)アクリル酸塩は、それ自体少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルから得られる、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリルアミドから得られる。
【0093】
したがって、本発明は、少なくとも1種のアミダーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で(メタ)アクリルアミドを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む生物学的方法に従い、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である前記(メタ)アクリルアミドを生物変換することにより(メタ)アクリル酸塩を得るための生物学的方法であって、前記(メタ)アクリルアミドが、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む生物学的方法に従い、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である前記(メタ)アクリロニトリルを生物変換することによって得られる、生物学的方法に関する。
【0094】
本発明全体において、アミダーゼ酵素は、好ましくは以下の微生物によって合成される:ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus Erythropolis)、シュードモナス・メチロトロファ(Pseudomonas methylotropha)、ロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)又はコマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)、より好ましくはロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)。
【0095】
この第2の実施形態では、得られる塩は、一般にアクリル酸アンモニウム又はメタクリル酸アンモニウムである。本発明による方法は、(メタ)アクリル酸塩を(メタ)アクリル酸に、又はアンモニウムカチオンがアルカリ金属、アルカリ土類金属等の別のカチオンによって置き換えられた別の(メタ)アクリル酸塩、好ましくはバイオ(メタ)アクリル酸ナトリウムに変換する後続の工程を含んでもよい。
【0096】
本発明による第3の好ましい実施形態では、エチレン性不飽和を含むMOモノマーは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0097】
したがって、本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である3-ヒドロキシプロピオニトリルから(メタ)アクリル酸を得るための生物学的方法であって、前記生物学的方法が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下での少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む、生物学的方法に関する。
【0098】
第3の実施形態の第1の変形例では、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石の3-ヒドロキシプロピオニトリルは、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で、酵素的生物変換によって3-ヒドロキシプロピオンアミドに変換され、次いで前記3-ヒドロキシプロピオンアミドが、少なくとも1種のアミダーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で、酵素的生物変換によって3-ヒドロキシプロピオン酸塩に変換され、次いで前記3-ヒドロキシプロピオン酸塩が3-ヒドロキシプロピオン酸に変換され、最後に前記3-ヒドロキシプロピオン酸がアクリル酸に変換される。
【0099】
第3の実施形態の第2の変形例では、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石の3-ヒドロキシプロピオニトリルは、少なくとも1種のニトリラーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で酵素的生物変換によって3-ヒドロキシプロピオン酸塩に変換され、次いで前記3-ヒドロキシプロピオン酸塩が3-ヒドロキシプロピオン酸に変換され、最後に前記3-ヒドロキシプロピオン酸がアクリル酸に変換される。
【0100】
第3の実施形態の第3の変形例では、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石の3-ヒドロキシプロピオニトリルは、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で、酵素的生物変換によって3-ヒドロキシプロピオンアミドに変換され、次いで前記3-ヒドロキシプロピオンアミドが、少なくとも1種のアミダーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で、酵素的生物変換によって3-ヒドロキシプロピオン酸塩に変換され、次いで前記3-ヒドロキシプロピオン酸塩がアクリル酸塩に変換され、最後に前記アクリル酸塩がアクリル酸に変換される。
【0101】
第3の実施形態の第4の変形例では、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石の3-ヒドロキシプロピオニトリルは、少なくとも1種のニトリラーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で、酵素的生物変換によって3-ヒドロキシプロピオン酸塩に変換され、次いで前記3-ヒドロキシプロピオン酸塩がアクリル酸塩に変換され、最後に前記アクリル酸塩がアクリル酸に変換される。
【0102】
アクリル酸は、その後アクリル酸塩に変換されてもよい。
【0103】
本発明に記載される様々な方法に適用可能な特定の実施形態では、方法で使用される少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物、好ましくは(メタ)アクリロニトリル又は3-ヒドロキシプロピオニトリルは、リサイクルプロセスから誘導される。
【0104】
この特定の実施形態では、本発明による方法は以下の工程を含む:
- 少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1つの材料をリサイクルして少なくとも1つのニトリル官能基を含む化合物、好ましくは(メタ)アクリロニトリル又は3-ヒドロキシプロピオニトリルを得る工程、
- 少なくとも1つのニトリル官能基を含む前述の化合物、好ましくは(メタ)アクリロニトリル又は3-ヒドロキシプロピオニトリルを、前述の方法の1つに従って(メタ)アクリルアミドに、又は(メタ)アクリル酸塩に、又は(メタ)アクリル酸に変換する工程であって、前記方法が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下での少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む、工程。
【0105】
この特定の実施形態では、本発明による方法は、好ましくは以下の工程を含む:
- 少なくとも部分的に再生可能かつ非石油化学的である少なくとも1つの材料をリサイクルして(メタ)アクリロニトリルを得る工程、
- 前記(メタ)アクリロニトリルを少なくとも1種のニトリラーゼ酵素で加水分解して(メタ)アクリル酸アンモニウムを得る工程、又は前記(メタ)アクリロニトリルを少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素で加水分解して(メタ)アクリルアミドを得る工程、又は前記(メタ)アクリロニトリルを少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素で加水分解して(メタ)アクリルアミドを得た後、得られた(メタ)アクリルアミドを少なくとも1種のアミダーゼ酵素で加水分解して(メタ)アクリル酸アンモニウムを得る工程。
【0106】
リサイクル率は、全材料に対するリサイクル材料の質量比である。
【0107】
この特定の実施形態では、リサイクルから得られた部分は、好ましくは全体的に「隔離されている」、すなわち、別々のパイプラインから得られ、別々の態様で処理される。代替的な実施形態では、部分は部分的に「隔離されて」おり、部分的に「隔離されていない」。この場合、「隔離された」部分と「隔離されていない」部分との間の質量比は、好ましくは99:1~10:90、好ましくは99:1~30:70、より好ましくは99:1~50:50である。
【0108】
少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルの生物変換により、エチレン性不飽和を含むMOモノマーを得るための生物学的方法は、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下で、前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む。生物変換は、溶媒及び試薬として水を使用して、水性媒体中で行われてもよい。方法の工程及び条件に関しては、当業者は、既に確立された知識を参照することができる。特に、当業者は、(メタ)アクリロニトリルを(メタ)アクリルアミドに生物変換するための方法に関する確立された知識を参考にすることができ、例えば、以下の文献を参照することができる:WO03/066800、EP2716754又はEP2719760。
【0109】
本発明によるモノマー
本発明は、前述の方法の1つによって得られるエチレン性不飽和を含むMOモノマーに関する。エチレン性不飽和を含むMOモノマーは、好ましくはバイオ(メタ)アクリルアミド、バイオ(メタ)アクリル酸アンモニウム又はバイオ(メタ)アクリル酸である。モノマーは、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下での少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む生物学的方法によって得られる。「方法」セクションで展開された同じ実施形態及び選好が、モノマーについて記載するこのセクションに適用される。
【0110】
本発明は、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換によって得られる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含むMOモノマーであって、前記CN化合物が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であり、前記生物変換が少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下での少なくとも1つの酵素的生物変換工程を含む、MOモノマーに関する。
【0111】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、好ましくは前記化合物中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0112】
本発明全体において、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、好ましくは(メタ)アクリロニトリル又は3-ヒドロキシプロピオニトリルである。好ましくは、CN化合物は単一のニトリル官能基を含む。
【0113】
本発明全体において、エチレン性不飽和を含むMOモノマーは、好ましくは(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アンモニウム又は(メタ)アクリル酸である。
【0114】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、得られるエチレン性不飽和を含むMOモノマーは、好ましくは前記モノマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0115】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態では、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、好ましくは全体的に再生可能かつ非化石である。また同様に、本発明によるエチレン性不飽和を含むMOモノマーは、好ましくは全体的に再生可能かつ非化石である。
【0116】
モノマーの様々な実施形態を以下に記載する。
【0117】
本発明による第1の好ましい実施形態では、エチレン性不飽和を含むMOモノマーは、アクリルアミド又はメタクリルアミドである。
【0118】
したがって、本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルの生物変換によって得られるバイオ(メタ)アクリルアミドであって、前記生物変換が、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む、バイオ(メタ)アクリルアミドに関する。
【0119】
好ましくは、ニトリルヒドラターゼ酵素は、前述の微生物の1種によって合成される。
【0120】
本発明全体において、バイオ(メタ)アクリルアミド、又はより一般的に生物由来モノマーは、(メタ)アクリルアミドモノマー、又は少なくとも部分的に、好ましくは全体的にバイオマス若しくは合成ガス(シンガス)から誘導される、すなわち1種又は複数の天然、及び対照的に非化石原料に対して行われる1つ又は複数の化学転換から生じるモノマーを意味すると理解される。バイオ(メタ)アクリルアミドは、生物由来又は生物資源(メタ)アクリルアミドとも称されてもよい。
【0121】
本発明による第2の好ましい実施形態において、エチレン性不飽和を含むMOモノマーは、アクリル酸塩又はメタクリル酸塩である。
【0122】
第2の実施形態の第1の変形例では、(メタ)アクリル酸塩は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルから直接得られる。
【0123】
したがって、本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルの生物変換によって得られるバイオ(メタ)アクリル酸塩であって、前記生物変換が、少なくとも1種のニトリラーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む、バイオ(メタ)アクリル酸塩に関する。
【0124】
第2の実施形態のこの第1の変形例では、生体触媒に含まれる酵素は、前述の微生物の1種によって優先的に合成されるニトリラーゼである。
【0125】
第2の実施形態の第2の変形例では、バイオ(メタ)アクリル酸塩は、それ自体少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルから得られる、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリルアミドから得られる。
【0126】
したがって、本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリルアミドの生物変換によって得られるバイオ(メタ)アクリル酸塩であって、前記生物変換が、少なくとも1種のアミダーゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリルアミドを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含み、前記(メタ)アクリルアミドが、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である(メタ)アクリロニトリルの生物変換によって得られ、前記生物変換が、少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素を含む生体触媒の存在下で前記(メタ)アクリロニトリルを酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含む、バイオ(メタ)アクリル酸塩に関する。
【0127】
第2の実施形態のこの第2の変形例では、ニトリルヒドラターゼ酵素は、前述の微生物の1種によって優先的に合成され、アミダーゼ酵素は、前述の微生物によって優先的に合成される。
【0128】
この第2の実施形態では、得られるバイオ塩は、一般にバイオ(メタ)アクリル酸アンモニウムである。本発明はまた、アンモニウムカチオンが、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は好ましくはナトリウム等の別のカチオンによって置き換えられる、バイオ(メタ)アクリル酸アンモニウムとは異なるバイオ(メタ)アクリル酸塩に関する。
【0129】
本発明はまた、本発明によるバイオ(メタ)アクリル酸塩又はバイオメタクリル酸塩から得られるバイオ(メタ)アクリル酸に関する。
【0130】
少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、隔離されていなくてもよく、部分的に隔離されていてもよく、又は全体的に隔離されていてもよい。「方法」セクションで展開された同じ実施形態及び選好が、モノマーについて記載するこのセクションに適用される。
【0131】
特定の実施形態では、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、部分的又は全体的にリサイクル起源のものであってもよい。「方法」セクションで展開された同じ実施形態及び選好が、モノマーについて記載するこのセクションに適用される。
【0132】
この特定の実施形態では、本発明によるモノマーは、以下の工程:
- 少なくとも1種の再生可能かつ非石油化学原料をリサイクルしてアクリロニトリルを得る工程、
- 前記アクリロニトリルを少なくとも1種のニトリラーゼ酵素で加水分解してアクリル酸アンモニウムを得る工程、又は前記アクリロニトリルを少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素で加水分解してアクリルアミドを得る工程、又は前記アクリロニトリルを少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素で加水分解してアクリルアミドを得た後、得られたアクリルアミドを少なくとも1種のアミダーゼ酵素で加水分解してアクリル酸アンモニウムを得る工程、
- 任意選択で、得られたアクリル酸アンモニウムをアクリル酸又は別のアクリル酸塩、好ましくはアクリル酸ナトリウムに変換する工程
を含む方法によって得られる。
【0133】
本発明によるポリマー
本発明は、本発明による方法によって得られる少なくとも1種のモノマーの重合によって得られるポリマーに関する。本発明はまた、前述の少なくとも1種のモノマーの重合によって得られるポリマーに関する。「方法」セクションで展開された同じ実施形態及び選好が、ポリマーについて記載するこのセクションに適用される。
【0134】
本発明によるポリマーは、部分的又は全体的に生物由来であり、生物学的に得られたモノマーから生成される、すなわち、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒を含む生物学的方法によって得られるという利点を提供する。これは「ソフト化学」として公知である。代替的な実施形態では、アクリロニトリルはリサイクル法を使用して得ることもできる。したがって、本発明によるポリマーは、循環経済の好循環に参加していると主張することができる。
【0135】
本発明によるポリマーは、好ましくは水溶性又は水膨潤性である。ポリマーはまた、超吸収剤であってもよい。
【0136】
本発明によるポリマーは、本発明による方法によって得られる少なくとも1種のモノマーを有するホモポリマー、又は前述のモノマーの少なくとも1種を有しかつ少なくとも1種の異なる追加のモノマーを有するコポリマーであってもよく、追加のモノマーは、有利には少なくとも1種の非イオン性モノマー、及び/又は少なくとも1種のアニオン性モノマー、及び/又は少なくとも1種のカチオン性モノマー、及び/又は少なくとも1種の双性イオン性モノマー、及び/又は疎水性基を含む少なくとも1種のモノマーから選択される。
【0137】
したがって、コポリマーは、本発明による第1のモノマーとは異なる少なくとも第2のモノマーを含んでもよく、この第2のモノマーは、非イオン性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、双性イオン性モノマー、疎水性基を含むモノマー、及びそれらの混合物から選択される。
【0138】
非イオン性モノマーは、好ましくはアクリルアミド、メタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド(NVF)、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピリジン及びN-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルスクシンイミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、アクリロイルクロリド、グリシジルメタクリレート、グリセリルメタクリレート及びジアセトンアクリルアミドから選択される。
【0139】
アニオン性モノマーは、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリルアミドウンデカン酸、3-アクリルアミド3-メチルブタン酸、無水マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2-スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、アリルホスホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンジスルホン酸、及びこれらのモノマーの水溶性塩、例えばそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩から選択される。アニオン性モノマーは、好ましくはアクリル酸(及び/若しくはその塩)、並びに/又はATBS(及び/若しくはその塩)である。
【0140】
カチオン性モノマーは、好ましくは四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(ADAME)、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、及びメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)から選択される。
【0141】
双性イオン性モノマーは、ビニル型単位、特にアクリルアミド、アクリル酸、アリル酸又はマレイン酸の誘導体であってもよく、このモノマーは、アミン又はアンモニウム官能基(有利には第四級)及びカルボン酸(若しくはカルボキシレート)、スルホン酸(若しくはスルホネート)又はリン酸(若しくはホスフェート)型の酸官能基を有する。
【0142】
疎水性を有するモノマーも、ポリマーの調製に使用することができる。好ましくは、これらはアルキル、アリールアルキル、プロポキシル化、エトキシル化又はエトキシル化及びプロポキシル化鎖を有する(メタ)アクリル酸のエステル、アルキル、アリールアルキル、プロポキシル化、エトキシル化、エトキシル化及びプロポキシル化鎖、又はジアルキルを有する(メタ)アクリルアミドの誘導体、アルキルアリールスルホネート、又はプロポキシル化、エトキシル化、又はエトキシル化及びプロポキシル化アルキル、アリールアルキル鎖を有する(メタ)アクリルアミドの一又は二置換アミドの誘導体、プロポキシル化、エトキシル化、エトキシル化及びプロポキシル化アルキル、アリールアルキル、又はジアルキル鎖を有する(メタ)アクリルアミドの誘導体、アルキルアリールスルホネートからなる群から選択される。
【0143】
これらのモノマーのそれぞれはまた、生物由来であってもよい。
【0144】
本発明によれば、ポリマーは直鎖状、分岐状、星状、櫛状、樹枝状又はブロック構造を有してもよい。これらの構造は、開始剤、移動剤、RAFT(可逆的付加-開裂連鎖移動)、NMP(ニトロキシド媒介重合)又はATRP(原子移動ラジカル重合)と称される制御ラジカル重合等の重合技術、構造モノマーの組込み、濃度を選択することによって得ることができる。
【0145】
本発明によれば、ポリマーは、有利には直鎖状及び構造化されている。構造化ポリマーは、このポリマーが水に溶解される場合、非常に実質的な低勾配粘度をもたらす顕著な絡み合い状態を得るために側鎖を有する非直鎖状ポリマーを指す。本発明のポリマーはまた、架橋されてもよい。
【0146】
更に、本発明によるポリマーは、以下によって構造化されてもよい:
- 例えばビニル官能基、特にアリル、アクリル及びエポキシ官能基等のポリエチレン性不飽和モノマー(少なくとも2つの不飽和官能基を有する)を含む群から選択されてもよく、例えばメチレンビスアクリルアミド(MBA)、トリアリルアミン、若しくはテトラアリルアンモニウムクロリド、若しくは1,2ジヒドロキシエチレンビス-(N-アクリルアミド)を挙げることができる少なくとも1種の構造化剤、並びに/又は
- マクロ開始剤、例えばポリペルオキシド、ポリアゾイド、及びポリ移動剤、例えばポリマー性(コ)ポリマー及びポリオール、並びに/又は
- 官能化多糖類。
【0147】
モノマー混合物中の分岐/架橋剤の量は、有利にはモノマー含有量(質量)に対して4wt%未満、より有利には1%未満、更により有利には0.5%未満である。特定の実施形態によれば、分岐/架橋剤の量は、モノマー含有量に対して少なくとも0.00001wt%に等しくてもよい。
【0148】
特定の実施形態では、本発明によるポリマーは、半合成、したがって半天然ポリマーであってもよい。この実施形態では、ポリマーは、本発明による少なくとも1種のモノマーと、少なくとも1種の天然化合物との全体的又は部分的なグラフト化による共重合によって合成されてもよく、前記天然化合物は、好ましくはデンプン及びその誘導体、多糖類及びその誘導体、繊維、植物性ガム、動物性ガム又は藻類ガム、並びにそれらの変性型から選択される。例えば、植物性ガムとして、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、グアニジニウムガム、シアニンガム、タラガム、カシアガム、キサンタンガム、ガティガム、カラヤガム、ジェランガム、クラスタマメ(cyamopsis tetragonoloba)ガム、大豆ガム、又はベータ-グルカン又はダンマーを挙げることができる。天然化合物はまた、ゼラチン、カゼイン又はキトサンであってもよい。例えば、藻類ガムとして、アルギン酸ナトリウム若しくはその酸、寒天又はカラギーナンを挙げることができる。
【0149】
重合は一般に、これは限定的ではないが、共重合又はグラフト化によって行われる。当業者は、半天然ポリマーの分野における現在の一般的な知識を参照することができる。
【0150】
本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の天然ポリマーを含む組成物であって、前記天然ポリマーが、好ましくは前述の天然ポリマーから選択される組成物に関する。合成ポリマーと天然ポリマーとの間の質量比は、一般に90:10~10:90である。組成物は、液体、逆エマルジョン又は粉末形態であってもよい。
【0151】
一般に、ポリマーは、特定の重合法を開発する必要はない。実際、ポリマーは、当業者に周知のすべての重合技術に従って得ることができる。特に、重合技術は、溶液重合、ゲル重合、沈殿重合、エマルジョン重合(水性又は逆)、懸濁重合、反応性押出重合、水中水重合、又はミセル重合であってもよい。
【0152】
重合は、一般に、好ましくは逆エマルジョン重合又はゲル重合によるフリーラジカル重合である。フリーラジカル重合には、UV、アゾ、レドックス若しくは熱開始剤を使用したフリーラジカル重合、及び制御ラジカル重合(CRP)技術、又はマトリックス重合技術が含まれる。
【0153】
本発明によるポリマーは、重合によって得られた後に修飾することができる。これは、ポリマーの後修飾として公知である。すべての公知の後修飾を、本発明によるポリマーに適用することができ、本発明は前記後修飾後に得られるポリマーにも関する。以下に展開される可能な後修飾の中で、後加水分解、マンニッヒ反応による後修飾、ホフマン反応による後修飾、及びグリオキサール化反応による後修飾を挙げることができる。
【0154】
本発明によるポリマーは、本発明による方法によって得られた少なくとも1種のモノマー、又は「モノマー」セクションで前述した少なくとも1種のモノマーの重合によって得られたポリマーに対して後加水分解反応を行うことによって得ることができる。後加水分解の前に、ポリマーは、例えばアクリルアミド又はメタクリルアミドモノマー単位を含む。ポリマーはまた、N-ビニルホルムアミドのモノマー単位を更に含んでもよい。より具体的には、後加水分解は、有利には非イオン性モノマー単位の加水分解可能な官能基、より有利にはアミド又はエステル官能基と加水分解剤との反応を含む。この加水分解剤は、酵素、イオン交換樹脂、アルカリ金属、又は好適な酸化合物であってもよい。好ましくは、加水分解剤はブレンステッド塩基である。ポリマーがアミド及び/又はエステルモノマー単位を含む場合、後加水分解反応はカルボキシレート基を生成する。ポリマーがビニルホルムアミドモノマー単位を含む場合、後加水分解反応はアミン基を生成する。
【0155】
本発明によるポリマーは、本発明による方法によって得られた少なくとも1種のモノマー、又は「モノマー」セクションで前述した少なくとも1種のモノマーの重合によって得られたポリマーに対してマンニッヒ反応を行うことによって得ることができる。より具体的には、マンニッヒ反応の前に、ポリマーは、有利にはアクリルアミド及び/又はメタクリルアミドモノマー単位を含む。マンニッヒ反応は、ジアルキルアミン及びホルムアルデヒド前駆体の存在下で水溶液中で行われる。より有利には、ジアルキルアミンはジメチルアミンであり、ホルムアルデヒド前駆体はホルムアルデヒドそれ自体である。この反応後、ポリマーは第三級アミンを含む。
【0156】
本発明によるポリマーは、本発明による方法によって得られた少なくとも1種のモノマー、又は「モノマー」セクションで前述した少なくとも1種のモノマーの重合によって得られたポリマーに対してホフマン反応を行うことによって得ることができる。ホフマン反応の前に、ポリマーは、有利にはアクリルアミド及び/又はメタクリルアミドモノマー単位を含む。いわゆるホフマン分解反応は、アルカリ土類及び/又はアルカリ水酸化物並びにアルカリ土類及び/又はアルカリ次亜ハロゲン化物の存在下で、水溶液中で行われる。
【0157】
19世紀末にホフマンによって発見されたこの反応は、アミド官能基を炭素原子が1つ少ない第一級アミン官能基に変換するために使用される。詳細な反応機構を以下に示す。
【0158】
ブレンステッド塩基(例えばソーダ)の存在下では、アミドからプロトンが抽出される。
【0159】
【0160】
形成されたアミデートイオンは、次いで次亜塩素酸塩(例えば:平衡状態にあるNaClO: 2NaOH + Cl2⇔NaClO + NaCl + H2O)の活性塩素(Cl2)と反応してN-クロラミドを生成する。ブレンステッド塩基(例えば、NaOH)は、クロラミドからプロトンを抽出してアニオンを形成する。アニオンは塩化物イオンを失い、イソシアネート転位を受けるニトレンを形成する。
【0161】
【0162】
水酸化物イオンとイソシアネートとの間の反応により、カルバメートが形成される。
【0163】
【0164】
カルバメートからの脱炭酸(CO2の除去)後、第一級アミンが得られる。
【0165】
【0166】
アミド基を含む(コ)ポリマーのアミド官能基の全部又は一部をアミン官能基に変換するために、2つの主な因子が関与する(モル比で表される)。これらは以下の通りである:
- アルファ=(アルカリ及び/又はアルカリ土類次亜ハロゲン化物/アミド基)並びに
- ベータ=(アルカリ及び/又はアルカリ土類水酸化物/アルカリ及び/又はアルカリ土類次亜ハロゲン化物)。
【0167】
本発明によるポリマーはまた、本発明による方法によって得られた少なくとも1種のモノマー、又は「モノマー」セクションで前述した少なくとも1種のモノマーの重合によって得られたポリマーに対してグリオキサール化反応を行うことによって得ることができ、前記ポリマーは、グリオキサール化反応により、有利にはアクリルアミド又はメタクリルアミドの少なくとも1種のモノマー単位を含む。より具体的には、グリオキサール化反応は、ポリマー上の少なくとも1つのアルデヒドの反応を含み、それにより前記ポリマーを官能化することができる。有利には、アルデヒドは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フランジアルデヒド、2-ヒドロキシアジポアルデヒド、スクシンアルデヒド、デンプンジアルデヒド、2.2-ジメトキシエタナール、ジエポキシ化合物、及びそれらの組合せを含む群から選択され得る。好ましくは、アルデヒド化合物はグリオキサールである。
【0168】
本発明によれば、ポリマーの調製に噴霧乾燥、ドラム乾燥、マイクロ波乾燥等の放射線乾燥、又は流動床乾燥等の乾燥工程が含まれる場合、ポリマーは、液体、ゲル又は固体形態であってもよい。
【0169】
本発明によれば、水溶性ポリマーは、好ましくは1000~4000万g/molの分子量を有する。ポリマーは分散剤であってもよく、この場合、その分子量は好ましくは1000~50,000g/molである。ポリマーは、より高い分子量、典型的には100万~3000万g/molを有してもよい。分子量は質量平均分子量として理解される。本発明によるポリマーはまた、水中でその質量の10~500倍を吸収することができる超吸収剤であってもよい。
【0170】
分子量は、有利には(コ)ポリマーの固有粘度によって決定される。固有粘度は、当業者に公知の方法によって測定することができ、濃度(x軸)に対して還元粘度値(y軸)をプロットし、曲線をゼロ濃度に外挿することを伴うグラフ法により、異なる(コ)ポリマー濃度の還元粘度値から計算することができる。固有粘度値をy軸に、又は最小二乗法を使用してプロットする。次いで、分子量を、Mark-Houwinkの式を使用して決定することができる:
[η]=K Mα
[η]は、溶液粘度測定法によって決定される(コ)ポリマーの固有粘度を表す。
Kは実験定数を表す。
Mは(コ)ポリマーの分子量を表す。
αはMark-Houwink係数を表す。
K及びαは、特定の(コ)ポリマー-溶媒系に依存する。
【0171】
本発明のポリマーを得るために本発明によるモノマーと組み合わされるコモノマーは、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは全体的に再生可能かつ非化石である。
【0172】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は以下を含むポリマーに関する:
- 少なくとも5mol%、好ましくは少なくとも10mol%、好ましくは20mol%~99mol%、より好ましくは30mol%~90mol%の第1のモノマーであって、前記モノマーが本発明によるモノマーである第1のモノマー、及び
- 少なくとも1mol%、好ましくは5mol%~90mol%、より好ましくは10mol%~80mol%のエチレン性不飽和を含む少なくとも1種の第2のモノマーであって、前記第2のモノマーが第1のモノマーとは異なり、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である第2のモノマー。
【0173】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は以下を含むポリマーに関する:
- 少なくとも5mol%、好ましくは少なくとも10mol%、好ましくは20mol%~99mol%、より好ましくは30mol%~90mol%の第1のモノマーであって、前記モノマーが本発明によるモノマーである第1のモノマー、及び
- 少なくとも1mol%、好ましくは5mol%~90mol%、より好ましくは10mol%~80mol%のエチレン性不飽和を含む少なくとも1種の第2のモノマーであって、前記第2のモノマーが第1のモノマーとは異なり、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である第2のモノマー、
- 少なくとも1mol%、好ましくは5mol%~90mol%、より好ましくは10mol%~80mol%のエチレン性不飽和を含む少なくとも1種の第3のモノマーであって、前記第3のモノマーが第1のモノマー及び第2のモノマーとは異なり、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である第3のモノマー。
【0174】
本発明によるポリマーは、4種以上の異なるモノマーを含んでもよい。
【0175】
好ましい実施形態では、第2のモノマー及び可能性のある他のモノマーは、関連モノマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%、好ましくは10wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0176】
この好ましい実施形態では、第2のモノマー及び可能性のある他のモノマーは、好ましくはアクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)及び/又はその塩、N-ビニルホルムアミド(NVF)、N-ビニルピロリドン(NVP)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(ADAME)、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)、式CH2=CHCO-NR1R2を有する置換アクリルアミドであって、R1及びR2が互いに独立して直鎖状又は分岐状炭素鎖CnH2n+1であり、nが1~10である置換アクリルアミドのオリゴマーから選択される。
【0177】
本発明全体において、ポリマーのモノマー(架橋剤を除く)のモルパーセンテージは100%に等しいことが理解される。
【0178】
少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、隔離されていなくてもよく、部分的に隔離されていてもよく、又は全体的に隔離されていてもよい。「方法」セクションで展開された同じ実施形態及び選好が、ポリマーについて記載するこのセクションに適用される。
【0179】
特定の実施形態では、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、部分的又は全体的にリサイクル起源のものであってもよい。「方法」セクションで展開された同じ実施形態及び選好が、ポリマーについて記載するこのセクションに適用される。
【0180】
本発明は更に、ポリマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を含み、生物由来炭素含有量がASTM D6866-21方法Bに従って測定される、前述のポリマーに関する。
【0181】
本発明はまた、ポリマーを合成するための、本発明による方法によって得られる少なくとも1種のモノマーの使用に関する。
【0182】
本発明によるポリマーの使用
本発明はまた、炭化水素(油及び/又はガス)の回収、井戸の掘削及びセメンチング、炭化水素井戸(油及び/又はガス)の刺激、例えば水圧破砕、適合、分流、開放、閉鎖又は半閉鎖回路における水の処理、発酵スラリーの処理、スラッジの処理、製紙、建設、木材加工、水硬性組成物処理(コンクリート、セメント、モルタル及び骨材)、鉱業、化粧品の調合、洗剤の調合、繊維製造、電池構成要素製造、地熱エネルギー、生理用ナプキン製造、又は農業における本発明によるポリマーの使用に関する。
【0183】
本発明はまた、凝集剤、凝固剤、結合剤、固定剤、粘度低減剤、増粘剤、吸収剤、摩擦低減剤、除水剤、排水剤、電荷保持剤、脱水剤、コンディショニング剤、安定化剤、膜形成剤、サイズ調整剤、超可塑化剤、クレイ抑制剤又は分散剤としての本発明によるポリマーの使用に関する。
【0184】
本発明によるポリマーを使用する方法
本発明はまた、本発明のポリマーを使用して塗布性能を改善する、以下に記載される様々な方法に関する。
【0185】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.注入流体を地下層に注入する工程、
c.注入流体で地下層を掃攻する工程、
d.油及び/又はガスの水性混合物を回収する工程
を含む、地下層を掃攻することによって油及び/又はガスの回収を強化するための方法に関する。
【0186】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて、かつ少なくとも1種のプロパントを用いて、本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.前記流体を地下貯留層に注入し、その少なくとも一部を破砕して油及び/又はガスを回収する工程
を含む、地下油及び/又はガス貯留層の水圧破砕のための方法に関する。
【0187】
上述の方法において、ポリマーは、好ましくは高分子量ポリマー(800万ダルトンより大きい)である。ポリマーは、好ましくは直鎖状である。ポリマーは、好ましくは粉末、逆エマルジョン、部分的に脱水された逆エマルジョンの形態、又は「透明な」、すなわち水性若しくは油性流体中の固体ポリマー粒子の分散液の形態である。粉末形態は、好ましくは逆エマルジョンのゲル又は噴霧乾燥によって得られる。粉末形態はまた、本発明によるポリマーの逆エマルジョン、及び本発明によるポリマーの固体粒子を含む組成物を含む。
【0188】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.注入流体を地下層に注入する工程、
c.注入流体で地下層を部分的又は全体的に塞ぐ工程であって、前記塞ぐ工程が一時的又は永久的である工程
を含む、地下層を刺激する方法に関する。
【0189】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.井戸を掘削又はセメンチングする少なくとも1つの工程において、ドリルヘッドを介して前記掘削及び/又はセメンチング流体を地下層に注入する工程
を含む、地下層に井戸を掘削及び/又はセメンチングする方法に関する。
【0190】
井戸の掘削及びセメンチングは、地下層に井戸を作り出すための2つの連続した工程である。第1の工程は、掘削流体による掘削であり、一方で第2の工程は、セメンチング流体による井戸のセメンチングである。本発明はまた、掘削流体とセメンチング流体との間に注入される中間流体(「スペーサー流体」)を注入する方法であって、前記中間流体が本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、方法に関する。この中間流体は、セメンチング流体と掘削流体との間の混入を防止する。
【0191】
井戸の掘削及びセメンチングの際、本発明によるポリマーは、セメント組成物がその中に、又はそれ通して圧送される浸透性地層又はゾーンへのセメント組成物からの流体損失を低減するために、井戸セメント組成物中の流体損失添加剤として使用することができる。一次セメンチングにおいて、浸透性地層又は地下ゾーンへの流体、すなわち水の損失は、セメント組成物の早期ゲル化につながる可能性があるため、浸透性地層又はゾーンとそこにセメンチングされたドリルストリングとの間の環状空間を橋渡しすることにより、セメント組成物が環の全長に沿って配置されるのを防ぐ。
【0192】
本発明はまた、建設目的の水硬性組成物中のクレイを不活性化する方法であって、前記方法が、水硬性組成物又はその構成成分の1種に、少なくとも1種のクレイ不活性化剤を添加する工程を含み、クレイ不活性化剤が、本発明によるポリマーであることを特徴とする、方法に関する。
【0193】
クレイは水を吸収する可能性があり、建材の性能を低下させる。本発明のポリマーをクレイ抑制剤として使用すると、特にひび割れの原因となり、したがって建築物を弱体化させ得るクレイの膨潤を回避することができる。
【0194】
水硬性組成物は、コンクリート、セメント、モルタル又は骨材であってもよい。ポリマーは、水硬性組成物又はその構成成分の1つに、有利には骨材の質量に対して2~200ppmの不活性化剤の投与量で添加される。
【0195】
クレイを不活性化するこの方法において、クレイは、2:1膨潤性クレイ(スメクタイト等)、又は1:1膨潤性クレイ(カオリン等)、又は2:1:1膨潤性クレイ(クロライト等)を含むがこれらに限定されない。「クレイ」という用語は、一般に、ラメラ構造を有するフィロ珪酸塩を含むマグネシウム及び/又はアルミニウム珪酸塩を指す。しかし、本発明において、用語「クレイ」は、非晶質クレイ等のそのような構造を有さないクレイも含む。
【0196】
本発明はまた、紙、厚紙等のシートを製造するための方法であって、シートが形成される前に、繊維の懸濁液に、1つ又は複数の注入点で、本発明による少なくとも1種のポリマーを添加することを含む工程が実施される、方法に関する。ポリマーは、乾燥強度又は保持特性又は湿潤強度を提供することができる。ポリマーはまた、紙の地合、排水及び除水能力を向上させることができる。
【0197】
方法は、包装紙及び厚紙、塗工紙、衛生紙及び家庭紙、あらゆる種類の紙、厚紙等の製造に成功裏に使用することができる。
【0198】
「ポリマー」セクションに記載された後修飾ポリマー、特にホフマン反応又はグリオキサール化反応による後修飾ポリマーは、紙、厚紙等を製造するための方法において特に有利である。
【0199】
保持特性は、紙パルプの懸濁物質(繊維、微粉、填料(炭酸カルシウム、酸化チタン)...)を形成布に、したがって最終シートを構成する繊維状マット中に保持する能力を意味すると理解される。保持剤の作用様式は、これらの懸濁物質を水中で凝集させることに基づく。実際、形成されたフロックは、形成シート上により容易に保持される。
【0200】
填料の保持は、填料(セルロースと親和性の低い小さな鉱物種)を特異的に保持することを含む。填料の保持の大幅な改善は、填料をシートに保持し、その坪量を増加させることにより、白水の透明化をもたらす。これにより、製造コストを削減するために、繊維(紙、厚紙等の組成物中の最も高価な種)の一部を填料(より低コスト)で置き換えることもできる。
【0201】
除水(又は排水)特性に関して、この特性は、特にシートの製造中に、シートが可能な限り早く乾燥するように最大量の水を排出又は排水する繊維状マットの能力である。
【0202】
これらの2つの特性(保持及び排水)は複雑に関連しており、一方は他方に依存しているため、問題は、保持と排水との間の最適な妥協点を見出すことである。一般に、当業者は保持及び排水剤に言及するが、これはこの薬剤が、これら2つの特性を改善するのに使用される同じ種類の製品であるためである。
【0203】
繊維状懸濁液は、水及びセルロース繊維からなる濃厚パルプ又は希釈パルプを意味すると理解される。乾物濃度が1%より高い、或いは3%より高い濃厚ストックは、ファンポンプの上流に配置される。乾物濃度が一般に1%未満の希薄ストックは、ファンポンプの下流に配置される。
【0204】
ポリマーは、濃厚ストック又は希薄ストックに添加されてもよい。ポリマーは、ファンポンプ又はヘッドボックスの位置で添加されてもよい。好ましくは、ポリマーはヘッドボックスの前に添加される。
【0205】
本発明による紙、厚紙等を作製するための方法において、本発明によるポリマーは、単独で又は二次保持剤と組み合わせて使用されてもよい。好ましくは、有機ポリマー及び/又は無機微粒子から選択される二次保持剤が繊維懸濁液に添加される。
【0206】
繊維状懸濁液に添加されるこの二次保持剤は、有利には広義のアニオン性ポリマーから選択されるため、これらは(限定するものではないが)、直鎖状、分岐状、架橋状、疎水性、会合性及び/又は無機微粒子(例えばベントナイト、コロイド状シリカ)であってもよい。
【0207】
本発明はまた、採鉱又はオイルサンド作業から生じる水中の固体粒子の懸濁液を処理するための方法であって、前記懸濁液を本発明による少なくとも1種のポリマーと接触させる工程を含む方法に関する。このような方法は、一般に、粒子が沈降し得る円錐底部を有する、直径数メートルの管部の形態の滞留ゾーンである濃縮器で行うことができる。具体的な実施形態によれば、水性懸濁液はパイプによって濃縮器に輸送され、前記パイプにポリマーが添加される。
【0208】
別の実施形態によれば、ポリマーは、処理すべき懸濁液を既に含んでいる濃縮器に添加される。典型的な鉱物処理作業では、懸濁液はしばしば濃縮器で濃縮される。この結果、濃縮器の底部からより高密度のスラッジが流出し、濃縮器の上部から、処理された懸濁液から放出された水性流体(リカーと呼ばれる)がオーバーフローによって流出する。一般に、ポリマーの添加はスラッジの濃度を高め、リカーの透明度を高める。
【0209】
別の実施形態によれば、ポリマーは、前記懸濁液を堆積領域へ輸送する間に粒子状懸濁液に添加される。好ましくは、ポリマーは、前記懸濁液を堆積ゾーンに搬送するパイプ中に添加される。処理された懸濁液が除水及び固化の準備のために散布されるのは、この堆積領域上である。堆積領域は、土壌の非密閉領域等の開放領域、又は水盤、セル等の閉鎖領域のいずれかであってもよい。
【0210】
懸濁液の輸送中のこのような処理の例は、本発明によるポリマーで処理された懸濁液を、除水及び固化の準備のために土壌上に散布し、次いで固化した第1の層の上に、処理された懸濁液の第2の層を散布することである。別の例は、本発明によるポリマーで処理した懸濁液を、処理した懸濁液が堆積領域で以前に排出された懸濁液の上に連続的に落下するような態様で連続的に散布することであり、その結果、そこから水が抽出される処理物質の塊が形成される。
【0211】
別の実施形態によれば、水溶性ポリマーが懸濁液に添加され、遠心分離、プレス又は濾過等の機械的処理が実施される。
【0212】
水溶性ポリマーは、懸濁液処理の異なる段階、すなわち、例えば、懸濁液を濃縮器に運ぶパイプ中、及び沈殿領域又は機械的処理デバイスのいずれかに搬送される、濃縮器から出るスラッジ中に同時に添加することができる。
【0213】
本発明はまた、都市用水又は工業用水を処理するための方法であって、本発明による少なくとも1種のポリマーを、処理される前記水に導入する工程を含む、方法に関する。効果的な水処理には、水から溶解化合物、並びに分散及び懸濁固形物を除去することが必要である。一般に、この処理は、凝固剤及び凝集剤等の化学薬品によって強化される。これらは通常、浮遊及び沈降等の分離装置の前で水流に添加される。
【0214】
本発明によるポリマーは、都市廃水又は工業廃水中の懸濁粒子を凝固又は凝集させるために有利に使用できる。一般に、これらは、ミョウバン等の無機凝固剤と組み合わせて使用される。
【0215】
これらはまた、この廃水処理から生成されるスラッジの処理に有利に使用できる。下水スラッジ(都市用であれ工業用であれ)は、廃液から処理プラントによって生成される主な廃棄物である。一般に、スラッジ処理には除水が含まれる。この除水は、遠心分離、フィルタープレス、ベルトプレス、電気除水、スラッジ乾燥葦床、天日乾燥によって行うことができる。これは、スラッジの水分濃度を下げるために使用される。
【0216】
この都市又は工業用水処理プロセスにおいて、本発明によるポリマーは、好ましくは直鎖状又は分岐状である。ポリマーは、好ましくは粉末、逆エマルジョン又は部分的に脱水された逆エマルジョンの形態である。粉末形態は、好ましくは逆エマルジョンからのゲル又は噴霧乾燥によって得られる。
【0217】
本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、化粧用、皮膚科学又は医薬組成物のための添加剤に関する。本発明はまた、増粘(剤)、コンディショニング(剤)、安定化(剤)、乳化(剤)、固定(剤)又は膜形成剤としての前記組成物の製造における本発明によるポリマーの使用に関する。本発明は、同様に、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む化粧用、皮膚科学又は医薬組成物に関する。
【0218】
特に、そのような組成物の製造及びそのような組成物の他の成分の記載に関する、L'OREALを代理する出願FR2979821を参照することができる。前記組成物は、ミルク、ローション、ゲル、クリーム、ゲルクリーム、石鹸、バブルバス、バーム、シャンプー又はコンディショナーの形態であってもよい。皮膚、頭皮、睫毛、眉毛、爪、毛髪及び/又は粘膜等のケラチン物質の美容又は皮膚科学的処置法のための前記組成物の使用もまた、本発明の不可欠な部分である。このような使用は、ケラチン物質への組成物の塗布、場合によってはそれに続く水によるすすぎを含む。
【0219】
本発明はまた、洗剤組成物用の添加剤であって、前記添加剤が本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、添加剤に関する。本発明はまた、増粘(剤)、コンディショニング(剤)、安定化(剤)、乳化(剤)、固定(剤)又は膜形成剤としての前記組成物の製造における本発明によるポリマーの使用に関する。本発明は、同様に、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、家庭用又は工業用の洗剤組成物に関する。特に、そのような組成物の製造及びそのような組成物の他の成分の記載については、本出願人の出願WO2016020622を参照することができる。
【0220】
「家庭用又は工業用の洗剤組成物」は、様々な表面、特に織物繊維、食器、床、窓、木材、金属等の任意の種類の硬質表面、又は複合材表面を洗浄するための組成物を意味すると理解される。このような組成物には、例えば、衣類を手動で又は洗濯機で洗うための洗剤、食器を手動洗浄するための、又は食器洗浄機用製品、台所要素、トイレ、家具、床、窓等の住宅内装を洗うための洗剤製品、及び普遍的な用途のための他の洗浄製品が含まれる。
【0221】
化粧用、皮膚科学、医薬又は洗剤組成物の添加剤、例えば増粘剤として使用されるポリマーは、好ましくは架橋されている。ポリマーは、好ましくは粉末、逆エマルジョン又は部分的に脱水された逆エマルジョンの形態である。粉末形態は、好ましくは逆エマルジョンからの噴霧乾燥によって得られる。
【0222】
本発明は、同様に、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、捺染に使用される顔料組成物用のための増粘剤に関する。本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む織物繊維サイズ調整剤に関する。
【0223】
本発明はまた、本発明によるモノマーから超吸収剤を製造するための方法であって、超吸収剤が本発明による少なくとも1種のモノマーから得られ、前記超吸収剤が、農業用途において水を吸収し保持するため、又は生理用ナプキンにおいて水性液体を吸収するために使用される、方法に関する。例えば、超吸収剤は本発明によるポリマーである。
【0224】
本発明はまた、本発明によるポリマーが、例えば超吸収剤として使用される、生理用ナプキンを製造するための方法に関する。
【0225】
本発明はまた、電池バインダーとしての本発明によるポリマーの使用に関する。本発明はまた、本発明によるポリマー、電極材料及び溶媒を含む電池バインダー組成物に関する。本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマーを含むゲルを作製し、これを前記電池に充填する工程を含む、電池を製造するための方法に関する。医療デバイス、電気自動車、航空機、並びに最も重要なことに、ノートパソコン、携帯電話及びカメラ等の消費者製品を含む様々な製品に使用されるリチウムイオン電池を挙げることができる。
【0226】
一般に、リチウムイオン電池(LIB)は、負極、正極、及びリチウム塩を含む有機溶媒等の電解質材料を含む。より具体的には、負極及び正極(総称して「電極」)は、電極活物質(負極又は正極)をバインダー及び溶媒と混合してペースト又はスラッジを形成し、これをアルミニウム又は銅等の集電体上に塗布して乾燥させ、集電体上に膜を形成することによって形成される。その後、負極及び正極を積層して巻いた後、電解質材料を含む加圧ケースに収納し、これらすべてを合わせてリチウムイオン電池を形成する。
【0227】
リチウム電池では、バインダーは、機械的性能と電気化学的性能の両方においていくつかの重要な役割を果たす。第一に、バインダーは、製造プロセス中に溶媒に他の成分を分散させるのを助け(増粘剤の役割を果たすものもある)、それにより均一な分布を可能にする。第二に、バインダーは、活性成分、導電性添加剤、及び集電体を含む様々な構成要素を一緒に保持し、これらの部品のすべてが接触を保つことを確実にする。化学的又は物理的な相互作用により、バインダーはこれらの別個の構成要素を接続させ、それらを一緒に保持し、電子又はイオン伝導性に重大な影響を与えることなく、電極の機械的完全性を確保する。第三に、バインダーは、多くの場合電極と電解液との間の界面として機能する。この役割において、バインダーは、電極を腐食から保護するか、又は電解液を枯渇から保護する一方で、この界面を横切るイオンの移動を促進することができる。
【0228】
別の重要な点は、バインダーが割れない又は欠陥を生じないように、ある程度の柔軟性を有さなければならないことである。脆弱性は、電池の製造又は組立ての際に問題を引き起こす可能性がある。
【0229】
電極において(かつバッテリー全体において)バインダーが果たすすべての役割を考慮すると、バインダーの選択は、良好なバッテリーの性能を確保する上で非常に重要である。
【0230】
本発明はまた、本発明によるポリマーが、例えば超吸収剤として使用される生理用ナプキンを製造するための方法に関する。
【0231】
前述のように、循環経済は、資源によって生み出される価値を最適化することによって廃棄物を最小限に抑える、効率及び持続可能性に特化した経済システムである。これは、現在のより直線的な「取って、作って、捨てる」アプローチから脱却するために、様々な保全及びリサイクルの実践に大きく依存する。
【0232】
そのため、材料のリサイクルが主要かつ増大する関心事となっていることから、リサイクルプロセスは急速に発展し、新規化合物又は物体の生産に使用できる材料の生産を可能にしている。材料のリサイクルは、材料の起源に依存せず、リサイクルできる限り技術的進歩とみなされる。リサイクルされる材料の起源は、再生可能かつ非化石である場合があるが、化石である場合もある。
【0233】
具体的な目的を以下に記載する。
【0234】
第1の特定の目的は、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換により、エチレン性不飽和を含むMOモノマーを得るための生物学的方法であって、前記生物学的方法が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下で前記CN化合物を酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含み、前記CN化合物が、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、再生可能かつ非化石材料、又は化石材料をリサイクルするプロセスから誘導される、生物学的方法に関する。
【0235】
好ましくは、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物は、全体的に「隔離されている」、すなわち別個のパイプラインから誘導され、別個に処理される。代替的な実施形態では、CN化合物は部分的に「隔離されて」おり、部分的に「隔離されていない」。この場合、「隔離された」部分と「隔離されていない」部分との間の質量比は、好ましくは99:1~10:90、好ましくは99:1~30:70、より好ましくは99:1~50:50である。代替的な実施形態では、CN化合物は全体的に「隔離されて」いる。
【0236】
第2の特定の目的は、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換によって得られるエチレン性不飽和を含むMOモノマーであって、前記生物変換が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下で前記CN化合物を酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含み、前記CN化合物が、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、再生可能かつ非化石材料、又は化石材料をリサイクルするプロセスから誘導される、MOモノマーに関する。
【0237】
第3の特定の目的は、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換によって得られる(メタ)アクリルアミドであって、前記生物変換が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下で前記CN化合物を酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含み、前記CN化合物が、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、再生可能かつ非化石材料、又は化石材料をリサイクルするプロセスから誘導される、(メタ)アクリルアミドに関する。
【0238】
第4の特定の目的は、少なくとも1つのニトリル官能基を含むCN化合物の生物変換によって得られる(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸塩であって、前記生物変換が、少なくとも1種の酵素を含む生体触媒の存在下で前記CN化合物を酵素的に加水分解する少なくとも1つの工程を含み、前記CN化合物が、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、再生可能かつ非化石材料、又は化石材料をリサイクルするプロセスから誘導される、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸塩に関する。
【0239】
直前に記載された少なくとも1種の(メタ)アクリルアミドモノマー又は(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸塩の重合により得られるポリマー。
【0240】
第5の特定の目的は、直前に記載された少なくとも1種の(メタ)アクリルアミドモノマー又は(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸塩の重合によって得られるポリマーの、油及びガスの回収、井戸の掘削及びセメンチング、油及びガス井の刺激(例えば水圧破砕、適合、分流)、開放、閉鎖又は半閉鎖回路における水の処理、発酵スラリーの処理、スラッジの処理、製紙、建設、木材加工、水硬性組成物処理(コンクリート、セメント、モルタル及び骨材)、鉱業、化粧品の調合、洗剤の調合、繊維製造、電池構成要素製造、地熱エネルギー、又は農業における使用に関する。
【0241】
第6の特定の目的は、直前に記載された少なくとも1種の(メタ)アクリルアミドモノマー又は(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸塩の重合によって得られるポリマーの、凝集剤、凝固剤、結合剤、固定剤、粘度低減剤、増粘剤、吸収剤、摩擦低減剤、除水剤、排水剤、電荷保持剤、脱水剤、コンディショニング剤、安定化剤、膜形成剤、サイズ調整剤、超可塑化剤、クレイ抑制剤又は分散剤としての使用に関する。
【0242】
第7の特定の目的は、以下の工程:
- 少なくとも1種の再生可能かつ非化石又は化石原料をリサイクルして(メタ)アクリロニトリルを得る工程、
- 前記(メタ)アクリロニトリルを少なくとも1種のニトリラーゼ酵素で加水分解して(メタ)アクリル酸アンモニウムを得る工程、又は前記(メタ)アクリロニトリルを少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素で加水分解して(メタ)アクリルアミドを得る工程、又は前記(メタ)アクリロニトリルを少なくとも1種のニトリルヒドラターゼ酵素で加水分解して(メタ)アクリルアミドを得た後、得られた(メタ)アクリルアミドを少なくとも1種のアミダーゼ酵素で加水分解して(メタ)アクリル酸アンモニウムを得る工程、
- 任意選択で、得られた(メタ)アクリル酸アンモニウムを(メタ)アクリル酸又は別の(メタ)アクリル酸塩、好ましくは(メタ)アクリル酸ナトリウムに変換する工程、
- (メタ)アクリル酸アンモニウム及び/又は(メタ)アクリル酸、及び/又は別の(メタ)アクリル酸塩、及び/又は(メタ)アクリルアミド、及び/又は任意選択で別の不飽和モノマーを重合する工程
を含む方法によって得られるポリマーに関する。
【0243】
前記(メタ)アクリロニトリルは、好ましくは全体的に「隔離されて」おり、すなわち別個のパイプラインから誘導され、別個に処理される。
【0244】
代替的な実施形態では、前記(メタ)アクリロニトリルは、部分的に「隔離されて」おり、部分的に「隔離されていない」。この場合、「隔離された」部分と「隔離されていない」部分との間の質量比は、好ましくは99:1~10:90、好ましくは99:1~30:70、より好ましくは99:1~50:50である。代替的な実施形態では、前記(メタ)アクリロニトリルは全体的に「隔離されて」いる。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【
図1】とりわけ、本発明によるモノマーを得る様々な態様の全体的な図の詳細を示す図である。
【
図2】ポリマーを含むブラインの摩擦低減パーセンテージ(%friction reduction)を時間(分)の関数として表すグラフである。
【
図3】ポリマーを含むブラインの摩擦低減パーセンテージ(%friction reduction)を時間(分)の関数として表すグラフである。
【実施例】
【0246】
以下の実施例は、少なくとも1つのニトリル官能基を含む生物由来化合物の生物変換による、エチレン性不飽和を含むモノマーの合成に関する。
【0247】
これらの実施例を使用して、前記発明の利点を明確かつ非限定的に最もよく例示することができる。
【0248】
残留アクリロニトリルのガスクロマトグラフィー分析法の説明
アクリルアミド溶液中の残留アクリロニトリルを気相クロマトグラフィーによって測定する。この測定は、水素炎イオン化検出器付き気相クロマトグラフ(Perkin Elmer社製AUTOSYSTEM XL型)によって行われる。
【0249】
試料に存在する様々な化合物は、ピークによって表されるカラムでの保持時間によって同定される。その濃度は、内部ベンチマーク標準物質から作製された検量線を使用して、ピークの面積の比を使用して計算される。
【0250】
校正のために、アクリロニトリルの含有量が10、50、100、150、200及び250ppmであり、内部ベンチマーク(メタクリルアミド)が5wt%であるベンチマーク標準物質を調製する。
【0251】
分析するアクリルアミド試料を0.45μmで濾過し、5wt%のメタクリルアミドを添加する。
【0252】
アクリロニトリルの保持時間は0.5分であり、メタクリルアミドの保持時間は4.5分である。
【0253】
カラムは長さ1メートルであり、直径1/8インチである(参考PORAPAK PS)。
【0254】
分析条件は以下の通りである:
・インジェクター温度:250℃。
・オーブン温度:170℃(恒温)。
・検出器温度:250℃。
・キャリアガス流:窒素25ml/分。
・注入量:0.5μl。
・分析時間:6分。
【0255】
残留アクリルアミドの液体クロマトグラフィー分析法の説明
残留アクリルアミドは、UV検出器を備えた液相クロマトグラフィーで測定する。
【0256】
試料に存在する様々な化合物は、ピークによって表されるカラムでの保持時間によって同定される。その濃度は、内部ベンチマーク標準物質から作製された検量線を使用して、ピークの面積の比を使用して計算される。
【0257】
アクリルアミドの保持時間は2.5分である。
【0258】
カラムは、長さ150mm、内径4.6mmのAtlantis dC18逆相カラムである。
【0259】
分析条件は以下の通りである:
- 波長:205nm。
- 注入速度:1.0ml/分。
- 移動相:pH=3.8の20mM/L KH2PO4緩衝液85体積%及び15%メタノール。
- 注入量:10μL。
- 分析時間:8分。
【0260】
濾過指数測定試験の説明
濾過比という用語は、所与の体積/濃度の溶液がフィルターを通過するのにかかる時間を測定することにより、貯留層浸透率に近似した条件下でのポリマー溶液の性能を決定するために使用される試験を指すために本明細書で使用される。FRは一般に、溶液がフィルターを詰まらせる傾向を示す、2つの連続した等価体積に対するポリマー溶液の濾過性を比較する。FRが低いほど性能が良いことを示す。
【0261】
FRの決定に使用される試験は、1000活性ppmのポリマーを含む所与の体積の溶液がフィルターを通って流れるのにかかる時間を測定することからなる。溶液は2バールの圧力で加圧セルに収容され、フィルターは直径47mmであり、規定された孔径のものである。一般に、Frは、1.2μm、3μm、5μm又は10μmの孔径を有するフィルターで測定される。
【0262】
したがって、100ml(t100ml)、200ml(t200ml)及び300ml(t300ml)の濾液を得るのに必要な時間が測定され、次式によって表されるFRが定義される:
【0263】
【0264】
時間は0.1秒以内まで測定される。
【0265】
したがって、FRは、2つの連続した等価体積に対するポリマー溶液がフィルターを詰まらせる能力を表す。
【0266】
化学分解試験の説明
化学分解に対する耐性を決定するために使用される試験は、好気的条件下で所与の濃度のポリマー溶液を所与のブライン中で調製し、鉄又は硫化水素等の化学汚染物質と接触させることからなる。ポリマー溶液の粘度は、汚染物質への曝露前及び24時間後に測定される。粘度測定は、同じ温度及びせん断速度条件下で行われる。
【0267】
化学分解に対する耐性は、パーセンテージとして表される粘度損失値によって定量化され、成熟時に以下によって決定される:
【0268】
【0269】
(実施例1)
アクリルアミドの合成
Table 2(表2)に要約される実施例を行うために、アクリロニトリルの起源、その14Cパーセンテージ、及び使用される酵素の用量を調整して試験セットを作製する。
【0270】
14Cのwt%は炭素の性質を示す。異なるアクリロニトリル中の14Cのレベルは、ASTM D6866-21規格、方法Bに従って測定される。この規格は、化学化合物の生物由来炭素レベルを決定することにより、前記化合物の生物由来の性質を特徴付けることを可能にする。「ゼロpMC」は、材料中に測定可能な14Cが全く存在しないことを表し、したがって化石炭素源であることを示す。
【0271】
生物学的起源のアクリロニトリルは、アンモ酸化プロセスの前にバイオプロピレン前駆体を形成するために、紙パルプ工業からの残渣(英語では「トール油」)を処理することによって得ることができる。
【0272】
或いは、生物学的起源のアクリロニトリルは、特許WO2014/111598による植物油、又はリサイクルされた食用油の処理から得ることができる。
・プロトコル:
【0273】
ジャケット、撹拌機、及びコンデンサーを備えた1000mLの反応器に621.5gの脱イオン水を添加する。初期pHを10%水酸化ナトリウムで8に調整する。
【0274】
反応器の内容物を、反応器のジャケットに供給するクライオサーモスタットを使用して温度20℃に冷却する。
【0275】
微生物ロドコッカス・ロドクラウスJ1によって発現される酵素であるニトリルヒドラターゼを反応媒体に添加する。酵素の乾燥抽出物は10wt%である。
【0276】
373gのアクリロニトリルを、1時間当たり46.6gの速度で反応器に連続的に添加する。
【0277】
アクリロニトリルの酵素変換反応は発熱性であり、反応媒体中20~25℃の温度を維持するために、クライオサーモスタットを使用してジャケットによって反応器を冷却する。
【0278】
アクリロニトリルの添加終了後、最大量のアクリロニトリルを変換するために1時間の熟成時間を適用する。気相クロマトグラフィーによる分析のために反応媒体の試料を採取し、残留アクリロニトリルの量を決定する。
【0279】
アクリロニトリルからアクリルアミドへの生物変換試験を検証するには、アクリロニトリルの残留量が100ppm未満でなければならない。
【0280】
【0281】
Table 2(表2)において、本出願人は、再生可能起源のアクリロニトリルは、反応に必要な酵素の量の減少を可能にすることを観察している。
【0282】
比較例CEx2と実施例Inv3(同じ量の酵素)を比較すると、残留アクリロニトリルの量は20倍近く減少している。
【0283】
本出願人は、比較例CEx2と実施例Inv2を比較することにより、生物変換終了時に同じ残留量のアクリロニトリルに到達するためにおよそ30%少ない触媒が必要であることを確認している。
【0284】
(実施例2)
アクリロニトリルからアクリルアミドへの生物変換
アクリロニトリルの起源、その14Cパーセンテージ、更に実施例Inv8からInv14並びに比較例CEx3及びCEx4を行うために使用される酵素の用量を調整して一連の試験を行い、これをTable 3(表3)に要約する。
・プロトコル
【0285】
6つの反応器がカスケード接続されており、単位容量は1000リットルである。それぞれに撹拌装置及びグリコール水が供給されたダブルジャケットが備えられている。
【0286】
反応器のそれぞれの反応媒体の温度を20℃に制御する。脱イオン水を毎時380リットルの流量で第1の反応器にフィードする。アクリロニトリルを毎時218リットルの流量で第1の反応器にフィードする。第2の反応器に、毎時73リットルの流量でアクリロニトリルをフィードする。
【0287】
ロドコッカス・ロドクロスJ1微生物によって発現されるニトリルヒドラターゼ酵素を第1の反応器に添加する。酵素の乾燥抽出物は10wt%である。
【0288】
異なるアクリロニトリル中の炭素14レベルを、ASTM D6866-21方法Bに従って測定する。
【0289】
アクリロニトリルからアクリルアミドへの生物変換試験を検証するには、アクリロニトリルの残留量が100ppm未満でなければならない。
【0290】
【0291】
Table 3(表3)から、アクリロニトリルが再生可能起源のものである場合、必要とされる酵素の量が減少することが容易にわかる。
【0292】
比較例CEx4と実施例Inv10(同じ量の酵素)を比較すると、残留アクリロニトリルの量は30倍より多く減少している。
【0293】
比較例CEx4と実施例Inv9を比較すると、生物変換終了時に同じ残留量のアクリロニトリルを得るために、およそ25%少ない触媒が必要であることがわかる。
【0294】
(実施例3)
酵素触媒のリサイクル
上述のアクリロニトリル生物変換プロトコルを実施するが、相違点として、反応媒体に導入される酵素は、実施例2で得られたアクリルアミド溶液中の懸濁液中の酵素を濾過することによって得られる。
【0295】
この実施例では、アクリロニトリルは再生可能な起源(トール油)を有し、80%の炭素14レベルを含む。
【0296】
生物変換から得られたアクリルアミド溶液中の残留アクリロニトリルの量は、97ppmである。
【0297】
したがって、再生可能な起源のアクリロニトリルの場合、酵素をリサイクルすることが可能である。
【0298】
対照的に、実施例Inv8のアクリロニトリル生物変換プロトコルを実施するが、相違点として、反応媒体に導入される酵素は、比較例CEx2で得られたアクリルアミド溶液に懸濁された酵素の濾過から誘導される。
【0299】
この実施例では、アクリロニトリルは化石起源を有する。アクリルアミド溶液は形成できず、濾過された酵素は不活性とみなされる。
【0300】
したがって、化石系アクリロニトリルの場合、酵素をリサイクルすることは不可能である。
【0301】
(実施例4)
アクリル酸アンモニウムの合成
Table 4(表4)に要約されるように、アクリルアミドの起源、その14Cパーセンテージ、及び実施例Inv16からInv22を行うために使用される酵素の用量を調整して一連の試験を行う。
【0302】
14Cのwt%は炭素の性質を示す。異なるアクリルアミド中の14Cのレベルは、ASTM D6866-21規格、方法Bに従って測定する。この規格は、化学化合物の生物由来炭素レベルを決定することにより、前記化合物の生物由来の性質を特徴付けることを可能にする。「ゼロpMC」は、材料中に測定可能な14Cが全く存在しないことを表し、したがって化石炭素源であることを示す。
・プロトコル
【0303】
ジャケット、撹拌機、及びコンデンサーを備えた1,000mLの反応器に493gの脱イオン水を添加する。初期pHを10%水酸化ナトリウムで7.5に調整する。
【0304】
反応器の内容物を、反応器のジャケットに供給するクライオサーモスタットを使用して温度20℃に冷却する。
【0305】
微生物ロドコッカス・ロドクラウスによって発現されるアミダーゼ酵素を反応媒体に添加する。酵素の乾燥抽出物は10wt%である。
【0306】
先の実施例からの478gのアクリルアミド溶液を、毎時61.7gの速度で反応器に連続的に添加する。
【0307】
アクリルアミドの酵素変換反応は発熱性であり、反応媒体中20~25℃の温度を維持するために、クライオサーモスタットを使用してジャケットによって反応器を冷却する。
【0308】
アクリルアミド溶液の添加終了後、最大量のアクリルアミドを変換するために1時間の熟成時間を適用する。液体クロマトグラフィー分析のために反応媒体の試料を採取し、残留アクリルアミドの量を決定する。
【0309】
アクリルアミドからアクリル酸アンモニウムへの生物変換試験を検証するには、アクリルアミドの残留量が1000ppm未満でなければならない。
【0310】
【0311】
本出願人は、アクリルアミドが再生可能起源のアクリロニトリルから誘導される場合、必要な酵素の量が減少することを観察している。
【0312】
比較例CEx6と実施例Inv18(同じ量の酵素)を比較すると、アクリロニトリルの残留量は20倍より多く減少している。
【0313】
比較例CEx6と実施例Inv17を比較すると、生物変換終了時に同じ残留量のアクリロニトリルを得るために、40%少ない触媒が必要であることがわかる。
【0314】
(実施例5)
アクリロニトリルのアクリル酸アンモニウムへの生物変換
Table 5(表5)に要約されるように、アクリロニトリルの起源、その14Cパーセンテージ、及び実施例Inv23からInv29を行うために使用される酵素の用量を調整して一連の試験を行う。
【0315】
14Cのwt%は炭素の性質を示す。異なるアクリロニトリル中の14Cのレベルは、ASTM D6866-21規格、方法Bに従って測定する。この規格は、化学化合物の生物由来炭素レベルを決定することにより、前記化合物の生物由来の性質を特徴付けることを可能にする。「ゼロpMC」は、材料中に測定可能な14Cが全く存在しないことを表し、したがって化石炭素源であることを示す。
【0316】
生物学的起源のアクリロニトリルは、アンモ酸化プロセスの前にバイオプロピレン前駆体を形成するために、紙パルプ工業からの残渣(英語では「トール油」)を処理することによって得ることができる。
【0317】
或いは、生物学的起源のアクリロニトリルは、特許WO2014/111598による植物油、又はリサイクルされた食用油の処理から得ることができる。異なるアクリロニトリル中の炭素14レベルは、ASTM D6866-21方法Bに従って測定する。
・プロトコル
【0318】
ジャケット、撹拌機、及びコンデンサーを備えた1000mLの反応器に621.5gの脱イオン水を添加する。初期pHを10%水酸化ナトリウムで7.5に調整する。
【0319】
反応器の内容物を、反応器のジャケットに供給するクライオサーモスタットを使用して温度20℃に冷却する。
【0320】
微生物ロドコッカス・ロドクラウスによって発現されるニトリラーゼ酵素を反応媒体に添加する。酵素の乾燥抽出物は10wt%である。
【0321】
373gのアクリロニトリルを、毎時46.6gの速度で反応器に連続的に添加する。
【0322】
アクリロニトリルの酵素変換反応は発熱性であり、反応媒体中20~25℃の温度を維持するために、クライオサーモスタットを使用してジャケットによって反応器を冷却する。
【0323】
アクリロニトリルの添加終了後、最大量のアクリロニトリルを変換するために1時間の熟成時間を適用する。ガスクロマトグラフィー分析のために反応媒体の試料を採取し、残留アクリロニトリルの量を決定する。
【0324】
アクリロニトリルからアクリル酸アンモニウムへの生物変換試験を検証するには、アクリロニトリルの残留量が1000ppm未満でなければならない。
【0325】
【0326】
Table 5(表5)から、出願人は、アクリロニトリルが再生可能である場合、必要な酵素の量が減少することを確認している。
【0327】
比較例CEx8と実施例Inv25(同じ量の酵素)を比較すると、アクリロニトリルの残留量は10倍より多く減少している。
【0328】
比較例CEx8と実施例Inv24を比較すると、生物変換終了時に同じ残留量のアクリロニトリルを得るために、40%少ない触媒が必要であることがわかる。
【0329】
(実施例6)
バイオアクリル酸溶液の調製
ジャケット、撹拌機及びコンデンサーを備えた1000mLの反応器に、実施例22で得たアクリル酸アンモニウム800gを添加する。
【0330】
水中30%濃塩酸溶液を、反応媒体中pH3が得られるまで添加する。
【0331】
中和反応は発熱性であり、反応媒体中20℃の温度を維持するために、クライオサーモスタットを使用してジャケットによって反応器を冷却する。
【0332】
このようにして、アクリル酸の溶液を得る。
【0333】
(実施例7)
アクリルアミドポリマーP1~P4の生分解性試験
2000mLのビーカーに脱イオン水、モノマー(Table 6(表6)参照)、50wt%の水酸化ナトリウム溶液(水中)を添加する。こうして得られた溶液を5~10℃に冷却し、断熱重合反応器に移す。窒素バブリングを30分間行い、微量の溶存酸素をすべて除去する。
【0334】
その後、反応器に以下を添加する:
・2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.45g、
・2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩2.5g/Lの水溶液1.5mL、
・次亜リン酸ナトリウムの1g/L水溶液1.5mL、
・tert-ブチルヒドロペルオキシドの1g/L水溶液1.5mL、
・硫酸アンモニウムと鉄(II)六水和物(モール塩)1g/Lの水溶液1.5mL。
【0335】
数分後、窒素のバブリングを止める。その後、重合反応を、温度のピークに到達するように4時間進行させる。この時間の終了後、得られたポリマーゲルを細断して乾燥させ、再び粉砕してふるいにかけ、粉末形態のポリマーを得る。
【0336】
こうして得られたポリマーの生分解性(28日後)を、OECD 302B規格に従って評価する。
【0337】
【0338】
本出願人は、生物由来モノマー(14Cを含む)を用いて得られるポリマーが、化石起源のモノマーを有するポリマーよりも容易に生分解可能であることを観察している。
【0339】
(実施例8)
抄紙プロセスにおける添加剤としてのポリマーの使用。
保持剤は、紙の保持効率を高めるために、紙の形成前にセルロース繊維パルプに添加されるポリマーである。
【0340】
使用するパルプの種類:バージン繊維パルプ:
1wt%の最終水性濃度を得るように乾燥パルプを離解することにより、湿式パルプを得る。このパルプは、繊維質量基準で90質量%の漂白バージン長繊維、10質量%の漂白バージン短繊維及び30質量%の追加GCC(天然炭酸カルシウム)(Omya社製Hydrocal(登録商標)55)からなる中性pHパルプである。
【0341】
総保持及び負荷保持の評価
以下の試験のすべてでは、ポリマー溶液を0.5wt%で調製する。調製の45分後、注入前にポリマー溶液を10倍希釈する。
【0342】
撹拌速度1000rpmのブリットジャー型デバイスを使用して異なる結果を得る。
【0343】
プロセス順序は以下の通りである:
- T=0s:0.5wt%の濃度の紙パルプ500mLを撹拌する。
- T=10s:保持剤を添加する(乾燥ポリマー300g/乾燥パルプ1トン)。
- T=20s:キャンバス下のデッドボリュームに相当する最初の20mLを除去し、その後100mLの白水を回収する。
【0344】
総保持に相当する初回通過保持パーセンテージ(%FPR)を、以下の式に従って計算する:%FPR=(CHB-CWW)/CHB*100
【0345】
初回通過灰分保持パーセント(%FPAR)を、以下の式を使用して計算する:FPAR=(AHB-AWW)/AHB*100であり、
- CHB:ヘッドボックス稠度
- CWW:白水稠度
- AHB:ヘッドボックス灰分稠度
【0346】
これらの分析のそれぞれでは、最高値が最良の性能に相当する。
【0347】
「カナダ標準濾水度(CSF)」を使用した重力排水性能の評価
ビーカー中で、パルプを1000rpmの撹拌速度で処理する。
【0348】
プロセス順序は以下の通りである:
- T=0s:0.6wt%の濃度の紙パルプ500mLを撹拌する。
- T=10s:保持剤を添加する(乾燥ポリマー300g/乾燥パルプ1トン)。
- T=20s:撹拌を止め、1リットルを得るように必要量の水を添加する。
【0349】
このリットルの生地を「カナダ標準濾水度試験機」に移し、TAPPI T227om-99手順を適用する。
【0350】
体積はmLで表され、重力排水の測定値を示す。数値が高いほど重力排水が良好である。
【0351】
この性能は、ブランクに対する改善パーセント(%CSF)を計算することによっても表すことができる。数値が高いほど良好な性能に相当する。
【0352】
前回と同じポリマーを試験し、結果をTable 7(表7)において以下に示す。
【0353】
【0354】
本出願人は、生物由来モノマー(14Cを含む)を用いて得られたポリマーが、化石起源のモノマーを有するポリマーよりも、排水及び保持の点でより良好な性能を有することを観察している。
【0355】
(実施例9)
ポリマー溶液の不溶解度測定。
従来のバルク重合によって調製された70モル%のアクリルアミド及び30モル%の四級化DMAEAから構成されるポリマーで、UL粘度(ブルックフィールド粘度)、不溶解率及び不溶解点を測定する。
【0356】
UL粘度は、ULアダプターを取り付けたブルックフィールド粘度計を使用して測定し、ULアダプターのユニットは、23~25℃で60rpmで回転する(1M塩化ナトリウムの生理食塩水溶液中0.1wt%のポリマー)。
【0357】
不溶解率は、ポリマー溶液1gを20℃の水200mLに移し、2時間撹拌した後、溶解した溶液を、多孔度が200μmである直径4cmのフィルターで濾過することによって測定する。濾過溶液を完全に排水した後、濾紙を秤量する。濾過できない溶液の場合、スクリーンフィルターを105℃で4時間置く。残留質量を使用して不溶解量を決定し、不溶解率はポリマーの初期質量に関係する。アクリル酸ビニル不純物は、2-ジメチルアミノエチルアクリレートモノマー間に共有結合を形成し、フィルターを通過しない集合体を生じる。
【0358】
不溶解点は、フィルター上の集合体の数及び大きさに対応する。以下の尺度を使用する:1~3mmは点(pt)であり、3mmを超える場合は大ドット(bp)である(目視カウント)。
【0359】
以前に調製したポリマーを試験し、結果をTable 8(表8)に要約する。
【0360】
【0361】
生物由来モノマー(炭素14を含む)を用いて得られたポリマーは、化石起源のモノマーを用いたポリマーよりも溶解性が良好である。
【0362】
(実施例10)
摩擦低減の測定
ポリマーP1~P4及びCEx8~CEx9を、水、ブライン1リットル当たり85gの塩化ナトリウム(NaCl)及び33.1gの塩化カルシウム(CaCl2、2H2O)から構成されるブラインに10,000ppmの濃度で撹拌しながら溶解する。こうして得られたポリマー生理食塩水を、フローループ試験のために循環されるブラインに0.5pptg(十億分率/ガロン)の濃度で注入する。
【0363】
実際に、ポリマーP1~P4及びCEx8~CEx9のそれぞれの摩擦低減を評価するために、フローループのループのリザーバ(校正されたチューブ長(ループ):6m、チューブの内径:4mm)に20Lのブライン(上述)を充填する。その後、ブラインを毎分24ガロンの速度でフローループに循環させる。ポリマーを、同じ再循環ブライン中0.5pptgの濃度で添加する。こうして、フローループの内部で測定される圧力変動の測定により、摩擦低減のパーセンテージを決定する。
【0364】
図2及び
図3のグラフは、ポリマーのそれぞれを含むブラインの摩擦低減パーセンテージを時間の関数として表す。
【0365】
ブラインがポリマーP1~P4を含む場合、摩擦低減が改善される(ポリマーCEx8~CEx9と比較して)。
【0366】
(実施例11)
アクリル酸ポリマーの生分解性の評価
2000mLのビーカーに脱イオン水、モノマー(Table 9(表9)参照)、50wt%の水酸化ナトリウム溶液(水中)を添加する。
【0367】
こうして得られた溶液を5~10℃に冷却し、断熱重合反応器に移す。窒素バブリングを30分間行い、微量の溶存酸素をすべて除去する。
【0368】
その後、反応器に以下を添加する:
・2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.45g、
・2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩2.5g/Lの水溶液1.5mL、
・次亜リン酸ナトリウムの1g/L水溶液1.5mL、
・tert-ブチルヒドロペルオキシドの1g/L水溶液1.5mL、
・硫酸アンモニウムと鉄(II)六水和物(モール塩)1g/Lの水溶液1.5mL。
【0369】
数分後、窒素のバブリングを止める。その後、重合反応を、温度のピークに到達するように4時間進行させる。この時間の終了後、得られたポリマーゲルを細断して乾燥させ、再び粉砕してふるいにかけ、粉末形態のポリマーを得る。
【0370】
こうして得られたポリマーの生分解性(28日後)を、OECD 302B規格に従って評価する。
【0371】
【0372】
生物由来モノマー(14Cを含む)を用いて得られるP5~P8ポリマーは、化石起源の比較例よりも容易に生分解可能である。
【0373】
(実施例12)
濾過係数の測定
ポリマーP5~P8及びCEx10~CEx11に対して濾過試験を行う。ポリマーを、水、30,000ppmのNaCl、及び3,000ppmのCaCl2.2H2Oを含むブライン中1000ppmの濃度で溶液に投入する。濾過指数(FR)は、低透過性油堆積物を代表する1.2μmの孔径を有するフィルターで測定する。結果をTable 10(表10)に示す。
【0374】
【0375】
濾過指数(FR)は、P5~P8ポリマーではより低い(CEx10~CEx11ポリマーと比較して)。
【0376】
(実施例13)
化学分解に対する耐性試験
ポリマーP5~P8及びCEx10~CEx11の化学分解に対する耐性試験を、好気的条件下で、水、37,000ppmのNaCl、5,000ppmのNa2SO4及び200ppmのNaHCO3から構成されるブライン中の異なる濃度の鉄(II)(2、5、10及び20ppm)の存在下で行った。ポリマーは、鉄(II)を含むブライン中1000ppmの濃度で溶解させる。分解試験の結果(表11)を24時間後に得る。各粘度損失パーセンテージは、ポリマー溶解後のブライン中のポリマー溶液の粘度(to)とその24時間後の粘度(t24h)を比較することによって決定する。粘度は、ブルックフィールド粘度計(ULモジュール、25℃、60rpm-1)で測定する。
【0377】
【0378】
ポリマーP5~P8は、ポリマーCEx10~CEx11よりも化学分解に耐性である。
【国際調査報告】