(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】可溶性コーヒー粉末
(51)【国際特許分類】
A23F 5/36 20060101AFI20240628BHJP
A23L 3/44 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A23F5/36
A23L3/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574733
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2022066192
(87)【国際公開番号】W WO2022268577
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー, ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】フー, シャオピン
(72)【発明者】
【氏名】カルティエ, ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】デュパス, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】リムバッハ, ハンス ジョージ ワーナー
【テーマコード(参考)】
4B022
4B027
【Fターム(参考)】
4B022LA08
4B022LB06
4B022LR06
4B027FB22
4B027FC10
4B027FE02
4B027FK01
4B027FQ13
4B027FQ20
4B027FR03
4B027FR04
4B027FR06
(57)【要約】
本発明は、クレマを有するコーヒー飲料を提供するコーヒー粉末に関する。本発明の更なる態様は、飲料を調製するためのコーヒー粉末の使用、飲料粉末混合物、及び凍結乾燥コーヒー粉末の製造方法である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレマを有するコーヒー飲料を提供するコーヒー粉末であって、前記コーヒー粉末が、開放気孔と閉鎖気孔とを有する粒子を含み、前記粒子が、4マイクロメートルを超える開放気孔体積平均径と、1mL/gを超える総開放気孔体積と、30%以上の発泡性気孔率とを有する、コーヒー粉末。
【請求項2】
前記コーヒー粉末が凍結乾燥コーヒー粉末である、請求項1に記載のコーヒー粉末。
【請求項3】
前記粒子が、0.7未満の球形度と25μmを超える個別の相当径とを有する気孔を含み、0.7未満の球形度と25μmを超える個別の相当径とを有する前記気孔が、X線断層撮影によって測定したときに50~1000μmの体積平均径D
4,3を有する、請求項2に記載のコーヒー粉末。
【請求項4】
前記粒子が8%以上の閉鎖気孔率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーヒー粉末。
【請求項5】
前記粒子が、2マイクロメートル未満の開口部を有する開放気孔を有し、2マイクロメートル未満の開口部を有する前記開放気孔の体積が、開放気孔の総体積の17%超である、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーヒー粉末。
【請求項6】
前記粒子が、開放気孔と閉鎖気孔とを含み、前記開放気孔と前記閉鎖気孔とを合わせたものが、10~100マイクロメートルの体積メジアン径Dv50を持つ全体気孔径分布を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーヒー粉末。
【請求項7】
前記粒子が、水銀圧入法によって40psiaの圧力下で前記粒子の60%以上の圧入が達成されるような構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーヒー粉末。
【請求項8】
前記粒子が、4~15マイクロメートルの開放気孔体積平均径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーヒー粉末。
【請求項9】
クレマを有するコーヒー飲料を調製するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーヒー粉末の使用。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のコーヒー粉末を含む、飲料粉末混合物。
【請求項11】
凍結乾燥コーヒー粉末の製造方法であって、
50重量%~70重量%の固形分を有するコーヒー抽出物を用意する工程と、
前記コーヒー抽出物に、固形分1キログラム当たり0.5~3ノルマルリットルの量でガスを添加して、大気圧より高い圧力でガス含有コーヒー抽出物を提供する工程と、
前記ガス含有コーヒー抽出物を-10~10℃の温度に冷却する工程と、
前記ガス含有コーヒー抽出物を減圧して、発泡コーヒー抽出物を形成する工程と、
昇華可能な材料の結晶を-10~10℃の温度で前記発泡コーヒー抽出物に添加して、前記発泡コーヒー抽出物と前記昇華可能な材料の結晶とを含む混合物を形成する工程と、
前記発泡コーヒー抽出物と前記昇華可能な材料の結晶とを含む前記混合物を-30℃未満に冷却して、固形コーヒー抽出物を形成する工程と、
前記固形コーヒー抽出物を断片化する工程と、
前記固形コーヒー抽出物を、前記昇華可能な材料の結晶が昇華する条件下に置く工程と、を含む、方法。
【請求項12】
前記コーヒー抽出物に対する前記昇華可能な結晶の比が5~40重量%の範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記昇華可能な材料の結晶が氷であり、前記固形コーヒー抽出物が凍結コーヒー抽出物であり、前記固形コーヒー抽出物が真空下で乾燥される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記氷が、45~2000μmの体積平均径を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記氷が、凍結したアロマ抽出物の形態で添加される、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、クレマを有するコーヒー飲料を提供するためのコーヒー粉末に関する。本発明の更なる態様は、飲料を調製するためのコーヒー粉末の使用、飲料粉末混合物、及び凍結乾燥コーヒー粉末の製造方法である。
【0002】
[背景技術]
可溶性コーヒー又は「インスタント」コーヒーは、水で再構成するとコーヒー飲料を生成し、したがって、焙煎して粉砕したコーヒーから飲料を調製する従来の複雑で時間のかかるプロセスを回避する粉末を説明するために使用される語句である。典型的には、可溶性コーヒーは、まず、焙煎し、焙煎豆を粉砕し、抽出してコーヒー抽出物を生成し、次いで、抽出液から水を除去して粉末製品を形成することによって製造される。水の除去は、一般に、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって行われる。
【0003】
しかしながら、焙煎して粉砕したコーヒーから調製されたコーヒー飲料とは異なり、可溶性コーヒーから調製されたコーヒー飲料は、通常は、お湯で再構成されたときに液面にきめ細かなフォームを呈さない。焙煎して粉砕したコーヒーから調製された飲料の液面で形成されるフォームは、典型的には、加圧された水及び/又は蒸気で淹れる機械によるものであり、少なくとも部分的には、その機械によって生じる。
【0004】
このフォームは、喫飲時の製品の口当たりに良い影響を与えることが知られており、したがって多くの消費者によって非常に望まれている。更に、フォームは、飲料内の揮発性アロマをより多く保持するように作用することから、当該揮発性アロマは周囲環境へと拡散されずに消費者によって認識され得る。フォームはしばしばクレマと呼ばれる。
【0005】
可溶性コーヒー粉末中のガスを捕捉して再構成時にクレマを形成するためのいくつかの技術が知られているが、それらの手法は、典型的には、閉鎖気孔の形成に役立つ噴霧乾燥を使用する。欧州特許第0839457号は、ガスの注入によってコーヒー抽出物を発泡させ、発泡した抽出物をホモジナイズしてガス気泡サイズを低減し、ホモジナイズ後の抽出物を噴霧乾燥することを記載している。
【0006】
このようにガス処理された噴霧乾燥粉末の閉鎖気孔とは対照的に、従来の凍結乾燥粉末は主に開放気孔を有する。開放気孔は、凍結抽出物の乾燥中に生じる。この気孔は、元々は氷結晶が占めていた領域であり、開放チャネルは、昇華した水の出口経路である。
【0007】
一部の消費者からは、噴霧乾燥コーヒー粉末は凍結乾燥粉末と比較してアロマのプロファイルが劣っているとみなされている。これは、噴霧乾燥プロセスは、凍結乾燥と比較してコーヒーの揮発性物質の減少が大きいことによる。改良されたアロマ捕捉技術の登場により、噴霧乾燥コーヒーの品質は近年大幅に向上しているが、一部の消費者には、凍結乾燥コーヒーの品質の方が優れているという認識が残っている。
【0008】
コーヒー抽出物を凍結乾燥する方法は、例えば英国特許第1102587号に記載されているように、通常、抽出物をガス処理してフォームを形成した後に凍結する工程を含む。この工程は、乾燥速度を増加させるため、及び得られる粉末の密度を制御するために行われる。かかるガス処理プロセスでは、多量のクレマを提供する可溶性コーヒーが得られな。
【0009】
国際公開第2017/186876号は、再構成時にいくらかのクレマを生じ、15%未満の閉鎖気孔率を有する、凍結乾燥コーヒー粉末を記載している。この生成方法は、コーヒー抽出物をゆっくりと凍結させて大きな氷結晶を成長させる工程を伴い、この氷結晶は、抽出物を乾燥させたときに開放気孔をもたらす。しかしながら、凍結時間が長いと、生成効率が低下する。
【0010】
しかしながら、フォームを生じる多くの可溶性コーヒー粉末は、最初に生じたフォームが喫飲時に保たれていないという点で、又はその構造が消費者によって最終的に所望されているきめ細やかで滑らかな(ビロードのような)フォームではなく粗い泡であるという点で、まだ不十分なものである。あるいは又は更には、粉末の再構成時に生じたフォームが単に不十分である場合がある、かつ/又はフォームが飲料表面全体を覆わない場合がある。
【0011】
したがって、再構成時にクレマを生じる可溶性コーヒー粉末を提供するためのより良好な解決策を見出すことが、当該技術分野において依然として必要とされている。
【0012】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「含む/備える(comprises)」、「含んでいる/備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを意図している。
【0013】
[発明の概要]
本発明の目的は、現在の技術水準を改良し、改良された解決策を提供して上記の不都合の少なくともいくつかを克服することである。本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開させるものである。
【0014】
したがって、本発明は、第1の態様において、クレマを有するコーヒー飲料を提供するコーヒー粉末であって、コーヒー粉末が、開放気孔と閉鎖気孔とを有する粒子を含み、粒子が、4マイクロメートルを超える開放気孔体積平均径と、1mL/gを超える総開放気孔体積と、30%以上の発泡性気孔率とを有する、コーヒー粉末を提供する。
【0015】
第2の態様では、本発明は、クレマを有するコーヒー飲料を調製するための、本発明のコーヒー粉末の使用に関する。
【0016】
本発明の更なる態様は、凍結乾燥コーヒー粉末の製造方法であって、
50重量%~70重量%の固形分を有するコーヒー抽出物を用意する工程と、
コーヒー抽出物に、固形分1キログラム当たり0.5~3ノルマルリットルの量でガスを添加して、大気圧より高い圧力でガス含有コーヒー抽出物を提供する工程と、
ガス含有コーヒー抽出物を-10~10℃の温度に冷却する工程と、
ガス含有コーヒー抽出物を減圧して、発泡コーヒー抽出物を形成する工程と、
昇華可能な材料の結晶を-10~10℃の温度で発泡コーヒー抽出物に添加して、発泡コーヒー抽出物と昇華可能な材料の結晶とを含む混合物を形成する工程と、
発泡コーヒー抽出物と昇華可能な材料の結晶とを含む混合物を-30℃未満に冷却して、固形コーヒー抽出物を形成する工程と、
固形コーヒー抽出物を断片化する工程と、
固形コーヒー抽出物を、昇華可能な材料の結晶が昇華する条件下に置く工程と、を含む、方法である。
【0017】
閉鎖気孔率が高レベルであると、噴霧乾燥コーヒー粉末中にフォームが生成される。しかしながら、同アプローチの凍結乾燥コーヒー粉末への適用は成功していない。高レベルの閉鎖気孔を有する凍結乾燥コーヒー粉末は、単に飲料の上部に浮遊するだけであり、これは消費者にとって魅力的ではない。この挙動は、凍結乾燥粉末の溶解がより遅いことに起因する。
【0018】
本発明者らは、高固形分含有量のコーヒー抽出物をガス処理することによって、フォームを生成する気孔、例えば閉鎖気孔の形成を最大化できることを見出した。しかしながら、高固形分含有量の抽出物は、より少ない水を含有し、したがって、凍結乾燥コーヒーの製造中の凍結時に生成される氷は少なくなる。形成される氷が少ないと、生じる開放気孔が少なくなるので、凍結乾燥粉末は速やかに溶解せずに浮遊してしまう傾向がある。浮遊粒子は良好なクレマを生成せず、また見栄えが良くない。本発明者らは、驚くべきことに、予め形成しておいた氷結晶をガス処理後の高固形分抽出物に添加することによって、向上したレベルの閉鎖気孔を有し、良好なクレマを生成し、また速やかに溶解する凍結乾燥コーヒー粉末を形成することができることを見出した。得られる粉末の微細構造は、高レベルの発泡性気孔率と、溶解を助けるのに十分なより大きな開放気孔との組み合わせを示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】40psiaの圧力での水銀圧入によって測定したときの、mL/g単位の開放気孔体積(y軸)に対する、90%溶解までの秒単位での時間t90(x軸)のプロットである。
【
図2】水銀圧入によって測定したときの、マイクロメートル単位のメジアン開放気孔径(y軸)に対する、90%溶解までの秒単位での時間t90(x軸)のプロットである。
【
図3】試料のクレマ体積を測定するために使用された装置の図である。(3.1)はフォーム体積を読み取るためのプラスチックスケールであり、(3.2)は水リザーバであり、(3.3)は再構成容器の蓋であり、(3.4)は接続弁であり、(3.5)は再構成容器であり、(3.6)は放出弁である。
【
図4】閉鎖気孔(a)と、氷昇華による空隙(b)と、氷結晶添加による空隙(c)とを含有するコーヒー顆粒の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図5】閉鎖気孔(a)と、氷昇華による空隙(b)と、氷結晶添加による空隙(c)とを含有するコーヒー顆粒の走査型電子顕微鏡画像である。
【0020】
[発明を実施するための形態]
したがって、本発明は、部分的に、クレマを有するコーヒー飲料を提供するためのコーヒー粉末であって、コーヒー粉末が、開放気孔と閉鎖気孔とを有する粒子(例えば、可溶性粒子)を含み(例えば、それからなり)、粒子が、(例えば、水銀圧入法によって測定したときに)4マイクロメートル超、例えば5マイクロメートルを超える、例えば6マイクロメートルを超える、例えば7マイクロメートルを超える、更に例えば8マイクロメートルを超える開放気孔体積平均径と、(例えば、水銀圧入法によって測定したときに)1mL/gを超える、例えば1.1mL/gを超える、例えば1.2mL/gを超える、例えば1.3mL/gを超える、更に例えば1.4mL/gを超える総開放気孔体積と、(例えば、水銀圧入法によって測定したときに)30%以上の発泡性気孔率とを有する、コーヒー粉末に関する。
【0021】
コーヒー粉末は、水で再構成するとコーヒー飲料を生成する粉末である。コーヒー粉末の一例は、焙煎して粉砕したコーヒーの水抽出物を、粉末化して乾燥させたものである。コーヒー粉末はインスタントの可溶性コーヒーであってもよい。通常、コーヒー粉末はコーヒー原料の粒子からなる。多くの食品関連の規制により、可溶性コーヒーにおいては、コーヒー原料以外の成分が禁止されている。一実施形態では、コーヒー粉末は、不溶性の、焙煎して粉砕したコーヒーを含まない場合がある。
【0022】
本発明の文脈において、用語「開放気孔」は、粒子中に存在する、粒子の表面への接続を有する空隙を定義するために使用される。用語「閉鎖気孔」は、完全に閉鎖された空隙を定義するために使用される。したがって、水などの液体は、粒子が溶解する前に閉鎖気孔に侵入することができない。
【0023】
「体積平均径」は、体積基準での径の平均値であり、D[4,3]と呼ばれることもある。開放気孔体積平均径は、開放気孔の体積平均径である。開放気孔平均径は、水銀圧入法によって測定することができる。本発明者らは、開放気孔体積平均径と共に粒子の溶解速度が増加することを見出した(実施例3参照)。一実施形態では、コーヒー粉末は、4~15マイクロメートル、例えば5~14マイクロメートル、更に例えば6~9マイクロメートルの開放気孔体積平均径を有する粒子を含む。
【0024】
いくつかのコーヒー粉末では、個々の粒子が他の粒子と凝集して、凝集体又は顆粒を形成する。例えば、焼結プロセス(sintering process)を用いて粒子を凝集させてもよい。このような凝集体では、開放気孔体積の二峰性分布、すなわち、元の粒子におけるより小さい開放気孔と、それらの凝集構造における個々の元の粒子間のより大きい開放空隙空間とが存在し得る。
【0025】
一実施形態では、本発明による粒子は二峰性の開放気孔径分布を有し、より小さい直径を含む山の開放気孔体積平均径(例えば、水銀圧入法によって測定される)は、4マイクロメートル超、例えば5マイクロメートル超、例えば6マイクロメートル超、例えば7マイクロメートル超、更に例えば8マイクロメートル超である。
【0026】
一実施形態では、本発明による粒子は、単峰性の開放気孔径分布を有する。
【0027】
総開放気孔体積は、径範囲0.02~500マイクロメートル(9000psia~0.3psiaの水銀圧入圧に相当)における製品1グラム当たりの開放気孔の体積である。一実施形態では、コーヒー粉末は、1mL/g~1.8mL/gの総開放気孔体積を有するコーヒー粒子を含む。
【0028】
前述したように、閉鎖気孔はクレマ生成に寄与する。理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、2マイクロメートル未満の開口部径を有する開放気孔における毛細管圧は周囲圧力より大きく、これはフォーム形成を可能にし得るため、これらの気孔もまたフォームに寄与すると考えている。発泡性気孔率は、水銀圧入法(mercury porosimetry)とヘリウム置換法(helium pycnometry)との組み合わせによって測定することができる。発泡性気孔率は、例えば実施例3に記載されているように、水銀圧入法によって測定することができる。用語「発泡性気孔率」は、閉鎖気孔と、2マイクロメートル未満の開口部径を有する開放気孔との合計に関する。
【0029】
【数1】
式中、V
m=コーヒーマトリックス体積、
V
c=閉鎖気孔の体積、
V
0<2μm=2μm未満の開口部を有する開放気孔の体積、
V
0=開放気孔の総体積。
【0030】
閉鎖気孔の体積Vcは、ガス置換ピクノメーターを使用することによって測定することができ、例えば、コーヒー粉末の骨格(見かけの)密度は、秤量した量の粉末の体積を、ガス置換ピクノメーターを使用して測定し、重量を体積で割ることによって決定することができる。コーヒー粉末の質量の、閉鎖(又は閉塞)気孔を含む体積の合計に対する比。骨格密度は、大気に対して密閉されている、粉末中に存在する任意の空隙の体積を含み、大気に対して開放されている任意の空隙の体積を除外する密度の尺度である。閉鎖気孔体積Vcは、骨格密度の逆数からコーヒーマトリックスの密度の逆数を差し引くことによって決定される。コーヒーマトリックスの密度は、コーヒー粉末を形成する固体材料の「真密度」と呼ばれることもある。
【0031】
コーヒーマトリックスの密度は、コーヒー粉末粒子を粉砕して全ての内部空隙を開くことによって測定することができる。例えば、コーヒー粉末粒子は、クライオミルで粉砕してもよい。クライオミルは、低温が粒子の破砕を助け、粉砕中の粉末の熱分解を防止するという利点を有する。粉砕した粉末のピクノメトリーによって得られた密度がコーヒーマトリックスの密度である。所与の重量のコーヒー粉末に対するコーヒーマトリックスの体積Vmは、コーヒーマトリックスの密度dmの逆数である。コーヒーマトリックスの密度を得るための別の方法は、異なる濃度の液体コーヒーの密度を測定し、関連する低含水量でのコーヒーマトリックスの密度値に外挿することである。
【0032】
本発明による粒子の発泡性気孔率(例えば、水銀圧入法によって測定される)は、少なくとも30%、例えば少なくとも32%、例えば少なくとも35%、更に例えば少なくとも40%であり得る。発泡性気孔率(例えば、水銀圧入法によって測定される)は、30~60%、例えば32~50%、更に例えば35~45%であってもよい。
【0033】
閉鎖気孔の体積V
c、及びそれらの径分布は、X線断層撮影によって測定することができる。X線断層撮影画像は、画像分析ソフトウェアによって分析される。例えば、Geodictソフトウェア(Math2Market)を高解像度画像に適用して、閉鎖気孔の気孔径分布を分析することができる。気孔は、Auto-thresholding(OTSU法)を適用することによって壁部と区別することができる。個別気孔分析は、「individual pores」関数を使用して、0%の閾値を選択して、外表面と接続されていない気孔のみを考慮して実行してもよい。この場合、閉鎖気孔の体積平均
【数2】
及びメジアン
【数3】
相当径並びにメジアン球形度は、個別気孔径分析から算出することができる。
【0034】
一実施形態では、本発明による粒子の閉鎖気孔の体積平均径
【数4】
は(例えば、X線断層撮影によって測定したときに)、1~25μm、例えば2~20μm、例えば4~10μmである。
【0035】
本発明のコーヒー粉末に含まれる粒子の独特な構造は、粉末の溶解時にクレマを生成する可能性を有する気孔と、生じるクレマの体積及び品質を最大限に高めるように溶解を速める気孔との間の有利なバランスを提供する。溶解が速いと、同じ発泡性気孔率に対する表面フォーム被覆がより良好になる。溶解が遅いと、粒子は表面に浮遊し、それらは、消費者には見栄えが良くない黒い斑点として見え、かつ最終的に溶解したときに満足のいくフォームを生成しない。
【0036】
本発明のコーヒー粉末の一実施形態では、コーヒー粉末は、85℃の脱イオン水200mLに対し5gのコーヒー粉末を使用した場合に、少なくとも2.5mL、例えば少なくとも3mL、例えば少なくとも4mL、例えば少なくとも5mLのクレマを有する飲料を提供する。クレマは1分後に測定してもよい。生じたクレマの量は、最初は弁で遮断されている、水リザーバに接続された、再構成容器からなる単純なデバイス(
図3)を用いて測定することができる。再構成後、再構成容器を、目盛り付きのキャピラリ(scaled capillary)で終わる特別な蓋で閉じる。次いで、再構成容器と水リザーバとの間の弁を開くと、再構成された飲料が水(標準水道水)により押し上げられてキャピラリ内に達し、これによりクレマ体積の読み取りが容易になる。クレマは、その体積が測定されるとき、25℃の温度であり得る。本発明の一実施形態は、水での再構成時に少なくとも0.5mL/g、例えば、水での再構成時に少なくとも0.6mL/g、0.8mL/g又は1.0mL/gのクレマを有するコーヒー飲料を提供するコーヒー粉末である。
【0037】
一実施形態では、コーヒー粉末は、凍結乾燥コーヒー粉末である。凍結乾燥コーヒー粉末は、コーヒー、通常は焙煎して粉砕したコーヒーの抽出物(例えば、水性抽出物)を凍結乾燥することによって得られたインスタントコーヒーである。コーヒーは、アラビカコーヒー(Coffea arabica)、ロブスタコーヒー(Coffea canephora)又はアラビカコーヒーとロブスタコーヒーとのブレンドであってもよい。
【0038】
抽出物は、コーヒーのある程度の加水分解を促進する抽出プロセスによって提供することができる。焙煎して粉砕したコーヒーでは、抽出中に化学的変換、例えば加水分解が起こることがあり、例えば、高分子量多糖類が切断されて可溶化される。
【0039】
本発明のコーヒー粉末は、魅力的な外観と良好な溶解性とを有し、凝集を必要としない。コーヒー粉末は凝集されていなくてもよい。例えば、コーヒー粉末は焼結プロセスに供されていなくてもよい。一実施形態では、コーヒー粉末もその成分も焼結プロセスに供されていない。一実施形態では、コーヒー粉末は、非焼結粉末である。
【0040】
一実施形態では、コーヒー粉末は、2~15秒の溶解時間t90(90%溶解のための時間)を有する。
【0041】
予め形成された氷結晶をコーヒー抽出物に添加した後に凍結乾燥することにより、特徴的な開放気孔構造を有する凍結乾燥コーヒー粉末が作製される。添加した氷結晶によって残された空隙は、
図4及び
図5(「c」として示されている)において明確に観察することができる。この開放気孔構造は、速やかな溶解を提供する。添加した氷によって残された空隙のサイズ及び形状は、X線断層撮影によって測定することができる。X線断層撮影画像は、画像分析ソフトウェアによって分析される。Geodictソフトウェア(Math2Market)を低解像度画像に使用して、粒子の3D構造を分析することができる。異なる気孔集団を球形度値の関数としてセグメント化する。まず、Non-Local Meansフィルタを画像に適用する。気孔は、Auto-thresholding(OTSU法)を適用することによって壁部と区別する。次いで、関数「flood fill large pores」(200ボクセル)を使用して、粒子の輪郭を描く。個別気孔分析は、「individual pores」関数を使用して、例えば14%の閾値を選択して実行する。次いで、同定された気孔を、2つの基準:0.7未満の球形度と25μmを超える個別の相当径とに従ってフィルタリングする。得られた気孔のリストは、見た目上、添加された氷に対応する。一実施形態では、粒子は、添加した氷によって形成された、(例えば、X線断層撮影によって測定したときに)50~1000μm、例えば100~1000μm、例えば200~500μm、例えば90~250、例えば110~210μmの体積平均径
【数5】
を有する開放気孔を含む。一実施形態では、粒子は、0.7未満の球形度と25μmを超える個別の相当径とを有する気孔(例えば、開放気孔)を含み、0.7未満の球形度と25μmを超える個別の相当径とを有する当該気孔は、X線断層撮影によって測定して、50~1000μm、例えば100~1000μm、例えば200~500μm、例えば90~250、例えば110~210μmの体積平均径D
4,3を有する。
【0042】
閉鎖気孔は、適切な溶解特性を有する粒子におけるクレマ生成に寄与する。一実施形態では、粒子は、(例えば、ヘリウム置換法によって測定したときに)8%以上、例えば10%以上、例えば12%以上、例えば15%以上、例えば15.5%以上、例えば17%以上、更に例えば20%以上の閉鎖気孔率を有する。閉鎖気孔率は、例えば実施例2に記載されているように、ヘリウムピクノメーターを使用することによって、例えば骨格密度d
sとコーヒーマトリックス密度d
mとを測定することによって測定することができる。骨格密度d
sは、例えば、ヘリウムガスと、134kPag(kPaゲージ)の測定圧力と、0.6895kPag/分の平衡基準設定とを用いるガス置換ピクノメーターを使用することによって測定することができる。コーヒーマトリックス密度d
mは、最初にコーヒー粉末粒子を粉砕して全ての内部空隙を開くことを除いては同じ方法で測定することができる。コーヒー粉末粒子は、クライオミルを使用して、例えば8分間粉砕して、全ての内部空隙を開くことができる。
【数6】
【0043】
上述したように、2マイクロメートル未満の開口部径を有する開放気孔は、溶解時のフォーム生成に寄与し得る。一実施形態では、粒子が有する、2マイクロメートル未満の開口部を有する開放気孔体積(V:0<2μm)は0.2mL/gを超える。例えば、本発明による粒子は、0.25mL/gを超える、更に例えば0.3mL/gを超える、2マイクロメートル未満の開口部を有する開放気孔体積を有し得る。本発明による粒子は、0.2~0.45mL/gの、2マイクロメートル未満の開口部を有する開放気孔体積を有してもよい。2マイクロメートル未満の開口部を有する開放気孔体積(V0<2μm)は、例えば上記のように水銀圧入法によって測定することができる。一実施形態では、粒子は、2マイクロメートル未満の開口部を有する開放気孔を有し、2マイクロメートル未満の開口部を有する開放気孔の体積は、(例えば、水銀圧入法によって測定したときに)開放気孔の総体積の17%超、例えば19%超である。
【0044】
一実施形態では、粒子は開放気孔と閉鎖気孔とを含み、開放気孔と閉鎖気孔とを合わせたものは、10~100マイクロメートル、例えば30~50マイクロメートル、例えば10~45マイクロメートル、例えば11~35マイクロメートル、例えば12~30マイクロメートル、例えば13~25マイクロメートル、更に例えば14~20マイクロメートルの体積メジアン径Dv50を持つ全体気孔径分布を有する。気孔径分布は、空隙体積分布に基づいて、X線断層撮影によって測定することができる。例えば、粒子の低解像度断層撮影は、12keVのX線ビームエネルギーと、5mmの試料-検出間器距離と、1.625μmの有効等方性ボクセルサイズを備える検出器とを使用して行われてもよい。Geodictソフトウェア(Math2Market)を低解像度画像に適用して、開放気孔と閉鎖気孔との微細構造を分析することができる。まず、Non-Local Meansフィルタを画像に適用する。気孔は、Auto-thresholding(OTSU法)を適用することによって壁部と区別し、マスクを適用して、完全に画像化された粒子に焦点を合わせる。粒度測定法(PoroDictモジュール)を実行して、全ての気孔の全体的な径の統計を抽出する。
【0045】
一実施形態では、粒子は、0.5~9、例えば1~8、例えば1.1~7、例えば1.2~6、例えば1.3~5、例えば1.4~4、例えば1.3~3、例えば1.4~2、更に例えば1.5~1.9の分布スパン係数を特徴とする気孔径分布をいずれも有する開放気孔と閉鎖気孔とを含む。分布スパン係数は、X線断層撮影によって測定することができる。分布のスパンは、以下の式によって算出される:
【数7】
式中、Dv90、Dv50及びDv10は、それぞれ90体積%、50体積%及び10体積%の気孔がそれ以下のサイズを有する相当気孔径(equivalent pore diameter)を表す。したがって、スパンが低いほど、気孔の分布は狭く、より均質となる。
【0046】
本発明者らは、およそ4.4マイクロメートルより大きい開口部を有する開放気孔の割合が高いと、速やかな溶解が得られることを見出した。水銀圧入法を使用する場合、4.4マイクロメートルの気孔開口部を貫通するためには40psiaの圧力が必要とされる。一実施形態では、粒子は、水銀圧入法によって、40psiaの圧力下で粒子の60%以上の圧入が達成されるような構造を有する。
【0047】
しかしながら、本発明者らは、最良のクレマ生成のためには、より小さい気孔がある割合で存在すべきであることを見出した。一実施形態では、粒子は、水銀圧入法によって、40psiaの圧力下で粒子の60~85%の圧入が達成されるような構造を有する。例えば、粒子は、水銀圧入法によって、40psiaの圧力下で粒子の50~80%、例えば60~75%、更に例えば65~70%の圧入が達成され得るような構造を有し得る。氷結晶を添加した後にコーヒー抽出物を凍結乾燥することにより、このような望ましい構造を形成することができる。
【0048】
本発明の一態様は、本発明のコーヒー粉末を含有するパック、例えばシングルサーブパックを提供する。シングルサーブパックは、例えば、カプセル、ポッド又はスティックパックであり得る。
【0049】
本発明の一態様は、クレマを有するコーヒー飲料を調製するための、本発明のコーヒー粉末の使用を提供する。例えば、85℃の脱イオン水200mLに対し5gのコーヒー粉末を使用した場合に、少なくとも2.5mL、例えば少なくとも3mL、例えば少なくとも4mL、例えば少なくとも5mLのクレマを有するコーヒー飲料を調製するための、本発明のコーヒー粉末の使用。クレマは1分後に測定してもよい。クレマのガス体積は、25℃の温度で測定してもよい。本発明の一実施形態は、水での再構成時に少なくとも0.5mL/g、例えば、水による再構成時に少なくとも0.6、0.8又は1.0mL/gのクレマを有するコーヒー飲料を提供するための、本発明のコーヒー粉末の使用である。
【0050】
本発明の更なる態様は、本発明のコーヒー粉末を含む飲料粉末混合物を提供する。飲料粉末混合物は、例えば、砂糖、粉乳、「植物性ミルク」粉末(例えば、オーツミルク、アーモンドミルク、豆乳、ココナッツミルク)、クリーマー(非乳製品クリーマーを含む)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む粉末混合物であり得る。
【0051】
本発明の更なる態様は、凍結乾燥コーヒー粉末の製造方法であって、
50重量%~70重量%の固形分を有するコーヒー抽出物を用意する工程と、
コーヒー抽出物に、固形分1キログラム当たり0.5~3ノルマルリットルの量でガスを添加して、大気圧より高い圧力(例えば、50~400バールゲージ、更に例えば150~350バールゲージ)でガス含有コーヒー抽出物を提供する工程と、
ガス含有コーヒー抽出物を-10~10℃の温度に冷却する工程と、
ガス含有コーヒー抽出物を減圧して、発泡コーヒー抽出物を形成する工程と、
昇華可能な材料の結晶を-10~10℃の温度で発泡コーヒー抽出物に添加して、発泡コーヒー抽出物と昇華可能な材料の結晶とを含む混合物を形成する工程と、
発泡コーヒー抽出物と昇華可能な材料の結晶とを含む混合物を-30℃未満(例えば、-40℃未満)に冷却して、固形コーヒー抽出物を形成する工程と、
固形コーヒー抽出物を断片化する工程と、
固形コーヒー抽出物を、昇華可能な材料の結晶が昇華する条件下に置く工程と、を含む、方法を提供する。
【0052】
本発明によるコーヒー抽出物は、純粋な可溶性コーヒーへと更に加工するのに好適な水性コーヒー抽出物であり得る。焙煎したコーヒー豆を水で抽出することで、コーヒー抽出物を生成することができる。焙煎した豆は、通常、水で抽出される前に粉砕される。焙煎したコーヒー豆を粉砕することは当該技術分野において周知であり、焙煎したコーヒー豆は、任意の好適な方法によって粉砕することができる。抽出は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法によって行うことができる。コーヒー豆を抽出する方法は、可溶性コーヒーの製造の技術分野において、例えば欧州特許第0826308号から周知であり、通常、昇温でのいくつかの抽出工程を伴う。所望の抽出度に達すると、抽出済みの焙煎コーヒー豆は抽出物から分離される。分離は、任意の好適な手段、例えば、濾過、遠心分離、及び/又はデカントによって達成され得る。可溶性コーヒーの製造のための従来のコーヒー抽出では、分離は通常、コーヒー抽出物が通過することができるフィルタープレート又は保持プレートによってコーヒーの出しがらが保持される抽出セル内で抽出を行うことによって達成される。アロマの減少を回避するため、抽出前及び/又は抽出中に、揮発性アロマ化合物を、例えば蒸気ストリッピング及び/又は真空の使用によって、コーヒー豆及び/又は抽出物から回収してもよい。回収した揮発性化合物は、抽出後に、抽出物に添加して戻してもよい。
【0053】
コーヒー抽出物は、焙煎されたアラビカコーヒー豆もしくはロブスタコーヒー豆、又はこれらの組み合わせの抽出物であり得る。コーヒー豆は、コーヒーノキ(Coffea)の種子である。アラビカコーヒー豆は、アラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)由来のコーヒー豆を意味し、ロブスタコーヒー豆は、ロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)由来の豆を意味する。
【0054】
抽出物の固形分含有量は、湿潤ベースでの抽出物の総重量に対するパーセンテージとしての乾燥物の重量である。コーヒー抽出物の固形分含有量を増加させるために、様々な方法が利用できる。例えば、通常はアロマを捕捉しながら、真空下でコーヒー抽出物から水を蒸発させてもよい;膜濃縮によって水を除去してもよい;及び/又は追加の固形コーヒー抽出物を水性コーヒー抽出物に溶解してもよい。一実施形態では、乾燥した純粋な可溶性コーヒーを水性コーヒー抽出物に添加すると、50重量%~70重量%の固形分を有するコーヒー抽出物が得られる。
【0055】
一実施形態では、コーヒー抽出物は、高圧ポンプによって高圧(例えば、50~400バールゲージ、更に例えば80~300バールゲージ、更に例えば120~250バールゲージ)に供される。高圧ポンプの前及び/又は後に、コーヒー抽出物にガスを添加してもよい。ガスは、ガス添加ラインによって添加されてもよく、ここで、ガスはコーヒー抽出物の圧力を上回る(例えばコーヒー抽出物の圧力をわずかに(例えば最大10%)上回る)。ガスは、窒素、空気、アルゴン、亜酸化窒素、及び二酸化炭素からなる群から選択され得る。ガスは、より小さく、より安定した気泡を形成する傾向があるという理由で、窒素が好ましい。ガスは、例えばコーヒー抽出物中での十分な滞留時間を確保することによって、コーヒー抽出物に溶解される。例えば、ガスは、ガス含有コーヒー抽出物が減圧される前に少なくとも60秒の滞留時間を有し得る。本明細書では説明を簡単にするために「ガス」という用語を使用するが、窒素などのガスは、本方法のいくつかの条件下で超臨界流体の形態であることに留意されたい。
【0056】
ガスは、コーヒー抽出物固形分1キログラム当たり0.5~3ノルマルリットルの量、例えばコーヒー抽出物固形分1キログラム当たり1~2.8ノルマルリットルの量でコーヒー抽出物に添加される。1ノルマルリットル中のガスの量は、20℃及び1気圧(101.325kPa)の圧力で1リットルの体積を占める量である。添加されたガスの量は、最終コーヒー粉末におけるガス気泡空隙量に影響を及ぼす。
【0057】
ガス含有コーヒー抽出物は、-10~10℃(例えば-7~8℃、例えば-6~7℃、例えば-5~7℃、更に例えば0~6℃)の温度に冷却される。好ましくは、ガス含有抽出物は、昇華可能な材料の結晶が添加されたときにこれら結晶の過剰な融解を引き起こさない程度に十分に冷たい。ガス含有コーヒー抽出物は、コーヒー抽出物の凝固点より高い温度に冷却されてもよい。ガス含有コーヒー抽出物は、例えば、コーヒー抽出物の凝固点より3℃低い温度からコーヒー抽出物の凝固点より5℃高い温度までの温度に冷却されてもよい。ガス含有コーヒー抽出物を冷却することは、ガス含有コーヒー抽出物を減圧して発泡コーヒー抽出物を形成する前又は後に行われてもよい。冷却は、例えば、掻き取り式熱交換器(scraped-surface heat exchanger)を使用して行うことができる。ガス含有コーヒー抽出物を冷却した後に減圧することは、フォーム中の気泡が合体する機会を減少させるので、フォーム構造の制御に役立つ。減圧は、スパージング又は噴霧ノズルを介して行ってもよい。
【0058】
本発明による昇華可能な材料は、水又は二酸化炭素であり得る。一実施形態では、昇華可能な材料の結晶は、水氷を含んでもよく、例えば水氷からなってもよい。
【0059】
昇華可能な材料の結晶は、-10~10℃(例えば-7~8℃、例えば-6~7℃、例えば-5~7℃、更に例えば0~6℃)の温度で発泡コーヒー抽出物に添加される。昇華可能な材料の結晶は、例えば、コーヒー抽出物の凝固点より3℃低い温度からコーヒー抽出物の凝固点より5℃高い温度までの温度で、発泡コーヒー抽出物に添加されてもよい。
【0060】
昇華可能な材料の結晶は、ミキサー中で発泡抽出物に添加されてもよい。結晶を効果的に発泡抽出物に混合するためには十分な剪断が必要であるが、フォーム構造の破壊(damage)を制限し、混合物の加熱を回避するように注意すべきである。一実施形態では、昇華可能な材料の結晶は、発泡コーヒー抽出物に添加される時、-40℃~-10℃の温度である。結晶の添加は、ガス含有コーヒー抽出物の温度を低減させる可能性がある。例えば、ガス含有コーヒー抽出物は、例えば昇華可能な材料の結晶とガス含有コーヒー抽出物とを中程度の剪断下で混合している間に、昇華可能な材料の結晶を添加することによって冷却され得る。混合中に適用される剪断速度は、少なくとも50秒-1、例えば少なくとも100秒-1、例えば少なくとも200秒-1であってもよい。本発明の方法によって得られるコーヒー粉末の閉鎖気孔率に寄与させるために、高レベルの閉鎖気孔(例えば、20%を超える閉鎖気孔率)を有する乾燥コーヒー抽出物の多孔質噴霧乾燥粒子を発泡コーヒー抽出物に添加してもよい。
【0061】
発泡コーヒー抽出物と昇華可能な材料の結晶とを含む混合物は、固形コーヒー抽出物、例えば冷凍コーヒー抽出物を形成するために、-30℃未満に冷却される。固形コーヒー抽出物は構造的剛性を有する。混合物は、異なる温度に保持された低温室又は他のゾーンの間を移動するトレイに置くことによって冷却されてもよい。混合物は、熱交換器又は冷却ドラムを通過させることによって冷却されてもよい。混合物は、-5℃の温度から-30℃の温度まで、30分未満、例えば20分未満、例えば10分未満、例えば6分未満の時間、冷却され得る。急速冷却は、固体抽出物中のより大きな結晶が、主に添加された結晶に由来することを確保する。添加されるのではなく冷却中に成長する結晶については、急速冷却はより小さな結晶を生成する。結晶の添加及び冷却速度は、凍結乾燥コーヒー粉末の微細構造を最適化するように制御することができる。
【0062】
固形のコーヒー抽出物は、昇華可能な材料の結晶が昇華する条件下に置かれる前及び/又は後に断片化してもよい。
【0063】
昇華可能な材料の結晶が昇華する条件は、真空であり得る。昇華は、固体が直接蒸気に変化する作用であり、例えば、氷は液相を経ることなく直接水蒸気に変化する。
【0064】
一実施形態では、コーヒー抽出物に対する昇華可能な結晶の比は、5~40重量%の範囲、例えば10~30重量%の範囲である。比は、湿潤ベースのコーヒー抽出物重量で算出される。この比は、溶解速度及び発泡性気孔の維持の点で微細構造を最適化するために、添加された結晶と凍結中に成長する結晶との間のバランスを制御するように設定される。
【0065】
一実施形態では、昇華可能な材料の結晶は氷であり、固形コーヒー抽出物は凍結コーヒー抽出物であり、昇華は真空下で行われる。コーヒー抽出物は、最大7時間の間、1mbar未満の真空下でキャビネット内のトレイ上に置かれてもよい。
【0066】
一実施形態では、氷は、45~2000μm、例えば50~1700μm、例えば50~1500μm、更に例えば150~1000μmの体積平均径を有する。氷は、0.5~0.7の平均アスペクト比b/l3を有し得る。体積平均径及び平均アスペクト比は、例えばレーザー回折によって測定することができる。氷は、例えば、氷削機を使用して氷塊から小さな水氷粒子を生成することによって調製することができる。氷は、所望のサイズ及び形状を得るために粉砕及び篩い分けされてもよい。
【0067】
一実施形態では、昇華可能な材料の結晶は氷であってもよく、氷は、凍結アロマ抽出物、例えばコーヒー抽出物の加工中に得られた(例えば回収された)凍結水性アロマ抽出物の形態で添加されてもよい。凍結アロマ抽出物は、いくらかのコーヒー抽出物固形分、例えば5~15重量%のコーヒー固形分を含有し得る。
【0068】
当業者は、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の製品について記載された特徴を本発明の方法と組み合わせてもよく、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。既知の均等物が特定の特徴について存在する場合、このような均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのごとく組み込まれる。
【0069】
本発明の更なる利点及び特徴は、図面及び非限定的な実施例から明らかである。
【実施例】
【0070】
実施例1:コーヒー粉末の調製
コーヒー液抽出物を輸送し、高圧ピストンポンプでおよそ220バールに加圧した。高圧ポンプの直後に窒素を注入した。ガス処理した抽出物は、窒素を溶解するのに十分な滞留時間(例えば、60秒超)を確保するために、規定の長さのパイプを通過した。抽出物を噴霧ノズルに通して圧力を大気圧に解放し、フォームを形成した。
【0071】
発泡抽出物を、掻き取り式熱交換器を用いて、ガスを添加することなくその凝固点より高い温度に冷却した。
【0072】
氷削機を使用して、氷塊から小さな水氷粒子を生成した。次いで、氷を、SL8ヘッドを備えたUrschel CCスライサーで粉砕し、篩にかけた。氷粉末を、必要になるまで-40℃未満の温度の低温室で保存した。
【0073】
X-Jetモジュールを取り付けたCamsizer X2装置(Retsch)を使用して、添加前の氷粉末のサイズ及び形状を評価した。粉末を-20℃に維持し、氷を、測定前の粒子の融解を回避するためのトレイを使用せずに、スプーンを介して空気分散ユニット(300kPa、9mmのギャップ)に直接導入した。少なくとも100万個の粒子をシステムによって記録した。体積平均径D4,3(CamsizerソフトウェアによってMv3と呼ばれる)及び平均アスペクト比b/l3を、Camsizerソフトウェアから抽出した。
【0074】
氷の体積平均径D4,3は590μmであり、平均アスペクト比b/l3は0.619であった。
【0075】
秤量した氷粉末を発泡抽出物に添加し、混合した。良好な混合を確保するのに十分であるが、顕著な氷融解を促進しない、中程度のレベルの剪断を適用した。氷の混合中に、発泡抽出物の温度が低下した。次いで、氷を添加した発泡抽出物を-40℃未満に更に冷却し、凍結層を形成した。この凍結抽出物を粉砕した後、Atlas凍結乾燥器を用いて凍結乾燥した。最終粒径を、レーザー回折を使用して測定した。全ての試料は、2.0~2.5mmの範囲のd50の粒径を有していた。
【0076】
7つの試料についてのプロセスパラメータを以下の表に示す。
【0077】
【0078】
実施例2:Heポロシメトリーによる閉鎖気孔率の測定方法
試料Aのコーヒー粒子の骨格密度dsを、ガス置換ピクノメトリーシステム(AccuPyc 1340,Micromeritics)を用いて測定した。ピクノメーターの測定セルの容積の3分の2を満たし、試料重量を記録した。次のパラメータを使用した:10回のパージ、134kPagのパージ及び測定圧力;3回の平均。測定チャンバに浸透するガスの体積により、装置によるg/cm3単位の骨格密度の計算が可能となる。骨格密度は、粒子内の閉鎖された空隙を含むが、大気に対して開放されている全ての空隙(開放気孔率及び粒子間の間隙)を除外する材料密度の尺度である。窒素はマトリックス材料中に拡散する傾向がヘリウムよりも低く、厳密な平衡基準を達成することを容易にするので、骨格密度は最初にガス置換ピクノメーターと窒素ガスとを用いて測定した。窒素の平衡基準は、0.0345kPa/分(機器ソフトウェアにおいて「平衡速度」と呼ばれる)に設定した。この設定では、試料Aの骨格密度は1.201g/cm3と測定された。次いで、より一般的にピクノメトリーに使用されているヘリウムガスで試料を測定した。平衡基準の設定は、0.6895kPag/分とした。ヘリウムで測定した試料Aの骨格密度は、1.203g/cm3であった。
【0079】
次いで、骨格密度d
sをコーヒーマトリックスの密度d
mで割ることによって、試料の閉鎖気孔率を推定する。
【数8】
【0080】
コーヒーマトリックスの密度は、試料をSPEX Sample Prep 6875フリーザーミルで8分間粉砕し、次いで上記のようにヘリウム置換法を実行することによって測定した。
【0081】
コーヒーマトリックス密度が1.540g/cm3であり、骨格密度が1.203g/cm3である場合、試料Aの閉鎖気孔率は21.9%と算出された。他の試料の閉鎖気孔率を同じ方法で測定し、クレマを生成すると宣伝されている市販の凍結乾燥コーヒー(先行技術i)の閉鎖気孔率と共に以下の表に列挙する。
【0082】
【0083】
実施例3:水銀圧入法による気孔構造の測定法
AutoPore IV 9520を構造評価に使用した(Micromeritics Inc.(Norcrose,GA,USA))。Hg圧入のための操作圧は、0.4psia~9000psia(0.4psia~40psiaの低圧ポート及び20~9000psiaの高圧ポート)とした。この圧力下での気孔径は、500~0.01マイクロメートルの範囲である。総気孔体積のデータと、異なる気孔開口部径(μm)での気孔体積(mL/g)のデータを記録した。約0.1g~0.4gの試料を正確に秤量し、針入度計(容量3.5mL、ネック又はキャピラリーステム直径0.3mm、及びステム容量0.5mL)に充填した。
【0084】
針入度計を低圧ポートに挿入した後、試料を最初に1.1psia/分で排出し、0.5psiaの中速度に、そして900μmHgで高速度に切り替える。60μmHgでの排出を目標とする。目標に達した後、排出を5分間継続し、その後Hgを導入する。
【0085】
設定された時間平衡化で測定を行う。すなわち、設定された時間平衡化(10秒)モードにおける、データが取得される圧力点、及びその圧力での経過時間。およそ140のデータポイントをその圧力範囲で収集する。
【0086】
直径範囲1~500マイクロメートルでの、製品1グラム当たりの開放気孔の体積により、「開放気孔体積」が得られる。
【0087】
ベースライン値は、対応する空の針入度計を、Hg圧入のための圧力の同じ操作条件下、すなわち0.4psia~9000psiaで、いかなる試料も含ませずに作動させることによって得られた。
【0088】
粒状物のかさ体積を、水銀と試料ホルダーとの初期体積から得る。2マイクロメートルを超える開口部径を有する開放気孔の体積を、2マイクロメートルの直径まで水銀を圧入させた後に得る。(2マイクロメートルの気孔を貫通するために、90psiの水銀圧入圧力が必要とされる。)この体積を粒状物のかさ体積から差し引くことにより、閉鎖気孔と、2マイクロメートル未満の開口部径を有する開放気孔と、コーヒーマトリックスの体積とを含む粒状物の新たな体積を得る。粒状物の閉鎖気孔と2マイクロメートルを超える開口部を有する開放気孔との体積を、粒状物の新たな体積からコーヒーマトリックスの体積を差し引くことによって得る。コーヒーマトリックスの体積は、試料の重量とコーヒーマトリックス密度とから得られる(実施例2を参照)。発泡性気孔率は、粒状物の新たな体積に対する、閉鎖気孔と2マイクロメートル未満の開口部径を有する開放気孔との体積の比である。
【0089】
再構成速度(Reconstitution kinetics)を導電率によって評価した。10Hz導電性プローブ(Pt1000/B/2 0~70℃,Metrohm)を、取得モジュール(モジュール856,Metrohm)と組み合わせて使用した。プローブを、80℃に温度調節した二重壁ガラス容器中に水平に置いた。80℃に加熱した400mLの脱塩水に10gのコーヒー粉末を注ぎ入れた後に実験を開始した。マグネチックスターラーを用いて500rpm、オーバーヘッドスターラーを用いて100rpmで溶液を撹拌して、全ての粒子を速やかに浸漬させた。導電率の最初の変化と導電率が最終溶液導電率の90%に等しくなる時間との間の時間に対応する時間t90を記録した。
【0090】
試料の結果を以下の表に列挙する。
【0091】
【0092】
溶解に対する気孔構造の影響を調べるために、同じ粒径を有する一連の多孔質凍結乾燥コーヒー粉末を調製した。90%溶解までの時間(t
90)は、40psiaの圧力下でより高い圧入を有するコーヒーで、より低いことが見出された(
図1)。また、90%溶解までの時間は、より高いメジアン開放気孔径を有するコーヒーで、より低いことが見出された(
図2)。
【0093】
実施例4:X線断層撮影
Paul Scherrer Institut(PSI)のSwiss Light Source(SLS)のTOMCATビームラインでコーヒー粒子の多重解像度X線断層撮影を行った。各試料について、5個のコーヒー粒子を、真鍮試料ホルダーに取り付けられた直径4mmのカプトン管に積み重ねた。ポリマーフォームを粒子間のスペーサーとして配置した。
【0094】
1.625μmの有効等方性ボクセルサイズを備える検出器を使用して、各粒子の低解像度断層撮影を行った。4倍対物レンズを備えた高品質顕微鏡(Optique Peter(Lentilly,France))を使用して、PCO.edge 5.5 sCMOSカメラ(PCO(Kelheim,Germany))を100μm厚のLuAG:Ceシンチレータに結合した。カメラは、4.16mm(水平)×3.51mm(垂直)の有効視野を与える2560×2160ピクセルを有する。使用したX線ビームエネルギーは12keVであり、試料-検出器間距離は5mmであった。
【0095】
次いで、0.325μmの有効等方性ボクセルサイズを備える検出器を使用して、高解像度断層撮影を行った。20倍対物レンズを備えた高品質顕微鏡(Optique Peter(Lentilly,France))を使用して、PCO.edge 5.5 sCMOSカメラ(PCO(Kelheim,Germany))を20μm厚のLuAG:Ceシンチレータに結合した。カメラは、0.83mm(水平)×0.7mm(垂直)の有効視野を与える2560×2160ピクセルを有する。使用したX線ビームエネルギーは12keVであり、試料-検出器間距離は3mmであった。
【0096】
各構成について、カメラノイズとバックグラウンド強度の不均一性とを補正するために、暗視野(X線ビームなし)画像及びフラットフィールド(ビーム中に試料なし)画像も記録した。Paganinアルゴリズム[D.Paganin et al.,Journal of Microscopy-Oxford 206(2002)]を用いた投影の位相回復を、断層撮影再構成の前に実行した[F.Marone et al.,J.Synchrotron Rad.19(2012)]。再構成された断層撮影スライスのデータを16ビットTIFFで保存した。
【0097】
Geodictソフトウェア(Math2Market)を低解像度画像に使用して、開放気孔と閉鎖気孔との微細構造を分析した。まず、Non-Local Meansフィルタを画像に適用した。気孔は、Auto-thresholding(OTSU法)を適用することによって壁部と区別し、マスクを適用して、完全に画像化された粒子に焦点を合わせた。粒度測定法(PoroDictモジュール)を実行して、全ての気孔の全体的なサイズ統計を抽出した。試料中の気孔(開放及び閉鎖の両方)の体積平均径Dv50をスパンと共に以下に列挙する。
【0098】
【0099】
実施例5:クレマ体積測定
異なる試料によって生じたクレマの量を、最初は弁で遮断されている、水リザーバに接続された再構成容器からなる、単純なデバイス(
図3)を用いて測定した。85℃の脱イオン水200mLで5gのコーヒー粉末を再構成した後、再構成容器を、目盛り付きのキャピラリで終わる特別な蓋で閉じる。次いで、再構成容器と水リザーバとの間の弁を開くと、再構成された飲料が水(25℃の標準水道水)により押し上げられてキャピラリ内に達し、これにより25℃でのクレマ体積の読み取りが容易になる。
【0100】
試料の結果を次の表に列挙する。
【0101】
【0102】
実施例6:氷結晶空隙の測定
氷によって残された空隙のサイズ及び形状は、画像分析ソフトウェアによって分析されるX線断層撮影によって測定した。
【0103】
低解像度X線断層撮影を、実施例4に記載したように行った。Geodictソフトウェア(Math2Market)を低解像度画像に適用して、粒子の3D構造を分析した。気孔の異なる集団を球形度値の関数としてセグメント化した。まず、Non-Local Meansフィルタを画像に適用した。気孔は、Auto-thresholding(OTSU法)を適用することによって壁部と区別した。次いで、関数「flood fill large pores」(200ボクセル)を使用して、粒子の輪郭を描いた。個別気孔分析は、「individual pores」関数を使用して、14%の閾値を選択して実行した。次いで、同定された気孔を、2つの基準:0.7未満の球形度と25μmを超える個別の相当径(individual equivalent diameter)とに従ってフィルタリングした。
【0104】
0.7未満の球形度と25μmを超える個別の相当径とを有する気孔について得られたD
4,3のデータを次の表に列挙する。
【表6】
【0105】
本発明の様々な特徴及び実施形態を、番号を付した次のパラグラフを参照して説明する。
【0106】
パラグラフ1. クレマを有するコーヒー飲料を提供する凍結乾燥コーヒー粉末であって、コーヒー粉末が、開放気孔と閉鎖気孔とを有する粒子を含み、粒子が、(例えば、水銀圧入法によって測定したときに)4マイクロメートルを超える、例えば5マイクロメートルを超える、例えば6マイクロメートルを超える、例えば7マイクロメートルを超える、例えば8マイクロメートルを超える開放気孔体積平均径、例えば、4~15マイクロメートル、例えば5~14マイクロメートル、更に例えば6~9マイクロメートルの開放気孔体積平均径と、(例えば、ヘリウム置換法によって測定したときに)15.5%以上の閉鎖気孔率とを有する、凍結乾燥コーヒー粉末。
【0107】
パラグラフ2. コーヒー粉末が、85℃の脱イオン水200mLに対し5gの生成物を使用した場合に、少なくとも2.5mL、例えば少なくとも3mL、例えば少なくとも4mL、例えば少なくとも5mLのクレマを有する飲料を提供する、パラグラフ1に記載の凍結乾燥コーヒー粉末。
【0108】
パラグラフ3. 粒子が、水銀圧入法によって測定したときに1mL/gを超える(例えば1.1mL/gを超える、例えば1.2mL/gを超える、例えば1.3mL/gを超える、更に例えば1.4mL/gを超える)総開放気孔体積を有する、パラグラフ1又は2に記載の凍結乾燥コーヒー粉末。
【0109】
パラグラフ4. 粒子が、添加された氷によって形成された開放気孔を含み、該開放気孔が、(例えば、X線断層撮影によって測定したときに)50~1000μm、例えば100~1000μm、例えば200~500μm、例えば90~250、例えば110~210μmの体積平均径D4,3を有する、パラグラフ1~3のいずれか1つに記載の凍結乾燥コーヒー粉末。
【0110】
パラグラフ5. 粒子が、0.7未満の球形度と25μmを超える個別の相当径とを有する気孔を含み、0.7未満の球形度と25μmを超える個別の相当径とを有する該開放気孔が、X線断層撮影によって測定したときに50~1000μm、例えば100~1000μm、例えば200~500μm、例えば90~250、例えば110~210μmの体積平均径D4,3を有する、パラグラフ1~4のいずれか1つに記載の凍結乾燥コーヒー粉末。
【0111】
パラグラフ6. 粒子が、2マイクロメートル未満の開口部を有する開放気孔を有し、2マイクロメートル未満の開口部を有する開放気孔の体積が、水銀圧入法によって測定したときに開放気孔の総体積の17%超である、パラグラフ1~5のいずれか1つに記載の凍結乾燥コーヒー粉末。
【0112】
パラグラフ7. 粒子が開放気孔と閉鎖気孔とを含み、開放気孔と閉鎖気孔とを合わせたものが、10~100マイクロメートル、例えば30~50マイクロメートル、例えば10~45マイクロメートルの体積メジアン径Dv50を持つ全体気孔径分布を有する、パラグラフ1~6のいずれか1つに記載の凍結乾燥コーヒー粉末。
【0113】
パラグラフ8. 粒子が、水銀圧入法によって40psiaの圧力下で粒子の60%以上の圧入が達成されるような構造を有する、パラグラフ1~7のいずれか1つに記載の凍結乾燥コーヒー粉末。
【0114】
パラグラフ9. クレマを有するコーヒー飲料を調製するための、パラグラフ1~8のいずれか1つに記載の凍結乾燥コーヒー粉末の使用。
【0115】
パラグラフ10. パラグラフ1~8のいずれか1つに記載の凍結乾燥コーヒー粉末を含む、飲料粉末混合物。
【図】
【図】
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【国際調査報告】