(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】クリープ性を減少させた喫煙具用のセグメント用のフィルタ材料
(51)【国際特許分類】
A24D 3/10 20060101AFI20240628BHJP
A24D 3/14 20060101ALI20240628BHJP
A24D 3/16 20060101ALI20240628BHJP
A24D 3/02 20060101ALI20240628BHJP
A24D 3/17 20200101ALI20240628BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20240628BHJP
D04H 1/4258 20120101ALI20240628BHJP
D04H 1/26 20120101ALI20240628BHJP
【FI】
A24D3/10
A24D3/14
A24D3/16
A24D3/02
A24D3/17
D04H1/425
D04H1/4258
D04H1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574738
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2022057367
(87)【国際公開番号】W WO2022263029
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】102021115456.1
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512252548
【氏名又は名称】デルフォルトグループ、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】DELFORTGROUP AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー、フォルガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、バッハマン
【テーマコード(参考)】
4B045
4L047
【Fターム(参考)】
4B045BA02
4B045BB06
4B045BB10
4B045BC07
4B045BD04
4B045BD50
4L047AA08
4L047AA10
4L047AA12
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB06
4L047BA04
4L047CA19
4L047CB01
4L047CC16
(57)【要約】
喫煙具用のセグメントを製造するためのフィルタ材料が示される。前記フィルタ材料は、水流絡合されるとともに、前記フィルタ材料の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含み、前記フィルタ材料は、少なくとも15g/m2~最大で60g/m2の坪量を有し、ISO534:2011に準拠して測定した前記フィルタ材料の1つの層の厚さが、少なくとも25μm~最大で400μmであり、前記フィルタ材料は、最大で10%の厚さ方向におけるクリープ性を有し、前記クリープ性は、ISO534:2011に準拠して、厚さ測定開始後20秒以内に測定される前記フィルタ材料の5つの層の厚さにおける相対的減少である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙具用のセグメントを製造するためのフィルタ材料において、
前記フィルタ材料は、水流絡合されるとともに、前記フィルタ材料の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含み、
前記フィルタ材料は、少なくとも15g/m
2~最大で60g/m
2の坪量を有し、
ISO534:2011に準拠して測定した前記フィルタ材料の1つの層の厚さが、少なくとも25μm~最大で400μmであり、
前記フィルタ材料は、最大で10%の厚さ方向におけるクリープ性を有し、
前記クリープ性は、ISO534:2011に準拠して、厚さ測定開始後20秒以内に測定される前記フィルタ材料の5つの層の厚さにおける相対的減少である、
フィルタ材料。
【請求項2】
前記フィルタ材料中のセルロース繊維の割合は、前記フィルタ材料の質量に対して各々少なくとも60%~最大で100%、好適には少なくとも70%~最大で95%である、
請求項1に記載のフィルタ材料。
【請求項3】
前記セルロース繊維は、パルプ繊維、再生セルロース製繊維、またはこれらの混合物により形成される、
請求項1または2に記載のフィルタ材料。
【請求項4】
前記パルプ繊維は、単数の針葉樹材または複数の針葉樹材、単数の落葉樹材または複数の落葉樹材、または特に麻、亜麻、ジュート、ラミー、ケナフ、カポック、ココナッツ、アバカ、サイザル麻、竹、綿である他の植物、またはエスパルト草から調達される、またはこれら種々の調達源のパルプ繊維の混合物から形成される、
請求項3に記載のフィルタ材料。
【請求項5】
再生セルロース製繊維の割合が、前記フィルタ材料の質量に対して各々少なくとも5%~最大で50%、好適には少なくとも10%~最大で45%、特に好適には少なくとも15%~最大で40%である、
請求項3または4に記載のフィルタ材料。
【請求項6】
前記再生セルロース製繊維は、少なくとも部分的に、特に少なくとも70%まで、ビスコース繊維、モダール繊維、リヨセル(R)繊維、テンセル(R)繊維、またはこれらの混合物により形成される、
請求項3~5の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項7】
少なくとも18g/m
2~最大で55g/m
2、好適には少なくとも20g/m
2~最大で50g/m
2の坪量を有する、
請求項1~6の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項8】
前記フィルタ材料は、少なくとも0%~最大で9%、特に好適には少なくとも0%~最大で8%、より特に好適には少なくとも1%~最大で5%の厚さ方向におけるクリープ性を有する、
請求項1~7の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項9】
アルキルケテンダイマー(AKD)、特にアルケニルコハク酸無水物(ASA)である酸無水物、ポリビニルアルコール、ワックス、脂肪酸、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、湿潤強度剤、または特に有機もしくは無機の酸もしくは塩基であるpHを調整する物質、またはこれらの添加剤の2つ以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、
請求項1~8の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項10】
特にクエン酸三ナトリウムまたはクエン酸三カリウムであるクエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、特に酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムである酢酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、α‐ヒドロキシカプリル酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、塩化物、および炭酸水素塩、またはこれらの添加剤の2つ以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、
請求項1~9の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項11】
トリアセチン、プロピレングリコール、ソルビトール、グリセローラ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、およびクエン酸トリエチルからなる群から選択される少なくとも1つの物質、またはこれらの物質の2つ以上の混合物を含む、
請求項1~10の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項12】
前記セルロース繊維の少なくとも一部が充填材を含み、
前記充填材は、好適には鉱物粒子、特に炭酸カルシウム粒子により形成される、
請求項1~11の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項13】
ISO534:2011に準拠して測定した前記フィルタ材料の1つの層の厚さが、少なくとも30μm~最大で350μm、好適には少なくとも35μm~最大で300μmである、
請求項1~12の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項14】
ISO1924‐2:2008に準拠して測定した前記機械方向または前記横方向における前記フィルタ材料の幅に対する引張強さが、なくとも0.05kN/m~最大で5kN/m、好適には少なくとも0.07kN/m~最大で4kN/mである、
請求項1~13の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項15】
ISO1924‐2:2008に準拠して測定した前記機械方向または前記横方向における前記フィルタ材料の破断伸びが、少なくとも0.5%~最大で50%、好適には少なくとも0.8%~最大で40%である、
請求項1~14の一項に記載のフィルタ材料。
【請求項16】
フィルタ材料と包装材料とを備える喫煙具用のセグメントにおいて、
前記フィルタ材料は、前記フィルタ材料の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含み、
前記フィルタ材料は、少なくとも15g/m
2~最大で60g/m
2の坪量を有し、
ISO534:2011に準拠して測定した前記フィルタ材料の1つの層の厚さが、少なくとも25μm~最大で400μmであり、
前記フィルタ材料は、最大で10%の厚さ方向におけるクリープ性を有し、
前記クリープ性は、ISO534:2011に準拠して、厚さ測定開始後20秒以内に測定される前記フィルタ材料の5つの層の厚さの相対的低減である、
セグメント。
【請求項17】
前記フィルタ材料は、請求項2~15に規定された特徴のうちの1つ以上を有する、
請求項16に記載のセグメント。
【請求項18】
前記セグメントは、少なくとも3mm~最大で10mm、好適には少なくとも4mm~最大で9mm、特に好適には少なくとも5mm~最大で8mmの直径を有する円筒形である、および/または、
前記セグメントは、少なくとも4mm~最大で40mm、好適には少なくとも6mm~最大で35mm、特に好適には少なくとも10mm~最大で28mmの長さを有する、
請求項16または17に記載のセグメント。
【請求項19】
ISO6565:2015に準拠した前記セグメントの単位長さ当たりの前記セグメントの吸引抵抗が、少なくとも1mmWG/mm~最大で12mmWG/mm、好適には少なくとも2mmWG/mm~最大で10mmWG/mmである、
請求項16~18の一項に記載のセグメント。
【請求項20】
前記包装材料は、紙またはフィルムにより形成される、
請求項16~19の一項に記載のセグメント。
【請求項21】
前記包装材料は、少なくとも20g/m
2~最大で150g/m
2、好適には少なくとも30g/m
2~最大で130g/m
2のISO536:2019に準拠した坪量を有する、
請求項16~20の一項に記載のセグメント。
【請求項22】
請求項16~21の一項に記載のセグメントを製造するためのプロセスにおいて、
請求項1~15の一項に記載の前記フィルタ材料を、クリンプ加工またはプリーツ加工し、
クリンプ加工またはプリーツ加工したフィルタ材料の好適に連続するトウを形成し、
クリンプ加工またはプリーツ加工した前記トウを包装材料で巻き、
巻いた前記トウを、所定長さの個々のロッドに切断する、
プロセス。
【請求項23】
エアロゾル形成材料を含むセグメントと請求項16~21の一項に記載のセグメントとを備える喫煙具において、
請求項16~21の一項に記載の前記セグメントは、好適には、口端部に最も近く位置する前記喫煙具の前記セグメントである、
喫煙具。
【請求項24】
前記喫煙具は、フィルタ付きたばこであり、
前記エアロゾル形成材料は、タバコである、またはこれを含む、
請求項23に記載の喫煙具。
【請求項25】
前記喫煙具は、その意図された使用中に、前記エアロゾル形成材料を加熱するのみで燃焼させない喫煙具であり、
前記エアロゾル形成材料は、好適には、タバコ、再構成タバコ、ニコチン、グリセローラ、プロピレングリコール、またはこれらの混合物からなる群から選択される材料を備える、
請求項23に記載の喫煙具。
【請求項26】
前記エアロゾル形成材料は、液体の形態で存在するとともに、前記喫煙具内の対応する容器に配置される、
請求項25に記載の喫煙具。
【請求項27】
A‐セルロース繊維を備える繊維ウェブを提供するステップと、
B‐前記繊維ウェブに向けた水ジェットにより前記繊維ウェブを水流絡合させて、水流絡合繊維ウェブを製造するステップと、
C‐前記水流絡合繊維ウェブを乾燥させるステップと、
を備えるフィルタ材料を製造するためのプロセスにおいて、
ステップAにおいて、前記繊維ウェブ中のセルロース繊維の量または割合を、ステップCにおける乾燥後に、前記フィルタ材料の質量に対して前記フィルタ材料が少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含むように選択し、
ステップBにおいて、水ジェットの個数、前記水ジェットの圧力、または前記水ジェットが流出する開口の形状を、ステップCにおける乾燥後に、前記フィルタ材料が最大で10%の厚さ方向におけるクリープ性を有するように選択し、前記クリープ性は、ISO534:2011に準拠して、厚さ測定開始後20秒以内に測定される前記フィルタ材料の5つの層の厚さにおける相対的減少であり、
ステップCにおける乾燥後に、前記フィルタ材料は、少なくとも15g/m
2~最大で60g/m
2の坪量を有し、ISO534:2011に準拠して測定した前記フィルタ材料の1つの層の厚さが、少なくとも25μm~最大で400μmである、
プロセス。
【請求項28】
ステップBにおいて前記水ジェットが流出する前記ノズルの少なくとも一部が、ノズルストリップにおける丸孔として形成され、
前記フィルタ材料に対面する前記ノズルストリップにおける前記孔の直径が、前記フィルタ材料から離れる側の孔の直径よりも大きく、かつ前記フィルタ材料から離れる側の前記孔の前記直径の最大で2倍である、
請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記プロセスにより製造される前記フィルタ材料は、請求項1~15の一項に記載のフィルタ材料である、
請求項27または28に記載のプロセス。
【請求項30】
ステップAにおける繊維ウェブの提供は、複数のセルロース繊維を紡糸するステップを備え、
前記セルロース繊維は、再生セルロースのフィラメントにより形成され、
ステップCにおける乾燥後の前記フィルタ材料の質量の少なくとも90%が、前記再生セルロースのフィラメントにより形成され、
前記再生セルロースのフィラメントは、好適にはリヨセル(R)フィラメントである、
請求項27~29の一項に記載のプロセス。
【請求項31】
ステップAにおける繊維ウェブの提供は、
A1‐セルロース繊維を備える水性懸濁液を作製するステップと、
A2‐ステップA1からの前記懸濁液を走行ワイヤに塗布するステップと、
A3‐前記懸濁液を前記走行ワイヤを通して脱水し、繊維ウェブを形成するステップと、
A4‐ステップA3からの前記繊維ウェブを乾燥させるステップと、
を備える、
請求項27~30の一項に記載のプロセス。
【請求項32】
ステップA1における前記水性懸濁液は、最大で3.0%、特に好適には最大で1.0%、より特に好適には最大で0.2%、特に最大で0.05%の固形分含量を有する、
請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
ステップA2およびステップA3の前記走行ワイヤは、水平方向に対して前記機械方向において上方に少なくとも3°~最大で40°の角度で、好適には少なくとも5°~最大で30°の角度で、特に好適には少なくとも15°~最大で25°の角度で傾斜する、
請求項31または32の一項に記載のプロセス。
【請求項34】
前記プロセスは、前記走行ワイヤの2つの前記側面間の圧力差を生成してステップA3における前記懸濁液の脱水を支援するステップをさらに備え、
前記圧力差を、特に好適には、真空ボックスまたは適切な形状を有するホイルにより生成する、
請求項31~33の一項に記載のプロセス。
【請求項35】
複数の水ジェットを使用してステップBにおける水流絡合を実施し、
前記水ジェットを、前記繊維ウェブの前記走行方向を横断するように少なくとも1列に配置する、
請求項27~34の一項に記載のプロセス。
【請求項36】
ステップBにおける水流絡合を、前記繊維ウェブに向けた少なくとも4列の水ジェットにより実施し、
好適には、少なくとも2列の水ジェットが、前記繊維ウェブの2つの側面の各々に作用する、
請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記プロセスは、1つ以上の添加剤を前記繊維ウェブに塗布するさらなるステップを備え、
前記1つ以上の添加剤は、アルキルケテンダイマー(AKD)、特にアルケニルコハク酸無水物(ASA)である酸無水物、ポリビニルアルコール、ワックス、脂肪酸、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、湿潤強度剤、または特に有機もしくは無機の酸もしくは塩基であるpHを調整する物質、およびこれらの混合物からなる群から選択される、
請求項27~36の一項に記載のプロセス。
【請求項38】
前記プロセスは、1つ以上の添加剤を前記繊維ウェブに塗布するさらなるステップを備え、
1つ以上の前記添加剤は、特にクエン酸三ナトリウムまたはクエン酸三カリウムであるクエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、特に酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムである酢酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、α‐ヒドロキシカプリル酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、塩化物、および炭酸水素塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、
請求項27~37の一項に記載のプロセス。
【請求項39】
1つ以上の前記添加剤を、ステップBとステップCとの間に、またはステップCの後に塗布し、その後前記繊維ウェブを乾燥させるさらなるステップが続く、
請求項27または38に記載のプロセス。
【請求項40】
ステップCにおける乾燥を、少なくとも部分的に、熱風との接触により、赤外線放射により、またはマイクロ波放射により実施する、
請求項27~39に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙具用のフィルタ材料、これから製造される喫煙具用のセグメント、およびこれから製造される喫煙具に関する。フィルタ材料は、これから製造されるセグメントにクリープ性に関して有利な特性を提供する構造を有する。
【背景技術】
【0002】
喫煙具は、典型的には、互いに並んで配置された少なくとも2つのロッド状のセグメントから構成されるロッド状の物品である。1つのセグメントは、加熱時にエアロゾルを形成することができる材料を含み、少なくとも1つのさらなるセグメントは、エアロゾルの特性に影響を与える役割を果たす材料を含む。
【0003】
喫煙具は、フィルタ付きたばことすることができる。ここで、第1セグメントがエアロゾル形成材料、特にタバコを含み、さらなるセグメントがフィルタとして設計されるとともにエアロゾルをフィルタリングするように作用する。ここで、エアロゾルは、エアロゾル形成材料の燃焼により発生し、フィルタは、エアロゾルをフィルタリングするとともに、フィルタ付きたばこに所定の吸引抵抗を与える役割を主として果たす。
【0004】
しかしながら、喫煙具は、加熱式たばこ製品として知られるものでもあり得る。この場合、エアロゾル形成材料を加熱するだけで燃焼させない。これは、エアロゾル中の健康を害する物質の数および量が減少することを意味する。このような喫煙具も、少なくとも2つ、より多くの場合、特に4つのセグメントから構成される。1つのセグメントが、典型的にはタバコ、再構成タバコ、他のプロセスで調製されたタバコ、またはニコチンおよびグリセロールまたはプロピレングリコールを備えるエアロゾル形成材料を含む。さらに、加熱式たばこ製品の任意のセグメントは、エアロゾルを移送する、エアロゾルを冷却する、またはエアロゾルをフィルタリングする役割を果たすこともある。
【0005】
セグメントは、通常、包装材料で巻かれている。紙が包装材料として使用されることが非常に多い。
【0006】
以下で明示的に記載されるか文脈から直接的に明瞭でない限り、「セグメント」とは、エアロゾル形成材料を含まない喫煙具のセグメントであって、例えばエアロゾルを移送する、冷却する、またはフィルタリングする役割を果たすセグメントを指すと理解すべきである。
【0007】
先行技術において、酢酸セルロースやポリラクチドからこのようなセグメントを形成することが知られている。酢酸セルロースやポリラクチドは、環境中での生分解が非常に遅いため、喫煙具のセグメントをより良好に生分解する他の材料から製造することに、業界の関心がある。先行技術において、喫煙具用のセグメント、特にフィルタセグメントを紙から製造することが知られている。このようなセグメントは、一般に容易に生分解するが、欠点もある。一例として、紙製のフィルタセグメントは、一般にフィルタリング効率が高いため、乾燥したエアロゾルになることにより、従来の酢酸セルロース製のフィルタセグメントを有するタバコに比較して、エアロゾルの風味が低下する。さらに、フェノールに対するフィルタリング効率が、酢酸セルロースよりも低いことが多い。また、吸引抵抗、フィルタリング効率および硬度の組み合わせに関して消費者に受け入れられる紙セグメントを製造することは困難であることが分かっている。フィルタリング効率を低くするために紙の使用を抑えることが多い。すると、セグメントが柔らかくなり吸引抵抗が低くなりすぎる。
【0008】
したがって、フィルタリング効率、吸引抵抗、または生分解性に関して特に不利な点を生じさせることなく、変形に対して良好な抵抗を有する喫煙具用のセグメントを製造することができるフィルタ材料を入手可能とすることに業界で関心が持たれている。
【0009】
同一発明者による公開前の国際特許出願PCT/EP2019/085125に、本発明によるフィルタ材料の出発点となり得る水流絡合フィルタ材料が記載されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目標は、同様に良好な生分解性を有するフィルタ材料であって、変形に対する耐性に関して従来技術で知られているセグメントよりも優れたセグメントを作製することを可能にする喫煙品用フィルタ材料を提供することである。
【0011】
この目的は、請求項1に記載のフィルタ材料、請求項27に記載のフィルタ材料を製造するためのプロセス、請求項16に記載の喫煙具のセグメント、請求項22に記載のこのようなセグメントを製造するためのプロセス、および請求項23に記載の喫煙具により達成される。有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0012】
本発明者らは、以下のフィルタ材料により達成され得ることを見出した。前記フィルタ材料は、水流絡合される(水で絡められる(hydrogentangled))とともに、前記フィルタ材料の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含み、前記フィルタ材料は、少なくとも15g/m2~最大で60g/m2の坪量を有し、ISO534:2011に準拠して測定した前記フィルタ材料の1つの層の厚さが、少なくとも25μm~最大で400μmであり、前記フィルタ材料は、最大で10%の厚さ方向におけるクリープ性を有し、前記クリープ性は、ISO534:2011に準拠して、厚さ測定開始後20秒以内に測定される前記フィルタ材料の5つの層の厚さにおける相対的減少である。
【0013】
本発明によれば、フィルタ材料を水流絡合により製造する。この製造プロセスは、フィルタ材料に特徴的な特性を提供する。この特徴的な特性により、フィルタ材料は他のフィルタ材料、特に紙から区別されるとともに、この特徴的な特性は、他の製造プロセスにより同一の態様で得ることができない。例えば、強度が水素結合に起因する紙であって、繊維が主として紙の平面内に配向されている紙以外では、水流絡合されたフィルタ材料の強度は、繊維の絡合により得られる。これにより、特に多孔質な構造がもたらされる。多孔質な構造により、フィルタ材料から製造されたセグメントは吸引抵抗およびフィルタリング効率の優れた組み合わせを有する。しかしながら、特に多孔質構造を理由として、このようなセグメントは、多くの場合柔らかすぎる。
【0014】
本発明者らは、消費者が感じる硬度に関して、セグメントが荷重に対してわずかに変形反応することはそれほど重要ではなく、むしろ、小さいが継続する荷重により大きな永久変形が引き起こされないことが重要であることを見出した。これは、喫煙具、特にフィルタ付きたばこの使用に関する。使用中、消費者はたばこをフィルタの領域において指で挟み、例えば同じ方の手を動かす動作をしつつ、たばこを当該位置に保持するためフィルタ領域に継続的な圧力を及ぼす。この場合、喫煙具のセグメントが実質的に永久変形することがあってはならない。同様のことが、たばこ加熱用の喫煙具にも言える。たばこ加熱用喫煙具では、多くの場合電気的に作動する加熱装置で使用されるため、フィルタ付きたばこよりも消費者による取扱操作がはるかに多く必要とされる。
【0015】
喫煙具および喫煙具のセグメントの硬度は、通例、短時間の高い荷重による変形によって測定する。本発明者らの知見によれば、消費者は、継続する小さな荷重の下での変形がより重要であると認識している。
【0016】
この問題は、特に水流絡合フィルタ材料の使用において頻繁に発生する。この理由は、フィルタ材料の有利な多孔質構造は、永久変形に対してほとんど抵抗しないこと、また、特に、喫煙具のセグメントに典型的に存在するフィルタ材料のいくつかの層が、フィルタ材料のクリンプ加工またはプリーツ加工により、容易に圧縮して永久変形する場合があることである。本発明者らは、この問題が、フィルタ材料の繊維の大部分が厚さ方向に配向された構造を有する水流絡合フィルタ材料を提供することにより解決できることを見出した。厚さ方向に配向された繊維により、フィルタ材料の多孔質構造は安定するとともに、継続的な小さい荷重の下での変形に対する高い抵抗が得られる。このようにして厚さ方向に配向された繊維の割合は、水ジェットの個数および圧力、ならびに水ジェットが流出するノズルの形状に左右され得る。
【0017】
本発明者らの知見によれば、このプロセスにより得られるフィルタ材料の構造は、フィルタ材料が小さい継続的な荷重でどれだけ大きく変形するかを示す厚さ方向におけるクリープ性により特徴付けられ得る。クリープ性は、ISO534:2011に準拠した厚さの測定により求められる。ISO534:2011に準拠した厚さの測定に際して、サンプルを平坦な支持体上に載置し、円筒形のスタンプで所定の小さい力で荷重をかける。スタンプ表面と支持体との間の距離が厚さであり、スタンプをサンプル上に載置した後に、ISO534:2011に準拠して求められる。
【0018】
クリープ性は、この標準的な測定方法をわずかに変形させて求めることもできる。ここでは、サンプル材料の5つの層を支持体上に載置し、ISO534:2011に準拠した厚さ測定を開始する。測定開始直後に表示された5つの層の厚さ(d0)の値を記録し、20秒後に5つの層の厚さ(d20)のさらなる値を記録する。クリープ性Cは、この20秒間の厚さの相対的な変化であり、次式で算出できるとともに百分率で表すことができる。
【0019】
【0020】
喫煙具に対する実験から、10%未満のクリープ性であれば、消費者が利点を感じることが分かっている。しかしながら、一般的な水流絡合フィルタ材料は、典型的に約15%のクリープ性を有する。したがって、本発明によれば、水流絡合フィルタ材料を、厚さ方向におけるクリープ性が最大で10%になるように製造する。
【0021】
本発明によるフィルタ材料は、セルロース繊維を含む。本発明者らの知見によれば、セルロース繊維は、フィルタ材料に十分な強度を提供することでそれをセグメントに加工できるようにするために必要である。本発明によるフィルタ材料中のセルロース繊維の割合は、フィルタ材料の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%であるが、好適にはフィルタ材料の質量に対して各々少なくとも60%~最大で100%、特に好適には少なくとも70%~最大で95%である。
【0022】
前記セルロース繊維は、パルプ繊維、再生セルロース製繊維、またはこれらの混合物により形成される。
【0023】
パルプ繊維は、好適には、針葉樹材、落葉樹材、または麻、亜麻、ジュート、ラミー、カポック、ココナッツ、アバカ、サイザル麻、竹、綿等の他の植物、またはエスパルト草から調達される。また、由来の異なるパルプ繊維の混合物が、水流絡合フィルタ材料を製造するために使用され得る。特に好適には、パルプ繊維は針葉樹材から調達される。なぜならば、このような繊維は、小さい割合でも水流絡合不織布に良好な強度を与えるからである。
【0024】
本発明によるフィルタ材料は、再生セルロース製繊維を含み得る。好適には、再生セルロース製繊維の割合は、フィルタ材料の質量に対して各々少なくとも5%~最大で50%、特に好適には少なくとも10%~最大で45%、より特に好適には少なくとも15%~最大で40%である。
【0025】
再生セルロース製繊維は、好適には、ビスコース繊維、モダール繊維、リヨセル(R)繊維、テンセル(R)繊維、またはこれらの混合物により少なくとも部分的に、特に少なくとも70%まで形成される。これらの繊維は良好な生分解性を有し、フィルタ材料の強度を最適化するとともにこれから製造したセグメントのフィルタリング効率を調整するように使用することができる。これらの繊維は、その製造プロセスにより、天然源から得られるパルプ繊維よりもばらつきが少ないため、フィルタ材料から製造されるセグメントの特性が、パルプ繊維のみを使用した場合よりもばらつかないということに寄与する。しかしながら、その製造には手間がかかり、通常パルプ繊維よりも高価である。
【0026】
本発明によれば、フィルタ材料の坪量は、少なくとも15g/m2~最大で60g/m2、好適には少なくとも18g/m2~最大で55g/m2、特に好適には少なくとも20g/m2~最大で50g/m2である。坪量は、フィルタ材料の引張強さに影響を与える。一般に、坪量が高いほど強さが高くなる。しかしながら、坪量は高すぎてはならない。なぜならば、フィルタ材料を喫煙具用のセグメントにもはや高速で加工できなくなるからである。値は、ISO536:2019に準拠して測定した坪量を指す。
【0027】
本発明によれば、フィルタ材料は、最大で10%、好適には少なくとも0%~最大で9%、特に好適には少なくとも0%~最大で8%、より特に好適には少なくとも1%~最大で5%の厚さ方向におけるクリープ性を有する。一般に、クリープ性は、可能な限り低くすべきである。しかし、フィルタ材料は、喫煙具のセグメントへの加工中に変形する。この変形に対する抵抗が大きすぎてはならず、かつ変形状態を保持すべきである。好適な範囲は、この点で非常に有利である。
厚さ方向におけるクリープ性は、ISO534:2011に従って上述のように求められる。
【0028】
特定の特性を得るために、本発明によるフィルタ材料は、アルキルケテンダイマー(AKD)、特にアルケニルコハク酸無水物(ASA)である酸無水物、ポリビニルアルコール、ワックス、脂肪酸、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、湿潤強度剤、または特に有機もしくは無機の酸もしくは塩基であるpHを調整する物質等の添加剤を含み得る。代替的または追加的に、本発明によるフィルタ材料は、クエン酸三ナトリウムまたはクエン酸三カリウム等のクエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム等の酢酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、α‐ヒドロキシカプリル酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、塩化物、および炭酸水素塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含み得る。
【0029】
当業者であれば、経験からこのような添加剤の種類と量を判断することができる。
【0030】
本発明によるフィルタ材料は、フィルタ材料のフィルタリング効率を酢酸セルロースのフィルタリング効率にもっと良好に一致させるさらなる物質をも備え得る。本発明によるフィルタ材料の好適な実施形態において、フィルタ材料は、トリアセチン、プロピレングリコール、ソルビトール、グリセローラ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、クエン酸トリエチル、またはこれらの混合物からなる群から選択される物質を備える。
【0031】
フィルタ材料の好適な実施形態において、セルロース繊維の少なくとも一部が充填材を含み、充填材は、特に好適には鉱物粒子、特に炭酸カルシウム粒子により形成される。フィルタ材料の構造は非常に多孔質であるため、充填材を保持することができない。そこで、セルロース繊維に充填材を含ませることで、それをフィルタ材料の構造内に保持することが有利である。充填材は、充填材料に特殊な特性を提供する役割を果たし得る。
【0032】
ISO534:2011に準拠して測定したフィルタ材料の1つの層の厚さは、少なくとも25μm~最大で400μm、好適には少なくとも30μm~最大で350μm、特に好適には少なくとも35μm~最大で300μmである。厚さは、喫煙具のセグメントに充填され得るフィルタ材料の量に、ひいてはセグメントの吸引抵抗およびフィルタリング効率に影響を及ぼすだけでなく、特に喫煙具のセグメントの製造を目的としてフィルタ材料がクリンプ加工またはプリーツ加工されることが多いため、その加工性に影響を及ぼす。このような加工ステップでは、大きすぎる厚さは不利であり、好適な区間および特に好適な区間の厚さであれば、喫煙具のセグメントになる本発明によるフィルタ材料の特に良好な加工性が得られる。
【0033】
フィルタ材料の機械的特性は、本発明によるフィルタ材料を喫煙具のセグメントに加工するために重要である。ISO1924‐2:2008に準拠して測定した幅に対するフィルタ材料の引張強さは、好適には少なくとも0.05kN/m~最大で5kN/m、特に好適には少なくとも0.07kN/m~最大で4kN/mである。
【0034】
本発明によるフィルタ材料を加工して喫煙具のセグメントを形成する際、フィルタ材料を走行方向において引き伸ばしたり負荷をかけたりすることが多いため、フィルタ材料の破断伸びは重要であり、特に高い破断伸びは有利である。したがって、ISO1924‐2:2008に準拠して測定した横方向におけるフィルタ材料の破断伸びは、好適には少なくとも0.5%~最大50%、特に好適には少なくとも0.8%~最大で40%である。破断伸びは、主として繊維の長さによって決定される。繊維が長いほど、破断伸びが高くなる。このため、破断伸びを、フィルタ材料に固有の要件に合わせて広い範囲で調整することができる。
【0035】
引張強さおよび破断伸びは、サンプルを測定のためにフィルタ材料から採取する方向に依存し得る。フィルタ材料の前記特徴は、少なくとも一方向における引張強さまたは破断伸びが好適な範囲または特に好適な範囲にある場合に、各々得られる。
【0036】
喫煙具用の本発明によるセグメントを、先行技術において既知のプロセスに従って、本発明によるフィルタ材料から製造することができる。これらのプロセスは、例えば、フィルタ材料をクリンプ加工またはプリーツ加工するステップと、クリンプ加工またはプリーツ加工したフィルタ材料から連続的なトウ(短い糸の詰めもの)を形成するステップと、連続的なトウを包装材料で巻くステップと、巻かれたトウを所定長さの個々のロッドに切断するステップと、を備える。多くの場合、このようなロッドの長さは、本発明による喫煙具において後に使用されるセグメントの長さの整数倍であるため、ロッドは、喫煙具の製造前または製造中に、所望の長さのセグメントに切断される。
【0037】
さらなる態様において、したがって、本発明は、フィルタ材料と包装材料とを備える喫煙具用のセグメントに関し、前記フィルタ材料は、前記フィルタ材料の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含み、前記フィルタ材料は、少なくとも15g/m2~最大で60g/m2の坪量を有し、ISO534:2011に準拠して測定した前記フィルタ材料の1つの層の厚さが、少なくとも25μm~最大で400μmであり、前記フィルタ材料は、最大で10%の厚さ方向におけるクリープ性を有し、前記クリープ性は、ISO534:2011に準拠して、厚さ測定開始後20秒以内に測定される前記フィルタ材料の5つの層の厚さにおける相対的減少である。
【0038】
広げたフィルタ材料の面積および形状が、ISO534:2011に準拠した厚さ測定において使用されるスタンプの全領域をカバーするのに少なくとも十分である限り、クリープ性を、1つ以上の同一のセグメントから採取したフィルタ材料に対して上述の方法に従って求めることもできる。
【0039】
喫煙具用の本発明によるセグメントは、本発明によるフィルタ材料と、包装材料と、を備える。
【0040】
本発明によるセグメントの好適な実施形態において、セグメントは、少なくとも3mm~最大で10mm、特に好適には少なくとも4mm~最大で9mm、より特に好適には少なくとも5mm~最大で8mmの直径を有する円筒形である。これらの直径は、本発明によるセグメントを喫煙具に使用するのに有利である。
【0041】
本発明によるセグメントの好適な実施形態において、セグメントは、少なくとも4mm~最大で40mm、特に好適には少なくとも6mm~最大で35mm、より特に好適には少なくとも10mm~最大で28mmの長さを有する。
【0042】
セグメントの吸引抵抗は、とりわけ、喫煙具を通過する一定の体積流を生成するために消費者がどの程度の圧力差を加える必要があるかを決定するため、消費者による喫煙具の受容に実質的に影響する。セグメントの吸引抵抗は、ISO6565:2015に準拠して測定され得るとともに、mmウォーターゲージ(mmWG)で与えられる。セグメントの吸引抵抗はセグメントの長さに非常に近似的に比例するため、吸引抵抗の測定は、セグメントと長さのみが異なるロッドにおいても実施することができる。セグメントの吸引抵抗を、これから簡単に計算することができる。
【0043】
前記セグメントの単位長さ当たりの前記セグメントの吸引抵抗は、好適には少なくとも1mmWG/mm~最大で12mmWG/mm、特に好適には少なくとも2mmWG/mm~最大で10mmWG/mmである。
【0044】
本発明による包装材料は、好適には紙またはフィルムである。
【0045】
本発明によるセグメントの包装材料は、好適には、少なくとも20g/m2~最大で150g/m2、特に好適には少なくとも30g/m2~最大で130g/m2のISO536:2019に準拠した坪量を有する。この好適な坪量または特に好適な坪量を有する包装材料は、これで巻かれた本発明によるセグメントに特に有利な硬度を提供するとともに、本発明によるフィルタ材料の低いクリープ性を有利な態様で支持する。
【0046】
本発明による喫煙具は、本発明によるセグメントから、先行技術において知られたプロセスに従って製造され得る。
【0047】
本発明による喫煙具は、エアロゾル形成材料を含むセグメントと、本発明によるフィルタ材料および包装材料を備えるセグメントと、を備える。
【0048】
本発明によるセグメントの切断面は、酢酸セルロースから作製されたセグメントのものと光学的に非常に類似しているため、好適な実施形態において、喫煙具の口端部の隣に位置するセグメントは、本発明によるセグメントである。
【0049】
好適な実施形態において、喫煙具はフィルタ付きたばこであり、エアロゾル形成材料はタバコを含む。
【0050】
好適な実施形態において、喫煙具は、その意図された使用中に、前記エアロゾル形成材料を加熱するのみで燃焼させない喫煙具であり、エアロゾル形成材料は、タバコ、再構成タバコ、ニコチン、グリセローラ、プロピレングリコール、またはこれらの混合物からなる群から選択される材料を備える。ここで、エアロゾル形成材料は、液体の形態で存在し得るとともに、喫煙具内の対応する容器に配置され得る。
【0051】
本発明によるフィルタ材料は、ステップA~ステップCを備える本発明による以下のプロセスに従って製造され得る。すなわち、本プロセスは、
A‐セルロース繊維を備える繊維ウェブを提供するステップと、
B‐前記繊維ウェブに向けた水ジェットにより前記繊維ウェブを水流絡合させて、水流絡合繊維ウェブを作製するステップと、
C‐前記水流絡合繊維ウェブを乾燥させるステップと、
を備え、
ステップAにおいて、前記繊維ウェブ中のセルロース繊維の量または割合を、ステップCにおける乾燥後に、前記フィルタ材料の質量に対して前記フィルタ材料が少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含むように選択し、
ステップBにおいて、水ジェットの個数、前記水ジェットの圧力、または前記水ジェットが流出する開口の形状を、ステップCにおける乾燥後に、前記フィルタ材料が最大で10%の厚さ方向におけるクリープ性を有するように選択し、前記クリープ性は、ISO534:2011に準拠して、厚さ測定開始後20秒以内に測定される前記フィルタ材料の5つの層の厚さにおける相対的減少であり、
ステップCにおける乾燥後に、前記フィルタ材料は、少なくとも15g/m2~最大で60g/m2の坪量を有し、ISO534:2011に準拠して測定した前記フィルタ材料の1つの層の厚さが、少なくとも25μm~最大で400μmである。
【0052】
ステップBにおいて繊維ウェブに向ける水ジェットにより、セルロース繊維の絡合が生じる。こうして、繊維の割合が厚さ方向に配向されるため、クリープ性の低減に寄与する。「水ジェットの圧力」とは、例えば圧力チャンバにおいて水ジェットを生成するために使用される圧力であると当業者に理解されるであろう。一般に、多数の水ジェットが選択されるとともに比較的高い圧力が機械方向において1列~3列の水ジェットに使用される場合、厚さ方向に配向される繊維の割合が大きくなり得るため、フィルタ材料におけるクリープ性が低減され得る。特に好適な実施形態において、ステップBにおいて前記水ジェットが流出する前記ノズルの少なくとも一部が、ノズルストリップにおける丸孔として形成され、ノズルストリップの両側における孔の直径は異なる。本実施形態において、前記フィルタ材料に対面する前記ノズルストリップにおける前記孔の直径が、前記フィルタ材料から離れる側の孔の直径よりも大きく、かつ前記フィルタ材料から離れる側の前記孔の前記直径の最大で2倍である。本発明者らの知見によれば、鋭い水ジェットが生成されるため、ノズルのこの形状は特に好ましい。鋭い水ジェットは、高い圧力と相俟って繊維を厚さ方向に配向することに大きく寄与する。
【0053】
本プロセスに従って製造したフィルタ材料は、喫煙具用のセグメントでの使用に適していなければならない。これは、特にフィルタ材料が、フィルタ材料について上記した、かつフィルタ材料に関する請求項に規定されたすべての特徴を単独で、または組み合わせて有することを意味する。
【0054】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップAにおける繊維ウェブの提供は、複数のセルロース繊維を紡糸するステップを備え、前記セルロース繊維は、再生セルロースのフィラメントにより形成され、ステップCにおける乾燥後の前記フィルタ材料の質量の少なくとも90%が、前記再生セルロースのフィラメントにより形成される。本プロセスの特に好適な実施形態において、前記再生セルロースのフィラメントは、好適にはリヨセル(R)フィラメントである。
【0055】
本発明によるプロセスのさらに好適な実施形態において、ステップAにおける繊維ウェブの提供は、以下のステップA1~ステップA4を備える。すなわち、
A1‐セルロース繊維を備える水性懸濁液を作製するステップと、
A2‐ステップA1からの前記懸濁液を走行ワイヤに塗布するステップと、
A3‐前記懸濁液を前記走行ワイヤを通して脱水し、繊維ウェブを形成するステップと、
A4‐ステップA3からの前記繊維ウェブを乾燥させるステップと、
を備える。
【0056】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップA1における前記水性懸濁液は、最大で3.0%、特に好適には最大で1.0%、より特に好適には最大で0.2%、特に最大で0.05%の固形分含量を有する。
【0057】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップA2およびステップA3の前記走行ワイヤは、水平方向に対して前記繊維ウェブの走行方向において上方に少なくとも3°~最大で40°の角度で、好適には少なくとも5°~最大で30°の角度で、特に好適には少なくとも15°~最大で25°の角度で傾斜する。
【0058】
好適な実施形態において、本プロセスは、前記走行ワイヤの2つの前記側面間の圧力差を生成してステップA3における前記懸濁液の脱水を支援するステップをさらに備え、特に好適には、前記圧力差、真空ボックスまたは適切な形状を有するホイルにより生成する。
【0059】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、複数の水ジェットを使用してステップBにおける水流絡合を実施し、前記水ジェットを、前記繊維ウェブの前記走行方向を横断するように少なくとも1列に配置する。
【0060】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップBにおける水流絡合を、前記繊維ウェブに向けた少なくとも4列の水ジェットにより実施し、特に好適には、少なくとも2列の水ジェットが、前記繊維ウェブの2つの側面の各々に作用する。
【0061】
本発明による好適な実施形態において、前記プロセスは、1つ以上の添加剤を前記繊維ウェブに塗布するさらなるステップを備える。前記添加剤は、好適には、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)等の酸無水物、ポリビニルアルコール、ワックス、脂肪酸、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、湿潤強度剤、または有機もしくは無機の酸もしくは塩基等のpHを調整する物質、およびこれらの混合物からなる群から選択される。代替的または追加的に、クエン酸三ナトリウムまたはクエン酸三カリウム等のクエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム等の酢酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、α‐ヒドロキシカプリル酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、塩化物、および炭酸水素塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤が、塗布され得る。
【0062】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、1つの添加剤または複数の前記添加剤の塗布を、本発明によるプロセスのステップBとステップCとの間に実施する。本発明によるプロセスのさらに好適な実施形態において、1つの添加剤または複数の前記添加剤の塗布を、ステップCの後に実施し、その後繊維ウェブを乾燥させるさらなるステップが続く。
【0063】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップCにおける乾燥を、少なくとも部分的に、熱風との接触により、赤外線放射により、またはマイクロ波放射により実施する。加熱表面との直接的な接触による乾燥も可能ではあるが、フィルタ材料の厚さがこれにより減少する可能性があるため、あまり好適ではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は、本発明によるフィルタ材料を製造するための本発明によるプロセスが実施され得る装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
フィルタ材料、フィルタ材料を製造するためのプロセス、喫煙具用のセグメント、および喫煙具のいくつかの好適な実施形態について以下に説明する。さらに、本発明によらない比較例について説明する。
【0066】
図1に示す装置を使用して、フィルタ材料を製造した。
【0067】
パルプ繊維および再生セルロース繊維の懸濁液1を、貯蔵タンク2に供給した(ステップA1)。そこから懸濁液1を水平方向に対して上方に傾斜した走行ワイヤ3に圧送し(ステップA2)、真空ボックス9を通して脱水した(ステップA3)。これにより、繊維ウェブ4がワイヤに形成された。その全体移動方向を、矢印10で示す。繊維ウェブ4をワイヤ3から外し、同じく走行している支持ワイヤ5に移送した(ステップA4)。装置6から、繊維ウェブ4の走行方向に対して横断する方向に複数列に配置された水ジェット11を繊維ウェブ4に向けて、繊維を絡合させるとともに繊維ウェブ4を固めて不織布にした(ステップB)。ステップBに続き、同様に水ジェット12をさらなる装置7により繊維ウェブ4の他側に向けた。そして、まだ湿っている不織布を乾燥ユニット8を通過させてここで乾燥させて(ステップC)、フィルタ材料を得た。
【0068】
例示的実施形態
水流絡合フィルタ材料を製造するために、針葉樹材から製造したパルプ繊維とリヨセル(R)繊維の混合物を使用した。繊維の量は、完成したフィルタ材料が80%のパルプ繊維と20%のリヨセル(R)繊維からなるように選択した。完成したフィルタ材料は、25g/m2のISO536:2019に準拠した坪量を有した。
【0069】
製造プロセスのステップBにおいて、最初に、3列の水ジェット11を繊維ウェブの第1側に向け、そして、2列の水ジェット12を繊維ウェブの第2側に向けた。ここで、本発明による異なるフィルタ材料A、BおよびCを得るように、水ジェットの圧力を約3MPaから約8MPaの間で三段階(低、中、高)に変化させた。
【0070】
これらのフィルタ材料について、厚さ方向におけるクリープ性を、ISO534:2011に従って測定した。ここで、フィルタ材料の5つの層を重ねて、ISO534:2011に準拠した測定を開始した。5つの層の厚さに関する最初の測定値(d0)記録し、5つの層の厚さに関するさらなる値(d20)を、最初の値の20秒後に記録した。厚さ方向におけるクリープ性Cを、これらから以下の式に従って求めた。
【0071】
【0072】
測定を3つのフィルタ材料の各々について3回繰り返した。また、単一の層の厚さdを、ISO534:2011に準拠して10個の測定値の平均から求めた。
【0073】
結果を表1に示す。dは、単一の層の厚さであり、d0は測定開始時の5つの層の厚さであり、d20は測定開始から20秒後の5つの層の厚さであり、Cはクリープ性である。
【0074】
【0075】
図1の値は、クリープ性の測定が良好な再現性を示し、信頼性の高い測定方法であることを示している。また、フィルタ材料のクリープ性は、水ジェットの圧力が低いほど高くなることが注目される。
【0076】
比較例Z
本発明によらないフィルタ材料を製造するために、例示的実施形態A~Cと同一の繊維混合物を使用した。しかし、ステップBにおいて、1列のみの水ジェット、および比較例Cよりも低い圧力を選択した。一方で、坪量は25g/m2のままとした。
【0077】
本発明によらないフィルタ材料Zに対して、本発明によるフィルタ材料A~Cと同様に測定を実施した。結果を表2に示す。記号は表1と同一である。
【0078】
【0079】
本発明によらないフィルタ材料について選択した少ない水ジェットの個数、および低い非常に一般的な水ジェットの圧力は、本発明による例示的実施形態A~Cよりも、厚さ方向における実質的に高いクリープ性をもたらすことが分かる。
【0080】
さらに、単一の層の厚さも、例示的実施形態A、B、C、Zの順に、水ジェットの圧力が低下するにつれて減少していることが分かる。これは、本発明による例示的実施形態A~Cでは、比較例Zよりも、繊維が厚さ方向に配置されている割合が高いことを示している。
【0081】
セグメントおよび喫煙具の製造
紙で巻いた、長さ100mm、直径7.85mmを有するフィルタロッドを、実施形態A~Cおよび比較例Zの各フィルタ材料から製造した。ここでは、フィルタ材料のウェブの幅およびフィルタの製造時の機械設定は、420±10mmWGの吸引抵抗が得られるように選択した。20mmの長さを有するセグメントを、フィルタロッドから切り出して、これから83mmの長さを有する、フィルタ通気なしのアメリカンブレンドたばこを作製した。たばこの平均重量は、925.8mgであった。
【0082】
たばこをISO3308:2012に規定されたプロセスに従って喫煙し、たばこ1本当たりのニコチンを含まない乾燥粒子状物質の量を求めた。たばこのフィルタセグメントを除去し、各フィルタセグメント中のニコチンを含まない乾燥粒子状物質の量も求めた。そして、これらからフィルタリング効率を百分率で計算した。フィルタリング効率は、フィルタセグメントに流入したニコチンを含まない乾燥粒子状物質のうちどれくらいの割合が保持されたかを示す。したがって、フィルタ材料の特性の他に、フィルタリング効率は、フィルタセグメントの長さおよび直径にも依存する。
【0083】
フィルタロッドの硬度を、Borgwaldt KC社製のDD60A測定器を用いて測定した。ここで、フィルタロッドに試験体により所定の力で負荷をかけ、変形を測定して、変形していない状態に対する百分率で表す。
【0084】
フィルタロッドの吸引抵抗(PD)、ニコチンを含まない乾燥粒子状物質に対するフィルタリング効率(FE)、およびフィルタセグメントの硬度(HD)を、本発明による例示的実施形態A~Cおよび比較例Zについて表3に示す。
【0085】
【0086】
表3から、本発明によるフィルタ材料A~C製のセグメントも、本発明によらないフィルタ材料Z製のセグメントも、同様の吸引抵抗、フィルタリング効率、および硬度を有するため、本発明によるセグメントは、喫煙具用のセグメントに対する通常の要件を容易に満たし得ることが分かる。
【0087】
特に、通常短時間に高荷重で測定されるセグメントの硬度について、実質的に差が見られない。しかしながら、このセグメントから製造した喫煙具を実験的に喫煙したところ、消費者が喫煙具を指で挟んで長時間保持した場合、フィルタセグメントがどの程度変形するかに関して知覚可能な差が認められた。この主観的評価において、本発明によるフィルタ材料およびこれから製造したセグメントは、顕著な利点を呈する。
【0088】
したがって、本発明によるフィルタ材料から、以下のようなセグメントを製造することができることが分かる。すなわち、本発明によるフィルタ材料製のセグメントは、吸引抵抗、フィルタリング効率、および硬度に関する特性は一般的なセグメントに匹敵するが、クリープ性に関してさらなる利点を有するため、紙製のフィルタ材料よりも酢酸セルロース製のセグメントに全体的に近い。生分解性については、本発明によるフィルタ材料およびこれから製造したセグメントは、酢酸セルロース製の一般的なセグメントよりもさらに優れている。
【国際調査報告】