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特表2024-524019直接還元プロセスにおける水素ガスのリサイクル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】直接還元プロセスにおける水素ガスのリサイクル
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/02 20060101AFI20240628BHJP
   F27B 1/26 20060101ALI20240628BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C21B13/02
F27B1/26
F27D19/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574874
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 SE2022050607
(87)【国際公開番号】W WO2022271065
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】2150805-6
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522429011
【氏名又は名称】ハイブリット ディベロップメント アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マリン,ライモン ペレア
(72)【発明者】
【氏名】モフセニ-モーナー,ファルザード
(72)【発明者】
【氏名】ファヤジ,ジャヴァード
【テーマコード(参考)】
4K012
4K045
4K056
【Fターム(参考)】
4K012DC03
4K012DC06
4K012DC10
4K045AA01
4K045BA02
4K045DA05
4K045DA06
4K045GB12
4K056AA01
4K056BA01
4K056BB10
4K056CA02
4K056FA02
4K056FA11
(57)【要約】
スポンジ鉄を生成するためのシステムであって、システムは、鉄鉱石を直接還元シャフト(201)に導入するための第1の入口(202)と、シャフト(201)からスポンジ鉄を除去するための第1の出口(203)とを含むシャフト(201)と、ガスライン(207)を通ってシャフト(201)と接続された還元ガス源(206)と、前記ガスライン(207)内に提供された第1の圧縮機(208)と、炉頂ガスの少なくとも一部を、それを通って導通させるための一次回路(209)であって、前記一次回路(209)は、一端でシャフト(201)と接続され、別の端部で前記第1の圧縮機(208)の下流で前記ガスライン(207)と接合される、一次回路(209)と、一次回路(209)を通って導通されたガスから除去されたガスの少なくとも一部を導通するための二次回路(210)であって、前記二次回路(210)は、一端で一次回路(209)に接続され、別の端部で前記第1の圧縮機(208)の上流で前記ガスライン(207)に接続され、二次回路(210)を通って導通されたガスの前記一部の圧力を低減するために、その中に手段(211)を含む、二次回路(210)と、二次回路(210)の中に入るガスの前記一部の流れを制御するための第1の弁(212)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石からスポンジ鉄を生成するためのプロセスであって、
鉄鉱石を直接還元シャフト(201)の中に装填するステップと、
前記鉄鉱石を還元し、スポンジ鉄を生成するために、還元ガス源(206)から水素リッチ還元ガスを前記直接還元シャフト(201)の中に導入するステップと、
前記直接還元シャフト(201)から炉頂ガスを除去するステップであって、前記炉頂ガスは未反応水素ガスを含む、除去するステップと、
一次回路(209)内に前記除去された炉頂ガスの少なくとも一部を導通するステップ、及び前記還元ガス源(206)から前記直接還元シャフト(201)に導くガスライン(207)内に提供された第1の圧縮機(208)の下流の点で、前記一部を前記還元ガス源(206)からの還元ガスと混合するステップ、及び前記混合物を前記直接還元シャフト(201)の中に導入するステップと、
前記一次回路(209)からその中に導通された前記ガスの一部を除去するステップ、及び二次回路(210)を通してガスの前記一部を導通するステップである一方で、ガスの前記一部の圧力を減らすステップ、及び前記第1の圧縮機(208)の上流の前記ガスライン(207)内の点で前記還元ガス源(206)からの還元ガスとガスの前記一部とを混合するステップとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記ガスライン(207)を通り、前記直接還元シャフト(201)の中に入るガス流量が測定され、前記還元ガス源(206)から前記ガスライン(207)の中に入る還元ガス流は、前記ガスライン(207)内で測定された前記ガス流量に基づいて制御される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記一次回路(209)から前記二次回路(210)へのガスの前記一部の前記除去は、前記一次回路(209)内の前記ガス圧力に依存する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記一次回路(209)内の前記ガス圧力を測定する前記ステップ、及び前記測定された圧力が所定の第1のレベル以上であることへの応答として、前記一次回路(209)から前記二次回路(210)の中にガスの前記一部を導通させる前記ステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記一次回路(209)内の前記圧力は、前記所定の第1のレベルを超えないために、前記二次回路(210)へのガスの前記一部の除去によって調節される、請求項3又は4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記一次回路(209)は、ガスの前記一部が前記二次回路(210)に除去される、前記一次回路(209)に沿った点の下流に提供された第2の圧縮機(218)を含み、前記ガス圧力の前記測定は、前記第2の圧縮機(218)の上流で行われる、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記二次回路(210)内の前記ガス圧力は、前記第1の圧縮機(208)の上流の前記ガスライン(207)内のガス圧力レベルを超える所定の第2のレベルに低減される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記炉頂ガスは、前記炉頂ガスが前記直接還元シャフト(201)から除去される点と、ガスの前記一部が前記二次回路(210)の中に導通される前記点との間の、前記第1の一次回路(209)に沿った点でガス処理ステップを受ける、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記処理ステップは、前記一次回路(209)を通って導通される前記炉頂ガスの前記一部からの不活性ガスの分離を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記処理ステップは、前記一次回路(209)を通して導通される前記炉頂ガスの前記一部から水を分離することを含む、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記処理ステップは、熱交換器内の前記炉頂ガスの前記温度を低減すること、及び前記プロセス内で使用される別のガスを加熱するために、前記炉頂ガスからの前記熱を使用することを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記他のガスは、前記ガスライン(207)を介して前記直接還元シャフト(201)の中に導入される還元ガスである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
スポンジ鉄を生産するためのシステムであって、
直接還元シャフト(201)であって、
鉄鉱石を前記シャフト(201)の中に導入するための第1の入口(202)と、
前記シャフト(201)からスポンジ鉄を除去するための第1の出口(203)と、
還元ガスを前記シャフト(201)の中に導入するための第2の入口(204)と、
前記シャフト(201)から炉頂ガスを除去するための第2の出口(205)と、を含む、直接還元シャフト(201)と、
ガスライン(207)を通して前記還元ガス入口(204)と接続された還元ガス源(206)と、
前記ガスライン(207)内に提供された第1の圧縮機(208)と、
前記炉頂ガスの少なくとも一部を、それを通して導通するための一次回路(209)であって、前記一次回路(209)は、一端で前記第2の出口(205)と接続され、別の端部で前記第1の圧縮機(208)の下流の前記ガスライン(207)と接続される、一次回路(209)と、
前記一次回路(209)を通って導通されたガスから除去されたガスの少なくとも一部を導通するための二次回路(210)であって、前記二次回路(210)は、一端で前記一次回路(209)に接続され、別の端部で前記第1の圧縮機(208)の上流の前記ガスライン(207)に接続され、前記二次回路(210)を通って導通されたガスの前記一部の前記圧力を低減するためにその中に手段(211)を含む、二次回路(210)と、
前記二次回路(210)の中に入るガスの前記一部の流れを制御するための第1の弁(212)とを含む、システム。
【請求項14】
前記ガスライン(207)内の前記ガス流量に基づいて、前記還元ガス源(206)から前記ガスライン(207)の中に入る還元ガスの流れを制御するための制御装置を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御装置は、前記還元ガス源(206)から前記ガスライン(207)の中に入る還元ガス流を制御するための第2の弁(213)、前記ガスライン(207)を通るガス流を測定するためのガス流量計(214)、及び前記ガス流量計(214)からの入力に基づいて、前記第2の弁(213)を制御するように構成された制御ユニット(215)を含む、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の弁(212)は、前記一次回路(209)内の前記ガス圧力が所定のレベルを超えることへの応答として、前記二次回路(210)の中にガスを通過させるために開くように構成される、請求項13~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の弁(212)は制御可能弁であり、前記システムは、前記一次回路(209)内に配置された圧力センサ(217)、及び前記圧力センサ(217)から受領した入力に基づいて、前記制御可能な第1の弁(212)を制御するように構成された制御ユニット(215)を更に含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記一次回路(209)は、前記二次回路(210)が前記一次回路(209)に接続される、前記一次回路(209)に沿った点の下流に提供された第2の圧縮機(218)を含み、前記圧力センサ(217)は、前記第2の圧縮機(218)の上流に位置付けられる、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記一次回路(209)は、前記炉頂ガスを処理するためのデバイス(219)を含み、前記デバイス(219)は、前記一次回路(209)を通って導通される前記炉頂ガスの前記一部から不活性ガスを分離するためのデバイスを含む、請求項13~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記一次回路(209)は、前記炉頂ガスを処理するためのデバイス(219)を含み、前記デバイスは、前記一次回路(209)を通って導通される前記炉頂ガスの前記一部から水を分離するためのデバイスを含む、請求項13~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記一次回路(209)は、前記炉頂ガスを処理するためのデバイス(219)を含み、前記デバイス(219)は熱交換器を含む、請求項13~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記熱交換器は、前記ガスライン(207)にも接続され、前記炉頂ガスからの熱を前記直接還元シャフト(201)の中に導入される前記還元ガスに伝達するように構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記還元ガス源(206)は水電解ユニットを含む、請求項13~22のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、鉄鉱石からスポンジ鉄を生成するためのプロセスに関する。本開示は、更にスポンジ鉄を生成するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
鋼は、世界の最も重要な土木建築材料である。鋼を含有しない、又はその製造及び/又は輸送のために鋼に依存しない、いかなる物体も現代世界で見出すことは困難である。このように、鋼は、我々の現代生活のほとんど全ての側面に複雑に関与している。
【0003】
2018年に、粗鋼の全世界の生成は、あらゆる他の金属をはるかに超えて、1,810,000,000トンであった。2050年には、2,800,000,000トンに達すると予期され、その50%は、バージン鉄源に由来すると予期される。鋼は、一次エネルギー源として電気を使用して、再溶融後に何度も使用できる金属の性能に起因して、非常に高いリサイクルグレードを備えた世界の最もリサイクルされる材料でもある。
【0004】
このように鋼は、将来更に大きい役割を果たす現代社会の礎石である。
【0005】
鋼は、主に3つの経路を介して生成される、すなわち
i)溶鉱炉(BF)(blast furnace)内でバージン鉄鉱石を使用する一貫生成であり、溶鉱炉内では、鉱石内の酸化鉄が鉄を生成するために炭素によって還元される。鉄は、塩基性酸素転炉(BOF)(basic oxygen furnace)内に酸素を吹き込み、次いで鋼を生成するために精製することにより、鉄鋼プラントで更に処理される。このプロセスは、一般に「酸素製鋼」とも呼ばれる。
ii)リサイクルされた鋼を使用するスクラップベースの生成であり、リサイクルされた鋼は、エネルギーの一次源として電気を使用する電気アーク炉(EAF)(electric arc furnace)内で溶解される。このプロセスは、一般に「電気製鋼」とも呼ばれる。
iii)バージン鉄鉱石に基づいた直接還元生成であり、バージン鉄鉱石は、スポンジ鉄を生成するために炭素質還元ガス(carbonaceous reduction gas)で直接還元(DR)(direct reduction)プロセスにおいて還元される。スポンジ鉄は、続いて鋼を生成するためにEAF内でスクラップと一緒に溶解される。
【0006】
用語粗鉄は、溶鉱炉(すなわち銑鉄)又は直接還元シャフト(すなわちスポンジ鉄)から獲得されるかどうかにかかわらず、鋼に更に加工するために生成される全ての鉄を示すために本明細書で使用される。
【0007】
上に言及されたプロセスは、数十年にわたって改良され、理論上最低のエネルギー消費に近づいているが、まだ解決されていない基本的な課題が1つある。炭素質還元剤を使用する鉄鉱石の還元により、副産物としてCOが発生する。2018年に生成された鋼1トン当たり、平均1.83トンのCOを生成した。鉄鋼産業は、最も多くCOを放出する産業の1つであり、世界のCO放出の約7%を占める。過度のCO発生は、炭素質還元剤が使用される限り、鋼生成プロセスにおいて回避できない。
【0008】
この課題に対処するためにHYBRITイニシアチブが設立された。水素による画期的な製鉄技術、略してHYBRIT(HYdrogen BReakthrough Ironmaking Technology)は、スウェーデンエネルギー庁が一部を出資した、SSAB、LKAB及びVattenfall間の合弁事業であり、CO放出の削減及び鉄鋼産業の脱炭素化を目指す。
【0009】
HYBRITの概念の中心は、バージン鉄鉱石からの直接還元によるスポンジ鉄の生成である。しかし現在の商業的な直接還元プロセスのように、天然ガスなどの炭素質還元性ガス(carbonaceous reductant gas)を使用する代わりに、HYBRITは、還元剤として水素ガスを使用することを提案し、水素直接還元(H-DR)(hydrogen direct reduction)と呼ばれる。水素ガスは、例えばスウェーデンの電力生産の場合のように、主に化石のない及び/又は再生可能な一次エネルギー源を使用して、水の電解によって生成され得る。こうして鉄鉱石を還元する重要なステップは、化石燃料を投入する必要がなく、COの代わりに副産物としての水で達成し得る。
【0010】
先行技術は、ほとんどが天然ガスから構成される還元ガスを使用する。直接還元プラントは、通常は還元が起きるシャフトを含む。シャフトは、鉄鉱石ペレットが導入される上部に入口、及びスポンジ鉄がシャフトから除去される底部に出口を有する。還元ガスをシャフトの中に導入するためにシャフトの下部に少なくとも1つの入口、及び炉頂ガスの出口のためにシャフトの上部に少なくとも1つの出口も存在する。炉頂ガスの大部分は、未反応還元ガスから構成され、恐らく鉄鉱石ペレット及びスポンジ鉄のそれぞれのための入口並びに出口を封止するために使用される不活性ガスと混合される。炉頂ガスを扱う従来の方法は、後者のフレアリングである。
【0011】
しかしながら、主に水素を、又は水素のみを還元ガスとして使用する時、天然ガスに比べて、水素ガスの生成は、相当量のエネルギーを必要とするので、フレアリングは、エネルギー効率の観点からあまり魅力的な選択肢ではない。更に炉頂ガスが窒素ガス(通常シールガスとして使用される)を含む場合、フレアリングによりNOも放出し、これは環境の観点から好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って還元ガスとして主として又は専ら水素ガスを使用する、スポンジ鉄への鉄鉱石の直接還元のためのプロセス及びシステムを提示することが本発明の一目的であり、炉頂ガスの一部として直接還元シャフトから出る未反応水素ガスを効率的にリサイクルするための手段が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明の目的は、鉄鉱石からスポンジ鉄を生成するためのプロセスによって達成され、プロセスは、
鉄鉱石を直接還元シャフトの中に装填するステップと、
鉄鉱石を還元し、スポンジ鉄を生成するために、還元ガス源から水素リッチ還元ガスを直接還元シャフトの中に導入するステップと、
直接還元シャフトから炉頂ガスを除去するステップであって、前記炉頂ガスは未反応水素ガスを含む、除去するステップと、
除去された炉頂ガスの少なくとも一部を一次回路内に導通するステップ、及び還元ガス源から直接還元シャフトに導くガスライン内に提供された第1の圧縮機の下流の点で、前記一部を還元ガス源からの還元ガスと混合するステップ、及び混合物を直接還元シャフトの中に導入するステップと、
前記一次回路からその中に導通されたガスの一部を除去するステップ、及び二次回路を通してガスの前記一部を導通するステップである一方で、ガスの前記一部の圧力を減らすステップ、及び前記第1の圧縮機の上流の前記ガスライン内の点で還元ガス源からの還元ガスとガスの前記一部を混合するステップとを含む。
【0014】
二次回路の中へのガスの一部の除去は、通常、一次回路内の圧力が所定のレベルを超えることに応答して行われる。水素が消失せず、又は例えば暖房燃料などとして浪費されず、代わりにブリードオフされた水素(bled-off hydrogen)のほとんどは回収され、還元ガスとして再利用される。これは、そのようなプロセスの作動コストを下げる。その上、ブリードオフされた水素のほとんどはもはや燃焼しないので、過剰なNOの放出の危険は、大幅に減少され又は全体的に回避される。換言すると、二次回路は、システムから高額の水素ガスを含有する過剰の炉頂ガスをフレアリングすることなく、一次回路内の圧力を制御することが可能になる。二次回路はバッファとして機能し、還元ガス源からガスラインの中に導通される還元ガスの量を低減することが可能になる。一実施形態によれば、乾燥条件下で、直接還元シャフトの中に導入された還元ガスは、70vol%を超える水素を含む。一実施形態によれば、シャフトの中に導入された還元ガスは、80vol%を超える水素を含み、別の実施形態によれば、還元ガスは、90vol%を超える水素を含む。
【0015】
作動中に炉頂ガスの量が増加し、それによって一次回路内の圧力が増加する場合、一次回路内の過剰水素ガスは、二次回路の中に除去される。それに応じて、一次回路内の圧力は、第1の圧縮機の下流の圧力に対して高過ぎないように制御される。一次回路内の過剰な水素ガスは、こうして二次回路を通って還元ガスラインに導通されて戻るので、一次回路内の過剰水素ガスを排気すること又はフレアリングすることは防止され得る。二次回路内の圧力の低減は、好ましくは膨張弁又は減圧弁などの適切な弁を用いて達成される。減圧弁が適用される場合、電力は、好ましくは減圧弁の運動から発生され、好ましくは水素ガスを生成するために使用される。
【0016】
一実施形態によれば、前記第1の圧縮機は、前記ガスライン内の最終圧縮機段階であり、ガスライン内の還元ガス源からの還元ガスの圧力を、直接還元シャフトに入る前にその最終圧力にする。
【0017】
一実施形態によれば、ガスラインを通り、直接還元シャフトの中に入るガス流量が測定され、還元ガス源からガスラインの中に入る還元ガス流は、ガスライン内で測定されたガス流量に基づいて制御される。ガスラインを通り、直接還元シャフトの中に入る還元ガスの全流量は、シャフトの中に導入され、シャフト内に存在する鉄鉱石の量に依存する。還元ガス流量が低過ぎる場合、直接還元シャフト内の鉄鉱石の完全な還元は達成されず、シャフト内の温度は下がる。流量が高過ぎる場合、過剰圧力は直接還元シャフト内に現れる。一実施形態によれば、シャフト内の温度が測定され、シャフトの中に入る直接還元ガス流量(一次回路、二次回路からのガス、及び還元ガス源からのガスを含む)は、それに基づいて制御される。一実施形態によれば、直接還元シャフト内又は一次回路内の圧力が測定され、直接還元シャフトの中に入る還元ガス流量は、それに基づいて制御される。一実施形態によれば、還元ガス源は、水素ガスを生成するために少なくとも1つの電解装置を含む。一実施形態によれば、電解装置の出力は、直接還元シャフト内の温度及び圧力に基づいて還元ガス流量を制御するための手段として制御される。
【0018】
一実施形態によれば、一次回路から二次回路に入るガスの前記一部の除去は、一次回路内のガス圧力に依存する。
【0019】
一実施形態によれば、プロセスは、一次回路内のガス圧力を測定するステップ、及び測定された圧力が所定の第1のレベル以上であることへの応答として、一次回路から二次回路の中にガスの前記一部を導通させるステップを更に含む。圧力センサ、制御可能弁、及び圧力センサからの情報に基づいて制御可能弁を制御するための制御ユニットがこうして使用される。代替実施形態では、逃し弁は、一次回路内の圧力が所定の第1のレベルを超えることへの応答として、二次回路の中に炉頂ガスの前記一部をブリードオフするために使用される。一次回路内の圧力と無関係に、二次回路の中に炉頂ガスの恒久的なブリードオフのために提供されてもよい。
【0020】
一実施形態によれば、一次回路内の圧力は、前記所定の第1のレベルを超えないために、二次回路へのガスの前記一部の除去によって調節される。圧力レベルが前記所定のレベルに到達するとすぐに、それによって一次回路内から二次回路の中に入るガス流が制御される制御弁は、一次回路内の圧力が更に上昇しない程度に開かれる。
【0021】
一実施形態によれば、一次回路は、ガスの前記一部が二次回路に除去される、一次回路に沿った点の下流に提供された第2の圧縮機を含み、ガス圧力の前記測定は、前記第2の圧縮機の上流で行われる。第2の圧縮機は、一次回路内のガスが前記ガスラインの中に流れ、前記ガスライン内の還元ガスと混合できるために、第1の圧縮機の下流のレベルを超えるレベルにガス圧力を増加させるために必要である。
【0022】
一実施形態によれば、二次回路内のガス圧力は、前記第1の圧縮機の上流で前記ガスライン内のガス圧力レベルを超える所定の第2のレベルに低減される。所定の第2のレベルは、第1の圧縮機の上流でガスライン内の圧力よりわずかに高くあるべきである。膨張弁又は減圧弁は、二次回路内を減圧するために使用されてもよい。一実施形態によれば、前記手段は減圧弁であり、減圧弁は、タービン及びタービンの発生運動を電力に変換するための手段を含む。二次回路内の圧力を低減する更なる必要性のために、二次回路内に通気弁が提供されてもよい。一実施形態によれば、そのような通気弁は、圧力を低減するために使用される膨張弁又は減圧弁の上流、及び一次回路から二次回路の中に入るガス流を制御する制御弁の上流に提供される。通気弁は、逃し弁又は制御ユニットによって制御される作動可能弁であってもよい。
【0023】
一実施形態によれば、炉頂ガスは、炉頂ガスが直接還元シャフトから除去される点と、ガスの前記一部が二次回路の中に導通される点との間の、第1の一次回路に沿った点でガス処理ステップを受ける。
【0024】
一実施形態によれば、前記処理ステップは、一次回路を通って導通される炉頂ガスの前記一部からの不活性ガスの分離を含む。分離のために使用される分離ユニットは、極低温分離ユニット、膜分離ユニット、圧力スイング吸着ユニット、又はアミンCOスクラバ(scrubber)であってもよい。多数の良好に確立されたガス分離手段は、不活性ガス(例えば窒素及び/又は二酸化炭素)から水素を分離するのに適し得る。例えば窒素(-195.8℃)と水素(-252.9℃)の間の沸点の差が大きいことに起因して、極低温分離は適切であり得る。
【0025】
一実施形態によれば、前記処理ステップは、一次回路を通して導通される炉頂ガスの前記一部から水を分離することを含む。好ましくは、処理ステップは、炉頂ガスからの塵の除去も含む。
【0026】
一実施形態によれば、前記処理ステップは、熱交換器内の炉頂ガスの温度を低減すること、及び前記プロセス内で使用される別のガスを加熱するために、炉頂ガスからの前記熱を使用することを含む。
【0027】
一実施形態によれば、前記他のガスは、前記ガスラインを介して直接還元シャフトの中に導入される還元ガスである。
【0028】
本発明の目的は、スポンジ鉄を生成するためのシステムも用いて達成され、システムは、
直接還元シャフトであって、
鉄鉱石をシャフトの中に導入するための第1の入口と、
シャフトからスポンジ鉄を除去するための第1の出口と、
還元ガスをシャフトの中に導入するための第2の入口と、
シャフトから炉頂ガスを除去するための第2の出口とを含む、直接還元シャフトと、
ガスラインを通して還元ガス入口と接続された還元ガス源と、
前記ガスライン内に提供された第1の圧縮機と、
炉頂ガスの少なくとも一部を、それを通して導通するための一次回路であって、前記一次回路は、一端で第2の出口と接続され、別の端部で前記第1の圧縮機の下流の前記ガスラインと接続される、一次回路と、
一次回路を通って導通されたガスから除去されたガスの少なくとも一部を導通するための二次回路であって、前記二次回路は、一端で一次回路に接続され、別の端部で前記第1の圧縮機の上流の前記ガスラインに接続され、二次回路を通って導通されたガスの前記一部の圧力を低減するためにその中に手段を含む、二次回路と、
二次回路の中に入るガスの前記一部の流れを制御するための第1の弁とを含む。
【0029】
一実施形態によれば、圧力を低減するための手段は、膨張弁又は減圧弁を含む。一実施形態によれば、前記手段は減圧弁であり、減圧弁は、タービン及びタービンの発生運動を電力に変換するための手段を含む。
【0030】
一実施形態によれば、システムは、ガスライン内のガス流量に基づいて、還元ガス源からガスラインの中に入る還元ガス流を制御するための制御装置を含む。ガスライン内の測定されたガス流量は、還元ガス源(メークアップガスと呼ぶこともできる)からの還元ガス、並びに一次回路及び二次回路からそれに追加されたガスの合計である。従って、測定は、一次回路がガスラインに接続された点の下流の単一測定、又はガスライン、一次回路及び二次回路内のガス流測定の組合せから構成されてもよい。
【0031】
一実施形態によれば、前記制御装置は、還元ガス源からガスラインの中に入る還元ガス流を制御するための第2の弁、ガスラインを通るガス流を測定するためのガス流量計、及びガス流量計からの入力に基づいて、前記第2の弁を制御するように構成された制御ユニットを含む。
【0032】
一実施形態によれば、前記第1の弁は、一次回路内のガス圧力が所定のレベルを超えることへの応答として、二次回路の中にガスを通過させるために開くように構成される。
【0033】
一実施形態によれば、前記第1の弁は制御可能弁であり、システムは、一次回路内に配置された圧力センサ、及び圧力センサから受領した入力に基づいて、前記制御可能な第1の弁を制御するように構成された制御ユニットを更に含む。
【0034】
一実施形態によれば、一次回路は、二次回路が一次回路に接続される、一次回路に沿った点の下流に提供された第2の圧縮機を含み、圧力センサは、前記第2の圧縮機の上流に位置付けられる。
【0035】
一実施形態によれば、一次回路は、炉頂ガスを処理するためのデバイスを含み、前記デバイスは、一次回路を通って導通される炉頂ガスの前記一部から不活性ガスを分離するためのデバイスを含む。
【0036】
一実施形態によれば、一次回路は、炉頂ガスを処理するためのデバイスを含み、前記デバイスは、一次回路を通って導通される炉頂ガスの前記一部から水を分離するためのデバイスを含む。炉頂ガスを処理するためのデバイスは、好ましくは炉頂ガスから炉頂ガスを除去するためのデバイスも含む。
【0037】
一実施形態によれば、一次回路は、炉頂ガスを処理するためのデバイスを含み、前記デバイスは熱交換器を含む。
【0038】
一実施形態によれば、熱交換器は、前記ガスラインにも接続され、炉頂ガスからの熱を直接還元シャフトの中に導入される還元ガスに伝達するように構成される。
【0039】
一実施形態によれば、還元ガス源は水電解ユニットを含む。
【0040】
本発明の更なる目的、利点及び新規の特徴は、以下の詳述から当業者に明らかになる。
【0041】
図面の簡単な説明
本発明並びにその更なる目的及び利点をより完全に理解するために、以下に提示された詳述は、添付図面と共に読むべきであり、同じ参照記号は様々な図における類似品目を示す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】HYBRITの概念による鉄鉱石ベースの製鉄バリューチェーンを概略的に示す。
図2】本明細書に開示されたように、プロセスを行うのに適切なシステムの例示実施形態を概略的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
定義
還元ガスは、鉄鉱石を金属鉄に還元することができるガスである。従来の直接還元プロセスにおける還元成分は、典型的には水素及び一酸化炭素であるが、本開示のプロセスでは、還元成分は、主として又は専ら水素である。還元ガスは、直接還元シャフトの鉄鉱石の入口より低い点で導入され、鉄鉱石を還元するために、鉄鉱石の移動層と反対に上方に流れる。
【0044】
炉頂ガスは、鉄鉱石の入口付近で、直接還元シャフトの上端から除去されるプロセスガスである。炉頂ガスは、典型的には還元成分(例えばH2O)の酸化生成物を含む、一部が使用済みの還元ガスと、例えばシールガルのようなプロセスガスに導入された不活性成分の混合物を含む。処理後、炉頂ガスは、還元ガスの成分として直接還元シャフトに戻ってリサイクルされてもよい。
【0045】
浸炭(carburization)プロセスガス内での不活性成分の蓄積を防ぐために、使用済み浸炭ガスから除去されたブリードオフ流は、浸炭ブリードオフ流と呼ばれる。
【0046】
還元ガス源からのガスは、メークアップガスと呼ばれることがある。本出願の文脈で、メークアップガスは、直接還元シャフトの中に再導入される前に、リサイクルされた炉頂ガスに追加される。こうして還元ガスは、典型的にはリサイクルされた炉頂ガスと共にメークアップガスを含む。
【0047】
シールガスは、直接還元(DR)(direct reduction)シャフトの入口で鉱石充填装置から直接還元シャフトに入るガスである。直接還元シャフトの出口端部もシールガスを使用して封止されてもよく、従ってシールガスは、直接還元シャフトの出口で排出装置からDRシャフトに入ってもよい。シールガスは、典型的には爆発性ガス混合物がシャフトの入口及び出口で形成されるのを回避するための不活性ガスである。不活性ガスは、潜在的に空気若しくはプロセスガスのいずれかと可燃性又は爆発性の混合物を形成しないガス、すなわちプロセスで一般的な条件下で燃焼反応において酸化剤又は燃料として作用しないことがあるガスである。シールガスは、基本的に窒素及び/又は二酸化炭素から構成されてもよい。二酸化炭素は本明細書では不活性ガスと呼ばれているが、システムで一般的な条件下では、水性ガスシフト反応で水素と反応して、一酸化炭素及び水蒸気を提供する可能性があることに留意されたい。
【0048】
還元
直接還元シャフトは、当技術分野で一般に知られているあらゆる種類からなってもよい。シャフトとは、固体-気体向流移動層反応器(solid-gas countercurrent moving bed reactor)を意味し、それによって鉄鉱石装入物は、反応器の頂部における入口で導入され、反応器の底部に配置された出口に向かって重力によって下がる。還元ガスは、反応器の入口より低い点で導入され、鉱石を金属化した鉄に還元するために鉱石の移動層と反対に上方に流れる。還元は、典型的には約900℃~約1100℃の温度で行われる。求められる温度は、例えば電気予熱器などの予熱器を使用して、典型的には反応器の中に導入されたプロセスガスを予熱することによって維持される。ガスの更なる加熱は、予熱器から出た後、酸素又は空気によるガスの発熱性部分酸化によって反応器の中に導入する前に獲得されることがある。還元は、DRシャフト内で約1バール~約10バール、好ましくは約3バール~約8バールの圧力で行われてもよい。反応器は、スポンジ鉄が出口から排出される前に冷却することができるために、底部に配置された冷却及び排出コーンを有してもよい。
【0049】
鉄鉱石装入物は、典型的には主に鉄鉱石ペレットから構成されるが、いくらかの塊の鉄鉱石も導入されることがある。鉄鉱石ペレットは、典型的には更なる添加剤又は不純物、例えば脈石、融剤及び接合剤などと共にほとんどの赤鉄鋼を含む。しかしペレットは、何らかの他の金属及び他の鉱石、例えば磁鉄鉱を含んでもよい。直接還元プロセスに指定された鉄鉱石ペレットは市販されており、そのようなペレットが本プロセスで使用されてもよい。別法として、ペレットは、本プロセスのように水素リッチ還元ステップに特に適合することがある。
【0050】
還元ガスは水素リッチである。還元ガスとは、新鮮なメークアップガスと直接還元シャフトの中に導入される炉頂ガスのリサイクルされた部分の合計を意味する。水素リッチとは、直接還元シャフトに入る還元ガスが、70vol%超の水素ガス、例えば80vol%超の水素ガス、又は90vol%超の水素ガス(1atm及び0℃の標準状態で決定されたvol%)から構成されてもよいことを意味する。好ましくは、還元は別個の段階として行われる。つまり浸炭は全く行われず、又は浸炭が行われる場合、還元と別個に、すなわち別個の反応器で、若しくは直接還元シャフトの別個の個別領域で行われる。これにより、炭素質成分を除去する必要性、及びそのような除去に関連した出費を回避するので、炉頂ガスの処置が大幅に単純になる。そのような場合、メークアップガスは、本質的に水素ガスから構成され、又は水素ガスから構成されてもよい。メークアップガスが専ら水素であっても、ある量の炭素含有ガスが、還元ガス内に存在することがあることに留意されたい。例えば直接還元シャフトのスポンジ鉄の出口が、浸炭反応器の入口に連結される場合、比較的少量の炭素含有ガスが、浸炭反応器から直接還元シャフトの中に意図せず浸透することがある。別の例として、鉄鉱石ペレット内に存在する炭素塩は揮発し、DRシャフトの炉頂ガス内にCOとして現れることがあり、多量のCOがDRシャフトに戻ってリサイクルされることがある。還元ガス回路内に水素ガスが圧倒的であることに起因して、存在するあらゆるCOは、逆水性ガスシフト反応によってCOに変換されることがある。
【0051】
場合によっては、単一段階として還元を行うことと併せて、ある程度の浸炭を獲得することが望ましいことがある。そのような場合、還元ガスは、約30vol%までの炭素含有ガス、例えば約20vol%まで、又は約10vol%まで(1atm及び0℃の標準状態で決定された)含んでもよい。適切な炭素含有ガスは、浸炭ガスとして以下に開示されている。
【0052】
水素ガスは、好ましくは水の電解により少なくとも一部が獲得されてもよい。水の電解は、再生可能エネルギーを使用して行われ、次いでこれにより、再生可能な源から還元ガスを提供できる。電解水素は、直接電解機からDRシャフトへの導管によって搬送されてもよく、又は水素は、生成時に貯蔵され、必要に応じてDRシャフトに搬送されてもよい。
【0053】
炉頂ガスは、直接還元シャフトから出ると、典型的には未反応水素、水(水素の酸化生成物)、及び不活性ガスを含む。浸炭が還元と共に行われる場合、炉頂ガスは、いくらかの炭素質成分、例えばメタン、一酸化炭素及び二酸化炭素も含んでもよい。炉頂ガスは、直接還元シャフトから出ると、まず混入された固体を除去するための除塵、及び/又は炉頂ガスを冷却し、還元ガスを加熱するための熱交換などの調節をされることがある。熱交換中、水は炉頂ガスから濃縮されることがある。好ましくは、この段階の炉頂ガスは、本質的に水素、不活性ガス及び残留水から構成される。しかし炭素質成分が炉頂ガス内に存在する場合、そのような炭素質成分も、炉頂ガスから、例えば再形成及び/又はCO吸収によって除去されてもよい。
【0054】
スポンジ鉄
本明細書に記載されたプロセスのスポンジ鉄生成物は、典型的には直接還元鉄(DRI)(direct reduced iron)と呼ばれる。プロセスパラメータに依存して、高温(HDRI)又は低温(CDRI)として提供されてもよい。低温DRIはタイプ(B)DRIとしても知られていることがある。DRIは、再酸化する傾向があることがあり、場合によっては自然発火性である。しかしながら、DRIを不動態化する多数の公知の手段が存在する。生成物の海外輸送を促進するために一般に使用される1つのそのような不動態化手段は、高温DRIをブリケット(briquette)に押圧することである。そのようなブリケットは、一般にホットブリケット鉄(HBI)(hot briquetted iron)と呼ばれ、タイプ(A)DRIとしても知られていることがある。
【0055】
本明細書におけるプロセスによって獲得されたスポンジ鉄生成物は、本質的に完全に金属化されたスポンジ鉄、すなわち約90%を超える、例えば約94%を超える、又は約96%を超える還元度(DoR)(degree of reduction)を有するスポンジ鉄であってもよい。還元度は、酸化鉄から除去された酸素の量と定義され、酸化鉄内に存在する酸素の初期量の百分率で表される。反応速度論に起因して、約96%を超えるDoRを有するスポンジ鉄を獲得することは、商業的に好ましくないことが多いが、そのようなスポンジ鉄が、必要に応じて生産されてもよい。
【0056】
浸炭が行われる場合、あらゆる所望の炭素含有量を有するスポンジ鉄が、約0~約7重量%で本明細書に記載されたプロセスによって生成されてもよい。しかしながら、スポンジ鉄は、約0.5~約5重量%の炭素、好ましくは約1~約4重量%、例えば約3重量%の炭素含有量を有することが、更なる処理のために典型的に望ましいが、これは、次のEAF処理ステップで使用されるスクラップに対するスポンジ鉄の割合に依存してもよい。
【0057】
実施形態
次に本発明は、ある特定の例示的実施形態及び図面を参照してより詳細に記載される。しかしながら、本発明は、本明細書に論じ及び/又は図面に示された例示的実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲内で変化してもよい。更に図面は、特定の特徴をより明確に例示するために一部の特徴が誇張されることがあるので、一定の縮尺で描かれていると考えてはならない。
【0058】
図1は、HYBRITの概念による鉄鉱石ベースの製鉄バリューチェーンを概略的に例示する。鉄鉱石ベースの製鉄バリューチェーンは、鉄鉱石鉱山101で始まる。採掘後、鉄鉱石103は濃縮され、ペレット製造工場105で処理され、鉄鉱石ペレット107が生成される。これらのペレットは、プロセスで使用されるあらゆる塊鉱と共に、主要還元剤として水素ガス115を使用し、主要副産物として水117aを生成して、直接還元シャフト111における還元によりスポンジ鉄109に変換される。スポンジ鉄109は、任意選択で直接還元シャフト111内又は別個の浸炭反応器(図示せず)内のいずれかで浸炭化されてもよい。水素ガス115は、好ましくは主に化石がない又は再生可能資源122から引き出される電気121を使用して、電解装置119内で水の電解117bによって生成される。水素ガス115は、直接還元シャフト111の中に導入する前に水素貯蔵器120内に貯蔵されてもよい。スポンジ鉄109は、融体127を提供するために、任意選択で一定の割合のスクラップ鉄125又は他の鉄源と共に、電気アーク炉123を使用して溶解される。融体127は、更に下流の二次冶金プロセス129を受け、鋼131が生成される。鉱石から鋼への全バリューチェーンは、化石がなく、炭素排出量がわずかだけである又はゼロであり得ることを意図する。
【0059】
図2は、本明細書に開示されたようにプロセスを行うのに適切なシステムの例示実施形態を概略的に例示する。
【0060】
図2に提示されたシステムは、直接還元(DR)(direct reduction)シャフト201を含む。DRシャフトは、鉄鉱石をDRシャフトの中に導入するための第1の入口202、及びDRシャフトからスポンジ鉄を除去するための第1の出口203を含む。DRシャフト201は、還元ガスをシャフトの中に導入するための複数の第2の入口204、及びDRシャフトから炉頂ガスを除去するための少なくとも1つの第2の出口205を更に含む。第2の入口204は多数であることがあるが、単純化するために、その1つのみが図に示されていることを理解するべきである。
【0061】
システムは、ガスライン207を通って還元ガス入口204と接続された還元ガス源206を更に含む。還元ガス源206は、水素製造ユニット、典型的には水電解ユニットを含む水素製造ユニットを含んでもよい。還元ガス源からの還元ガスは、従って、ほとんど水素ガスのみを含み得る。還元ガス源206からの還元ガスは、1.25バール程度のやや低い圧力を有し、DRシャフト201の中に導入される前に圧縮する必要がある。DRシャフト内の圧力は、DRシャフトの作動中に8~10バールの範囲内になる。従って、システムは、還元ガスの圧力を約8バールに増加させるように構成された、ガスライン207内に提供された第1の圧縮機208を更に含む。単純化するために、1つの圧縮機208のみが図面に示されている。しかしながら、前記圧縮機は、好都合であると考えられる場合、並んだ複数の圧縮機から構成されてもよいことを理解するべきである。
【0062】
システムは、それを通って炉頂ガスの少なくとも一部を導通するための一次回路209を更に含む。一次回路209は、一端で第2のガス出口205と接続され、別の端部で前記第1の圧縮機208の下流の前記ガスライン207と接続される。
【0063】
一次回路209を通って導通されたガスから除去されたガスの少なくとも一部を導通するための二次回路210も提供される。二次回路210は、一端で一次回路209に接続され、別の端部で第1の圧縮機208の上流の前記ガスライン207に接続される。二次回路210は、二次回路210を通って導通されたガスの前記一部の圧力を低減するためにその中に手段211、及び二次回路210の中に入るガスの前記一部の流れを制御するための第1の弁212を更に含む。示された実施形態では、二次回路210内の圧力を低減するための手段211は、減圧弁を含み、減圧弁からエネルギーが、気体から運動に伝達され、更に電力に伝達され、電力は、水素ガス源206内の電解装置の作動などのために、システムの中でリサイクルされることがある。二次回路210内に通気弁221も提供され、通気弁221は、好ましくは緊急の場合、例えば減圧弁が機能を停止し、二次回路210内に上昇した圧力が存在する場合、ガスを通気するために使用される逃し弁である。二次回路210の通気を制御するために更なる制御可能弁(図示せず)も提供されてもよい。
【0064】
二次回路210は、システムからの高額の水素ガスを含有する過剰な炉頂ガスをフレアリングすることなく、一次回路209内の圧力を制御することが可能になる。二次回路210はバッファとして機能し、還元ガス源からガスライン207の中に導通された還元ガスの量を低減することが可能になる。
【0065】
システムは、還元ガス源からガスライン207の中に入る還元ガス流を制御するための制御装置を更に含む。還元ガス源206が水加水電解装置を含む場合、そのような制御システムは、水加水電解装置の出力を制御するように構成された制御ユニット215を含む。還元ガス源206が、水素ガス貯蔵器又はそこから水素ガスが取られる水素ガスパイプラインを含む場合、制御装置は、還元ガス源206からガスライン207の中に入る還元ガス流を制御するための第2の弁213を含む。どちらの場合も、システムは、ガスライン207を通るガス流を測定するためのガス流量計214、及び水加水電解装置を制御するように、又はガス流量計214からの入力に基づいて前記第2の弁213を制御するように構成された制御ユニット215を含むべきである。ガス流量計214は、一次回路209がガスライン207に接続される点の下流に配置される。制御が水加水電解装置の出力のみの制御で行われる場合、第2の弁213は除外されてもよい。
【0066】
制御装置は、DRシャフト201の内側又は出口の温度を示す温度を測定するための温度センサ216も含む。DRシャフト内の温度は、鉄鉱石の還元がどのように進むかを示す。それに応じて、還元ガスがないことに起因する不完全な還元により、DRシャフトの内側の温度が下がり、それによってそのような不足が明らかになり、従って制御ユニット215への入力として使用される。温度入力に基づいて、制御ユニット215は、こうして水素ガス源からガスライン207の中に入るガス流量を制御するように、及び所定のレベルより低い温度への応答として流量を増加させるように構成される。
【0067】
温度センサ216は、DRシャフトの内側、又は例えばガス出口205内に配置されてもよく、その場合、DRシャフトから出る炉頂ガスは、DRシャフト201の内側の温度を示す温度を有すると推測することができる。
【0068】
第1の弁212は制御可能弁であり、システムは、一次回路209内に配置された圧力センサ217を更に含む。制御ユニット215は、圧力センサ217から受領した入力に基づいて、前記制御可能な第1の弁212を制御するように構成される。一次回路209は、二次回路210が一次回路209に接続される、一次回路209に沿った点に提供された第2の圧縮機218を含み、圧力センサ217は、前記第2の圧縮機218の上流に位置付けられる。制御ユニット215は、一次回路209内の圧力が所定のレベルを超えることへの応答として、第1の弁212を開くように構成される。別法として、第1の弁は、一次回路209内の圧力が前記所定のレベルを超える時に、自動的に開くように設定された逃し弁であってもよい。二次回路内のガス圧力を低減するための手段211は、第1の圧縮機208の上流のガスライン207内のガス圧力をわずかに超える圧力に圧力を下げる、例えば約1.5バールの圧力まで下げるように設計される。
【0069】
一次回路209は、炉頂ガスを処理するためのデバイス219を更に含み、前記デバイス219は、一次回路209を通って導通される炉頂ガスの一部から不活性ガスを分離するためのデバイス(詳細には示されていない)を含む。処理デバイス219は、一次回路209を通って導通される炉頂ガスの前記一部から水と塵を分離するためのデバイス(詳細には示されていない)も含む。処理デバイス219は、炉頂ガスとガスライン207を通って流れる還元ガスとの間で熱交換するための熱交換器(詳細には示されていない)も含む。ガスライン207内に還元ガスを加熱するための1つ又は複数の別個の加熱器220も提供されてもよい。
【0070】
図2を参照して上に記載されたシステムは、一次回路内で圧力が上昇した場合に、それをフレアリングする代わりに水素ガスをリサイクルすることができる。制御ユニット215は、開示されたセンサからの入力に基づいて、還元ガス源206からガスライン207の中に入る還元ガス流を制御するように構成される。還元ガス源206が水電解装置である場合、制御ユニット215は、前記センサからの入力に基づいて、且つ二次回路210を介して還元ガスをリサイクルする利点を効果的に生かすために、電解装置の出力を制御するように構成されてもよい。
図1
図2
【国際調査報告】